説明

車両用操舵装置

【課題】操舵部材を所望の姿勢で滑らかに変位させることができる車両用操舵装置を提供すること。
【解決手段】操舵部材4は、当該操舵部材4がインストルメントパネル14の固定枠15内に収納された収納位置および固定枠15外に突出した突出位置に変位可能に支持する支持機構16によって支持されている。支持機構16は、収納位置と突出位置との間の操舵部材4の姿勢を規制することができる。操舵部材4が収納位置にあるときに、固定枠15に設けられた開口27は、インストルメントパネル14の一部を構成する可動枠26によって覆われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両に用いられる車両用操舵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
操舵部材をインストルメントパネル内に収納できるようにした車両用操舵装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−182141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1記載の車両用操舵装置では、操舵部材が直列に連結された2つのアームのみを介して支持されているため、操舵部材をインストルメントパネル内に収納したり、インストルメントパネルから突出させたりするときに、操舵部材の姿勢が自由に変化してしまい、その結果、操舵部材の移動に要するスペースが大きくなる。
この発明は、かかる背景のもとになされたものであり、操舵部材を所望の姿勢で滑らかに変位させることができる車両用操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するための本発明は、運転者が回転操作するための操舵部材(4)と、操舵部材をインストルメントパネル(14)の固定枠(15)内に収納される収納位置および固定枠外に突出する突出位置に変位可能に支持し、収納位置と突出位置との間の操舵部材の姿勢を規制する支持機構(16)と、上記操舵部材と同行移動し、操舵部材が収納位置に収容されたときにインストルメントパネルの固定枠に設けられた開口(27)を覆うことによりインストルメントパネルの一部を構成する可動枠(26)と、を備えることを特徴とする車両用操舵装置(1)である。
【0005】
本発明によれば、支持機構によって、収納位置と突出位置との間の操舵部材の姿勢を規制することができる。したがって、操舵部材の移動に要するスペースを小さくすることができる。また、本発明によれば、操舵部材が収納位置にあるときに、可動枠がインストルメントパネルの一部を構成するようになっているので、外観的に一体感のあるインストルメントパネルが構成される。
【0006】
また、上記支持機構は、第1の端部(17a,18a)がそれぞれベース(21)に回転可能に支持された第1および第2のリンクアーム(17,18)と、第1および第2のリンクアームの第2の端部(17b,18b)にそれぞれ回転可能に連結された第1および第2の端部(19a,19b)を有し第1および第2のリンクアームの第2の端部間を連結する第3のリンクアーム(19)とを有するリンク機構(20)と、上記第3のリンクアームにブラケット(22)を介して固定され上記操舵部材を回転可能に支持する支持フレーム(24)とを含む場合がある(請求項2)。
【0007】
この場合、第1および第2のリンクアームの回転の支点の位置、並びに、各リンクアームの長さの設定により、第3のリンクアームの姿勢変化を所望に調整でき、これにより、操舵部材の移動に要するスペースを小さくすることができる。
また、上記車両用操舵装置は、上記操舵部材が突出位置にあるときに、上記固定枠の開口の少なくとも一部を覆うカバー(25)を備えている場合がある(請求項3)。この場合、固定枠の開口の少なくとも一部がカバーによって覆われるので、操舵部材が突出位置にあるときでも外観的に一体感のあるインストルメントパネルが構成される。
【0008】
また、上記車両用操舵装置は、上記支持機構を介して操舵部材を収納位置および突出位置に駆動する操舵部材進退用アクチュエータ(28)を備える場合がある(請求項4)。この場合、上記収納位置または上記突出位置に操舵部材を自動で移動させることができる。これにより、車両用操舵装置の利便性が向上される。
上記操舵部材進退用アクチュエータとしては、例えば、第1および第2のリンクアームの何れか一方を回転させる直動形アクチュエータを用いてもよい(請求項5)。この場合、第1および第2のリンクアームの何れか一方を回転させることにより、第3のリンクアームが変位し、それに伴って操舵部材が変位する。
【0009】
また、上記車両用操舵装置は、車輪(2)を転舵するための転舵機構(3)を備え、操舵部材と転舵機構とは機械的に連結されていない場合がある(請求項6)。この場合、操舵部材の配置が転舵機構によって制限されないので、上述の構成を特に有効に活用し、上述の効果を十分に発揮させることができる。
なお、上記において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下では、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用操舵装置1の概略構成を示す模式図である。図1を参照して、この車両用操舵装置1は、転舵輪2を転舵するための転舵機構3と操舵部材4とが機械的に連結されていない、いわゆるステアバイワイヤ式の車両用操舵装置である。
【0011】
操舵部材4の回転操作に応じて駆動される転舵用アクチュエータ5の動作を、転舵軸6の車幅方向の直線運動に変換し、この転舵軸6の直線運動を舵取り用の左右の転舵輪2,2の転舵運動に変換することにより転舵が達成される。
転舵用アクチュエータ5は、例えばブラシレスモータ等の電動モータを含む構成である。この転舵用アクチュエータ5の駆動力(出力軸の回転力)は、転舵軸6に関連して設けられた図示しない運動変換機構(例えばボールねじ機構)により、転舵軸6の軸方向(車幅方向)の直線運動に変換される。この転舵軸6の直線運動は、転舵軸6の各軸方向端部に連結されたタイロッド7に伝達され、ナックルアーム8の回転を引き起こす。これにより、ナックルアーム8に支持された転舵輪2の転舵が達成される。転舵軸6、タイロッド7およびナックルアーム8などにより、転舵輪2を転舵するための転舵機構3が構成されている。
【0012】
操舵部材4は、図示しない車体に対して回転可能に支持された回転シャフト9に連結されている。この回転シャフト9には、操舵部材4に操舵反力を与えるための反力用アクチュエータ10が連結されている。反力用アクチュエータ10は、ブラシレスモータ等の電動モータを含む。
回転シャフト9に関連して、操舵部材4の操舵角を検出するための操舵角センサ11が設けられている。また、回転シャフト9には、操舵部材4に加えられた操舵トルクを検出するためのトルクセンサ12が設けられている。図示はしないが、これらのセンサ11,12の他にも、転舵輪2の転舵角を検出するための転舵角センサや、車速を検出するための車速センサ等が設けられている。
【0013】
上記のセンサ類の各検出信号は、マイクロコンピュータを含む構成の電子制御ユニット(ECU)からなる制御装置13に入力されるようになっている。制御装置13は、入力された検出信号に基づいて転舵用アクチュエータ5を駆動制御する。また、制御装置13は、入力された検出信号に基づいて、操舵部材4の操舵方向とは逆方向の適当な反力が発生されるように反力用アクチュエータ10を制御する。
【0014】
図2および図3は、車両用操舵装置1の要部の図解的な側面図である。また、図4は、車両用操舵装置1の要部の図解的な平面図である。図2および図3では、車両用操舵装置1が車両に取り付けられた状態を示している。図2および図3における左右方向が車両の前後方向に対応している。図2および図3における右方が車両の前方X1となり、図2および図3における左方が車両の後方X2となっている。
【0015】
また、図2および図3において、運転席は、操舵部材4の左側に配置されている。操舵部材4は、インストルメントパネル14の固定枠15内に収容された収納位置(図2参照)と、インストルメントパネル14の固定枠15外に突出した突出位置(図3参照)との間で移動できるようになっている。
図2および図3を参照して、車両用操舵装置1は、インストルメントパネル14の固定枠15内に操舵部材4を格納可能な操舵部材格納式の車両用操舵装置であり、操舵部材4を図2に示す収納位置および図3に示す突出位置に変位可能に支持する支持機構16を備えている。
【0016】
支持機構16は、第1の端部17aおよび第2の端部17bを有する第1のリンクアーム17と、第1の端部18aおよび第2の端部18bを有する第2のリンクアーム18と、第1の端部19aおよび第2の端部19bを有する第3のリンクアーム19とによって構成されたリンク機構20を備えており、これらのリンクアーム17,18,19が回転することにより、操舵部材4が変位するようになっている。
【0017】
第1のリンクアーム17および第2のリンクアーム18は、車両の前後方向に並んで配置されている。第1のリンクアーム17の第1の端部17aおよび第2のリンクアーム18の第1の端部18aは、それぞれ車体Bに固定されたベース21に回転可能に支持されている。
図4を参照して、第1のリンクアーム17および第2のリンクアーム18は、それぞれリンク機構20の幅方向(図4における左右方向)に並んで一対設けられている。一対の第1のリンクアーム17,17の第2の端部17b,17bは、連結軸20aによって互いに連結されており、一対の第2のリンクアーム18,18の第2の端部18b,18bは、連結軸20bによって互いに連結されている。
【0018】
第3のリンクアーム19は、第1のリンクアーム17の第2の端部17bと第2のリンクアーム18の第2の端部18bとを連結している。具体的には、一対の連結軸20a,20bを介して、一対の第1のリンクアーム17,17の第2の端部17b,17bと、一対の第2のリンクアーム18,18の第2の端部18b,18bとを第3のリンクアーム19が連結している。
【0019】
第3のリンクアーム19の第1の端部19aは、連結軸20aを介して一対の第1のリンクアーム17,17の第2の端部17b,17bに回転可能に連結されており、第3のリンクアーム19の第2の端部19bは、連結軸20bを介して一対の第2のリンクアーム18,18の第2の端部18b,18bに回転可能に連結されている。
再び図2および図3を参照して、第3のリンクアーム19の第1の端部19aには、ブラケット22の第1の端部22aが固定されている。ブラケット22は、第3のリンクアーム19に対して所定の角度をなしている。ブラケット22には、第1の支持フレーム23、第2の支持フレーム24およびカバー25が固定されている。
【0020】
具体的には、第1の支持フレーム23および第2の支持フレーム24は、互いの間に間隔が隔てられた状態でブラケット22に固定されている。第1の支持フレーム23は、ブラケット22の第2の端部22bに固定されており、第2の支持フレーム24は、第2の端部22bに近接した位置に固定されている。
操舵部材4の一部は、第1の支持フレーム23および第2の支持フレーム24の間に配置されている。操舵部材4は、第2の支持フレーム24によって回転可能に支持されている。また、第1の支持フレーム23の運転席側には、インストルメントパネル14の一部を構成するための可動枠26が固定されている。この可動枠26には、後述する操作部32等が設けられている。可動枠26は、固定枠15に形成された開口27を覆うことができる形状にされている。
【0021】
図2に示すように、操舵部材4が収納位置にあるときに、可動枠26は開口27の全体を概ね覆っている。すなわち、操舵部材4が図2の収納位置にあるときに、インストルメントパネル14は、固定枠15と可動枠26とによって構成されている。
固定枠15は、側面視において例えば湾曲状をなしている。また、可動枠26は、側面視において例えば固定枠15に滑らかに連なる湾曲状をなしている。したがって、操舵部材4が図2の収納位置にあるときに、固定枠15および可動枠26は、外観的に一体感のあるインストルメントパネル14を構成している。操舵部材4を固定枠15内に収納することで、車内空間を有効に利用できるようになっている。
【0022】
一方、カバー25は、ブラケット22の途中部に固定されている。カバー25は、開口27の大部分の領域を覆うことができる形状にされている。図示はしないが、カバー25には、ブラケット22が挿通する挿通孔が形成されている。カバー25は、上記挿通孔にブラケット22が挿通した状態で当該ブラケット22に固定されている。
図3に示すように、操舵部材4が突出位置にあるときに、カバー25は、開口27内に配置されており、開口27の少なくとも一部を覆っている。具体的には、カバー25は、開口27内においてブラケット22等が配置されている部分を除く残りの領域の全部または一部を覆っている。
【0023】
操舵部材4が図3の突出位置にあるときに、インストルメントパネル14は、固定枠15とカバー25とによって構成されている。カバー25は、側面視において例えば固定枠15に滑らかに連なる湾曲状をなしている。したがって、操舵部材4が図3の突出位置にあるときに、固定枠15およびカバー25は、外観的に一体感のあるインストルメントパネル14を構成している。
【0024】
操舵部材4が図3の突出位置にあるときに、カバー25によって開口27の少なくとも一部を覆うことにより、開口27から固定枠15内に物が入ったり、固定枠15の内部に存在する異物等が当該開口27から車内空間に進入したりすることを防止することができる。収納位置と突出位置との間での操舵部材4の変位は、制御装置13が操舵部材進退用アクチュエータ28を駆動制御することにより達成されている。
【0025】
すなわち、操舵部材4は、第2の支持フレーム24、ブラケット22およびリンク機構20等を介して、操舵部材進退用アクチュエータ28に連結されており、操舵部材進退用アクチュエータ28によって駆動される。操舵部材進退用アクチュエータ28はリンク機構20に連結されており、操舵部材進退用アクチュエータ28がリンク機構20を駆動することで、操舵部材4が進退される。操舵部材進退用アクチュエータ28としては、例えば直動形モータその他の直動形アクチュエータが用いられている。
【0026】
操舵部材進退用アクチュエータ28としての直動形アクチュエータは、車体Bに固定された本体部30と、この本体部30に保持されたロッド部31とを含む。本体部30は、ロッド部31の軸方向に沿ってロッド部31を直線的に移動させることができる。ロッド部31の先端は、第1のリンクアーム17の途中部に回転可能に連結されている。
ロッド部31を直線的に移動させることにより、第1のリンクアーム17は、直動形アクチュエータの駆動力を受けて第1の端部17aを支点として回転する。これにより、第1のリンクアーム17に連結された第3のリンクアーム19の第1の端部19aは、第1のリンクアーム17と共に第1の端部17aを支点として回転する。また、第3のリンクアーム19の第1の端部19aが第1のリンクアーム17と共に回転するときに、第2のリンクアーム18は、第1の端部18aを支点として回転しつつ、第3のリンクアーム19の姿勢を所望の状態に維持する。
【0027】
すなわち、第3のリンクアーム19の第1の端部19aが第1のリンクアーム17の第2の端部17bに回転可能に連結されているため、第3のリンクアーム19の第1の端部19aは、第1のリンクアーム17の第2の端部17bを支点として回転する。また、第3のリンクアーム19の第2の端部19bが第2のリンクアーム18の第2の端部18bに回転可能に連結されているため、第3のリンクアーム19の第2の端部19bは、第2のリンクアーム18の第2の端部18bを支点として回転する。
【0028】
一方、第1の端部19aと第2の端部19bとの間の距離(第2の端部17bと第2の端部18bとの間の距離に相当)は一定である。また、第1のリンクアーム17の回転の支点である第1の端部17aの位置および第2のリンクアーム18の回転の支点である第1の端部18aの位置、並びに、第1、第2および第3のリンクアーム17,18,19の長さは適切に設定されている。これにより、第3のリンクアーム19の姿勢が所望の状態に維持される。
【0029】
本実施形態では、第1および第2のリンクアーム17,18の回転の支点の位置(第1の端部17aおよび第2の端部18a)、並びに、第1、第2および第3のリンクアーム17,18,19の長さの設定により、第3のリンクアーム19の姿勢変化を所望に調整でき、これによって、収納位置(図2参照)および突出位置(図3参照)の間で操舵部材4に所望の姿勢変化を与えることができる。
【0030】
操舵部材4は、第1のリンクアーム17の第1の端部17aを支点とした第3のリンクアーム19の回転に伴って、所望の姿勢に維持された状態で、収納位置と突出位置との間で例えば所定の曲線を描きながら滑らかに変位される。これにより、車両用操舵装置1が高級感のある車両用操舵装置とされている。
また、本実施形態では、操舵部材4の姿勢を所望の状態に維持しつつ変位させることができるので、操舵部材4の移動に要するスペースが小さくされている。これにより、車両用操舵装置1の小型化が図られている。また、本実施形態では、リンク機構20の構造が単純であるため、当該リンク機構20の動きの調整や、車両用操舵装置1の組立てが容易である。
【0031】
さらに、本実施形態では、各リンクアーム17,18,19がそれぞれの支点を中心に回転できるようになっているので、例えば車両の衝突のときに運転者が操舵部材4に衝突(いわゆる二次衝突)して支持機構16に加えられた荷重を車両用操舵装置1が吸収し易くなっている。そのため、操舵部材4を直線的に変位させる支持機構を備える車両用操舵装置に比べて安全性が高い。
【0032】
図5は、可動枠26の図解的な正面図である。図5を参照して、可動枠26の正面(可動枠26の運転席側)には、操作部32と表示部33とが設けられている。操作部32は、例えば非常点滅表示灯(いわゆるハザードランプ)用ボタンやパーキングブレーキ用ボタン等を含む複数のボタン34により構成されている。また、表示部33は、例えば、エンジン回転数表示部35および車速表示部36を含む。
【0033】
エンジン回転数表示部35は、例えば、可動枠26の幅方向(図5における左右方向)に並んだ複数の矩形の点灯部37により構成されている。エンジン回転数が上昇すると、各点灯部37は、図5における左端から順番にエンジン回転数に対応する個数だけ点灯するようになっている。
また、車速表示部36は、例えば、可動枠26の幅方向に並んだ複数の棒状の点灯部38により構成されている。各点灯部38は長さが異なっており、可動枠26の高さ方向(図5における上下方向)に延びている。各点灯部38の長さは、図5における右方に行くにしたがって長くなっている。各点灯部38の下端の位置は揃えられており、各点灯部38の上端の位置は図5における右方に行くにしたがって高くなっている。車速が上昇すると、各点灯部38は、図5における左端から順番に車速に対応する個数だけ点灯するようになっている。
【0034】
また、後述する操舵部材4の一対の把持部42,42には、方向指示器点灯用のボタン39がそれぞれ設けられている。
図6は、操舵部材4の図解的な正面図である。また、図7は、可動枠26等を含む操舵部材4の図解的な側面図であり、図8は、可動枠26等を含む操舵部材4の図解的な平面図である。なお、図7では、一対の回転アーム41,41および一対の把持部42,42の図示を省略している。
【0035】
図6、図7および図8を参照して、操舵部材4は、操舵部材本体40と、この操舵部材本体40に回転可能に支持された一対の回転アーム41,41と、一対の回転アーム41,41にそれぞれ固定された運転者把持用の一対の把持部42,42とを備えている。
操舵部材本体40は、第2の支持フレーム24およびブラケット22等を介して支持機構16に連結されており、収納位置(図2参照)と突出位置(図3参照)との間で変位されるようになっている。一対の回転アーム41,41および一対の把持部42,42は、収納位置および突出位置に操舵部材本体40と同行移動するようになっている。
【0036】
図6に示すように、操舵部材本体40には、一対の回転軸43,43がそれぞれ回転可能に保持されている。各回転軸43は、その中心軸線を回転軸線L1として回転可能に操舵部材本体40に保持されている。各回転軸43は、操舵部材本体40の高さ方向(図6における上下方向)に延びている。
各回転アーム41の一端は、対応する回転軸43の途中部に固定されている。また、各回転アーム41の他端には、把持部42が固定されている。回転軸43が回転軸線L1を中心として回転すると、当該回転軸43に対応する回転アーム41および把持部42が、当該回転軸43の回転軸線L1を中心として回転するようになっている。
【0037】
また、各回転軸43には、一対の把持部42,42を非使用位置(図8において二点鎖線で示す位置)および使用位置(図8において実線で示す位置)に駆動するための把持部駆動用アクチュエータ44が連結されている。把持部駆動用アクチュエータ44は、例えば、各回転アーム41の回転中心(対応する回転軸43の回転軸線L1)の同軸上に配置された一対の回転形アクチュエータ45,45を含む。一対の回転形アクチュエータ45,45は操舵部材本体40に固定されている。
【0038】
各回転形アクチュエータ45としては、例えば電動モータが挙げられる。本実施形態では、例えば、減速機構が内蔵されたギヤードモータが各回転形アクチュエータ45として用いられている。各回転形アクチュエータ45としてギヤードモータを用いることで、減速機構と電動モータとが別々に設けられた構成に比べて車両用操舵装置1が小型化されている。
【0039】
また、回転形アクチュエータ45を一対設けることで、これらの回転形アクチュエータ45,45の間に空間を確保して、当該空間に他の部材を配置できるようになっている。これにより、車両用操舵装置1の小型化が図られている。回転形アクチュエータ45を一対設けることで、各回転形アクチュエータ45を小型化することができ、その結果、一対の回転形アクチュエータ45,45の間に、より広い空間が確保されている。
【0040】
図示はしないが、各回転形アクチュエータ45の出力軸は、対応する回転軸43に同軸的に固定されている。したがって、各回転形アクチュエータ45の出力軸を回転させると、この出力軸の回転に伴って対応する回転軸43、回転アーム41および把持部42が回転する。各回転軸43の回転位置は、回転軸43の先端に連結された例えば光学式のロータリエンコーダ等の位置検出装置46によって検出される。
【0041】
各位置検出装置46の検出信号は、制御装置13に入力されるようになっており、制御装置13は、入力された検出信号に基づいて各回転形アクチュエータ45を駆動制御する。制御装置13は、例えば、一対の回転アーム41,41の回転動作が同期するように一対の回転形アクチュエータ45,45を制御する。
本実施形態では、把持部駆動用アクチュエータ44を設けることで、非使用位置(図8の二点鎖線を参照)と使用位置(図8の実線を参照)との間で一対の把持部42,42を自動で変位させることができる。したがって、操舵を開始する前に運転者が手動で一対の把持部42,42を引き起こさなくてもよく、手間がかからない。これにより、車両用操舵装置1の利便性が向上されている。
【0042】
図7を参照して、操舵部材本体40には、上述の回転シャフト9が固定されている。回転シャフト9の先端は、軸受47を介して第2の支持フレーム24に回転可能に保持されている。操舵部材本体40は、回転シャフト9および軸受47を介して第2の支持フレーム24に回転可能に保持されている。
また、回転シャフト9には、歯車48が連結されている。この歯車48は、回転シャフト9と同行回転可能となっている。歯車48には、反力用アクチュエータ10としての電動モータの出力軸が連結された歯車49と、上述の操舵角センサ11が連結された歯車50とが噛み合っている。本実施形態では、操舵角センサ11として例えば光学式のロータリエンコーダが用いられている。
【0043】
反力用アクチュエータ10の駆動力は、一対の歯車48,49および回転シャフト9を介して操舵部材4に伝達される。反力用アクチュエータ10としての電動モータは第2の支持フレーム24に固定されている。また、操舵部材4の操舵角は、一対の歯車48,50を介して操舵角センサ11に伝達される回転シャフト9の回転位置の変化から検出される。操舵角センサ11は、第2の支持フレーム24に固定されている。
【0044】
図9は、操舵部材4が図3に示す状態になるまでの制御の一例を示すフローチャートである。
図2、図3および図9を参照して、例えば操舵部材4が収納位置に配置され一対の把持部42,42が非使用位置に配置されている状態(図2に示す状態)で、図示しない車両のキー差込位置にキーが差し込まれ、ON位置にキーが回転されると(ステップS11)、制御装置13は、操舵部材進退用アクチュエータ28を制御して、操舵部材進退用アクチュエータ28を駆動させる(ステップS12)。これにより、支持機構16を介して操舵部材4が駆動され、操舵部材4が突出位置に配置される。
【0045】
次いで、制御装置13は、把持部駆動用アクチュエータ44(図6参照)を制御して、把持部駆動用アクチュエータ44を駆動させる(ステップS13)。これにより、一対の回転アーム41,41および一対の把持部42,42が回転し、一対の把持部42,42が使用位置に配置される。これにより、操舵部材4の移動が完了し(ステップS14)、操舵部材4が図3に示す状態となる。
【0046】
一対の把持部42,42の非使用位置から使用位置への変位は、操舵部材4が突出位置に配置されてから行われてもよく、操舵部材4が収納位置から突出位置に変位される途中で行われてもよい。
図10は、操舵部材4が図2に示す状態になるまでの制御の一例を示すフローチャートである。
【0047】
図2、図3および図10を参照して、例えば操舵部材4が突出位置に配置され一対の把持部42,42が使用位置に配置されている状態(図3に示す状態)で、OFF位置にキーが回転されると(ステップS21)、制御装置13は、把持部駆動用アクチュエータ44(図6参照)を制御して、把持部駆動用アクチュエータ44を駆動させる(ステップS22)。これにより、一対の回転アーム41,41および一対の把持部42,42が回転し、一対の把持部42,42が非使用位置に配置される。
【0048】
次いで、制御装置13は、操舵部材進退用アクチュエータ28を制御して、操舵部材進退用アクチュエータ28を駆動させる(ステップS23)。これにより、支持機構16を介して操舵部材4が駆動され、操舵部材4が収納位置に配置される。これにより、操舵部材4の移動が完了し(ステップS24)、操舵部材4が図2に示す状態となる。
一対の把持部42,42の使用位置から非使用位置への変位は、操舵部材4が突出位置にあるときに行われてもよく、操舵部材4が突出位置から収納位置に変位されている途中で行われてもよい。ただし、後者の場合には、操舵部材4が開口27に達するまでに、一対の把持部42,42を非使用位置に配置させなければならない。
【0049】
以上のように本実施形態では、収納位置と突出位置との間での操舵部材4の変位が自動で行われるようになっている。これにより、車両用操舵装置1の利便性が向上されている。また、本実施形態では、非使用位置と使用位置との間での一対の把持部42,42の変位が自動で行われるようになっている。したがって、操舵を開始する前に運転者が手動で一対の把持部42,42を引き起こさなくてもよく、車両用操舵装置1の利便性がさらに向上されている。
【0050】
また、本実施形態では、一対の回転アーム41,41および一対の把持部42,42が操舵部材本体40に対して折りたたみ可能であるので、操舵部材4がコンパクトになっている。したがって、開口27の大きさを小さくでき、さらに、操舵部材4を収納するためのスペースを小さくすることができる。これにより、車両用操舵装置1がさらに小型化されている。
【0051】
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上述の実施形態において、操舵部材4が突出位置にあるときに、運転者の好みに応じて操舵部材4の位置を調節できるようにしてもよい。
具体的には、操舵部材4が突出位置にあるときに、操舵部材進退用アクチュエータ28によって操舵部材4を変位させて操舵部材4の位置を調節できるようにしてもよいし、操舵部材進退用アクチュエータ28とは別にチルト機構やテレスコ機構等を設けて、操舵部材4をチルト調節またはテレスコ調節等できるようにしてもよい。
【0052】
また、上述の実施形態において、例えば、第1のリンクアーム17とベース21との連結部に衝撃吸収手段を設けて、いわゆる二次衝突のときの衝撃を吸収できるようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、車両用操舵装置1が、いわゆるステアバイワイヤ式の車両用操舵装置である場合について説明したが、車両用操舵装置1は、ステアバイワイヤ式の車両用操舵装置に限らず電動式や油圧式等のその他の車両用操舵装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用操舵装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】車両用操舵装置の要部の図解的な側面図である。
【図3】車両用操舵装置の要部の図解的な側面図である。
【図4】車両用操舵装置の要部の図解的な平面図である。
【図5】可動枠の図解的な正面図である。
【図6】操舵部材の図解的な正面図である。
【図7】可動枠等を含む操舵部材の図解的な側面図である。
【図8】可動枠等を含む操舵部材の図解的な平面図である。
【図9】操舵部材が図3に示す状態になるまでの制御の一例を示すフローチャートである。
【図10】操舵部材が図2に示す状態になるまでの制御の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
1・・・車両用操舵装置、2・・・転舵輪(車輪)、3・・・転舵機構、4・・・操舵部材、14・・・インストルメントパネル、15・・・固定枠、16・・・支持機構、17・・・第1のリンクアーム、17a・・・第1の端部、17b・・・第2の端部、18・・・第2のリンクアーム、18a・・・第1の端部、18b・・・第2の端部、19・・・第3のリンクアーム、19a・・・第1の端部、19b・・・第2の端部、20・・・リンク機構、21・・・ベース、24・・・第2の支持フレーム(支持フレーム)、25・・・カバー、26・・・可動枠、27・・・開口、28・・・操舵部材進退用アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が回転操作するための操舵部材と、
操舵部材をインストルメントパネルの固定枠内に収納される収納位置および固定枠外に突出する突出位置に変位可能に支持し、収納位置と突出位置との間の操舵部材の姿勢を規制する支持機構と、
上記操舵部材と同行移動し、操舵部材が収納位置に収容されたときにインストルメントパネルの固定枠に設けられた開口を覆うことによりインストルメントパネルの一部を構成する可動枠と、を備えることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項2】
請求項1において、上記支持機構は、第1の端部がそれぞれベースに回転可能に支持された第1および第2のリンクアームと、第1および第2のリンクアームの第2の端部にそれぞれ回転可能に連結された第1および第2の端部を有し第1および第2のリンクアームの第2の端部間を連結する第3のリンクアームとを有するリンク機構と、上記第3のリンクアームにブラケットを介して固定され上記操舵部材を回転可能に支持する支持フレームとを含むことを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項3】
請求項1または2において、上記操舵部材が突出位置にあるときに、上記固定枠の開口の少なくとも一部を覆うカバーを備えることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項において、上記支持機構を介して操舵部材を収納位置および突出位置に駆動する操舵部材進退用アクチュエータを備えることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項5】
請求項4において、上記操舵部材進退用アクチュエータは、第1および第2のリンクアームの何れか一方を回転させる直動形アクチュエータを含むことを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項において、車輪を転舵するための転舵機構を備え、操舵部材と転舵機構とは機械的に連結されていないことを特徴とする車両用操舵装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−62003(P2009−62003A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−233601(P2007−233601)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】