説明

車両用灯具

【課題】LEDランプを車両用灯具の照明用光源として使用する場合、1個あたりの光量が少ないので、複数のランプで所望の配光特性が得られる構成の開発が要望されている。
【解決手段】本発明により、車両の上方に向けて配置された発光素子と、この発光素子からの光を車両前方に反射させるための反射面を有するライトガイドブロックであり、反射面の光軸に沿う鉛直方向への断面形状は、光軸上に焦点を有する略放物線形状に設定されており、発光素子からの光をライトガイドブロック内部に入射させる入射面は光軸を通る水平面で且つ焦点と略一致する位置として設定され、入射面には、焦点から後方を遮光するための遮光処理が施されている車両用照明灯具としたことで、左右に連続配置することで一個の灯具と同様な配光特性が得られるものとして課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関するものであり、詳細には、発光ダイオードなど1個当たりの光量が比較的に少なく、且つ、一方向に向けて光を発する光源の複数を組み合わせて配光を形成するのに適する車両用灯具の構成に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の発光ダイオードを光源とする車両用灯具90の構成の例としては、例えば、図7〜図9に示されるような構成のものがあり、この車両用灯具90には、それぞれに形状の異なる、第一の導光レンズ71が取付けられた第一の発光ダイオード70と、第二の導光レンズ81が取付けられた第二の発光ダイオード80の適宜数が取付けられている。
【0003】
ここで、第一の発光ダイオード70に取付けられる第一の導光レンズ71は図7に示すように略扇状の形状をなし、第一の発光ダイオード70からの光を所定に範囲に拡げるような配光特性を持って外部に放射するものとされている。これに対して、第二の導光レンズ81は、図8に示すように、凸レンズ状の形状をなし、第二の発光ダイオード80からの光をスポット状の配光特性を持って、外部に放射するものとされている。
【0004】
よって、例えば、車両用灯具90の中心部には第二の発光ダイオード80の適宜数を取付けることで、車両用灯具90の正面方向を充分な明るさをもって照射可能とすると共に、この車両用灯具90が左側通行用である場合には、図9に示すように正面右側には第二の導光レンズ81が取付けられた第二の発光ダイオードを右上がりとなるように取付けて、運転席から見るときの路肩側の道路標識、歩行者などに対する視界を確保し、正面左側には第一の導光レンズ71を有する第一の発光ダイオード70を水平に取付け、対向車に眩惑光を与えないようにする。
【特許文献1】特開2004−071409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記したように、それぞれが配光特性が異なる発光ダイオード70、80を組合わせて、車両用灯具90として適当な配光特性を形成しようとする場合、予めにどの位置に何個どの特性の発光ダイオード70、80を配置するのが良いかなどの検討を行わなければならず、また、配置が決定したとしても、実際の車両用灯具90への取付時の誤差、或いは、それぞれの発光ダイオード70、80の個別に生じる誤差の総合などにより、均一な特性の車両用灯具90を得るのが困難であるという問題点を生じている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記した従来の課題を解決するための具体的手段として、車両の上方に向けて配置された発光素子と、この発光素子からの光を車両前方に反射させるための反射面を有するライトガイドブロックとを有し、このライトガイドブロックが、前記反射面の光軸に沿う鉛直方向への断面形状は、前記光軸上に焦点を有する略放物線形状に設定されており、前記発光素子からの光を前記ライトガイドブロック内部に入射させる入射面は前記光軸を通る水平面で且つ前記焦点と略一致する位置として設定されていることを特徴とする車両用照明灯具を提供することで、構成を簡素化し、均一な性能の車両用灯具が容易に得られるものとして課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、光軸に沿い放物線の上半部に分割した透明な板状部材の、前記で分割した上半部の焦点から後方を塗料などで遮蔽し遮蔽膜を形成すると共に、LEDなど発光素子を、前記上半部の焦点の前方近傍に上向き光を放射するように配置することで、前記遮蔽部により照射光に明暗境界線が形成されるものとなる。
【0008】
よって、上記放物線の上半部に分割した透明な板状部材に遮蔽膜を形成したものを複数形成し、平行に整列させて、それぞれに発光素子を組合わせれば、総合的には充分な明るさを有し、且つ、対向車に眩惑を生じさせることのない明確な明暗境界線を有する照明光を簡便、容易に得ることができるという利点を有するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、本発明を図に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。図1、図2に符号1で示すものは、本発明に係る車両用灯具10に係る、例えばアクリル樹脂またはガラス製ののライトガイドブロックであり、このライトガイドブロック1の任意数を備えることで、本発明の車両用灯具10は構成されるものであり、図示は前記ライトガイドブロック1が、光軸Yに対して放物線の上半部を採用したときの例で示してある。
【0010】
ここで、本発明においては、前記ライトガイドブロック1は、透明な板状の樹脂など形成され、図1に示すように、光軸Yと下面である入射面1aとは一致、あるいはほぼ一致させられ、前記光軸Yを基準として放物線である反射面1bが現れるものとされている。尚、この実施形態では光を放射するための光放出面1cは入射面1aに対して鉛直あるいはほぼ鉛直な平面として形成されている例で示してあるが、例えば、表面にレンズカットを行うなどの変形は自在である。
【0011】
前記ライトガイドブロック1が、上記の説明のように形成されたことで、このライトガイドブロック1の焦点Fは、前記入射面1a、即ち、光軸Yと一致、あるいはほぼ一致する面上に存在するものとなり、本発明では、前記光放出面1c方向から見て、焦点Fが存在する位置の近傍から後方(光放出面1cとは反対側)に塗装、蒸着などにより遮光膜3を形成するなどの遮光処理を行う。
【0012】
また、本発明では、前記入射面1aの焦点Fの近傍には、例えば出射部が平面状のチップタイプのLEDランプなど光源2が配置されるものとされるが、図2に底面図で示すように、前記光源2の発光素子2aは、前記遮光膜3の前方寄り、即ち、光放出面1c寄りに取付けられている。従って、放物線により形成されている前記反射面1bに対して発光素子2aは焦点Fよりも前方に存在するものとなり、前記反射面1bに反射した後には、水平から下向きとして光放出面1cから外部に放射されるものとなる。
【0013】
ここで図1中に符号4で示すものは、光源2(発光素子2a)からの光が反射面1bに達したときに、内面で全反射が行われない部分に設けられる反射膜であり、この反射膜4は、典型的にはアルミニウムの真空蒸着、塗装、別部材による取付けなどこの種の車両用灯具1の生産に常套的に採用されている手段で形成されている。
【0014】
尚、上記した反射膜4は適宜な膜厚とすれば光を透過しないものとすることができるので、蒸着時間を適宜に調整するなどの手段で、上記に説明した遮光膜3と同一の工程で形成することが可能となり、生産効率の向上が図れるものとなる。
【0015】
また、図中に符号1eで示されるものは、例えば、光源2が給電可能に取付けられた回路基板(図示は省略する)上に前記ライトガイドブロック1を固定するための取付ピンであり、この取付ピン1eにより前記光源2と前記ライトガイドブロック1とが前記した回路基板上の相互の位置が、所定の位置として取付けられるものとなる。
【0016】
以上説明のように、前記ライトガイドブロック1を形成したことで、光軸Yが水平となるように車両などにライトガイドブロック1を取付けた状態では、遮光膜3と反射面1bとの作用により、上向き光を生じることのない照射光が得られるものとなり、且つ、遮光膜3の作用により発光素子2aから斜め方向後方に放射される光を遮蔽する効果が得られるものとなるので、図3にも示すように明確な明暗境界線を有する配光特性Dが得られるものとなる。
【0017】
尚、このときに、発光素子2aの一部と遮光膜3の一部が重なり合うようにしておくと、遮光膜3は発光素子2aの一部を覆うものとなり、即ち、光輝している発光素子2aの発光面積の一部が遮光膜3により覆われるので、これにより得られる明暗境界線は一層にコントラストが強くなり、より明確な明暗境界線が得られるものとなる。このとき発光面積にに係る遮光の割合は、発光面積の直径が3mm、反射面の焦点距離が10mmのとき直径の1/4程度、(面積的には15%)が望ましい。
【0018】
ここで、本発明のライトガイドブロック1の水平方向左右に対する配光に対して考察すれば、発光素子2aからの光は側面(図2参照)により同じ角度の反射を繰り返し、光放出面1cから外部に放射されるものであるので、前記発光素子2aからの放射角と変わることはなく前方に放射される。
【0019】
図5はデザイン上の要求などにより、上記入射面1aと反射面1bとを上下反転させるときの実施形態を示すものであり、このときには、前記遮光膜3を焦点Fの前方、即ち、前記ライトガイドブロック1の光放出面1c側に設けると共に、光源2を焦点Fの後方側に移動させれば良いものとなる。
【0020】
このようにすることで、ライトガイドブロック1の上下を逆転した場合にも同様な下向き光の配光特性が得られるものとなり、例えば、車両のデザインに応じて両者を使い分けるなどすれば、デザイン面では一層に効果的となる。また、本発明は、上記に述べたように側面1dが平行である必要はなく、図6に断面図で示すように光放出面1cに向かい開く形状としても良く、或いは、閉じる形状としても良いものである。
【0021】
このときには、側面1dに対して、図6に示すように、開く形状としたときには、光放出面1cから放射される光は発散角度が狭くなり、また、逆に側面1dに対して、閉じる形状としたときには、光放出面1cから放射される光は発散角度が拡がる傾向があるので、例えば、車両用灯具10の中心部と周縁部とで使い分けて、所望の配光特性を得るなども、配光特性の形成上で有効な手段となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る車両用灯具の要部であるライトガイドブロックの断面図である。
【図2】同じくライトガイドブロックの底面図である。
【図3】本発明に係る車両用灯具の配光特性の例を示す説明図である。
【図4】本発明に係る車両用灯具を車両に取付けた状態で示す説明図である。
【図5】ライトガイドブロックを上下反転したときの構成を示す断面図である。
【図6】ライトガイドブロックの別の実施形態を示す断面図である。
【図7】従来例における第一導光レンズの形状を示す説明図である。
【図8】同じ従来例における第二の導光レンズの形状を示す説明図である。
【図9】従来例の車両用灯具の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1…ライトガイドブロック
1a…入射面
1b…反射面
1c…光放出面
1d…側面
1e…取付ピン
2…光源
2a…発光素子
3…遮光膜
4…反射膜
Y…光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の上方に向けて配置された発光素子と、この発光素子からの光を車両前方に反射させるための反射面を有するライトガイドブロックとを有し、このライトガイドブロックが、前記反射面の光軸に沿う鉛直方向への断面形状は、前記光軸上に焦点を有する略放物線形状に設定されており、前記発光素子からの光を前記ライトガイドブロック内部に入射させる入射面は前記光軸を通る水平面で且つ前記焦点と略一致する位置として設定されていることを特徴とする車両用照明灯具。
【請求項2】
前記反射面の表面形状が、前記焦点を通る鉛直断面に現れる放物線を断面とする、略放物柱状として設定されていることを特徴とする請求項1記載の車両用照明灯具。
【請求項3】
前記入射面には、前記焦点から後方には遮光処理が施され、前記反射面の一部または全部には、この反射面に達した光を反射させるための反射処理が施されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用照明灯具。
【請求項4】
前記遮光処理が前記反射面の焦点位置から前方側に施されたことを特徴とする車両用灯具。
【請求項5】
前記発光素子は光を放射する部分が略平面の発光ダイオードであり、前記発光ダイオードは前記ライトガイドブロックの入射面に近接して設けられ、前記入射面の遮光処理が前記発光ダイオードの前記光出射部の一部を覆うことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−78086(P2008−78086A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259099(P2006−259099)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】