車両用能動型騒音制御装置
【課題】乗客着座時の座り心地や快適感を損なうことなく、車両内の騒音を高精度に低減することができる車両用能動型騒音制御装置を得ることを目的とする。
【解決手段】参照マイクロホン2により検出された騒音に対するフィルタ処理を実施して、騒音の打消し音を生成するANC処理装置3の打消し音生成フィルタ回路3aが、キャンセルスピーカ4の再生限界周波数以下の帯域を遮断するローカットフィルタ処理を実施する一方、スピーカボックス21が管状の連結部22を介して複数の中空セル23と結合されて、そのスピーカボックス21と複数の中空セル23が全体で一つの空室を形成している。
【解決手段】参照マイクロホン2により検出された騒音に対するフィルタ処理を実施して、騒音の打消し音を生成するANC処理装置3の打消し音生成フィルタ回路3aが、キャンセルスピーカ4の再生限界周波数以下の帯域を遮断するローカットフィルタ処理を実施する一方、スピーカボックス21が管状の連結部22を介して複数の中空セル23と結合されて、そのスピーカボックス21と複数の中空セル23が全体で一つの空室を形成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、鉄道車両や自動車内の騒音を低減する能動騒音制御(ANC:Active Noise Control)を実施する車両用能動型騒音制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、新幹線の車両は、遮音材や複層窓等を採用することによって、車輪の転動音や窓からの透過音などの車内騒音の低減を図っている。
現状では、特定の周波数の顕著な騒音は見受けられず、良質に遮音が為されているものと思われるが、更なる遮音化を実現する要望がある。
更なる遮音化を実現するには、車両の重量を重くする対策や、車体の壁を厚くする対策が考えられるが、車両の軽量化の要望に反する。
【0003】
そこで、更なる遮音化を実現する目的で、近年では、ANCシステムを組み込む方策が種々提案されている。
ANCシステムは、近年の著しいデジタル音響技術の進歩に伴って、多様な分野で実用化されているが、例えば、ダクトの騒音キャンセルを行うなどの閉空間での実用例がほとんどであり、開空間において、不特定騒音に対応する実用例が少なく、難しいテーマとなっている。
【0004】
鉄道車両室内の騒音成分のレベルは、実車の音響計測結果によると、低音域が優勢であり、中高域に向かって低下していくのが一般的であり、数百Hz以下の低音を消音/減音することは、車両騒音にとって効果的となる。
図6は騒音スペクトル計測例を示す説明図であり、図6は新幹線走行時に客室内の腰掛付近で計測された音の分析結果の例を示している。
【0005】
このような低音域音場での低騒音化の手段として、吸音材や制振材などを使用する中高音域に有効な受動的対策ではなく、小規模な付加手段となるANCシステムの採用が有効となる。
一方、音響理論によれば、低音域は、音の波長が長いため、幾つかの音源の位置を調整することや、電気信号の位相を調整させることなどにより、空間内で波面を揃えるなどの音場の制御が容易である。
これに対して、中高域は、音の波長が短いため、複雑な音圧分布になり、空間内で波面を揃え難い性質が存在し、制御可能な空間範囲が小領域に限定され易くなる。
【0006】
ここで、ANCシステムについて説明する。
図7は一般的なANCシステムを示す構成図である。
ANCシステムは、騒音源1から発生している騒音と逆位相の音を生成し、騒音を打ち消したいキャンセルポイント(例えば、エラーマイクロホン5の位置)において、逆位相の音を再生することで、騒音を打ち消すものである。
即ち、ANCシステムでは、参照マイクロホン2が騒音源1から発生している騒音を検出し、ANC処理装置3内の信号処理回路である打消し音生成フィルタ回路3aが参照マイクロホン2により検出された騒音に対するフィルタ処理を実施して、その騒音の打消し音を生成する。
そして、ANC処理装置3がキャンセルスピーカ4から打消し音を再生することで、騒音を打ち消すようにしている。
また、ANCシステムでは、騒音の低減効果を高めるために、エラーマイクロホン5(ANCシステムの学習処理用のマイクロホンであり、キャンセルスピーカ4からエラーマイクロホン5が存在するキャンセルポイントまでの伝達関数を求める目的で構成されている)が、キャンセルスピーカ4により再生された打消し音と騒音源1から発生している騒音の誤差を検出し、ANC処理装置3内の学習器3bがエラーマイクロホン5により検出された誤差が小さくなるように、打消し音生成フィルタ回路3aにおけるフィルタ構成を更新するようにしている。
【0007】
図7のようなANCシステムを適用するに当たって、客室全体にANCを適用することは、設備の大規模化につながり、現実的ではないと考えられる。
そこで、図7のようなANCシステムを車両内の腰掛に適用し、腰掛に着座している乗客の耳元の騒音を局部的に低減する車両用能動型騒音制御装置を想定する。
図7のようなANCシステムを車両内の腰掛に適用する場合、参照マイクロホン2、キャンセルスピーカ4及びエラーマイクロホン5は、図8に示すように、腰掛、あるいは、乗客の頭(人頭)又は両耳周辺の背ずり11に配置されて機能することになる。
腰掛又は背ずり11とANCシステムを最適に構成することは、ANC効果を高める重要な要素となる(以下の非特許文献1を参照)。
【0008】
最適なANCシステムを作り上げるためには、現場調査やANC等の技術分析・評価及び試作の積み重ねが必要となる。
例えば、車両内の騒音計測と、その分析結果データの蓄積、それらの評価に基づく新方式創出の検討、また、音響シミュレータを用いた解析による数値実験、試作モデルを構築しての実用性確認試験・評価などが重要な項目となる。
【0009】
ここで、新幹線車両内の低音域対策について説明する。
新幹線車両内の騒音は、上述したように、低音域の音響エネルギーが高音域に比べて、極端に大きい特徴がある。
ANCで低い周波数成分を有する騒音をキャンセルするには、大きな口径のキャンセルスピーカ4を用いて低音を出し易くすると有利である。ただし、キャンセルスピーカ4の口径を大きくすると、キャンセルスピーカ4を装着するスピーカボックスも概して大きくなる傾向にある。
【0010】
新幹線車両内では、騒音の1つである走行音が、床からの車両内放射によって生じるほか、壁や天井からの反射が加わる。また、振動が壁や天井に伝わって、壁や天井自体が騒音源になることがあり、複雑な騒音場になる(拡散音場に近くなる)。
従来の腰掛構造で、この複雑な騒音場を十分にキャンセルさせるには、高性能なANCが必要になるため、コストの増加につながる。
【0011】
図9は以下の特許文献1に開示されている車両用能動型騒音制御装置を示す構成図である。
図9の車両用能動型騒音制御装置では、ANC処理装置3を腰掛10に内蔵するとともに、キャンセルスピーカ4を収納するスピーカボックス12を腰掛10に内蔵し、キャンセルスピーカ4により再生される打消し音を背ずり11の開口部13から放射して乗客の耳元に導くようにしている。
図10は以下の特許文献2に開示されている車両用能動型騒音制御装置を示す構成図である。
図10の車両用能動型騒音制御装置では、腰掛10の下の空間にキャンセルスピーカ4を設置している。
【0012】
図9の車両用能動型騒音制御装置では、キャンセルスピーカ4により再生される打消し音が背ずり11の開口部13から放射されて乗客の耳元に導かれるが、スピーカボックス12を腰掛10に組み込む設計の難しさがあり複雑な構造になる。また、スピーカボックス12が音響管構造になっている。
このため、音響管内の音響的共振によって、再生音に悪影響が生じることがあり、騒音を十分にキャンセルすることができないことがある。
【0013】
図10の車両用能動型騒音制御装置では、腰掛10の下の空間に設置されているキャンセルスピーカ4から、乗客の耳までの距離が長いため、大きな打消し音を出力する必要がある。
この打消し音は、隣席の乗客にとっては新たな騒音になり、隣席では、この打消し音もキャンセルする必要が生じる。
このため、ANCシステムの構成の複雑化を招き、ANC効果の劣化や複雑な構成に伴うコストアップにつながる。
【0014】
図11は以下の特許文献3に開示されている車両用能動型騒音制御装置を示す構成図であり、図9及び図10の車両用能動型騒音制御装置の問題点の改善を図っている。
図11の車両用能動型騒音制御装置では、スピーカボックス12を背ずり11に組み込み、キャンセルスピーカ4がスピーカボックス12の上部に取り付けられて、人頭の近くで打消し音が再生されるようにしている。
また、図11の車両用能動型騒音制御装置では、中高音再生用のキャンセルスピーカ14が背ずり11の上部に設置されおり、キャンセルスピーカ4は低音用のキャンセルスピーカとして用いられる。
なお、図9及び図11のように、スピーカボックス12を腰掛10に内蔵する構成では、板やプラスチックなどの硬質な材料で構成することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平3−195296号公報
【特許文献2】特開平5−35281号公報
【特許文献3】特開平10−143166号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】橋本裕之、寺井健一、アクティブノイズコントロールのオーディオへの応用 −新幹線「Max」のシートオーディオシステム−、情報処理(1999-1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来の車両用能動型騒音制御装置は以上のように構成されているので、スピーカボックス12が、板やプラスチックなどの硬質な材料で構成される。このため、背ずり11の形状が変えられずに固定になり、また、キャンセルスピーカ4又は開口部13の位置が固定になる。この結果、ANC動作条件となるキャンセルスピーカ4の位置に対する乗客の人頭位置に制約を与えることになり、ANC効果の低下につながる課題があった。また、硬質のスピーカボックス12が背ずり11の中に存在するため、乗客着座時の座り心地や快適感を損なう要因になる課題もあった。
また、従来の車両用能動型騒音制御装置では、キャンセルスピーカ4に近い人頭が、直接、到来騒音に曝されるので、既に述べている車両内音場のように、低音域といえども拡散場のような複雑な音場になっている。このため、ANCシステムの構成の複雑化を招き、ANC効果の劣化や複雑な構成に伴うコストアップにつながる課題があった。
【0018】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、乗客着座時の座り心地や快適感を損なうことなく、車両内の騒音を高精度に低減することができる車両用能動型騒音制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明に係る車両用能動型騒音制御装置は、打消し音生成手段が参照マイクロホンにより検出された騒音の打消し音を生成する際、キャンセルスピーカの再生限界周波数以下の帯域を遮断するフィルタ処理を実施する一方、スピーカボックスが管状の連結部を介して複数の中空セルと結合されて、そのスピーカボックスと複数の中空セルが全体で一つの空室を形成しているようにしたものである。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、打消し音生成手段が参照マイクロホンにより検出された騒音の打消し音を生成する際、キャンセルスピーカの再生限界周波数以下の帯域を遮断するローカットフィルタ処理を実施する一方、スピーカボックスが管状の連結部を介して複数の中空セルと結合されて、そのスピーカボックスと複数の中空セルが全体で一つの空室を形成しているように構成したので、乗客着座時の座り心地や快適感を損なうことなく、車両内の騒音を高精度に低減することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態1による車両用能動型騒音制御装置の構成を示す要部断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1による車両用能動型騒音制御装置の構成を示す要部断面図である。
【図3】背ずり11を腰掛10の後ろ側に少し倒している状態の断面図である。
【図4】この発明の実施の形態2による車両用能動型騒音制御装置の構成を示す斜視図である。
【図5】シミュレーションの音場解析モデルと音場解析結果を示す説明図である。
【図6】騒音スペクトルの計測例を示す説明図である。
【図7】一般的なANCシステムを示す構成図である。
【図8】図7のANCシステムが適用されている車両用能動型騒音制御装置を示す構成図である。
【図9】特許文献1に開示されている車両用能動型騒音制御装置を示す構成図である。
【図10】特許文献2に開示されている車両用能動型騒音制御装置を示す構成図である。
【図11】特許文献3に開示されている車両用能動型騒音制御装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による車両用能動型騒音制御装置の構成を示す要部断面図である。
図1(a)は(b)のB−B線に沿って切断された断面図であり、(b)は(a)A−A線に沿って切断された断面図である。
図1の車両用能動型騒音制御装置では、人頭両耳における騒音を低減するための2チャネル構成のANCシステムを搭載している。即ち、2個のキャンセルスピーカ4を搭載している例を示している。
【0023】
ただし、図1の車両用能動型騒音制御装置では、図7の参照マイクロホン2、ANC処理装置3及びエラーマイクロホン5の描画が省略されているが、参照マイクロホン2、ANC処理装置3及びエラーマイクロホン5も搭載している。
ANC処理装置3の打消し音生成フィルタ回路3aは、詳細は後述するが、キャンセルスピーカ4の再生限界周波数以下の帯域を遮断するローカットフィルタ処理を実施する。
なお、ANC処理装置3の打消し音生成フィルタ回路3aが打消し音生成手段を構成し、ANC処理装置3の学習器3bがフィルタ構成更新手段を構成している。
【0024】
図1では、背ずり11の上部の人頭に近い位置には、2個のスピーカボックス21が内蔵されており、スピーカボックス21にはキャンセルスピーカ4が収納されている。
また、スピーカボックス21は管状の連結部22を介して、複数の中空セル23と結合されて(図1の例では、5個の中空セル23が縦に連結されている)、スピーカボックス21と複数の中空セル23が全体で一つの空室を形成している。
スピーカボックス21と中空セル23は背ずり11内に設置されるが、クッション材24に覆われている。
空室となる中空セル23の形状は略円筒状であり、中空セル23の両端の底面は半球殻で閉じられている。
【0025】
図1の車両用能動型騒音制御装置の特徴の一つは、中空セル23及び連結部22が、柔軟性がある材料で作られて、セル集合体になっていることである。
全体で一つの空室を形成する方法としては、例えば、予め中空セル23と連結部22を個別成形で作成しておき、その連結部22を介して、複数の中空セル23をスピーカボックス21と接合する方法が考えられる。
あるいは、中空セル23と連結部22を一体形成しておき、一体形成している中空セル23及び連結部22をスピーカボックス21と接合する方法が考えられる。
【0026】
図1では、中空セル23の形状が略円筒状であるものを示しているが、中空セル23の形状は種々考えられ、例えば、図2に示すように、1つの中空セル23が球形に近い形状であってもよい。また、断面が四角形・六角形などの多角形状であってもよいし、回転楕円体などの任意の形状であってもよい。
図2の場合も、図1の円筒状の中空セル23と同様に、略球体の各中空セル23は連結部22で連結される。
図2の例では、乗客着座時のクッション性を高めるため、略球体の中空セル23を左右二つに分割して、2つの中空セル23を連結部22で結合している。
中空セル23の分割は、構成方法や寸法に依存して、3連であってもよいし、4連であってもよい。
また、図1及び図2の例では、中空セル23を縦に5連の構成であるが、5連の構成に限るものではなく、例えば、6連以上の構成であってもよいし、5連未満の構成であってもよい。
【0027】
以上のように、背ずり11の内部に配置している中空セル23の形状を略円筒状又は略球体状にしているので、乗客が腰掛10に座ることで圧力が加えられると、中空セル23の連結部22が柔軟に変形する。また、複数の中空セル23及び連結部22とスピーカボックス21から形成されている全体で一つの空室の内容積は変化することがない。
このため、乗客が腰掛10に座っても、低音域の音響特性に影響を与えることがない。
また、中空セル23及び連結部22が柔軟部材で構成されているので、背ずり11の内部が柔軟な状態になっている。このため、着座乗客に対するクッション性が損なわれず、快適な座り心地を維持することができる。
【0028】
また、連結部22が柔軟性を有しているため、背ずり11の縦方向の変形を許すことになり、全体で一つの空室の内容積を変化させることなく、リクライニング可能な腰掛10を実現することができる。
図3は背ずり11を腰掛10の後ろ側に少し倒している状態の断面図である。
図3では、3分割されている背ずり11を、図1又は図2の状態から変形させて、一直線にしている状態を示している。
このように連結部22の変形がし易くなっているために、乗客の意図通りのリクライニングを実現することができる。
【0029】
車両内の低音域の音響エネルギーは、上述したように、高音域と比べて極端に大きい状態となっている。
ANCシステムによって低音域のエネルギー(音圧レベル)を低減するには、キャンセルスピーカ4から打消し音を再生させることになるが、より低い周波数帯域まで騒音を低減する場合、あるいは、確実に低音域の騒音を低減する場合には、キャンセルスピーカ4の口径を大きくすることや、スピーカボックス21の容積を大きくすることが望ましい。
【0030】
しかし、キャンセルスピーカ4やスピーカボックス21を背ずり11の内部に組み込む場合、大き過ぎると組み込めなくなるため、寸法/構造上の制約がかかることになる。
この対策として、キャンセルスピーカ4とスピーカボックス21は、制約の範囲内で出来る限り大きくして、機能的に足りない部分や制限すべきところは他の方策を併用することにする。
例えば、ANC処理装置3の打消し音生成フィルタ回路3aが、参照マイクロホン2により検出された騒音の低域成分をカットするローカットフィルタを実装する方策が考えられる。
【0031】
このように、ローカットフィルタを実装する方策では、低音域に騒音エネルギーが集中する状態に対して、音響エネルギーが大きい周波数帯域を優先的に打消す仕組みとなるため、キャンセルスピーカ4の再生限界以下の周波数帯域も打消すことになる。
このため、本来打消し可能な、キャンセルスピーカ4の再生限界以上の周波数帯域での打消し量の低下や、効果帯域の縮小、低域周波数帯域でのANC動作破綻等の問題が生じことがある。
【0032】
そこで、この実施の形態1では、低域成分の影響を抑えるために、ANC処理装置3の打消し音生成フィルタ回路3aが、帯域制限フィルタ(LCF)を実装することで、キャンセルスピーカ4の再生限界周波数以下のANC効果を大きくするようにしている。
LCFの手段として、打消し音生成フィルタ回路3aが、帯域制限フィルタを実装するものに限るものではなく、例えば、打消し音生成フィルタ回路3aが、キャンセルスピーカ4の再生限界周波数以下の帯域を遮断するように動作するアルゴリズムを実装するようにしてもよい。
また、参照マイクロホン2と打消し音生成フィルタ回路3aの間に、LCF回路を挿入するようにしてもよい。
【0033】
スピーカボックス21に収納されるキャンセルスピーカ4は、表面が平面形状の振動板で構成されているものとする。
表面が平面形状の振動板で構成することにより、一般的な円錐形状の振動板構造から生じる位相のずれ(振動板中心の頂角部から耳元までの距離と、振動板外周部から耳元までの距離とが異なることによる位相のずれ)が少なく、高音域までANC効果が得られる。
【0034】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、参照マイクロホン2により検出された騒音に対するフィルタ処理を実施して、騒音の打消し音を生成するANC処理装置3の打消し音生成フィルタ回路3aが、キャンセルスピーカ4の再生限界周波数以下の帯域を遮断するローカットフィルタ処理を実施する一方、スピーカボックス21が管状の連結部22を介して複数の中空セル23と結合されて、そのスピーカボックス21と複数の中空セル23が全体で一つの空室を形成しているように構成したので、乗客着座時の座り心地や快適感を損なうことなく、車両内の騒音を高精度に低減することができる効果を奏する。
【0035】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2による車両用能動型騒音制御装置の構成を示す斜視図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
図4では、背ずり31は、着座乗客の正面が開口し、側面及び背面が略円弧状に湾曲している。
この実施の形態2では、低域の騒音の低減を容易にするために、背ずり31の形状を工夫しており、乗客人頭周囲の音場の方向の一定化を図るようにしている(到来音を一定の方向に伝播させるようにしている)。
即ち、この実施の形態2では、音圧分布や位相分布を均一化するように、背ずり31の形状を、円筒側面の一部を使う略円弧状にしている。
【0036】
円弧状の背ずり31には、上記実施の形態1と同様に、キャンセルスピーカ4が取り付けられ、そのバックキャビティとなるスピーカボックス21が組み込まれていてもよい。
背ずり31の外面材は、柔軟性がある材料で構成されることによって、背ずり31自体の変形を可能にすることやクッション性を得るなど、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0037】
次に、人頭の周りを円弧状の円筒で囲う背ずり31の効果について説明する。
ここでは、音場を数値解析するシミュレーションを使用して、円弧状の背ずり31の効果を検証している。
図5はシミュレーションの音場解析モデルと音場解析結果を示す説明図である。
図5(a)では、音場解析モデルの外観斜視図を示しており、音場の効果を明確化するために、想定される実形状を簡略化しているモデルとしている。つまり、左の円弧状の背ずりモデル31aは、円筒側面の一部を切り取った薄肉円筒であり(底面無し)、乗客人頭は円筒内に存在すると想定している。ただし、解析では、乗客人頭はモデル化していない。
図5(b)では、矩形の背ずりモデル31bとしており、背ずり外面のみを考慮して内部に音が伝搬しない条件としている。乗客人頭は広い矩形面の前(例えば、背ずり31bの手前側)に位置することになる。
なお、図5(a)における符号32は、図5(b)に示す音圧分布を評価するために、解析結果を可視化する水平矩形の結果表示面である。
【0038】
シミュレーションの基本的な狙いは、車室内の拡散的音場(複雑な音圧分布を呈する音場)内に存在している背ずり31、あるいは、人頭周辺の音場を調べることである。
そのような音場をモデル化して計算する条件として、直方体の密閉空間である実験室の中に、音場を創出する音源として矩形ボックスに装着されたスピーカを反射板に設置し、音源から離れた位置に背ずりを配置している。
即ち、音源から発せられた音が、反射板や部屋の壁、床、天井に反射する状況から拡散的音場が仮想的に生成されるように模擬している。
シミュレーション条件は、単一周波数毎に音場を計算する定常状態の問題である。
【0039】
図5(b)では、500Hzの音場解析結果を示しており、図5(b)の左側が円弧状背ずりモデル31aの解析結果を示し、右側が矩形背ずりモデル31bの解析結果を示している。
また、図5(b)の上段は音圧レベルの相対値を示しており、図中、黒の濃度が高い位置が、音圧レベルが高く、音圧レベルが連続的に低下するコンター図となっている。
例えば、音圧レベルが最も高い位置33と、音圧レベルが最も低い位置34との音圧レベル差は約40dBである。
また、図5(b)の下段は、音圧の位相コンター図であり、例えば、位置35が+180度付近、位置36が+90度付近、位置37が0度付近、位置38が−90度付近、位置39が−180度付近の連続した位相である。
図の位相の表示は、+180度から−180度の範囲に限定しており、位置35と位置39の境界は位相が反転するが、実際には、その範囲外に位相分布は連続している。なお、図5(b)では、人頭想定位置を破線で表している。
【0040】
図5(b)より、右側の矩形背ずりモデル31bの場合、背ずり31及び人頭周辺の音場が、音圧及び位相共に複雑な分布となっていることがわかる。特に人頭の左右両耳の位置では、音圧差、位相差が見られる。
それに対して、左側の円弧状背ずりモデル31aの場合、背ずり31の外部では、複雑な音圧分布を呈しているが(図5(b)の上段)、内部の音圧は均一に近い分布となっている。
下段の位相分布においては、背ずり31の開口部における−180度の位相から、背ずり31の奥の面で位相が0度に変化する縞模様の分布になっているが、これは開口部から奥の一方向に音波が向かっている状態を示している。
これら音圧と位相の分布から、両耳の位置での音圧差、位相差がほとんど見られない結果となっていることがわかる。
【0041】
以上より、円弧状の背ずり31は、複雑な騒音音場を円筒面開口部から背ずりの奥に、ほぼ一定の方向に波面を揃えることができ、現実の場で想定される走行音の床からの車両内放射と、壁・窓や天井からの反射に加え、振動が壁・窓や天井に伝わり、それらが騒音源になるなどの複雑な騒音音場でも、容易にANC効果を得ることができる。
例示した円弧状の背ずりモデル31aの円筒中心線からの開口角は90度であるが、この開口角より小さい角度にすれば、より確実に均一な音場が形成でき、ANC効果も大きくなる。
【0042】
図示はしていないが、背ずり31の人頭耳元部を、概略耳を覆う形状に形成することでANC効果が低下する高音域においても、車両内の高音域騒音を吸音、遮音することができる。
【0043】
上記実施の形態1,2では、スピーカボックス21が密閉型であって、低音再生方式の例を説明したが、例えば、バスレフ型などの他の方式であってもよく、それによって人頭両耳周辺の低音域騒音を低減できる構成であればよい。
【0044】
この実施の形態2では、背ずり31の形状が略円筒形状であるものを示したが、球体の一部の球殻や、水平断面が四角形・六角形などの多角形状であってもよく、それらによる人頭(あるいは、人体)を囲う構造は、同様のANC効果を得ることができる。
また、例えば、略円筒形の背ずり31の円筒曲率(半径)を変えることや、円筒側面を周方向に可動にして開口幅を変えるなど、構造の一部又は全体を変形できるようにしてもよい。
このように、構造の一部又は全体を変形できるようにすることで、使用場面に合わせた構造も実現することができる。例えば、乗客着座又は離席時に、背ずり開口が広がるなどの効果がある。
さらに、上記実施の形態1のスピーカボックス21を組み込む構造であれば、上記のような背ずり構造の変形に柔軟に対応することができ、上記実施の形態1,2の連成により一層の効果を発揮する。
【0045】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 騒音源、2 参照マイクロホン、3 ANC処理装置、3a 打消し音生成フィルタ回路(打消し音生成手段)、3b 学習器(フィルタ構成更新手段)、4 キャンセルスピーカ、5 エラーマイクロホン、10 腰掛、11 背ずり、12 スピーカボックス、13 開口部、14 中高音再生用のキャンセルスピーカ、21 スピーカボックス、22 連結部、23 中空セル、24 クッション材、31 背ずり、31a 円弧状の背ずりモデル、31b 矩形の背ずりモデル、32 水平矩形の結果表示面、33〜39 位置。
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、鉄道車両や自動車内の騒音を低減する能動騒音制御(ANC:Active Noise Control)を実施する車両用能動型騒音制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、新幹線の車両は、遮音材や複層窓等を採用することによって、車輪の転動音や窓からの透過音などの車内騒音の低減を図っている。
現状では、特定の周波数の顕著な騒音は見受けられず、良質に遮音が為されているものと思われるが、更なる遮音化を実現する要望がある。
更なる遮音化を実現するには、車両の重量を重くする対策や、車体の壁を厚くする対策が考えられるが、車両の軽量化の要望に反する。
【0003】
そこで、更なる遮音化を実現する目的で、近年では、ANCシステムを組み込む方策が種々提案されている。
ANCシステムは、近年の著しいデジタル音響技術の進歩に伴って、多様な分野で実用化されているが、例えば、ダクトの騒音キャンセルを行うなどの閉空間での実用例がほとんどであり、開空間において、不特定騒音に対応する実用例が少なく、難しいテーマとなっている。
【0004】
鉄道車両室内の騒音成分のレベルは、実車の音響計測結果によると、低音域が優勢であり、中高域に向かって低下していくのが一般的であり、数百Hz以下の低音を消音/減音することは、車両騒音にとって効果的となる。
図6は騒音スペクトル計測例を示す説明図であり、図6は新幹線走行時に客室内の腰掛付近で計測された音の分析結果の例を示している。
【0005】
このような低音域音場での低騒音化の手段として、吸音材や制振材などを使用する中高音域に有効な受動的対策ではなく、小規模な付加手段となるANCシステムの採用が有効となる。
一方、音響理論によれば、低音域は、音の波長が長いため、幾つかの音源の位置を調整することや、電気信号の位相を調整させることなどにより、空間内で波面を揃えるなどの音場の制御が容易である。
これに対して、中高域は、音の波長が短いため、複雑な音圧分布になり、空間内で波面を揃え難い性質が存在し、制御可能な空間範囲が小領域に限定され易くなる。
【0006】
ここで、ANCシステムについて説明する。
図7は一般的なANCシステムを示す構成図である。
ANCシステムは、騒音源1から発生している騒音と逆位相の音を生成し、騒音を打ち消したいキャンセルポイント(例えば、エラーマイクロホン5の位置)において、逆位相の音を再生することで、騒音を打ち消すものである。
即ち、ANCシステムでは、参照マイクロホン2が騒音源1から発生している騒音を検出し、ANC処理装置3内の信号処理回路である打消し音生成フィルタ回路3aが参照マイクロホン2により検出された騒音に対するフィルタ処理を実施して、その騒音の打消し音を生成する。
そして、ANC処理装置3がキャンセルスピーカ4から打消し音を再生することで、騒音を打ち消すようにしている。
また、ANCシステムでは、騒音の低減効果を高めるために、エラーマイクロホン5(ANCシステムの学習処理用のマイクロホンであり、キャンセルスピーカ4からエラーマイクロホン5が存在するキャンセルポイントまでの伝達関数を求める目的で構成されている)が、キャンセルスピーカ4により再生された打消し音と騒音源1から発生している騒音の誤差を検出し、ANC処理装置3内の学習器3bがエラーマイクロホン5により検出された誤差が小さくなるように、打消し音生成フィルタ回路3aにおけるフィルタ構成を更新するようにしている。
【0007】
図7のようなANCシステムを適用するに当たって、客室全体にANCを適用することは、設備の大規模化につながり、現実的ではないと考えられる。
そこで、図7のようなANCシステムを車両内の腰掛に適用し、腰掛に着座している乗客の耳元の騒音を局部的に低減する車両用能動型騒音制御装置を想定する。
図7のようなANCシステムを車両内の腰掛に適用する場合、参照マイクロホン2、キャンセルスピーカ4及びエラーマイクロホン5は、図8に示すように、腰掛、あるいは、乗客の頭(人頭)又は両耳周辺の背ずり11に配置されて機能することになる。
腰掛又は背ずり11とANCシステムを最適に構成することは、ANC効果を高める重要な要素となる(以下の非特許文献1を参照)。
【0008】
最適なANCシステムを作り上げるためには、現場調査やANC等の技術分析・評価及び試作の積み重ねが必要となる。
例えば、車両内の騒音計測と、その分析結果データの蓄積、それらの評価に基づく新方式創出の検討、また、音響シミュレータを用いた解析による数値実験、試作モデルを構築しての実用性確認試験・評価などが重要な項目となる。
【0009】
ここで、新幹線車両内の低音域対策について説明する。
新幹線車両内の騒音は、上述したように、低音域の音響エネルギーが高音域に比べて、極端に大きい特徴がある。
ANCで低い周波数成分を有する騒音をキャンセルするには、大きな口径のキャンセルスピーカ4を用いて低音を出し易くすると有利である。ただし、キャンセルスピーカ4の口径を大きくすると、キャンセルスピーカ4を装着するスピーカボックスも概して大きくなる傾向にある。
【0010】
新幹線車両内では、騒音の1つである走行音が、床からの車両内放射によって生じるほか、壁や天井からの反射が加わる。また、振動が壁や天井に伝わって、壁や天井自体が騒音源になることがあり、複雑な騒音場になる(拡散音場に近くなる)。
従来の腰掛構造で、この複雑な騒音場を十分にキャンセルさせるには、高性能なANCが必要になるため、コストの増加につながる。
【0011】
図9は以下の特許文献1に開示されている車両用能動型騒音制御装置を示す構成図である。
図9の車両用能動型騒音制御装置では、ANC処理装置3を腰掛10に内蔵するとともに、キャンセルスピーカ4を収納するスピーカボックス12を腰掛10に内蔵し、キャンセルスピーカ4により再生される打消し音を背ずり11の開口部13から放射して乗客の耳元に導くようにしている。
図10は以下の特許文献2に開示されている車両用能動型騒音制御装置を示す構成図である。
図10の車両用能動型騒音制御装置では、腰掛10の下の空間にキャンセルスピーカ4を設置している。
【0012】
図9の車両用能動型騒音制御装置では、キャンセルスピーカ4により再生される打消し音が背ずり11の開口部13から放射されて乗客の耳元に導かれるが、スピーカボックス12を腰掛10に組み込む設計の難しさがあり複雑な構造になる。また、スピーカボックス12が音響管構造になっている。
このため、音響管内の音響的共振によって、再生音に悪影響が生じることがあり、騒音を十分にキャンセルすることができないことがある。
【0013】
図10の車両用能動型騒音制御装置では、腰掛10の下の空間に設置されているキャンセルスピーカ4から、乗客の耳までの距離が長いため、大きな打消し音を出力する必要がある。
この打消し音は、隣席の乗客にとっては新たな騒音になり、隣席では、この打消し音もキャンセルする必要が生じる。
このため、ANCシステムの構成の複雑化を招き、ANC効果の劣化や複雑な構成に伴うコストアップにつながる。
【0014】
図11は以下の特許文献3に開示されている車両用能動型騒音制御装置を示す構成図であり、図9及び図10の車両用能動型騒音制御装置の問題点の改善を図っている。
図11の車両用能動型騒音制御装置では、スピーカボックス12を背ずり11に組み込み、キャンセルスピーカ4がスピーカボックス12の上部に取り付けられて、人頭の近くで打消し音が再生されるようにしている。
また、図11の車両用能動型騒音制御装置では、中高音再生用のキャンセルスピーカ14が背ずり11の上部に設置されおり、キャンセルスピーカ4は低音用のキャンセルスピーカとして用いられる。
なお、図9及び図11のように、スピーカボックス12を腰掛10に内蔵する構成では、板やプラスチックなどの硬質な材料で構成することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平3−195296号公報
【特許文献2】特開平5−35281号公報
【特許文献3】特開平10−143166号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】橋本裕之、寺井健一、アクティブノイズコントロールのオーディオへの応用 −新幹線「Max」のシートオーディオシステム−、情報処理(1999-1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来の車両用能動型騒音制御装置は以上のように構成されているので、スピーカボックス12が、板やプラスチックなどの硬質な材料で構成される。このため、背ずり11の形状が変えられずに固定になり、また、キャンセルスピーカ4又は開口部13の位置が固定になる。この結果、ANC動作条件となるキャンセルスピーカ4の位置に対する乗客の人頭位置に制約を与えることになり、ANC効果の低下につながる課題があった。また、硬質のスピーカボックス12が背ずり11の中に存在するため、乗客着座時の座り心地や快適感を損なう要因になる課題もあった。
また、従来の車両用能動型騒音制御装置では、キャンセルスピーカ4に近い人頭が、直接、到来騒音に曝されるので、既に述べている車両内音場のように、低音域といえども拡散場のような複雑な音場になっている。このため、ANCシステムの構成の複雑化を招き、ANC効果の劣化や複雑な構成に伴うコストアップにつながる課題があった。
【0018】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、乗客着座時の座り心地や快適感を損なうことなく、車両内の騒音を高精度に低減することができる車両用能動型騒音制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明に係る車両用能動型騒音制御装置は、打消し音生成手段が参照マイクロホンにより検出された騒音の打消し音を生成する際、キャンセルスピーカの再生限界周波数以下の帯域を遮断するフィルタ処理を実施する一方、スピーカボックスが管状の連結部を介して複数の中空セルと結合されて、そのスピーカボックスと複数の中空セルが全体で一つの空室を形成しているようにしたものである。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、打消し音生成手段が参照マイクロホンにより検出された騒音の打消し音を生成する際、キャンセルスピーカの再生限界周波数以下の帯域を遮断するローカットフィルタ処理を実施する一方、スピーカボックスが管状の連結部を介して複数の中空セルと結合されて、そのスピーカボックスと複数の中空セルが全体で一つの空室を形成しているように構成したので、乗客着座時の座り心地や快適感を損なうことなく、車両内の騒音を高精度に低減することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態1による車両用能動型騒音制御装置の構成を示す要部断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1による車両用能動型騒音制御装置の構成を示す要部断面図である。
【図3】背ずり11を腰掛10の後ろ側に少し倒している状態の断面図である。
【図4】この発明の実施の形態2による車両用能動型騒音制御装置の構成を示す斜視図である。
【図5】シミュレーションの音場解析モデルと音場解析結果を示す説明図である。
【図6】騒音スペクトルの計測例を示す説明図である。
【図7】一般的なANCシステムを示す構成図である。
【図8】図7のANCシステムが適用されている車両用能動型騒音制御装置を示す構成図である。
【図9】特許文献1に開示されている車両用能動型騒音制御装置を示す構成図である。
【図10】特許文献2に開示されている車両用能動型騒音制御装置を示す構成図である。
【図11】特許文献3に開示されている車両用能動型騒音制御装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による車両用能動型騒音制御装置の構成を示す要部断面図である。
図1(a)は(b)のB−B線に沿って切断された断面図であり、(b)は(a)A−A線に沿って切断された断面図である。
図1の車両用能動型騒音制御装置では、人頭両耳における騒音を低減するための2チャネル構成のANCシステムを搭載している。即ち、2個のキャンセルスピーカ4を搭載している例を示している。
【0023】
ただし、図1の車両用能動型騒音制御装置では、図7の参照マイクロホン2、ANC処理装置3及びエラーマイクロホン5の描画が省略されているが、参照マイクロホン2、ANC処理装置3及びエラーマイクロホン5も搭載している。
ANC処理装置3の打消し音生成フィルタ回路3aは、詳細は後述するが、キャンセルスピーカ4の再生限界周波数以下の帯域を遮断するローカットフィルタ処理を実施する。
なお、ANC処理装置3の打消し音生成フィルタ回路3aが打消し音生成手段を構成し、ANC処理装置3の学習器3bがフィルタ構成更新手段を構成している。
【0024】
図1では、背ずり11の上部の人頭に近い位置には、2個のスピーカボックス21が内蔵されており、スピーカボックス21にはキャンセルスピーカ4が収納されている。
また、スピーカボックス21は管状の連結部22を介して、複数の中空セル23と結合されて(図1の例では、5個の中空セル23が縦に連結されている)、スピーカボックス21と複数の中空セル23が全体で一つの空室を形成している。
スピーカボックス21と中空セル23は背ずり11内に設置されるが、クッション材24に覆われている。
空室となる中空セル23の形状は略円筒状であり、中空セル23の両端の底面は半球殻で閉じられている。
【0025】
図1の車両用能動型騒音制御装置の特徴の一つは、中空セル23及び連結部22が、柔軟性がある材料で作られて、セル集合体になっていることである。
全体で一つの空室を形成する方法としては、例えば、予め中空セル23と連結部22を個別成形で作成しておき、その連結部22を介して、複数の中空セル23をスピーカボックス21と接合する方法が考えられる。
あるいは、中空セル23と連結部22を一体形成しておき、一体形成している中空セル23及び連結部22をスピーカボックス21と接合する方法が考えられる。
【0026】
図1では、中空セル23の形状が略円筒状であるものを示しているが、中空セル23の形状は種々考えられ、例えば、図2に示すように、1つの中空セル23が球形に近い形状であってもよい。また、断面が四角形・六角形などの多角形状であってもよいし、回転楕円体などの任意の形状であってもよい。
図2の場合も、図1の円筒状の中空セル23と同様に、略球体の各中空セル23は連結部22で連結される。
図2の例では、乗客着座時のクッション性を高めるため、略球体の中空セル23を左右二つに分割して、2つの中空セル23を連結部22で結合している。
中空セル23の分割は、構成方法や寸法に依存して、3連であってもよいし、4連であってもよい。
また、図1及び図2の例では、中空セル23を縦に5連の構成であるが、5連の構成に限るものではなく、例えば、6連以上の構成であってもよいし、5連未満の構成であってもよい。
【0027】
以上のように、背ずり11の内部に配置している中空セル23の形状を略円筒状又は略球体状にしているので、乗客が腰掛10に座ることで圧力が加えられると、中空セル23の連結部22が柔軟に変形する。また、複数の中空セル23及び連結部22とスピーカボックス21から形成されている全体で一つの空室の内容積は変化することがない。
このため、乗客が腰掛10に座っても、低音域の音響特性に影響を与えることがない。
また、中空セル23及び連結部22が柔軟部材で構成されているので、背ずり11の内部が柔軟な状態になっている。このため、着座乗客に対するクッション性が損なわれず、快適な座り心地を維持することができる。
【0028】
また、連結部22が柔軟性を有しているため、背ずり11の縦方向の変形を許すことになり、全体で一つの空室の内容積を変化させることなく、リクライニング可能な腰掛10を実現することができる。
図3は背ずり11を腰掛10の後ろ側に少し倒している状態の断面図である。
図3では、3分割されている背ずり11を、図1又は図2の状態から変形させて、一直線にしている状態を示している。
このように連結部22の変形がし易くなっているために、乗客の意図通りのリクライニングを実現することができる。
【0029】
車両内の低音域の音響エネルギーは、上述したように、高音域と比べて極端に大きい状態となっている。
ANCシステムによって低音域のエネルギー(音圧レベル)を低減するには、キャンセルスピーカ4から打消し音を再生させることになるが、より低い周波数帯域まで騒音を低減する場合、あるいは、確実に低音域の騒音を低減する場合には、キャンセルスピーカ4の口径を大きくすることや、スピーカボックス21の容積を大きくすることが望ましい。
【0030】
しかし、キャンセルスピーカ4やスピーカボックス21を背ずり11の内部に組み込む場合、大き過ぎると組み込めなくなるため、寸法/構造上の制約がかかることになる。
この対策として、キャンセルスピーカ4とスピーカボックス21は、制約の範囲内で出来る限り大きくして、機能的に足りない部分や制限すべきところは他の方策を併用することにする。
例えば、ANC処理装置3の打消し音生成フィルタ回路3aが、参照マイクロホン2により検出された騒音の低域成分をカットするローカットフィルタを実装する方策が考えられる。
【0031】
このように、ローカットフィルタを実装する方策では、低音域に騒音エネルギーが集中する状態に対して、音響エネルギーが大きい周波数帯域を優先的に打消す仕組みとなるため、キャンセルスピーカ4の再生限界以下の周波数帯域も打消すことになる。
このため、本来打消し可能な、キャンセルスピーカ4の再生限界以上の周波数帯域での打消し量の低下や、効果帯域の縮小、低域周波数帯域でのANC動作破綻等の問題が生じことがある。
【0032】
そこで、この実施の形態1では、低域成分の影響を抑えるために、ANC処理装置3の打消し音生成フィルタ回路3aが、帯域制限フィルタ(LCF)を実装することで、キャンセルスピーカ4の再生限界周波数以下のANC効果を大きくするようにしている。
LCFの手段として、打消し音生成フィルタ回路3aが、帯域制限フィルタを実装するものに限るものではなく、例えば、打消し音生成フィルタ回路3aが、キャンセルスピーカ4の再生限界周波数以下の帯域を遮断するように動作するアルゴリズムを実装するようにしてもよい。
また、参照マイクロホン2と打消し音生成フィルタ回路3aの間に、LCF回路を挿入するようにしてもよい。
【0033】
スピーカボックス21に収納されるキャンセルスピーカ4は、表面が平面形状の振動板で構成されているものとする。
表面が平面形状の振動板で構成することにより、一般的な円錐形状の振動板構造から生じる位相のずれ(振動板中心の頂角部から耳元までの距離と、振動板外周部から耳元までの距離とが異なることによる位相のずれ)が少なく、高音域までANC効果が得られる。
【0034】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、参照マイクロホン2により検出された騒音に対するフィルタ処理を実施して、騒音の打消し音を生成するANC処理装置3の打消し音生成フィルタ回路3aが、キャンセルスピーカ4の再生限界周波数以下の帯域を遮断するローカットフィルタ処理を実施する一方、スピーカボックス21が管状の連結部22を介して複数の中空セル23と結合されて、そのスピーカボックス21と複数の中空セル23が全体で一つの空室を形成しているように構成したので、乗客着座時の座り心地や快適感を損なうことなく、車両内の騒音を高精度に低減することができる効果を奏する。
【0035】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2による車両用能動型騒音制御装置の構成を示す斜視図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
図4では、背ずり31は、着座乗客の正面が開口し、側面及び背面が略円弧状に湾曲している。
この実施の形態2では、低域の騒音の低減を容易にするために、背ずり31の形状を工夫しており、乗客人頭周囲の音場の方向の一定化を図るようにしている(到来音を一定の方向に伝播させるようにしている)。
即ち、この実施の形態2では、音圧分布や位相分布を均一化するように、背ずり31の形状を、円筒側面の一部を使う略円弧状にしている。
【0036】
円弧状の背ずり31には、上記実施の形態1と同様に、キャンセルスピーカ4が取り付けられ、そのバックキャビティとなるスピーカボックス21が組み込まれていてもよい。
背ずり31の外面材は、柔軟性がある材料で構成されることによって、背ずり31自体の変形を可能にすることやクッション性を得るなど、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0037】
次に、人頭の周りを円弧状の円筒で囲う背ずり31の効果について説明する。
ここでは、音場を数値解析するシミュレーションを使用して、円弧状の背ずり31の効果を検証している。
図5はシミュレーションの音場解析モデルと音場解析結果を示す説明図である。
図5(a)では、音場解析モデルの外観斜視図を示しており、音場の効果を明確化するために、想定される実形状を簡略化しているモデルとしている。つまり、左の円弧状の背ずりモデル31aは、円筒側面の一部を切り取った薄肉円筒であり(底面無し)、乗客人頭は円筒内に存在すると想定している。ただし、解析では、乗客人頭はモデル化していない。
図5(b)では、矩形の背ずりモデル31bとしており、背ずり外面のみを考慮して内部に音が伝搬しない条件としている。乗客人頭は広い矩形面の前(例えば、背ずり31bの手前側)に位置することになる。
なお、図5(a)における符号32は、図5(b)に示す音圧分布を評価するために、解析結果を可視化する水平矩形の結果表示面である。
【0038】
シミュレーションの基本的な狙いは、車室内の拡散的音場(複雑な音圧分布を呈する音場)内に存在している背ずり31、あるいは、人頭周辺の音場を調べることである。
そのような音場をモデル化して計算する条件として、直方体の密閉空間である実験室の中に、音場を創出する音源として矩形ボックスに装着されたスピーカを反射板に設置し、音源から離れた位置に背ずりを配置している。
即ち、音源から発せられた音が、反射板や部屋の壁、床、天井に反射する状況から拡散的音場が仮想的に生成されるように模擬している。
シミュレーション条件は、単一周波数毎に音場を計算する定常状態の問題である。
【0039】
図5(b)では、500Hzの音場解析結果を示しており、図5(b)の左側が円弧状背ずりモデル31aの解析結果を示し、右側が矩形背ずりモデル31bの解析結果を示している。
また、図5(b)の上段は音圧レベルの相対値を示しており、図中、黒の濃度が高い位置が、音圧レベルが高く、音圧レベルが連続的に低下するコンター図となっている。
例えば、音圧レベルが最も高い位置33と、音圧レベルが最も低い位置34との音圧レベル差は約40dBである。
また、図5(b)の下段は、音圧の位相コンター図であり、例えば、位置35が+180度付近、位置36が+90度付近、位置37が0度付近、位置38が−90度付近、位置39が−180度付近の連続した位相である。
図の位相の表示は、+180度から−180度の範囲に限定しており、位置35と位置39の境界は位相が反転するが、実際には、その範囲外に位相分布は連続している。なお、図5(b)では、人頭想定位置を破線で表している。
【0040】
図5(b)より、右側の矩形背ずりモデル31bの場合、背ずり31及び人頭周辺の音場が、音圧及び位相共に複雑な分布となっていることがわかる。特に人頭の左右両耳の位置では、音圧差、位相差が見られる。
それに対して、左側の円弧状背ずりモデル31aの場合、背ずり31の外部では、複雑な音圧分布を呈しているが(図5(b)の上段)、内部の音圧は均一に近い分布となっている。
下段の位相分布においては、背ずり31の開口部における−180度の位相から、背ずり31の奥の面で位相が0度に変化する縞模様の分布になっているが、これは開口部から奥の一方向に音波が向かっている状態を示している。
これら音圧と位相の分布から、両耳の位置での音圧差、位相差がほとんど見られない結果となっていることがわかる。
【0041】
以上より、円弧状の背ずり31は、複雑な騒音音場を円筒面開口部から背ずりの奥に、ほぼ一定の方向に波面を揃えることができ、現実の場で想定される走行音の床からの車両内放射と、壁・窓や天井からの反射に加え、振動が壁・窓や天井に伝わり、それらが騒音源になるなどの複雑な騒音音場でも、容易にANC効果を得ることができる。
例示した円弧状の背ずりモデル31aの円筒中心線からの開口角は90度であるが、この開口角より小さい角度にすれば、より確実に均一な音場が形成でき、ANC効果も大きくなる。
【0042】
図示はしていないが、背ずり31の人頭耳元部を、概略耳を覆う形状に形成することでANC効果が低下する高音域においても、車両内の高音域騒音を吸音、遮音することができる。
【0043】
上記実施の形態1,2では、スピーカボックス21が密閉型であって、低音再生方式の例を説明したが、例えば、バスレフ型などの他の方式であってもよく、それによって人頭両耳周辺の低音域騒音を低減できる構成であればよい。
【0044】
この実施の形態2では、背ずり31の形状が略円筒形状であるものを示したが、球体の一部の球殻や、水平断面が四角形・六角形などの多角形状であってもよく、それらによる人頭(あるいは、人体)を囲う構造は、同様のANC効果を得ることができる。
また、例えば、略円筒形の背ずり31の円筒曲率(半径)を変えることや、円筒側面を周方向に可動にして開口幅を変えるなど、構造の一部又は全体を変形できるようにしてもよい。
このように、構造の一部又は全体を変形できるようにすることで、使用場面に合わせた構造も実現することができる。例えば、乗客着座又は離席時に、背ずり開口が広がるなどの効果がある。
さらに、上記実施の形態1のスピーカボックス21を組み込む構造であれば、上記のような背ずり構造の変形に柔軟に対応することができ、上記実施の形態1,2の連成により一層の効果を発揮する。
【0045】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 騒音源、2 参照マイクロホン、3 ANC処理装置、3a 打消し音生成フィルタ回路(打消し音生成手段)、3b 学習器(フィルタ構成更新手段)、4 キャンセルスピーカ、5 エラーマイクロホン、10 腰掛、11 背ずり、12 スピーカボックス、13 開口部、14 中高音再生用のキャンセルスピーカ、21 スピーカボックス、22 連結部、23 中空セル、24 クッション材、31 背ずり、31a 円弧状の背ずりモデル、31b 矩形の背ずりモデル、32 水平矩形の結果表示面、33〜39 位置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
騒音源から発生している騒音を検出する参照マイクロホンと、上記参照マイクロホンにより検出された騒音に対するフィルタ処理を実施して、上記騒音の打消し音を生成する打消し音生成手段と、車両内の腰掛の背ずりの内部に設置されているスピーカボックスに収納され、上記打消し音生成手段により生成された打消し音を再生するキャンセルスピーカと、上記キャンセルスピーカにより再生された打消し音と上記騒音源から発生している騒音の誤差を検出するエラーマイクロホンと、上記エラーマイクロホンにより検出された誤差が小さくなるように、上記打消し音生成手段におけるフィルタ構成を更新するフィルタ構成更新手段とを備え、
上記打消し音生成手段が上記参照マイクロホンにより検出された騒音の打消し音を生成する際、上記キャンセルスピーカの再生限界周波数以下の帯域を遮断するフィルタ処理を実施する一方、上記スピーカボックスが管状の連結部を介して複数の中空セルと結合されて、上記スピーカボックスと複数の中空セルが全体で一つの空室を形成していることを特徴とする車両用能動型騒音制御装置。
【請求項2】
中空セル及び連結部が柔軟部材で構成されており、背ずりの形状が変わる場合又は着座者により圧力が加えられる場合、上記中空セル及び上記連結部が変形することを特徴とする請求項1記載の車両用能動型騒音制御装置。
【請求項3】
中空セルの形状は、円筒状又は球体状、あるいは、断面が多角形状であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用能動型騒音制御装置。
【請求項4】
腰掛の背ずりは、着座乗客の正面が開口し、側面及び背面が略円弧状に湾曲していることを特徴とする請求項1記載の車両用能動型騒音制御装置。
【請求項5】
腰掛の背ずりの開口部分における円筒中心線からの開口角が90度以下であることを特徴とする請求項4記載の車両用能動型騒音制御装置。
【請求項6】
腰掛の背ずりの形状は、球体の一部の球殻形状、あるいは、水平断面が多角形状であることを特徴とする請求項4記載の車両用能動型騒音制御装置。
【請求項7】
腰掛の背ずりの一部又は全体が変形自在に形成されていることを特徴とする請求項4から請求項6のうちのいずれか1項記載の車両用能動型騒音制御装置。
【請求項8】
キャンセルスピーカは、平面形状の振動板で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項7のうちのいずれか1項記載の車両用能動型騒音制御装置。
【請求項9】
着座乗客の耳に近い位置にある背ずりの人頭耳元部は、着座乗客の耳を覆う形状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項8のうちのいずれか1項記載の車両用能動型騒音制御装置。
【請求項1】
騒音源から発生している騒音を検出する参照マイクロホンと、上記参照マイクロホンにより検出された騒音に対するフィルタ処理を実施して、上記騒音の打消し音を生成する打消し音生成手段と、車両内の腰掛の背ずりの内部に設置されているスピーカボックスに収納され、上記打消し音生成手段により生成された打消し音を再生するキャンセルスピーカと、上記キャンセルスピーカにより再生された打消し音と上記騒音源から発生している騒音の誤差を検出するエラーマイクロホンと、上記エラーマイクロホンにより検出された誤差が小さくなるように、上記打消し音生成手段におけるフィルタ構成を更新するフィルタ構成更新手段とを備え、
上記打消し音生成手段が上記参照マイクロホンにより検出された騒音の打消し音を生成する際、上記キャンセルスピーカの再生限界周波数以下の帯域を遮断するフィルタ処理を実施する一方、上記スピーカボックスが管状の連結部を介して複数の中空セルと結合されて、上記スピーカボックスと複数の中空セルが全体で一つの空室を形成していることを特徴とする車両用能動型騒音制御装置。
【請求項2】
中空セル及び連結部が柔軟部材で構成されており、背ずりの形状が変わる場合又は着座者により圧力が加えられる場合、上記中空セル及び上記連結部が変形することを特徴とする請求項1記載の車両用能動型騒音制御装置。
【請求項3】
中空セルの形状は、円筒状又は球体状、あるいは、断面が多角形状であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用能動型騒音制御装置。
【請求項4】
腰掛の背ずりは、着座乗客の正面が開口し、側面及び背面が略円弧状に湾曲していることを特徴とする請求項1記載の車両用能動型騒音制御装置。
【請求項5】
腰掛の背ずりの開口部分における円筒中心線からの開口角が90度以下であることを特徴とする請求項4記載の車両用能動型騒音制御装置。
【請求項6】
腰掛の背ずりの形状は、球体の一部の球殻形状、あるいは、水平断面が多角形状であることを特徴とする請求項4記載の車両用能動型騒音制御装置。
【請求項7】
腰掛の背ずりの一部又は全体が変形自在に形成されていることを特徴とする請求項4から請求項6のうちのいずれか1項記載の車両用能動型騒音制御装置。
【請求項8】
キャンセルスピーカは、平面形状の振動板で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項7のうちのいずれか1項記載の車両用能動型騒音制御装置。
【請求項9】
着座乗客の耳に近い位置にある背ずりの人頭耳元部は、着座乗客の耳を覆う形状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項8のうちのいずれか1項記載の車両用能動型騒音制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−103329(P2012−103329A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249685(P2010−249685)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【出願人】(591036457)三菱電機エンジニアリング株式会社 (419)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【出願人】(591036457)三菱電機エンジニアリング株式会社 (419)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]