説明

車両用表示装置

【課題】 視認性の良くない走行環境において前方に存在する障害物を、ドライバが容易に認識させる。
【解決手段】 表示制御装置は、ライトスイッチがオン状態のときには前方視界が良くないと判断できるので、前方障害物センサによる障害物の検出結果と、予め設定された赤外線カメラと当該前方障害物センサとの車両上の配置関係に関する情報とに基づいて、その障害物に相当する部分画像を、当該赤外線カメラによって撮影された赤外画像の中から抽出し、抽出した部分画像を、地図画像情報に基づいて生成した現在位置前方の立体的な地図画像の対応位置に重ね合わせた状態で、表示器に表示する(S1-S2)。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両周囲に存在する障害物等の状態を、その車両の乗員に表示によって報知する車両用表示装置に関し、例えば、代表的な車両である自動車に搭載して好適な表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、車両周囲の状態を赤外線撮像装置を用いて撮像し、その撮像した画像を運転席の前方に表示する装置が、例えば特開昭60−231193号、特願平6−247184号、特開平9−39658号、或いは特開平10−230805号等に提案されている。これらの装置によれば、ヘッドライトを点灯させたとしても、人間の視覚特性によりドライバが認識することが困難な車両周囲の状況(例えば、夜間、濃霧等)においても、実際には存在する障害物等の状態をドライバは容易に把握することができ、運転操作を効果的に支援することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の装置は、赤外線を利用して物体を熱源として撮影するため、表示器に表示された物体の全体形状が不明確であり、ドライバにとって認識が容易であるとは言えない。
【0004】また、特開平10−185597号には、ナビゲーション装置によって表示器に表示される地図画面に、障害物センサによって検出した障害物を表わす絵(シンボル)を重ね合わせて表示する技術が提案されていが、この場合、地図画面上に併せて表示される絵(部分画像)は検出された障害物そのものではない。このため、人間の視覚特性によっては認識することが困難な車両周囲の状況を、ドライバの視覚を補助し、障害物の存在を容易に認識させるという装置の目的を十分に果たすとは言えない。
【0005】そこで本発明は、視認性の良くない走行環境において前方に存在する障害物をドライバが容易に認識可能な車両用表示装置の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明に係る車両用表示装置は、以下の構成を特徴とする。
【0007】即ち、車両に設けられ、その車両前方を赤外線を利用して撮像する撮像装置と、地図画像情報に基づいて生成した立体的な地図画像と、前記撮像装置によって撮像された赤外画像とを、表示画面上で重ね合わせた状態で、前記車両に設けられた表示器に表示する表示制御手段とを備えることを特徴とする。
【0008】また、上記の同目的を達成する車両用表示装置であって、車両に設けられ、その車両前方を赤外線を利用して撮像する撮像装置と、前方に存在する障害物との相対的な距離及び位置を検出する障害物検出手段と、前記障害物検出手段による障害物の検出結果と、予め設定された前記撮像装置と前記障害物検出手段との前記車両上の配置関係に関する情報とに基づいて、その障害物に相当する部分画像を、前記撮像装置によって撮影された赤外画像の中から抽出し、抽出した部分画像を、地図画像情報に基づいて生成した現在位置前方の立体的な地図画像の対応位置に重ね合わせた状態で、前記車両に設けられた表示器に表示する表示制御手段とを備えることを特徴とする。
【0009】尚、上記の装置構成において、前記撮像装置と前記障害物検出手段との前記車両上の配置関係に関する情報は、前記車両の前後方向の略中心線上に配置された前記障害物検出手段と、その中心線上から所定距離だけオフセットした位置に配置された前記撮像装置との位置関係を表わす。
【0010】好適な実施形態において、前記表示器は、所望の目的地への経路誘導のための表示を行う第1の表示器と、地図画像情報に基づいて生成した現在位置前方の立体的な地図画像を表示する第2の表示器とからなり、前記表示制御手段は、前記赤外画像と前記地図画像とが重ね合わされた画像を、前記第1の表示器に表示すると良く、前記経路誘導が行われていないときは、前記第1の表示器に前記赤外画像だけを表示すると良い。
【0011】また、好適な実施形態において、前記表示制御手段は、前記赤外画像に障害物が含まれないときには重ね合わせ表示を行わないと良い。
【0012】好ましくは、前記撮像装置による赤外画像の表示をオン・オフ可能な第1マニュアルスイッチと、前記地図画像の表示をオン・オフ可能な第2マニュアルスイッチとを更に備え、前記表示制御手段は、前記第1マニュアルスイッチがオン状態のときに、前記第2マニュアルスイッチの操作状態に関らずに、前記赤外画像と前記地図画像とが重ね合わされた画像を表示すると良い。
【0013】また、上記の同目的を達成する車両用表示装置であって、車両に設けられ、その車両前方を赤外線を利用して撮像する撮像装置と、前方に存在する障害物との相対的な距離及び位置を検出する障害物検出手段と、前記車両の現在位置を検出すると共に、所望の目的地への経路誘導を、進行すべき方向を表わすシンボルによって報知するナビゲーション手段と、前記撮像装置によって撮影された赤外画像を、前記車両に設けられた表示器に表示すると共に、前記ナビゲーション手段よりシンボル表示の指示がなされたときには、予め設定された前記撮像装置と前記ナビゲーション手段によるシンボル表示位置との位置関係に関する情報とに基づいて算出したところの、表示中の赤外画像の対応位置に、指示に対応するシンボル画像を重ね合わせた状態で表示する表示制御手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
【発明の効果】上記の本発明によれば、視認性の良くない走行環境において前方に存在する障害物をドライバが容易に認識可能な車両用表示装置の提供が実現する。
【0015】即ち、請求項1の発明によれば、物体の輪郭の認識が容易でない赤外画像と、地図画像とが重ね合わされた状態で同時に表示されるので、ドライバにとって視認性の悪い環境においても、前方に存在する障害物の認知性を向上させることができ、ドライバの運転操作を効率的に支援することができる。
【0016】また、請求項2の発明によれば、立体的な地図画像に対して障害物の部分画像だけが重ね合わされるので、ドライバにとって視認性の悪い環境においても、前方に存在する障害物の種類や大きさ及び存在位置(走行路との関係)の認知性を向上させることができ、ドライバの運転操作を効率的に支援することができる。
【0017】また、請求項3の発明によれば、赤外画像上に進路ガイダンス用のシンボル画像が重ね合わされて表示されるので、視認性の良くない走行環境において前方に存在する障害物のドライバによる容易な認識と、経路誘導とを両立することができる。
【0018】また、請求項4の発明によれば、2つの表示器を使い分けることにより、ドライバの視覚に対する負担を軽減することができる。
【0019】また、請求項5、請求項6の発明によれば、利便性が向上する。
【0020】また、請求項7の発明によれば、撮像装置と障害物検出手段との取り付け位置のずれ量が調整され、自車両の走行路上に障害物を表わす部分画像が表示されるので、利便性が向上する。
【0021】また、請求項8の発明によれば、赤外画像用の第1マニュアルスイッチがオンに操作されるのに応じて重ね合わせ画像が自動的に表示されるので、安全運転に寄与することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る車両用表示装置を、代表的な車両である自動車に搭載された表示装置の実施形態として、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】[第1の実施形態]図1は、本発明の第1の実施形態における表示装置のシステム構成を示すブロック構成図である。
【0024】同図において、2は、ヘッドランプ、スモールランプ、フォグランプのオン・オフ操作が可能なライトスイッチである。尚、本実施形態では、赤外線カメラ3によって撮影された画像を前方の視認性が良くない状況下において表示する表示オン・オフの条件を、一例として、ドライバによるライトスイッチ2の操作状態によって判別するが、この方法に限られるものではなく、ワイパーの動作設定が可能なワイパースイッチの操作状態(例えば、ワイパーの動作開始に応じて表示オンにすれば良い)、所定の時間帯(例えば、時間情報やカレンダ情報を参照することにより、夕方や夜間に表示オン、或いは、夏季には19時から5時、冬季には17時から7時まで表示オンにすれば良い)、或いは、外部より通信によって入手した天候状況等(例えば、雨天や濃霧の時に表示オン)を利用して判別しても良い。
【0025】3は、自車両の前方を赤外線を利用して撮像する赤外線カメラであり、この赤外線カメラ3は、車両先頭部分における設置スペースの関係から、車両前後方向に延びる中央軸上から右方向にB(m)オフセットされた位置に搭載されている。ここで、オフセット量Bは、表示制御装置1のメモリに予め記憶しておく。
【0026】4は、レーザレーダ、或はミリ波レーダ等を利用することにより、前方に存在する障害物との相対距離を検出する前方障害物センサであり、この前方障害物センサ5は、車両前後方向に延びる中央軸上に搭載されている。
【0027】5は、外部より受信したGPS(グローバル・ポジショニング・システム)信号に基づいて自車両の現在位置を検出するGPSセンサである。6は、ナビゲーション機能をオン・オフ可能なナビゲーションメインスイッチである。
【0028】7は、表示装置9Aまたは9Bに表示される地図画像のスクロールを指示可能な地図スクロールスイッチである。8は、経路誘導を希望する所望の目的地を設定可能な目的地設定スイッチである。
【0029】9A及び9Bは、地図データベース10に予め格納されている地図情報に基づく地図画像及び/または赤外線カメラ3により撮像された画像(以下、赤外画像:図6(a)の表示例参照)を表示する液晶表示器またはヘッドアップディスプレイ等の表示装置である。
【0030】ここで、表示装置9A(第1表示器)は、自車両の運転席前方であってドライバが前方を凝視したときに大きな視線移動を行わずに容易に表示画像を見ることができる位置であって、ドライバにとって視認性の良好な高い位置(ダッシュボードの中央位置近傍であってもよい)に配設されている。また、表示装置9B(第2表示器)は、表示装置9Aの配設位置と比較してドライバが前方を凝視したときの視線範囲の外延部寄りとなるセンターコンソールに配設されている。
【0031】そして、1は、地図データベース10に予め格納されている地図情報に基づく地図画像の表示制御を行うと共に、GPSセンサ5によって検出された現在位置情報や、その現在位置情報に対応する地図情報等を利用して、乗員(ドライバ)が設定した所望の目的地への経路誘導を行う一般的なナビゲーション装置の制御機能と、赤外画像を利用した表示制御(詳細は後述する)とを行う表示制御装置である。この表示制御装置1によるナビゲーション制御及び表示制御は、予めメモリに格納されたソフトウエアを、不図示のCPUが実行することによって実現される。
【0032】尚、本実施形態において、表示制御装置1による地図画像の表示態様は、図6(b)に例示するように、ドライバが運転席から見る前方の視界と同様な立体視が可能なタイプであり、経路誘導に際しては、表示画面に自車両が進行すべき矢印のシンボルが表示されるタイプを前提とする。尚、地図情報に基づいて立体的な地図画像を表示する方法は、一般的なものを採用するものとし、本実施形態における説明は省略する。
【0033】次に、本実施形態において表示制御装置1が行う具体的な制御処理について説明する。
【0034】表示制御装置1は、ナビゲーション機能による立体的な地図画像を表示するに際して、自車両の走行路の前方位置に、前方障害物の赤外画像を重ね合わせて表示することにより、ドライバにとって視認性の悪い環境においても、前方に存在する障害物の種類や大きさ及び存在位置(走行路との関係)の認知性を向上させる。
【0035】次に、地図画像と赤外画像とを重ね合わせて表示する上で行わなければならない赤外線カメラ3と地図画像の表示基準との調整方法について、自車両が走行している道路が1車線の自動車専用道路である場合と、複数車線の自動車専用道路である場合とに分けて説明する。
【0036】<走行路が1車線の道路である場合>まず、自車両が走行する道路が、基本的には人間が走行路上に存在することがない1車線の自動車専用道路であり、地図画像に、赤外画像のうち前方障害物としての車両の部分画像だけを重ね合わせて表示する場合について説明する。この場合における表示態様としては、自車両と同じ車線を走行する前方車両の赤外画像を、その走行中の道路の走行レーンの中央を基準として表示すると良い。
【0037】より具体的な動作として、表示制御装置1は、自車両が走行中の走行レーンの略中央に位置するように、図6(b)に例示するような地図画像を、現在位置の変化に応じて地図画像を次第にスクロールしながら、表示装置9Aまたは9Bに表示する。その際、前方に先行する車両が存在する場合には、赤外線カメラ3の赤外画像のうち当該車両の部分画像だけを、当該走行レーンの略中央に位置するように重ね合わせ、図6(d)に例示するような表示態様の画像を表示する。
【0038】ここで、赤外画像(前方車両を表わす部分画像)のずらし量は、前方障害物センサ4によって検出した前方車両の自車両に対する相対位置、オフセット量B、そして赤外画像及び地図画像のそれぞれの縮尺に基づいて設定する。例えば、両画像とも縮尺が1/2で、前方車両が自車両の中央軸から左にA(m)ずれた位置に存在し、上記の如く赤外線カメラ3のオフセット量が右にB(m)である場合、赤外画像のずらし量は、右方向に、(A−B)×1/2(m)である。
【0039】尚、縮尺1/nとは、自車両の前方に存在する障害物に対するドライバの眼の横方向(水平方向)の視野角と、表示装置9Aに表示されている障害物に対するドライバの眼の横方向(水平方向)の視野角との比を表わし、予め実験により求めた値である。
【0040】そして、表示制御装置1は、設定された縮尺で地図画像を表示するに際して、その縮尺に応じて赤外画像全体を拡大または縮小(両画像の縮尺が同じ場合はそのまま)すると共に、上記の如く算出したずらし量だけ横方向にずらし、その赤外画像の中から前方車両の部分画像を抽出し、その部分画像を、地図画像上に重ねて表示する。これにより、地図画像に前方車両の部分画像をそのまま重ね合わせた場合には図6(c)のような表示画面となるところを、図6(d)の如くドライバの運転席からの視界に応じた表示画面とすることができる。
【0041】尚、赤外線カメラ2の画角と、前方障害物センサ4の検出範囲との対応関係は予めメモリに記憶しておくことにより、前方車両に相当する部分画像の抽出は、前方障害物センサ4の検出結果(自車両に対する距離及び位置)と、当該対応関係とに基づいて、赤外画像全体の中から検出することによって容易に抽出できる。また、熱源としての一般的な車両の温度特性も予めメモリに記憶しておき、部分画像の抽出に際して参照しても良い。
【0042】<走行路が複数車線の道路である場合>次に、自車両が走行する道路が、基本的には人間が走行路上に存在することがない複数車線の自動車専用道路であり、地図画像に、赤外画像の全体を重ね合わせて表示する場合について説明する。この場合における表示態様としては、検出した現在位置に基づいて地図情報を参照することにより、自車両が走行している車線を複数車線の中から検出し、自車両と同じ車線を走行する前方車両の赤外画像を、検出した車線の中央を基準として、走行路が複数車線である図6(d)と同様な表示を行うと良い。
【0043】より具体的な動作として、赤外画像のずらし量は、オフセット量B、そして赤外画像及び地図画像のそれぞれの縮尺に基づいて設定する。例えば、両画像とも縮尺が1/2で、上記の如く赤外線カメラ3のオフセット量が右にB(m)である場合、赤外画像のずらし量は、左方向に、B×1/2(m)である。
【0044】そして、表示制御装置1は、設定された縮尺で地図画像を表示するに際して、その縮尺に応じて赤外画像全体を拡大または縮小(両画像の縮尺が同じ場合はそのまま)すると共に、上記の如く算出したずらし量だけ赤外画像を横方向にずらし、地図画像上に重ねて表示する(尚、上記の複数車線の場合においても、1車線の場合と同様に前方車両の部分画像だけを地図画像に重ね合わせても良い)。
【0045】尚、上述した1車線及び複数車線の何れの場合においても、自車両が走行レーンの中央から大きくずれている場合には、上記の如く赤外画像(またはその部分画像)をずらした上で、自車両が実際に存在する位置に重ね合わせて表示すると、表示画面とドライバの実際の視界とのずれが大きく、違和感を生じることが予想される。
【0046】そこで、走行レーンに対する自車両の横位置(ずれ量)を検出し、検出した横位置が当該走行レーンの中央から所定量を越えて離れていると判定したときには、そのずれ量の分だけ、地図画像上に表示する障害物(前方車両)の表示位置をずらす、或いは、地図画像をずらすと良い。例えば、検出した横位置が右方向に1mであるときは、障害物の表示位置を、(1×縮尺)mだけ右方向にずらす、或いは、表示画面の略中央に、走行レーンの中央から右方向に(1×縮尺)mだけ偏ったラインが表示されるようにすれば良い。
【0047】尚、走行レーンに対する横位置の検出方法は、現在では一般的であるため、説明は省略する。
【0048】<表示制御処理>次に、上述した1車線または複数車線の場合における表示態様を実現すべく表示制御装置1が行う表示制御処理の手順について説明する。
【0049】図2は、第1の実施形態における表示制御装置1による表示制御処理を示すフローチャートである。
【0050】同図において、ステップS1,ステップS2:ライトスイッチ2の操作状態を検出し(ステップS1)、当該スイッチがオン状態に操作されているときには、ステップS2において、第1表示器である表示装置9Aに、上述した表示態様の如く、ナビゲーション機能による地図画像と、赤外画像(またはその部分画像)とを重ね合わせて表示する。一方、当該スイッチがオフ状態に操作されているときには、ステップS3に進む。
【0051】ステップS3:ナビゲーションメインスイッチ6の操作状態を検出し、当該スイッチの操作状態に応じて、オン状態に操作されているときにはステップS4に進み、オフ状態に操作されているときにはリターンする。
【0052】ステップS4:GPSセンサ5によって検出された現在位置情報に基づいて、現在位置近傍の地図画像情報を地図データベース10から読み出し、その地図画像情報に応じた地図画像を、第2表示器である表示装置9Bに表示すると共に、その地図画像上に、現在位置を表わすシンボルを表示する。
【0053】ステップS5:目的地設定スイッチ8の操作状態を検出することにより、ドライバによって目的地が設定され、その目的地への経路誘導が行われているかを判断し、この判断で経路誘導中のときにはステップS6に進み、そうでないときにはリターンする。
【0054】ステップS6:設定されている目的地への経路誘導において、車線変更や右左折すべき地点までの距離が所定距離より短く、ガイダンス表示すべきタイミングであるかを判断し、この判断でガイダンス表示が必要なときにはステップS7に進み、そうでないときにはリターンする。
【0055】ステップS7〜ステップS9:ライトスイッチ2がオン状態に操作され、表示装置9Aに地図画像と赤外画像とが重ね合わされて表示されている状態かを判断し(ステップS7)、この判断でYES(当該スイッチ:オン)のときには、表示装置9Aに表示中の画面(地図画像と赤外画像とが重ね合わされた表示画面)に進路ガイダンス用の矢印を更に重ね合わせて表示し(ステップS8)、NO(当該スイッチ:オフ)のときには、表示装置9Aに前方の道路を表わす地図画像を表示し、その地図画像に進路ガイダンス用の矢印を表示する(ステップS9)。
【0056】上述した本実施形態によれば、自車両の走行路の前方位置に、前方障害物の赤外画像を重ね合わせて表示することにより、ドライバにとって視認性の悪い環境においても、前方に存在する障害物の種類や大きさ及び存在位置(走行路との関係)の認知性を向上させることができ、ドライバの運転操作を効率的に支援することができる。
【0057】また、図2に示す表示制御処理との組み合わせにより、2つの表示器が適切に使い分けられるので、ドライバが運転操作に伴って積極的に必要としない状況において、地図画像や赤外画像が視界の中央よりの表示装置9Aにおいて表示されることによるドライバの違和感(煩わしさ)を防止することができる。
【0058】[第2の実施形態]次に、上述した第1の実施形態に係る車両用表示装置を基本とする第2の実施形態を説明する。以下の説明においては、第1の実施形態と同様な構成については重複する説明を省略し、本実施形態における特徴的な部分を中心に説明する。
【0059】上述した図2の表示制御処理では、赤外画像の表示条件(ライトスイッチ2がオン)が成立したときには、常に、地図画像と赤外画像(またはその部分画像)とを重ね合わせて表示したが、係る表示画面は、地図画像に赤外画像全体を重ね合わせる場合、表示画面内における物体の輪郭線が重複する等、鮮明さに欠け、ドライバの視覚に負担を与えることも予想される。
【0060】そこで、本実施形態では、係る表示条件が成立した場合であっても、障害物が検出されていないときには、現在位置に応じた地図画像の表示だけを行い、障害物が検出されたときにだけ、第1の実施形態と同様に、地図画像と赤外画像とを重ね合わせて表示する。
【0061】尚、本実施形態においても、上述した1車線または複数車線の場合における赤外画像のずらし量の算出方法は同様であり、重複する説明は省略する。
【0062】図3は、第2の実施形態における表示制御装置1による表示制御処理を示すフローチャートである。
【0063】同図において、第1の実施形態における図2R>2のフローチャートと異なるのは、ステップS11におけるライトスイッチ2の操作状態の判断において当該スイッチがオンである場合には、まず、ステップS12において、第1表示器である表示装置9Aに現在位置に応じた地図画像を表示する。そして、ステップS13において赤外線カメラ3による赤外画像の中に、前方車両を表わす熱源が含まれるかを判断し、この判断で前方車両が検出された場合にだけ、ステップS14において地図画像と赤外画像(またはその部分画像)とを重ね合わせて表示する。
【0064】ステップS15以降の各ステップの処理は、図2のステップS3以降の各ステップの処理と同様である。
【0065】このような本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に前方に存在する障害物の種類や大きさ及び存在位置(走行路との関係)の認知性を向上させることができ、ドライバの運転操作を効率的に支援することができるのに加え、障害物が存在しない場合には、地図画像だけが表示され、地図画像と赤外画像とが重ね合わされた表示画面の表示機会を減らすことができるので、ドライバの視覚に対する負担を軽減することができる。
【0066】[第3の実施形態]次に、上述した第1の実施形態に係る車両用表示装置を基本とする第3の実施形態を説明する。以下の説明においては、第1の実施形態と同様な構成については重複する説明を省略し、本実施形態における特徴的な部分を中心に説明する。
【0067】上述した第1の実施形態では、地図画像の表示を基本として捉え、表示中の地図画像に対して、赤外画像を重ね合わせる構成を説明したが、本実施形態では、赤外画像の表示を基本として捉え、赤外画像を表示している場合において、ナビゲーション機能による経路誘導すべき地点(地点近傍)に到達したときには、その赤外画像に対して、進路ガイダンス用の矢印のシンボルを重ね合わせて表示する。
【0068】ここで、本実施形態における赤外画像と矢印のシンボルとの重ね合わせの方法について説明する。
【0069】本実施形態においても、赤外線カメラ3は、車両前後方向に延びる中央軸上から右方向にB(m)オフセットされた位置に搭載されているので、自車両が走行レーンの略中央を走っている場合において、赤外画像の中心線は、その走行レーンの中心線から赤外線カメラ3のオフセット量B(m)分ずれた位置になる。
【0070】また、一般的なナビゲーション機能による経路誘導は、自車両の走行レーンの中心線が表示画面の中心線上に配置されるように、現在位置の変化に応じて地図画像がスクロールし、経路誘導のガイダンス用の矢印は、その矢印の始点が自車両の走行レーンの中心線上に位置するように表示される。
【0071】従って、赤外画像内における自車両の走行レーンの中心線上に、進路ガイダンス用の矢印を表示するには、赤外線カメラ3のオフセット量だけ、その矢印のシンボルをずらしてから重ね合わせる必要がある。
【0072】即ち、赤外線カメラ3の配置位置のオフセット量が右側にB(m)である場合、その値に、赤外画像と地図画像との間の縮尺を掛けた値が、進路ガイダンス用の矢印のすらし量になる。例えば、赤外画像の縮尺が1/2であり、地図画像の縮尺が1/3である場合において、進路ガイダンス用の矢印のずらし量は、C×1/2×3/2(m)である。
【0073】<表示制御処理>次に、上記の如く赤外画像に対して進路ガイダンス用の矢印を重ね合わせて表示すべく、本実施形態において表示制御装置1が行う表示制御処理の手順について説明する。
【0074】図4は、第3の実施形態における表示制御装置1による表示制御処理を示すフローチャートである。
【0075】同図において、ステップS31,ステップS32:ライトスイッチ2の操作状態を検出し(ステップS31)、当該スイッチがオン状態に操作されているときには、ステップS32において、第1表示器である表示装置9Aに、赤外画像を表示する。一方、当該スイッチがオフ状態に操作されているときには、ステップS33に進む。
【0076】ステップS33:ナビゲーションメインスイッチ6の操作状態を検出し、当該スイッチの操作状態に応じて、オン状態に操作されているときにはステップS34に進み、オフ状態に操作されているときにはリターンする。
【0077】ステップS34:GPSセンサ5によって検出された現在位置情報に基づいて、現在位置近傍の地図画像情報を地図データベース10から読み出し、その地図画像情報に応じた地図画像を、第2表示器である表示装置9Bに表示すると共に、その地図画像上に、現在位置を表わすシンボルを表示する。
【0078】ステップS35:目的地設定スイッチ8の操作状態を検出することにより、ドライバによって目的地が設定され、その目的地への経路誘導が行われているかを判断し、この判断で経路誘導中のときにはステップS36に進み、そうでないときにはリターンする。
【0079】ステップS36:設定されている目的地への経路誘導において、車線変更や右左折すべき地点までの距離が所定距離より短く、ガイダンス表示すべきタイミングであるかを判断し、この判断でガイダンス表示が必要なときにはステップS37に進み、そうでないときにはリターンする。
【0080】ステップS37〜ステップS39:ライトスイッチ2がオン状態に操作され、表示装置9Aに赤外画像が表示されている状態かを判断し(ステップS37)、この判断でYES(当該スイッチ:オン)のときには、表示装置9Aに表示中の赤外画像に、上記の如く表示位置を調整した(ずらした)進路ガイダンス用の矢印を重ね合わせて表示し(ステップS38)、NO(当該スイッチ:オフ)のときには、表示装置9Aに前方の道路を表わす地図画像を表示し、その地図画像に進路ガイダンス用の矢印を表示する(ステップS39)。
【0081】上述した本実施形態によっても、自車両の走行路の前方位置に、前方障害物の赤外画像を重ね合わせて表示することにより、ドライバにとって視認性の悪い環境においても、前方に存在する障害物の種類や大きさ及び存在位置(走行路との関係)の認知性を向上させることができ、ドライバの運転操作を効率的に支援することができる。
【0082】[第4の実施形態]次に、上述した第3の実施形態に係る車両用表示装置を基本とする第4の実施形態を説明する。以下の説明においては、第3の実施形態と同様な構成については重複する説明を省略し、本実施形態における特徴的な部分を中心に説明する。
【0083】上述した第3の実施形態では、赤外画像の表示中に経路誘導がなされている場合に、進路ガイダンス用の矢印の表示条件が成立したときには矢印のシンボルを表示したが、本実施形態では、赤外画像に基づいて障害物が検出されたときにだけ、赤外画像中に矢印を重ね合わせる。
【0084】尚、本実施形態においても、上述した進路ガイダンス用の矢印のずらし量の算出方法は同様であり、重複する説明は省略する。
【0085】図5は、第4の実施形態における表示制御装置1による表示制御処理を示すフローチャートである。
【0086】同図において、第3の実施形態における図4R>4のフローチャートと異なるのは、ステップS47におけるライトスイッチ2の操作状態の判断において当該スイッチがオンである場合には、まず、ステップS48において、赤外線カメラ3による赤外画像の中に、歩行者や前方車両等の障害物を表わす熱源が含まれるかを判断し、この判断で障害物が検出された場合にだけ、ステップS49において表示装置9Aに表示中の赤外画像に、進路ガイダンス用の矢印を表示位置を調整した状態で重ね合わせて表示する。一方、赤外画像に障害物が含まれていないときには、ステップS50において、表示装置9Aに前方の道路を表わす地図画像を表示し、その地図画像に進路ガイダンス用の矢印を表示する。
【0087】上記のステップS47以前の各ステップの処理は、図4のステップS37以前の各ステップの処理と同様である。
【0088】このような本実施形態によれば、第3の実施形態と同様に前方に存在する障害物の種類や大きさ及び存在位置(走行路との関係)の認知性を向上させることができ、ドライバの運転操作を効率的に支援することができるのに加え、障害物が存在しない場合には、地図画像上に進路ガイダンス用の矢印だけが表示され、赤外画像と進路ガイダンス用の矢印とが重ね合わされた表示画面の表示機会を減らすことができるので、ドライバの判断を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態における表示装置のシステム構成を示すブロック構成図である。
【図2】第1の実施形態における表示制御装置1による表示制御処理を示すフローチャートである。
【図3】第2の実施形態における表示制御装置1による表示制御処理を示すフローチャートである。
【図4】第3の実施形態における表示制御装置1による表示制御処理を示すフローチャートである。
【図5】第4の実施形態における表示制御装置1による表示制御処理を示すフローチャートである。
【図6】表示装置への地図画像等の表示例を示す図である。
【符号の説明】
1:表示制御装置,
2:ライトスイッチ,
3:赤外線カメラ,
4:前方障害物センサ,
5:GPSセンサ,
6:ナビゲーションメインスイッチ,
7:地図スクロールスイッチ,
8:目的地設定スイッチ,
9A,9B:表示装置,
10:地図データベース,

【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両に設けられ、その車両前方を赤外線を利用して撮像する撮像装置と、地図画像情報に基づいて生成した立体的な地図画像と、前記撮像装置によって撮像された赤外画像とを、表示画面上で重ね合わせた状態で、前記車両に設けられた表示器に表示する表示制御手段と、を備えることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】 車両に設けられ、その車両前方を赤外線を利用して撮像する撮像装置と、前方に存在する障害物との相対的な距離及び位置を検出する障害物検出手段と、前記障害物検出手段による障害物の検出結果と、予め設定された前記撮像装置と前記障害物検出手段との前記車両上の配置関係に関する情報とに基づいて、その障害物に相当する部分画像を、前記撮像装置によって撮影された赤外画像の中から抽出し、抽出した部分画像を、地図画像情報に基づいて生成した現在位置前方の立体的な地図画像の対応位置に重ね合わせた状態で、前記車両に設けられた表示器に表示する表示制御手段と、を備えることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項3】 車両に設けられ、その車両前方を赤外線を利用して撮像する撮像装置と、前方に存在する障害物との相対的な距離及び位置を検出する障害物検出手段と、前記車両の現在位置を検出すると共に、所望の目的地への経路誘導を、進行すべき方向を表わすシンボルによって報知するナビゲーション手段と、前記撮像装置によって撮影された赤外画像を、前記車両に設けられた表示器に表示すると共に、前記ナビゲーション手段よりシンボル表示の指示がなされたときには、予め設定された前記撮像装置と前記ナビゲーション手段によるシンボル表示位置との位置関係に関する情報とに基づいて算出したところの、表示中の赤外画像の対応位置に、指示に対応するシンボル画像を重ね合わせた状態で表示する表示制御手段と、を備えることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項4】 前記表示器は、所望の目的地への経路誘導のための表示を行う第1の表示器と、地図画像情報に基づいて生成した現在位置前方の立体的な地図画像を表示する第2の表示器とからなり、前記表示制御手段は、前記赤外画像と前記地図画像とが重ね合わされた画像を、前記第1の表示器に表示することを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用表示装置。
【請求項5】 前記表示制御手段は、前記経路誘導が行われていないとき、前記第1の表示器に前記赤外画像だけを表示することを特徴とする請求項4記載の車両用表示装置。
【請求項6】 前記表示制御手段は、前記赤外画像に障害物が含まれないときには重ね合わせ表示を行わないことを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用表示装置。
【請求項7】 前記撮像装置と前記障害物検出手段との前記車両上の配置関係に関する情報は、前記車両の前後方向の略中心線上に配置された前記障害物検出手段と、その中心線上から所定距離だけオフセットした位置に配置された前記撮像装置との位置関係を表わすことを特徴とする請求項2記載の車両用表示装置。
【請求項8】 更に、前記撮像装置による赤外画像の表示をオン・オフ可能な第1マニュアルスイッチと、前記地図画像の表示をオン・オフ可能な第2マニュアルスイッチとを備え、前記表示制御手段は、前記第1マニュアルスイッチがオン状態のときに、前記第2マニュアルスイッチの操作状態に関らずに、前記赤外画像と前記地図画像とが重ね合わされた画像を表示することを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2002−2425(P2002−2425A)
【公開日】平成14年1月9日(2002.1.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−180295(P2000−180295)
【出願日】平成12年6月15日(2000.6.15)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】