説明

車両用開閉装置

【課題】扉を開閉するモータの不要な駆動を防止する車両用開閉装置を提供する。
【解決手段】車両用開閉装置20は、車体10の開口部11の下側開口部11aを開閉する下扉30と、上側開口部11bをモータ51の駆動に応じて開閉する上扉40とを備えて、下扉30により上側開口部11bを閉鎖した後に上扉40により上側開口部11bが閉鎖される。当該車両用開閉装置20のECU60は、第1検知センサ72および第2検知センサ73により、下扉30による下側開口部11aの閉鎖状態が検知されたとき、駆動装置50のモータ51の駆動による上扉40の閉動作を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の開口部を開閉する車両用開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体の開口部を開閉する車両用開閉装置として、下記特許文献1に示すバックドア閉鎖操作制限装置が知られている。このバックドア閉鎖操作制限装置は、車体の後端部に設置されたリアウインドガラス(以下、上扉という)およびバックドアパネル(以下、下扉という)の2つの扉により手動で車体の開口部を開閉する。
【特許文献1】特開平09−170374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、各扉を自動的に開閉させるためにモータを採用することが考えられる。例えば、上扉をモータで自動的に開閉する場合において、下扉の上端に設けられるストライカと上扉の下端部に設けられるクローザとの係合状態を検知したときに上扉が閉鎖状態であるとしてモータの駆動を停止することが考えられる。この場合、下扉が閉鎖状態でないときに上扉を閉鎖状態にするようにモータを駆動すると、下扉のストライカと上扉のクローザとが係合しないために上扉が閉鎖状態になってもモータの駆動が停止されないこととなる。このため、モータの駆動により閉動作する上扉が車体等に不要に押し付けられて破損等してしまう可能性がある。
【0004】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、扉を開閉するモータの不要な駆動を防止する車両用開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の車両用開閉装置では、車体(10)の開口部(11)の一部(11a)を開閉する第1の扉(30)と、前記開口部のうち前記第1の扉により開閉される部分を除く部分である前記開口部の他部(11b)をモータ(51)の駆動に応じて開閉する第2の扉(40)と、を備え、前記第1の扉により前記開口部の一部を閉鎖した後に前記第2の扉により前記開口部の他部を閉鎖する車両用開閉装置(20)であって、前記第1の扉により前記開口部の一部が閉鎖された閉鎖状態を検知する検知手段(72、73)と、前記検知手段により前記閉鎖状態が検知されたとき前記モータの駆動による第2の扉の閉動作を可能とする制御手段(60)と、を有することを技術的特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明では、制御手段は、検知手段により、第1の扉による開口部の一部の閉鎖状態が検知されたとき、モータの駆動による第2の扉の閉動作を可能とする。これにより、第1の扉が閉鎖状態でないときの第2の扉の閉動作が防止され得る。
したがって、扉を開閉するモータの不要な駆動を防止することができる。
【0007】
請求項2の発明では、検知手段は、ロック手段により第1の扉が車体に固定されている状態を、開口部の一部の閉鎖状態として検知する。これにより、第1の扉により開口部の一部が閉鎖されている状態を確実に検知して、モータの不要な駆動を確実に防止することができる。
【0008】
請求項3の発明では、第1の扉は、開口部の一部である下側の開口部を開閉する下扉であり、第2の扉は、開口部の他部である上側の開口部を開閉する上扉である。このように第1の扉と第2の扉を構成してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る車両用開閉装置20を適用した車両を後方から見た一部正面図である。図2は、車両用開閉装置20の上扉40を開放した状態を示す概略側面図である。図3(A) は、係合前の左側ロック機構33aの状態を示す説明図であり、図3(B) は、左側ロック機構33aが左側係合部に係合した状態を示す説明図である。図4は、車両用開閉装置20のECU60の制御構成を示すブロック図である。
【0010】
図1、図2および図4に示すように、車両用開閉装置20は、車体10の開口部11を開閉する装置であって、開口部11の下側(以下、下側開口部11aともいう)を開閉する下扉30と、開口部11の上側(以下、上側開口部11bともいう)を開閉する上扉40と、上扉40を自動的に開閉する駆動装置50と、この駆動装置50を駆動制御するECU(Electronic Control Unit )60とを備えている。
【0011】
車両用開閉装置20は、下扉30により下側開口部11aを閉鎖した後に上扉40により上側開口部11bを閉鎖するように構成されており、閉鎖状態にある下扉30にてその上端部から上方に突出するように設けられるストライカ31が上扉40の下端部内方に設けられるクローザ41に係合することで、下扉30および上扉40でもって開口部11を全閉するように構成されている。
【0012】
図1に示すように、下扉30は、その下縁にて、下側開口部11aの下縁に2つのヒンジ32にてヒンジ結合されることにより、図略のヒンジ軸を中心に下側開口部11aを閉鎖する位置(閉鎖状態)から外方への所定の開放位置(開放状態)まで回動可能に支持されている。当該下扉30は、運転者等により手動で開閉する構成となっている。
【0013】
下扉30の下側開口部11a側の両端部には、それぞれ左側ロック機構33aおよび右側ロック機構33bが設けられている。両ロック機構33a、33bが、下側開口部11aの左縁および右縁に設けられる図略の左側係合部および右側係合部にそれぞれ係合して係合状態となることにより、下側開口部11aが下扉30により閉鎖される。
【0014】
左側ロック機構33aおよび左側係合部の係合関係と、右側ロック機構33bおよび右側係合部の係合関係とは同様の係合関係であるから、図3を用いて、左側ロック機構33aと左側係合部との係合関係について説明する。
【0015】
図3(A) に示すように、左側ロック機構33aは、主に、回動可能に支持されるラッチ34と、このラッチ34の回動に応じて回動するポール35と、左側係合部のストライカ12を受け入れ自在に形成される溝部36とを備えている。左側ロック機構33aが係合前の状態であれば、ラッチ34およびポール35は、図3(A) に図示する回動位置に位置している。
【0016】
下側開口部11aが運転者等により手動で下扉30により閉鎖される場合、左側係合部のストライカ12が、左側ロック機構33aの溝部36とラッチ34の切り欠き部34aとに相対的に進入する。すると、ラッチ34がストライカ12に押圧されて図示反時計方向に回動するとともに、ポール35が図示時計方向に回動する。
【0017】
そして、図3(B) に示すように、ポール35の端部35aが、ラッチ34の時計方向への回動を規制するようにラッチ34の切り欠き部34aに当接することにより、ストライカ12がラッチ34と溝部36とにより係合される。これにより、左側ロック機構33aと左側係合部とが係合状態となる。
【0018】
このような、左側ロック機構33aと左側係合部との係合、および、右側ロック機構33bと右側係合部との係合は、図略の係合解除レバーの操作によって、ポール35の端部35aによるラッチ34の回動規制が解除されることにより、下扉30が開放可能状態となる。なお、両ロック機構33a、33bおよび両側係合部は、上述のように構成されることに限らず、下側開口部11aが下扉30により閉鎖されるように当該下扉30が下側開口部11aの縁に係合する構成であればよい。
【0019】
上扉40は、その上縁にて、上側開口部11bの上縁に2つのヒンジ42にてヒンジ結合されることにより、図略のヒンジ軸を中心に上側開口部11bを閉鎖する位置(閉鎖状態)から外方への所定の開放位置(開放状態)まで回動可能に支持されている。開放状態における上扉40は、開口部11の両側にそれぞれ設けられる左右一対のダンパ43により、上記所定の開放位置よりさらに外方へ回動しないように支持される(図2参照)。
【0020】
図2に示すように、駆動装置50は、モータ51と、このモータ51の回転速度を減速させるとともに回転トルクを増加させる減速機構52と、この減速機構52の出力軸に相対回転不能に固定されて当該減速機構52により増加された回転トルクに応じて上記出力軸を中心に回動するアーム53と、このアーム53の先端に回動可能に連結されるロッド54とを備えている。モータ51には、回転時の負荷変動や回転状況を検出してECU60に出力するホールIC51aが設けられている。
【0021】
駆動装置50は、ECU60から供給される開動作用モータ電圧に応じて開動作方向に回転するモータ51により、減速機構52の出力軸を中心にアーム53を開動作方向に回動させる。これにより、ロッド54がアーム53の先端にて当該アーム53から離れる方向(開動作方向)に回動して、上扉40を開動作させる。
【0022】
また、駆動装置50は、ECU60から供給される閉動作用モータ電圧に応じて閉動作方向に回転するモータ51により、減速機構52の出力軸を中心にアーム53を閉動作方向に回動させる。これにより、ロッド54がアーム53の先端にて当該アーム53に近づく方向(閉動作方向)に回動して、上扉40を閉動作させる。
【0023】
次に、駆動装置50を構成するモータ51の駆動制御を担うECU60の電気的構成を図4に基づいて説明する。
図4に示すように、ECU60は、操作スイッチ71、第1検知センサ72、第2検知センサ73、ホールIC51a等に電気的に接続されており、このECU60では、モータ51を駆動制御するモータ制御処理が行われている。
【0024】
ここで、操作スイッチ71は、例えば、車両室内のコンソールパネルに設けられており、上扉40を開動作させるように操作されたときには開動作信号をECU60に出力し、上扉40を閉動作させるように操作されたときには閉動作信号をECU60に出力する役割を果たす。
【0025】
また、第1検知センサ72は、左側係合部のストライカ12が左側ロック機構33aのラッチ34と溝部36とに係合した場合におけるラッチ34がポール35により回動規制された状態を、左側ロック機構33aが左側係合部に係合した状態として検知するように、例えば、左側係合部近傍に設けられている。
【0026】
当該第1検知センサ72は、このような係合状態を検知したときには第1閉鎖状態信号をECU60に出力する役割を果たす。なお、第1検知センサ72は、上述のラッチ34の回動規制状態に基づいて係合状態を検知することに限らず、ラッチ34およびポール35の回動位置のいずれか1つか、ストライカ12の相対位置に応じて係合状態を検知するような検知センサであってもよい。
【0027】
また、第2検知センサ73は、右側係合部のストライカ12が右側ロック機構33bのラッチ34と溝部36とに係合した場合におけるラッチ34がポール35により回動規制された状態を、右側ロック機構33bが右側係合部に係合した状態として検知するように、例えば、右側係合部近傍に設けられている。
【0028】
当該第2検知センサ73は、このような係合状態を検知したときには第2閉鎖状態信号をECU60に出力する役割を果たす。なお、第2検知センサ73は、上述のラッチ34の回動規制状態に基づいて係合状態を検知することに限らず、ラッチ34およびポール35の回動位置のいずれか1つか、ストライカ12の相対位置に応じて係合状態を検知するような検知センサであってもよい。
【0029】
ECU60の作動について具体的に説明すると、操作スイッチ71から開動作信号が入力されると、ECU60は、上扉40を開放状態にするための所定の開動作用モータ電圧をモータ駆動回路によりモータ51に供給する。また、ECU60は、操作スイッチ71から閉動作信号が入力されるとともに第1検知センサ72の第1閉鎖状態信号および第2検知センサ73の第2閉鎖状態信号が入力されると、上扉40を閉鎖状態にするための所定の閉動作用モータ電圧をモータ駆動回路によりモータ51に供給する。
【0030】
このように構成することにより、車両用開閉装置20は、操作スイッチ71の操作に応じてECU60により制御される駆動装置50のモータ51でもって、上扉40を自動的に開閉動作させる。
【0031】
ところで、下扉30のストライカ31と上扉40のクローザ41との係合状態を検知したときに上扉40が閉鎖状態であるとして上扉40を開閉するモータ51の駆動を停止する場合、下扉30が閉鎖状態でない場合に上扉40を閉鎖状態にするようにモータ51を駆動すると、下扉30のストライカ31と上扉40のクローザ41とが係合しないために上扉40が閉鎖状態になってもモータ51の駆動が停止されないこととなる。このため、モータ51の駆動により閉動作する上扉40が車体等に不要に押し付けられて破損等してしまう可能性がある。
【0032】
そこで、本実施形態に係る車両用開閉装置20におけるECU60では、以下に述べる図5および図6に示すフローチャートに基づいてモータ51を駆動制御することにより、下扉30が閉鎖状態の場合のみモータ51の駆動を可能とする。以下、上扉40が開放状態にある車両において、ECU60によるモータ制御処理における演算処理の流れを図5および図6に示すフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0033】
まず、図5のステップS101において、操作スイッチ71の操作による閉動作信号が入力されているか否かについて判定され、閉動作信号がECU60に入力されるまでNoとの判定が繰り返される。この状態において、操作スイッチ71の操作による閉動作信号が入力されると(S101でYes)、ステップS103において、第1検知センサ72からの第1閉鎖状態信号が入力されているか否かについて判定される。
【0034】
ここで、左側ロック機構33aが左側係合部に係合しておらず第1検知センサ72から第1閉鎖状態信号が入力されていなれば(S103でNo)、ステップS101からの判定処理が繰り返される。
【0035】
一方、左側ロック機構33aが左側係合部に係合しており第1検知センサ72から第1閉鎖状態信号が入力されると(S103でYes)、ステップS105において、第2検知センサ73からの第2閉鎖状態信号が入力されているか否かについて判定される。
【0036】
ここで、右側ロック機構33bが右側係合部に係合しておらず第2検知センサ73から第2閉鎖状態信号が入力されていなれば(S105でNo)、ステップS101からの判定処理が繰り返される。
【0037】
一方、右側ロック機構33bが右側係合部に係合しており第2検知センサ73から第2閉鎖状態信号が入力されると(S105でYes)、下扉30が閉鎖状態にあると判定されて、ステップS107において、閉動作処理がなされる。
【0038】
この閉動作処理では、ECU60は、上記所定の閉動作用モータ電圧をモータ駆動回路によりモータ51に供給する。これにより、駆動装置50は、閉動作方向に回転するモータ51によりアーム53およびロッド54をそれぞれ閉動作方向に回動させて、上扉40を閉動作させる。
【0039】
上述のような閉動作処理中に運転者等により下扉30が開動作されて、左側ロック機構33aと左側係合部との係合の解除により第1閉鎖状態信号が入力されていないか、右側ロック機構33bと右側係合部との係合の解除により第2閉鎖状態信号が入力されていなければ(S109でNo、または、S111でNo)、図6のステップS119にて開動作処理がなされる。
【0040】
また、上述のような閉動作処理中に、上扉40と上側開口部11bとの間に荷物等の障害物が挟み込まれて上扉40の閉動作が抑制されると、モータ51が過負荷となり、ホールIC51aからの検出信号に基づきモータ過負荷状態であるとしてステップS113でYesと判定される。このYesとの判定に伴い、図6のステップS119にて開動作処理がなされる。
【0041】
また、上述のような閉動作処理中に、上扉40のクローザ41が下扉30のストライカ31に係合すると、上扉40および下扉30により開口部11が全閉されたとしてステップS115でYesと判定される。このYesとの判定に伴い、後述する図6のステップS129において、モータ51の駆動停止処理がなされて上扉40の閉動作処理を終了することによりモータ制御処理が終了する。
【0042】
また、上述のような閉動作処理中に、操作スイッチ71からの開動作信号が入力されると、ステップS117にてYesと判定されて、図6のステップS119にて開動作処理がなされる。
【0043】
ステップS119における開動作処理では、ECU60は、上記所定の開動作用モータ電圧をモータ駆動回路によりモータ51に供給する。これにより、駆動装置50は、開動作方向に回転するモータ51によりアーム53およびロッド54をそれぞれ開動作方向に回動させて、上扉40を開動作させる。
【0044】
上述のような開動作処理中に、操作スイッチ71からの閉動作信号が入力されると、ステップS121にてYesと判定されて、図5のステップS107からの処理がなされる。
【0045】
一方、上述のような開動作処理中に、上扉40が開放位置まで開放した場合、ステップS122でYesと判定され、ステップS129において、モータ51の駆動停止処理がなされて、両ダンパ43により当該上扉40の開動作が抑制される。一方、上扉40が開放位置でなく(ステップS122でNo)、上扉40が壁等の障害物に接触することにより当該上扉40の開動作が抑制されると、モータ51が過負荷となり、ホールIC51aからの検出信号に基づきモータ過負荷状態であるとしてステップS123でYesと判定される。
【0046】
このようにステップS123にてYesと判定されると、左側ロック機構33aと左側係合部との係合の解除により第1閉鎖状態信号が入力されていないか、右側ロック機構33bと右側係合部との係合の解除により第2閉鎖状態信号が入力されていなければ(S125でNo、または、S127でNo)、ステップS129において、モータ51の駆動停止処理がなされて上扉40の開閉動作処理を終了することによりモータ制御処理が終了する。
【0047】
一方、第1閉鎖状態信号および第2閉鎖状態信号がともに入力されていると(S125でYes、かつ、S127でYes)、図5のステップS107からの処理がなされる。
【0048】
なお、上述したステップS101からのフローでは、上扉40が開放状態にある車両について説明したが、下扉30および上扉40がともに閉鎖状態にある車両については、操作スイッチ71からの開動作信号の入力に応じて下扉30のストライカ31と上扉40のクローザ41との係合を解除した後、図6のステップS119からの処理を行うようにしてもよい。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用開閉装置20では、ECU60は、第1検知センサ72および第2検知センサ73により、下扉30による下側開口部11aの閉鎖状態が検知されたとき、駆動装置50のモータ51の駆動による上扉40の閉動作を可能とする。これにより、下扉30が閉鎖状態でないときの上扉40の閉動作が防止され得る。
したがって、上扉40を開閉するモータ51の不要な駆動を防止することができる。
【0050】
また、本実施形態に係る車両用開閉装置20では、第1検知センサ72および第2検知センサ73は、左側ロック機構33aが左側係合部に係合するとともに右側ロック機構33bが右側係合部に係合している状態、すなわち、両ロック機構33a、33bにより下扉30が車体10に固定されている状態を、下扉30による下側開口部11aの閉鎖状態として検知する。これにより、下扉30により下側開口部11aが閉鎖されている状態を確実に検知して、モータ51の不要な駆動を確実に防止することができる。
【0051】
また、上扉40の閉鎖後に下扉30を閉動作させたときの下扉30のストライカ31と上扉40の下端部との干渉を防止するため、上述した特許文献1に記載されているように、上扉40および下扉30の各々の開閉状態を検知して下扉30が開放状態でありかつ上扉40が閉鎖状態である場合には、ストッパシャフトを車体と下扉30との間に介在させるストッパ機構を設けることが考えられる。しかしながら、上述のようなストッパ機構を設けるために、ストッパシャフト等の部品点数が増加するだけでなく、ストッパ機構を所定の位置に配置させるために車体等における設計自由度が低下してしまう。
【0052】
本実施形態に係る車両用開閉装置20では、このようなストッパ機構を設けることなくECU60による制御のみで、下扉30により下側開口部11aが閉鎖されていない場合での上扉40の閉動作を防止し得る。これにより、部品点数が増加することもなく、また設計自由度が低下することもなく下扉30と上扉40との干渉を防止することができる。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)第1検知センサ72および第2検知センサ73は、
左側ロック機構33aと左側係合部との係合状態および右側ロック機構33bと右側係合部との係合状態を検知することによりそれぞれ各閉鎖状態信号をECU60に出力することに限らず、例えば、下扉30の一部位と下側開口部11a近傍の車体10の一部位とが接触している状態を検知する検知センサとして、このような接触状態を下扉30が下側開口部11aを閉鎖している状態として検知することにより各閉鎖状態信号をECU60に出力してもよい。
【0054】
(2)ECU60は、第1検知センサ72からの第1閉鎖状態信号および第2検知センサ73からの第2閉鎖状態信号の双方が入力されることにより下扉30が閉鎖状態にあると判定することに限らず、第1検知センサ72を廃止して第2検知センサ73からの第2閉鎖状態信号の入力により下扉30が閉鎖状態にあると判定してもよいし、第2検知センサ73を廃止して第1検知センサ72からの第1閉鎖状態信号の入力により下扉30が閉鎖状態にあると判定してもよい。
【0055】
(3)下扉30は、手動で開閉されることに限らず、下扉開閉用に設けられる駆動装置により自動で開閉されてもよい。
【0056】
(4)手動開閉する下扉30が閉鎖状態であるときに、駆動装置50による上扉40の閉動作を可能とすることに限らず、下扉30をモータ等を用いた駆動装置により自動開閉とするとともに上扉40を手動開閉として、上扉40が閉鎖状態であるときに、駆動装置による下扉30の閉動作を可能とするようにしてもよい。
【0057】
(5)下扉30および上扉40は、開口部11を上下方向から開閉することに限らず、下扉30を左側扉、上扉40を右側扉として、開口部11を左右方向から開閉するいわゆる観音開きタイプに構成してもよい。このとき、どちらか一方の扉が閉鎖状態であるときに、他方の扉を自動で開閉する駆動装置による当該他方の扉の閉動作を可能とする。
【0058】
(6)下扉30は、下側開口部11aを下方向から開閉するように当該下側開口部11aの下縁にヒンジ結合されることに限らず、下側開口部11aの左縁下方にヒンジ結合されて当該下側開口部11aを左方向から開閉するように構成されてもよいし、下側開口部11aの右縁下方にヒンジ結合されて当該下側開口部11aを右方向から開閉するように構成されてもよい。
また、上扉40は、上側開口部11bを上方向から開閉するように当該上側開口部11bの上縁にヒンジ結合されることに限らず、上側開口部11bの左縁上方にヒンジ結合されて当該上側開口部11bを左方向から開閉するように構成されてもよいし、上側開口部11bの右縁上方にヒンジ結合されて当該上側開口部11bを右方向から開閉するように構成されてもよい。
【0059】
(7)駆動装置50は、モータ51の回転により上扉40を自動的に開閉することに限らず、エアシリンダや油圧シリンダ等のアクチュエータにより上扉40を自動的に開閉するようにしてもよい。このとき、ECU60は、下扉30が閉鎖状態であるときに、上記アクチュエータによる上扉40の閉動作を可能とするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施形態に係る車両用開閉装置を適用した車両を後方から見た一部正面図である。
【図2】車両用開閉装置の上扉を開放した状態を示す概略側面図である。
【図3】図3(A) は、係合前の左側ロック機構の状態を示す説明図であり、図3(B) は、左側ロック機構が左側係合部に係合した状態を示す説明図である。
【図4】車両用開閉装置のECUの制御構成を示すブロック図である。
【図5】図4のECUによるモータ制御の流れを示すフローチャートの一部である。
【図6】図4のECUによるモータ制御の流れを示すフローチャートの一部である。
【符号の説明】
【0061】
11…開口部
11a…下側開口部(開口部の一部)
11b…上側開口部(開口部の他部)
20…車両用開閉装置
30…下扉(第1の扉)
33a…左側ロック機構(ロック手段)
33b…右側ロック機構(ロック手段)
40…上扉(第2の扉)
50…駆動装置
51…モータ
60…ECU(制御手段)
72…第1検知センサ(検知手段)
73…第2検知センサ(検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の開口部の一部を開閉する第1の扉と、
前記開口部のうち前記第1の扉により開閉される部分を除く部分である前記開口部の他部をモータの駆動に応じて開閉する第2の扉と、を備え、
前記第1の扉により前記開口部の一部を閉鎖した後に前記第2の扉により前記開口部の他部を閉鎖する車両用開閉装置であって、
前記第1の扉により前記開口部の一部が閉鎖された閉鎖状態を検知する検知手段と、
前記検知手段により前記閉鎖状態が検知されたとき前記モータの駆動による第2の扉の閉動作を可能とする制御手段と、
を有することを特徴とする車両用開閉装置。
【請求項2】
前記第1の扉を前記車体に固定して前記開口部の一部を閉鎖状態とする少なくとも1つのロック手段を備え、
前記検知手段は、前記ロック手段により前記第1の扉が前記車体に固定されている状態を、前記閉鎖状態として検知することを特徴とする請求項1記載の車両用開閉装置。
【請求項3】
前記開口部の一部は当該開口部の下側の開口部であって、前記第1の扉は前記下側の開口部を開閉する下扉であり、前記開口部の他部は当該開口部の上側の開口部であって、前記第2の扉は前記上側の開口部を開閉する上扉であることを特徴とする請求項1または2記載の車両用開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−41264(P2009−41264A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207568(P2007−207568)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】