説明

車両用電源装置

【課題】蓄電部を長寿命化できる高効率な車両用電源装置を提供することを目的とする。
【解決手段】制動時に電気エネルギーの発電により制動トルクを発生する発電機13と、前記発電機13に電気的に接続され、前記電気エネルギーを蓄える蓄電部23と、前記蓄電部23に電気的に接続される負荷19と、前記負荷19が消費する負荷電流(I)、または負荷電力(P)を検出し、前記負荷電流(I)、または前記負荷電力(P)に応じて、前記蓄電部23に充電される電圧の最大値である設定充電電圧(Vcs)を決定し、前記設定充電電圧(Vcs)になるように前記蓄電部23を充電するため、前記蓄電部23に電気的に接続された充電回路、または前記発電機13のいずれかを制御する制御回路25とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助電源を用いた高効率な車両用電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への配慮や燃費向上のために、制動時に発電を行うことで制動エネルギーを電気エネルギーとして回収する回生システムを搭載した自動車(以下、車両という)が開発されている。この回生システムは、制動時に発電機で発生する電力(以下、回生電力という)を充電し、得られた電気エネルギー(以下、回生エネルギーという)を制動時以外に負荷等へ放電することで、熱として捨てていた制動エネルギーを電気エネルギーとして利用するので効率が向上するとともに、放電時における発電機の発電量を減らすことができるので、その分、エンジン負担が軽減され省燃費が可能となる。
【0003】
このような回生システムを従来の車両に適用すると、回生電力は鉛バッテリに充電されることになるが、急減速等の場合は大電力が短時間に発生し、急速充電が不十分な鉛バッテリに効率的に充電することができなかった。また、鉛バッテリに印加される電圧が急上昇し、電解液の減少を引き起こす。その結果、鉛バッテリの寿命が短くなってしまうという課題があった。
【0004】
そこで、短時間に発生する大電力を効率よく回収するために、急速充放電特性に優れるキャパシタを予備的な蓄電手段として用いた回生システム用の電源装置が、例えば下記特許文献1に提案されている。図8はこのような車両用電源装置のブロック回路図である。
【0005】
図8において、主蓄電手段101は鉛バッテリであり、その正極にはイグニションスイッチ103を介して車両電気負荷105が接続されている。また、主蓄電手段101の正極には車両用発電機107が接続されている。車両用発電機107はエンジン109と機械的に接続されているので、エンジン109の動作により車両用発電機107が駆動される。さらに、エンジン109はタイヤ111が機械的に接続されており、エンジン109の駆動力によりタイヤ111が回転し、車両を走行させる。また、制動による減速時には、車両の慣性によりタイヤ111が回転し、これによりエンジン109も回転する。この回転トルクにより車両用発電機107が駆動され、制動エネルギーによる発電が行われる。
【0006】
このような車両に対し、回生電力を効率よく回収するために、車両用発電機107にはDC/DCコンバータ113を介して予備蓄電手段115が接続されている。予備蓄電手段115には大容量の電気二重層キャパシタが用いられるので、急減速時等に発生する短時間の大電力を効率よく回収できる。また、DC/DCコンバータ113には、その動作を制御するために電子演算装置117が接続されている。さらに、電子演算装置117には車両側から様々な信号を受信するための信号受信用端子119が設けられている。従って、電子演算装置117は車両の状態を信号受信用端子119から受信することにより、それに応じた予備蓄電手段115への充放電制御をDC/DCコンバータ113に対して行う。
【0007】
このような構成の回生システム用電源装置とすることで、短時間に発生する大電力を含む減速時の回生電力を、一旦予備蓄電手段115に充電しておき、減速時以外に充電した電力を主蓄電手段101や車両電気負荷105に供給することができる。その結果、効率のよい制動エネルギーの回生が可能となるだけでなく、主蓄電手段101(鉛バッテリ)に印加される電圧の急上昇を低減することも可能となるので、主蓄電手段101の寿命短縮を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3465293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の電源装置によると、確かに効率的な回生により車両の省燃費化が可能となるのであるが、主蓄電手段101が満充電状態であったり、車両電気負荷105の消費電力が少ない状態では、予備蓄電手段115に蓄えた回生エネルギーがなかなか消費されず、予備蓄電手段115(蓄電部)を構成する電気二重層キャパシタに高電圧が印加された状態が継続する場合があった。その結果、電気二重層キャパシタの寿命が短くなる可能性があるという課題があった。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、蓄電部を長寿命化できる高効率な車両用電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明の車両用電源装置は、制動時に電気エネルギーの発電により制動トルクを発生する発電機と、前記発電機に電気的に接続され、前記電気エネルギーを回生エネルギーとして蓄える蓄電部と、前記蓄電部に電気的に接続される負荷と、前記負荷が消費する負荷電流(I)、または負荷電力(P)を検出し、前記負荷電流(I)、または前記負荷電力(P)に応じて、前記蓄電部に充電される電圧の最大値である設定充電電圧(Vcs)を決定し、前記設定充電電圧(Vcs)になるように前記蓄電部を充電するため、前記蓄電部に電気的に接続された充電回路、または前記発電機のいずれかを制御する制御回路とを備えたものである。
【0012】
また、本発明の車両用電源装置は、制動時に電気エネルギーの発電により制動トルクを発生する発電機と、前記発電機に電気的に接続され、前記電気エネルギーを回生エネルギーとして蓄える蓄電部と、前記発電機に電気的に接続される主電源と、前記主電源の充電状態(SOC)を検出し、前記充電状態(SOC)に応じて、前記蓄電部に充電される電圧の最大値である設定充電電圧(Vcs)を決定し、前記設定充電電圧(Vcs)になるように前記蓄電部を充電するため、前記蓄電部に電気的に接続された充電回路、または前記発電機のいずれかを制御する制御回路とを備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両用電源装置によれば、負荷に流れる負荷電流(I)、または負荷が消費する負荷電力(P)に応じて、これらいずれかの値が小さければ、蓄電部の設定充電電圧(Vcs)を小さく決定し、大きければ蓄電部の上限電圧を超えない範囲で設定充電電圧(Vcs)を大きく決定することができる。その結果、負荷電流(I)や負荷電力(P)が小さい場合は、蓄電部の充電電圧が低く設定されるので、減速時の回生エネルギーを必要な分だけ回収できるとともに、蓄電部の高電圧印加状態が継続する期間を低減することができ、蓄電部の長寿命化が可能になるという効果が得られる。
【0014】
また、本発明の車両用電源装置によれば、主電源の充電状態(SOC)に応じて、この値が高ければ蓄電部の設定充電電圧(Vcs)を小さく決定し、低ければ蓄電部の上限電圧を超えない範囲で設定充電電圧(Vcs)を大きく決定することができる。その結果、主電源の充電状態(SOC)が高くて充電受入量が小さい場合は、蓄電部の充電電圧が低く設定されるので、減速時の回生エネルギーを主電源に充電するための必要な分だけ回収できるとともに、蓄電部の高電圧印加状態が継続する期間を低減することができ、蓄電部の長寿命化が可能になるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1における車両用電源装置のブロック回路図
【図2】本発明の実施の形態1における車両用電源装置の負荷電流に対する設定充電電圧、および発電機の停止率の相関図
【図3】本発明の実施の形態1における車両用電源装置の蓄電部電圧の経時変化図であり、(a)は負荷電流が20Aの時の経時変化図、(b)は負荷電流が12Aの時の経時変化図、(c)は負荷電流が6Aの時の経時変化図
【図4】本発明の実施の形態2における車両用電源装置のブロック回路図
【図5】本発明の実施の形態3における車両用電源装置のブロック回路図
【図6】本発明の実施の形態3における車両用電源装置の充電状態に対する設定充電電圧、および発電機の停止率の相関図
【図7】本発明の実施の形態3における車両用電源装置の充電状態と負荷電流に対する設定充電電圧、および発電機の停止率の相関図
【図8】従来の車両用電源装置のブロック回路図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における車両用電源装置のブロック回路図である。図2は、本発明の実施の形態1における車両用電源装置の負荷電流に対する設定充電電圧、および発電機の停止率の相関図である。図3は、本発明の実施の形態1における車両用電源装置の蓄電部電圧の経時変化図であり、(a)は負荷電流が20Aの時の経時変化図を、(b)は負荷電流が12Aの時の経時変化図を、(c)は負荷電流が6Aの時の経時変化図を、それぞれ示す。なお、図1において、太線は電力系配線を、細線は信号系配線を、二本線は機械的接続を、それぞれ示す。
【0018】
図1において、車両に搭載されたエンジン11には、発電機13と駆動輪14が機械的に接続されている。これにより、制動時に電気エネルギー(回生電力)を発電する場合は、駆動輪14により発電機13が駆動される。その結果、発電機13は制動トルクを発生して車両を減速させる。また、エンジン11の回転力を発電機13に伝達することにより、電力を発生することもできる。
【0019】
発電機13には主電源15が電気的に接続されている。主電源15はバッテリからなる。主電源15には、電流検出回路17を介して負荷19に電気的に接続されている。ここで、負荷19は車載電装品である。このように配線を行うことで、電流検出回路17は負荷19が消費している電流(以下、負荷電流Iという)を検出している。
【0020】
また、主電源15にはDC/DCコンバータ21を介して蓄電部23が電気的に接続されている。本実施の形態1では、DC/DCコンバータ21を双方向型とし、さらに、主電源15側から蓄電部23側への昇圧型とした。従って、DC/DCコンバータ21は蓄電部23の充電回路、および放電回路の役割を担う。また、蓄電部23は耐電圧2.5Vの電気二重層キャパシタを10個直列接続して構成される。なお、電気二重層キャパシタの個数や接続方法(直列、並列、直並列)は上記に限定されるものではなく、必要な電気仕様に基いて適宜決定すればよい。
【0021】
蓄電部23は発電機13が発電した制動時の電気エネルギー(回生エネルギー)を蓄え、制動時以外に、蓄えた回生エネルギーにより負荷19に電力を供給する。従って、蓄電部23はDC/DCコンバータ21を介して、発電機13、および負荷19と電気的に接続される構成となる。
【0022】
電流検出回路17とDC/DCコンバータ21には、制御回路25が電気的に接続されている。制御回路25はマイクロコンピュータと周辺回路から構成され、電流検出回路17で検出された負荷電流Iを読み込み、DC/DCコンバータ21に対して、設定充電電圧Vcsや制御信号contを出力する。これにより、制御回路25は、決定した設定充電電圧Vcsになるように蓄電部23を充電するため、充電回路としてのDC/DCコンバータ21を制御する。さらに、制御回路25は、車両用制御回路(図示せず)との間で様々なデータ信号dataのやり取りを行う。なお、設定充電電圧Vcsの詳細については後述する。
【0023】
次に、このような車両用電源装置の動作について説明する。
【0024】
上記したように、DC/DCコンバータ21は主電源15側から蓄電部23側への昇圧型であるので、蓄電部23の電圧Vcは主電源15側の電圧Vf以上とする必要がある。そこで、あらかじめ蓄電部23には、主電源15側の電圧Vf(通常時で14V)と等しい電圧になるように電力が蓄えられている。なお、この電圧を以下、下限電圧Vcmと呼び、この時の回生エネルギーを0として説明する。
【0025】
この状態において、本実施の形態1における車両用電源装置は、基本的には車両減速時に駆動輪14により駆動させられて発生する発電機13の回生電力により、DC/DCコンバータ21を介して昇圧して蓄電部23に回生エネルギーとして充電し、減速時以外に蓄電部23の回生エネルギーを降圧して主電源15や負荷19に供給する動作を行う。
【0026】
この際に、制御回路25は蓄電部23を長寿命化できるように、蓄電部23への充電を以下のようにして制御している。
【0027】
まず、制御回路25は、車両用制御回路からブレーキ信号等の車両減速を示す信号をデータ信号dataにより受け取ると、直ちに電流検出回路17により負荷19に流れる負荷電流Iを読み込む。
【0028】
次に、制御回路25は、あらかじめ内蔵メモリに記憶された図2の負荷電流I(横軸)と設定充電電圧Vcs(左縦軸)の相関関係から、読み込んだ負荷電流Iに対応した設定充電電圧Vcsを決定する。ここで、設定充電電圧Vcsとは、発電機13の電力を蓄電部23に充電する際の、蓄電部23の充電電圧における目標値のことである。従って、制御回路25が、決定された設定充電電圧VcsをDC/DCコンバータ21に出力するとともに、発電機13の回生電力を蓄電部23に充電するよう制御信号contを出力することで、DC/DCコンバータ21は蓄電部23の電圧Vcが設定充電電圧Vcsになるように蓄電部23への充電を行う。
【0029】
このような動作により、制御回路25は、蓄電部23の電圧Vcが設定充電電圧Vcsになるように充電するために、DC/DCコンバータ21を制御するので、負荷電流Iの大小に応じて、蓄電部23が充電された時の電圧Vcが変化することになる。
【0030】
この負荷電流Iと設定充電電圧Vcsの相関を図2に示す。ここで、横軸は負荷電流I、左縦軸は設定充電電圧Vcsである。図2より、負荷電流Iが15Aよりも小さい領域では、負荷電流Iの増加とともに、設定充電電圧Vcsも増加し、負荷電流Iが15Aを超えると、設定充電電圧Vcsは一定になる。この一定になった設定充電電圧Vcsは蓄電部23の上限電圧Vcu(23V)である。従って、設定充電電圧Vcsは、上限電圧Vcuに至るまでは負荷電流Iが大きくなるほど下限電圧Vcmから上限電圧Vcuに向かって大きくなる。なお、上限電圧Vcuを23Vとしているが、これは上記したように電気二重層キャパシタの耐電圧が2.5Vであるので、マージンを差し引いて、各電気二重層キャパシタの満充電電圧を2.3Vと決定しているためである。従って、蓄電部23は10個の電気二重層キャパシタを直列接続した構成であるので、その上限電圧Vcuは2.3V×10個=23Vとなる。また、上記したように、蓄電部23の電圧Vcは常に14V以上でなければならないので、負荷電流Iが0Aの時に設定充電電圧Vcsが下限電圧Vcmになるようにしている。
【0031】
これらのことから、負荷電流Iが小さい時は、設定充電電圧Vcsが小さくなるので、蓄電部23に蓄えられる電力が少なくなるように制御されることがわかる。その結果、蓄電部23の電圧Vcは、上限電圧Vcuよりも小さくなるので、蓄電部23を構成する各電気二重層キャパシタに印加される電圧も小さくなり、それらの寿命を延ばすことができる。従って、負荷19がそれほど電力を必要としていない時には蓄電部23への充電電圧を絞ることにより、蓄電部23の長寿命化が可能となる。
【0032】
ここで、図2に示した負荷電流Iと設定充電電圧Vcsの相関関係の求め方を以下に詳しく説明する。
【0033】
本実施の形態1における上記制御を最も効率的に行うには、負荷電流Iができるだけ蓄電部23の電力によって供給されるように設定充電電圧Vcsを決定すればよい。しかし、負荷電流Iは負荷19の使用状況により変動する。
【0034】
そこで、本実施の形態1では、既定の車両走行モード(例えば10・15モード)で走行した際に、蓄電部23が負荷19に蓄電電力を供給することによる発電機13の停止率AR(後述)が最大になるように、設定充電電圧Vcsを、あらかじめ負荷電流Iの相関として求めておくようにしている。その具体例を以下に説明する。
【0035】
まず、前記停止率ARは、既定の車両走行モード時において、蓄電部23に蓄えられる回生エネルギーを負荷19へ供給している期間(以下、蓄電部による負荷電力供給期間という)をtc、エンジン11が燃料を消費して発電機13により発電し、負荷19に電力を供給している期間(以下、燃料消費による負荷電力供給期間という)をtge、制動により発電機13が発電した回生電力を負荷19に供給しながら蓄電部23を充電する期間(以下、回生電力充電期間という)をtgrとすると、AR(%)=100×(tc+tgr)/(tc+tge+tgr)により定義される。なお、上記式の分母は負荷19への全電力供給期間に相当する。
【0036】
ここで、負荷19を制動によって発生する回生電力のみで駆動する場合、蓄電部23の回生電力充電期間tgrと蓄電部による負荷電力供給期間tcのみによって蓄電部23の充放電が成立すればよいので、燃料消費による負荷電力供給期間tge=0となる。これを上記式に代入すると、AR=100%、すなわち発電機13は回生発電時以外で停止状態となる。この状態が最も燃費のよい状態である。
【0037】
ここで、燃料消費による負荷電力供給期間tgeを小さくするためには、蓄電部による負荷電力供給期間tcを大きくすればよく、そのためには、蓄電部23に蓄積される回生エネルギーを大きくすればよい。また、負荷電流Iが大きいほど、tge=0にするために必要な回生エネルギーは大きくなる。
【0038】
このことから、車両が既定の車両走行モードで走行している場合において、停止率ARを最大化(可能ならば100%)することができる最小の回生エネルギー量から設定充電電圧Vcsを決定すればよい。ここで、一例として10・15モード走行において、本実施の形態1で用いた蓄電部23が蓄えることのできる回生エネルギーを考慮して、負荷電流Iに対する発電機13の停止率ARの相関を求めると、図2に示すようになった。なお、負荷電流Iは横軸、停止率ARは右縦軸である。図2より、負荷電流Iが15Aまでは、蓄電部23に蓄えることができる回生エネルギー以下で負荷19を駆動し続けることができるため、停止率AR=100%である。負荷電流Iが15Aを超えると、蓄電部23の回生エネルギーだけでは負荷19を駆動し続けることができず、蓄電部23が放電して電圧Vcが下限電圧Vcmに至った後は、エンジン11が発電機13を駆動して負荷19に電力を供給する必要がある。従って、停止率ARは負荷電流Iが大きくなるほど小さくなる。
【0039】
このような負荷電流Iと停止率ARの相関から、設定充電電圧Vcsを次のようにして決定する。
【0040】
まず、負荷電流Iが15Aより大きければ、停止率ARが100%より小さくなるので、蓄電部23を満充電状態にしても、エンジン11のトルクにより発電機13を駆動しなければならない。従って、この場合は蓄電部23の電圧Vcが上限電圧Vcu(=23V)に至るまで充電し、蓄電部23の充電できるエネルギーを最大限に利用する。ゆえに、設定充電電圧Vcsは負荷電流Iが15Aより大きければ上限電圧Vcuとなるように決定する。
【0041】
次に、負荷電流Iが15A以下であれば、停止率ARは100%である。ゆえに、蓄電部23を満充電状態にしなくても、エンジン11のトルクによる発電機13の発電を行うことなく負荷19に電力を供給できる。この時、負荷電流Iが小さいほど、蓄電部23に充電する回生エネルギーを少なくしても負荷19に必要な電力を供給できるので、図2に示すように、設定充電電圧Vcsは負荷電流Iが小さくなるほど低くなるように決定する。これにより、蓄電部23に不必要な高電圧が印加されることがなくなり、蓄電部23の長寿命化が可能となる。なお、上記したように、蓄電部23の電圧Vcは下限電圧Vcm(=14V)より低くできないので、負荷電流Iが0Aの時に設定充電電圧Vcsが下限電圧Vcmと等しくなるように決定している。
【0042】
以上のことから、負荷電流Iと設定充電電圧Vcsの相関関係は、既定の車両走行モードに応じて、負荷19への全電力供給期間(tc+tge+tgr)の内、回生電力充電期間tgrと、蓄電部による負荷電力供給期間tcとの合計が最大になるように、あらかじめ求めておく。
【0043】
次に、3種類の負荷電流Iにおいて、既定の車両走行モードで車両走行した場合の蓄電部23の電圧Vcの具体的な経時変化を図3(a)〜(c)により説明する。なお、図3(a)は負荷電流I=20A、(b)はI=12A、(c)はI=6Aの時を、それぞれ示す。また、全ての図において、横軸は時刻tを、縦軸は蓄電部23の電圧Vcを、それぞれ示す。また、図3(c)には実線と破線の特性が示してあるが、前者は本実施の形態1における蓄電部23の電圧Vcの特性を、破線は従来の構成における電圧Vcの特性を、それぞれ示す。また、ここでは蓄電部23の電圧Vcの初期値が下限電圧Vcmと等しいとして説明する。
【0044】
まず、負荷19に20Aの電流が流れている(負荷電流I=20A)の場合は、図2により、設定充電電圧Vcsは上限電圧Vcu(=23V)に決定される。従って、図3(a)の車両走行モードにおいて、蓄電部23が回生電力を充電する際は、蓄電部23の電圧Vcが上限電圧Vcuになるまで充電される設定となる。
【0045】
この設定状態で、車両走行モードに従って車両の走行を行った場合について説明する。
【0046】
まず、図3(a)の時刻t0で車両が加速する。この時、蓄電部23には回生電力が蓄えられていない状態、すなわち、蓄電部23の電圧Vcが下限電圧Vcm(=14V)である。従って、負荷19にはエンジン11のトルクによる発電機13の発電電力が供給され、電圧Vcは下限電圧Vcmを維持する。また、加速中は回生電力が発生しないので、制御回路25はDC/DCコンバータ21に対し、蓄電部23への充電を行わないよう制御する。
【0047】
その後、時刻t1で車両が減速を開始する。これにより、発電機13から回生電力が発生するので、制御回路25は車両用制御回路から制動を開始したことを示すデータ信号dataを受信すると、DC/DCコンバータ21に対し、蓄電部23への充電を行うよう制御信号contを出力する。これにより、蓄電部23に回生電力が充電される。
【0048】
ここで、図3(a)の場合は、既に負荷電流Iが20Aであることがわかっている状態であるので、設定充電電圧Vcsを上限電圧Vcuと決定されているが、これは時刻t1の段階で現在の負荷電流Iを電流検出回路17から読み込み、それに応じた設定充電電圧Vcsを図2より求めて更新するようにしてもよい。
【0049】
時刻t1以降で、DC/DCコンバータ21は発電機13で発電された回生電力を蓄電部23に充電するのであるが、発電機13で発電される電圧は例えば14.5V程度であるので、発電機13の発電電圧を昇圧して、蓄電部23の電圧Vcが設定充電電圧Vcsになるまで蓄電部23を充電する。これにより、回生電力を回収できる。
【0050】
その後、制御回路25は蓄電部23の電圧Vcが設定充電電圧Vcsに至る時刻t2で、DC/DCコンバータ21に充電を停止するよう制御信号contを出力する。なお、図1には示していないが、DC/DCコンバータ21には蓄電部23の電圧Vcや主電源15側の電圧Vfを検出する回路が内蔵されているので、その出力に基いて電圧Vcが設定充電電圧Vcsに至ったか否かを判断している。
【0051】
その後、時刻t3まで車両の制動が続くが、蓄電部23は既に設定充電電圧Vcsまで充電が完了しているので、時刻t2から時刻t3までは蓄電部23の電圧Vcが一定となる。なお、時刻t1から時刻t3までは回生電力が負荷19にも供給される。従って、エンジン11が燃料を消費して発生するエンジントルクによる発電が行われないので、燃料消費が抑制される。
【0052】
その後、時刻t3で車両が再び加速する。この車両挙動の変化は、上記したように車両用制御回路からのデータ信号dataにより制御回路25に送信される。これを受け、制御回路25は直ちにDC/DCコンバータ21に対して、蓄電部23が蓄えた回生エネルギーにより電力を負荷19に供給するように制御信号contを出力する。その結果、蓄電部23から負荷19への電力供給が開始されるが、蓄電部23の電圧Vcは時刻t3では上限電圧(=23V)であるので、DC/DCコンバータ21は負荷19を駆動する電圧(=12V)まで降圧して供給する。
【0053】
このような動作により、時刻t3以降で蓄電部23の電圧Vcは経時的に低下していく。また、この時は蓄電部23に蓄えられた回生エネルギーにより、負荷19に電力が供給されるので、発電機13による発電は不要となる。従って、車両用制御回路(図示せず)は発電機13が発電しないように制御する。
【0054】
その後、時刻t4で再び車両が減速すると、制御回路25は時刻t1と同様に回生電力を蓄電部23に充電する制御を行う。これにより、蓄電部23の電圧Vcは再び上昇する。
【0055】
その後、時刻t5で再び車両が加速する。この時、蓄電部23の電圧Vcは設定充電電圧Vcsに至っていないが、制御回路25は直ちに蓄電部23に蓄えられた回生エネルギーを負荷19に供給するようにDC/DCコンバータ21を制御する。これにより、できるだけ早く蓄電部23の回生エネルギーを負荷19に消費させ、次回の車両走行時に発生する回生電力を最大限に回収することができる。その結果、さらなる効率向上が図れる。
【0056】
その後、時刻t6で蓄電部23の電圧Vcが下限電圧Vcmに至れば、制御回路25は蓄電部23から負荷19への電力供給を停止するとともに、車両用制御回路はエンジン11のトルクにより発電機13から発電される電力を負荷19に供給するよう制御する。これにより、負荷19には、蓄電部23に回生エネルギーが蓄えられている時は蓄電部23から、回生エネルギーが蓄えられていない時は発電機13から、それぞれ電力が供給される。従って、制動時に発生する電気エネルギー(回生エネルギー)を活用して負荷19に供給できるので、車両全体の燃費向上が可能となる。
【0057】
その後、時刻t7で再び車両が減速するが、この時の動作は時刻t1と同じであるので、説明を省略する。さらに、時刻t8で蓄電部23の電圧Vcが設定充電電圧Vcsに至るが、この時の動作も時刻t2と同じである。
【0058】
その後、時刻t9で減速が終了し、車両が停止する。この時は、時刻t3と同様に、制御回路25は蓄電部23の回生エネルギーにより電力を負荷19に供給する。これにより、蓄電部23の電圧Vcは経時的に低下し、時刻t10で下限電圧Vcmに至る。その後は、制御回路25が蓄電部23から負荷19への電力供給を停止するよう制御する。
【0059】
次に、負荷電流Iが12Aの場合について、図3(b)を参照しながら説明する。なお、この場合の設定充電電圧Vcsは図2より20Vとなる。
【0060】
時刻t20から時刻t21までにおける車両の加速期間の動作は、図3(a)の時刻t0から時刻t1までのものと同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0061】
その後、時刻t21から車両が減速を開始すると、発電機13で発生した回生電力がDC/DCコンバータ21を介して蓄電部23に充電される。この時の充電速度はDC/DCコンバータ21により決定されるので、負荷電流Iと関係なく一定である。従って、時刻t21から時刻t22までの電圧Vcの傾きは、図3(a)の時刻t1から時刻t2までの傾きと同じである。
【0062】
但し、図3(b)においては、設定充電電圧Vcsが20Vと決定されているので、図3(a)の時刻t2より早い時刻t22で、蓄電部23の電圧Vcが設定充電電圧Vcsに至る。これにより、蓄電部23への充電が停止するので、時刻t22以降は電圧Vcが設定充電電圧Vcsを維持する。なお、充電の停止動作等は図3(a)の時刻t2の場合と同じである。
【0063】
その後、時刻t23で車両が再加速すると、蓄電部23の回生エネルギーにより電力が負荷19に供給される。この時の動作は図3(a)の時刻t3と同じであるが、負荷電流Iが12Aであり小さいので、電圧Vcの降下速度(傾きの絶対値)は図3(a)に比べ小さくなる。
【0064】
その後、時刻t24で車両が再減速すると、蓄電部23に回生電力が充電される。そして、時刻t25において、蓄電部23の電圧Vcが設定充電電圧Vcsに至るが、同時に車両が再加速する。従って、回生により蓄電部23に蓄えられた回生エネルギーは時刻t25から時刻t26まで負荷19に供給される。
【0065】
その後、時刻t26で再び減速すると、制御回路25は直ちに負荷19への蓄電電力の供給を停止し、制動時の回生電力を充電するよう制御する。これにより、時刻t21以降と同様に蓄電部23が充電され、その電圧Vcが経時的に上昇する。
【0066】
その後、時刻t27で蓄電部23の電圧Vcが設定充電電圧Vcsに至ると、制御回路25は蓄電部23への充電を停止する。その結果、時刻t27以降では蓄電部23の電圧Vcは設定充電電圧Vcsを維持する。
【0067】
その後、時刻t28で減速が終了し、車両が停止する。この時は、時刻t23と同様に、制御回路25は蓄電部23の回生エネルギーを負荷19に供給する。これにより、蓄電部23の電圧Vcは経時的に低下していく。
【0068】
このような動作において、図3(a)と比較すると、蓄電部23の電圧Vcは最高でも設定充電電圧Vcsの20Vまでしか至らない。従って、蓄電部23が高電圧のままである期間が図3(a)に比べて低減され、その分、蓄電部23の寿命を延ばすことができる。
【0069】
また、図3(a)では負荷電流Iが20Aであるため、例えば時刻t6で蓄電部23の電圧Vcが下限電圧Vcmに達し、その後は回生電力が発生する時刻t7まではエンジン11により発電機13を駆動して負荷19に電力を供給していた。一方、図3(b)では負荷電流Iが12Aであるため、例えば時刻t25から時刻t26までの加速中にも負荷19に蓄電部23の回生エネルギーを供給し続けることができる。従って、図3(a)の時刻t6から時刻t7までのようなエンジン11の駆動による発電を行うことがない。ゆえに、蓄電部23の電圧Vcを抑制しつつ、さらなる燃料消費の抑制も可能となる。
【0070】
次に、負荷電流Iが6Aの場合について、図3(c)を参照しながら説明する。なお、この場合の設定充電電圧Vcsは図2より17Vとなる。また、以下の説明では、図3(c)の実線の特性について述べる。
【0071】
時刻t40から時刻t41までにおける車両の加速期間の動作は、図3(a)の時刻t0から時刻t1までのものと同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0072】
その後、時刻t41から車両が減速を開始すると、発電機13の回生電力が蓄電部23に充電されるが、上記したように充電速度は負荷電流Iと関係なく一定であるので、時刻t41から時刻t42までの電圧Vcの傾きは、図3(a)の時刻t1から時刻t2までの傾きと同じである。
【0073】
但し、図3(c)においては、設定充電電圧Vcsが17Vと決定されているので、図3(b)の時刻t22よりさらに早い時刻t42で、蓄電部23の電圧Vcが設定充電電圧Vcsに至る。これにより、蓄電部23への充電が停止するので、時刻t42以降は電圧Vcが設定充電電圧Vcsを維持する。なお、充電の停止動作等は図3(a)の時刻t2と同じである。
【0074】
その後、時刻t44で車両が再加速すると、蓄電部23の回生エネルギーにより電力が負荷19に供給される。この時の動作は図3(a)の時刻t3と同じであるが、負荷電流Iが6Aであり、さらに小さいので、電圧Vcの傾きの絶対値も図3(b)に比べさらに小さくなる。
【0075】
その後、時刻t45で車両が再減速すると、蓄電部23に回生電力が充電される。そして、時刻t46において、蓄電部23の電圧Vcが設定充電電圧Vcsに至り、その後、蓄電部23への充電が停止する。その結果、電圧Vcは設定充電電圧Vcsを維持する。
【0076】
その後、時刻t47で車両が再加速すると、蓄電部23の回生エネルギーは時刻t47から時刻t48まで負荷19に供給される。
【0077】
その後、時刻t48から再び減速し、時刻t49で蓄電部23の電圧Vcが設定充電電圧Vcsに至り、時刻t50で車両が停止する一連の動作は、それぞれ図3(b)の時刻t26、時刻t27、時刻t28の動作と同じであるので、説明を省略する。
【0078】
このような動作において、図3(b)と比較すると、蓄電部23の電圧Vcは最高でも設定充電電圧Vcsの17Vまでしか至らない。従って、蓄電部23が高電圧のままである期間が図3(b)に比べて低減され、その分、蓄電部23の寿命をさらに延ばすことができる。なお、図3(a)〜(c)より、既定の車両走行モードにおける蓄電部23の電圧Vcの平均値は、負荷電流Iが20A、12A、6Aの順に小さくなり、後者ほど蓄電部23の寿命に与える影響が小さくなることがわかる。
【0079】
また、図3(c)の場合も、既定の車両走行モードにおいて、図3(b)の時刻t21以降と同様に、時刻t41以降でエンジン11のトルクによる発電機13の発電電力が負荷19に供給される期間がないため、燃料消費の抑制が可能となる。
【0080】
ここで、従来の構成で負荷電流Iが6Aであった場合の動作を図3(c)の破線に示す。時刻t40から時刻t42までの動作は図3(c)の実線における動作と同じである。但し、従来の構成では負荷電流Iの大きさにかかわらず、設定充電電圧Vcsは上限電圧Vcu(=23V)に固定されているので、時刻t42ではまだ蓄電部23の電圧Vcが上限電圧Vcuに至っていない。従って、時刻t42以降も回生電力の充電を継続する。その結果、図3(c)の破線に示すように、蓄電部23の電圧Vcは上限電圧Vcuに至る時刻t43まで上昇を続け、時刻t43で充電を停止する。ゆえに、図3(c)の破線における時刻t40から時刻t44までの動作は、図3(a)の時刻t0から時刻t3までの動作と同じになる。
【0081】
その後、時刻t44で車両が再加速すると、蓄電部23の回生エネルギーにより電力が負荷19に供給されるのであるが、負荷電流Iが6Aと小さいため、図3(c)の破線に示すように、蓄電部23の電圧Vcは時刻t44から時刻t45にかけてなかなか低下しない。従って、この期間は蓄電部23が高電圧状態となる。
【0082】
その後、時刻t45で車両が再減速すると、蓄電部23には回生電力が充電されるのであるが、負荷19により消費されたエネルギーが少ないため、蓄電部23は時刻t46ですぐに満充電に至り、その後、満充電電圧(=23V)を維持する。
【0083】
その後、時刻t47で車両が再加速すると、蓄電部23の回生エネルギーは負荷19に供給されるが、この場合も負荷19の消費電流(負荷電流I)が小さいため、加速が終わる時刻t48に至っても、蓄電部23の電圧Vcは高電圧状態のままである。
【0084】
その後、時刻t48から再び減速し、時刻t49で蓄電部23の電圧Vcが上限電圧Vcuに至り、時刻t50で車両が停止する一連の動作は、図3(c)の実線の動作と基本的に同じであるが、電圧Vcの絶対値が実線の場合より全般に高いままである。これらのことから、従来の構成で負荷電流Iが小さい場合は蓄電部23の回生エネルギーがなかなか消費されず、蓄電部23が高電圧状態にある期間が長くなることがわかる。なお、従来の構成でも、本実施の形態1の構成でも、時刻t41以降では蓄電部23の電圧Vcが下限電圧Vcmに至らないため、エンジン11による発電が行われない。従って、いずれの構成も同等の燃費低減効果が得られることがわかる。
【0085】
以上の構成、動作により、負荷電流Iの大きさに応じて蓄電部23の設定充電電圧Vcsを決定するようにしたので、特に負荷電流Iが小さい時は負荷19に供給できる電力のみを蓄電部23に充電することができる。その結果、蓄電部23の高電圧印加状態が継続する期間を低減することができ、蓄電部23の長寿命化が可能となり、かつ回生電力を有効活用できるので、高効率な車両用電源装置を実現できる。
【0086】
なお、図3では、車両走行モードの間、負荷電流Iが一定であるとして説明したが、上記したように、設定充電電圧Vcsは車両の減速時毎に決定しているので、車両使用中に負荷電流Iが変動すると、設定充電電圧Vcsも変動する。この場合、設定充電電圧Vcsが以前の値より大きくなる場合は、その値に更新すればよいが、小さくなる場合は、現在の蓄電部23の電圧Vcを下回る可能性がある。このように、設定充電電圧Vcsが蓄電部の電圧Vcより小さく決定されると、制御回路25は、蓄電部23の電圧Vcが設定充電電圧Vcsに至るまでの間、たとえ車両減速による回生電力が発生しても、蓄電部23から負荷19への、既に蓄えられた回生エネルギーの供給を継続するようにしている。これにより、できるだけ早く蓄電部23の電圧Vcを設定充電電圧Vcsに至らせることができるので、蓄電部23が高電圧状態にある期間を低減することができる。
【0087】
また、本実施の形態1においては、負荷電流Iの大きさに応じて設定充電電圧Vcsを決定しているが、これは、負荷19の消費電力(以下、負荷電力Pという)に応じて決定するようにしてもよい。この場合は、図1の点線で示したように、制御回路25がDC/DCコンバータ21に内蔵された主電源15側の電圧検出回路(図示せず)により負荷電圧Vfを読み込めるようにするとともに、負荷電圧Vfと負荷電流Iの積から負荷電力Pを計算する必要があるが、実際に負荷19が消費している電力を求めることができるので、より正確に設定充電電圧Vcsを決定することが可能となる。なお、負荷電力Pと設定充電電圧Vcsの相関関係は、図2に示した負荷電流Iと設定充電電圧Vcsの相関関係と同様にして求めればよい。
【0088】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における車両用電源装置のブロック回路図である。なお、図4において、太線は電力系配線を、細線は信号系配線を、二本線は機械的接続を、それぞれ示す。また、図4において、図1と同じ構成要素には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0089】
すなわち、本実施の形態2における構成上の特徴は以下に示す点である。
【0090】
1)主電源15と負荷19の並列回路、および蓄電部23を互いに入れ替えるように電気的に接続した。
【0091】
2)DC/DCコンバータ21は蓄電部23側から主電源15側への単方向降圧型とした。
【0092】
3)制御回路25はDC/DCコンバータ21に内蔵された蓄電部23の電圧検出回路(図示せず)から電圧Vcを読み込む構成とした。
【0093】
4)制御回路25は制御信号contにより、発電機13の発電電圧を制御するようにした。
【0094】
上記以外の構成は図1と同じである。なお、電流検出回路17は図1と同様に主電源15と負荷19の間に電気的に接続する構成としたが、これは図4の破線に示すように、主電源15とDC/DCコンバータ21の間に接続してもよい。
【0095】
次に、このような車両用電源装置の動作について説明する。
【0096】
まず、車両起動によりエンジン11が駆動すると、機械的に接続された発電機13が駆動される。これにより、制御回路25は発電機13の発電電圧が下限電圧Vcmになるように制御する。その結果、蓄電部23は下限電圧Vcmまで充電される。また、DC/DCコンバータ21は主電源15側の電圧Vfが既定電圧(例えば14V)になるように、常に降圧動作を行うので、発電機13の発電電力はDC/DCコンバータ21を介して主電源15と負荷19に供給される。
【0097】
その後、車両加速時や定速走行時では、制御回路25は発電機13の発電電圧が下限電圧Vcmになるように制御を継続する。従って、蓄電部23は既に下限電圧Vcmまで充電されているので、発電電力はDC/DCコンバータ21を介して主電源15と負荷19にのみ供給される。
【0098】
その後、車両が制動等により減速すると、制御回路25は車両側制御回路(図示せず)から減速信号を受け取る。その結果、実施の形態1と同様にして、電流検出回路17から負荷電流Iを読み込み、図2より設定充電電圧Vcsを決定する。
【0099】
次に、制御回路25はDC/DCコンバータ21から蓄電部23の電圧Vcを読み込みながら、電圧Vcが設定充電電圧Vcsになるように発電機13の発電電圧を制御する。これにより、蓄電部23には制動による回生電力が充電される。なお、この場合、発電機13の発電電圧は下限電圧Vcmより大きくなるので、DC/DCコンバータ21は主電源15側の電圧Vfが既定電圧(14V)になるように降圧動作を行う。従って、発電機13の発電電圧が大きくなっても、DC/DCコンバータ21は主電源15や負荷19に過電圧が印加されないように制御している。
【0100】
このような動作により、制御回路25は、蓄電部23の電圧Vcが設定充電電圧Vcsになるように充電するために、発電機13を制御するので、実施の形態1と同様に、負荷電流Iの大小に応じて、蓄電部23が充電された時の電圧Vcが変化することになる。
【0101】
制御回路25は、車両の減速が終了した信号を車両側制御回路から受信すると、発電機13の発電を停止するように制御信号contを送信する。これにより、エンジン11のトルクが軽減され、省燃費化が図れる。発電機13が停止している間は、回生エネルギーを蓄えた蓄電部23からDC/DCコンバータ21を介して主電源15や負荷19に電力が供給される。従って、回生電力を有効に活用することができる。
【0102】
このようにして、車両が減速した場合は、その時の負荷電流Iを読み込んで設定充電電圧Vcsを決定し、蓄電部23の電圧Vcが設定充電電圧Vcsになるように発電機13の発電電圧を制御することにより、回生電力を蓄電部23に充電するとともに、減速以外の場合は、発電機13を停止して蓄電部23に蓄えられた回生エネルギーを主電源15や負荷19に供給するという一連の動作を繰り返すことで、省燃費化が図れる。さらに、実施の形態1で述べたように、蓄電部23の高電圧印加状態の期間を短縮できるので、長寿命化が図れる。
【0103】
なお、蓄電部23の電圧Vcが下限電圧Vcmに至ると、制御回路25は発電機13の発電を再開する。この時、減速時でなければ蓄電部23の電圧Vcが下限電圧Vcmを維持するように発電機13の発電電圧を制御する。
【0104】
ゆえに、このような車両用電源装置を用いて、図3に示す車両走行モードに従った車両動作を行った場合も、蓄電部23の電圧Vcは負荷電流Iに応じて図3(a)〜(c)と同様の挙動になる。
【0105】
以上の構成、動作により、発電機13を制御する構成としても、蓄電部23の高電圧印加状態が継続する期間を低減することができ、蓄電部23の長寿命化が可能となり、かつ回生電力を有効活用できるので、高効率な車両用電源装置を実現できる。
【0106】
なお、本実施の形態2においては、負荷電流Iの大きさに応じて設定充電電圧Vcsを決定しているが、これは、実施の形態1で述べたように、負荷19の消費電力(負荷電力P)に応じて決定するようにしてもよい。この場合は、図4の点線で示したように、制御回路25がDC/DCコンバータ21に内蔵された主電源15側の電圧検出回路(図示せず)により負荷電圧Vfを読み込めるようにするとともに、負荷電圧Vfと負荷電流Iの積から負荷電力Pを計算すればよい。
【0107】
また、本実施の形態2においても、実施の形態1で述べたように、制御回路25は、負荷電流I、または負荷電力Pの変動により、設定充電電圧Vcsが蓄電部23の電圧Vcより小さく決定されると、蓄電部23の電圧Vcが設定充電電圧Vcsに至るまで、蓄電部23から負荷19への回生エネルギーの供給を継続するように制御している。具体的には、蓄電部23の電圧Vcが設定充電電圧Vcsに至るまで、発電機13の発電を停止するようにしている。これにより、速やかに蓄電部23の電圧Vcを設定充電電圧Vcsまで放電でき、蓄電部23が高電圧印加状態にある期間を短くできる。
【0108】
また、実施の形態1、2では、制御回路25が車両の減速時毎に設定充電電圧Vcsを決定しているが、これは既定期間毎に負荷電流I、または負荷電力Pを求めて、設定充電電圧Vcsを更新するようにしてもよい。これにより、負荷電流Iや負荷電力Pの変動に素早く対応して最適な設定充電電圧Vcsを決定できるので、さらなる蓄電部23の長寿命化が可能となる。
【0109】
また、実施の形態1、2では、既定の車両走行モード(10・15モード)を例に説明したが、これは、実際の車両走行データにより走行パターンを規定し、これによる実際の車両走行モードを求めるとともに、負荷電流I、または負荷電力Pを求め、これらより設定充電電圧Vcsを求めるようにしてもよい。具体的には、前記実際の車両走行モードに応じて、負荷19への全電力供給期間の内、制動により発電機13が発電した電力を負荷19に供給しながら蓄電部23に充電する期間tgrと、蓄電部23に蓄えられた回生エネルギーを負荷19へ供給する期間tcとの合計が最大になるように、負荷電流I、または負荷電力Pの相関として設定充電電圧Vcsを求める。このようにして決定した設定充電電圧Vcsは、実際の車両走行に基いているため、蓄電部23の長寿命化と高効率化に対し、より現実的な効果が得られる。
【0110】
また、前記実際の車両走行モードは、制御回路25により、既定条件が成立すれば前記相関が更新されるようにしてもよい。ここで、前記既定条件は、車両使用時における既定期間経過時、または車両使用終了時の少なくともいずれかとする。これにより、前記相関は、例えば車両使用時の既定期間毎、および車両使用終了時の両方で、運転者に応じた、それまでの実際の車両走行モードが更新される。従って、車両の走行パターンの変化や運転者の交替があったとしても、適宜前記相関が更新されるので、車両の使用状況に応じ常に蓄電部23の寿命を確保しつつ、最大限の燃費改善効果を得ることができる。
【0111】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における車両用電源装置のブロック回路図である。図6は、本発明の実施の形態3における車両用電源装置の充電状態に対する設定充電電圧、および発電機の停止率の相関図である。図7は、本発明の実施の形態3における車両用電源装置の充電状態と負荷電流に対する設定充電電圧、および発電機の停止率の相関図である。なお、図5において、太線は電力系配線を、細線は信号系配線を、二本線は機械的接続を、それぞれ示す。また、図5において、図1と同じ構成要素には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0112】
すなわち、本実施の形態3における構成上の特徴は以下に示す点である。
【0113】
1)電流検出回路17を外した。
【0114】
2)主電源15と直列に主電源電流検出回路31を接続した。これにより、主電源15に流れる主電源電流Ibを検出することができる。なお、主電源電流検出回路31の出力(主電源電流Ib)は信号系配線で制御回路25に出力される構成とした。
【0115】
3)制御回路25は主電源電流検出回路31から得られる主電源電流Ibを時間積分することにより、主電源15の充電状態SOCを検出する構成とした。なお、充電状態SOCは主電源15の充電量を示す指数で、満充電状態を100%とした時の百分率で示される。本実施の形態3では、主電源15(鉛バッテリ)の過放電による劣化を考慮して、充電状態SOCが90%から100%の間で主電源15を使用している。
【0116】
上記以外の構成は図1と同じである。
【0117】
次に、このような車両用電源装置の動作について説明する。
【0118】
まず、実施の形態1で述べたように、DC/DCコンバータ21は主電源15側から蓄電部23側への昇圧型であるので、蓄電部23の電圧Vcは主電源15側の電圧Vf(通常時14V)以上とする必要がある。従って、蓄電部23には少なくとも下限電圧Vcm(=14V)まで充電が行われており、この時の蓄電部23に蓄えられた回生エネルギーを0として説明する。
【0119】
この状態において、車両用電源装置は実施の形態1と同様に、基本的には車両減速時に駆動輪14により駆動させられて発生する発電機13の回生電力により、DC/DCコンバータ21を介して昇圧して蓄電部23に回生エネルギーとして充電し、減速時以外に蓄電部23の回生エネルギーを降圧して主電源15や負荷19に供給する動作を行う。この際の蓄電部23への充電は以下のようにして制御されている。
【0120】
まず、制御回路25は、車両用制御回路からブレーキ信号等の車両減速を示す信号をデータ信号dataにより受け取ると、現在の主電源15の充電状態SOCを制御回路25の内蔵メモリに取り込む。なお、上記したように充電状態SOCは主電源15の充放電に伴う主電源電流Ibを時間積分したものであるので、この時間積分動作は制御回路25により一定期間毎に演算されている。
【0121】
次に、制御回路25は、あらかじめ内蔵メモリに記憶された図6の充電状態SOC(横軸)と設定充電電圧Vcs(左縦軸)の相関関係から、取り込んだ充電状態SOCに対応した設定充電電圧Vcsを決定する。なお、設定充電電圧Vcsは実施の形態1で説明したものと同じである。次に、制御回路25は決定された設定充電電圧VcsをDC/DCコンバータ21に出力するとともに、発電機13の回生電力を蓄電部23に充電するよう制御信号contを出力することで、DC/DCコンバータ21は蓄電部23の電圧Vcが設定充電電圧Vcsになるように蓄電部23への充電を行う。
【0122】
このような動作により、制御回路25は、蓄電部23の電圧Vcが設定充電電圧Vcsになるように充電するために、DC/DCコンバータ21を制御するので、充電状態SOCの高低に応じて、蓄電部23が充電された時の電圧Vcが変化することになる。
【0123】
ここで、図6の充電状態SOCと設定充電電圧Vcsの相関図について説明する。図6より、充電状態SOCが96%以上の領域では、充電状態SOCの増加とともに、設定充電電圧Vcsは減少し、充電状態SOCが96%より低いと、設定充電電圧Vcsは一定になる。この一定になった設定充電電圧Vcsは実施の形態1で説明した蓄電部23の上限電圧Vcu(23V)である。従って、設定充電電圧Vcsは、充電状態SOCが低くなるほど下限電圧Vcmから上限電圧Vcuに向かって大きくなり、上限電圧Vcuに至れば一定となる。なお、上記したように、蓄電部23の電圧Vcは常に14V以上でなければならないので、充電状態SOCが100%、すなわち主電源15が満充電でこれ以上充電できない時に設定充電電圧Vcsが下限電圧Vcmになるようにしている。
【0124】
これらのことから、充電状態SOCが高い時は、設定充電電圧Vcsが小さくなるので、蓄電部23に蓄えられる電力が少なくなるように制御されることがわかる。その結果、蓄電部23の電圧Vcは、上限電圧Vcuよりも小さくなるので、蓄電部23を構成する各電気二重層キャパシタに印加される電圧も小さくなり、それらの寿命を延ばすことができる。従って、主電源15がそれほど充電できない時には蓄電部23への充電電圧を絞ることにより、蓄電部23の長寿命化が可能となる。
【0125】
ここで、図6に示した充電状態SOCと設定充電電圧Vcsの相関関係の求め方を以下に詳しく説明する。
【0126】
本実施の形態3における上記制御を最も効率的に行うには、主電源15が充電受け入れ可能な電力(充電状態SOCより求められる)だけを回生により蓄電部23に充電するように設定充電電圧Vcsを決定すればよい。しかし、充電状態SOCは負荷19の使用状況等により変動する。
【0127】
そこで、本実施の形態3では、既定の車両走行モード(例えば10・15モード)で走行した際に、蓄電部23の蓄電電力により主電源15が充電されることによる発電機13の停止率AR(後述)が最大になるように、設定充電電圧Vcsを、あらかじめ充電状態SOCの相関として求めておくようにしている。なお、本実施の形態3における発電機13の停止率ARは実施の形態1と定義が異なるので、ここでの停止率ARを具体的に説明する。
【0128】
まず、前記停止率ARは、既定の車両走行モード時において、蓄電部23に蓄えられた回生エネルギーを主電源15へ充電する期間(以下、蓄電部による主電源充電期間という)をtcb、エンジン11が燃料を消費して発電機13により発電し、主電源15を充電している期間(以下、燃料消費による主電源充電期間という)をtgeb、制動により発電機13が発電した回生電力を主電源15に充電しながら蓄電部23に充電する期間(以下、回生電力の主電源充電期間という)をtgrbとすると、AR(%)=100×(tcb+tgrb)/(tcb+tgeb+tgrb)により定義される。なお、上記式の分母は主電源15への全充電期間に相当する。
【0129】
ここで、主電源15を制動によって発生する回生電力のみで充電する場合、回生電力の主電源充電期間tgrbによる蓄電部23への充電と、蓄電部による主電源充電期間tcbにおける蓄電部23から主電源15への放電のみで、蓄電部23の充放電が成立すればよいので、燃料消費による主電源充電期間tgebは、tgeb=0となる。これを上記式に代入すると、AR=100%、すなわち発電機13は回生発電時以外で停止状態となる。この状態が最も燃費のよい状態である。なお、発電機13の停止状態における負荷19への電力供給は主に主電源15により行われる。
【0130】
ここで、燃料消費による主電源充電期間tgebを小さくするためには、蓄電部による主電源充電期間tcbを大きくすればよく、そのためには、蓄電部23に蓄積される回生エネルギーを大きくすればよい。また、充電状態SOCが低いほど、tgeb=0にするために必要な回生エネルギーは大きくなる。
【0131】
このことから、車両が既定の車両走行モードで走行している場合において、停止率ARを最大化(可能ならば100%)することができる最小の回生エネルギー量から設定充電電圧Vcsを決定すればよい。ここで、一例として10・15モード走行において、本実施の形態3で用いた蓄電部23が蓄えることのできる回生エネルギーを考慮して、充電状態SOCに対する発電機13の停止率ARの相関を求めると、図6に示すようになった。なお、充電状態SOCは横軸、停止率ARは右縦軸である。図6より、充電状態SOCが96%以上では主電源15が満充電に近いので、蓄電部23に蓄えることができる回生エネルギー以下で主電源15を充電できる。従って、停止率AR=100%である。充電状態SOCが96%より低いと、蓄電部23の回生エネルギーだけでは主電源15を満充電できず、蓄電部23が放電して電圧Vcが下限電圧Vcmに至った後は、エンジン11が発電機13を駆動して主電源15を充電する必要がある。従って、停止率ARは充電状態SOCが低くなるほど小さくなる。これを換言すれば、一般に充電状態SOCが低いと主電源15を充電する際の受け入れ電流が大きくなるので、充電状態SOCが低いほど蓄電部23が蓄えた回生エネルギーを主電源15の充電に活用できることになる。ゆえに、図6では前記既定の車両走行モードにおいて、充電状態SOC=96%で蓄電部23に満充電された回生エネルギーが全て主電源15の充電に活用できるものとして、以下説明する。
【0132】
上記した充電状態SOCと停止率ARの相関から、設定充電電圧Vcsを次のようにして決定する。
【0133】
まず、充電状態SOCが96%より低ければ、停止率ARが100%より小さくなるので、蓄電部23を満充電状態にしても、エンジン11のトルクにより発電機13を駆動しなければならない。従って、この場合は蓄電部23の電圧Vcが上限電圧Vcu(=23V)に至るまで充電し、蓄電部23の充電できるエネルギーを最大限に利用する。ゆえに、設定充電電圧Vcsは充電状態SOCが96%より低ければ上限電圧Vcuとなるように決定する。
【0134】
次に、充電状態SOCが96%以上であれば、停止率ARは100%である。ゆえに、蓄電部23を満充電状態にしなくても、エンジン11のトルクによる発電機13の発電を行うことなく蓄電部23から主電源15への充電ができる。この時、充電状態SOCが高いほど、蓄電部23に充電する回生エネルギーを少なくしても主電源15に必要な電力を充電できるので、図6に示すように、設定充電電圧Vcsは充電状態SOCが高くなるほど低くなるように決定する。これにより、蓄電部23に不必要な高電圧が印加されることがなくなり、蓄電部23の長寿命化が可能となる。なお、上記したように、蓄電部23の電圧Vcは下限電圧Vcm(=14V)より低くできないので、充電状態SOCが100%の時に設定充電電圧Vcsが下限電圧Vcmと等しくなるように決定している。
【0135】
以上のことから、充電状態SOCと設定充電電圧Vcsの相関関係は、既定の車両走行モードに応じて、主電源15への全充電期間(tcb+tgeb+tgrb)の内、回生電力の主電源充電期間tgrbと、蓄電部による主電源充電期間tcbとの合計が最大になるように、あらかじめ求めておく。
【0136】
なお、このようにして求めた図6の相関は、図2の相関に対して左右反転したものとなる。これは、図2の横軸(負荷電流I)が大きいほど多くの回生エネルギーを蓄電部23に充電する相関になっているのに対し、図6の横軸(充電状態SOC)は低いほど主電源15の充電受入量が大きくなり、その分、多くの回生エネルギーを蓄電部23に充電する相関になるためである。
【0137】
ここで、負荷電流Iが変化した時の動作について述べる。負荷電流Iが大きくなると、発電機13が停止していれば主電源15の放電が大きくなる。その結果、充電状態SOCが低下する。これにより、図6の相関から蓄電部23の設定充電電圧Vcsが高くなる。従って、蓄電部23に蓄えられる回生エネルギーが増加し、一方で上記したように充電状態SOCは低下しているので主電源15の充電受入量が大きくなる。これらのことから、負荷電流Iが大きくなることによる充電状態SOCの低下分、蓄電部23への充電量が増大するので、主電源15は放電量と充電受入量のバランスが取れ、安定化を図ることができる。
【0138】
次に、3種類の充電状態SOCにおいて、既定の車両走行モードで車両走行した場合の蓄電部23の電圧Vcの具体的な経時変化についてであるが、これらは実施の形態1で説明した図3(a)〜(c)と全く同じになるので、詳細な説明を省略する。但し、図3(a)の負荷電流I=20Aは充電状態SOC=95%に、(b)のI=12AはSOC=97%に、(c)のI=6AはSOC=98.5%に、それぞれ相当する。また、図3の車両走行モードの間は充電状態SOCが一定であるとしている。
【0139】
これらのことから、図3(a)の場合はSOC=95%に相当し、主電源15への充電受入量が大きいため、回生時における蓄電部23の設定充電電圧Vcsは上限電圧Vcu(=23V)となり、その電圧まで蓄電部23が充電されることになる。また、図3(b)の場合はSOC=97%に相当するので、図6より設定充電電圧Vcs=20Vと決定される。従って、主電源15を満充電できる必要最低限の回生エネルギーが蓄電部23に充電され、蓄電部電圧Vcが高いままでいる期間を短縮できる。同様に、図3(c)の場合はSOC=98.5%に相当するので、図3(b)に比べ設定充電電圧Vcsが17Vと、さらに低くなる。ゆえに、蓄電部電圧Vcが高いままでいる期間をより短縮できる。
【0140】
以上の構成、動作により、充電状態SOCの大きさに応じて蓄電部23の設定充電電圧Vcsを決定するようにしたので、特に充電状態SOCが高い時は主電源15を充電するための電力のみを回生エネルギーにより蓄電部23に充電することができる。その結果、蓄電部23の高電圧印加状態が継続する期間を低減することができ、蓄電部23の長寿命化が可能となり、かつ回生電力を有効活用できるので、高効率な車両用電源装置を実現できる。
【0141】
なお、本実施の形態3では実施の形態1の負荷電流Iに替えて充電状態SOCに応じた蓄電部23の充電制御について説明したが、これは実施の形態2の構成(図4)における負荷電流Iに替えて充電状態SOCに応じた蓄電部23の充電制御を行うようにしてもよい。この場合、充電状態SOCと設定充電電圧Vcsの相関は図6を用いればよい。また、実施の形態2と同様に、制御回路25による蓄電部23の充電制御は、充電回路としてのDC/DCコンバータ21に替わって発電機13によって行われる。
【0142】
また、本実施の形態3における図3の説明では、車両走行モードの間、充電状態SOCが一定であるとして説明したが、上記したように、設定充電電圧Vcsは車両の減速時毎に決定しているので、車両使用中に充電状態SOCが変動すると、設定充電電圧Vcsも変動する。この場合、設定充電電圧Vcsが以前の値より大きくなる場合は、その値に更新すればよいが、小さくなる場合は、現在の蓄電部23の電圧Vcを下回る可能性がある。このように、設定充電電圧Vcsが蓄電部の電圧Vcより小さく決定されると、制御回路25は、蓄電部23の電圧Vcが設定充電電圧Vcsに至るまでの間、たとえ車両減速による回生電力が発生しても、蓄電部23から負荷19への、既に蓄えられた回生エネルギーの供給を継続するようにしている。これにより、できるだけ早く蓄電部23の電圧Vcを設定充電電圧Vcsに至らせることができるので、蓄電部23が高電圧状態にある期間を低減することができる。
【0143】
また、本実施の形態3では、制御回路25が一定期間毎に演算している充電状態SOCについて、車両の減速時点における値から設定充電電圧Vcsを決定しているが、これは既定期間毎に充電状態SOCを求めて、設定充電電圧Vcsを更新するようにしてもよい。この既定期間は前記一定期間と同期させてもよいし、個別に決定しておいてもよい。これにより、充電状態SOCの変動に素早く対応して最適な設定充電電圧Vcsを決定できるので、さらなる蓄電部23の長寿命化が可能となる。
【0144】
また、本実施の形態3では、既定の車両走行モード(10・15モード)を例に説明したが、これは、実施の形態1、2と同様に、実際の車両走行データにより走行パターンを規定し、これによる実際の車両走行モードを求めるとともに、充電状態SOCを求め、これらより設定充電電圧Vcsを求めるようにしてもよい。具体的には、前記実際の車両走行モードに応じて、主電源15への全充電期間の内、制動により発電機13が発電した電力を主電源15に充電しながら蓄電部23に充電する期間tgrbと、蓄電部23に蓄えられた回生エネルギーを主電源15へ充電する期間tcbとの合計が最大になるように、充電状態SOCの相関として設定充電電圧Vcsを求める。このようにして決定した設定充電電圧Vcsは、実際の車両走行に基いているため、蓄電部23の長寿命化と高効率化に対し、より現実的な効果が得られる。
【0145】
また、前記実際の車両走行モードについても、実施の形態1、2と同様に、制御回路25により、前記既定条件が成立すれば前記相関が更新されるようにしてもよい。これにより、前記相関が更新されるので、車両の使用状況に応じ常に蓄電部23の寿命を確保しつつ、最大限の燃費改善効果を得ることができる。
【0146】
また、実施の形態1、2では負荷電流Iに応じて設定充電電圧Vcsを決定する場合について説明し、本実施の形態3では充電状態SOCに応じて設定充電電圧Vcsを決定する場合について説明したが、負荷電流Iと充電状態SOCの両方に応じて設定充電電圧Vcsを決定するようにしてもよい。この場合の設定充電電圧Vcsは図7に示す相関に従って決定される。すなわち、充電状態SOCの値に応じて負荷電流Iと設定充電電圧Vcsの相関が変わるので、これらの相関をあらかじめ充電状態SOC毎に求めて制御回路25の前記内蔵メモリに記憶しておく。そして、設定充電電圧Vcsを求める際には、現在の充電状態SOCに応じた負荷電流Iと設定充電電圧Vcsの相関から設定充電電圧Vcsを決定する。なお、図7では充電状態SOCを3種類(90%、95%、100%)のみ示したが、実際にはもっと細かく前記相関を求めればよい。また、前記内蔵メモリの容量が少ない場合には、前記相関を例えば3種のみとし、その間の充電状態SOCの値(例えば97%など)に対しては、3種の相関(例えば95%と100%の相関)から中間値を比例計算で求めて設定充電電圧Vcsを決定するようにしてもよい。但し、上記のようにして設定充電電圧Vcsを決定する場合には、図1の電流検出回路17と図5の主電源電流検出回路31の両方が必要になる。
【0147】
このように負荷電流Iと充電状態SOCに応じて設定充電電圧Vcsを決定することにより、充電状態SOCを任意の値に制御することも可能となる。具体的には、制御回路25は主電源15から負荷19への放電を小さくするように負荷電圧Vf(主電源15の電圧に相当)をDC/DCコンバータ21により制御する。同時に、制御回路25は設定充電電圧Vcsを上げて蓄電部23への回生エネルギーの充電量を増やし、蓄電部23から負荷19へ電力を供給するように制御する。これらの結果、主電源15からの放電が小さくなるので充電状態SOCを高く調整することができる。この際、主電源15からの放電が小さくなった分は蓄電部23から負荷19に電力が供給されるので、負荷19を動作し続けられるとともに、蓄電部23へも必要な電力だけが充電されるので、蓄電部23の不要な劣化を低減することができる。さらに、充電状態SOCが一定になるように制御すれば、主電源15の特に過放電による劣化の可能性を低減することができる。
【0148】
また、実施の形態1〜3では、停止率ARの最大値を100%としているが、エンジン11による発電を少しだけ許容し、停止率ARの最大値を例えば80%程度に抑えるようにしてもよい。これにより、蓄電部23の電圧Vcの最大値を小さくすることができるので、若干の燃費悪化を許容してでも、蓄電部23の寿命を大幅に延ばすように設定することが可能となる。
【0149】
また、本実施の形態1〜3において、制御回路25に電気的に接続された温度センサを蓄電部23に設ける構成とし、制御回路25は、前記温度センサから出力される温度Tに応じて設定充電電圧Vcsを補正するようにしてもよい。この場合、特に温度Tが高くなると、設定充電電圧Vcsを下げるように補正する。その結果、蓄電部23が高温の場合は、設定充電電圧Vcsが下がるので、蓄電部23の寿命に対して最も過酷な高温高電圧状態を回避することが可能となる。従って、蓄電部23の急激な劣化を低減でき、さらなる長寿命化を図ることができる。なお、温度Tによる設定充電電圧Vcsの補正は、設定充電電圧Vcsを決定した後に、温度Tに応じて行ってもよいし、あらかじめ前記相関を温度T毎に複数求めておき、現在の温度Tに対応した前記相関を選定して設定充電電圧Vcsを決定するようにしてもよい。
【0150】
また、実施の形態1〜3において、蓄電部23は電気二重層キャパシタで構成したが、これは電気化学キャパシタ等の高容量キャパシタでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明にかかる車両用電源装置は、高効率化と蓄電部の長寿命化が可能となるので、特に高信頼性が要求される補助電源としての車両用電源装置等として有用である。
【符号の説明】
【0152】
11 エンジン
13 発電機
15 主電源
17 電流検出回路
19 負荷
21 DC/DCコンバータ
23 蓄電部
25 制御回路
31 主電源電流検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制動時に電気エネルギーの発電により制動トルクを発生する発電機と、
前記発電機に電気的に接続され、前記電気エネルギーを回生エネルギーとして蓄える蓄電部と、
前記蓄電部に電気的に接続される負荷と、
前記負荷が消費する負荷電流(I)、または負荷電力(P)を検出し、前記負荷電流(I)、または前記負荷電力(P)に応じて、前記蓄電部に充電される電圧の最大値である設定充電電圧(Vcs)を決定し、前記設定充電電圧(Vcs)になるように前記蓄電部を充電するため、前記蓄電部に電気的に接続された充電回路、または前記発電機のいずれかを制御する制御回路とを備えた車両用電源装置。
【請求項2】
前記設定充電電圧(Vcs)は、既定の車両走行モードに応じて、前記負荷への全電力供給期間の内、制動により前記発電機が発電した電力を前記負荷に供給しながら前記蓄電部に充電する期間(tgr)と、前記蓄電部に蓄えられた前記回生エネルギーを前記負荷へ供給する期間(tc)との合計が最大になるように、あらかじめ前記負荷電流(I)、または前記負荷電力(P)の相関として求めておくようにした請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記負荷電流(I)、または前記負荷電力(P)の変動により、前記設定充電電圧(Vcs)が前記蓄電部の電圧(Vc)より小さく決定されると、前記蓄電部の電圧(Vc)が前記設定充電電圧(Vcs)に至るまで、前記蓄電部から前記負荷への前記回生エネルギーの供給を継続するようにした請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項4】
前記制御回路は、既定期間毎に前記負荷電流(I)、または前記負荷電力(P)を求めて、前記設定充電電圧(Vcs)を更新するようにした請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項5】
前記制御回路は、実際の車両走行モードと、前記負荷電流(I)、または前記負荷電力(P)を求め、前記実際の車両走行モードに応じて、前記負荷への全電力供給期間の内、制動により前記発電機が発電した電力を前記負荷に供給しながら前記蓄電部に充電する期間(tgr)と、前記蓄電部に蓄えられた前記回生エネルギーを前記負荷へ供給する期間(tc)との合計が最大になるように、前記負荷電流(I)、または前記負荷電力(P)の相関として前記設定充電電圧(Vcs)を求めるようにした請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項6】
制動時に電気エネルギーの発電により制動トルクを発生する発電機と、
前記発電機に電気的に接続され、前記電気エネルギーを回生エネルギーとして蓄える蓄電部と、
前記発電機に電気的に接続される主電源と、
前記主電源の充電状態(SOC)を検出し、前記充電状態(SOC)に応じて、前記蓄電部に充電される電圧の最大値である設定充電電圧(Vcs)を決定し、前記設定充電電圧(Vcs)になるように前記蓄電部を充電するため、前記蓄電部に電気的に接続された充電回路、または前記発電機のいずれかを制御する制御回路とを備えた車両用電源装置。
【請求項7】
前記設定充電電圧(Vcs)は、既定の車両走行モードに応じて、前記主電源への全充電期間の内、制動により前記発電機が発電した電力を前記主電源に充電しながら前記蓄電部に充電する期間(tgrb)と、前記蓄電部に蓄えられた前記回生エネルギーを前記主電源へ充電する期間(tcb)との合計が最大になるように、あらかじめ前記充電状態(SOC)の相関として求めておくようにした請求項6に記載の車両用電源装置。
【請求項8】
前記制御回路は、前記充電状態(SOC)の変動により、前記設定充電電圧(Vcs)が前記蓄電部の電圧(Vc)より小さく決定されると、前記蓄電部の電圧(Vc)が前記設定充電電圧(Vcs)に至るまで、前記蓄電部から前記蓄電部に電気的に接続された負荷へ前記回生エネルギーを供給するようにした請求項6に記載の車両用電源装置。
【請求項9】
前記制御回路は、既定期間毎に前記充電状態(SOC)を求めて、前記設定充電電圧(Vcs)を更新するようにした請求項6に記載の車両用電源装置。
【請求項10】
前記制御回路は、実際の車両走行モードと、前記充電状態(SOC)を求め、前記実際の車両走行モードに応じて、前記主電源への全充電期間の内、制動により前記発電機が発電した電力を前記主電源に充電しながら前記蓄電部に充電する期間(tgrb)と、前記蓄電部に蓄えられた前記回生エネルギーを前記主電源へ充電する期間(tcb)との合計が最大になるように、前記充電状態(SOC)の相関として前記設定充電電圧(Vcs)を求めるようにした請求項6に記載の車両用電源装置。
【請求項11】
前記制御回路は、既定条件が成立すれば前記相関を更新するようにした請求項5、または10に記載の車両用電源装置。
【請求項12】
前記既定条件は、車両使用時における既定期間経過時、または車両使用終了時の少なくともいずれかである請求項11に記載の車両用電源装置。
【請求項13】
前記制御回路に電気的に接続され、前記蓄電部に設けた温度センサを備え、
前記制御回路は、前記温度センサから出力される温度(T)に応じて前記設定充電電圧(Vcs)を補正するようにした請求項1、または6に記載の車両用電源装置。
【請求項14】
前記制御回路は、前記温度(T)が高くなると、前記設定充電電圧(Vcs)を下げるように補正する請求項13に記載の車両用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−41913(P2010−41913A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148318(P2009−148318)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】