説明

車両用高電圧バッテリーの安全構造

【課題】 高電圧バッテリーを構成する各バッテリーモジュールの内部短絡あるいは車両の破損等によって、セーフティープラグが遮断することができない部分に高電流が発生する場合にこれを遮断することができるようにして、高電圧バッテリーの安全性をさらに向上させることができるようにした車両用高電圧バッテリーの安全構造を提供する。
【解決手段】 互いに異なる極が隣接するように一列に配列された多数のバッテリーモジュールと、バッテリーモジュールのうち隣接したバッテリーモジュール間の互いに異なる極の端子間を電気的に連結するように設置される多数のバスバーと、を含んで構成され、バスバー自体には局部的に電気的抵抗値が大きい溶融可能部が一体に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用高電圧バッテリーの安全構造(SAFETY STRUCTURE FOR HIGH VOLTAGE BATTERY OF VEHICLE)に係り、より詳しくは、内部短絡又は車両破損等の理由により高電圧バッテリーで高電流が発生するようになる場合に対応することができるようにして車両の安全性を確保する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車及び電気自動車等のように電気を車両の駆動力として使用する車両には高電圧バッテリーが搭載される。高電圧バッテリーは、多数のバッテリーセルが連結されてバッテリーモジュールを成し、このようなバッテリーモジュールを多数個連結して一つのバッテリーパックを構成し、通常バッテリーパックの状態で車両に搭載されるようになる。
【0003】
高電圧バッテリーは、全体的に内部に非常に高いエネルギーを蓄積しており、車両の事故や高電圧バッテリー内部の短絡等が発生すると瞬間的に非常に大きい高電流が流れることとなり、感電や火災等のような様々な危険な状況が発生する可能性があるところ、このような状況に備えることができる対策が必要である。
【0004】
従来は上記したような危険に備えるための対策として図1に示したようなセーフティープラグ(SAFETY PLUG)が適用されている。すなわち、内部に多数のバッテリーセルを含む多数のバッテリーモジュール500間をバスバー502で直列連結して高電圧を形成するバッテリーパックにおいて、直列に連結されるバッテリーモジュール500の中間に位置するモジュールの間をバスバー502ではないヒューズの役割をするセーフティープラグ504で連結することにより、バッテリーモジュール500によって構成されるバッテリーパック506に高電流が流れる異常状況が発生すると、セーフティープラグ504が断線されて回路を遮断するようになる。
【0005】
しかし、上記したような従来の対策は、バッテリーパック506の単位では適切な安全装置になり得るが、全体のバッテリーパック506ではなく各バッテリーモジュール500内部又はバッテリーモジュール500間の短絡や高電流発生状況に対しては適切な対応策になり得ない問題がある。なお、以上の説明事項は、本発明の背景についての理解増進のためのものであり、この技術分野で通常の知識を有した者に既に知られた従来技術に該当することを認めるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−234848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであって、高電圧バッテリーを構成する各バッテリーモジュールの内部短絡あるいは車両の破損等によって、セーフティープラグが遮断することができない部分に高電流が発生する場合にこれを遮断することができるようにして、高電圧バッテリーの安全性をさらに向上させることができるようにした車両用高電圧バッテリーの安全構造を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明による車両用高電圧バッテリーの安全構造は、互いに異なる極が隣接するように一列に配列された多数のバッテリーモジュールと、前記バッテリーモジュールのうち隣接したバッテリーモジュール間の互いに異なる極の端子間を電気的に連結するように設置される多数のバスバーと、を含んで構成され、前記バスバー自体には局部的に電気的抵抗値が大きい溶融可能部が一体に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両用高電圧バッテリーの安全構造によれば、高電圧バッテリーを構成する各バッテリーモジュールの内部短絡あるいは車両の破壊等によって、セーフティープラグが遮断することができない部分に高電流が発生する場合にこれを遮断することができるようにして高電圧バッテリーの安全性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来技術による車両用高電圧バッテリーの安全構造を示す構成図である。
【図2】本発明による車両用高電圧バッテリーの安全構造の要部を示す斜視図である。
【図3】本発明による車両用高電圧バッテリーの安全構造に使用されるバスバーの一例を示した平面図である。
【図4】本発明による車両用高電圧バッテリーの安全構造に使用されるバスバーの一例を示した平面図である。
【図5】本発明による車両用高電圧バッテリーの安全構造に使用されるバスバーの一例を示した平面図である。
【図6】本発明による車両用高電圧バッテリーの安全構造に使用されるバスバーの一例を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明による車両用高電圧バッテリーの安全構造の好ましい実施形態について詳細に説明する。本実施形態による車両用高電圧バッテリーの安全構造は、互いに異なる極が隣接するように一列に配列された複数(多数)のバッテリーモジュールと、これらバッテリーモジュールのうち隣接したバッテリーモジュール間の互いに異なる極の端子間を電気的に連結するように設置される複数(多数)のバスバーと、を含んで構成される。バッテリーモジュールの数は特に限定されないが、通常3個以上で一つのバッテリーパックを構成する。バスバーは隣接する全てのバッテリーモジュールに設けることが好ましく、すなわち、バッテリーモジュールを一列にn個配列した場合、(n−1)個のバスバーを設けることが好ましい。バスバー自体の(平面)外形は細長い形状であれば限定されないが、長方形或いは四隅を丸めた長方形の平板状が好ましい。バスバーには局部的に電気的抵抗値が大きい溶融可能部が一体に形成される。この溶融可能部は、面積(断面積)が減少された面積減少部で構成することができる。すなわち、溶融可能部は、バスバーがバッテリーモジュールの端子に結合される両側部分の間に、電流が通過することができる断面積が縮小(減少)される形状で形成されることが好ましい。面積減少部は、バスバーの厚さを減少させても良いが、電気抵抗値の調整の自由度が大きくなる点では、平面外形面積(断面積)を減少させることが好ましい。より具体的な安全構造としては、バッテリーモジュールにはバスバーが結合される表面でバスバーを貫通するように突出するとともに(電気)伝導性を有した材質(材料)からなる端子ボスが一体に(突出)形成され、また、バッテリーモジュール内部のバッテリーセルと電気的に連結され、且つ端子ボスの周囲を囲む平板状の端子プレートが備えられることが好ましい。そして、バスバーには端子ボスが通過する端子結合ホールが形成され、バスバーは、端子結合ホールに端子ボスが挿入された状態で端子プレートに重畳されて結合されることが好適である。このような実施形態の場合には、溶融可能部は、バスバーの両側の端子結合ホールの間に形成されることが好ましい。なお、バスバーは、隣接した二つのバッテリーモジュールの端子を連結することができる長さの長辺を有する長方形とすることが好ましく、溶融可能部は、長方形の長辺の中間部分が両側から陥没するように形成された凹部とすることができる。凹部の形状は特に限定されないが、形成し易い点では、例えば、三角形、四角形、半円形に切開した(切欠いた)ような形状が好ましい。また、溶融可能部は、長方形の中央部分に円が穿孔された形状で形成することも好適である。
【実施例】
【0012】
以下、車両用高電圧バッテリーの安全構造の実施例について、図面を参照して具体的に説明する。本実施例は、図2に示したように、互いに異なる極が隣接するように一列に配列された多数のバッテリーモジュール1と、バッテリーモジュール1のうち隣接したバッテリーモジュール1間の互いに異なる極の端子間を電気的に連結するように設置される多数のバスバー3を含んで構成され、バスバー3自体には局部的に電気的抵抗値が大きい溶融可能部5が一体に形成される構造である。
【0013】
すなわち、各バッテリーモジュール1間を連結するバスバー3自体に局部的に電気的抵抗値が大きい溶融可能部5を一体に備えるようにすることにより、バッテリーモジュール1内部の短絡や車両破壊等の原因によりバッテリーモジュール1間に高電流が流れる状況になると、電気的抵抗値が周辺より相対的に大きい溶融可能部5が熱を発生しながら溶けて断線されることにより、高電流の流れを遮断することができるようにしたものである。
【0014】
したがって、上記したような高電圧バッテリーの安全構造をとるようになると、各バッテリーモジュール単位の高電流に対する安全対策が講じられ、高電圧バッテリーを搭載する車両の安全性がさらに向上することができるようになる。
【0015】
本実施例では、バスバー3の溶融可能部5は、バスバー3がバッテリーモジュール1の端子に結合される両側部分の間に電流が通過することができる断面積が縮小される形状で形成されることにより具現した。すなわち、電流を通過させる導線の抵抗はその断面積に反比例するため、バスバー3の断面積を局部的に縮小してその電気的抵抗を大きく増大させることにより、断面積が縮小された部分が溶融可能部5として機能するようにしたものである。
【0016】
もちろん、溶融可能部5は、これ以外にもバスバー3の一部分を相対的に電気的抵抗によって容易に溶融される金属材等で構成することもできるが、製作上の容易性や費用の側面で多少不利である。
【0017】
バッテリーモジュール1には、バスバー3が結合される表面でバスバー3を貫通するように突出されるとともに伝導性を有した材質からなった端子ボス7が一体に突出形成され、バッテリーモジュール1内部のバッテリーセルと電気的に連結され且つ端子ボス7の周囲を囲む平板状の端子プレート9が備えられており、バスバー3には端子ボス7が通過する端子結合ホール11が形成されている。
【0018】
したがって、バスバー3は端子結合ホール11に端子ボス7が挿入された状態で端子プレート9に重畳されて結合され、その結合状態は締結ナット13等によって堅固に固定されるようにすることが望ましい。
【0019】
一方、バスバー3は隣接した二つのバッテリーモジュール1の端子を連結する長い長方形状に形成され、バスバー3の溶融可能部5はバスバー3の両側の端子結合ホール11の間に形成される。溶融可能部5の形状は多様に選択することができるが、図3乃至図5に示したような簡単な形状で構成するのが望ましい。
【0020】
図3の実施例では、バスバー3の溶融可能部5は、上述の細長い長方形の中間部分が両側から陥没して三角形が切開された形状で形成されている。
【0021】
図4の実施例では、バスバー3の溶融可能部5が上述の細長い長方形の中間部分が両側から陥没して四角形が切開された形状で形成されており、図5の例では、バスバー3の溶融可能部5が長方形の中間部分が両側から陥没して半円形が切開された形状で形成されている。
【0022】
また、図6に示したバスバー3では、溶融可能部5が上述の細長い長方形の中央部分に円が穿孔された形状で形成されている。
【0023】
図3乃至図6の実施例は、すべてバスバー3で局部的に電気的抵抗が大きくなるようにその断面積が縮小される構造を有しているところ、これ以外にも多様な形状で溶融可能部5を構成することができる。
【0024】
参考に、本発明のバスバー3を各バッテリーモジュール1間に適用する場合にも従来と同じくセーフティープラグを共に使用するようにすることにより、高電圧バッテリーの安全性をさらに向上させることができるようにすることが可能である。以上、特定の実施例に関し図示して説明したが、特許請求の範囲に記載した本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、多様に改良及び変更することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 バッテリーモジュール
3 バスバー
5 溶融可能部
7 端子ボス
9 端子プレート
11 端子結合ホール
13 締結ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる極が隣接するように一列に配列された多数のバッテリーモジュールと、
前記バッテリーモジュールのうち隣接したバッテリーモジュール間の互いに異なる極の端子間を電気的に連結するように設置される多数のバスバーと、を含んで構成され、
前記バスバー自体には局部的に電気的抵抗値が大きい溶融可能部が一体に形成されることを特徴とする車両用高電圧バッテリーの安全構造。
【請求項2】
前記バスバーの溶融可能部は、前記バスバーがバッテリーモジュールの端子に結合される両側部分の間に、電流が通過することができる断面積が縮小される形状で形成されることを特徴とする請求項1に記載の車両用高電圧バッテリーの安全構造。
【請求項3】
前記バッテリーモジュールには前記バスバーが結合される表面で前記バスバーを貫通するように突出されるとともに伝導性を有した材質からなった端子ボスが一体に形成され、
前記バッテリーモジュール内部のバッテリーセルと電気的に連結され、且つ前記端子ボスの周囲を囲む平板状の端子プレートが備えられ、
前記バスバーには前記端子ボスが通過する端子結合ホールが形成され、
前記バスバーは、前記端子結合ホールに前記端子ボスが挿入された状態で前記端子プレートに重畳されて結合されることを特徴とする請求項2に記載の車両用高電圧バッテリーの安全構造。
【請求項4】
前記バスバーの溶融可能部は、前記バスバーの両側の端子結合ホールの間に形成されることを特徴とする請求項3に記載の車両用高電圧バッテリーの安全構造。
【請求項5】
前記バスバーは、隣接した二つのバッテリーモジュールの端子を連結する長い長方形状に形成され、
前記溶融可能部は、前記長方形の中間部分が両側から陥没して三角形が切開された形状で形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用高電圧バッテリーの安全構造。
【請求項6】
前記バスバーは、隣接した二つのバッテリーモジュールの端子を連結する長い長方形状に形成され、
前記溶融可能部は、前記長方形の中間部分が両側から陥没して四角形が切開された形状で形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の記載の車両用高電圧バッテリーの安全構造。
【請求項7】
前記バスバーは、隣接した二つのバッテリーモジュールの端子を連結する長い長方形状に形成され、
前記溶融可能部は、前記長方形の中間部分が両側から陥没して半円形が切開された形状で形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用高電圧バッテリーの安全構造。
【請求項8】
前記バスバーは、隣接した二つのバッテリーモジュールの端子を連結する長い長方形状に形成され、
前記溶融可能部は、前記長方形の中央部分に円が穿孔された形状で形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用高電圧バッテリーの安全構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−115038(P2013−115038A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−71667(P2012−71667)
【出願日】平成24年3月27日(2012.3.27)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【Fターム(参考)】