説明

車両誘導装置

【課題】路面勾配などがある場合でも車両を高精度に誘導できる車両誘導装置を提供することを課題とする。
【解決手段】車両を目的位置まで誘導する車両誘導装置であって、車両周辺を撮像する撮像手段と、車両の目的位置を設定する目的位置設定手段と、車両の現在位置から目的位置までの誘導軌跡を算出する誘導軌跡算出手段と、誘導軌跡に従って車両を誘導する車両誘導手段と、車両誘導中に異なる時刻に撮像された複数の画像に基づいて車両の進行方向を判定する判定手段と、その判定した車両の進行方向に基づいて車両の現在位置を更新する現在位置更新手段を備え、誘導軌跡算出手段は、現在位置更新手段で更新した車両の現在位置から目的位置までの誘導軌跡を算出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車支援などに適用される車両誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両を駐車する場合に運転者を支援する駐車支援装置が開発されている。駐車支援装置では、駐車スペースまでの目標走行軌跡を演算し、目標走行軌跡に追従するように舵角制御を行う。特許文献1に記載の装置では、時間的に連続する複数の画像における一致領域の移動ベクトルを演算し、その移動ベクトルに基づいて車両の駐車支援時の予測進路を予測し、その予測進路を車載モニタに表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−283913号公報
【特許文献2】特開2003−312412号公報
【特許文献3】特開平11−208496号公報
【特許文献4】特開2008−279949号公報
【特許文献5】特開2005−29025号公報
【特許文献6】特開2004−338637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の装置では路面が平坦であることを前提としているが、路面には勾配がある場合がある。路面に勾配がある場合、車両が進むべき方向(例えば、バック駐車時には車両が後方に進む方向)とは逆方向に進むこともある。その結果、適切な駐車支援ができなくなる。このような場合を想定し、車両が実際にはどちらの方向に進んでいるのかを加速度センサや正逆判定回路付の車輪速センサなどのセンサで検知することも考えられるが、標準的に装備されないこのようなセンサを別途設けることによってコストアップする。
【0005】
そこで、本発明は、路面勾配などがある場合でも車両を高精度に誘導できる車両誘導装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両誘導装置は、車両を目的位置まで誘導する車両誘導装置であって、車両周辺を撮像する撮像手段と、車両の目的位置を設定する目的位置設定手段と、車両の現在位置から目的位置設定手段で設定した目的位置までの誘導軌跡を算出する誘導軌跡算出手段と、誘導軌跡算出手段で算出した誘導軌跡に従って車両を誘導する車両誘導手段と、車両誘導中に撮像手段で異なる時刻に撮像された複数の画像に基づいて車両の進行方向を判定する判定手段と、判定手段で判定した車両の進行方向に基づいて車両の現在位置を更新する現在位置更新手段を備え、誘導軌跡算出手段は、現在位置更新手段で更新した車両の現在位置から目的位置までの誘導軌跡を算出することを特徴とする。
【0007】
この車両誘導装置では、目的位置設定手段によって車両を誘導する目的位置(例えば、駐車位置)を設定する。そして、車両誘導装置では、誘導軌跡算出手段によってその車両の現在位置から目的位置までの誘導軌跡を算出し、車両誘導手段によって誘導軌跡に従って車両を誘導する。特に、車両誘導装置では、撮像手段によって所定時間毎に車両周辺を撮像しており、判定手段によってその異なる時刻に撮像された複数の画像に基づいて車両誘導中に車両の進行方向(車両が実際に進んでいる方向)を判定する。そして、車両誘導装置では、現在位置更新手段によってその判定した進行方向に応じて車両の現在位置を更新し、誘導軌跡算出手段によってその更新された車両の現在位置から目的位置までの誘導軌跡を算出する。このように、車両誘導装置では、時系列の画像を用いて車両の進行方向を判定することにより、車両が実際に進んでいる方向に応じて高精度な車両の現在位置を取得できるとともにその現在位置を用いて適切な誘導軌跡に更新(補正)でき、高精度に車両を誘導することができる。例えば、路面勾配などによって車両が進むべき方向に対して逆方向に進んだ場合でも、車両が実際に進んでいる逆方向を高精度に判定でき、その実際に進んでいる逆方向に応じて現在位置を更新でき、適切な車両の誘導が可能となる。また、車両誘導装置では、車両の進行方向を判定するために、車両誘導装置に通常搭載される撮像手段による時系列の画像を用いているので、他のセンサを必要とせず、コストアップしない。
【0008】
本発明の上記車両誘導装置では、判定手段は、車両誘導中に撮像手段で異なる時刻に撮像された複数の画像間のオプティカルフローを算出し、当該オプティカルフローに基づいて車両の進行方向を判定すると好適である。
【0009】
この車両誘導装置では、異なる時刻に撮像された複数の画像間から導出されるオプティカルフローを利用して車両の進行方向を判定することにより、車両の進行方向を高精度に判定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、時系列の画像を用いて車両の進行方向を判定することにより、車両が実際に進んでいる方向に応じて高精度な車両の現在位置を取得できるとともにその現在位置を用いて適切な誘導軌跡に更新でき、高精度に車両を誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態に係るIPAシステムの構成図である。
【図2】駐車支援開始時の自車位置と駐車スペースの位置関係の一例である。
【図3】図2の自車位置と駐車スペースの位置関係における目標走行軌跡の一例である。
【図4】オプティカルフローの説明図である。
【図5】車両の駐車支援時の進行方向に対して前進と判定した場合の自車位置演算の説明図であり、(a)が前進前であり、(b)が前進後である。
【図6】車両の駐車支援時の進行方向に対して後退と判定した場合の自車位置演算の説明図であり、(a)が後退前であり、(b)が後退後である。
【図7】図1のIPAECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る車両誘導装置の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
本実施の形態では、本発明に係る車両誘導装置を、オートマチック車両に搭載されるIPA[Intelligent Parking Assist]システムに適用する。本実施の形態に係るIPAシステムは、駐車支援システムであり、車両を駐車する際に運転者による駐車支援要求があると、リバースレンジ(Rレンジ)で車両が後退を始めると駐車スペースまでステアリング操作を自動的に行う。この際、運転者は、周囲の安全を確認しながらブレーキ操作だけをすればよい。車両の駐車支援時の駆動力は、オートマッチク車両のRレンジでのクリープトルクによって得られる。なお、本実施の形態では、車両が駐車支援時に進むべき方向は、駐車支援時に運転者が意図する方向である車両の後方向(車両がバックする方向)であり、この方向を車両の駐車支援時の通常の進行方向とする。
【0014】
図1〜図6を参照して、本実施の形態に係るIPAシステム1について説明する。図1は、本実施の形態に係るIPAシステムの構成図である。図2は、駐車支援開始時の自車位置と駐車スペースの位置関係の一例である。図3は、図2の自車位置と駐車スペースの位置関係における目標走行軌跡の一例である。図4は、オプティカルフローの説明図である。図5は、車両の駐車支援時の進行方向に対して前進と判定した場合の自車位置演算の説明図であり、(a)が前進前であり、(b)が前進後である。図6は、車両の駐車支援時の進行方向に対して後退と判定した場合の自車位置演算の説明図であり、(a)が後退前であり、(b)が後退後である。
【0015】
IPAシステム1では、駐車スペースを設定すると、自車両の現在位置から駐車スペースまでの目標走行軌跡を演算し、その目標走行軌跡に追従して走行するようにEPS[Electric Power Steering]システムを利用して舵角制御を行う。特に、IPAシステム1では、自車両の駐車支援時の進行方向に対する前進(車両の後方向に進んでいる)/後退(車両の前方向に進んでいる)をオプティカルフローを利用して判定し、その判定した進行方向に対する前進/後退に応じて現在位置を更新し、現在位置を更新する毎に目標走行軌跡を更新(補正)する。
【0016】
IPAシステム1は、バックモニタカメラ10、舵角センサ11、ブレーキスイッチ12、IPAスイッチ13、シフトポジションセンサ14、VSC[Vehicle Stability Control]ECU[Electronic Control Unit]15、EPSECU20、ディスプレイ21及びIPAECU30などからなる。なお、本実施の形態では、バックモニタカメラ10が特許請求の範囲に記載する撮像手段に相当する。
【0017】
バックモニタカメラ10は、自車両の後方周辺(車両がバックするときに必要となる後方画像)を撮像するカメラである。バックモニタカメラ10は、CCDやCMOSなどの撮像素子を備え、広角レンズによって比較的広角な範囲を撮像できる。バックモニタカメラ10は、自車両の後端の中央に取り付けられる。バックモニタカメラ10では、一定時間毎に、自車両の後方周辺を撮像し、その撮像画像情報からなるカメラ信号をIPAECU30に送信する。この撮像画像は、一定時間(例えば、1/30秒)毎のフレームの画像である。
【0018】
舵角センサ11は、運転者の操作によるステアリングホイール(図示せず)の舵角を検出するセンサである。舵角センサ11では、一定時間毎に、舵角を検出し、その検出した舵角を舵角信号としてIPAECU30に送信する。
【0019】
ブレーキスイッチ12は、運転者によってブレーキペダル(図示せず)が踏まれたか否かを検出するスイッチである。ブレーキスイッチ12では、一定時間毎に、ブレーキペダルが踏まれたか否かを検出し、ブレーキペダルが踏まれた場合にはON信号、踏まれていない場合にはOFF信号を設定したブレーキ信号をIPAECU30に送信する。
【0020】
IPAスイッチ13は、運転者がIPAシステム1の起動(ON)/停止(OFF)を選択するためのスイッチである。IPAスイッチ13では、その選択されているスイッチ情報をIPA信号としてIPAECU30に送信する。
【0021】
シフトポジションセンサ14は、運転者によって選択されているシフトレバーのポジションを検出するセンサである。シフトポジションセンサ14では、その検出したシフトレバーのポジション情報をシフトポジション信号としてIPAECU30に送信する。
【0022】
VSCECU15は、車両の横滑り状態を検知し、各輪のブレーキ力や駆動力を制御することにより横滑り状態を防止するVSCシステムを統括制御するためのECUである。特に、VSCECU15では、一定時間毎に、車輪速センサ(図示せず)からの車輪速信号に基づいて車速を演算する。VSCECU15では、その車速をECU内で利用する以外に、VSC車速信号としてIPAECU30に送信する。なお、VSCシステムが搭載されていない場合、車輪速センサを用いて車速を演算するABSシステムなどの他のシステムから車速を取得してもよいし、あるいは、車輪速センサを用いるシステムが搭載されていない場合にはIPAシステム用に車輪速センサを備える構成としてもよい。
【0023】
EPSECU20は、EPSモータ(図示せず)によるアシストトルクをステアリング系に付加して運転者による操舵操作をアシストするEPSシステムを統括制御するためのECUである。EPSECU20では、通常、車速や操舵トルクなどに基づいてアシストトルクを設定し、このアシストトルクを発生するためにEPSモータの駆動を制御する。特に、EPSECU20では、IPAECU30から舵角制御信号を受信すると、舵角制御信号に示されている目標舵角と実際の舵角との差を無くすための操舵トルクを発生するためにEPSモータの駆動を制御する。
【0024】
ディスプレイ21は、ナビゲーションシステムなどの他のシステムと共用される車載のディスプレイである。ディスプレイ21では、IPAECU30から画像表示信号を受信すると、その画像表示信号に示される画像を表示する。
【0025】
IPAECU30は、CPU[CentralProcessing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[RandomAccess Memory]及び画像処理チップなどからなる電子制御ユニットであり、IPAシステム1を統括制御する。IPAECU30では、ROMに記憶されているアプリケーションプログラムをRAMにロードし、CPUで実行することにより、駐車スペース設定機能、目標走行軌跡演算機能、舵角制御機能、オプティカルフロー推定機能、前進/後退判定機能、現在位置更新機能が構成される。なお、本実施の形態では、IPAECU30における駐車スペース設定機能が特許請求の範囲に記載する目標位置設定手段に相当し、目標走行軌跡演算機能が特許請求の範囲に記載する誘導軌跡算出手段に相当し、オプティカルフロー推定機能及び前進/後退判定機能が特許請求の範囲に記載する判定手段に相当し、現在位置更新機能が特許請求の範囲に記載する現在位置更新手段に相当し、舵角制御機能及びEPSECU20における処理が特許請求の範囲に記載する車両誘導手段に相当する。
【0026】
IPAECU30では、一定時間毎に、バックモニタカメラ10からのカメラ信号を受信し、車両の後方周辺の各フレームの画像を時系列で記憶する。また、IPAECU30では、一定時間毎に、舵角センサ11、ブレーキスイッチ12の各検出信号を受信し、各検出情報(舵角、ブレーキ操作のON/OFF)を取得する。また、IPAECU30では、一定時間毎に、VSCECU15からVSC車速信号を受信し、自車両の車速を取得する。
【0027】
IPAECU30では、IPAスイッチ13からのIPA信号を受信し、IPA信号がONの場合にはシステムを起動し、IPA信号がOFFの場合にはシステムを停止する。そして、IPAECU30では、シフトポジションセンサ14からのシフトポジション信号を受信し、システム起動かつシフトポジションがRレンジの場合に上記の各機能を実行し、舵角制御信号をEPSECU20に送信するとともに画像表示信号をディスプレイ21に送信する。また、IPAECU30では、ブレーキ操作がOFFからONに切り替わった場合、上記の各機能を実行を中断する。また、IPAECU30では、自車両が駐車スペースに到着した場合、上記の各機能を実行を終了する。
【0028】
駐車スペース設定機能について説明する。IPAECU30では、最初に、自車両MVの現在位置(駐車支援開始時のスタート位置)から駐車したいスペースPS(そのスペースの中心位置CP)を設定する(図2参照)。この設定方法としては、例えば、運転者がディスプレイ21に表示されている自車両の後方周辺の画像から駐車したい位置をカーソル操作あるいはタッチディスプレイ操作で設定すると、その設定された位置に従って駐車スペースを設定する。この場合、ディスプレイ21にバックモニタカメラ10で撮像した画像の表示や駐車位置の設定を促す操作案内などが必要となる。あるいは、画像認識によってバックモニタカメラ10で撮像した画像から駐車場の区画線PLを認識し、その区画線PLで区画された各スペースの中から空いているスペースを判断し、空いているスペースと自車両MVの現在位置との関係から駐車スペースPSを設定する(図2参照)。
【0029】
目標走行軌跡演算機能について説明する。IPAECU30では、平面座標系において、駐車スペースPSの中心位置CPを駐車支援時の最終到達点として、自車両MVの現在位置MP(初回はスタート位置、それ以外は現在位置更新機能で更新された現在位置)からの目標走行軌跡(例えば、自車両の中心位置が辿るべき軌跡)TLを演算する(図3参照)。この目標走行軌跡の演算方法としては、従来の方法を適用する。さらに、IPAECU30では、その目標走行軌跡TL及び自車両MVの現在位置MPなどを現時刻T(n)の自車両後方周辺の画像に重畳した表示用の画像を生成し、その画像情報からなる画像表示信号をディスプレイ21に送信する。
【0030】
舵角制御機能について説明する。IPAECU30では、車速と舵角に基づいて、自車両MVのスタート位置からの移動距離あるいは前時刻T(n−1)から現時刻T(n)までの移動距離を演算する。そして、IPAECU30では、その演算した移動距離に応じて、目標走行軌跡演算機能で演算した目標走行軌跡TLから今回の目標舵角を演算する。さらに、IPAECU30では、その目標舵角からなる舵角制御信号をEPSECU20に送信する。
【0031】
オプティカルフロー推定機能について説明する。IPAECU30では、現時刻T(n)のフレームの画像と前時刻T(n−1)のフレームの画像からオプティカルフローを推定演算する。オプティカルフローは、時間的に連続する画像から画像内の対応する各領域の速度場を求め、画像内の物体の動きをベクトルで表したものである。オプティカルフローの演算方法として、従来の方法を適用し、例えば、ブロックマッチング法、勾配法がある。例えば、図4に示すように、前時刻T(n−1)の画像In−1における所定の画素数(例えば、3×3の9画素、4×4の16画素、5×5の25画素)からなる各領域A1n−1、A2n−1、A3n−1(物体の特徴部分)に対応する現時刻T(n)の画像Iにおける各領域A1、A2、A3を探索し、その各領域間A1n−1−A1、A2n−1−A2、A3n−1−A3の移動方向と移動距離からなる各移動ベクトルV1、V2、V3を演算する。
【0032】
前進/後退判定機能について説明する。IPAECU30では、オプティカルフロー推定機能で推定したオプティカルフロー、自車両MVにおけるカメラの設置位置(あるいは、画像内における位置)及び舵角状態に基づいて、自車両MVが駐車支援時の進行方向に対して前進しているかあるいは後退しているかを判定する。ちなみに、運転者によってシフトレバーでRレンジが選択され、ブレーキ操作がOFFの場合、クリープトルクによって、通常、自車両MVは、後方にゆっくりと進む(自車両MVの駐車支援時の進行方向に対して前進する)。しかし、路面に勾配があり、自車両MVの前側のほうが低い場合、自車両MVが、前方に進むことがある(自車両MVの駐車支援時の進行方向に対して後退する)。
【0033】
具体的に、この判定方法について説明する。ここでは、説明を判り易くするために、自車両MVの側面に設置されるサイドカメラで撮像した時系列の画像でオプティカルフローを推定し、Rレンジで自車両MVの駐車支援時の進行方向がバックする方向であり、舵角がニュートラル状態の場合で説明する。車両の左側のサイドカメラの場合、図4に示すようなオプティカルフローV1、V2、V3が得られたとすると、時系列の画像間において自車両MVの左側の各物体が自車両MVの後方から前方に移動しているので、自車両MVが後方に進んでいると判断でき、自車両MVの駐車支援時の進行方向に対して前進と判定される。また、車両の右側のサイドカメラの場合、図4に示すようなオプティカルフローV1、V2、V3が得られたとすると、時系列の画像間において自車両MVの右側の各物体が自車両MVの前方から後方に移動しているので、自車両MVは前方に進んでいると判断でき、自車両MVの駐車支援時の進行方向に対して後退と判定される。
【0034】
バックモニタカメラ10で撮像した時系列の画像間でオプティカルフローを推定した場合についても説明しておく。バックモニタカメラ10による画像において自車両MVよりも左側の各領域から図4に示すようなオプティカルフローV1、V2、V3が得られたとすると、上記の車両の左側のサイドカメラの場合と同様の判定結果となる。また、バックモニタカメラ10による時系列の画像間において自車両MVよりも右側の各領域から図4に示すようなオプティカルフローV1、V2、V3が得られたとすると、上記の車両の右側のサイドカメラの場合と同様の判定結果となる。また、バックモニタカメラ10による時系列の画像間において中央周辺(自車両MVの真後ろ)の各領域でも判定が可能であり、各領域が拡大してゆくかあるいは縮小してゆくかによって自車両MVの駐車支援時の進行方向に対して前進/後退を判定できる。
【0035】
現在位置更新機能について説明する。IPAECU30では、車速と舵角に基づいて、自車両MVの前時刻T(n−1)から現時刻T(n)までの移動距離を演算する。そして、IPAECU30では、前進/後退判定機能で判定した自車両MVの駐車支援時の進行方向に対する前進又は後退に応じて、その演算した移動距離分を前時刻T(n−1)での現在位置から移動させて現時刻T(n)の現在位置を演算する。なお、この更新された現在位置を利用して、目標走行軌跡演算機能で目標走行軌跡が更新(補正)される。
【0036】
具体的には、前進判定の場合、図5(a)に示すように前時刻T(n−1)の現在位置MPn−1から、図5(b)に示すように自車両MVがバックする方向に移動距離L分移動させた現時刻T(n)の現在位置MPが演算される。また、後退判定の場合、図6(a)に示すように前時刻T(n−1)の現在位置MPn−1から、図6(b)に示すように自車両MVがバックする方向とは逆方向(自車両MVの前方向)に移動距離L分移動させた現時刻T(n)の現在位置MPが演算される。
【0037】
図1〜図6を参照して、IPAシステム1の動作について説明する。特に、IPAECU30における処理について図7のフローチャートに沿って説明する。図7は、図1のIPAECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【0038】
ここでは、運転者は、バックで車両を駐車させるために、車両を駐車場の区画線の前で停車させ、IPAスイッチ13をONに切り替えるとともにシフトレバーをRレンジに切り替える。この際、IPAスイッチ13では、ONを示すIPA信号をIPAECU30に送信する。また、シフトポジションセンサ14では、Rレンジを示すシフトポジション信号をIPAECU30に送信する。IPAECU30では、このIPA信号及びシフトポジション信号を受信すると、システムを起動する。また、運転者は、システム起動後、安全を確認してから、ブレーキペダルの踏み込みを解除し、ブレーキをOFFする。この際、ブレーキスイッチ12では、OFFを示すブレーキ信号をIPAECU30に送信する。
【0039】
バックモニタカメラ10では、一定時間毎に、自車両の後方周辺を撮像し、カメラ信号をIPAECU30に送信している。IPAECU30では、そのカメラ信号を受信し、その後方周辺の画像を時系列で記憶する。舵角センサ11では、一定時間毎に、舵角を検出し、舵角信号をIPAECU30に送信している。IPAECU30では、その舵角信号を受信し、舵角を取得する。VSCECU15では、一定時間毎に、車輪速センサからの車輪速信号に基づいて車速を演算し、VSC車速信号をIPAECU30に送信している。IPAECU30では、そのVSC車速信号を受信し、車速を取得する。
【0040】
システム起動後、最初に、IPAECU30では、自車位置からの駐車スペースを設定する(S1)。
【0041】
IPAECU30では、自車位置から駐車スペースまでの目標走行軌跡を演算する(S2)。IPAECU30では、その目標走行軌跡などをバックモニタカメラ10で撮像した画像に重畳した表示用の画像を生成し、画像表示信号をディスプレイ21に送信する。ディスプレイ21では、IPAECU30から画像表示信号を受信すると、その画像表示信号に示される画像を表示する。
【0042】
そして、IPAECU30では、目標走行軌跡に追従するように、車速や舵角から導いた移動距離に応じて目標走行軌跡から今回の目標舵角を演算し、舵角制御信号をEPSECU20に送信する。EPSECU20では、この舵角制御信号を受信すると、目標舵角と実際の舵角との差に基づいてEPSモータの駆動を制御する。このEPSモータの駆動によって、転舵輪が転舵し、目標舵角になる。これによって、自車両が、目標走行軌跡に沿って走行する。この際、運転者によるブレーキ操作がOFFされているので、クリープトルクによって、自車両は、転舵輪の転舵角に応じて後方にゆっくりと旋回しながら又は真っ直ぐ進む。
【0043】
IPAECU30では、現時刻T(n)の画像と前時刻T(n−1)の画像間からオプティカルフローを推定する(S4)。そして、IPAECU30では、そのオプティカルフローと舵角状態などに基づいて自車両が駐車支援時の進行方向に対して前進かあるいは後退かを判定する(S5)。
【0044】
S5にて進行方向に対して前進と判定した場合、IPAECU30では、車速と舵角に基づいて自車両の前時刻T(n−1)から現時刻T(n)までの移動距離を演算し、前時刻T(n−1)の自車位置から自車両が後方(進行方向)に進んだ分としてその移動距離分移動させた現時刻T(n)の自車位置を演算する(S6)。一方、S5にて進行方向に対して後退と判定した場合、IPAECU30では、上記と同様に移動距離を演算し、前時刻T(n−1)の自車位置から自車両が前方(進行方向の逆方向)に進んだ分としてその移動距離分移動させた現時刻T(n)の自車位置を演算する(S7)。
【0045】
そして、IPAECU30では、自車両が駐車スペースに到着したか否かを判定する(S8)。S8にて自車両が駐車スペースに到着していないと判定した場合、IPAECU30では、S2の処理に戻って、S5又はS6で更新した自車位置を用いてS2以降の処理を再度実行する。S8にて自車両が駐車スペースに到着したと判定した場合、IPAECU30では、処理を終了する。この際、IPAECU30では、駐車支援を終了したことを示す案内を運転者に知らせるために、ディスプレイ21に対する表示制御やスピーカ(図示せず)に対する音声制御などを行ってもよい。
【0046】
このIPAシステム1によれば、時系列の画像を用いて自車両の駐車支援時の進行方向に対する前進/後退を判定することにより、その前進/後退を用いて駐車支援中の自車両の現在位置を高精度に演算できる。そして、その現在位置を用いて適切な目標走行軌跡に更新(補正)でき、高精度な駐車支援を行うことができる。例えば、路面勾配によって自車両の駐車支援時の進行方向に対して後退するような場合でも、自車両が実際に進んでいる方向を高精度に判定でき、その実際に進んでいる方向に応じて現在位置を更新でき、適切な駐車支援が可能となる。
【0047】
また、IPAシステム1では、自車両が実際に進んでいる方向を判定するために、駐車支援システムに標準的に装備されるバックモニタカメラ10による時系列の画像を用いるので、他のセンサ(Gセンサ、正逆判定回路付の車輪速センサなど)を必要とせず、コストアップしない。
【0048】
また、IPAシステム1では、異なる時刻に撮像された複数の画像間の物体の動きをオプティカルフローを利用して推定しているので、自車両の駐車支援時の進行方向に対する前進/後退を高精度に判定できる。
【0049】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0050】
例えば、本実施の形態では駐車支援を行うIPAシステムに適用したが、駐車支援以外の車両誘導装置に適用してもよい。
【0051】
また、本実施の形態ではバックモニタカメラを備える構成としたが、サイドカメラやフロントカメラで撮像した時系列の画像から推定したオプティカルフローでも自車両の進行方向に対する前進/後退を判定できるので、バックモニタカメラの代わりに、サイドカメラあるいはフロントカメラを用いてもよい。
【0052】
また、本実施の形態ではEPSシステムを利用して舵角制御を行う構成としたが、このようなEPSシステムを備えない車両の場合には他の操舵システムを利用してもよいし、あるいは、IPAシステムで操舵用のモータを直接制御するようにしてもよい。
【0053】
また、本実施の形態ではクリープトルクによって駐車支援時の後方向への駆動力を得たが、駐車支援時の最適な駆動力(ひいては、車速)が得られるように、エンジンなどの駆動源に対して駆動力制御を行ってもよい。
【0054】
また、本実施の形態では現在位置を更新する毎に目標走行軌跡を更新する構成としているが、自車両の駐車支援時の進行方向に対して後退するようなことなく、目標走行軌跡に従って正常に駐車支援が行われている場合には目標走行軌跡を更新しなくてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…IPAシステム、10…バックモニタカメラ、11…舵角センサ、12…ブレーキスイッチ、13…IPAスイッチ、14…シフトポジションセンサ、15…VSCECU、20…EPSECU、21…ディスプレイ、30…IPAECU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を目的位置まで誘導する車両誘導装置であって、
車両周辺を撮像する撮像手段と、
車両の目的位置を設定する目的位置設定手段と、
車両の現在位置から前記目的位置設定手段で設定した目的位置までの誘導軌跡を算出する誘導軌跡算出手段と、
前記誘導軌跡算出手段で算出した誘導軌跡に従って車両を誘導する車両誘導手段と、
車両誘導中に前記撮像手段で異なる時刻に撮像された複数の画像に基づいて車両の進行方向を判定する判定手段と、
前記判定手段で判定した車両の進行方向に基づいて車両の現在位置を更新する現在位置更新手段
を備え、
前記誘導軌跡算出手段は、前記現在位置更新手段で更新した車両の現在位置から目的位置までの誘導軌跡を算出することを特徴とする車両誘導装置。
【請求項2】
前記判定手段は、車両誘導中に前記撮像手段で異なる時刻に撮像された複数の画像間のオプティカルフローを算出し、当該オプティカルフローに基づいて車両の進行方向を判定することを特徴とする請求項1に記載の車両誘導装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−148424(P2011−148424A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11964(P2010−11964)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】