説明

車両運転支援装置

【課題】ユーザに与える恐怖感や不安感を軽減して運転の円滑性および安全性を向上させることができる「車両運転支援装置」を提供すること。
【解決手段】走行予測線算出手段36により、車速検出手段22によって検出された自車両の走行速度に基づいて、自車両の走行方向への最大延出位置が、この位置に存在すると仮定された障害物に対するユーザの注意を促すことが必要とみなされる位置に止まるような走行予測線43,44を算出して車両周辺監視画像上に表示すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運転支援装置に係り、特に、車両の周辺の撮影映像を用いて車両の安全な運転を支援するのに好適な車両運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の安全な運転を支援するドライブアシスト技術としては、種々の技術が採用されており、例えば、自車両に搭載された車載カメラの撮影映像を用いて自車両の周辺を監視するための車両周辺監視画像を生成して車内のモニタの表示するとともに、その車両周辺監視画像上に、自車両の予測される走行軌跡を示す走行予測線を重畳表示するものが知られている。
【0003】
このようなドライブアシスト技術によれば、モニタ上に表示された走行予測線に車両周辺監視画像中の障害物が重なるか否を、自車両が障害物と衝突する危険性があるか否かを判断するための目安とすることができ、ユーザに、障害物との衝突を未然に回避するような運転操作を促すことが可能とされていた。
【0004】
【特許文献1】特開2004−17702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のドライブアシスト技術では、モニタ上に表示される走行予測線が長すぎることにより、走行予測線がユーザの注意を促す必要が少ない領域にまで至る場合があった。
【0006】
例えば、図5は、駐車場において、車両周辺監視画像としての自車両およびその周辺を自車両の上方から見下ろした俯瞰画像であるトップビュー画像1を表示するとともに、このトップビュー画像1上に、2本の走行予測線3,4を重畳表示したものである。これら2本の走行予測線3,4は、それぞれ、トップビュー画像1中の自車両2の後端部2aから自車両2の走行方向(後退方向)に向かって延出された内輪(図5における左後輪)側の走行予測線3、外輪(図5における右後輪)側の走行予測線4とされている。
【0007】
図5においては、走行予測線3,4が長すぎることにより、走行予測線3,4が、現時点では衝突の危険性が少ないトップビュー画像1中の他車両5に重なっている。
【0008】
また、図6は、図5と同様の場所において、車両周辺監視像としての自車両の後方を監視するバックビュー画像7上に、バックビュー画像7中の自車両2の後端部2aから自車両2の走行方向(後退方向)に向かってそれぞれ延出された内輪側および外輪側の2本の走行予測線3,4を重畳表示したものである。
【0009】
この図6においても、走行予測線3,4が、衝突の危険性が少ないバックビュー画像7中の他車両5に重なっている。
【0010】
そして、このように、ユーザの注意を促す必要が少ない領域に存在する障害物に走行予測線が重なる場合には、ユーザが、その障害物との衝突を恐れるあまり、円滑な運転操作に支障を来たす場合が生じていた。
【0011】
また、このように、ユーザに過度の恐怖感や不安感を与えて運転の円滑性を損なわせることは、運転の安全性を確保する上でも好ましいものではなかった。
【0012】
そこで、本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、ユーザに与える恐怖感や不安感を軽減して運転の円滑性および安全性を向上させることができる車両運転支援装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するため、本発明に係る車両運転支援装置は、自車両の周辺における所定の撮影領域を撮影する撮影手段と、この撮影手段の撮影映像を用いて、前記自車両の周辺における所定の監視領域を監視する車両周辺監視画像を生成し、生成された前記車両周辺監視画像を表示部に表示する車両周辺監視画像表示処理手段と、前記自車両のハンドルの操舵角に基づいて、前記自車両の予測されるタイヤ軌跡を算出するタイヤ軌跡算出手段と、前記自車両の走行速度を検出する車速検出手段と、前記タイヤ軌跡算出手段によって算出された前記タイヤ軌跡の一部をなし、前記自車両に対して前記自車両の走行方向に向かって延出された部位を有する走行予測線であって、その自車両の走行方向への最大延出位置が、この最大延出位置に存在すると仮定された障害物に対するユーザの注意を促す(もしくは喚起する)ことが前記自車両の走行速度との関係から必要とみなされる最大延出位置に止まるような走行予測線を、前記車速検出手段の検出結果に基づいて算出する走行予測線算出手段と、この走行予測線算出手段によって算出された前記走行予測線を前記車両周辺監視画像上に重ねて表示する走行予測線表示処理手段とを備えたことを特徴としている。
【0014】
また、本発明に係る他の車両運転支援装置は、前記走行予測線算出手段が、前記走行予測線を算出する際に、ユーザが前記自車両の走行状態を所望の状態に制御するために要するとみなされる時間である余裕時間を加味するように形成されていることを特徴としている。
【0015】
さらに、本発明に係る他の車両運転支援装置は、前記余裕時間が、前記自車両の走行速度の増加にともなって漸次または段階的に長くなる時間とされていることを特徴としている。
【0016】
さらにまた、本発明に係る他の車両運転支援装置は、前記余裕時間が、前記操舵角の増加にともなって漸次または段階的に長くなる時間とされていることを特徴としている。
【0017】
また、本発明に係る他の車両運転支援装置は、外輪側の前記走行予測線を算出するための前記余裕時間が、内輪側の前記走行予測線を算出するための前記余裕時間よりも長い時間とされていることを特徴としている。
【0018】
さらに、本発明に係る他の車両運転支援装置は、前記自車両の周辺に存在する障害物を検出する障害物検出手段を備え、前記走行予測線算出手段が、前記障害物検出手段によって検出された前記障害物の中から、前記車速検出手段の検出結果に基づいて算出された前記走行予測線上に存在する前記障害物を抽出し、抽出された前記障害物と前記自車両との離間距離が所定の閾値を超える場合には、前記最大延出位置が、前記抽出された前記障害物に対して前記自車両側に所定の距離だけ退避した位置に止まるように、前記走行予測線の算出結果を修正するように形成されていることを特徴としている。
【0019】
さらにまた、本発明に係る他の車両運転支援装置は、前記離間距離の前記閾値が、前記操舵角の増加にともなって漸次または段階的に長くなる距離とされていることを特徴としている。
【0020】
また、本発明に係る他の車両運転支援装置は、外輪側の前記走行予測線を算出するための前記離間距離の前記閾値が、内輪側の前記走行予測線を算出するための前記離間距離の前記閾値よりも長い距離とされていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る車両運転支援装置によれば、自車両の走行速度に基づいて、走行予測線として、その自車両の走行方向への最大延出位置が、この位置に存在すると仮定された障害物に対するユーザの注意を促すことが自車両の走行速度との関係から必要とみなされる位置に止まるような適度な長さの走行予測線を算出して車両周辺監視画像上に表示することができるので、走行予測線が、ユーザの注意を促すことが不要な障害物に重なることを防止することができる。この結果、ユーザに与える恐怖感や不安感を軽減して運転の円滑性および安全性を向上させることができる。
【0022】
また、本発明に係る他の車両運転支援装置によれば、余裕時間を加味して走行予測線を算出することにより、さらに好適な長さの走行予測線を表示することができ、運転の円滑性および安全性をさらに向上させることができる。
【0023】
さらに、本発明に係る他の車両運転支援装置によれば、余裕時間を、自車両の走行速度により適合した値にすることにより、走行予測線の長さをさらに最適化することができ、運転の円滑性および安全性をより向上させることができる。
【0024】
さらにまた、本発明に係る他の車両運転支援装置によれば、余裕時間を、ハンドルの操舵角にも適合した値にすることにより、さらに適度な長さの走行予測線を表示することができ、運転の円滑性および安全性をさらに向上させることができる。
【0025】
また、本発明に係る他の車両運転支援装置によれば、余裕時間を、内輪側よりも外輪側の方が長くなるようにすることにより、曲線走行の際に、より適切な長さの走行予測線を表示することができ、運転の円滑性および安全性をより向上させることができる。
【0026】
さらに、本発明に係る他の車両運転支援装置によれば、自車両の走行速度に基づいて算出された走行予測線を、この走行予測線上に実存する障害物と自車両との離間距離に基づいて個別具体的に修正することができるので、障害物の検出状態に適合したさらに好適な長さの走行予測線を表示することができ、運転の円滑性および安全性をさらに向上させることができる。
【0027】
さらにまた、本発明に係る他の車両運転支援装置によれば、走行予測線の修正の実行の有無の判断基準となる前記離間距離の閾値を、ハンドルの操舵角に適合した値にすることができるので、さらに適度な長さの走行予測線を表示することができ、運転の円滑性および安全性をより向上させることができる。
【0028】
また、本発明に係る他の車両運転支援装置によれば、前記離間距離の閾値を内輪側よりも外輪側の方が長くなるようにすることにより、曲線走行の際に、より適切な長さの走行予測線を表示することができ、運転の円滑性および安全性をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係る車両運転支援装置の実施形態について、図1乃至図4を参照して説明する。
【0030】
図1に示すように、本実施形態における車両運転支援装置15は、大別して、ECU16と、このECU16にそれぞれ接続された撮影手段としての5台の車載カメラ17,18,19,20,21、車速検出手段としての車速パルス発生装置22、障害物検出手段としての障害物検出センサ23、入力操作部24および車内のモニタ25とによって構成されている。
【0031】
5台の車載カメラ17,18,19,20,21のうちの1台17は、自車両の左前部に取り付けられた左フロントカメラとされており、この左フロントカメラ17は、自車両の周辺における自車両の左前方の領域を撮影し、撮影映像をECU16側に出力するようになっている。また、他の4台の車載カメラ18,19,20,21のうちの1台18は、自車両の右前部に取り付けられた右フロントカメラとされており、この右フロントカメラ18は、自車両の周辺における自車両の右前方の領域を撮影し、撮影映像をECU16側に出力するようになっている。さらに、残りの3台の車載カメラ19,20,21のうちの1台19は、自車両の左側部に取り付けられた左サイドカメラとされており、この左サイドカメラ19は、自車両の周辺における自車両の左側方の領域を撮影し、撮影映像をECU16側に出力するようになっている。さらにまた、残りの2台の車載カメラ20,21のうちの1台20は、自車両の右側部に取り付けられた右サイドカメラとされており、この右サイドカメラ20は、自車両の周辺における自車両の右側方の領域を撮影し、撮影映像をECU16側に出力するようになっている。また、残りの1台の車載カメラ21は、自車両の後部に取り付けられたバックカメラとされており、このバックカメラ21は、自車両の周辺における自車両の後方の領域を撮影し、撮影映像をECU16側に出力するようになっている。
【0032】
なお、各車載カメラ17,18,19,20,21は、超広角レンズを備えたカメラであってもよい。
【0033】
車速パルス発生装置22は、自車両の走行速度の検出結果として、自車両の走行速度に応じた車速パルスを発生させ、発生させた車速パルスをECU16側に出力するようになっている。
【0034】
障害物検出センサ23は、自車両の周辺の障害物(例えば、他車両等)を検出し、検出結果をECU16側に出力するようになっている。なお、障害物検出センサ23は、例えば、超音波センサやレーダ等であってもよい。
【0035】
これらの車速パルスや障害物の検出結果の他にも、車両側からは、自車両のハンドルの操舵角の情報、自車両のギア位置の情報および自車両のブレーキ位置の情報といった種々の自車両の車両情報がECU16側へと出力されるようになっている。
【0036】
入力操作部24は、ユーザが、走行予測線の表示のための種々の指示を入力するために用いられるようになっている。この入力操作部24は、例えば、タッチパネル、リモコン、リニアエンコーダまたはロータリエンコーダ等であってもよい。
【0037】
ECU16について詳述すると、このECU16は、主制御部であるLSI26と、このLSI26にそれぞれ接続された5個のメモリ27,28,29,30,31とを有している。
【0038】
5個のメモリ27,28,29,30,31のうちの1個27は、左フロントカメラ17に接続された左前方映像メモリとされており、この左前方映像メモリ27には、左フロントカメラ17から出力された自車両の左前方の領域の撮影映像が入力されて格納されるようになっている。他の4個のメモリ28,29,30,31のうちの1個28は、右フロントカメラ18に接続された右前方映像メモリとされており、この右前方映像メモリ28には、右フロントカメラ18から出力された自車両の右前方の領域の撮影映像が入力されて格納されるようになっている。残りの3個のメモリ29,30,31のうちの1個29は、左サイドカメラ19に接続された左側方映像メモリとされており、この左側方映像メモリ29には、左サイドカメラ19から出力された自車両の左側方の領域の撮影映像が入力されて格納されるようになっている。残りの2個のメモリ30,31のうちの1個30は、右サイドカメラ20に接続された右側方映像メモリとされており、この右側方映像メモリ30には、右サイドカメラ20から出力された自車両の右側方の領域の撮影映像が入力されて格納されるようになっている。残りの1個のメモリ31は、バックカメラ21に接続された後方映像メモリとされており、この後方映像メモリ31には、バックカメラ21から出力された自車両の後方の領域の撮影映像が入力されて格納されるようになっている。
【0039】
LSI26には、車速パルス発生装置22から出力された車速パルス、障害物検出センサ23から出力された検出結果、車両側から出力された車両情報(操舵角、ギア位置、ブレーキ位置等の情報)がそれぞれ入力されるようになっている。
【0040】
このLSI26は、その機能ブロックの1つとして、車両周辺監視画像表示処理部34を有しており、この車両周辺監視画像表示処理部34は、車両周辺監視画像表示処理手段として機能するようになっている。すなわち、車両周辺監視画像表示処理部34は、入力操作部24から、所定の車両周辺監視画像を表示する旨のユーザの指示が入力された場合に、メモリ27,28,29,30,31に格納された撮影映像を取得し、取得された撮影映像を用いて入力操作部24からの指示に応じた車両周辺監視画像を生成し、生成された車両周辺監視画像をモニタ25に表示するようになっている。なお、本実施形態における車両周辺監視画像には、前述したトップビュー画像(図5参照)およびバックビュー画像(図6参照)の2種類の画像が含まれている。なお、トップビュー画像の生成には、すべてのメモリ27,28,29,30,31に格納された撮影映像が用いられ、バックビュー画像の生成には、後方映像メモリ31に格納された撮影映像のみが用いられるようになっている。これらの車両周辺監視画像の生成には、車載カメラの撮影映像と車両周辺監視画像との座標の対応関係を記述した図示しない公知のマッピングテーブルによる座標変換を利用するようにしてもよい。
【0041】
また、LSI26は、その機能ブロックの1つとして、タイヤ軌跡算出部35を有しており、このタイヤ軌跡算出部35は、タイヤ軌跡算出手段として機能するようになっている。すなわち、タイヤ軌跡算出部35は、車両側から入力されたハンドルの操舵角の情報に基づいて、現在の操舵角のまま自車両が移動した場合における自車両の予測されるタイヤ軌跡を算出するようになっている。このタイヤ軌跡は、いわゆるアッカーマンタイヤ軌跡であってもよい。
【0042】
さらに、LSI26は、その機能ブロックの1つとして、走行予測線算出部36を有しており、この走行予測線算出部36は、走行予測線算出手段として機能するようになっている。
【0043】
すなわち、走行予測線算出部36は、タイヤ軌跡算出部35によって算出されたタイヤ軌跡の一部をなし、自車両に対して自車両の走行方向に向かって延出された部位を有する走行予測線を算出するようになっている。
【0044】
この際に、走行予測線算出部36は、適度な長さを有する走行予測線として、その自車両の走行方向への最大延出位置が、この最大延出位置に存在すると仮定された障害物に対するユーザの注意を促すことが自車両の走行速度との関係から必要とみなされる最大延出位置に止まるような走行予測線を算出するようになっている。この走行予測線の算出には、車速パルス発生装置22側から入力された車速パルスが示す自車両の走行速度の検出結果が用いられるようになっている。なお、前記最大延出位置は、後述する内輪側の走行予測線と外輪側の走行予測線とのそれぞれに個別に定義される位置とされている。
【0045】
さらにまた、LSI26は、その機能ブロックの1つとして、余裕時間設定部38を有しており、この余裕時間設定部38は、ユーザが自車両の走行状態を所望の状態に制御するために要するとみなされる時間である余裕時間を、自動的に設定するようになっている。
【0046】
具体的には、余裕時間設定部38は、余裕時間として、自車両の走行速度の増加にともなって漸次または段階的に長くなる時間を設定するようになっている。例えば、余裕時間設定部38は、余裕時間として、自車両の走行速度が所定値以上であれば3秒の余裕時間を設定し、所定値未満であれば、5秒の余裕時間を設定するようにしてもよい。
【0047】
そして、本実施形態において、走行予測線算出部36は、走行予測線を算出する際に、自車両の走行速度の検出結果とともに、余裕時間設定部38によって設定された余裕時間を加味するようになっている。
【0048】
具体的には、走行予測線算出部36は、次式を用いて走行予測線を算出するようになっている。
【0049】
L=(Vt−1+V)/2×(Δt+T) (1)
【0050】
なお、(1)式におけるL(m)は、走行予測線の長さ、すなわち、走行予測線における自車両側の端部から自車両の走行方向側の端部までの長さである。なお、本実施形態において、走行予測線における自車両側の端部の位置は、予め設定された所定の位置(例えば、自車両の後端部)に固定されている。
【0051】
このLの値は、走行予測線における自車両側の端部を、走行予測線の自車両の走行方向への延出位置の基準点(延出量0)とすれば、走行予測線の自車両の走行方向への最大延出位置を示す値とみなすことができる。
【0052】
また、(1)式におけるV(m/s)は、走行予測線を算出する際における自車両の走行速度であり、Vt−1(m/s)は、走行予測線を算出する1秒前における自車両の走行速度である。これらの走行速度としては、車速パルス発生装置22の検出結果を用いる。
【0053】
さらに、(1)式におけるΔt(s)は、サンプリング時間であり、LSI26の処理速度に相当する時間とされている。
【0054】
さらにまた、(1)式におけるT(s)は、余裕時間であり、この余裕時間としては、余裕時間設定部38によって設定されたものを用いる。
【0055】
ここで、(1)式から分かるように、自車両の走行速度が速いほど、この走行速度自身の値(V、Vt−1)と、走行速度の増加にともなって増加する余裕時間の値(T)とが大きくなるため、(1)式の右辺の値が大きくなる。したがって、(1)式の左辺である走行予測線の長さの値(L)も、自車両の走行速度が速いほど、大きな値となる。
【0056】
このような(1)式を用いることによって算出された走行予測線は、自車両の走行速度との関係から、走行予測線における前記最大延出位置上に存在すると仮定された障害物に対するユーザの注意を促す必要性の有無を考慮した適度な長さとなっているので、走行予測線が、ユーザの注意を促すことが不要なほど自車両から離間した位置に存在する障害物に重なることを防止することができる。
【0057】
なお、余裕時間設定部38は、余裕時間として、自車両の走行速度の増加だけでなく、ハンドルの操舵角の増加にもともなって漸次または段階的に長くなる時間を設定するようにしてもよい。このようにすれば、ハンドルの操舵角が大きい場合ほど、ユーザが自車両の走行状態を所望の状態に立て直す(制御する)のに時間がかかるといった実情に適合した余裕時間を設定することができるので、走行予測線の長さをさらに最適化することができる。
【0058】
また、余裕時間設定部38は、自車両の曲線走行時に、外輪側の走行予測線を算出するための余裕時間を、内輪側の走行予測線を算出するための余裕時間よりも長い時間に設定するようにしてもよい。このようにすれば、外輪側の走行予測線を内輪側の走行予測線よりも長くすることができるので、曲線走行時における外輪側の走行速度の方が内輪側の走行速度よりも速くなり、外輪側の方が遠くまで注意を促す必要があるといった実情に適合した余裕時間を設定することができ、走行予測線の長さをさらに最適化することができる。
【0059】
さらに、本実施形態において、走行予測線算出部36は、障害物検出センサ23によって検出された障害物の中から、車速パルス発生装置22の検出結果に基づいて(1)式を用いて算出された走行予測線上に存在する障害物(以下、該当障害物と称する)を抽出するようになっている。
【0060】
そして、走行予測線算出部36は、該当障害物が抽出された場合には、抽出された該当障害物と自車両との離間距離が所定の閾値(以下、閾値離間距離と称する)を超えるか否かを判定するようになっている。
【0061】
この判定の結果、該当障害物と自車両との離間距離が閾値離間距離を超える場合には、走行予測線算出部36は、走行予測線の自車両の走行方向への最大延出位置が、該当障害物に対して自車両側に所定の距離だけ退避した位置に止まるように、(1)式を用いて算出された走行予測線の算出結果を修正するようになっている。
【0062】
このようにして修正された走行予測線は、障害物の検出状態との関係から、最大延出位置上に実在する該当障害物に対するユーザの注意を促す必要性の有無を個別具体的に考慮した長さとなっているので、走行予測線の長さをさらに最適化することができる。
【0063】
なお、走行予測線算出部36は、閾値離間距離として、操舵角の増加にともなって漸次(換言すれば、連続的)または段階的に長くなる(増加する)距離を用いるようにしてもよい。このようにすれば、ハンドルの操舵角が大きいほど、ユーザが自車両の走行方向に存在する障害物を目視確認することが困難になるため、走行予測線の長さによってカバーしたいといった実情に適合した閾値離間距離を設定することができるので、走行予測線の長さをさらに最適化することができる。
【0064】
また、走行予測線算出部36は、外輪側の走行予測線を算出するための閾値離間距離を、内輪側の走行予測線を算出するための閾値離間距離よりも長い距離としてもよい。このようにすれば、曲線走行時における外輪側の走行速度の方が内輪側の走行速度よりも速くなり、外輪側の方が遠くまで注意を促す必要があるといった実情に適合した閾値離間距離を設定することができ、走行予測線の長さをさらに最適化することができる。
【0065】
上記構成に加えて、さらに、LSI26は、その機能ブロックの1つとして、走行予測線表示処理手段として機能する走行予測線表示処理部40を有しており、この走行予測線表示処理部40は、走行予測線算出部36によって算出された走行予測線に対して、実世界上の座標からモニタ25上の座標への座標変換を行い、座標変換後の走行予測線を、車両周辺監視画像上に重畳表示するようになっている。
【0066】
したがって、本実施形態によれば、自車両の走行速度および障害物の検出結果に応じた適度な長さの走行予測線を算出してモニタ25に表示することができるので、走行予測線が、ユーザの注意を促すことが不要な車両周辺監視画像中の障害物に重なった状態として表示されることを防止することができる。
【0067】
なお、LSI26の各機能ブロックは、自車両の走行速度が、予め設定された速度以下になった場合に、車両周辺監視画像および走行予測線を表示するための機能を作動させるようにしてもよい。
【0068】
また、各車載カメラ17,18,19,20,21を障害物検出手段として機能させるようにしてもよい。
【0069】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0070】
なお、初期状態において、LSI26には、入力操作部24から、所定の車両周辺監視画像および走行予測線を表示する旨の指示が入力されているものとする。
【0071】
次いで、初期状態から車両運転支援装置15の処理を開始すると、まず、図2のステップ1(ST1)において、LSI26により、車両側から、ハンドルの操舵角の情報を取得する。このとき、ギア位置やブレーキ位置等の他の車両情報を取得するようにしてもよい。また、図示はしないが、このとき、車両周辺監視画像を表示するための処理も開始されている。
【0072】
次いで、ステップ2(ST2)においては、タイヤ軌跡算出部35により、ステップ1(ST1)において取得された操舵角の情報に基づいて、自車両のタイヤ軌跡を算出する。
【0073】
次いで、ステップ3(ST3)においては、車速パルス発生装置22によって自車両の走行速度を検出する。このとき、余裕時間設定部38により、走行速度に応じた余裕時間を自動的に設定する。この走行速度に応じた余裕時間の設定は、走行速度のデータと余裕時間のデータとが互いに対応関係を有した状態として格納されたテーブルを用いて行うようにしてもよい。
【0074】
次いで、ステップ4(ST4)においては、走行予測線算出部36により、ステップ2(ST2)において算出されたタイヤ軌跡と、ステップ3(ST3)において検出された走行速度と、余裕時間設定部38によって設定された余裕時間とに基づいて、(1)式による走行予測線の算出を行う。
【0075】
これにより、走行予測線として、自車両の走行速度に応じた適度な長さを有する走行予測線が算出される。なお、このステップ4(ST4)において算出された走行予測線は、後述するステップ7(ST7)における修正後の走行予測線に対して、標準(あるいは初期)の長さ、すなわちデフォルト長を有する走行予測線ということができる。
【0076】
次いで、ステップ5(ST5)においては、走行予測線算出部36により、障害物検出センサ23からの検出結果に基づいて、ステップ4(ST4)において算出された走行予測線上に、該当障害物が存在するか否かを判定し、存在する場合には、ステップ6(ST6)に進み、存在しない場合には、ステップ8(ST8)に進む。
【0077】
次いで、ステップ6(ST6)においては、走行予測線算出部36により、該当障害物と自車両との離間距離が閾値離間距離を超えるか否かを判定し、閾値離間距離を超える場合には、ステップ7(ST7)に進み、超えない場合には、ステップ8(ST8)に進む。
【0078】
次いで、ステップ7(ST7)においては、走行予測線算出部36により、ステップ4(ST4)において算出された走行予測線の算出結果を、前記最大延出位置が該当障害物に対して自車両側に所定の距離だけ退避した位置に止まるように修正して、ステップ8(ST8)に進む。
【0079】
これにより、走行予測線の長さが、障害物の検出結果に応じた適度な長さに短縮される。
【0080】
最後に、ステップ8(ST8)においては、走行予測線表示処理部40により、走行予測線算出部36の算出結果に応じた走行予測線を、車両周辺監視画像表示処理部34によってモニタ25上に表示された車両周辺監視画像上に重ねて表示する。
【0081】
これにより、例えば、図3に示すように、車両周辺監視画像として、図5に示したものと同様のトップビュー画像1を表示する場合には、トップビュー画像1上に、内輪側の走行予測線43および外輪側の走行予測線44として、自車両2との衝突の危険性が少ない他車両5に重ならないような長さの走行予測線43,44を表示することができる。具体的には、各走行予測線43,44は、それぞれ、自車両の2の後端部2aから走行方向(後退方向)に向かって延出されているが、各走行予測線43,44の走行方向への最大延出位置を、いずれも、他車両5よりも自車両側に退避した位置に止めることができる。
【0082】
同様に、図4に示すように、車両周辺監視画像として、図6に示したものと同様のバックビュー画像7を表示する場合には、バックビュー画像7上に、自車両2との衝突の危険性が少ない他車両5に重ならないような長さの走行予測線43,44を表示することができる。
【0083】
なお、ステップ1(ST1)〜ステップ8(ST8)の処理は、入力操作部24によって車両周辺監視画像および走行予測線の表示の中止が指示されるまでの間は、繰り返し行う。
【0084】
以上述べたように、本実施形態によれば、自車両の走行速度および障害物の検出結果に基づいて、ユーザの注意を促すことが不要な障害物に重ならないような適度な長さの走行予測線を算出して車両周辺監視画像1,7上に表示することができるので、ユーザに与える恐怖感や不安感を軽減して運転の円滑性および安全性を向上させることができる。
【0085】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係る車両運転支援装置の実施形態を示すブロック図
【図2】本発明に係る車両運転支援装置の実施形態を示すフローチャート
【図3】本発明に係る車両運転支援装置の実施形態において、トップビュー画像上への走行予測線の表示状態を示す図
【図4】本発明に係る車両運転支援装置の実施形態において、バックビュー画像上への走行予測線の表示状態を示す図
【図5】従来のトップビュー画像上への走行予測線の表示状態の一例を示す図
【図6】従来のバックビュー画像上への走行予測線の表示状態の一例を示す図
【符号の説明】
【0087】
15 車両運転支援装置
17 左フロントカメラ
18 右フロントカメラ
19 左サイドカメラ
20 右サイドカメラ
21 バックカメラ
22 車速パルス発生装置
25 モニタ
34 車両周辺監視画像表示処理部
35 タイヤ軌跡算出部
36 走行予測線算出部
40 走行予測線表示処理部
43,44 走行予測線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周辺における所定の撮影領域を撮影する撮影手段と、
この撮影手段の撮影映像を用いて、前記自車両の周辺における所定の監視領域を監視する車両周辺監視画像を生成し、生成された前記車両周辺監視画像を表示部に表示する車両周辺監視画像表示処理手段と、
前記自車両のハンドルの操舵角に基づいて、前記自車両の予測されるタイヤ軌跡を算出するタイヤ軌跡算出手段と、
前記自車両の走行速度を検出する車速検出手段と、
前記タイヤ軌跡算出手段によって算出された前記タイヤ軌跡の一部をなし、前記自車両に対して前記自車両の走行方向に向かって延出された部位を有する走行予測線であって、その自車両の走行方向への最大延出位置が、この最大延出位置に存在すると仮定された障害物に対するユーザの注意を促すことが前記自車両の走行速度との関係から必要とみなされる最大延出位置に止まるような走行予測線を、前記車速検出手段の検出結果に基づいて算出する走行予測線算出手段と、
この走行予測線算出手段によって算出された前記走行予測線を前記車両周辺監視画像上に重ねて表示する走行予測線表示処理手段と
を備えたことを特徴とする車両運転支援装置。
【請求項2】
前記走行予測線算出手段が、
前記走行予測線を算出する際に、ユーザが前記自車両の走行状態を所望の状態に制御するために要するとみなされる時間である余裕時間を加味するように形成されていること
を特徴とする請求項1に記載の車両運転支援装置。
【請求項3】
前記余裕時間が、前記自車両の走行速度の増加にともなって漸次または段階的に長くなる時間とされていること
を特徴とする請求項2に記載の車両運転支援装置。
【請求項4】
前記余裕時間が、前記操舵角の増加にともなって漸次または段階的に長くなる時間とされていること
を特徴とする請求項3に記載の車両運転支援装置。
【請求項5】
外輪側の前記走行予測線を算出するための前記余裕時間が、内輪側の前記走行予測線を算出するための前記余裕時間よりも長い時間とされていること
を特徴とする請求項3または請求項4に記載の車両運転支援装置。
【請求項6】
前記自車両の周辺に存在する障害物を検出する障害物検出手段を備え、
前記走行予測線算出手段が、
前記障害物検出手段によって検出された前記障害物の中から、前記車速検出手段の検出結果に基づいて算出された前記走行予測線上に存在する前記障害物を抽出し、抽出された前記障害物と前記自車両との離間距離が所定の閾値を超える場合には、前記最大延出位置が、前記抽出された前記障害物に対して前記自車両側に所定の距離だけ退避した位置に止まるように、前記走行予測線の算出結果を修正するように形成されていること
を特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の車両運転支援装置。
【請求項7】
前記離間距離の前記閾値が、前記操舵角の増加にともなって漸次または段階的に長くなる距離とされていること
を特徴とする請求項6に記載の車両運転支援装置。
【請求項8】
外輪側の前記走行予測線を算出するための前記離間距離の前記閾値が、内輪側の前記走行予測線を算出するための前記離間距離の前記閾値よりも長い距離とされていること
を特徴とする請求項6または請求項7に記載の車両運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−279883(P2008−279883A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125413(P2007−125413)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】