説明

車両骨格部材の結合構造

【課題】結合される一対の車両骨格部材の一方に接着されたジョイント部材と他方の車両骨格部材とをボルトにより締結する際に、ジョイント部材と一方の車両骨格部材との接着部に加わる剥離方向又はせん断方向の力を緩和できる車両骨格部材の結合構造を提供する。
【解決手段】クラッシュボックス12の後部に接着されたジョイント部材14、16を、フロントサイドメンバ10の前部にボルトBにより締結する。クラッシュボックス12の壁部12Aに接着され、ボルトBによりフロントサイドメンバ10の上壁部10Bに締結される締結部20に中空部21を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両骨格部材の結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギ吸収部材をサイドメンバ(支持体)に結合した構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このエネルギ吸収部材とサイドメンバとの結合を、エネルギ吸収部材に接着されたジョイント部材をサイドメンバにボルトにより締結することによって行う場合には、ボルトの締付によってジョイント部材に生じる軸力により、ジョイント部材とエネルギ吸収部材との接着部に剥離方向又はせん断方向の力が加えられ、該接着部に割れが発生する可能性がある。
【特許文献1】特開2005−195155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、一方の車両骨格部材に接着されたジョイント部材と他方の車両骨格部材とをボルトにより締結する際に、ジョイント部材と一方の車両骨格部材との接着部に加わる剥離方向又はせん断方向の力を緩和できる車両骨格部材の結合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の車両骨格部材の結合構造は、一方の車両骨格部材と他方の車両骨格部材とがジョイント部材を介して結合される場合に適用される車両骨格部材の結合構造であって、前記ジョイント部材は、前記一方の車両骨格部材に接着され、前記他方の車両骨格部材にボルトにより締結され、前記ジョイント部材における前記他方の車両骨格部材との締結部に、前記締結部の剛性を低下させる剛性低下手段を有することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の車両骨格部材の結合構造では、一方の車両骨格部材に接着されたジョイント部材が、他方の車両骨格部材にボルトにより締結されることにより、一対の車両骨格部材が結合される。
【0007】
ここで、ジョイント部材における他方の車両骨格部材との締結部には、該締結部の剛性を低下させる剛性低下手段が設けられており、ボルト締付時に該締結部に生じる軸力によって該締結部が変形し易くなっている。
【0008】
これにより、該締結部を他方の車両骨格部材にボルトにより締結する際に、ジョイント部材と一方の車両骨格部材との接着部に加わる剥離方向又はせん断方向の力を緩和できる。
【0009】
請求項2に記載の車両骨格部材の結合構造は、請求項1に記載の車両骨格部材の結合構造であって、前記剛性低下手段は、前記締結部に形成された中空部であることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の車両骨格部材の結合構造では、ジョイント部材における他方の車両骨格部材との締結部に中空部が形成されることにより、該締結部の剛性が低下されており、ボルト締付時に該締結部に生じる軸力によって該締結部が変形し易くなっている。
【0011】
請求項3に記載の車両骨格部材の結合構造は、請求項1又は請求項2に車両骨格部材の結合構造であって、前記締結部は、前記ボルトの先端側において一方の前記車両骨格部材と接着されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の車両骨格部材の結合構造では、ジョイント部材における他方の車両骨格部材との締結部が、ボルトの先端側において一方の車両骨格部材と接着されているため、該締結部を他方の車両骨格部材に締結する際、該締結部と一方の車両骨格部材との接着部には、剥離方向の力が加わる。
【0013】
しかし、該締結部の剛性が剛性低下手段により低下され、ボルト締付時に該締結部に生じる軸力により該締結部が変形し易くされていることにより、該接着部に加わる剥離方向の力が抑制される。
【0014】
請求項4に記載の車両骨格部材の結合構造は、請求項3に記載の車両骨格部材の結合構造であって、前記締結部から前記ボルトの径方向に延設され、一方の前記車両骨格部材と接着される延設部を有することを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の車両骨格部材の結合構造では、ジョイント部材における一方の車両骨格部材との締結部からボルトの径方向に延設された延設部が、一方の車両骨格部材と接着されており、ボルトの先端側における該締結部と一方の車両骨格部材との接着部の面積が拡張されている。よって、ボルト締付時に該接着部に生じる剥離方向の応力を緩和できる。
【0016】
請求項5に記載の車両骨格部材の結合構造は、一方の車両骨格部材と他方の車両骨格部材とがジョイント部材を介して結合される場合に適用される車両骨格部材の結合構造であって、前記ジョイント部材は、前記一方の車両骨格部材に接着され、前記他方の車両骨格部材にボルトにより締結され、前記ジョイント部材における前記他方の車両骨格部材との締結部は、前記ボルトとの螺合部より前記ボルトの基端側において前記一方の車両骨格部材と接着されていることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の車両骨格部材の結合構造では、一方の車両骨格部材に接着されたジョイント部材が、他方の車両骨格部材にボルトにより締結されることにより、一対の車両骨格部材が結合される。
【0018】
ここで、ジョイント部材における他方の車両骨格部材との締結部は、ボルトとの螺合部よりボルトの基端側において一方の車両骨格部材と接着されているため、該締結部を他方の車両骨格部材にボルトにより締結する際に、該締結部と一方の車両骨格部材との接着部には、圧縮方向の力が加わる。
【0019】
よって、該締結部を他方の車両骨格部材に締結する際に、該締結部と一方の車両骨格部材との接着部に加わる剥離方向及びせん断方向の力を緩和できると共に、該接着部に対して圧縮応力を生じさせることができる。
【0020】
請求項6に記載の車両骨格部材の結合構造は、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の車両骨格部材の結合構造であって、前記一方の車両骨格部材は、車両前部に車両前後方向に沿って配設されたエネルギ吸収部材であり、前記他方の車両骨格部材は、前記エネルギ吸収部材の車両後方側に車両前後方向に沿って配設されたフロントサイドメンバであることを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の車両骨格部材の結合構造では、エネルギ吸収部材が、車両前部に車両前後方向に沿って配設され、フロントサイドメンバが、エネルギ吸収部材の車両後方側に車両前後方向に沿って配設されており、エネルギ吸収部材に接着されたジョイント部材が、フロントサイドメンバにボルトにより締結されることにより、エネルギ吸収部材とフロントサイドメンバとが結合されている。
【0022】
ここで、ジョイント部材をフロントサイドメンバにボルトにより締結する際には、上記剛性低下手段により、ジョイント部材とエネルギ吸収部材との接着部に加わる剥離方向又はせん断方向の力が緩和され、該接着部の割れの発生が抑制される。よって、エネルギ吸収部材とフロントサイドメンバとの結合強度を確保することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、一方の車両骨格部材に接着されたジョイント部材と他方の車両骨格部材とをボルトにより締結する際に、ジョイント部材と一方の車両骨格部材との接着部に加わる剥離方向又はせん断方向の力を緩和できる車両骨格部材の結合構造を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明における車体構造の一実施形態を図1〜図7に従って説明する。
【0025】
なお、図中矢印UPは車両上方方向を示し、図中矢印FRは車両前方方向を示し、図中矢印INは車幅内側方向を示している。
【0026】
図1、図2には、本発明の第1実施形態に係る車両骨格部材の結合構造が斜視図にて示されている。これらの図に示されるように、本実施形態の車両では、車両骨格部材の一方を成しエネルギ吸収部材としてのクラッシュボックス12が、車両前部の車幅方向両端下部で車両前後方向に沿って配設され、車両骨格部材の他方を成すフロントサイドメンバ10の前端部に結合されている。クラッシュボックス12の前端部には、バンパリインホース(図示省略)が結合されている。
【0027】
フロントサイドメンバ10は、アルミニウム合金製とされており、閉じ断面構造として構成されている。また、クラッシュボックス12は、CFRP(炭素繊維強化樹脂)によって構成されており、車両前後方向から見た断面形状が凸凹状となっている。なお、クラッシュボックス12は、CFRPのみならず、GFRP(ガラス繊維強化樹脂)等の他の繊維強化樹脂により構成してもよい。
【0028】
フロントサイドメンバ10の前端部には、クラッシュボックス12の後端部を重ねて結合するための車両前後方向視にて矩形枠状の結合部10Aが形成されており、この結合部10A内にクラッシュボックス12の後端部とジョイント部材14、16とが配置されている。
【0029】
クラッシュボックス12は、車両前後方向を長手方向とする複数の壁部12A、12B、12C、12D、12E、12F、12Gを備えており、これらの壁部12A〜Gは、上下に連結された2つのコ字状断面を形成している。なお、このコ字状断面は車幅方向内側に開口している。また、複数の壁部12A〜Gは、車両上方から下方へ記載順に配設されており、壁部12A、12C、12E、12Gは、水平面に対して僅かに傾斜した横壁部とされ、壁部12B、12D、12Fは、垂直面に対して略平行とされた縦壁部とされている。
【0030】
また、上端の壁部12Aの車幅方向内側端には、車両上方へ延出した上端縦壁部12Uが形成されており、下端の壁部12Gの車幅方向内側端には車両下方に延出した下端縦壁部12Lが形成されている。
【0031】
壁部12Aの後端部は、結合部10Aの上部を構成する上壁部10Bと対向して配設され、壁部12B、12Fの後端部は、結合部10Aの車幅方向外側部を構成する側壁部10Cに対向して配設され、また、壁部12D、上端縦壁部12U、下端縦壁部12Lの後端部は、結合部10Aの車幅方向内側部を構成する側壁部10Dに対向して配設され、さらに、壁部12Gは、結合部10Aの下部を構成する下壁部10Eに対向して配設されている。
【0032】
また、結合部10Aの内部には、ジョイント部材14、16が配設されており、このジョイント部材14、16を介して、結合部10Aとクラッシュボックス12の後端部とが結合されている。
【0033】
図3には、フロントサイドメンバ10の前端部(結合部10A)とクラッシュボックス12の後端部との結合構造が、車両前方から見た断面図にて示されている。この図に示されるように、ジョイント部材14、16は、クラッシュボックス12の後端部に接着されると共に、結合部10AにボルトBにより締結されている。また、ジョイント部材14、16は、アルミニウム合金製とされており、車両前後方向から見た断面形状が、車両上下方向に凹凸が繰り返される凸凹状となっている。
【0034】
ジョイント部材14は、結合部10Aの側壁部10CにボルトBにより締結される縦壁部14Aと、縦壁部14Aの上下方向中央部に形成され、クラッシュボックス12の壁部12C、12Eに接着剤S(図中太線で図示)で接合される接合部14Bと、縦壁部14Aの上端部に形成され、結合部10Aの上壁部10BにボルトBにより締結される締結部20と、縦壁部14Aの下端部に形成され、結合部10Aの下壁部10EにボルトBにより締結される締結部22とにより構成されている。
【0035】
縦壁部14Aは、壁部12Bの上端部近傍から壁部12Fの下端部近傍まで延在しており、その上部は、壁部12B及び側壁部10Cに挟み込まれ、その下部は、壁部12F及び側壁部10Cに挟み込まれている。また、縦壁部14Aの上下方向中央部には、車幅方向内側へ突出したボス14Hが形成され、このボス14Hには、車幅方向に貫通するネジ孔14Iが形成され、さらに、側壁部10Cの上下方向中央部には、ネジ孔14Iに対向して貫通孔10Fが形成されている。貫通孔10Fを通して車幅方向外側からネジ孔14Iに挿入されたボルトBにより、側壁部10Cと縦壁部14Aとの上下方向中央部同士が締結されている。
【0036】
接合部14Bは、壁部12C、12D、12Eにより形成される車幅方向内側へ凹んだ凹部と嵌合可能な雌雄の関係とされており、接着剤(図中太線で図示)により壁部12Cの下面に接着される壁部14Eと、壁部12Dに当接される壁部14Fと、接着剤S(図中太線で図示)により壁部12Eの上面に接着される壁部14Gとにより構成されている。
【0037】
また、締結部20は、車両前後方向に貫通した剛性低下手段としての中空部21を囲むボス24、連結片26、基部28、及び連結片30により等脚台形状に構成されている。ボス24は、車両上下方向を軸方向とする円筒状に構成されている。このボス24の軸心には、車両上下方向に貫通するネジ孔24Aが形成され、また、上壁部10Bには、ネジ孔24Aに対向して貫通孔10Gが形成されており、貫通孔10Gを通して車両上方側からネジ孔24Aに挿入されたボルトBにより、上壁部10Bとボス24とが締結されている。
【0038】
また、基部28は、縦壁部14Aの上端部から壁部12Aの上面に沿って車幅方向内側へ延在する板片であり、接着剤(図中太線で図示)により壁部12Aの上面に接着されている。また、連結片26は、縦壁部14Aの上端部とボス24の車幅方向外側とを連結する板片とされ、連結片30は、基部28の車幅方向内側端部とボス24の車幅方向内側とを連結する板片とされている。
【0039】
締結部22は、締結部20と上下対称の構成とされており、この締結部22においては、ボス24がボルトBにより下壁部10Eに締結され、基部28が接着剤S(図中太線で図示)により壁部12Gの下面に接着されている。
【0040】
また、ジョイント部材16は、結合部10Aの側壁部10Dに2本のボルトBにより締結される縦壁部16Aと、縦壁部16Aの上側部に形成され、クラッシュボックス12の壁部12A、12Cに接合される接合部16Bと、縦壁部16Aの下側部に形成され、接着剤S(図中太線で図示)でクラッシュボックス12の壁部12E、12Gに接合される接合部16Cと、縦壁部16Aの上端部に形成され、結合部10Aの上壁部10CにボルトBにより締結される締結部32と、縦壁部16Aの下端部に形成され、結合部10Aの下壁部10EにボルトBにより締結される締結部34とにより構成されている。
【0041】
縦壁部16Aは、側壁部10Dの上端部近傍から下端部近傍まで延在しており、その上端部は、上端縦壁部12U及び側壁部10Dに挟み込まれ、その下端部は、下側縦壁部12L及び側壁部10Dに挟み込まれ、さらに、その上下方向中央部は、壁部12D及び側壁部10Dに挟み込まれている。
【0042】
また、縦壁部16Aの上側部及び下側部には、車幅方向外側へ突出したボス16Dがそれぞれ形成され、このボス16Dには、車幅方向に貫通するネジ孔16Eが形成され、さらに、側壁部10Dの上側部及び下側部にはそれぞれ、ネジ孔16Eに対向して貫通孔10Hが形成されている。貫通孔10Hを通して車幅方向内側からネジ孔16Eに挿入されたボルトBにより、側壁部10Dと縦壁部16Aとの上側部及び下側部同士が締結されている。
【0043】
接合部16Bは、壁部12A、12B、12Cにより形成される車幅方向外側へ凹んだ凹部と嵌合可能な雌雄の関係とされており、接着剤S(図中太線で図示)により壁部12Aの下面に接着される壁部16Fと、壁部12Bに当接される壁部16Gと、接着剤S(図中太線で図示)により壁部12Cの上面に接着される壁部16Hとにより構成されている。
【0044】
また、接合部16Cは、壁部12E、12F、12Gにより形成される車幅方向外側へ凹んだ凹部と嵌合可能な雌雄の関係とされており、接着剤S(図中太線で図示)により壁部12Eの下面に接着される壁部16Iと、壁部12Fに当接される壁部16Jと、接着剤S(図中太線で図示)により壁部12Gの上面に接着される壁部16Kとにより構成されている。
【0045】
また、締結部32は、ボス36と、ボス36を縦壁部16Aの上端部に連結する連結片38とにより構成されている。ボス36は、車両上下方向を軸方向とする円筒状に構成されている。ボス36の軸心には、車両上下方向に貫通するネジ孔36Aが形成され、また、上壁部10Bには、ネジ孔36Aに対向して貫通孔10Iが形成されており、貫通孔10Iを通して車両上方側からネジ孔36Aに挿入されたボルトBにより、上壁部10Bとボス36とが締結されている。
【0046】
また、連結片38は、縦壁部16Aの上端部とボス36の車幅方向内側とを連結する板片とされている。
【0047】
また、締結部34は、締結部32と上下対称の構成とされており、この締結部34においては、ボス36がボルトBにより下壁部10Eに締結され、連結片38により、縦壁部16Aの下端部とボス36の車幅方向外側とが連結されている。
【0048】
次に、本実施形態における作用について説明する。
【0049】
本実施形態では、ジョイント部材14、16とクラッシュボックス12とを接着した後に、ジョイント部材14、16に設けられた複数のボスと上記結合部10AとがボルトBにより締結される。
【0050】
ところで、縦壁部14Aと側壁部10Cとの間、縦壁部16Aと側壁部10Dとの間、上側のボス24、36と上壁部10Bとの間や、下側のボス24、36と下壁部10Eとの間には、クラッシュボックス12に接着されたジョイント部材14、16を結合部10A内に嵌め込むための(嵌め合い公差分の)隙間が確保されている。
【0051】
このため、ボルトBによりボス14H、16D、24、36を結合部10Aに締結する際には、ボス14H、16D、24、36に生じるボルトBの基端側(ボルトBの頭部側)への軸力により、ボス14H、16D、24、36が、ボルトBの基端側へ引き寄せられる。
【0052】
ここで、図4(A)に示すように、締結部20では、ボス24が、ボルトBにより車両上方側へ引き寄せられながら上壁部10Bに締結されるが、ボス24の車両下側、即ち、ボルトBの先端側には、クラッシュボックス12の壁部12Aの上面と基部28との接着部(面)が、ボルトBの先端部に対向して設けられている。このため、ボス14Hやボス16D等が結合部10Aにボルト締結されることによりクラッシュボックス12が結合部10Aに固定されている場合には、基部28と壁部12Aとの接着部に対して剥離方向の力が作用する。
【0053】
しかしながら、締結部20は、車両前後方向に貫通した中空部21が形成されることにより、ボス24と基部28とが薄肉の連結片26、28により連結された構成とされている。これによって、ボス24を基部28に直接結合した場合(図4(B)参照)と比較して、締結部20のボルトBの軸方向の剛性が低下されていることにより、締結部20の上下方向への伸長(弾性変形)し易くされており、ボルトBの締付により締結部20に生じる軸力の締結部20と壁部12Aとの接着部への伝達性が低下されている。
【0054】
従って、ボス24を基部28に直接結合した場合(図4(B)参照)と比較して、締結部20と壁部12Aとの接着部に対して作用する剥離方向の力を低減でき、以って、接着部の割れの発生や締結部20と壁部12Aとの剥離の発生を抑制できる。
【0055】
なお、締結部22は、締結部20と上下対称の構成とされているため、締結部22においても、締結部20と同様の作用効果が得られる。
【0056】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0057】
図5に示すように、本実施形態では、締結部20、22を構成する基部28が、連結片30の下端部との結合部よりも車幅方向内側まで延設されている。即ち、連結片30と基部28との結合部の車幅方向内側には、クラッシュボックス12の壁部12A、12Gに接着される延設部としてのフランジ部28Aが設けられている。
【0058】
次に、本実施形態における作用について説明する。
【0059】
フランジ部28Aにより、基部28とクラッシュボックス12の壁部12A、壁部12Gとの接着面積が拡張されている。このため、基部28と壁部12A、12Bとの接着部に生じる剥離方向の応力を緩和できる。また、連結片30と基部28との結合部が、該接着部の縁部より中央側に配置されていることにより、該接着部の縁部(車幅方向内側端部)への応力集中を緩和できる。従って、接着部の縁部を始点としての基部28と壁部12A、12Gとの剥離の発生を抑制できるため、ひいては、基部28と壁部12A、12Gとの剥離が発生し難くなる。
【0060】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、第1、第2実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0061】
図6に示すように、本実施形態では、ジョイント部材14の縦壁部14Aの上端部近傍に、締結部50が配設され、ジョイント部材14の縦壁部14Aの下端部近傍に、締結部52が配設されている。
【0062】
締結部50は、ジョイント部材14と一体で形成されたボス54、及び基部56と、ジョイント部材16と一体で形成された螺合部58とにより構成されている。ボス54は、車両上下方向を軸方向とする円筒状に構成されている。また、基部56は、縦壁部14Aの上端部から壁部12Aの上面に沿って車幅方向内側へ延在する板片であり、接着剤(図中太線で図示)により壁部12Aの上面に接着されている。この基部56の上面にボス54の軸方向一端部が結合されている。また、ボス54の軸心、基部56には、車両上下方向に貫通する貫通孔54Aが形成され、壁部12Aには、貫通孔54Aに対向して貫通孔12Zが形成されている。
【0063】
また、螺合部58は、ジョイント部材16における壁部16Aと壁部16Bとの隅部に形成されており、この螺合部58には、貫通孔54Aに対向して、車両上下方向に貫通するネジ孔58Aが形成されている。
【0064】
一方、上壁部10Bには、貫通孔54Aに対向して貫通孔10Gが形成されており、貫通孔10G、54A、12Zを通して車両上方側からネジ孔58Aに挿入されたボルトBにより、上壁部10Bと締結部50とが締結されている。
【0065】
また、締結部52は、締結部50と上下対称の構成とされており、この締結部52においては、縦壁部14Aの下端部から壁部12Gの下面に沿って車幅方向内側へ延在する基部56が、接着剤(図中太線で図示)により壁部12Gの下面に接着され、該基部56の下面からボス54が車両下方へ突出し、壁部16Jと壁部16Kとの隅部に螺合部58が形成されている。
【0066】
一方、下壁部10Eには、貫通孔56Aに対向して貫通孔10Gが形成され、壁部12Gには、貫通孔56Aに対向して貫通孔12Zが形成されており、貫通孔10G、56A、12Zを通して車両下方側からネジ孔58Aに挿入されたボルトBにより、下壁部10Eと締結部52とが締結されている。
【0067】
次に、本実施形態における作用について説明する。
【0068】
ボルトBにより締結部50を上壁部10Bに締結する際には、螺合部58に生じる車両上方への軸力により、螺合部58が車両上方側へ引き寄せられる。ここで、基部56と壁部12Aとの接着部(面)、及び螺合部58と壁部12Aとの接着部(面)が、螺合部58よりもボルトBの基端側(ボルトBの頭部側)に配置されているため、ボルトBの締付により螺合部58に生じる軸力により、上記接着部に圧縮方向の力が加えられる。
【0069】
よって、ボルトBにより締結部50を上壁部10Bに締結する際に、上記接着部に加わる剥離方向及びせん断方向の力を緩和できるのみならず、上記接着部に対して圧縮応力を生じさせることができるので、上記接着面の割れの発生や締結部50と壁部12Aとの剥離の発生を抑制できる。
【0070】
なお、締結部52は、締結部50と上下対称の構成とされているため、締結部52においても、締結部50と同様の作用効果が得られる。
【0071】
以上、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、クラッシュボックスとフロントサイドメンバとの結合構造に本発明を適用したが、本発明は、他の車両骨格部材同士の結合構造にも適用可能である。
【0072】
また、本実施形態では、CFRP製のクラッシュボックス12とアルミニウム合金製のフロントサイドメンバ10との結合構造に本発明を適用したが、金属部材同士の結合構造、あるいは、樹脂部材と金属部材との結合構造にも本発明を適用可能である。
【0073】
また、本実施形態では、クラッシュボックス12に接着され、フロントサイドメンバ10にボルトBにより締結される締結部20、22に、剛性低下手段としての中空部21を設けたが、例えば、図7に示すように、フロントサイドメンバ10に締結されるのみでクラッシュボックス12には接着されない締結部であるボス16Dに剛性低下手段としての溝60を設ける等してもよい。この場合には、特に、壁部12Aと壁部16Fとの接着部、及び壁部12Cと壁部16Hとの接着部に加わるせん断力を緩和できる。
【0074】
さらに、本実施形態では、剛性低下手段を中空部21としたが、完全に中空にする必要はなく、他の部位よりも薄肉化された薄肉部を剛性低下手段としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両骨格部材の結合構造を示す車両斜め前方外側から見た斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る車両骨格部材の結合構造を示す車両斜め前方内側から見た斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る車両骨格部材の結合構造を示す断面図である。
【図4】(A)は、本発明の第1実施形態に係る車両骨格部材の結合構造を構成する締結部を示す拡大断面図であり、(B)は、比較例に係る車両骨格部材の結合構造を構成する締結部を示す拡大断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る車両骨格部材の結合構造を示す断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る車両骨格部材の結合構造を示す断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る車両骨格部材の結合構造の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0076】
10 フロントサイドメンバ(車両骨格部材)
12 クラッシュボックス(エネルギ吸収部材)
14 ジョイント部材
16 ジョイント部材
20 締結部
21 中空部(剛性低下手段)
22 締結部
28A フランジ部(延設部)
50 締結部
52 締結部
60 溝(剛性低下手段)
B ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の車両骨格部材と他方の車両骨格部材とがジョイント部材を介して結合される場合に適用される車両骨格部材の結合構造であって、
前記ジョイント部材は、前記一方の車両骨格部材に接着され、前記他方の車両骨格部材にボルトにより締結され、
前記ジョイント部材における前記他方の車両骨格部材との締結部に、前記締結部の剛性を低下させる剛性低下手段を有することを特徴とする車両骨格部材の結合構造。
【請求項2】
前記剛性低下手段は、前記締結部に形成された中空部であることを特徴とする請求項1に記載の車両骨格部材の結合構造。
【請求項3】
前記締結部は、前記ボルトの先端側において一方の前記車両骨格部材と接着されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に車両骨格部材の結合構造。
【請求項4】
前記締結部から前記ボルトの径方向に延設され、一方の前記車両骨格部材と接着される延設部を有することを特徴とする請求項3に記載の車両骨格部材の結合構造。
【請求項5】
一方の車両骨格部材と他方の車両骨格部材とがジョイント部材を介して結合される場合に適用される車両骨格部材の結合構造であって、
前記ジョイント部材は、前記一方の車両骨格部材に接着され、前記他方の車両骨格部材にボルトにより締結され、
前記ジョイント部材における前記他方の車両骨格部材との締結部は、前記ボルトとの螺合部より前記ボルトの基端側において前記一方の車両骨格部材と接着されていることを特徴とする車両骨格部材の結合構造。
【請求項6】
前記一方の車両骨格部材は、車両前部に車両前後方向に沿って配設されたエネルギ吸収部材であり、
前記他方の車両骨格部材は、前記エネルギ吸収部材の車両後方側に車両前後方向に沿って配設されたフロントサイドメンバであることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の車両骨格部材の結合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−296823(P2008−296823A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147096(P2007−147096)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】