説明

車両

【課題】介助者の意図に反して移動することを防止できる車両を提供する。
【解決手段】車両10は、後輪16a,16b、クラッチユニット50、スプロケット52、クランク70、およびスイッチユニット106を備える。スプロケット52は、クラッチユニット50のかみ合い部材132に連結される。クランク70の回転力は、スプロケット52およびクラッチユニット50を介して後輪16bに伝達される。介助者がスイッチユニット106の第1操作部材108を操作することによって、スプロケット52とかみ合い部材132との連結が解除される。これにより、クランク70から後輪16bへの回転力の伝達が遮断される。また、スプロケット52からかみ合い部材132に与えられる力が大きくなることによってもスプロケット52とかみ合い部材132との連結が解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両に関し、より特定的にはクラッチ機構を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運動能力が低下した高齢者、障害者および怪我人等の生活を支援するための車両が多数提案されており、その一例の車両が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1のような車両は、一般的に「シニアカー」と呼ばれ、病院やリハビリ施設内でも小回りよく走行できるようにコンパクトに構成される。特許文献1の車両では、車両の前進および後進がジョイスティックによって指示され、ジョイスティックを操作することで車両の進行方向が変わるため、走行時の違和感が少なく、高齢者等の運動能力が低下した搭乗者にとって操作性がよい。その反面、特許文献1の車両に頼りすぎると運動能力がますます低下してしまう。
【0004】
そこで、たとえば特許文献2には、搭乗者にも運動(駆動力)を要求することによって搭乗者の運動能力の維持・回復を狙った車両が開示されている。特許文献2の車両は、ペダルを踏み込むことによって生じる駆動力を電動モータでアシストすることによって走行する。
【0005】
上述のような車両を利用することによって、高齢者等は、介助者の補助を必要とすることなく所望の場所へ移動することができる。但し、車両の微妙な操作が要求される状況(たとえば、狭い通路を通る場合、または所定の場所に車両を停車させる場合等)においては、車両を移動させるために介助者の補助が必要になる場合がある。このような場合には、一般に、高齢者等が車両に乗車した状態で、介助者が車両を押し引きすることによって車両を前進または後進させる。
【0006】
ここで、上述の特許文献1の車両においては、介助者の補助が必要になった場合には、車両の電源を切ることによって、搭乗者の操作によって車両が前進または後進することを防止できる。それにより、介助者の意図に反して車両が前進または後進することを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−83921号公報
【特許文献2】特開2008−37340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の特許文献2の車両においては、介助者が車両を移動させるために車両の電源を切っている場合でも、搭乗者がペダルを踏み込むことによって車両が前進または後進してしまう。そのため、介助者の意図に反して車両が前進または後進する場合がある。この場合、介助者は車両を円滑に移動させることができず、介助者の負担が増えてしまう。
【0009】
それゆえにこの発明の主たる目的は、介助者の意図に反して移動することを防止できる車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の車両は、前輪および一対の後輪を含み、前輪と一対の後輪とのうちの少なくとも一輪が第1駆動輪である車両であって、前輪と一対の後輪との間に位置し、かつ回転可能に設けられるクランクと、クランクの両端部に設けられる一対のペダルと、接続および切断可能に設けられるクラッチ機構を含み、クラッチ機構を介してクランクの回転力を第1駆動輪に伝達する伝達機構と、前輪と一対の後輪とのうちの少なくとも一輪を制動する制動装置と、クラッチ機構を切断状態にするために操作される第1操作部と、制動装置の制動動作を解除するために操作される第2操作部とを備える。
【0011】
なお、クラッチ機構を「切断状態にする」とは、クランクと第1駆動輪との間における回転力の伝達がクラッチ機構において遮断される状態にすることであり、クラッチ機構が接続された状態では、クランクと第1駆動輪との間における回転力の伝達はクラッチ機構において遮断されない。
【0012】
請求項2に記載の車両は、請求項1に記載の車両において、クラッチ機構は、第1操作部が操作されているときに切断状態になり、第1操作部が操作されていないときに接続状態となることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の車両は、請求項1または2に記載の車両において、制動装置の制動動作は、第2操作部が操作されているときに解除されることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の車両は、請求項1から3のいずれかに記載の車両において、伝達機構は、クランクの回転力をクラッチ機構に伝達する伝達部材および第1駆動輪と一体的に回転する回転軸をさらに含み、クラッチ機構は、回転軸と同軸状に配置されることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の車両は、請求項4に記載の車両において、第1操作部とクラッチ機構とを連結する連結機構をさらに備え、伝達機構は、回転軸と同軸状に設けられかつ伝達部材によって伝達される回転力に基づいて回転するスプロケットをさらに含み、クラッチ機構は、スプロケットに設けられる第1かみ合い歯と、回転軸と一体的に回転しつつスプロケットに対して進退できるように回転軸と同軸状に設けられかつ第1かみ合い歯にかみ合い可能な第2かみ合い歯を有するかみ合い部材と、第2かみ合い歯が第1かみ合い歯にかみ合うようにかみ合い部材をスプロケットに向かう第1方向に付勢する付勢部材とを含み、連結機構は、第1操作部が操作された場合にかみ合い部材を第1方向の反対の第2方向に移動させることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の車両は、請求項5に記載の車両において、当該車両を前進させるために搭乗者がクランクを回転させたときのスプロケットの回転方向を第3方向とした場合に、クラッチ機構は、スプロケットから前記かみ合い部材に与えられる第3方向の力に基づいてかみ合い部材を第2方向に移動させる移動機構を含むことを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載の車両は、請求項6に記載の車両において、移動機構は、回転軸に固定される第1円筒部、および第1円筒部から径方向に突出しかつその第1端部が第1円筒部に固定される連結部材を含み、かみ合い部材は、第2かみ合い歯よりも第2方向側に設けられかつ径方向に貫通する貫通孔を有する第2円筒部をさらに含み、第2円筒部は、第1円筒部の外側に摺動可能に嵌められ、貫通孔は、第2円筒部の径方向から見た場合に第3方向側に傾斜しつつ第2かみ合い歯側から第2方向側に向かって延び、連結部材の第2端部は、貫通孔において第2円筒部に係止されることを特徴とする。
【0018】
請求項8に記載の車両は、請求項1から7のいずれかに記載の車両において、前輪と一対の後輪との間でクランクよりも上方に設けられるシートをさらに備え、第1操作部および/または第2操作部は、シートよりも後方に設けられることを特徴とする。
【0019】
なお、「前輪と一対の後輪との間」とは、側面視において前輪の前端と一対の後輪の後端との間のことである。
【0020】
請求項9に記載の車両は、請求項1から8のいずれかに記載の車両において、制動装置は電磁ブレーキを含み、電磁ブレーキは、少なくとも給電されていないときに前輪と一対の後輪とのうちの少なくとも一輪を制動することを特徴とする。
【0021】
請求項10に記載の車両は、請求項9に記載の車両において、当該車両を走行させるための搭乗者の動作を検出する第1検出部と、第1検出部による搭乗者の動作の検出に基づき制動装置による制動動作が解除されるように制動装置を制御する制御部とをさらに備えることを特徴とする。
【0022】
請求項11に記載の車両は、請求項10に記載の車両において、第2操作部が操作されずかつ搭乗者の動作が検出されていないときには、制動装置による制動動作が維持されることを特徴とする。
【0023】
請求項12に記載の車両は、請求項10または11に記載の車両において、第1検出部は、クランクの回転動作またはクランクに与えられるトルクを検出することを特徴とする。
【0024】
請求項13に記載の車両は、請求項12に記載の車両において、前輪と一対の後輪とのうちの少なくとも一輪を第2駆動輪として駆動する電動モータをさらに備え、制御部は、第1検出部による搭乗者の動作の検出に基づき当該車両を前進または後進させるように電動モータを制御することを特徴とする。
【0025】
請求項14に記載の車両は、請求項10から13のいずれかに記載の車両において、当該車両の車速を検出するための第2検出部をさらに備え、制御部は、第2検出部によって検出される車速がしきい値以下になるように制動装置を制御することを特徴とする。
【0026】
請求項15に記載の車両は、請求項1から12のいずれかに記載の車両において、前輪と一対の後輪とのうちの少なくとも一輪を第2駆動輪として駆動する電動モータをさらに備えることを特徴とする。
【0027】
請求項16に記載の車両は、請求項13または15に記載の車両において、第1駆動輪は前輪と一対の後輪とのうちの一方であり、第2駆動輪は前輪と一対の後輪とのうちの他方であることを特徴とする。
【0028】
請求項17に記載の車両は、請求項1から16のいずれかに記載の車両において、第1操作部および第2操作部は共通の操作部材によって構成されることを特徴とする。
【0029】
請求項18に記載の車両は、請求項1から16のいずれかに記載の車両において、第1操作部および第2操作部は別個の第1操作部材および第2操作部材によって構成されることを特徴とする。
【0030】
請求項19に記載の車両は、請求項18に記載の車両において、第1操作部材および第2操作部材は互いに近接して設けられることを特徴とする。
【0031】
請求項20に記載の車両は、前輪および一対の後輪を含み、前輪と一対の後輪とのうちの少なくとも一輪が第1駆動輪である車両であって、前輪と一対の後輪との間に位置し、かつ回転可能に設けられるクランクと、クランクの両端部に設けられる一対のペダルと、接続および切断可能に設けられるクラッチ機構を含み、クラッチ機構を介してクランクの回転力を第1駆動輪に伝達する伝達機構と、前輪と一対の後輪とのうちの少なくとも一輪を制動する制動装置とを備え、クラッチ機構は、クランクから伝達機構に与えられる回転力に基づいて切断されることを特徴とする。
【0032】
なお、クラッチ機構を「切断状態にする」とは、クランクと第1駆動輪との間における回転力の伝達がクラッチ機構において遮断される状態にすることであり、クラッチ機構が接続された状態では、クランクと第1駆動輪との間における回転力の伝達はクラッチ機構において遮断されない。
【0033】
請求項21に記載の車両は、請求項20に記載の車両において、伝達機構は、第1駆動輪と一体的に回転するように設けられる回転軸と、回転軸と同軸状に設けられるスプロケットと、クランクの回転力をスプロケットに伝達する伝達部材とをさらに含み、クラッチ機構は、スプロケットに設けられる第1かみ合い歯と、回転軸と一体的に回転しつつスプロケットに対して進退できるように回転軸と同軸状に設けられかつ第1かみ合い歯にかみ合い可能な第2かみ合い歯を有するかみ合い部材と、第2かみ合い歯が第1かみ合い歯にかみ合うようにかみ合い部材をスプロケットに向かう第1方向に付勢する付勢部材と、スプロケットからかみ合い部材に与えられる力に基づいてかみ合い部材を第1方向の反対の第2方向に移動させる移動機構とを含むことを特徴とする。
【0034】
請求項22に記載の車両は、請求項21に記載の車両において、移動機構は、当該車両を前進させるために搭乗者がクランクを回転させたときにスプロケットからかみ合い部材に与えられる力の方向を第3方向とした場合に、スプロケットからかみ合い部材に与えられる第3方向の力に基づいてかみ合い部材を第2方向に移動させることを特徴とする。
【0035】
請求項23に記載の車両は、請求項22に記載の車両において、移動機構は、回転軸に固定される第1円筒部、および第1円筒部から径方向に突出しかつその第1端部が第1円筒部に固定される連結部材を含み、かみ合い部材は、第2かみ合い歯よりも第2方向側に設けられかつ径方向に貫通する貫通孔を有する第2円筒部をさらに含み、第2円筒部は、第1円筒部の外側に摺動可能に嵌められ、貫通孔は、第2円筒部の径方向から見た場合に第3方向側に傾斜しつつ第2かみ合い歯側から第2方向側に向かって延び、連結部材の第2端部は、貫通孔において第2円筒部に係止されることを特徴とする。
【0036】
請求項24に記載の車両は、請求項20から23のいずれかに記載の車両において、制動装置は電磁ブレーキを含み、電磁ブレーキは、少なくとも給電されていないときに前輪と一対の後輪とのうちの少なくとも一輪を制動することを特徴とする。
【0037】
請求項25に記載の車両は、請求項20から24のいずれかに記載の車両において、前輪と一対の後輪とのうちの少なくとも一輪を第2駆動輪として駆動する電動モータをさらに備えることを特徴とする。
【0038】
請求項1に記載の車両は、前輪および一対の後輪のうちの少なくとも一輪を制動する制動装置を備えるので、車両を容易に停止および停車させることができる。また、制動装置の制動動作は、第2操作部を操作することによって解除することができる。したがって、たとえば介助者は、第2操作部を操作して制動装置の制動動作を解除することによって車両を容易に移動させることができる。また、この車両では、前輪および一対の後輪のうちの少なくとも一輪が第1駆動輪に設定され、クランクの回転力が伝達機構を介して第1駆動輪に伝達される。したがって、搭乗者は、ペダルを踏み込んでクランクを回転させることによって車両を移動させることができる。ここで、伝達機構は、接続および切断可能に設けられたクラッチ機構を含み、クラッチ機構は、第1操作部が操作された場合に切断状態になる。そのため、介助者が第1操作部を操作している場合には、搭乗者がクランクを回転させても、クランクから第1駆動輪への回転力の伝達がクラッチ機構において遮断される。この場合、搭乗者がクランクを回転させてもクランクの回転力が第1駆動輪に伝達されないので、介助者が車両を移動させているときに介助者の意図に反して車両が移動することを防止できる。また、第1駆動輪からクランクへの回転力の伝達が遮断されるので、介助者が車両を移動させているときにクランクが回転することを防止できる。この場合、ペダルの円運動が防止されるので、たとえば、搭乗者がペダルに足を載せていたとしても、搭乗者の足が動かされることを防止できる。それにより、車両の乗り心地を向上できる。また、クランクの回転が防止されるので、クランクを回転させるための力が不要になる。この場合、介助者はより小さな力で車両を移動させることができるので、介助者の負担を軽減することができる。
【0039】
請求項2に記載の車両では、第1操作部が操作されていないときにはクラッチ機構が接続状態になるので、クラッチ機構を接続するために第1操作部を操作しなくてよい。この場合、搭乗者は、ペダルを踏み込んでクランクを回転させるだけで車両を移動させることができるので、車両の操作性が向上する。
【0040】
請求項3に記載の車両では、第2操作部が操作されているときに制動装置の制動動作が解除されるので、介助者は、第2操作部を操作することによって車両を容易に移動させることができる。また、介助者は、第2操作部の操作を解除することによって、前輪および後輪のうちの少なくとも一輪を制動装置によって制動することができる。したがって、たとえば、坂道等において車両を移動させている場合であっても、介助者は、第2操作部の操作を解除することによって車両を容易に停止させることができる。それにより、介助者の負担をさらに軽減することができる。
【0041】
請求項4に記載の車両では、クラッチ機構が切断状態にされた場合には、回転軸と伝達部材との間における回転力の伝達が遮断される。したがって、クラッチ機構を切断した状態で介助者が車両を移動させるときには、第1駆動輪および回転軸の回転力が伝達部材に伝達されることが防止される。言い換えると、伝達部材を動かすための力が不要になる。この場合、介助者はより小さな力で車両を移動させることができるので、介助者の負担を十分に軽減することができる。また、この車両では、クラッチ機構が回転軸と同軸状に配置される。この場合、クラッチ機構(スプロケットと回転軸との間で回転力を伝達するための機構)を簡単な構成で実現できる。
【0042】
請求項5に記載の車両では、スプロケットの第1かみ合い歯とかみ合い部材の第2かみ合い歯とがかみ合っている場合には、クランクの回転力が、伝達部材、スプロケット、かみ合い部材、および回転軸を介して第1駆動輪に伝達される。一方、スプロケットの第1かみ合い歯とかみ合い部材の第2かみ合い歯とがかみ合っていない場合には、クランクから第1駆動輪への回転力の伝達が第1かみ合い歯と第2かみ合い歯との間で遮断される。このように、この車両では、第1かみ合い歯と第2かみ合い歯がかみ合っている場合にクラッチ機構が接続状態となり、第1かみ合い歯と第2かみ合い歯とがかみ合っていない場合にクラッチ機構が切断状態となる。ここで、この車両では、付勢部材によってかみ合い部材がスプロケットに向かう第1方向に付勢されるので、搭乗者の操作を要することなく、クラッチ機構を接続状態にすることができる(第1かみ合い歯と第2かみ合い歯とを互いにかみ合わせることができる)。それにより、車両の操作性が向上する。また、この車両では、第1操作部が操作された場合には、連結機構によってかみ合い部材が第2方向(スプロケットから離れる方向)に移動される。したがって、介助者は、第1操作部を操作することによってクラッチ機構を容易に切断状態にすることができる。
【0043】
請求項6に記載の車両では、移動機構は、スプロケットからかみ合い部材に与えられる第3方向の力に基づいてかみ合い部材を第2方向に移動させる。そのため、たとえば、介助者が車両を押し引きしているときに搭乗者がクランクを前方(車両を前進させる方向)に回転させようとしても、スプロケットからかみ合い部材に与えられる第3方向の力が大きくなることによってかみ合い部材が第2方向に移動する。これにより、クラッチ機構が切断され、介助者の意図に反して車両が前進することを防止できる。その結果、介助者の負担を十分に軽減することができる。
【0044】
請求項7に記載の車両では、連結部材によって第1円筒部とかみ合い部材の第2円筒部とが連結される。したがって、介助者が車両を後進させている場合には、第1駆動輪の回転力は、回転軸、第1円筒部および連結部材を介して第2円筒部に伝達される。なお、車両が後進している場合には、第1駆動輪、回転軸、第1円筒部、および第2円筒部(かみ合い部材)は、第3方向と反対の方向(以下、第4方向とする)に回転する。また、連結部材は、回転軸を中心として第4方向に円運動する。ここで、この車両においては、連結部材の第2端部は第2円筒部の貫通孔において第2円筒部に係止され、その貫通孔は、第3方向側に傾斜しつつ第2かみ合い歯側から第2方向側に向かって延びている。そのため、介助者が車両を後進させている場合(連結部材が第4方向に円運動している場合)には、連結部材とかみ合い部材との接触部においてかみ合い部材を第2方向に押す力が発生する。かみ合い部材を第2方向に押す力は、連結部材とかみ合い部材との接触部に作用する力が大きくなるほど大きくなる。連結部材とかみ合い部材との接触部に作用する力は、かみ合い部材に与えられる第3方向の力(かみ合い部材が連結部材と逆方向に回転しようとする力)が大きくなることによって大きくなる。したがって、搭乗者がクランクを前方(車両を前進させる方向)に回転させようとする力(第3方向の力)を大きくすることによって、かみ合い部材を第2方向に押す力が大きくなる。かみ合い部材を第2方向に押す力が付勢部材がかみ合い部材を第1方向に押す力よりも大きくなることによって、かみ合い部材は第2方向に移動する。これにより、スプロケットの第1かみ合い歯とかみ合い部材の第2かみ合い歯とのかみ合い状態が解除される。すなわち、クラッチ機構が切断状態になる。このように、この車両においては、搭乗者がクランクを回転させようとする力を利用してクラッチ機構を切断状態にすることができるので、介助者の意図に反して車両が前進することを確実に防止できる。
【0045】
請求項8に記載の車両では、介助者の意図に反して搭乗者が第1操作部および/または第2操作部を操作することを防止できる。
【0046】
請求項9に記載の車両では、車両が使用されていない場合に車両が移動することを防止できる。これにより、たとえば、坂道等における駐車が容易になる。
【0047】
請求項10に記載の車両では、搭乗者の動作が検出された場合に制動装置の制動動作が解除されるので、搭乗者の意図に反して車両が移動することを防止できる。また、車両に人が乗車していないときに車両が移動することを防止できる。
【0048】
請求項11に記載の車両では、搭乗者および介助者の意図に反して車両が移動することを確実に防止できる。
【0049】
請求項12に記載の車両では、第1検出部として回転検出センサまたはトルクセンサを用いることができる。この場合、簡単な構成で確実に搭乗者の動作を検出することができる。
【0050】
請求項13に記載の車両では、搭乗者の動作に基づいて電動モータによって第2駆動輪が駆動されるので、車両を移動させるための搭乗者の負担を軽減できる。
【0051】
請求項14に記載の車両では、車速をしきい値以下に抑えることができるので、搭乗者は車両を快適に操縦できる。
【0052】
請求項15に記載の車両では、電動モータによって第2駆動輪が駆動されるので、車両を移動させるための搭乗者の負担を軽減できる。
【0053】
請求項16に記載の車両では、運転者がペダルを踏み込むことによって発生されるクランクの回転力および電動モータによって発生される駆動力によって、前輪と一対の後輪のうちの少なくとも一輪とを同時に駆動することができる。これにより、車両の走行性能が向上するので、たとえば、障害物等(地面の凹凸、落下物、または車道と歩道との間の段差等)の乗り越えが容易になる。
【0054】
請求項17に記載の車両では、共通の操作部材を操作することによって、クラッチ機構の切断および制動動作の解除を同時に行うことができるので、介助者の負担をより軽減できる。
【0055】
請求項18に記載の車両では、クラッチ機構の切断および制動動作の解除を選択的に行うことができるので、利便性が向上する。また、第1操作部材および第2操作部材を車両の異なる位置に設けることができるので、設計自由度が向上する。
【0056】
請求項19に記載の車両では、第1操作部材および第2操作部材が互いに近接して設けられているので、介助者は、第1操作部材および第2操作部材を容易に同時に操作することができる。それにより、介助者の負担をより軽減できる。
【0057】
請求項20に記載の車両は、前輪および一対の後輪のうちの少なくとも一輪を制動する制動装置を備えるので、車両を容易に停止および停車させることができる。また、前輪および一対の後輪のうちの少なくとも一輪が第1駆動輪に設定され、クランクの回転力が伝達機構を介して第1駆動輪に伝達される。したがって、搭乗者は、ペダルを踏み込んでクランクを回転させることによって車両を移動させることができる。ここで、伝達機構は、接続および切断可能に設けられたクラッチ機構を含み、クラッチ機構は、クランクから伝達機構に与えられる回転力に基づいて切断される。そのため、たとえば、介助者が車両を押し引きしているときに搭乗者がクランクを回転させようとしても、クランクから伝達機構に与えられる力が大きくなることによってクラッチ機構が切断される。これにより、介助者の意図に反して車両が移動することを防止できるので、介助者の負担を十分に軽減することができる。
【0058】
請求項21に記載の車両では、スプロケットの第1かみ合い歯とかみ合い部材の第2かみ合い歯とがかみ合っている場合には、クランクの回転力が、伝達部材、スプロケット、かみ合い部材、および回転軸を介して第1駆動輪に伝達される。一方、スプロケットの第1かみ合い歯とかみ合い部材の第2かみ合い歯とがかみ合っていない場合には、クランクから第1駆動輪への回転力の伝達が第1かみ合い歯と第2かみ合い歯との間で遮断される。このように、この車両では、第1かみ合い歯と第2かみ合い歯がかみ合っている場合にクラッチ機構が接続状態となり、第1かみ合い歯と第2かみ合い歯とがかみ合っていない場合にクラッチ機構が切断状態となる。ここで、この車両では、付勢部材によってかみ合い部材がスプロケットに向かう第1方向に付勢されるので、搭乗者の操作を要することなく、クラッチ機構を接続状態にすることができる(第1かみ合い歯と第2かみ合い歯とを互いにかみ合わせることができる)。この場合、搭乗者は、ペダルを踏み込んでクランクを回転させるだけで車両を移動させることができるので、車両の操作性が向上する。また、この車両では、移動機構が、スプロケットからかみ合い部材に与えられる力に基づいてかみ合い部材を第2方向(スプロケットから離れる方向)に移動させる。そのため、たとえば、介助者が車両を押し引きしているときに搭乗者がクランクを回転させようとしても、スプロケットからかみ合い部材に与えられる力が大きくなることによってかみ合い部材が第2方向に移動する。これにより、クラッチ機構が切断され、介助者の意図に反して車両が移動することを防止できる。その結果、介助者の負担を十分に軽減することができる。
【0059】
請求項22に記載の車両では、移動機構は、スプロケットからかみ合い部材に与えられる第3方向の力に基づいてかみ合い部材を第2方向に移動させる。そのため、たとえば、介助者が車両を押し引きしているときに搭乗者がクランクを前方(車両を前進させる方向)に回転させようとしても、スプロケットからかみ合い部材に与えられる第3方向の力が大きくなることによってかみ合い部材が第2方向に移動する。これにより、クラッチ機構が切断され、介助者の意図に反して車両が前進することを防止できる。その結果、介助者の負担を十分に軽減することができる。
【0060】
請求項23に記載の車両では、連結部材によって第1円筒部とかみ合い部材の第2円筒部とが連結される。したがって、介助者が車両を後進させている場合には、第1駆動輪の回転力は、回転軸、第1円筒部および連結部材を介して第2円筒部に伝達される。なお、車両が後進している場合には、第1駆動輪、回転軸、第1円筒部、および第2円筒部(かみ合い部材)は、第3方向と反対の方向(以下、第4方向とする)に回転する。また、連結部材は、回転軸を中心として第4方向に円運動する。ここで、この車両においては、連結部材の第2端部は第2円筒部の貫通孔において第2円筒部に係止され、その貫通孔は、第3方向側に傾斜しつつ第2かみ合い歯側から第2方向側に向かって延びている。そのため、介助者が車両を後進させている場合(連結部材が第4方向に円運動している場合)には、連結部材とかみ合い部材との接触部においてかみ合い部材を第2方向に押す力が発生する。かみ合い部材を第2方向に押す力は、連結部材とかみ合い部材との接触部に作用する力が大きくなるほど大きくなる。連結部材とかみ合い部材との接触部に作用する力は、かみ合い部材に与えられる第3方向の力(かみ合い部材が連結部材と逆方向に回転しようとする力)が大きくなることによって大きくなる。したがって、搭乗者がクランクを前方(車両を前進させる方向)に回転させようとする力(第3方向の力)を大きくすることによって、かみ合い部材を第2方向に押す力が大きくなる。かみ合い部材を第2方向に押す力が付勢部材がかみ合い部材を第1方向に押す力よりも大きくなることによって、かみ合い部材が第2方向に移動する。これにより、スプロケットの第1かみ合い歯とかみ合い部材の第2かみ合い歯とのかみ合い状態が解除される。すなわち、クラッチ機構が切断状態になる。このように、この車両においては、搭乗者がクランクを回転させようとする力を利用してクラッチ機構を切断状態にすることができるので、介助者の意図に反して車両が前進することを確実に防止できる。
【0061】
請求項24に記載の車両では、車両が使用されていない場合に車両が移動することを防止できる。また、坂道等における駐車が容易になる。
【0062】
請求項25に記載の車両では、電動モータによって第2駆動輪が駆動されるので、車両を移動させるための搭乗者の負担を軽減できる。
【発明の効果】
【0063】
この発明によれば、介助者の意図に反して移動することを防止できる車両が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】この発明の一実施形態の車両を示す左側面図である。
【図2】この発明の一実施形態の車両を示す右側面図である。
【図3】フレームと一対の前輪および一対の後輪との位置関係を示す平面図である。
【図4】フレームの後端におけるパイプの配置態様を示す背面図である。
【図5】前輪保持ユニットを示す正面図である。
【図6】図4の支持部材の左側面図である。
【図7】クラッチユニットおよびスプロケットを示す外観斜視図である。
【図8】クラッチユニットの内部構造を示す斜視図である。
【図9】クラッチユニットおよびスプロケットを示す分解斜視図である。
【図10】クラッチユニットおよびスプロケットを示す分解斜視図である。
【図11】クラッチユニットおよびスプロケットを示す断面図解図である。
【図12】かみ合い部材を示す展開図である。
【図13】かみ合い部材とスプロケットとの関係を示す図である。
【図14】車両の制御システムの概略を示すブロック図である。
【図15】制御ユニットによって実行される制御動作の一例を示すフローチャートである。
【図16】スイッチユニットの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。
図1は、この発明の一実施形態の車両10を示す左側面図である。図2は、車両10を示す右側面図である。図3は、フレーム12と一対の前輪14a,14bおよび一対の後輪16a,16bとの位置関係を示す平面図である。
【0066】
この発明の実施の形態における左右、前後、上下とは、車両のシートに搭乗者がそのハンドルに向かって着座した状態を基準とした左右、前後、上下を意味する。
【0067】
図1から図3に示すように、車両10は、前後方向に延びるフレーム12、フレーム12の前端に左右方向に並んで配置される一対の前輪14a,14b、およびフレーム12の後端に左右方向に並んで配置される一対の後輪16a,16bを含む。
【0068】
フレーム12は、ヘッドパイプ18、メインフレーム20およびシートパイプ22を含む。ヘッドパイプ18は、やや前側に傾くように上から下へ直線状に延びる。メインフレーム20は、ヘッドパイプ18の下端部から後方へ斜め下方に延びる第1直線部20a(図1および図2参照)、第1直線部20aから後方へ斜め上方に延びる第2直線部20b、および第2直線部20bから屈曲して上方へ延びる屈曲部20cを含む。第1直線部20aは、第2直線部20bよりも短く設定される。シートパイプ22は、屈曲部20cの上端部に連結され、やや後側に傾くように下から上へ直線状に延びる。
【0069】
図3に示すように、フレーム12は、後輪16a,16bを回転可能に保持するための一対の保持パイプ24a,24b、ならびに保持パイプ24a,24bをメインフレーム20に連結するための連結パイプ26a,26bおよび二股パイプ28をさらに含む。
【0070】
図4は、フレーム12の後端におけるパイプの配置態様を示す背面図である。図4をも参照して、保持パイプ24a,24bは、メインフレーム20の後方に左右方向に並んで配置され、それぞれ左右方向に直線状に延びる。連結パイプ26aは、屈曲部20c(図3参照)から後方へ左斜め下方に直線状に延びて保持パイプ24aに連結される。連結パイプ26bは、屈曲部20cから後方へ右斜め下方に直線状に延びて保持パイプ24bに連結される。また、連結パイプ26a,26bは、左右方向に延びる補強パイプ30によって互いに連結される。
【0071】
図1〜図3に示すように、二股パイプ28は、メインフレーム20の後端部から後方へ斜め下方に延びる直線部28a、直線部28aの後端部から後方へ左斜めに直線状に延びる第1連結部28b(図3参照)、および直線部28aの後端部から後方へ右斜めに直線状に延びる第2連結部28c(図3参照)を含み、平面視略Y字状を呈する。図3を参照して、第1連結部28bは保持パイプ24aに連結され、第2連結部28cは保持パイプ24bに連結される。
【0072】
図2に示すように、このようなフレーム12のヘッドパイプ18には、車体方向変換用のステアリング軸32(破線で示す)が回転自在に挿通される。ステアリング軸32の下端部には、一対の前輪14a,14bを揺動可能に保持する前輪保持ユニット34が連結される。
【0073】
図5は、前輪保持ユニット34を示す正面図である。図2、図3および図5を参照して、前輪保持ユニット34は、ステアリング軸32(図2参照)に連結される連結部材36、連結部材36に取り付けられる筐体38、および筐体38に取り付けられる一対の電動モータ40a,40b(図3および図5参照)を含む。
【0074】
図2に示すように、連結部材36は、ステアリング軸32に直交する上板36a,上板36aの前端から屈曲して前方へ斜め下方に延びる前板36b、および上板36aの後端から屈曲して前方へ斜め下方に延びる後板36cを含み、側面視略C字状を呈する。
【0075】
筐体38は、略直方体状に形成され、連結部材36の前板36bと後板36cとの間に配置される。連結部材36および筐体38には揺動軸42が嵌通される。揺動軸42は、下側に傾くように前から後に延びて、連結部材36の前板36b、筐体38の前面、筐体38の後面および連結部材36の後板36cの順に連結部材36および筐体38を嵌通する。
【0076】
図5を参照して、揺動軸42は、連結部材36に固定され、筐体38を矢印A方向(揺動軸42の周方向)に揺動可能に支持する。電動モータ40aは、筐体38の左側面から突出するように筐体38に取り付けられ、電動モータ40bは、筐体38の右側面から突出するように筐体38に取り付けられる。
【0077】
前輪14a,14bは、前輪保持ユニット34を挟むように左右方向に並んで配置される。前輪14a,14bには、前輪14a,14b間に配置される電動モータ40a,40bの回転軸41a,41bが図示しない減速器を介して連結される。このように前輪保持ユニット34に保持される前輪14a,14bは、筐体38の矢印A方向への揺動に伴って、揺動軸42を中心に上下方向に揺動する。また、回転軸41a,41bには、その回転速度を検出するためのエンコーダ43a,43bが設けられる。さらに、筐体38には前輪14a,14bの回転を規制するための図示しないブレーキが設けられる。
【0078】
図1および図2に戻って、ステアリング軸32の上端部には図示しない引き上げボルト等を用いてステム44が取り付けられ、ステム44にはハンドル46が取り付けられる。
【0079】
図3に示すように、ハンドル46は、ステム44から左右に延びた後に斜め後方に延び、平面視略U字状を呈する。ハンドル46を左右に切ることによって、前輪保持ユニット34ひいては前輪14a,14bが左右に向きを変える。これによって車体方向を変更できる。
【0080】
このようなハンドル46には、前輪保持ユニット34に取り付けられるブレーキを操作するための図示しないブレーキレバーが設けられる。また、ハンドル46の左側把持部近傍には、車両10の電源をオン/オフする電源スイッチ47が取り付けられる。
【0081】
図3および図4に示すように、保持パイプ24aには、後輪16aに連結される車軸48aが回転可能に挿通され、保持パイプ24bには、後輪16bに連結される車軸48bが回転可能に挿通される。すなわち、後輪16a,16bが保持パイプ24a,24bに回転可能に保持される。
【0082】
車軸48bの左端部には、クラッチユニット50が設けられ、クラッチユニット50の右端部に中空略円板状のスプロケット52が設けられる。クラッチユニット50およびスプロケット52は、車軸48bと同軸状に配置されている。スプロケット52は、クラッチユニット50を介して車軸48bに連結される。クラッチユニット50およびスプロケット52の詳細は後述する。
【0083】
保持パイプ24aの左端には、車軸48aが挿通される電磁ブレーキユニット54aが設けられる。保持パイプ24bの右端には、車軸48bが挿通される電磁ブレーキユニット54bが設けられる。電磁ブレーキユニット54a,54bは、車軸48a,48bの回転ひいては後輪16a,16bの回転を制動する。電磁ブレーキユニット54a,54bには、後述する二次電池90から電力が供給される。電磁ブレーキユニット54a,54bの制動力は、後述する制御ユニット104によって調整される。なお、この車両10においては、電磁ブレーキユニット54a,54bに電力が供給されていない場合には、電磁ブレーキユニット54a,54bによる制動動作が維持される。電磁ブレーキユニット54a,54bへの電力供給は、電源スイッチ47がオンされることによって開始され、電源スイッチ47がオフされることによって停止される。したがって、電源スイッチ47がオフされている場合には、電磁ブレーキユニット54a,54bの制動動作は維持される。
【0084】
図1および図2に示すように、シートパイプ22には、シートユニット56が取り付けられる。シートユニット56は、シートパイプ22に挿入されるシートポスト58、シートポスト58の上端部に設けられるシート60、シート60の後端部の上方に設けられる背もたれ62、および背もたれ62を挟むように左右方向に並んで設けられる一対の手すり64a,64bを含む。シートユニット56は、一対の前輪14a,14bと一対の後輪16a,16bとの間で後述するクランク70よりも上方に設けられている。
【0085】
図1から図3に示すように、メインフレーム20上には回転機構66が設けられる。回転機構66は、第1直線部20aと第2直線部20bとの連結部上に設けられる側面視略三角形状の軸受部材68、軸受部材68に回転可能に支持されるクランク70、およびクランク70の両端部に設けられる一対のペダル72a,72bを含む。クランク70は、軸受部材68を左右方向に嵌通する回転軸70a、および回転軸70aの左側端部と右側端部とに設けられる一対のクランクアーム70b,70cを含む。
【0086】
回転軸70aは、軸受部材68によって矢印B1およびB2方向(図2参照)に回転可能に支持される。クランクアーム70bは、回転軸70aに略直交するように回転軸70aの左端部に設けられる。クランクアーム70cは、回転軸70aに略直交しかつクランクアーム70bとは正反対の方向に延びるように回転軸70aの右端部に設けられる。ペダル72aは、クランクアーム70bの先端部に支軸を介して回転可能に設けられる。ペダル72bは、クランクアーム70cの先端部に支軸を介して回転可能に設けられる。
【0087】
また、図3に示すように、回転軸70aには、軸受部材68とクランクアーム70cとの間にスプロケットユニット74が設けられる。スプロケットユニット74は、回転軸70aが嵌通される一方向クラッチ74a、および一方向クラッチ74aの右側面に設けられるスプロケット74bを含む。スプロケット74bは、スプロケット74bを挿通する回転軸70aに直接的に接続されることなく、一方向クラッチ74aの右側面に設けられる。
【0088】
一方向クラッチ74aは、スプロケット74bを矢印B2方向(図2参照)に回転させるとその回転力を回転軸70aに伝達し、スプロケット74bを矢印B1方向(図2参照)に回転させるとその回転力を回転軸70aに伝達しないように構成される。また、一方向クラッチ74aは、回転軸70aを矢印B1方向に回転させるとその回転力をスプロケット74bに伝達し、回転軸70aを矢印B2方向に回転させるとその回転力をスプロケット74bに伝達しないように構成される。このような一方向クラッチ74aは一般に広く用いられているので、一方向クラッチ74aについての詳しい説明は省略する。
【0089】
スプロケット74bは、無端状のチェーン76を介してスプロケット74bの斜め下方に設けられるスプロケット78に連結される。
【0090】
図3に示すように、スプロケット78は、メインフレーム20から右方向に延びる回転軸80に取り付けられる。また、回転軸80において、メインフレーム20とスプロケット78との間にはスプロケット78よりも大きい(歯数の多い)スプロケット82が取り付けられる。
【0091】
図2に示すように、スプロケット82は、無端状のチェーン84を介してスプロケット52に連結される。チェーン84の張力は、補強パイプ30(図3参照)に設けられるチェーンテンショナー86によって調節される。
【0092】
車両10においては、搭乗者がペダル72a,72bを介してクランクアーム70b,70cを矢印B1方向(図2参照)に回転させることによって、回転軸70aおよびスプロケット74bが矢印B1方向に回転する。スプロケット74bが矢印B1方向に回転する力は、チェーン76を介してスプロケット78に伝達され、スプロケット78,82および回転軸80を矢印B1方向に回転させる。スプロケット82が矢印B1方向に回転する力は、チェーン84を介してスプロケット52に伝達され、スプロケット52を矢印B1方向に回転させる。スプロケット52が矢印B1方向に回転する力は、クラッチユニット50を介して車軸48bに伝達される。これによって、後輪16bが矢印B1方向に回転し、車両10が前進する。クラッチユニット50における回転力の伝達経路の詳細は後述する。
【0093】
なお、ペダル72a,72bを介してクランクアーム70b,70cを矢印B2方向(図2参照)に回転させることによって回転軸70aを矢印B2方向に回転させても、スプロケット74bが回転することはなく、チェーン76,84が動くことはない。これは、スプロケットユニット74に一方向クラッチ74aが用いられているためである。このように回転軸70aが矢印B2方向に回転された場合はチェーン76,84を動かさないことによって、チェーン76,84の外れ等のトラブルを回避できる。
【0094】
図1および図3を参照して、回転軸70aの左側にはカバー85が設けられる。図1を参照して、カバー85には、クランク70(クランクアーム70b)の回転を検出する回転検出センサ85a,85bが設けられる。図3を参照して、回転軸70aの周りにはクランク70(回転軸70a)に与えられるトルクを検出するトルクセンサ85cが設けられる。
【0095】
図1から図3に示すように、ヘッドパイプ18には、斜め左に延びた後に後方へ斜め下方に延びるサブフレーム87a、および斜め右に延びた後に後方へ斜め下方に延びるサブフレーム87bが連結される。サブフレーム87a,87bの後端部は、前方へ斜め上方に延びるように軸受部材68に設けられる突起部68aに連結される。
【0096】
メインフレーム20において回転機構66の前方かつ一対のサブフレーム87a,87b間の下方には、上面開口の二次電池ケース88が設けられる。図1および図2に示すように、二次電池ケース88には、サブフレーム87a,87b間から上方に延びるように二次電池90が配置される。二次電池90はニッケル(Ni)−カドミウム(Cd)電池等であり、二次電池90に蓄えられる電力は電動モータ40a,40bおよび電磁ブレーキユニット54a,54bの駆動等に用いられる。
【0097】
前輪保持ユニット34の上方には、前かご92が設けられる。前かご92は、ステアリング軸32の上端部から前方へ斜め上方に延びる取付部材94、および連結部材36の上板36aから上方に延びる取付部材96に取り付けられる。
【0098】
図2および図4に示すように、保持パイプ24a,24bの上方には、後かご98が設けられる。後かご98は、シートパイプ22(図2参照)と補強パイプ30(図4参照)とに固定される側面視略C字状の取付板100(図2参照)に取り付けられる。また、後かご98は、保持パイプ24a,24b上に設けられるステー102a,102b(図4参照)によっても支持される。
【0099】
図2に示すように、後かご98の前面には取付板100を介して、制御ユニット104が取り付けられる。制御ユニット104は、CUP(図示せず)およびメモリ(図示せず)等を含む。メモリは、車両10の動作を制御するためのプログラムおよび演算データ等を格納する。制御ユニット104の制御動作については後述する。
【0100】
後かご98の下面には、クラッチユニット50および電磁ブレーキユニット54a,54bを手動で操作するためのスイッチユニット106が取り付けられる。図2および図4を参照して、スイッチユニット106は、後かご98の下面に固定される本体部107、ならびに本体部107に揺動可能に支持される第1操作部材108(図4参照)および第2操作部材110を含む。
【0101】
図4を参照して、クラッチユニット50とスイッチユニット106とを連結するように、連結ユニット112が設けられる。連結ユニット112は、第1インナワイヤ114、第1アウタワイヤ116、分岐ユニット118、一対の第2インナワイヤ120、一対の第2アウタワイヤ122、一対のワイヤアジャスタ124、および支持部材126を含む。
【0102】
図6は、図4の支持部材126を左側から見た図である。図6に示すように、支持部材126は、円筒部126aおよび円筒部126aから径方向に突出する一対のフランジ部126bを含む。各フランジ部126bは、ワイヤアジャスタ124(図4参照)を取り付けるための貫通孔126cを有する。図4を参照して、支持部材126は、たとえば図示しないボルト等によって保持パイプ24aの右端部24cに固定される。
【0103】
第1インナワイヤ114は、第1アウタワイヤ116内に挿通される。第1インナワイヤ114の一端部は、スイッチユニット106の本体部107において第1操作部材108に連結される。第1インナワイヤ114の他端部は、分岐ユニット118において一対の第2インナワイヤ120の一端部に連結される。第1アウタワイヤ116の一端部はスイッチユニット106の本体部107に接続され、他端部は分岐ユニット118に接続される。分岐ユニット118は、たとえば、図示しないバンド等を用いてステー102aに固定される。
【0104】
第2インナワイヤ120は、第2アウタワイヤ122内に挿通される。第2アウタワイヤ122の一端部は分岐ユニット118に接続され、他端部はワイヤアジャスタ124に接続される。ワイヤアジャスタ124は、中空略円筒形状を有する。第2インナワイヤ120の他端部は、ワイヤアジャスタ124に挿通された後、たとえばワイヤ固定ボルト等からなる固定部材128によってクラッチユニット50の後述するケース部材150に固定される。ワイヤアジャスタ124は、たとえば、ナット等の固定部材によって支持部材126のフランジ部126b(図6参照)に固定される。これにより、一対の第2インナワイヤ120がワイヤアジャスタ124を介して支持部材126によって支持される。第2インナワイヤ120の張力は、ワイヤアジャスタ124によって調整することができる。
【0105】
車両10においては、たとえば介助者が第1操作部材108を操作することによって、第1インナワイヤ114および一対の第2インナワイヤ120が第1操作部材108によって引っ張られる。それにより、クラッチユニット50の後述するケース部材150が左方向に引っ張られ、スプロケット52からクラッチユニット50への回転力の伝達が遮断される。その結果、スプロケット52から車軸48bへの回転力の伝達が遮断される。クラッチユニット50の詳細は後述する。
【0106】
図4を参照して、図面が煩雑になることを避けるために詳細は示していないが、電磁ブレーキユニット54a,54bとスイッチユニット106とを連結するように、複数のワイヤを有する連結ユニット113が設けられる。連結ユニット113は、たとえば連結ユニット112と同様の構成を有し、第1インナワイヤおよび一対の第2インナワイヤを介して第2操作部材110と電磁ブレーキユニット54a,54bとを連結する。なお、連結ユニット113が連結ユニット112と同様の構成を有する場合には、一対の第2インナワイヤのうちの一方が電磁ブレーキユニット54aに連結され、他方が電磁ブレーキユニット54bに連結される。車両10においては、たとえば介助者等が第2操作部材110を操作することによって、第1インナワイヤおよび一対の第2インナワイヤが引っ張られる。これにより、電磁ブレーキユニット54a,54bの制動動作が解除される。したがって、介助者等は、第2操作部材110を操作することによって電磁ブレーキユニット54a,54bの制動動作を解除し、車両10を容易に移動させることができる。なお、電磁ブレーキユニット54a,54bに電力が供給されていない場合には、介助者等によって第2操作部材110が操作されない限り電磁ブレーキユニット54a,54bの制動動作が維持される。すなわち、電磁ブレーキユニット54a,54bに電力が供給されていない場合には、第2操作部材110が操作されているときにのみ電磁ブレーキユニット54a,54bの制動動作が解除される。
【0107】
以下、クラッチユニット50およびスプロケット52について詳細に説明する。図7は、クラッチユニット50およびスプロケット52を示す外観斜視図であり、図8は、クラッチユニット50の内部構造を示す斜視図である。また、図9および図10は、クラッチユニット50およびスプロケット52を示す分解斜視図であり、図11は、クラッチユニット50およびスプロケット52を示す断面図解図である。なお、図7〜図11は、クラッチユニット50およびスプロケット52を後方から見た図である。
【0108】
図7〜図11を参照して、クラッチユニット50は、車軸48bの左端部に設けられる。図9〜図11を参照して、クラッチユニット50は、円筒状の回転部材130、略円筒状のかみ合い部材132、円柱状の複数(この実施形態では2つ)の連結部材134、環状のワッシャ136、環状のラジアル軸受138、止め輪140、環状のワッシャ142、複数(この実施形態では6つ)のスプリング144、ばね台146、略円筒状のケース部材148、およびハット形状のケース部材150を含む。回転部材130、かみ合い部材132、ワッシャ136,142、ラジアル軸受138、止め輪140,ばね台146および、ケース部材148,150は、車軸48bと同軸状に設けられる。
【0109】
図9および図11を参照して、スプロケット52は、円筒状のボス部52a、ボス部52aの外周面から径方向外側に延びる中空略円板状の歯車部52b、ボス部52aの一端(この実施形態では左端)に設けられボス部52aよりも内側まで延びる環状部52c、および環状部52cから左方向に突出する複数のかみ合い歯52dを含む。複数のかみ合い歯52dは、等間隔で環状に配置される。チェーン84(図1)は、歯車部52bに接続される。図10および図11を参照して、ボス部52aの内周面の他端部(この実施形態では右端部)には、環状の溝52eが設けられる。
【0110】
図10および図11を参照して、回転部材130は、円筒部130aおよび円筒部130aの一端部(この実施形態では右端部)に設けられかつ径方向外側に突出する環状のフランジ部130bを含む。円筒部130aは、径方向に貫通する複数(この実施形態では2つ)の貫通孔130cを有する。この実施形態では、一対の貫通孔130cが互いに対向するように設けられる。回転部材130は、車軸48bと一体的に回転するように、車軸48bの外側に嵌められる。具体的には、たとえば、円筒部130aの内周面と車軸48bの外周面とがセレーション構造によって接続される。
【0111】
図11を参照して、保持パイプ24bの左端部24dには、車軸48bを回転可能に支持するためのラジアル軸受151が設けられる。ラジアル軸受151は、右方向への移動が規制された状態で保持パイプ24bに保持される。回転部材130は、その右端部がラジアル軸受151の左端部に接触するように車軸48bに嵌められる。回転部材130の右方向への移動はラジアル軸受151によって規制される。
【0112】
図9〜図11を参照して、環状のラジアル軸受152が回転部材130の円筒部130aの外側に嵌められる。具体的には、図11を参照して、ラジアル軸受152は、円筒部130aの右端部においてフランジ部130bよりも左側に設けられる。ラジアル軸受152の内径は、フランジ部130bの外径よりも小さい。したがって、ラジアル軸受152の右方向への移動は、フランジ部130bによって規制される。なお、図9および図10においては、図面が煩雑になることを避けるために、ラジアル軸受152をフランジ部130bよりも右側に示している。
【0113】
図11を参照して、円筒部130aの外周面においてラジアル軸受152よりも左側に環状の溝130dが設けられる。溝130dには、止め輪154が嵌め込まれる。止め輪154の外径は、ラジアル軸受152の内径よりも大きい。したがって、ラジアル軸受152の左方向への移動は、止め輪154によって規制される。すなわち、ラジアル軸受152は、フランジ部130bおよび止め輪154によって左右方向への移動が規制された状態で円筒部130aの右端部に設けられる。なお、図面が煩雑になることを避けるために、図7〜図10には止め輪154は図示していない。
【0114】
図11を参照して、スプロケット52はラジアル軸受152によって支持される。スプロケット52の環状部52cの内径は、ラジアル軸受152の外径よりも小さい。これにより、スプロケット52の右方向への移動がラジアル軸受152によって規制される。ラジアル軸受152よりも右側においてスプロケット52の溝52eには、止め輪156が嵌め込まれる。止め輪156の内径は、ラジアル軸受152の外径よりも小さい。これにより、スプロケット52の左方向への移動が止め輪156によって規制される。すなわち、スプロケット52は、左右方向の移動が規制された状態でラジアル軸受152に支持されている。なお、図面が煩雑になることを避けるために、図8〜図10においては止め輪156を図示していない。
【0115】
図9〜図11を参照して、かみ合い部材132は、左右方向(回転部材130の軸方向)に摺動可能に円筒部130aの外側に嵌められる。図12は、かみ合い部材132を示す展開図である。図9〜図12を参照して、かみ合い部材132は、環状部132a、環状部132aから右方向に突出する複数のかみ合い歯132b、複数のかみ合い歯132bの内縁部から右方向に突出する複数の突起部132c(図10〜図12参照)、および環状部132aから左方向に延びる円筒部132dを含む。図8を参照して、複数のかみ合い歯132bは、等間隔で環状に配置され、かつスプロケット52の複数のかみ合い歯52dにかみ合い可能に設けられる。
【0116】
図9〜図12を参照して、円筒部132dは、その径方向に貫通する複数(この実施形態では2つ)の貫通孔132eを有する。円筒部132dの外周面において貫通孔132eよりも左側には、環状の溝132fが形成される。図12を参照して、貫通孔132eは、矢印B1方向側に傾斜しつつ右側(かみ合い歯132b側)から左側に向かって延びる。なお、矢印B1方向は、搭乗者が車両10を前進させるためにクランク70(図2参照)を回転させたときに、スプロケット52(図9参照)が回転する方向である。
【0117】
図8〜図11を参照して、連結部材134は、回転部材130の円筒部130aから径方向に突出するように貫通孔130c(図9〜図11参照)に嵌め込まれる。連結部材134の第1端部134a(図10参照)は回転部材130に固定され、連結部材134の第2端部134b(図10参照)は、貫通孔132e内において円筒部132dに係止される。これにより、回転部材130とかみ合い部材132とが連結部材134によって連結される。
【0118】
ケース部材148は、その右端部に設けられる第1円筒部148a、第1円筒部148aよりも左側に設けられかつ第1円筒部148aよりも大きい内径を有する第2円筒部148b、および第1円筒部148aの左端と第2円筒部148bの右端とを接続しかつ第1円筒部148aよりも内側まで延びる環状の支持部148cを含む。第2円筒部148bは、その左端部に設けられかつ径方向外側に延びるフランジ部148dを有する。
【0119】
図8および図11を参照して、第1円筒部148aおよび支持部148cの内側にかみ合い部材132の環状部132aおよびかみ合い歯132bが配置される。ケース部材148の内側において、かみ合い部材132の円筒部132dにワッシャ136およびラジアル軸受138が順に嵌められる。ラジアル軸受138の内輪138aの右端部は、ワッシャ136によって支持され、ラジアル軸受138の外輪138bの右端部は、ケース部材148の支持部148cによって支持される。
【0120】
図10および図11を参照して、止め輪140は、円筒部132dの溝132fに嵌め込まれる。ラジアル軸受138の内輪138aの左端部は、止め輪140によって支持される。止め輪140よりも左側において円筒部132dにワッシャ142が嵌められる。ワッシャ142の内径は、止め輪140の外径よりも小さい。これにより、ワッシャ142の右方向への移動が止め輪140によって規制される。
【0121】
図8〜図11を参照して、ばね台146は、中空円板状の支持部材146aおよび支持部材146aを貫通するように設けられる略円柱状の複数(この実施形態では6つ)の案内部材146bを含む。複数の案内部材146bは、等間隔で環状に配置される。図11を参照して、案内部材146bは、その略中央部に、径方向に突出する環状のフランジ部146cを有する。フランジ部146cが支持部材146aの右側面に係止されるように、案内部材146bの左端部にナット158が取り付けられる。これにより、案内部材146bが支持部材146aに固定される。なお、図8〜図10においては、図面が煩雑になることを避けるためにナット158を示していない。
【0122】
図8および図11を参照して、複数のスプリング144は、複数の案内部材146bにそれぞれ嵌められる。各スプリング144の右端部はワッシャ142に支持され、左端部は案内部材146bのフランジ部146cによって支持される。複数のスプリング144は、ワッシャ142、止め輪140、ラジアル軸受138、ワッシャ136およびかみ合い部材132を右方向に付勢する。なお、案内部材146bの右端とワッシャ142との間の距離は、たとえば、かみ合い歯52dの左右方向における長さおよびかみ合い歯132bの左右方向における長さよりも長く設定される。
【0123】
支持部材146aの中心の貫通孔146d(図9〜図11参照)には、車軸48bの先端部が挿通される。車軸48bの先端部には、ナット160が取り付けられる。ばね台146の支持部材146aは、ナット160によって回転部材130の円筒部130aの左端面に押しつけられる。これにより、回転部材130の左右方向への移動が、支持部材146aおよびラジアル軸受151(図11参照)によって規制される。すなわち、回転部材130が車軸48bに固定される。
【0124】
図9〜図11を参照して、ケース部材150は、円筒部150aおよび円筒部150aから左方向に延びかつ円筒部150aよりも小さい外径を有する円柱部150bを含む。円筒部150aは、その右端部にフランジ部150cを有する。図11を参照して、円柱部150bには、上述した固定部材128を介して連結ユニット112(図4参照)の第2インナワイヤ120が連結される。ケース部材150は、ばね台146の左側を覆うようにケース部材148に取り付けられる。具体的には、フランジ部150cとフランジ部148dとが複数のボルト162によって固定される。なお、図7〜図10においては、図面が煩雑になることを避けるために固定部材128およびボルト162は図示していない。
【0125】
次に、クラッチユニット50におけるスプロケット52から車軸48bへの回転力の伝達経路の詳細を説明する。図2を参照して、上述したように、搭乗者がクランク70を矢印B1方向に回転させることによって、スプロケット52が矢印B1方向に回転する。図8および図11を参照して、スプロケット52の矢印B1方向(図2参照)への回転力は、かみ合い歯52dを介してかみ合い部材132のかみ合い歯132bに伝達され、かみ合い部材132が矢印B1方向に回転する。
【0126】
かみ合い部材132の矢印B1方向(図2参照)への回転力は、連結部材134を介して円筒部130aに伝達され、回転部材130が矢印B1方向に回転する。上述したように、回転部材130と車軸48bとは一体的に回転するので、回転部材130が矢印B1方向に回転することによって、車軸48bおよび後輪16b(図2参照)が矢印B1方向(図2参照)に回転する。その結果、車両10が前進する。なお、かみ合い部材132とケース部材148との間にはラジアル軸受138が設けられているので、かみ合い部材132の回転力はケース部材148には伝達されない。したがって、ケース部材148,150は回転しない。
【0127】
ここで、クラッチユニット50では、スプロケット52からかみ合い部材132に矢印B1(図2参照)方向の大きな力が加えられた場合に、かみ合い歯52dとかみ合い歯132bとのかみ合い状態が解除される。これにより、スプロケット52からかみ合い部材132への回転力の伝達が遮断され、クランク70(図2参照)から後輪16b(図2参照)への回転力の伝達が遮断される。以下、介助者の意図に反して搭乗者が車両10を前進させようとした場合を例に挙げて、かみ合い歯52dとかみ合い歯132bとの関係を説明する。
【0128】
図2を参照して、介助者がたとえば手押しによって車両10を後進させている場合には、後輪16bおよび車軸48bが矢印B2方向に回転する。図8および図11を参照して、回転部材130は車軸48bと一体的に回転するので、車軸48bが矢印B2方向(図2参照)に回転することによって回転部材130が矢印B2方向に回転する。連結部材134は回転部材130に固定されているので、回転部材130が矢印B2方向に回転することによって、連結部材134は、車軸48bを中心として矢印B2方向に円運動する。
【0129】
図12を参照して、連結部材134が矢印B2方向に円運動している場合には、連結部材134は、貫通孔132e内において矢印B2方向側の側面132gによって係止される。側面132gは、貫通孔132eを構成する側面であり、矢印B1方向側に傾斜しつつ右側(かみ合い歯132b側)から左側に向かって延びる。この場合、図13(a)を参照して、複数の連結部材134とかみ合い部材132(側面132g)との接触部において、左方向の力F1すなわちかみ合い部材132を左方向に押す力F1が発生する。一方、上述したように、かみ合い部材132は、複数のスプリング144(図11参照)によって右方向に押されている。したがって、複数のスプリング144からかみ合い部材132には、右方向の力F2すなわちかみ合い部材132を右方向に押す力F2が与えられる。
【0130】
ここで、車両10の搭乗者がクランク70(図2参照)を回転させようとしていない場合には、スプロケット52に矢印B1方向の力が加えられないので、スプロケット52は、かみ合い部材132に従って矢印B2方向に回転する。この場合、スプロケット52からかみ合い部材132には、矢印B1方向の大きな力が与えられないので、連結部材134と側面132gとの間に大きな力は作用しない。したがって、複数の連結部材134がかみ合い部材132を左方向に押す力F1は、複数のスプリング144(図11参照)がかみ合い部材132を右方向に押す力F2よりも小さくなる。それにより、かみ合い部材132はスプロケット52側に押しつけられた状態になり、かみ合い歯132bとかみ合い歯52dとが噛み合った状態が維持される。
【0131】
次に、図13(b)を参照して、介助者の意図に反して車両10の搭乗者がクランク70(図2参照)を矢印B1方向(図2参照)に回転させようとした場合、スプロケット52には、矢印B1方向の力F3、すなわちスプロケット52を矢印B1方向に回転させようとする力が与えられる。力F3は、かみ合い歯52dおよびかみ合い歯132bを介してかみ合い部材132に伝達されるので、連結部材134と側面132gとの間に作用する力が大きくなる。これにより、連結部材134からかみ合い部材132に与えられる左方向の力F1も大きくなる。力F1は、車両10の搭乗者がクランク70を矢印B1方向(図2参照)に回転させようとする力を大きくすることによって力F2よりも大きくなる。
【0132】
図13(b)および図13(c)を参照して、複数の連結部材134がかみ合い部材132を左方向に押す力F1が複数のスプリング144がかみ合い部材132を右方向に押す力F2よりも大きくなることによって、かみ合い部材132が左方向に移動する。これにより、かみ合い歯52dとかみ合い歯132bとのかみ合い状態が解除され、スプロケット52が矢印B1方向に回転し、かみ合い部材132が矢印B2方向に回転する。その結果、クランク70(図2参照)が矢印B1方向に回転し、車軸48b(図2参照)および後輪16b(図2参照)が矢印B2方向に回転する。したがって、介助者は、車両10の搭乗者の動作に反して車両10を後進させることができる。その後、かみ合い部材132は、複数のスプリング144から与えられる右方向の力F2によって再びスプロケット52側に移動し、かみ合い歯132bとかみ合い歯52dとが再びかみ合う。
【0133】
なお、図11を参照して、スプロケット52はラジアル軸受152を介して回転部材130に支持されているので、かみ合い歯52dとかみ合い歯132bとが噛み合っていない場合には、スプロケット52および回転部材130は互いに対して回転自在となる。また、かみ合い部材132が左方向に移動する際には、かみ合い部材132とともに、ワッシャ136、ラジアル軸受138、止め輪140、およびワッシャ142が複数のスプリング144を圧縮しつつ左方向に移動する。
【0134】
このように、車両10においては、介助者が車両10を後進させているときに搭乗者がクランク70を前方(矢印B1方向(図2参照))に回転させても、クランク70から後輪16bへの回転力の伝達をクラッチユニット50において遮断することができる。それにより、介助者の意図に反して車両10が前進することを防止できるので、介助者の負担を軽減することができる。
【0135】
また、車両10では、介助者が第1操作部材108を操作することによっても、クランク70から後輪16bへの回転力の伝達を遮断することができる。以下、具体的に説明する。
【0136】
図11を参照して、上述したように、介助者が第1操作部材108(図4参照)を操作することによって、第2インナワイヤ120が左方向に引っ張られる。第2インナワイヤ120は固定部材128を介してケース部材150に連結されているので、第2インナワイヤ120が左方向に引っ張られることによって、ケース部材150およびケース部材148が左方向に引っ張られる。ラジアル軸受138の外輪138bの右端部はケース部材148の支持部148cによって支持されているので、ケース部材148が左方向に引っ張られることによってラジアル軸受138が左方向に移動する。ラジアル軸受138の内輪138aの左端部は、かみ合い部材132の溝132fに固定された止め輪140に支持されるので、ラジアル軸受138が左方向に移動することによってかみ合い部材132が左方向に移動する。これにより、上述の図13(c)に示した状態と同様に、かみ合い歯52dとかみ合い歯132bとのかみ合い状態が解除される。その結果、クランク70(図2参照)から後輪16b(図2参照)への回転力の伝達が遮断される。
【0137】
このように、車両10においては、第1操作部材108(図4参照)が操作されている場合には、搭乗者がクランク70(図2参照)を前方(矢印B1方向(図2参照))に回転させても、クランク70の回転力は後輪16b(図2参照)に伝達されない。したがって、介助者が第1操作部材108を操作しつつ車両10を移動させている場合には、搭乗者がクランク70を前方(矢印B1方向(図2参照))に回転させても、介助者の意図に反して車両10が前進することが防止される。それにより、介助者の負担を軽減することができる。
【0138】
なお、上述のように、かみ合い部材132は複数のスプリング144によってスプロケット52側に押されている。そのため、車両10においては、図13で説明した場合(スプロケット52からかみ合い部材132に所定の力が与えられることによってかみ合い部材132が左方向に移動する場合)を除いて、第1操作部材108が操作されていないときには、かみ合い歯132bとかみ合い歯52dとがかみ合った状態が維持される。したがって、第1操作部材108が操作されていないときには、クランク70から後輪16bへの回転力の伝達は遮断されない。
【0139】
次に、車両10の制御システムについて説明する。
図14は、車両10の制御システムの概略を示すブロック図である。図14を参照して、エンコーダ43a,43b、回転検出センサ85a,85bおよびトルクセンサ85cの検出信号は、制御ユニット104に与えられる。制御ユニット104は、エンコーダ43a,43b、回転検出センサ85a,85bおよびトルクセンサ85cから与えられた検出信号に基づいて、電動モータ40a,40bおよび電磁ブレーキユニット54a,54bを制御する。
【0140】
図15は、制御ユニット104によって実行される制御動作の一例を示すフローチャートである。なお、制御ユニット104は、電源スイッチ47(図1参照)がオンにされることによって以下の制御動作を開始する。
【0141】
図15を参照して、制御ユニット104は、まず、搭乗者が車両10を走行させるための動作を行っているか否かを検出する(ステップS1)。ステップS1においては、制御ユニット104は、たとえば、回転検出センサ85a,85bによって検出されるクランク70(クランクアーム70b)の回転、またはトルクセンサ85cによって検出されるクランク70(回転軸70a)に与えられるトルクに基づいて、搭乗者の動作を検出する。搭乗者の動作が検出されない場合、制御ユニット104は、搭乗者の動作が検出されるまで待機する。
【0142】
ステップS1において搭乗者の動作が検出された場合、制御ユニット104は、電磁ブレーキユニット54a,54bを駆動し、制動動作を解除する(ステップS3)。これにより、車両10の前進および後進が可能になる。
【0143】
次に、制御ユニット104は、電動モータ40a,40bを駆動する(ステップS5)。ステップS5においては、制御ユニット104は、たとえば、回転検出センサ85a,85bによって検出されるクランク70(クランクアーム70b)の回転方向に基づいて、電動モータ40a,40bを制御する。具体的には、たとえば、クランク70の前転(矢印B1方向(図2参照)の回転)が検出された場合には、制御ユニット104は、車両10が前進するように電動モータ40a,40bを制御する。一方、クランク70の後転(矢印B2方向(図2参照)の回転)が検出された場合には、制御ユニット104は、車両10が後進するように電動モータ40a,40bを制御する。なお、制御ユニット104は、クランク70(クランクアーム70b)の回転速度に応じた速度で車両10が前進または後進するように電動モータ40a,40bを制御してもよく、予め設定された速度で車両10が前進または後進するように電動モータ40a,40bを制御してもよい。
【0144】
また、ステップS5においては、制御ユニット104は、たとえば、トルクセンサ85cによって検出されるトルクの方向に基づいて電動モータ40a,40bを制御してもよい。この場合、制御ユニット104は、たとえば、クランク70を前転させる方向のトルクが検出された場合には、車両10が前進するように電動モータ40a,40bを制御し、クランク70を後転させる方向のトルクが検出された場合には、車両10が後進するように電動モータ40a,40bを制御してもよい。
【0145】
なお、ステップS5においては、制御ユニット104は、たとえば、エンコーダ43a,43bによって検出される回転軸41a,41bの回転速度に基づいて、電動モータ40a,40bをフィードバック制御してもよい。これにより、車両10の速度制御の精度を向上させることができる。
【0146】
次に、制御ユニット104は、車両10の走行速度がしきい値を超えているか否かを判別する(ステップS7)。車両10の走行速度は、たとえば、エンコーダ43a,43bによって検出される回転軸41a,41bの回転速度に基づいて制御ユニット104によって算出される。車両10が前進する際の走行速度のしきい値は、たとえば6km/hに設定され、車両10が後進する際の走行速度のしきい値は、たとえば2km/hに設定される。車両10の走行速度のしきい値は、たとえば制御ユニット104のメモリ(図示せず)に予め記憶される。
【0147】
車両10の走行速度がしきい値を超えている場合には、制御ユニット104は、車両10の走行速度をしきい値以下に低下させる(ステップS9)。ステップS9においては、制御ユニット104は、たとえば、電磁ブレーキユニット54a,54bの制動力を調整することによって車両10の走行速度を低下させる。また、ステップS9においては、制御ユニット104は、たとえば、電動モータ40a,40bの回転速度を調整することによって車両10の走行速度を低下させてもよい。
【0148】
ステップS7において車両10の走行速度がしきい値以下の場合、制御ユニット104は、車両10の走行速度を低下させることなく終了する。
【0149】
このように、車両10においては、搭乗者がペダル72a,72bを踏み込んでクランク70を回転させることによって、制御ユニット104が電動モータ40a,40bを駆動し、車両10が走行する。
【0150】
なお、日本では、道路交通法および内閣府令によって歩道での走行を許可される車両の大きさが規定される。そのため、車両10の大きさは、たとえば、日本で歩道での走行を許可される大きさ(全長1200mm以下、全高1090mm以下、全幅700mm以下)に設定される。この実施形態では、車両10の全長が好ましくは1185mmに設定され、車両10の全高が好ましくは900mmに設定され、車両10の全幅が好ましくは650mmに設定される。
【0151】
車両10においては、後輪16bが第1駆動輪として機能し、クラッチユニット50およびかみ合い歯52dがクラッチ機構として機能し、車軸48b、クラッチユニット50、スプロケット52,74b,78,82、チェーン76,84、および回転軸80が伝達機構に含まれ、第1操作部材108が第1操作部として機能し、第2操作部材110が第2操作部として機能し、チェーン76,84が伝達部材に含まれ、車軸48bが回転軸に相当し、連結ユニット112が連結機構として機能し、かみ合い歯52dが第1かみ合い歯に相当し、かみ合い歯132bが第2かみ合い歯に相当し、スプリング144が付勢部材に相当し、円筒部130aが第1円筒部に含まれ、円筒部132dが第2円筒部に含まれ、回転検出センサ85a,85bまたはトルクセンサ85cが第1検出部に含まれ、制御ユニット104が制御部として機能し、前輪14a,14bが第2駆動輪として機能し、エンコーダ43a,43bが第2検出部に含まれる。
【0152】
以下、車両10の作用効果を説明する。
車両10においては、クランク70の回転力は、スプロケットユニット74、チェーン76、スプロケット82、回転軸80、スプロケット78、チェーン84、スプロケット52、クラッチユニット50、および車軸48bを介して後輪16bに伝達される。したがって、搭乗者は、ペダル72a,72bを踏み込んでクランク70を回転させることによって車両10を移動させることができる。
【0153】
ここで、車両10においては、第1操作部材108が操作されている場合に、スプロケット52のかみ合い歯52dとかみ合い部材132のかみ合い歯132bとのかみ合い状態が解除される。この場合、クランク70から後輪16bへの回転力の伝達は、スプロケット52とかみ合い部材132との間で遮断される。したがって、たとえば、介助者が第1操作部108を操作している場合には、搭乗者がペダル72a,72bを踏み込んでクランク70を回転させても、クランク70の回転力は後輪16bに伝達されない。それにより、介助者が車両10を移動させているときに介助者の意図に反して車両10が移動することを防止できる。また、スプロケット52とかみ合い部材132との間で回転力の伝達が遮断されるので、介助者が車両10を移動させているときに後輪16b(車軸48b)の回転力がスプロケット52、チェーン84、スプロケット82、回転軸80、スプロケット78、チェーン76、スプロケットユニット74およびクランク70に伝達されることを防止できる。言い換えると、スプロケット52、チェーン84、スプロケット82、回転軸80、スプロケット78、チェーン76、スプロケットユニット74およびクランク70を動かすための力が不要になる。この場合、介助者はより小さな力で車両10を移動させることができるので、介助者の負担を軽減することができる。また、後輪16bからクランク70への回転力の伝達が遮断されるので、介助者が車両10を移動させているときにクランク70が回転することを防止できる。この場合、ペダル72a,72bの円運動が防止されるので、たとえば、搭乗者がペダル72a,72bに足を載せていたとしても、搭乗者の足が動かされることを防止できる。それにより、車両10の乗り心地を向上できる。
【0154】
また、車両10においては、複数のスプリング144によってかみ合い部材132がスプロケット52(かみ合い歯52d)に向かう方向(上述の実施形態では右方向)に付勢されている。これにより、搭乗者の操作を要することなく、かみ合い歯52dとかみ合い歯132bとを互いにかみ合わせることができる。この場合、搭乗者はペダル72a,72bを踏み込んでクランク70を回転させるだけで車両10を移動させることができるので、車両10の操作性が向上する。
【0155】
また、かみ合い歯52dとかみ合い歯132bとのかみ合い状態は、スプロケット52からかみ合い部材132に与えられる矢印B1方向(図2参照)の力が大きくなることによっても解除される。たとえば、介助者が第1操作部材108を操作することなく車両10を押し引きしているときに搭乗者がクランク70を前方(矢印B1方向(図2参照))に回転させようとした場合には、かみ合い部材132は、スプロケット52から与えられる力に基づいてスプロケット52から離れる方向(上述の実施形態では左方向)に移動する。これにより、かみ合い歯52dとかみ合い歯132bとのかみ合い状態が解除され、クランク70から後輪16bへの回転力の伝達が遮断される。このように、車両10においては、搭乗者がクランク70を回転させようとする力を利用してクランク70から後輪16bへ回転力の伝達を遮断することができる。それにより、介助者の意図に反して車両10が前進することを確実に防止できる。
【0156】
また、車両10においては、電磁ブレーキユニット54a,54bによって後輪16a,16bが制動される。それにより、搭乗者は、車両10を容易に停止および停車させることができる。
【0157】
また、電磁ブレーキユニット54a,54bの制動動作は、第2操作部材110を操作することによって解除することができる。したがって、たとえば介助者は、第2操作部材110を操作して電磁ブレーキユニット54a,54bの制動動作を解除することによって車両10を容易に移動させることができる。また、介助者は、第2操作部材110の操作を解除することによって、電磁ブレーキユニット54a,54bの制動動作を再開することができる。したがって、たとえば、坂道等において車両10を移動させている場合であっても、介助者は、第2操作部材110の操作を解除することによって車両10を容易に停止および停車させることができる。それにより、介助者の負担をさらに軽減することができる。
【0158】
また、電磁ブレーキユニット54a,54bの制動動作は、給電されていないときには維持される。したがって、車両10が使用されていないとき(車両10の電源がオフのとき)に車両10が移動することを防止できる。これにより、たとえば、坂道等における駐車が容易になる。
【0159】
また、車両10においては、第1操作部材108および第2操作部材110は、シート60よりも後方に設けられる。すなわち、車両10においては、搭乗者の手が届きにくい場所に第1操作部材108および第2操作部材110が配置されている。これにより、介助者の意図に反して搭乗者が第1操作部材108および/または第2操作部材110を操作することを防止できる。
【0160】
また、車両10においては、制御ユニット104は、回転検出センサ85a,85bおよび/またはトルクセンサ85cによる搭乗者の動作の検出に基づいて電磁ブレーキユニット54a,54bの制動動作を解除する。これにより、搭乗者の意図に反して車両10が移動することを防止できる。また、車両10に人が乗車していないときに車両が移動することを防止できる。
【0161】
また、車両10においては、第2操作部材110が操作されずかつ回転検出センサ85a,85bおよび/またはトルクセンサ85cによって搭乗者の動作が検出されていないときには、電磁ブレーキユニット54a,54bの制動動作が維持される。これにより、搭乗者および介助者の意図に反して車両が移動することを確実に防止できる。
【0162】
また、車両10においては、回転検出センサ85a,85bおよび/またはトルクセンサ85cによって運転者の動作を検出するので、簡単な構成で確実に搭乗者の動作を検出することができる。
【0163】
また、車両10においては、回転検出センサ85a,85bおよび/またはトルクセンサ85cによる搭乗者の動作の検出に基づいて、制御ユニット104によって電動モータ40a,40bが駆動される。それにより、車両10を移動させるための搭乗者の負担を軽減できる。
【0164】
また、車両10では、クランク70から伝達される回転力によって後輪16bが駆動され、電動モータ40a,40bによって発生される駆動力によって一対の前輪14a,14bが駆動される。この場合、前輪14a,14bのみが駆動される場合および後輪16a,16bのみが駆動される場合に比べて車両の走行性能が向上する。それにより、たとえば、障害物等(地面の凹凸、落下物、または車道と歩道との間の段差等)の乗り越えが容易になる。
【0165】
また、車両10では、クラッチユニット50は第1操作部材108を用いて操作され、電磁ブレーキユニット54a,54bは第2操作部材110を用いて操作される。すなわち、車両10では、クラッチユニット50と電磁ブレーキユニット54a,54bとが異なる操作部材を用いて操作される。この場合、クラッチユニット50および電磁ブレーキユニット54a,54bを選択的に操作することができるので、利便性が向上する。
【0166】
また、車両10では、第1操作部材108および第2操作部材110が互いに近接して設けられているので、介助者は、第1操作部材108および第2操作部材110を容易に同時に操作することができる。それにより、介助者の負担をより軽減できる。
【0167】
なお、第1操作部材108および第2操作部材110の配置は上述の例に限定されない。たとえば、第1操作部材108がハンドル46に設けられてもよい。この場合、搭乗者によって第1操作部材108を操作してもらうことによって、介助者の負担をさらに軽減することができる。
【0168】
また、上述の実施形態では、スイッチユニット106が連結ユニット112に連結される第1操作部材108および連結ユニット113に連結される第2操作部材110を有する場合について説明したが、スイッチユニットの構成は上述の例に限定されない。たとえば、スイッチユニット106の代わりに図16に示すスイッチユニット106aを設けてもよい。スイッチユニット106aがスイッチユニット106と異なる点は、第1操作部材108および第2操作部材110の代わりに、連結ユニット112および連結ユニット113に連結される1つの共通の操作部材164を有する点である。スイッチユニット106aを備えた車両においては、介助者は、操作部材164を操作することによって、クラッチユニット50の切断動作(かみ合い歯52dとかみ合い歯132bとのかみ合い状態の解除)および電磁ブレーキユニット54a,54bの制動動作の解除を同時に行うことができる。それにより、介助者の負担を十分に軽減できる。なお、この実施形態では、操作部材164が第1操作部および第2操作部として機能する。
【0169】
また、上述の実施形態では、後輪16bが第1駆動輪に設定され、前輪14a,14bが第2駆動輪に設定される場合について説明したが、第1駆動輪および第2駆動輪の組み合わせは上述の例に限定されない。たとえば、後輪16aが第1駆動輪に設定されてもよい。また、たとえば、前輪14a,14bのうちの一輪のみが第2駆動輪に設定されてもよい。また、たとえば、前輪14a,14bのうちの少なくとも一輪が第1駆動輪に設定され、後輪16a,16bのうちの少なくとも一輪が第2駆動輪に設定されてもよい。なお、車両の各構成要素(伝達機構、クラッチ機構および制動装置等)は、第1駆動輪および第2駆動輪の組み合わせに応じて適宜設計変更される。
【0170】
また、前輪の数は2つに限定されず、1つまたは3つ以上の前輪が設けられてもよい。また、後輪の数は2つに限定されず、少なくとも一対の後輪を有していればよく、3つ以上の後輪が設けられてもよい。
【0171】
また、上述の実施形態では、回転検出センサ85a,85bによってクランクアーム70bの回転を検出することによってクランク70の回転を検出しているが、回転検出センサによってクランクアーム70cの回転を検出することによってクランク70の回転を検出してもよく、回転検出センサによって回転軸70aの回転を検出することによってクランク70の回転を検出してもよい。
【0172】
また、上述の実施形態では一方向クラッチ74aが設けられていることによってクランク70の矢印B2方向の回転がスプロケット52に伝達されないが、クランク70の矢印B2方向の回転をスプロケット52に伝達してもよい。この場合、スプロケット52からかみ合い部材に伝達される矢印B2方向の力に基づいてかみ合い部材が左方向(スプロケット52から離れる方向)に移動するように、かみ合い部材の円筒部に貫通孔を形成することが好ましい。
【0173】
また、上述の実施形態では付勢部材としてコイル状のスプリング144を用いているが、板ばね等の他の弾性部材を付勢部材として用いてもよい。
【0174】
なお、スプロケット52からかみ合い部材に与えられる力に基づいてかみ合い部材を左方向に移動させる必要がない場合(第1操作部材108または操作部材164の操作によってのみかみ合い部材を移動させる場合)には、かみ合い部材の貫通孔は矢印B1方向側に傾斜していなくてもよい。
【符号の説明】
【0175】
10 車両
12 フレーム
14a,14b 前輪
16a,16b 後輪
34 前輪保持ユニット
40a,40b 電動モータ
43a,43b エンコーダ
47 電源スイッチ
48a,48b 車軸
50 クラッチユニット
52,74b,78,82 スプロケット
54a,54b 電磁ブレーキユニット
60 シート
70 クランク
70a,80 回転軸
72a,72b ペダル
74 スプロケットユニット
76,84 チェーン
85a,85b 回転検出センサ
85c トルクセンサ
90 二次電池
104 制御ユニット
106,106a スイッチユニット
108 第1操作部材
110 第2操作部材
112,113 連結ユニット
114 第1インナワイヤ
116 第1アウタワイヤ
118 分岐ユニット
120 第2インナワイヤ
122 第2アウタワイヤ
124 ワイヤアジャスタ
126 支持部材
128 固定部材
130 回転部材
132 かみ合い部材
134 連結部材
138,151,152 ラジアル軸受
144 スプリング
146 ばね台
148,150 ケース部材
164 操作部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪および一対の後輪を含み、前記前輪と前記一対の後輪とのうちの少なくとも一輪が第1駆動輪である車両であって、
前記前輪と前記一対の後輪との間に位置し、かつ回転可能に設けられるクランクと、
前記クランクの両端部に設けられる一対のペダルと、
接続および切断可能に設けられるクラッチ機構を含み、前記クラッチ機構を介して前記クランクの回転力を前記第1駆動輪に伝達する伝達機構と、
前記前輪と前記一対の後輪とのうちの少なくとも一輪を制動する制動装置と、
前記クラッチ機構を切断状態にするために操作される第1操作部と、
前記制動装置の制動動作を解除するために操作される第2操作部とを備える、車両。
【請求項2】
前記クラッチ機構は、前記第1操作部が操作されているときに切断状態になり、前記第1操作部が操作されていないときに接続状態となる、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記制動装置の制動動作は、前記第2操作部が操作されているときに解除される、請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
前記伝達機構は、前記クランクの回転力を前記クラッチ機構に伝達する伝達部材および前記第1駆動輪と一体的に回転する回転軸をさらに含み、前記クラッチ機構は、前記回転軸と同軸状に配置される、請求項1から3のいずれかに記載の車両。
【請求項5】
前記第1操作部と前記クラッチ機構とを連結する連結機構をさらに備え、
前記伝達機構は、前記回転軸と同軸状に設けられかつ前記伝達部材によって伝達される回転力に基づいて回転するスプロケットをさらに含み、
前記クラッチ機構は、前記スプロケットに設けられる第1かみ合い歯と、前記回転軸と一体的に回転しつつ前記スプロケットに対して進退できるように前記回転軸と同軸状に設けられかつ前記第1かみ合い歯にかみ合い可能な第2かみ合い歯を有するかみ合い部材と、前記第2かみ合い歯が前記第1かみ合い歯にかみ合うように前記かみ合い部材を前記スプロケットに向かう第1方向に付勢する付勢部材とを含み、
前記連結機構は、前記第1操作部が操作された場合に前記かみ合い部材を前記第1方向の反対の第2方向に移動させる、請求項4に記載の車両。
【請求項6】
当該車両を前進させるために搭乗者が前記クランクを回転させたときの前記スプロケットの回転方向を第3方向とした場合に、前記クラッチ機構は、前記スプロケットから前記かみ合い部材に与えられる前記第3方向の力に基づいて前記かみ合い部材を前記第2方向に移動させる移動機構を含む、請求項5に記載の車両。
【請求項7】
前記移動機構は、前記回転軸に固定される第1円筒部、および前記第1円筒部から径方向に突出しかつその第1端部が前記第1円筒部に固定される連結部材を含み、
前記かみ合い部材は、前記第2かみ合い歯よりも前記第2方向側に設けられかつ径方向に貫通する貫通孔を有する第2円筒部をさらに含み、
前記第2円筒部は、前記第1円筒部の外側に摺動可能に嵌められ、
前記貫通孔は、前記第2円筒部の径方向から見た場合に前記第3方向側に傾斜しつつ前記第2かみ合い歯側から前記第2方向側に向かって延び、
前記連結部材の第2端部は、前記貫通孔において前記第2円筒部に係止される、請求項6に記載の車両。
【請求項8】
前記前輪と前記一対の後輪との間で前記クランクよりも上方に設けられるシートをさらに備え、
前記第1操作部および/または前記第2操作部は、前記シートよりも後方に設けられる、請求項1から7のいずれかに記載の車両。
【請求項9】
前記制動装置は電磁ブレーキを含み、
前記電磁ブレーキは、少なくとも給電されていないときに前記前輪と前記一対の後輪とのうちの少なくとも一輪を制動する、請求項1から8のいずれかに記載の車両。
【請求項10】
当該車両を走行させるための搭乗者の動作を検出する第1検出部と、
前記第1検出部による前記搭乗者の動作の検出に基づき前記制動装置による制動動作が解除されるように前記制動装置を制御する制御部とをさらに備える、請求項9に記載の車両。
【請求項11】
前記第2操作部が操作されずかつ前記搭乗者の動作が検出されていないときには、前記制動装置による制動動作が維持される、請求項10に記載の車両。
【請求項12】
前記第1検出部は、前記クランクの回転動作または前記クランクに与えられるトルクを検出する、請求項10または11に記載の車両。
【請求項13】
前記前輪と前記一対の後輪とのうちの少なくとも一輪を第2駆動輪として駆動する電動モータをさらに備え、
前記制御部は、前記第1検出部による前記搭乗者の動作の検出に基づき当該車両を前進または後進させるように前記電動モータを制御する、請求項12に記載の車両。
【請求項14】
当該車両の車速を検出するための第2検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記第2検出部によって検出される車速がしきい値以下になるように前記制動装置を制御する、請求項10から13のいずれかに記載の車両。
【請求項15】
前記前輪と前記一対の後輪とのうちの少なくとも一輪を第2駆動輪として駆動する電動モータをさらに備える、請求項1から12のいずれかに記載の車両。
【請求項16】
前記第1駆動輪は前記前輪と前記一対の後輪とのうちの一方であり、前記第2駆動輪は前記前輪と前記一対の後輪とのうちの他方である、請求項13または15に記載の車両。
【請求項17】
前記第1操作部および前記第2操作部は共通の操作部材によって構成される、請求項1から16のいずれかに記載の車両。
【請求項18】
前記第1操作部および前記第2操作部は別個の第1操作部材および第2操作部材によって構成される、請求項1から16のいずれかに記載の車両。
【請求項19】
前記第1操作部材および前記第2操作部材は互いに近接して設けられる、請求項18に記載の車両。
【請求項20】
前輪および一対の後輪を含み、前記前輪と前記一対の後輪とのうちの少なくとも一輪が第1駆動輪である車両であって、
前記前輪と前記一対の後輪との間に位置し、かつ回転可能に設けられるクランクと、
前記クランクの両端部に設けられる一対のペダルと、
接続および切断可能に設けられるクラッチ機構を含み、前記クラッチ機構を介して前記クランクの回転力を前記第1駆動輪に伝達する伝達機構と、
前記前輪と前記一対の後輪とのうちの少なくとも一輪を制動する制動装置とを備え、
前記クラッチ機構は、前記クランクから前記伝達機構に与えられる回転力に基づいて切断される、車両。
【請求項21】
前記伝達機構は、前記第1駆動輪と一体的に回転するように設けられる回転軸と、前記回転軸と同軸状に設けられるスプロケットと、前記クランクの回転力を前記スプロケットに伝達する伝達部材とをさらに含み、
前記クラッチ機構は、前記スプロケットに設けられる第1かみ合い歯と、前記回転軸と一体的に回転しつつ前記スプロケットに対して進退できるように前記回転軸と同軸状に設けられかつ前記第1かみ合い歯にかみ合い可能な第2かみ合い歯を有するかみ合い部材と、前記第2かみ合い歯が前記第1かみ合い歯にかみ合うように前記かみ合い部材を前記スプロケットに向かう第1方向に付勢する付勢部材と、前記スプロケットから前記かみ合い部材に与えられる力に基づいて前記かみ合い部材を前記第1方向の反対の第2方向に移動させる移動機構とを含む、請求項20に記載の車両。
【請求項22】
前記移動機構は、当該車両を前進させるために搭乗者が前記クランクを回転させたときに前記スプロケットから前記かみ合い部材に与えられる力の方向を第3方向とした場合に、前記スプロケットから前記かみ合い部材に与えられる前記第3方向の力に基づいて前記かみ合い部材を前記第2方向に移動させる、請求項21に記載の車両。
【請求項23】
前記移動機構は、前記回転軸に固定される第1円筒部、および前記第1円筒部から径方向に突出しかつその第1端部が前記第1円筒部に固定される連結部材を含み、
前記かみ合い部材は、前記第2かみ合い歯よりも前記第2方向側に設けられかつ径方向に貫通する貫通孔を有する第2円筒部をさらに含み、
前記第2円筒部は、前記第1円筒部の外側に摺動可能に嵌められ、
前記貫通孔は、前記第2円筒部の径方向から見た場合に前記第3方向側に傾斜しつつ前記第2かみ合い歯側から前記第2方向側に向かって延び、
前記連結部材の第2端部は、前記貫通孔において前記第2円筒部に係止される、請求項22に記載の車両。
【請求項24】
前記制動装置は電磁ブレーキを含み、
前記電磁ブレーキは、少なくとも給電されていないときに前記前輪と前記一対の後輪とのうちの少なくとも一輪を制動する、請求項20から23のいずれかに記載の車両。
【請求項25】
前記前輪と前記一対の後輪とのうちの少なくとも一輪を第2駆動輪として駆動する電動モータをさらに備える、請求項20から24のいずれかに記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−121479(P2012−121479A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274375(P2010−274375)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000139355)ヤマハモーターエンジニアリング株式会社 (21)
【Fターム(参考)】