説明

車体前部構造

【課題】前後方向のスペースが小さい場合であっても良好な対衝突性能を得られる車体前部構造を提供する。
【解決手段】サイドフレーム20と、サイドフレームの前方側に設けられたバンパフェイス210と、バンパフェイスの裏面に沿って車幅方向に延びて配置され閉断面部を有するバンパビーム70と、サイドフレームに固定されバンパビームを支持するバンパビームブラケット100とを備える車体前部構造を、バンパビームは閉断面部から上方へ突き出したフランジ部73が設けられ、バンパビームブラケットは、サイドフレームの前端部から車両前方側に突き出しかつ閉断面部の後面に接続された第1の部材110と、第1の部材の上部に固定されかつフランジ部の後面に接続された第2の部材120とを有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の車体前部構造に関し、特に、フロントオーバハングの短縮などに伴い前後方向のスペースが小さい場合であっても良好な対衝突性能を得られるものに関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車等の車両の車体前部には、衝突時に車両前端のバンパフェイスから受ける入力を、車体の後方側に迅速かつ効率よく伝達することが要求される。
従来、自動車の車体前部構造として、車両のサイドフレーム前端部に横梁状の部材であるバンパビームを取り付けて、バンパフェイスからの入力をバンパビームを介してサイドフレームに伝達することが知られている。
【0003】
このようなバンパビームに関する従来技術として、例えば、特許文献1には、車幅方向にほぼ沿って延びたバンパビームの左右2箇所を、サイドフレームから前方側へ延伸されたステーによって支持するとともに、ステーの外側面とバンパビームの両端部との間をガセット状に補剛する閉断面部を形成した車両用バンパビームが記載されている。
【0004】
また、車体前部構造において、歩行者と衝突した場合に歩行者の脚部への加害性を低減するため、バンパフェイスの内側に可撓性を有するフォーム状等の衝撃吸収部材(EA部材)を配置することが知られている。
例えば、特許文献2には、バンパビームの前面部に、バンパフェイスの裏面と間隔を隔てて対向するEA部材を設けた自動車の前部構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−241724号公報
【特許文献2】特開2008−126912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両のレイアウトやデザイン等の観点からは、車体のうち前輪よりも前方の部分であるフロントオーバーハング部の長さを短縮することが求められるが、このためには上述したバンパビーム等が配置されるスペースを前後方向に小さくする必要がある。
このため、例えばバンパビームを車幅方向中央部が前方に張出すよう比較的大きい曲率で湾曲させ、衝突時にバンパビームの撓みによってエネルギを吸収するような手法はとりにくくなり、バンパビーム左右を支持するブラケットは、バンパビームへの入力をロスなくサイドフレームに伝達することが要求される。
一方、フロントオーバーハングを短縮する場合であっても、歩行者保護性能を確保するため、衝撃吸収部材の変形ストロークは十分に確保する必要がある。
【0007】
また、例えば比較的車高が低い乗用車と衝突した場合と、比較的車高が高いSUV車などと衝突した場合とでは、入力を受ける箇所の高さが大きく異なる。
このため、車体前部構造には、例えばバンパビームの上方に入力を受けた場合であっても、適切にサイドフレームへ荷重伝達することが要求される。
以上の問題に鑑み、本発明の課題は、前後方向のスペースが小さい場合であっても良好な対衝突性能を得られる車体前部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1の発明は、車両のエンジンルーム左右にそれぞれ設けられ前後方向に延びて配置されたサイドフレームと、前記サイドフレームの前方側に設けられたバンパフェイスと、前記バンパフェイスの裏面に沿って車幅方向に延びて配置され閉断面部を有するバンパビームと、前記サイドフレームに固定され前記バンパビームを支持するバンパビームブラケットとを備える車体前部構造であって、前記バンパビームは前記閉断面部から上方へ突き出したフランジ部が設けられ、前記バンパビームブラケットは、前記サイドフレームの前端部から車両前方側に突き出しかつ前記閉断面部の後面に接続された第1の部材と、前記第1の部材の上部に固定されかつ前記フランジ部の後面に接続された第2の部材とを有することを特徴とする車体前部構造である。
【0009】
請求項2の発明は、前記バンパビームブラケットの前記第2の部材の後端部は前記サイドフレームの前端部に形成されたフランジ部に接続され、前記サイドフレームの前記フランジ部における前記第2の部材との接続部の後方側と、前記サイドフレームの上面部とを接続する補剛部材が設けられることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造である。
請求項3の発明は、前記第2の部材は、前記第1の部材の上端部から車幅方向に突き出したフランジ部と協働して閉断面を形成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体前部構造である。
請求項4の発明は、前記バンパフェイスと前記バンパフェイスの上部に設けられるグリルとの接続部に補剛構造部が設けられ、前記バンパビームには、前記バンパフェイスの後退時に前記補剛構造部との干渉を回避するよう凹ませた逃げ部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車体前部構造である。
請求項5の発明は、前記バンパビームブラケットの前端部近傍において、前記第2の部材は、車両前方から見た断面形状の図心が前記サイドフレームの断面形状の図心に対して車幅方向内側に配置される閉断面部を形成することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車体前部構造である。
請求項6の発明は、前記バンパビームの前面部における下部に、可撓性を有する衝撃吸収部材が設けられることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の車体前部構造である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)バンパビームブラケットは、サイドフレームの前端部から車両前方側に突き出しかつ閉断面部の後面に接続された第1の部材と、第1の部材の上部に固定されかつフランジ部の後面に接続された第2の部材とを有することによって、バンパビームとサイドフレームとの結合強度を高めて荷重伝達を迅速かつ効率よく行うことができる。また、車高が高い車両等との衝突により、バンパビーム上部のフランジ部に荷重が入力された場合であっても、バンパビームの転びやバンパビームブラケットの屈曲を防止して良好な荷重伝達を実現することができる。
これによって、サイドフレーム前端からのバンパビームブラケットの突出量が少ない場合であっても良好な前面衝突性能を得ることができ、車両のフロントオーバーハングを短縮した場合であっても良好な対衝突性能を得ることができる。
(2)バンパビームブラケットの第2の部材の後端部はサイドフレームの前端部に形成されたフランジ部に接続され、サイドフレームのフランジ部における第2の部材との接続部の後方側と、サイドフレームの上面部とを接続する補剛部材が設けられることによって、上述した効果をより高めることができる。
(3)第2の部材は、第1の部材の上端部から車幅方向に突き出したフランジ部と協働して閉断面を形成することによって、バンパビームのフランジ部の支持剛性をさらに高めることができ、上述した効果を促進できる。
(4)バンパフェイスとバンパフェイスの上部に設けられるグリルとの接続部に補剛構造部が設けられることによって、グリルとバンパフェイスとを相互補強してこれらの接合部の断面崩れを防止し、バンパフェイスへの入力をロスなくバンパビームに伝達することができる。
また、バンパビームには、バンパフェイスの後退時に補剛構造部との干渉を回避するよう凹ませた逃げ部が形成されることによって、補剛構造部がバンパビームと早期に干渉することを防止し、歩行者保護用の衝撃吸収部材の変形ストロークを確保することができる。
(5)バンパビームブラケットの前端部近傍において、第2の部材は、車両前方から見た断面形状の図心がサイドフレームの断面形状の図心に対して車幅方向内側に配置される閉断面部を形成することによって、バンパビームをサイドフレームに対して水平面内で回動させようとするモーメントに対するバンパビームの支持剛性を高めることができ、バンパビームの中央部に入力された荷重を効率よくサイドフレームに伝達することができる。
(6)バンパビームの前面部における下部に、可撓性を有する衝撃吸収部材が設けられることによって、バンパビームの上部への入力が主である対車両衝突ではバンパフェイスからの入力をバンパビームに効率よく伝達することができる。これに対し、バンパビームの下部への入力が主である対歩行者衝突の場合には、衝撃吸収部材の変形によってエネルギを吸収し、歩行者の脚部への加害性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用した車体前部構造の実施例における左半部を、車両の斜め後方かつ斜め上方の車幅方向内側から見た外観斜視図である。
【図2】図1の車体前部構造における左半部を、車両の斜め前方かつ斜め上方の車幅方向外側から見た外観斜視図である。
【図3】図1の車体前部構造における左半部を、車両の斜め前方かつ斜め上方の車幅方向内側から見た外観斜視図である。
【図4】図1のIV部拡大図であって、バンパフェイスを装着した状態を示している。
【図5】図1の車体前部構造における左半部を車幅方向中央側から見た側面視図である。
【図6】図1の車体前部構造の車幅方向中央部を前後方向及び上下方向と平行な平面で切って見た状態を示す模式的断面図である。
【図7】図1の車体前部構造におけるバンパビームとバンパビームブラケットとの接続部を示す模式図であって、図7(a)は車幅方向内側から見た図であり、図7(b)は図7(a)のb−b部矢視断面図である。
【図8】前面衝突時における図1の車体前部構造を上方から見た模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、前後方向のスペースが小さい場合であっても良好な対衝突性能を得られる車体前部構造を提供する課題を、バンパビームブラケットの上部に、バンパビーム上部のフランジに接続された閉断面部を構成し、バンパビームとサイドフレームとの結合強度を高めたことによって解決した。
【実施例】
【0013】
以下、本発明を適用した車体前部構造の実施例について説明する。
実施例の車体前部構造は、例えば、車両前部にエンジンが搭載される乗用車等の自動車に適用されるものである。
車体1は、トーボード10、サイドフレーム20、エプロン30、ラジエータアッパサポート40、ラジエータロワサポート50、ヘッドライトサポート60、バンパビーム70、EA部材80、バンパビームブラケット100、バンパフェイス210、フロントグリル220等を備えて構成されている。
【0014】
トーボード10は、車両のキャビン前端部に設けられ、車室内とエンジンルーム内とを仕切る隔壁である。
【0015】
サイドフレーム20は、トーボード10から車両前方側へ突き出した構造部材である。サイドフレーム20は、車幅方向に離間して一対が設けられ、図示しない車両のエンジン、トランスミッション等のパワートレーンは、その間隔内に設けられるエンジンルーム内に収容される。
サイドフレーム20は、鉛直方向及び車幅方向と平行な面で切って見た横断面形状が、上下方向に長いほぼ矩形状の閉断面となるように形成されている。
サイドフレーム20の前端部には、外側につば状に張り出したフランジ21が形成されている。
【0016】
エプロン30は、サイドフレーム20の上面部における車幅方向外側の端部から、前輪を収容するホイールハウス側へ伸びて形成されたパネル状の部分である。
ラジエータアッパサポート40(図1では図示しない。図2等参照。)は、左右のサイドフレーム20の前端部間を、サイドフレーム20の上方側で連結する部分である。
ラジエータロワサポート50は、左右のサイドフレーム20の前端部間を、サイドフレーム20の下方側で連結する部分である。
ラジエータアッパサポート40及びラジエータロワサポート50は、図示しないラジエータコアやエアコンディショナのコンデンサの上端部及び下端部を保持するものである。
ヘッドライトサポート60は、ラジエータアッパサポート40の上端部における左右両端部から車幅方向外側へ突き出して形成され、図示しないヘッドライトユニット等の灯火類が取り付けられるものである。
上述した各構成部材は、車両のホワイトボディの一部を構成するものであり、例えば鋼板をプレス成型したパネル状の部材を集成し、スポット溶接等で接合して構成されている。
【0017】
バンパビーム70は、サイドフレーム20の前端部にバンパビームブラケット100を介して取り付けられ、車幅方向にほぼ沿って伸びた梁状の構造部材である。
バンパビーム70は、図8に示すように、車幅方向中央部が側端部に対して車両前方側に張り出すように、湾曲して形成されている。
バンパビーム70は、図6に示すように、鋼板をプレス加工して形成されたフロントパネル71及びリアパネル72を接合して構成されている。
フロントパネル71は、バンパビーム70の前面部を構成する部分である。
リアパネル72は、フロントパネル71の後方側に固定され、バンパビーム70の後面部、上面部、下面部を構成する部分である。
【0018】
フロントパネル71には、中央凹部71a、上側凹部71bが形成されている。
中央凹部71aは、フロントパネル71の上下方向における中間部分を、車両後方側に段状に凹ませた部分である。
上側凹部71bは、フロントパネル71の上部を、中央凹部71aと同程度に車両後方側に凹ませた部分である。
また、フロントパネル71の上側凹部71bの上端部を上方側に延伸して、フランジ73が形成されている。
フランジ73は、バンパビーム70の前端部における上部から上方へ突き出して配置されている。
【0019】
リアパネル72は、前方側が開いたハット形状に形成されている。
リアパネル72は、後面部72aの上端部、下端部から前方へ伸びた上面部72b及び下面部72cを有する。
上面部72bは、前端部に形成されたフランジを、フロントパネル71の上側凹部71bの後面にスポット溶接されている。
下面部72cは、前端部に形成されたフランジを、フロントパネル71の下端部における後面にスポット溶接されている。
以上の構成により、フロントパネル71とリアパネル72とは、協働して閉断面を構成する。
【0020】
EA部材80は、可撓性を有する材料によって形成され、バンパビーム70の前面に取り付けられている。
EA部材80の前面は、バンパフェイス210の後面と間隔を隔てて対向して配置されている。
EA部材80の後部には、上側脚部81、下側脚部82が形成されている。
上側脚部81は、フロントパネル71の中央凹部71aに固定されている。
下側脚部82は、フロントパネル71の中央凹部71aよりも下側の前面部に固定されている。
【0021】
バンパビームブラケット100は、バンパビーム70がサイドフレーム20に取り付けられる基部である。
バンパビームブラケット100は、鋼板をプレス成型して形成されたロワパネル110及びリアパネル120を結合して構成されている。
【0022】
ロワパネル110は、サイドフレーム20のフランジ21と、バンパビーム70の後面部とを連結する部材である。
図7に示すように、ロワパネル110は、前後方向にほぼ沿って伸び、車両前方側から見た断面形状は、上方が開いたハット状に形成されている。
ロワパネル110は、下面部111の車幅方向内側及び外側の左右両端部から、それぞれ上方に立ち上げた内側側面部112、外側側面部113が形成されている。
【0023】
また、ロワパネル110は、内側フランジ114及び外側フランジ115が形成されている。
内側フランジ114は、内側側面部112の上端部から車幅方向内側に突き出して形成されたほぼ平板状の面部である。
外側フランジ115は、外側側面部113の上端部から車幅方向外側に突き出して形成されたほぼ平板状の面部である。
内側フランジ114及び外側フランジ115は、ほぼ同じ高さにほぼ水平となるように配置されている。
【0024】
アッパパネル120は、ロワパネル110の上部に固定され、ロワパネル110と協働して閉断面を構成するとともに、バンパビーム70のフランジ73とサイドフレーム20のフランジ21とを連結する部材である。
図7に示すように、アッパパネル120は、車両前方側から見た断面形状が下方が開いたハット状に形成されている。
アッパパネル120は、凸部121、内側フランジ122、外側フランジ123等を備えている。
凸部121は、上方に張り出した突形状の部分である。凸部121の前端部はバンパビーム70のフランジ73の後部に例えばスポット溶接によって接合されている。
凸部121は、図3や図8等に示すように、後端部がサイドフレーム20の直前に配置されるとともに、前端部の位置がサイドフレーム20及びロワパネル110のハット形状部に対して車幅方向内側となるように、車両前後方向に対して斜行して配置されている。
図7(b)に示すように、凸部121はバンパビームブラケット100の前端部近傍において、ロワパネル110の内側フランジ114と協働して、実質的に閉断面を構成する。この閉断面の図心は、サイドフレーム20の閉断面の図心に対して、車幅方向内側にオフセットして配置されている。
【0025】
内側フランジ122及び外側フランジ123は、凸部121の車幅方向内側及び外側の端部から、車幅方向内側及び車幅方向外側にそれぞれ突き出したほぼ平板状の面部である。
内側フランジ122は、ロワパネル110の内側フランジ114、及び、バンパビーム70のリアパネル72における上面部72bの対向する部分と、スポット溶接によって接合されている。
外側フランジ123は、ロワパネル110の外側フランジ115、及び、バンパビーム70のリアパネル72における上面部72bの対向する部分と、スポット溶接によって接合されている。
【0026】
車両の前面衝突時に、他車のバンパBから、バンパビーム70の中央部に自車両後方側への入力を受けると、図8に示すようにバンパビーム70はその湾曲が戻る方向に撓む。このとき、バンパビーム70の左右部分には、図8に矢印で示すように、水平面内においてサイドフレーム20に対して回転する方向のモーメントが発生する。
これに対し、バンパビームブラケット100のアッパパネル120の凸部121は、ロワパネル110及びバンパビーム70の一部と協働して、トラス状の構造を構成し、バンパビーム70の曲がりや回転を抑制し、サイドフレーム20に迅速かつ効率よく荷重を伝達する。
【0027】
また、サイドフレーム20の上面部には、レインホースメント130が固定されている。
レインホースメント130は、サイドフレーム20の上面部及びフランジ21の後面部(アッパパネル120の凸部121が接続される部分の後方)を接続するガセット状のパネルである。レインホースメント130の前端部は、アッパパネル120の凸部121の後端部と協働してフランジ21を挟み込むように配置されている。
【0028】
図6に示すように、バンパフェイス210は、バンパビーム70の前方側に、バンパビーム70及びEA部材80と所定の間隔を隔てて配置された車両の外装部材である。
バンパフェイス210は、例えばPP等の樹脂系材料によって形成されている。
バンパフェイス210の上部には、図示しないエンジンフードの前端縁部に沿って配置される外装部材であるフロントグリル220が取り付けられている。フロントグリル220は、例えばPP等の樹脂系材料によって形成されている。
【0029】
バンパフェイス210及びフロントグリル220の接合部には、これら部材の他の部分に対して高剛性とされた補剛構造部230が形成されている。
この補剛構造部230は、例えば、バンパフェイス210の一部とフロントグリル220の一部とを組み合わせて、実質的に閉断面を構成するようにしてもよく、また、別部材を付加するようにしてもよい。
補剛構造部230は、バンパフェイス210の上端縁部に沿って、車幅方向にほぼ沿って延びている。
この補剛構造部230は、衝突によりバンパフェイス210の前面等に入力があった場合に、バンパフェイス210とフロントグリル220との接合部で断面崩れが生じることを防止する。
補剛構造部230は、バンパフェイス210の他部に対して車両後方側に突き出している。バンパフェイス210が衝突によってバンパビーム70に対して相対的に後退する際には、補剛構造部230はバンパビーム70のフロントパネル71の上側凹部71b又はフランジ73と当接するように配置されている。
【0030】
以上説明した実施例によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)バンパビームブラケット100は、サイドフレーム20の前端部のフランジ21から車両前方側に突き出しかつバンパビーム70の閉断面部の後面に接続されたロワパネル110と、ロワパネル110の上部に固定されかつフランジ73の後面に接続されたアッパパネル120とを有することによって、バンパビーム70とサイドフレーム20との結合強度を高めて荷重伝達を迅速かつ効率よく行うことができる。また、車高が高い車両等との衝突により、バンパビーム70のフランジ73に荷重が入力された場合であっても、バンパビーム70の上部が後方へ倒れる方向への転びや、バンパビームブラケット100の屈曲を防止して良好な荷重伝達を実現することができる。
また、このように荷重伝達が良好になると、例えば車両の軽衝突時にエンジンフードまで損傷することを防止することができ、交換が必要な部品を少なくして修復を容易にすることができる。
以上のように、本実施例によれば、サイドフレーム20の前端からのバンパビームブラケット100の突出量が少ない場合であっても良好な前面衝突性能を得ることができ、車両のフロントオーバーハングを短縮した場合であっても良好な対衝突性能を得ることができる。
(2)バンパビームブラケット100のアッパパネル120の後端部は、サイドフレーム20の前端部に形成されたフランジ21に接続され、フランジ21におけるアッパパネル120との接続部の後方側と、サイドフレーム20の上面部とを接続するレインホースメント130が設けられることによって、上述した効果をより高めることができる。
(3)アッパパネル120は、ロワパネル110の上端部から車幅方向に突き出した内側フランジ114と協働して閉断面を形成することによって、バンパビーム70のフランジ73の支持剛性をさらに高めることができ、上述した効果を促進できる。
(4)バンパフェイス210とフロントグリル220との接続部に補剛構造部230が設けられることによって、フロントグリル220とバンパフェイス210とを相互補強してこれらの接合部の断面崩れを防止し、バンパフェイス210への入力をロスなくバンパビーム70に伝達することができる。
また、バンパビーム70には、バンパフェイス210の後退時に補剛構造部230との干渉を回避するよう凹ませた逃げ部である上側凹部71bが形成され、さらにフランジ73も上側凹部71bと同程度に後退して配置されることによって、補剛構造部230がバンパビーム70と早期に干渉することを防止し、歩行者保護用のEA部材80の変形ストロークを確保することができる。
(5)バンパビームブラケット100の前端部近傍において、ロワパネル120の凸部121は、車両前方から見た断面形状の図心がサイドフレーム20の断面形状の図心に対して車幅方向内側に配置される閉断面部を形成することによって、バンパビーム70をサイドフレーム20に対して水平面内で回動させようとするモーメントに対するバンパビーム70の支持剛性を高めることができ、バンパビーム70の中央部に入力された荷重を効率よくサイドフレーム20に伝達することができる。
(6)バンパビーム70の前面部における下部に、可撓性を有するEA部材80が設けられることによって、バンパビーム70の上部への入力が主である対車両衝突ではバンパフェイス210からの入力をバンパビーム70に迅速かつロスなく伝達することができる。これに対し、バンパビーム70の下部への入力が主である対歩行者衝突の場合には、EA部材80の変形によってエネルギを吸収し、歩行者の脚部への加害性を低減することができる。
【0031】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
車体前部構造を構成する各部材の形状、材質、構造、製法等は上述した実施例に限定されず、適宜変更することができる。
例えば、バンパビーム等の各種梁状の部材を、スチールプレスパネルの接合ではなく、アルミニウム系合金の押出等の他の製法によって形成してもよい。
また、バンパビームブラケットの構成も、実施例のようなハット状の断面形状を有する部材を組み合わせて閉断面とした構成に限らず、単独でも閉断面を構成する部材を組み合わせたり、その他の構成としてもよい。
また、実施例ではアッパパネルによって形成される閉断面部が、前閉じとなるように斜行して配置されているが、適用される車両の構成に応じて、このような閉断面部の延在方向も適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 車体 10 トーボード
20 サイドフレーム 21 フランジ
30 エプロン 40 ラジエータアッパサポート
50 ラジエータロワサポート 60 ヘッドライトサポート
70 バンパビーム 71 フロントパネル
71a 中央凹部 71b 上側凹部
72 リアパネル 72a 後面部
72b 上面部 72c 下面部
73 フランジ 80 EA部材
81 上側脚部 82 下側脚部
100 バンパビームブラケット 110 ロワパネル
111 下面部 112 内側側面部
113 外側側面部 114 内側フランジ
115 外側フランジ 120 アッパパネル
121 凸部 122 内側フランジ
123 外側フランジ 130 レインホースメント
210 バンパフェイス 220 フロントグリル
230 補剛構造部 B 他車のバンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンルーム左右にそれぞれ設けられ前後方向に延びて配置されたサイドフレームと、
前記サイドフレームの前方側に設けられたバンパフェイスと、
前記バンパフェイスの裏面に沿って車幅方向に延びて配置され閉断面部を有するバンパビームと、
前記サイドフレームに固定され前記バンパビームを支持するバンパビームブラケットと
を備える車体前部構造であって、
前記バンパビームは前記閉断面部から上方へ突き出したフランジ部が設けられ、
前記バンパビームブラケットは、前記サイドフレームの前端部から車両前方側に突き出しかつ前記閉断面部の後面に接続された第1の部材と、前記第1の部材の上部に固定されかつ前記フランジ部の後面に接続された第2の部材とを有すること
を特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記バンパビームブラケットの前記第2の部材の後端部は前記サイドフレームの前端部に形成されたフランジ部に接続され、
前記サイドフレームの前記フランジ部における前記第2の部材との接続部の後方側と、前記サイドフレームの上面部とを接続する補剛部材が設けられること
を特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記第2の部材は、前記第1の部材の上端部から車幅方向に突き出したフランジ部と協働して閉断面を形成すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記バンパフェイスと前記バンパフェイスの上部に設けられるグリルとの接続部に補剛構造部が設けられ、
前記バンパビームには、前記バンパフェイスの後退時に前記補剛構造部との干渉を回避するよう凹ませた逃げ部が形成されること
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記バンパビームブラケットの前端部近傍において、前記第2の部材は、車両前方から見た断面形状の図心が前記サイドフレームの断面形状の図心に対して車幅方向内側に配置される閉断面部を形成すること
を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記バンパビームの前面部における下部に、可撓性を有する衝撃吸収部材が設けられること
を特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−6513(P2012−6513A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145007(P2010−145007)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】