説明

車体振動制御装置、および車体振動制御方法

【課題】輪荷重の変動を抑制しつつ、操舵応答性の向上およびロール挙動の抑制を可能とする。
【解決手段】車体のばね上挙動を構成する成分のうち、駆動トルクTwに起因する成分の変動を抑制する駆動トルクを算出し、算出した駆動トルクにゲインK1(>0)を乗算する。また、上下力Fzf、Fzrに起因する成分の変動を抑制する駆動トルクを算出し、算出した駆動トルクにゲインK2(>0)を乗算する。さらに、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分の変動を抑制する駆動トルクを算出し、算出した駆動トルクにゲインK3(<0)を乗算する。これにより、当該変動を助長する方向の駆動トルクとする。そして、これらの乗算結果を合計し、合計値を基にドライバ要求トルクを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体振動制御装置、および車体振動制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、例えば、特許文献1に記載の技術がある。
この特許文献1に記載の技術では、操舵速度、横G、およびヨー角加速度等に基づいて運転者の操舵状態を推定し、推定した操舵状態に応じて車体の振動(例えば、車体のバウンスやピッチ挙動)を抑制する制振制御に用いるフィードバックゲインを増大させる。これにより、フィードバック値の絶対値を増大し、車体のバウンスやピッチ挙動をより確実に抑制し、車両の操縦安定性の向上を図るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−179277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、車体の振動、つまり、輪荷重の変動を抑制できるものの、フィードバック値の絶対値が増大することで、操舵応答性の低下やロール挙動の増大を発生し、運転者に違和感を与える可能性があった。
本発明は、上記のような点に着目し、輪荷重の変動を抑制しつつ、操舵応答性の向上およびロール挙動の抑制を可能とすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、要求駆動トルクおよび路面外乱に起因する成分の変動を抑制する方向に駆動トルクを制御する。また、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、旋回抵抗に起因する成分の変動を助長する方向に駆動トルクを制御する。
【発明の効果】
【0006】
このような構成によれば、操舵操作の開始前には、運転者の要求駆動トルクおよび路面外乱に起因する成分の変動を抑制する方向に駆動トルクを制御することで、輪荷重の変動を抑制することができる。また、操舵操作を開始したときには、車輪に加わる旋回抵抗に起因する成分の変動を助長する方向に駆動トルクを制御することで、ノーズダウン挙動を助長でき、前輪の輪荷重を増大でき、操舵応答性を向上できる。そして、輪荷重の変動を抑制しつつ、操舵応答性を向上することで、横Gの変化を緩やかにすることができ、ロール挙動を抑制することができる。これにより、輪荷重の変動を抑制しつつ、操舵応答性の向上およびロール挙動の抑制を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態の車両の概略構成を表す概念図である。
【図2】第1実施形態の車両の機能構成を表すブロック図である。
【図3】マイクロプロセッサが実行するプログラムの構成を表すブロック図である。
【図4】駆動力車体制振制御部16の構成を表すブロック図である。
【図5】駆動力車体制振制御部16の動作を表すフローチャートである。
【図6】サスストローク算出部21の構成を表すブロック図である。
【図7】サスストローク算出部21の動作を表すフローチャートである。
【図8】サスペンションのストローク量の算出方法を説明するための図である。
【図9】前輪サスペンションジオメトリ特性を表すグラフである。
【図10】後輪サスペンションジオメトリ特性を表すグラフである。
【図11】車両モデル26を説明するための図である。
【図12】トルク指令値算出部19の動作を説明するための説明図である。
【図13】チューニングゲインの設定方向を説明するための説明図である。
【図14】修正制御指令値K3・Cの設定方法を説明するための説明図である。
【図15】第1実施形態の車体振動制御装置の動作を説明するための説明図である。
【図16】第1実施形態の車体振動制御装置の応用例を説明するための説明図である。
【図17】第2実施形態の車両の概略構成を表す概念図である。
【図18】マイクロプロセッサが実行するプログラムの構成を表すブロック図である。
【図19】駆動力車体制振制御部16の構成を表すブロック図である。
【図20】駆動力車体制振制御部16の動作を表すフローチャートである。
【図21】レギュレータゲインおよびチューニングゲイン乗算部の動作を説明するための図である。
【図22】チューニングゲインと車体速との関係を表すグラフである。
【図23】チューニングゲインと車体速との関係を表すグラフである。
【図24】チューニングゲインと車体速との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
本実施形態の車体振動制御装置は、前輪駆動式の4輪電気自動車に搭載し、動力源である制駆動モータが発生するトルクを制御することで、車体のばね上挙動を制御するものである。具体的には、本実施形態の車体振動制御装置は、輪荷重変動の抑制、操舵応答性の向上、およびロール挙動の抑制を可能とするためのものである。
【0009】
(構成)
図1は、第1実施形態の車両の概略構成を表す概念図である。
図1に示すように、車両1は、操舵角センサ2、アクセル開度センサ3、ブレーキペダル踏力センサ4、および車輪速センサ5を備える。
操舵角センサ2は、ステアリングコラムに配設し、ステアリングホイール6による操舵角δoを検出する。そして、操舵角センサ2は、ステアリングホイール6による操舵角δoの検出結果を表す検出信号を後述する制駆動モータECU12に出力する。
【0010】
アクセル開度センサ3は、アクセルペダルに配設し、アクセル開度を検出する。アクセル開度とは、アクセルペダルの踏み込み量である。そして、アクセル開度センサ3は、アクセル開度の検出結果を表す検出信号を制駆動モータECU12に出力する。
ブレーキペダル踏力センサ4は、ブレーキペダルに配設し、ブレーキペダルの踏力を検出する。そして、ブレーキペダル踏力センサ4は、ブレーキペダルの踏力の検出結果を表す検出信号を制駆動モータECU12に出力する。
【0011】
車輪速センサ5は、車輪5FL〜5RRそれぞれに配設し、車輪5FL〜5RRそれぞれの車輪速VwFL〜VwRRを検出する。そして、車輪速センサ5は、車輪5FL〜5RRの車輪速VwFL〜VwRRを表す検出信号を制駆動モータECU12に出力する。
また、車両1は、インバータ7、制駆動モータ8および変速機9を備える。ここで、インバータ7、制駆動モータ8、変速機9は、後述するトルク付加手段100を構成する。
【0012】
インバータ7は、制駆動モータECU12が出力した指令に従って、バッテリ10が蓄えている電力を制駆動モータ8に供給する。制駆動モータ8への電力の供給は、バッテリ10の電力に直流―交流変換を行い、変換によって得た交流電流によって行う。
制駆動モータ8は、インバータ7が供給する電力に応じてトルクを発生する。そして、制駆動モータ8は、発生したトルクを変速機9に出力する。
【0013】
変速機9は、前輪(駆動輪)5FL、5FRのそれぞれに設けたドライブシャフト11に配設し、制駆動モータ8が出力したトルクを前輪5FL、5FRに付加する。
さらに、車両1は制駆動モータECU12を備える。ここで、制駆動モータECU12は、後述する挙動推定手段101、挙動推定ステップ、抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、助長トルク制御手段103、助長トルク制御ステップを構成する。
【0014】
制駆動モータECU12は、マイクロプロセッサからなる。マイクロプロセッサは、A/D変換回路、D/A変換回路、中央演算処理装置およびメモリ等から構成した集積回路を備える。そして、制駆動モータECU12は、メモリが格納するプログラムに従って、センサ類2〜5が出力した検出信号に基づき、制駆動モータ8に出力させるトルクを算出し、算出したトルクを出力させる指令をインバータ7に出力する。
【0015】
図3は、マイクロプロセッサが実行するプログラムの構成を表すブロック図である。
制駆動モータECU12は、マイクロプロセッサが実行するプログラムにより、図3の制御ブロックを構成する。この制御ブロックは、ドライバ要求トルク演算部13、加算器14、トルク指令値演算部15および駆動力車体制振制御部16を備える。ここで、ドライバ要求トルク演算部13は、挙動推定手段101および挙動推定ステップを構成する。また、加算器14は、抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、助長トルク制御手段102、助長トルク制御ステップを構成する。さらに、駆動力車体制振制御部16は、挙動推定手段101、挙動推定ステップ、抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、助長トルク制御手段103、助長トルク制御ステップを構成する。
【0016】
ドライバ要求トルク演算部13は、アクセル開度センサ3が出力した検出信号、およびブレーキペダル踏力センサ4が出力した検出信号に基づいてドライバ要求トルクを算出する。ドライバ要求トルクとは、運転者が制駆動モータ8に要求する出力トルクである。ドライバ要求トルクは、制駆動モータ8の回転軸におけるトルク値であるモータ端値で表す。そして、ドライバ要求トルク演算部13は、算出したドライバ要求トルクを加算器14および駆動力車体制振制御部16に出力する。
【0017】
なお、本実施形態では、アクセル開度センサ3が出力した検出信号、およびブレーキペダル踏力センサ4が出力した検出信号に基づいてドライバ要求トルクを算出する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、アクセル開度センサ3等、各種センサによる検出値そのものをドライバ要求トルクとする構成としてもよい。
加算器14は、ドライバ要求トルク演算部13が出力したドライバ要求トルクに、駆動力車体制振制御部16が出力したドライバトルク補正値を加算する。これにより、ドライバ要求トルクを補正する。ドライバトルク補正値とは、ドライバ要求トルク、車輪速VwFL〜VwRR、および操舵角δoに基づき、後述するように駆動力車体制振制御部16が算出する補正値である。そして、ドライバ要求トルク演算部13は、補正したドライバ要求トルクを補正後要求トルクとしてトルク指令値演算部15に出力する。
【0018】
トルク指令値演算部15は、加算器14が出力した補正後要求トルク、およびVDC(Vehicle Dynamics Control)やTCS(Traction Control System)等の他のシステムの出力に基づいて、制駆動モータ8に出力させるトルクを算出する。そして、トルク指令値演算部15は、算出したトルクをトルク指令値としてインバータ7に出力する。
【0019】
図2は、第1実施形態の車両の機能構成を表すブロック図である。
図2に示すように、このブロック図は、トルク付加手段100、挙動推定手段101、抑制トルク制御手段102、および助長トルク制御手段103を備える。
トルク付加手段100は、車輪に駆動トルクを付加する。また、トルク付加手段100は、後述する抑制乗算値算出手段105が算出した乗算結果と後述する助長乗算値算出手段107が算出した乗算結果との合計値を算出し、算出した合計値に基づいて、このトルク付加手段100が付加する駆動トルクを制御する。
挙動推定手段101は、運転者の要求駆動トルク、路面から車輪に加わる路面外乱、および操舵によって車輪に加わる旋回抵抗に基づいて、車体のばね上挙動を推定する。そして、挙動推定手段101は、車体のばね上挙動の推定結果を抑制トルク制御手段102および助長トルク制御手段103に出力する。
【0020】
抑制トルク制御手段102は、挙動推定手段101が推定した車体のばね上挙動を構成する成分のうち要求駆動トルクに起因する成分の変動および路面外乱に起因する成分の変動を抑制する方向にトルク付加手段100が付加する駆動トルクを制御する。具体的には、抑制トルク制御手段102は、抑制トルク算出手段104、および抑制乗算値算出手段105を備える。抑制トルク算出手段104は、要求駆動トルクに起因する成分の変動を抑制する駆動トルク、および路面外乱に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクを算出する。抑制乗算値算出手段105は、抑制トルク算出手段104が算出した要求駆動トルクに起因する成分の変動を抑制する駆動トルク、および路面外乱に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクを抑制する駆動トルクのそれぞれにチューニングゲインを乗算する。ここで、これらに乗算するチューニングゲインは、正値とする。そして、抑制乗算値算出手段105は、乗算結果をトルク付加手段100に出力する。
【0021】
助長トルク制御手段103は、挙動推定手段101が推定した車体のばね上挙動を構成する成分のうち旋回抵抗に起因する成分の変動を助長する方向にトルク付加手段100が付加する駆動トルクを制御する。具体的には、助長トルク制御手段103は、助長トルク算出手段106、および助長乗算値算出手段107を備える。助長トルク算出手段106は、旋回抵抗に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクを算出する。助長乗算値算出手段107は、助長トルク算出手段106が算出した旋回抵抗に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクにチューニングゲインを乗算する。ここで、旋回抵抗に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクに乗算するチューニングゲインは、負値とする。そして、助長乗算値算出手段107は、乗算結果をトルク付加手段100に出力する。
【0022】
図4は、駆動力車体制振制御部16の構成を表すブロック図である。
図5は、駆動力車体制振制御部16の動作を表すフローチャートである。
図4に示すように、駆動力車体制振制御部16は、入力変換部17、車体振動推定部18およびトルク指令値算出部19を備える。ここで、入力変換部17は、挙動推定手段101、挙動推定ステップを構成する。また、車体振動推定部18は、挙動推定手段101および挙動推定ステップを構成する。さらに、トルク指令値算出部19は、助長トルク制御手段103、およびトルク制御ステップを構成する。
【0023】
入力変換部17は、操舵角センサ2、アクセル開度センサ3、ブレーキペダル踏力センサ4、および車輪速センサ5が出力した検出信号が表す情報を、車体振動推定部18で用いる車両モデル26の入力形式に変換する。具体的には、入力変換部17は、駆動トルク変換部20、サスストローク算出部21、上下力変換部22、車体速度推定部23、旋回挙動推定部24、および旋回抵抗推定部25を備える。ここで、上下力変換部22および旋回抵抗推定部25は、挙動推定手段101および挙動推定ステップを構成する。
【0024】
駆動トルク変換部20は、ドライバ要求トルク演算部13が出力したドライバ要求トルクを読み込む(図5のステップS101)。続いて、駆動トルク変換部20は、読み込んだドライバ要求トルクに変速機9のギア比を乗算する。これにより、ドライバ要求トルクをモータ端値から駆動軸端値に変換する(図5のステップS102)。ここで、駆動軸端値とは、前輪5FL、5FRにおけるトルク値である。そして、駆動トルク変換部20は、乗算結果を駆動トルクTwとして車体振動推定部18に出力する。ここで、駆動トルクTwとは、ドライ要求トルクの要求駆動トルクの駆動軸端値である。
【0025】
図6は、サスストローク算出部21の構成を表すブロック図である。
図7は、サスストローク算出部21の動作を表すフローチャートである。
サスストローク算出部21は、車輪速センサ5が出力した検出信号、つまり、車輪速VwFL〜VwRRを表す検出信号に基づいて、前後輪5FL〜5RRのサスペンションのストローク量Zf、Zrおよびストローク速度dZf、dZrを算出する。具体的には、図6に示すように、サスストローク算出部21は、平均前輪速演算部34、平均後輪速演算部35、前輪用バンドパスフィルタ処理部36、後輪用バンドパスフィルタ処理部37、前輪サスストローク算出部38および後輪サスストローク算出部39を備える。
【0026】
平均前輪速演算部34は、前輪5FL、5FRの車輪速センサ5が出力した検出信号を読み込む(図5のステップS103、図7のステップS201)。続いて、平均前輪速演算部34は、読み込んだ検出信号に基づいて平均前輪速VwF=(VwFL+VwFR)/2を算出する(図7のステップS202)。そして、平均前輪速演算部34は、算出した平均前輪速VwFを前輪用バンドパスフィルタ処理部36に出力する。
【0027】
平均後輪速演算部35は、後輪5RL、5RRの車輪速センサ5が出力した検出信号を読み込む(図5のステップS103、図7のステップS201)。続いて、平均後輪速演算部35は、読み込んだ後輪速VwRL、VwRRに基づいて平均後輪速VwR=(VwRL+VwRR)/2を算出する(図7のステップS202)。そして、平均後輪速演算部35は、算出した平均後輪速VwRを後輪用バンドパスフィルタ処理部37に出力する。
【0028】
前輪用バンドパスフィルタ処理部36は、平均前輪速演算部34が出力した平均前輪速VwFから車体共振周波数付近の成分のみを抽出する。そして、前輪用バンドパスフィルタ処理部36は、抽出した車体共振周波数近傍振動成分fVwFを前輪サスストローク算出部38、および後輪サスストローク算出部39に出力する(図7のステップS203)。
【0029】
後輪用バンドパスフィルタ処理部37は、平均後輪速演算部35が出力した平均後輪速VwRから車体共振周波数付近の成分のみを抽出する。そして、後輪用バンドパスフィルタ処理部37は、抽出した車体共振周波数近傍振動成分fVwRを前輪サスストローク算出部38、および後輪サスストローク算出部39に出力する(図7のステップS203)。
このように、本実施形態では、平均前輪速VwFおよび平均後輪速VwRから車体共振周波数付近の成分fVwF、fVwRのみを抽出するようにした。それゆえ、車両1全体の加減速による車輪速変動やノイズ成分を平均前輪速VwFおよび平均後輪速VwRから除去でき、車体振動を表す車輪速成分のみを抽出することができる。
【0030】
図8は、サスペンションのストローク量の算出方法を説明するための図である。
図9は、前輪サスペンションジオメトリ特性を表すグラフである。
図10は、後輪サスペンションジオメトリ特性を表すグラフである。
前輪サスストローク算出部38は、前輪用バンドパスフィルタ処理部36が抽出した車体共振周波数近傍振動成分fVwFに基づいて、前輪5FL、5FRの前後方向変位Xtfを算出する。続いて、前輪サスストローク算出部38は、算出した前後方向変位Xtfに時間微分を行って時間微分値dXtfを算出する。続いて、前輪サスストローク算出部38は、算出した前後方向変位Xtfおよび時間微分値dXtfに基づき、下記(1)(2)式に従ってサスペンションのストローク量Zfおよびストローク速度dZfを算出する(図7のステップS204)。そして、前輪サスストローク算出部38は、算出結果を上下力変換部22に出力する。
Zf=KgeoF・Xtf ・・・(1)
dZf=KgeoF・dXtf ・・・(2)
【0031】
ここで、KgeoFは、図9の前輪サスペンションジオメトリ特性を表すグラフの原点付近における勾配である。図9のグラフは、横軸が前輪5FL、5FRの前後方向変位Xtfを表し、縦軸が前輪5FL、5FRの上方における車体の上下変位Zfを表し、前後方向変位Xtfと車体の上下変位Zfとの関係を表すグラフである。
【0032】
後輪サスストローク算出部39は、後輪用バンドパスフィルタ処理部37が抽出した車体共振周波数近傍振動成分fVwRに基づいて、後輪5RL、5RRの前後方向変位Xtrを算出する。続いて、後輪サスストローク算出部39は、算出した前後方向変位Xtrに時間微分を行って時間微分値dXtrを算出する。続いて、後輪サスストローク算出部39は、算出した前後方向変位Xtrおよび時間微分値dXtrに基づき、下記(3)(4)式に従ってサスペンションのストローク量Zrおよびストローク速度dZrを算出する。そして、前輪サスストローク算出部38は、算出結果を上下力変換部22に出力する。
Zr=KgeoR・Xtr ・・・(3)
dZr=KgeoR・dXtr ・・・(4)
【0033】
ここで、KgeoRは、図10の後輪サスペンションジオメトリ特性を表すグラフの原点付近における勾配である。図10のグラフは、横軸が後輪5RL、5RRの前後方向変位Xtrを表し、縦軸が後輪5RL、5RRの上方における車体の上下変位Zrを表し、前後方向変位Xtrと車体の上下変位Zrとの関係を表すグラフである。
【0034】
図4に戻り、挙動推定手段101を構成する上下力変換部22は、サスストローク算出部21が出力したストローク量Zfにばね定数Kfを乗算するとともに、サスストローク算出部21が出力したストローク速度dZfに減衰係数Cfを乗算する。ここで、ばね定数Kfとは、前輪5FL、5FRのサスペンションのばね定数である。また、減衰係数Cfとは、前輪4RL、5FRのサスペンション(ショックアブソーバ)の減衰係数である。そして、上下力変換部22は、これらの乗算結果の合計値を前輪5FL、5FRの上下力Fzfとして車体振動推定部18に出力する(図5のステップS105)。ここで、上下力とは、路面から車輪5FL〜5RRに加わる路面外乱によって、車体に加わる外力である。
【0035】
また、上下力変換部22は、サスストローク算出部21が出力したストローク量Zrにばね定数Krを乗算するとともに、サスストローク算出部21が出力したストローク速度dZrに減衰係数Crを乗算する。ここで、ばね定数Krとは、後輪5RL、5RRのサスペンションのばね定数である。また、減衰係数Crとは、後輪4RL、5RRのサスペンション(ショックアブソーバ)の減衰係数である。そして、上下力変換部22は、これらの乗算結果の合計値を後輪5RL、5RRの上下力Fzrとして車体振動推定部18に出力する(図5のステップS105)。
【0036】
なお、本実施形態では、車輪速VWFL〜VWRRに基づいてサスペンションのストローク量およびストローク速度を算出し、算出したストローク量およびストローク速度に基づいて上下力Fzf、Fzrを算出する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、サスペンションのストローク量を検出するストロークセンサを設け、ストロークセンサによるストローク量の検出値および検出結果の時間微分値に基づいて上下力Fzf、Fzrを算出する構成としてもよい。また、ストロークセンサ等、各種センサによる検出値そのものを上下力Fzf、Fzrとする構成としてもよい。
【0037】
車体速度推定部23は、後輪5RL、5RR(従動輪)の車輪速センサ5が出力した検出信号を読み込む。続いて、平均後輪速演算部35は、読み込んだ検出信号に基づいて車体速度V=(VwRL+VwRR)/2を算出する。そして、車体速度推定部23は、算出した車体速度Vを旋回挙動推定部24に出力する。
旋回挙動推定部24は、車体速度推定部23が出力した検出信号、および操舵角センサ2が出力した検出信号に基づき、下記(5)(6)式に従ってヨー角速度γおよび車体横滑り角βvを算出する。そして、旋回挙動推定部24は、算出したヨー角速度γおよび車体横滑り角βvを旋回抵抗推定部25に出力する。また、旋回挙動推定部24は、これら算出結果とともに、操舵角センサ2の検出信号が表す操舵角δoも出力する
【0038】
【数1】

【0039】
ここで、δは操舵角δoに基づいて算出したタイヤ転舵角、Lはホイールベース、Lfは車体重心から前車軸までの距離、Lrは車体重心から後車軸までの距離、mは車重である。また、Cpfは前輪5FL、5FRのタイヤコーナリングパワー、Cprは後輪5RL、5RRのタイヤコーナリングパワーである。
【0040】
挙動推定手段101を構成する旋回抵抗推定部25は、旋回挙動推定部24が出力したヨー角速度γ、車体横滑り角βv、および操舵角δoに基づき、下記(7)式に従って、前輪5FL、5FRの旋回抵抗Fcfを算出する。ここで、旋回抵抗Fcfとは、操舵によって路面から車輪5FL〜5RRに加わる抵抗であり、スリップ角の発生によって車輪5FL〜5RRに加わる横力の車両前後方向成分である。そして、旋回抵抗推定部25は、算出した旋回抵抗Fcfを車両モデル26に出力する。
Fcf=βf・Fyf ・・・(7)
βf=βv+Lf・γ/V−δ
Fyf=βf・Cpf
ここで、βfは前輪5FL、5FRのスリップ角、Fyfは前輪5FL、5FRのコーナリングフォースである。
【0041】
また、旋回抵抗推定部25は、旋回挙動推定部24が出力したヨー角速度γ、車体横滑り角βv、および操舵角δoに基づき、下記(8)式に従って、後輪5RL、5RRの旋回抵抗Fcrを算出する。そして、旋回抵抗推定部25は、算出した旋回抵抗Fcrを車両モデル26に出力する。
Fcr=βr・Fyr ・・・(8)
βr=βv−Lr・γ/V
Fyr=βr・Cpr
ここで、βrは後輪5FL、5FRのスリップ角、Fyrは後輪5FL、5FRのコーナリングフォースである。
【0042】
なお、本実施形態では、車体速度Vおよび操舵角δoに基づいて旋回抵抗Fcf、Fcrを算出する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、操舵角センサ2等、各種センサによる検出値そのものを旋回抵抗Fcf、Fcrとする構成としてもよい。
挙動推定手段101を構成する車体振動推定部18は、入力変換部17が出力した駆動トルクTw、上下力Fzf、Fzrおよび旋回抵抗Fcf、Fcrに基づいて、車体のばね上挙動を構成する成分を算出する。具体的には、車体振動推定部18は、車両モデル26を備える。ここで、車両モデル26は、挙動推定手段101および挙動推定ステップを構成する。
【0043】
図11は、車両モデル26を説明するための図である。
挙動推定手段101を構成する車両モデル26は、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、駆動トルクTwに起因する成分、上下力Fzf、Fzrに起因する成分、および旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分を算出する。すなわち、車体のばね上挙動は種々の物理量で表すことができ、また、これら種々の物理量のそれぞれが種々の成分を含んでなるところ、車両モデル26は、これら種々の成分のうち、上記した3つの成分を個別に算出する。ここで、車体のばね上挙動としては、車体のピッチ軸回りの回転運動、およびバウンス方向の上下運動を採用できる。また、車体のばね上挙動を表す物理量としては、車体のバウンス速度dZv、バウンス量Zv、ピッチ角速度dSp、ピッチ角Spを採用できる。これら物理量dZv、Zv、dSp、Spは、下記(9)(10)式に示すように、前輪荷重Wf、および後輪荷重Wrを定義するうえで必要となるパラメータである。
Wf=−2Kf(Zv+Lf・θp)−2Cf(dZv+Lf・dθp/dt) ・・・(9)
Wr=−2Kr(Zv+Lr・θp)−2Cr(dZv−Lr・dθp/dt) ・・・(10)
【0044】
具体的には、車両モデル26は、駆動トルク変換部20が出力した駆動トルクTwに基づき、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、駆動トルクTwに起因する成分dZv1、Zv1、dSp1、Sp1を算出する。駆動トルクTwに起因する成分dZv1、Zv1、dSp1、Sp1の算出は、Fzf、Fzr、Fcf、Fcrを「0」とし、下記(11)(12)式に従って行う(図5のステップS112)。そして、車両モデル26は、算出した成分dZv1、Zv1、dSp1、Sp1をトルク指令値算出部19に出力する。
【0045】
【数2】

【0046】
ここで、図11に示すように、Ipはピッチ軸回りの慣性モーメント、hcgは車体重心の高さ、Rtは車輪重心の高さ、θpはピッチ角である。
また、車両モデル26は、上下力変換部22が出力した上下力Fzf、Fzrに基づき、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、上下力Fzf、Fzrに起因する成分dZv2、Zv2、dSp2、Sp2を算出する。上下力Fzf、Fzrに起因する成分dZv2、Zv2、dSp2、Sp2の算出は、Tw、Fcf、Fcrを「0」とし、上記(11)(12)式に従って行う(図5のステップS112)。そして、車両モデル26は、算出した成分dZv2、Zv2、dSp2、Sp2をトルク指令値算出部19に出力する。
【0047】
なお、本実施形態では、車体のばね上挙動を構成する成分のうちから、駆動トルクTwに起因する成分、および上下力Fzf、Fzrに起因する成分を算出する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、車体のバウンス速度dZv、バウンス量Zv、ピッチ角速度dSp、およびピッチ角Spの少なくともいずれか、またはこれらの合成値を構成する成分のうちから、駆動トルクTwに起因する成分、および上下力Fzf、Fzrに起因する成分を算出する構成としてもよい。合成値としては、例えば、車体のバウンス速度dZv、バウンス量Zv、ピッチ角速度dSp、およびピッチ角Spのそれぞれに係数を乗じ、乗算結果を合計した値等を採用できる。
【0048】
また、車両モデル26は、旋回抵抗推定部25が出力した旋回抵抗Fcf、Fcrに基づき、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、上下力Fzf、Fzrに起因する成分dZv3、Zv3、dSp3、Sp3を算出する。旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分dZv3、Zv3、dSp3、Sp3の算出は、Tw、Fzf、Fzrを「0」とし、上記(11)(12)式に従って行う(図5のステップS112)。続いて、車両モデル26は、算出した成分dZv3、Zv3、dSp3、Sp3に基づき、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分dWf3、dWr3、dSF3、SF3を算出する。dWfは前輪荷重の変動速度、dWrは後輪荷重の変動速度、dSFは前後バランスの変動速度、およびSF前後バランスである。旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分dWf3、dWr3、dSF3、SF3の算出は、上記(9)(10)式に従って行う(図5のステップS112)。そして、車両モデル26は、算出した成分dWf3、dWr3、dSF3、SF3をトルク指令値算出部19に出力する。
【0049】
なお、本実施形態では、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分を算出する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、前輪荷重Wf、前輪荷重の変動速度dWf、ピッチ角速度dSp、およびピッチ角Spの少なくともいずれか、またはこれらの合成値を構成する成分のうちから、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分、および上下力Fzf、Fzrに起因する成分を算出する構成としてもよい。合成値としては、例えば、前輪荷重Wf、前輪荷重の変動速度dWf、ピッチ角速度dSp、およびピッチ角Spのそれぞれに係数を乗じ、乗算結果を合計した値等を採用できる。
【0050】
図12は、トルク指令値算出部19の動作を説明するための説明図である。
図13は、チューニングゲインの設定方向を説明するための説明図である。
助長トルク制御手段103を構成するトルク指令値算出部19は、車体振動推定部18が出力した車体のばね上挙動を構成する成分に基づいて、ドライバトルク補正値を算出する。具体的には、トルク指令値算出部19は、第1レギュレータ27、第2レギュレータ28、第3レギュレータ29、第1チューニングゲイン乗算部30、第2チューニングゲイン乗算部31、第3チューニングゲイン乗算部32、およびモータトルク変換部33を備える。ここで、第1レギュレータ27および第2レギュレータ28は、抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、抑制トルク算出手段104を構成する。また、第3レギュレータ29は、助長トルク制御手段103、助長トルク制御ステップ、助長トルク算出手段106を構成する。さらに、第1チューニングゲイン乗算部30および第2チューニングゲイン乗算部31は抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、抑制乗算値算出手段105を構成する。また、第3チューニングゲイン乗算部32は助長トルク制御手段103、助長トルク制御ステップ、助長乗算値算出手段107を構成する。さらに、モータトルク変換部33は、トルク付加手段100を構成する。
【0051】
図12に示すように、第1レギュレータ27は、車両モデル26が出力した駆動トルクTwに起因する成分dZv1、Zv1、dSp1、Sp1を状態量x(=[dZv1、Zv1、dSp1、Sp1])としてレギュレータゲインF1および「−1」に乗じる。ここで、レギュレータゲインF1とは、状態量xを乗じることで、駆動トルクTwに起因する成分であるピッチ角速度dSp1を「0」に収束させる駆動トルクを算出するゲインである。レギュレータゲインF1は、例えば、下記(13)(14)式に従って設定する。
F1=R-1TP ・・・(13)
【0052】
【数3】

【0053】
ここで、上記(13)式は、駆動トルクTwに起因する成分である、ピッチ角速度dSp1の変動を抑制する最適レギュレータのレギュレータゲインF1の算出式である。また、上記(14)式において、Jは最適レギュレータにおける2次形式の評価関数であり、Pはリッカチ代数方程式PA+ATP−PBR-1TP+Q=0の解となる正定対称行列である。なお、以下のレギュレータゲインF2も同様の数式に従って設定する。これにより、第1レギュレータ27は、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、駆動トルクTwに起因する成分であるピッチ角速度dSp1の変動を抑制する方向に駆動トルクを補正(制御)する補正値を算出する。そして、第1レギュレータ27は、算出結果を駆動トルクの制御指令値Aとして第1チューニングゲイン乗算部30に出力する。
【0054】
第2レギュレータ28は、車両モデル26が出力した上下力Fzf、Fzrに起因する成分dZv2、Zv2、dSp2、Sp2を状態量x(=[dZv2、Zv2、dSp2、Sp2])としてレギュレータゲインF2および「−1」に乗じる。ここで、レギュレータゲインF2とは、状態量xを乗じることで、上下力Fzf、Fzrに起因する成分であるピッチ角Sp2を「0」に収束させる駆動トルクを算出するゲインである。これにより、第2レギュレータ28は、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、上下力Fzf、Fzrに起因する成分であるピッチ角Sp2の変動を抑制する方向に駆動トルクを補正(制御)する補正値を算出する。そして、第2レギュレータ28は、算出結果を駆動トルクの制御指令値Bとして第2チューニングゲイン乗算部31に出力する。
【0055】
第3レギュレータ29は、車両モデル26が出力した旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分dWf3、dWr3、dSF3、SF3を状態量Cx(=[dWf3、dWr3、dSF3、SF3])としてレギュレータゲインF3および「−1」に乗じる。ここで、レギュレータゲインF3とは、状態量Cxを乗じることで、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分である前輪荷重の変動速度dWf3を「0」に収束させる駆動トルクを算出するゲインである。レギュレータゲインF3は、例えば、下記(15)(16)式に従って設定する。
F3=R-1TP ・・・(15)
【0056】
【数4】

【0057】
ここで、上記(15)式は、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分である、前輪荷重の変動速度dWf3の変動を抑制する最適レギュレータのレギュレータゲインF3の算出式である。また、上記(16)式において、Jは最適レギュレータにおける2次形式の評価関数であり、Pはリッカチ代数方程式の解となる正定対称行列である。これにより、第3レギュレータ29は、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分である前輪荷重の変動速度dWf3の変動を抑制する方向に駆動トルクを補正(制御)する補正値を算出する。そして、第3レギュレータ29は、算出結果を駆動トルクの制御指令値Cとして第3チューニングゲイン乗算部32に出力する。
【0058】
なお、本実施形態では、状態量Cx、つまり、前輪荷重の変動速度dWf3に基づいて制御指令値Cを算出する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、前輪荷重Wf等、前輪5FL、5FRに関する他の物理量に基づいて制御指令値Cを算出する構成としてもよい。また、ピッチ角速度dSpやピッチ角度Sp等、車体のピッチ挙動に関する物理量に基づいて制御指令値Cを算出する構成としてもよい。
【0059】
なお、本実施形態では、状態量Cx、つまり、前輪荷重の変動速度dWf3に基づいて制御指令値Cを算出する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、前輪荷重Wf、前輪荷重の変動加速度等、前輪荷重Wfに関する他の物理量に基づいて制御指令値Cを算出する構成としてもよい。また、ピッチ角速度dSpやピッチ角度Sp等、車体のピッチ挙動に関する物理量に基づいて制御指令値Cを算出する構成としてもよい。
【0060】
第1チューニングゲイン乗算部30は、第1レギュレータ27が出力した制御指令値AにチューニングゲインK1を乗算する(図5のステップS113)。そして、第1チューニングゲイン乗算部30は、乗算結果を修正制御指令値K1・Aとしてモータトルク変換部33に出力する。ここで、制駆動モータECU12は、ドライバ要求トルクに制御指令値Aを加算することで、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、駆動トルクTwに起因する成分であるピッチ角速度dSp1の変動を抑制することができる。しかしながら、単にドライバ要求トルクに駆動トルクの制御指令値Aを加算する方法では、前後Gが変動して運転者に違和感を与える可能性がある。それゆえ、図13に示すように、チューニングゲインK1は、正値でかつ前後Gの変動によって運転者に違和感を与えない範囲の値に設定する。これにより、第1チューニングゲイン乗算部30は、前後Gの変動によって運転者に違和感を与えることを防止しつつ、駆動トルクTwに起因する成分の変動を抑制させる方向、つまり輪荷重の変動を抑制させる方向にドライバ要求トルクの補正値を調整する。
このように、本実施形態では、駆動トルクTwに起因する成分であるピッチ角速度dSp1の変動を抑制する方向にドライバ要求トルクの補正値を調整する。それゆえ、輪荷重の変動を抑制でき、乗り心地を向上することができる。
【0061】
図4に戻り、第2チューニングゲイン乗算部31は、第2レギュレータ28が出力した制御指令値BにチューニングゲインK2を乗算する(図5のステップS114)。そして、第2チューニングゲイン乗算部31は、乗算結果を修正制御指令値K2・Bとしてモータトルク変換部33に出力する。ここで、制駆動モータECU12は、ドライバ要求トルクに制御指令値Bを加算することで、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、上下力Fzf、Fzrに起因する成分であるピッチ角速度dSp2の変動を抑制することができる。しかしながら、単に駆動トルクの制御指令値Bを加算する方法では、前後Gが変動して運転者に違和感を与える可能性がある。それゆえ、図13に示すように、チューニングゲインK2は、正値でかつ前後Gの変動によって運転者に違和感を与えない範囲の値に設定する。これにより、前後Gの変動によって運転者に違和感を与えることを防止しつつ、第2チューニングゲイン乗算部31は、上下力Fzf、Fzrに起因する成分の変動、つまり輪荷重の変動を抑制する方向にドライバ要求トルクの補正値を調整する。
このように、本実施形態では、上下力Fzf、Fzrに起因する成分であるピッチ角速度dSp2の変動を抑制する方向にドライバ要求トルクの補正値を調整する。それゆえ、輪荷重の変動を抑制でき、乗り心地を向上することができる。
【0062】
図4に戻り、第3チューニングゲイン乗算部32は、第3レギュレータ29が出力した制御指令値CにチューニングゲインK3を乗算する(図5のステップS115)。そして、第3チューニングゲイン乗算部32は、乗算結果を修正制御指令値K3・Cとしてモータトルク変換部33に出力する。ここで、制駆動モータECU12は、ドライバ要求トルクに制御指令値Cを加算することで、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分である前輪荷重の変動速度dWf3の変動を抑制することができる。しかしながら、単に駆動トルクの制御指令値Cを加算する方法では、前後Gが変動して運転者に違和感を与える可能性がある。また、操舵操作を開始したときに、前輪荷重の変動速度dWf3の変動を抑制することで、ノーズダイブ挙動を抑制し、前輪荷重Wfの増大を抑制し、前輪5FL、5FRのコーナリングパワーCpが低減する可能性がある。それゆえ、前輪5FL、5FRの横力が低減し、操舵応答性が低下する可能性がある。そのため、チューニングゲインK3は、負値で、かつ前後Gの変動によって運転者に違和感を与えない範囲の値に設定する。これにより、第3チューニングゲイン乗算部32は、前後Gの変動によって運転者に違和感を与えることを防止しつつ、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分の変動を助長する方向にドライバ要求トルクの補正値を調整する。
【0063】
このように、本実施形態では、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分である前輪荷重の変動速度dWf3の変動を助長する方向にドライバ要求トルクの補正値を調整する。それゆえ、操舵操作を開始したときに、駆動トルクを低減でき、ノーズダイブ挙動を助長でき、前輪荷重Wfを増大できる。これにより、前輪荷重Wfが増大することで、前輪5FL、5FRのコーナリングパワーCpを増大でき、前輪5FL、5FRの横力を増大でき、操舵応答性を向上できる。また、輪荷重の変動を抑制しつつ、操舵応答性を向上することで、ヨー角速度γのリニアリティ、つまり、入力に対する出力の直線性を向上できる。これにより、横Gの変化を緩やかにすることができ、ロール挙動を抑制できる。
【0064】
図14は、修正制御指令値K3・Cの設定方法を説明するための説明図である。
ロール挙動は、操舵操作にともなう横Gによって発生する。すなわち、図14(a)に示すように、運転者が操舵操作を行うと、前輪5FL、5FRに横力が発生する。前輪5FL、5FRに横力が発生すると、車体に横Gが発生する。車体に横Gが発生すると、ロール角速度が発生する。それゆえ、ロール角速度の時間波形は、横Gの時間微分値の時間波形と相関を持つ。そのため、横Gの時間微分値を低減することができれば、ロール角速度のピーク値の絶対値を低減できる。その際、単に横Gの時間微分値を低減させると、横Gが低減し、ヨー角速度が低減するため、操舵応答性が低減する。それゆえ、横Gの時間微分値を低減させるとともに、横Gが増大を始めるタイミング、つまり、横Gの立ち上がりを早めることができれば、ロール角速度のピーク値の絶対値を低減しつつ、操舵応答性を向上することができる。そして、このような横Gは、運転者が操舵操作を開始した場合に、操舵操作を開始した後、操舵操作によって発生するロール角速度がピークに達する前に駆動トルクを低減する理想トルクを前輪5FL、5RRに付加することで実現できる。このようにすれば、駆動トルクが低減することで、前輪荷重Wfが増大し、前輪5FL、5FRのコーナリングパワーCpが増大する。それゆえ、ヨー角速度γの応答性が増大し、前輪5FL、5FRに加わる横力が早いタイミングで増大する。また、横力が早いタイミングで増大することで、横Gの時間微分値を低減することができる。
【0065】
ここで、図14(b)に示すように、操舵操作によって横力が発生すると、横Gとともに、旋回抵抗も発生する。それゆえ、旋回抵抗の時間波形は、横Gの時間波形と相関を持つ。また、旋回抵抗が発生すると、ピッチ角速度が発生する。それゆえ、ピッチ角速度の時間波形は、旋回抵抗の微分値の時間波形と相関を持つ。そのため、旋回抵抗に起因するピッチ角速度の時間波形、つまり、ピッチ挙動の時間波形を基に、操舵操作に起因するロール角速度の時間波形を予測できる。また、ピッチ挙動から予測できる前輪荷重の変動成分、つまり、前輪荷重の変動速度dWfに着目すると、運転者が操舵操作を開始した場合に、操舵操作を開始した後、操舵操作によってロール角速度がピークに達する前に、ピークに達する山なりの時間波形となる。これは、正負の符号を変えて負値とすることで理想トルクの時間波形と同様の特性となる。それゆえ、前輪荷重の変動速度dWfを含む状態量CxにレギュレータゲインF3および「−1」を乗じ、乗算結果にレギュレータゲインK1(<0)を乗算することで、ロール角速度の変動を抑制するように駆動トルクを補正(制御)する補正値を算出できる。
【0066】
モータトルク変換部33は、修正制御指令値K1・A、修正制御指令値K2・B、および修正制御指令値K3・Cの合計値に変速機9のギア比を乗算する。これにより、合計値を駆動軸端値からモータ端値に変換する。そして、モータトルク変換部33は、乗算結果をドライバトルク補正値として加算器14に出力する(図5のステップS116)。
【0067】
(動作)
図15は、第1実施形態の車体振動制御装置の動作を説明するための説明図である。図15(a)では、第1実施形態の動作を表す物理量の時系列データの波形を表す。また、図15(b)では、比較例の動作を表す物理量の時系列データの波形を表す。
【0068】
次に、車体振動制御装置を搭載した車両1の動作について図15を参照して説明する。
まず、高速道路を走行中、運転者が、車両1を定速で直進走行させるために、アクセル開度を一定とし、ステアリングホイール6を原点位置に保持し、図15(a)の時刻t0に示すように、操舵入力を「0」にしていたとする。すると、図3に示すように、制駆動モータECU12のドライバ要求トルク演算部13が、アクセル開度センサ3が出力する検出信号、およびブレーキペダル踏力センサ4が出力する検出信号に基づいてドライバ要求トルクを算出する。そして、ドライバ要求トルク演算部13が、算出したドライバ要求トルクを加算器14および入力変換部17に出力する。ドライバ要求トルク演算部13がドライバ要求トルクを出力すると、図4に示すように、入力変換部17の駆動トルク変換部20が、ドライバ要求トルクに変速機9のギア比を乗算し、乗算結果を駆動トルクTwとして車両モデル26に出力する。駆動トルク変換部20が駆動トルクTwを出力すると、車両モデル26が、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、駆動トルクTwに起因する成分dZv1、Zv1、dSp1、Sp1を算出する。そして、車両モデル26が、算出結果dZv1、Zv1、dSp1、Sp1を第1レギュレータ27に出力する。車両モデル26が成分dZv1、Zv1、dSp1、Sp1を出力すると、第1レギュレータ27が、成分dZv1、Zv1、dSp1、Sp1に基づいて駆動トルクの制御指令値Aを算出し、算出した制御指令値Aを第1チューニングゲイン乗算部30に出力する。これにより、第1レギュレータ27が、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、駆動トルクTwに起因する成分であるピッチ角速度dSp1の変動を抑制する方向に駆動トルクを補正する制御指令値Aを算出する。第1レギュレータ27が制御指令値Aを出力すると、第1チューニングゲイン乗算部30が、制御指令値AにチューニングゲインK1を乗算し、乗算結果を修正制御指令値K1・Aとしてモータトルク変換部33に出力する。これにより、第1チューニングゲイン乗算部30が、駆動トルクTwに起因する成分であるピッチ角速度dSp1の変動、つまり、輪荷重の変動を抑制しつつ、前後Gの変動によって運転者に違和感を与えることを防止する方向に駆動トルクの制御指令値Aを調整する。
【0069】
また、サスストローク算出部21が、車輪速センサ5が出力する検出信号に基づいてサスペンションのストローク量Zf、Zrおよびストローク速度dZf、dZrを算出し、算出結果を上下力変換部22に出力する。入力変換部17がストローク量Zf、Zrおよびストローク速度dZf、dZrを出力すると、上下力変換部22が、ストローク量Zfおよびストローク速度dZfに基づいて上下力Fzf、Fzrを算出し、算出した上下力Fzf、Fzrを車両モデル26に出力する。上下力変換部22が上下力Fzf、Fzrを出力すると、車両モデル26が、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、上下力Fzf、Fzrに起因する成分dZv2、Zv2、dSp2、Sp2を算出し、算出結果を第2レギュレータ28に出力する。車両モデル26が成分dZv2、Zv2、dSp2、Sp2を出力すると、第2レギュレータ28が、上下力Fzf、Fzrに起因する成分dZv2、Zv2、dSp2、Sp2に基づいて駆動トルクの制御指令値Bを算出する。そして、第2レギュレータ28が、算出した制御指令値Bを第2チューニングゲイン乗算部31に出力する。これにより、第2レギュレータ28が、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、上下力Fzf、Fzrに起因する成分であるピッチ角速度dSp2の変動を抑制する方向に駆動トルクを補正する制御指令値Bを算出する。第2レギュレータ28が制御指令値Bを出力すると、第2チューニングゲイン乗算部31が、制御指令値BにチューニングゲインK2を乗算し、乗算結果を修正制御指令値K2・Bとしてモータトルク変換部33に出力する。これにより、第2チューニングゲイン乗算部31が、上下力Fzf、Fzrに起因する成分であるピッチ角速度dSp1の変動、つまり、輪荷重の変動を抑制しつつ、前後Gの変動によって運転者に違和感を与えることを防止する方向に駆動トルクの制御指令値Bを調整する。
【0070】
また、車体速度推定部23が、車輪速センサ5が出力する検出信号に基づいて車体速度Vを算出し、算出した車体速度Vを旋回挙動推定部24に出力する。車体速度推定部23が車体速度Vを出力すると、旋回挙動推定部24が、車体速度Vおよび操舵角センサ2が出力する検出信号に基づいてヨー角速度γおよび車体横滑り角βvを算出し、ヨー角速度γおよび車体横滑り角βvを旋回抵抗推定部25に出力する。ここで、ヨー角速度γおよび車体横滑り角βvの算出結果は、操舵入力が「0」であるため、「0」となる。旋回挙動推定部24がヨー角速度γおよび車体横滑り角βvを出力すると、旋回抵抗推定部25が、ヨー角速度γ、車体横滑り角βvおよびタイヤ転舵角δに基づいて旋回抵抗Fcf、Fcr(=0)を算出し、算出した旋回抵抗Fcf、Fcrを車両モデルに出力する。旋回抵抗推定部25が旋回抵抗Fcf、Fcrを出力すると、車両モデル26が、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分dWf3、dWr3、dSF3、SF3(=0)を算出し、算出結果を第3レギュレータ29に出力する。車両モデル26が成分dWf3、dWr3、dSF3、SF3を出力すると、第3レギュレータ29が、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分dWf3、dWr3、dSF3、SF3に基づいて駆動トルクの制御指令値C(=0)を算出し、算出した制御指令値Cを第3チューニングゲイン乗算部32に出力する。第3レギュレータ29が制御指令値Cを出力すると、第3チューニングゲイン乗算部32が、制御指令値CにチューニングゲインK3を乗算し、乗算結果を修正制御指令値K3・C(=0)としてモータトルク変換部33に出力する。
【0071】
そして、モータトルク変換部33が、修正制御指令値K1・A、修正制御指令値K2・B、および修正制御指令値K3・Cの合計値に変速機9のギア比を乗算し、乗算結果をドライバトルク補正値として加算器14に出力する。モータトルク変換部33がドライバトルク補正値を出力すると、図3に示すように、加算器14が、ドライバ要求トルクにドライバトルク補正値を加算することでドライバ要求トルクを補正し、補正結果を補正後要求トルクとしてトルク指令値演算部15に出力する。加算器14が補正後要求トルクを出力すると、トルク指令値演算部15が、補正後要求トルクに基づいてトルク指令値を算出し、算出したトルク指令値をインバータ7に出力する。トルク指令値演算部15がトルク指令値を出力すると、インバータ7が、出力したトルク指令値に従って、バッテリ10が蓄えている電力を制駆動モータ8に供給する。そして、制駆動モータ8が、インバータ7が供給する電力に応じてトルクを発生し、発生したトルクを変速機9およびドライブシャフト11を介して前輪5FL、5RRに付加する。これにより、図15(a)の時刻t0〜t1に示すように、前輪5FL、5RRの駆動トルクを制御し、駆動トルクの補正を行わない場合に比べ、ピッチ角速度dSpの変動を抑制できる。それゆえ、輪荷重の変動、つまり、車体の振動を抑制でき、乗り心地を向上することができる。
【0072】
ここで、運転者が、車両1を車線変更させるために、ステアリングホイール6による操舵操作を開始し、図15(a)の時刻t1に示すように、操舵入力を徐々に増大させたとする。すると、操舵入力の絶対値が徐々に増大することで、旋回挙動推定部24が、ヨー角速度γおよび車体横滑り角βvとして徐々に絶対値が大きい値を算出する。また、旋回抵抗推定部25が、旋回抵抗Fcf、Fcrとして徐々に絶対値が大きい値を算出する。さらに、車両モデル26が、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分dWf3、dWr3、dSF3、SF3として徐々に絶対値の大きい値を算出する。そして、第3レギュレータ29が、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分である前輪荷重の変動速度dWf3の変動を抑制する方向に駆動トルクを補正する制御指令値C(>0)を算出する。すなわち、操舵操作の開始時には、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因してノーズダイブ挙動が発生し、前輪荷重の変動速度dWf3が増大するところ、変動速度dWf3の増大を抑制する方向として、駆動トルクを増大させる方向に駆動トルクを補正するものとする。第3レギュレータ29が制御指令値Cを出力すると、第3チューニングゲイン乗算部32が、制御指令値Cに負値のチューニングゲインK3(<0)を乗算し、乗算結果を修正制御指令値K3・C(<0)としてモータトルク変換部33に出力する。これにより、第3チューニングゲイン乗算部32が、前輪荷重の変動速度dWf3が増大するところ、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分である前輪荷重の変動速度dWf3の変動を助長する方向として、駆動トルクが低減する方向に制御指令値Cを調整する。
【0073】
それゆえ、モータトルク変換部33および加算器14を経て、トルク指令値演算部15が、トルク指令値を徐々に小さい値とする。そして、インバータ7を経て、制駆動モータ8が、発生するトルクを徐々に低減させる。これにより、車体のばね上挙動としてノーズダウン挙動が発生するところ、図15(a)の時刻t1に示すように、駆動トルクを低減することで、ノーズダウン挙動を助長できる。それゆえ、駆動トルクの補正を行わない場合に比べ、前輪荷重Wfを増大でき、前輪5FL、5FRのコーナリングパワーCpを増大できる。そのため、ヨー角速度γの応答性を向上でき、前輪5FL、5FRに作用する横力を増大でき、車両1の操舵応答性を向上できる。その結果、ヨー角速度γの応答性が増大し、前輪5FL、5FRに加わる横力が早いタイミングで増大する。また、横力が早いタイミングで増大することで、横Gの時間微分値が低減する。ここで、ロール角速度の時間波形は、横Gの時間微分値の時間波形と相関を持つ。そのため、横Gの時間微分値を低減することで、ロール角速度のピーク値の絶対値を低減できる。
【0074】
また、輪荷重の変動を抑制しつつ、操舵応答性を向上することで、ヨー角速度γのリニアリティ、つまり、入力に対する出力の直線性を向上できる。これにより、横Gの変化を緩やかにすることができ、ロール角速度の変動を抑制することもできる。
さらに、ステアリングホイール6による操舵操作の開始後、ヨー角速度γが一定値に収束しつつあるとする。すると、ヨー角速度γの時間微分値が低減することで、ヨー角速度γが増大して、車両1が回転する動きが大きくなる所謂巻き込み現象を抑制できる。また、ヨー角速度γが収束するときに、ヨー角速度γが増大して巻き込み現象が悪化する。
【0075】
なお、図15(b)に示すように、輪荷重の変動を抑制する方向にのみ駆動トルクを補正する方法では、車体の振動を抑制できるものの、操舵応答性の低下やロール挙動の増大を発生し、運転者に違和感を与える可能性がある。例えば、運転者が操舵操作を開始すると、車輪5FL〜5RRに加わる旋回抵抗Fcf、Fcrが増大し、駆動力が低減する。それゆえ、ノーズダウン挙動が発生するところ、ノーズダウン挙動を抑制する方向、つまり、駆動トルクを増大する方向に補正することになる。そのため、前輪荷重Wfが低減し、前輪5FL、5FRのコーナリングパワーCpが減少する。その結果、ヨー角速度γの応答性が低下し、前輪5FL、5FRに加わる横力が低減し、車両1の操舵応答性が低下する。また、操舵応答性が低下することで、ヨー角速度γのリニアリティ、つまり、入力に対する出力の直線性が低下する。これにより、横Gの変化を緩やかにすることができず、ロール挙動が増大することになる。
【0076】
以上、本実施形態では、図1のインバータ7、制駆動モータ8、変速機9、図4のモータトルク変換部33はトルク付加手段100を構成する。以下同様に、図1の制駆動モータECU12、図3のドライバ要求トルク演算部13、図3および図4の駆動力車体制振制御部16、入力変換部17、車体振動推定部18、トルク指令値算出部19が挙動推定手段101および挙動推定ステップを構成する。また、図4の上下力変換部22、旋回抵抗推定部25、図4の車両モデル26も挙動推定手段101および挙動推定ステップを構成する。さらに、図1の制駆動モータECU12、図3の加算器14、駆動力車体制振制御部16、トルク指令値算出部19が抑制トルク制御手段103および抑制トルク制御ステップを構成する。また、第1レギュレータ27、第2レギュレータ28、第1チューニングゲイン乗算部30、第2チューニングゲイン乗算部31も抑制トルク制御手段103および抑制トルク制御ステップを構成する。さらに、図1の制駆動モータECU12、図3の加算器14、駆動力車体制振制御部16、トルク指令値算出部19、第3レギュレータ29、第3チューニングゲイン乗算部32が助長トルク制御手段103および助長トルク制御ステップを構成する。また、図4の第1レギュレータ27、第2レギュレータ28が抑制トルク算出手段104を構成する。さらに、図4の第1チューニングゲイン乗算部30、第2チューニングゲイン乗算部31が抑制乗算値算出手段105を構成する。また、第3レギュレータ29が助長トルク算出手段106を構成する。さらに、図4の第3チューニングゲイン乗算部32が助長乗算値算出手段107を構成する。
【0077】
(本実施形態の効果)
(1)本実施形態では、抑制トルク制御手段102は、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、要求駆動トルクおよび路面外乱に起因する成分の変動を抑制する方向に駆動トルクを制御する。また、助長トルク制御手段103は、旋回抵抗に起因する成分の変動を助長する方向に駆動トルクを制御する。
このような構成によれば、操舵操作の開始前には、運転者の要求駆動トルクおよび路面外乱に起因する成分の変動を抑制する方向に駆動トルクを制御することで、輪荷重の変動を抑制することができる。また、操舵操作を開始したときには、車輪に加わる旋回抵抗に起因する成分の変動を助長する方向に駆動トルクを制御することで、ノーズダウン挙動を助長でき、前輪の輪荷重を増大でき、操舵応答性を向上できる。そして、輪荷重の変動を抑制しつつ、操舵応答性を向上することで、横Gの変化を緩やかにすることができ、ロール挙動を抑制することができる。これにより、輪荷重の変動を抑制しつつ、操舵応答性の向上およびロール挙動の抑制を可能とすることができる。
【0078】
(2)抑制乗算値算出手段105は、要求駆動トルクに起因する成分の変動を抑制する駆動トルク、および路面外乱に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクのそれぞれに乗算するチューニングゲインを正値とする。また、助長乗算値算出手段107は、旋回抵抗に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクに乗算するチューニングゲインを負値とする。
このような構成によれば、駆動トルクを比較的容易な構成で算出できる。
【0079】
(3)挙動推定手段101は、要求駆動トルク、路面外乱および旋回抵抗に基づき、車体のばね上挙動として車体のバウンス方向の上下運動およびピッチ軸回りの回転運動を推定する。
このような構成によれば、車体のばね上挙動として、輪荷重と一定の関係を有し、かつ駆動トルクで制御可能な物理量を推定できる。
【0080】
(4)挙動推定手段101は、要求駆動トルクに起因する成分および路面外乱に起因する成分として、バウンス速度、バウンス量、ピッチ角速度、およびピッチ角の少なくともいずれか、またはこれらの合成値を推定する。
このような構成によれば、車体のバウンス速度、バウンス量、ピッチ角速度、およびピッチ角等の変動を抑制する方向に駆動トルクを制御できる。
【0081】
(5)挙動推定手段101は、旋回抵抗に起因する成分として、前輪荷重、前輪荷重の変動成分、ピッチ角速度およびピッチ角の少なくともいずれかまたはこれらの合成値を推定する。
このような構成によれば、操舵操作を開始したときに、前輪荷重の変動成分、前輪荷重、ピッチ角速度およびピッチ角等の変動を助長する方向に駆動トルクを制御できる。
(6)挙動推定手段101は、操舵角および車体速度に基づいて、旋回抵抗を推定する。
このような構成によれば、旋回抵抗を比較的容易な構成で算出できる。
(7)挙動推定手段101は、車輪速度に基づいて、路面外乱を推定する。
このような構成によれば、路面外乱を比較的容易な構成で算出できる。
【0082】
(8)挙動推定手段101は、車輪速に基づいて、サスペンションのストローク速度およびストローク量を推定し、推定したストローク速度とサスペンションの減衰係数とを乗算するとともに、推定したストローク量にサスペンションのばね定数を乗算する。そして、挙動推定手段101は、これらの乗算結果の合計値を路面外乱の推定値とする。
このような構成によれば、路面外乱をより容易な構成で算出できる。
【0083】
(9)本実施形態では、抑制トルク制御ステップは、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、要求駆動トルクおよび路面外乱に起因する成分の変動を抑制する方向に駆動トルクを制御する。また、助長トルク制御ステップは、旋回抵抗に起因する成分の変動を助長する方向に駆動トルクを制御する。
このような構成によれば、操舵操作の開始前には、運転者の要求駆動トルクおよび路面外乱に起因する成分の変動を抑制する方向に駆動トルクを制御することで、輪荷重の変動を抑制することができる。また、操舵操作を開始したときには、車輪に加わる旋回抵抗に起因する成分の変動を助長する方向に駆動トルクを制御することで、ノーズダウン挙動を助長でき、前輪の輪荷重を増大でき、操舵応答性を向上できる。そして、輪荷重の変動を抑制しつつ、操舵応答性を向上することで、横Gの変化を緩やかにすることができ、ロール挙動を抑制することができる。これにより、輪荷重の変動を抑制しつつ、操舵応答性の向上およびロール挙動の抑制を可能とすることができる。
【0084】
(応用例)
図16は、第1実施形態の車体振動制御装置の応用例を説明するための説明図である。
なお、本実施形態では、制駆動ECU12が、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分である、前輪荷重の変動速度dWf3の変動を助長する方向に駆動トルクを補正する例を示したが、他の構成も採用できる。例えば、図16に示すように、前輪荷重の変動速度dWf3の変動を助長する方向に駆動トルクを補正するとともに、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分である、後輪荷重Wr3および後輪荷重の変動速度dWr3を抑制する方向に駆動トルクを補正する構成としてもよい。また、後輪荷重Wr3、後輪荷重の変動速度dWr3、後輪荷重の変動加速度等、後輪荷重に関する物理量の少なくともいずれかの変動を抑制する方向に駆動トルクを補正する構成としてもよい。
【0085】
(本応用例の効果)
(1)本応用例では、旋回抵抗に起因する成分として、後輪荷重に関する物理量を推定し、推定した後輪荷重に関する物理量の変動を抑制する方向に駆動トルクを制御する。
このような構成によれば、旋回抵抗に起因する成分のうち、特に変動を助長したい成分(例えば、前輪荷重、前輪荷重の変動速度、ピッチ角速度、およびピッチ角度のいずれか、もしくはこれらの合成値)に制御効果を集中できる。
【0086】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、上記各実施形態と同様な構成等については同一の符号を使用する。
本実施形態は、後輪駆動式で、かつマニュアル変速式の4輪内燃機関自動車(つまり、FR・MT車)に搭載し、動力源であるエンジンが発生するトルクを制御することで、車体のばね上挙動を制御する点が前記第1実施形態と異なる。
【0087】
図17は、第2実施形態の車両の概略構成を表す概念図である。
具体的には、図17に示すように、本実施形態では、インバータ7、制駆動モータ8、変速機9、バッテリ10、ドライブシャフト11および制駆動モータECUに代えて、エンジン50、MT変速機51およびECM52を備える。ここで、エンジン50およびMT変速機51がトルク付加手段100を構成する。また、ECM52が挙動推定手段101、挙動推定ステップ、抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、助長トルク制御手段103、および助長トルク制御ステップを構成する。
【0088】
エンジン50は、ECM52が出力する指令に従って、トルクを発生し、発生したトルクをMT変速機51に出力する。
MT変速機51は、エンジン50が出力するトルクをシャフト53、ディファレンシャルギア54およびドライブシャフト55を介して後輪5RL、5RRに付加する。
ECM52は、マイクロプロセッサからなる。マイクロプロセッサは、A/D変換回路、D/A変換回路、中央演算処理装置、メモリ等から構成した集積回路を備える。そして、ECM52は、メモリが格納するプログラムに従って、センサ類2〜5が出力する検出信号に基づき、エンジン50に出力させるトルクを算出し、算出したトルクを出力させる指令をエンジン50に出力する。
【0089】
図18は、マイクロプロセッサが実行するプログラムの構成を表すブロック図である。
また、図18に示すように、本実施形態では、トルク指令値演算部15がエンジン50にトルク指令値を出力する点が前記第1実施形態と異なる。
図19は、駆動力車体制振制御部16の構成を表すブロック図である。
図20は、駆動力車体制振制御部16の動作を表すフローチャートである。
【0090】
また図19に示すように、本実施形態では、駆動トルク変換部20、第1レギュレータ27、第2レギュレータ28、第1チューニングゲイン乗算部30、第2チューニングゲイン乗算部31、第3チューニングゲイン乗算部32の動作が前記第1実施形態と異なる。また、本実施形態では、モータトルク変換部33に代えてエンジントルク変換部56を備える点が前記第1実施形態と異なる。
【0091】
駆動トルク変換部20は、ドライバ要求トルク演算部13が出力するドライバ要求トルクを読み込む(図20のステップS101)。ドライバ要求トルクは、エンジン50の回転軸におけるトルク値であるエンジン端値で表す。続いて、駆動トルク変換部20は、読み込んだドライバ要求トルクにギア比を乗算する。ここで、ギア比とは、駆動輪である左右の後輪5RL、5RRの平均回転数とエンジン50の回転数との比である。これにより、ドライバ要求トルクをエンジン端値から駆動軸端値に変換する(図20のステップS102)。駆動軸端値とは、後輪5RL、5RRにおけるトルク値である。そして、駆動トルク変換部20は、乗算結果を駆動トルクTwとして車体振動推定部18に出力する。
【0092】
図21は、レギュレータゲインおよびチューニングゲイン乗算部の動作を説明するための図である。
第1レギュレータ27は、車両モデル26が出力した駆動トルクTwに起因する成分dZv1、Zv1、dSp1、Sp1を状態量x(=[dZv1、Zv1、dSp1、Sp1])としてレギュレータゲインF1および「−1」に乗じる。ここで、レギュレータゲインF1とは、状態量xを乗じることで、駆動トルクTwに起因する成分であるピッチ角速度dSp1を「0」に収束させる駆動トルクを算出するゲインである。レギュレータゲインF1は、例えば、下記(17)(18)式に従って設定する。
F1=R-1TP ・・・(17)
【0093】
【数5】

【0094】
ここで、上記(17)式は、駆動トルクTwに起因する成分のうちのピッチ角速度dSp1の変動を抑制する最適レギュレータのレギュレータゲインF1の算出式である。また、上記(18)式において、Jは最適レギュレータにおける2次形式の評価関数であり、Pはリッカチ代数方程式PA+ATP−PBR-1TP+Q=0の解となる正定対称行列である。なお、以下のレギュレータゲインF2、F4、F5も同様の数式に従って設定する。これにより、第1レギュレータ27は、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、駆動トルクTwに起因する成分であるピッチ角速度dSp1の変動を抑制する方向に駆動トルクを補正(制御)する補正値を算出する。そして、第1レギュレータ27は、算出結果を駆動トルクの制御指令値Aとして第1チューニングゲイン乗算部30に出力する。
【0095】
また、第1レギュレータ27は、車両モデル26が出力した駆動トルクTwに起因する成分dZv1、Zv1、dSp1、Sp1を状態量x(=[dZv1、Zv1、dSp1、Sp1])としてレギュレータゲインF4および「−1」に乗じる。ここで、レギュレータゲインF4とは、状態量xを乗じることで、駆動トルクTwに起因する成分であるバウンス速度dZv1を「0」に収束させる駆動トルクを算出するゲインである。これにより、第1レギュレータ27は、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、駆動トルクTwに起因する成分であるバウンス速度dZv1の変動を抑制する方向に駆動トルクを補正(制御)する補正値を算出する。そして、第1レギュレータ27は、算出結果を駆動トルクの制御指令値Dとして第1チューニングゲイン乗算部30に出力する。
【0096】
第2レギュレータ28は、車両モデル26が出力した上下力Fzf、Fzrに起因する成分dZv2、Zv2、dSp2、Sp2を状態量x(=[dZv2、Zv2、dSp2、Sp2])としてレギュレータゲインF2および「−1」に乗じる。ここで、レギュレータゲインF2とは、状態量xを乗じることで、上下力Fzf、Fzrに起因する成分であるピッチ角Sp2を「0」に収束させる駆動トルクを算出するゲインである。これにより、第2レギュレータ28は、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、上下力Fzf、Fzrに起因する成分であるピッチ角Sp2の変動を抑制する方向に駆動トルクを補正(制御)する補正値を算出する。そして、第2レギュレータ28は、算出結果を駆動トルクの制御指令値Bとして第2チューニングゲイン乗算部31に出力する。
【0097】
また、第2レギュレータ28は、車両モデル26が出力した上下力Fzf、Fzrに起因する成分dZv2、Zv2、dSp2、Sp2を状態量x(=[dZv2、Zv2、dSp2、Sp2])としてレギュレータゲインF5および「−1」に乗じる。ここで、レギュレータゲインF5とは、状態量xを乗じることで、上下力Fzf、Fzrに起因する成分であるバウンス変位Zv1を「0」に収束させる駆動トルクを算出するゲインである。これにより、第2レギュレータ28は、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、上下力Fzf、Fzrに起因する成分であるバウンス変位Zv1の変動を抑制する方向に駆動トルクを補正(制御)する補正値を算出する。そして、第2レギュレータ28は、算出結果を駆動トルクの制御指令値Eとして第2チューニングゲイン乗算部31に出力する。
【0098】
第1チューニングゲイン乗算部30は、第1レギュレータ27が出力した制御指令値AにチューニングゲインK1を乗算する(図20のステップS302)。また、第1チューニングゲイン乗算部30は、第1レギュレータ27が出力した制御指令値DにチューニングゲインK4を乗算する(図20のステップS302)。そして、第1チューニングゲイン乗算部30は、乗算結果を修正制御指令値K1・A、K4・Dとしてモータトルク変換部33に出力する。ここで、ECM52は、ドライバ要求トルクに制御指令値A、Dを加算することで、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、駆動トルクTwに起因する成分であるピッチ角速度dSp1およびバウンス速度dZv1の変動を抑制することができる。しかしながら、単に駆動トルクの制御指令値A、Dを加算する方法では、前後Gが変動して運転者に違和感を与える可能性がある。それゆえ、図21に示すように、チューニングゲインK1、K4は、正値で、かつ前後Gの変動によって運転者に違和感を与えない範囲の値に設定する。これにより、第1チューニングゲイン乗算部30は、前後Gの変動によって運転者に違和感を与えることを防止しつつ、駆動トルクTwに起因する成分の変動を抑制させる方向、つまり、輪荷重の変動を抑制させる方向にドライバ要求トルクの補正値を調整する。
このように、本実施形態では、駆動トルクTwに起因する成分であるピッチ角速度dSp1およびバウンス速度dZv1の変動を抑制する方向にドライバ要求トルクの補正値を調整する。それゆえ、輪荷重の変動を抑制でき、乗り心地を向上することができる。
【0099】
図22は、チューニングゲインと車体速との関係を表すグラフである。
また、第1チューニングゲイン乗算部30は、車体速度Vに応じてチューニングゲインK1、K4を可変とする(図20のステップS301)。具体的には、図22に示すように、第1チューニングゲイン乗算部30は、車体速度Vが第1閾値以下の範囲にある場合には、チューニングゲインK1、K4を比較的大きい一定値(例えば、1)に設定する。また、第1チューニングゲイン乗算部30は、車体速度Vが第1閾値より大きい第2閾値以上の範囲にある場合には、チューニングゲインK1、K4を比較的小さい一定値a(例えば、1以下の正値)に設定する。さらに、第1チューニングゲイン乗算部30は、車体速度Vが第1閾値より大きくかつ第2閾値未満の範囲にある場合には、車体速度Vが大きくなるにつれてチューニングゲインK1、K4が直線的に増大するように設定する。これにより、低速域では、修正制御指令値K1・A、K4・Dの絶対値を増大でき、輪荷重の変動を抑制できる。また、高速域では、修正制御指令値K1・A、K4・Dの絶対値を低減でき、輪荷重の変動の抑制効果を低減でき、操舵応答性を低下させてしまうことを防止できる。
【0100】
第2チューニングゲイン乗算部31は、第2レギュレータ28が出力した制御指令値BにチューニングゲインK2を乗算する(図20のステップS303)。また、第2チューニングゲイン乗算部31は、第2レギュレータ28が出力した制御指令値EにチューニングゲインK5を乗算する(図20のステップS303)。そして、第2チューニングゲイン乗算部31は、乗算結果を修正制御指令値K2・B、K5・Eとしてモータトルク変換部33に出力する。ここで、ECM52は、ドライバ要求トルクに制御指令値B、Eを加算することで、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、上下力Fzf、Fzrに起因する成分であるピッチ角速度dSp2およびバウンス量Zv2の変動を抑制することができる。しかしながら、単に駆動トルクの制御指令値B、Eを加算する方法では、前後Gが変動して運転者に違和感を与える可能性がある。それゆえ、チューニングゲインK2、K5は、正値でかつ前後Gの変動によって運転者に違和感を与えない範囲の値に設定する。これにより、第2チューニングゲイン乗算部31は、前後Gの変動によって運転者に違和感を与えることを防止しつつ、上下力Fcf、Fcrに起因する成分の変動を抑制させる方向、つまり、輪荷重の変動を抑制させる方向にドライバ要求トルクの補正値を調整する。
このように、本実施形態では、上下力Fzf、Fzrに起因する成分であるピッチ角速度dSp2およびバウンス量Zv2の変動を抑制する方向にドライバ要求トルクの補正値を調整する。それゆえ、輪荷重の変動を抑制でき、乗り心地を向上することができる。
【0101】
また、第2チューニングゲイン乗算部31は、車体速度Vに応じてチューニングゲインK2、K5を可変とする(図20のステップS301)。具体的には、図22に示すように、第2チューニングゲイン乗算部31は、車体速度Vが第1閾値以下の範囲にある場合には、チューニングゲインK2、K5を比較的大きい一定値(例えば、1)に設定する。また、第2チューニングゲイン乗算部31は、車体速度Vが第1閾値より大きい第2閾値以上の範囲にある場合には、チューニングゲインK2、K5を比較的小さい一定値a(例えば、1以下の正値)に設定する。さらに、第2チューニングゲイン乗算部31は、車体速度Vが第1閾値より大きくかつ第2閾値未満の範囲にある場合には、車体速度Vが大きくなるにつれてチューニングゲインK2、K5が直線的に増大するように設定する。これにより、低速域では、修正制御指令値K2・B、K5・Eの絶対値を増大でき、輪荷重の変動を抑制できる。また、高速域では、修正制御指令値K2・B、K5・Eの絶対値を低減でき、輪荷重の変動の抑制効果を低減でき、操舵応答性が低下してしまうことを防止できる。
【0102】
第3チューニングゲイン乗算部32は、第3レギュレータ29が出力した制御指令値CにチューニングゲインK3を乗算する(図20のステップS304)。そして、第3チューニングゲイン乗算部32は、乗算結果を修正制御指令値K3・Cとしてモータトルク変換部33に出力する。ここで、制駆動モータECU12は、ドライバ要求トルクに制御指令値Cを加算することで、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分である前輪荷重の変動速度dWf3の変動を抑制することができる。しかしながら、単に駆動トルクの制御指令値Cを加算する方法では、前後Gが変動して運転者に違和感を与える可能性がある。また、操舵操作を開始したときに、前輪荷重の変動速度dWf3の変動を抑制することで、ノーズダイブ挙動を抑制し、前輪荷重Wfの増大を抑制し、前輪5FL、5FRのコーナリングパワーCpが低減する可能性がある。それゆえ、前輪5FL、5FRの横力が低減し、操舵応答性が低下する可能性がある。そのため、チューニングゲインK3は、負値で、かつ前後Gの変動によって運転者に違和感を与えない範囲の値に設定する。これにより、第3チューニングゲイン乗算部32は、前後Gの変動によって運転者に違和感を与えることを防止しつつ、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分の変動を助長する方向にドライバ要求トルクの補正値を調整する。
【0103】
このように、本実施形態では、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分である前輪荷重の変動速度dWf3の変動を助長する方向にドライバ要求トルクの補正値を調整する。それゆえ、操舵操作を開始したときに、駆動トルクを低減でき、ノーズダイブ挙動を助長でき、前輪荷重Wfを増大できる。これにより、前輪荷重Wfが増大することで、前輪5FL、5FRのコーナリングパワーCpを増大でき、前輪5FL、5FRの横力を増大でき、操舵応答性を向上できる。また、輪荷重の変動を抑制しつつ、操舵応答性を向上することで、ヨー角速度γのリニアリティ、つまり、入力に対する出力の直線性を向上できる。これにより、横Gの変化を緩やかにすることができ、ロール挙動を抑制できる。
【0104】
また、第3チューニングゲイン乗算部32は、車体速度Vに応じてチューニングゲインK3を可変とする(図20のステップS301)。具体的には、図22に示すように、第3チューニングゲイン乗算部32は、車体速度Vが第1閾値以下の範囲にある場合には、チューニングゲインK3の絶対値を比較的小さい一定値(例えば、0)に設定する。また、第3チューニングゲイン乗算部32は、車体速度Vが第1閾値より大きい第2閾値以上の範囲にある場合には、チューニングゲインK3の絶対値を比較的大きい一定値b(例えば、aより大きい正値)に設定する。さらに、第3チューニングゲイン乗算部32は、車体速度Vが第1閾値より大きくかつ第2閾値未満の範囲にある場合には、車体速度Vが大きくなるにつれてチューニングゲインK3の絶対値が直線的に低減するように設定する。これにより、低速域では、操舵量に対して車体のばね上挙動(例えばロール挙動)に乱れが発生し難く、操安性能を向上させる必要性が低いところ、チューニングゲインK3の絶対値を低減でき、操舵量に対するゲインを低減できる。また、高速域では、操舵量に対して車体のばね上挙動に乱れが発生し易いため、操安性能を向上させる必要性が高いところ、チューニングゲインK3の絶対値を増大でき、操舵量に対するゲインを増大でき、操舵応答性を向上できる。
【0105】
図23、図24は、チューニングゲインと車体速との関係を表すグラフである。
なお、本実施形態では、車体速度Vが第1閾値より大きくかつ第2閾値未満の範囲にある場合に、車体速度Vが大きくなるにつれてチューニングゲインK1〜K5を直線的に変化させる例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、図23に示すように、車体速度Vが第1閾値より大きくかつ第2閾値未満の範囲にある場合に、車体速度Vが大きくなるにつれてチューニングゲインK1〜K5を3次関数的に緩やかに変化させる構成を採用してもよい。このような構成によれば、修正制御指令値K1・A、K2・B、K3・C、K4・D、K5・Eを緩やかに変化させることができ、後輪5RL、5RRに付加する駆動トルクの変化を緩やかなものにすることができる。
【0106】
また、例えば、図24に示すように、車体速度Vが第1閾値以下の範囲にある場合に、チューニングゲインK1、K2、|K3|、K4、K5の全てを互いに等しい一定値(例えば、0.5)に設定する構成を採用してもよい。このような構成によれば、低速域において、輪荷重の変動を抑制しつつ、操舵応答性を向上することができる。
エンジントルク変換部56は、修正制御指令値K1・A、K4・D、修正制御指令値K2・B、K5・E、および修正制御指令値K3・Cの合計値にギア比を乗算する。これにより、合計値を駆動軸端値からエンジン端値に変換する。そして、エンジントルク変換部56は、乗算結果をドライバトルク補正値として加算器14に出力する(図20のステップS305)。
【0107】
以上、本実施形態では、図17のエンジン50、変速機51がトルク付加手段100を構成する。同様に、図17のECM52が挙動推定手段101、挙動推定ステップ、抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、助長トルク制御手段103、助長トルク制御ステップを構成する。
【0108】
(本実施形態の効果)
(1)本実施形態では、助長乗算算出手段は、車体速度が設定速度未満である場合には、車体速度が設定速度以上である場合に比べ、旋回抵抗に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクに乗算するチューニングゲインの絶対値を小さくする。
このような構成によれば、低速域では操舵角が増大するところ、旋回抵抗に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクに乗算するチューニングゲインの絶対値を小さくすることで、制御量の絶対値が過大となることを防止できる。また、高速域では操舵角が低減するところ、旋回抵抗に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクに乗算するチューニングゲインの絶対値を大きくすることで、制御量の絶対値が過小となることを防止できる。
【0109】
(2)抑制乗算値値算出手段は、車体速度が設定速度未満である場合には、車体速度が設定速度以上である場合に比べ、要求駆動トルクおよび路面外乱に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクのそれぞれに乗算するチューニングゲインの絶対値を大きくする。
このような構成によれば、低速域では要求駆動トルクおよび路面外乱に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクのそれぞれに乗算するチューニングゲインの絶対値が大きくなることで、輪荷重の変動、つまり、車体の振動を抑制でき、乗り心地を向上できる。また、高速域では要求駆動トルクおよび路面外乱に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクのそれぞれに乗算するチューニングゲインの絶対値が小さくなることで、輪荷重の変動を抑制する効果、つまり、ノーズダイブ挙動を抑制する効果を低減することができる。それゆえ、操舵操作を開始したときに、操舵応答性が低下することを防止できる。
【符号の説明】
【0110】
7はインバータ(トルク付加手段100)
8は制駆動モータ(トルク付加手段100)
9は変速機(トルク付加手段100)
12は制駆動モータECU(挙動推定手段101、挙動推定ステップ、抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、助長トルク制御手段103、助長トルク制御ステップ)
13はドライバ要求トルク演算部(挙動推定手段101、挙動推定ステップ)
14は加算器(抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、助長トルク制御手段102、助長トルク制御ステップ)
16は駆動力車体制振制御部(挙動推定手段101、挙動推定ステップ、抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、助長トルク制御手段103、助長トルク制御ステップ)
17は入力変換部(挙動推定手段101、挙動推定ステップ)
18は車体振動推定部(挙動推定手段101、挙動推定ステップ)
19はトルク指令値算出部(挙動推定手段101、挙動推定ステップ、抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、助長トルク制御手段103、助長トルク制御ステップ)
22は上下力変換部(挙動推定手段101、挙動推定ステップ)
25は旋回抵抗推定部(挙動推定手段101、挙動推定ステップ)
26は車両モデル(挙動推定手段101、挙動推定ステップ)
27は第1レギュレータ(抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、抑制トルク算出手段104)
28は第2レギュレータ(抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、抑制トルク算出手段104)
29は第3レギュレータ(助長トルク制御手段103、助長トルク制御ステップ、助長トルク算出手段106)
30は第1チューニングゲイン乗算部(抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、抑制乗算値算出手段105)
31は第2チューニングゲイン乗算部(抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、抑制乗算値算出手段105)
32は第3チューニングゲイン乗算部(助長トルク制御手段103、助長トルク制御ステップ、助長乗算値算出手段107)
33はモータトルク変換部(トルク付加手段100)
50はエンジン(トルク付加手段100)
51はMT変速機(トルク付加手段100)
52はECM(挙動推定手段101、挙動推定ステップ、抑制トルク制御手段102、抑制トルク制御ステップ、助長トルク制御手段103、助長トルク制御ステップ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪に駆動トルクを付加するトルク付加手段と、
運転者の要求駆動トルク、路面から車輪に加わる路面外乱、および操舵によって車輪に加わる旋回抵抗に基づいて、車体のばね上挙動を推定する挙動推定手段と、
前記挙動推定手段が推定した前記車体のばね上挙動を構成する成分のうち前記要求駆動トルクに起因する成分の変動および前記路面外乱に起因する成分の変動を抑制する方向に前記トルク付加手段が付加する駆動トルクを制御する抑制トルク制御手段と、
前記挙動推定手段が推定した前記車体のばね上挙動を構成する成分のうち前記旋回抵抗に起因する成分の変動を助長する方向に前記トルク付加手段が付加する駆動トルクを制御する助長トルク制御手段と、を備えたことを特徴とする車体振動制御装置。
【請求項2】
前記抑制トルク制御手段は、
前記要求駆動トルクに起因する成分の変動を抑制する駆動トルク、および前記路面外乱に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクを算出する抑制トルク算出手段と、
前記抑制トルク算出手段が算出した前記要求駆動トルクに起因する成分の変動を抑制する駆動トルク、および前記路面外乱に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクを抑制する駆動トルクのそれぞれに正値であるチューニングゲインを乗算する抑制乗算値算出手段と、を備え、
前記助長トルク制御手段は、
前記旋回抵抗に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクを算出する助長トルク算出手段と、
前記助長トルク算出手段が算出した前記旋回抵抗に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクに負値であるチューニングゲインを乗算する助長乗算値算出手段と、を備え、
前記トルク付加手段は、前記抑制乗算値算出手段が算出した乗算結果と前記助長乗算値算出手段が算出した乗算結果との合計値を算出し、算出した合計値に基づいて、前記トルク付加手段が付加する駆動トルクを制御し、
前記抑制乗算値算出手段は、前記要求駆動トルクに起因する成分の変動を抑制する駆動トルク、および前記路面外乱に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクのそれぞれに乗算するチューニングゲインを正値とし、
前記助長乗算値算出手段は、前記旋回抵抗に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクに乗算するチューニングゲインを負値とすることを特徴とする請求項1に記載の車体振動制御装置。
【請求項3】
前記助長乗算値算出手段は、車体速度が設定速度未満である場合には、車体速度が当該設定速度以上である場合に比べ、前記旋回抵抗に起因する成分の変動を助長する駆動トルクに乗算するチューニングゲインの絶対値を小さくすることを特徴とする請求項2に記載の車体振動制御装置。
【請求項4】
前記抑制乗算値算出手段は、車体速度が設定速度未満である場合には、車体速度が当該設定速度以上である場合に比べ、前記要求駆動トルクに起因する成分の変動を抑制する駆動トルク、および前記路面外乱に起因する成分の変動を抑制する駆動トルクのそれぞれに乗算するチューニングゲインの絶対値を大きくすることを特徴とする請求項2または3に記載の車体振動制御装置。
【請求項5】
前記挙動推定手段は、前記要求駆動トルク、前記路面外乱、および前記旋回抵抗に基づき、前記車体のばね上挙動として、車体のピッチ軸回りの回転運動、およびバウンス方向の上下運動を推定することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車体振動制御装置。
【請求項6】
前記挙動推定手段は、前記要求駆動トルクに起因する成分および前記路面外乱に起因する成分として、車体のピッチ角速度、ピッチ角、バウンス速度、およびバウンス量の少なくともいずれか、またはこれらの合成値を推定することを特徴とする請求項5に記載の車体振動制御装置。
【請求項7】
前記挙動推定手段は、前記旋回抵抗に起因する成分として、前輪荷重の変動速度、前輪荷重、ピッチ角速度、およびピッチ角の少なくともいずれか、またはこれらの合成値を推定することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車体振動制御装置。
【請求項8】
前記挙動推定手段は、前記旋回抵抗に起因する成分として、後輪荷重に関する物理量を推定し、
前記助長トルク制御手段は、前記挙動推定手段が推定した前記後輪荷重に関する物理量の変動を抑制する方向に前記トルク付加手段が付加する駆動トルクを制御することを特徴とする請求項7に記載の車体振動制御装置。
【請求項9】
前記挙動推定手段は、操舵角および車体速度に基づいて、前記旋回抵抗を推定することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の車体振動制御装置。
【請求項10】
前記挙動推定手段は、車輪速度に基づいて、前記路面外乱を推定することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の車体振動制御装置。
【請求項11】
前記挙動推定手段は、車輪速に基づいて、サスペンションのストローク速度およびストローク量を推定し、推定した前記ストローク速度とサスペンションの減衰係数を乗算し、推定した前記ストローク量とサスペンションのばね定数を乗算し、これらの乗算結果の合計値を前記路面外乱の推定値とすることを特徴とする請求項10に記載の車体振動制御装置。
【請求項12】
運転者の要求駆動トルク、路面から車輪に加わる路面外乱、および操舵によって車輪に加わる旋回抵抗に基づいて、車体のばね上挙動を推定する挙動推定ステップと、
前記挙動推定ステップが推定した前記車体のばね上挙動を構成する成分のうち前記要求駆動トルクに起因する成分の変動および前記路面外乱に起因する成分の変動を抑制する方向に車輪に付加する駆動トルクを制御する抑制トルク制御ステップと、
前記挙動推定ステップが推定した前記車体のばね上挙動を構成する成分のうち前記旋回抵抗に起因する成分の変動を助長する方向に車輪に付加する駆動トルクを制御する助長トルク制御ステップと、を実行することを特徴とする車体振動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−210020(P2012−210020A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72566(P2011−72566)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】