説明

車体振動制御装置及び車体振動制御方法

【課題】 動的制振器を有し、かつ車両搭載性に優れた、車体振動制御装置及び車体振動制御方法を提供する。
【解決手段】 懸架装置4によって車体2が台車1に支持される車両の台車1と車体2とを連結する動的制振器3と、減衰係数を高減衰係数及び低減衰係数の2段階に切換可能な静的制振器5と、前記車体の振動を検出する車体振動センサ10と、制御装置50と、を有し、制御装置50は、動的制振器3及び静的制振器5によって車体2の振動を抑制するとともに、車体振動センサ10の出力信号を取得し、該出力信号に基づいて車体2に作用する加振力において台車1から伝達される加振力及び車体2周囲の空気による加振力のいずれが支配的か判別し、該判別結果に基づいて静的制振器5の減衰係数を切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用の台車と車体とを有してなる鉄道車両の車体の振動を制御する車体振動制御装置及び車体振動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走行用の台車と車体とを有してなる鉄道車両の走行中に発生する車体振動を制御する車体振動制御装置(以下、車体振動制御装置という)としては、流体圧アクチュエータ、電磁アクチュエータ等の動的制振器を用いたフルアクティブ振動制御装置の研究が行われている。例えば、特許文献1では、鉄道車両の走行中に発生する異なる周波数の振動に対応し、乗り心地の向上を図ることができる鉄道車両の振動制御装置が提案されている。具体的には、地点検知により車両の走行地点のトンネル内外を区別し、その区別に応じて制御特性を切り換えて車体の振動を抑制する振動制御装置が提案されている。
【0003】
一方、動的制振器は、外部からの駆動エネルギーを要するため、機器が大型化しがちであり、かつ不具合時のバックアップ用の静的制振器を要するという難点がある。
【0004】
一方、半動的制振器を用いたセミアクティブ振動制御装置が実用化されている。ここで、「半動的制振器」とは、振動状態に合わせて静的制振器の減衰係数等の制振性能が動的に制御される制振器をいう。これらは、制振性能は動的制振器より劣るものの、外部からの駆動エネルギーを要さず、不具合時には静的制振器として作用するため、コスト、フェールセーフの面で有利である。
【0005】
そこで、上記のフルアクティブ振動制御装置の難点を考慮し、動的制振器と半動的制振器の両方を備えた振動制御装置も提案されている。例えば、特許文献2では、油圧アクチュエータからなる動的制振器を必要時にのみ動作させて、駆動エネルギーを節約することができる鉄道車両用動的制振器が提案されている。すなわち、半動的制振器及び動的制振器を備えるフルアクティブ振動制御装置であって、半動的制振器が該減衰力調整によっても所望の制振力を得られないときに、油圧シリンダへの流体給排により制振力を発生させて、動的制振器を動作させるハイブリッド制御のフルアクティブ振動制御装置が提案されている。また、特許文献3では、特許文献2のハイブリッド制御式振動制御装置は、油圧関連機器の複雑化と保守、点検の作業性の悪さ、いわゆる車両搭載性の悪さ、不十分な制振能力が問題である旨の指摘がされた上で、電磁アクチュエータを用いて、エネルギー消費量の多さ及び電磁ダンパ不調時のフェールセーフの観点も考慮して、半動的制振器と電磁アクチュエータとを組合せたハイブリッド式の車体振動制御装置が提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特許3107133号公報
【特許文献2】特開2001−10324号公報
【特許文献3】特開2003−252203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1乃至3の車体振動制御装置は、動的制振器の種類、及び動的制振器の起動あるいは制御方法に相違はあるものの、鉄道車両に加わるあらゆる振動を抑制することができる動的制振器を備える点で共通している。
【0007】
しかしながら、あらゆる振動を制御するには動的制振器の高出力化が求められる。こうした動的制振器の高出力化は、動的制振器の占有空間の増大に繋がる。また、動的制振器は不具合時には制振力を喪失するというリスクもあることから、不具合時のフェールセーフの観点から、信頼性の高い静的制振器もバックアップ用として備える必要がある。
【0008】
他方で、台車と車体との間、及び車体床下の限られた空間に搭載される車体振動制御装置は、その保守や点検の作業のし易さや重量を含めた車両搭載性の善し悪しが重要な問題となっている。
【0009】
したがって、車体振動制御装置への動的制振器の採用には、車両搭載性が改善すべき問題となっている。動的制振器と半動的制振器を併用する特許文献2乃至3の車体振動制御装置においても、これら装置に加えて半動的制振器のための振動制御装置を搭載する必要もあるため、車両搭載性の改善を図ることは極めて難しい。
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、動的制振器を有し、かつ車両搭載性に優れた、鉄道車両用の車体振動制御装置及び車体振動制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、発明者らは、鉄道車両のように走行用台車と車体とからなる車両の車体に加わる振動を合理的に抑制する方法についてまず検討し、以下の知見を得た。
【0012】
一般的に、フルアクティブ振動制御装置は、セミアクティブ振動制御装置よりも高い振動制御能力が要求される場合において適用されるため、動的制振器の開発は、より高い制振能力の向上を目指した開発が専らであった。例えば、特許文献1の段落[0012]乃至[0015]に示されるようにトンネル内外において車体振動の周波数等が相違することは既に知られている。そして、特許文献1の図3に模式的に示されるように、一見して、トンネル内における車体の振動加速度は大きくなり、かつその変化は激しく、車体の振動加速度の周波数は大きくなるので、応答性に優れる動的制振器が作動するように車体振動制御装置等が構成されている。ところが、車体の振動加速度の最大値も大きくなるので、動的制振器の出力規模は大きくせざるを得ない。
【0013】
ところで、トンネルの内外で振動の様相が異なるのは、車体の主要な振動源として、台車から伝達される加振力(以下、台車力という)と、車体に直接作用する車体周囲の空気による加振力(以下、空気力という)の2種類が存在し、トンネル外では前者が、トンネル内では後者が支配的なる傾向があるためである。しかし、台車力の大きさは、例えば走行速度、降雨の有無、バラスト軌道あるいはスラブ軌道といった軌道構造の変化によって変動する。また、空気力の大きさは、例えば、走行速度、単線トンネル区間の内外、複線トンネル区間の内外、対向列車とのすれ違いの有無の変化によって変動する。すなわち、支配的となる振動源の変化は、必ずしもトンネル内外の変化に限られるものではない。
【0014】
したがって、発明者らは、車体振動制御装置は、車両の走行位置のトンネル内外の区別をするのではなく、台車力及び空気力の振動特性に基づいて車体振動の振動源を判別し、支配的となる振動源に対して好適な制振器を用いるように振動制御装置を構成かつ制御することによって、合理的に車体振動を制御することができるものと考えた。
【0015】
また、発明者らは、台車力による振動の制御には、動的制振器は静的制振器よりも優れた性能を発揮するが、一方、空気力による振動の制御には、理論上、動的制振器、油圧ダンパ等の静的制振器のいずれでも同等の性能を発揮することが可能であること、またこのことは、空気力による振動を静的制振器で対処させることによって、動的制振器の出力規模を抑制する点でも合理的であることに想到し、本発明を創作した。
【0016】
すなわち、上記課題を解決するために、本発明の車体振動制御装置は、懸架装置によって車体が台車に支持される車両の該台車と該車体とを連結する動的制振器と、前記台車と前記車体とを前記動的制振器と並列に連結する、減衰係数を高減衰係数及び低減衰係数の2段階に切換可能な静的制振器と、前記車体の振動を検出する車体振動センサと、制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記動的制振器及び前記静的制振器によって前記車体の振動を抑制するとともに、前記車体振動センサの出力信号を取得し、該出力信号に基づいて前記車体に作用する加振力において前記台車から伝達される加振力及び前記車体周囲の空気による加振力のいずれが支配的か判別し、該判別結果に基づいて前記静的制振器の減衰係数を切り換える(請求項1)。また、本発明の車体振動制御方法は、懸架装置によって車体が台車に支持される車両の該台車と該車体とを連結する動的制振器と、前記台車と前記車体とを前記動的制振器と並列に連結する、減衰係数を高減衰係数及び低減衰係数の2段階に切換可能な静的制振器と、前記車体の振動を検出する車体振動センサと、を有し、前記動的制振器及び前記静的制振器によって前記車体の振動を抑制する第1のステップと、前記車体振動センサの出力信号を取得する第2のステップと、該出力信号に基づいて前記車体に作用する加振力において前記台車から伝達される加振力及び前記車体周囲の空気による加振力のいずれが支配的か判別する第3のステップと、該判別結果に基づいて前記静的制振器の減衰係数を切り換える第4のステップと、を有する(請求項8)。かかる構成とすると、車体に加わる加振力の振動源を判別し、支配的となる振動源に対して好適な制振器を用いることができるので、動的制振器の出力規模を抑制することができる。すなわち、動的制振器を有し、かつ車両搭載性に優れた、鉄道車両用の車体振動制御装置及び車体振動制御方法を提供することができる。ここで、「静的制振器」とは、急激な振動を油圧、空気圧等の流体圧力によって減衰する器具を言い、例えば油圧ダンパである。「動的制振器」とは、振動を相殺するように自ら逆位相に加振して該振動を低減することができる器具を言い、例えば流体圧アクチュエータあるいは電磁アクチュエータである。さらに、「高減衰係数及び低減衰係数の2段階」とは、大小2種類の減衰係数をいう。
【0017】
本発明の効果をより確実に得る観点から、本発明の車体振動制御装置において、前記車体周囲の空気による加振力が支配的な状態が継続していると判別すると、前記高減衰係数に切り換え、前記前記台車から伝達される加振力が支配的な状態が継続していると判別すると、前記低減衰係数に切り換えるとよい(請求項2)
本発明の効果をより確実に得る観点から、本発明の車体振動制御装置において、前記車体振動センサは前記車体に装着された第1の加速度センサであり、前記制御装置は、前記第1の加速度センサの出力信号に基づいて車体振動加速度あるいは車体振動速度を取得し、前記車体振動加速度あるいは車体振動速度の振幅の大きさに基づいて前記静的制振器の減衰係数を切り換えるとよい(請求項3)。
【0018】
本発明の効果をより確実に得る観点から、本発明の車体振動制御装置において、前記車体振動センサは前記車体に装着された第1の加速度センサであり、前記制御装置は、前記第1の加速度センサの出力信号に基づいて車体振動加速度あるいは車体振動速度を取得し、前記車体振動加速度あるいは車体振動速度のピーク周波数の大きさに基づいて前記静的制振器の減衰係数を切り換えるとよい(請求項4)。
【0019】
本発明の効果をより確実に得る観点から、本発明の車体振動制御装置において、前記車体振動センサは、前記車体に装着された第1の加速度センサ及び前記台車に装着された第2の加速度センサ、あるいは前記第1の加速度センサ及び前記車体と台車との変位を検出する変位センサであり、前記制御装置は、前記第1の加速度センサの出力信号に基づいて車体振動加速度あるいは車体振動速度を取得し、前記第2の加速度センサの出力信号あるいは前記第1の加速度センサと前記変位センサとの出力信号に基づいて台車振動加速度あるいは台車振動速度を取得し、前記台車振動加速度の振幅と前記車体振動加速度の振幅との比較、あるいは前記台車振動速度の振幅と前記車体振動速度の振幅との比較に基づいて前記静的制振器の減衰係数を切り換えるとよい(請求項5)。特に動的制振器には変位センサが内蔵されている場合がある。したがって、前記車体振動センサを前記車体に装着された第1の加速度センサ及び前記車体と台車との変位を検出する変位センサによって構成する場合においては、本発明の車体振動抑制装置は、動的制振器に内蔵されている変位センサの出力信号を利用することができるので、変位センサを新たに配設する必要がなく、本発明の車体振動制御装置の構造をより簡素化することができ、車両搭載性をより向上させることができる。
【0020】
本発明の効果をより確実に得る観点から、本発明の車体振動制御装置において、前記車体振動センサは、前記第1の加速度センサ及び前記台車に装着された第2の加速度センサ、あるいは前記第1の加速度センサ及び前記車体と台車との変位を検出する変位センサであり、前記制御装置は、前記第2の加速度センサの出力信号あるいは前記第1の加速度センサと前記変位センサとの出力信号に基づいて台車振動加速度あるいは台車振動速度を取得し、該台車振動加速度あるいは台車振動速度と伝達関数とに基づいて推定車体振動加速度あるいは推定車体振動速度を演算し、該推定車体振動加速度と前記車体振動加速度との比較、あるいは該推定車体振動速度と前記車体振動加速度との比較に基づいて前記静的制振器の減衰係数を切り換えるとよい(請求項6)。特に、動的制振器には、変位センサが内蔵されている場合がある。したがって、前記車体振動センサを、前記車体に装着された第1の加速度センサ及び前記車体と台車との変位を検出する変位センサによって構成する場合においては、本発明の車体振動抑制装置は、動的制振器に内蔵されている変位センサの出力信号を利用することができるので、変位センサを新たに配設する必要がなく、本発明の車体振動制御装置の構造をより簡素化することができ、車両搭載性をより向上させることができる。ここで、伝達関数は、台車振動加速度あるいは台車振動速度を入力とし、推定車体振動加速度あるいは推定車体振動速度を出力とする関数であって、台車の質量、車体の質量、懸架装置の弾性係数、減衰係数及び適切に設定されるゲインに基づいて取得される関数をいう。
【0021】
本発明の車体振動制御装置において、前記制御装置は、前記動的制振器、前記車体振動センサ、前記制御装置の少なくとも1つに不具合が生じた場合には、前記静的制振器の減衰係数を大きくするように切り換えるとよい(請求項7)。かかる構成とすると、車体振動制御装置はバックアップ用の静的制振器を省略することができるので、車体振動制御装置の車体搭載性がさらに改善される。なお、「前記動的制振器、前記車体振動センサ、前記制御装置の少なくとも1つに不具合が生じた場合」とは、これら装置類の故障のような単体事象のみならず、電源喪失、送信ケーブルの損壊のような共通事象も含む。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明の車体振動制御装置及び車体振動制御方法は、動的制振器を有し、かつ車両搭載性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の車体振動制御装置が搭載されている鉄道車両の概略構成を示す模式図である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態の車体振動制御装置100が搭載されている鉄道車両は、乗客及び乗員が搭乗する車体2が、空気バネ(懸架装置)4を介して台車1によって支持されている。台車1は軸バネ102を介して車輪101によって支持されている。
【0026】
また、鉄道車両の進行方向を正面方向とした場合に、空気バネ4は、台車1と車体2との間における両脇に、その上端及び下端が夫々車体2及び台車1に取り付けられている。これによって、空気バネ4は、台車1と車体2との間に生じる垂直方向及び水平方向の振動を吸収することができる。
【0027】
台車1と車体2との夫々には、支持部材1a,2aが設けられている。支持部材1aは台車1の上部に立設され、支持部材2aは車体2の下部に垂設されている。支持部材1a,2aは、進行方向に対して左右方向(以下、単に左右方向という)に所定間隔を有して対向するように配置されている。支持部材1a,2aの間には、アクチュエータ(動的制振器)3及び油圧ダンパ(静的制振器)5が、その作動方向を左右方向と一致させた状態で介装されている。
【0028】
このように構成された鉄道車両においては、車輪101から軸バネ102を介して台車1に加振力が作用し、この加振力による振動が空気バネ4、アクチュエータ3及び油圧ダンパ5を介して車体2に伝達される。また、車体2には、台車1以外からも、例えば風圧等によって、加振力が作用する。そして、振動制御装置100は、車両走行中にはアクチュエータ3及び油圧ダンパ5によって車体2の振動を抑制する。
【0029】
図2は、図1の車両について、車両進行方向において車両の前半分又は後ろ半分のみを考慮し、半車体及び台車のそれぞれ左右方向の自由度のみによって構成される振動モデルを示すブロック図である。
【0030】
図2に示すように、台車への加振力は、地上に固定された静止座標系に対する台車1の左右振動加速度(以下、台車振動加速度)abogieを台車重量に応じて生じさせ、台車振動加速度abogieの時間積分が台車振動速度vbogieとなり、台車振動速度vbogieの時間積分が台車振動変位xbogieとなる。
【0031】
他方で、車体への加振力は、空気バネ4、油圧ダンパ5及びアクチュエータ3からの制振力と相殺された残余が、地上に固定された静止座標系に対する車体2の左右振動加速度(以下、車体振動加速度)abodyを車体重量に応じて生じさせる。そして、車体振動加速度abodyの時間積分が車体振動速度vbodyとなり、車体振動速度vbodyの時間積分が車体振動変位xbodyとなる。ここで、アクチュエータ3は、制御装置50によってスカイフック理論に基づいて制御される。つまり、静止している側壁、及びその側壁と車体との間に設置されているダンパを仮想して、この仮想のダンパで発生するはずの力を発生するように制御装置50によってアクチュエータ3が制御される。つまり、スカイフック制御を適用すると、アクチュエータ3は車体振動速度vbodyに大きさが比例し、方向が反対となるよう制振力を発生させ、油圧ダンパ5は車体振動速度vbodyと台車振動速度vbogieとの差分に応じて制振力を発生させ、空気バネ4は車体振動変位xbodyと台車振動変位xbogieとの差分に応じて制振力を発生させる。このようにして、アクチュエータ3によって台車1と車体2との間に生じる左右方向の振動が抑制される。
【0032】
ここで、本発明の車体振動制御装置100における、アクチュエータ3と油圧ダンパ5との応答特性とそれに基づく動作制御の考え方を説明する。
【0033】
図2に示すように、車体2の振動源、すなわち、車体2に作用する加振力として、台車1から伝達される加振力(以下、台車力という)と、車体2に直接作用する車体2周囲の空気による加振力(以下、空気力という)とを想定することができる。そして、車体振動加速度abodyは、線形理論では、この2つの振動源によってもたらされる加速度の重ね合わせとして算出することができる。
【0034】
すなわち、台車力に比べ空気力が軽微であって空気力が無視されうる程度となる場合においては、車体振動の振動源として台車力のみが考慮されるので、アクチュエータ3は常に車体振動速度vbodyに大きさが比例し、方向が反対となる制振力を発生させて、車体振動加速度abodyを抑制することができる。一方、油圧ダンパ5は、常に車体振動速度vbodyと台車振動速度vbogieとの差分に大きさが比例し、方向が反対となる制振力を発生させる。したがって、油圧ダンパ5の制振力の方向はアクチュエータ3の制振力と反対の方向となる場合もあり、車体振動を抑制するどころか却って車体を加振する場合も生じうる。
【0035】
また、台車力に比べ空気力が大きく台車力が無視されうる程度となる場合においては、車体振動の振動源として空気力のみが考慮されるので、アクチュエータ3は常に車体振動速度vbodyに大きさが比例し、方向が反対となる制振力を発生させるので、車体振動加速度abodyを抑制することができる。一方、油圧ダンパ5においても、台車力が無視されるので台車振動速度vbogieも無視され、車体振動速度vbodyに大きさが比例し、方向が反対となる制振力を発生させる。したがって、油圧ダンパ5の制振力の方向はアクチュエータ3の制振力と一致し、車体振動を抑制することができる。
【0036】
そこで、車体振動の支配的な振動源が台車力あるいは空気力かを判別し、前者が支配的であれば車体2を加振させる虞のある油圧ダンパ5の減衰力を小さく設定して、主としてアクチュエータ3の制振力で車体2の振動を抑制することができる。そして、後者が支配的であれば車体振動の抑制に貢献する油圧ダンパ5の減衰力を大きく設定して、油圧ダンパ5及びアクチュエータ3の制振力で車体2の振動を抑制することができる。つまり、車体2はアクチュエータ3と油圧ダンパ5との機動的な組合せによって、合理的に制振される。また、アクチュエータ3の出力規模は台車力に対応できる程度の出力規模で足り、従来のフルアクティブ振動制御装置に用いられるアクチュエータに比べコンパクトにすることができるので、車体振動制御装置100の構造を車両搭載性にも優れた構造とすることができる。
【0037】
次に、車体振動制御装置100の構成について説明する。図1に示すように、車体振動制御装置100は、アクチュエータ3,油圧ダンパ5、車体加速度センサ(第1の加速度センサ)10及び制御装置50を有して構成されている。
【0038】
車体加速度センサ10は、車体2に左右方向の振動加速度を検出することができるように配設されている。また、制御装置50は車体2に配設されている。
【0039】
制御装置50は、判別部50a及び制御部50bを有し、判別部50aの演算結果が制御部50bに伝達され、制御部50bがアクチュエータ3及び油圧ダンパ50の減衰係数切換手段(図示せず)の動作を制御するように構成されている。制御装置50は、マイコン等の演算器によって構成される。そして、制御装置50に格納された所定のソフトウェア(プログラム)によって判別部50a及び制御部50bが実現される。ここで、制御装置とは、単独の制御装置だけでなく、複数の制御装置が協働して制御を実行する制御装置群をも含んで意味する。よって、制御装置50は、単独の制御装置から構成される必要はなく、複数の制御装置が分散配置されていて、それらが協働して車体振動制御装置100の動作を制御するように構成されていてもよい。あるいは鉄道車両のように複数の車両が連結して構成される場合には、複数の車両の車体振動制御装置100の制御装置50がまとめられて構成されていてもよい。
【0040】
そして、制御装置50と車体加速度センサ10、アクチュエータ3及び油圧ダンパ5とは信号ケーブルを介して接続されている。さらに詳しくは、車体加速度センサ10の出力信号は判別部50aに送られ、判別部50aの演算結果を取得した制御部50bは該演算結果に応じてアクチュエータ3及び油圧ダンパ5に制御信号を送るように構成されている。
【0041】
また、油圧ダンパ5は、減衰係数cを低減衰係数c1及び高減衰係数c2に切り換えることができる。低減衰係数c1は高減衰係数c2よりも小さい減衰係数である。例えば、内部に充填された粘性流体の通路をなすオリフィスの開口径が調整可能に構成され、この開口径が調整されることによって、低減衰係数c1及び高減衰係数c2の切り換えが実現されうる。
【0042】
ここで、低減衰係数c1は、アクチュエータ3の発生力が極めて弱い場合であっても車体2に不安定振動を生ぜしめない程度に可及的に小さく設定することが望ましい。また、高減衰係数c2は、フルアクティブ振動制御装置を有しない車両に備えられる車体及び台車間の左右動用の制振器の減衰係数と同等程度に設定することが望ましい。
【0043】
図3は、図1の判別部の構成を示すブロック図である。図3に示すように、判別部50aは、車体加速度センサ10から入力される信号からノイズを除去等するフィルタ11と、フィルタ11を通過して送られる信号に基づいて車体2の振動加速度と所定の閾値とを比較し、かつその判別結果を演算結果として出力する比較部13と、を備えている。
【0044】
フィルタ11は、必要な周波数帯の範囲の車体振動加速度abodyのみを取得するように構成されている。例えばバンドパスフィルタによって0.5乃至10Hzの周波数帯域の信号のみを通過させるようにしてもよい。
【0045】
比較部13は、支配的加振力の判別を行う。ここでは、c=c1の設定であれば、フィルタ11から出力される車体振動加速度abodyの振幅、すなわち、絶対値|abody|を、車体振動加速度の第1振幅閾値p1と比較して、|abody|>p1の場合には、「空気力が支配的」という判別をし、そうでなければ、「台車力が支配的」と判別する。また、c=c2の設定であれば、絶対値|abody|を、車体振動加速度の第2振幅閾値p2と比較して、|abody|<p2の場合には、「台車力が支配的」という判別をし、そうでなければ、「空気力が支配的」と判別する。そして、この支配的加振力の判別結果を演算結果として出力する。
【0046】
ここで、第1振幅閾値p1の設定方法について説明する。車両は、トンネル内の走行時には特許文献1に示されるように空気力を強く受ける。したがって、台車力による車体振動と空気力による車体振動との区別は、トンネル内走行時の車体振動加速度abodyとトンネル外走行時の車体振動加速度abodyを対比することによって検出することができる。そこで、第1振幅閾値p1は、c=c1の設定での車両の走行試験においてトンネル外からトンネル内への走行時における車体振動加速度abodyの変化を計測し、その計測値から、トンネル内外での減衰係数cの切換判断が適切に行うことができる振幅値を選定することができる。同様にして、第2振幅閾値p2は、c=c2の設定での車両の走行試験においてトンネル内からトンネル外の走行時における車体振動加速度abodyの変化を計測し、その計測値から、トンネル内外での減衰係数cの切換判断が適切に行うことができる振幅値を取得することができる。そして、予め選定された振幅値が第1振幅閾値p1及び第2振幅値p2として判別部50bの比較部13に切換可能に設定される。
【0047】
また、車体振動加速度abodyは、車体加速度センサ10から出力信号として発信されてもよく、車体加速度センサ10からの出力信号が判別部50aにおいて車体振動加速度abodyに換算されるように構成されてもよい。
【0048】
次に、本発明の特徴である油圧ダンパ5の減衰係数cの切換動作例について説明する。
【0049】
図4は、図1の減衰係数cの切換動作例を示すフローチャートである。
【0050】
これらの切換動作は制御装置50によって油圧ダンパ5の減衰係数が切り換えられることによって遂行される。
【0051】
まず、ステップS1において、制御部50bは、車体振動制御装置100起動の指令信号を取得する。この指令信号は、一般的には、車両の運行用システムの起動信号、運転席の運転制御起動スイッチのON操作、によって発信される(第1のステップ)。
【0052】
そして、ステップS2において、制御部50bは、油圧ダンパ5の減衰係数cを低減衰係数c1に設定する。また、判別部50aの比較部13の振幅閾値pを第1振幅閾値p1に設定する。
【0053】
そして、ステップS3において、判別部50aは、車体振動加速度abodyを取得し(第2のステップ)、支配的加振力の判別を行い、制御部50bは判別部50aから出力された支配的加振力の判別結果を取得する。
【0054】
ステップS4において、制御部50bは、「空気力が支配的」という状態が所定時間以上継続しているか否かを判断する(第3のステップ)。ここで、ステップS4における所定時間、すなわち、低減衰係数時の判断時間は、一般的に3乃至6波程度の振動波を計測する時間であることが望ましい。例えば、一般的に車体振動が2乃至3Hz程度である場合には、1乃至3秒程度であることが望ましい。これによって、切り換え判断を迅速かつより的確にすることができる。
【0055】
そして、「空気力が支配的」という状態の継続時間が所定時間未満であれば、ステップS5において、制御部50bは停止指令の有無を確認する。停止指令がなければ、ステップS3に戻って、ステップS3乃至S5が繰り返される。これによって、トンネル外での走行時のように車体2に作用する加振力において台車力が支配的な状況においては、油圧ダンパ5の制振力は小さく、車体2は主としてアクチュエータ3によって制振される。つまり、アクチュエータ3の制振動作を油圧ダンパ5の制振力が妨げる事態を防止することができる。
【0056】
なお、停止指令は、ステップS1と同様に、一般的には、車両の運行用システムの停止信号、運転席の運転制御起動スイッチのOFF操作、によって発信される。
【0057】
一方、「空気力が支配的」という状態が所定時間以上継続すれば、ステップS7に進み、制御部50bは、油圧ダンパ5の減衰係数cを高減衰係数c2に切り換える(第4のステップ)。すなわち、減衰係数が大きくなるように切り換える。これによって、油圧ダンパ5の制振力が増強されるので、車体2はアクチュエータ3及び油圧ダンパ5によって制振される。ここで、アクチュエータ3は車体振動速度vbodyに対応して車体2の制振を図る。また、空気力が支配的である状況では、前述の通り油圧ダンパ5はアクチュエータ3と同等の制振効果を奏するので、アクチュエータ3を支援するように動作する。つまり、車体2の振動が良く制振される。また、ステップS7において判別部50aの比較部13は、閾値pを第2振幅閾値p2に切り換える。 そして、ステップS8において、ステップS3と同様にして、判別部50aは、車体振動加速度abodyを取得し(第2のステップ)、支配的加振力の判別を行い、制御部50bは判別部50aから出力された支配的加振力の判別結果を取得する。
【0058】
ステップS9において、制御部50bは、「台車力が支配的」という状態が所定時間以上継続しているか否かを判断する(第3のステップ)。ここで、ステップS9における所定時間、すなわち、高減衰係数時の判断時間は、一般的に低減衰係数時の判断時間より数秒程度長い時間であることが望ましい。例えば、一般的に車体振動が2乃至3Hz程度である場合には、2乃至5秒程度であることが望ましい。高減衰係数時の車体2における振動は振幅が小さいので、切り替えの時期が多少遅れても、乗客が不快、あるいは貨物が損傷するおそれが少ない。つまり、高減衰係数時の判断時間を長くすることによって、頻繁な切り換え動作による機器の損耗を防止することができる。
【0059】
そして、「台車力が支配的」という状態の継続時間が所定時間未満であれば、ステップS5と同様に、ステップS10において制御部50bは停止指令の有無を確認する。停止指令がなければ、ステップS8に戻って、ステップS8乃至ステップS10が繰り返される。
【0060】
一方、「台車力が支配的」という状態の継続時間が所定時間以上であれば、ステップS2に戻って、制御部50bは、油圧ダンパ5の減衰係数cを低減衰係数c1に切り換える(第4のステップ)。すなわち、減衰係数が小さくなるように切り換える。これによって、トンネルから抜け出た場合のように車体2の振動が再び台車力に強く支配される状況においては、車体2は再びアクチュエータ3によって制振される。つまり、アクチュエータ3の制振動作を油圧ダンパ5の制振力が妨げる事態を防止することができる。また、ステップS2において判別部50aの比較部13は、振幅閾値pを第1振幅閾値p1に切り換える。そして、ステップS3以降のステップが上述のように繰り返される。 なお、ステップS5あるいはステップS10において停止指令が確認されれば、それぞれステップS6あるいはステップS11に進み、油圧ダンパ5の減衰係数cの切換動作は終了する。
【0061】
このような切換動作によって、油圧ダンパ5の減衰係数cは車体振動加速度の絶対値|abody|の大きさによって切り換えられる。すなわち、トンネル内や対向車両とのすれ違い時の走行のように、台車力に比べて強い空気力が継続的に加わる状況において、油圧ダンパ5の制振力が増強され、かかる状況が解消されれば、再び、油圧ダンパ5の制振力は弱められるので、車体2はアクチュエータ3及び油圧ダンパ5の機動的な組合せによって制振される。また、アクチュエータ3の出力規模は台車からの加振力に対応できる程度の出力規模で足りる。したがって、本発明の車体振動制御装置及び車体振動制御方法は、アクチュエータ3を有し、かつアクチュエータ3の出力規模は、従来のフルアクティブ振動制御装置に用いられるアクチュエータに比べ小さくすることができるので車両搭載性に優れている。
【0062】
また、油圧ダンパ5の低減衰係数c1及び高減衰係数c2の切り換え構造は、パッシブセーフティ、あるいはフェールセーフの思想に基づいて構成されると好適である。従来技術のフルアクティブ振動制御装置の多くは、フェールセーフの確保のみを目的として、減衰係数を2段階に切換可能な静的制振器が別途設けられている。この静的制振器は、車両の通常運行時には減衰係数が低減衰係数に維持されるが、制御装置、アクチュエータ等の装置類の故障のような単体事象のみならず、電源喪失、送信ケーブルの損壊のような共通事象において、強制的に減衰係数cが高減衰係数c2に設定されるように構成されている。本発明の車体振動抑制装置100においても、同様にして、これら異常事象が発生した場合には、油圧ダンパ5の減衰係数が高減衰係数c2に設定されるように構成されると良い。これによって、車体振動制御装置100はアクチュエータ3のバックアップ用の静的制振器の設置を省略することができるので、車体振動制御装置100の車体搭載性はさらに改善される。
【0063】
以上、本発明の車体振動抑制装置100においては、車体2に加わる加振力の振動源が判別され、支配的となる振動源に対して好適な制振器を用いることができるのでことができるので、アクチュエータ(動的制振器)3の出力規模を抑制することができる。すなわち、アクチュエータ(動的制振器)3を有し、かつ車両搭載性に優れた、鉄道車両用の車体振動制御装置及び車体振動制御方法を提供することができる。
【0064】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態の車体振動制御装置が搭載されている鉄道車両の概略構成を示す模式図である。
【0065】
図5に示すように、本実施形態の車体振動制御装置110が搭載されている鉄道車両は、図1と同様である。また、第2実施形態の車体振動制御装置110は、第1実施形態の車体振動制御装置100と比較して、台車1に台車加速度センサ(第2の加速度センサ)20が配設されていて、車体加速度センサ10と同じ方向の振動加速度、つまり台車1の左右方向の振動加速度を検出することができるように配設されている。台車加速度センサ20と制御装置50とは信号ケーブルを介して接続されている。したがって、これ以外は、振動制御装置100と同様なので、振動制御装置110の構成の説明は省略し、相違点のみを説明する。また、図5において図1と同一又は相当する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0066】
図6は図5の判別部の構成を示すブロック図である。図6において図3と同一又は相当する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0067】
図6に示すように、判別部50aは、フィルタ11,61及び比較部62を有している。判別部50aでは、車体加速度センサ10から入力される信号はフィルタ11を通過して車体振動加速度abodyとして比較部62に入力される。また、台車加速度センサ20から入力される信号はフィルタ61でノイズを除去等されて台車振動加速度abogieとして比較部62に入力される。比較部62は、車体振動加速度abodyの振幅と台車振動加速度abogieの振幅との比(以下、振幅比という)t、すなわち、振幅比t=車体振動加速度abody/台車振動加速度abogieを演算する。そして、c=c1の設定であれば、この振幅比tを第1振幅比閾値q1と比較して、振幅比tが第1振幅比閾値q1を越える(t>q1)場合には、「空気力が支配的」という判別をし、そうでなければ、「台車力が支配的」と判別する。また、c=c2の設定であれば、この振幅比tを第2振幅比閾値q2と比較して、振幅比tが第2振幅比閾値q2を下回る(t<q2)場合には、「台車力が支配的」という判別をし、そうでなければ、「空気力が支配的」と判別する。そして、これらの支配的加振力の判別結果を制御部50bに出力する。
【0068】
ここで、第1振幅比閾値q1及び第2振幅比閾値q2は第1振幅閾値p1及び第2振幅閾値p2と同様に選定することができる。つまり、c=c1及びc=c2それぞれの設定でのトンネル内外での車両の走行試験において振幅比tを計測し、トンネル内外での計測値の変化から、減衰係数cの切換判断が適切に行うことができる振幅比閾値q1,q2を選定することができる。そして、第1振幅比閾値q1及び第2振幅比閾値q2は判別部50bの比較部13に切換可能に設定される。
【0069】
ここで、台車振動加速度abogieは、前述の車体振動加速度abody同様に台車加速度センサ20から出力信号として発信されてもよく、台車加速度センサ20からの出力信号が判別部50aにおいて台車振動加速度abogieに換算されるように構成されてもよい。
【0070】
次に、本発明の特徴である油圧ダンパ5の減衰係数cの切換動作例について説明する。
【0071】
図7は、図5の減衰係数cの切換動作例を示すフローチャートである。
【0072】
これらの切換動作は制御装置50によって油圧ダンパ5の減衰係数の切換動作が制御されることによって遂行される。
【0073】
まず、ステップS201は、図4のステップS1と同じである(第1のステップ)。
【0074】
そして、ステップS202において、制御部50bは、油圧ダンパ5の減衰係数cを低減衰係数c1に設定する。また、判別部50aの比較部13は、振幅比閾値qを第1閾値q1に設定する。
【0075】
ステップS203において、判別部50aは、車体加速度センサ10及び台車加速度センサ20からそれぞれ車体振動加速度abody及び台車振動加速度abogieを取得し(第2のステップ)、支配的加振力の判別を行い、制御部50bは判別部50aから出力された支配的加振力の判別結果を取得する。
【0076】
そして、ステップS204において、制御部50bは、「空気力が支配的」という状態が所定時間以上継続しているか否かを判断する(第3のステップ)。
【0077】
ここで、「空気力が支配的」という状態の継続時間が所定時間未満であれば、ステップS205において制御部50bは停止指令の有無を確認する。停止指令がなければ、ステップS203に戻って、ステップS203乃至S205が繰り返される。
【0078】
あるいは、「空気力が支配的」という状態の継続時間が所定時間以上であれば、ステップS207に進み、制御部50bは、油圧ダンパ5の減衰係数cを高減衰係数c2に切り換える(第4のステップ)。また、判別部50aの比較部13は、振幅比閾値qを第2振幅比閾値q2に設定する。
【0079】
そして、ステップS208において、ステップS203と同様にして、判別部50aは、車体加速度センサ10及び台車加速度センサ20からそれぞれ車体振動加速度abody及び台車振動加速度abogieを取得し(第2のステップ)、支配的加振力の判別を行い、制御部50bは判別部50aから出力された支配的加振力の判別結果を取得する。
【0080】
そして、ステップS209において、制御部50bは「台車力が支配的」という状態が所定時間以上継続しているか否かを判断する(第3のステップ)。
【0081】
ここで、「台車力が支配的」という状態の継続時間が所定時間未満であれば、ステップS205と同様に、ステップS210において制御部50bは停止指令の有無を確認する。停止指令がなければ、ステップS208に戻って、ステップS208乃至ステップS210が繰り返される。
【0082】
あるいは、「台車力が支配的」という状態の継続時間が所定時間以上であれば、ステップS202に戻って、制御部50bは、油圧ダンパ5の減衰係数cを低減衰係数c1に切り換える(第4のステップ)。また、判別部50aの比較部13は、振幅比閾値qを第1振幅比閾値q1に切り換える。そして、ステップS203以降のステップが上述のように繰り返される。
【0083】
なお、ステップS205あるいはステップS210において停止指令が確認されれば、それぞれステップS206あるいはステップS211に進み、油圧ダンパ5の減衰係数cの切換動作は終了する。
【0084】
このような切換動作によって、油圧ダンパ5の減衰係数cは車体振動加速度abodyと台車振動加速度abogieとの振幅比tの大きさによって切り換えられる。すなわち、本発明の車体振動抑制装置110においては、台車1の振動と車体2の振動との比較に基づいて、車体2に作用する加振力において台車力及び空気力のいずれが支配的かが判別され、該判別結果に基づいて油圧ダンパ5の減衰係数が切り換えられる。したがって、本発明の車体振動抑制装置110においては、車体2に加わる加振力の振動源が判別され、支配的となる振動源に対して好適な制振器を用いることができるのでことができるので、アクチュエータ(動的制振器)3の出力規模を抑制することができる。すなわち、アクチュエータ(動的制振器)3を有し、かつ車両搭載性に優れた、鉄道車両用の車体振動制御装置及び車体振動制御方法を提供することができる。
【0085】
[変形例1]
ここで、油圧ダンパ5の減衰係数cの切換動作例の変形例について説明する。
【0086】
図8は図6の判別部の変形例を示すブロック図である。
【0087】
図8に示すように、判別部50aは、フィルタ11,61、車体振動加速度推定部63、及び比較部64を有している。判別部50aでは、車体加速度センサ10から出力される信号はフィルタ11を通過して車体振動加速度abodyとして比較部64に入力される。また、台車加速度センサ20から出力される信号はフィルタ61でノイズを除去等されて台車振動加速度abogieとして車体振動加速度推定部63に入力される。車体振動加速度推定部63は、台車振動加速度から車体振動加速度を算出する伝達関数に台車振動加速度abogieを代入して、推定車体振動加速度aestimateを演算する。この推定車体振動加速度aestimateは空気力が無視できうる程小さい場合における車体振動加速度を推定する推定値となる。この推定車体振動加速度aestimateは、比較部64に入力される。比較部64は、車体振動加速度abodyと推定車体振動加速度aestimateとの比(以下、推定比という)u、すなわち、推定比u=車体振動加速度abody/推定車体振動加速度aestimateを演算する。そして、c=c1の設定であれば、この推定比uを第1推定比閾値r1と比較して、推定比uが第1推定比閾値r1を越える(u>r1)場合には、「空気力が支配的」という判別をし、そうでなければ、「台車力が支配的」と判別する。また、c=c2の設定であれば、この推定比uを第2推定比閾値r2と比較して、推定比uが第2推定比閾値r2を下回る(u<r2)場合には、「台車力が支配的」という判別をし、そうでなければ、「空気力が支配的」と判別する。そして、これらの支配的加振力の判別結果を制御部50bに出力する。
【0088】
ここで、前述の伝達関数は、台車の質量、車体の質量、懸架装置の弾性係数、減衰係数及び適切に設定されるゲインに基づいて取得することができる。具体的には、予め走行試験等における台車及び車体の振動計測等を利用して公知の知見に基づいて容易に求めることができる。あるいは、懸架装置、制振装置、車体及び台車の構造に基づく振動モデルを元にして求めることもできる。このような振動モデルの一例を図2に示す。さらに、車両の進行方向に左右方向のみならず、車両の前後方向、上下方向、ロール、ピッチ、ヨーの各自由度の考慮、あるいは、輪軸、軸バネ等のマス、バネ、ダンパ要素を追加した、より詳細なモデルから伝達関数を求めることもできる。
【0089】
また、第1推定比閾値r1及び第2推定比閾値r2は第1振幅閾値p1及び第2振幅閾値p2と同様に選定することができる。つまり、c=c1及びc=c2それぞれの設定でのトンネル内外での車両の走行試験において推定比uを計測し、トンネル内外での該計測値の変化状況から、減衰係数cの切換判断が適切に行うことができる推定比値閾値r1,r2を選定することができる。そして、第1推定比閾値r1及び第2推定比閾値r2は判別部50bの比較部13に切換可能に設定される。
【0090】
次に、本発明の特徴である油圧ダンパ5の減衰係数cの切換動作例について説明する。
【0091】
図9は、図7のフローチャートの変形例である。したがって、相違点のみを説明する。また、図9において図7と同一又は相当する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0092】
ステップS301は図4のステップS1と同じである(第1のステップ)。
【0093】
ステップS302において、制御部50bは、油圧ダンパ5の減衰係数cを低減衰係数c1に設定する。また、判別部50aの比較部13は、推定比閾値rを第1推定比閾値r1に設定する。
【0094】
ステップS303において、判別部50aは、車体加速度センサ10及び台車加速度センサ20からそれぞれ車体振動加速度abody及び台車振動加速度abogieを取得し(第2のステップ)、支配的加振力の判別を行い、制御部50bは判別部50aから出力された支配的加振力の判別結果を取得する。
【0095】
そして、ステップS304において、制御部50bは、「空気力が支配的」という状態が所定時間以上継続しているか否かを判断する(第3のステップ)。
【0096】
ここで、「空気力が支配的」という状態の継続時間が所定時間未満であれば、ステップS305において制御部50bは停止指令の有無を確認する。停止指令がなければ、ステップS303に戻って、ステップS303乃至S305が繰り返される。
【0097】
あるいは、「空気力が支配的」という状態の継続時間が所定時間以上であれば、ステップS307に進み、制御部50bは、油圧ダンパ5の減衰係数cを高減衰係数c2に切り換える(第4のステップ)。また、判別部50aの比較部13は、推定比閾値rを第2推定比閾値r2に切り換える。
【0098】
そして、ステップS308において、ステップS303と同様にして、判別部50aは、車体加速度センサ10及び台車加速度センサ20からそれぞれ車体振動加速度abody及び台車振動加速度abogieを取得し(第2のステップ)、支配的加振力の判別を行い、制御部50bは判別部50aから出力された支配的加振力の判別結果を取得する。
【0099】
そして、ステップS309において、制御部50bは「台車力が支配的」という状態が所定時間以上継続しているか否かを判断する(第3のステップ)。
【0100】
ここで、「台車力が支配的」という状態の継続時間が所定時間未満であれば、ステップS305と同様に、ステップS310において制御部50bは停止指令の有無を確認する。停止指令がなければ、ステップS308に戻って、ステップS308乃至ステップS310が繰り返される。
【0101】
あるいは、「台車力が支配的」という状態の継続時間が所定時間以上であれば、ステップS302に戻って、制御部50bは、油圧ダンパ5の減衰係数cを低減衰係数c1に切り換える(第4のステップ)。また、判別部50aの比較部13は、推定比閾値rを第1推定比閾値r1に切り換える。そして、ステップS303以降のステップが上述のように繰り返される。
【0102】
なお、ステップS305あるいはステップS310において停止指令が確認されれば、それぞれステップS306あるいはステップS311に進み、油圧ダンパ5の減衰係数cの切換動作は終了する。
【0103】
このような切換動作によって、油圧ダンパ5の減衰係数cは推定車体振動加速度aestimateと車体加速度abodyとの推定比uの大きさによって切り換えられる。すなわち、本発明の車体振動抑制装置110においては、空気力が小さい場合には、台車振動加速度abogieから推定される推定車体振動加速度aestimateと車体加速度abodyとは近似し、推定比uは1近傍の数値となる。ところが、台車力に加えて空気力が継続的に加わると車体振動速度abodyが継続的に大きくなり、推定車体振動加速度aestimateと乖離し、推定比uはより大きな数値へと変化する。
【0104】
したがって、推定比uに基づいて、車体2に作用する加振力において台車力及び空気力のいずれが支配的かが判別され、該判別結果に基づいて油圧ダンパ5の減衰係数が切り換えられる。したがって、本発明の車体振動抑制装置110においては、車体2に加わる加振力の振動源が判別され、支配的となる振動源に対して好適な制振器を用いることができるのでことができるので、アクチュエータ(動的制振器)3の出力規模を抑制することができる。すなわち、アクチュエータ(動的制振器)3を有し、かつ車両搭載性に優れた、鉄道車両用の車体振動制御装置及び車体振動制御方法を提供することができる。
【0105】
[変形例2]
ここで、車体振動制御装置110の構成の変形例について説明する。
【0106】
図10は、本変形例の車体振動制御装置が搭載されている鉄道車両の概略構成を示す模式図である。
【0107】
図10に示すように、本変形例の車体振動制御装置120は、第2実施形態の車体振動制御装置110と比較して、台車振動加速センサ20の代わりに変位センサ30がアクチュエータ3及び油圧ダンパ5と同様にして、その動作方向を左右方向と一致させた状態で支持部材1a,2aの間に介装されている。そして、制御装置50と変位センサ30とは信号ケーブルを介して接続されている。さらに詳しくは、変位センサ30の出力信号は判別部50aに送信されるように構成されている。
【0108】
図11は図10の判別部の変形例を示すブロック図である。
【0109】
図11に示すように、判別部50aは、フィルタ11,72、二次ハイパスフィルタ71、台車加速度算出部73及び比較部64を有している。
【0110】
台車加速度算出部73は、加速度センサ10から取得される車体振動加速度abodyと変位センサ30の出力信号とから台車振動加速度abogieを算出するように構成されている。したがって、本変形例の構成によっても、車体振動加速度abody及び台車振動加速度abogieを取得することができるので、上述の第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0111】
また、アクチュエータ3は、変位センサ30を内蔵している場合がある。したがって、本変形例では、アクチュエータ3に内蔵されている変位センサ30の出力信号を利用することができるので、変位センサ30を新たに配設する必要がなく、車体振動制御装置120の構造をより簡素化することができ、車両搭載性をより向上させることができる。
【0112】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、当業者によって実施形態の構成を適宜変更して本発明を実施することができる。
【0113】
例えば、制御装置50の判別部50aは、空気力の強弱に伴う車体振動加速度abodyの変化を検知できる構成としては以下のように変更することができる。
【0114】
第1実施形態及び第2実施形態においては、車体振動加速度abody及び台車振動加速度abogieの代わりに車体振動速度vbody及び台車振動速度vbogieによって、振動制御装置100を動作させるようにすることができる。例えば、図12は、図1の判別部の構成の変形例を示すブロック図である。図12に示すように、フィルタ11と比較部13との間の信号ケーブルに積分器12が装着されて構成することもできる。これによって、比較部13には車体振動速度vbodyが入力される。したがって、閾値cの切換を車体振動速度vbodyの閾値を用いることによって、本発明を実施することができる。
【0115】
また、第1実施形態においては、車体振動加速度の振幅|abody|の代わりに車体振動加速度のピーク周波数を比較部13が取得して、振動制御装置100を動作させるようにすることができる。すなわち、特許文献1の図3に示されるように、トンネル内走行時では、トンネル外走行時に比べて車体振動加速度abodyの周波数が大きくなるので、判別部50aは、車体振動加速度abodyの周波数を検知するように構成すればよい。具体的には、トンネル内外における車両走行試験において、車体振動加速度abodyのピーク周波数を計測し、適当な周波数閾値を選定し、比較部13に設定しておく。比較部13には、車体振動加速度abodyの周波数が送信されて、比較部13においては該周波数が所定の閾値と比較されて、その比較結果が演算結果として出力される。そして、制御装置50は車体振動加速度の振幅及び振幅閾値pの代わりに車体振動加速度のピーク周波数及び周波数閾値によって、油圧ダンパ5の減衰係数cの切換動作を行うように構成することによって、本発明を実施することができる。
【0116】
第2実施形態においては、車体振動加速度abodyと台車振動加速度abogieとの振幅差dを演算するように、制御装置50を構成することもできる。つまり、トンネル内外における車両走行試験において、振幅差の絶対値d=|車体振動加速度abody−台車振動加速度abogie|を計測し、適当な振幅差閾値を選定し、判別部50aに設定しておく。そして、制御装置50は振幅比t及び振幅比閾値qの代わりに振幅差絶対値d及び振幅差閾値によって、油圧ダンパ5の減衰係数cの切換動作を行うように構成することによって、本発明を実施することができる。
【0117】
あるいは、特許文献1のような地点検知によって、支配的な加振力を判別するようにすることもできる。具体的には、車両の走行線区の走行地点毎に高減衰係数c2及び低減衰係数c1のいずれかを示す減衰係数情報が判別部50a内に予め収容されている。そして、図1のようにアクチュエータ3と油圧ダンパ5と制御装置50とを有する車両において(第1のステップ)、判別部50aは走行中の車両の走行地点を示す地点情報を運行管理システム等から取得する(第2のステップ)。判別部50aにおいてその地点情報を減衰係数情報と照合して(第3のステップ)、制御部50bが、該減衰係数情報と一致するように減衰係数cを切り換える(第4のステップ)ように構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の車体振動制御装置及び車体振動制御方法は、動的制振器を有し、かつ車両搭載性に優れた、車体振動制御装置及び車体振動制御方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の第1実施形態の車体振動制御装置が搭載されている鉄道車両の概略構成を示す模式図である。
【図2】図1の車両について、車両進行方向において車両の前半分又は後ろ半分のみを考慮し、半車体及び台車のそれぞれ左右方向の自由度のみによって構成される振動モデルを示すブロック図である。
【図3】図1の判別部の構成を示すブロック図である。
【図4】図1の減衰係数cの切換動作例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態の車体振動制御装置が搭載されている鉄道車両の概略構成を示す模式図である。
【図6】図5の判別部の構成を示すブロック図である
【図7】図5の減衰係数cの切換動作例を示すフローチャートである。
【図8】図6の判別部の変形例を示すブロック図である。
【図9】図7のフローチャートの変形例である。
【図10】本変形例の車体振動制御装置が搭載されている鉄道車両の概略構成を示す模式図である。
【図11】図10の判別部の変形例を示すブロック図である。
【図12】図1の判別部の構成の変形例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0120】
1 台車
1a 支持部材
2 車体
2a 支持部材
3 アクチュエータ
4 空気バネ
5 油圧ダンパ
10 車体加速度センサ
11、61、72 フィルタ
12 積分器
13、62、64 比較部
20 台車加速度センサ
30 変位センサ
50 制御装置
50a 判別部
50b 制御部
63 車体振動加速度推定部
71 二次ハイパスフィルタ
73 台車加速度算出部
100、110,120 車体振動制御装置
101 車軸
102 軸バネ
body 車体振動加速度
bogie 台車振動加速度
estimate 推定車体振動加速度
c 減衰係数
c1 低減衰係数
c2 高減衰係数
S1乃至S11 ステップ
S201乃至S211 ステップ
S301乃至S311 ステップ
p 振幅閾値
p1 第1振幅閾値
p2 第2振幅閾値
q 振幅比閾値
q1 第1振幅比閾値
q2 第2振幅比閾値
r 推定比閾値
r1 第1推定比閾値
r2 第2推定比閾値
t 振幅比
u 推定比
body 車体振動速度
bogie 台車振動速度
body 車体振動変位
bogie 台車振動変位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸架装置によって車体が台車に支持される車両の該台車と該車体とを連結する動的制振器と、
前記台車と前記車体とを前記動的制振器と並列に連結する、減衰係数を高減衰係数及び低減衰係数の2段階に切換可能な静的制振器と、
前記車体の振動を検出する車体振動センサと、
制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記動的制振器及び前記静的制振器によって前記車体の振動を抑制するとともに、前記車体振動センサの出力信号を取得し、該出力信号に基づいて前記車体に作用する加振力において前記台車から伝達される加振力及び前記車体周囲の空気による加振力のいずれが支配的か判別し、該判別結果に基づいて前記静的制振器の減衰係数を切り換える、車体振動制御装置。
【請求項2】
前記車体周囲の空気による加振力が支配的な状態が継続していると判別すると、前記高減衰係数に切り換え、前記台車から伝達される加振力が支配的な状態が継続していると判別すると、前記低減衰係数に切り換える、請求項1に記載の車体振動制御装置。
【請求項3】
前記車体振動センサは前記車体に装着された第1の加速度センサであり、
前記制御装置は、前記第1の加速度センサの出力信号に基づいて車体振動加速度あるいは車体振動速度を取得し、前記車体振動加速度あるいは車体振動速度の振幅の大きさに基づいて前記静的制振器の減衰係数を切り換える、請求項1及び2に記載の車体振動制御装置。
【請求項4】
前記車体振動センサは前記車体に装着された第1の加速度センサであり、
前記制御装置は、前記第1の加速度センサの出力信号に基づいて車体振動加速度あるいは車体振動速度を取得し、前記車体振動加速度あるいは車体振動速度のピーク周波数の大きさに基づいて前記静的制振器の減衰係数を切り換える、請求項1及び2に記載の車体振動制御装置。
【請求項5】
前記車体振動センサは、前記車体に装着された第1の加速度センサ及び前記台車に装着された第2の加速度センサ、あるいは前記第1の加速度センサ及び前記車体と台車との変位を検出する変位センサであり、
前記制御装置は、前記第1の加速度センサの出力信号に基づいて車体振動加速度あるいは車体振動速度を取得し、前記第2の加速度センサの出力信号あるいは前記第1の加速度センサと前記変位センサとの出力信号に基づいて台車振動加速度あるいは台車振動速度を取得し、前記台車振動加速度の振幅と前記車体振動加速度の振幅との比較、あるいは前記台車振動速度の振幅と前記車体振動速度の振幅との比較に基づいて前記静的制振器の減衰係数を切り換える、請求項1及び2に記載の車体振動制御装置。
【請求項6】
前記車体振動センサは、前記第1の加速度センサ及び前記台車に装着された第2の加速度センサ、あるいは前記第1の加速度センサ及び前記車体と台車との変位を検出する変位センサであり、
前記制御装置は、前記第2の加速度センサの出力信号あるいは前記第1の加速度センサと前記変位センサとの出力信号に基づいて台車振動加速度あるいは台車振動速度を取得し、該台車振動加速度あるいは台車振動速度と伝達関数とに基づいて推定車体振動加速度あるいは推定車体振動速度を演算し、該推定車体振動加速度と前記車体振動加速度との比較、あるいは該推定車体振動速度と前記車体振動加速度との比較に基づいて前記静的制振器の減衰係数を切り換える、請求項1及び2に記載の車体振動制御装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記動的制振器、前記車体振動センサ、前記制御装置の少なくとも1つに不具合が生じた場合には、前記静的制振器の減衰係数を高減衰係数に切り換える、請求項1乃至6に記載の車体振動制御装置。
【請求項8】
懸架装置によって車体が台車に支持される車両の該台車と該車体とを連結する動的制振器と、
前記台車と前記車体とを前記動的制振器と並列に連結する、減衰係数を高減衰係数及び低減衰係数の2段階に切換可能な静的制振器と、
前記車体の振動を検出する車体振動センサと、を有し、
前記動的制振器及び前記静的制振器によって前記車体の振動を抑制する第1のステップと、
前記車体振動センサの出力信号を取得する第2のステップと、
該出力信号に基づいて前記車体に作用する加振力において前記台車から伝達される加振力及び前記車体周囲の空気による加振力のいずれが支配的か判別する第3のステップと、
該判別結果に基づいて前記静的制振器の減衰係数を切り換える第4のステップと、を有する、車体振動制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−327529(P2006−327529A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157263(P2005−157263)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】