説明

車線逸脱警報システム

【課題】より適切な警報を行ってドライバに自車両を自車線の中央を維持する走行を適切に促すことができる車線逸脱警報システムを提供すること。
【解決手段】本発明による車線逸脱警報システム1は、自車両の前方情報を取得する前方情報取得手段4aと、前方情報から自車両の走行する自車線の中央からの自車両のオフセット距離W及びヨー角θを検出する自車両位置方向検出手段4bと、ドライバの視線方向φが左右いずれであるかを判定する視線方向判定手段4cと、オフセット距離W及び/又はヨー角θに基づいて自車両の自車線に対する逸脱方向ψが左右いずれであるかを判定する逸脱方向判定手段4dと、オフセット距離Wが所定距離Wth以上となる場合にドライバに対して警報を出力する警報手段4eと、逸脱方向ψの判定結果と視線方向φの判定結果が不一致となる場合に警報手段4eによる警報のタイミングを早期化する警報早期化手段4gを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車、トラック、バス等の車両において、自車両が走行車線の中央付近を維持して走行することを支援する車線維持支援制御を行い、自車両の乗員の安全と他車両の安全を確保することができる車線逸脱警報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両の左右の位置を自車線内における中央付近に維持しながら自車両を安全かつ安定的に走行させることを促す車線逸脱警報システムとしては、特許文献1に記載されているようなものがある。このような車線逸脱警報システムにおいては、自車両の例えばウインドシールド近傍のルーフ下面又はフロントパネル上に自車両前方に光軸が指向されるカメラ等の撮像手段を設置して、この撮像手段の撮像した自車両の前方の画像を二値化処理等の処理を施して、自車両の位置する自車線の両側の白線を認識した上で以下のような制御が行われる。
【0003】
つまり、認識された両側の白線の中央に対して自車両がある程度逸脱する可能性があると判断される場合には、スピーカによる音声やステアリングホイールを振動させること等による警報又は、自車両の操舵装置により自車両が逸脱する方向とは逆方向に指向させるように転舵力つまりは警報トルクを発生して警報することが行われている。この警報に基づいて、自車両のドライバは自車両が自車線内の中央から逸脱していることを認知して、自車両を自車線内の中央に沿って走行するように適宜操舵操作を行うことができる。
【特許文献1】特開平06−171392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような車線逸脱警報システムにおいては、ドライバに対して音声、振動、警報トルクいずれの警報を行う場合においても、警報のタイミングが問題となり、自車両が自車線の中央から逸脱する方向と、ドライバの視線方向との相関関係により、どのようなタイミングで警報を行うことが適切であるかが異なってくる。
【0005】
具体的には、自車両が自車線の中央からドライバの視線方向が指向していない方向、つまりはドライバが視認していない方向へ逸脱する場合と、ドライバの視線方向が指向している方向、つまりは、ドライバが視認している方向に逸脱する場合とでは、適切なタイミングが異なり、前者のドライバが視認していない方向へ自車両が自車線の中央から逸脱する場合においては、警報が行われてからドライバが自車両の自車線の中央からの逸脱を回避する操舵操作、つまりは回避操作を行うまでに十分な時間が確保できないため、より早期に警報を行う必要があるが、特許文献1に記載のような車線逸脱警報システムにおいては、このようなきめ細かい状況の場合分けにより警報のタイミングを可変とすることは行われておらず、より適切な警報を行って適切にドライバに自車両を自車線の中央を維持する走行を促すことは必ずしも実現できていないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、より適切な警報を行って適切にドライバに自車両を自車線の中央を維持する走行を促すことができる車線逸脱警報システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題を解決するため、本発明による車線逸脱警報システムは、
自車両の前方情報を取得する前方情報取得手段と、
前記前方情報から前記自車両の走行する自車線の中央からの前記自車両のオフセット距離及びヨー角を検出する自車両位置方向検出手段と、
ドライバの視線方向が左右いずれであるかを判定する視線方向判定手段と、
前記オフセット距離及び/又は前記ヨー角に基づいて前記自車両の前記自車線に対する逸脱方向が左右いずれであるかを判定する逸脱方向判定手段と、
前記オフセット距離が所定距離以上となる場合にドライバに対して警報を出力する警報手段と、
前記逸脱方向の判定結果と前記視線方向の判定結果が不一致となる場合に前記警報手段による警報のタイミングを早期化する警報早期化手段を備えることを特徴とする。
【0008】
これによれば、前記逸脱方向の判定結果と前記視線方向の判定結果が不一致となる場合においては、前記警報手段により前記警報が行われてからドライバが前記自車両の前記自車線の中央からの逸脱を回避する操舵操作、つまりは回避操作を行うまでに十分な時間が確保できないため、より早期に前記警報手段による警報を行う必要があることを鑑みて、前記警報早期化手段により前記警報手段による前記警報のタイミングを早期化することにより、前記回避操作を前記ドライバが行うまでに十分な時間を確保することができる。
【0009】
さらに、前記逸脱方向の判定結果と前記視線方向の判定結果が不一致となる場合に前記警報タイミングが適切となるように、前記警報のタイミングを固定的に全ての場合において早期化することに比べて、前記逸脱方向の判定結果と前記視線方向の判定結果が不一致とならない場合においては、前記警報のタイミングを早期化することを回避できるため、不必要に早い警報すなわち不要警報を発してしまうことを防止することができる。
【0010】
なお、前記逸脱方向の判定結果と前記視線方向の判定結果が不一致となる場合以外において、つまりは、前記逸脱方向の判定結果と前記視線方向の判定結果が一致する場合においては、前記オフセット距離が前記所定距離以上となった時から前記警報手段は所定時間経過後に前記ドライバに対して警報を出力しているが、前記逸脱方向と前記視線方向が不一致となる場合においては、オフセット距離が前記所定距離以上となった時から前記所定時間より短い短縮所定時間経過後に前記ドライバに対して警報を出力することとなる。
【0011】
また、前記逸脱方向の判定結果と前記視線方向の判定結果が不一致となるか否かの判定は、前記警報早期化手段により行ってもよく、別個の不一致判定手段により行ってもよい。前記自車線の中央に対して前記逸脱方向が左方向であると前記逸脱方向判定手段により判定されて、前記視線方向が右方向であると前記視線方向判定手段により判定される場合、又は、前記自車線の中央に対して前記逸脱方向が右方向であると前記逸脱方向判定手段により判定されて、前記視線方向が左方向であると前記視線方向判定手段により判定される場合に、前記警報早期化手段又は前記不一致判定手段は前記不一致となるか否かの判定が肯定であり前記不一致が成立すると判定する。
【0012】
これとは逆に、前記自車線の中央に対して前記逸脱方向が左方向であると前記逸脱方向判定手段により判定されて、前記視線方向が左方向であると前記視線方向判定手段により判定される場合、又は、前記自車線の中央に対して前記逸脱方向が右方向であると前記逸脱方向判定手段により判定されて、前記視線方向が右方向であると前記視線方向判定手段により判定される場合には、前記警報早期化手段又は前記不一致判定手段は前記不一致となるか否かの判定が否定であり不一致が成立しないと判定する。この前記判定が肯定である場合には、前記警報早期化手段が前記警報手段による前記警報のタイミングを早期化する。
【0013】
ここで、前記車線逸脱警報システムにおいて、
前記自車両が旋回走行中であるか否かを判定する旋回走行判定手段を備え、
前記自車両が旋回走行中であると判定される場合に、前記警報早期化手段による前記早期化を禁止する禁止手段を備えることが好ましい。
【0014】
これによれば、前記旋回走行中においては、前記ドライバの前記視線方向は前記自車両を旋回させる方向、つまりは、前記自車線の中央の前方に延在する方向よりも旋回内側に向いていることが多いため、前記警報早期化手段又は前記不一致判定手段においては前記不一致となるか否かの判定が肯定であり前記不一致が成立すると判定するケースが多いが、このケースの前記不一致の成立は、前記旋回走行に伴うものであって、前記警報手段による警報を早期化する必要はないことを鑑みて、前記禁止手段により、前記警報早期化手段による前記警報の早期化を禁止して、前記警報手段が前記短縮所定時間を用いずに前記所定時間を用いて通常のタイミングにて前記警報を行うこととすることができる。これにより、不要な警報の早期化を回避することができる。
【0015】
なお、前記車線逸脱警報システムにおいて、前記旋回走行判定手段は種々の手段からの情報に基づいて前記旋回走行中であるか否かの判定を実行することができる。例えば、前記車線逸脱警報システムにおいて、
前記前方情報から前記自車線の曲率を検出する曲率検出手段を備え、
前記旋回走行判定手段が前記曲率に基づいて前記自車両が旋回走行中であるか否かを判定することとすることができる。
【0016】
これによれば、前記前方情報取得手段により取得される前記前方情報から容易に検出可能な前記曲率により、前記旋回走行判定手段が前記旋回走行中であるか否かの判定を行うことができる。
【0017】
あるいは、前記車線逸脱警報システムにおいて、
前記自車両の現在位置を探索する探索手段と、
前記現在位置を含む道路情報を地図情報から検索する検索手段を備え、
前記旋回走行判定手段が前記現在位置と前記道路情報に基づいて前記自車両が旋回走行中であるか否かを判定することとすることもできる。
【0018】
これによっても、例えば、前記探索手段及び前記検索手段をカーナビゲーションシステムにより構成して、前記探索手段の探索した前記現在位置と、前記検索手段の検索した前記道路情報に基づいて、前記旋回走行判定手段が前記旋回走行中であるか否かの判定を行うことができる。なお、前記曲率を用いた旋回走行であるか否かの判定と、前記現在位置と前記道路情報を用いた旋回走行であるか否かの判定は、組み合わせてもよいし、それぞれ単独で行ってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の車線逸脱警報システムによれば、より適切な警報を行って適切にドライバに自車両を自車線の中央を維持する走行を促すことができ、自車両及び他車両の安全性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0021】
図1は、本発明に係る車線逸脱警報システムの一実施形態を示すブロック図である。
【0022】
車線逸脱警報システム1は、前方認識カメラ2と、車室内カメラ3と、LDWECU4(Lane Departure Warning Electronic Control Unit)と、EPSECU5(Electronic Power Steering Electronic Control Unit)と、カーナビゲーションECU6を備えて構成される。LDWECU4には、EPSECU5と、カーナビゲーションECU6及びブレーキECU12がCAN(Controller Area Network)等の通信規格により接続される。
【0023】
前方認識カメラ2は、例えばCCDカメラあるいはCMOSカメラであり、例えば自車両室内のウインドシールド中央上部に、前方に光軸が合致するように配設され、自車両の前方の路面を車線両側の白線を含む範囲にて撮像して、撮像した前方画像データをLDWECU4に出力するものである。
【0024】
車室内カメラ3は例えば、例えばCCDカメラあるいはCMOSカメラであり、例えば自車両室内のウインドシールド中央上部に、ドライバの眼球近傍に光軸が合致するように配設されて、ドライバの顔を含むように撮像して、撮像した車室内画像データをLDWECU4に出力するものである。
【0025】
LDWECU4は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、以下に述べる処理を行う前方情報検出手段4aと、自車両位置方向検出手段4bと、視線方向判定手段4cと、逸脱方向判定手段4dと、警報手段4eと、不一致判定手段4fと、警報早期化手段4gと、旋回走行判定手段4hと、禁止手段4iと、曲率検出手段4jを構成するものである。
【0026】
EPSECU5は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、ドライバが図示しないステアリングホイールに入力した操舵力又はLDWECU4の警報手段4eの警報指令に基づいて図示しないEPS(Electronic Power Steering)の発生する転舵力を制御するとともに、これも図示しない操舵角センサにより検出した操舵角を、CANを介してカーナビゲーションECU6等の他のECUに送信するものである。
【0027】
EPSは、例えばラックアンドピニオン式かつピニオンアシスト式のものであり、EPSECU5の制御により電動モータを駆動して転舵力を発生する操舵装置を構成するものである。なお、ここではドライバが図示しないステアリングホイールにより入力する力を操舵力、操舵装置が出力する力を転舵力として名称上区別している。
【0028】
カーナビゲーションECU6には、GPSアンテナ7(Global Positioning System:全地球測位システム)と、ヨーレートセンサ8と、受信機9と、データベース10と、ディスプレイ11が接続される。
【0029】
ここで、GPSアンテナ7は、地球上空に打ち上げられた複数の衛星の内三個の衛星からの電波を受信するものであって、ヨーレートセンサ8は車両のヨーレートを検出するものであり、さらに、受信機9は光あるいは電波ビーコンに準拠したものであり、VICS(Vehicle Information & Communication System:道路交通情報システム)からの渋滞情報や交通流代表車速等の各種情報を含む道路走行情報を受信する。なお、交通流代表車速とは、所定区間内に位置する複数の車両の車速を平均して求められる車速である。
【0030】
加えて、データベース10はCD−ROMやDVD−ROM等の記憶媒体により構成され、表示用の地図情報と、探索用の地図情報を格納し記憶している。探索用の地図情報はそれぞれの道路すなわちリンク及びリンクの始端と終端を示すノードの経度及び緯度を含む位置と、各リンクの長さ、曲率、幅員、車線数、ノードが交差点である場合の右折レーン、左折レーンの有無、右折禁止等の道路情報を含む。
【0031】
また、ディスプレイ11は、タッチパネルすなわち運転者が目的地等の探索条件を入力する入力装置として機能するとともに、運転者により入力された目的地等の探索条件をもとにカーナビゲーションECU6の探索手段6aが探索用の地図情報に基づいて探索した予定経路を、カーナビゲーションECU6の表示手段6cの指令に基づき表示用の地図情報とともに表示するものである。
【0032】
ブレーキECU12は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、ドライバの図示しないブレーキペダルの踏み込み操作に伴う制動指令に基づき、車両の各車輪に設けられたブレーキ装置を制御して車両の制動を行うとともに、図示しない車輪速センサから車速を検出して検出結果を、CAN上に出力するものである。
【0033】
カーナビゲーションECU6は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを相互に接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、以下に述べるそれぞれの制御を行う探索手段6a、検索手段6b、表示手段6c、送信手段6dとして機能するものである。
【0034】
カーナビゲーションECU6の探索手段6aは、GPSアンテナ7の受信した電波をもとに、例えば三角測量の原理で車両の位置する現在位置つまりは経度と緯度を測定して探索する。加えて、カーナビゲーションECU6の探索手段6aはブレーキECU12からCAN上に送信される自車両の車速を、CANを介して取得している。
【0035】
加えて、カーナビゲーションECU6の探索手段6aは、GPSアンテナ7が衛星から電波を受信できない場合においては、CAN上から取得した自車両の車速とヨーレートセンサ8が検出したヨーレート、EPSECU5から取得した操舵角をもとにして、自車両の移動距離と方向を計算して自車両の現在位置を自律航法により測定する。これにより、GPSアンテナ7を用いた自車両の現在位置の測定と併せて、トータルの自車両の位置する現在位置の測定の精度を高めている。
【0036】
すなわち、上述したGPSアンテナ7を用いたカーナビゲーションECU6の探索手段6aによる自車両の位置する現在位置の測定は、衛星からの電波を利用する特性上、高層ビルの谷間に自車両が位置する場合やトンネル内を車両が走行している場合、あるいは、高架橋の下を自車両が走行している場合などでは衛星からの電波をGPSアンテナ7により受信することが困難となり、自車両の現在位置が測定できない期間が生じるが、後者の自律航法による測定により、この期間における自車両の現在位置の測定を補完している。
【0037】
カーナビゲーションECU6の探索手段6aは、このようにして測定した現在位置と、タッチパネルすなわちディスプレイ11により運転者が入力した目的地とを結ぶ予定経路を、データベース10内の探索用の地図情報を用いてダイクストラ法等の手法により探索する。
【0038】
さらにカーナビゲーションECU6の検索手段6bは、自車両の現在位置が含まれる経路の道路情報を、データベース10内に格納された探索用の地図情報から検索する。カーナビゲーションECU6の送信手段6dは、検索手段6bにより検索された地図情報と、探索手段6aにより探索された自車両の現在位置を含むデータフレームを、CANを介してLDWECU4に送信する。
【0039】
そして、カーナビゲーションECU6の表示手段6cは、データベース10内の表示用の地図情報と、上述した方法により測定した自車両の位置する現在位置と、タッチパネルすなわちディスプレイ11により入力された目的地と、探索手段6aにより探索された現在位置から目的地に到る予定経路とを併せてディスプレイ11に表示する。
【0040】
LDWECU4の前方情報検出手段4aは、前方画像データを前方認識カメラ2から前方情報として取得して、LDWECU4の自車両位置方向検出手段4bは、前方認識カメラ2により撮像された前方画像データ内に位置する路面の車線の両側に位置する白線を二値化処理等により検出して、両側の白線から自車線の中央を検出し、前方の路面の曲率R、自車両の位置する自車線の中央からのオフセット距離Wを自車両の位置として、自車線の中央を基準とする自車両のヨー角θを自車両方向として検出する。なお、ヨー角θは自車線の中央を基準として左方向を正値とする。
【0041】
LDWECU4の視線方向判定手段4cは、車室内カメラ3により撮像された車室内画像データを車室内カメラ3から取得して、この車室内画像データに基づいて、例えばエッジ検出やパターンマッチング等の所定の画像処理を実行して、ドライバの視線方向φを検出して、視線方向φが閾値Dthより大きく正値である場合には視線方向φが左方向であると判定し、視線方向φが閾値−Dthより小さく負値である場合には視線方向φが右方向であると判定する。なお、視線方向φは、自車線の中央を基準とした角度により表されて左方向を正値とする。
【0042】
また、LDWECU4の逸脱方向判定手段4dは、ヨー角θに基づいて、ヨー角θが正値であれば自車両の自車線に対する逸脱方向ψが左方向であると判定し、ヨー角θが負値であれば自車両の自車線に対する逸脱方向ψが右方向であると判定する。さらに、LDWECU4の警報手段4eは、オフセット距離Wが所定距離Wth以上となる場合に、オフセット距離W≧所定距離Wthとなり警報条件が成立した場合にドライバに対して警報を出力するように、EPSECU5に対して逸脱方向ψとは逆方向に自車両を指向させる転舵力つまりは警報トルクを発生するように警報指令を出力する。
【0043】
さらに、LDWECU4の不一致判定手段4fは、ドライバの視線方向φの判定結果と逸脱方向ψの判定結果が一致しない場合に不一致であると判定し、一致する場合に不一致でないと判定する。LDWECU4の警報早期化手段4gは、自車両の自車線に対する逸脱方向ψの判定結果と視線方向φの判定結果が不一致であると不一致判定手段4fにより判定される場合に、警報手段4eによる警報のタイミングを早期化するように、警報手段4eが用いる制御定数である所定時間Tを所定時間Tよりも短い短縮所定時間TSに変更する。ここで、制御定数は、警報条件が成立してから実際にEPSECU5に対して警報指令が出力されるまでの時間を表し、制御定数を短縮所定時間TSに変更した場合においては、所定時間Tを用いて警報手段4eが警報を実行する場合よりも、より早期に警報が実行される。
【0044】
さらにLDWECU4の旋回走行判定手段4hは、自車両が旋回走行中であるか否かを判定し、自車両が旋回走行中であると判定される場合に、LDWECU4の禁止手段4iは、警報早期化手段4gによる警報の早期化を禁止する。なお、旋回走行判定手段4hによる自車両が旋回走行中であるか否かの判定は以下のように曲率Rと曲率閾値Rthとの比較と現在位置と道路情報の突合せの二つの判定要素に基づいて実行する。
【0045】
すなわち、LDWECU4において、前方情報取得手段4aの取得した前方情報である前方画像データから、上述した二値化処理等により自車線の両側の白線を検出し、両側の白線の中央を検出して、中央の軌跡から自車線の中央自車線の曲率Rを検出する曲率検出手段4jをさらに備える。LDWECU4の旋回走行判定手段4hは、この曲率Rを取得するとともに、CAN上において、カーナビゲーションECU6の探索手段6aの探索した自車両の現在位置と、カーナビゲーションECU6の検索手段6bの検索した道路情報を取得する。
【0046】
LDWECU4の旋回走行判定手段4hは、曲率Rが曲率閾値Rthより大きい場合であって、上述したカーナビゲーションECU6の探索手段6aがGPSにより探索した自車両の現在位置が、道路情報が含む情報であるカーブ手前またはカーブ中である場合に、自車両が旋回走行中であると判定する。
【0047】
以下、本実施例1の車線逸脱警報システム1の制御内容を、フローチャートを用いて説明する。図2は、本発明による車線逸脱警報システム1の制御内容を示すフローチャートである。図3は、図2におけるフローチャートのステップS2の処理内容の詳細を示すサブルーチンである。図4は、図2におけるフローチャートのステップ3の処理内容を詳細に示すサブルーチンである。図5は、図2におけるステップS4の処理内容を詳細に示すサブルーチンである。図6は、図2におけるステップS5の処理内容を詳細に示すサブルーチンである。
【0048】
ステップS1において、LDWECU4の前方情報検出手段4aは、前方認識カメラ2の検出結果に基づいて、前方画像データを取得し、LDWECU4の自車両位置方向検出手段4bは、前方画像データに基づいて、オフセット距離W、ヨー角θを検出し、LDWECU4の曲率検出手段4jは、同じく前方画像データに基づいて、曲率Rを検出する。
【0049】
ステップS2において、LDWECU4の逸脱方向判定手段4dは、図3のステップS21に示すように、ヨー角θが正値であるか否かを判定し、肯定である場合には、ステップS22において、逸脱方向ψが左方向であると判定し、否定である場合には、ステップS23において逸脱方向ψが右方向であると判定する。
【0050】
ステップS3において、LDWECU4の視線方向判定手段4cは、図4のステップS31に示すように、視線方向φの検出結果が閾値Dthより大きいか否かを判定し、肯定である場合には、ステップS32において視線方向φが左方向である脇見が発生していると判定し、否定である場合には、ステップS33において、視線方向φが閾値−Dthより小さいか否かを判定し、肯定である場合には、ステップS34において、視線方向φが右方向である脇見が発生していると判定し、否定である場合には、ステップS35において、視線方向φが左方向でも右方向でもなく脇見中でないと判定する。
【0051】
ステップS4において、LDWECU4の旋回走行判定手段4hは、図5のステップS41に示すように、曲率Rの絶対値が曲率閾値Rthより大きく、かつ、GPSによる自車両の現在位置が道路情報に含まれるカーブ手前又はカーブ中であるか否かを判定し、肯定である場合には、ステップS42にすすんで、旋回走行中であると判定し、否定である場合にはステップS43にすすんで、旋回走行中でないと判定する。
【0052】
ステップS5において、LDWECU4の不一致判定手段4fは、図6のステップS51に示すように、逸脱方向ψが左方向と判定され、かつ、視線方向φが右方向と判定されたて両者の判定結果が不一致であるか否かを判定し、肯定である場合には、ステップS52にすすみ、否定である場合には、ステップS54にすすんで、逸脱方向ψが右方向と判定され、視線方向φが左方向と判定され両者の判定結果が不一致であるか否かを判定し、肯定である場合にはステップS52にすすみ、否定である場合にはステップS55にすすむ。
【0053】
ステップS52において、LDWECU4の旋回走行判定手段4hは、前述したステップS4において、旋回走行中であると判定されず、自車両がカーブを走行中でないと判定されたか否かを判定し、肯定である場合にはステップS53にすすみ、ステップS53においてLDWECU4の警報早期化手段4gは前述した警報手段4eが用いる所定時間Tを短縮所定時間TSに変更して、警報タイミングを早期化する処理を実行する。
【0054】
また、ステップS54においては、LDWECU4の禁止手段4iが、警報早期化手段4gによる警報の早期化、すなわち制御定数を所定時間Tから短縮所定時間TSへと変更することを禁止して、警報手段4eが用いる制御定数を短縮所定時間TSから所定時間Tに戻すように変更する、又は、所定時間Tのまま保持して、警報タイミングを早期化する処理を行わない。
【0055】
このように警報手段4eが用いる制御定数が短縮所定時間TS又は所定時間Tに設定された後、LDWECU4の警報手段4eは警報条件が成立した時から短縮所定時間TS又は所定時間T経過後にEPSECU5に警報指令を出力して、EPSECU5はEPSに対して警報トルクを出力させるように制御指令を出力して、これにより、ドライバに対して警報が行われる。
【0056】
以上述べた制御内容により実現される本実施例の車線逸脱警報システム1によれば、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、不一致判定手段4fによる不一致となるか否かの判定と、警報早期化手段4gによる制御定数を所定時間Tからより短い短縮所定時間TSへと変更する処理に基づいて、警報手段4eによる警報のタイミングを、視線方向φの判定結果と逸脱方向ψの判定結果が不一致である場合において、早期化することにより、警報が行われてからドライバが、自車両の自車線の中央からの逸脱を回避する操舵操作すなわち回避操作を行うまでに十分な時間を確保して、ドライバの安全性をより高めることができる。
【0057】
また、警報のタイミングを全ての場合において早期化するように制御定数を短縮所定時間TSに固定することに比べて、逸脱方向ψの判定結果と視線方向φの判定結果が不一致となるか否かの判定を適宜実行して、不一致である場合にのみ制御定数を短縮所定時間TSに変更して警報を早期化することができるので、不一致でない場合においては制御定数を所定時間Tのまま保持する又は短縮所定時間TSから所定時間Tに復帰させて、通常のタイミングにおいて警報を行い、不必要に早い警報すなわち不要警報を発してしまうことを防止することができる。
【0058】
さらに、視線方向φの判定結果と逸脱方向ψの判定結果が不一致と判定される場合でも、不一致が旋回走行に伴うものである場合には、禁止手段4iにより、警報早期化手段4gによる警報の早期化を禁止することとして、警報手段4eが短縮所定時間TSを用いずに所定時間Tを用いて通常のタイミングにて、EPSECU5に対して警報指令を出力してEPSにより警報トルクを発生させて、ドライバに対して警報を行って、不要な警報の早期化を防止することができる。
【0059】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【0060】
例えば上述した実施例においては、LDWECU4の逸脱方向判定手段4dは逸脱方向ψが左右いずれであるかを判定するに当たって、ヨー角θを用いているが、オフセット距離Wについて自車線の中央から左にオフセットする場合を正値、右にオフセットする場合を負値として、正値である場合には逸脱方向ψは左方向であり、負値である場合には逸脱方向ψは右方向であると判定することもできる。もちろん、逸脱方向判定手段4dが、ヨー角θとオフセット距離Wの双方を用いて左か右かの判定を行っても良い。
【0061】
また、上述した実施例においては、カーナビゲーションECU6の探索手段6aにより探索した自車両の現在位置と、検索手段6bにより検索された道路情報に基づいて、自車両がカーブを走行していている又はカーブの手前に位置していることと、曲率検出手段4jが検出した曲率Rが曲率閾値Rthより大きいか否かによって、旋回走行中であるかを旋回走行判定手段4hが判定しているが、曲率Rのみによって旋回走行中であるかを判定することもできる。これによれば、カーナビゲーションECU6を用いることなく、より簡易な形態の車線逸脱警報システム1とすることができる。
【0062】
さらに、上述した実施例においては、前方情報検出手段4aと、自車両位置方向検出手段4bと、視線方向判定手段4cと、逸脱方向判定手段4dと、警報手段4eと、不一致判定手段4fと、警報早期化手段4gと、旋回走行判定手段4hと、禁止手段4iと、曲率検出手段4jを構成するにあたってLDWECU4を用いたが、これをLKAECU(Lane Keep Assist Electronic Control Unit)に置換することも可能である。
【0063】
さらに、本実施例の車線逸脱警報システム1は、ACC(Adaptive Cruise Control)を備えた車両に適用して、ACCが実行する先行車両と自車両との車間時間一定制御及び定速走行制御とともに、車線逸脱警報を実行することももちろん可能である。この場合においてブレーキECU12はACCの制動指令に基づいて制動を行うとともに、ここでは図示しないエンジンECU及び変速機ECUはACCの駆動指令に基づいて駆動制御を行う。
【0064】
また、車両にACCが適用される場合には、運転者が車間時間一定制御を所望する場合には、選択スイッチの操作に基づいて複数段階の設定車間時間が運転者により選択され、運転者が定速走行制御を所望する場合には、これも選択スイッチの操作に基づいて運転者により設定車速が選択されるが、この設定車間時間又は設定車速に応じて、視線方向判定手段4cが用いる閾値Dthを変更しても良い。例えば設定車間時間が短いほど閾値Dthを小さくし、設定車速が高いほど閾値Dthを小さくして、視線方向φに基づく脇見の発生の判定を厳しくして、自車両及び他車両の安全性を高めることができる。
【0065】
さらに、LDWECU4の警報手段4eが用いる制御定数である、所定時間T及び短縮所定時間TSについても、運転者により設定される設定車間時間又は設定車速に応じて、適宜変更することが考えられる。この場合においては、設定車間時間が短いほど所定時間T及び短縮所定時間TSともに短くし、設定車速が高いほど所定時間T及び短縮所定時間TSともに短くして、運転者への警報を全ての場合において早くして、これも、自車両及び他車両の安全性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、車線逸脱警報システムに関するものであり、より適切な警報を行うことに伴って適切にドライバに自車両を自車線の中央を維持する走行を促すことができるので、乗用車、トラック、バス等の様々な車両に適用して有益なものである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る車線逸脱警報システムの一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る車線逸脱警報システムの一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る車線逸脱警報システムの一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る車線逸脱警報システムの一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る車線逸脱警報システムの一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係る車線逸脱警報システムの一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
1 車線逸脱警報システム
2 前方認識カメラ
3 車室内カメラ
4 LDWECU
4a 前方情報検出手段
4b 自車両位置方向検出手段
4c 視線方向判定手段
4d 逸脱方向判定手段
4e 警報手段
4f 不一致判定手段
4g 警報早期化手段
4h 旋回走行判定手段
4i 禁止手段
4j 曲率検出手段
5 EPSECU
6 カーナビゲーションECU
6a 探索手段
6b 検索手段
6c 表示手段
6d 送信手段
7 GPSアンテナ
8 ヨーレートセンサ
9 受信機
10 データベース
11 ディスプレイ
12 ブレーキECU
W オフセット距離
θ ヨー角
φ 視線方向
ψ 逸脱方向
T 所定時間
TS 短縮所定時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方情報を取得する前方情報取得手段と、前記前方情報から前記自車両の走行する自車線の中央からの前記自車両のオフセット距離及びヨー角を検出する自車両位置方向検出手段と、ドライバの視線方向が左右いずれであるかを判定する視線方向判定手段と、前記オフセット距離及び/又は前記ヨー角に基づいて前記自車両の前記自車線に対する逸脱方向が左右いずれであるかを判定する逸脱方向判定手段と、前記オフセット距離が所定距離以上となる場合にドライバに対して警報を出力する警報手段と、前記逸脱方向の判定結果と前記視線方向の判定結果が不一致となる場合に前記警報手段による警報のタイミングを早期化する警報早期化手段を備えることを特徴とする車線逸脱警報システム。
【請求項2】
前記自車両が旋回走行中であるか否かを判定する旋回走行判定手段を備え、前記自車両が旋回走行中であると判定される場合に、前記警報早期化手段による前記早期化を禁止する禁止手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の車線逸脱警報システム。
【請求項3】
前記前方情報から前記自車線の曲率を検出する曲率検出手段を備え、前記旋回走行判定手段が前記曲率に基づいて前記自車両が旋回走行中であるか否かを判定することを特徴とする請求項2に記載の車線逸脱警報システム。
【請求項4】
前記自車両の現在位置を探索する探索手段と、前記現在位置を含む道路情報を地図情報から検索する検索手段とを備え、前記旋回走行判定手段が前記現在位置と前記道路情報に基づいて前記自車両が旋回走行中であるか否かを判定することを特徴とする請求項2又は3のいずれか一項に記載の車線逸脱警報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−134764(P2010−134764A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311236(P2008−311236)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】