説明

車載エンジンの始動制御装置

【課題】エンジンの減速回転中であっても、速やかに再始動が行える車載エンジンの始動制御装置を提供する。
【解決手段】この発明による車載エンジンの始動制御装置30Aは、自動停止要件が成立すると、回転駆動指令Rcを発生して直流電動機41aを予備回転駆動してから燃料噴射指令INJを停止し、続いて惰性減速するリングギア11の周速と予備回転駆動されていたピニオンギア42aの周速とが同期する直前にピニオンギア42aの押出制御指令Scを発生し、押出駆動完了時点において再始動要求が既に発生しているか、遅れて発生したことによって再び回転駆動指令Rcと燃料噴射指令INJを発生して車載エンジン10を再始動するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車載エンジンの燃費改善と排気汚染抑制を図るために、無駄なアイドル運転を避け、適時にエンジンの自動停止と再始動を行うようにした車載エンジンの始動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクセルペダルの復帰とブレーキペダルの踏込みによって車両が停止するとエンジンを自動停止し、ブレーキペダルの開放又はアクセルペダルの踏込みによってエンジンを再始動するようにしたエンジンの自動停止と再始動制御装置には、様々な技術情報が開示されている。例えば、特許文献1「燃料消費節約型自動車」によれば、エンジンの一時停止を行うときに燃料噴射の停止と排気弁の開放を行ってエンジンを慣性回転させ、少なくともエンジン回転速度がゼロではないときには、スタータモータの調速運転を行ってその回転速度をエンジン回転速度に同期させてからエンジンに連結する始動制御装置が開示されている。特許文献1に示された従来の装置では、自動停止中にはなるべくエンジンの慣性回転を持続させ、徐々に減速中のエンジンに対して再始動要求が発生してからスタータモータの調速運転を開始して、スタータモータ側のピニオンギアとエンジン側のリングギアを同期噛合わせするように構成されている。
【0003】
また、特許文献2「エンジン自動停止再始動装置」によれば、自動停止要求が発生してエンジン回転が停止するまでのエンジン回転降下期間中に再始動要求が発生した場合、スタータによってピニオンギアを回転駆動し、ピニオンギアとリングギアの回転が同期する時点を予測してピニオンギアの押出タイミングと押出速度とのうちの少なくとも一方を調整し、両ギアを同期噛合いさせてからスタータによるクランキングを開始する始動制御装置が開示されている。特許文献2に示された従来の装置では、自動停止中にはなるべく速やかにエンジンを停止させ、停止中に再始動要求が発生することを想定しながらも、早期の再始動要求が発生した場合に備えて減速回転中のエンジンに対する再始動を可能にするように構成されている。
【0004】
一方、特許文献3「車両用始動装置」によれば、自動停止要求に基づくエンジンの停止中において、再始動要求の有無に関わらずピニオンギアとリングギアを連結保持しておいて、再始動要求があればただちにスタータを回転駆動してエンジンを再始動する始動制御装置が開示されている。特許文献3に示された従来の装置では、自動停止要求の直後に再始動要求が発生して、減速回転中のエンジンを再始動することは想定されていない。
【0005】
なお、車載エンジンの始動装置において、ピニオンギアをリングギアに対して押出駆動するための電磁シフトコイルをトランジスタでデューティ制御する技術も既に開示されている。例えば、特許文献4「スタータ制御方法」によれば、電磁シフトコイルへの通電開始から所定時間後においてピニオンギアとリングギアの当接予定時点前に通電電流を低減して、ピニオンギアを穏やかにリングギアに当接させると共に、上記所定時間の間では電源電圧に応じて通電電流を適正に調整するように構成されている。
【0006】
また、車載エンジンの始動装置において、エンジンの始動を速やかに行うための燃料噴射制御に関しては、例えば特許文献5「車載エンジン制御装置」において、多気筒エンジンに対する燃料噴射の気筒順序の判別手段について開示されており、気筒判別が完了する前の非同期燃料噴射と気筒判別完了後の同期燃料噴射の概念が説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−070699号公報(明細書の段落[0008]、[0009]、[0024]、図3、要約)
【特許文献2】特開2005−330813号公報(図1、要約)
【特許文献3】特開2002−221133号公報(図1、要約)
【特許文献4】特開2002−122059号公報(図2、要約)
【特許文献5】特開2009−030543号公報(図2、要約)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の特許文献1による始動制御装置の場合、エンジンの慣性運転を行うために排気弁の開放制御が必要であって、制御機構が複雑高価となると共に、スタータモータの調速運転を行うために、補助バッテリや大電流容量のトランジスタを必要とする課題がある。また、前述の特許文献2による始動制御装置の場合、エンジンの再始動要求が発生してからスタータモータを予備回転駆動したのでは、エンジン回転の減速中には同期噛合いを行うことが困難であり、非同期状態でムリヤリにピニオンギアの押込みを強行するか、多くの場合はエンジンが完全停止してから再始動が行われて、異音発生、ピニオンギアの損耗、再始動遅延による違和感が発生する課題がある。
【0009】
また、前述の特許文献3による始動制御装置の場合、エンジンの減速回転中には再始動は行われないので、自動停止の直後に再始動が必要となった場合に、エンジンが完全停止するまで待機する必要があって遅延違和感が発生する。なお、燃料噴射を停止するとエンジンは速やかに減速するが、完全停止の直前において逆転動作を含む不安定回転状態が発生し、完全停止に要する時間は速やかな発進をしたい運転手にとっては看過できない待ち時間となるものである。
【0010】
一方、前述の特許文献4によるピニオンギアの押込み制御では、ピニオンの押込み制御を開始してから、ピニオンギアとリングギアが当接するまでの時間が電源電圧の大小によって変動することになるので、同期噛合い制御が困難となる課題がある。また、前述の特許文献5による非同期燃料噴射は、惰性減速中のエンジンを始動用電動機に依存しないで自己再始動するために、一時的ではあっても適性ではない空燃比による運転が行われて大気汚染の原因となる課題がある。
【0011】
なお、この特許文献5に示された装置の場合は、運転中の異常発生に伴うマイクロプロセッサの初期化処理を行うために燃料噴射と気筒判別を含む全ての制御が一時的に停止されるものであって、気筒順序判別所要時間によって燃料噴射時期が遅延して自己始動ができない低回転領域にまで減速するのを回避するために、気筒順序の判別完了前に非同期燃料噴射が行われるようになっている。このように、一般的には燃料噴射を停止するときには、これに付随する気筒順序の判別制御も停止され、燃料噴射の再開に当たっては気筒順序の判別を先ず行う必要がある。
【0012】
この発明の第一の目的は、エンジンの自動停止指令が発生した後、いかなる時点で再始動要求が発生しても、速やかにエンジンの再始動が行われて、始動遅延による違和感を抑制することができる車載エンジンの始動制御装置を提供することである。
この発明の第二の目的は、エンジンの減速回転中においてピニオンギアとリングギアとの同期噛合いを行うための簡易なピニオンギアの予備回転駆動制御手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明による車載エンジンの始動制御装置は、
車載バッテリから給電されて駆動される直流電動機と、前記直流電動機によって回転駆動されるピニオンギアと、車載エンジンの回転軸に設けられたリングギアに対して前記ピニオンギアを連結又は離脱させるピニオン押出機構とを備えた始動用電動機ユニットと、
前記直流電動機の駆動を制御する回転駆動制御回路と、
前記車載エンジンのアイドル回転中に自動停止要件が成立すると、燃料噴射用電磁弁に対する燃料噴射指令を停止して前記車載エンジンを停止させ、前記車載エンジンの再始動要件が成立すると前記回転駆動制御回路に対する回転駆動指令と前記燃料噴射用電磁弁に対する前記燃料噴射指令を発生して、前記車載エンジンを再始動させるエンジン制御装置と、
を備えた車載エンジンの始動制御装置であって、
前記エンジン制御装置は、燃料噴射制御ユニットを構成する制御プログラムが格納されたプログラムメモリと協働するマイクロプロセッサを備え、
前記プログラムメモリは更に、前記車載エンジンの回転速度を検出する回転センサの出力に応動するエンジン回転速度検出ユニットと、前記ピニオンギアの回転速度を推定する回転速度推定ユニット若しくは前記ピニオンギアの回転速度を検出する回転センサの出力に応動するピニオン回転速度検出ユニットと、前記ピニオンギアを予備回転駆動する予備回転駆動制御ユニットと、前記ピニオン押出機構に対して押出駆動指令を発生する押出駆動制御ユニットと、を構成する制御プログラムを包含している。
【0014】
前記マイクロプロセッサは、
前記車載エンジンの自動停止要件が成立すると前記燃料噴射指令を停止し、当該燃料噴射の停止前後において、前記車載エンジンの回転速度が少なくとも所定の当初回転速度に低下するまでには、前記車載エンジンの再始動要件が不成立であっても、前記予備回転駆動制御ユニットにより前記ピニオンギアの予備回転駆動を開始させ、前記車載エンジンの回転速度が所定の下限回転速度に低下するまでには、前記押出駆動制御ユニットにより前記ピニオンギアを前記リングギアに対して連結駆動させ、当該連結駆動の完了時点において前記車載エンジンの再始動要件が既に成立しているか又は遅れて成立することにより、前記回転駆動指令と前記燃料噴射指令を発生して、惰性回転中又は停止中の前記車載エンジンを再始動させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明による車載エンジンの始動制御装置は、車載エンジンの自動停止要件が発生すると、再始動要件の成立を待たないでピニオンギアの予備回転駆動を行い、燃料停止に伴ってエンジン回転速度が低下して不安定回転状態が発生し始める下限回転速度に達するまでにはピニオンギアとリングギアとの連結を完了するように構成されているので、車載エンジンの惰性減速回転中に再始動要件が成立した場合に、車載エンジンが不安定回転域を脱出して完全停止するのを待たないで直ちにエンジンの再始動を行うことができ、再始動開始遅れによって運転手に違和感を与えないで、燃料節約運転を行うことができる効果がある。又、この発明による車載エンジンの始動制御装置によれば、車載エンジンの吸排気弁の開放制御が不要であって、しかも車載エンジンが惰性減速回転しているときに、ピニオンギアの回転周速をリングギアの回転周速に接近させてから両ギアの連結を行うことによって、ギアの損耗寿命低下を抑制することができる効果がある。
【0016】
なお、車載エンジンの自動停止要件が成立して車載エンジンに対する燃料供給を停止すると、車載エンジンの吸排気弁を開放しないかぎり、エンジンは気筒内の空気圧縮作用によって速やかに減速し、正逆転動作を含む不安定回転領域を経過して完全停止に至る。このため、自動停止要件の成立によって燃料供給を停止してエンジンが惰性減速している時期にアクセルペダルを踏んで再始動したい場合に、不安定回転領域でピニオンギアとリングギアを連結させるのは困難であり、エンジンの完全停止を待ってから再始動したのでは
応答時間遅れによって運転手に違和感を与えることになるという課題が存在し、又、不安定回転領域に低下する前の急減速過程に於いては、再始動要求が発生してからピニオンギアを回転駆動させるための時間余裕がなく、ピニオンギアとリングギアとの回転を同期させてからピニオンギアの押込みを行うことが困難となる課題が存在するが、この発明による車載エンジンの始動制御装置によれば、このような課題は克服される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置に於ける、エンジンが完全停止した後に、始動用電動機ユニットによって再始動を行うときの動作を説明するタイムチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置に於ける、自動停止指令が発生した直後に、始動用電動機ユニットによらないで自己再始動を行うときの動作を説明するタイムチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置に於ける、エンジンが減速回転中に、始動用電動機ユニットによって再始動を行うときの動作を説明するタイムチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置に於ける、主として手動始動制御部分の動作を説明する第1のフローチャートである。
【0018】
【図6】この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置に於ける、主としてピニオンギアの予備回転駆動制御部分の動作を説明する第2のフローチャートであり、図5に示す第1のフローチャートに続くものである。
【図7】この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置に於ける、主としてピニオンギアの押出駆動制御部分の動作を説明する第3のフローチャートであり、図6に示す第2のフローチャートに続くものである。
【図8】この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置に於ける、主として再始動制御部分の動作を説明する第4のフローチャートであり、図7に示す第3のフローチャートに続くものである。
【図9】この発明の実施の形態2による車載エンジンの始動制御装置の全体構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置について、詳細に説明する。
(1)構成の詳細な説明
図1は、この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置の全体構成を示す構成図である。図1に於いて、車載エンジンの始動制御装置30Aは、エンジン制御装置31Aと多気筒車載エンジン10に対する始動用電動機ユニット40Aと、始動用電動機ユニット40Aに対する回転駆動制御回路50Aによって構成されている。
【0020】
車載エンジン10は、その回転軸にはフライホイールを兼ねたリングギア11が設けられると共に、燃料噴射用電磁弁12と回転センサ13となるクランク角センサを包含し、変速機14を介して図示していない車軸を駆動するように構成されている。エンジン制御装置31Aは、マイクロプロセッサ32と協働するプログラムメモリ33Aを包含し、車載バッテリ20に接続された電源スイッチ21と始動指令スイッチ22から、各スイッチの開閉に応動する電源スイッチ信号Psと手動始動指令信号Stが入力されるように構成されている。
【0021】
又、電源リレー23の出力接点23aは、車載バッテリ20からエンジン制御装置31Aに対する給電回路を構成して電源電圧Vbとなる電源を供給し、電源リレー23のリレーコイル23bは、電源スイッチ21が閉路されたことによって付勢されて出力接点23aを閉路してマイクロプロセッサ32が作動を開始し、一旦マイクロプロセッサ32が作動開始すると、電源スイッチ21が開路してもマイクロプロセッサ32が発生する電源保持指令Drによってリレーコイル23bの付勢状態を維持することができるように構成されている。
【0022】
エンジン制御装置31Aに対するセンサ群24は、アクセルペダルやブレーキペダルの踏込み検出スイッチ、変速機14のシフトレバーの選択位置に応動するシフトスイッチ、アクセルペダルの踏込み度合を検出するアクセルポジションセンサ、スロットル弁開度を検出するスロットルポジションセンサ、排気ガスの酸素濃度を検出する排気ガスセンサなどのスイッチセンサとアナログセンサを包含する。センサ群24の一部であるエンジンの回転センサ13の出力は、エンジン回転信号Neとしてマイクロプロセッサ32に入力される。
【0023】
エンジン制御装置31Aから駆動される電気負荷群25は、スロットル弁開度制御用モータ、ガソリンエンジンに対する点火コイル、変速段の選択用電磁コイルを包含し、更に燃料噴射用電磁弁12も電気負荷群25の一部である。燃料噴射用電磁弁12に対して、エンジン制御装置31Aから燃料噴射指令INJが出力される。始動用電動機ユニット40Aは、主体となる直流電動機41aと、当該直流電動機41aから一方向クラッチ42bを介して一方向に回転駆動されるピニオンギア42aと、当該ピニオンギア42aをリングギア11に噛合連結するためのピニオン押出機構44Aとにより構成されている。
【0024】
ピニオン押出機構44Aは、可動支点44bを中心にして揺動動作するシフトレバー44aと、シフトレバー44aの一端に設けられシフト吸引コイル43aとシフト保持コイル43bに通電することによって図の左方向に吸引されて移動するシフトプランジャー43cと、シフト吸引コイル43aとシフト保持コイル43bとが消勢されたときにシフトプランジャ43cを図の右方向に復帰駆動する復帰ばね45aと、ピニオンギア42aとリングギア11の歯面が当接したとき可動支点44bが図の左方向に移動してシフトプランジャ43cの吸引動作を完了させる蓄勢ばね45bとによって構成されている。シフトレバー44aの他端は、ピニオンギア42aを図の右方向に押出駆動するスプールに対して回動自在に係合している。
【0025】
なお、シフト吸引コイル43aとシフト保持コイル43bに通電してシフトプランジャ43cが図の左方向に吸引されたときであって、ピニオンギア42aとリングギア11の歯面が当接したことによって可動支点44bが図の左方向へ移動した場合に、ピニオンギア42aの回動によってピニオンギアの歯面とリングギア11の歯面との係合位置がずれてピニオンギア42aとリングギア11との噛合いが可能な状態になると、蓄勢ばね45bによって可動支点44bが図の右方向に押し戻されてピニオンギア42aとリングギア11との噛合連結が完了するように構成されている。
【0026】
噛合検出スイッチ46Aは、シフト吸引コイル43aと直列接続されており、ピニオンギア42aとリングギア11の噛合連結が完了したときに、リングギア42aの端面に検出レバー64A1が押圧されてオフとなり、シフト吸引コイル43aへの通電電流を遮断する。又、直流電動機41aの回転軸には、望ましくはピニオンギア42aの回転速度を検出するための回転センサ48が設けられる。
【0027】
回転駆動制御回路50Aは、常開接点型の限流始動用リレーの出力接点51aとリレー
コイル51b、限流始動抵抗51c、常開接点型の全電圧始動用リレーの出力接点52aとリレーコイル52b、限流始動タイマ52cによって構成されている。限流始動抵抗51cと出力接点51aとは直列接続されており、車載バッテリ20と直流電動機41aとの間に接続されている。限流始動抵抗51cは、出力接点52aに並列接続されている。
【0028】
限流始動タイマ52cの出力接点は、リレーコイル52bと直列接続されており、マイクロプロセッサ32が回転駆動指令Rcを発生すると、まず限流始動用のリレーコイル51bが付勢されて出力接点51aが閉路し、直流電動機41aは限流始動抵抗51cと出力接点51aを介して車載バッテリ20から給電される。その後、限流始動タイマ52cがタイムアップして全電圧始動用リレーのコイル52bが付勢され、その出力接点52aによって限流始動抵抗51cは短絡され、直流電動機41aは出力接点52aと出力接点51aとの直列回路を介して車載バッテリ20から全電圧給電される。
【0029】
又、限流始動タイマ52cは、直流電動機41aの回転速度が所定の回転速度以上になっているときには直ちにタイムアップして、全電圧始動用リレーのコイル52bが付勢されるように構成されている。
【0030】
尚、全電圧始動用リレーの出力接点52aは、限流始動抵抗51cと限流始動用リレーの出力接点51aとの直列回路に対して並列接続するようにしてもよい。又、限流始動抵抗51cは、限流始動用リレーの出力接点51aの下流側、つまり出力接点51aに対して直流電動機41a側に接続されるようにしてもよい。
【0031】
回転駆動制御回路50Aには、望ましくは予備駆動制御回路59が併設される。この予備駆動制御回路59は、例えばDC/DCコンバータである低圧電源回路55と、コイル54bが付勢されたとき出力接点54aを閉じて車載バッテリ20から低圧電源回路55に給電する低圧電源リレーと、低圧電源回路55の出力端子と直流電動機41aとの間に直列接続された例えば電界効果型のパワートランジスタである開閉素子56及び限流駆動抵抗57と、開閉素子56に対してゲート電圧を供給するための分圧抵抗58a、58bとによって構成されている。
【0032】
予備駆動制御回路59は、マイクロプロセッサ32が発生する低圧電源駆動指令Esによってリレーコイル54bが付勢制御され、予備回転駆動指令Tcによって開閉素子56の導通状態が制御されるように構成されている。
【0033】
エンジン制御装置31Aに包含されている手動始動優先回路36は、ゲート素子34と論理和否定素子35a、35bとプルダウン抵抗37a、37b、37cとによって構成されている。プルダウン抵抗37a、37b、37cは、マイクロプロセッサ32が発生する手動始動禁止指令INHと回転駆動指令Rcと押出駆動指令Scについて、マイクロプロセッサ32が不作動であるときに論理レベルを「L」にしておくようグランド回路に接続するバイアス付勢抵抗となる。
【0034】
ゲート素子34は、始動指令スイッチ22の出力端子の論理レベルと手動始動禁止指令INHの否定論理との論理積出力を、論理和否定素子35a、35bのそれぞれに第一の入力信号として供給する。マイクロプロセッサ32が発生する回転駆動指令Rc又は押出駆動指令Scが第二の入力信号として入力される2入力の論理和否定素子35a、35bは、少なくとも一方の入力論理レベルが「H」になると出力論理レベルが「L」となって回転駆動制御回路50Aに対して回転駆動指令Rcを有効発生し、ピニオン押出機構44Aに対して押出駆動指令Scを有効発生する。
【0035】
電源スイッチ21が閉路されて電源リレー23の出力接点23aが閉路されたときに、
電源電圧Vbが正常であってマイクロプロセッサ32が作動を開始すると、手動始動禁止指令INHは論理レベル「H」となりゲート素子34の出力論理は「L」となるが、始動指令スイッチ22が閉路されると手動始動指令信号Stが論理レベル「H」となり、マイクロプロセッサ32は先ず押出駆動指令Scを発生し、その所定時間の後に回転駆動指令Rcを発生する。
【0036】
回転駆動指令Rcが発生されると、限流始動用リレーのコイル51bが付勢されてその出力接点51aを閉路し、限流始動抵抗51cと出力接点51aを介して直流電動機41aに給電され、電源電圧Vbが正常であれば、やがて限流始動タイマ52cが作動して全電圧始動用リレーの出力接点52aが閉路して直流電動機41aの全電圧始動が行われる。
【0037】
しかし、車載バッテリ20が過剰放電している寒冷始動において、直流電動機41aに始動電流が流れたことによって電源電圧Vbが異常低下し、マイクロプロセッサ32が一時的に不作動になると、マイクロプロセッサ32が発生していた手動始動禁止指令INH、押出駆動指令Sc、回転駆動指令Rcは、夫々、プルダウン抵抗37a、37b、37cによって論理レベル「L」となるが、始動指令スイッチ22が続けて閉路されておれば、ゲート素子34から論理和否定素子35a、35bを介してピニオン押出機構44Aと回転駆動制御回路50Aに対する駆動指令が持続される。このようにして直流電動機41aが始動され、その回転速度が上昇して始動電流が減少し、電源電圧Vbが正常状態に復帰すれば、マイクロプロセッサ32が再度動作を開始して、押出駆動指令Scと回転駆動指令Rcを発生しながら燃料噴射制御が開始され、やがてエンジンが自立回転するようになる。
【0038】
尚、エンジンが自立回転状態になると、マイクロプロセッサ32は手動始動禁止指令INHを発生すると共に、押出駆動指令Scと回転駆動指令Rcを停止する。その結果、たとえ始動指令スイッチ22が閉路され続けていても、エンジンの始動動作を完了することができるようになっている。エンジンの回転中に始動指令スイッチ22を閉路した場合も同様であり、マイクロプロセッサ32が正常動作しているときには押出駆動指令Scと回転駆動指令Rcは停止されるように構成されている。
【0039】
(2)作用・動作の詳細な説明
次に、この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置の動作について、図を参照して説明する。
【0040】
先ず、エンジンが完全停止した後に、始動用電動機ユニットによって再始動を行うときの動作を説明する。図1に於いて、電源スイッチ21が閉路されると、エンジン制御装置31A内のマイクロプロセッサ32が動作を開始し、マイクロプロセッサは回転センサ13を含むセンサ群24の動作状態と、プログラムメモリ33Aに予め書込まれている制御プログラムの内容に応動して、燃料噴射用電磁弁12やピニオン押出機構44A、回転駆動制御回路50Aを含む電気負荷群25の駆動制御を行なう。
【0041】
図2は、この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置に於ける、エンジンが完全停止した後に、始動用電動機ユニットによって再始動を行うときの動作を説明するタイムチャートである。図2の(A)は、マイクロプロセッサ32に入力される手動始動指令信号Stの論理レベルの変化を示す。図2の(A)に示すように、時刻t1に於いて前述の始動指令スイッチ22が閉路されると、論理レベルが「H」となり、時刻t5に於いて始動指令スイッチ22が開路されると、論理レベルが「L」に変化する。
【0042】
図2の(B)、(C)は、ピニオン押出機構44A内のシフト吸引コイル43aとシフ
ト保持コイル43bに対する給電状態を示す。図2の(B)及び(C)に示すように、時刻t1に於いて始動指令スイッチ22が閉路したことに応動してマイクロプロセッサ32が押出駆動指令Scを発生すると、シフト吸引コイル43aとシフト保持コイル43bが付勢されてシフトプランジャ43cが図1の左方向に吸引される。時刻t2に於いてピニオンギア42aとリングギア11の噛合連結が行われて噛合検出スイッチ46Aが開路することにより、シフト吸引コイル43aは消勢されるが、シフト保持コイル43bは付勢されたままであり、シフトプランジャ43cは吸引された位置に保持される。
【0043】
但し、実際には押出駆動指令Scは、電源電圧Vbに応動してオン/オフデューティが制御され、シフト吸引コイル43aとシフト保持コイル43bには電源電圧Vbが変動しても略一定の平均電圧が印加されると共に、この平均電圧は更に、ピニオンギア42aとリングギア11が当接するまでの当接所要時間Δtを置いて抑制された電圧になるよう制御される。又、シフト保持コイル43bは、始動指令スイッチ22が開路された時刻t5において消勢される。
【0044】
尚、シフト吸引コイル43aとシフト保持コイ43bは、後述の自動停止後の再始動に於いて、時刻t8で再度付勢されるように構成されている。
【0045】
図2の(D)、(E)は、回転駆動制御回路50Aの中の限流始動用リレーの出力接点51aと、全電圧始動用リレーの出力接点52aの開閉動作状態を示している。図2の(D)、(E)に示すように、押出駆動動作が開始されて当接所要時間を経過した時刻[t1+Δt]に於いて、限流始動用リレーのコイル51bが付勢されてその出力接点51aが閉路し、又、限流始動タイマ52cの設定時間である限流始動時間ΔTを経た時刻t4に於いて、全電圧始動用リレーのコイル52bが付勢されてその出力接点52aが閉路する。更に、始動完了時刻t5に於いて、源流始動用リレーのコイル51b及び全電圧始動用リレーのコイル52bが夫々消勢され、夫々の出力接点51a、52aは開路する。
【0046】
尚、限流始動用リレーと全電圧始動用リレーは、車載エンジンの自動停止後に再始動要求が発生した時刻t9から時刻t12に於いても、前述と同様の動作を行う。
【0047】
図2の(F)は、燃料噴射制御が行われる時間帯を示している。図2の(F)に於いて、時刻t3では直流電動機41aにより限流始動された車載エンジンの回転速度が燃料噴射開始回転速度N0に到達し、気筒順序判別ユニットによって判別された気筒順序に基づいて多気筒エンジンの各気筒に順次燃料噴射が開始され、ガソリンエンジンであれば噴射燃料に対する点火制御が行われる。後述の時刻t7では、車載エンジンの自動停止要求に基づいて燃料噴射が停止され、時刻t10では再始動要求に基づいて燃料噴射が再開するように制御される。
【0048】
図2の(G)は、実線により車載エンジンの回転速度を示し、点線によりリングギア11とピニオンギア42aとの周速比で換算したピニオン換算回転速度を示している。図2の(G)に示すように、ピニオンギア42aの回転速度とリングギア11の回転速度つまりエンジンの回転速度が一致しているときには、リングギア11とピニオンギア42aとの周速が一致し、同期噛合いのためのリングギア42aの押出時期となる。
【0049】
前述のピニオン換算回転速度は、下記の数式で示される。
ピニオン換算回転速度=ピニオンギアの回転速度
×(ピニオンギアの歯数/リングギアの歯数)
【0050】
ピニオン換算回転速度は、(時刻t1+Δt)に於いて限流始動が開始したことに伴って回転速度が上昇し、始動完了時刻t5以降は惰性減速してやがて停止するようになる。
実線で示すエンジン回転速度は、直流電動機41aの回転上昇に伴って上昇し、やがて自立回転を行ってアクセルペダルの踏込み度合に応じた回転速度となるが、自動停止要求が発生する時刻t6の前ではアイドル回転速度N1に減速している。再始動要求が発生した時刻t9以降でも同様の回転速度特性となるが、自動停止要求が発生した時刻t6に於いては後述のとおりである。
【0051】
図2(H)は、エンジンの自動停止要求信号を示している。図2の(H)に示すように、エンジンの自動停止要求信号は、アイドルストップモードが選択されていて、ブレーキペダルが踏込まれ、アクセルペダルが復帰して車速が所定の下限閾値以下となって停車状態にある時点t6に於いて発生する。
【0052】
但し、エンジンの自動停止要求信号が発生するその他の要件として、車載バッテリ20の電源電圧Vbが所定値以上であって、頻繁な再始動に耐えられる充電状態となっていることや、エンジンの冷却水温が所定値以上であるか、エンジンのアイドル回転速度が所定値以下で安定した暖機運転状態であること等も付帯的要件として付加されている。
【0053】
図2の(J)は、ピニオンギアの予備回転駆動指令信号を示している。図2の(J)に示すように、ピニオンギアの予備回転駆動指令信号は、時刻t6で発生した自動停止要求指令信号に応動して、同時刻t6で発生する。この予備回転駆動指令信号は、回転駆動制御回路50Aに対する回転駆動指令Rcと同じものであって、時刻t6で回転駆動指令Rcが発生すると、限流始動用リレーのコイル51bが付勢されてその出力接点51aが閉路し、限流始動抵抗51cを介して直流電動機41aが限流始動される。そして、図2の(G)に示すピニオン換算回転速度が予備駆動回転速度N3となる時点t7で予備回転駆動指令は解除され、直流電動機41aは惰性で減速開始する。
【0054】
但し、回転駆動制御回路50Aが予備駆動制御回路59を有する場合に於いては、アイドルストップモードが選択されたことによって低圧電源リレーのコイル54bが付勢され、その出力接点54aによって低圧電源回路55が例えばDC5[V]の低電圧出力を発生し、予備回転駆動指令Tcが発生したことによって開閉素子56が閉路して、限流駆動抵抗57を介して直流電動機41aを予備回転駆動するように構成されている。
【0055】
尚、限流駆動抵抗57の値を大きくしておいて、低圧電源回路55を廃止して出力接点54aと開閉素子56と限流駆動抵抗57を直列接続するようにしてもよく、何れの場合もパワートランジスタである開閉素子56を使用すると、予備回転駆動指令Tcに即応して直流電動機41aの予備回転駆動と駆動解除を行うことができるので、正確な予備駆動回転速度N3が得られる特徴がある。限流駆動抵抗57は、開閉素子56の閉路時の突入電流を抑制するためのものであるが、予備駆動制御回路59を有する場合には、低圧電源回路55が適度な内部インピーダンスを持つように設計することによって限流駆動抵抗57を廃止することもできる。
【0056】
図2の(F)、(G)に戻り、時刻t7で予備回転駆動が完了すると、燃料噴射が停止されてエンジン回転速度が急速に減少し、所定の押出回転速度N2に下降した時刻t8で図2の(B)、(C)で示すようにシフト吸引動作とシフト保持動作が行なわれ、ピニオンギア42aの押出駆動が行われる。
【0057】
その結果、ピニオンギア42aの当接所要時間Δtを経過した時点では、エンジン回転速度とピニオンギアの換算回転速度が一致して同期噛合いが行われる。ピニオンギア42aとリングギア11の同期噛合が行われた後、シフト吸引コイル43aは図2の(B)で示すとおり消勢されるが、シフト保持コイル43bは図2の(C)で示すとおり再始動完了時刻t12まで付勢状態を維持する。一方、エンジン回転速度は、図2の(G)で示す
ように減速を続け、やがて逆転動作を含む不安定回転状態を経過して完全停止することになる。
【0058】
図2の(K)は、車載エンジンが完全停止した後のエンジンの再始動要求指令信号を示している。図2の(K)に示すように、エンジンの再始動要求指令信号は、車載エンジンが完全停止した後に、ブレーキペダルを解除してアクセルペダルを踏込んだ時刻t9で発生する。この再始動要求指令信号が発生すると、前述の回転駆動指令Rcが同時に発生して、図2の(D)、(E)で示すとおり、限流始動用リレーと全電圧始動用リレーが順次作動し、時刻t12に於いて限流始動用リレーと全電圧始動用リレーが消勢されて再始動が完了する。この間に図2の(F)、(G)で示すとおり、エンジン回転速度が燃料噴射の開始回転速度N0に達すると、時刻t10に於いて燃料噴射制御が再開される。
【0059】
次に、運転中に自動停止要求が発生した直後に早期の再始動要求が発生した場合のエンジンの再始動について説明する。図3は、この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置に於ける、自動停止指令が発生した直後に、始動用電動機ユニットによらないで自己再始動を行うときの動作を説明するタイムチャートである。以下の説明では、初回始動に関する動作については図2の場合と同じであるから説明を省略する。
【0060】
図3の(A)は、図2の(A)と同様に、手動始動指令信号Stの発生状態を示している。図3の(B)、(C)は、図2の(B)、(C)と同様に、シフト吸引コイル43aとシフト保持コイル43bに対する給電状態を示している。図3の(D)、(E)は、図2の(D)、(E)と同様に、限流始動用リレーの出力接点51aと全電圧始動用リレーの出力接点52aの開閉動作状態を示している。図3の(F)は、図2の(F)と同様に、燃料噴射制御が行われている時間帯を示している。図3の(G)は、図2の(G)と同様に、実線ではエンジンの回転速度を示し、点線ではピニオンの換算回転速度を示しており、両回転速度が一致しているときにはリングギア11とピニオンギア42aとの周速が一致し、同期噛合いのための押出時期となっていることを示している。図3の(H)は、図2の(H)と同様に、時刻t6で発生するエンジンの自動停止要求信号を示している。
【0061】
図3の(J)は、図2の(J)と同様に、時刻t6で発生した自動停止要求に応動するピニオンギア42aの予備回転駆動指令の発生状態を示している。図3の(K)は、図2の(K)と同様に、時刻t9で発生するエンジンの再始動要求信号を示しているが、この再始動要求時刻t9は自動停止要求時刻t6の直後であって、図3の(J)で示した予備回転駆動指令は時刻t9に於いて直ちに停止され、ピニオン回転速度も図3の(G)で示すとおり所定の予備駆動回転速度N3に達する前に惰性減速を開始することになる。従って、図3の(F)に示す燃料噴射制御は持続しているので、エンジン回転速度はアイドル回転速度を維持したままとなっていて、再始動を必要としない状態となっている。
【0062】
又、再始動要求の発生が少し遅れて発生した場合であって、ピニオン回転速度が予備駆動回転速度N3に達して燃料噴射が停止した後に再始動要求が発生した場合であっても、エンジン回転速度が自己始動回転速度N4以上であれば燃料噴射を再開するだけで始動用電動機ユニット40Aの補助がなくてもエンジンは再始動が完了するようになっている。
【0063】
次に、運転中に自動停止要求が発生した直後で、エンジンの減速回転中に再始動要求が発生した場合のエンジンの再始動について説明する。図4は、この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置に於ける、エンジンが減速回転中に、始動用電動機ユニットによって再始動を行うときの動作を説明するタイムチャートである。以下の説明では、初回始動に関する動作特性は図2の場合と同じであるから説明を省略する。
【0064】
又、図4の(A)〜(K)は、夫々、図2の(A)〜(K)に相当しているので、両者
の相違点を中心にして説明する。図4と図2との根本的な相違点は、図4の(K)と図2の(K)を対比すれば明らかなとおり、再始動要求が発生する時刻t9の発生時点の相違であり、図4の(K)の場合は、再始動要求が発生する時刻t9はエンジンの減速回転中に発生している。
【0065】
従って、図4の(H)の時刻t6で自動停止要求が発生すると、図4の(J)で示すとおり同時に予備回転駆動指令が発生して、図4の(G)で示すとおりピニオン回転速度が上昇し、時刻t7に於いて所定の予備駆動回転速度N3に到達する。そして図4の(F)で示すとおりその時刻t7で燃料噴射が停止してエンジンが減速開始し、図4の(G)で示すとおり時刻t8に於いてエンジンの回転速度が所定の押出回転速度N2まで減速する。図4の(B)、(C)で示すとおり、この時点t8でピニオンギアの押出駆動が開始し、ピニオンギア42aとリングギア11とが当接した頃合の時刻t9に於いて図4の(K)で示す再始動要求指令が発生し、同時に図4の(D)で示すとおり回転駆動指令が発生して限流始動リレーが付勢される。
【0066】
エンジン回転速度がピニオンギア42aの予備駆動回転速度N3に対応した所定の回転速度を超過しているときには、限流始動タイマ52cは直ちにタイムアップするようになっているので、限流始動時間ΔTを待たないで図4の(E)で示すとおり全電圧始動リレーが付勢され、続いて図4の(F)で示すとおり燃料噴射が再開する。
【0067】
尚、前述の図3のタイムチャートで示した再始動の事例では、たとえエンジンが減速開始していても、燃料噴射を再開するだけで直流電動機41aによる始動援助を必要としない場合であったが、図4のタイムチャートで示した再始動の事例では、エンジンが更に減速して直流電動機41aによる始動援助がなければ燃料噴射を再開しただけでは再始動が困難な場合を示しており、便宜上では時刻t8以降に於いて再始動要求が発生した場合に相当している。但し、エンジン回転速度が噴射開始回転速度N0以下に減速していた場合には、前述の図2のタイムチャートで示した再始動の事例と同様に、燃料噴射を開始する前に気筒順序の判別処理が必要となる。
【0068】
次に、前述のように構成されたこの発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置の動作について、フローチャートを用いて説明する。図5乃至図8は、この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置の動作を説明するフローチャートであって、図5は主として手動始動制御部分の動作を説明する第1のフローチャート、図6は主としてピニオンギアの予備回転駆動制御部分の動作を説明する第2のフローチャート、図7は主としてピニオンギアの押出駆動制御部分の動作を説明する第3のフローチャート、図8は主として再始動制御部分の動作を説明する第4のフローチャートである。
【0069】
図1を参照しつつ図5に於いて、先ず、ステップ500では電源スイッチ21を手動閉路し、続くステップ501では電源スイッチ21が閉路されたことに伴って電源リレー23が付勢されてその出力接点23aが閉路し、続くステップ502ではエンジン制御装置31Aに給電されて、図示していない定電圧電源回路を介してマイクロプロセッサ32に給電されマイクロプロセッサ32が制御動作を開始し、続くステップ503ではマイクロプロセッサ32が電源保持指令Drを発生して、電源リレー23の自己保持動作を行う。
【0070】
続くステップ510では、マイクロプロセッサ32がエンジンの始動制御動作を開始する。続いて、ステップ511aにより始動指令スイッチ22が閉路して手動始動指令信号Stが入力されているか否かを判定し、始動指令スイッチ22が閉路して手動始動指令信号ありであればYESの判定を行ってステップ512へ移行し、開路して手動始動指令信号なしであればNOの判定を行ってステップ511bへ移行する。
【0071】
ステップ511bに移行すると、電源スイッチ21が閉路され電源スイッチ信号Psが入力されているか否かを判定し、閉路しておればYESの判定を行ってステップ518へ移行し、開路であればNOの判定を行ってステップ519aへ移行する。
【0072】
ステップ518では、自動停止モードつまりアイドルストップ制御モードの選択スイッチが閉路されているか否かを判定し、アイドルストップ制御モードが選択されていればYESの判定を行ない、ノードAを経由して後述の図6におけるステップ611bへ移行し、アイドルストップ制御モードが選択されていなければNOの判定を行って後述のステップ519bへ移行する。
【0073】
尚、アイドルストップモードの選択スイッチは、専用の手動操作スイッチによるか、又は変速機のシフトレンジによって自動的に選択され、例えば前進ドライブレンジDとニュートラルレンジNではアイドルストップが実行され、後退レンジRと駐車レンジPではアイドルストップは行わないようにすることもできる。
【0074】
ステップ511bでの判定の結果、NOの判定をされてステップ519aに進むと、燃料噴射制御と気筒順序の判別制御を停止すると共に、運転中の学習記憶情報や異常発生履歴情報を図示しない不揮発データメモリに転送保存してから電源保持指令Drを解除する。これに伴って電源リレー23が消勢され、エンジン制御装置31Aの動作が停止する。
【0075】
前述のステップ518でNOの判定をされてステップ519bに進むと、燃料噴射状態を継続し、後述のステップ517により燃料噴射が開始されておれば噴射状態を維持する。次にステップ513bでは他のステップでシフト吸引コイル43aやシフト保持コイル43bが付勢されておれば、これらを消勢してからステップ515bへ移行する。ステップ515bでは、他のステップで直流電動機41aに給電されておればこの給電を解除してから動作終了行程520へ移行する。ステップ520では他の制御動作を実行してから、例えば10[msec]程度の所定の時間内に再び動作開始ステップ510へ移行する。
【0076】
前述のステップ511aにて始動指令スイッチがONであると判定されて(YES判定)ステップ512に移行すると、後述のステップ612dで記憶した自動停止指令の記憶状態を解除してからステップ513aへ移行する。ステップ513aでは、押出駆動指令Scを発生してシフト吸引コイル43aとシフト保持コイル43bを付勢し、次のステップ514へ進む。
【0077】
ステップ514へ移行すると、ステップ514ではピニオンギア42aが押出駆動されてリングギア11に当接する頃合の時間が経過したか否かを判定し、その頃合の時間を未経過であればNOの判定を行ってステップ511aへ復帰し、その頃合の時間を経過していればYESの判定を行ってステップ515aへ移行する。ステップ515aでは、回転駆動指令Rcを発生して回転駆動制御回路50Aを介して直流電動機41aへの電源を投入し、続くステップ516ではエンジン回転速度が噴射開始回転速度N0(例えば200
〜300[rpm])に到達したか否かを判定し、到達していればYESの判定を行ってステップ517へ移行し、未到達ならばNOの判定を行ってステップ511aへ復帰する。
【0078】
ステップ517では、多気筒エンジンである車載エンジンに対して順次燃料噴射及び点火制御を行なうための気筒順序の判別を行なってから燃料噴射制御を開始し、ステップ511aへ復帰する。エンジンが自立回転を開始するか、又は手動始動操作を中断した場合には始動指令スイッチ22が開路され、ステップ511aでの判定がNOになって前述のステップ511bへ移行することになる。
【0079】
尚、ステップ513aは、図2の(B)、(C)に於ける時刻t1に相当し、ステップ515aは図2の(D)に於ける時刻(t1+Δt)に相当し、ステップ517は図2の(F)に於ける時刻t3に相当しているが、エンジンが自立回転するまではステップ511aからステップ517を循環し、その中間過程で図2の(E)の時刻t4に於ける全電圧始動が開始され、図2の(A)の時刻t5に於いて始動指令スイッチ22が開路されたことによってステップ511aがNOの判定を行い、以降はステップ510、511a、511b、518、519b、513b、515b、520、510を循環しながらステップ518が自動停止モードになることを待機している状態となる。
【0080】
次に、前述のステップ518での判定の結果、自動停止モードつまりアイドルストップ制御モードの選択スイッチが閉路されていると判定されて(YES判定)、ノードAを経由して図6に於けるステップ611bへ移行した場合について説明する。図6に於いて、ステップ611bは、前述したように図5のステップ518の判定がYESであるときに実行され、回転駆動制御回路50Aに対して予備駆動制御回路59が併用されている場合において、低圧電源駆動指令Esを発生し、次のステップ612aへ移行する。
【0081】
ステップ612aでは、後述のステップ612dで自動停止指令の発生記憶が行われているか否かを判定し、既に自動停止指令の発生が記憶されていればYESの判定を行ってノードBを介して後述する図7のステップ700aへ移行し、未だ自動停止指令が発生していなければNOの判定を行ってステップ612bへ移行する。
【0082】
ステップ612bでは、エンジンの回転速度が所定のアイドル回転速度N1(例えば600〜700[rpm])の帯域内であるか否かを判定し、アイドル回転帯域内であればYESの判定を行ってステップ612cへ移行し、アイドル回転帯域外であればNOの判定を行って動作終了行程520へ移行する。ステップ612cへ移行すると、自動停止要件が成立したか否か判定し、自動停止要件が成立していなければNOの判定を行って動作終了行程520へ移行し、自動停止要件が成立すればYESの判定を行ってステップ612dへ移行する。
【0083】
ステップ612dでは、自動停止指令を発生すると共に、自動停止指令が発生したことを記憶してからステップ612eへ移行する。ステップ612eに移行すると、再始動指令が発生しているか否かを判定し、発生しておればYESの判定を行ってノードDを介して後述の図8のステップ811へ移行し、未発生であればNOの判定を行ってステップ613Aへ移行する。
【0084】
尚、ステップ612e乃至ステップ617によって構成されたステップブロック618Aに於いて、ステップ613Aとステップ616Aは図1に示すこの発明の実施の形態1に関するものであるのに対し、ステップ613Bとステップ616Bを含むステップブロック618Bは後述する図9に示すこの発明の実施の形態2に関するものとなっている。
【0085】
ステップ613Aでは、予備回転駆動指令を発生してからステップ614へ移行する。ここでいう予備回転駆動指令は、予備駆動制御回路59を有する場合は、開閉素子56に対する予備回転駆動指令Tcであるのに対し、予備駆動制御回路59が併用されていない場合は回転駆動制御回路50Aに対する予備回転駆動指令として回転駆動指令Rcを兼用するようになっている。
なお、回転駆動指令Rcは前述の図5におけるステップ515aや、後述の図8におけるステップ813において、ピニオンギア42aのシフト動作が完了した時点で車載エンジン10を回転駆動するためのものであるが、ステップ613Aではピニオンギア42aのシフト動作が行われる前段階でピニオンギア42aの単独駆動を行うための指令となっ
ている。
【0086】
ステップ614は、ピニオンギア42aの回転センサ48を有しているかどうかによってステップ615又はステップ616Aへ移行する判定ステップであるが、実際には回転センサ48を有する場合にはステップ614とステップ616Aが省略されてステップ615のみが実行され、回転センサ48が無い場合にはステップ614とステップ615が省略されてステップ616Aのみが実行されるようになる。
【0087】
ステップ615では、回転センサ48が発生するパルス信号の周波数又はパルス間隔の逆数によってピニオンギア42aの回転速度を検出し、リングギア11の周速に換算したピニオン換算回転数を演算算出する。ステップ616Aでは、直流電動機41aに対する給電時間と回転速度との相対関係を電源電圧をパラメータとして測定した標準特性に基づいて、現在の給電時間と電源電圧の値から現在の回転速度を推定し、リングギア11の周速に換算したピニオン換算回転数を演算算出する。
【0088】
ステップ615又はステップ616Aに続くステップ617では、ピニオンギア42aの換算回転速度が、目標となる図2の(G)の予備駆動回転速度N3(例えば300〜400[rpm])に到達したか否かを判定し、目標回転速度に達していなければNOの判定を行ってステップ612eへ復帰して予備回転駆動を継続し、目標回転速度に達すればYESの判定を行って中継端子Bを介して図7のステップ700aへ移行する。又、ステップ612eに於けるYESの判定は、図3の(J)、(K)の時刻t9に相当しており、予備回転駆動が中断されて自己再始動が行われる。
【0089】
尚、図5に於けるステップ517は燃料噴射制御ユニット、図6に於けるステップ613Aは予備回転駆動指令ユニット、ステップ615はピニオン回転速度検出ユニット、ステップ616Aはピニオン回転速度推定ユニット、ステップブロック618Aは予備回転駆動制御ユニット、となる制御プログラムを夫々表現したステップとなっている。
【0090】
次に、主としてピニオンギアの押出駆動制御部分の動作について説明する。図7に於いて、ステップ700aは、図6のステップ612aの判定がYESであって既にステップブロック618Aによる予備回転駆動が実行された後であるか、又はステップ617がYESの判定を行って予備回転駆動が終了したことに続いて実行され、燃料噴射は停止するが気筒順序の判別制御は継続するステップである。これにより、図2の(G)の時刻t7から時刻t8で示すとおりエンジン回転速度は減速を開始し、一方に於いて予備回転駆動が停止されたピニオンギアの回転速度も徐々に惰性減速していることになる。
【0091】
続くステップ700bでは、後述のステップ703Aによってピニオンギア42aの押出し駆動が行われたか否かを判定し、押出し駆動が未だ行われていない初回動作であるときにはNOの判定を行ってステップ700cへ移行し、既に押出し駆動が行なわれた後にステップ700bが実行されたときにはYESの判定を行ってステップ703Aへ移行する。ステップ700cはピニオンギアの押出駆動中断判定を行う判定ステップであり、再始動指令が発生し、しかもエンジン回転速度が自己始動回転速度N4以上の回転速度であって、始動用電動機ユニット40Aによる支援を必要としないときにYESの判定を行って、ノードEを介して図8のステップ811へ移行するが、再始動指令が発生していないか、発生していてもエンジン回転速度が自己始動回転速度N4未満であって始動用電動機ユニット40Aによる支援を必要とするときには、NOの判定を行なってステップ701aへ移行する。
【0092】
ステップ701aでは、例えばクランク角センサであるエンジンの回転センサ13が発生するパルス信号の周波数又はパルス間隔の逆数によってエンジン10の回転速度を検出
し、続くステップ714では、ピニオンギア42aの回転センサ48を有しているか否かによって、ステップ711aからステップ712b、又はステップ701bからステップ702bが実行される。実際には、回転センサ48を有する場合にはステップ714乃至ステップ702bが省略されてステップ711a乃至ステップ712bが実行され、回転センサ48が無い場合にはステップ714乃至ステップ712bが省略されてステップ701b乃至ステップ702bが実行されるように構成されている。
【0093】
ピニオンギア42aの回転センサ48が有る場合には、ステップ701aに続くステップ711aではステップ701aによって検出されたエンジン回転速度と図6のステップ615で演算して算出されたピニオンギア42aの換算回転速度との偏差に比例した周速偏差を演算して算出する。続くステップ711bでは、変速機14の選択レンジが車両の駆動レンジであればYESの判定を行ってステップ712aへ移行し、非駆動レンジであればNOの判定を行ってステップ712bへ移行する。ステップ712aでは、ステップ711aで算出された周速偏差が第一の閾値偏差速度以下になったかどうかを判定し、周速偏差が第一の閾値偏差速度以下であればYESの判定を行ってステップ703Aへ移行し、周速偏差が第一の閾値偏差速度が以下でなければステップ700cへ復帰して周速偏差の減少を待つこととなる。
【0094】
ステップ712bでは、ステップ711aで算出された周速偏差が第2の閾値偏差速度以下になったか否かを判定し、その周速偏差が第2の閾値偏差速度以下であればYESの判定を行ってステップ703Aへ移行し、その周速偏差が第2の閾値偏差速度以下でなければステップ700cへ復帰して周速偏差の減少を待つこととなる。
【0095】
尚、例えば変速機14の選択レンジが前進ドライブレンジD又はニュートラルレンジNであるときに自動停止の要件が成立し、後退レンジRや駐車レンジPが選択されているときには自動停止は行わないものとすれば、ステップ711bがYESの判定を行うのはドライブレンジDのときであり、NOの判定を行うのはニュートラルレンジNのときであって、ドライブレンジDが選択されているときのエンジンの惰性減速回転はニュートラルレンジNが選択されているときのエンジンの惰性減速回転よりも急速に減速するので、第1の閾値偏差速度は第2の閾値偏差速度よりも高い回転速度が設定されている。
【0096】
ピニオンギア42aの回転センサ48が無い場合には、ステップ701aに続くステップ701bでは変速機14の選択レンジが車両の駆動レンジであればYESの判定を行ってステップ702aへ移行し、非駆動レンジであればNOの判定を行ってステップ702bへ移行する。ステップ702aではステップ701aで算出されたエンジンの回転速度が第1の閾値回転速度N21以下になったか否か判定し、以下であればYESの判定を行ってステップ703Aへ移行し、以下でなければステップ700cへ復帰して回転速度の減少を待つ。
【0097】
ステップ702bでは、ステップ701aで算出されたエンジンの回転速度が第2の閾値回転速度N22以下になったか否かを判定し、以下であればYESの判定を行ってステップ703Aへ移行し、以下でなければステップ700cへ復帰して回転速度の減少を待つ。例えば、第1の閾値回転速度N21は550[rpm]、第2の閾値回転速度N22は500[rpm]であり、このように第1の閾値回転速度の方が高い回転速度となっている。
【0098】
ステップ703Aでは、押出駆動指令Scを発生してシフト吸引コイル43aとシフト保持コイル43bを付勢し、続くステップ704Aでは、車載バッテリ20の電源電圧Vbの値に反比例した通電デューティとなるように押出駆動指令Scをオン/オフして、シフト吸引コイル43aとシフト保持コイル43bに印加される電圧を一定値に維持する。
このステップ704Aは、ピニオンギア42aとリングギア11の当接所要時間Δtを一定にするための電圧補正ユニットに相当することになる。
【0099】
尚、図2の(G)で示された押出開始回転速度N2は、ステップ702a又はステップ702bで判定される2種類の回転速度の何れか一方であり、ステップ703Aは、図2の(B)、(C)に於ける時刻t8に相当している。
【0100】
更に、ステップ701a乃至ステップ704Aによって構成されたステップブロック710Aに於いて、ステップ703Aとステップ704Aは図1で示したこの発明の実施の形態1に関するものであるのに対し、ステップ703Bとステップ704Bを含むステップブロック710Bは後述する図9に示すこの発明の実施の形態2に関するものとなっている。
【0101】
次に、主として再始動制御部分の動作を説明する。図8に於いて、ステップ800は、図7のステップ704Aに続いて実行されるステップであり、当該ステップ800では自動停止後の再始動要件が成立したか否かを判定し、再始動要求有りであればYESの判定を行ってステップ810へ移行し、再始動要求が発生していなければNOの判定を行ってステップ801へ移行する。
【0102】
ステップ801では、例えば60[秒]程度の所定時間が経過したか否かを判定し、未経過であればNOの判定を行って動作終了行程520へ移行し、経過しておればYESの判定を行ってステップ802へ移行する。ステップ802では、押出駆動指令Scを停止してシフト保持コイル43bを消勢するが、シフト吸引コイル43aは噛合検出スイッチ46Aによって既に消勢されている。続くステップ803では、図6のステップ612dで記憶された自動停止指令の発生記憶を解除し、続くステップ804では気筒順序の判別制御を停止して動作終了行程520へ移行する。
【0103】
尚、図6のステップ612dで自動停止指令が発生した後に、図7を経て図8のステップ800に至り、ステップ800にて判定の結果、引続き再始動要求が発生していない場合にはNO判定となって、ステップ801により経過時間が判定され、所定時間、例えば60[秒]、を経過しても再始動要求が発生しない場合には(YES判定)、ステップ802によりシフトコイルの駆動を停止してピニオンギア42aを復帰させ、ステップ803により自動停止指令の記憶を解除し、ステップ804により気筒順序の判別を停止する。この場合には、たとえ再始動要求が発生してもエンジンの始動操作は行われず、図5のステップ511aで示すとおり始動指令スイッチ22による手動始動操作によってエンジンを始動するようになる。
【0104】
次に、ステップ800により再始動要求ありと判定されて(YES判定)ステップ810に進むと、前述の図7のステップ700aで給燃停止されて惰性減速するエンジン回転速度が、直流電動機41aによる支援駆動がなくても給燃を再開するだけで自己始動可能な所定の回転速度N4、例えば400[rpm]、以上の回転速度であるかどうかを判定し、自己始動回転速度N4以上であればYESの判定を行ってステップ811へ移行し、自己起動回転速度N4未満であればNOの判定を行ってステップ813へ移行する。
【0105】
ステップ810からステップ811に進むと、気筒順序判別制御を継続しながらピニオンギア42aの予備回転駆動を停止すると共に、押出駆動を停止してピニオンギア42aを復帰させ、更に図6のステップ612dで記憶された自動停止指令の記憶状態を解除する。次にステップ812では、被判別気筒に対して順次同期噴射を行い、動作終了行程520へ移行する。
【0106】
前述のステップ810からステップ813に進むと、回転駆動制御回路50Aに対して回転駆動指令Rcを供給して直流電動機41aを限流始動する(電源投入1)と共に、やがて所定の限流始動時間ΔTをおいて全電圧始動を行う(電源投入2)。続くステップ814では、被判別気筒に対して順次同期噴射を行い、ステップ815へ移行し、ステップ815では、エンジンが自立回転可能な所定の回転速度に到達したか否かを判定し、その所定の回転速度に未到達であればNOの判定を行ってステップ813へ復帰し、その所定の回転速度に到達していればYESの判定を行ってステップ816へ移行する。
【0107】
ステップ816では、図7のステップ703Aで付勢されていたシフト吸引コイル43aやシフト保持コイル43bを消勢し、ステップ817へ移行する。ステップ817では、図6のステップ612dで記憶された自動停止指令を解除してからステップ818へ移行し、ステップ818では多気筒エンジンに対する同期噴射を継続しながら動作終了行程520へ移行する。ステップ520では、他の制御動作を実行してから、例えば10[msec]程度の所定の時間内に再び動作開始ステップ510へ移行する。
【0108】
尚、図7及び図8に於いて、ステップ701aはエンジン回転速度検出ユニット、ステップ702aは第1の回転速度判定ユニット、ステップ702bは第2の回転速度判定ユニット、ステップ704Aは電圧補正ユニット、ステップ710Aはピニオンギアの押出駆動制御ユニット、ステップ711aは周速偏差演算ユニット、ステップ712aは第1の周速偏差判定ユニット、ステップ712bは第2の周速偏差判定ユニット、ステップ802は自動停止状態解除ユニットに相当し、ステップ812、814は燃料噴射制御ユニット、ステップ811とステップ812によって構成されたステップブロック819は自己再始動ユニット、となる制御プログラムを表現したステップとなっている。
【0109】
(3)実施の形態1の要点と特徴
次に、以上述べたこの発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置の要点と特徴について述べる。
【0110】
1)この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置は、
車載バッテリ20から給電駆動される直流電動機41aと、当該直流電動機によって回転駆動されるピニオンギア42aと、車載エンジン10の回転軸に設けられたリングギア11に対して前記ピニオンギア42aを連結又は離脱させるピニオン押出機構44Aとを備えた始動用電動機ユニット40Aと、前記直流電動機41aに給電する回転駆動制御回路50Aと、エンジン10のアイドル回転中に自動停止要件が成立すると燃料噴射用電磁弁12に対する燃料噴射指令INJを停止してエンジン10を停止させ、エンジンの再始動要件が成立すると前記回転駆動制御回路50Aに対する回転駆動指令Rcと前記燃料噴射指令INJを発生して、エンジン10を再始動させるエンジン制御装置31A、とによって構成された車載エンジンの始動制御装置30Aであって、
前記エンジン制御装置31Aは、燃料噴射制御ユニット517、812、814となる制御プログラムが格納されているプログラムメモリ33Aと協働するマイクロプロセッサ32を備え、
前記プログラムメモリ33Aは更に、回転センサ13に応動するエンジン回転速度検出ユニット701aと、前記ピニオンギア42aの回転速度推定ユニット616A又はピニオン回転センサ48に応動するピニオン回転速度検出ユニット615と、前記ピニオンギア42aの予備回転駆動制御ユニット618Aと、前記ピニオン押出機構44Aに対して押出駆動指令Scを発生する押出駆動制御ユニット710Aとなる制御プログラムを包含している。
【0111】
前記マイクロプロセッサ32は、エンジンの自動停止要件が成立すると前記燃料噴射指令INJを停止し、当該燃料噴射の停止前後において、少なくともエンジン回転速度が所
定の当初回転速度に低下するまでには、エンジンの再始動要件が不成立であっても、前記予備回転駆動制御ユニット618Aによって前記ピニオンギア42aの回転駆動を開始し、エンジン10が不安定回転とならない所定の下限回転速度に減速するまでには、前記ピニオンギア42aの押出駆動制御ユニット710Aによって前記ピニオンギア42aを前記リングギア11に対して連結駆動し、当該連結駆動完了時点に於いて、エンジンの再始動要件が既に発生しているか、又は遅れて再始動要件が成立したことによって前記回転駆動指令Rcと前記燃料噴射指令INJを発生して、惰性回転中及び停止中のエンジン10を再始動するように構成されていることを特徴とする。
【0112】
2)又、この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置において、
前記燃料噴射制御ユニット517、812、814は更に、多気筒エンジンに対して順次燃料噴射を行うための気筒順序判別ユニットを包含し、
当該気筒順序判別ユニットは、燃料噴射の停止中でも継続動作し、
前記下限回転速度は、始動指令スイッチ22によるエンジン10の通常始動時に、前記気筒順序判別ユニットによって燃料噴射が可能となる燃料噴射開始回転速度N0以上のエンジン回転速度であることを特徴とする。
以上の構成によれば、ピニオンギアの押出駆動が完了する時点の車載エンジンの下限回転速度は、燃料噴射開始回転速度以上の回転速度となっている。
従って、ピニオンギアの押出駆動完了直後にエンジンの再始動要求が発生した場合には、直ちに燃料噴射が可能となり始動用電動機ユニットによる回転駆動トルクの補助を受けながら速やかにエンジン始動が行える効果がある。
【0113】
3)又、この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置において、
前記プログラムメモリ33Aは更に、自己再始動ユニット819となる制御プログラムを包含し、
当該自己再始動ユニット819は、前記自動停止要件の成立によって燃料噴射指令INJが停止した後も気筒順序の判別制御を継続し、エンジン回転速度が所定の自己始動回転速度以下に減速する前に再始動要件が成立した場合に、前記ピニオンギア42aの押出駆動を解除するか、又は被駆動状態であることを確認して、既に判別されている気筒順序に基づいて前記燃料噴射制御ユニット812によって燃料噴射指令INJの発生を再開し、始動用電動機ユニット40Aに依存しないでエンジン10を再始動するように構成されて
いる、ことを特徴とする。
以上の構成によれば、自動停止要件の成立に伴って燃料噴射が停止しても、惰性減速回転中のエンジンに対する気筒順序の判別制御は継続し、エンジン回転速度が所定の自己始動回転速度以上であるときに再始動要求が発生すると燃料噴射を再開し、始動用電動機ユニットを回転駆動することなくエンジンを再始動するようになる。
従って、燃料噴射の再開に当たって新に気筒順序の判別を行う必要がなく、多気筒エンジンの適正気筒に対して速やかに燃料噴射を行って、確実に自己始動を行うことができる特徴がある。
【0114】
4)更に、この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置において、
前記ピニオンギア42aの予備回転駆動を開始するエンジン10の当初回転速度は、前記自己始動回転速度以上の回転速度であって、前記自己再始動ユニット819によって燃料供給を再開するときには前記ピニオンギアの予備回転駆動制御ユニット618Aは前記ピニオンギア42aの予備回転駆動指令を停止することを特徴とする。
以上の構成によれば、ピニオンギアの予備回転駆動を開始するエンジンの当初回転速度は、エンジンの自己始動回転速度以上の高速回転速度となっており、早期の再始動要求によって自己再始動を行うときには、ピニオンギアの予備回転駆動を停止する。
従って、当初回転速度をなるべく高い回転速度にして早期に予備回転駆動を開始することによって、エンジン回転速度が低下する前に確実に予備回転駆動を完了させることがで
きる特徴がある。
尚、まれに発生する早期の再始動要求によって自己始動を行うときには、ピニオンギアの予備回転駆動は無駄な動作となるが、少なくとも予備回転駆動指令は直ちに停止されるように構成されている。
【0115】
5)又、この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置において、
前記予備回転駆動制御ユニット618Aは、ピニオンギアの予備回転駆動指令ユニット613Aを包含し、
当該予備回転駆動指令ユニット613Aは、エンジンの自動停止要件が成立したときに前記回転駆動制御回路50Aに対して予備回転駆動指令となる回転駆動指令Rcを発生し
、前記回転駆動制御回路50Aに設けられた限流始動用リレーの出力接点51aと限流始動抵抗51cを介して前記直流電動機41aを回転駆動し、
前記回転速度推定ユニット616Aは、前記直流電動機41aに対する給電時間と回転速度との相対関係を電源電圧をパラメータとして測定した標準特性に基づいて、現在の給電時間と電源電圧の値から現在の回転速度を推定し、
前記予備回転駆動制御ユニット618Aは、前記ピニオンギア42aの回転速度が所定の目標回転速度に到達したこと、又は到達を予測して前記回転駆動指令Rcを停止する、ことを特徴とする。
以上の構成によれば、回転駆動指令に応動する限流始動用リレーの出力接点と限流始動抵抗を介して直流電動機に給電することによってピニオンギアに対する予備回転駆動を行う。
従って、直流電動機に対して過大電流が流れず、車載バッテリの過放電が防止されると共に、無負荷状態にある直流電動機の急速な回転速度の上昇を抑制して、給電駆動時間のバラツキ変動による目標回転速度に対する誤差を抑制することができる特徴がある。
【0116】
6)又、この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置において、
前記予備回転駆動制御ユニット618Aは、ピニオンギアの予備回転駆動指令ユニット613Aを包含し、前記回転駆動制御回路50Aは更に、開閉素子56と低電圧電源回路55又は限流駆動抵抗57の少なくとも一方を含む予備駆動制御回路59が併設され、
前記予備回転駆動指令ユニット613Aは、エンジンの自動停止要件が成立したときに前記開閉素子56に対して予備回転駆動指令Tcを発生し、当該開閉素子56と前記低電圧電源回路55又は限流駆動抵抗57とを介して前記直流電動機41aを回転駆動し、
前記回転速度推定ユニット616Aは、前記直流電動機41aに対する給電時間と回転速度との相対関係を電源電圧をパラメータとして測定した標準特性に基づいて、現在の給電時間と電源電圧の値から現在の回転速度を推定し、
前記予備回転駆動制御ユニット618Aは、前記ピニオンギア42aの回転速度が所定の目標回転速度に到達したことによって前記予備回転駆動指令Tcを停止する、
ことを特徴とする。
以上の構成によれば、回転駆動制御回路に対して予備駆動制御回路が併設され、予備回転駆動指令に応動する開閉素子を介して直流電動機に給電することによってピニオンギアに対する予備回転駆動を行う。
従って、開閉素子にはエンジンの始動に必要な大電流が流れないので大電流容量の開閉素子を必要とせず、目標回転速度に達すると速やかに直流電動機の駆動を停止して、正確な目標回転速度を得ることができる特徴がある。
【0117】
7)更に、この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置において、
前記始動用電動機ユニット40Aは、前記ピニオンギア42aの回転速度を検出するための回転センサ48を備え、
前記予備回転駆動制御ユニット618Aは、前記回転センサ48に応動するピニオン回転速度検出ユニット615と予備回転駆動指令ユニット613Aを包含し、
前記予備回転駆動指令ユニット613Aは、エンジンの自動停止要件が成立したときに、前記回転駆動制御回路50Aに対して予備回転駆動指令となる回転駆動指令Rcを発生して前記直流電動機41aを回転駆動するか、又は前記直流電動機41aに直列接続された開閉素子56に対して予備回転駆動指令Tcを発生して当該直流電動機41aを回転駆動し、
前記予備回転駆動制御ユニット618Aは、前記ピニオン回転速度検出ユニット615によって検出された前記ピニオンギア42aの回転速度が前記所定の目標回転速度に到達すること若しくは前記検出されたピニオンギアの回転速度が所定の目標回転速度に到達することを予測した時点でピニオンギア42aの予備回転駆動を停止するか、又は前記ピニオンギアの回転速度を当該目標回転速度を維持するように前記始動用電動機ユニットの回転速度制御を行うことを特徴とする。
以上の構成によれば、始動用電動機ユニットはピニオンギアの回転速度を測定するための回転センサを備えている。
従って、予備回転駆動の回転速度を正確に目標回転速度に接近させることができる特徴がある。
【0118】
8)又、この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置において、
前記ピニオンギアの押出駆動制御ユニット710Aは更に、第1の回転速度判定ユニット702a,及び第2の回転速度判定ユニット702bを備え、
前記ピニオンギアの押出駆動制御ユニット710Aは、前記エンジン回転速度検出ユニット701aによって検出されたエンジン10の惰性減速回転速度が所定の回転速度に降下した時点で前記ピニオンギア42aの押出動作を開始し、当該所定の回転速度は所要の応答時間の後に前記ピニオンギア42aとリングギア11とが接触開始した時点では、惰性減速するリングギア11の回転周速と予備回転駆動されていたピニオンギア42aの回転周速が一致する回転速度となることを目標として算出された回転速度であり、
前記第1の回転速度判定ユニット702aは、前記エンジン10から駆動される変速機14が車両を駆動するレンジに選択されているときに前記所定の回転速度として第1の閾値回転速度を適用し、
前記第2の回転速度判定ユニット702bは、前記エンジン10から駆動される変速機14が車両を駆動しない非駆動レンジに選択されているときに前記所定の回転速度として前記第1の閾値回転速度よりも小さな値である第2の閾値回速度を適用することを特徴とする。
以上の構成によれば、エンジン回転速度の惰性減速度合が、変速機の選択レンジによって変化することに着目して、ピニオンギアの押出駆動開始時のエンジン回転速度を補正する。
従って、ピニオンギアとリングギアとが接合する時点の周速を一致させて、ギアの損耗寿命を延長させることができる特徴がある。
【0119】
9)又、この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置において、
前記始動用電動機ユニット40Aは、前記ピニオンギア42aの回転速度を検出するための回転センサ48を備え、
前記ピニオンギアの押出駆動制御ユニット710Aは更に、周速偏差演算ユニット711aと第1の周速偏差判定ユニット712a及び第2の周速偏差判定ユニット712bとを包含し、
前記周速偏差演算ユニット711aは、前記エンジン回転速度検出ユニット701aによって検出されたエンジン回転速度に基づく前記リングギア11の周速と、前記ピニオンギア42aの回転センサ48に応動して検出された回転速度に基づくピニオンギア42aの周速との周速偏差を算出し、
前記ピニオンギアの押出駆動制御ユニット710Aは、前記周速偏差演算ユニット711aによって算出された前記ピニオンギア42aとリングギア11の周速偏差が所定の周速偏差に降下した時点で前記ピニオンギア42aの押出動作を開始し、当該所定の周速偏差は所要の応答時間を於いて前記ピニオンギア42aとリングギア11とが接触開始した時点では、惰性減速するリングギア11の回転周速と予備回転駆動されていたピニオンギア42aの回転周速が一致する周速偏差となることを目標として算出された周速偏差であり、
前記第1の周速偏差判定ユニット712aは、前記エンジン10から駆動される変速機14が車両を駆動するレンジに選択されているときに前記所定の周速偏差として第1の閾値偏差速度を適用し、
前記第2の回転偏差判定ユニット712bは、前記エンジン10から駆動される変速機14が車両を駆動しない非駆動レンジに選択されているときに前記所定の周速偏差として前記第1の閾値偏差速度よりも小さな値である第2の閾値偏差速度を適用することを特徴とする。
以上の構成によれば、エンジン回転速度の惰性減速度合が変速機の選択レンジによって変化することに着目して、ピニオンギアの押出駆動開始時のリングギアの回転周速と、ピニオンギアの回転周速との周速偏差を補正するようになっている。
従って、ピニオンギアとリングギアとが接合する時点の周速を正確に一致させて、ギアの損耗寿命を延長させることができる特徴がある。
【0120】
10)更に、この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置において、
前記ピニオン押出機構44Aは、前記ピニオンギア42aを押出駆動するためのシフト吸引コイル43aと押出完了後に於いて押出状態を維持しておくためのシフト保持コイル43bと、押出完了状態を検出して前記シフト吸引コイル43aへの給電を遮断する噛合検出スイッチ46Aを備え、
前記ピニオンギアの押出駆動制御ユニット710Aは、前記シフト吸引コイル43aとシフト保持コイル43bに対して押出駆動指令Scを発生し、当該押出駆動指令Scを電源電圧に応動してデューティ制御して、前記シフト吸引コイル43aとシフト保持コイル43bに対する印加電圧を一定にする電圧補正ユニット704Aを備えていることを特徴とする。
以上の構成によれば、ピニオンギアを押出すためのシフトコイルは吸引コイルと保持コイルを備え、吸引完了後は吸引コイルは消勢されるとともに、各コイルの印加電圧は一定化されている。
従って、エンジン停止状態において噛合保持状態を維持しても車載バッテリの過放電を抑制することができると共に、押出駆動所要時間が電源電圧によって変動しないのでピニオンギアとリングギアとの同期噛合い精度が向上し、更には車載バッテリの電源電圧が高いときのピニオンギアとリングギアの当接打音を抑制することができる特徴がある。
【0121】
11)又、この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置において、
前記プログラムメモリ33Aは更に、自動停止状態解除ユニット802となる制御プログラムを備え、
当該自動停止状態解除ユニット802は、エンジンの自動停止要件の発生に基づいてエンジン10が停止し、ピニオンギア42aの押出保持状態が所定時間以上にわたって持続している場合、ピニオンギア42aの押出駆動を解除すると共に、エンジン10の再始動は始動指令スイッチ22によって手動操作で行うことを特徴とする。
以上の構成によれば、自動停止要件の成立によって自動停止したエンジンに対して再始動要件の発生が異常に遅れた場合には、ピニオンギアの押込保持状態を解除すると共に、エンジンの再始動は自動的には行わないようになっている。
従って、エンジンの停止中におけるピニオンギアの押込保持の持続による車載バッテリの過放電を防止することができると共に、車両停止長時間後に思いがけないエンジンの自動始動が行われるのを防止することができる特徴がある。
【0122】
12)更に、この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置において、
前記回転駆動制御回路50Aは、限流始動用リレーの出力接点51aと、常開接点型の全電圧始動用リレーの出力接点52aと、前記限流始動用リレーの出力接点51aと直列接続され、前記全電圧始動用リレーの出力接点52aと並列接続された限流始動抵抗51cと、限流始動タイマ52cとを備え、
前記限流始動タイマ52cは、前記回転駆動指令Rcによって前記限流始動用のリレーコイル51bが付勢されてから所定の遅延時間をおいて前記常開接点型の全電圧始動用のリレーコイル52bを付勢して出力接点52aを閉路させ、
前記限流始動タイマ52cの遅延時間は、前記ピニオンギア42aの予備回転駆動制御ユニット618Aに於ける予備回転駆動時間よりも長い時間に設定されていることを特徴とする。
以上の構成によれば、に関連して、始動用電動機ユニットは限流始動用リレーと全電圧始動用リレーと限流始動抵抗と限流始動タイマを用いて段階的に給電駆動され、限流始動時間はピニオンギアの予備回転所要時間よりも長くなっている。
従って、自動停止と再始動要求によって頻繁にエンジンの始動停止を行っても車載バッテリの過放電を抑制し、始動突入電流によるリレー接点の損耗寿命を延長することができると共に、ピニオンギアの予備回転駆動を始動用電動機ユニットを用いて行う場合には限流始動抵抗を用いた状態で予備回転駆動を完了することができる特徴がある。
【0123】
13)又、この発明の実施の形態1による車載エンジンの始動制御装置において、
前記エンジンの自動停止要件は前記車載バッテリ20の電源電圧Vbが所定値以上となっている要件を包含し、
前記エンジン制御装置31Aは更に、手動始動優先制御回路36を包含し、
前記マイクロプロセッサ32は、当該マイクロプロセッサが正常動作しているときに手動始動禁止指令INHを発生し、
前記手動始動優先制御回路36は、前記車載バッテリ20の充電電圧が低下していて、前記始動用電動機ユニット40Aの始動電流によって一時的に電源電圧Vbが異常低下し、前記マイクロプロセッサ32が不作動になった場合、前記マイクロプロセッサ32が発生する回転駆動指令Rcと押出駆動指令Scに代わって、始動指令スイッチ22によって回転駆動指令Rcと押出駆動指令Scを発生し、エンジン回転速度の上昇に伴って始動電流が減少して電源電圧Vbが回復し、前記マイクロプロセッサ32のが再び動作を開始すると前記手動始動禁止指令INHによって前記手動始動優先制御回路36を無効とすることを特徴とする。
以上の構成によれば、車載バッテリの電源電圧が低下しているときはエンジンの自動停止は行われず、始動用電動機ユニットの始動電流によって車載バッテリの電源電圧が異常低下してマイクロプロセッサが不作動となっていても、始動指令スイッチによる手動始動操作は有効となっている。
従って、マイクロプロセッサが正常動作しているときには、始動指令スイッチによる不用意な始動操作を禁止することができると共に、マイクロプロセッサの制御機能を用いてエンジンの再始動制御を手軽に行うことができる特徴がある。
【0124】
実施の形態2.
(1)構成の詳細な説明
次に、この発明の実施の形態2による車載エンジンの始動制御装置について説明する。図9は、この発明の実施の形態2による車載エンジンの始動制御装置の全体構成を示す構成図である。以下の説明では、実施の形態1との相違点を中心に説明する。尚、夫々の図に於いて、同一符号は同一又は相当部分を示している。
図9に於いて、車載エンジンの始動制御装置30Bは、エンジン制御装置31Bと多気筒車載エンジン10に対する始動用電動機ユニット40Bと、始動用電動機ユニット40Bに対する回転駆動制御回路50Bによって構成されている。エンジン制御装置31Bは
、マイクロプロセッサ32と協働するプログラムメモリ33Bを包含し、車載バッテリ20に接続された電源スイッチ21と始動指令スイッチ22から、各スイッチの開閉に応動する電源スイッチ信号Psと手動始動指令信号Stが入力されるように構成されている。
【0125】
又、図1と同様に、電源リレー23の出力接点23aは、車載バッテリ20からエンジン制御装置31Bに対する給電回路を構成しており、エンジン制御装置31Bに電源電圧Vbとなる電源を供給する。電源リレー23のリレーコイル23bは、電源スイッチ21が閉路されたことによって付勢されて出力接点23aを閉路する。マイクロプロセッサ32は、電源リレー23の出力接点23aが閉路することにより作動を開始する。一旦マイクロプロセッサ32が作動開始すると、電源スイッチ21が開路してもマイクロプロセッサ32が発生する電源保持指令Drにより電源リレー23のリレーコイル23bの付勢状態が維持され、その出力接点23aは閉路を維持するように構成されている。
【0126】
エンジン制御装置31Bに対するセンサ群24は、アクセルペダルやブレーキペダルの踏込み検出スイッチ、変速機14のシフトレバーの選択位置に応動するシフトスイッチ、アクセルペダルの踏込み度合を検出するアクセルポジションセンサ、スロットル弁開度を検出するスロットルポジションセンサ、排気ガスの酸素濃度を検出する排気ガスセンサ等のスイッチセンサとアナログセンサを包含する。又、センサ群24の一部であるエンジンの回転センサ13の出力は、エンジン回転信号Neとしてマイクロプロセッサ32に入力される。
【0127】
エンジン制御装置31Bから駆動される電気負荷群25は、スロットル弁開度制御用モータ、ガソリンエンジンに対する点火コイル、変速段の選択用電磁コイルを包含する。又、電気負荷群25の一部である燃料噴射用電磁弁12に対しては、マイクロプロセッサ32から燃料噴射指令INJが出力される。
【0128】
始動用電動機ユニット40Bは、主体となる直流電動機41aと、当該直流電動機41aから一方向クラッチ42bを介して一方向に回転駆動されるピニオンギア42aと、当該ピニオンギア42aをリングギア11に噛合連結するためのピニオン押出機構44Bにより構成されている。
【0129】
ピニオン押出機構44Bは、可動支点44bを中心にして揺動動作するシフトレバー44aと、シフトレバー44aの一端に設けられシフト吸引コイル43aに通電するよって左動吸引されるシフトプランジャー43cと、シフト吸引コイル43aが消勢されたときにシフトプランジャ43cを図の右方向に復帰駆動する復帰ばね45aと、ピニオンギア42aとリングギア11の歯面が当接したとき可動支点44bが図の左方向に移動してシフトプランジャ43cの吸引動作を完了させる蓄勢ばね45bにより構成されている。シフトレバー44aの他端は、ピニオンギア42aを図の右方向に押出駆動するスプールに対して回動自在に係合している。
【0130】
尚、シフト吸引コイル43aに通電してシフトプランジャ43cが図の左方向に吸引されたときであって、ピニオンギア42aとリングギア11の歯面が当接したことによって可動支点44bが図の左方向に移動した場合に、ピニオンギア42aの回動によってリングギア11に対する歯面がずれると蓄勢ばね45bによって可動支点44bが押し戻されてピニオンギア42aとリングギア11の噛合連結が完了するように構成されている。
【0131】
噛合検出スイッチ46Bは、ピニオンギア42aとリングギア11の噛合連結が完了したときに噛合検出信号Sdをマイクロプロセッサ32に入力する。又、直流電動機41aの回転軸には、望ましくはピニオンギア42aの回転速度を検出するための回転センサ48が設けられている。
【0132】
回転駆動制御回路50Bは、常開接点型の限流始動用リレーの出力接点51aとリレーコイル51b、限流始動抵抗51c、常閉接点型の全電圧始動用リレーの出力接点53aとリレーコイル53b、限流始動タイマ53cによって構成されている。限流始動抵抗51cと出力接点51aは、直列接続されて車載バッテリ20と直流電動機41aとの間に接続され、限流始動抵抗51cには出力接点53aが並列接続されている。
【0133】
限流始動タイマ53cの出力接点は、リレーコイル53bと直列接続されており、マイクロプロセッサ32が回転駆動指令Rcを発生すると、先ず限流始動用リレーのリレーコイル51bと全電圧始動用リレーのリレーコイル53bが付勢されて限流始動用リレーの出力接点51aが閉路すると共に前電圧始動用リレーの出力接点53aが開路し、車載バッテリ20から出力接点51aと限流始動抵抗51cを介して直流電動機41aに給電される。その後、限流始動タイマ53cがタイムアップして全電圧始動用のリレーコイル53bが消勢されると、その出力接点53aによって限流始動抵抗51cは短絡され、直流電動機41aは出力接点51aと出力接点53aとの直列回路を介して車載バッテリ20から全電圧給電される。
【0134】
尚、限流始動タイマ53cは、直流電動機41aの回転速度が所定の回転速度以上になっているときには直ちにタイムアップして、全電圧始動用リレーが消勢されるように構成されている。又、限流始動抵抗51cは、減流始動用リレーの出力接点51aの上流側に接続されるようにしてもよい。
【0135】
エンジン制御装置31Bに包含されている手動始動優先回路36は、図1の場合と同様に構成されていて、始動操作中にマイクロプロセッサ32が一時的に不作動となったときに、手動始動操作を継続することができるようになっている。
【0136】
直流電動機41aに代わってピニオンギア42aを予備回転駆動するための補助電動機47は、マイクロプロセッサ32から予備回転駆動指令Mcを受けて回転駆動され、デューティ制御されている予備回転駆動指令Mcの平均電圧に比例した回転速度で回転するか、又は予備回転駆動指令Mcの周波数に比例した回転速度で回転するように構成されている。
【0137】
以上のとおり、図9に示すこの発明の実施の形態2による車載エンジンの始動制御装置の場合には、前述の図1に於ける予備駆動制御回路59に代わって補助電動機47が使用されていて、ピニオンギア42aの予備回転速度を小電力で正確に制御することができるように構成されている。
【0138】
尚、予備駆動制御回路59又は補助電動機47を使用した場合には、予備回転駆動によって予備駆動回転速度N3が得られた後に、ピニオンギア42aの押出制御が行われるまでの間に予備駆動回転速度N3を維持するための制御を行なって、ピニオンギア42aが惰性減速するのを防止することも可能である。又、図1に於ける回転駆動制御回路50Aと図2に於ける回転駆動制御回路50Bとの相違点は、全電圧始動用リレーの出力接点が常開接点であるか常閉接点であるかの違いであって、図1の装置に回転駆動制御回路50Bを使用し、図9の装置に回転駆動制御回路50Aを使用することも可能である。
【0139】
又、図2に於けるピニオン押出機構44Bでは、図1に示すシフト保持コイル43bが省略されていて、シフト吸引コイル43aによってシフトプランジャー43cの吸引動作を行い、噛合センサ46Bが作動したことによってシフト吸引コイル43aに対する給電平均電圧を低下させて保持動作を行うように構成しているが、図1の装置に図2に示すピニオン押出機構44Bを使用し、図9の装置に図1に示すピニオン押出機構44Aを使用
することも可能である。
【0140】
(2)作用・動作の詳細な説明
以上のように構成されたこの発明の実施の形態2による車載エンジンの始動制御装置について、前述の図2乃至図4に示すタイムチャートを用いて、実施の形態1の場合との相違点を中心にして動作の概要を説明する。
【0141】
先ず、図9に於いて電源スイッチ21が閉路されるとエンジン制御装置31B内のマイクロプロセッサ32が動作を開始し、当該マイクロプロセッサ32は回転センサ13を含むセンサ群24の動作状態と、プログラムメモリ33Bに予め書込まれている制御プログラムの内容に応動して、燃料噴射用電磁弁12やピニオン押出機構44B、回転駆動制御回路50Bを含む電気負荷群25の駆動制御を行なう。
【0142】
エンジンの初回始動と、運転中の自動停止要求によってエンジンが自動停止し、エンジンが完全停止した後に再始動要求が発生した場合のエンジンの再始動に関する動作は、前述の図2のタイムチャートに示される。図2に於いて、図1の実施の形態1の場合と図9の実施の形態2の場合とで相違しているのは、図2の(J)に於ける予備回転駆動指令であり、図1の実施の形態1の場合には予備回転駆動指令Tc(又は回転駆動指令Rc)が用いられたが、図9の実施の形態2場合には予備回転駆動指令Mcが使用される。
【0143】
又、実施の形態2では前述したようにシフト保持コイルを設けていないので、図2の(C)から図2の(B)を除外した時間帯t2〜t5では、シフト吸引コイル43aに対する印加電圧を低減させてシフトプランジャ43cの吸引保持動作が行われる。
【0144】
エンジンの初回始動と、運転中の自動停止要求が発生した直後に早期の再始動要求が発生した場合のエンジンの再始動に関する動作は、前述の図3のタイムチャートに示される。図3に於いて、図1の実施の形態1の場合と図9の実施の形態2の場合とで相違するのは、図3の(J)に於ける予備回転駆動指令であり、図1の実施の形態1の場合には予備回転駆動指令Tc(又は回転駆動指令Rc)が用いられたが、図9の実施の形態2の場合には予備回転駆動指令Mcが使用される。
【0145】
又、実施の形態2では前述したようにシフト保持コイルを設けていないので、図3の(C)から図3(B)を除外した時間帯t2〜t5ではシフト吸引コイル43aに対する印加電圧を低減させてシフトプランジャ43cの吸引保持動作が行われる。
【0146】
エンジンの初回始動と、運転中の自動停止要求が発生した直後でエンジンの減速回転中に再始動要求が発生した場合のエンジンの再始動に関する動作は、前述の図4のタイムチャートに示される。図4に於いて、図1の実施の形態1の場合と図9の実施の形態2の場合とで相違しているのは、図4の(J)に於ける予備回転駆動指令であり、図1の実施の形態1の場合には予備回転駆動指令Tc(又は回転駆動指令Rc)が用いられたが、図9の実施の形態2の場合には予備回転駆動指令Mcが使用される。
【0147】
又、実施の形態2では前述したようにシフト保持コイルを設けていないので、図4の(C)から図4(B)を除外した時間帯t2〜t5では、シフト吸引コイル43aに対する印加電圧を低減させてシフトプランジャ43cの吸引保持動作が行われる。
【0148】
次に、この発明の実施の形態2による車載エンジンの始動制御装置について、図5乃至図8に示すマイクロプロセッサ32の動作説明用のフローチャートを用いて、実施の形態1の場合との相違点を中心にして説明する。
【0149】
手動始動制御を主体とした第1のフローチャートである図5については、実施の形態1の場合と同様である。
【0150】
ピニオンギア42aの予備回転駆動制御を主体とした第2のフローチャートである図6に於いては、ステップ613Bとステップ616Bを含むステップブロック618Bが実施の形態1の場合と相違していると共に、実施の形態2の場合ではステップ611bは不要となる。ステップ613Bは予備回転駆動指令を発生してからステップ614へ移行するステップである。ここでいう予備回転駆動指令は、補助電動機47に対する予備回転駆動指令Mcとなる。
【0151】
ステップ616Bでは、予備回転駆動指令Mcの平均電圧であるか、又は予備回転駆動指令Mcの周波数によってピニオンギア42aの現在の回転速度を推定し、リングギア11の周速に換算したピニオン換算回転数を演算算出する。
【0152】
ピニオンギア742aの押出駆動制御を主体とした第3のフローチャートである図7に於いては、ステップ703Bとステップ704Bを包含するステップブロック710Bが実施の形態1の場合と相違している。ステップ703Bでは、押出駆動指令Scを発生してシフト吸引コイル43aを付勢する。
【0153】
続くステップ704Bは、車載バッテリ20の電源電圧Vbの値に反比例した通電デューティとなるように押出駆動指令Scをオン/オフして、シフト吸引コイル43aに印加される電圧を一定値に維持することによって、ピニオンギア42aとリングギア11の当接所要時間Δtを一定にするための電圧補正ユニットとなるステップである。当該ステップ704Bでは、シフト吸引コイル43aに通電してから所定時間が経過するか、又は噛合センサ46Bが作動すると、通電デューティを更に抑制してシフト吸引コイル43aによってシフトプランジャ43cの保持動作を行う。
【0154】
エンジンの再始動制御を主体とした第4のフローチャートである図8に於いては、実施の形態1の場合と同様である。
【0155】
(3)実施形態2の要点と特徴
次に、以上述べたこの発明の実施の形態2による車載エンジンの始動制御装置の要点と特徴について述べる。
【0156】
1)この発明の実施の形態2による車載エンジンの始動制御装置は、
車載バッテリ20から給電駆動される直流電動機41aと、当該直流電動機によって回転駆動されるピニオンギア42aと、車載エンジン10の回転軸に設けられたリングギア11に対して前記ピニオンギア42aを連結又は離脱させるピニオン押出機構44Bとを備えた始動用電動機ユニット40Bと、 前記直流電動機41aに給電する回転駆動制御回路50Bと、エンジン10のアイドル回転中に自動停止要件が成立すると燃料噴射用電磁弁12に対する燃料噴射指令INJを停止してエンジン10を停止させ、エンジンの再始動要件が成立すると前記回転駆動制御回路50Bに対する回転駆動指令Rcと前記燃料噴射指令INJを発生して、エンジン10を再始動させるエンジン制御装置31Bと、により構成された車載エンジンの始動制御装置30Bであって、
前記エンジン制御装置31Bは、燃料噴射制御ユニット517、812、814となる制御プログラムが格納されているプログラムメモリ33Bと協働するマイクロプロセッサ32を備え、
前記プログラムメモリ33Bは更に、回転センサ13に応動するエンジン回転速度検出ユニット701aと、前記ピニオンギア42aの回転速度推定ユニット616B又はピニオン回転センサ48に応動するピニオン回転速度検出ユニット615と、前記ピニオンギ
ア42aの予備回転駆動制御ユニット618Bと、前記ピニオン押出機構44Bに対して押出駆動指令Scを発生する押出駆動制御ユニット710Bとなる制御プログラムを包含している。
【0157】
前記マイクロプロセッサ32は、エンジンの自動停止要件が成立すると前記燃料噴射指令INJを停止し、当該燃料噴射の停止前後に於いて、少なくともエンジン回転速度が所定の当初回転速度に低下するまでには、エンジンの再始動要件が不成立であっても、前記予備回転駆動制御ユニット618Bによって前記ピニオンギア42aの回転駆動を開始し、エンジン10が不安定回転とならない所定の下限回転速度に減速するまでには、前記ピニオンギア42aの押出駆動制御ユニット710Bによって前記ピニオンギア42aを前記リングギア11に対して連結駆動し、当該連結駆動完了時点に於いて、前記エンジンの再始動要件が既に発生しているか、又は遅れて前記再始動要件が成立したことによって前記回転駆動指令Rcと前記燃料噴射指令INJを発生して、惰性回転中及び停止中のエンジン10を再始動するように構成されている。
【0158】
2)又、この発明の実施の形態2による車載エンジンの始動制御装置において、
前記予備回転駆動制御ユニット618Bは、ピニオンギアの予備回転駆動指令ユニット613Bを包含し、エンジンの自動停止要件が成立したときに前記直流電動機41aに連結された補助電動機47に対して予備回転駆動指令Mcを発生し、
前記補助電動機47は前記予備回転駆動指令Mcの指令電圧に比例した回転速度で回転するか、又は予備回転駆動指令Mcのパルス周波数に比例した回転速度で回転し、
前記回転速度推定ユニット616Bは、前記予備回転駆動指令Mcの指令電圧又はパルス周波数によって回転速度を推定し、
前記予備回転駆動制御ユニット618Bは、前記ピニオンギア42aの回転速度が所定の目標回転速度に到達したことによって前記予備回転駆動指令Mcを停止するか、又は当該目標回転速度を維持するように回転速度制御を行うように構成されていることを特徴とする。
以上の構成によれば、エンジンを始動するための大型の直流電動機に対して小型の補助電動機が連結され、ピニオンギアの予備回転駆動は補助電動機によって行うようになっている。
従って、ピニオンギアを無負荷回転駆動するためにエンジン始動用の大型直流電動機を使用しないので駆動制御の効率が向上し、車載バッテリの過放電が防止されると共に、回転速度の制御が容易となり安定した目標回転速度が得られる特徴がある。
【0159】
3)又、この発明の実施の形態2による車載エンジンの始動制御装置において、
前記始動用電動機ユニット40Bは、前記ピニオンギア42aの回転速度を検出するための回転センサ48を備え、
前記予備回転駆動制御ユニット618Bは、前記回転センサ48に応動するピニオン回転速度検出ユニット615と予備回転駆動指令ユニット613Bを包含し、
前記予備回転駆動指令ユニット613Bは、エンジンの自動停止要件が成立したときに、前記直流電動機41aに連結された補助電動機47に対して予備回転駆動指令Mcを発生し、
前記予備回転駆動制御ユニット618Bは、前記ピニオン回転速度検出ユニット615によって検出された前記ピニオンギア42aの回転速度が前記所定の目標回転速度に到達するか、又は到達を予測してピニオンギア42aの予備回転駆動を停止するか、或いは当該目標回転速度を維持するように回転速度制御を行うように構成されていることを特徴とする。
以上の構成によれば、始動用電動機ユニットはピニオンギアの回転速度を測定するための回転センサを備えていと共に、予備回転駆動を行うための補助電動機を備えている。従って、予備回転駆動の回転速度を正確に目標回転速度に接近させることができる特徴がある。
【0160】
4)又、この発明の実施の形態2による車載エンジンの始動制御装置において、
前記ピニオン押出機構44Bは、前記ピニオンギア42aを押出駆動するためのシフト吸引コイル43aを備え、
前記ピニオンギアの押出駆動制御ユニット710Bは、前記シフト吸引コイル43aに対して押出駆動指令Scを発生すると共に、当該押出駆動指令Scを電源電圧に応動してデューティ制御して、前記シフト吸引コイル43aに対する印加電圧を一定の吸引駆動電圧にし、所定時間後又は噛合センサ46Bの作動に応動して、保持駆動電圧まで低減させる電圧補正ユニット704Bを備えていることを特徴とする。
以上の構成によれば、ピニオンギアを押出すためのシフト吸引コイルは、一定の吸引駆動電圧が印加され、吸引完了後は保持駆動電圧が印加されるように構成されている。
従って、エンジン停止状態に於いて噛合保持状態を維持しても車載バッテリの過放電を抑制することができると共に、押出駆動所要時間が電源電圧によって変動しないのでピニオンギアとリングギアとの同期噛合い精度が向上し、更には車載バッテリの電源電圧が高いときのピニオンギアとリングギアの突合打音を抑制することができる特徴がある。
【0161】
5)更に、この発明の実施の形態2による車載エンジンの始動制御装置において、
前記回転駆動制御回路50Bは、限流始動用リレーの出力接点51aと、常閉接点型の全電圧始動用リレーの出力接点53aと、前記限流始動用リレーの出力接点51aと直列接続され、前記全電圧始動用リレーの出力接点53aと並列接続された限流始動抵抗51cと、限流始動タイマ53cとを備え、
前記限流始動タイマ53cは、前記回転駆動指令Rcによって前記常閉接点型の全電圧始動用のリレーコイル53bを前記限流始動用のリレーコイル51bと同時に付勢して出力接点53aを開路し、所定の遅延時間をおいて全電圧始動用のリレーコイル53bを消勢して出力接点53aを閉路復帰させ、
前記限流始動タイマ53cの遅延時間は、前記ピニオンギア42aの予備回転駆動制御ユニット618Bに於ける予備回転駆動時間よりも長い時間に設定されていることを特徴とする。
以上の構成によれば、始動用電動機ユニットは限流始動用リレーと全電圧始動用リレーと限流始動抵抗と限流始動タイマを用いて段階的に給電駆動され、限流始動時間はピニオンギアの予備回転所要時間よりも長く設定されている。
従って、自動停止と再始動要求によって頻繁にエンジンの始動停止を行っても車載バッテリの過放電を抑制し、始動突入電流によるリレー接点の損耗寿命を延長することができる特徴がある。
【符号の説明】
【0162】
10 車載エンジン 11 リングギア
12 燃料噴射用電磁弁 13 回転センサ(クランク角センサ)
14 変速機 20 車載バッテリ
22 始動指令スイッチ
30A、30B 車載エンジンの始動制御装置
31A、31B エンジン制御装置 32 マイクロプロセッサ
33A、33B プログラムメモリ 36 手動始動優先制御回路
40A、40B 始動用電動機ユニット
41a 直流電動機 42a ピニオンギア
43a シフト吸引コイル 43b シフト保持コイル
44A、44B ピニオン押出機構
46A、46B 噛合検出スイッチ(噛合センサ)
47 補助電動機 48 回転センサ(ピニオン)
50A、50B 回転駆動制御回路 51a 出力接点(限流始動)
51b リレーコイル(限流始動) 51c 限流始動抵抗
52a、53a 出力接点(全電圧始動)
52b、53b リレーコイル(全電圧始動)
52c、53c 限流始動タイマ 55 低圧電源回路
56 開閉素子 57 限流駆動抵抗
59 予備駆動制御回路 517 燃料噴射制御ユニット
613A、613B 予備回転駆動指令ユニット
615 ピニオン回転速度検出ユニット
616A、616B ピニオン回転速度推定ユニット
618A、618B 予備回転駆動制御ユニット
701a エンジン回転速度検出ユニット
702a 第1の回転速度判定ユニット
702b 第2の回転速度判定ユニット
704A、704B 電圧補正ユニット
710A、710B ピニオンギアの押出駆動制御ユニット
711a 周速偏差演算ユニット 712a 第1の周速偏差判定ユニット
712b 第2の周速偏差判定ユニット
802 自動停止状態解除ユニット 812、814 燃料噴射制御ユニット
819 自己再始動ユニット
INH 手動始動禁止指令 INJ 燃料噴射指令
Rc 回転駆動指令(兼予備回転駆動指令)
Tc、Mc 予備回転駆動指令 Sc 押出駆動指令
Vb 電源電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載バッテリから給電されて駆動される直流電動機と、前記直流電動機によって回転駆動されるピニオンギアと、車載エンジンの回転軸に設けられたリングギアに対して前記ピニオンギアを連結又は離脱させるピニオン押出機構とを備えた始動用電動機ユニットと、
前記直流電動機の駆動を制御する回転駆動制御回路と、
前記車載エンジンのアイドル回転中に自動停止要件が成立すると、燃料噴射用電磁弁に対する燃料噴射指令を停止して前記車載エンジンを停止させ、前記車載エンジンの再始動要件が成立すると前記回転駆動制御回路に対する回転駆動指令と前記燃料噴射用電磁弁に対する前記燃料噴射指令を発生して、前記車載エンジンを再始動させるエンジン制御装置と、
を備えた車載エンジンの始動制御装置であって、
前記エンジン制御装置は、燃料噴射制御ユニットを構成する制御プログラムが格納されたプログラムメモリと協働するマイクロプロセッサを備え、
前記プログラムメモリは更に、前記車載エンジンの回転速度を検出する回転センサの出力に応動するエンジン回転速度検出ユニットと、前記ピニオンギアの回転速度を推定する回転速度推定ユニット若しくは前記ピニオンギアの回転速度を検出する回転センサの出力に応動するピニオン回転速度検出ユニットと、前記ピニオンギアを予備回転駆動する予備回転駆動制御ユニットと、前記ピニオン押出機構に対して押出駆動指令を発生する押出駆動制御ユニットと、を構成する制御プログラムを包含し、
前記マイクロプロセッサは、
前記車載エンジンの自動停止要件が成立すると前記燃料噴射指令を停止し、当該燃料噴射の停止前後において、前記車載エンジンの回転速度が少なくとも所定の当初回転速度に低下するまでには、前記車載エンジンの再始動要件が不成立であっても、前記予備回転駆動制御ユニットにより前記ピニオンギアの予備回転駆動を開始させ、前記車載エンジンの回転速度が所定の下限回転速度に低下するまでには、前記押出駆動制御ユニットにより前記ピニオンギアを前記リングギアに対して連結駆動させ、当該連結駆動の完了時点において前記車載エンジンの再始動要件が既に成立しているか又は遅れて成立することにより、前記回転駆動指令と前記燃料噴射指令を発生して、惰性回転中又は停止中の前記車載エンジンを再始動させる、
ことを特徴とする車載エンジンの始動制御装置。
【請求項2】
前記燃料噴射制御ユニットは更に、前記車載エンジンの複数の気筒に対して順次燃料噴射を行うための気筒判別を行なう気筒順序判別ユニットを包含し、
前記気筒順序判別ユニットは、燃料噴射の停止中でも継続動作するように構成され、
前記下限回転速度は、始動指令スイッチによる前記車載エンジンの通常始動時に、前記気筒順序判別ユニットにより判別された気筒順序で燃料噴射が可能となる燃料噴射開始回転速度以上のエンジン回転速度である、
ことを特徴とする請求項1に記載の車載エンジンの始動制御装置。
【請求項3】
前記プログラムメモリは更に、自己再始動ユニットを構成する制御プログラムを包含し、
前記自己再始動ユニットは、
前記自動停止要件の成立によって前記燃料噴射指令が停止した後も、前記車載エンジンの複数の気筒に対して順次燃料噴射を行なうための気筒順序を判別する気筒順序判別制御を継続し、前記車載エンジンの回転速度が所定の自己始動回転速度以下に減速する前に再始動要件が成立した場合に、前記ピニオン押出機構に対する前記押出駆動指令を解除するか又は前記車載エンジンが被駆動状態であることを確認して、既に判別されている前記気筒順序に基づいて前記燃料噴射制御ユニットにより前記燃料噴射指令の発生を再開し、前記始動用電動機ユニットに依存せずに前記車載エンジンを再始動させる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車載エンジンの始動制御装置。
【請求項4】
前記ピニオンギアの予備回転駆動を開始する前記車載エンジンの当初回転速度は、前記所定の自己始動回転速度以上の回転速度であり、
前記予備回転駆動制御ユニットは、前記自己再始動ユニットにより燃料供給を再開するときには、前記ピニオンギアの予備回転駆動の指令を停止する、
ことを特徴とする請求項3に記載の車載エンジンの始動制御装置。
【請求項5】
前記予備回転駆動制御ユニットは、前記ピニオンギアに対する予備回転駆動指令ユニットを包含し、
前記予備回転駆動指令ユニットは、前記車載エンジンの自動停止要件が成立したときに前記回転駆動制御回路に対して予備回転駆動指令となる回転駆動指令を発生し、前記回転駆動制御回路に設けられた限流始動用リレーの出力接点と限流始動抵抗を介して前記直流電動機を回転駆動し、
前記回転速度推定ユニットは、前記直流電動機に対する給電時間と回転速度との相対関係を前記車載バッテリの電源電圧をパラメータとして測定した標準特性に基づいて、現在の給電時間と前記電源電圧の値から前記ピニオンギアの現在の回転速度を推定し、
前記予備回転駆動制御ユニットは、前記推定されたピニオンギアの回転速度が所定の目標回転速度に到達したこと、又は前記推定されたピニオンギアの回転速度が所定の目標回転速度に到達することを予測した時点で、前記回転駆動指令を停止する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のうちの何れか一項に記載の車載エンジンの始動制御装置。
【請求項6】
前記予備回転駆動制御ユニットは、前記ピニオンギアに対する予備回転駆動指令を発生する予備回転駆動指令ユニットを包含し、
前記回転駆動制御回路には更に、開閉素子と、低電圧電源回路と限流駆動抵抗とのうちの少なくとも一方と、を含む予備駆動制御回路が併設されており、
前記予備回転駆動指令ユニットは、前記車載エンジンの自動停止要件が成立したときに前記開閉素子に対して前記予備回転駆動指令を発生し、前記開閉素子と、前記低電圧電源回路と前記限流駆動抵抗とのうちの少なくとも一方と、を介して前記直流電動機を回転駆動し、
前記回転速度推定ユニットは、前記直流電動機に対する給電時間と回転速度との相対関係を電源電圧をパラメータとして測定した標準特性に基づいて、現在の給電時間と電源電圧の値から前記ピニオンギアの現在の回転速度を推定し、
前記予備回転駆動制御ユニットは、前記推定されたピニオンギアの回転速度が所定の目標回転速度に到達したことによって前記予備回転駆動指令を停止する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のうちの何れか一項に記載の車載エンジンの始動制御装置。
【請求項7】
前記直流電動機に連結された補助電動機を備え、
前記予備回転駆動制御ユニットは、前記ピニオンギアに対する予備回転駆動指令ユニットを包含し、
前記予備回転駆動指令ユニットは、前記車載エンジンの自動停止要件が成立したときに、前記補助電動機に対して予備回転駆動指令を発生し、
前記補助電動機は、前記予備回転駆動指令の指令電圧に比例した回転速度で回転するか、又は前記予備回転駆動指令のパルス周波数に比例した回転速度で回転し、
前記回転速度推定ユニットは、前記予備回転駆動指令の指令電圧又は前記パルス周波数に基づいて前記ピニオンギアの現在の回転速度を推定し、
前記予備回転駆動制御ユニットは、前記推定されたピニオンギアの回転速度が所定の目標回転速度に到達したことによって前記予備回転駆動指令を停止するか、又は前記ピニオ
ンギアの回転速度を前記目標回転速度に維持するように、前記補助電動機に対する回転速度制御を行う、
ことを特徴とする請求項1乃至4のうちの何れか一項に記載の車載エンジンの始動制御装置。
【請求項8】
前記始動用電動機ユニットは、前記ピニオンギアの回転速度を検出する回転センサを備え、
前記予備回転駆動制御ユニットは、前記回転センサの出力に応動するピニオン回転速度検出ユニットと前記ピニオンギアに対する予備回転駆動指令ユニットを包含し、
前記予備回転駆動指令ユニットは、エンジンの自動停止要件が成立したときに、前記回転駆動制御回路に対して予備回転駆動指令となる回転駆動指令を発生して前記直流電動機を回転駆動するか、又は、前記直流電動機に直列接続された開閉素子に対して予備回転駆動指令を発生して前記直流電動機を回転駆動するか、又は、前記直流電動機に連結された補助電動機に対して予備回転駆動指令を発生し、
前記予備回転駆動制御ユニットは、前記ピニオン回転速度検出ユニットにより検出された前記ピニオンギアの回転速度が所定の目標回転速度に到達したこと若しくは前記検出されたピニオンギアの回転速度が所定の目標回転速度に到達することを予測した時点で、前記ピニオンギアの予備回転駆動を停止するか、又は前記ピニオンギアの回転速度を前記目標回転速度に維持するように前記始動用電動機ユニットの回転速度制御を行う、
ことを特徴とする請求項1乃至4のうちの何れか一項に記載の車載エンジンの始動制御装置。
【請求項9】
前記ピニオンギアの押出駆動制御ユニットは更に、第1の回転速度判定ユニットと、第2の回転速度判定ユニットとを備えると共に、前記エンジン回転速度検出ユニットにより検出された前記車載エンジンの惰性減速する回転速度が所定の回転速度に降下した時点で前記ピニオンギアの押出動作を開始し、
前記所定の回転速度は、所要の応答時間の後に前記ピニオンギアと前記リングギアとが接触を開始した時点では、惰性減速する前記リングギアの回転周速と前記予備回転駆動制御ユニットにより予備回転駆動されていた前記ピニオンギアの回転周速が一致する回転速度となることを目標として算出された回転速度であり、
前記第1の回転速度判定ユニットは、前記車載エンジンにより駆動される変速機が車両を駆動するレンジに選択されているときに、前記所定の回転速度として第1の閾値回転速度を適用し、
前記第2の回転速度判定ユニットは、前記車載エンジンにより駆動される前記変速機が車両を駆動しない非駆動レンジに選択されているときに、前記所定の回転速度として前記第1の閾値回転速度よりも小さな値である第2の閾値回速度を適用する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のうちの何れか一項に記載の車載エンジンの始動制御装置。
【請求項10】
前記始動用電動機ユニットは、前記ピニオンギアの回転速度を検出する回転センサを備え、
前記ピニオンギアの押出駆動制御ユニットは更に、周速偏差演算ユニットと、第1の周速偏差判定ユニットと、第2の周速偏差判定ユニットと、を包含し、
前記周速偏差演算ユニットは、前記車載エンジン回転速度検出ユニットにより検出された前記車載エンジンの回転速度に基づく前記リングギアの周速と、前記ピニオンギアの回転速度を検出する回転センサにより検出された前記ピニオンギアの回転速度に基づく前記ピニオンギアの周速との周速偏差を算出し、
前記ピニオンギアの押出駆動制御ユニットは、前記周速偏差演算ユニットにより算出された前記ピニオンギアとリングギアの周速偏差が所定の周速偏差に降下した時点で前記ピニオンギアの押出動作を開始し、
前記所定の周速偏差は、所要の応答時間の後に前記ピニオンギアとリングギアとが接触開始した時点では、惰性減速する前記リングギアの回転周速と前記予備回転駆動制御ユニットにより予備回転駆動されていた前記ピニオンギアの回転周速が一致する周速偏差となることを目標として算出された周速偏差であり、
前記第1の周速偏差判定ユニットは、前記車載エンジンにより駆動される変速機が車両を駆動するレンジに選択されているときに、前記所定の周速偏差として第1の閾値偏差速度を適用し、
前記第2の回転偏差判定ユニットは、前記車載エンジンにより変速機が車両を駆動しない非駆動レンジに選択されているときに、前記所定の周速偏差として前記第1の閾値偏差速度よりも小さな値である第2の閾値偏差速度を適用する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のうちの何れか一項に記載の車載エンジンの始動制御装置。
【請求項11】
前記ピニオン押出機構は、前記ピニオンギアを押出駆動するシフト吸引コイルと、前記ピニオンギアの押出完了後に前記ピニオンギアをその押出された状態に維持するシフト保持コイルと、前記押出完了状態を検出して前記シフト吸引コイルへの給電を遮断する噛合検出スイッチとを備え、
前記ピニオンギアの押出駆動制御ユニットは、前記シフト吸引コイルと前記シフト保持コイルに対して押出駆動指令を発生し、前記押出駆動指令を電源電圧に応動してデューティ制御して、前記シフト吸引コイルと前記シフト保持コイルに対する印加電圧を一定にする電圧補正ユニットを備えている、
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の車載エンジンの始動制御装置。
【請求項12】
前記ピニオン押出機構は、前記ピニオンギアを押出駆動するシフト吸引コイルを備え、
前記ピニオンギアの押出駆動制御ユニットは、前記シフト吸引コイルに対して押出駆動指令を発生すると共に、前記押出駆動指令を電源電圧に応動してデューティ制御して、前記シフト吸引コイルに対する印加電圧を一定の吸引駆動電圧にし、所定時間後又は噛合センサの作動に応動して、前記印加電圧を保持駆動電圧まで低減させる電圧補正ユニットを備えている、
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の車載エンジンの始動制御装置。
【請求項13】
前記プログラムメモリは更に、自動停止状態解除ユニットを構成する制御プログラムを備え、
前記自動停止状態解除ユニットは、前記車載エンジンの自動停止要件の発生に基づいて前記車載エンジンが停止し、前記ピニオンギアの押出保持状態が所定時間以上にわたって持続している場合、前記ピニオンギアの押出駆動を解除し、
前記車載エンジンの再始動は、始動指令スイッチによって手動操作で行う、
ことを特徴とする請求項1乃至4のうちの何れか一項に記載の車載エンジンの始動制御装置。
【請求項14】
前記回転駆動制御回路は、限流始動用リレーの出力接点と、常開接点型若しくは常閉接点型の全電圧始動用リレーの出力接点と、前記限流始動用リレーの出力接点に直列接続されると共に前記全電圧始動用リレーの出力接点に並列接続された限流始動抵抗と、限流始動タイマとを備え、
前記限流始動タイマは、前記回転駆動指令により前記限流始動用リレーのコイルが付勢されてから所定の遅延時間の後に前記常開接点型の全電圧始動用リレーのコイルを付勢してその出力接点を閉路させるか、又は前記常閉接点型の全電圧始動用リレーのコイルを前記限流始動用リレーのコイルと同時に付勢してその出力接点を開路し、所定の遅延時間の後に前記全電圧始動用リレーのコイルを消勢して出力接点を閉路復帰させ、
前記限流始動タイマの前記所定の遅延時間は、前記ピニオンギアの予備回転駆動制御ユ
ニットに於ける予備回転駆動時間よりも長い時間に設定されている、
ことを特徴とする請求項1乃至4のうちの何れか一項に記載の車載エンジンの始動制御装置。
【請求項15】
前記エンジンの自動停止要件は、前記車載バッテリの電源電圧が所定値以上となっている要件を包含し、
前記エンジン制御装置は、更に手動始動優先制御回路を包含し、
前記マイクロプロセッサは、当該マイクロプロセッサが正常動作しているときに手動始動禁止指令を発生し、
前記手動始動優先制御回路は、前記車載バッテリの充電電圧が低下していて、前記始動用電動機ユニットの始動電流により一時的に電源電圧が異常低下し、前記マイクロプロセッサが不作動になった場合、前記マイクロプロセッサが発生する回転駆動指令と押出駆動指令に代わって、始動指令スイッチによって回転駆動指令と押出駆動指令を発生し、前記車載エンジンの回転速度の上昇に伴って始動電流が減少して前記電源電圧が回復し、前記マイクロプロセッサが再び動作を開始すると前記手動始動禁止指令により前記手動始動優先制御回路を無効とする、
ことを特徴とする請求項1乃至4のうちの何れか一項に記載の車載エンジンの始動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−2333(P2013−2333A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133186(P2011−133186)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】