説明

車載用燃料電池システム

【課題】 高い安全性を確保することができる車載用燃料電池システムを提供する。
【解決手段】 シャットバルブ414から排出された水素ガスは、排出流路407を通って、酸素オフガス排出流路503に送り込まれ、混合部411において、酸素オフガス排出流路503を流れる酸素オフガスと混合され希釈化される。混合部411で混合されたガスは、気液分離器508を介してコンバスタ510に流入する。コンバスタ510は、白金触媒512を備えており、燃焼によって、混合ガスに含まれる水素を酸素と反応させて、混合ガスに含まれる水素の濃度をさらに低減させる。コンバスタ510によって水素濃度の低減された混合ガスは、大気中に排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載するのに好適な車載用燃料電池システム、および水素オフガスを排出するための水素オフガス排出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧水素ガスタンクや水素吸蔵合金タンクなどからの水素ガスの供給を受けて電力を発生する燃料電池は、エネルギ効率が高いので、電気自動車などの動力源として有望である。
【0003】
ところで、このような燃料電池を車両の動力源として用いる場合、燃料電池は勿論のこと、上記した高圧水素ガスタンクもしくは水素吸蔵合金タンクなどの水素ガス供給源や、これら水素ガス供給源から燃料電池に水素ガスを送りこむための水素ガス流路などを含む燃料電池システムを、車両に搭載する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池システムを車両に搭載する場合、可燃性の高い水素ガスを扱うため、その取扱に際しては十分な配慮が必要である。しかしながら、燃料電池での電力生成に使用済みの水素オフガスに対しての配慮は十分とは言えなかった。つまり、この水素オフガスは、未消費の水素を含むことがあるものの、そのまま大気放出されていることが実状である。
【0005】
こうした実状に鑑み、次のような新たな課題を見出し、この解決を図った。
水素含有ガスは可燃性を有することから、大気放出されるガス中の水素濃度が高まるような事態と、着火源となり得るものがガス排出口近くにあるような事態とが重なると、水素オフガスの着火現象が起きる危惧がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記した課題を解決し、水素濃度を十分低くした上で水素オフガスを大気に排出可能な車載用燃料電池システムおよび水素オフガス排出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的の少なくとも一部を達成するために、本発明の第1の車載用燃料電池システムは、
水素ガスと酸化ガスの供給を受け、これら水素ガスと酸化ガスを使用して電力を発生すると共に、使用済みの水素オフガスと酸素オフガスを排出する燃料電池を備え、車両に搭載される車載用燃料電池システムであって、
前記燃料電池の水素オフガス排出口とつながり、排出された前記水素オフガスを流す第1の流路と、
前記燃料電池の酸素オフガス排出口とつながり、排出された前記酸素オフガスを流す第2の流路と、
前記第1の流路と前記第2の流路とをつなぎ、排出された前記水素オフガスを、排出された前記酸素オフガスと混合する混合部と、
該混合部とつながり、混合された前記ガスを流して大気中に排出する第3の流路と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
また、本発明の水素ガス排出方法は、水素ガスと酸化ガスの供給を受け、これら水素ガスと酸化ガスを使用して電力を発生すると共に、使用済みの水素オフガスと酸素オフガスを排出する燃料電池において、排出される前記水素オフガスを大気中に排出するための水素オフガス排出方法であって、
(a)前記燃料電池より排出された前記水素オフガスを、排出された前記酸素オフガスと混合する工程と、
(b)混合された前記ガスを大気中に排出する工程と、
を備えることを要旨とする。
【0009】
このように、上記した車載用燃料電池システムまたは水素ガス排出方法では、燃料電池より排出された水素オフガスを、同じく排出された酸素オフガスと混合する。酸素オフガスは、窒素リッチなガスとされているので、上記のガス混合により、水素オフガスを希釈化することができ、混合されたガスに含まれる水素の濃度を低下させることができる。従って、十分な低濃度まで水素濃度を低下させた後に、その混合ガスを大気中に排出することができる。この結果、水素オフガスを高い水素濃度のまま不用意に大気放出することがなく、好ましい。
【0010】
上記構成を有する本発明の第1の車載用燃料電池システムは、種々の態様を採ることができる。まず第1に、
前記混合部を、
前記第2の流路から分岐して、前記酸素オフガスを前記第2の流路から分流して導入する酸素オフガス分岐導入流路と、
該酸素オフガス分岐導入流路と前記第1の流路とつながり、前記水素オフガスと前記酸素オフガスとを混合した上で前記第3の流路に流すよう容積が拡大した混合室とを備えるものとし、
前記第2の流路を、
前記酸素オフガス分岐導入流路の分岐箇所より下流において前記第3の流路に合流するものとすることができる。
【0011】
また、本発明の水素ガス排出方法において、
前記工程(a)は、
前記燃料電池より排出された前記水素オフガスを、該オフガスを流す第1の流路から、容積が拡大した混合室に導入する工程(a1)と、
前記燃料電池より排出された前記酸素オフガスを該オフガスを流す第2の流路から分岐した分岐流路から、前記混合室に導入する工程(a2)と、
前記混合室で混合された前記ガスを、前記混合室につながった第3の流路に排出する工程とを含み、
前記工程(b)は、
前記第2の流路における前記分岐流路の分岐箇所より下流において、前記第2の流路を前記第3の流路に合流して前記ガスを大気中に排出する工程を含むものとすることができる。
【0012】
こうすれば、混合室では、その容積拡大に基づき水素オフガスと酸素オフガスが効率よく混合するので、水素オフガスの希釈化、水素濃度低下を確実に図ることができ、好ましい。この場合、第2の流路を、酸素オフガス分岐導入流路の分岐箇所と第3の流路への合流箇所の間に、マフラを有するものとすることもできる。こうすれば、このマフラで起きる圧力損失によりマフラ前後で流路に差圧が発生するので、この差圧により酸素オフガスを酸素オフガス分岐導入流路を経て混合室に確実に導入できる。このため、特別の機器を用いなくても酸素オフガスの導入ができ、機器構成・制御の簡略化の点から、また、コスト低減の観点から好ましい。加えて、容積拡大の混合室でのガス混合を図るので、ガス通過時の消音の点からも好ましい。
【0013】
また、前記第3の流路中に配置され、混合された前記ガスに含まれる水素と酸素を、触媒を用いて反応させ、前記ガス中の水素濃度を低減させる触媒反応部をさらに備えることが好ましい。
【0014】
また、本発明の水素オフガス排出方法において、前記工程(b)は、
混合された前記ガスに含まれる水素と酸素を、触媒を用いて反応させ、前記ガス中の水素濃度を低減させる工程と、
水素濃度の低減された前記ガスを大気中に排出する工程と、
を含むことが好ましい。
【0015】
このように、混合されたガスに含まれる水素と酸素を触媒で反応させるので、水素濃度をより一層低減させた状態で、混合ガスを大気中に排出することができる。
【0016】
本発明の車載用燃料電池システムにおいて、前記第1の流路中に配置され、開閉により前記混合部への前記水素オフガスの通過・遮断が可能なバルブをさらに備えることが好ましい。
【0017】
このようなバルブを備えることによって、所望のタイミングで水素オフガスを排出することができるようになる。なお、このバルブを、水素オフガスの混合部への流量調整が可能なものとすることもできる。
【0018】
本発明の第1の車載用燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池の水素ガス供給口とつながり、供給される前記水素ガスを流す第4の流路と、
前記第1の流路中における前記燃料電池の排出口と前記バルブとの間の第1の箇所と、前記第4の流路中における第2の箇所と、の間をつなぎ、前記燃料電池から排出された前記水素オフガスを流し、前記第4の流路に戻す第5の流路と、 をさらに備えることが好ましい。
【0019】
このように構成することによって、燃料電池から排出された水素オフガスは燃料電池の供給口に戻され、水素ガスが循環することになるので、燃料電池に供給される水素ガスの見かけの流量が多くなり、流速も早くなるため、燃料電池の出力電圧を上げることができる。また、水素ガスに含まれる不純物も水素ガス流路全体で均一化するため、不純物が燃料電池の発電動作に支障を来す虞がない。
【0020】
本発明の第1の車載用燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池の酸化ガス供給口とつながり、供給される前記酸化ガスを流す第6の流路と、
前記第2の流路中または前記第6の流路中に配置され、排出される前記酸素オフガスの流量を変化させることが可能な流量可変部と、
前記バルブと前記流量可変部を制御する制御部と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記バルブを開く際には、前記流量可変部によって、排出される前記酸素オフガスの流量を、所定流量より増加させることが好ましい。
【0021】
また、本発明の水素オフガス排出方法において、前記工程(a)は、前記水素オフガスを前記酸素オフガスに混合する際に、前記燃料電池より排出される前記酸素オフガスの流量を、所定流量より増加させる工程を含むことが好ましい。
【0022】
このように、水素オフガスを酸素オフガスに混合する際に、酸素オフガスの流量を増加させているので、大量の水素オフガスが排出されたとしても、その水素オフガスは大量の窒素リッチなガスによって十分に希釈化される。従って、混合ガスに含まれる水素濃度をより一層低下させた状態で、混合ガスを大気中に排出することができる。
【0023】
本発明の第1の車載用燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池の酸化ガス供給口とつながり、供給される前記酸化ガスを流す第6の流路と、
前記第2の流路中または前記第6の流路中に配置され、排出される前記酸素オフガスの流量を変化させることが可能な流量可変部と、
前記バルブと前記流量可変部を制御する制御部と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記流量可変部によって、排出される前記酸素オフガスの流量が、所定流量を超えている場合に、前記バルブを開くことが好ましい。
【0024】
また、本発明の水素オフガス排出方法において、前記工程(a)は、前記燃料電池より排出される前記酸素オフガスの流量が、所定流量を超えている場合に、前記水素オフガスを前記酸素オフガスに混合する工程を含むことが好ましい。
【0025】
このように、酸素オフガスの流量が増加した際に、水素オフガスを酸素オフガスに混合しているので、大量の水素オフガスが排出されたとしても、その水素オフガスは大量の窒素リッチなガスによって十分に希釈化される。従って、混合ガスに含まれる水素濃度を低下させた状態で、混合ガスを大気中に排出することができる。
【0026】
本発明の第1の車載用燃料電池システムにおいて、
前記バルブを制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、排出された前記酸素オフガスを前記混合部に送る際、前記バルブに、比較的短い周期で開閉を繰り返させることが好ましい。
【0027】
また、本発明の水素オフガス排出方法において、前記工程(a)は、前記水素オフガスを、比較的短い周期の離散的なタイミングで、前記酸素オフガスに混合する工程を含むことが好ましい。
【0028】
このような構成を採ることにより、水素オフガスは何回かに分けて少量ずつ窒素リッチな酸素オフガスと混合されるので、酸素オフガスの流量が例え増加していなくても、水素オフガスを十分に希釈化することができる。よって、混合ガスに含まれる水素の濃度は低下するため、十分な低水素濃度の状態で、混合ガスを大気中に排出することができる。
【0029】
本発明の第1の車載用燃料電池システムにおいて、前記第1の流路中における前記バルブと前記混合部との間に配置され、前記バルブより流入される前記水素オフガスの流量を低減させて、前記混合部に送出する流量低減部をさらに備えることが好ましい。
【0030】
また、本発明の水素オフガス排出方法において、前記工程(a)は、
前記燃料電池より排出される前記水素オフガスの流量を低減させる工程と、
流量の低減された前記水素オフガスを、前記酸素オフガスに混合する工程と、
を含むことが好ましい。
【0031】
このように、酸素オフガスと混合するに当たり、水素オフガスの流量は低減されているので、酸素オフガスの流量が例え増加していなくても、水素オフガスを十分に希釈化することができる。そのため、混合ガスに含まれる水素の濃度を十分低下させることができ、十分な低水素濃度の状態で、混合ガスを大気中に排出することができる。
【0032】
また、上記の課題の少なくとも一部を解決するための本発明の第2の車載用燃料電池システムは、
水素ガスと酸化ガスの供給を受け、これら水素ガスと酸化ガスを使用して電力を発生すると共に、使用済みの水素オフガスと酸素オフガスを排出する燃料電池を備え、車両に搭載される車載用燃料電池システムであって、
前記水素オフガス又はこのオフガスを含むガスの大気中への排出を図る流路の末端に、該流路の末端開口から流れ出るガス流を開口径方向に拡散する拡散部材を有することを特徴とする。
【0033】
なお、上記した本発明の第1の車載用燃料電池システムにおいて、前記第3の流路の末端に、該流路の末端開口から流れ出るガス流を開口径方向に拡散する拡散部材を有するものとすることが好ましい。
【0034】
こうすれば、大気中へのガス排出は、ガス流路の末端開口から排出されると同時に開口径方向に拡散された状態で起きる。こうして四方に拡散排出された排ガス(水素オフガス)は、流路末端周辺の空気との接触機会が増え、その分、希釈が進む。よって、水素濃度が高いままでガス排出が継続されるような事態を招くことがなく、流路末端で水素濃度を速やかに低減できる。こうした拡散部材は、流路末端と対向するものとしたり、流路末端をラッパ状に拡張した上で流路末端開口内に設けたり、種々の態様が可能である。
【0035】
また、上記した本発明の第1、第2の車載用燃料電池システムにおいて、前記流路の末端に、該末端を所定の距離を隔てて覆うよう遮蔽部材を備え、該遮蔽部材は、所定径以上の一又は複数の孔を有するものとすることができる。
【0036】
こうすれば、この遮蔽部材は、流路末端からのガス透過を可能とすると共に、流路の末端開口への着火源の直接接近を防止することができる。よって、既述したように低水素濃度状況下でのガス排出と相まって、混合ガス(排出ガス)の着火回避の信頼性を高めることができ好ましい。この場合、遮蔽部材としては、例えばメッシュ状或いは多孔パンチ状とされたものとすることができ、流路末端からの距離としては、末端開口からのガスの流れを阻害することがなく、末端開口への着火源の直接接近を実質的に回避できるような距離とすればよい。また、遮蔽部材における孔径やその孔数としても、
末端開口への着火源の直接接近を実質的に回避できるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施例としての車載用燃料電池システムを示す構成図である。
【図2】図1の車載用燃料電池システムにおける水素オフガスの排出方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【図3】図1の車載用燃料電池システムにおける水素オフガスの排出方法の他の例を説明するためのフローチャートである。
【図4】図1の車載用燃料電池システムにおける水素オフガスの排出方法の別の例を説明するためのフローチャートである。
【図5】図1のシャットバルブ414と混合部411との間に配置されるバッファを説明するための説明図である。
【図6】本発明の第2の実施例としての車載用燃料電池システムを示す構成図である。
【図7】本発明の第3の実施例としての車載用燃料電池システムを示す構成図である。
【図8】水素オフガスの排出系の要部を示す概略斜視図である。
【図9】オフガス排出口524の周辺を説明する説明図である。
【図10】オフガス排出口524の周辺を車体との関係を採って説明する説明図である。
【図11】変形例の酸素オフガス排出流路503と拡散板530を説明する説明図である。
【図12】変形例のバッファ413を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1の実施例:
A−1.第1の実施例の構成:
A−2.第1の実施例の動作:
B.第2の実施例:
B−1.第2の実施例の構成:
B−2.第2の実施例の動作:
C.第3の実施例:
C−1.第3の実施例の構成:
C−2.第3の実施例の動作:
D.変形例:
【0039】
A.第1の実施例:
A−1.第1の実施例の構成:
図1は本発明の第1の実施例としての車載用燃料電池システムを示す構成図である。本実施例の燃料電池システムは、自動車などの車両に搭載されるものであって、主として、水素ガスの供給を受けて電力を発生する燃料電池100と、その燃料電池100に水素ガスを供給する水素吸蔵合金タンク200と、を備えている。
【0040】
このうち、燃料電池100は、水素を含んだ水素ガスの他、酸素を含んだ酸化ガス(例えば、空気)の供給を受けて、水素極と酸素極において、下記に示すような反応式に従って、電気化学反応を起こし、電力を発生させている。
【0041】
即ち、水素極に水素ガスが、酸素極に酸化ガスがそれぞれ供給されると、水素極側では式(1)の反応が、酸素極側では式(2)の反応がそれぞれ起こり、燃料電池全体としては、式(3)の反応が行なわれる。
【0042】
2 → 2H++2e- …(1)
2H++2e-+(1/2)O2 → H2O …(2)
2+(1/2)O2 → H2O …(3)
このような燃料電池100を車両の動力源として用いる場合、燃料電池100から発生された電力によって電動機(図示せず)を駆動し、その発生トルクを車軸(図示せず)に伝達して、車両の推進力を得る。
【0043】
また、燃料電池100は、複数の単セルが積層されたスタック構造となっており、1つの単セルは、電解質膜(図示せず)と、それを両側から挟み込む拡散電極(図示せず)である水素極および酸素極と、さらにそれらを両側から挟み込む2枚のセパレータ(図示せず)と、で構成されている。セパレータの両面には、凹凸が形成されており、挟み込んだ水素極と酸素極との間で、単セル内ガス流路を形成している。このうち、水素極との間で形成される単セル内ガス流路には、前述したごとく供給された水素ガスが、酸素極との間で形成される単セル内ガス流路には、酸化ガスが、それぞれ流れている。
【0044】
一方、水素吸蔵合金タンク200は、内部に水素吸蔵合金(図示せず)を備えている。一般に、水素吸蔵合金は、加熱すると、吸熱反応を生じて水素を放出し、冷やすと、放熱反応を生じて水素を吸蔵する性質がある。従って、水素吸蔵合金から水素を取り出す際には、図示せざる熱交換システムによって、水素吸蔵合金タンク200内の水素吸蔵合金を加熱する。
【0045】
なお、水素吸蔵合金は、不純物が存在すると、劣化するため、水素吸蔵合金タンク200内には高純度の水素が蓄えられている。
【0046】
その他、本実施例の燃料電池システムは、図1に示すように、システム内で水素ガスを流通させるための水素ガス流路と、酸化ガスを流通させるための酸化ガス流路と、制御部50を備えている。
【0047】
このうち、水素ガス流路は、水素吸蔵合金タンク200の放出口から燃料電池100の供給口に至る本流流路401と、燃料電池100の排出口から後述するポンプ410を介して本流流路401に戻る循環流路403と、本流流路401から分岐して循環流路403に至るバイパス流路405と、循環している水素ガス中の不純物を排出するための排出流路407と、圧力異常時に水素ガスを排出するためのリリーフ流路409と、を備えている。
【0048】
本流流路401には、水素吸蔵合金タンク200の放出口にシャットバルブ202が配置されており、流路途中に圧力センサ400とシャットバルブ402と減圧バルブ404が配置されており、燃料電池100の供給口にシャットバルブ102が配置されている。また、循環流路403には、燃料電池100の排出口にシャットバルブ104が配置されており、流路途中に、気液分離器406,シャットバルブ408およびポンプ410がそれぞれ配置されている。さらに、バイパス流路405にはシャットバルブ412が、排出流路407にはシャットバルブ414が、リリーフ流路409にはリリーフバルブ416が、それぞれ配置されている。
【0049】
一方、酸化ガス流路は、燃料電池100に酸化ガスを供給するための酸化ガス供給流路501と、燃料電池100から排出された酸素オフガスを排出するための酸素オフガス排出流路503と、を備えている。
【0050】
酸化ガス供給流路501には、エアクリーナ502と、コンプレッサ504と、加湿器506と、が配置されている。また、酸素オフガス排出流路503には、気液分離器508と、コンバスタ510と、が配置されている。
【0051】
なお、前述した水素ガス流路の排出流路407は、酸化ガス流路の酸素オフガス排出流路503と接続されており、その接続部分辺りが混合部411を構成している。
【0052】
また、制御部50は、圧力センサ400からの検出結果を入力すると共に、各バルブ102,104,202,402,408,412,414と、ポンプ410と、コンプレッサ504と、をそれぞれ制御する。なお、図面を見やすくするために、制御線等は省略されている。
【0053】
A−2.第1の実施例の動作:
それではまず、酸化ガスの流れについて簡単に説明する。制御部50によってコンプレッサ504を駆動することにより、大気中の空気が酸化ガスとして取り込まれ、エアクリーナ502によって浄化された後、酸化ガス供給流路501を通り、加湿器506を介して燃料電池100に供給される。供給された酸化ガスは、燃料電池100内において、上述した電気化学反応に使用された後、酸素オフガスとして排出される。排出された酸素オフガスは、酸素オフガス排出流路503を通り、気液分離器508やコンバスタ510を介して、車両外部の大気中に排出される。
【0054】
次に、水素ガスの流れについて説明する。制御部50によって、水素吸蔵合金タンク200のシャットバルブ202と、燃料電池100のシャットバルブ102,104とは、それぞれ、燃料電池システムの運転時には基本的に開いているが、停止時には閉じている。
【0055】
また、通常運転時には、制御部50によって、これらの他、本流流路401のシャットバルブ402と、循環流路403のシャットバルブ408はそれぞれ開いているが、バイパス流路405のシャットバルブ412と、排出流路407のシャットバルブ414は閉じている。なお、リリーフバルブ416は、圧力異常時などの場合以外は閉じている。また、圧力センサ400は、水素吸蔵合金タンク200から放出される水素ガスの圧力を検出している。
【0056】
通常運転時、前述したとおり、熱交換システムにより水素吸蔵合金タンク200内の水素ガス吸蔵合金を加熱して、水素ガスを放出させ、放出された水素ガスは、本流流路401を通って、減圧バルブ404で減圧された後、燃料電池100に供給される。供給された水素ガスは、燃料電池100内において上述した電気化学反応に使用された後、水素オフガスとして排出される。排出された水素オフガスは、循環流路403を通って、気液分離器406で、水素オフガス中に含まれる水分の液体分が除去された後、ポンプ410を介して本流流路401に戻され、再び、燃料電池100に供給される。このとき、循環流路403中に設けられているポンプ410が駆動することによって、循環流路403を通る水素オフガスは勢いをつけて本流流路401に送り出される。こうして、通常運転時、水素ガスは、本流流路401および循環流路403を通って循環している。
【0057】
このように、水素オフガスを本流流路401に戻して水素ガスを循環させることにより、燃料電池100で使用される水素量は同じであっても、燃料電池100に供給される水素ガスの見かけの流量が多くなり、流速も速くなるため、燃料電池100に対する水素の供給という観点から、有利な条件を作り出している。この結果、燃料電池100の出力電圧も上がる。
【0058】
また、酸化ガスに含まれる窒素などの不純物が酸素極側から電解質膜を透過して水素極側に漏れ出してくるものの、上記のように水素オフガスを循環させることで、これら不純物が水素極に溜まるというような事態を招くことがない。従って、窒素などの不純物の滞留により、燃料電池100が発電動作に支障を来し、出力電圧が落ちてしまうということもない。
【0059】
なお、ポンプ410は、制御部50によって、その駆動が制御されており、燃料電池100の発生した電力の消費量に応じて、循環流路403を流れる水素オフガスの流速を変化させている。
【0060】
以上が、通常運転時における水素ガスの流れについての概略説明である。次に、低温始動時における水素ガスの流れについて説明する。
【0061】
一般に、水素吸蔵合金は、温度が高いほど、放出する水素の圧力は高くなり、温度が低いほど、放出する水素の圧力は低くなるため、水素吸蔵合金タンクは低温になればなるほど、水素が放出されにくくなる。そこで、低温始動時には、ポンプ410によって、水素吸蔵合金タンク200から水素ガスを引き出すようにしている。
【0062】
燃料電池システムの始動時において、周囲温度が低温で、圧力センサ400によって検出される水素ガスの圧力が基準圧力を下回っている場合、制御部50は、本流流路401のシャットバルブ402と、循環流路403のシャットバルブ408と、排出流路407のシャットバルブ414をそれぞれ閉じ、バイパス流路405のシャットバルブ412を開くと共に、ポンプ410を高回転数で駆動する。それによって、例え、水素吸蔵合金タンク200の温度が低くて、放出される水素ガスの圧力が低くても、水素吸蔵合金タンク200からは、吸蔵されていた水素ガスが十分に引き出される。引き出された水素ガスは、本流流路401からバイパス流路405に入り、そのあと、循環流路403を通って本流流路401に戻り、燃料電池100に供給される。供給された水素ガスは、燃料電池100内で電気化学反応に供された後、水素オフガスとなって、循環流路403に排出される。なお、水素オフガス中に含まれる不純物の濃度は、時間が経つに連れて上がるので、その不純物を除去するために、時々、シャットバルブ414を開いて、排出流路407から水素オフガスを放出する。
【0063】
以上が、低温始動時における水素ガスの流れについての説明である。次に、本発明の特徴である水素オフガスの排出について詳細に説明する。
【0064】
燃料電池システムの通常運転時においては、前述したとおり、水素ガス中に含まれる不純物を均一化させるために、燃料電池100より排出された水素オフガスを、循環流路403を介して本流流路401に戻すことにより、水素ガスを循環させている。しかし、このように水素ガスを均一化させたとしても、燃料電池100内において、酸素極側から水素極側には不純物が常時漏れ出してくるため、長時間経てば、均一化された水素ガス中の不純物の濃度は次第に上がり、それに連れて水素の濃度は低下する。
【0065】
このため、循環流路403から分岐した排出流路407に、シャットバルブ414を設け、循環している水素ガス中の不純物の濃度が上がってきたら、制御部50によって、このシャットバルブ414を開いて、循環している不純物を含む水素ガスの一部を排出している。これにより、不純物を含んだ水素ガスの一部は循環路から排出され、その分だけ、水素吸蔵合金タンク200からの純粋な水素ガスが導入されるので、水素ガス中の不純物の濃度は下がり、逆に水素の濃度は上がる。この結果、燃料電池100は、発電を継続して適切に行なうことができる。シャットバルブ414を開く時間間隔は、運転条件や出力により異なるが、例えば5秒に1回程度としても良い。
【0066】
また、前述したように、燃料電池100内の酸素極側では、式(2)に従って水(H2O)が生成され、その水は水蒸気として酸素極側から電解質膜を介して水素極側に漏れ出してくる。本実施例では、シャットバルブ414を開いて水素ガスを排出すると、その圧力差で水素ガスに急激な流れを生じさせることができ、その勢いで電池セル内の水分を吹き飛ばすことができる。このため、式(2)の進行に伴い生成した水(水蒸気)が凝縮して単セル内で水素極側に張り付いても、この水を上記の急激な水素ガス流により吹き飛ばすので、燃料電池への水素ガスの流れを止めてしまうようなことがない。
【0067】
なお、本実施例では、循環している水素ガス中の不純物の濃度などは特に検出しておらず、過去のデータの蓄積から、不純物の濃度が、許容できない濃度になるまでの時間を予め導き出している。そして、制御部50が、タイマで時間経過を測定して、上記の時間が経過する毎に、定期的にシャットバルブ414を開けるようにしている。但し、水素ガス流路中に水素濃度センサなどを設けて、循環する水素ガス中の水素濃度を検出し、その濃度が基準濃度を下回ったら、シャットバルブ414を開けるようにしても良い。
【0068】
次に、シャットバルブ414から排出された水素ガスは、排出流路407を通って、酸素オフガス排出流路503に送り込まれ、混合部411において、酸素オフガス排出流路503を流れる酸素オフガスと混合される。シャットバルブ414から排出される水素ガスは、水素オフガスであるため、水素の濃度はある程度低い。また、燃料電池100から排出される酸素オフガスも、燃料電池100において酸素の消費された窒素リッチなガスである。従って、このように、水素オフガスを酸素オフガスと混合して希釈化することにより、混合されたガスに含まれる水素の濃度はさらに低下する。
【0069】
次に、混合部411で混合されたガスは、気液分離器508を介してコンバスタ510に流入する。コンバスタ510は、白金触媒512を備えており、燃焼によって、混合ガスに含まれる水素を酸素と反応させて、混合ガスに含まれる水素の濃度をさらに低減させる。
【0070】
このようにして、コンバスタ510によって水素濃度の低減された混合ガスは、その後、大気中に排出される。
【0071】
なお、燃料電池100から排出される酸素オフガスは、前述したとおり、多量の水分が含まれており、酸素オフガス排出流路503の配管が長い場合には、凝縮して水滴となりやすい。従って、そのような酸素オフガスが混合部411において水素オフガスと混合しても、水分は依然として含まれているため、その混合ガスがコンバスタ510内を通った際に、含まれていた水分が凝縮して水滴となって、白金触媒512に付着することがあり得る。本実施例では、上述したとおり、コンバスタ510の前段に気液分離器508を設けて、混合ガスに含まれる水分のうちの液体分を除去しているので、コンバスタ510内の白金触媒512に水滴が付着しないようにでき、白金触媒512の活性を保つことができる。
【0072】
また、燃料電池100の発電動作中にシャットバルブ414を開けたとしても、燃料電池100の出力電圧は一瞬下がるだけで、大きな電圧低下にはならないため、問題はない。
【0073】
以上説明したとおり、本実施例においては、燃料電池100から排出された水素オフガスを混合部411で酸素オフガスと混合することにより希釈化し、さらに、その混合ガスに含まれる水素の濃度をコンバスタ510で低減する。よって、着火回避に有効となる十分な低濃度までの水素濃度の低下を図った後に、大気中に排気するので、着火回避の信頼性を高めることができる。
【0074】
ところで、制御部50によって、シャットバルブ414を開いて、水素オフガスを混合部411に排出する際に、大量に水素オフガスを排出した場合であっても、混合部411における酸素オフガスと混合の混合を経た希釈化を維持して着火回避の信頼性を高めるべく、次のような対処を採ることとした。
【0075】
本実施例では、上記の対処法として以下に説明する4つの方法のうち、何れかの方法を用いて、着火回避の信頼性を高めるようにしている。
【0076】
まず、図2を用いて、1つ目の方法について説明する。図2は図1の車載用燃料電池システムにおける水素オフガスの排出方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0077】
循環している水素ガス中の不純物の濃度が許容できない濃度になったことを、経過時間やセンサなどで検出すると、制御部50は、図2に示す処理を開始し、まず、酸化ガス供給流路501中に配置されているコンプレッサ504を特定出力以上(例えば最大出力)で駆動するよう制御する(ステップS102)。これにより、エアクリーナ502を介して取り込まれる酸化ガスの流量は増加するため、それに伴い、燃料電池100から排出され、酸素オフガス排出流路503を流れる酸素オフガスの流量も増加する。次に、制御部50は、シャットバルブ414を開き(ステップS104)、循環している水素ガス(水素オフガス)をシャットバルブ414から混合部411へ排出する。そして、所定開放時間が経過したら(ステップS106)、シャットバルブ414を閉じて(ステップS108)、図2に示す処理を終了する。なお、シャットバルブ414の開放時間としては、1sec以下が好ましく、500msec程度がより好ましい。
【0078】
このような方法を用いた場合、シャットバルブ414を開いて水素オフガスを混合部411に排出した際に、酸素オフガス排出流路503を流れる酸素オフガスの流量は増しているので、混合部411において、水素オフガスを酸素オフガスと混合した際に、水素オフガスは大量の窒素リッチなガスによって十分に希釈化される。従って、混合ガスに含まれる水素の濃度は低下するため、着火回避の信頼性を高めることができる。
【0079】
次に、図3を用いて、2つ目の方法について説明する。図3は図1の車載用燃料電池システムにおける水素オフガスの排出方法の他の例を説明するためのフローチャートである。
【0080】
図2に示した方法では、シャットバルブ414を開く際に、積極的に、コンプレッサ504を例えば最大出力で駆動して、酸素オフガスの流量が増加してから、水素オフガスを排出するようにしている。しかしながら、例えば、車両の走行中に、走行状態とは無関係にコンプレッサ504が最大出力で駆動されると、運転者に違和感を与える虞がある。具体的には、徐行運転している際に、水素オフガスを排出しようとして、コンプレッサ504が最大出力で駆動されたとすると、徐行運転しているにも関わらず、コンプレッサ504により多大な回転音や振動などが発生して、運転者に違和感を与えることになる。
【0081】
そこで、2つ目の方法では、走行状態(言い換えれば、負荷変動)に応じて変化するコンプレッサ504の駆動に合わせて、シャットバルブ414を開くようにしている。
【0082】
具体的には、制御部50は、図3に示す処理を開始すると、まず、コンプレッサ504の出力が特定出力を上回るまで待機する(ステップS202)。なお、コンプレッサ504の出力は、コンプレッサ504に取り付けられた回転数センサなどの出力結果から導き出すことができる。
【0083】
その後、走行状態に応じてコンプレッサ504の出力が変化し、特定出力を上回ったら、制御部50は、シャットバルブ414を開く(ステップS204)。これにより、酸素オフガス排出流路503を流れる酸素オフガスの流量が増加しているタイミングで、水素オフガスをシャットバルブ414から混合部411へ排出することができる。そして、所定開放時間が経過したら(ステップS206)、シャットバルブ414を閉じて(ステップS208)、図3に示す処理を終了する。
【0084】
このような方法を用いた場合、前述したとおり、酸素オフガスの流量が増加した時に、水素オフガスが混合部411に排出されるので、図2に示した方法と同様に、混合部411において、水素オフガスを酸素オフガスと混合した際に、水素オフガスは大量の窒素リッチなガスによって十分に希釈化される。従って、混合ガスに含まれる水素の濃度は低下するため、着火回避の信頼性を高めることができる。
【0085】
また、コンプレッサ504の駆動はあくまで走行状態に従って変化しているので、その回転音や振動なども走行状態とマッチしており、運転者に違和感を与える虞はない。
【0086】
次に、図4を用いて、3つ目の方法について説明する。図4は図1の車載用燃料電池システムにおける水素オフガスの排出方法の別の例を説明するためのフローチャートである。
【0087】
制御部50は、図4に示す処理を開始すると、まず、シャットバルブ414を開いて(ステップS302)、直ちに閉じる(ステップS304)。そして、制御部50は、処理を開始してから所定時間経過したか否かを判定し(ステップS306)、経過していなければ、上記した動作を繰り返す。これにより、シャットバルブ414は比較的短い周期で開閉を繰り返すことになる。その後、所定時間経過したら、図4に示す処理を終了する。
【0088】
このような方法を用いた場合、前述したとおり、シャットバルブ414は比較的短い周期で開閉を繰り返すので、水素オフガスは、比較的短い周期の離散的なタイミングで、何回かに分けて少量ずつ、混合部411に排出されることになる。従って、混合部411において酸素オフガスと混合する際に、酸素オフガスの流量が例え増加していなくても、水素オフガスを十分に希釈化することができる。よって、混合ガスに含まれる水素の濃度は低下するため、着火回避の信頼性を高めることができる。
【0089】
次に、図5を用いて、4つ目の方法について説明する。この方法では、予め、図1の循環流路403中におけるシャットバルブ414と混合部411との間に、図5に示すようなバッファ413を設けておく。図5は図1のシャットバルブ414と混合部411との間に配置されるバッファを説明するための説明図である。
【0090】
図5に示すように、このバッファ413は、流出口の口径が流入口の口径より絞られており、また、流入口と流出口との間の中間部には、多大な容積を持った空間が空いている。従って、制御部50によって、シャットバルブ414が開き、その後、閉じて、シャットバルブ414から大量の水素オフガスが短時間に排出されても、その水素オフガスがバッファ413に流入すると、流出口が絞られているため、抵抗を受けて中央部の空間に滞留し、少量ずつしか、流出口から混合部411へ流出しない。従って、混合部411において酸素オフガスと混合する際に、酸素オフガスの流量が例え増加していなくても、水素オフガスを十分に希釈化することができる。そのため、混合ガスに含まれる水素の濃度を十分低下させることができ、着火回避の信頼性を高めることができる。
【0091】
B.第2の実施例:
B−1.第2の実施例の構成:
図6は本発明の第2の実施例としての車載用燃料電池システムを示す構成図である。第1の実施例の燃料電池システムでは、水素ガスの供給源として、水素吸蔵合金タンク200を用いるようにしたが、本実施例の燃料電池システムでは、水素吸蔵合金タンク200に代えて、高圧水素ガスタンク300を用いるようにしている。
【0092】
この高圧水素ガスタンク300は、内部に高圧の水素ガスを充填しており、根本に取り付けられたシャットバルブ302を開くと、およそ20〜35MPaの圧力を有する水素ガスが放出される。
【0093】
また、燃料電池100は、第1の実施例と同一の構成であるため、説明は省略する。
【0094】
この他、本実施例の燃料電池システムは、図6に示すように、水素ガス流路と、酸化ガス流路と、制御部50を備えているが、酸化ガス流路は、第1の実施例と同一の構成であるので、説明は省略する。
【0095】
水素ガス流路は、高圧水素ガスタンク300の放出口から燃料電池100の供給口に至る本流流路401と、燃料電池100の排出口からポンプ410を介して本流流路401に戻る循環流路403と、循環している水素ガス中の不純物を排出するための排出流路407と、圧力異常時に水素ガスを排出するためのリリーフ流路409と、を備えている。本実施例では、水素ガスの供給源として高圧水素ガスタンク300を用いているため、高圧の水素ガスを放出することができる。従って、水素吸蔵合金タンク200の場合のように、低温始動時に水素ガスを引き出す必要がないため、バイパス流路405は設けられていない。
【0096】
本流流路401には、高圧水素ガスタンク300の放出口にシャットバルブ302が配置されており、流路途中に減圧バルブ418,熱交換器420,減圧バルブ422および気液分離器425がそれぞれ配置されており、燃料電池100の供給口にシャットバルブ102が配置されている。また、循環流路403には、燃料電池100の排出口にシャットバルブ104が配置されており、流路途中に、気液分離器406,ポンプ410および逆止弁426がそれぞれ配置されている。なお、排出流路407にシャットバルブ414が、リリーフ流路409にリリーフバルブ416が配置されている点や、排出流路407が酸素オフガス排出流路503と接続されており、その接続部分辺りが混合部411を構成している点は、第1の実施例の場合と同様である。
【0097】
制御部50は、圧力センサ400からの検出結果を入力すると共に、各バルブ102,104,302,414と、ポンプ410と、コンプレッサ504と、をそれぞれ制御する。なお、図面を見やすくするために、制御線等は省略されている。
【0098】
B−2.第2の実施例の動作:
それでは、水素ガスの流れについて簡単に説明する。なお、酸化ガスの流れについては、第1の実施例の場合と同様であるので、説明は省略する。
【0099】
制御部50によって、高圧水素ガスタンク300のシャットバルブ302と、燃料電池100のシャットバルブ102,104とは、それぞれ、燃料電池システムの運転時には基本的に開いているが、停止時には閉じている。
【0100】
また、通常運転時は、制御部50によって、その他、排出流路407のシャットバルブ414は閉じている。なお、リリーフバルブ416は、第1の実施例の場合と同様に、圧力異常時などの場合以外は閉じている。
【0101】
通常運転時、前述したとおり、制御部50がシャットバルブ302を開くと、高圧水素ガスタンク300からは水素ガスが放出され、その放出された水素ガスは、本流流路401を通って、減圧バルブ418で減圧された後、熱交換器420で暖められる。暖められた水素ガスは、減圧バルブ422でさらに減圧された後、気液分離器425で、水素ガス中に含まれる水分の液体分を除去して、燃料電池100に供給される。供給された水素ガスは、燃料電池100内において前述の電気化学反応に使用された後、水素オフガスとして排出される。排出された水素オフガスは、循環流路403を通って、気液分離器406で、水素オフガス中に含まれる水分の液体分が除去された後、ポンプ410を介して本流流路401に戻され、再び、燃料電池100に供給される。このとき、第1の実施例の場合と同様に、循環流路403の途中に設けられているポンプ410が駆動することによって、循環流路403を通る水素オフガスは勢いをつけて本流流路401に送り出される。こうして、通常運転時、水素ガスは、本流流路401および循環流路403を通って循環している。なお、循環流路403中において、本流流路401との接続点と、ポンプ410と、の間には、循環している水素オフガスが逆流しないようにするために、逆止弁426が設けられている。
【0102】
以上が、本実施例における水素ガスの流れについての説明である。次に、本発明の特徴である水素オフガスの排出について詳細に説明する。
【0103】
本実施例においても、第1の実施例の場合と同様に、循環流路403から分岐した排出流路407に、シャットバルブ414を設け、このシャットバルブ414によって、不純物を含んだ水素ガス(水素オフガス)を排出するようにしている。そして、シャットバルブ414から排出した水素オフガスを、混合部411において、酸素オフガス排出流路503を流れる酸素オフガスと混合して希釈化することにより、混合されたガスに含まれる水素の濃度を低下させる。さらに、その混合ガスを、気液分離器508を介してコンバスタ510に流入して、コンバスタ510において、白金触媒512を用いて、混合ガスに含まれる水素を酸素と反応させて、混合ガスに含まれる水素の濃度をさらに低減させる。こうして、コンバスタ510によって水素濃度の低減された混合ガスは、その後、大気中に排出される。
【0104】
従って、本実施例においても、第1の実施例と同様に、燃料電池100から排出された水素オフガスを混合部411で酸素オフガスと混合することにより希釈化し、その混合ガスに含まれる水素の濃度をコンバスタ510で低減する。このため、着火回避に有効となる十分な低濃度までの水素濃度の低下を図った後に、大気中に排気するので、着火回避の信頼性を高めることができる。
【0105】
また、本実施例においても、より高い信頼性を確保するために、第1の実施例で述べた4つの方法のうち、何れかの方法を用いて、シャットバルブ414を開いて水素オフガスを排出するようにしている。
【0106】
なお、第1の実施例においては、図1に示したように、低温始動時に、循環流路403を、水素吸蔵合金タンク200からの水素ガスが流れる関係で、排出流路407は燃料電池100のシャットバルブ104とシャットバルブ408との間から分岐させているが、本実施例においては、循環流路403は、水素オフガスしか流れないので、ポンプ410の下流側から分岐させている。従って、ポンプ410の下流側では、水素オフガスはポンプ410によって圧力が加わっているので、本実施例では、シャットバルブ414を開くと、水素オフガスを勢いを付けて排出させることができる。
【0107】
C.第3の実施例:
C−1.第3の実施例の構成:
図7は本発明の第3の実施例としての車載用燃料電池システムを示す構成図である。この第3の実施例の燃料電池システムでは、第1の実施例と同様の燃料電池100を備え、その水素ガス供給源として、第2の実施例と同様の高圧水素ガスタンク300を用いるようにしている。本実施例では、高圧水素ガスタンク300は、車両内に4本搭載されている。この場合、第1の実施例のように水素吸蔵合金タンク200を用いるようにすることもできる。なお、以下の説明に当たっては、上記の第1、第2の実施例と同一の作用をなす機器等については、そのままの符号を伏してその説明を省略することとする。
【0108】
図示するように、この第3の実施例の燃料電池システムでは、水素ガス・酸化ガスの流路において、上記の実施例と流路構成が一部相違する。
【0109】
水素ガス流路は、上記実施例と同様、高圧水素ガスタンク300から燃料電池100に至る本流流路401と、燃料電池100の循環流路403と、不純物排出のための排出流路407と、圧力異常時の水素ガス排出のためのリリーフ流路409とを有する。この他、本実施例の水素ガス流路では、圧力異常時の水素ガス放出の信頼性を高めるためのもう一つのリリーフ流路430と、水素ガス漏れをチェックする際に用いるリークチェック流路427と、水素ガス供給ポート429から高圧水素ガスタンク300の充填口に至る供給流路432と、を備えている。
【0110】
本流流路401は、高圧水素ガスタンク300の放出口のシャットバルブ302に加え、放出マニュアルバルブ304と、減圧バルブ418、熱交換器420および減圧バルブ422を有する。循環流路403は、第2の実施例と同様、気液分離器406等を備え、ポンプ410により逆止弁426を経て水素オフガスを循環させる。供給流路432は、高圧水素ガスタンク300の充填口に逆止弁306および充填マニュアルバルブ308を備える。排出流路407は、シャットバルブ414と水素希釈器424を、リリーフ流路430、409は、リリーフバルブ415、416を、リークチェック流路427は、リークチェックボート428を、それぞれ有する。
【0111】
酸化ガス流路は、上記実施例と同様、燃料電池100への酸化ガス供給のための酸化ガス供給流路501と、酸素オフガス排出のための酸素オフガス排出流路503とを備える。この他、本実施例の酸化ガス流路では、後述の水素希釈器424に酸素オフガスを導くための酸素オフガス分岐導入流路505と、当該導入流路内の水を除去するための水循環流路601とを備えている。
【0112】
酸化ガス供給流路501における機器構成は、第2の実施例と同様であり、加湿器506は、酸素オフガス排出流路503においてもガス加湿可能に構成されている。酸素オフガス排出流路503は、燃料電池100の側から、調圧弁509と、前述の加湿器506と、気液分離器520と、消音器であるマフラ522とを備え、流路末端をオフガス排出口524としている。
【0113】
また、水循環流路601は、ポンプ602,606と、加湿水タンク604と、インジェクタ608とを備える。そして、この水循環流路601は、気液分離器520で分離した水を、ポンプ602,606を介して、酸化ガス供給流路501に循環供給する。
【0114】
さらに、制御部50は、図示しない各種センサから得られた検出結果を入力すると共に、各バルブ102,104,302,414や、ポンプ410,602,606や、コンプレッサ504をそれぞれ制御する。ポンプ410や、コンプレッサ504や、ポンプ602,606などは、それぞれ、モータによって駆動されるが、それらについては図示が省略されている。なお、放出マニュアルバルブ304および充填マニュアルバルブ308は、それぞれ、手動で開閉されるようになっている。
【0115】
B−2.第2の実施例の動作:
次に、ガスの流れについて、酸化ガスの流れから説明する。制御部50によってコンプレッサ504を駆動すると、第1、第2の実施例と同様に、大気中の空気が酸化ガスとして取り込まれる。そして、この酸化ガスは、エアクリーナ502による浄化、コンプレッサ504による加圧を受けて、加湿器506を経て燃料電池100に供給される。
【0116】
供給された酸化ガスは、燃料電池100内において、上述した電気化学反応に使用された後、酸素オフガスとして排出される。排出された酸素オフガスは、酸素オフガス排出流路503を通り、調圧弁509を介した後、再び、加湿器506に流入される。
【0117】
前述したように、燃料電池100内の酸素極側では、式(2)に従って水(HO)が生成されるため、燃料電池100から排出される酸素オフガスは、非常にウェットで、多くの水分を含んでいる。一方、大気中から取り入れて、コンプレッサ504によって加圧された酸化ガス(空気)は、湿度の低いガスである。本実施例では、酸化ガス供給流路501と酸素オフガス排出流路503を一つの加湿器506を通過させ、両者の間で水蒸気交換を行なうことにより、非常にウェットな酸素オフガスからドライな酸化ガスへ水分を与えるようにしている。この結果、加湿器506から流出され燃料電池100へ供給される酸化ガスはある程度ウェットになり、加湿器506から流出され車輌外部の大気中へ排出される酸素オフガスはある程度ドライになる。このため以下の利点がある。
【0118】
まず第1に、上記のように生成した水で非常にウェットとなったまま、酸素オフガスを、酸素オフガス排出流路503を通してそのまま車両外部の大気中に排出することがない。よって、冬場など周囲温度が非常に低い場合であっても、車両のオフガス排出口524からもうもうとした水蒸気の煙が出るようなことがない。第2に、コンプレッサ504からの酸化ガス(空気)をドライのまま燃料電池100に供給することがない。よって、燃料電池100内における電解質膜の酸素極側の表面を乾燥させることがないので、上述した電気化学反応の反応効率を下げるようなことがない。
【0119】
こうして、加湿器506において或る程度ドライになった酸素オフガスは、次に、気液分離器520に流入される。気液分離器520では、加湿器506からの酸素オフガスを気体分と液体分に気液分離し、酸素オフガスに含まれている水分を液体分としてさらに除去して、よりドライにしている。また、除去された水分は回収水として回収され、ポンプ602によって汲み上げられて、加湿水タンク604に蓄えられる。そして、この回収水はポンプ606によってインジェクタ608に送り出され、コンプレッサ504の流入口で、インジェクタ608により霧吹きされて、エアクリーナ502からの酸化ガスに混合される。こうすることによって、酸化ガス供給流路501を通る酸化ガスをさらにウェットにしている。
【0120】
以上のようにして、気液分離器520においてさらにドライになった酸素オフガスは、その後、マフラ522で消音されて、オフガス排出口524から車両外部の大気中に排出される。
【0121】
次に、水素ガスの流れについて説明する。高圧水素ガスタンク300の放出マニュアルバルブ304は、通常時は、常に開いており、充填マニュアルバルブ308は、常に閉じている。
【0122】
また、高圧水素ガスタンク300のシャットバルブ302と、燃料電池100のシャットバルブ102,104の開閉状態は、第2の実施例で説明したとおりである。
【0123】
その他、排出流路407のシャットバルブ414は、制御部50によって、運転時には、基本的に閉じている。なお、リリーフバルブ415,416は、圧力異常時などの場合以外は閉じている。
【0124】
運転時において、前述したとおり、制御部50がシャットバルブ302を開くと、第2の実施例の場合と同様に、高圧水素ガスタンク300の水素ガスは、減圧バルブ418による減圧、熱交換器420による加温、減圧バルブ422によるさらなる減圧、気液分離器425での水分液体分を経て、燃料電池100に供給される。供給された水素ガスは、燃料電池100内において前述の電気化学反応に使用された後、水素オフガスとして排出される。排出された水素オフガスは、第2の実施例の場合と同様に、ポンプ410による流勢を持って、循環流路403から本流流路401に戻され、再び、燃料電池100に供給される。なお、循環流路403の逆止弁426により、循環水素オフガスの逆流回避がなされている。
【0125】
このように、水素オフガスを本流流路401に戻して水素ガスを循環させることにより、燃料電池100の出力電圧の上昇を来すことができる点は、第1実施例で既述した通りである。
【0126】
また、酸化ガスに含まれる窒素などの不純物の滞留についても、水素オフガスの循環により回避できる点、燃料電池100の出力電圧の低下回避ができる点についても、第1実施例で既述した通りである。
【0127】
なお、ポンプ410は、制御部50によって、その駆動が制御されており、燃料電池100の発生した電力の消費量に応じて、循環流路403を流れる水素オフガスの流速を変化させている。
【0128】
また、高圧水素ガスタンク300の出口近傍には、1次減圧用の減圧バルブ418と2次減圧用の減圧バルブ422の2つ減圧バルブが設けられている。これらの減圧バルブは、高圧水素ガスタンク300内の高圧の水素ガスを、2段階で減圧している。即ち、具体的には、1次減圧用の減圧バルブ418によって、およそ20〜35MPaからおよそ0.8〜1MPaに減圧し、さらに2次減圧用の減圧バルブ422によって、およそ0.8〜1MPaからおよそ0.2〜0.3MPaに減圧する。この結果、高圧の水素ガスを燃料電池200に供給して、燃料電池200を傷めるということがない。第2の実施例も同様である。
【0129】
なお、1次減圧用の減圧バルブ418によって、高圧の水素ガスをおよそ20〜35MPaからおよそ0.8〜1MPaに減圧される。高圧水素ガスタンク300からの水素放出は、膨張を伴うために圧力、流量によって、放出温度が変化する。本実施例では、1次減圧用の減圧バルブ418と2次減圧用の減圧バルブ422との間に、熱交換器420を配置して、減圧後の水素ガスに対して熱交換する仕組みを採用している。この熱交換器420には、図示していないが、燃料電池100を循環した冷却水が供給されており、その冷却水と温度変化した水素ガスとの間で熱交換が行なわれる。水素ガスの温度は、この熱交換器420を通過することによって、ほぼ適正な温度範囲となり、燃料電池100に供給することができる。従って、燃料電池100内では、十分な反応温度が得られるため、電気化学反応が進み、適正な発電動作を行なうことができる。第2の実施例も同様である。
【0130】
また、前述したように、燃料電池100内の酸素極側では、式(2)に従って水(HO)が生成され、その水は水蒸気として酸素極側から電解質膜を通して水素極側にも入ってくる。従って、燃料電池100から排出される水素オフガスは、ウェットで、かなり多くの水分を含んでいる。本実施例では、循環流路403の途中に気液分離器406を設け、この気液分離器406によって、水素オフガスに含まれる水分を気液分離し、液体分を除去して、気体(水蒸気)分のみを他の気体と共にポンプ410に送るようにしている。これにより、本流流路401に還流される水素オフガスに含まれる水分は気体分のみとなり、燃料電池100には、水分が気液混合体として供給されることがない。このため、気液混合体によって水素ガス流路を塞いでしまうようなことがなくなるので、燃料電池100では発電動作は良好に継続され、単セルの出力電圧の低下や燃料電池100全体の発電量の低下を引き起こすことがない。第2の実施例も同様である。
【0131】
また、前述したように、水素ガス中に含まれる不純物を均一化させるために、水素ガスを循環させている。しかし、このように水素ガスを均一化させたとしても、燃料電池100内において、酸素極側から水素極側には不純物が常時漏れ出してくるため、長時間経てば、均一化された水素ガス中の不純物の濃度は次第に上がり、それに連れて水素の濃度は低下する。
【0132】
そのため、循環流路403から分岐した排出流路407に、シャットバルブ414を設け、制御部50によって、このシャットバルブ414を定期的に開いて、循環している不純物を含む水素ガスの一部を排出している。シャットバルブ412を開くことで、不純物を含んだ水素ガスの一部は循環路から排出され、その分だけ、高圧水素ガスタンク300からの純粋な水素ガスが導入される。これにより、水素ガス中の不純物の濃度は下がり、逆に水素の濃度は上がる。この結果、燃料電池100は、発電を継続して適切に行なうことができる。シャットバルブ414を開く時間間隔は、運転条件や出力により異なるが、例えば5secに1回程度としてもよい。
【0133】
なお、燃料電池100の発電動作中にシャットバルブ414を開けたとしても、燃料電池100の出力電圧は一瞬下がるだけで、大きな電圧低下にはならないため問題はない。シャットバルブ414の開放時間としては、1sec以下が好ましく、例えば、500msec程度がより好ましい。
【0134】
次に、水素オフガスの排出系とガス排出の様子について説明する。図8は水素オフガスの排出系の要部を示す概略斜視図である。シャットバルブ414から排出された水素ガスは、排出流路407を通って、水素希釈器424に供給される。水素希釈器424には、酸素オフガス排出流路503から分岐した酸素オフガス分岐導入流路505を通って、酸素オフガスも供給されている。
【0135】
水素希釈器424は、内部にガスの混合室424aを形成するようにされた筐体であり、この混合室容積を供給ガス流路(排出流路407と酸素オフガス分岐導入流路505)に比べて拡大して備える。混合室424aは、ガス流路をジグザク状とするよう遮蔽板424bにて区切られている。こうした構造を有する水素希釈器424は、上記のように供給された水素ガスと酸素オフガスとを混合室424aで混合することによって、シャットバルブ414から排出された水素ガスを希釈する。希釈された水素ガスは、酸素オフガス排出流路503に送り込まれ、酸素オフガス排出流路503を流れる酸素オフガスとさらに混合される。そして、混合されたガスは、排出流路407の下流流路407aを経てマフラ522の下流の酸素オフガス排出流路503に合流し、オフガス排出口524から車両外の大気中に排気される。
【0136】
このように水素オフガスを排出する本実施例によれば、次の利点がある。
まず、水素希釈器424の混合室424aに水素オフガスと酸素オフガスを導き、両ガスを容積が大きい混合室424aで混合・希釈することにした。よって、混合室容積の拡大に基づき水素オフガスと酸素オフガスが効率よく混合するので、水素オフガスの希釈化、延いては水素濃度低下を確実に図ることができる。
【0137】
しかも、酸素オフガス排出流路503においては、マフラ522の上流から酸素オフガスの水素希釈器424への分岐導入と、マフラ522の下流での混合ガスの合流を図ることにした。マフラ522は、その構造上、通過する流体(酸素オフガス)に対する圧力損失を起こすので、この圧力損失によりマフラ前後で流路に差圧を発生させる。本実施例では、酸素オフガス分岐導入流路505)の分岐箇所と下流流路407aの合流箇所間で、合流箇所が低くなるような差圧を発生させる。よって、この差圧により酸素オフガスを酸素オフガス分岐導入流路505を経て水素希釈器424の混合室424aに確実に導入できる。このため、特別の機器を用いなくても酸素オフガスの導入ができ、機器構成・制御の簡略化を図ることができると共に、コストも低減できる。加えて、容積拡大の混合室424aでのガス混合・通過を図るので、消音効果も発揮できる。
【0138】
また、酸素オフガス排出流路503における下流流路407aの合流箇所は、上記した第1、第2の実施例における混合部411となる。よって、この第3の実施例では、水素希釈器424から排出した希釈済みの水素オフガスを、酸素オフガス排出流路503を流れる酸素オフガスと混合して更に希釈化することにより、混合されたガスに含まれる水素の濃度をより低下させることができる。
【0139】
これらの結果、本実施例によっても、着火回避に有効となる十分な低濃度までの水素濃度の低下を図った後に、水素オフガスを大気中に排気することができる。よって、着火回避の信頼性を高めることができる。
【0140】
なお、この第3の実施例においても、より高い信頼性を確保するために、第1の実施例で述べた4つの方法のうち、何れかの方法を用いて、シャットバルブ414を開いて水素オフガスを排出するようにしている。
【0141】
一方、減圧バルブ418や422が故障するなどの異常が生じた場合には、燃料電池100に供給される水素ガスの圧力が異常に高くなることがあり得る。そのため、本実施例では、本流流路401における減圧バルブ418の後段で分岐したリリーフ流路430の途中に、リリーフバルブ415を設けると共に、減圧バルブ422の後段で分岐したリリーフ流路409の途中に、リリーフバルブ416を設けて、減圧バルブ418から減圧バルブ422に至る本流流路401中の水素ガスの圧力が所定値以上に上がった場合に、リリーフバルブ415が開いて、また、減圧バルブ422から燃料電池100に至る本流流路401中の水素ガスの圧力が所定値以上に上がった場合には、リリーフバルブ416が開いて、車両外の大気中に水素ガスを排気して、水素ガスの圧力がそれ以上過大となることを防止している。
【0142】
また、高圧水素ガスタンク300に水素ガスを充填する場合には、車両の側面に設けられている水素ガス供給ポート429に、水素ガス供給パイプ(図示せず)をつなぎ、高圧水素ガスタンク300に取り付けられている充填マニュアルバルブ308を手動で開くことによって、水素ガス供給パイプから供給される高圧の水素ガスが、供給流路432を介して高圧水素ガスタンク300に流入して充填される。なお、このとき、高圧水素ガスタンク300に充填された水素ガスが逆流しないようにするために、高圧水素ガスタンク300の根本には逆止弁306が設けられている。
【0143】
次に、本実施例で採用したオフガス排出口524におけるガス排出機構について説明する。図9はオフガス排出口524の周辺を説明する説明図、図10はオフガス排出口524の周辺を車体との関係を採って説明する説明図である。図示するように、酸素オフガス排出流路503は、その末端のオフガス排出口524に対向させて円盤状の拡散板530を有する。この拡散板530は、支持腕532により酸素オフガス排出流路503に固定されている。
【0144】
酸素オフガス排出流路503は、図10に示すように、車体Sの後部バンパBまで延びており、車体側面から見た場合には、拡散板530とオフガス排出口524をバンパスカート部BSで遮蔽している。そして、このオフガス排出口524を拡散板530を含んで覆い隠すようプロテクタ536が配設されている。
【0145】
プロテクタ536は、ステンレス製の板材をパンチングプレス等の多孔打ち抜き加工を経て皿状に成形されたものであり、バンパスカート部BSから車体中央にかけて酸素オフガス排出流路503の本体に固定されている。本実施例では、プロテクタ536は、オフガス排出口524や拡散板530から一定距離を保つよう固定され、パンチ孔の孔径は約5mmとされている。また、パンチ孔配列は、オフガス排出口524からの排出ガスが不用意なガス滞留を招くことなく透過できるようなものとされ、オフガス排出口524や拡散板530からの離間距離は、オフガス排出口524に着火源が直接入り込むことがないと想定される距離とされている。なお、パンチ孔の孔径の下限については、ガス透過が可能でパンチングプレス加工が可能な孔径であればよく約1〜2mm程度とすればよい。孔径の上限については、オフガス排出口524への着火源の直接的な入り込みを実質的に回避できる径(約8mm程度)であればよい。
【0146】
このように拡散板530を有することから、本実施例では、オフガス排出口524から排出されたガスは、拡散板530に衝突してオフガス排出口524の開口径方向に拡散され、周囲四方に拡散して大気と混ざる。このため、排ガス(水素オフガス)と、酸素オフガス排出流路503の流路末端周辺の空気との接触機会が増えるので、その分、排ガス(水素オフガス)の希釈が進み、ガス排出箇所においても水素濃度を速やかに低減できる。この結果、水素希釈器424による希釈、下流流路407aの合流による希釈と相まって、水素濃度をより確実に低減でき、着火回避の信頼性をより高めることができる。なお、本実施例では、酸素オフガス排出流路503を管径約40mmのステンレス製配管とし、径約100〜150mmの拡散板530を、排出流路末端から約30〜50mm離して設置した。
【0147】
また、多孔状のプロテクタ536でオフガス排出口524と拡散板530を覆い隠すようにすると共に、上記した離間距離を確保しているので、オフガス排出口524に着火源が直接入り込まないようにできる。このため、オフガス排出口524からの排ガス(水素オフガス)の着火回避の信頼性を、既述した水素希釈器424等による水素濃度低減と相まって、より一層高めることができる。加えて、タイヤ跳ねした小石等は、プロテクタ536に衝突するものの、オフガス排出口524や拡散板530には達しない。よって、飛び石等による流路損傷を回避できる。
【0148】
なお、上記した実施例では、拡散板530とプロテクタ536とを併用した場合について説明したが、拡散板530のみ、或いはプロテクタ536のみを有するよう構成することもできる。また、プロテクタ536にあっては、メッシュ状のものを所定形状に成形しバンパ等に設置することもできる。
【0149】
C.変形例:
なお、本発明は上記した実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様にて実施することが可能である。
【0150】
上記した第1および第2の実施例では、水素ガスの供給源として水素吸蔵合金タンク200や高圧水素ガスタンク300を用いた燃料電池システムに対して、本発明を適用していた。しかし、本発明はこれらに限定されるものではなく、水素ガスの供給源として、原燃料を改質して水素ガスを生成する改質器などを用いた燃料電池システムに対しても、適用することができる。
【0151】
また、上記した第1および第2の実施例では、燃料電池100から排出された水素オフガスを本流流路401に戻して、水素ガスを循環させているが、本発明はこのような水素ガスを循環させるタイプの燃料電池システムに限定されるものではなく、水素ガスを循環させることなく、燃料電池100から排出された水素オフガスを、そのまま、大気中に排出させるタイプの燃料電池システムにも適用することができる。
【0152】
また、第2の実施例で説明したコンバスタ510を、第3の実施例で説明した下流流路407aと酸素オフガス排出流路503の合流点下流に設けて、水素希釈器424による水素濃度低減と、コンバスタ510による触媒反応を介した水素濃度低減とを併用することもできる。
【0153】
また、第3の実施例において、リリーフ流路430、409を、その末端において酸素オフガス排出流路503に合流させたり、上記の各リリーフ流路に水素希釈器424を設けて酸素オフガスで水素ガス(リリーフガス)を混合・希釈するようにすることもできる。
【0154】
また、第3の実施例で説明した拡散板530をリリーフ流路430、409の末端に設けて、当該流路を排出される水素ガスを四方に拡散させ、希釈するようにすることもできる。なお、この拡散板530を第1、第2の実施例で説明した酸素オフガス排出流路503の末端に設けることもできる。
【0155】
また、第3の実施例で説明した拡散板530は、酸素オフガス排出流路503の末端側への設置に限られるものではなく、拡散板530を車体側(例えば、バンパーや車体フレーム、プロテクタ536等)に設置して、酸素オフガス排出流路503のオフガス排出口524と対向するようにすることもできる。
【0156】
また、第3の実施例において、水素希釈器424を、白金触媒512の層が内表面に形成された混合室424aを有するものとすることもできる。こうすれば、水素希釈器424では、酸素オフガスとの混合と触媒反応による水素除去とを同時に起こすことができるので、水素濃度低減の確実化を図ることができる。
【0157】
また、第3の実施例において、拡散板530を酸素オフガス排出流路503末端のオフガス排出口524に対向させたものとしたが次のように変形することもできる。図11は変形例の酸素オフガス排出流路503と拡散板530を説明する説明図である。
【0158】
図11に示すように、酸素オフガス排出流路503は、オフガス排出口524をラッパ状に拡張して有する。そして、拡散板530は、凸状の円錐形状・円錐台形状のものとされ、オフガス排出口524の開口内部或いは開口外部に設置されている。こうしても、排出ガスの四方への拡散を通して排ガス(水素オフガス)の希釈化、速やかな水素濃度低減を図ることができる。この場合は、オフガス排出口524がラッパ状に拡張していることから、より一層のガス拡散を図ることができる。なお、図11に示すように、オフガス排出口524の開口縁の外側に筒状体531を配置すれば、オフガス排出口524からのガス排出に伴って、筒状体531とオフガス排出口524開口縁との間から周辺の大気が、オフガス排出口524からの排出ガス流に入り込むようにできる。よって、大気との接触が強制的に行われ、その分、水素の希釈化が進み好ましい。
【0159】
また、第3の実施例では、水素希釈器424への酸素オフガス導入を図7に示すように酸素オフガス排出流路503からの分流で行ったが、ポンプ等を用いて強制的に酸素オフガスを導入することもできる。こうすれば、水素希釈器424での水素オフガス希釈が強制的に進行し、好ましい。
【0160】
更に、第1の実施例におけるバッファ413を次のように変形することもできる。図12は変形例のバッファ413を説明するための説明図である。図示するように、変形例のバッファ413は、その側壁が蛇腹状とされており、通常は蛇腹が畳まれた形状を採り、蛇腹が伸びると自身の弾性力による元の形状に復帰するようにされている。従って、このようなバッファ413にシャットバルブ414からの水素オフガスが流入すると(バルブオンオフによる間欠流入)、バッファ413は図中二点鎖線で示すようにガス流入により蛇腹形状を延ばして容積増加を起こし、水素オフガスを滞留させる。そして、このバッファ413は、弾性力による形状復帰に伴って滞留済みの水素オフガスを下流の混合部411に混入させるので、混合部411では水素オフガスを酸素オフガスで確実に希釈化させることができる。
【0161】
この蛇腹状のバッファ413は、自身の弾性力により元の形状に復帰するようにしたが、バネやアクチュエータ等により元の形状に復帰するようにすることもできる。
【符号の説明】
【0162】
50…制御部
100…燃料電池
102…シャットバルブ
104…シャットバルブ
200…水素吸蔵合金タンク
202…シャットバルブ
300…高圧水素ガスタンク
302…シャットバルブ
304…放出マニュアルバルブ
306…逆止弁
308…充填マニュアルバルブ
400…圧力センサ
401…本流流路
402…シャットバルブ
403…循環流路
404…減圧バルブ
405…バイパス流路
406…気液分離器
407…排出流路
408…シャットバルブ
409…リリーフ流路
410…ポンプ
411…混合部
412…シャットバルブ
413…バッファ
414…シャットバルブ
416…リリーフバルブ
418…減圧バルブ
420…熱交換器
422…減圧バルブ
424…水素希釈器
425…気液分離器
426…逆止弁
427…リークチェック流路
428…リークチェックボート
429…水素ガス供給ポート
430…リリーフ流路
432…供給流路
501…酸化ガス供給流路
502…エアクリーナ
503…酸素オフガス排出流路
504…コンプレッサ
505…酸素オフガス分岐導入流路
506…加湿器
508…気液分離器
509…調圧弁
510…コンバスタ
512…白金触媒
520…気液分離器
522…マフラ
524…オフガス排出口
530…拡散板
532…支持腕
536…プロテクタ
601…水循環流路
602…ポンプ
604…加湿水タンク
606…ポンプ
608…インジェクタ
B…後部バンパ
BS…バンパスカート部
S…車体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスと酸化ガスの供給を受け、これら水素ガスと酸化ガスを使用して電力を発生すると共に、使用済みの水素オフガスと酸素オフガスを排出する燃料電池を備え、車両に搭載される車載用燃料電池システムであって、
前記燃料電池の水素オフガス排出口とつながり、排出された前記水素オフガスを流す第1の流路と、
前記燃料電池の酸素オフガス排出口とつながり、排出された前記酸素オフガスを流す第2の流路と、
排出された前記水素オフガスと排出された前記酸素オフガスとを、前記第1の流路と前記第2の流路からそれぞれ導き、前記水素オフガスに前記酸素オフガスを混合する混合部と、
該混合部とつながり、混合された混合ガスを流して前記水素オフガスを大気中に排出する第3の流路と、
を備える車載用燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記混合部は、
オフガスを導くための前記第1、第2の流路に比して容積が拡大するよう形成されている車載用燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2に記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記混合部は、
ジグザグ状とされたガス流路を有する車載用燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3いずれかに記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記混合部は、
前記第2の流路から分岐して、前記酸素オフガスを前記第2の流路から分流して導入する酸素オフガス分岐導入流路と、
該酸素オフガス分岐導入流路と前記第1の流路とつながり、前記水素オフガスと前記酸素オフガスとを混合した上で前記第3の流路に流すよう容積が拡大した混合室とを備え、
前記第2の流路は、
前記酸素オフガス分岐導入流路の分岐箇所より下流において前記第3の流路に合流する車載用燃料電池システム。
【請求項5】
請求項4に記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記第2の流路は、前記分岐箇所と前記第3の流路への合流箇所の間に、通過する流体の圧力損失を発生させる圧損部材を有する車載用燃料電池システム。
【請求項6】
請求項5に記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記圧損部材はマフラとされている車載用燃料電池システム。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6いずれかに記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記混合部の前記混合ガスの通過流路中に配置され、混合された前記ガスに含まれる水素と酸素を、触媒を用いて反応させ、前記ガス中の水素濃度を低減させる触媒反応部をさらに備える車載用燃料電池システム。
【請求項8】
請求項7に記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記触媒反応部は、前記混合部の内表面に形成された触媒層とされている車載用燃料電池システム。
【請求項9】
請求項1ないし請求項6に記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記混合部以降の前記混合ガスの通過流路中に配置され、混合された前記ガスに含まれる水素と酸素を、触媒を用いて反応させ、前記ガス中の水素濃度を低減させる触媒反応部をさらに備える車載用燃料電池システム。
【請求項10】
請求項7ないし請求項9いずれかに記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記触媒反応部に到るガスの流路中に、前記ガスに含まれる水分のうちの液体分を除去する気液分離器をさらに備える車載用燃料電池システム。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10いずれかに記載の車載用燃料電池システムにおいて、
更に、
水素ガス供給源から前記燃料電池に水素ガスを供給する水素ガス流路と、
該水素ガス流路から分岐し、前記水素ガス流路の圧力異常時に前記水素ガスを前記水素ガス流路から排出するリリーフ流路とを備え、
該リリーフ流路を流れる水素ガスを前記第2の流路を流れる前記酸素オフガスで混合・希釈する車載用燃料電池システム。
【請求項12】
請求項11に記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記リリーフ流路は前記第2の流路と合流している車載用燃料電池システム。
【請求項13】
請求項11に記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記リリーフ流路に、混合ガスに含まれる水素と酸素を触媒を用いて反応させ、ガス中の水素濃度を低減させる触媒反応部を設け、該触媒反応部に前記第2の流路を流れる前記酸素オフガスを導く車載用燃料電池システム。
【請求項14】
請求項1ないし請求項13いずれかに記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記第1の流路中に配置され、開閉により前記混合部への前記水素オフガスの通過・遮断が可能なバルブをさらに備える車載用燃料電池システム。
【請求項15】
請求項14に記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池の水素ガス供給口とつながり、供給される前記水素ガスを流す第4の流路と、
前記第1の流路中における前記燃料電池の排出口と前記バルブとの間の第1の箇所と、前記第4の流路中における第2の箇所と、の間をつなぎ、前記燃料電池から排出された前記水素オフガスを流し、前記第4の流路に戻す第5の流路と、
をさらに備える車載用燃料電池システム。
【請求項16】
請求項14または請求項15に記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池の酸化ガス供給口とつながり、供給される前記酸化ガスを流す第6の流路と、
前記第2の流路中または前記第6の流路中に配置され、排出される前記酸素オフガスの流量を変化させることが可能な流量可変部と、
前記バルブと前記流量可変部を制御する制御部と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記バルブを開く際には、前記流量可変部によって、排出される前記酸素オフガスの流量を、所定流量より増加させることを特徴とする車載用燃料電池システム。
【請求項17】
請求項14または請求項15に記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池の酸化ガス供給口とつながり、供給される前記酸化ガスを流す第6の流路と、
前記第2の流路中または前記第6の流路中に配置され、排出される前記酸素オフガスの流量を変化させることが可能な流量可変部と、
前記バルブと前記流量可変部を制御する制御部と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記流量可変部によって、排出される前記酸素オフガスの流量が、所定流量を超えている場合に、前記バルブを開くことを特徴とする車載用燃料電池システム。
【請求項18】
請求項14または請求項15に記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記バルブを制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、排出された前記酸素オフガスを前記混合部に送る際、前記バルブに、比較的短い周期で開閉を繰り返させることを特徴とする車載用燃料電池システム。
【請求項19】
請求項14または請求項15に記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記第1の流路中における前記バルブと前記混合部との間に配置され、前記バルブより流入される前記水素オフガスを、その流量を低減させて前記混合部に送出する流量低減部をさらに備える車載用燃料電池システム。
【請求項20】
請求項19に記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記流量低減部は、前記水素オフガスの流入口と流出口との中間部に容積が大きくなった中空部を備え、前記バルブより流入した前記水素オフガスを前記中空部に滞留させてから排出することで、前記バルブより流入される前記水素オフガスを、その流量を低減させて前記混合部に送出する車載用燃料電池システム。
【請求項21】
請求項20に記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記流量低減部は、前記流出口の口径より絞られた口径の前記流出口を有する車載用燃料電池システム。
【請求項22】
請求項19または請求項20に記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記流量低減部の前記中空部は、容積可変とされている車載用燃料電池システム。
【請求項23】
請求項22に記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記流量低減部の前記中空部は、前記バルブからの前記水素オフガスの流入時に、容積増加を起こす車載用燃料電池システム。
【請求項24】
請求項1ないし請求項23いずれかに記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記第3の流路の末端に、該流路の末端開口から流れ出るガス流を開口径方向に拡散する拡散部材を有する車載用燃料電池システム。
【請求項25】
水素ガスと酸化ガスの供給を受け、これら水素ガスと酸化ガスを使用して電力を発生すると共に、使用済みの水素オフガスと酸素オフガスを排出する燃料電池を備え、車両に搭載される車載用燃料電池システムであって、
前記水素オフガスまたはこのオフガスを含むガスの大気中への排出を図る流路の末端に、該流路の末端開口から流れ出るガス流を開口径方向に拡散する拡散部材を有する車載用燃料電池システム。
【請求項26】
請求項24または請求項25に記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記拡散部材は、前記流路末端と所定の距離を隔てて対向するよう設置されている車載用燃料電池システム。
【請求項27】
請求項26に記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記拡散部材は、斜面状の側面を有する錐形状を有する車載用燃料電池システム。
【請求項28】
請求項24ないし請求項27いずれかに記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記拡散部材は、前記流路末端と車両の車体側のいずれかに設置されている車載用燃料電池システム。
【請求項29】
請求項24または請求項25に記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記流路の末端を前記拡散部材を含んで所定の距離を隔てて覆うよう遮蔽部材を備え、該遮蔽部材は、前記流路の末端からの排出ガスを排出させる孔を有する車載用燃料電池システム。
【請求項30】
請求項1ないし請求項23いずれかに記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記第3の流路の末端に、該末端を所定の距離を隔てて覆うよう遮蔽部材を備え、該遮蔽部材は、前記第3の流路の末端からの排出ガスを排出させる孔を有する車載用燃料電池システム。
【請求項31】
水素ガスと酸化ガスの供給を受け、これら水素ガスと酸化ガスを使用して電力を発生すると共に、使用済みの水素オフガスと酸素オフガスを排出する燃料電池を備え、車両に搭載される車載用燃料電池システムであって、
前記水素オフガスまたはこのオフガスを含むガスの大気中への排出を図る流路の末端に、該末端を所定の距離を隔てて覆うよう遮蔽部材を備え、該遮蔽部材は、前記第3の流路の末端からの排出ガスを排出させる孔を有する車載用燃料電池システム。
【請求項32】
請求項29ないし請求項31いずれかに記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記遮蔽部材は、バンパに設置されている車載用燃料電池システム。
【請求項33】
請求項29ないし請求項32いずれかに記載の車載用燃料電池システムにおいて、
前記遮蔽部材は、メッシュ状或いは多孔パンチ状とされている車載用燃料電池システム。
【請求項34】
水素ガスと酸化ガスの供給を受け、これら水素ガスと酸化ガスを使用して電力を発生すると共に、使用済みの水素オフガスと酸素オフガスを排出する燃料電池において、排出される前記水素オフガスを大気中に排出する水素オフガス排出方法であって、
(a)前記燃料電池より排出された前記水素オフガスを、排出された前記酸素オフガスと混合する工程と、
(b)混合された前記ガスを大気中に排出する工程と、
を備える水素オフガス排出方法。
【請求項35】
請求項34に記載の水素オフガス排出方法において、
前記工程(a)は、
前記燃料電池より排出された前記水素オフガスを、該オフガスを流す第1の流路から、容積が拡大した混合室に導入する工程(a1)と、
前記燃料電池より排出された前記酸素オフガスを該オフガスを流す第2の流路から分岐した分岐流路から、前記混合室に導入する工程(a2)と、
前記混合室で混合された前記ガスを、前記混合室につながった第3の流路に排出する工程とを含み、
前記工程(b)は、
前記第2の流路における前記分岐流路の分岐箇所より下流において、前記第2の流路を前記第3の流路に合流して前記ガスを大気中に排出する工程を含む水素オフガス排出方法。
【請求項36】
請求項34に記載の水素オフガス排出方法において、
前記工程(b)は、
混合された前記ガスに含まれる水素と酸素を、触媒を用いて反応させ、前記ガス中の水素濃度を低減させる工程と、
水素濃度の低減された前記ガスを大気中に排出する工程と、
を含む水素オフガス排出方法。
【請求項37】
請求項34または請求項36に記載の水素オフガス排出方法において、
前記工程(a)は、
前記水素オフガスを前記酸素オフガスに混合する際に、前記燃料電池より排出される前記酸素オフガスの流量を、所定流量より増加させる工程を含む水素オフガス排出方法。
【請求項38】
請求項34または請求項36に記載の水素オフガス排出方法において、
前記工程(a)は、
前記燃料電池より排出される前記酸素オフガスの流量が、所定流量を超えている場合に、前記水素オフガスを前記酸素オフガスに混合する工程を含む水素オフガス排出方法。
【請求項39】
請求項34または請求項36に記載の水素オフガス排出方法において、
前記工程(a)は、
前記水素オフガスを、比較的短い周期の離散的なタイミングで、前記酸素オフガスに混合する工程を含む水素オフガス排出方法。
【請求項40】
請求項34または請求項36に記載の水素オフガス排出方法において、
前記工程(a)は、
前記燃料電池より排出される前記水素オフガスの流量を低減させる工程と、
流量の低減された前記水素オフガスを、前記酸素オフガスに混合する工程と、
を含む水素オフガス排出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−277670(P2009−277670A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193009(P2009−193009)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【分割の表示】特願2001−181092(P2001−181092)の分割
【原出願日】平成13年6月15日(2001.6.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】