説明

車輪用軸受シール

【課題】耐泥水性を高めて密封性能を向上させた車輪用軸受シールを提供する。
【解決手段】スリンガ11の立板部11bにサイドリップ13aが所定の軸方向シメシロを介して摺接された車輪用軸受シール7において、シール部材13が芯金12の嵌合部12aの端部外表面から内径部12bの内縁まで回り込んで固着され、当該シール部材13の端部にシール板10とスリンガ11との間に形成される環状空間を閉塞するひさし部15が一体に形成され、このひさし部15がドレーン部DRとなる路面側に位置する下方部分を除く周方向部分に形成されると共に、ひさし部15の内径d1が、スリンガ11の立板部11bの外径d2よりも小径に設定され、当該ひさし部15が立板部11bと軽接触されているか、または、僅かなすきまを介して対向し、ラビリンスシールが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐泥水性を向上させたパックシールからなる車輪用軸受シール、詳しくは、耐泥水性を高めて密封性能を向上させた車輪用軸受シールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車等の車輪を支持する車輪用軸受装置は、車輪を取り付けるためのハブ輪を複列の転がり軸受を介して回転自在に支承するもので、駆動輪用と従動輪用とがある。構造上の理由から、駆動輪用では内輪回転方式が、従動輪用では内輪回転と外輪回転の両方式が一般的に採用されている。また、車輪用軸受装置には、懸架装置を構成するナックルとハブ輪との間に複列アンギュラ玉軸受等からなる車輪用軸受を嵌合させた第1世代と称される構造から、外方部材の外周に直接車体取付フランジまたは車輪取付フランジが形成された第2世代構造、また、ハブ輪の外周に一方の内側転走面が直接形成された第3世代構造、あるいは、ハブ輪と等速自在継手の外側継手部材の外周にそれぞれ内側転走面が直接形成された第4世代構造とに大別されている。
【0003】
これらの軸受部には、軸受内部に封入されたグリースの漏れを防止すると共に、外部から雨水やダスト等の侵入を防止するためにシールが装着されている。近年、自動車の燃費向上のため軸受部の低トルク化が進んでいる。この軸受部の回転トルクのうち、シールの回転トルクが支配的である。すなわち、転がり抵抗に比べシールの摺動抵抗が大きく、回転トルクに占めるシールの摺動抵抗の比率が高く、車輪用軸受装置のシールにおいて、さらなる低トルク化が要求されるようになっている。また、市場回収品の軸受損傷状況を検証すると、剥離等の本来の軸受寿命よりも、シール不具合による損傷が多くを占めている。したがって、シールの密封性と耐久性を高めることにより、軸受寿命の向上を確実に図ることができる。
【0004】
従来から、密封性を高めた車輪用軸受シールに関しては種々提案されているが、こうした車輪用軸受シールの代表的な一例を図8に示す。このシール50は、互いに対向配置されたスリンガ51と環状のシール板52とからなる。スリンガ51は鋼板からプレス加工にて断面が略L字状に形成され、回転側部材となる内輪(図示せず)の外径に圧入される円筒部51aと、この円筒部51aから径方向外方に延びる立板部51bとからなる。
【0005】
一方、シール板52は断面略L字状に形成され、固定側部材となる外方部材(図示せず)に装着されている。このシール板52は、芯金53と、この芯金53に加硫接着されたシール部材54とからなる。芯金53は鋼板からプレス加工にて形成され、外方部材の端部に内嵌された円筒部53aと、この円筒部53aから径方向内方に延びる立板部53bとからなる。
【0006】
シール部材54はニトリルゴム等の弾性部材からなり、スリンガ51の立板部51bに摺接する第1および第2のサイドリップ54a、54bを有している。これら第1および第2のサイドリップ54a、54bは、芯金53の立板部53bから外径側に傾斜して形成され、それらの先端がスリンガ51の立板部51bに所定の軸方向シメシロをもって摺接されていると共に、グリースリップ54cが円筒部51aに所定の径方向シメシロを介して摺接されている。
【0007】
ここで、スリンガ51の立板部51bの外面側に磁性ゴム55が加硫接着によって一体に接合されている。この磁性ゴム55は、立板部51bの先端から内面側に回り込んで接合されている。一方、シール部材54は、芯金53の円筒部53aの先端部に回り込んで接合され、ここから内方に立壁部56が形成されている。そして、磁性ゴム55とこのシール部材54との間に環状隙間57と、この環状隙間57と屈曲するように連なるラビリンス隙間58が形成されている。これにより、軸受空間への泥水の浸入を効果的に防止して、軸受寿命を延長できるようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−285374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
然しながら、こうした従来のシール50では、磁性ゴム55とシール部材54との間に環状隙間57と、この環状隙間57と屈曲するように連なるラビリンス隙間58が形成されているので、軸受空間への泥水の浸入を防止することができるが、これらの環状隙間57やラビリンス隙間58だけでは、過酷な環境に曝される車輪用軸受では完全に泥水等の浸入を防止することは難しい。また、逆に、一旦浸入してしまった泥水がシール50内で滞留し、排出し難い構造となっている。
【0010】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたもので、耐泥水性を高めて密封性能を向上させた車輪用軸受シールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、この外方部材に複列の転動体を介して内挿され、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面を有する内方部材と、この内方部材と前記外方部材との間に形成された環状空間の少なくとも一方の開口部に装着され、互いに対向配置された環状のシール板とスリンガとからなる複合型のシールで構成され、前記シール板が、前記外方部材の端部内周に圧入される芯金と、この芯金に加硫接着により一体に接合され、少なくとも径方向外方に傾斜して延びるサイドリップを一体に有するシール部材を備え、前記スリンガが断面略L字状に形成され、前記内方部材の端部外周に圧入される円筒部と、この円筒部から径方向外方に延びる立板部とを有し、この立板部に前記サイドリップが所定の軸方向シメシロを介して摺接された車輪用軸受シールにおいて、前記シール部材の端部に前記シール板とスリンガとの間に形成される環状空間を閉塞するひさし部が一体に形成されている。
【0012】
このように、内方部材と外方部材との間に形成された環状空間の少なくとも一方の開口部に装着され、互いに対向配置された環状のシール板とスリンガとからなる複合型のシールで構成され、シール板が、外方部材の端部内周に圧入される芯金と、この芯金に加硫接着により一体に接合され、少なくとも径方向外方に傾斜して延びるサイドリップを一体に有するシール部材を備え、スリンガが断面略L字状に形成され、内方部材の端部外周に圧入される円筒部と、この円筒部から径方向外方に延びる立板部とを有し、この立板部にサイドリップが所定の軸方向シメシロを介して摺接された車輪用軸受シールにおいて、シール部材の端部にシール板とスリンガとの間に形成される環状空間を閉塞するひさし部が一体に形成されているので、外部から泥水等がシール内部に浸入するのを防止すると共に、泥水がシール内部に浸入した場合でも、ドレーン部を通して外部に排出することができ、密封性能を向上させた車輪用軸受シールを提供することができる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明のように、前記シール部材が前記芯金の嵌合部の端部外周面から内径部の内縁まで回り込んで固着されていれば、外方部材との嵌合部の気密性を高めることができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明のように、前記ひさし部がドレーン部となる路面側に位置する下方部分を除く周方向部分に形成されていれば、泥水がこのひさし部を通してシール内部に浸入した場合、シール板とスリンガとの環状空間を通して外部に排出することができ、密封性能を向上させた車輪用軸受シールを提供することができる。
【0015】
好ましくは、請求項4に記載の発明のように、前記ひさし部の内径が、前記スリンガの立板部の外径よりも小径に設定され、当該ひさし部が前記立板部と軽接触されているか、または、僅かなすきまを介して対向し、ラビリンスシールが形成されていれば、泥水がシール内部に浸入した場合でも、ドレーン部を通して外部に容易に排出することができる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明のように、前記ひさし部の先端部に予めグリースが塗布されていれば、ひさし部がスリンガに接触した場合でも、ひさし部の摩耗およびトルクの大幅な増加を抑制することができる。
【0017】
好ましくは、請求項6に記載の発明のように、前記グリースが、軸受内部に封入されるグリースおよびシールリップに塗布されるグリースと同じ仕様、あるいは少なくともその基油と増ちょう剤が同じであれば、軸受内部に封入されたグリースと混ざっても、稠度等の性状が変化して潤滑性が劣化するのを防止することができる。
【0018】
また、請求項7に記載の発明のように、前記スリンガの立板部の側面に磁気エンコーダが加硫接着で一体に接合され、この磁気エンコーダがエラストマに磁性体粉が混入され、周方向等配で交互に磁極N、Sが着磁されていると共に、前記ひさし部が前記磁気エンコーダと軽接触されているか、または、僅かなすきまを介して対向し、ラビリンスシールが形成されていても良い。
【0019】
また、請求項8に記載の発明のように、前記ひさし部から内径側に亙って漸次厚肉になる傾斜部が形成されていれば、泥水がシール内部に浸入した場合でも、この傾斜部に沿って泥水がシール板とスリンガとの環状空間を通して容易に外部に排出することができ、密封性能を向上させることができる。
【0020】
好ましくは、請求項9に記載の発明のように、前記傾斜部が前記ひさし部を有する部分から前記ドレーン部に亙って、前記シール部材の肉厚が漸次減少して行くように形成されていれば、シール内部に浸入した泥水が、この傾斜部に沿ってスムーズに外部に排出することができる。
【0021】
また、請求項10に記載の発明のように、前記シール部材の肉厚のうち前記ひさし部を有する部分の肉厚が前記ドレーン部に位置する肉厚に比べ大きく設定されていれば、シール部材の内周面に沿って浸入してきた泥水をスムーズに外部に誘導して排出することができる。
【0022】
また、請求項11に記載の発明のように、前記シールリップのシメシロのうち前記ひさし部を有する部分のシメシロが前記ドレーン部に位置する部分のシメシロに比べ小さく設定されていれば、耐泥水性を維持したままシールの低トルク化を図ることができる。
【0023】
また、請求項12に記載の発明のように、前記ひさし部が形成されていない前記ドレーン部が45〜75°の範囲に設定されていれば、泥水の排出効果を確保しつつ、路面から雨水等が跳ね掛けられてこの部分からシール内部に浸入するのを防止することができる。
【0024】
また、請求項13に記載の発明のように、前記シール部材が合成ゴムからなり、このシール部材の温度TR10が−35℃以下に設定されていれば、低温雰囲気でもリップの柔軟性を損なうことがないのでリップ追従性を維持することができ、耐泥水性を発揮することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る車輪用軸受シールは、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、この外方部材に複列の転動体を介して内挿され、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面を有する内方部材と、この内方部材と前記外方部材との間に形成された環状空間の少なくとも一方の開口部に装着され、互いに対向配置された環状のシール板とスリンガとからなる複合型のシールで構成され、前記シール板が、前記外方部材の端部内周に圧入される芯金と、この芯金に加硫接着により一体に接合され、少なくとも径方向外方に傾斜して延びるサイドリップを一体に有するシール部材を備え、前記スリンガが断面略L字状に形成され、前記内方部材の端部外周に圧入される円筒部と、この円筒部から径方向外方に延びる立板部とを有し、この立板部に前記サイドリップが所定の軸方向シメシロを介して摺接された車輪用軸受シールにおいて、前記シール部材の端部に前記シール板とスリンガとの間に形成される環状空間を閉塞するひさし部が一体に形成されているので、外部から泥水等がシール内部に浸入するのを防止すると共に、泥水がシール内部に浸入した場合でも、ドレーン部を通して外部に排出することができ、密封性能を向上させた車輪用軸受シールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る車輪用軸受シールを備えた車輪用軸受の第1の実施形態を示す縦断面図である。
【図2】(a)は、図1のインナー側の車輪用軸受シールを示す縦断面図、(b)は、(a)の正面図、(c)は、(a)の車輪用軸受シールの反路面側の断面を示す拡大図、(d)は、(a)の車輪用軸受シールの路面側の断面を示す拡大図である。
【図3】(a)は、図2の車輪用軸受シールの変形例を示す縦断面図、(b)は、(a)の車輪用軸受シールの反路面側の断面を示す拡大図、(c)は、(a)の車輪用軸受シールの路面側の断面を示す拡大図である。
【図4】(a)は、図3の車輪用軸受シールの変形例を示す縦断面図、(b)は、(a)の車輪用軸受シールの反路面側の断面を示す拡大図、(c)は、(a)の車輪用軸受シールの路面側の断面を示す拡大図である。
【図5】本発明に係る車輪用軸受シールを備えた車輪用軸受装置の第2の実施形態を示す縦断面図である。
【図6】本発明に係る車輪用軸受シールを備えた車輪用軸受装置の第3の実施形態を示す縦断面図である。
【図7】本発明に係る車輪用軸受シールを備えた車輪用軸受装置の第4の実施形態を示す縦断面図である。
【図8】従来のシールを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、この外方部材に複列の転動体を介して内挿され、外周に前記複列の外側転走面に対向する内側転走面が形成された一対の内輪と、これら内輪と前記外方部材との間に形成された環状空間の少なくとも一方の開口部に装着され、互いに対向配置された環状のシール板とスリンガとからなる複合型のシールで構成され、前記シール板が、前記外方部材の端部内周に圧入される芯金と、この芯金に加硫接着により一体に接合され、少なくとも径方向外方に傾斜して延びるサイドリップを一体に有するシール部材を備え、前記スリンガが断面略L字状に形成され、前記内方部材の端部外周に圧入される円筒部と、この円筒部から径方向外方に延びる立板部とを有し、この立板部に前記サイドリップが所定の軸方向シメシロを介して摺接された車輪用軸受シールにおいて、前記シール部材が前記芯金の嵌合部の端部外表面から内径部の内縁まで回り込んで固着され、当該シール部材の端部に前記シール板とスリンガとの間に形成される環状空間を閉塞するひさし部が一体に形成され、このひさし部がドレーン部となる路面側に位置する下方部分を除く周方向部分に形成されると共に、前記ひさし部の内径が、前記スリンガの立板部の外径よりも小径に設定され、当該ひさし部が前記立板部と軽接触されているか、または、僅かなすきまを介して対向し、ラビリンスシールが形成されている。
【実施例1】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る車輪用軸受シールを備えた車輪用軸受の第1の実施形態を示す縦断面図、図2(a)は、図1のインナー側の車輪用軸受シールを示す縦断面図、(b)は、(a)の正面図、(c)は、(a)の車輪用軸受シールの反路面側の断面を示す拡大図、(d)は、(a)の車輪用軸受シールの路面側の断面を示す拡大図、図3(a)は、図2の車輪用軸受シールの変形例を示す縦断面図、(b)は、(a)の車輪用軸受シールの反路面側の断面を示す拡大図、(c)は、(a)の車輪用軸受シールの路面側の断面を示す拡大図、図4(a)は、図3の車輪用軸受シールの変形例を示す縦断面図、(b)は、(a)の車輪用軸受シールの反路面側の断面を示す拡大図、(c)は、(a)の車輪用軸受シールの路面側の断面を示す拡大図である。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側(図1の左側)、中央寄り側をインナー側(図1の右側)という。
【0029】
この車輪用軸受1は車輪用軸受装置に用いられ、第1世代と称されるもので、内周に複列の外側転走面2a、2aが一体に形成された外方部材2と、外周に前記複列の外側転走面2a、2aに対向する内側転走面3aが一体に形成された一対の内輪3、3と、両転走面間に収容された複列の転動体(ボール)4、4と、これらの転動体4、4を転動自在に保持する保持器5、5と、外方部材2と一対の内輪3、3との間に形成された環状空間の開口部に装着されたシール6、7とを備えている。
【0030】
外方部材2はSUJ2(JIS G 4805)等の高炭素クロム軸受鋼、あるいは浸炭鋼からなる。高炭素クロム軸受鋼の場合は820〜860℃でズブ焼入れされた後、160〜200℃で焼戻しされ、58〜64HRCの範囲に芯部まで硬化処理されている。また、浸炭鋼の場合は、表面が58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。一方、内輪3も外方部材2と同様、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼、あるいは浸炭鋼からなり、高炭素クロム軸受鋼の場合は58〜64HRCの範囲に芯部まで硬化処理され、浸炭鋼の場合は、表面が58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。また、転動体4はSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなり、ズブ焼入れにより芯部まで58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
【0031】
この車輪用軸受1は、一対の内輪3、3の小径側(正面側)端面3b、3bが突き合された状態でセットされ、所謂背面合せタイプの複列のアンギュラ玉軸受を構成している。また、シール6、7によって、軸受内部に封入された潤滑グリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。
【0032】
シール6、7のうちアウター側のシール6は、固定側部材となる外方部材2のアウター側端部の内周に所定のシメシロを介して圧入された芯金8と、この芯金8に加硫接着により一体に接合され、合成ゴム等で形成されたシール部材9とからなる一体型のシールで構成されている。
【0033】
また、インナー側のシール7は、互いに対向配置された環状のシール板10とスリンガ11とからなる複合型のシール、所謂パックシールで構成されている。シール板10は外方部材2に装着される芯金12と、この芯金12に加硫接着により一体に接合されたシール部材13とからなる。
【0034】
芯金12は、オーステナイト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS304系等)や防錆処理された冷間圧延鋼板(JIS規格のSPCC系等)等の防錆能を有する鋼板からプレス加工にて断面略L字状に形成されている。この芯金12は、図2(c)、(d)に拡大して示すように、外方部材2に圧入され、端部が僅かに縮径されて薄肉に形成された円筒状の嵌合部12aと、この嵌合部12aから径方向内方に延びる内径部12bとを備えている。
【0035】
シール部材13は、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)等の合成ゴムからなり、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップ13aと、このサイドリップ13aの内径側に二股状に形成されたダストリップ13bとグリースリップ13cとを有している。そして、芯金12の嵌合部12aの端部外表面から内径部12bの内縁まで回り込んで固着され、図示しない外方部材との嵌合部の気密性を高めている。なお、シール部材13の材質としては、NBR以外にも、例えば、耐熱性に優れたHNBR(水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、EPM、EPDM(エチレン・プロピレンゴム)等をはじめ、耐熱性、耐薬品性に優れたACM(ポリアクリルゴム)、FKM(フッ素ゴム)、あるいはシリコンゴム等を例示することができる。
【0036】
さらに、本実施形態では、合成ゴムからなるシール部材13の低温弾性回復率10%を示す温度TR10(ゴムの弾性を表わす指標)が−35℃以下に設定されている。これにより、低温雰囲気でもリップの柔軟性を損なわずにリップ追従性を維持することができ、耐泥水性を発揮することができる。
【0037】
一方、スリンガ11は断面略L字状に形成され、図示しない内輪の外径に圧入される円筒部11aと、この円筒部11aから径方向外方に延びる立板部11bとを備えている。そして、シール部材13のサイドリップ13aが立板部11bに所定の軸方向シメシロを介して摺接されると共に、ダストリップ13bとグリースリップ13cが円筒部11aに所定の径方向シメシロを介して摺接されている。さらに、立板部11bのインナー側の側面には磁気エンコーダ14が加硫接着により一体に接合されている。この磁気エンコーダ14は、エラストマにフェライト等の磁性体粉が混入され、周方向等配で交互に磁極N、Sが着磁されてロータリエンコーダを構成している。
【0038】
ここで、図2(c)に示すように、シール部材13の端部にシール板10とスリンガ11との間に形成される環状空間16を閉塞するひさし部15が一体に形成されている。具体的には、ひさし部15の内径d1が、磁気エンコーダ14の外径d2よりも小径(d1<d2)に設定されている。また、このひさし部15は、図2(a)、(b)に示すように、ドレーン部DRとなる路面側に位置する下方部分を除く周方向部分に形成されている。そして、このひさし部15は磁気エンコーダ14と僅かなすきまを介して対向し、ラビリンスシール17を形成し、外部から泥水等がシール内部に浸入するのを防止している。なお、泥水がこのひさし部15を通してシール内部に浸入した場合、ドレーン部DR、すなわち、シール板10とスリンガ11との環状空間16を通して外部に排出することができ、密封性能を向上させた車輪用軸受シール1を提供することができる。
【0039】
ここでは、ひさし部15が形成されていないドレーン部DRは45〜75°の範囲に設定されている。この範囲が45°未満では、泥水の排出効果が半減すると共に、75°を超えた場合、路面から雨水等が跳ね掛けられてこの部分からシール内部に浸入する恐れがあるため好ましくない。
【0040】
なお、各シールリップ(サイドリップ13a,ダストリップ13b,グリースリップ13c)のシメシロのうちひさし部15を有する部分のシメシロがドレーン部DRに位置する部分のシメシロに比べ小さく設定されていれば、耐泥水性を維持したままシールの低トルク化を図ることができる。
【0041】
図3に、前述した車輪用軸受シール7の変形例を示す。この車輪用軸受シール18は、基本的にはシール部材の構成が一部異なるだけで、その他前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0042】
このシール18は、互いに対向配置された環状のシール板19とスリンガ11とからなるパックシールで構成されている。シール板19は外方部材2に装着される芯金12と、この芯金12に加硫接着により一体に接合されたシール部材20とからなる。
【0043】
シール部材20は、NBR等の合成ゴムからなり、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップ13aと、このサイドリップ13aの内径側に二股状に形成されたダストリップ13bとグリースリップ13cとを有している。そして、芯金12の嵌合部12aの端部外表面から内径部12bの内縁まで回り込んで固着されている。
【0044】
そして、シール部材20の端部にシール板19とスリンガ11との環状空間16を閉塞するひさし部15が一体に形成されている。このひさし部15は、ドレーン部となる路面側に位置する下方部分を除く周方向部分に形成されている。ここで、本実施形態では、シール部材20のひさし部15から内径側に亙って、図3(c)に示すドレーン部のシール部材20に比べ漸次厚肉になる傾斜部21が形成されている。すなわち、ドレーン部に位置する(c)に示すシール部材20の肉厚t2に比べ、ひさし部15を有する(b)に示すシール部材20の肉厚t1が大きく設定されている(t1>t2)。これにより、泥水がシール内部に浸入した場合でも、この傾斜部21に沿って泥水がシール板19とスリンガ11との環状空間16を通して容易に外部に排出することができ、密封性能を向上させることができる。
【0045】
なお、傾斜部21は、ひさし部15を有する部分からドレーン部に亙って、シール部材20の肉厚がt1からt2に漸次減少して行くように形成されているので、シール内部に浸入した泥水が、この傾斜部21に沿ってスムーズに外部に排出することができる。
【0046】
また、ここでは、ひさし部15が磁気エンコーダ14に僅かなすきまを介して対向するように設定されているが、これに限らず、僅かに磁気エンコーダ14に接触するようにしても良い。この場合、ひさし部15の摩耗を抑制するため、ひさし部15の先端部に予めグリースが塗布されるのが好ましい。このグリースは、軸受内部に封入されるグリースおよびシールリップに塗布されるグリースと同じ仕様、あるいは、少なくともその基油と増ちょう剤が同じものを使用すると良い。ここでは、軸受内部には、増ちょう剤としてウレア系有機化合物を含有させたウレア系グリース(日本石油製、商品名N6Bグリース)が封入されている。これにより、軸受内部に封入されたグリースと混ざっても、稠度等の性状が変化して潤滑性が劣化するのを防止することができる。
【0047】
図4に示す車輪用軸受シール22は、前述した車輪用軸受シール18の変形例である。この車輪用軸受シール22は、互いに対向配置された環状のシール板19とスリンガ11とからなるパックシールで構成されている。なお、この車輪用軸受シール22は、基本的にはスリンガ11に磁気エンコーダ14が接合されていない点が異なるだけで、その他前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0048】
シール板19は外方部材2に装着される芯金12と、この芯金12に加硫接着により一体に接合されたシール部材20とからなる。シール部材20は、NBR等の合成ゴムからなり、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップ13aと、このサイドリップ13aの内径側に二股状に形成されたダストリップ13bとグリースリップ13cとを有している。そして、芯金12の嵌合部12aの端部外表面から内径部12bの内縁まで回り込んで固着されている。
【0049】
そして、シール部材20の端部にシール板19とスリンガ11との環状空間16を閉塞するひさし部15が一体に形成されている。このひさし部15は、ドレーン部となる路面側に位置する下方部分を除く周方向部分に形成されている。ここで、本実施形態では、シール部材20のひさし部15の内径d1がスリンガ11の立板部11bの外径d3よりも小径(d1<d3)に設定され、ひさし部15が立板部11bに僅かなすきまを介して対向し、ラビリンスシール17が形成されると共に、ドレーン部に位置する(c)に示すシール部材20の肉厚t2に比べ、ひさし部15を有する(b)に示すシール部材20の肉厚t1が大きく設定されている(t1>t2)。これにより、前述した実施形態と同様、泥水がこのひさし部15を通してシール内部に浸入した場合、この傾斜部21に沿って泥水がシール板19とスリンガ11との環状空間16を通して容易に外部に排出することができ、密封性能を向上させることができる。
【実施例2】
【0050】
図5は、本発明に係る車輪用軸受の第2の実施形態を示す縦断面図である。なお、前述した実施形態(図1)と同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0051】
この車輪用軸受23は第2世代と称され、外周にナックル(図示せず)に取り付けられるための車体取付フランジ24bを一体に有し、内周に複列の外側転走面24a、24aが一体に形成された外方部材24と、外周に前記複列の外側転走面24a、24aに対向する内側転走面3aが一体に形成された一対の内輪3、3と、両転走面間に収容された複列の転動体4、4と、これらの転動体4、4を転動自在に保持する保持器5、5と、外方部材24と一対の内輪3、3との間に形成された環状空間の開口部に装着されたシール22、7とを備えている。
【0052】
外方部材24はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、少なくとも複列の外側転走面24a、24aが高周波焼入れによって58〜64HRCの範囲に表面が硬化処理されている。なお、シール22、7は、基本的には磁気エンコーダ14の有無が異なるだけである。
【実施例3】
【0053】
図6は、本発明に係る車輪用軸受装置の第3の実施形態を示す縦断面図である。なお、前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0054】
この車輪用軸受装置は従動輪側の外輪回転タイプの第2世代と称され、外周に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ25を一体に有し、内周に複列の外側転走面26a、26aが一体に形成された外方部材26と、外周に前記複列の外側転走面26a、26aに対向する内側転走面3aが一体に形成された一対の内輪3、3と、両転走面間に収容された複列の転動体4、4と、これらの転動体4、4を転動自在に保持する保持器5、5とを備え、外方部材26と一対の内輪3、3との間に形成された環状空間の開口部にシールド27およびシール7が装着されている。車輪取付フランジ25には周方向等配に車輪を固定するハブボルト25aが植設されている。
【0055】
外方部材26はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、少なくとも複列の外側転走面26a、26aが高周波焼入れによって58〜64HRCの範囲に表面が硬化処理されている。
【実施例4】
【0056】
図7は、本発明に係る車輪用軸受装置の第4の実施形態を示す縦断面図である。なお、前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0057】
この車輪用軸受装置は従動輪側の第3世代と称され、ハブ輪28と、このハブ輪28に固定された内輪3とからなる内方部材29と、この内方部材29に複列の転動体4、4を介して外挿された外方部材30とを備えている。
【0058】
ハブ輪28は、アウター側の端部に車輪取付フランジ31を一体に有し、外周に一方(アウター側)の内側転走面28aと、この内側転走面28aから軸方向に延びる小径段部28bが形成されている。内輪3は、外周に他方(インナー側)の内側転走面3aが形成され、ハブ輪28の小径段部28bに所定のシメシロを介して圧入されると共に、小径段部28bの端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部28cによって所定の軸受予圧が付与された状態で軸方向に固定されている。
【0059】
ハブ輪28はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、内側転走面28aをはじめ、後述するアウター側のシール32のシールランド部となる車輪取付フランジ31のインナー側の基部31bから小径段部28bに亙って高周波焼入れによって58〜64HRCの範囲に表面が硬化処理されている。
【0060】
外方部材30は、外周に懸架装置を構成するナックル(図示せず)に取り付けられるための車体取付フランジ30bを一体に有し、内周に内方部材29の内側転走面28a、3aに対向する複列の外側転走面30a、30aが一体に形成されている。これら両転走面30a、28aおよび30a、3a間には保持器5を介して複列の転動体4、4が転動自在に収容されている。この外方部材30はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、少なくとも複列の外側転走面30a、30aが高周波焼入れによって58〜64HRCの範囲に表面が硬化処理されている。
【0061】
また、外方部材30と内方部材29との間に形成される環状空間の開口部にはシール32、7が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に浸入するのを防止している。
【0062】
アウター側のシール32は、外方部材30のアウター側端部の内周に所定のシメシロを介して圧入された芯金33と、この芯金33に接合されたシール部材34とからなる一体型のシールで構成されている。シール部材34はNBR等の合成ゴムからなり、加硫接着によって芯金33に一体に接合され、径方向外方に傾斜して形成されたサイドリップ34aとダストリップ34b、および軸受内方側に傾斜して形成されたグリースリップ34cを一体に有している。
【0063】
車輪取付フランジ31のインナー側の基部31bは断面が円弧状の曲面に形成され、この基部31bにサイドリップ34aとダストリップ34bが所定のシメシロをもって摺接されると共に、グリースリップ34cが所定の径方向シメシロを介して摺接されている。なお、シール部材34の材質としては、NBR以外にも、例えば、耐熱性に優れたHNBR、EPDM等をはじめ、耐熱性、耐薬品性に優れたACM、FKM、あるいはシリコンゴム等を例示することができる。
【0064】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る車輪用軸受シールは、駆動輪側、従動輪側に拘わらず、第1乃至第3世代構造の車輪用軸受装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1、23 車輪用軸受
2、24、26、30 外方部材
2a、24a、26a、30a 外側転走面
3 内輪
3a、28a 内側転走面
3b 小径側端面
4 転動体
5 保持器
6、7、18、22、32 シール
8、12、33 芯金
9、13、20、34 シール部材
10、19 シール板
11 スリンガ
11a 円筒部
11b 立板部
12a 嵌合部
12b 内径部
13a サイドリップ
13b、34b ダストリップ
13c、34c グリースリップ
14 磁気エンコーダ
15 ひさし部
16 環状空間
17 ラビリンスシール
21 傾斜部
24b、30b 車体取付フランジ
25、31 車輪取付フランジ
25a、31a ハブボルト
27 シールド板
28 ハブ輪
28b 小径段部
28c 加締部
29 内方部材
31b 車輪取付フランジのインナー側の基部
50 シール
51 スリンガ
51a、53a 円筒部
51b、53b 立板部
52 シール板
53 芯金
54 シール部材
54a 第1のサイドリップ
54b 第2のサイドリップ
54c グリースリップ
55 磁性ゴム
56 立壁部
57 環状隙間
58 ラビリンス隙間
DR ドレーン部
d1 ひさし部の内径
d2 磁気エンコーダの外径
d3 スリンガの立板部の外径
t1 シール部材のひさし部の肉厚
t2 シール部材のドレーン部の肉厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、
この外方部材に複列の転動体を介して内挿され、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面を有する内方部材と、
この内方部材と前記外方部材との間に形成された環状空間の少なくとも一方の開口部に装着され、互いに対向配置された環状のシール板とスリンガとからなる複合型のシールで構成され、
前記シール板が、前記外方部材の端部内周に圧入される芯金と、この芯金に加硫接着により一体に接合され、少なくとも径方向外方に傾斜して延びるサイドリップを一体に有するシール部材を備え、
前記スリンガが断面略L字状に形成され、前記内方部材の端部外周に圧入される円筒部と、この円筒部から径方向外方に延びる立板部とを有し、この立板部に前記サイドリップが所定の軸方向シメシロを介して摺接された車輪用軸受シールにおいて、
前記シール部材の端部に前記シール板とスリンガとの間に形成される環状空間を閉塞するひさし部が一体に形成されていることを特徴とする車輪用軸受シール。
【請求項2】
前記シール部材が前記芯金の嵌合部の端部外周面から内径部の内縁まで回り込んで固着されている請求項1に記載の車輪用軸受シール。
【請求項3】
前記ひさし部がドレーン部となる路面側に位置する下方部分を除く周方向部分に形成されている請求項1に記載の車輪用軸受シール。
【請求項4】
前記ひさし部の内径が、前記スリンガの立板部の外径よりも小径に設定され、当該ひさし部が前記立板部と軽接触されているか、または、僅かなすきまを介して対向し、ラビリンスシールが形成されている請求項1または3に記載の車輪用軸受シール。
【請求項5】
前記ひさし部の先端部に予めグリースが塗布されている請求項1、3または4に記載の車輪用軸受シール。
【請求項6】
前記グリースが、軸受内部に封入されるグリースおよび前記シールリップに塗布されるグリースと同じ仕様、あるいは少なくともその基油と増ちょう剤が同じである請求項5に記載の車輪用軸受シール。
【請求項7】
前記スリンガの立板部の側面に磁気エンコーダが加硫接着で一体に接合され、この磁気エンコーダがエラストマに磁性体粉が混入され、周方向等配で交互に磁極N、Sが着磁されていると共に、前記ひさし部が前記磁気エンコーダと軽接触されているか、または、僅かなすきまを介して対向し、ラビリンスシールが形成されている請求項1に記載の車輪用軸受シール。
【請求項8】
前記ひさし部から内径側に亙って漸次厚肉になる傾斜部が形成されている請求項1に記載の車輪用軸受シール。
【請求項9】
前記傾斜部が前記ひさし部を有する部分から前記ドレーン部に亙って、前記シール部材の肉厚が漸次減少して行くように形成されている請求項8に記載の車輪用軸受シール。
【請求項10】
前記シール部材の肉厚のうち前記ひさし部を有する部分の肉厚が前記ドレーン部に位置する肉厚に比べ大きく設定されている請求項1に記載の車輪用軸受シール。
【請求項11】
前記サイドリップのシメシロのうち前記ひさし部を有する部分のシメシロが前記ドレーン部に位置する部分のシメシロに比べ小さく設定されている請求項1に記載の車輪用軸受シール。
【請求項12】
前記ひさし部が形成されていない前記ドレーン部が45〜75°の範囲に設定されている請求項1に記載の車輪用軸受シール。
【請求項13】
前記シール部材が合成ゴムからなり、このシール部材の温度TR10が−35℃以下に設定されている請求項1に記載の車輪用軸受シール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−50132(P2013−50132A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187213(P2011−187213)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】