説明

車間距離制御装置

【課題】より快適な運転フィーリングを実現することができる車間距離制御装置を提供すること。
【解決手段】本発明による車間距離制御装置1は、自車両の車速を検出する車速検出手段2aと、先行車両を検出するとともに自車両と先行車両との車間距離を検出する車間距離検出手段2bと、車間距離を車速で除して算出された車間時間を設定車間時間に制御する車間距離制御を行う車両制御手段2cと、車線変更の開始及び終了を検出する車線変更検出手段2dと、運転者の顔向きを検出する顔向き検出手段2eとを備えるとともに、車線変更検出手段2dにより車線変更の終了が検出されて、車間距離検出手段2bにより先行車両が検出されずに、顔向き検出手段2eにより検出された顔向きが前方以外である場合に、車両制御手段2cが車間距離制御による加速を禁止することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行車両の有無等の自車両の前方の状態に基づき、先行車両との車間距離を制御する車間距離制御を行う車間距離制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述したような車間距離制御装置においては、先行車両が存在しない場合には、自車両の車速を設定車速に保持する一定車速制御を行い、先行車両が存在する場合には、先行車両に追従するように自車両と先行車両との車間距離を車速で除して算出された車間時間を設定車間時間に制御する車間距離制御が行われている。
【0003】
このような、車間距離制御装置においては運転者が脇見をしているか否かを判定して、車間距離制御を実行している場合に、運転者が脇見をしていると判定される場合には、運転者に対して警報を行うとともに、車間距離制御による加速を停止することが提案されている。ところが、このような制御を実行すると、運転者が脇見をした後さらに脇見を継続した場合に、自車両が先行車両に過度に接近するおそれがあるため、自車両の前方に先行車両が存在する時は、運転者が脇見をした場合にも、車間距離制御による加速を停止しないことが好ましい。
【0004】
このようなことを考慮した車間距離制御装置として、例えば特許文献1に記載されているようなものがある。このような特許文献1に記載の車間距離制御装置においては、運転者が脇見を行っている間においても、車間距離制御が許可されるため、自車両が先行車両
に接近した場合には適宜自車両を減速する制御が実行されることにより、自車両が先行車両に過度に接近することを防止して、車両の安全走行を高めることができる。
【特許文献1】特開2008−18836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、このような車間距離制御装置においても、片側二車線以上の高速道路や自動車専用道路を走行していて、車間距離制御を選択している状況において、追い越し等を目的として走行車線から追い越し車線に向けて車線変更を行った場合に、追い越し車線において先行車両が存在しない場合には、そのまま車間距離制御を継続すると、自車両が加速されることとなる。
【0006】
ところが、車線変更を行っている運転者は、車線変更にあたって車両右のミラー及び車両右後側方を注視しているタイミングすなわち運転者が加速を意図しないタイミングで自動的に加速が行われることとなり、運転者に違和感を与えて、快適な運転フィーリングを損ねるおそれがあるという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑み、より快適な運転フィーリングを実現することができる車間距離制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題を解決するため、本発明による車間距離制御装置は、
自車両の車速を検出する車速検出手段と、
先行車両を検出するとともに自車両と先行車両との車間距離を検出する車間距離検出手段と、
前記車間距離を前記車速で除して算出された車間時間を設定車間時間に制御する車間距離制御を行う車両制御手段と、
車線変更の開始及び終了を検出する車線変更検出手段と、
運転者の顔向きを検出する顔向き検出手段とを備えるとともに、
前記車線変更検出手段により前記車線変更の終了が検出されて、前記車間距離検出手段により先行車両が検出されずに、前記顔向き検出手段により検出された前記顔向きが前方以外である場合に、前記車両制御手段が前記車間距離制御による加速を禁止することを特徴とする。
【0009】
これによれば、前記車線変更検出手段により前記車線変更の終了が検出されて、前記車間距離検出手段により先行車両が検出されずに、前記顔向き検出手段により検出された前記顔向きが前方以外である場合に、前記車両制御手段が前記車間距離制御による加速を禁止することができる。
【0010】
すなわち、前記車線変更が終了して、前記顔向きが前方以外である場合には、運転者が前記車線変更において自車両側方をミラー又は目視により確認している場合であるので、先行車両が検出されない状況において、前記車間距離制御による加速を禁止して、運転者が意図しない加速が自動的に行われてしまうことを防止することができる。これにより、運転者に違和感を与えない、より快適な運転フィーリングを実現することができる。
【0011】
ここで、前記車間距離制御装置において、
前記車両制御手段が前記車間距離制御を所定時間禁止することが好ましい。
【0012】
これによれば、前記車線変更検出手段により前記車線変更の終了が検出されて、前記車間距離検出手段により先行車両が検出されずに、前記顔向き検出手段により検出された前記顔向きが前方以外である場合に、前記車両制御手段が前記車間距離制御による加速を禁止したのち、当該禁止を所定時間継続した後に、当該禁止を解除して、前記車間距離制御を再度開始することができる。
【0013】
これにより、運転者が前記車線変更において自車両側方をミラー及び目視で確認した後、前記所定時間遅延させた後、ある程度余裕を持たせて前記車間距離制御を再度開始することができ、運転者の意図しない加速が行われて、運転者に違和感を与えることを極力回避することができる。
【0014】
ところで、自車両の前方にカーブが検出される、すなわちカーブが存在する場合において、自車両がさらに前進して当該カーブの開始地点に自車両の位置が接近して、開始地点に自車両が到達する時点で、前記車線変更検出手段により前記車線変更の開始が検出された場合には、前記カーブの径方向外側に向けて自車両が指向することとなり、通常先行車両は前記車間距離検出手段により検出されなくなり、そのままではやはり運転者の意図しない加速が自動的に行われてしまうこととなり、運転者に違和感を与えることとなり運転フィーリングの低下が懸念される。このことは特にはカーブが左カーブである場合に顕著となる。
【0015】
そこで、前記車間距離制御装置において、
自車両の前方のカーブを検出するカーブ検出手段と、
自車両の位置を検出する位置検出手段を備えるとともに、
前記カーブ検出手段により前記カーブが自車両の前方に検出されて、前記カーブに自車両の位置が到達する時点で、前記車線変更検出手段により前記車線変更の開始が検出された場合に、前記車両制御手段が前記車間距離制御による加速を停止することが好ましい。
【0016】
これによれば、自車両の前方に前記カーブが検出されて前記車線変更の開始が検出された場合においては、前記車両制御手段により前記車間距離制御による加速を停止することとすることにより、そのような意図しない加速が自動的に行われてしまうことを防止することができる。これによっても運転者に違和感を与えない、より快適な運転フィーリングを実現することができる。
【0017】
ここで、前記車間距離制御装置において、
前記車両制御手段が前記車間距離制御を所定時間停止することが好ましい。
【0018】
これによれば、前記カーブが自車両の前方に検出されて、前記カーブに自車両の位置が到達する時点で、前記車線変更検出手段により前記車線変更の開始が検出された場合に、前記車両制御手段が前記車間距離制御による加速を停止したのち、当該停止を所定時間継続した後に、当該停止を解除して、前記車間距離制御を再度開始することができる。
【0019】
これにより、運転者が前記カーブにおいて前記車線変更を行った場合においては、その後前記所定時間遅延させた後、ある程度余裕を持たせて前記車間距離制御を再度開始することができ、運転者の意図しない加速が自動的に行われて運転者に違和感を与えることを極力回避することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、より快適な運転フィーリングを実現することができる車間距離制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明に係る車間距離制御装置の一実施形態を示すブロック図である。車間距離制御装置1は、ACCECU2(Adaptive Cruise Control Electronic Control Unit)と、測距センサ3と、クリアランスソナー4と、前方認識カメラ4と、車室内認識カメラ5と、エンジンECU6(Engine)と、ブレーキECU7と、変速機ECU8(Transmission)とカーナビゲーションECU9と、EPSECU10(Electronic Power Steering)とボディECU11を備えて構成される。ACCECU2と、エンジンECU6と、ブレーキECU7と、変速機ECU8はCAN(Controller Area Network)等の通信規格により相互に接続される。
【0023】
ACCECU2は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、以下に述べる処理を行う車速検出手段2aと、車間距離検出手段2bと、車両制御手段2cと、車線変更検出手段2dと、顔向き検出手段2eとを構成するものである。
【0024】
測距センサ3は、自車両のフロントグリル又はフロントバンパーに設けられる、例えばレーザレーダ又はミリ波レーダであり、自車両の前方に位置する先行車両が存在するか否か及び先行車両と自車両との車間距離Lを測定して、その測定結果をACCECU2に出力するものである。
【0025】
前方認識カメラ4は、例えばCCDカメラあるいはCMOSカメラであり、例えば自車両室内のウインドシールド中央上部に、前方に光軸が合致するように配設され、自車両の前方の路面を自車両の位置する車線の両側の白線、具体的には図2に示すような路側白線及び区分白線と、その車線に隣接する追い越し車線の両側の白線、区分白線と中央白線の双方を含む範囲にて撮像して、撮像された画像データをACCECU2に出力するものである。
【0026】
車室内認識カメラ5は例えば、自車両室内のウインドシールド中央上部に、運転席に着座した運転者の顔面に光軸が一致するように配設され、撮像された画像データをACCECU2に出力するものである。
【0027】
エンジンECU6は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、ACCECU2の車両制御手段2cからの指令に基づき、図示しないエンジンのスロットル開度等を制御して、主にエンジンの回転数の制御を行って車両の加減速度の制御を行うものである。
【0028】
ブレーキECU7は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、ACCECU2の車両制御手段2cからの指令に基づき、車両の各車輪に設けられたブレーキ装置を制御して車両の制動を行うとともに、図示しない車輪速センサから車速を検出して検出結果を、CANを介してACCECU2に出力するものである。
【0029】
変速機ECU8は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースとから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、ACCECU2の車両制御手段2cからの指令に基づき、ここでは図示しない変速機の変速比のシフト制御を行うものである。
【0030】
カーナビゲーションECU9は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを相互に接続するデータバスから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、図示しないGPSアンテナが受信した、地球上空に打ち上げられた複数の衛星からの電波をもとに、例えば三角測量の原理で自車両の位置の経度と緯度を測定して自車両の位置を検出する。
【0031】
これとともに、カーナビゲーションECU9は、図示しないヨーレートセンサの出力に基づいて、車両のヨーレートを検出し、さらに、図示しないEPS内部に備えられたステアリングセンサの出力に基づいて後述するEPSECU10が検出した操舵角を、CANを介して検出する。さらに、カーナビゲーションECU9は、自車両の位置、ヨーレート及び操舵角の検出結果を、CANを介してACCECU2に送信する。
【0032】
EPSECU10は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを相互に接続するデータバスから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、EPS内部のここでは図示しないステアリングシャフトに設けられたトーションバーを用いたトルクセンサにより、運転者のステアリングホイールの操作力を検出し、この操作力に応じて、EPSの図示しない電動モータを駆動して操舵力を発生させて車輪を操舵して、運転者の操作力のアシストを行うものである。
【0033】
さらに、ボディECU11は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを相互に接続するデータバス及び入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが以下に述べるそれぞれの処理を行い、運転者が自車両の図示しないウインカースイッチを時計側に揺動させると、車両前端及び後端の右側に位置するウインカーランプを点灯させる右出力を発生し、運転者がウインカースイッチを反時計側に揺動させると、車両前端及び後端の左側に位置するウインカーランプを点灯する左出力を発生する。
【0034】
これとともに、ボディECU11は、右出力又は左出力のいずれを行ったかどうかを検出して、検出結果を、CANを介してACCECU2に送信する。つまりボディECU11は方向指示器すなわちウインカーを構成する。
【0035】
これに加えて、ACCECU2の車速検出手段2aはブレーキECU7からCANを介して自車両の車速Vを検出し、ACCECU2の車間距離検出手段2bは、測距センサ3の測定結果に基づいて、図2に示すように、自車両と先行車両との車間距離Lを検出する。
【0036】
さらに、ACCECU2の車両制御手段2cは、自車両の車速Vを運転者が図示しない選択スイッチにより選択した設定車速VSとなるように、エンジンECU6、ブレーキECU7及び変速機ECU8を制御するとともに、車間距離Lを自車両の車速Vで除して算出された車間時間Tをこれも運転者が図示しない選択スイッチにより選択した設定車間時間TSとなるように、エンジンECU6、ブレーキECU7及び変速機ECU8にそれぞれ指令を出力して車両の加減速度及び速度を制御する。
【0037】
さらに、ACCECU2の車線変更検出手段2dは、前方認識カメラ4により撮像された画像内に位置する、自車両の前方の路面を自車両の位置する車線の両側の白線と、その車線に隣接する追い越し車線の両側の白線の双方を、二植化処理等により検出して、画像内に位置するそれぞれの白線の挙動と、ボディECU11から送信された右出力又は左出力、カーナビゲーションECU9から送信されたヨーレートと操舵角に基づいて、車線変更の開始と終了を検出する。
【0038】
ACCECU2の顔向き検出手段2eは、車室内認識カメラ5から取得した画像データを例えばエッジ検出やパターンマッチング等の所定の画像処理を施して、運転者の顔向きを検出する。これらの処理方法は周知のものであるため詳細な説明は割愛する。
【0039】
さらに、車線変更検出手段2dにより車線変更の終了が検出されて、車間距離検出手段2bにより先行車両が検出されずに、顔向き検出手段2eにより検出された顔向きが前方以外である場合に、ACCECU2の車両制御手段2cは、車間距離制御による加速を禁止する。なお、禁止する期間は所定時間であっても任意であっても良い。
【0040】
以下、本実施例1の車間距離制御装置1の制御内容を、フローチャートを用いて説明する。図2は、本発明による車間距離制御装置1の制御内容を示すフローチャートである。
【0041】
図2に示すS1において、ACCECU2の車速検出手段2aはブレーキECU7からCANを介して自車両の車速Vを検出し、S2において、ACCECU2の車間距離検出手段2bは、測距センサ3の測定結果に基づいて、先行車両の有無と自車両と先行車両との車間距離Lを検出する。
【0042】
づづいて、S3において、ACCECU2の車両制御手段2cは、車間距離Lを自車両の車速Vで除して算出された車間時間Tを運転者が図示しない選択スイッチにより選択した設定車間時間TSとなるように、エンジンECU6、ブレーキECU7及び変速機ECU8に対してそれぞれ指令を出力して制御する。
【0043】
S3において、エンジンECU6は、ACCECU2の車両制御手段2cからの指令に基づき、図示しないエンジンのスロットル開度等を制御して、主にエンジンの回転数の制御を行って車両の加減速度を制御し、ブレーキECU7は、ACCECU2の車両制御手段2cからの指令に基づき、車両の各車輪に設けられたブレーキ装置を制御して車両の制動を行い、変速機ECU8は、ACCECU2の車両制御手段2cからの指令に基づき、変速機の変速比のシフト制御を行い、これらのことにより自車両の車速、加減速度が制御される。すなわち、自車両の前方に先行車両が存在しない場合には自車両は、加速される。
【0044】
さらに、S4において、ACCECU2の車線変更検出手段2dは、前方認識カメラ4により撮像された画像内に位置する、自車両の前方の路面を自車両の位置する車線の両側の白線と、その車線に隣接する追い越し車線の両側の白線の双方を、二植化処理等により検出して、カーナビゲーションECU9からCANを介して操舵角、ヨーレートを検出し、ボディECU11からウィンカーの右出力又は左出力を検出する。これらの検出結果に基づいて、車線変更検出手段2dは自車両の車線変更の開始と終了を検出する。
【0045】
なお、より具体的には自車両が走行車線から追い越し車線へ車線変更を開始する場合には、まず運転者は、右側方をミラーと目視により確認した後、ウィンカーを時計回りに操作して、ボディECU11の出力は右出力となり、その後自車両内部のステアリングホイールを運転者が右操舵することにより、ステアリングセンサの検出する操舵角は時計回りの正の角度となる。この後、車両は走行車線に対して右に指向するので、ヨーレートは右向きとなり、画像内の走行車線の両側の白線は右から左に移動する。
【0046】
車線変更の開始の後、自車両が追い越し車線に移動して、運転者がステアリングホイールを直進方向に戻す又は左操舵すると、ウィンカーは停止してボディECU11の右出力はオフとなり、操舵角は中立位置となって、ヨーレートはゼロとなり、画像内には追い越し車線の両側の白線が右から左に移動した後、車線中央の両側に位置することとなる。これらの一連のパターンを予め認識しておくことにより、車線変更検出手段2dは、上述したパラメータから車線変更の開始と終了を検出する。
【0047】
つづいて、S5において、ACCECU2の顔向き検出手段2eは、車室内認識カメラ5から取得した画像データを上述した周知のエッジ検出やパターンマッチング等の所定の画像処理に基づいて解析して、運転者の顔向きを検出する。
【0048】
S6において、ACCECU2の車間距離制御手段2cは、車線変更検出手段2bが車線変更の終了を検出し、かつ、車間距離検出手段2bが先行車両は存在しないと検出し、顔向き検出手段2eの検出した顔向きが前方以外である条件が成立するか否かを判定し、肯定である場合にはS7にすすみ、否定である場合にはENDにすすむ。
【0049】
S7において、ACCECU2の車間距離制御手段2cは所定時間が経過するまで、S1〜S3に示したような車間距離制御による加速を禁止し、所定時間が経過すると、S8にすすんで、S7における禁止を解除する。STARTからENDまでの処理は所定周期毎に継続的にACCECU2を主体とした車間距離制御装置1において実行されて、S8以降においてはS1〜S3に示したような車間距離制御が再開される。
【0050】
以上述べた制御内容により実現される本実施例の車間距離制御装置1によれば、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、ACCECU2により実現される車線変更検出手段2dにより自車両の車線変更の終了が検出されて、車間距離検出手段2bにより先行車両が検出されずに、顔向き検出手段2eにより検出された顔向きが前方以外である場合に、車両制御手段2cが図2のS1〜S3に示した車間距離制御による加速を禁止することができる。
【0051】
つまり、自車両において車線変更が終了して、顔向きが前方以外である場合には、運転者が車線変更において自車両側方をミラー又は目視により確認している場合であるとみなせるので、先行車両が検出されない状況において、図2S1〜S3の車間距離制御による加速を禁止して、運転者が意図しない加速が車間距離制御装置1において実行されてしまうことを防止することができる。これにより、運転者に違和感を与えない、より快適な運転フィーリングを実現することができる。
【0052】
さらに、車線変更検出手段2dにより車線変更の終了が検出されて、車間距離検出手段2bにより先行車両が検出されずに、顔向き検出手段2eにより検出された顔向きが前方以外である場合に、車両制御手段2cが車間距離制御による加速を禁止したのち、禁止を所定時間例えば1sec程度継続した後に禁止を解除して、通常の車間距離制御を再度開始することができる。このことにより、運転者に違和感を与えることを防止した上で、より円滑に通常の車間距離制御に移行させることができる。
【0053】
上述した実施例1においては、カーブが自車両の前方にない場合における車線変更において、適切な車間距離制御を提供する車間距離制御装置を示したが、カーブが存在する場合には、以下のような構成及び制御内容とすることができる。
【実施例2】
【0054】
図3は、本発明に係る車間距離制御装置の一実施形態を示すブロック図である。車間距離制御装置2は、ACCECU2と、測距センサ3と、クリアランスソナー4と、前方認識カメラ4と、エンジンECU6と、ブレーキECU7と、変速機ECU8とカーナビゲーションECU9と、EPSECU10とボディECU11を備えて構成される。ACCECU2と、エンジンECU6と、ブレーキECU7と、変速機ECU8はCANにより相互に接続される。
【0055】
ACCECU2は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、以下に述べる処理を行う車速検出手段2aと、車間距離検出手段2bと、車両制御手段2cと、車線変更検出手段2dと、カーブ検出手段2fと、位置検出手段2gを構成するものである。
【0056】
なお、図1に示したものと同一の構成要素については同一の符号を付し、重複する説明は割愛する。ACCECU2のカーブ検出手段2fは、車線変更検出手段2dが検出した、自車両の位置する車線の両側の白線の曲率と、追い越し車線の両側の白線の曲率に基づいて、自車両の前方にカーブが存在するか否かを検出する。さらに、ACCECU2の位置検出手段2gは、カーナビゲーションECU9から自車両の位置を、CANを介して取得して検出する。
【0057】
また、カーブ検出手段2fによりカーブが自車両の前方に検出されて、カーブに自車両の位置が到達する時点で、車線変更検出手段2dにより車線変更の開始が検出された場合に、ACCECU2の車両制御手段2cは、車間距離制御による加速を停止する。なお、停止する期間は所定時間であっても任意であっても良い。
【0058】
以下、本実施例2の車間距離制御装置21の制御内容を、フローチャートを用いて説明する。図4は、本発明による車間距離制御装置21の制御内容を示すフローチャートである。
【0059】
図4に示すS11において、ACCECU2の車速検出手段2aはブレーキECU7からCANを介して自車両の車速Vを検出する。つづいて、S12において、ACCECU2の車間距離検出手段2bは、測距センサ3の測定結果に基づいて、先行車両の有無と併せて自車両と先行車両との車間距離Lを検出する。
【0060】
づづいて、S13において、ACCECU2の車両制御手段2cは、車間距離Lを自車両の車速Vで除して算出された車間時間Tを運転者が図示しない選択スイッチにより選択した設定車間時間TSとなるように、エンジンECU6、ブレーキECU7及び変速機ECU8に対してそれぞれ指令を出力して制御する。
【0061】
S13において、エンジンECU6は、ACCECU2の車両制御手段2cからの指令に基づき、図示しないエンジンのスロットル開度等を制御して、主にエンジンの回転数の制御を行って車両の加減速度を制御する。同様に、S13において、ブレーキECU7は、ACCECU2の車両制御手段2cからの指令に基づき、車両の各車輪に設けられたブレーキ装置を制御して車両の制動を行う。また、変速機ECU8は、S13において、ACCECU2の車両制御手段2cからの指令に基づいて、図示しない変速機の変速比のシフト制御を行う。これらのことにより自車両の車速、加減速度が制御される。
【0062】
つづいて、S14において、ACCECU2の車線変更検出手段2dは、前方認識カメラ4により取得した画像内に位置する、自車両の前方の路面の複数の白線を、二植化処理等により検出するとともに、カーナビゲーションECU9からCANを介して操舵角、ヨーレートを検出して、ボディECU11からウィンカーの右出力又は左出力を検出して、これらの検出結果に基づいて、自車両の車線変更の開始と終了を検出する。
【0063】
つづいてS15において、ACCECU2のカーブ検出手段2fは、車線変更検出手段2dがS14において検出した、自車両の位置する車線の両側の白線の曲率と、追い越し車線の両側の白線の曲率に基づいて、自車両の前方にカーブが存在するか否かを検出する。さらに、S16において、ACCECU2の位置検出手段2gは、カーナビゲーションECU9からCANを介して取得した自車両の位置を検出する。
【0064】
さらに、S17において、ACCECU2の車間距離制御手段2cは、カーブ検出手段2fによりカーブが自車両の前方に検出されて、カーブに自車両の位置が到達する時点で、車線変更検出手段2dにより車線変更の開始が検出される条件が成立するか否かを判定し、肯定である場合にはS18にすすみ、否定である場合にはENDにすすむ。
【0065】
S18において、ACCECU2の車間距離制御手段2cは所定時間が経過するまで、S11〜S13に示したような車間距離制御による加速を停止し、所定時間が経過すると、S19にすすんで、S18における停止を解除する。STARTからENDまでの処理は所定周期毎に継続的にACCECU2を主体とした車間距離制御装置1において実行されて、S19以降においてはS11〜S13に示したような車間距離制御が再度実行される。
【0066】
以上述べた本実施例2によれば、自車両の前方にカーブが検出されて車線変更の開始が検出された場合においては、車両制御手段2cにより図4のS11〜S13に示す車間距離制御による加速を停止することとすることにより、自車両が前方のカーブに進入して車線変更した場合には車両がカーブの径方向外側を指向しているため、先行車両が検出されないことに起因して、車間距離制御装置21の車間距離制御によって意図しない加速が自動的に行われてしまうことを防止することができる。これにより、運転者に違和感を与えルことを回避して、より快適な運転フィーリングを実現することができる。
【0067】
また、本実施例2においては、車両制御手段2cが車間距離制御による加速を停止したのち、停止を所定時間例えば1sec程度継続した後に解除して、車間距離制御を再度開始することとしているので、運転者がカーブにおいて車線変更を行った場合においては、その後所定時間遅延させた後、ある程度余裕を持たせて車間距離制御を再度開始することができ、カーブ進入後の車線変更時において、運転者の意図しない加速が自動的に行われて運転者に違和感を与えることを極力回避することができる。
【0068】
さらに、本実施例2によれば、運転者の顔向きを検出する必要がないので、車室内認識カメラ5を省略し、ACCECU2内の顔向き検出手段2eを省略して、構成と制御内容を簡略化することができる。
【0069】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【0070】
例えば、本実施例1及び2においては、車線変更検出手段2dは、操舵角、ヨーレート、画像内の白線の挙動、ウィンカーの右又は左出力に基づいて、車線変更の開始又は終了を検出しているが、これに車両横加速度を加えて検出を行うこともでき、上述したパラメータを単独で用いて車線変更の開始又は終了を検出することもできる。
【0071】
さらに、実施例2において、カーブ検出手段2fにより検出された、自車両の前方のカーブの曲率がある程度以上大きい場合つまりは、カーブの半径がある程度小さい場合には、車両制御手段2cによる車間距離制御による加速の停止をカーブを通過し終えるまで継続する制御とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、車間距離制御装置に関するものであり、より快適な運転フィーリングを実現することができる車間距離制御装置を提供することができるので、乗用車、トラック、バス等の様々な車両に適用して有益なものである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係る車間距離制御装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る車間距離制御装置の一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る車間距離制御装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る車間距離制御装置の一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0074】
1 車間距離制御装置
2 ACCECU
2a 車速検出手段
2b 車間距離検出手段
2c 車両制御手段
2d 車線変更検出手段
3 測距センサ
4 前方認識カメラ
5 車室内認識カメラ
6 エンジンECU
7 ブレーキECU
8 変速機ECU
9 カーナビゲーションECU
10 EPSECU
11 ボディECU
21 車間距離制御装置
2 ACCECU
2a 車速検出手段
2b 車間距離検出手段
2c 車両制御手段
2d 車線変更検出手段
2e 顔向き検出手段
2f カーブ検出手段
2g 位置検出手段
3 測距センサ
4 前方認識カメラ
6 エンジンECU
7 ブレーキECU
8 変速機ECU
9 カーナビゲーションECU
10 EPSECU
11 ボディECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の車速を検出する車速検出手段と、先行車両を検出するとともに自車両と先行車両との車間距離を検出する車間距離検出手段と、前記車間距離を前記車速で除して算出された車間時間を設定車間時間に制御する車間距離制御を行う車両制御手段と、車線変更の開始及び終了を検出する車線変更検出手段と、運転者の顔向きを検出する顔向き検出手段とを備えるとともに、前記車線変更検出手段により前記車線変更の終了が検出されて、前記車間距離検出手段により先行車両が検出されずに、前記顔向き検出手段により検出された前記顔向きが前方以外である場合に、前記車両制御手段が前記車間距離制御による加速を禁止することを特徴とする車間距離制御装置。
【請求項2】
前記車両制御手段が前記車間距離制御を所定時間禁止することを特徴とする請求項1に記載の車間距離制御装置。
【請求項3】
自車両の前方のカーブを検出するカーブ検出手段と、自車両の位置を検出する位置検出手段を備えるとともに、前記カーブ検出手段により前記カーブが自車両の前方に検出されて、前記カーブに自車両の位置が到達する時点で、前記車線変更検出手段により前記車線変更の開始が検出された場合に、前記車両制御手段が前記車間距離制御による加速を停止することを特徴とする請求項1又は2に記載の車間距離制御装置。
【請求項4】
前記車両制御手段が前記車間距離制御を所定時間停止することを特徴とする請求項3に記載の車間距離制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−76616(P2010−76616A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247664(P2008−247664)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】