説明

軍用型GPS受信機を用いたナビゲーション・デバイスにおける差分GPS補正の完全性

【課題】差分GPSデータに基づいてナビゲーション解に対する補正値を計算する。
【解決手段】ナビゲーション・システム用のプロセッサ100において、GPS測距システム116が少なくとも3機のGPS衛星からGPS天体暦を受信し、DGPSデータ受信機130が差分GPSデータを受信する。単体又は組み合わせで動作する少なくとも1つのカルマン・フィルタ126は、GPS測距システムから受信したGPS天体暦に基づいて、平均誤差半径を含むナビゲーション解を計算し、差分GPSデータに基づいて補正ナビゲーション解を計算する。モード・ロジック124が、GPS天体暦に基づくナビゲーション解、又は補正されたナビゲーション解のどちらを選択するかを決定する。補正されたナビゲーション解を平均誤差範囲の区域と比較し、その区域内にない場合、補正されたナビゲーション解を選択しないで、補正前のナビゲーション解を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軍用型GPS受信機を用いたナビゲーション・デバイスに関する。
【従来技術】
【0002】
GPS衛星は、L1及びL2キャリア周波数上に変調されたナビゲーション・データをブロードキャストする。データは、コンステレーションにおける全ての衛星についての粗雑天体暦データ(ephemeris data)(オールマナック・データと呼ぶ)、この特定の衛星についての精密天体暦データ、並びに正しい距離測定を行うためにGPS受信機が必要とするタイミング・データ及びモデル補正パラメータを含む。また、衛星はこれら2つの形態の測距コード、公衆に無料で入手できる粗雑/捕獲コード(C/A)、及び通常軍需用途のために確保されている制限精密コード(Pコード)をブロードキャストする。
【0003】
GPS受信機は、天体暦データを受信して、正確な時刻を知る。この時刻を用いて、位置、速度、及び時間分解能(PVT)を正確に計算する。この理由のために、衛星には非常に高精度な原子時計が装備されている。殆どの受信機は内部クリスタル発振器を主体としたクロックを用いており、衛星からの信号を用いてクロックを継続的に更新する。
受信機は、各衛星の信号を、その別個のC/Aコード・パターンによって識別し、次いで衛星毎にそのC/Aコード・パターンを発生する再の時間遅延を測定する。これを行うために、受信機は衛星と同じシード番号を用いて同一のC/Aシーケンスを生成する。2つのシーケンスを並べることによって、受信機は疑似距離、遅延の測定値、及び衛星までの距離の計算値を決定することができる。
【0004】
P(Y)信号を用いた位置の計算は、概念的には、受信機が最初に信号を解読し、次いでナビゲーション・データの中にある情報を用いて、一週間長疑似ランダム・ノイズ(PRN:week-long pseudorandom noise)シーケンスのどこで衛星が現在ブロードキャストしているかを把握しなければならないのと同様である。一旦これを把握すれば、追跡及び測定は同一である。PコードをYコードに暗号化するのは、本質的にセキュリティ・メカニズムであり、信号の解読に成功することができれば、GPS衛星が真の信号を送っているのであり、「妨害」信号ではないと捕らえるのは正当なことである。対照的に、民生用受信機は、妨害を受ける虞れが非常に大きい。何故なら、正しくフォーマットされたC/A信号は、容易に入手可能な信号発生器を用いて発生することができるからである。
【0005】
しかしながら、GPS受信機は、各衛星までの正確な距離を測定することは決してできない。測定プロセスは、ノイズによって改悪され、計算に誤差が混入する。このノイズは、測定プロセスにおいて考慮しない電離層補正及びシステム・ダイナミクスの誤差を含む(例えば、ユーザ・クロックのドリフト)。カルマン・フィルタは、所望の受信機出力に対するノイズの影響を極力抑えるために、ノイズ源の特性を描写する。
【0006】
GPS受信機を他のナビゲーション・センサ(例えば、慣性ナビゲーション・センサ(「INS」、クロック、又は高度計)によって補助するか、又はこれらと一体化すると、これらのセンサによって追加される測定値を含むようにカルマン・フィルタを拡張することができる。位置測定値の精度を更に高めるために、ユーザ受信機は基準受信機から逸脱情報を受信し、これによって差分補正値をユーザ受信機に提供する。1つ以上の基準受信機と共にユーザ受信機を用いるシステムを、差分GPS(DGPS)と呼ぶ。差分基準システムの例には、RTCM、StarFire、WAAS、LAAS、EGNOS、及びMSATがある。
【0007】
差分位置測定(測地)の理念は、移動受信機の所在地における距離偏倚誤差(range bias error)を、既知の位置において観察した距離偏倚誤差によって補正することである。基準局は衛星信号毎に補正値を計算する。DGPSを実装するには、全ての「見える」衛星を追跡し、疑似距離補正値を形成することができるソフトウェアを、基準受信機に装備することが必要となる。これらの補正値は、ナビゲーション解(navigation solution)において用いられる衛星毎に疑似距離測定値にこれらの補正値を適用することを必要とするユーザ受信機に送信される。この場合、基準受信機の効果は、有用な距離においては限界がある。これは、双方の受信機は、それらのナビゲーション解を見出すには同じ衛星集合を用いていなければならないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現行のDGPSシステムは、基準受信機からの誤ったデータによって「妨害」される場合があり、DGPS受信機を混乱させることになる。DGPS受信機が誤ったデータを受信すると、そのデータは、DGPS受信機が位置ベクトル又は速度ベクトルを報告する際に、これらのベクトルの真値に対して誤認を招く有害な誤差を含ませてしまう可能性がある。つまり、DGPSは、非差分GPSが報告するよりも精度が劣る値を、いずれかのベクトル又は双方のベクトルに対して生成する可能性がある。
入手可能な最良のGPS解(GPS solution)を導出するために、受信した基準信号を相応に並び換えるDGPSシステムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る、差分GPSデータに基づいてナビゲーション解に対する補正値を計算する方法及び装置は、少なくとも3機のGPS衛星からGPS天体暦を受信することを含む。GPS天体暦からPVT解を解明する。PVT解は、平均誤差半径(CEP)を含む。PVT解に対する補正値を計算するための差分GPSデータを受信する。次いで、差分GPSデータに基づいてPVT解を補正する。補正したPVT解を、CEPによって定められる区域と比較する。補正したPVT解がその区域内にない場合、高精度なナビゲーション解を決定するためにPVT解を優先して、補正PVT解を拒絶する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】疑わしいDGPS補正データに基づいて、信頼性のあるGPS PVT解を導き出す方法のフロー・チャートである。
【図2】疑わしいDGPS補正データに基づいて、信頼性のあるGPS PVT解を導き出す装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、疑わしい差分補正値に基づいてGPS信号を選択的に解明(resolve)する方法10を示すフロー・チャートを表す。方法10は、非限定的な実施形態では、Pコードの受信に基づくことができるが、他の実施形態では、比較的簡素なC/Aコードの受信に基づくこともできる。いずれの場合でも、少なくとも4つのGPS信号をブロック12において受信する。
【0012】
いずれの非限定的な実施形態においても、ブロック15では、ブロック12において受信したGPS信号を解明して、位置、速度、及び時間分解能を導き出す。GPS信号は、平均誤差半径(CEP)も含む。CEPは、水平精密精度(precision accuracy)の統計的尺度である。CEPは、報告された位置の50%を内包する円(真の位置を中心とする)の半径と定義されている。別個の実施形態では、CEPを用いる代わりに、水平及び垂直限度を指定して用い、以下に詳述する論述にしたがって、容認可能な限度を導き出すことができる。
【0013】
別の非限定的な実施形態では、水平不確実レベル(「HUL」)(1998年6月2日付けのBrennerの米国特許第5,760,737号に明記されており、ここで引用したことにより、その内容は本願にも含まれるものとする)を用いて、測定した特有の不確実度に適した閾値を導き出す。HULは、水平精密精度の統計的尺度である。HULは、報告された位置の99.9%を内包する円(真の位置を中心とする)の半径と定義されている。HULを用いると、CEPを用いるよりも偽検出の発生が遥かに少ないため、HULが現時点では好適な実施形態となっている。
【0014】
カルマン・フィルタを用いて、受信信号を解明する。一実施形態では、位置及び速度の決定に応用するために、GPS及び慣性ナビゲーション・システム(INS)を用いる。両者を組み合わせると、GPS及びINSは多くの相補的特性が得られ、各センサを個別に用いるときに体験する限界を克服することができる。GPS及びINSセンサは、通例、カルマン・フィルタを用いて組み合わされる。GPS及びINSのデータは、主に2つの方法で組み合わせることができる。これらは、粗結合システム及び密結合システムとして知られている。粗結合システムでは、2つのプロセスを順次実行しなければならない。最初に、GPSデータをそれ自体のカルマン・フィルタによって処理しなければならない。次いで、慣性データを処理するときに別個のフィルタにおいて出力位置及び速度情報を用いることができ、INS測定誤差の増大を抑制するために用いられる。粗結合システムの主要な利点は、密結合システムと比較して、その設計が簡素であることにある。
【0015】
密結合システムは、GPS及びINS測定値双方を1つのカルマン・フィルタに一体化する。これには、粗結合システムに対して様々な理論的な利点がある。第1に、フィルタにおいていずれの数のGPS測定値でも用いることができ、したがって、1機の衛星だけを追跡している場合であっても、そのデータをフィルタ内で用いて、INS誤差の増大を抑制するのに役立てることができる。加えて、GPSデータにおいてサイクル・スリップ(cycle slip)を解決することが可能である。このようなシステムの欠点は、設計の複雑さ、及びこのようなシステムを実使用において機能させることの可能性にある。
【0016】
カルマン・フィルタは、経時的に誤差が発現する経過記述する動的モデル、及びシステムが悪い補正データを拒絶するための最良PVT解固有重み(PVT solution inherently weights)の選択を必要とする。カルマン・フィルタは、線形、再帰推定器であり、白色、ガウス・ノイズ・プロセスの想定の下において、最小二乗の意味で、極少分散推定値を生成する。このフィルタは定義上線形推定器であるので、ナビゲーション・システムでは、一般に総合的ナビゲーション状態における誤差を推定する。また、カルマン・フィルタは、その誤差状態ベクトル推定値の精度の尺度も生成する。この精度のレベルは、推定値における誤差の第2中央モーメント(second central moment)の行列であり、共分散行列と定義されている。
【0017】
カルマン・フィルタによってモデル化される基本的なプロセスは2つある。第1プロセスは、誤差状態ベクトルが時間的にどのように変化するかを記述するモデルである。このモデルは、システム・ダイナミクス・モデルである。第2プロセスは、誤差状態ベクトルとフィルタが処理するあらゆる測定値との間の関係を定義し、測定モデルである。
【0018】
直観的には、カルマン・フィルタは、情報を選別し、測定値及び状態ベクトルの動的挙動の相対的寄与に重み付けする。測定値及び状態ベクトルには、それぞれの共分散行列によって重み付けする。測定値を状態ベクトル推定値と比較したときに精度が低い場合(大きな分散)、フィルタは測定値の重みを減らす(deweight)。一方、測定値を状態推定値と比較したときに精度が非常に高い場合(小さな分散)、フィルタは測定値に重い重み付けをする、という結果につながり、その以前に計算した状態推定値の最新の状態推定値に対する寄与を減らすことになる。
つまり、ブロック15において、GPSのみ又はPGS/INSシステムのいずれかによって、PVT解を得る。
【0019】
StarFire、RTCM、WAAS、LAAS、EGNOS、又はMSATのような、差分GPSシステムの非限定的集合のいずれに応じても、補正データを受信する。補正データは、ブロック18においてGPS PVT解を導き出すために用いられる衛星の各々と相関がある。ブロック21において、衛星信号を、受信した補正信号にしたがって補正する。ブロック24において、ブロック15において未補正データを用いたのと同様にして、補正したデータを同様に用いて、DGPS PVT解を導き出す。
【0020】
ブロック27において、DGPS PVT解を、CEPによって取り囲まれたGPS PVT解周囲の区域と比較する。DGPS PVT解が、CEPによって定められる区域の中にある場合、DGPS補正データは合格(good)即ち「妨害」がないと想定し、ブロック30において、ユーザ受信機の新たな位置はDGPS PVTを基にする。次いで、DGPS PVT解を、次の繰り返しを導き出すための現在値として、カルマン・フィルタに供給する。そして、本方法を繰り返す。
【0021】
DGPS PVT解が、CEPによって定められる区域の外側にある場合、DGPS補正データは、故意に又は無作為に「妨害」されていると想定する。ブロック33における「妨害」の検出のために、DGPSデータが妨害されたことのインディケータを活性化する。種々の非限定的な実施形態では、インディケータはランプ又はある種のエヌンシエータ(enunciator)のように単純でよく、あるいは飛行管理システムの下流に供給されるデータに対するフラグであってもよい。一実施形態では、地図上における位置アイコンの色は、当該アイコンが描かれる位置における高い信頼性を示す一方の色から、低い信頼性を示す第2の色に変動させることもできる。
DGPS補正データは「妨害」されていると想定されているので、GPS PVT解を優先して、DGPS PVT解を拒絶する。そして、GPS PVT解は、次の繰り返しを導き出すための現在値としてカルマン・フィルタに供給される。次いで、本方法は繰り返す。
【0022】
図2は、非限定的な実施形態例によるシステム・プロセッサ100のブロック図である。システム・プロセッサ100は、IMU補償エレメント120、ナビゲーション計算エレメント12、モード・ロジック124、カルマン・フィルタ126、並びにPVT解を導き出すため及びCEPを導き出すために存在する2つの位置・速度・時間(PVT)解発生器を含むことができる。GPS PVT解発生器128は、差分GPSデータを用いずにPVT解を解明し、一方、DGPS PVT解発生器130は、RTCM、StarFire、WAAS、LAAS、EGNOS、及びMSATのようなDGPSデータ源から入手可能なDGPSデータを用いて解を解明する。
【0023】
非限定的な実施形態では、GPS PVT解発生器128及びDGPS PVT解発生器130の各々が、1つのカルマン・フィルタ126を用いながら、並列にPVT解を解明する。一体化した1つのPVT解ハードウェアであっても、二重カルマン・フィルタで可能なように用いて、GPSデータ及び入手可能なDGPSデータの各々を用いて別個にPVT解を解明することができる。したがって、PVT解発生器の異なる構成をシステム・プロセッサ100に配置してもよい。あるいは、PVT解発生器128、130をシステム・プロセッサ100の外部に配置してもよい。システム・プロセッサ100は、図2には示していない追加のエレメントも含んでもよい。代替実施形態では、IMU補償エレメント120は、部分的又は完全にプロセッサ100の外側に配置してもよい。
【0024】
システム・プロセッサ100は、種々のデータを種々のデータ源から受信することができる。システム・プロセッサ100は、以下の形式のデータを受信することができる。補償済み又は未補償ジャイロスコープ・データ、補償済み又は未補償加速度データ、磁気データ、空気データ(air data)、外部速度データ110、外部高度データ112、及びGPSデータ、別の呼び方をすると、センサ・データを受信することができる。
【0025】
外部速度データ110及び外部高度データ112は、航空機INSのような、航空機上にある別の慣性ナビゲーション・システムによって供給することができる。外部速度データ110は、航空機の速度が0である(即ち、静止している)ときも含めて、航空機の速度を示すことができる。更に、外部速度データ110は、従来の速度測定値のように、又は指定の時間期間(例えば、カルマン・フィルタ間隔)における従来の位置変化のように、計算することもできる。
【0026】
システム・プロセッサ100は、センサ・データを、ジャイロスコープ・センサ102、加速度センサ104、磁気センサ106、空気センサ108、GPSセンサ116、及びDGPSセンサ118から受け取る。図2には1つのGPSセンサを図示しているが、複数のGPSセンサがPGSデータをシステム・プロセッサ100に供給してもよい。システム・プロセッサ100は、走行距離計からのデータのような、追加のデータも受信することができる。加えて、システム・プロセッサは、水平飛行(leveling)移行114か否かの指示を受信することができる。水平飛行移行114か否かの指示は、空気が利用できなくなるために時間に基づくか、あるいはカルマン・フィルタ126の共分散に基づくことができる。
【0027】
センサ102〜118、116、及び118は、ビークルの状態を検知することができる。ジャイロスコープ電子回路132は、ジャイロスコープ・センサ102からのデータをシステム・プロセッサ100に送る前に、ジャイロスコープ・データを、そのディジタル表現に変換することができる。同様に、加速度電子回路134は、加速度センサ104からのデータをシステム・プロセッサ100に送る前に、加速度データをそのディジタル表現に変換することができる。
【0028】
システム・プロセッサ100は、出力として、ナビゲーション解を提供することができる。ナビゲーション解は、三次元位置、三次元速度、及び三次元高度解とすることができる。しかしながら、正確なナビゲーション解は、航空機の動作モードによって異なる場合がある。加えて、システム・プロセッサ100はGPS出力も提供することができる。GPS出力は、GPSセンサ116及びDGPSセンサ118から得られたデータであり、システム・プロセッサ100からの追加処理が行われても行われなくてもよい。追加の出力も可能である。他のアビオニクス・システムが、ナビゲーション解及びGPS出力を用いてもよい。例えば、航空機の位置をパイロットのためにヘッドアップ・ディスプレイ上に表示することができる。
【0029】
IMUエレメント120は、ジャイロスコープ電子回路132及び加速度電子回路134からデータを受け取る。ジャイロスコープ電子回路132及び加速度電子回路134の組み合わせは、図2に示した慣性電子回路116と実質的に同じである。IMUエレメント120は、多数のセンサ(例えば、3つの加速度計及び3つのジャイロスコープ)からの情報を用いて、慣性センサの1つ以上を補償するための補償を行うことができる。例えば、IMUエレメント120は、コーニング(coning)、スカリング(sculling)、又は重力の影響を補償することができる。
【0030】
加えて、カルマン・フィルタ126は、ジャイロスコープの誤差及び加速度計の誤差の推定値を、IMUエレメント120又はナビゲーション解に提供する。慣性ナビゲーション・システムでは、経時的なドリフトが発生し、このために位置、速度、及び高度解に誤差が生ずる。誤差は、ジャイロスコープのドリフト、加速度計の偏倚、倍率誤差、及びその他の誤差源が原因で発生する可能性がある。カルマン・フィルタ126によって行われるナビゲーション補正では、これらの誤差によって生ずるナビゲーション解の誤差を補正することができる。IMUエレメント120は、補償したIMUデータをナビゲーション計算エレメント122に供給する。
【0031】
ナビゲーション計算エレメント122は、IMUエレメント120から受け取るIMUデータと、カルマン・フィルタ126から受け取るナビゲーション補正値とを配合して、ナビゲーション解を求めることができるソフトウェアとするとよい。ナビゲーション計算エレメント122は、ナビゲーション解を計算する際、IMUエレメント120及びカルマン・フィルタ126から受け取ったデータを用いて、ニュートンの運動方程式を数値的に解く。ナビゲーション解は、ナビゲーション座標枠を参照することができる。可能なナビゲーション座標枠には、地球中心慣性(ECI:earth centered intertial)、地球中心地球固定(ECEF:earth centered earth fixed)、北、東、下方(NED)の方向に軸を有するローカル・レベル、及びゆらぎ方位角(wander azimuth)を有するローカル・レベルが含まれる。
【0032】
加えて、ナビゲーション計算エレメント122は、ナビゲーション解をカルマン・フィルタ126に供給する。カルマン・フィルタ126は、ナビゲーション解を用いて、今後計算されるナビゲーション解の推定値を計算する。このように、カルマン・フィルタ126は、ナビゲーション解を計算するために用いられるセンサにおける誤差を計算する再帰的方法を設けることができる。
【0033】
また、ナビゲーション計算エレメント122は、モード・ロジック124からの入力も受け取る。モード・ロジック124は、GPS PVT発生器128が、DGPS PVT発生器130を参照せずにナビゲーション解を供給すべきか否か示すことができる。DGPS PVT発生器130において発生したDGPS PVT解は、GPS PVT発生器128において発生したCEPが包囲するGPS PVT解を中心とする区域と比較される。DGPS PVT解が、CEPによって定められる区域の中にある場合、DGPS補正データは正しい、即ち、「妨害」がないと想定され、カルマン・フィルタ126は、DGPS PVT発生器130に基づいて、ユーザ受信機に対して新たな位置を推論する。次いで、DGPS PVT解は、次の繰り返しを導き出すための現在地として、カルマン・フィルタに供給される。そして、本方法が繰り返される。
【0034】
DGPS PVT解が、CEPによって定められる区域の外側にある場合、DGPS補正データは、モード・ロジック124において故意に又は無作為に「妨害」されていると想定される。モード・ロジック124において検出した「妨害」のために、DGPSデータが妨害されていることのインディケータを活性化することができる。種々の非限定的実施形態では、インディケータは、ランプ又はある種のエヌンシエータ(enunciator)のように単純でよく、あるいは飛行管理システムの下流に供給されるデータに対するフラグであってもよい。一実施形態では、地図上における位置アイコンの色は、当該アイコンが描かれる位置における高い信頼性を示す一方の色から、低い信頼性を示す第2の色に変化することもできる。
【0035】
付加的な非限定的実施形態では、解にフラグを立てるインディケータ又は位置不確実度測定値を含むインディケータを含むこともできる。このようにフラグを立てることによって、又は位置不確実度測定値を含めることによって、ホスト・システム(FMSのような)は、現在の飛行状態に対して、解が「十分正しい」か否かを判断することができる。例えば、位置不確実度によって、一実施形態では、DGPSは、提供された解が、着陸動作の間には適していないこともあるが、同じ解が水平飛行中の土地に関する位置を判断するために用いるのに適しているか否か判断することが可能になる。更に別の実施形態では、選択的に位置不確実度が指定可能な閾値を超過したときに、GPS解を選択的に用いることもできる。
【0036】
DGPS補正データは「妨害」されていると想定されているので、DGPS PVT解は、GPS PVT発生器128が発生するGPS PVT解を優先して、拒絶される。次いで、GPS PVT解を、次の繰り返しを導き出すための現在位置として、カルマン・フィルタに供給する。次いで、本方法は繰り返す。
【0037】
モード・ロジック124は、ナビゲーション解を提供すべきか否か判断し、すべき場合、どの形式のナビゲーション解を提供すべきか判断することができるのであれば、ハードウェア、ファームウェア、又はソフトウェアのいずれの組み合わせでもよい。例えば、航空機がスタンバイ・モードになっており、ナビゲーション解を必要としない場合もある。しかしながら、航空機がナビゲーション・モードにある場合、モード・ロジック124は、ナビゲーション解が深く一体化されたモード又は補助モードのどちらに基づくとよいか判断することができる。
【0038】
カルマン・フィルタ126は、推定値を得るように動作可能であれば、ハードウェア、ファームウェア、又はソフトウェアのいずれの組み合わせでもよい。カルマン・フィルタは、補正データをナビゲーション計算エレメントに供給し、精度を高めてナビゲーション解を提供するために用いられることは、当技術分野では周知である。カルマン・フィルタ126は、前述のセンサからデータを受け取り、航空機の位置、速度、又は高度のナビゲーション補正値を推定することができる。カルマン・フィルタ126は、INS誤差ダイナミクスのモデルを用いて、ナビゲーション補正値を推定することができる。カルマン・フィルタ126は、推定値をIMUエレメント120、ナビゲーション計算エレメント122、及びPVT解発生器128、130に供給することができる。
【0039】
以上、本発明の好適な実施形態について図示し説明したが、上述のように、本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく多くの変更を行うことができる。したがって、本発明の範囲は、好適な実施形態の開示内容によって限定されるのではない。代わりに、本発明は、以下に続く特許請求の範囲を参照することによって、全体的に判断すべきものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビゲーション・システム用のシステム・プロセッサ(100)であって、
少なくとも3機のGPS衛星からGPS天体暦を受信するGPS測距システムと、
前記GPS天体暦の補正のために、差分GPSデータを受信するDGPSデータ受信機(130)と、
単体又は組み合わせで動作する少なくとも1つのカルマン・フィルタであって、前記GPS測距システムから受信したGPS天体暦に基づいてナビゲーション解を計算し、前記差分GPSデータに基づいて補正ナビゲーション解を計算する、前記差分GPSデータを用いる、カルマン・フィルタ(126)と、
ナビゲーション解を計算するように動作可能であり、前記GPS天体暦に基づくナビゲーション解又は補正したナビゲーション解のどちらを選択するか判断するよう構成されたモード・ロジック(124)と
を備えていることを特徴とするシステム・プロセッサ。
【請求項2】
請求項1記載のシステム・プロセッサにおいて、前記モード・ロジック(124)は、警告信号の活性化を含むことを特徴とするシステム・プロセッサ。
【請求項3】
高精度データに基づいてナビゲーション解に対する補正値を計算する方法であって、
少なくとも3機のGPS衛星からGPS天体暦を受信するステップ(12)と、
前記GPS天体暦からPTV解を解明するステップであって、前記PVT解がCEPを含む、ステップ(15)と、
前記PVT解に対する前記補正を計算するための差分GPSデータを受信するステップ(18)と、
前記差分PGSデータに基づいて、補正PVT解を計算するステップ(24)と、
前記補正PVT解を、前記CEPによって定められる区域と比較するステップ(27)と、
前記補正PVT解が前記区域の中にない場合、前記補正PVT解を拒絶するステップ(56)と
を備えていることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−8418(P2010−8418A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−151132(P2009−151132)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】