説明

軸受装置および軸受予圧検出装置

【課題】 軸受運転中の予圧を検出することができ、製造コストの低減を図り、組立てを簡単化することができると共に、検出感度を大きくし、外乱ノイズに強くなる軸受装置および軸受予圧検出装置を提供する。
【解決手段】 外輪間座5の軸方向の一部に、この外輪間座5の両端間に作用する軸方向力によって歪を生じる起歪部7を設け、この起歪部7に前記歪を検出する歪センサ10を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械の主軸スピンドルなどに使用される軸受装置および軸受予圧検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械のスピンドル装置では、加工精度および効率の向上のため、軸受の予圧管理が求められており、そのため軸受予圧検出の要求がある。
従来の軸受予圧検出方法では、以下のような技術が種々提案されている。
(1)軸に加振装置で振動を与えたり、軸を外部装置で回転させたときの振動を測定して軸受の共振周波数を求め、その共振周波数から軸受剛性を推定し、この推定した剛性値から予圧量を求める(特許文献1参照)。
(2)軸受外輪に歪ゲージを貼り、転動体通過時の外輪の歪を検出して軸受にかかる予圧荷重を検出する(特許文献2,3参照)。
(3)外輪間座に磁歪材を設けて、間座にかかる軸方向の力を測定して予圧を求める(特許文献4,5参照)。
【特許文献1】特開平5−10835号公報
【特許文献2】特開平9−108903号公報
【特許文献3】特開平8−25106号公報
【特許文献4】特開2004−204913号公報
【特許文献5】特開2004−279125号公報
【特許文献6】特開平2−164241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記軸受の共振周波数を測定する方法では、工作機械の運転中の軸受の予圧を検出することができない問題点がある。軸受外輪に歪ゲージを貼る方法は、軸受外輪やハウジングに切り欠き部を設ける必要があり、コストが高くなったり、組立方法が難しくなる問題点がある。間座に磁歪材を設ける方法は、スピンドルモータ等からの外乱磁界の影響を受けやすい。また、外輪間座に歪センサを設ける方法も提案されているが(特許文献6参照)、間座の剛性が大きいため検出感度が小さく、工作機械運転中の外乱ノイズのため分解能が悪くなる。
【0004】
この発明の目的は、軸受運転中の予圧を検出することができ、製造コストの低減を図り、組立てを簡単化することができると共に、検出感度を大きくし、外乱ノイズ等に強くなる軸受装置および軸受予圧検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の軸受装置は、軸方向に並ぶ複数の転がり軸受の軌道輪間に間座を介在させた軸受装置において、前記間座の軸方向の一部に、この間座の両端間に作用する軸方向力によって歪を生じる起歪部を設け、この起歪部の歪を検出する検出手段を設けたものである。
【0006】
この構成によると、間座の軸方向の一部に設けた起歪部が、この間座の両端間に作用する軸方向力により歪を生じる。この起歪部に設けた検出手段は、生じた歪を検出する。この検出した歪により、軸受にかかる予圧を得ることが可能となる。このように、間座の一部に起歪部を設け、この起歪部の歪を検出するため、間座本体自体や軸受軌道輪に歪センサ等を設けるものに比べて、検出感度を大きくすることができる。したがって、軸受運転中の外乱ノイズや外乱磁界に強くなり、軸受予圧をより正確に検出することができる。しかも、起歪部を設けるために軌道輪に切り欠き部等を設ける必要がなく、その分、加工コストの低減を図ることができるうえ、軸受装置の組立てを簡単化することができる。また、起歪部の振動を測定することで、軸受の振動を求めることができるので、加速度センサを新たに設ける必要がなくなる。このように、部品の兼用性を高めることができ、製造コストの低減をさらに図ることができる。
【0007】
この発明において、前記間座は、軸方向に並ぶ複数個の分割間座本体に分割されたリング状の間座本体、または単独のリング状の間座本体と、リング部材からなる前記起歪部とでなり、この起歪部は、前記分割間座本体間に介在させ、または前記間座本体と前記転がり軸受の軌道輪との間に介在させても良い。
複数個の分割間座本体に分割されたリング状の間座本体を適用する場合、転がり軸受および間座を嵌合するハウジング等に追加加工を施すことなく、軸受装置を組立てることができる。単独のリング状の間座本体を適用する場合、部品点数の低減を図り、軸受装置の製造コストを低減することができる。また、複数個の分割間座本体を適用する場合よりも、軸受装置の組立てを簡単化し組立時間の短縮を図ることができる。
【0008】
この発明において、前記起歪部は、軸方向の一側面の外周部と他側面の内周部とで、この起歪部の軸方向の両側に位置する間座本体の構成部分または前記転がり軸受の軌道輪に当接するようにしても良い。このように、間座本体や軌道輪等の歪を検出するのではなく、起歪部の一側面の外周部に対し他側面の内周部に相対的な軸方向力を作用させ、この起歪部に歪を生じさせることができる。
【0009】
この発明において、前記起歪部は、この半径方向内周部分および半径方向外周部分のいずれか一方の剛性が他方の剛性よりも相対的に小さくなる弱部を有するものとしても良い。
この場合、起歪部の一側面の半径方向内周部分または半径方向外周部分を、旋削加工等により加工して簡単に弱部を得ることができる。これによって、従来技術のものより検出感度を大きくすることができる起歪部を簡単にかつ確実に得ることができる。
【0010】
この発明において、前記検出手段により検出される起歪部の歪から転がり軸受の予圧を検出する予圧検出手段を設けても良い。この予圧検出手段により検出される予圧によって、工作機械等の主軸を所望の回転精度に維持すると共に、前記主軸の剛性を適度に管理することが可能となる。
【0011】
この発明において、前記間座本体の軸方向端部に、軸方向に突出し、前記起歪部に荷重を付与する凸部を設けても良い。この場合、間座本体の剛性を低下させることなく、検出手段により、起歪部に生じた歪を感度良く検出することができる。
この発明において、前記検出手段は、前記起歪部のうち圧縮される部分および引張り部分のいずれか一方または両方の歪を検出可能に構成されるものであっても良い。この場合、検出手段の取り付けの自由度を高めることができる。また、圧縮される部分および引張り部分の歪をともに検出する場合、検出感度をより大きくすることができる。
【0012】
この発明の軸受予圧検出装置は、間座の軸方向の一部に、この間座の両端間に作用する軸方向力によって歪を生じる起歪部を設け、この起歪部の歪を検出する検出手段を設けた軸受間座と、前記検出手段により検出される起歪部の歪から転がり軸受の予圧を検出する予圧検出手段とを備えたものである。このような軸受予圧検出装置により、軸受運転中の予圧を検出することができる。前記予圧検出手段により検出される予圧によって、工作機械等の主軸を所望の回転精度に維持すると共に、前記主軸の剛性を適度に管理することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
この発明の軸受装置は、軸方向に並ぶ複数の転がり軸受の軌道輪間に間座を介在させた軸受装置において、前記間座の軸方向の一部に、この間座の両端間に作用する軸方向力によって歪を生じる起歪部を設け、この起歪部の歪を検出する検出手段を設けたため、軸受運転中の予圧を検出することができ、製造コストの低減を図り、組立てを簡単化することができると共に、検出感度を大きくし、外乱ノイズ等に強くなる軸受装置および軸受予圧検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図4と共に説明する。この第1の実施形態にかかる軸受装置は、ハウジング1に軸2を複数の軸受3で回転自在に支持したものである。この軸受装置は、例えば、工作機械のスピンドル装置に応用され、その場合、軸2はスピンドル装置の主軸2となる。
【0015】
主軸2には、軸方向に離隔した複数の軸受3を締まり嵌め状態で嵌合し、内輪3i,3i間に内輪間座4を、外輪3g,3g間に外輪間座5を介在させている。軸受3は、内輪3iと外輪3gの間に複数の転動体Tを介在させた転がり軸受であり、これら転動体Tは保持器Rtで保持されている。軸受3は、軸方向の予圧を付与することが可能な軸受であり、アンギュラ玉軸受、深溝玉軸受、またはテーパころ軸受等が用いられる。図示の例ではアンギュラ玉軸受が用いられ、2個の軸受3,3が背面組合わせで設置されている。
【0016】
外輪間座5はリング状の間座本体6と起歪部7とを有し、前記間座本体6は、第1の分割間座本体6aと第2の分割間座本体6bとを有する。軸方向一方に設けられる第1の分割間座本体6aと、軸方向他方に設けられる第2の分割間座本体6bとの間に、リング部材からなる起歪部7であって間座の他の箇所よりも歪を大きく生じる部分である起歪部7を挟み込んでいる。これら第1,第2の分割間座本体6a,6bおよび起歪部7の幅寸法、つまり外輪間座5の幅寸法H1は、内輪間座4の幅寸法H2と異なっており、一方の軸受3の内輪端面に筒状部材8を介して当接するナット9を締め付けることにより、これら外輪間座5、内輪間座4の幅寸法差に応じて軸受に予圧が付与される。
【0017】
前記間座本体6のうち、右側の第1の分割間座本体6aは、この軸方向右端部が前記一方の軸受3の外輪背面3gaに当接し、軸方向左端部が起歪部7に当接する。この第1の分割間座本体6aの軸方向右端部は、外径側に外輪背面3gaに当接する当接面6aaと、この当接面6aaに段部を介して内径側に連なる軸受3に当接しない非当接面6abとを有する。
第1の分割間座本体6aの軸方向左端部は、外径側に起歪部7に当接しない非当接面6acと、この非当接面6acに段部を介して内径側に連なり、軸方向に所定小距離突出して起歪部7に荷重を付与する環状の凸部6adとを有する。
【0018】
第2の分割間座本体6bは、この軸方向左端部が他方の軸受3の外輪背面3gaに当接し、軸方向右端部がいわゆるラジアル平面を成して起歪部7に当接する。この第2の分割間座本体6bの軸方向左端部は、外径側に外輪背面3gaに当接する当接面6baと、この当接面6baに段部を介して内径側に連なる軸受3に当接しない非当接面6bbとを有する。
【0019】
前記起歪部7は、この半径方向内周部分に弱部7aを有する。つまり、弱部7aは、この起歪部7の半径方向外周部分よりも剛性が相対的に小さくなるように構成されている。上記第1の分割間座本体6aの凸部6adが、前記弱部7aとなる半径方向内周部分の右端面に当接し、荷重を付与するようになっている。起歪部7の左端面は、外径側に第2の分割間座本体6bの軸方向右端部に当接する当接面7bと、この当接面7bに段部を介して内径側に連なる第2の分割間座本体6bに当接しない非当接面7cとを有する。これら当接面7b、前記段部、および非当接面7cにより、起歪部7をアキシアル平面で切断して視た断面が前記弱部7aを自由端とする片持ち梁形状を成す。本実施形態の場合、起歪部7の半径方向外周部分が固定端となり、起歪部7の半径方向内周部分が自由端となる片持ち梁形状となる。すなわち、起歪部7が、剛体となる第1,2の分割間座本体6a,6b間に介在され、この起歪部7の弱部7aに、第1の分割間座本体6aの凸部6adから軸方向力を付与するようになっている。
【0020】
前記起歪部7の右端面のうち、根元部分つまり半径方向外周部分に、歪ゲージ等の歪センサ10を設け、検出手段としての歪センサ10により、前記起歪部7の歪を検出する。本実施形態では、起歪部7の右端面のいわゆる梁が伸びている部分の歪を検出しているが、この形態に限定されるものではない。例えば、起歪部7の左端面に歪センサを設けて、この歪センサにより、起歪部7の左端面のいわゆる圧縮されている部分の歪を検出しても良い。また、歪センサ10を円周方向複数箇所に設けて、これら複数の歪センサ10のセンサ出力を加算することで、歪検出感度を大きくしても良い。また、図4に示すように、起歪部7の右端面の引張り部分7dと、左端面の圧縮部分7eに歪センサ10,10を設けて、これら歪センサ10,10のセンサ出力の差分をとって歪検出感度を大きくしても良い。
【0021】
歪センサ10の出力部である配線11は、ハウジング1に設けられた孔1aを介してハウジング1外に引き出され、転がり軸受の予圧を検出する予圧検出手段12に電気的に接続されている。歪センサ10により検出した歪は電気信号に変換され、予圧検出手段12は、前記配線11を介して入力される電気信号に比例する予圧量を算出する電子回路等からなる。この予圧検出手段12は、上記電気信号と予圧量の関係を演算式またはテーブル等で設定した図示外の関係設定手段を有し、検出した歪に基づく電気信号を前記関係設定手段に照らし予圧量を算出する。また、予圧検出手段12は、例えば、ピークホールド処理により前記電気信号のピーク電圧を測定し、このピーク電圧が所定の閾値外となったとき、軸受予圧が所望の予圧ではないと判定するようにしても良い。予圧検出手段12は、独立して設けられた電子回路であっても、またスピンドル装置を制御する制御装置の一部であっても良い。
上記外輪間座5および内輪間座4と、歪センサ10とを有する軸受間座と、前記予圧検出手段12とにより、軸受予圧検出装置が構成される。
【0022】
上記構成の作用、効果を説明する。スピンドル装置の図示外の駆動源により主軸2が回転し、軸受3の温度が上昇して内輪3iが膨張し、予圧が初期設定値よりも大きくなると、外輪間座5の両端間に加わる軸方向力が増加する。この外輪間座5のうち起歪部7に、第1の分割間座本体6aの凸部6adから軸方向力が加わると、この起歪部7の右端面に引張り応力が作用すると共に、起歪部7の左端面に圧縮応力が作用する。これにより、この起歪部7に設けた歪センサ10に歪を生じる。予圧検出手段12は、検出した歪に基づく電気信号を前記関係設定手段に照らし予圧量を算出する。したがって、起歪部7に加わる軸方向外力と電気信号との関係を予め調べておけば、軸受装置に組み込まれた軸受3の初期予圧および運転時に増加した予圧を知ることができる。
【0023】
特に、第1の分割間座本体6aと第2の分割間座本体6bとの間に、起歪部7を介在させて設け、この起歪部7の歪を検出するため、間座本体自体や軸受軌道輪に歪センサ等を設けるものに比べて、検出感度を大きくすることができる。したがって、軸受運転中の外乱ノイズや外乱磁界に強くなり、軸受予圧を正確に検出することができる。しかも、起歪部7を設けるために軌道輪に切り欠き等を設ける必要がなく、その分、加工コストの低減を図ることができるうえ、軸受装置の組立てを簡単化することができる。また、起歪部7の振動を測定することで、軸受3の振動を求めることができるので、加速度センサを新たに設ける必要がなくなる。このように、部品の兼用性を高めることができ、製造コストの低減をさらに図ることができる。
【0024】
また、本実施形態のように、複数個の分割間座本体6a,6bに分割されたリング状の間座本体6を適用する場合、軸受3、外輪間座5、および内輪間座4を嵌合するハウジング1等に追加加工を施すことなく、軸受装置を組立てることができる。つまり、ハウジング1に既設の孔1aの位置に応じた軸方向寸法の分割間座本体6a,6bを適用することができる。これにより、ハウジング1の兼用性を高めることが可能となる。
前記起歪部7は、右端面の内周部7iと左端面の外周部7uとで、この起歪部7の軸方向の両側に位置する分割間座本体6a,6bに当接する。このように、間座本体や軌道輪等の歪を検出するのではなく、起歪部7の一側面の外周部7uに対し他側面の内周部7iに相対的な軸方向力を作用させ、この起歪部7に歪を生じさせることができる。
【0025】
前記起歪部7は、この半径方向内周部分の剛性が半径方向外周部分の剛性よりも相対的に小さくなる弱部7aを有するリング部材からなる。このリング部材をアキシアル平面で切断して視た断面が前記弱部7aを自由端とする片持ち梁形状を成し、前記弱部7aに、間座本体6の軸方向端部から軸方向力を付与したものとしている。この場合、起歪部7の半径方向内周部分を、例えば、旋削加工等により加工して簡単に弱部を得ることができる。ただし、弱部7aの加工方法は、前記旋削加工だけに限定されるものではない。これによって、前記リング部材をアキシアル平面で切断して視た断面を片持ち梁形状とし、従来技術のものより検出感度を大きくすることができる起歪部7を簡単にかつ確実に得ることができる。
【0026】
また、本実施形態では、前記歪センサ10により検出される起歪部7の歪から転がり軸受の予圧を検出する予圧検出手段12を設けている。この予圧検出手段12により検出される予圧によって、工作機械の主軸2を所望の回転精度に維持すると共に、前記主軸2の剛性を適度に管理することが可能となる。間座本体6のうち第1リング6aの軸方向左端部に、軸方向に突出し、起歪部7に荷重を付与する凸部6adを設けたため、間座本体6の剛性を低下させることなく、歪センサ10により、起歪部7に生じた歪を感度良く検出することができる。
【0027】
歪センサ10は、起歪部7のうち圧縮される部分および引張り部分の少なくともいずれか一方の歪を検出可能に構成されるものであっても良い。この場合、歪センサの取り付けの自由度を高めることができる。また、圧縮される部分および引張り部分の歪をともに検出する場合、検出感度をより大きくすることができる。
【0028】
次に、この発明の第2の実施形態を図5と共に説明する。以下の説明において、第1の実施形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0029】
第2の実施形態における外輪間座5Aは、一部材から成るつまり単独の間座本体6Aと、この間座本体6Aおよび軸受外輪3gに当接する起歪部7Aとを有する。つまり、この起歪部7Aの右端面は、一方の軸受3の外輪背面3gaに当接する当接面7Aaと、この当接面7Aaに段部を介して内径側に連なる軸受3に当接しない非当接面7Abとを有する。また、起歪部7Aは、この半径方向内周部分に弱部7Acを有する。前記当接面7Aa、前記段部、および非当接面7Abにより、起歪部7Aをアキシアル平面で切断して視た断面が、前記弱部7Acを自由端とする片持ち梁形状を成す。この起歪部7Aの左端面はいわゆるラジアル平面を成す。起歪部7Aの左端面のうち半径方向内周部分の弱部7Acに、間座本体6Aの環状の凸部6Aaから軸方向外力を付与するようになっている。
【0030】
この第2の実施形態によれば、単独のリング状の間座本体6Aを適用しているため、外輪間座5Aの構成部材を第1の実施形態のものより減らすことができる。したがって、部品点数を低減し、全体構造を簡単化することができる。これにより、軸受装置の製造コストの低減を図ることができる。また、複数個の分割間座本体を適用する場合よりも、軸受装置の組立てを簡単化し組立時間の短縮を図ることができる。その他第1の実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0031】
以上説明した軸受装置を、スピンドル装置以外の装置、ロボット等に適用することも可能である。本実施形態では、2個の軸受を背面組み合わせで設置したが、正面組み合わせで設置する場合もあり得る。また、軸受の個数は2個に必ずしも限定されるものではない。本実施形態では、外輪間座の間座本体の軸方向端部に起歪部を設けたが、前記スピンドル装置以外の装置において、例えば、内輪間座の間座本体の軸方向端部に起歪部を設けても良い。この場合、外輪回転となり、起歪部の出力用の配線を、軸内部を通して軸受装置外に引き出すことが望ましい。
本実施形態で説明した起歪部は一例であって、間座を局所的に歪ませることができるものであれば、説明した例に限定されるものではない。
間座の一部に、円周方向の溝またはスリット等を形成して成る起歪部であって間座の他の箇所よりも歪を大きく生じる起歪部を設け、間座本体に一体に起歪部を設けても良い。この場合、軸受装置の部品点数を第2の実施形態のものよりさらに低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る軸受装置等の断面図である。
【図2】同軸受装置の起歪部の断面図である。
【図3】同起歪部を軸方向から見た側面図である。
【図4】同起歪部の引張り部および圧縮部に、歪センサを設けた例を表し、図4(a)はこの起歪部全体の断面図、図4(b)は要部拡大断面図である。
【図5】この発明の第2の実施形態に係る軸受装置等の断面図である。
【符号の説明】
【0033】
3…軸受
3g…外輪
3i…内輪
4…内輪間座
5,5A…外輪間座
6,6A…間座本体
6a,6b…分割間座本体
6ad…凸部
7…起歪部
7a…弱部
7d…引張り部分
7e…圧縮部分
7i…内周部
7u…外周部
10…歪センサ
12…予圧検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に並ぶ複数の転がり軸受の軌道輪間に間座を介在させた軸受装置において、
前記間座の軸方向の一部に、この間座の両端間に作用する軸方向力によって歪を生じる起歪部を設け、この起歪部の歪を検出する検出手段を設けた軸受装置。
【請求項2】
請求項1において、前記間座は、軸方向に並ぶ複数個の分割間座本体に分割されたリング状の間座本体、または単独のリング状の間座本体と、リング部材からなる前記起歪部とでなり、この起歪部は、前記分割間座本体間に介在させ、または前記間座本体と前記転がり軸受の軌道輪との間に介在させた軸受装置。
【請求項3】
請求項2において、前記起歪部は、軸方向の一側面の外周部と他側面の内周部とで、この起歪部の軸方向の両側に位置する間座本体の構成部分または前記転がり軸受の軌道輪に当接する軸受装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記起歪部は、この半径方向内周部分および半径方向外周部分のいずれか一方の剛性が他方の剛性よりも相対的に小さくなる弱部を有する軸受装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記検出手段により検出される起歪部の歪から転がり軸受の予圧を検出する予圧検出手段を設けた軸受装置。
【請求項6】
請求項2ないし請求項5のいずれか1項において、前記間座本体の軸方向端部に、軸方向に突出し、前記起歪部に荷重を付与する凸部を設けた軸受装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、前記検出手段は、前記起歪部のうち圧縮される部分および引張り部分のいずれか一方または両方の歪を検出可能に構成される軸受装置。
【請求項8】
間座の軸方向の一部に、この間座の両端間に作用する軸方向力によって歪を生じる起歪部を設け、この起歪部の歪を検出する検出手段を設けた軸受間座と、
前記検出手段により検出される起歪部の歪から転がり軸受の予圧を検出する予圧検出手段とを備えた軸受予圧検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−281157(P2008−281157A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127763(P2007−127763)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】