説明

輸送用コンテナ保安のための移動無線メッシュ技術

海上貨物コンテナのための保安システムであって、各コンテナには、プロセッサ、無線機、メモリ、電池および1つ以上のセンサを備えるコンテナセキュリティデバイスが設けられる。コンテナどうしが互いの範囲内にあるとき、コンテナセキュリティデバイスは通信してアドホック無線センサネットワークを形成する。そのネットワークは、さまざまなコンテナセキュリティデバイスから得られるデータを集成するゲートウェイを介して、衛星またはGSM通信手段などの通信インフラストラクチャと通信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
この発明は一般に保安および追跡の分野に関する。より特定的には、本発明は海洋資産保安および追跡に関する。
【背景技術】
【0002】
世界中の外洋航行の船荷運送インフラストラクチャはテロ対象になりやすい。コンテナ貨物の無防備の移動は、たとえば、熱核装置または「汚い爆弾(dirty bomb)」のための放射性物質を輸送用コンテナで目的国に密輸することによって大規模な経済損失を引起す機会をテロリストに与えてしまう。したがって、地球規模のサプライチェーンおよび極めて重要な港湾施設を安全にするのを助けるため、コンテナレベルでの追跡および監視技術を開発し、配備する必要がある。
【0003】
米国国土安全保障省の機関である米国税関・国境警備局(CBP)は、テロリストおよびテロ兵器の米国への流入防止任務を担当している。毎年約700万のコンテナが米国に到着するため、CBPがすべてのコンテナを検査することはできない。コンテナの大部分は低価値で、監視能力が非常に限られている。流通過程の管理は工場および港での保安で開始する。その後は、連続的なコンテナの監視によって、確実に流通過程の管理が途切れないようにしなければならない。
【0004】
国土防衛構想は米国領土から外国領土へ防衛の最前線を推し進めており、サプライチェーンに対する脆弱性を低下させるのに重要な構成要素である外国の荷積みドックを安全にしている。国土防衛コンテナ・セキュリティ・イニシアティブ(CSI)は、米国向けの海上貨物コンテナが、米国の一部へ直接のアクセスを与えることによってテロ攻撃を容易にするのに用いられ得るという懸念に応じて立案された。主要な外国港に係官を駐在させ、積荷目録書類の事前提出を要求することにより、CBPは、米国向けのコンテナが船上に荷積みされる前でさえもコンテナを事前に選別し、承認を与えることができる。
【0005】
CSIの他の構成要素には、(a)危険性の高いコンテナを識別し、標的にするための知能および自動化情報システムの使用、(2)危険性が高いと思われるそれらのコンテナをより迅速かつ確実に評価するための高度で大規模な検出技術(コンテナX線機器および放射線検出器など)の使用、および(3)コンテナの運搬時に当局に不正開封を警告する電子不正開封防止シールを有する、「よりスマートな」より安全なコンテナの使用が含まれる。
【0006】
不正開封防止機能の付いたコンテナの壁に一体型保安センサを取付け、その後コンテナが梱包および封止されてからその保安センサを警備態勢にすることが公知である。コンテナの運搬中にそのようなセンサを監視および追跡するためのシステムが現在開発されている。公知のコンテナセキュリティデバイス(CSD)は、(GPS位置データを受信するための)GPS受信アンテナと、GPSモジュールと、(GPS位置報告を自動的に、たとえば毎日6回送るための)Globalstar衛星送信アンテナと、(通信衛星を中継器として用いてデータ転送を確立するのに用いられる)衛星モデムとを有する。
【0007】
海上貨物を追跡するための1つの提案されるシステムは、ほとんどの標準的な海運コンテナの側柱に固定される掌サイズのCSDを使用する。コンテナ内部の貨物の製造者は、無線装置を介して一意の識別コードを送信することによってCSDを警備態勢にする。CSDは、通関港に配置される無線読取機に自身の現状を自動的に通信する。これらの通信
は、コンテナが最初に封止されてからどこでいつ開けられたかを示す。無線読取機とCSDとの間の通信、およびトランザクションに関する全データは暗号化される。
【0008】
他の提案されるシステムは、インテリジェント処理および無線通信システムを用いて、監視当局がコンテナの地球上の位置および状態についての報告を受けることを可能にする。地球規模のデータ送信のために、低地球軌道衛星ならびにマルチバンド携帯電話(multi-band cellular)および無線LANが用いられることになる。そのようなシステムであれば、許可されていない立ち入り、取扱いミス、極端な環境状態、航路逸脱または予定外の遅延などの異常事象が発生しているコンテナを、コンテナの位置にかかわらず数分以内に監視当局に通知することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のCSDの1つの問題点は、船上に、または入港中にコンテナが積み重ねられると発生する。軌道衛星に対する見通し線を有するのは、積み重ねの一番上のそれらのコンテナのCSDのみである。また、現場のCSDどうしは互いと通信しない。世界中のデータの製作者との相互接続も限られている。CSDが中央の位置に送る(一方向)のはまれである(たとえば何時間かごとまたは何日かごと)。また、警報検証が限られているので誤警報が増える。さらなる欠点は、警報相関が手動の相互作用に依拠しているということである。従来のCSDを用いて航路およびコンテナ保安の連続的な記録を達成することは困難である。CSIの実施に対するさらなる障害は、長期の航海に対して電池寿命がしばしば不十分であるCSDの電池を交換する際に繰返し発生する高コストである。通信(たとえば衛星および電話料金)の高コストによって世界中の出荷追跡が制限され、一方向のデータ配信によって相互接続性が制限され、古くなった潜在データによって信頼性のある保安評価が制限されてしまう。
【0010】
上述の問題点の少なくともいくつかを扱うか解決する、貨物コンテナとともに用いるための改良された保安システムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の簡単な説明
この発明は海上貨物コンテナのための保安システムに向けられており、各コンテナには、プロセッサ、無線機、メモリ、電池および1つ以上のセンサを備えるコンテナセキュリティデバイスが設けられる。コンテナどうしが互いの範囲内にあるとき、コンテナセキュリティデバイスは通信してアドホック無線センサネットワークを形成する。その無線ネットワークは、さまざまなコンテナセキュリティデバイスから得られるデータを集成し、かつそのデータを通信インフラストラクチャに送信する無線ブリッジを介して、衛星またはGSM通信手段などの通信インフラストラクチャと通信する。
【0012】
本発明の1つの局面は、貨物コンテナ保安システムであって、第1の貨物コンテナに取付けられる第1のコンテナセキュリティデバイス、および第2の貨物コンテナに取付けられる第2のコンテナセキュリティデバイスを備える無線センサネットワークを備え、第1および第2のコンテナセキュリティデバイスは、互いに間欠的に無線通信しており、システムはさらに第1のコンテナセキュリティデバイスおよび通信インフラストラクチャと無線で間欠的に通信する集成装置を備え、集成装置は、無線センサネットワークと通信インフラストラクチャとの間のデータ転送のための無線ブリッジとして作用し、各コンテナセキュリティデバイスは、プロセッサ、無線機、電池、メモリ、および少なくとも1つのセンサを備え、第2のコンテナセキュリティデバイスからのデータは、第1のコンテナセキュリティデバイスおよび集成装置を介して通信インフラストラクチャに送られ得る。
【0013】
本発明の他の局面は、貨物コンテナ保安システムであって、複数のコンテナセキュリティデバイスを備え、各コンテナセキュリティデバイスはそれぞれの貨物コンテナに取付けられており、各コンテナセキュリティデバイスは、プロセッサ、無線機、電池、メモリ、および少なくとも1つのセンサを備え、システムはさらにコンテナセキュリティデバイスのいくつかおよび通信インフラストラクチャと無線で間欠的に通信する集成装置を備え、集成装置は、コンテナセキュリティデバイスと通信インフラストラクチャとの間のデータ転送のための無線ブリッジとして作用し、プロセッサはアドホック無線ネットワークを形成するようにプログラムされ、これにより、いくつかのコンテナセキュリティデバイスは集成装置と直接通信し、他のコンテナセキュリティデバイスは、集成装置と直接通信するコンテナセキュリティデバイスを介して間接的にのみ集成装置と通信する。
【0014】
本発明のさらなる局面は、貨物コンテナの保安を監視するための方法であって、船/港支持構造上に無線集成装置を設置するステップと、第1の貨物コンテナに第1のコンテナセキュリティデバイスを取付けるステップと、第2の貨物コンテナに第2のコンテナセキュリティデバイスを取付けるステップと、第1のコンテナセキュリティデバイスを用いて第1の貨物コンテナにおける事象または状態を検出するステップと、第1のコンテナセキュリティデバイスから第2のコンテナセキュリティデバイスに第1の無線信号を送信するステップとを備え、第1の無線信号は、第1の貨物コンテナにおける検出された事象または状態の発生を示す情報を含み、方法はさらに第2のコンテナセキュリティデバイスから集成装置に第2の無線信号を送信するステップを備え、第2の無線信号は、第1の貨物コンテナにおける検出された事象または状態の発生を示す情報を含み、方法はさらに集成装置から通信インフラストラクチャに信号を送信するステップを備え、集成装置からの信号は、第1の貨物コンテナにおける検出された事象または状態の発生を示す情報を含む。
【0015】
本発明のさらなる局面は、複数の貨物コンテナの保安を監視するための方法であって、(a)複数のコンテナセキュリティデバイスのすべてではないがいくつかが無線集成装置の無線通信範囲内にあるときに無線集成装置と無線で通信するためのアドホック・ネットワークを形成するように、複数のコンテナセキュリティデバイスの各々をプログラムするステップと、(b)複数の貨物コンテナのそれぞれにコンテナセキュリティデバイスの各々を取付けるステップと、(c)複数の貨物コンテナを船上の、ドックに入れられている、または陸上の複数の積み重ねに配置するステップと、(d)無線集成装置が複数のコンテナセキュリティデバイスのうちのいくつかの無線通信範囲内にあるような位置に無線集成装置を設置するステップと、(e)コンテナセキュリティデバイスの近傍であるパラメータを測定するセンサからセンサデータを取得するステップと、(f)コンテナセキュリティデバイス内でセンサデータを処理するステップと、(g)アドホック・ネットワークを介してコンテナセキュリティデバイスから集成装置に無線信号を送信するステップと備え、無線信号は、センサデータを処理することによって得られる情報、およびセンサデータを処理したコンテナセキュリティデバイスを識別する情報を含み、方法はさらに(h)センサデータを処理することによって得られる情報、およびセンサデータを処理したコンテナセキュリティデバイスを識別する情報を含む信号を集成装置から送信するステップを備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の他の局面が以下に開示され、その範囲が請求される。
異なる図面でも同様の要素には同一の参照番号が付される図面を以下に参照する。
【0017】
発明の詳細な説明
図1は、保安を維持し、かつ運搬時の貨物コンテナを追跡するための公知の中央集権型システムを示す。各貨物コンテナ2(図1ではこのうちの1つしか示されていない)は、GPS受信機ならびにGSMおよび衛星通信用手段を備えるそれぞれのコンテナセキュリ
ティデバイス4を有する。貨物コンテナ2が航行中の船上にある場合、コンテナセキュリティデバイス4は衛星6を介してネットワークオペレーションセンター10と通信する(またはネットワークオペレーションセンター10に到達するまで1つの衛星から他の衛星に中継される)。貨物コンテナ2が陸上にあるか陸に近い場合、コンテナセキュリティデバイス4はグローバル・システム・フォー・モバイル(GSM)コミュニケーションズを介してネットワークオペレーションセンター10と通信する。コンテナセキュリティデバイス4にさまざまなセンサを含めることが公知である。周期的に(たとえば1日当たり6回)、コンテナセキュリティデバイス4は装置識別情報とともにセンサデータおよび自身のGPS位置を、衛星またはGSM通信を介してネットワークオペレーションセンター10に直接送る。コンテナセキュリティデバイス4は電池によって電力が供給される。
【0018】
本明細書中で開示される本発明の実施例に従って、分散型ネットワーク管理により、メッシュネットワーク化技術(mesh networking technology)を用いたネットワーク・セントリック・オペレーションズ(network centric operations)が可能となる。より具体的には、移動無線センサネットワークを用いて海上貨物コンテナの保安を提供する。1つのそのような無線センサネットワークが図2に示されており、これは、貨物コンテナ2の積み重ねを運んでいる船を示す。各貨物コンテナ2は、それぞれのメッシュネットワークノード12を形成するコンテナセキュリティデバイスを有する。メッシュネットワークノードは、船で運ばれ、かつ特定のコンテナに取付けられていない集成ノード14に自身のセンサデータを送る。集成ノードは、衛星およびGSM通信を介してネットワークオペレーションセンターと直接通信するための手段を有し、したがって船上で障害物のない位置に位置決めされなければならない。各メッシュネットワークノードは、衛星およびGSM通信を介してネットワークオペレーションセンターと直接通信しない。したがって、メッシュネットワークモードを形成する各装置には衛星およびGSM通信用手段を設ける必要がなく、各装置のコストを削減することができる。
【0019】
この発明の1つの実施例に従って、各メッシュネットワークノード12は「モート(mote)」と称される装置を備える。各「モート」は典型的に無線リンクを有する電池式コンピュータを備え、これにより、モートどうしが互いにデータを通信および交換することができ、かつアドホック・ネットワークに自己組織化することができ、つまりモートは最も効率的なネットワークをどのように形成するかを自身で考え出すことができる。同様に、モートは自身を再構成して動作不良のモートを補償することができ、すなわち、無線メッシュネットワークは自己修復する。無線ネットワークはマルチホッピングのサポートも行い、データが集成ノード14に到達するまで基地局の範囲外のモートがモートからモートへ情報を伝えることを許す。代表的なアドホック・ネットワークが図2の太線によって示され、各太線は、その線によって接続されるノード間のそれぞれの無線通信を表わす。12′が付されたノードは、集成ノード14と直接、すなわちホッピングせずに通信するモートを示す。
【0020】
各貨物コンテナ2には、そのコンテナを一意に識別する情報を格納する、独自の特別にプログラムされたモートが設けられる。コンテナの内容物を詳述した電子貨物積荷目録、輸送用積荷目録、ならびに取扱および警報ログが、電子データとしてモートのメモリに格納される。ハンドヘルドのノードタブレットを携帯している公認職員がモートと無線で通信することができる。ノードタブレットを用いて、各モートに対して、そのモートが取付けられているコンテナの内容物に関して照会することができる。
【0021】
各メッシュネットワークノードはさらに、光、温度、大気圧、湿度および他の環境要因などのパラメータを測定するための、ならびに/または光、動き、音もしくは振動を検出するための1つ以上のセンサを備える。これらのセンサは、上述のノードタブレットを用いる公認職員によって、またはネットワークオペレーションセンター(NOC)を介して
警備態勢にされ/警備解除され得る。メッシュネットワークノード12は、コンテナまたはその内容物の無許可の侵入または不正開封がセンサによって検出され得るような態様でコンテナ2に取付けられる。たとえば、コンテナドアを開けると、要所に配置されたコンテナセキュリティデバイスの光検出器、音検出器、加速度計および磁力計の出力に検出可能な変化が生じることになる。各メッシュネットワークノードごとのセンサ出力は、インターフェイスを介して関連のモートに通信される。センサデータはモートによって処理され(たとえば、センサ出力は、そのセンサ出力の受信日時を表わすデータで標識を付けられ得る)、センサデータを処理することによって得られる情報はモートのメモリに格納される。その後モートは、センサデータから得られる情報を直接、または図2の太線によって示されるような他のメッシュネットワークノード12を介するかのいずれかによって集成ノード14に送ることになる。代替的に、モートは、ノードタブレットを用いる公認職員によって照会され得る。モートを識別するデータ、およびそのモートが取付けられているコンテナの可能性のある不正開封を示すデータを含む各モートから得られるデータが、保安要員によって用いられて、港に到着する危険性の高いコンテナを識別することができる。
【0022】
コンテナが不正開封されたことを示す情報を含み得るデータを船上の複数の貨物コンテナからネットワークオペレーションセンターに送信するのに加え、船上の各無線メッシュネットワークは、全地球測位システム(GPS)を用いて船および/または船上コンテナの位置を示す情報を送り返すことができる。1つの実施例に従って、1つ以上のノードに、2つ以上の衛星からGPS位置無線信号を受信し、かつ次に三角測量を用いてそれらの受信信号の移動所要時間に部分的に基づいて自身の地球上の位置を判断するGPS受信機が設けられ得る。1つの実現例では、集成ノードは、船のGPS位置を判断するためのGPS受信機を有する。代替的に、1つ以上のメッシュネットワークノードにGPS受信機が設けられ得、これは自身のGPS位置データを集成ノードに周期的に送ることになり、これはその後その情報を衛星またはGSM通信を介してネットワークオペレーションセンターに中継することになる。集成ノードは、GPS受信機を有するノードを利用して、GPSが装備されていないノードからのメッセージを増補し、状況認識を増大させることができる。
【0023】
本発明の1つの実施例に従って、各メッシュネットワークノード12は、それぞれの貨物コンテナに取付けられるコンテナセキュリティデバイスを備える一方、集成ノード14は、コンテナセキュリティデバイスの無線ネットワークと通信インフラストラクチャ(たとえば衛星またはGSM)との間のインターフェイスとして作用し、かつデータサービスを提供もする無線インテリジェントスイッチを備える。各コンテナセキュリティデバイスは、1つ以上のセンサボードが接続されたプロセッサ/無線ボード(すなわちモート)を備える。GPSモジュールおよびセンサはセンサボードに装着され、インターフェイスを介してプロセッサ/無線ボードと通信する。
【0024】
本発明の1つの実施例に従ったメッシュネットワークノード(すなわちコンテナセキュリティデバイス)12′の、および集成ノード(すなわち無線インテリジェントスイッチ)14のそれぞれの主要な構成要素が図3に示される。コンテナセキュリティデバイス12はコンテナセキュリティデバイス12′を構成するのと同じまたは同様の構成要素を有し、コンテナセキュリティデバイス12′を介して集成ノードと間接的に通信する。各コンテナセキュリティデバイスは、1つ以上のセンサ18およびGPS受信機26が接続されたモート(すなわち無線/プロセッサボード)44を備える。上述のように、センサおよびGPS受信機は、プロセッサ/無線ボードに結合された1つ以上のセンサボードに装着され得、したがって積み重ねを形成している。
【0025】
プロセッサ/無線ボード44は、センサ18からデータを受信し、処理し、格納するマ
イクロプロセッサ16を備える。センサ出力は、有線接続を介してマイクロプロセッサ16のデータポートで受信される。マイクロプロセッサ16は、処理済センサデータをロガーメモリ24に格納してセンサ事象のログを作成し、このうちのいくつかは、コンテナが不正開封されたことまたはコンテナ保安が他の方法で破られたことを示し得るか示唆し得る。また、図3に示される実施例に従って、GPS受信機26はマイクロプロセッサ16にGPS位置データを送る。そのGPS位置データもロガーメモリ24に格納される。
【0026】
一定の間隔をおいて、またはクエリに応答して、または警報状態を表わすセンサデータの取得に応答して、各無線コンテナセキュリティデバイスは、センサデータを処理することから得られる情報およびGPS位置データを、範囲内に配置された1つ以上の無線受信装置に送信する。無線受信装置は、他のコンテナセキュリティデバイスまたは集成装置であり得る。図3は、コンテナセキュリティデバイス12が他のコンテナ受信装置12′を介して集成装置14と無線で通信している場合を示す。装置12′と14との間の無線通信は図3の線46によって示される。図3が示す状況では、コンテナセキュリティデバイス12が範囲外にあるか、または集成装置14と無線で通信するのを妨害されており、この場合、コンテナセキュリティデバイス12はコンテナセキュリティデバイス12′と無線で通信することになり、コンテナセキュリティデバイス12′は次に集成装置14に取得データを中継する。取得データは、取得コンテナセキュリティデバイスから1つ以上の他のコンテナセキュリティデバイスを介して集成装置に送られ得、他のコンテナセキュリティデバイスの各々は、チェーン内の次の装置に取得データを中継する。コンテナセキュリティデバイス12′のマイクロプロセッサ16は、これもプロセッサ/無線ボード44に装着される双方向帯域無線送受信機20および無線アンテナ22によって、集成装置および範囲内の他のコンテナセキュリティデバイスと通信する。
【0027】
センサボードに装着されるセンサ18の種類は、コンテナ内部に格納される貨物の価値に依存して、または他の要因に依存して異なり得る。低価値の貨物については単純なセンサボードが使用され得る。医薬品などの高価値の貨物については、より高額なセンサボードが使用され得る。
【0028】
各コンテナセキュリティデバイスは電池(図3には図示せず)によって電力が供給される。モート電池は充電不可能なため、電力消費を最小限に抑えることが不可欠である。従来のモートでは、電池もプロセッサ/無線ボードに装着される。
【0029】
典型的な市販のモートのマイクロプロセッサは、TinyOSベースのコードを実行する。TinyOSは、電力消費および無線ネットワーク化を扱う事象駆動型のオペレーティングシステムである。電池残量を温存するため、TinyOSオペレーティングシステムは大部分の時間モートを低電力の「スリープ」モードに維持する。命令が実行されるのは、センサによるデータの取得または新たなメッセージの到着などの事象が発生したときのみである。モート内での使用に好適な典型的なマイクロコントローラは、活動時にはわずか1ミリワットの電力で、または待機モードでは1〜10マイクロワットで動作することができる。
【0030】
各貨物コンテナに取付けられるモートは、データパケットがインターネット上のルータを通って進むのと同様の態様で、自身のデータをノードからノードへ伝えるようにプログラムされる。このマルチホップ方策により、無線機による消費電力が最小限に抑えられる。TinyOSオペレーティングシステムはまた、モートがいくつかのデータをローカルに処理し、対象の事象が検出されたときにのみその処理の結果を通信し、また自身の近隣を見つけ出してそれらのモートと協調してアルゴリズムを実行し、データをネットワーク内でどのように経路設定するか決定することを可能にする。
【0031】
図3に示される実施例に従って、集成装置14は、無線送受信機30と、衛星通信モジ
ュール36と、携帯電話またはGSMモジュール38とを制御するプロセッサ28を備える。集成装置14は、船に積載された貨物コンテナに取付けられるモートと通信インフラストラクチャとの間のインターフェイスとして作用するようにプログラムされる。集成装置14は、送受信機30に結合された無線アンテナ32を介してコンテナセキュリティデバイスからデータを受信し、GPS受信機40からGPS位置データを受信する。プロセッサ28は、メモリ34にデータを格納し、メモリ34からデータを検索する。
【0032】
集成装置は、コンテナセキュリティデバイスからの処理済センサデータから得られるデータを受信し、(たとえば、すべてのモートが存在して説明されていることを確認するために)無線メッシュネットワークにクエリを送ることができる。センサデータを処理することから得られるすべての情報は、そのデータが得られた貨物コンテナを識別するコードで標識を付けられる。プロセッサ28は個々のコンテナセキュリティデバイスからのデータを処理し、たとえば無害なまたは冗長なデータを取り除き、複数のセンサからの結果を分析して警報事情を確認する。たとえば、コンテナセキュリティデバイスのセンサの組は、光および音検出器、加速度計ならびに磁力計を含み得、これらの出力のすべては分析されて、特定のコンテナの現状を判断し得る。また、集成装置は、近隣のコンテナのコンテナセキュリティデバイスに照会して侵入を確認することができる。プロセッサ28は処理済データをメモリ34に格納する。集成装置がローカルなデータ格納を提供するため、貨物コンテナ上の各モートのメモリ容量は小さくてよい。プロセッサ28は集成された処理済センサデータ(およびGSP位置データ)を、衛星通信モデム36を介して衛星に送るか、携帯電話(すなわちGSM通信)モデム38を介して携帯電話タワーに送る。
【0033】
本発明の1つの実施例が船上で積み重ねられた複数の貨物コンテナの文脈で開示されたが、当業者は、本発明が陸上の、またはドックに入れられた貨物コンテナにも適用されることを認識するであろう。陸上の、またはドックに入れられたコンテナは、これも陸上またはドック内に配置される集成装置と無線で通信することになる。
【0034】
貨物コンテナが陸上にあるにせよ、ドックに入れられているにせよ、または船上にあるにせよ、それらの貨物コンテナの保安を監視する方法はある共通のステップを有する。無線集成装置は、貨物コンテナが積み重ねられることになる場所の近傍に配置され、かつ衛星またはセルタワーとの通信が妨害されない支持構造上に配置または装着されなければならない。それぞれの無線コンテナセキュリティデバイスは各貨物コンテナに取付けられる。各コンテナセキュリティデバイスは、マイクロプロセッサと、コンテナまたはその内容物の不正開封を示し得るそれぞれの貨物コンテナにおける事象または状態を検出するためのセンサとを有する。センサはハンドヘルドのノードタブレットを用いる公認職員によって、またはコンテナセキュリティデバイスと無線で通信するNOCを介して警備態勢にされ/警備解消され得る。
【0035】
コンテナセキュリティデバイスのプロセッサは、コンテナセキュリティデバイスのすべてではないがいくつかが無線集成装置の無線通信範囲内にあるときに集成装置と無線で通信するためのアドホック・ネットワークを形成するように、プログラムされる。各マイクロプロセッサはさらに、コンテナセキュリティデバイスの近傍であるパラメータを測定するセンサから取得されたセンサデータを処理するようにプログラムされる。一定の間隔をおいて、検出された事象に応答して、またはクエリに答えて、各コンテナセキュリティデバイスは、センサデータを処理することから得られる情報、およびセンサデータを処理したコンテナセキュリティデバイスを識別する情報を含む無線信号を送信する。集成装置の範囲内にあり、かつ集成装置から妨害されていないコンテナセキュリティデバイスは無線信号を送信し、これは集成装置によって直接受信される。集成装置の範囲外にあるか、または集成装置から妨害されているかのいずれかであるコンテナセキュリティデバイスは近隣のコンテナセキュリティデバイスに無線信号を送信し、近隣のコンテナセキュリティデ
バイスはそれらの通信を集成装置に直接中継するか、または無線ネットワークを形成するすべてのコンテナセキュリティデバイスからの情報を集成装置が受信するまでさらに他のコンテナセキュリティデバイスに中継し続ける。集成装置は無害なまたは冗長なデータを除去し、除去済データを通信インフラストラクチャ(すなわち衛星またはGSM通信)に送信する。すべての無線メッシュネットワークからのすべての取得データの最終的な行先は、ネットワークオペレーションセンターである。
【0036】
ある実施例を参照して本発明が説明されたが、本発明の範囲から逸脱することなくさまざまな変更がなされ得、本発明の部材の代わりに均等物が用いられ得ることが当業者によって理解されるであろう。また、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく多くの修正を加えて特定の状況を本発明の教示内容に適合させてもよい。したがって、本発明は、この発明を実行するために考えられるベストモードとして開示される特定の実施例に限定されのではなく、本発明は、添付の請求項の範囲に収まるすべての実施例を含み得ることが意図される。
【0037】
あるステップが実行されるべき順序を記載したいずれの方法クレーム内でも明示的な文言がない場合、その方法クレームは、列挙された順序でステップが実行されることを要件としていると解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】地球規模の海上貨物コンテナ保安システムを表わすブロック図である。
【図2】この発明の1つの実施例に従ったコンテナ船上の無線メッシュネットワークを示す図である。
【図3】この発明の1つの実施例に従ったコンテナセキュリティデバイスおよび無線メッシュネットワークのゲートウェイの構成要素を示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物コンテナ保安システムであって、
第1の貨物コンテナに取付けられる第1のコンテナセキュリティデバイス、および第2の貨物コンテナに取付けられる第2のコンテナセキュリティデバイスを備える無線センサネットワークを備え、前記第1および第2のコンテナセキュリティデバイスは、互いに間欠的に無線通信しており、前記システムはさらに
前記第1のコンテナセキュリティデバイスおよび通信インフラストラクチャと無線で間欠的に通信する集成装置を備え、前記集成装置は、前記無線センサネットワークと前記通信インフラストラクチャとの間のデータ転送のための無線ブリッジとして作用し、
各コンテナセキュリティデバイスは、プロセッサ、無線機、電池、メモリ、および少なくとも1つのセンサを備え、前記第2のコンテナセキュリティデバイスからのデータは、前記第1のコンテナセキュリティデバイスおよび前記集成装置を介して前記通信インフラストラクチャに送られ得る、システム。
【請求項2】
前記第1および第2の貨物コンテナならびに前記集成装置は船上にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記集成装置および/または前記第1のコンテナセキュリティデバイスは、アンテナおよび前記アンテナを介して受信されるGPS位置信号を処理するためのモジュールを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
各コンテナセキュリティデバイスは、光、温度、大気圧、音および動きのうち1つ以上についてのそれぞれの検出器を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
各コンテナセキュリティデバイスは、電子貨物積荷目録を自身のメモリに格納している、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
各コンテナセキュリティデバイスは、モード変更事象がないときは低電力のスリープモードで動作する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記集成装置は衛星通信用モジュールを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記集成装置はGSM通信用モジュールを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
貨物コンテナ保安システムであって、
複数のコンテナセキュリティデバイスを備え、各コンテナセキュリティデバイスはそれぞれの貨物コンテナに取付けられており、各コンテナセキュリティデバイスは、プロセッサ、無線機、電池、メモリ、および少なくとも1つのセンサを備え、前記システムはさらに
前記コンテナセキュリティデバイスのいくつかおよび通信インフラストラクチャと無線で間欠的に通信する集成装置を備え、前記集成装置は、前記コンテナセキュリティデバイスと前記通信インフラストラクチャとの間のデータ転送のための無線ブリッジとして作用し、
前記プロセッサはアドホック無線ネットワークを形成するようにプログラムされ、これにより、いくつかの前記コンテナセキュリティデバイスは前記集成装置と直接通信し、他の前記コンテナセキュリティデバイスは、前記集成装置と直接通信する前記コンテナセキュリティデバイスを介して間接的にのみ前記集成装置と通信する、システム。
【請求項10】
第1および第2の貨物コンテナならびに前記集成装置は船上にある、請求項9に記載の
システム。
【請求項11】
前記集成装置および/または前記コンテナセキュリティデバイスの少なくとも1つは、アンテナおよび前記アンテナを介して受信されるGPS位置信号を処理するためのモジュールを備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
各コンテナセキュリティデバイスは、光、温度、大気圧、音および動きのうち1つ以上についてのそれぞれの検出器を備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
各コンテナセキュリティデバイスは、電子貨物積荷目録を自身のメモリに格納している、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
各コンテナセキュリティデバイスは、モード変更事象がないときは低電力のスリープモードで動作する、請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
前記集成装置は衛星通信用モジュールを備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
前記集成装置はGSM通信用モジュールを備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項17】
貨物コンテナの保安を監視するための方法であって、
支持構造上に無線集成装置を設置するステップと、
第1の貨物コンテナに第1のコンテナセキュリティデバイスを取付けるステップと、
第2の貨物コンテナに第2のコンテナセキュリティデバイスを取付けるステップと、
前記第1のコンテナセキュリティデバイスを用いて前記第1の貨物コンテナにおける事象または状態を検出するステップと、
前記第1のコンテナセキュリティデバイスから前記第2のコンテナセキュリティデバイスに第1の無線信号を送信するステップとを備え、前記第1の無線信号は、前記第1の貨物コンテナにおける前記事象または状態の発生を示す情報を含み、前記方法はさらに
前記第2のコンテナセキュリティデバイスから前記集成装置に第2の無線信号を送信するステップを備え、前記第2の無線信号は、前記第1の貨物コンテナにおける前記事象または状態の発生を示す情報を含み、前記方法はさらに
前記集成装置から通信インフラストラクチャに信号を送信するステップを備え、前記集成装置からの前記信号は、前記第1の貨物コンテナにおける前記事象または状態の発生を示す情報を含む、方法。
【請求項18】
前記集成装置は、前記第2の無線信号を受信し、前記第1の無線信号を受信しない、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2のコンテナセキュリティデバイスを用いて前記第2の貨物コンテナにおける事象または状態を検出するステップと、
前記第2のコンテナセキュリティデバイスから前記集成装置に第3の無線信号を送信するステップとを備え、前記第3の無線信号は、前記第2の貨物コンテナにおける前記事象または状態の発生を示す情報を含み、
前記集成装置からの前記信号は、前記第2の貨物コンテナにおける前記事象または状態の発生を示す情報も含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
複数の貨物コンテナの保安を監視するための方法であって、
(a) 複数のコンテナセキュリティデバイスのすべてではないがいくつかが無線集成装置の無線通信範囲内にあるときに前記無線集成装置と無線で通信するためのアドホック・ネットワークを形成するように、前記複数のコンテナセキュリティデバイスの各々をプ
ログラムするステップと、
(b) 複数の貨物コンテナのそれぞれに前記コンテナセキュリティデバイスの各々を取付けるステップと、
(c) 前記複数の貨物コンテナを船上の、ドックに入れられている、または陸上の複数の積み重ねに配置するステップと、
(d) 前記無線集成装置が前記複数のコンテナセキュリティデバイスのうちのいくつかの無線通信範囲内にあるような位置に前記無線集成装置を設置するステップと、
(e) 前記コンテナセキュリティデバイスの近傍であるパラメータを測定するセンサからセンサデータを取得するステップと、
(f) 前記コンテナセキュリティデバイス内で前記センサデータを処理するステップと、
(g) 前記アドホック・ネットワークを介して前記コンテナセキュリティデバイスから前記集成装置に無線信号を送信するステップと備え、前記無線信号は、前記センサデータを処理することによって得られる情報、および前記センサデータを処理したコンテナセキュリティデバイスを識別する情報を含み、前記方法はさらに
(h) 前記センサデータを処理することによって得られる情報、および前記センサデータを処理したコンテナセキュリティデバイスを識別する情報を含む信号を前記集成装置から送信するステップを備える、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−524345(P2009−524345A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551254(P2008−551254)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/043568
【国際公開番号】WO2008/048287
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】