説明

農作業支援機器のための農業用資材と該農業用資材を用いた農地、並びに該農地における農作業支援機器の進行方向認識方法

【課題】各種農作業を支援する機器が、農作業に従事する人に何ら負担を掛けることなく、農地に作られた畝に添って正確に自律走行し、生育した作物の収穫作業支援や農薬散布など、各種農作業を確実に支援できるようにする、農作業支援機器のための農業用資材と該農業用資材を用いた農地、並びに該農地における農作業支援機器の進行方向認識方法を提供することが課題である。
【解決手段】農地に作られた畝を覆うマルチフィルムの、埋設位置内側の長手方向に畝位置認識用の線を設け、農作業支援機器がその畝位置認識用の線を認識することで農地に作られた畝に添って正確に自律走行できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業支援機器のための農業用資材と該農業用資材を用いた農地、並びに該農地における農作業支援機器の進行方向認識方法に係り、特に、農地に作られた畝に添って自律走行し、生育した作物の収穫作業支援や農薬散布など、各種農作業を支援できるようにした機器における自律走行を確実に行えるようにした、農作業支援機器のための農業用資材と該農業用資材を用いた農地、並びに該農地における農作業支援機器の進行方向認識方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農業人口の減少と農作業従事者の高齢化により、重労働である農作業を種々の角度から支援する機器の研究が行われ、例えば農地に作られた畝に添って自律走行しながら生育した作物の収穫作業を支援したり、農薬散布などを行うビーグルが開発されている。
【0003】
このような農作業を支援する機器においては、例えば農地に作られ、場合によっては曲線を描く畝に添って正確に自律走行することが求められる。すなわち、農地におけるどこからどこまでが畝で走行路はどこに存在するか、といったことを正確に把握できないと、せっかく生育した作物を踏み倒したり、農地以外の場所に進んでしまうといった問題が生じる。
【0004】
そのため、地磁気センサやジャイロスコープを利用して自分の進む方向を確認し、さらに、農地の作物が緑色、通路が土むき出しの茶色であることを利用して、進むべき道を認識する技術が例えば非特許文献1に紹介されている。
【0005】
ここに示された技術では、画像中の緑色成分における点(x,y)を下記変換式(1)によって曲線(u,v)に変換し、これを全ての点に対しておこなって、ある本数以上交わる点を(u0,v0)としてその点に対して逆変換をかけることで、x−y平面での下記直線式(2)を求めるHough変換を施し、作物の列を直線抽出したり、色の分布の分散値を利用して領域分割を施すものである。
【0006】
v=xcos(u)+yxsin(u) (0≦u≦π) ………(1)
v0=xcos(u0)+yxsin(u0) ………………………(2)
【0007】
また特許文献1には、田植え機などの農業用車両が水田などにおいて正確に目標に向かって自律直進できるよう、地磁気を用いた方位センサと、車両速度を計測する車両速度計と、進行方向にずれが生じたときにそれを補正するためのトリム操作スイッチと、トリム操作のための目標方位の更新角度ψ1、ψ2を演算出力する更新目標方位角演算回路と、自律直進車両の目標方位角ΨTを設定する目標方位角設定回路とを備え、予めマニュアル操作によって走行路をティーチングさせるようにした自律直進制御装置が示されている。
【0008】
また、特許文献2には、農作業支援機器ではないが、移動ロボットの進行方向に沿った経路中に、光の反射特性の異なる2種類以上の光反射物体を所定の順序で並べたマーカーを設置し、移動ロボット上に搭載したレーザ源からマーカーへとレーザ光を回転照射し、反射光検出装置によってマーカーを検出して、移動ロボットを誘導する移動ロボットの誘導方法と誘導システムが示されている。
【0009】
【非特許文献1】近藤他著「農業ロボット(I)基礎と理論」2004年、コロナ社
【特許文献1】特開2004−86410号公報
【特許文献2】特開平9−128041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、非特許文献1に紹介されたシステムでは、作物の生育状態や外界環境が多様に変化することで、単純に作物が緑色、通路が土むき出しの茶色と認識できない場合もあって、Hough変換や領域分割法でも一義的に直線抽出するのが難しい場合があるという問題がある。
【0011】
また、特許文献1に示された自律直進制御装置は、予め走行路をティーチングさせることが必要であって、畝の状況が変わればその都度ティーチングが必要である。同様に特許文献2に示された移動ロボットの誘導方法と誘導システムも、経路中に光の反射特性の異なる2種類以上の光反射物体を所定の順序で並べたマーカーを設置する必要があって、農地にこのようなマーカーを設置することは農作業に従事する人に負担を掛けることになり、非常に困難である。
【0012】
そのため本発明においては、各種農作業を支援する機器が、農作業に従事する人に何ら負担を掛けることなく、農地に作られた畝に添って正確に自律走行し、生育した作物の収穫作業支援や農薬散布など、各種農作業を確実に支援できるようにする、農作業支援機器のための農業用資材と該農業用資材を用いた農地、並びに該農地における農作業支援機器の進行方向認識方法を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため本発明における農作業支援機器のための農業用資材は、
農地に作られた畝を覆うマルチフィルムで構成された農作業支援機器のための農業用資材であって、
前記マルチフィルムにおける長手方向に、前記農作業支援機器が認識するための畝位置認識用線を設けたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明における農作業支援機器のための農業用資材を用いた農地は、
農作業支援機器が進行方向を認識するための農業用資材を敷設した農地であって、
前記農業用資材は農地への埋設位置内側の長手方向に、前記農作業支援機器が認識するための畝位置認識用線を設けた農作業用マルチフィルムであり、該マルチフィルムで前記農地に作られた畝を覆い、前記農作業支援機器が前記畝位置認識用線を認識して畝と畝との間を進行できるように構成されていることを特徴とする。
【0015】
そして、本発明における農作業支援機器のための農業用資材を用いた農地における農作業支援機器の進行方向認識方法は、
進行方向を撮像する撮像装置を有し、農地に設けられた畝と畝の間を進行する農作業支援機器のための農業用資材を用いた農地における農作業支援機器の進行方向認識方法であって、
前記畝に、農地への埋設位置内側の長手方向に前記農作業支援機器が認識するための畝位置認識用線を設けた農作業用マルチフィルムを被せ、前記農作業支援機器に設けた撮像装置で撮像した画像から前記畝位置認識用線を認識し、該認識した畝位置認識用線の間を進行することを特徴とする。
【0016】
このように、雑草の抑制や畝の保温等のために農業で一般的に用いられているマルチフィルムを用い、農地への埋設位置内側の長手方向に、畝位置認識用の線を設けて農作業支援機器がその畝位置認識用の線を認識して進めるようにすることで、生育した作物の収穫作業支援や農薬散布などを行うビーグルなどの農作業支援機器は、正確に畝と畝の間を進むことができる。
【0017】
また、前記畝位置認識用線を赤色または黄色、若しくは黄色と黒色で構成することで、緑色では作物の色に紛れて認識がうまくできないことがあるのを防ぐことができ、農作業支援機器がより正確に畝と畝の間を進むことができる。
【0018】
そして、前記畝位置認識用線は、前記マルチフィルムの両縁側に設けることで、より農作業支援機器の進行方向認識が容易になる。
【0019】
さらに、前記進行方向の認識は、前記撮像装置で撮像した隣接する畝を覆う前記農作業用マルチフィルムに設けられた相対する前記畝位置認識用線を認識し、該認識した前記畝位置認識用線の中間を前記農業用支援機器の進行方向と認識しておこなうことで、隣接する畝の間の農業用支援機器の進行方向を容易に見いだすことができる。
【0020】
また、前記マルチフィルムにおける作物の播種部位と播種部位の間の短手方向に、前記畝位置認識用線と同じ色の線を設け、前記撮像装置で撮像した画像から前記播種部位確認用線を認識して前記農業用支援機器の位置を認識することで、農作業支援機器は播種位置の把握や移動距離の把握も可能となり、さらに、前記マルチフィルムに設けられた畝位置認識用線上または近傍における作物の播種部位に対応した位置に、RFID(Redio Frequency Identification)素子を配し、該RFID素子からの信号により、前記農業用支援機器の位置を認識することで、播種位置の把握や移動距離の把握の上に、RFID素子に作物毎の情報を蓄え、作物の生育状況や病害虫の影響などを個別に管理することも可能となり、種々の用途に用いることができる農作業支援機器のための農業用資材を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上記載のごとく本発明によれば、各種農作業を支援できるようにした機器が、農地に作られた畝に添って正確に自律走行することができ、生育した作物の収穫作業支援や農薬散布など、各種農作業を確実におこなえるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例1】
【0023】
最初に本発明の概要を簡単に説明すると、本発明においては、農地の畝に生える雑草の生育の抑制や、畝の保温等のために農業で一般的に用いられているマルチフィルムの、農地への埋設位置内側の長手方向に、赤色または黄色、若しくは黄色と黒色で構成した畝位置認識用線を設け、生育した作物の収穫作業支援や農薬散布などを行うビーグルなどの農作業支援機器が、その畝位置認識用の線を撮像装置で撮像した画像から認識することで、正確に畝と畝の間を進むことができるようにしたものである。
【0024】
すなわち現在の農業では、農地の畝に生える雑草の生育の抑制や畝の保温等のために、畝における山部を覆う、図1(A)に示したような播種用の穴11が設けられたマルチフィルム10や、図1(B)に示したように播種用の穴を持たないマルチフィルム20が用いられているが、このマルチフィルム10や20の農地への埋設位置内側の長手方向に、赤色または黄色、若しくは黄色と黒色で構成した畝位置認識用線12、22を設け、生育した作物の収穫作業支援や農薬散布などを行うビーグルなどの農作業支援機器が、その畝位置認識用の線を認識して畝と畝の間を正確に進むことができるようにしたものである。
【0025】
また本発明においては、作物の収穫作業支援や農薬散布などを行うビーグルなどの農作業支援機器が、単に畝と畝の間を正確に進むだけでなく、これら図1(A)、(B)に13、23で示したように、マルチフィルム10、20における作物の播種部位11と播種部位11(図1(B)では仮想播種位置となる)の間の短手方向に、前記畝位置認識用線と同じ色の線を設け、その短手方向の線を検出して農作業支援機器が播種位置を把握したり、移動距離の把握も行えるようにしている。なお、この短手方向の線は、両縁近傍に設けた畝位置認識用線をつなぐようにして設けた場合を示したが、途中が切れていても構わない。
【0026】
このように農業で一般的に用いられているマルチフィルム10、20を構成し、また、このようなマルチフィルム10、20を用いて農地を構成して農作業支援機器の進行方向認識をおこなうことで、農業に従事する人にはなんら負担を掛けることなく、生育した作物の収穫作業支援や農薬散布などを行うビーグルなどの農作業支援機器は、正確に畝と畝の間を進むことができる。また、この農作業支援機器が短手方向の線13、23を認識することで、作物の播種位置を把握したり移動距離の把握も行うことができる。
【0027】
また、この畝位置認識用の線の色であるが、一般的な農業用のマルチフィルムは、畝の温度や雑草の生育抑制、アブラムシ除けなどの用途に合わせ、透明、黒色、緑色、銀色など、種々の色のものが用意されている。例えば透明のフィルムの場合、地面温度の上昇が高くて作物の育成を早め、黒色フィルムの場合、地面温度の上昇を抑えて雑草の育成を抑制する効果がある。緑色のフィルムは、太陽光線を過不足無くなく取り入れることができ、シルバーのフィルムは耐候性、耐熱性に優れている。
【0028】
そのため本発明者らは、これら種々の色のマルチフィルムに対し、どのような色で畝位置認識用の線を構成したら最も効果的かを実験した。まず、緑単独では、作物の色に紛れて認識がうまくできない可能性があるのは容易に理解できる。また、一般的にロボットに対して作業経路を示す手段として、通路に白色線あるいは黒色線を入れることが多いが、マルチフィルムの場合、白色線や黒色線はマルチフィルムに光が反射することで黒いフィルムが白く光ったり、透明のフィルムが黒く見えることがあり、二値化が難しいことが分かった。
【0029】
一方、赤色の線や黄色の線、或いは黄色と黒色で縞模様とした場合、赤色の線はRGBに分解したとき、R成分はマルチフィルムとは異なる明度となって明確に認識でき、G成分とB成分はマルチフィルムとの明度差が小さくて識別が困難であった。また、黄色と黒色を縞模様とした場合、RとGの成分では黄色が明確に認識でき、Bはマルチフィルムとの明度差が小さくて識別が困難であった。
【0030】
それに対し、同じように赤色の線や黄色の線、或いは黄色と黒色を縞模様の線として形成した場合でも、HSV方式では、H(色相)、S(彩度)、V(明度)のいずれもマルチフィルムとの明度差が小さくて識別が困難であった。そのため、畝位置認識用の線としては、赤色の線や黄色の線、或いは黄色と黒色で縞模様とした線を用いることが好適であることが分かった。
【0031】
図2は、この図1(A)、(B)に示したようなマルチフィルム10または20を、農作物14が植えられた畝15に被せた農地を、農作業支援のためのビーグル16が移動する場合の概略を示した図であり、このビーグル16は、例えば駕籠状の作物を入れる部位を有すると共に前方を監視するビデオカメラ17を有し、その撮像画像からマルチフィルム10に付された畝位置認識用の線12や、短手方向の線13を認識して、畝15と畝15の間の農作業支援機器が進む道18を正確に進行するよう構成されている。
【0032】
そして、畝位置認識用の線12を認識するためのアルゴリズムを示したのが図3であり、ビデオカメラ17による農作業支援機器が進む道18と畝位置認識用の線12の撮像画像例を図4(A)に示した。この図4(A)において12Vはビデオカメラ17が撮像した畝位置認識用の線、18Vは同じく農作業支援機器が進む道であり、30は農作業支援のためのビーグル16の進行方向、31から36は、両側にある畝位置認識用の線12Vの中間位置である。
【0033】
この例におけるビデオカメラ17の撮像画素数を例えば640×480とし、ステップS10で処理がスタートすると、ステップS11で図4(A)に示したようなカラー画像が取得される。そして次のステップS12でR(赤色)成分が抽出されて白画素とされ、それがステップS13で2値化される。この場合の閾値は、例えば245とする。
【0034】
そして次のステップS14でその撮像画像が複数の領域に分割され、それぞれの領域がラベリングされてステップS15でラベリングされた図形の画素数から、赤色線図形が抽出される。この抽出された赤色線と赤色線の間の軌跡が、図4(A)に示した進行方向30となるわけであるが、その軌跡検出の詳細アルゴリズムが図3(B)である。
【0035】
この図3(B)におけるステップS20で軌跡検出がスタートすると、最初に図4(A)における左側の畝位置認識用の線12Vにおける赤色画素(現在は前記ステップS12でR(赤色)成分が白画素とされている)検出が行われる。すなわちまずステップS21で、jが撮像画像の垂直方向最下端座標を示す0と置かれる。そしてステップS22で座標(x,y)が撮像画像の中央(320,j)とおかれ、ステップS23で座標(x,y)の画素が白(すなわち赤色成分)であるか否かが判断される。そして白画素の場合はステップS25へ、白画素でない場合はステップS24に進んでxから1が減じられ(すなわち現在の画素の左側画素が判定対象となる)、同様な判定が白画素が見つかるまで続けられる。
【0036】
そして白画素が見つかると、ステップS25に行って、図4(A)における左側の畝位置認識用の線12Vにおける右側の点(p1x,j)が決定され、今度は図4(A)における右側の畝位置認識用の線12Vにおける赤色(実際は前記したように白画素である)画素検出が行われる。これは左側の場合と同様、ステップS25で座標(x,y)が撮像画像の中央(320,j)とおかれ、ステップS27で座標(x,y)の画素が白(すなわち赤色成分)であるか否かが判断される。そして白画素の場合はステップS29へ、白画素でない場合はステップS28に進んでxに1が加えられ(すなわち現在の画素の右側画素が判定対象となる)、同様な判定が白画素が見つかるまで続けられる。
【0037】
そして白画素が見つかると、ステップS29に行って図4(A)における右側の畝位置認識用の線12Vにおける左側の点(p2x,j)が決定され、次のステップS30で、高さyでの赤色線間の中点(g[j],y)=((p1x+p2x)/2,j)が決定される。これは、図4(A)に36で示した位置となる。
【0038】
こうして畝位置認識用の線12Vにおける最下部の中央点が算出されると、処理は次のステップS31に進み、jが480を超えたかどうかが判断され、超えている場合はステップS33へ、超えていない場合はステップS32に進んでjがj+10とされ、ステップS22に進んで以上説明してきた処理が繰り返されて、図4(A)における35、34、33、32、31の中央位置がそれぞれ算出される。
【0039】
そしてjが480を超え、ステップS33へ進むと全ての(g[j],y)(0≦j<480)、すなわち算出した31〜36の点を最小二乗法で結び、ステップS34で図4(A)に30で示した方向を農作業支援のためのビーグル16の進行方向として決定する。そしてステップS35から、図3(A)のステップS16に戻り、ステップS17で終了する。
【0040】
このようにすることにより、農作業支援のためのビーグル16は、図4(A)に30で示したような畝位置認識用の線12Vの中間を正確に進んでいくことが可能となる。
【0041】
また、図5は、前記図1のマルチフィルム10、20の播種部位11と播種部位11の間の短手方向に設けられた、前記畝位置認識用線と同じ色の線13を検出するためのアルゴリズムであり、図4(B)は、ビデオカメラ17により農作業支援機器が進む道18と畝位置認識用の線12、短手方向の線13を撮像した画像を示したもので、それぞれの線は畝位置認識用の線12V、短手方向の線13Vで示してある。また、37、38は両側にある畝位置認識用の線12Vの中間位置である。
【0042】
まずステップS40で処理がスタートすると、ステップS41で図4(B)に示したようなカラー画像が取得される。そして次のステップS42でR(赤色)成分が抽出されて白画素とされ、それがステップS43で2値化される。この場合の閾値は、前記と同様例えば245とする。
【0043】
そして次のステップS44でその撮像画像が複数の領域に分割され、それぞれの領域がラベリングされて、ステップS45でラベリングされた図形の画素数から、赤色線図形が抽出される。そしてその次のステップS46で、この抽出された赤色線と赤色線の間の軌跡が抽出され、ステップS47でビーグルに最も近い領域に横線(短手方向の線)がないかが検索される。
【0044】
この横線検出のアルゴリズムが図5(B)であり、図中ステップS51からステップS53までは、図4(B)に示した撮像画像における、右側の畝位置認識用線12Vに付随した短手方向の線13Vの認識フローであり、ステップS54からステップS56までは、同じく左側の畝位置認識用線12Vに付随した短手方向の線13Vの認識フローである。
【0045】
まず、ステップS50で右側の畝位置認識用線12Vに付随した短手方向の線13Vの認識処理がスタートすると、ステップS51で、撮像画像の一番下右側の赤色線検出ポイント左下に、高さ例えば60ピクセル、幅を画像右端までとした注目領域ROI1を生成する。そしてステップS52で、この注目領域ROI1内のみで輪郭抽出処理が行われ、畝位置認識用線12Vと、この畝位置認識用線12Vに付随した、図上点線で示した短手方向の線13Vそれぞれの輪郭が抽出される。
【0046】
そして、ステップS53で、特定画素の周囲にある独立した8近傍画素との連結状態を8近傍連結数に基づいて調べ、抽出した輪郭における分岐点を検索する。
【0047】
また同様に、ステップS54で左側の畝位置認識用線12Vに付随した短手方向の線13Vの認識処理をスタートさせ、撮像画像の一番下左側の赤色線検出ポイント右下に、高さ例えば60ピクセル、幅を画像右端までとした注目領域ROI2を生成する。そしてステップS55で、この注目領域ROI2内のみで輪郭抽出処理が行われ、畝位置認識用線12Vと、この畝位置認識用線12Vに付随した、図上点線で示した短手方向の線13Vそれぞれの輪郭が抽出される。
【0048】
そして、ステップS56で、特定画素の周囲にある独立した8近傍画素との連結状態を8近傍連結数に基づいて調べ、抽出した輪郭における分岐点を検索する。
【0049】
そしてステップS57で分岐点があったかどうかが判定され、無い場合はステップS59に行き、有った場合はステップS58に進んで横線の通過カウントをインクリメントし、ステップS59に行って図5(A)におけるステップS48に戻り、ステップS48で終了する。
【0050】
このようにすることにより、前記図1に示したマルチフィルム10、20の播種部位11と播種部位11の間の短手方向に設けられた、前記畝位置認識用線と同じ色の線13を検出することができ、前記したように、農作業支援機器としてのビーグル16は播種位置11の把握や移動距離の把握が可能となる。
【0051】
以上が図1に示したように、畝位置認識用の線12、22と短手方向の線13、23を付した農業用資材としてのマルチフィルム10、20を利用した場合であったが、短手方向の線13、23の代わりに、作物の播種部位に対応させてRFID(Redio Frequency Identification)素子を配し、播種位置を検出するようにしてもよい。その場合の例が図6と図7に示した図である。
【0052】
まず図6は、前記したように赤色または黄色、若しくは黄色と黒色を縞模様とした畝位置認識用の線52、62と、作物の播種部位に対応させてRFID素子53、63を配し、播種位置を検出できるようにしたマルチフィルム50、60の例であり、図7は、RFID53を付したマルチフィルム50を畝に被せた農地を、農作業支援のためのビーグル56が移動する場合の概略を示した図である。
【0053】
この図6(A)は播種用の穴11が設けられたマルチフィルム50の播種位置に対応させてRFID素子53を配した場合であり、図6(B)は播種用の穴を持たないマルチフィルム60にRFID素子63を配した場合である。このようにRFID素子53、63を配すると、RFID素子53、63の検出で播種位置の把握や移動距離の把握が可能となると共に、RFID素子53、63に作物毎の情報を蓄え、作物の生育状況や病害虫の影響などを個別に管理することも可能となり、種々の用途に用いることができる農作業支援機器のための農業用資材を提供することができる。
【0054】
図7はこのようにRFID素子53、63を配したマルチフィルム50、60を農作物14が植えられた畝59に被せた農地を、農作業支援のためのビーグル56が移動する場合の概略を示した図であり、このビーグル56は、例えば駕籠状の作物を入れる部位を有すると共に、前方を監視するビデオカメラ57、RFID素子53を検出するRFIDリーダ58を有している。
【0055】
そして、ビデオカメラ57の撮像画像によって前記図3、図4で説明したようにして、マルチフィルム50に設けられた畝位置認識用の線62を検出して畝59の間を正確に進行すると共に、RFIDリーダ58が読み取ったRFID素子53からの信号により、作物14の播種位置、ビーグル56自身の移動距離、さらには、作物14の生育状況や病害虫の状況などを取得することができ、種々の用途に用いることができるマルチフィルムとすることができる。
【0056】
なお、この図7で示した例では、RFIDリーダ58をRFID素子53の近傍に来る位置に示したが、最近は、アンテナ側から非接触電力電送技術を用いて電力を送信し、通信距離を大きくしたRFID素子も出現しており、RFIDリーダ58の設置位置も、図示した位置に限られないことは自明である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
生育した作物の収穫作業支援や農薬散布などの各種農作業を支援する機器が、農作業に従事する人に何ら負担を掛けることなく、農地に作られた畝に添って正確に自律走行することができ、農作業の省力化に大きく貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】農作業支援機器のための畝位置認識用の線を付した農業用資材としてのマルチフィルムの例である。
【図2】マルチフィルムを畝に被せた農地を農作業支援のためのビーグルが移動する場合の概略を示した図である。
【図3】畝位置認識用の線を認識するためのアルゴリズムを示したフロー図である。
【図4】(A)はビデオカメラによる畦道と畝位置認識用の線の撮像画像例、(B)はおなじく畦道と畝位置認識用の線、及び短手方向の線のの撮像画像例である。
【図5】マルチフィルムの短手方向に設けられた線を検出するアルゴリズムを示したフロー図である。
【図6】農作業支援機器のための畝位置認識用の線を付した農業用資材としてのマルチフィルムに、さらにRFIDを付した例である。
【図7】RFIDを付したマルチフィルムを畝に被せた農地を、農作業支援のためのビーグルが移動する場合の概略を示した図である。
【符号の説明】
【0059】
10 播種用の穴が設けられたマルチフィルム
11 播種用の穴
12 畝位置認識用線
12V ビデオカメラが撮像した畝位置認識用の線
13 短手方向の線
13V ビデオカメラが撮像した短手方向の線
14 農作物
15 畝
16 農作業支援のためのビーグル
17 ビデオカメラ
18 農作業支援機器が進む道
18V ビデオカメラが撮像した農作業支援機器が進む道
20 播種用の穴を持たないマルチフィルム
22 畝位置認識用線
23 短手方向の線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農地に作られた畝を覆うマルチフィルムで構成された農作業支援機器のための農業用資材であって、
前記マルチフィルムにおける農地への埋設位置内側の長手方向に、前記農作業支援機器が認識するための畝位置認識用線を設けたことを特徴とする農作業支援機器のための農業用資材。
【請求項2】
前記畝位置認識用線を赤色または黄色、若しくは黄色と黒色で構成したことを特徴とする請求項1に記載した農作業支援機器のための農業用資材。
【請求項3】
前記畝位置認識用線は、前記マルチフィルムの両縁側に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載した農作業支援機器のための農業用資材。
【請求項4】
前記マルチフィルムにおける作物の播種部位と播種部位の間の短手方向に、前記畝位置認識用線と同じ色の線を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載した農作業支援機器のための農業用資材。
【請求項5】
前記マルチフィルムおける農地への埋設位置内側の作物播種部位に対応した位置に、RFID(Redio Frequency Identification)素子を配したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載した農作業支援機器のための農業用資材。
【請求項6】
農作業支援機器が進行方向を認識するための農業用資材を敷設した農地であって、
前記農業用資材は農地への埋設位置内側の長手方向に、前記農作業支援機器が認識するための畝位置認識用線を設けた農作業用マルチフィルムであり、該マルチフィルムで前記農地に作られた畝を覆い、前記農作業支援機器が前記畝位置認識用線を認識して畝と畝との間を進行できるように構成されていることを特徴とする農作業支援機器のための農業用資材を用いた農地。
【請求項7】
進行方向を撮像する撮像装置を有し、農地に設けられた畝と畝の間を進行する農作業支援機器のための農業用資材を用いた農地における農作業支援機器の進行方向認識方法であって、
前記畝に、農地への埋設位置内側の長手方向に前記農作業支援機器が認識するための畝位置認識用線を設けた農作業用マルチフィルムを被せ、前記農作業支援機器に設けた撮像装置で撮像した画像から前記畝位置認識用線を認識し、該認識した畝位置認識用線の間を進行することを特徴とする農作業支援機器のための農業用資材を用いた農地における農作業支援機器の進行方向認識方法。
【請求項8】
前記進行方向の認識は、前記撮像装置で撮像した隣接する畝を覆う前記農作業用マルチフィルムに設けられた相対する前記畝位置認識用線を認識し、該認識した前記畝位置認識用線の中間を前記農業用支援機器の進行方向と認識しておこなうことを特徴とする請求項7に記載した農作業支援機器のための農業用資材を用いた農地における農作業支援機器の進行方向認識方法。
【請求項9】
前記畝位置認識用線を設けた農作業用マルチフィルムにおける短手方向の、作物の播種部位と播種部位の間に播種部位確認用線を設け、前記撮像装置で撮像した画像から前記播種部位確認用線を認識して前記農業用支援機器の位置を認識することを特徴とする請求項7または8に記載した農作業支援機器のための農業用資材を用いた農地における農作業支援機器の進行方向認識方法。
【請求項10】
前記畝位置認識用線を設けた農作業用マルチフィルムにおける農地への埋設位置内側の作物播種部位に対応した位置に、RFID(Redio Frequency Identification)素子を配して該RFID素子からの信号により、前記農業用支援機器の位置を認識することを特徴とする請求項7または8に記載した農作業支援機器のための農業用資材を用いた農地における農作業支援機器の進行方向認識方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−185111(P2007−185111A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3594(P2006−3594)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】