説明

近赤外線遮蔽体、これを用いた積層体及びディスプレイ用光学フィルタ、並びにディスプレイ

【課題】熱線カット性、透明性及び耐候性に優れた合わせガラス等に好適な積層体を提供すること;また、優れた近赤外線遮断性を有し、透明性及び耐候性にも優れたディスプレイ用光学フィルタを提供すること。
【解決手段】2枚の基板の間に中間膜が挟持され、これらが接着一体化されてなる積層体であって、中間膜と基板との間に、熱線カット層及び中間膜、或いは熱線カット層、プラスチックフィルム及び中間膜が設けられ、熱線カット層がタングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物を含み、且つ中間膜が紫外線吸収剤を含むことを特徴とする積層体;近赤外線遮蔽層及び少なくとも1層の他の機能層を含むディスプレイ用光学フィルタであって、近赤外線遮蔽層がタングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物を含み、且つ少なくとも1層の他の機能層が紫外線防止剤を含むことを特徴とするディスプレイ用光学フィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線遮断機能を有する近赤外線遮蔽体、これを用いた自動車、鉄道車両、ビル、ショーケース等に使用される耐衝撃性、耐貫通性、防犯性等に優れた合わせガラス、フィルム強化ガラス(例、バイレイヤー、ウィンドーフィルム)等の安全ガラスに使用される積層体、そしてディスプレイ用光学フィルタ及びこの光学フィルタを備えたディスプレイ、特にプラズマディスプレイパネル(PDP)に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に自動車に用いるガラス、特にフロントガラスには、ガラス板の間に透明接着剤層(中間膜)を挟持させた構造の合わせガラスが使用されている。この透明接着剤層は、例えばPVB膜、EVA膜等から形成され、この透明接着剤層の存在により、合わせガラスの耐貫通性等が向上している。また外部からの衝撃に対し、破損したガラスの破片は透明接着剤層に貼着したままとなるので、その飛散を防止している。このため、例えば自動車の合わせガラスが、盗難や侵入等を目的として破壊されても窓の開放を自由にすることができないため、防犯用ガラスとしても有用である。
【0003】
一方、例えば自動車のドアガラス及び嵌め込みガラスは、一般に事故で破壊されることが少なく、従って上記フロントガラス程の耐貫通性等は必要としないので、僅かに強化された強度の低い1枚のガラス板が使用されている。ところが、このような1枚のガラス板のみを使用した場合、以下のような欠点がある。即ち、(1)耐衝撃性、耐貫通性等の点で合わせガラスに劣る、(2)盗難や侵入等を目的として破壊されると、割れて多数の破片となり、窓の開放を自由に行うことができる、等である。このため、ドアガラス及び嵌め込みガラス等にも、合わせガラスのような特性のガラスを使用することも検討されている。このような用途に適したガラスとして、ガラス板とプラスチックフィルムとを、透明接着剤層を介して接着したフィルム強化ガラスが、例えば特許文献1及び2に記載されている。
【0004】
このような合わせガラスの2枚ガラス板、或いはフィルム強化ガラスのガラス板とプラスチックフィルムとを接着する透明接着剤層は、上述のように、優れた接着性と、耐貫通性が求められている。
【0005】
上記の合わせガラスは、一般に、優れた接着性と耐貫通性を有しており、安全性には優れているが、熱線遮断性については考慮されていない。熱線遮断機能を有するガラスとしては、例えば、熱線カットガラスが市販されている。この熱線カットガラスは、直接太陽光の遮断を目的として、金属等の蒸着、スパッタリング加工によって、ガラス板の表面に金属/金属酸化物の多層コーティングが施されたものである。この多層コーティングは、外部からの擦傷に弱く、耐薬品性も劣る。このようなガラスは、例えば、EVA等からなる中間膜を積層して合わせガラスとされるのが一般的である。
【0006】
また上記熱線カットガラスは、金属を使用しているので、透明性が低下したり、電磁波の透過を阻害し、携帯電話、カーナビ等の通信機能に悪影響をもたらすとの問題がある。さらに、上記熱線カットガラスは、多層コーティングを使用しているので高価となるとの問題もある。
【0007】
特許文献3には、合わせガラスの中間膜として、PVA等の親水性樹脂とシリカ、酸化アンチモン、チタニア、アルミナ、ジルコニア又は酸化タングステン等の無機微粒子を含む膜の使用が提案されている。また、特許文献4には、合わせガラスの中間膜として、金属酸化物を含有する可塑化ポリビニルブチラールの膜を用いることが提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開2002−046217号公報
【特許文献2】特開2002−068785号公報
【特許文献3】特開平6−144891号公報
【特許文献4】特開2001−302288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献3、4に記載の中間膜を有する合わせガラスは、熱線カットのために、上記のように種々の金属酸化物が使用されるが、熱線カット機能を向上させると得られる合わせガラスの透明性が低下する傾向がある。さらに本発明者の検討によると、タングステン酸化物を使用することにより、熱線カット機能と透明性の両立が確保されるが、長期間使用した後の透明性が不十分との問題がある。
【0010】
一方、ディスプレイ、特にPDP(プラズマディスプレイパネル)等に使用される光学フィルタにおいても、周辺の電子機器の誤動作を防止する等のために近赤外線を遮断する特性を有していると共に透明性を保持することが求められている。近赤外線吸収剤として上記タングステン酸化物を用いた場合、近赤外線の遮断に極めて有効であるが、前記のように長期使用後に透明性が低下するとの問題がある。
【0011】
本発明は、熱線カット性及び透明性に優れた近赤外線遮蔽体を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、熱線カット性、透明性及び耐候性に優れた近赤外線遮蔽体を提供することを目的とする。
【0013】
本発明は、熱線カット性、透明性及び耐候性に優れた合わせガラス等に好適な積層体を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、熱線カット性、透明性及び耐候性に優れ、そして耐貫通性、耐衝撃にも優れた合わせガラス等に好適な積層体を提供することを目的とする。
【0015】
さらに、本発明の目的は、優れた近赤外線遮断性を有し、透明性及び耐候性にも優れたディスプレイ用光学フィルタを提供することにある。
【0016】
また、本発明の目的は、上記の特性を備えたディスプレイ用光学フィルタ付きプラズマディスプレイパネルを提供することにもある。
【0017】
さらに、本発明の目的は、上記の特性を備えたプラズマディスプレイパネル用光学フィルタ付きプラズマディスプレイパネルを提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物は、近赤外線に強力な吸収を有し、近赤外線の遮蔽効果には優れているが、これを用いた赤外線遮蔽フィルタを、例えば合わせガラスとして使用した場合には、合わせガラスに青変が見られることがある。これは、合わせガラスは屋外で長期間使用されることにより、長時間太陽光に曝されるためと考えられる。この点について、セシウムタングステン酸化物は、このような長時間の太陽光曝露により酸化物中に5価タングステンが生成することが知られている。
【0019】
その原因は、セシウムタングステン酸化物を分散させている樹脂が、光、特に紫外線を受けて、ラジカルを発生し、このラジカルがタングステンに影響を及ぼし、5価タングステンに変化させているのではないかと考えられ、この着想から本発明に到達したものである。そして、ラジカルの発生を阻止するために、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物を含む熱線カット層又は近赤外線遮蔽層の外側に、即ち、外気側に紫外線防止剤を含む層を設けることにより長期の透明性が確保できることが分かった。
【0020】
従って、本発明は、
タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物及び紫外線吸収剤を含むことを特徴とする近赤外線遮蔽体;及び
タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物を及び紫外線吸収剤を含有する層を含むか、或いはタングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物を含有する層と紫外線吸収剤を含有する層とを含むことを特徴とする近赤外線遮蔽体;
にある。
【0021】
本発明の上記近赤外線遮蔽体の好適態様は以下の通りである。
(1)紫外線吸収剤が、200〜500nmの波長範囲、特に250〜450nmの波長範囲に極大吸収を有している。ラジカルを発生しやすい紫外線を有効に吸収することができる。
(2)紫外線吸収剤を含有する層の、360nm、400nm及び/又は410nmの透過率が10%以下である。360nmの透過率、さらに360nmと400nmの透過率、特に360nm、400nm及び410nmの透過率が10%以下であることが好ましい。ラジカルを発生しやすい紫外線を有効に吸収することができる。
(3)紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物及び/又はトリアジン系化合物である。ラジカルを発生しやすい紫外線を有効に吸収することができる。EVA等の樹脂との相溶性が良好である。
(4)紫外線吸収剤が、酸化チタン及び/又は酸化亜鉛である。ラジカルを発生しやすい紫外線を有効に吸収することができる。
(5)タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物が、複合タングステン酸化物である。
(6)タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物が、微粒子状である。微粒子の平均粒径が400nm以下であることが好ましい。
(7)タングステン酸化物が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表され、複合タングステン酸化物が、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素を表し、そして0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3である)で表される。
(8)タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物が、シランカップリング剤で処理されている。
【0022】
本発明は、
2枚の基板の間に中間膜が挟持され、これらが接着一体化されてなる積層体であって、
中間膜と基板との間に、熱線カット層及び中間膜、或いは熱線カット層、プラスチックフィルム及び中間膜、或いは熱線カット層、プラスチックフィルム、紫外線吸収層及び中間膜が設けられ、熱線カット層がタングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物を含み、且つ中間膜及び/又は紫外線吸収層が紫外線吸収剤を含むことを特徴とする積層体;
にある。
【0023】
上記積層体を自動車等に装着する場合、外側(外気側)に紫外線吸収剤を含む中間層が位置するように据え付けられる。これにより熱線カット層を保護することが出来る。
【0024】
本発明の上記積層体の好適態様は以下の通りである。
(1)前記近赤外線遮蔽体の好適態様((1)〜(8))は、この積層体に対しても適用することができる。
(2)2枚の基板が、共にガラス板である。
(3)中間膜が、ポリビニルブチラールを含む組成物の層(PVB層)及び/又はエチレン/酢酸ビニル共重合体を含む組成物の層(EVA層)である。
(4)中間膜が、有機過酸化物を含有するエチレン/酢酸ビニル共重合体を含む組成物の架橋層である。
(5)熱線カット層が、複合タングステン酸化物を樹脂中に分散させた層である。
(6)合わせガラスである積層体。
【0025】
本発明は、
2枚の基板の間に、中間膜が挟持されて、接着一体化されてなる積層体であって、
2枚の基板の一方がガラス板で、他方が中間膜と反対側の表面にハードコート層が設けられたプラスチックフィルムであり、且つ中間膜とプラスチックフィルムとの間にさらに熱線カット層が設けられるか、或いは中間膜とプラスチックフィルムとの間にさらに熱線カット層及び紫外線吸収層が設けられ、そして熱線カット層が、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物を含み、且つ中間膜及び/又は紫外線吸収層が紫外線吸収剤を含むことを特徴とする積層体;
にある。
【0026】
本発明の上記積層体の好適態様は以下の通りである。
(1)前記近赤外線遮蔽体の好適態様((1)〜(8))は、この積層体に対しても適用することができる。
(2)中間膜が、ポリビニルブチラールを含む組成物の層(PVB層)及び/又はエチレン/酢酸ビニル共重合体を含む組成物の層(EVA層)である。
(3)中間膜が、有機過酸化物を含有するエチレン/酢酸ビニル共重合体を含む組成物の架橋層である。
(4)中間膜が、粘着剤層である。粘着剤層は、本発明では再剥離が可能な樹脂層である。
(5)熱線カット層が、複合タングステン酸化物を樹脂中に分散させた層である。
(6)バイレイヤー(フィルム強化ガラス)である積層体。
(7)ウィンドーフィルムである積層体。
【0027】
また、本発明は、
近赤外線遮蔽層及び少なくとも1層の他の機能層を含むディスプレイ用光学フィルタであって、近赤外線遮蔽層がタングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物を含み、且つ少なくとも1層の他の機能層が紫外線防止剤を含むことを特徴とするディスプレイ用光学フィルタ;及び
基板の一方の表面に、導電層及び反射防止層がこの順で設けられ、且つ基板の他方の表面に近赤外線遮蔽層、必要により粘着剤層が設けられたディスプレイ用光学フィルタであって、
近赤外線遮蔽層がタングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物を含み、及び基板、反射防止層及び近赤外線遮蔽層の少なくとも一つが紫外線防止剤を含むことを特徴とするディスプレイ用光学フィルタ;
にある。
【0028】
本発明の上記ディスプレイ用光学フィルタの好適態様は以下の通りである。
(1)前記近赤外線遮蔽体の好適態様((1)〜(8))は、この積層体に対しても適用することができる。
(2)少なくとも1層の他の機能層が、反射防止層である。
(3)近赤外線遮蔽層が粘着性を有する。
(4)さらに導電層を含む。
(5)さらに粘着剤層を含む。
(6)表面に反射防止層を、そして裏面に近赤外線遮蔽層を有する基板と、表面に導電層及び裏面に粘着剤層を有する別の基板とが、近赤外線遮蔽層と導電層が対向した状態で接着された積層体を含む近赤外線遮断光学フィルタ。
(7)上記いずれかの層(一般に近赤外線遮蔽機能を有する層、粘着剤層)が、ネオンカット機能を有する。
(8)導電層が、メッシュ状の金属導電層である。開口率は50%以上であることが好ましい。
(9)基板は、一般に透明フィルム(特に透明プラスチックフィルム)である。
(10)プラズマディスプレイパネル用フィルタである。
(11)ガラス基板に、ガラス板側に近赤外線遮蔽層が、その外側に機能層又は反射防止層が配置されるように、貼付されているディスプレイ用光学フィルタ。
【0029】
さらに、本発明は、
上記ディスプレイ用光学フィルタを、ディスプレイ側に近赤外線遮蔽層が、その外側に機能層又は反射防止層が位置するように、備えたことを特徴とするディスプレイ;及び
上記のディスプレイ用光学フィルタを、ディスプレイパネル側に近赤外線遮蔽層が、その外側に機能層又は反射防止層が位置するように、備えたことを特徴とするプラズマディスプレイパネルにある。
【発明の効果】
【0030】
本発明のディスプレイ用光学フィルタ或いは合わせガラスに好適な近赤外線遮蔽体は、近赤外線を効率よくカットするタングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物を含み、且つ酸化物のタンクステンを酸化させないように紫外線吸収剤を含有している。例えば、このような近赤外線遮蔽体を有する合わせガラス等の積層体は、熱線を効率よくカットし、且つ優れた透明性を長期に亘り維持することができる。従って、このような合わせガラスを自動車に用いた場合、自動車の室内が高温にならす快適であり、且つ窓の透明性は長期間維持されるため、安全な運転が保証される。またこのような近赤外線遮蔽体を有するディスプレイ用光学フィルタは、特にPDPの光学フィルタとして使用した場合、得られるPDPの表示画像は、近赤外線が有効にカットされているので、良好であり、また透明性が長期に亘り維持されるため、良好な表示画像が長期に亘って確保することができる。特に、近赤外線遮蔽層と、紫外線吸収層を、別個に設け、外側に紫外線吸収層を配置することにより、上記効果を顕著に得ることができる。
【0031】
また、前記近赤外線遮蔽体は、優れた近赤外線遮断性を有し、透明性が長期に亘り確保できるので、合わせガラス、ディプレイ以外の用途、窓ガラス、ショーケース等にも有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の近赤外線遮蔽体は、基本的に、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物、紫外線吸収剤を含む膜、或いはそれぞれの別個の膜を有する。
【0033】
本発明の合わせガラス、フィルム強化ガラス(例、バイレイヤー、ウィンドーフィルム)等の安全ガラス等に好適な積層体は、中間膜を基板の間に狭持した基本構造を有する。そして、一般に、中間膜が、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物或いは紫外線吸収剤を含有し、そしてその他必要に応じて設けられた層が中間層に含まなかった材料を含有し、これらの層が本発明の近赤外線遮蔽体に対応している。中間膜が、紫外線吸収剤を含有し、そしてその他必要に応じて設けられた層がタングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物を含むことが好ましい。紫外線吸収剤を含む紫外線吸収層を中間層と別に設けても良い。
【0034】
本発明の合わせガラス等に好適な積層体について、以下に図面を参照しながら詳細に説明する。
【0035】
図1は、本発明の積層体(合わせガラス)の実施の形態の1例を示す概略断面図である。図1の積層体10において、ガラス板11A上に、紫外線吸収剤を含む中間膜12A、プラスチックフィルム13、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物の微粒子Wを含む熱線カット層14、中間膜12B及びガラス板11Bが順に積層一体化されている。使用時は、中間膜12Aから光が入るように設置される。この積層体10は、一般に、2枚のガラス板11A,11Bの間に、表面に熱線カット層14が設けられたプラスチックフィルム13を、中間膜12A,12Bを介して挟んで、接着一体化されたものである。熱線カット層14は、一般に、複合タングステン酸化物を樹脂中に分散させた層である。中間膜12A、Bは、ポリビニルブチラールを含む組成物の層(PVB層)又はエチレン/酢酸ビニル共重合体を含む組成物の層(EVA層)であるが、これらの積層体でも良い。EVA層は、有機過酸化物を含有するエチレン/酢酸ビニル共重合体を含む組成物の架橋層であることが好ましいプラスチックフィルム13と熱線カット層14との位置は反対でも良い。
【0036】
中間膜12Aには、前記のように紫外線吸収剤を含んでいる。これにより入射光から紫外線を遮断し、熱線カット層14に紫外線がほとんど入らないようになり、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物がその酸化数変化を起こすことはほとんど無い。
【0037】
少なくとも中間膜12Aにおける360nm、400nm及び/又は410nmの透過率は、一般に10%以下であり、360nmの透過率、さらに360nmと400nmの透過率、特に360nm、400nm及び410nmの透過率が10%以下であることが好ましい。このように中間膜を設定することにより、熱線カット層に新たな5価のタングステンが生成するのを十分に抑制することができる。
【0038】
熱線カット層14に含まれるタングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物の微粒子Wは、可視光線をほとんど遮断せず、近赤外線(特に850〜1150nm付近の近赤外線)の遮断機能に優れており、優れた熱線カット性を示す。850〜1150nmの近赤外線は、太陽光からの放射量が多いにも拘わらず、従来の熱線カット剤であるITOやATOではカットし難い赤外線であり、このため本発明の積層体は熱線カット特性が従来に比べて大幅に向上している。
【0039】
熱線カット層14は、一般に、上記のようにタングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物の微粒子Wを含有しており、これにより熱線を有効にカットし、熱線カット層14より外側(設置時の位置)に設けられた紫外線吸収剤を含有する中間膜12Aは、入射光中の紫外線を有効にカットし、これにより紫外線による(複合)タングステン酸化物中に新たな5価のタングステンがほとんど起こらなくなる。このため熱線カット層は、長期使用しても青く変色し、透過率が変化することはほとんど無い。上記酸化数変化は、(複合)タングステン酸化物微粒子を分散させている樹脂が紫外線によりラジカルを発生し、これにより起こると考えられる。
【0040】
タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物の微粒子Wは、中間膜12B,ガラス板11A,11B、プラスチックフィルム13に含んでいても良い(この場合熱線カット層14を省略することも可能である)。またプラスチックフィルム13を用いず、熱線カット層14のみ設けても良い。
【0041】
熱線カット層14にガラス板を接着することができれば、2枚のガラス板11A,11Bを熱線カット層14で接着して合わせガラスを作製することも可能である。この場合、ガラス板に紫外線吸収剤を混入させる必要がある。
【0042】
図2は、本発明の積層体(合わせガラス)の実施の形態の別の1例を示す概略断面図である。図2の積層体20において、ガラス板21A上に、中間膜22A、紫外線吸収剤を含む紫外線吸収層24B、プラスチックフィルム23、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物の微粒子Wを含む熱線カット層24A、中間膜12B及びガラス板11Bが順に積層一体化されている。使用時は、中間膜12A側から光が入るように設置される。この積層体10は、一般に、2枚のガラス板11A,11Bの間に、一方の表面に紫外線吸収剤を含む紫外線吸収層24B(無機化合物を利用した場合に好適)及び他方の表面に熱線カット層24Aが設けられたプラスチックフィルム23を、中間膜22A,22Bを介して挟んで、接着一体化されたものである。熱線カット層24Aは、一般に、複合タングステン酸化物を樹脂中に分散させた層である。中間膜22A、22Bは、紫外線吸収剤を含んでいないポリビニルブチラールを含む組成物の層(PVB層)又はエチレン/酢酸ビニル共重合体を含む組成物の層(EVA層)であるが、これらの積層体でも良い。中間膜22A、22Bは紫外線吸収剤を含んでいても勿論良い。
【0043】
紫外線吸収層24Bにおける360nm、400nm及び/又は410nmの透過率は、一般に10%以下であり、360nmの透過率、さらに360nmと400nmの透過率、特に360nm、400nm及び410nmの透過率が10%以下であることが好ましい。このように中間膜を設定することにより、熱線カット層の酸化を十分に抑制することができる。
【0044】
図3は、本発明の積層体(バイレイヤー、ウィンドーフィルム等のフィルム強化ガラス)の実施の形態の1例を示す概略断面図である。図2の積層体30において、ガラス板31上に、紫外線吸収剤を含む中間膜32、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物の微粒子Wを含む熱線カット層34、プラスチックフィルム33及びハードコート層35が順に積層一体化されている。この積層体30は、一般に、ガラス板31と、熱線カット層34とハードコート層35とが表裏に設けられたプラスチックフィルム23とが、中間膜32により接着一体化することにより得られる。前記と同様、ガラス板31側から入射した光が、紫外線吸収剤を含む中間膜32で紫外線がカットされ、このため紫外線が熱線カット層34まではほとんど到達しない。これにより優れた熱線カット性と、透明性が長期間保持することができる。
【0045】
図2のように、中間膜に紫外線吸収剤を含まず、一方の表面に紫外線吸収剤を含む紫外線吸収層(無機化合物を利用した場合に好適)及び他方の表面に熱線カット層34が設けられたプラスチックフィルム33又は別のプラスチックフィルムを使用することも可能である。
【0046】
熱線カット層34を用いずに、ハードコート層35を、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物の微粒子Wを含むハードコート機能付き熱線カット層としても良い。この場合、ハードコート層形成用組成物に複合タングステン酸化物の微粒子を分散させて、塗布形成すれば良く、複合タングステン酸化物の微粒子の混入が至極簡便である。
【0047】
また熱線カット層24がガラス板とプラスチックフィルムを接着する(中間膜の役目)ことができれば、これらを熱線カット層14で接着して積層体を作製することも可能である。
【0048】
例えば、積層体が自動車のサイドガラス等に使用されるバイレイヤーの場合は、中間膜22は接着剤層である必要があり、この場合は、中間膜22は、前述のように、ポリビニルブチラールを含む組成物の層(PVB層)又はエチレン/酢酸ビニル共重合体を含む組成物の層(EVA層)である。これらの積層体でも良い。EVA層は、有機過酸化物を含有するエチレン/酢酸ビニル共重合体を含む組成物の架橋層であることが好ましい。
【0049】
また、積層体がウィンドーフィルム等に使用される場合は、中間膜は、一般に、粘着剤層である。粘着剤層は、本発明では再剥離が可能な樹脂層である。例えばアクリル系粘着剤である。
【0050】
タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物の微粒子Wは、一般に熱線カット層に含まれているが、中間膜、熱線カット層、ハードコート層等のいずれの層或いは複数の層に混入させても良いので、どの態様をとるかにより、その層の厚さが異なるため、その層の対する添加量は異なってくる。従って、積層体1m2当たり含まれる複合タングステン酸化物の微粒子Wの量で規定することにより、いずれの場合にも適用することができる。本発明における、積層体1m2当たり含まれるタングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物の微粒子Wの量は、一般に0.1〜50g、0.5〜20gが好ましく、さらに0.1〜10gが好ましい。このような範囲で複合タングステン酸化物の微粒子を含むことにより、得られる積層体の熱線カット特性と透明性の両立が可能となる。
【0051】
本発明の合わせガラスは、ガラス板の1方がプラスチックフィルムの場合(フィルム強化ガラス)、耐衝撃性、耐貫通性、透明性等において適度な性能を有するように設計することもでき、このため、例えば各種車体、ビル等に装備される窓ガラス等のガラス、又はショーケース、ショーウインド等のガラスに使用することができる。特に、ビル等に装備される窓ガラス用は、ウィンドーフィルムと呼ばれ、中間膜に粘着剤層が一般に使用される。共にガラス板の場合は、特に優れた耐衝撃性、向上した耐貫通性を示すように設計することができ、合わせガラスを含む種々な用途に使用することができる。
【0052】
本発明で使用されるタングステン酸化物は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表される酸化物であり、複合タングステン酸化物は、上記タングステン酸化物に、元素M(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素)を添加した組成を有するものである。これにより、z/y=3.0の場合も含めて、WyOz中に自由電子が生成され、近赤外線領域に自由電子由来の吸収特性が発現し、1000nm付近の近赤外線吸収材料として有効となる。本発明では、複合タングステン酸化物が好ましい。
【0053】
上述した一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物微粒子において、タングステンと酸素との好ましい組成範囲は、タングステンに対する酸素の組成比が3よりも少なく、さらには、当該赤外線遮蔽材料をWyOzと記載したとき、2.2≦z/y≦2.999である。このz/yの値が、2.2以上であれば、赤外線遮蔽材料中に目的以外であるWO2の結晶相が現れるのを回避することが出来るとともに、材料としての化学的安定性を得ることが出来るので有効な赤外線遮蔽材料として適用できる。一方、このz/yの値が、2.999以下であれば必要とされる量の自由電子が生成され効率よい赤外線遮蔽材料となり得る。
【0054】
複合タングステン酸化物の微粒子は、安定性の観点から、一般に、MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、(0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3)で表される酸化物であることが好ましい。アルカリ金属は、水素を除く周期表第1族元素、アルカリ土類金属は周期表第2族元素、希土類元素は、Sc、Y及びランタノイド元素である。
【0055】
特に、赤外線遮蔽材料としての光学特性、耐候性を向上させる観点から、M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちの1種類以上であるものが好ましい。また複合タングステン酸化物が、シランカップリング剤で処理されていることが好ましい。優れた分散性が得られ、優れた赤外線カット機能、透明性が得られる。
【0056】
元素Mの添加量を示すx/yの値が0.001より大きければ、十分な量の自由電子が生成され赤外線遮蔽効果を十分に得ることが出来る。元素Mの添加量が多いほど、自由電子の供給量が増加し、赤外線遮蔽効果も上昇するが、x/yの値が1程度で飽和する。また、x/yの値が1より小さければ、微粒子含有層中に不純物相が生成されるのを回避できるので好ましい。
【0057】
酸素量の制御を示すz/yの値については、MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物においても、上述のWyOzで表記される赤外線遮蔽材料と同様の機構が働くことに加え、z/y=3.0においても、上述した元素Mの添加量による自由電子の供給があるため、2.2≦z/y≦3.0が好ましく、さらに好ましくは2.45≦z/y≦3.0である。
【0058】
さらに、複合タングステン酸化物微粒子が六方晶の結晶構造を有する場合、当該微粒子の可視光領域の透過が向上し、近赤外領域の吸収が向上する。
【0059】
この六角形の空隙に元素Mの陽イオンが添加されて存在するとき、可視光領域の透過が向上し、近赤外領域の吸収が向上する。ここで、一般的には、イオン半径の大きな元素Mを添加したとき当該六方晶が形成され、具体的には、Cs、K、Rb、Tl、In、Ba、Sn、Li、Ca、Sr、Feを添加したとき六方晶が形成されやすい。勿論これら以外の元素でも、WO6単位で形成される六角形の空隙に添加元素Mが存在すれば良く、上記元素に限定される訳ではない。
【0060】
六方晶の結晶構造を有する複合タングステン酸化物微粒子が均一な結晶構造を有するとき、添加元素Mの添加量は、x/yの値で0.2以上0.5以下が好ましく、更に好ましくは0.33である。x/yの値が0.33となることで、添加元素Mが、六角形の空隙の全てに配置されると考えられる。
【0061】
また、六方晶以外では、正方晶、立方晶のタングステンブロンズも赤外線遮蔽効果がある。そして、これらの結晶構造によって、近赤外線領域の吸収位置が変化する傾向があり、立方晶<正方晶<六方晶の順に、吸収位置が長波長側に移動する傾向がある。また、それに付随して可視光線領域の吸収が少ないのは、六方晶<正方晶<立方晶の順である。このため、より可視光領域の光を透過して、より赤外線領域の光を遮蔽する用途には、六方晶のタングステンブロンズを用いることが好ましい。
【0062】
本発明で使用される複合タングステン酸化物微粒子の粒径は、透明性を保持する観点から、800nm以下の粒径(平均粒径)、特に400nm以下の粒径を有していることが好ましい。これは、800nmよりも小さい粒子は、散乱により光を完全に遮蔽することが無く、可視光線領域の視認性を保持し、同時に効率良く透明性を保持することができるからである。特に可視光領域の透明性を重視する場合は、さらに粒子による散乱を考慮することが好ましい。この粒子による散乱の低減を重視するとき、粒径は200nm以下、好ましくは100nm以下が良い。
【0063】
また、本発明の複合タングステン酸化物微粒子の表面が、Si、Ti、Zr、Alの一種類以上を含有する酸化物で被覆されていることは、耐候性の向上の観点から好ましい。
【0064】
本発明の複合タングステン酸化物微粒子は、例えば下記のようにして製造される。
【0065】
上記一般式WyOzで表記されるタングステン酸化物微粒子、または/及び、MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物微粒子は、タングステン化合物出発原料を不活性ガス雰囲気もしくは還元性ガス雰囲気中で熱処理して得ることができる。
【0066】
タングステン化合物出発原料には、3酸化タングステン粉末、もしくは酸化タングステンの水和物、もしくは、6塩化タングステン粉末、もしくはタングステン酸アンモニウム粉末、もしくは、6塩化タングステンをアルコール中に溶解させた後乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、もしくは、6塩化タングステンをアルコール中に溶解させたのち水を添加して沈殿させこれを乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、もしくはタングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物粉末、金属タングステン粉末から選ばれたいずれか一種類以上であることが好ましい。
【0067】
ここで、タングステン酸化物微粒子を製造する場合には製造工程の容易さの観点より、タングステン酸化物の水和物粉末、もしくはタングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物粉末、を用いることがさらに好ましく、複合タングステン酸化物微粒子を製造する場合には、出発原料が溶液であると各元素を容易に均一混合可能となる観点より、タングステン酸アンモニウム水溶液や、6塩化タングステン溶液を用いることがさらに好ましい。これら原料を用い、これを不活性ガス雰囲気もしくは還元性ガス雰囲気中で熱処理して、上述した粒径のタングステン酸化物微粒子、または/及び、複合タングステン酸化物微粒子を得ることができる。
【0068】
また、上記元素Mを含む一般式MxWyOzで表される複合タングステン酸化物微粒子は、上述した一般式WyOzで表されるタングステン酸化物微粒子のタングステン化合物出発原料と同様であり、さらに元素Mを、元素単体または化合物の形で含有するタングステン化合物を出発原料とする。ここで、各成分が分子レベルで均一混合した出発原料を製造するためには各原料を溶液で混合することが好ましく、元素Mを含むタングステン化合物出発原料が、水や有機溶媒等の溶媒に溶解可能なものであることが好ましい。例えば、元素Mを含有するタングステン酸塩、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、酸化物、等が挙げられるが、これらに限定されず、溶液状になるものであれば好ましい。
【0069】
ここで、不活性雰囲気中における熱処理条件としては、650℃以上が好ましい。650℃以上で熱処理された出発原料は、十分な着色力を有し赤外線遮蔽微粒子として効率が良い。不活性ガスとしてはAr、N2等の不活性ガスを用いることが良い。また、還元性雰囲気中の熱処理条件としては、まず出発原料を還元性ガス雰囲気中にて100〜650℃で熱処理し、次いで不活性ガス雰囲気中で650〜1200℃の温度で熱処理することが良い。この時の還元性ガスは、特に限定されないがH2が好ましい。また還元性ガスとしてH2を用いる場合は、還元雰囲気の組成として、H2が体積比で0.1%以上が好ましく、さらに好ましくは2%以上が良い。0.1%以上であれば効率よく還元を進めることができる。
【0070】
水素で還元された原料粉末はマグネリ相を含み、良好な赤外線遮蔽特性を示し、この状態で赤外線遮蔽微粒子として使用可能である。しかし、酸化タングステン中に含まれる水素が不安定であるため、耐候性の面で応用が限定される可能性がある。そこで、この水素を含む酸化タングステン化合物を、不活性雰囲気中、650℃以上で熱処理することで、さらに安定な赤外線遮蔽微粒子を得ることができる。この650℃以上の熱処理時の雰囲気は特に限定されないが、工業的観点から、N2、Arが好ましい。当該650℃以上の熱処理により、赤外線遮蔽微粒子中にマグネリ相が得られ耐候性が向上する。
【0071】
本発明の複合タングステン酸化物微粒子は、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等のカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。シランカップリング剤が好ましい。これにより中間層、ハードコート層、熱線カット層等のバインダとの親和性が良好となり、透明性、熱線カット性の他、各種物性が向上する。
【0072】
シランカップリング剤の例として、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシアクリルシランを挙げることができる。ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、トリメトキシアクリルシランが好ましい。これらシランカップリング剤は、単独で使用しても、又は2種以上組み合わせて使用しても良い。また上記化合物の含有量は、微粒子100質量部に対して5〜20質量部で使用することが好ましい。
【0073】
本発明の熱線カット層又は後述する近赤外線遮蔽層は、一般に、上記のタングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物の微粒子を樹脂に分散させた層である。
【0074】
上記樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂を使用することができる。樹脂の例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂層、エポキシ樹脂層、ウレタン樹脂層、シリコーン樹脂層等の合成樹脂をあげることができ、熱可塑性樹脂、紫外線硬化性樹脂が好ましく、特に紫外線硬化性樹脂が好ましい。紫外線硬化性樹脂は、短時間で硬化させることができ、生産性に優れているので好ましい。紫外線硬化性樹脂としては、後述するハードコート層で示された材料を使用することができる。
【0075】
本発明の熱線カット層(後述の近赤外線遮蔽層も一般に同様)は、上記のタングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物の微粒子を樹脂、必要委より有機溶剤と共に分散させた塗布液を、プラスチックフィルムなどの上に塗布、乾燥、必要により硬化(熱又は紫外線)することにより得られる。(複合)タングステン酸化物の微粒子を樹脂に混入させる場合、(複合)タングステン酸化物の微粒子を含む樹脂組成物を、一般に、予めロールミル、サンドミル、アトライター等を用いて混練し、複合タングステン酸化物の微粒子を分散させることが好ましい。
【0076】
有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、イソプロピルアルコール等のアルコール類を挙げることができる。
【0077】
熱線カット層は、上記(複合)タングステン酸化物をバインダ樹脂100質量部に対して、10〜1000質量部、さらに10〜800質量部、特に10〜600質量部含有することが好ましい。また熱線カット層の厚さは、一般に0.1〜50μm、好ましくは0.1〜10μm、特に好ましくは0.1〜5μmである。
【0078】
本発明で使用されるガラス板は、通常珪酸塩ガラスである。ガラス板厚は、フィルム強化ガラスの場合、それを設置する場所等により異なる。例えば、自動車のサイドガラス及び嵌め込みガラスに使用する場合、フロントガラスのように厚くする必要はなく、0.1〜10mmが一般的であり、0.3〜5mmが好ましい。前記1枚のガラス板1は、化学的に、或いは熱的に強化させたものである。
【0079】
自動車のフロントガラス等に適当な両方がガラス板である合わせガラスの場合は、ガラス板の厚さは、0.5〜10mmが一般的であり、1〜8mmが好ましい。
【0080】
本発明の積層体で使用される中間膜は、接着剤層の場合、一般にEVA層又はPVB層、これらの積層膜である。中間膜は、少なくとも一方(好ましくは設置時に外側(外気側)に配置するもの)には紫外線吸収剤を含んでいることが好ましい。
【0081】
紫外線吸収剤としては、200〜500nmの波長範囲、さらに250〜450nmの波長範囲、特に320〜420nmの波長範囲に極大吸収を有しているものが好ましい。ラジカルを発生しやすい紫外線を有効に吸収することができる。
【0082】
そしてこのような紫外線吸収剤を含有する層(一般に、中間膜、プラスチックフィルム上の紫外線遮断層)の、360nm、400nm及び/又は410nmの透過率は、一般に10%以下である。そして、360nmの透過率、さらに360nmと400nmの透過率、特に360nm、400nm及び410nmの透過率が10%以下となるように紫外線吸収剤を使用することが好ましい。これによりラジカルを発生しやすい光を有効に吸収することができる。
【0083】
紫外線吸収剤として有機化合物でも、無機化合物でも使用することができる、有機化合物の好ましい例としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、及びトリアジン系化合物を挙げることができる。ベンゾフェノン系化合物が、黄変性が抑制され好ましい。
【0084】
ベンゾフェノン系化合物の好ましい例としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンを挙げることができ、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンが好ましく、特に2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンが好ましい。
【0085】
ベンゾトリアゾール系化合物の好ましい例としては、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−トリアゾール、ベンゼンプロパン酸3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノールを挙げることができる。
【0086】
トリアジン系化合物の好ましい例としては、2−(4,6−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニル、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジンを挙げることができる。
【0087】
中間膜においては、上記紫外線吸収剤を、樹脂(一般にEVA、PVB)100質量部に対して0.1〜20質量部、さらに0.1〜10質量部、特に0.5〜5質量部使用することが好ましい。
【0088】
紫外線吸収剤としての無機化合物として、酸化チタン及び/又は酸化亜鉛を挙げることができる。酸化チタン、特にルチル型酸化チタン(一般に二酸化チタン)が好ましい。これらの材料は紫外線吸収性と共に紫外線を反射する性質もあり、両方で紫外線を通過させない効果を示す。
【0089】
上記無機化合物は、一般に粒子状で使用され、その平均粒径は、0.01〜100μm、さらに0.01〜0.2μmの範囲が好ましい。
【0090】
上記無機化合物を使用する場合、中間層に混入させても良いが、前記図2のように別個の薄層として、無機化合物を含む紫外線吸収層を設けることが好ましい。上記無機化合物の薄層の場合は、樹脂100質量部に対して10〜1000質量部、さらに20〜500質量部、特に30〜300質量部使用することが好ましい。樹脂は、前述の熱線カット層に用いたものを使用することができる。樹脂は、前述の熱線カット層に用いたものを使用することができる。層厚は一般に0.5〜10μm、好ましくは0.5〜5μmである。
【0091】
一方、中間膜に無機化合物を混入させる場合は、上記無機化合物を、樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部、さらに0.1〜5質量部、特に0.2〜2質量部使用することが好ましい。
【0092】
上記有機化合物の薄層(紫外線吸収層)の場合は、樹脂100質量部に対して0.5〜20質量部、さらに1〜10質量部使用することが好ましい。樹脂は、前述の熱線カット層に用いたものを使用することができる。層厚は一般に0.2〜50μm、好ましくは0.5〜20μmである。
【0093】
上記中間膜であるPVB層を構成するPVB樹脂組成物は、一般に、PVB樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤等を含んでいる。PVB樹脂として、ポリビニルアセタール単位が70〜95重量%、ポリ酢酸ビニル単位が1〜15重量%で、平均重合度が200〜3000、特に300〜2500であるものが好ましい。
【0094】
PVB樹脂組成物の可塑剤としては、一塩基酸エステル、多塩基酸エステル等の有機系可塑剤や燐酸系可塑剤を挙げることができる。
【0095】
一塩基酸エステルとしては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプタン酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)、デシル酸等の有機酸とトリエチレングリコールとの反応によって得られるエステルが好ましく、特に、トリエチレン−ジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキソエート、トリエチレングリコール−ジ−カプロネート、トリエチレングリコール−ジ−n−オクトエートが好ましい。なお、上記有機酸とテトラエチレングリコール又はトリプロピレングリコールとのエステルも使用することができる。
【0096】
多塩基酸エステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸等の有機酸と炭素原子数4〜8個の直鎖状又は分岐状アルコールとのエステルが好ましく、特に、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペートが好ましい。
【0097】
燐酸系可塑剤としては、トリブトキシエチルフォスフェート、イソデシルフェニルフォスフェート、トリイソプロピルフォスフェート等が好ましい。
【0098】
PVB樹脂組成物において、可塑剤の量が少ないと成膜性が低下し、多すぎると耐熱時の耐久性等が損なわれるため、ポリビニルブチラール樹脂100質量部に対して可塑剤を一般に5〜50質量部、特に10〜40質量部含むことが好ましい。
【0099】
本発明のPVB樹脂組成物は、上記の他、ヒンダードアミン系化合物等を使用することができる。ベンゾフェノン系化合物が、黄変性が抑制され好ましい。
【0100】
さらにPVB樹脂組成物は、脂肪酸のアルカリ又はアルカリ土類金属塩(一般に接着力調整剤として使用)を含んでも良い。
【0101】
上記脂肪酸のアルカリ土類金属塩の例としては、ギ酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、オクチル酸マグネシウム、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、オクチル酸カルシウム、ギ酸バリウム、酢酸バリウム、乳酸バリウム、ステアリン酸バリウム、オクチル酸バリウム等;また脂肪酸のアルカリ金属塩の例としては、ギ酸カリウム、酢酸カリウム、乳酸カリウム、ステアリン酸カリウム、オクチル酸カリウム、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オクチル酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0102】
PVB樹脂組成物には、更に劣化防止のために、安定剤、酸化防止剤等の添加剤が添加されていても良い。
【0103】
上記EVA層を構成するEVA樹脂組成物に用いられるEVAは、酢酸ビニル含有率が、一般に23〜38質量%であり、さらに23〜38質量%、特に23〜28質量%であることが好ましい。この酢酸ビニル含有率が、23質量%未満であると、高温で架橋硬化させる場合に得られる樹脂の透明度が充分でなく、逆に38質量%を超えると防犯用ガラスにした場合の耐衝撃性、耐貫通性が不足する傾向となる。またEVAのメルト・フロー・インデックス(MFR)が、4.0〜30.0g/10分、特に8.0〜18.0g/10分であることが好ましい。予備圧着が容易になる。
【0104】
上記EVA樹脂組成物は、上記EVAに、有機過酸化物、紫外線吸収剤を含んでおり、さらに必要に応じて架橋助剤、接着向上剤、可塑剤等の種々の添加剤を含有させることができる。
【0105】
紫外線吸収剤としては、上記の他、ベンゾエート系化合物及び、ヒンダードアミン系化合物を挙げることができる。黄変を抑制する観点から、ベンゾフェノン系化合物が好ましい。
【0106】
本発明では、有機過酸化物としては、100℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであれば、どのようなものでも併用することもできる。有機過酸化物は、一般に、成膜温度、組成物の調整条件、硬化(貼り合わせ)温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して選択される。特に、半減期10時間の分解温度が70℃以上のものが好ましい。
【0107】
この有機過酸化物の例としては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3−ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、クロロヘキサノンパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クミルパーオキシオクトエート、コハク酸パーオキサイド、アセチルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレーオ及び2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドを挙げることができる。
【0108】
EVA層は、膜の種々の物性(機械的強度、接着性、透明性等の光学的特性、耐熱性、耐光性、架橋速度等)の改良あるいは調整、特に機械的強度の改良のため、アクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物及び/又はエポキシ基含有化合物を含んでいることが好ましい。
【0109】
使用するアクリロキシ基含有化合物及びメタクリロキシ基含有化合物としては、一般にアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体であり、例えばアクリル酸あるいはメタクリル酸のエステルやアミドを挙げることができる。エステル残基の例としては、メチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリル等の直鎖状のアルキル基、シクロヘキシル基、テトラヒドルフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプオピル基を挙げることができる。また、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールとアクリル酸あるいはメタクリル酸のエステルも挙げることができる。
【0110】
アミドの例としては、ジアセトンアクリルアミドを挙げることができる。
【0111】
多官能化合物(架橋助剤)としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等に複数のアクリル酸あるいはメタクリル酸をエステル化したエステル、さらに前述のトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートを挙げることができる。
【0112】
エポキシ含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノール(エチレンオキシ)5グリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルメタクリレート、ブチルグリシジルエーテルを挙げることができる。
【0113】
本発明では、上記EVA層とガラス板又は透明プラスチックフィルムとの接着力をさらに高めるために、接着向上剤として、シランカップリング剤を添加することができる。
【0114】
このシランカップリング剤の例として、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。これらシランカップリング剤は、単独で使用しても、又は2種以上組み合わせて使用しても良い。また上記化合物の含有量は、EVA100質量部に対して5質量部以下であることが好ましい。
【0115】
前記の可塑剤としては、特に限定されるものではないが、一般に多塩基酸のエステル、多価アルコールのエステルが使用される。その例としては、ジオクチルフタレート、ジヘキシルアジペート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ブチルセバケート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、トリエチレングリコールジペラルゴネートを挙げることができる。可塑剤は一種用いてもよく、二種以上組み合わせて使用しても良い。可塑剤の含有量は、EVA100質量部に対して5質量部以下の範囲が好ましい。
【0116】
本発明の積層体で使用される中間膜が、粘着剤層の場合、一般に上記のEVA層又はPVB層の他、熱硬化性樹脂の層が用いられる。EVA層又はPVB層の場合、上記接着剤層と異なり、例えばフィルムを再剥離できるよう、粘着性を有するように層の組成を設定する必要がある。例えば、EVA層の場合、酢酸ビニル含有量を多いものを使用し、架橋剤(有機過酸化物)の使用量を抑えることが考慮される。他の熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。
【0117】
本発明のEVA層は、例えば、上記EVA、有機過酸化物、紫外線吸収剤等を含む組成物を、通常の押出成形、カレンダ成形(カレンダリング)等により成形して層状物を得る方法により製造することができる。また本発明のPVB層も、上記と同様に、例えば、上記PVB、紫外線吸収剤等を含む組成物を、通常の押出成形、カレンダ成形(カレンダリング)等により成形して層状物を得る方法により製造することができる。中間膜に(複合)タングステン酸化物の微粒子を混入させる場合、上記組成物にこの微粒子を添加して、上記成形を行えばよい。微粒子を十分に分散させる必要がある場合は、予めロールミル、サンドミル、アトライター等を用いて分散させても良い。
【0118】
また、上記組成物を溶剤に溶解させ、この溶液を適当な塗布機(コーター)で適当な支持体上に塗布、乾燥して塗膜を形成することにより層状物を得ることもできる。(複合)タングステン酸化物の微粒子を含む組成物を上記のように塗布する場合、一般に、予めロールミル、サンドミル、アトライター等を用いて分散させることが好ましい。
【0119】
なお、PVB層とEVA層とは、各々の樹脂フィルムで形成する他、PVB樹脂とEVA樹脂との2層押出成形等で、PVB/EVA複合樹脂フィルムとしたものを用いて形成しても良く、また、いずれか一方の樹脂フィルムに他方の樹脂組成物を塗工して、例えば予め成膜したPVB樹脂フィルムにEVA樹脂組成物を塗工して2層積層フィルムとしたものを用いて形成しても良い。3層積層膜の接着用中間膜についても同様に形成可能である。
【0120】
本発明の積層体として、合わせガラスを製造するには、例えば、まず熱線カット層を形成したプラスチックフィルムを用意する。これは、プラスチックフィルム上に、(複合)タングステン酸化物の微粒子を樹脂に分散させた塗布液を塗布、乾燥させることにより得ることができる。(複合)タングステン酸化物の微粒子を樹脂に分散させるには、一般に、予めロールミル、サンドミル、アトライター等を用いて行われる。
【0121】
本発明の積層体として、合わせガラスの製造は、例えば、まず、上記のようにEVA樹脂フィルムを成膜し、ガラス板の間に、このEVA樹脂フィルムを介して、上記の熱線カット層を形成したプラスチックフィルムを挟み、この積層体を脱気した後、加熱下に押圧して接着一体化すれば良い。このような積層体は、例えば、真空袋方式、ニップロール方式で得ることができる。このような積層は、EVA層が軟質であるためニップロール方式で圧着することにより行うことができ、積層体の製造が容易となる。ニップロールの温度が80〜140℃であることが好ましい。
【0122】
上記積層体(合わせガラス)を製造する際、EVA層を一般に100〜150℃(特に130℃付近)で、10分〜1時間架橋させる。このような架橋は、積層体を製造する際、ガラス板の間に挟持された状態で、脱気したのち、例えば80〜120℃の温度で予備圧着し、100〜150℃(特に130℃付近)で、10分〜1時間加熱処理することにより行われる。架橋後の冷却は一般に室温で行われるが、特に、冷却は速いほど好ましい。
【0123】
前述のように、本発明の積層体の一方のガラス板をプラスチックフィルムとしてフィルム強化ガラスとしても良く、その際使用されるプラスチックフィルムとしては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンアフタレート(PEN)フィルム、ポリエチレンブチレートフィルムを挙げることができ、PETフィルムが好ましい。
【0124】
プラスチックフィルムの表面にハードコート層を形成する場合、そのために使用される樹脂としては、紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂が使用される。ハードコート層の層厚は、一般に1〜50μm、好ましくは3〜20μmの範囲である。
【0125】
紫外線硬化性樹脂としては、公知の紫外線硬化性樹脂を用いることができ、その他ハードコート処理に適した低分子量且つ多官能な樹脂であれば、特に限定されるものではない。一般に、後述する光学フィルタ用のハードコート層に使用される紫外線硬化性樹脂を利用することができる。特に好ましい紫外線硬化性樹脂としては、例えばエチレン性二重結合を複数有するウレタンオリゴマー、ポリエステルオリゴマー又はエポキシオリゴマー等のオリゴマー、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)、ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPEHA)等の一官能又は多官能オリゴマー、樹脂は、反応性稀釈剤、光重合開始剤から一般に構成される。さらに種々の添加剤を含有させることができる。反応性稀釈剤としては、前記透明接着剤層で使用されたアクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物及び/又はエポキシ基含有化合物を用いることができ、光重合開始剤としても、前記透明接着剤層で使用された化合物を使用することができる。
【0126】
オリゴマー、反応性稀釈剤及び開始剤は、それぞれ一種用いても良く、二種以上組み合わせて用いてもよい。反応性稀釈剤の含有量は、紫外線硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部が一般的であり、0.5〜5質量部が好ましい。光重合開始剤の含有量は、紫外線硬化性樹脂100質量部に対して5質量部以下が好ましい。
【0127】
熱硬化性樹脂としては、反応性アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等を利用することができ。前記紫外線硬化性樹脂も使用することもできる。
【0128】
紫外線硬化性樹脂を用いてハードコート層を形成する場合、紫外線硬化性樹脂をそのまま、又は有機溶剤で適当な濃度に稀釈して、得られた溶液を適当な塗布機(コーター)で適当なフィルム上に塗布し、必要により乾燥した後、直接又は剥離シートを介して(真空脱気後)UVランプにて紫外線を数秒〜数分間照射し、ハードコート層を形成することができる。UVランプとしては、高圧水銀灯、中圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ等使用することができる。(複合)タングステン酸化物の微粒子をハードコート層に分散混入させる場合は、複合タングステン酸化物の微粒子を含むハードコート層形成用組成物或いは紫外線硬化性樹脂を、一般に、予めロールミル、サンドミル、アトライター等を用いて混練し、複合タングステン酸化物の微粒子を分散させることが好ましい。
【0129】
熱硬化性樹脂を用いてハードコート層を形成する場合、熱硬化性樹脂の有機溶剤溶液を、適当な塗布機(コーター)で適当なフィルム上に塗布し、必要により剥離シートを設け、ラミネータ等にて脱気後、熱硬化、熱圧着を行う。剥離シートを用いない場合は、加熱、圧着前に、60秒程度乾燥して塗布層の溶剤を蒸発させ表面が粘着しない程度に乾燥させることが好ましい。剥離シートを使用する場合も、少し乾燥して剥離シートを設けることが好ましい。
【0130】
本発明の積層体として、フィルム強化ガラスを製造するには、例えば、まず、プラスチックフィルム上に、上記ハードコート層及び/又は熱線カット層を上記のように塗布により設け、そして積層されたプラスチックフィルムを、成膜して得たEVA樹脂フィルム介してガラス板の上に載置し、この積層体を脱気した後、加熱下に押圧して接着一体化すれば良い。このような積層体は、例えば、真空袋方式、ニップロール方式で得ることができる。このような積層は、EVA層が軟質であるためニップロール方式で圧着することにより行うことができ、積層体の製造が容易となる。ニップロールの温度が80〜140℃であることが好ましい。
【0131】
上記積層体(合わせガラス)を製造する際、EVA層を一般に100〜150℃(特に130℃付近)で、10分〜1時間架橋させる。このような架橋は、積層体を製造する際、ガラス板の間に挟持された状態で、脱気したのち、例えば80〜120℃の温度で予備圧着し、100〜150℃(特に130℃付近)で、10分〜1時間加熱処理することにより行われる。架橋後の冷却は一般に室温で行われるが、特に、冷却は速いほど好ましい。
【0132】
本発明で得られる積層体のガラス板の表面には、金属及び/又は金属酸化物からなる透明の導電層を設けても良い。
【0133】
上記のようにして得られた積層体の側面には、バリヤ層を形成しても良い。バリヤ層の層厚は、一般に0.1〜20μm、1〜10μmが好ましい。
【0134】
こうして得られた積層体は、以下のような用途に使用することができる。即ち、自動車の嵌め込みガラス、サイドガラス及びリヤガラス、鉄道車両、例えば普通車両、急行車両、特急車両及び寝台車両等の乗客出入り用開閉ドアの扉ガラス、窓ガラス及び室内ドアガラス、ビル等の建物における窓ガラス及び室内ドアガラス等、室内展示用ショーケース及びショーウインド等である。好ましくは自動車のサイド又はリヤガラス、鉄道車両の窓ガラス、特に自動車のドアガラスに有用である。
【0135】
次に、本発明のディスプレイ用光学フィルタについて図を用いて説明する。
【0136】
図4は、本発明の光学フィルタの実施の形態の1例の概略断面図である。
【0137】
本発明の光学フィルタは、透明フィルム41、透明フィルム41の一方の表面に形成された反射防止層46、及び透明フィルム41の他方の表面に形成された近赤外線遮蔽層44が設けられた構成を有する。このようなフィルタの場合、本発明では、近赤外線遮蔽層44に、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物の微粒子Wを含んでおり、反射防止層46(一般にハードコート層)に紫外線吸収剤を含んでいる。反射防止層46は、ディスプレイに装着した場合、外側(外気側)を向く。
【0138】
或いは、近赤外線遮蔽層44に、粘着性を持たせてこれを用いて、他の光学フィルム、或いはディスプレイ表面に接着しても良い。或いは近赤外線遮蔽層44に粘着剤層を設けても良い。
【0139】
このような近赤外線遮蔽層を有するディスプレイ用光学フィルタは、特にPDPの光学フィルタとして使用した場合、得られるPDPの表示画像は、近赤外線が有効にカットされているので、良好であり、また反射防止層46により紫外線が有効に遮断されるためタングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物の酸化が起こらず、透明性が長期に亘り維持されることから、良好な表示画像が長期に亘って保持することができる。
【0140】
図5は、本発明の光学フィルタの実施の形態の別の1例の概略断面図である。
【0141】
本発明の光学フィルタは、透明フィルム51A、透明フィルム51の一方の表面に形成された反射防止層56、及び透明フィルム51Aの他方の表面に接着された近赤外線遮蔽層54Aと紫外線吸収層54Bが設けられたプラスチックフィルム51Bからなる構成を有する。透明フィルム51Aの他方の表面と紫外線吸収層54Bとが粘着剤により接着されている。このようなフィルタの場合、本発明では、近赤外線吸収層54Aに、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物の微粒子Wを含んでおり、紫外線吸収層54B(例、ハードコート層)に紫外線吸収剤(酸化チタン等の無機化合物が好適である)を含んでいる。
【0142】
或いは、近赤外線遮蔽層54Aに、粘着性を持たせてこれを用いて、他の光学フィルム、或いはディスプレイ表面に接着しても良い。或いは近赤外線遮蔽層54Aに粘着剤層を設けても良い。用途により、反射防止層56は無くても良い。
【0143】
このような近赤外線遮蔽膜を有するディスプレイ用光学フィルタは、特にPDPの光学フィルタとして使用した場合、得られるPDPの表示画像は、近赤外線が有効にカットされているので、良好であり、また透明性が長期に亘り維持されるため、良好な表示画像が長期に亘って維持することができる。
【0144】
図6に、本発明の光学フィルタの好適態様の1例の概略断面図を示す。この光学フィルタは、透明フィルム61A、透明フィルム61Aの一方の表面に形成された反射防止層66、及び透明フィルム61Aの他方の表面に形成された近赤外線遮蔽層64が設けられた積層体(前図4と同じ態様)と、透明フィルム61B、透明フィルム61Bの一方の表面に形成されたメッシュ状導電層67、及び透明フィルム61Bの他方の表面に形成されたネオンカット色素を含む粘着剤層68が設けられた積層体とが、近赤外線遮蔽層(粘着性を有する場合)64を介して接着された構成を有する。近赤外線遮蔽層64が粘着性を持たない場合、近赤外線遮蔽層(粘着剤層)64とメッシュ状導電層67との間に粘着剤層を設ける必要がある。
【0145】
このようなフィルタの場合、本発明では、近赤外線遮蔽層63に、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物を含み、反射防止層66に紫外線吸収剤を含んでいる。粘着剤層68にネオン発光由来のオレンジ色が除去するためのネオンカット色素を含有させることが好ましい。このような光学フィルタが設けられたディスプレイ、特にPDPは優れた表示特性を示す。近赤外線遮蔽層64のかわりに、図5のように近赤外線遮蔽層と紫外線遮断層が設けられたプラスチックフィルムを用いても良い。
【0146】
このような光学フィルタは、粘着剤層68を介してディスプレイ表面に接着されるか、粘着剤層68を介してガラス板に接着されPDPの前面に配置されるのが一般的である。
【0147】
本発明の光学フィルタの別の好適態様の一例を図7に示す。透明フィルム71の一方の表面にメッシュ状の導電層(電磁波シールド層)74が設けられ、さらに導電層74の上に反射防止層76が設けられ、透明フィルム71の他方の表面に近赤外線遮蔽層74が設けられ、その上にさらにネオンカット色素を含む粘着剤層75が設けられている。従って、基板として透明フィルム71を1枚のみ使用しており、図6の光学フィルタに比較して薄いものが得られる。この光学フィルタでは、近赤外線遮蔽層73に、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物の微粒子を含んでおり、反射防止層76に紫外線吸収剤を含んでいる。
【0148】
近赤外線遮蔽層74Aのかわりに、図5のように近赤外線遮蔽層と紫外線遮断層が設けられたプラスチックフィルムを用いても良い。
【0149】
本発明の光学フィルタは、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物の微粒子及び耐候性樹脂を含んでいればどのような構成を有していても良く、図4〜7に示した以外の構成を有するもの、例えば、上記で示した層の位置は適宜変更したものであっても良い。
【0150】
本発明では、一般に、反射防止層46等は、ハードコート層であるか;ハードコート層とハードコート層より屈折率の低い低屈折率層とからなるか(この場合ハードコート層が金属導電層と接している)或いは、ハードコート層、ハードコート層より屈折率の高い高屈折率層及びハードコート層より屈折率の低い低屈折率層からなる(この場合ハードコート層が金属導電層と接している)。層が多いほど、より良好な反射防止性が得られる。あるいは、反射防止層36等が防眩層、又は防眩層と防眩層より屈折率の低い低屈折率層とからなる(防眩層が金属導電層と接している)ことも好ましい。防眩層は、いわゆるアンチグレア層であり、一般に優れた反射防止効果を有し、低屈折率層等の反射防止層を設けなくて良い場合が多い。
【0151】
図6、7では、近赤外線遮蔽層及び粘着剤層の例を示したが、近赤外線遮蔽層、ネオンカット層及び粘着剤層を用いても良い。あるいは、近赤外線吸収機能及びネオンカット機能を有する透明粘着剤層からなるか、或いはネオンカット機能を有する近赤外線遮蔽層、及び粘着剤層(この順で透明フィルム上に設けられている)からなるか、或いは近赤外線遮蔽層、ネオンカット層及び粘着剤層(この順で透明フィルム上に設けられている)からなっていても良い。
【0152】
上記導電層67等は、例えば、メッシュ状の金属層又は金属含有層、或いは金属酸化物層(誘電体層)、又は金属酸化物層と金属層との交互積層膜である。メッシュ状の金属層又は金属含有層は、一般に、エッチングにより、又は印刷法により形成されているか、金属繊維層である。これにより低抵抗を得られやすい。一般に、メッシュ状の金属層又は金属含有層のメッシュの空隙は、前記のように、ハードコート層或いは防眩層で埋められている。これにより透明性が向上する。ハードコート層等で埋めない場合は、他の層、例えば近赤外線遮蔽層等或いはそれ専用の透明樹脂層で埋められるのが好ましい。
【0153】
上記近赤外線遮蔽層64等は、PDPからの不要な光を遮断する機能を有する。一般に本発明のタングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物を含む層である。粘着剤層68等は一般にネオンカット色素を含み、ディスプレイへ容易に装着するために設けられている。粘着剤層68等の上に剥離シートを設けても良い。
【0154】
本発明のディスプレイ用光学フィルタは、例えば、透明フィルムの表面の全域に、メッシュ状の金属導電層を形成し、次いで、メッシュ状の金属導電層の全域に反射防止層を形成し、透明フィルムの裏面に近赤外線遮蔽層及びその上に透明粘着剤層を形成することにより得られる。或いは、透明フィルムを2枚用いて、例えば、メッシュ状導電層を有する透明フィルム(一般に裏面に粘着剤層等有する)の導電層上に、表面に反射防止層及び裏面に粘着性の近赤外遮蔽層を有する透明フィルムを、近赤外線遮蔽層を介して積層、接着することによっても得られる。或いは、透明フィルムの表面に、メッシュ状の金属導電層、防眩層及び低屈折率層等の反射防止層がこの順で設けられ、別の透明フィルムの表面には近赤外線遮蔽層及びその上に透明粘着剤層が設けられ、2枚の透明フィルムの層が設けられていない表面同士で接着された構成を有する。この場合、前者の積層体が、本発明の方法により製造される。
【0155】
本発明のディスプレイ用光学フィルタに使用される材料について以下に説明する。
【0156】
フィルムは、一般に透明フィルムであり、特に透明なプラスチックフィルムである。その材料としては、透明(「可視光に対して透明」を意味する。)であれば特に制限はない。プラスチックフィルムの例としては、ポリエステル{例、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート}、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、トリアセテート樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン等を挙げることができる。これらの中でも、加工時の負荷(熱、溶剤、折り曲げ等)に対する耐性が高く、透明性が特に高い等の点で、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が好ましい。特に、PETが、加工性に優れているので好ましい。また、第2の機能性層に含まれる有機色素類は紫外線を受けて耐久性が低下しやすいが、PET等のポリエステルはこのような紫外線を吸収する傾向があり好ましい。
【0157】
透明フィルムの厚さとしては、光学フィルタの用途等によっても異なるが、一般に1μm〜10mm、1μm〜5mm、特に25〜250μmが好ましい。
【0158】
本発明の金属導電層は、得られる光学フィルタの表面抵抗値が、一般に10Ω/□以下、好ましくは0.001〜5Ω/□の範囲、特に0.005〜5Ω/□のとなるように設定される。メッシュ(格子)状の導電層も好ましい。或いは、導電層は、気相成膜法により得られる層(金属酸化物(ITO等)の透明導電薄膜)でも良い。さらに、ITO等の金属酸化物の誘電体膜とAg等の金属層との交互積層体(例、ITO/銀/ITO/銀/ITOの積層体)であっても良い。
【0159】
メッシュ状の金属導電層としては金属繊維及び金属被覆有機繊維の金属を網状にしたもの、透明フィルム上の銅箔等の層を網状にエッチング加工し、開口部を設けたもの、透明フィルム上に導電性インクをメッシュ状に印刷したもの、等を挙げることができる。
【0160】
メッシュ状の金属導電層の場合、メッシュとしては、金属繊維及び/又は金属被覆有機繊維よりなる線径1μm〜1mm、開口率50%以上のものが好ましい。より好ましい線径は10〜500μm、開口率は50以上95%以下である。メッシュ状の導電層において、線径が1mmを超えると電磁波シールド性が向上するが、開口率が低下し両立させることができない。1μm未満では、メッシュとしての強度が下がり取扱いが困難となる。また開口率が95%を超えるとメッシュとしての形状を維持することが困難であり、50%未満では光透過性が低下し、ディスプレイからの光量も低下する。
【0161】
なお、導電性メッシュの開口率とは、当該導電性メッシュの投影面積における開口部分が占める面積割合を言う。
【0162】
メッシュ状の導電層を構成する金属繊維及び金属被覆有機繊維の金属としては、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、チタン、タングステン、錫、鉛、鉄、銀、炭素或いはこれらの合金、好ましくは銅、ステンレス、ニッケルが用いられる。
【0163】
金属被覆有機繊維の有機材料としては、ポリエステル、ナイロン、塩化ビニリデン、アラミド、ビニロン、セルロース等が用いられる。
【0164】
金属箔等の導電性の箔をパターンエッチングしたもの場合、金属箔の金属としては、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、鉄、真鍮、或いはこれらの合金、好ましくは銅、ステンレス、アルミニウムが用いられる。
【0165】
金属箔の厚さは、薄過ぎると取扱い性やパターンエッチングの作業性等の面で好ましくなく、厚過ぎると得られるフィルムの厚さに影響を及ぼし、エッチング工程の所要時間が長くなることから、1〜200μm程度とするのが好ましい。
【0166】
エッチングパターンの形状には特に制限はなく、例えば四角形の孔が形成された格子状の金属箔や、円形、六角形、三角形又は楕円形の孔が形成されたパンチングメタル状の金属箔等が挙げられる。また、孔は規則的に並んだものに限らず、ランダムパターンとしても良い。この金属箔の投影面における開口部分の面積割合は、20〜95%であることが好ましい。さらに開口率50%以上のものが好ましく、特に50以上95%以下である。また線幅は10〜500μmが好ましい。
【0167】
上記の他に、メッシュ状の金属導電層として、フィルム面に、溶剤に対して可溶な材料によってドットを形成し、フィルム面に溶剤に対して不溶な導電材料からなる導電材料層を形成し、フィルム面を溶剤と接触させてドット及びドット上の導電材料層を除去することによって得られるメッシュ状金属導電層を用いても良い。
【0168】
金属導電層上に、さらに金属メッキ層を、導電性を向上させるためは設けても良い(特に、上記溶剤に対して可溶な材料によってドットを形成する方法の場合)。金属メッキ層は、公知の電解メッキ法、無電解メッキ法により形成することができる。メッキに使用される金属としては、一般に銅、銅合金、ニッケル、アルミ、銀、金、亜鉛又はスズ等を使用することが可能であり、好ましくは銅、銅合金、銀、又はニッケルであり、特に経済性、導電性の点から、銅又は銅合金を使用することが好ましい。
【0169】
また、防眩性能を付与させても良い。この防眩化処理を行う場合、(メッシュ)導電層の表面に黒化処理を行っても良い。例えば、金属膜の酸化処理、クロム合金等の黒色メッキ、黒又は暗色系のインクの塗布等を行うことができる。
【0170】
本発明の反射防止層は、上記のように一般に紫外線吸収剤を含む層である。前記積層体において記載した中間膜、プラスチックフィルム上の紫外線遮断層に使用される紫外線吸収剤が使用される。従って、例えば、ハードコート層が紫外線吸収剤を含んでいる場合、通常のハードコート形成用材料に紫外線吸収剤を混入させる以外は同様にしてハードコート層を形成することができる。
【0171】
反射防止層は一般に基板である透明フィルムより屈折率の低いハードコート層とその上に設けられたハードコート層より屈折率の低い低屈折率層との複合膜であるか、或いはハードコート層と低屈折率層との間にさらに高屈折率層が設けられた複合膜である。反射防止膜は基板より屈折率の低いハードコート層のみであっても有効である。但し、基板の屈折率が低い場合、透明フィルムより屈折率の高いハードコート層とその上に設けられた低屈折率層との複合膜、或いは低屈折率層上にさらに高屈折率層が設けられた複合膜としても良い。
【0172】
ハードコート層としては、アクリル樹脂層、エポキシ樹脂層、ウレタン樹脂層、シリコーン樹脂層等の合成樹脂を主成分とする層である。通常その厚さは1〜50μm、好ましくは1〜10μmである。合成樹脂は、一般に熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂であり、紫外線硬化性樹脂が好ましい。紫外線硬化性樹脂は、短時間で硬化させることができ、生産性に優れているので好ましい。
【0173】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、シリコン樹脂などを挙げることができる。
【0174】
ハードコート層としては、紫外線硬化性樹脂組成物(紫外線硬化性樹脂、光重合開始剤等からなる)を主成分とする層の硬化層が好ましく、通常その厚さは1〜50μm、好ましくは1〜10μmである。
【0175】
紫外線硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリエトキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジプロポキシジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス〔(メタ)アクリロキシエチル〕イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー類;ポリオール化合物(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオール類、前記ポリオール類とコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、水添ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の多塩基酸又はこれらの酸無水物類との反応物であるポリエステルポリオール類、前記ポリオール類とε−カプロラクトンとの反応物であるポリカプロラクトンポリオール類、前記ポリオール類と前記、多塩基酸又はこれらの酸無水物類のε−カプロラクトンとの反応物、ポリカーボネートポリオール、ポリマーポリオール等)と有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4′−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2′−4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)と水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等)の反応物であるポリウレタン(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応物であるビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマー類等を挙げることができる。これら化合物は1種又は2種以上、混合して使用することができる。これらの紫外線硬化性樹脂を、熱重合開始剤とともに用いて熱硬化性樹脂として使用してもよい。
【0176】
ハードコート層とするには、上記の紫外線硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー)の内、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の硬質の多官能モノマーを主に使用することが好ましい。
【0177】
紫外線硬化性樹脂の光重合開始剤として、紫外線硬化性樹脂の性質に適した任意の化合物を使用することができる。例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレートなどが使用できる。特に好ましくは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら光重合開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸のごとき安息香酸系叉は、第3級アミン系などの公知慣用の光重合促進剤の1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。また、光重合開始剤のみの1種または2種以上の混合で使用することができる。特に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア184)が好ましい。
【0178】
光重合開始剤の量は、樹脂組成物に対して一般に0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0179】
さらに、ハードコート層は、一般に紫外線吸収剤を含んでいるが、さらに赤外線吸収剤、老化防止剤、塗料加工助剤、着色剤等を少量含んでいても良い。
【0180】
紫外線吸収剤は、樹脂組成物100質量部に対して0.1〜20質量部、さらに0.5〜10質量部、特に1〜5質量部使用することが好ましい。
【0181】
ハードコート層は、透明フィルムより屈折率が低いことが好ましく、上記紫外線硬化性樹脂を用いることにより一般に基板より低い屈折率を得られやすい。従って、透明基板としては、PET等の高い屈折率の材料を用いることが好ましい。このため、ハードコート層は、屈折率を、1.60以下にすることが好ましい。膜厚は前記の通りである。
【0182】
高屈折率層は、ポリマー(好ましくは紫外線硬化性樹脂)中に、ITO,ATO,Sb23,SbO2,In23,SnO2,ZnO、AlをドープしたZnO、TiO2、酸化セシウムタングステン等の導電性金属酸化物微粒子(無機化合物)が分散した層(硬化層)とすることが好ましい。金属酸化物微粒子としては、平均粒径10〜10000nm、好ましくは10〜50nmのものが好ましい。特にITO(特に平均粒径10〜50nmのもの)が好ましい。屈折率を1.64以上としたものが好適である。膜厚は一般に10〜500nmの範囲、好ましくは20〜200nmである。
【0183】
なお、高屈折率層が導電層である場合、この高屈折率層2の屈折率を1.64以上とすることにより反射防止フィルムの表面反射率の最小反射率を1.5%以内にすることができ、1.69以上、好ましくは1.69〜1.82とすることにより反射防止フィルムの表面反射率の最小反射率を1.0%以内にすることができる。
【0184】
低屈折率層は、シリカ、フッ素樹脂等の微粒子、好ましくは中空シリカを10〜40重量%(好ましくは10〜30質量%)がポリマー(好ましくは紫外線硬化性樹脂)中に分散した層(硬化層)であることが好ましい。この低屈折率層の屈折率は、1.45以下が好ましい。この屈折率が1.45超であると、反射防止フィルムの反射防止特性が低下する。膜厚は一般に10〜500nmの範囲、好ましくは20〜200nmである。
【0185】
中空シリカとしては、平均粒径10〜100nm、好ましくは10〜50nm、比重0.5〜1.0、好ましくは0.8〜0.9のものが好ましい。
【0186】
ハードコート層は、可視光線透過率が70%以上であることが好ましい。高屈折率層及び低屈折率層の可視光線透過率も、いずれも85%以上であることが好ましい。
【0187】
反射防止層がハードコート層と上記2層より構成される場合、例えば、ハードコート層の厚さは2〜20μm、高屈折率層の厚さは75〜90nm、低屈折率層の厚さは85〜110nmであることが好ましい。
【0188】
反射防止層の、各層を形成するには、例えば、前記の通り、ポリマー(好ましくは紫外線硬化性樹脂)に必要に応じ紫外線吸収剤、上記の微粒子を配合し、得られた塗工液を、透明基板表面に塗工し、次いで乾燥した後、紫外線照射して硬化すればよい。この場合、各層を1層ずつ塗工し硬化させてもよく、全層を塗工した後、まとめて硬化させてもよい。
【0189】
塗工の具体的な方法としては、アクリル系モノマー等を含む紫外線硬化性樹脂をトルエン等の溶媒で溶液にした塗工液をグラビアコータ等によりコーティングし、その後乾燥し、次いで紫外線により硬化する方法を挙げることができる。このウェットコーティング法であれば、高速で均一に且つ安価に成膜できるという利点がある。このコーティング後に例えば紫外線を照射して硬化することにより密着性の向上、膜の硬度の上昇という効果が得られる。前記導電層も同様に形成することができる。
【0190】
紫外線硬化の場合は、光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザ光等を挙げることができる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、数秒〜数分程度である。また、硬化促進のために、予め積層体を40〜120℃に加熱し、これに紫外線を照射してもよい。
【0191】
前述のようにハードコート層の代わりに防眩層を設けることも好ましい。反射防止効果が大きいものが得られやすい。防眩層としては、例えば、ポリマー微粒子(例、アクリルビーズ)等の透明フィラー(好ましくは平均粒径1〜10μm)をバインダに分散させた液を塗布、乾燥することにより得られる防眩層、或いは、前述のハードコート層形成用材料に透明フィラー(ポリマー微粒子;例、アクリルビーズ)を加えた液を塗布、硬化させた、ハードコート機能を有する防眩層を挙げることができ、好ましい。防眩層の層厚は、一般に0.01〜20μmの範囲である。
【0192】
本発明の光学フィルタは、前述のように、近赤外線を効率よくカットするタングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物を含有している。タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物を含む層は、一般に近赤外線遮蔽層であり、ハードコート層又は粘着剤層に含まれていてもよい。
【0193】
近赤外線遮蔽層は前記熱線カット層と同様に形成することができる。
【0194】
近赤外線遮蔽層は、例えば上記(複合)タングステン酸化物及び樹脂(熱可塑性樹脂、紫外線硬化性又は電子線硬化性の樹脂、或いは熱硬化性樹脂)を含む塗布液を塗布、必要により乾燥、そして必要により硬化させることにより得られる。
【0195】
(複合)タングステン酸化物以外に必要により色素を使用することもできる。色素としては、一般に800〜1200nmの波長に吸収極大を有するもので、例としては、フタロシアニン系色素、金属錯体系色素、ニッケルジチオレン錯体系色素、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、ポリメチン系色素、アゾメチン系色素、アゾ系色素、ポリアゾ系色素、ジイモニウム系色素、アミニウム系色素、アントラキノン系色素、を挙げることができ、特にシアニン系色素又、フタロシアニン系色素、ジイモニウム系色素が好ましい。これらの色素は、単独又は組み合わせて使用することができる。近赤外線遮蔽層は粘着剤層であっても良く、その場合、上記樹脂として、或いは上記樹脂と併用して、アクリル樹脂等の粘着性を有する熱可塑性樹脂を使用する必要がある。
【0196】
近赤外線遮蔽層は、上記(複合)タングステン酸化物をバインダ樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部、さらに1〜20質量部、特に1〜10質量部含有することが好ましい。また近赤外線遮蔽層の厚さは、一般に1〜50μm、好ましくは5〜50μm、特に好ましくは10〜50μmである。
【0197】
本発明では、近赤外線遮蔽層に、ネオン発光の吸収機能を付与することにより色調の調節機能を持たせても良い。このために、ネオン発光の吸収層を設けても良いが、近赤外線遮蔽層にネオン発光の選択吸収色素を含有させても良い。ネオン発光の吸収機能を有する粘着剤層を設けることが好ましい。
【0198】
ネオン発光の選択吸収色素としては、ポルフィリン系色素、アザポリフィリン系色素、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、ポリメチン系色素、ポリアゾ系色素、アズレニウム系色素、ジフェニルメタン系色素、トリフェニルメタン系色素を挙げることができる。このような選択吸収色素は、585nm付近のネオン発光の選択吸収性とそれ以外の可視光波長において吸収が小さいことが必要であるため、吸収極大波長が575〜595nmであり、吸収スペクトル半値幅が40nm以下であるものが好ましい。
【0199】
また、光学特性に大きな影響を与えない限り、さらに着色用の色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を加えても良い。
【0200】
上記或いは通常の粘着剤層は、主として本発明の光学フィルムをディスプレイに接着するための層であり、接着機能を有するものであればどのような樹脂でも使用することができる。例えば、ブチルアクリレート等から形成されたアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、SEBS(スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン)及びSBS(スチレン/ブタジエン/スチレン)等の熱可塑性エラストマー(TPE)を主成分とするTPE系粘着剤及び接着剤等も用いることができる。
【0201】
その層厚は、一般に5〜500μm、特に10〜100μmの範囲が好ましい。光学フィルタは、一般に上記粘着剤層をディスプレイのガラス板に圧着することによる装備することができる。
【0202】
本発明の光学フィルタの近赤外線吸収特性としては、850〜1000nmの透過率を20%以下、さらに15%するのが好ましい。また選択吸収性としては、585nmの透過率が50%以下であることが好ましい。
【0203】
本発明の光学フィルタは、800〜1100nmの波長範囲の近赤外線における透過率の最小値が、当該波長範囲において30%以下、特に20%以下であることが好ましい。これにより、周辺機器のリモコン等の誤作動が指摘されている波長領域の透過度を減少させる効果があり、特に、560〜610nmの波長範囲の可視光線における透過率の最小値が、当該波長範囲において60%以下、特に40%以下とすることにより、上記効果に加えて、575〜595nmにピークを持つオレンジ色が色再現性を悪化させる原因であることから、このオレンジ色の波長を吸収させる効果があり、これにより真赤性を高めて色の再現性を向上させたものである。
【0204】
また光学フィルタの透過光のL***表示系のb*が−15以上であることが好ましい。
【0205】
本発明において透明フィルム2枚を使用する場合、これらの接着(粘着剤層)には、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、アクリル樹脂(例、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、金属イオン架橋エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体)、部分鹸化エチレン−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル化エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリレート共重合体等のエチレン系共重合体を使用することができる(なお、「(メタ)アクリル」は「アクリル又はメタクリル」を示す。)。その他、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ゴム系粘着剤、SEBS及びSBS等の熱可塑性エラストマー等も用いることができるが、良好な接着性が得られやすいのはアクリル樹脂系粘着剤、エポキシ樹脂である。
【0206】
その層厚は、一般に10〜50μm、好ましくは、20〜30μmの範囲が好ましい。光学フィルタは、一般に上記粘着剤層をディスプレイのガラス板に加熱圧着することによる装備することができる。
【0207】
前記粘着剤層の材料として、EVAも使用する場合、前述の積層体における中間膜で使用したものを使用することができる。
【0208】
粘着剤層上に設けられる剥離シートの材料としては、ガラス転移温度が50℃以上の透明のポリマーが好ましく、このような材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン46、変性ナイロン6T、ナイロンMXD6、ポリフタルアミド等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルフォン等のケトン系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等のサルフォン系樹脂の他に、ポリエーテルニトリル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリビニルクロライド等のポリマーを主成分とする樹脂を用いることができる。これら中で、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートが好適に用いることができる。厚さは10〜200μmが好ましく、特に30〜100μmが好ましい。
【0209】
本発明の光学フィルタが、ディスプレイの1種であるプラズマディスプレイパネルの画像表示面に貼付された状態の1例を図8に示す。ディスプレイパネル90の表示面の表面に粘着剤層88を介して光学フィルタが接着されている。即ち、透明フィルム81の一方の表面に、メッシュ状導電層87、ハードコート層86A、低屈折率層86Bがこの順で設けられ、透明フィルム81の他方の表面には近赤外線遮蔽層84及び透明粘着剤層88が設けられた光学フィルタが表示面に設けられている。そしてフィルタの縁部(側縁部)に、メッシュ状導電層87’が露出している(例えば、端部の各層をレーザにより除去することにより得られる)。この露出したメッシュ状導電層87’にプラズマディスプレイパネル90の周囲に設けられた金属カバー89Bにシールドフィンガー(板バネ状金属部品)89Aを介して接触状態にされている。シールドフィンガー(板バネ状金属部品)の代わりに、導電性ガスケット等が用いても良い。これにより、光学フィルタと金属カバー89Bが導通し、アースが達成される。金属カバー89Bは金属枠、フレームでも良い。図8から明らかなように、メッシュ状導電層87は、視聴者側を向いている。
【0210】
本発明のPDPディスプレイは、一般に透明基板としてプラスチックフィルムを使用しているので、上記のように本発明の光学フィルタをその表面であるガラス板表面に直接貼り合わせることができるため、特に透明フィルムを1枚使用した場合は、PDP自体の軽量化、薄型化、低コスト化に寄与できる。また、PDPの前面側に透明成形体からなる前面板を設置する場合に比べると、PDPとPDP用フィルタとの間に屈折率の低い空気層をなくすことができるため、界面反射による可視光反射率の増加、二重反射などの問題を解決でき、PDPの視認性をより向上させることができる。
【0211】
本発明の近赤外線遮蔽体は、上記本発明の積層体及び光学フィルタに有用なものであるが、前述の効果を示すものであればいかなるものでも使用できることは明らかである。また、本発明の近赤外線遮蔽体は、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物及び紫外線吸収剤を含むものであればどのような形態でも(例えば、両方の成分を含む膜、それぞれ別個の膜に含むもの)包含する。
【実施例】
【0212】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0213】
[実施例1]
(中間膜の作製)
下記の配合を原料としてカレンダ成形法により中間膜(透明接着剤層)として厚さ0.7mmのEVAシートを得た。尚、配合物の混練は、80℃で15分行い、またカレンダロールの温度は80℃、加工速度は5m/分であった。
【0214】
(配合)
EVA(酢酸ビニル含有量25質量%、
商品名:ウルトラセン635、東ソー(株)製) 100質量部
架橋剤(パーブチルE;日本油脂(株)製
t−ブチルパーオキシ−2−エチルへキシルモノカーボネート) 3.0質量部
シランカップリング剤(KBM503;信越化学工業(株)製) 1.0質量部
紫外線吸収剤(ユビナール3049;BASFジャパン(株)製;
2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン) 1.0質量部
【0215】
(熱線カット層付きPETフィルムの作製)
PETフィルム(厚さ100μm、A4300、(株)東洋紡製)上に、下記の熱線カット層形成用塗布液をバーコータにより塗布し、80℃で30秒間乾燥し、その表面に紫外線照射(高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2照射)して、厚さ1μmの熱線カット層を形成した。
【0216】
(配合)
セシウムタングステン酸化物(Cs0.33WO3
固形分20質量%、MIBK80質量%) 100質量部
ジペンタヘキサアクリレート(DPHA、日本化薬(株)製) 15質量部
イルガキュア184(チバ・スペシャリティー・ケミカル(株)製) 2質量部
【0217】
(積層体の作製)
上記で得られた熱線カット層付きPETフィルムを、両側にEVAシートを介してガラス板(2.5mm)により挟んで積層し、これをゴム袋に入れて真空脱気し、110℃の温度で予備圧着した。次に、この予備圧着ガラスをオーブン中に入れ、温度130℃の条件下で30分間加圧処理して、合わせガラス(ガラス板/EVA/熱線カット層付きフィルム/EVA/ガラス板)を製造した。
【0218】
[実施例2]
(中間膜の作製)
下記の配合を原料としてカレンダ成形法により中間膜(透明接着剤層)として厚さ0.7mmのEVAシートを得た。尚、配合物の混練は、80℃で15分行い、またカレンダロールの温度は80℃、加工速度は5m/分であった。
【0219】
(配合)
EVA(酢酸ビニル含有量25質量%、
商品名:ウルトラセン635、東ソー(株)製) 100質量部
架橋剤(パーブチルE;日本油脂(株)製
t−ブチルパーオキシ−2−エチルへキシルモノカーボネート) 3.0質量部
シランカップリング剤(KBM503;信越化学工業(株)製) 1.0質量部
紫外線吸収剤(ユビナール3049;BASFジャパン(株)製;
2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン) 0.05質量部
【0220】
(熱線カット層及び紫外線吸収層付きPETフィルムの作製)
PETフィルム(厚さ100μm、A4300、(株)東洋紡製)上に、下記の熱線カット層形成用塗布液をバーコータにより塗布し、80℃で30秒間乾燥し、その表面に紫外線照射(高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2照射)して、厚さ1μmの熱線カット層を形成した。
【0221】
(配合)
セシウムタングステン酸化物(Cs0.33WO3
固形分20質量%、MIBK80質量%) 100質量部
ジペンタヘキサアクリレート(DPHA、日本化薬(株)製) 25質量部
イルガキュア184(チバ・スペシャリティー・ケミカル(株)製) 2質量部
上記PETフィルムの熱線カット層が設けられなかった側の表面上に、下記紫外線吸収層形成用塗布液をバーコータにより塗布し、80℃で30秒間乾燥し、その表面に紫外線照射(高圧水銀灯を用いて2000mJ/cm2照射)して、厚さ2μmの紫外線吸収層を形成した。
【0222】
(配合)
酸化亜鉛(平均粒径40nm、
固形分25質量%、MIBK75質量%) 100質量部
ジペンタヘキサアクリレート(DPHA、日本化薬(株)製) 25質量部
イルガキュア184(チバ・スペシャリティー・ケミカル(株)製) 2質量部
【0223】
(積層体の作製)
上記で得られた熱線カット層付きPETフィルムを、両側にEVAシートを介してガラス板(2.5mm)により挟んで積層し、これをゴム袋に入れて真空脱気し、110℃の温度で予備圧着した。次に、この予備圧着ガラスをオーブン中に入れ、温度130℃の条件下で30分間加圧処理して、合わせガラス(ガラス板/EVA/熱線カット層及び紫外線吸収層付きフィルム/EVA/ガラス板)を製造した。
【0224】
[実施例3]
(中間膜の作製)
下記の配合を原料としてカレンダ成形法により中間膜(透明接着剤層)として厚さ0.7mmのEVAシートを得た。尚、配合物の混練は、80℃で15分行い、またカレンダロールの温度は80℃、加工速度は5m/分であった。
【0225】
(配合)
EVA(酢酸ビニル含有量25質量%、
商品名:ウルトラセン635、東ソー(株)製) 100質量部
架橋剤(パーブチルE;日本油脂(株)製
t−ブチルパーオキシ−2−エチルへキシルモノカーボネート) 3.0質量部
シランカップリング剤(KBM503;信越化学工業(株)製) 1.0質量部
紫外線吸収剤(ユビナール3049;BASFジャパン(株)製;
2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン) 0.05質量部
【0226】
(熱線カット層及び紫外線吸収層付きPETフィルムの作製)
PETフィルム(厚さ100μm、A4300、(株)東洋紡製)上に、下記の熱線カット層形成用塗布液をバーコータにより塗布し、80℃で30秒間乾燥し、その表面に紫外線照射(高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2照射)して、厚さ1μmの熱線カット層を形成した。
【0227】
(配合)
セシウムタングステン酸化物(Cs0.33WO3
固形分20質量%、MIBK80質量%) 100質量部
ジペンタヘキサアクリレート(DPHA、日本化薬(株)製) 15質量部
イルガキュア184(チバ・スペシャリティー・ケミカル(株)製) 2質量部
上記PETフィルムの熱線カット層が設けられなかった側の表面上に、下記紫外線吸収層形成用塗布液をバーコータにより塗布し、80℃で30秒間乾燥し、厚さ10μmの紫外線吸収層を形成した。
【0228】
(配合)
紫外線吸収剤(ユビナール3049;BASFジャパン(株)製;
2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン) 1.0質量部
ポリメチルメタクリレート 25質量部
MIBK 50質量部
【0229】
(積層体の作製)
上記で得られた熱線カット層付きPETフィルムを、両側にEVAシートを介してガラス板(2.5mm)により挟んで積層し、これをゴム袋に入れて真空脱気し、110℃の温度で予備圧着した。次に、この予備圧着ガラスをオーブン中に入れ、温度130℃の条件下で30分間加圧処理して、合わせガラス(ガラス板/EVA/熱線カット層付きフィルム/EVA/ガラス板)を製造した。
【0230】
[比較例1]
実施例1において、EVAシートの作製を紫外線吸収剤(ユビナール3049)を使用せずに作製した以外様にして合わせガラスを製造した。
[紫外線吸収層(中間膜又は紫外線吸収層)及び積層体の透過率]
実施例1及び比較例1の中間膜、及び実施例2及び3の紫外線吸収層(PETフィルムから剥離して)を、分光光度計((株)島津製作所製UV3100)を用いて350、360、370、380、390、400、410及び450nmの波長領域の透過率を測定した。
【0231】
[積層体の評価]
(1)初期の視感透過率(2°視野XYZ表色系におけるY)
島津製作所株式会社製分光光度計UV3100PC(商品名)により測定したフィルタの透過スペクトルを用い、XYZ表色系の三刺激値のYを計算し、視感透過率(Y)とした。計算方法は、JIS Z8722−2000によった。
【0232】
(2)耐候性試験後の視感透過率
スーパーUV試験(スーパーUVテスターSUV−F11、岩崎電気(株)製)を250時間行なった後、上記(1)の視感透過率を測定した。
【0233】
測定結果を下記に示す。
【0234】
【表1】

【0235】
上記結果から明らかなように、本発明に従う実施例1〜3で得られた合わせガラスは、光透過性、耐候性に優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0236】
【図1】本発明の積層体の実施形態の1例の概略断面図である。
【図2】本発明の積層体の実施形態の別の1例の概略断面図である。
【図3】本発明の積層体の実施形態の別の1例の概略断面図である。
【図4】本発明のディスプレイ用光学フィルタの実施形態の1例の概略断面図である。
【図5】本発明のディスプレイ用光学フィルタの実施形態の別の1例の概略断面図である。
【図6】本発明のディスプレイ用光学フィルタの実施形態の別の1例の概略断面図である。
【図7】本発明のディスプレイ用光学フィルタの実施形態の別の1例の概略断面図である。
【図8】本発明の光学フィルタが、ディスプレイの1種であるプラズマディスプレイパネルの画像表示面に貼付された状態の1例の概略断面図である。
【符号の説明】
【0237】
10、20、30 積層体
11A、11B、21A、21B、31 ガラス板
12A、12B、22A、22B、32 中間膜
13、23、33 プラスチックフィルム
14、24A、34 熱線カット層
24B 紫外線吸収層
25 ハードコート層
41、51A、51B、61A、61B、71、81 透明フィルム
46、56、66、76 反射防止層
44、54、64、74 近赤外線遮蔽層
57、67 導電層
68、78 粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物及び紫外線吸収剤を含むことを特徴とする近赤外線遮蔽体。
【請求項2】
タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物及び紫外線吸収剤を含有する層を含むか、或いはタングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物を含有する層と紫外線吸収剤を含有する層とを含むことを特徴とする近赤外線遮蔽体。
【請求項3】
紫外線吸収剤が、250〜450nmの波長範囲に極大吸収を有している請求項1又は2に記載の近赤外線遮蔽体。
【請求項4】
紫外線吸収剤を含有する層の、360nm、400nm及び/又は410nmの透過率が10%以下である請求項2又は3に記載の近赤外線遮蔽体。
【請求項5】
紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物及び/又はトリアジン系化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の近赤外線遮蔽体。
【請求項6】
紫外線吸収剤が、酸化チタン及び/又は酸化亜鉛である請求項1〜3のいずれか1項に記載の近赤外線遮蔽体。
【請求項7】
タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物が、微粒子状である請求項1〜6のいずれか1項に記載の近赤外線遮蔽体。
【請求項8】
微粒子の平均粒径が400nm以下である請求項7に記載の近赤外線遮蔽体。
【請求項9】
タングステン酸化物が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素を表し、そして2.2≦z/y≦2.999である)で表され、複合タングステン酸化物が、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素を表し、そして0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3である)で表される請求項1〜8のいずれか1項に記載の近赤外線遮蔽体。
【請求項10】
タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物が、シランカップリング剤で処理されている請求項1〜9のいずれか1項に記載の近赤外線遮蔽体。
【請求項11】
2枚の基板の間に中間膜が挟持され、これらが接着一体化されてなる積層体であって、
中間膜と基板との間に、熱線カット層及び中間膜、或いは熱線カット層、プラスチックフィルム及び中間膜、或いは熱線カット層、プラスチックフィルム、紫外線吸収層及び中間膜が設けられ、熱線カット層がタングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物を含み、且つ中間膜及び/又は紫外線吸収層が紫外線吸収剤を含むことを特徴とする積層体。
【請求項12】
2枚の基板が、共にガラス板である請求項11に記載の積層体。
【請求項13】
中間膜が、ポリビニルブチラールを含む組成物の層(PVB層)又はエチレン/酢酸ビニル共重合体を含む組成物の層(EVA層)である請求項11又は12に記載の積層体。
【請求項14】
中間膜が、有機過酸化物を含有するエチレン/酢酸ビニル共重合体を含む組成物の架橋層である請求項11〜13のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項15】
合わせガラスである請求項11〜14のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項16】
2枚の基板の間に、中間膜が挟持されて、接着一体化されてなる積層体であって、
2枚の基板の一方がガラス板で、他方が中間膜と反対側の表面にハードコート層が設けられたプラスチックフィルムであり、且つ中間膜とプラスチックフィルムとの間にさらに熱線カット層が設けられるか、或いは中間膜とプラスチックフィルムとの間にさらに熱線カット層及び紫外線吸収層が設けられ、そして熱線カット層が、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物を含み、且つ中間膜及び/又は紫外線吸収層が紫外線吸収剤を含むことを特徴とする積層体。
【請求項17】
近赤外線遮蔽層及び少なくとも1層の他の機能層を含むディスプレイ用光学フィルタであって、近赤外線遮蔽層がタングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物を含み、且つ少なくとも1層の他の機能層が紫外線防止剤を含むことを特徴とするディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項18】
少なくとも1層の他の機能層が、反射防止層である請求項17に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項19】
近赤外線遮蔽層が粘着性を有する請求項17又は18に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項20】
さらに導電層を含む請求項17〜19のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項21】
さらに粘着剤層を含む請求項17〜20のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項22】
基板の一方の表面に、導電層及び反射防止層がこの順で設けられ、且つ基板の他方の表面に近赤外線遮蔽層が設けられたディスプレイ用光学フィルタであって、
近赤外線遮蔽層がタングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物を含み、そして基板、反射防止層及び近赤外線遮蔽層の少なくとも一つが紫外線防止剤を含むことを特徴とするディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項23】
近赤外線遮蔽層が粘着性を有する請求22に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項24】
さらに粘着剤層を含む請求項22に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項25】
プラズマディスプレイパネル用フィルタである請求項17〜24のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項26】
請求項17〜24のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタがガラス基板に、ガラス板側に近赤外線遮蔽層が、その外側に機能層又は反射防止層が配置されるように、貼付されているディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項27】
請求項17〜24のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタを、ディスプレイ側に近赤外線遮蔽層が、その外側に機能層又は反射防止層が位置するように、備えたことを特徴とするディスプレイ。
【請求項28】
請求項17〜24のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタを、ディスプレイパネル側に近赤外線遮蔽層が、その外側に機能層又は反射防止層が位置するように、備えたことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−62411(P2009−62411A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229133(P2007−229133)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】