説明

逆エマルジョンマトリックス中で製造されるカチオン性または両性共重合体、およびセルロース繊維組成物を製造する際のそれら共重合体の使用

油中水形重合技術によって製造される水溶性のカチオン性または両性共重合体を脱水促進剤として利用する、架橋剤のない状態で、0.01MのNaCl中で測定して0.3より大きいハギンス定数(k’)、および50Paより大きい6.3Hzにおける貯蔵弾性率(G’)によって特徴付けられる組成物および抄紙方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、逆エマルジョン重合によって得られる水溶性のカチオン性および両性共重合体、並びにセルロース繊維組成物の製造におけるそれら共重合体の使用に関する。本発明は、さらに、紙および板紙のような、上記の水溶性カチオン性および両性共重合体を含むセルロース繊維組成物に関する。
発明の背景
セルロース繊維シート、特に紙および板紙の製造は、次の:1)無機鉱物質エキステンダーまたは顔料を含んでいてもよいセルロース繊維の水性スラリーを製造する工程;2)このスラリーを移動している抄紙ワイヤまたはファブリック上に堆積させる工程;および3)脱水することによって上記スラリーの固体成分からシートを形成する工程を含む。
【0002】
上記工程の後にそのシートを圧搾および乾燥して水をさらに除去する工程が続く。スラリーには、その抄紙方法のコストをより小さくし、その速度をより速めるために、および/または最終紙製品に特定の性質を達成するために、シート形成工程に先立って有機および無機の化学薬品が加えられることが多い。
【0003】
紙工業は、紙質を改善し、生産性を高め、そして製造コストを下げる努力をし続けている。化学薬品は、抄紙機脱水性(drainage)/除水性(dewatering)および固体歩留まり(retention)を改善するために、繊維スラリーが抄紙ワイヤまたはファブリックに達する前にその繊維スラリーに加えられることが多い;これらの化学薬品は歩留まり向上剤および/または脱水促進剤(retention and/or drainage aids)と呼ばれる。
【0004】
脱水/除水性の改善に関し、抄紙ワイヤまたはファブリック上の繊維スラリーの脱水性または除水性は、より速い抄紙機速度を達成するに際して制限工程となることが多い。改善された除水性は、また、圧搾機および乾燥機区域においてより乾燥したシートをもたらすことができ、その結果エネルギー消費が低下せしめられる。加えて、これはこの抄紙方法における多くのシートの最終的性質を決定する段階である。
【0005】
固体の歩留まりに関し、抄紙歩留まり向上剤は、脱水して紙ウェブを形成させる乱流法(turbulent method)の間における完成紙料の微細固体のウェブ中における歩留まりを高めるために使用される。微細固体の十分な歩留まりなしでは、それら固体は工場排水に失われるか、または循環白水ループの中に高レベルとなって蓄積するかのいずれかであって、後者は沈着堆積を引き起こす可能性がある。さらに、不十分な歩留まりは、繊維上に吸収させてそれぞれの紙不透明度、強さまたはサイジング性を与えようと意図される添加剤が失われることに因り製紙会社のコストを高める。
【0006】
カチオン電荷か両性電荷のいずれかを有する高分子量(MW)の水溶性重合体が、歩留まり向上剤および脱水促進剤として従来から使用されてきた。微粒状歩留まり向上剤および脱水促進剤として知られる無機微粒子の最近の開発は、高MW水溶性重合体との組み合わせにおいて、通常の高MW水溶性重合体と比較して優れた歩留まりおよび脱水効力を明らかにした。米国特許第4,294,885号および同第4,388,150号明細書は、澱粉重合体をコロイドシリカと共に使用することを教示している。米国特許第4,753,710号明細書は、パルプ完成紙料を高MWカチオン性凝集剤で凝集させ、その凝集完成紙料に剪断を誘発し、次いでその完成紙料にベントナイトクレーを導入することを教示している。米国特許第5,274,055号および同第5,167,766号明細書は、化学的に架橋した有機マイクロポリマーを抄紙プロセスで歩留まり向上剤および脱水促進剤として使用することを開示している。
【0007】
抄紙装置系における汚染物または有機沈着物の沈着を制御するために共重合体も使用される。有機沈着物は、抄紙装置系における、紙の製造に有害な粘着性の水不溶性物質を記述するために使用される用語である。パルプ化および抄紙のプロセス中に木から誘導されるこのような物質はピッチまたは木材ピッチと称され、一方用語・粘着性物質はリサイクル繊維汚染物として抄紙プロセスの中に導入される接着剤または塗料に由来する汚染物を記述するために用いられる。これらの物質を除去する1つの戦略は、有機沈着物を、抄紙用原質(紙料)から除去することができるか、または抄紙装置系中でシート中の欠陥である沈着を引き起こすことなくシート中に組み込むことができるより大きな非粘着性の粒子に凝集させることである。有機沈着物と相互作用してそれらのマイナスの影響を緩和し得る化学薬品に、界面活性剤および重合体がある。重合体はイオン性または非イオン性であることができ、それには凝集剤、凝固剤および分散剤として使用される物質がある。
【0008】
使用される重合体または共重合体の効力は、それらを構成する単量体の種類、重合体マトリックス中における単量体の配置、合成された分子の分子量および製造方法に依存して変わる。後者が本発明の焦点をなす特徴である。
【0009】
具体的に述べると、予想外にも、水溶性のカチオン性および両性共重合体は、ある種特定の条件下で製造されるとき、独特の物理的特性を示すことが発見された。さらに、それら共重合体は、歩留まり向上剤および脱水促進剤並びに汚染物制御剤のような抄紙用途を含めて、ある種特定の用途で思いがけない活性を実現することができる。用いられる合成方法は一般的にはこの技術分野の当業者には知られているけれども、観察されるこの独特の物理的特性および思いがけない活性がもたらされるということを示唆する従来技術は存在しない。
発明の概要
本発明は、水溶性のカチオン性および両性共重合体、並びにその共重合体を含んでいるセルロース繊維組成物、特に紙または板紙のようなセルロースシートに関する。本発明は、また、上記の共重合体およびセルロース繊維組成物を製造する方法にも関する。
【0010】
もう1つの面において、本発明は、セルロースパルプスラリーに以下の式Iまたは式IIの水溶性カチオン性または両性共重合体を加えることを含むセルロース繊維組成物の製造方法を提供する。本発明は、さらに、そのような水溶性のカチオン性または両性共重合体を含んでいる、セルロースパルプの水性スラリーを含めてセルロース繊維組成物に関する。本明細書で使用される用語・共重合体は、2種または3種以上の異なる単量体単位より成る重合体組成物であると理解される。
【0011】
本発明によれば、予想外にも、ある種特定のカチオン性および両性共重合体は独特の物理的特性を示し、かつある種特定の重合条件を用いて製造されるときに思いがけない活性を与えるということが発見された。本発明のカチオン性および両性共重合体は、逆(油中水形)エマルジョン重合から得られる。カチオン性共重合体については、1種または2種以上の水溶性単量体、特に1種または2種以上のカチオン性単量体が上記エマルジョン重合で使用される。両性共重合体では、1種または2種以上のカチオン性単量体と1種または2種以上のアニオン性単量体が上記エマルジョン重合で用いられる。その結果得られるカチオン性および両性共重合体は水溶性である。
【0012】
本発明のカチオン性共重合体は式:
【0013】
【化1】

【0014】
を有する;上記の式において、Bは1種または2種以上のノニオン性単量体の重合から形成されるノニオン性重合体セグメントであり;Cは1種または2種以上のエチレン性不飽和カチオン性単量体の重合から形成されるカチオン性重合体セグメントであり;B:Cのモル%比は1:99〜99:1であり;そして“co”は2種または3種以上の単量体成分の不特定な配置を持つ重合体系についての表示である。さらに、その製造は、架橋剤のない状態で、そして油中水形エマルジョン法によって、0.01MのNaCl中で測定されるハギンス定数(k’)が0.5より大きく、かつ3.0重量%活性分の重合体溶液の6.3Hzにおける貯蔵弾性率(G’)が50Paより大きくなるような様式で行われる。
【0015】
本発明の両性共重合体は式:
【0016】
【化2】

【0017】
を有する;上記の式において、Bは1種または2種以上のノニオン性単量体の重合から形成されるノニオン性重合体セグメントであり;Cは1種または2種以上のエチレン性不飽和カチオン性単量体の重合から形成されるカチオン性重合体セグメントであり;Aは1種または2種以上のエチレン性不飽和アニオン性単量体の重合から形成されるアニオン性重合体セグメントであり;この重合体を形成するのに使用されるB、CまたはAのいずれの最低モル%も1%であり、またA、BおよびCのいずれの最大モル%も98%であり;そして“co”は2種または3種以上の単量体成分の不特定な配置を持つ重合体系についての表示である。さらに、その製造は、架橋剤のない状態で、そして油中水形エマルジョン法によって、0.01MのNaCl中で測定されるハギンス定数(k’)が0.5より大きく、かつ1.5重量%活性分の重合体溶液の6.3Hzにおける貯蔵弾性率(G’)が50Paより大きくなるような様式で行われる。
発明の詳細な説明
本発明は、独特の物理的特性を有する水溶性のカチオン性および両性共重合体、この共重合体を製造する方法、および上記の水溶性カチオン性および両性共重合体をセルロースパルプスラリーに加えることを含むセルロース繊維組成物の製造方法について規定するものである。本発明の水溶性カチオン性共重合体の一般構造は式Iで与えられる。本発明の両性共重合体の一般構造は式IIで与えられる。
【0018】
【化3】

【0019】
式Iおよび式II中のノニオン性重合体セグメントBは、1種または2種以上のノニオン性単量体の重合後に形成される繰返単位である。Bによって包含される具体例としての単量体を挙げると、限定されるものではないが、アクリルアミド;メタクリルアミド;N−メチルアクリルアミドのようなN−アルキルアクリルアミド;N,N−ジメチルアクリルアミドのようなN,N−ジアルキルアクリルアミド;メチルメタクリレート;メチルアクリレート;アクリロニトリル;N−ビニルメチルアセトアミド;N−ビニルホルムアミド;N−ビニルメチルホルムアミド;酢酸ビニル;N−ビニルピロリドン;および上記の任意のものの混合物等がある。本発明は他の種類のノニオン性単量体が使用し得ることを意図する。
【0020】
式Iおよび式II中のカチオン性重合体セグメントCは、1種または2種以上のカチオン性単量体の重合後に形成される繰返単位である。Cによって包含される具体例としての単量体を挙げると、限定されるものではないが、ジアリルジアルキルアンモニウムハリド、例えばジアリルジメチルアンモニウムクロリド;ジアルキルアミノアルキル化合物の(メタ)アクリレート、例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、並びにそれらの塩および第四化合物;N、N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、例えばN,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミドおよびその塩および第四化合物;並びに上記のものの混合物等のようなカチオン性のエチレン性不飽和単量体がある。
【0021】
式II中のアニオン性重合体セグメントAは、1種または2種以上のアニオン性単量体の重合後に形成される繰返単位である。Aによって包含される具体例としての単量体を挙げると、限定されるものではないが、アクリル酸;メタクリル酸;マレイン酸;イタコン酸;アクリルアミドグリコール酸;2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸;3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸;スチレンスルホン酸;ビニルスルホン酸;ビニルホスホン酸;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸;上記の任意のものの混合物等の遊離酸および塩がある。
【0022】
式Iのノニオン性単量体対カチオン性単量体のB:Cモル百分率は、約99:1〜1:99、または約99:1〜約50:50、または95:5〜約50:50、または約95:5〜約75:25、または90:10〜60:40の範囲内に入ることができ、そして好ましくはその範囲は約95:5〜約60:40であり、上記よりさらに好ましくはその範囲は約90:10〜約70:30である。この点に関し、BおよびCのモル百分率は合計100%とならなければならない。式I中には2種類以上のノニオン性単量体が存在していてもよいことが理解されるべきである。また、2種類以上のカチオン性単量体が式I中に存在していてもよいことも理解されるべきである。
【0023】
式IIの両性重合体のモル百分率に関し、A、BおよびCの各々の最低量は、重合体を形成するために使用される単量体の総量の約1%である。A、BまたはCの最大量は、重合体を形成するために使用される単量体の総量の約98%である。好ましくはAの最低量は重合体を形成するために使用される単量体の総量の約5%であり、より好ましくはAの最低量は約7%であり、それよりさらに好ましくはAの最低量は約10%である。好ましくはBの最低量は重合体を形成するために使用される単量体の総量の約5%であり、より好ましくはBの最低量は約7%であり、それよりさらに好ましくはBの最低量は約10%である。好ましくはCの最低量は重合体を形成するために使用される単量体の総量の約5%であり、より好ましくはCの最低量は約7%であり、それよりさらに好ましくはCの最低量は約10%である。最終重合体中のC(カチオン性重合体セグメント)の量は好ましくは総量の約50%以下であり、それよりさらに好ましくは総量の約40%以下である。最終重合体中のA(アニオン性重合体セグメント)の量は好ましくは約80%以下であり、より好ましくは約70%以下であり、それよりさらに好ましくは約60%以下である。この点に関し、A、BおよびCのモル百分率は合計100%とならなければならない。2種類以上のノニオン性単量体が式II中に存在していてもよいこと、2種類以上のカチオン性単量体が式II中に存在してもよいこと、そして2種類以上のアニオン性単量体が式II中に存在してもよいことが理解されるべきである。
【0024】
本発明の1つの好ましい態様において、水溶性のカチオン性または両性共重合体は、B、即ちノニオン性重合体セグメントがアクリルアミドの重合後に形成される繰返単位である場合と定義される。
【0025】
本発明のもう1つの好ましい態様において、水溶性の両性共重合体は、B、即ちノニオン性重合体セグメントがアクリルアミドの重合後に形成される繰返単位であり、そしてAがアクリル酸の塩である場合と定義される。
【0026】
酸の塩形態が両性重合体を製造するために使用されるとき、その塩のカチオンはNa、KまたはNH4から選ばれることが好ましい。
また、水溶性のカチオン性および両性共重合体が、得られる重合体が独特の物理的特性を示し、かつ予期されない活性を与えるような様式で製造されることもこの発明の1つの面である。その結果得られる水溶性のカチオン性および両性共重合体は、架橋剤がその製造において利用されないという点で架橋重合体であるとは考えられない。少量の架橋剤は、本発明の重合体の性質に有意には影響するはずがないと思われる。この水溶性のカチオン性および両性共重合体の物理的特性は、それらのハギンス定数(k’)が0.01MのNaCl中で測定して0.5より大きく、また1.5重量%活性分の両性重合体溶液、または3.0重量%活性分のカチオン性重合体溶液の6.3Hzにおける貯蔵弾性率(G’)が50Paより大きい、好ましくは75より大きい、それよりさらに好ましくは100より大きいか、または175より大きいか、または200より大きいか、または250より大きいという点で独特である。ハギンス定数は0.5より大きく、好ましくは0.6より大きいか、または6.5より大きいか、または0.75より大きいか、または0.9より大きいか、または1.0より大きい。
【0027】
本発明の水溶性カチオン性および両性共重合体は、好ましくは逆(油中水形)エマルジョン重合技術によって製造される。このような方法はこの技術分野の当業者には知られており、例えば参照することにより本明細書に含まれる米国特許第3,284,393号明細書、並びに米国再発行特許第28,474号および同第28,576号明細書を参照されたい。エマルジョン重合体からの水溶液の調製は、そのエマルジョン重合体を水に加えることによる逆転によってもたらすことができ、この場合そのエマルジョンまたは水は、また、ブレーカー界面活性剤(breaker surfactant)を含んでいてもよい。ブレーカー界面活性剤は、エマルジョンに逆転を促進するために加えられる追加の界面活性剤である。この結果得られる共重合体は、また、アセトンのような有機溶媒中で沈殿させることによってさらに単離し、そして粉末形態になるまで乾燥し、または粉末形態になるまで噴霧乾燥することもできる。この粉末は所望とされる用途で使用するための水性媒体中に容易に溶解させることができる。
【0028】
一般に、逆エマルジョン重合は、1)単量体の水溶液を調製し、2)その水溶液を適切な界面活性剤または界面活性剤混合物を含有する炭化水素液体に加えて逆単量体エマルジョンを形成し、3)その単量体エマルジョンを遊離ラジカル重合に付し、そして4)随意工程としてブレーカー界面活性剤を加えて上記エマルジョンの逆転をそのエマルジョンが水に加えられるときに高めることによって行われる。
【0029】
上記エマルジョンの重合は、この技術分野の当業者に知られているどの方法で行ってもよい。開始は、アゾビスイソブチロニトリル等のようなアゾ化合物を含めて色々な熱およびレドックス遊離ラジカル開始剤により成し遂げることができる。重合は、また、光化学照射法によって、放射線によって、または60Co源による電離線によって行うこともできる。
【0030】
好ましい開始剤は油溶性熱開始剤である。典型的な例に、限定されるものではないが、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルペンタノニトリル);2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN);2,2’−アゾビス−(2−メチルブタノニトリル);1,1’−アゾビス−(シクロヘキサンカーボニトリル);ベンゾイルペルオキシド;ラウリルペルオキシド等がある。
【0031】
分子量を制御するために、この技術分野の当業者に知られる連鎖移動剤のいずれもが使用できる。それらには、限定されるものではないが、イソプロパノールのような低級アルキルアルコール類、アミン類、メルカプトエタノールのようなメルカプタン類、ホスフィット類、チオ酸類、アリルアルコール等がある。
【0032】
上記水溶液は、典型的には、ノニオン性単量体またはノニオン性単量体の混合物、およびカチオン性単量体またはカチオン性単量体の混合物の水性混合物を含む。両性共重合体では、上記水溶液は、典型的には、ノニオン性単量体またはノニオン性単量体の混合物、カチオン性単量体またはカチオン性単量体の混合物、およびアニオン性単量体またはアニオン性単量体の混合物の水性混合物を含む。その水性相は所望とされるそのような常用の添加剤を含んでいてもよい。例えば、上記混合物は、キレート化剤、pH調節剤、開始剤、上記の連鎖移動剤および他の常用添加剤を含むことができる。水溶液のカチオン性および両性共重合体物質の製造には、上記水溶液のpHは約2〜約12であり、好ましくは2に等しいか、または2より大で10より小であり、より好ましくはpHは2より大で8より小であり、それよりさらに好ましくはpHは約3〜7であり、そして最も好ましくはpHは約4〜約6である。
【0033】
炭化水素液体は、典型的には、直鎖炭化水素、分枝鎖炭化水素、飽和環状炭化水素、芳香族炭化水素またはそれらの混合物から成る。
本発明で使用される界面活性剤または界面活性剤混合物は一般に油溶性である。1種または2種以上の界面活性剤が使用できる。本発明のために選ばれる界面活性剤または界面活性剤混合物は、少なくとも1種のジブロック(2種のブロックを含む)またはトリブロック(3種のブロックを含む)界面活性剤を含む。界面活性剤または界面活性剤混合物の選択と量は、重合用の逆単量体エマルジョンをもたらすために選ばれる。エマルジョン重合系で使用される界面活性剤はこの技術分野の当業者に知られており、例えば“Hypermer Polymeric Surfactants: Emulsifiers for Inverse Polymerization Processes”、ICI Surfactants製品文献、ICI Americas Inc.、1997年を参照されたい。具体例としての界面活性剤を挙げると、限定されるものではないが、ソルビタンモノオレエート(例えば、Atlas(登録商標)G-946、Uniqema社、DE州New Castle)、ソルビタンセスキオレエート(sorbitan sequioleate)、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ジ−2−エチルヘキシルスルホスクシネート、オレアミド−プロピルジメチルアミン、イソステアリル−2−酪酸ナトリウムまたはそれらの混合物がある。ジブロックまたはトリブロック高分子界面活性剤が本発明で用いられる。典型的なジブロックおよびトリブロック高分子界面活性剤を挙げると、限定されるものではないが、脂肪酸とポリ[エチレンオキシド]とのポリエステル誘導体に基づくジブロックおよびトリブロック共重合体(例えば、Hypermer(登録商標)B246SF、Uniqema社)、ポリ[エチレンオキシド]とポリ[プロピレンオキシド]とに基づくジブロックおよびトリブロック共重合体、ポリイソブチレン琥珀酸無水物とポリ[エチレンオキシド]とに基づくジブロックおよびトリブロック共重合体、上記の任意のものの混合物等がある。好ましくは、ジブロックおよびトリブロック共重合体は、脂肪酸とポリ[エチレンオキシド]とのポリエステル誘導体に基づく。トリブロック界面活性剤が用いられるとき、そのトリブロックは2つの疎水性領域と1つの親水性領域、即ち疎水性物質−親水性物質−疎水性物質を含んでいることが好ましい。好ましくは、1種または2種以上の界面活性剤は、約2〜8、好ましくは3〜7、さらに好ましくは約4〜6の範囲に及ぶHLB(親水親油バランス)値を得るために選ばれる。
【0034】
ジブロックまたはトリブロック界面活性剤の量(重量パーセント基準)は、使用される単量体の量に依存している。ジブロックまたはトリブロック界面活性剤対単量体の比は少なくとも約3〜100である。ジブロックまたはトリブロック界面活性剤対単量体の量比は約3〜100より大であることができ、好ましくは少なくとも約4〜100、より好ましくは少なくとも約5〜100、さらに好ましくは少なくとも約5.5〜100、さらに好ましくは少なくとも約6〜100、それよりさらに好ましくは少なくとも約7〜100である。ジブロックまたはトリブロック界面活性剤は乳化系の主たる界面活性剤である。取り扱いおよび加工処理の容易さのために副界面活性剤を加えてエマルジョンの安定性を改善し、またはエマルジョンの粘性を変えることができる。副界面活性剤の例を挙げると、限定されるものではないが、ソルビタン脂肪酸エステル、エトキシ化ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエトキシ化ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルフェノールのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物、長鎖アルコールまたは脂肪酸のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物、混合エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、アルカノールアミド類、それらの混合物等がある。
【0035】
逆エマルジョンの重合は、この技術分野の当業者に知られているどの方法ででも行うことができ、例えばAllcockおよびLampe著・Contemporary Polymer Chemistry、(ニュージャージー州Englewood Cliffs、PRENTICE-HALL、1981年)、第3−5章を参照されたい。
【0036】
本発明は、セルロース繊維および本発明の共重合体を含むセルロース繊維組成物を規定する。
本発明は、また、本発明の共重合体をセルローススラリーまたはセルロースパルプスラリーに加える工程を含むセルロース繊維組成物の製造方法も規定する。
【0037】
本発明の共重合体は、抄紙装置系および抄紙方法において使用することができる。この共重合体は、汚染物制御剤としてのみならず脱水促進剤および歩留まり向上剤としても有用である。商業的抄紙処理において、セルロース繊維またはパルプのスラリーは、移動している抄紙ワイヤまたはファブリック上に堆積される。スラリーは、サイジング剤、澱粉、堆積制御剤、鉱物質増量剤、顔料、填料、有機または無機凝固剤、通常の凝集剤、または紙パルプに対する他の一般的添加剤のような他の化学薬品を含んでいることができる。堆積スラリーから水が除去されてシートを形成する。普通は、シートは、次に、紙または板紙を形成するために圧搾および乾燥される。本発明の共重合体は、脱水または除水、そして繊維微細物および填料のスラリー中における歩留まりを改善するために、スラリーにそれが抄紙用ワイヤに達する前に加えられる。
【0038】
本発明の共重合体は、汚染物制御剤として、抄紙装置上のバージンまたはリサイクルパルプ原質からのピッチおよび粘着物の沈積を抑制する。本発明の共重合体はスラリーに加えられるが、そこでそれら共重合体は、凝集がもし起これば紙、抄紙装置または抄紙プロセスに有害な影響を及ぼすだろうピッチおよび粘着物の凝集を妨害する。
【0039】
本発明の方法に適したセルロース繊維パルプに、従来の化学パルプのような通常の抄紙原質がある。例えば、漂白および未漂白硫酸塩パルプおよび亜硫酸パルプ、砕木パルプのような機械パルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ、段ボール容器古紙、新聞古紙、事務用紙古紙、雑誌古紙および他の非インキ抜き古紙、インキ抜き古紙並びにそれらの混合物のようなリサイクルパルプが使用できる。
【0040】
本発明の共重合体は、多数の物理的形態で最終使用用途に提供することができる。最初のエマルジョン形態の外に、本発明の共重合体は、また、水溶液、乾燥固体粉末または分散物の形態として与えることもできる。本発明の共重合体は、典型的には、適用現場で0.1〜1%活性重合体の水溶液をもたらすように希釈される。
【0041】
次に、本発明共重合体のこの希薄溶液は、歩留まりおよび脱水に影響を与えるために紙プロセスに加えられる。本発明の共重合体は濃厚原質または希薄原質、好ましくは希薄原質に加えることができる。この共重合体は1つの供給点において加えることもできるし、或いは共重合体が2つまたは3つ以上の別々の供給点に同時に供給されるように分割供給することもできる。典型的な原質添加点に、ファンポンプの前、ファンポンプの後で加圧型スクリーンの前、または加圧型スクリーンの後の供給点(1つまたは複数)がある。
【0042】
本発明の共重合体は、好ましくは、パルプの乾量に基づいてセルロースパルプ1トン当たり活性重合体約0.01〜約10ポンドの割合で用いられる。共重合体の濃度は、より好ましくは乾燥セルロースパルプ1トン当たり活性重合体約0.05〜約5ポンド、それよりさらに好ましくは乾燥セルロースパルプ1トン当たり活性重合体約0.1〜1.5ポンドである。
【0043】
本発明を今度は特定の実施例を参照してさらに説明することとするが、それら実施例は単に例示とみなされるべきであって、本発明の範囲を制限するものとはみなされるべきでない。
【0044】
実施例
水溶性のカチオン性および両性共重合体並びに比較共重合体の例
両性共重合体
実施例1
頭頂機械的攪拌機、温度計、窒素散布管および凝縮器を備えた適当な反応フラスコに、パラフィン油(139.72g、Exxsol(登録商標)D80、Exxon社、TX州ヒューストン)および界面活性剤(4.66g、Atlas(登録商標)G-946および9.32gのHypermer(登録商標)B246SF、Uniqema社、DE州New Castle)の油相を入れた。次に、この油相の温度を37℃に調節した。
【0045】
別個に、53重量%の水(115.76g)中アクリルアミド溶液、アクリル酸(56.54g)、[2−(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド(AETAC)(25.89g)(80重量%溶液)、脱イオン水(88.69g)およびVersenex(登録商標)80(Dow Chemical社、MI州ミッドランド)キレート化剤溶液(0.6g)から成る水性相を調製した。次に、この水性相を水酸化ナトリウム水溶液(31.07g、50重量%)の添加によりpH5.4に調節した。中和後のこの水性相の温度は39℃であった。
【0046】
上記水性相を次に上記油相にホモジナイザーで同時に混合しながら入れて安定な油中水形エマルジョンを得た。このエマルジョンを次に4枚羽根ガラス攪拌機で混合し、同時に窒素を60分間散布した。窒素散布中、エマルジョンの温度を50±1℃に調節した。その後、その散布を停止して窒素ブランケットを実現した。
【0047】
トルエン(3.75g)中3重量%AIBN(0.12g)溶液を2時間の期間にわたって供給することによって重合を開始させた。これは総単量体基準で250ppmのAIBNとしての初期AIBN装填量に相当する。供給の過程中に、バッチの温度を62℃まで発熱させ(〜50分)、その後バッチ温度を62±1℃で1時間保った。その後、トルエン(1.50g)中3重量%AIBN(0.05g)溶液を次いで1回で加えた。これは総単量体基準で100ppmのAIBNとしての第二AIBN装填量に相当する。次いで、バッチを62±1℃で2時間保持した。次にバッチを室温まで冷却し、そして生成物を採集した。
【0048】
実施例2−5
実施例2−5を次の修正を行って上記実施例1のように調製した:AETACの量を5%(単量体のモル)から10、15、20および25%までそれぞれ増し、またアクリル酸の量を45%(単量体のモル)から40、35、30および25%までそれぞれ減じた。アクリルアミド量は50モルパーセントで一定のままであった。水はAETAC単量体およびアクリルアミド単量体中における希釈の説明となるように調整された。
【0049】
実施例6−10
実施例6−10を次の点を除いて実施例1のように調製した:使用されたカチオン性単量体は、AETACの代わりにアクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド(AEDBAC)(ADAMQUAT(登録商標)BZ 80、Elf Atochem社、PA州フィラデルフィア)(80重量%溶液)であった。カチオン性単量体のレベルは、実施例6、7、8、9および10についてそれぞれモル基準で5、10、15、20および25%であり、またアクリル酸の量を45%(単量体のモル)から40、35、30および25%までそれぞれ減じた。アクリルアミド量は50モルパーセントで一定のままであった。水はAEDBAC単量体およびアクリルアミド単量体中における希釈の説明となるように調整された。
【0050】
カチオン性重合体
実施例11
頭頂機械的攪拌機、温度計、窒素散布管および凝縮器を備えた適当な反応フラスコに、パラフィン油(139.7g、Escaid(登録商標)110油、Exxon社、TX州ヒューストン)および界面活性剤(4.66g、Atlas(登録商標)G-946および9.32gのHypermer(登録商標)B246SF)の油相を入れた。次に、この油相の温度を45℃に調節した。
【0051】
別個に、53重量%の水(252.3g)中アクリルアミド溶液、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(AETAC)(80重量%溶液)(23.52g)、脱イオン水(56.1g)およびVersenex(登録商標)80(Dow Chemical社)キレート化剤溶液(1.39g)から成る水性相を調製した。この溶液を混合し、そしておよそ30℃まで加温した。
【0052】
上記水性相を次に上記油相にホモジナイザーで同時に混合しながら入れて安定な油中水形エマルジョンを得た。このエマルジョンを次に4枚羽根ガラス攪拌機で混合し、同時に窒素を60分間散布した。窒素散布中、エマルジョンの温度をおよそ63℃に調節した。その後、その散布を停止して窒素ブランケットを実現した。
【0053】
重合を、50ppm(総単量体のモル数に基づいて)をEscaid 110油中3重量%AIBN分散液(AIBN0.016g)として加えることによって開始させた。この重合の過程中、バッチ温度をおよそ63℃に保った。発熱が減少し始めた後に、第二のAIBN・1回分50ppmを加えた。発熱が再び減少するとき、反応器および内容物を65℃まで加温し、そして200ppmのAIBNを加えた。その反応を所望とされる残留単量体レベルに達するまで65℃において保持した。次に、このバッチを冷却し、そして追加の逆転用界面活性剤を加えた。生成物を室温までさらに冷却し、そして採集した。
【0054】
実施例12−14
実施例12−14を次の修正を行って上記実施例11のように調製した:AETACの量を5%(単量体のモル)から10、15および25%までそれぞれ増した。アクリルアミド量を各実施例中のAETACのパーセントに対応して減じた。水はAETAC単量体およびアクリルアミド単量体中における希釈の説明となるように調整された。
【0055】
実施例15−17
実施例15−17を次の点を除いて実施例11のように調製した:使用されたカチオン性単量体は、AETACの代わりにアクリルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド(ADAMQUAT(登録商標)BZ 80、Elf Atochem社、PA州フィラデルフィア)(80重量%溶液)であった。カチオン性単量体のレベルは、実施例15、16および17についてそれぞれモル基準で5、10および15%であった。アクリルアミドおよび水のレベルは、従って各実施例について調整された。
【0056】
水溶性のカチオン性および両性共重合体並びに比較共重合体の歩留まりデータ
歩留まりデータは表1〜10に与えられる。表1〜8は両性共重合体試料の歩留まりデータを与えるものである。表9および10はカチオン性共重合体試料の歩留まりデータを与えるものである。これらの評価は、実験室生成アルカリ性完成紙料または酸性砕木完成紙料中において行われた。
【0057】
アルカリ性完成紙料は、硬材および軟材の乾燥市場ラップパルプ、水およびさらなる材料から調製される。まず、硬材と軟材の乾燥市場ラップパルプを、別々に実験室用ヴァレービーター(Voith社、WI州アップルトン)でリファイニングする。これらのパルプを、次に、ローカル硬水(local hard water)と脱イオン水との混合物を代表的な硬度になるまで含む水性媒体に加える。この媒体に代表的なアルカリ性度および全溶液電導度を与えるように無機塩を、量を分けて加える。その水性媒体の中に硬材および軟材を典型的な重量比で分散させる。その完成紙料の中に沈降炭酸カルシウム(PCC)を、繊維80%およびPCC填料20%を含む最終完成紙料を与えるように、パルプの合計乾量に基づいて25重量パーセントで導入する。
【0058】
酸性砕木完成紙料は、軟材の乾燥市場ラップパルプ、サーモメカニカルパルプ(TMP)、水およびさらなる材料から調製される。まず、軟材の乾燥市場ラップパルプおよびTMPを、別々に実験室用ヴァレービーター(Voith社、WI州アップルトン)でリファイニングする。これらのパルプを、次に、ローカル硬水と脱イオン水との混合物を代表的な硬度になるまで含む水性媒体に加える。この媒体に代表的なアルカリ性度および全溶液電導度を与えるように無機塩を、量を分けて加える。ペクチンガムは、完成紙料に可溶性有機物質を与えるために代表的な量で加えられる水溶性ポリガラクツロナンである。その水性媒体中に軟材およびTMPを典型的な重量比で分散させる。その完成紙料中に焼成クレーを、繊維77%およびクレー填料23%を含む最終完成紙料を与えるように、パルプの合計乾量に基づいて30重量パーセントで導入する。この酸性砕木完成紙料の原質pHを試験前に約4.5〜約4.8に調整した。
【0059】
エマルジョンは水溶液を形成するために試験前に逆転されなければならない。分析用の水溶性カチオン性および両性共重合体エマルジョンを逆転させる前に、およそ2重量%のブレーカー界面活性剤、例えばTergitol(登録商標)15-S-9(Dow Chemical社、MI州ミッドランド)とAerosol(登録商標)OT-S(Cytec Industries社、NJ州ウェストパターソン)との重量で80:20の混合物を加えた。逆転した水溶性のカチオン性および両性共重合体のpHを、次に、必要とされるとおりに水酸化ナトリウムまたは水酸化アンモニウムの水溶液で最低6.0に調整した。
【0060】
本発明の水溶性カチオン性および両性共重合体の性能を評価するために、一連のブリットジャー歩留まり試験(Britt jar retention tests)を行い、それらをこの工業内で「マイクロポリマー」と一般に称される有機脱水促進剤であるPolyflex CP.3(Ciba Specialty Chemicals社、NY州タリータウン)と比較して行った;EM 635(Chemtall社、GA州Riceboro)は、50/50モル%のアクリル酸ナトリウム/アクリルアミド線状凝集剤エマルジョンである;BMA 780はシリカゾル(Eka Chemicals社、GA州マリエッタ)である;SP 9232は構造化有機微粒子のPerForm(登録商標)SP9232(Hercules Incorporated、DE州ウィルミントン)である。基準のカチオン性ポリアクリルアミド処理プログラム(CPAMと称される)で用いられるカチオン性凝集剤は、90/10モル%のアクリルアミド/AETAC共重合体(PerForm(登録商標)PC 8138およびPerForm(登録商標)PC 8715、Hercules Incorporated、DE州ウィルミントン)である。PC 8138(PerForm(登録商標)PC 8138)はエマルジョンとして提供される。PC 8715 (PerForm(登録商標)PC 8715)は粉末として提供される。cal Corporation、MD州ボルティモア)。外に記載されなければ、百分率、部、ポンド/トン等々は全て活性分重量による。
【0061】
表1〜10に示されるデータは、本発明の水溶性カチオン性および両性共重合体の歩留まり活性を上記の物質と比較して説明する。
ブリット微細繊維歩留まり(FPFR)試験を、TAPPI法T261に従い、次の修正および規格を用いて行った:125Pスクリーンを用いた。全ての試験に羽根付きブリットジャーを用いた。混合速度は酸性砕木完成紙料については1600rpmであり、またアルカリ性完成紙料については1200rpmであった。添加順序は表に記載される。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
【表4】

【0066】
【表5】

【0067】
【表6】

【0068】
【表7】

【0069】
【表8】

【0070】
【表9】

【0071】
【表10】

【0072】
alumは、50%溶液として入手できる硫酸アルミニウム18水和物(Delta Chemical Corporation、MD州ボルティモア)である。
PC 1279は、カチオン性ポリアミン凝集剤であるPerForm(登録商標)PC 1279(Hercules Incorporated)である。
【0073】
Stalokは、化工ジャガイモ澱粉であるStalok(登録商標)400(A. E. Staley社、アイオワ州、シーダーラピッズ)である。
水溶性のカチオン性および両性共重合体並びに比較共重合体のレオロジー性
エマルジョンは試験前に水溶液を形成するために逆転されなければならない。分析用の水溶性カチオン性および両性共重合体エマルジョンを逆転させる前に、およそ2重量%のブレーカー界面活性剤、例えばTergitol(登録商標)15-S-9(Dow Chemical社、MI州ミッドランド)とAerosol(登録商標)OT-S(Cytec Industries社、NJ州ウェストパターソン)との重量で80:20の混合物を加えた。逆転した水溶性のカチオン性および両性共重合体のpHを、次に、必要とされるとおりに水酸化ナトリウムまたは水酸化アンモニウムの水溶液で最低6.0に調整した。
【0074】
これらレオロジー技術の議論は、Macosko著・Rheology: Principles, Measurements, and Applications(ニューヨーク、Wiley社、1994年);L. H. Sperling著・Introduction to Polymer Science(ニューヨーク、Wiley-Interscience社、1992年);およびJ. Ferry著・Viscoelastic Properties of Polymer、第3版(ニューヨーク、J. Wiley & Sons社、1980年)によって与えられている。この中で議論されている粘弾性挙動は適用された力に対する時間依存性応答であって、その場合短時間または高周波数において物質は堅いまたはガラス状の性質を示し、また長時間または低周波数では物質は流れ、そして粘性を示すことができる。粘弾性を、Haake RS-75応力制御レオメーターを用いて脱イオン水中1.5%(重量/重量)の重合体溶液により測定した。周波数掃引を、線形粘弾性領域内となるように定められた一定応力および0.01〜10Hzの周波数範囲において、上記レオメーターにより動的振動モードで行った。この試験からの出力は、物質の弾性成分、即ち1振動サイクル当たりに貯蔵されるエネルギー、および粘性成分、即ち1サイクル当たりに失われるエネルギーの両者を定義する。貯蔵弾性率(G’)は:
【0075】
【数1】

【0076】
と定義され、また損失弾性率(G”)は:
【0077】
【数2】

【0078】
と定義される;ここで、τは応力の大きさであり、γは歪みの大きさであり、そしてδは応力と結果として生ずる歪みとの間の位相角シフトである。
ターミナル(低周波数)レジメ(terminal (low frequency) regime)において、線状重合体では、低い弾性率は、長い時間が重合体鎖を解き、そして粘性挙動を支配的に示すので、貯蔵弾性率より大きい。周波数が増加するにつれて、ゴム平坦域レジメ(rubbery plateau regime)が生じ、その場合重合体鎖が解けるのに必要とされる時間はこの試験の時間よりも長い。この領域では貯蔵弾性率は損失弾性率よりも大きく、その物質は永久絡合いから成る網状構造であると思われる。貯蔵弾性率はこのレジメでは試験周波数に無関係である。弾性率は、ゴム弾性の理論によって定義される網状接合濃度の関数である:
【0079】
【数3】

【0080】
ここで、Gは平坦域弾性率であり、nは網状接合の濃度であり、Rは気体定数であり、そしてTは温度である。
平坦域弾性率Gは、ゴム平坦域レジメにおける貯蔵弾性率G’と大きさが同様であると考えることができる。網状接合の濃度が増加するにつれて弾性率は増大する。これらの網状接合は化学的架橋か物理的架橋のいずれかによって影響され得る。
【0081】
希薄溶液の性質は重合体の流体力学的体積(HDV)と分子量との相対的指標となる。この実験において、溶媒粘度(η)が重合体溶液粘度(η)に比較される。比粘度(ηsp)は次式:
【0082】
【数4】

【0083】
によって記述される無単位の比である。
換算比粘度(RSV)は濃度で割った比粘度である。固有粘度[η]、即ちIVは、濃度をゼロ濃度に外挿したときの、重合体濃度(c)で割った比粘度である:
【0084】
【数5】

【0085】
IVの単位はデシリットル/グラム(dL/g)であって、溶液中における重合体の流体力学的体積を記述する。かくして、より高いIVは溶液中の流体力学的体積が大きいこと、および同様の組成を持つ通常の重合体を同様の溶媒において比較するときMWがより大きいことを示す。比粘度は、0.0025〜0.025%の希釈濃度を有する0.01MのNaCl中において、ウッベローデモデル“OC”粘度計を用いて30℃において測定された。
【0086】
無単位のハギンス定数(k’)は:
【0087】
【数6】

【0088】
に従って比粘度データの傾斜から求められ、ここでcの値は0.0025〜0.025重量%である。
編集者Mark等によってEncyclopedia of Polymer Science and Engineering(ニューヨーク、J. Wiley & Sons社、1988年)、第1巻、第26−27頁において概説されるように、線状重合体の典型的なk’値はおよそ0.25−0.50のオーダーである。k’値の増加は重合体の「構造」における増加を示すもので、分子会合を含めて多数の因子によると考えることができる。線状APAMについての表11および12中のk’値は全て0.3〜0.4であり、一方0.05より大きい値は本発明の好ましい水溶性共重合体について得られ、これは非線状種の存在をさらに支持する。
【0089】
【表11】

【0090】
【表12】

【0091】
前述の実施例は単に説明目的から与えられたものであって、本発明を限定するものとは決して解されるべきでないことが指摘される。本発明を例示態様を参照して説明したが、本明細書で用いられている言葉は限定の言葉ではなく、説明および例証の言葉であることが分かる。本発明を本明細書で特定の手段、材料および態様を参照して説明したけれども、本発明は本明細書に開示される詳細な事項に限定されることは意図されない。本発明の水溶性カチオン性および両性共重合体は、また、廃水処理用途における凝固剤および/または凝集剤のような、または掘削および/またはセメント加工処理用途におけるレオロジー調節剤のような他の用途においても独特の活性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Iの式:
【化1】

を含む水溶性共重合体組成物であって、ここで
Bは1種または2種以上のエチレン性不飽和ノニオン性単量体の重合から形成されたノニオン性重合体セグメントであり;
Cは1種または2種以上のエチレン性不飽和カチオン性単量体の重合から形成されたカチオン性重合体セグメントであり;
B:Cのモル%比は99:1〜1:99であり、そして
上記水溶性カチオン性共重合体は、少なくとも1種のジブロックまたはトリブロック高分子界面活性剤より成る少なくとも1種の乳化界面活性剤を用いる油中水形エマルジョン重合技術により製造され、ここで単量体に対する少なくとも1種のジブロックまたはトリブロック界面活性剤の量比は少なくとも約3:100であり、ここで
上記油中水形エマルジョン重合技術は:
単量体の水溶液を調製し、
上記水溶液を界面活性剤または界面活性剤混合物を含んでいる炭化水素液体に加えて逆エマルジョンを形成し、
上記エマルジョン中の単量体を約2から7未満までのpH範囲において遊離ラジカル重合によって重合させる
工程を含み;そして
該共重合体は0.5より大きいハギンス定数(k’)を有し;かつ該共重合体は50Paより大きい貯蔵弾性率(G’)を有する
上記の水溶性共重合体組成物。
【請求項2】
共重合体がアニオン性重合体セグメント“A”をさらに含み、ここでAは1種または2種以上のエチレン性不飽和アニオン性単量体の重合から形成されたアニオン性重合体セグメントであり;そしてAの最低量は重合体を形成するために使用される単量体の総量の1%である、請求項1に記載の水溶性共重合体組成物。
【請求項3】
B:Cの比が約99:1〜約50:50である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
B:Cの比が約95:5〜約50:50である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
A、BおよびCの各々の最低量が5%である、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
A、BおよびCの各々の最低量が7%である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
Aがアクリル酸;メタクリル酸;マレイン酸;イタコン酸;アクリルアミドグリコール酸;2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸;3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸;スチレンスルホン酸;ビニルスルホン酸;ビニルホスホン酸;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸;上記の任意のものの混合物の遊離酸および塩より成る群から選ばれる、請求項2、5または6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
Bがアクリルアミド、メタクリルアミド;N−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキル−アクリルアミド;メチルメタクリレート、メチルアクリレート;アクリロニトリル;N−ビニルメチルアセトアミド;N−ビニルホルムアミド;N−ビニルメチルホルムアミド;酢酸ビニル;N−ビニルピロリドン;および上記の任意のものの混合物より成る群から選ばれる、前記請求項1〜6のいずれかの組成物。
【請求項9】
Cがジアリルジアルキルアンモニウムハリド、ジアルキルアミノアルキル化合物の(メタ)アクリレート、例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート;およびそれらの塩および第四化合物;N、N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、例えばN,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミドおよびその塩および第四化合物、並びに上記の任意のものの混合物より成る群から選ばれる、前記請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
ジブロックまたはトリブロック界面活性剤が、脂肪酸とポリ[エチレンオキシド]とのポリエステル誘導体に基づく共重合体である、前記請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
ジブロックまたはトリブロック界面活性剤対単量体の比が少なくとも約4:100である、前記請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
乳化界面活性剤が、油溶性錯体モノカルボン酸から誘導される1種または2種以上の高分子成分とポリアルキレングリコールおよびソルビタンモノオレエートから誘導される水溶性成分とを含む高分子界面活性剤のブレンドより成り;そして2,2’−アゾビスイソブチロニトリルが遊離ラジカル開始剤として用いられている、前記請求項1〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
界面活性剤系が合わせて8未満の親水−疎水バランスを有する、前記請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
ジブロックまたはトリブロック界面活性剤が、脂肪酸とポリ[エチレンオキシド]とのポリエステル誘導体に基づく共重合体である、前記請求項1〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
k’が0.6より大きい、前記請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
G’が75より大きい、前記請求項1〜15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
セルロース繊維をさらに含む前記請求項1〜16のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
セルロースパルプスラリーに前記請求項1〜17のいずれかに記載の水溶性カチオン性共重合体を加えることを含むセルロース繊維組成物の製造方法。

【公表番号】特表2006−509096(P2006−509096A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−559461(P2004−559461)
【出願日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2003/039034
【国際公開番号】WO2004/052942
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(591020249)ハーキュリーズ・インコーポレーテッド (75)
【氏名又は名称原語表記】HERCULES INCORPORATED
【Fターム(参考)】