説明

透明で導電性の酸化物膜およびそれの製造法および薄膜太陽電池でのそれの用途

【課題】 改善された光学的および電気的膜特性を有する透明で導電性の酸化物膜(TCO膜)であり、薄膜太陽電池において使用するのに適する表面構造を有する該膜の提供。
【解決手段】 この課題は、反応性スパッタリングによって基板上に導電性で透明な酸化亜鉛膜を生成し、プロセスにヒステリシス領域を有している方法において、ドーピング剤を含有する金属Znターゲットを使用し、該ターゲットのドーピング剤含有量が2.3原子%より少なく; 基板のための加熱器を、200℃より高い該基板温度に調整される様に調整し;
190nm/分より早い静的溶着速度に相当する50nm*m/分より早い動的溶着速度に調整し;そして安定な金属プロセスと不安定なプロセスとの間の転換点と安定化されたプロセス曲線の屈曲点との間に位置する、不安定なプロセス領域内で安定化した作業点を選択する各段階を含むことを特徴とする、上記方法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に薄膜太陽電池で使用するのに適する透明で導電性の酸化ジルコニウム膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶質Si−ウエハー技術をベースとするソーラーモジュールは、この数年来、それの性能および信頼性が立証されてきた。半導体をベースとしそしてガラス、金属またはプラスチック−フィルムの様な安価な基板に大表面にわたって適用される薄膜技術におけるモジュールは未だ確立されていないが、材料消費量が少なくかつ大表面を造るので価格低下をもたらす多大な潜在性を秘めている。
【0003】
薄膜技術においては、水素化した非晶質珪素(α−Si:H)からの電池およびモジュールの開発は著しく進展している。これらのα−Si:H−電池のコンセプトのベースは一般に基板(ガラス)/透明電極(弗素をドープした酸化錫)/p−ドープ炭化珪素/非ドープのα−Si:H/n−ドープα−Si:H/金属の膜配列を有するいわゆるp−i−n−上膜配列を形成することである。この配列の場合には太陽光は基板側からほぼ0.5μmの厚さの活性な非ドープ吸収膜に侵入する。
【0004】
珪素薄膜太陽電池は、光が太陽電池を多重通過する様に珪素に対する界面で入射光を太陽電池中に散乱させる粗い表面を有する透明で導電性の酸化物膜(TCO膜)を必要とする。最も望ましい場合は、光が完全に吸収されることである。これに適する膜として、実験室規模では、経済的に大量に製造される、アルミニウムでドープされた酸化亜鉛(ZnO:Al)膜が使用される。このTCO膜は可視光線に対して高い透過性である他に抵抗が少なくなければならない。
【0005】
粗いTCO膜を製造するためには原則として二つの異なる方法が文献から公知である。第一の場合にはかゝるTCO−膜は、製造の間に適切に制御することによって粗い膜を意図的に成長させることによって得ることができる。この方法では現在のといころ、化学蒸着(CVD)技術により大表面の粗い錫酸化物膜が製造される。
【0006】
第二の方法では、最初に滑らかなTCO−膜を製造し、次いでエッチング法を用いて適当に粗面化している。後者の方法は現在のところ熱心に研究されそして大表面を工業的に製造することに移行する研究がされている。この方法では酸化亜鉛、特にAlでドープされた酸化亜鉛(ZnO:Al)が使用される。相応する膜はカソード蒸発(スパッタリング)によって製造される。粗い状態に膜を成長させるのに比較して、これは電気的および光学的性質を著しく改善している。方法パラメータ、特にスパッタリング工程の間に使用される圧力および温度によってこれらの性質は著しく影響される。しかしながらこれらの膜はスパッタリングの後に一般に必要な粗面度を未だ有していない。これは、光学的に滑らかでありそして光散乱効果を示さないことを意味している。それ故にこれらの膜は後続の方法段階で一般に湿式的に化学エッチングされる。
【0007】
高い導電性で透明なZn−O膜は金属Znの反応性スパッタリング技術並びにセラミック製ターゲットの非反応性あるいは部分反応性スパッタリング技術によって製造できる。
【0008】
従来には非常に良好な結果がセラミック製ターゲットのRF−スパッタリングで達成された。この場合、Arイオンをそれに照射することによってそれぞれの膜材料のターゲットが脱離されそしてそれに向き合って配置された基板に溶着される。他の方法、例えば個々の元素の蒸発(ハイブリッドスパッタリング:hybrid sputtering)またはプラズマへの反応ガス(N、Oまたはオゾン)の混入(反応性スパッタリング)との組合せも可能である。
【0009】
非特許文献1は反応性の電磁管スパッタリング法の助けでZnO膜の大表面を製造する従来技術に関する。この方法では基板温度は最大200℃に維持されている。作業点は発電器出力を制御することによって最適化される。それによって比酸素分圧を安定化することができる。続くエッチング法のために膜を最適化する場合には、スパッタリング圧を製造の間の中心パラメータとして200℃を超えない温度を狭い範囲内で変動させる。
【0010】
反応性スパッタリングによって製造される非特許文献1に記載されたZnO膜は工業的スパッタリング法と共に発展しそして同様にエッチング加工することができる。この様に製造された膜は良好な導電性および透明性を有するが、最適な光散乱特性を示さないという欠点を有している。これらの膜を有する太陽電池の効率は、セラミック製ターゲットからRF−スパッタリングで製造されたTCO膜を使用する太陽電池よりも一般に明らかに低い。
【非特許文献1】J. Mueller et al, State-of-the-art mid-frequency sputtered ZnO films for thin-film silicon solar cells and modules(薄膜珪素太陽電池およびモジュールのための従来技術の中波スパッタリングZnO膜), Thin Solid Films 442 (2003) 158-162.
【非特許文献2】B. Szyszka et al., Transparent and conductive ZnO:Al films deposited by large area reactive magnetron sputtering(反応性電磁管スパタリングにより溶着された透明で導電性のZnO:Al膜)、Thin Solid Films 442 (2003) 179-183.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、改善された光学的および電気的膜特性を有する透明で導電性の酸化物膜(TCO膜)であり、薄膜太陽電池において使用するのに適する表面構造を有する該膜を提供することである。本発明の別の課題は、上記の膜を大表面で製造するために大規模に使用でき且つ迅速である製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、請求項1に従う特徴を全て持つTCO膜を製造する方法、他の独立項に従う特徴を有する改善されたTCO膜並びに更に他の独立項に従うこの種類のTCO膜の用途を達成することである。方法、TCO膜およびその用途の有利な態様はこれらの請求項に対応する従属項から明らかである。
【0013】
反応性スパッタリング法においては、作業点はこの製造方法が最適な電気的および光学的性質を有する膜が製造されるように一般に設定される。本発明の基礎となる思想は、スパッタリング法の作業点の設定がこの製造方法に従って直接的に製造すべき膜に専ら向けられるのではなく、太陽電池用途では通常後続するエッチング法を一緒に包含することに基づいている。
【0014】
本発明の方法は金属Znターゲットを用いる反応性スパッタリング法なのである。150nm/分より大きいかまたは400nm/分より大きい静的溶着速度が達成される5.3W/cmまたは13W/cmの出力密度を設定する。これは二つの電磁管カソードを用いた場合の40nm・m/分より早いかまたは110nm・m/分より早い動的溶着速度にほぼ相応する。
【0015】
Znターゲットはドーパント原子の成分を含有している。適するドーパントにはアルミニウムの他にB、Ga、InまたはFがある。ターゲット中のドーパント含有量は一般に2.3原子%より少なく、特に1.5原子%より少なく、なかでも0.2〜1原子%である。ドーパント含有量はこの場合、金属成分だけに関するものであり、このことは酸素を含まないことを意味する。従ってアルミニウムの含有量はAl/(Al+Zn)によって算出されるる。
【0016】
ターゲットは一般にこの方法では予めドープされたターゲットとして使用される。しかしながら場合によってはターゲットは気相による方法の間に始めて反応的にドープされてもよい。これは特にスパッタリングガスのアルゴンおよび酸素にジボロンBを添加することによって達成することができる。
【0017】
低いドーパント含有量は製造すべき膜に有利にも改善された透過率を生じさせる。透過率値は一般に赤色および赤外のスペクトル範囲を意味する400〜1100nmのスペクトル範囲に亙る平均値に関する。同時に低いドーピング含有量はドーパント原子の濃度を減少させ、それによって、イオン化された散乱場所においての散乱効果も減少されそして電荷キャリヤーの可動が一般に増加される。アルミニウムは特に効果的なドーパントであることが判った。
【0018】
基板を約200℃以上の温度に加熱する。有利な温度は250℃以上であり、特に300℃以上が有利である。非特許文献[2]ではZn汚染の危険の増加を基板温度の増加で予想し、そしてそれ故に150℃より高くない基板温度が推奨されているが、本発明の方法で数ケ月に亙って運転した場合でも高温が汚染による悪影響を一様にはもたらさない。
【0019】
この製造方法は一般に溶着空間における反応性ガス流または反応性ガス分圧を監視することを必要とする。反応性ガスとして酸素が使用されそしてスパッタリングガスとしてアルゴンおよび酸素が使用される。場合によってはオゾンを用いることも考えられる。一般にArは非反応性スパッタリング操作のために使用されそして酸素およびアルゴンは酸化物膜をスパッタリングするために使用される。転換モード(transition mode)において反応プロセスの色々な作業点を安定化するために、プラズマ放出モニター(PEM)が使用される。原子状亜鉛の放出線の強度は、反応容積への酸素流を制御するために評価活用される。作業点は亜鉛放出の一定している強度によって特徴付けられる。安定化の他の可能な方法は、例えばラムダ(Lambda)センサーで測定できる酸素分圧を制御するものである。
【0020】
各作業点はZnO:Al膜の種々の材料特性、特に後続のエッチング段階に従って種々の表面粗面度をもたらすことができる。それ故に予備段階においてその他は同じ方法条件のもとで、始めてZnO膜が種々の作業点で製造される。これは、その他の同じ条件、例えば溶着圧、基板温度、出力およびフィルム厚のもとで種々の安定作業点がヒステリシスに沿ってまたは不安定なヒステリシス域に設定されそして相応する膜が製造されるとを意味する。
【0021】
転換モード(transition mode)での反応法の種々の作業点を安定化するために、プラズマ放出モニター(PEM)が使用できる。原子状亜鉛の放出線の強度は、反応容積への酸素流を制御するために評価活用される。作業点は亜鉛放出の一定した強度によって特徴付けられる。
【0022】
所定の方法パラメータ、例えば出力、溶着圧および温度の場合には、不安定なプロセス範囲内にあり得る安定化作業点がS字状経過を示す。本発明に従う作業点は次の規準に基づいて選択される:
作業点はヒステリシスの不安定範囲内に位置しておりそしてプロセス制御を必要とする。および
作業点はヒステリシス領域の高い方の領域、即ち金属の領域に同時に位置している。
【0023】
しかしながらこの様に製造された膜は透明度および導電性の意味において確実に最小限の要求を満足させなければならない。この場合、比抵抗は1×10−3Ωcmより小さくあるべきでありそして透過性は80%より大きくあるべきである。条件が酸化物状であればある程、膜の比抵抗は一般に益々大きい。
【0024】
本発明の方法で製造されたZnO膜は後処理前に以下の性質を示す:
- 製造される膜のドーパント、特にアルミニウムの含有量は3.5原子%より少なく、 好ましくは3原子%より少なく、特に好ましくは2.5原子%より少なくそして1.5原子%より多い。
- 比抵抗は1×10−3Ωcmより小さく、特に好ましくは5×10−4Ωcmより小さい。
- 電荷キャリヤー可動量(charge carrier mobility)は25cm2/Vsより大きく、特に好ましくは35cm2/Vsより大きい。
- 透過率は80%より多く、特に好ましくは82%より多い。この透過率は膜を有するガラス基板系に有効であり、珪素系ソーラーモジュールに使用できる400nm〜1100nmの間の範囲の平均値である。
【0025】
ZnO膜の製造後に後処理を湿式化学エッチングまたは乾式エッチングの形で実施する。このエッチング段階によってZnO−膜の表面は構造化されそして珪素薄膜太陽電池で使用した時に規準に従って始めて高い電流密度を可能とする粗面がもたらされる。本発明の方法はZnO膜に均一な粗面度をもたらし、例えば少なくとも30nmで最大300nmのRMS−粗さを実現する。この粗さは一般にある点までエッチング期間に比例して増加する。粗さの下限値はエッチング期間を変えることによって殆ど任意の小さな値から上限にまで調整することができる。一定量の粗さはスパッタリング工程の後に既に存在しているので、少なくとも1nmよりも多い値を下限と見なすことができる。上限の粗さは形成する表面構造に依存している。
【0026】
エッチング法に従うこの方法(δRMS)のRMS−粗さは一般に30nm〜300nmの範囲にある。RMS−粗さ(二乗平均粗さの平方根:root mean square roughness)は平均粗さを意味する。α:Siについては50〜100nmの平均粗さが有利であることが証明されており、微小珪素太陽電池についてはそれは50〜300nmである。両方の種類の太陽電池を含めた太陽電池は50〜200nmの平均粗さが有利である。
【0027】
この後処理段階の後で始めて、ZnO−膜の品質および太陽電池のための前面接触部としての適正は、太陽電池でそれを使用することによって最も信頼できるものと評価される。この場合、特に太陽電池の特徴的データが測定される。それ故に、従来には、太陽電池で使用するのに必要とされる膜性質を確実に表現する確な理論的作業が存在しなかったので、これらの処置が必要とされる。
【0028】
ZnO:Al膜の製造に続いて行われるエッチングのためのエッチング条件は膜の性質に無関係に変えることができる。それ故にこれらは本発明のベースとなる膜製造パラメータの一部ではない。エッチング後の表面構造は膜の性質自体によって実質的に決められる。細かな最適化はエッチング時間の変更によって行う。エッチング媒体、例えば酸または苛性アルカリ溶液の選択も最終的結果に影響し得る。一般に希釈した塩酸(HCl)が膜の粗面化に使用される。
【0029】
これまでは、ZnO膜の光学的および電気的性質が最適であるようにスパッタリング工程の作業時点が調整されている。これに対してこの作業時点は本発明の方法において各膜のエッチング挙動を制御するための重要なパラメータとして使用される。この場合、電気的および光学的性質の意味での最低限の要求が考慮される。
【0030】
本発明の方法の有利な一つの実施態様は、中波(mf)励磁を有する二重電磁管装置を使用することである。更に、スパッタリングの間にキャリヤーの直ぐ下で基板を前後に動かす動的実施法としてこの方法を実施することが有利であることが判った。
【発明の有利な実施の形態】
【0031】
本発明の対象を図面および例示によって以下に更に詳細に説明するが、これらは本発明の対象を限定するものではない。
【0032】
図1はZnO:Al膜の透過率を示している。
【0033】
図2は放電電圧(U)およびプラズマ放出(PEM)強度を酸素流の関数として概略的に示している。
【0034】
図3は本発明に従う作業点の特徴を示す酸素流との関係で発電機電圧およびプラズマ放出強度を示している。
【0035】
図4は希薄な塩酸中でエッチングした後の種々のZnO−膜のSEM表面写真を示しており、図4aは本発明の作業点によって製造された膜でありそして図4bは金属領域での最適でない作業点によって製造された膜である。
【0036】
図1は色々なアルミニウム含有量のターゲットからスパッタリング加工されたZnO:Al−膜の透過率を示している。スペクトルの赤色および赤外部分での透過率はアルミニウム含有量の増加と共に減少する。微小結晶珪素ソーラーモジュールで用いるためには約1100nmまでの高い透明度が必要であり、従って低いアルミニウム含有量が有利である。
【0037】
図2は反応性スパッタリング法のヒステリシス領域(2本の点線の間)の概略図である。低い酸素流で高い放電電圧の場合、安定なプロセス・ウインドーMが金属領域にあり、高い酸素流で低い放電電圧の場合には安定なプロセス・ウインドーがOの酸化領域にある。Uは全金属領域におけるスパッタリング工程の間の放電電圧を示しており、UOXは完全酸化工程での放電電圧である。
【0038】
更に図2の上部では以下の意味が当てはまる:
領域I:プロセス制御が必要な不安定なプロセス領域
領域A:所望の性質を有する本発明に従って選択される作業点のためのプレセス・ウインドー
領域O:酸化物領域の安定なプロセス・ウインドー
領域M:金属領域の安定なプロセス・ウインドー
U1点:安定な金属プロセスと不安定なプロセスとの間の転移点
U2点:安定な酸化物プロセスと不安定なプロセスとの間の転移点
W点: 安定化されたプロセス曲線の屈曲点
図の下の方の部分には、個々の作業点A〜A16が、酸素流に対する原子状亜鉛のプラズマ放出(PEM)の強度のプロセス曲線上に記している。作業点は制御変数としての酸素流での一定のPEM−強度によって決定される。点A〜Aは、本発明の範囲内の特に適しているものとして選択される不安定領域の作業点を示しており、他方、作業点A〜Aは製造された膜において最適な電気的性質を発現する。
【0039】
種々の作業点は種々のアルミニウム含有量と同様に膜の透過率に影響を及ぼす。
作業点を酸化次第で選択すればする程(PEM強度が低ければ低い程)、赤色および赤外領域での透過率が高い。
【0040】
本発明の範囲内で選択される、適する操作点のための範囲はUとWとの間のプロセス曲線上の範囲として図2の上部に示している。これはプロセス制御作業点が不安定な金属領域に位置するものであるべきことを意味している。
【0041】
図3は、これの原理を例示している。ここには、酸素流に対してのそれぞれの異なるプロセスパラメータ、例えば溶着圧、出力および温度を用いる三シリーズがプロットされている。上部は放電電圧に比例する発電機電圧に対してのプロットである。三つの例示した曲線は4、8および10kWの異なる出力レベルによって生じる、X−軸から擦れる曲線過程を示している。いずれのシリーズにおいても不安定なプロセス領域は点線で記してある。中央の曲線の場合には、追加的に三つの選択された作業点D、EおよびFが書き込まれている。
【0042】
図3の下部にPEM強度に対して示された三つのシリーズの例示においては、追加的な二つの別の作業点AaおよびAbが記入されている。
【0043】
図4は、上記の作業点AおよびAで製造されるZnO:Al膜の走査電子顕微鏡(SEM)での表面写真を示している。製造後に膜を薄い塩酸(HCl)でエッチング加工する。FIG.4a)は本発明の範囲から選択される作業点Aでの膜の写真を示している。平均粗面度は約70nmである。
これに対して作業点Aでの膜は太陽電池で使用した時に著しく低い性能水準を生じる明らかに小さい粗面度を有している。
【0044】
本発明は、一つのシリーズにおける最善の電気的性質のための作業点から意図的に出発しそしてそれに対してプロセス曲線の金属の不安定領域に作業点を選択する反応性スパッタリングによって、基板上に導電性で透明の酸化亜鉛膜を生じさせる方法を提供する。
【0045】
下記表は本発明の範囲内で製造される、種々のZnO基板上に製造される太陽電池の性質を示している。表に記載の性質はプラズマ強度PEM、溶着速度、エッチング前の膜の比抵抗ρ、効率η、スペースファクターFF、開路電圧Vocおよび短絡電流密度JSCである。
【0046】
【表1】

【0047】
各膜は図2に示したヒストリシスおよびそれの安定化の色々な領域で製造されている。これらの各膜を以降で説明する。
【0048】
粗くエッチング加工された膜を太陽電池において基板として使用する。幾つかの膜およびこれらの基板膜の太陽電池の性質が表に記載されている。領域Aは本発明に従って製造された膜を示している。膜D−Fはこの領域での製造パラメーターの精密最適化を実証している。膜G−Iは、従来技術に相当しそして電気的に最良の膜を提供する、ヒストリシス曲線の上部領域での反応プロセスの金属領域で製造されている。
【0049】
変更したエッチング挙動およびそれから得られる粗面度は太陽電池における電流収率を著しく増加させ得る(領域AおよびM参照)。これに対して増加した抵抗による損失は酸化スパッタリング加工した膜の場合に太陽電池の効率を制限する。高い抵抗のために接触膜として適していない膜J(領域O)は、極めて特別な場合である。作業点によって変更した電気的収率は残りの製造パラメータ、例えば基板温度および溶着圧と無関係に観察できる。太陽電池の開路電圧は使用される基板によって容易に影響され得る。しかしながらこの影響は比較的に低い。符号Kを付した膜K〜Mは基板温度T<220℃で製造されそして珪素太陽電池のための良好なZnO:Al基板膜を製造するために、高い基板温度が必要とされることを明瞭に実証している。低すぎる温度でスパッタリング加工された基板の全ての太陽電池の特徴は悪い性能に反映されるという欠陥を示す。非反応的にスパッタリング加工された膜Nを比較用膜として示している。膜Nは太陽電池において最良の性質を示すが、溶着速度が遅い(1/10)ためにソーラーモジュールの工業的生産では価格的に有効に使用することができない。後者および本発明に従う領域Aからの膜は太陽電池において8%の良好な効率水準を示す。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】はZnO:Al膜の透過率を示している。
【図2】は放電電圧(U)およびプラズマ放出(PEM)強度を酸素流の関数として概略的に示している。
【図3】は本発明に従う作業点の特徴を示す酸素流との関係で発電機電圧およびプラズマ放出強度を示している。
【図4】は希薄な塩酸中でエッチングした後の種々のZnO−膜のSEM表面写真を示しており、図4aは本発明の作業点によって製造された膜でありそして図4bは金属領域での最適でない作業点によって製造された膜である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性スパッタリングによって基板上に導電性で透明な酸化亜鉛膜を生成し、プロセスにヒステリシス領域を有している方法において、以下の方法段階
− ドーピング剤を含有する金属Znターゲットを使用し、該ターゲットのドーピング剤含有量が2.3原子%より少なく、
− 基板のための加熱器を、200℃より高い該基板温度に調整される様に調整し、
− 190nm/分より早い静的溶着速度に相当する50nm*m/分より早い動的溶着速度に調整しそして
− 安定な金属プロセスと不安定なプロセスとの間の転換点と安定化されたプロセス曲線の屈曲点との間に位置する、不安定なプロセス領域内で安定化した作業点を選択する
を特徴とする、上記方法。
【請求項2】
1.5原子%より少ない、特に1原子%より少ないドーピング剤含有量のターゲットを使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ドーピング剤としてアルミニウムを含有するターゲットを使用する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
基板を250℃以上の温度、好ましくは300℃以上の温度に加熱する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
300nm/分より早い、特に380nm/分より早い静的溶着速度に相当する80nm*m/分より早い、特に100nm*m/分より早い動的溶着速度に調整する、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
中波(mf)励磁を有する二重電磁管装置を使用する、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
基板をスパッタリングの間動かす動的進行法として実施する、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法で製造できる導電性で透明な酸化亜鉛膜において、製造された酸化物膜中のドーピング剤、特にアルミニウムの含有量が3.5原子%より少なく、比抵抗が1×10−3Ωcmより小さく、荷電キャリヤーの可動が25cm/Vsより大きくそして400〜1100nmの平均化透過率が80%より多い、上記酸化物膜。
【請求項9】
ドーピング剤含有量が3原子%より少なく、好ましくは2.5原子%より少ない、請求項8に記載の酸化物膜。
【請求項10】
比抵抗が5×10−4Ωcmより小さい、請求項8または9に記載の酸化物膜。
【請求項11】
電荷キャリヤーの可動が35cm/Vsより大きい、請求項8〜10のいずれか一つに記載の酸化物膜。
【請求項12】
400〜1100nmの平均化透過率が82%より多い、請求項8〜11のいずれか一つに記載の酸化物膜。
【請求項13】
膜がドーピング剤としてアルミニウムを含有している、請求項8〜12のいずれか一つに記載の酸化物膜。
【請求項14】
請求項8〜13のいずれか一つに記載の酸化物膜を太陽電池で用いる方法。
【請求項15】
結晶質シリコン薄膜太陽電池において用いる請求項14に記載の方法。
【請求項16】
アモルファスおよび結晶質珪素のタンデム型太陽電池で用いる請求項14に従う方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a)】
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【図4b)】
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【公表番号】特表2007−524000(P2007−524000A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549855(P2006−549855)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【国際出願番号】PCT/DE2005/000059
【国際公開番号】WO2005/071131
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(390035448)フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (100)
【Fターム(参考)】