説明

透明ガスバリアフィルム

【課題】 均一な膜厚組成を有する透明バリアフィルムを提供することにある。
【解決手段】 蒸着法により少なくとも片面に金属、あるいは無機酸化物層を積層したプラスチックフィルムを連続的に製造する際に、プラスチックフィルムの幅方向に100mm以上500mm以下であり、かつプラスチックフィルムと蒸着源との間隔が250mm以上の位置に少なくとも2台の蛍光X線を利用したモニターを配置し、形成した金属あるいは無機酸化物層の膜厚及び組成を測定しながら製造することを特徴とするロール状の長尺な透明ガスバリアフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
透明性、ガスバリア性、耐屈曲性に優れた食品、医薬品、電子部品等の気密性を要求される包装材料、または、ガス遮断材料として優れた特性を持つフィルムの製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム蒸着フィルムをロールコーター型蒸着装置で作成する場合、光学式膜厚モニターを用いて、アルミニウムの膜厚を測定し、膜厚を制御する方法が知られている。この膜厚計は、アルミニウムの膜厚が厚くなるにしたがって光の透過度が低下することを利用したものである。また、アルミニウムでは膜厚が面抵抗と関係することを利用した方法もある。また、近年、SiOx、Alといった無機酸化物をアルミニウムの代わりに蒸着し、包装用途等に利用されてきた。これらの無機酸化物はアルミニウムに比較して非常に透明であるが、若干の着色があるため、この色の光吸収を利用して光学式膜厚計を利用している。
【0003】
更に、蛍光X線を利用した方法もある。この方法は、原子にX線を照射するとその原子特有の蛍光X線を放射する現象を利用した方法であり、放射される蛍光X線強度を測定することにより原子の存在数を知ることが出来る。この情報より膜厚を測定する方法である。
【0004】
連続蒸着装置で膜厚の分布を測定するために、光学式膜厚計をフィルム流れ方向(以下MDと言う)と直角方向であるフィルム幅方向(以下TDと言う)に一定の間隔で設置し、フィルムのMD、TDの膜厚測定を行う装置が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明によれば、効率よく透明ガスバリアフィルムの膜厚が測定でき、更に本発明の推定法を使用すれば、一層精度よく膜厚組成を知ることができる。また、本発明を膜厚制御と組み合わせれば、均一な膜厚組成を持った透明バリアフィルムを作成することができる。そのため、透明性、ガスバリア性が要求される食品、医薬品、電子部品等の包装材料として好適に使用することができる。
しかしながら、上記測定方法の何れのモニターも数十mmφ程度の範囲の膜厚を測定できるに過ぎない。したがって、フィルムの走行方向(MD)については連続的に測定できるが、TDに対してはモニターが設置してある場所のみしか膜厚の測定ができないという問題がある。例えば、モニター間で膜厚組成が目標値とずれた場合でも、膜厚異常との認識ができなく、不良品を生産し続けることになる。
すなわち、本発明の目的は、効率よく透明ガスバリアフィルムの膜厚が測定でき、更に均一な膜厚組成を有する透明バリアフィルムの製造装置および製造方法を提供することにある。また均一な膜厚組成を有する透明バリアフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、蒸着法により少なくとも片面に金属、あるいは無機酸化物層を積層したプラスチックフィルムを連続的に製造する際に、形成した金属あるいは無機酸化物層の膜厚、あるいは膜厚及び組成を測定する位置の間隔が、プラスチックフィルムの幅方向に100mm以上500mm以下であり、かつプラスチックフィルムと蒸着源との間隔が250mm以上であることを特徴とする透明ガスバリアフィルムの製造装置である。更に、該装置を用いて、蒸発分布特性より計算される膜厚および組成分布関数を測定点に一致するようにして、測定位置間の膜厚組成を推定しながら製造することを特徴とする透明ガスバリアフィルムの製造方法である。
【0007】
また本発明は、蒸着法により少なくとも片面に金属、あるいは無機酸化物層を積層したプラスチックフィルムを連続的に製造する際に、プラスチックフィルムの幅方向に100mm以上500mm以下であり、かつプラスチックフィルムと蒸着源との間隔が250mm以上の位置に少なくとも2台の蛍光X線を利用したモニターを配置し、形成した金属あるいは無機酸化物層の膜厚及び組成を測定しながら製造することを特徴とするロール状の長尺な透明ガスバリアフィルムである。
【0008】
この場合において、前記膜厚モニターにより測定する値と膜厚計測定位置間にあり計測できない位置の膜厚組成値を約±20%以内の差にすることが好適である。
【0009】
またこの場合において、蒸発分布特性より計算される膜厚および組成分布関数を測定点に一致するようにして、測定位置間の膜厚組成を推定しながら製造することが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、効率よく透明ガスバリアフィルムの膜厚が測定でき、更に本発明の推定法を使用すれば、一層精度よく膜厚組成を知ることができる。また、本発明を膜厚制御と組み合わせれば、均一な膜厚組成を持った透明バリアフィルムを作成することができる。そのため、透明性、ガスバリア性が要求される食品、医薬品、電子部品等の包装材料として好適に使用することができる。
【0011】
また、膜厚計により測定する値と膜厚計測定位置間にあり計測できない位置の膜厚組成値を約±20%以内の差にすることができ、均一な膜厚組成を有する透明バリアフィルムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に本発明を詳細に説明する。本発明でいう無機酸化物とは、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物と酸化ケイ素等の半金属酸化物、またこれらの複合物を言う。酸化が完全でなく酸素を若干欠損したもの、例えばSiOx(x=1.5〜1.9)といった表現をする無機酸化物を含む。
【0013】
本発明でいう連続的に製造するとは、ロール状の長尺なフィルムを巻出し、巻取りながら無機酸化物層をフィルム上に連続的に積層する製造法をいう。
【0014】
本発明で使用する蒸着法は、一般的に使用している抵抗加熱法、誘導加熱法、電子ビーム加熱法を使用することができる。モニターを使った膜厚制御を行う場合、電子ビーム蒸着法が制御性の面から好ましい。
【0015】
本発明でいうプラスチックフィルムとは、有機高分子を溶融押し出しをして、必要に応じ、長手方向及び/又は幅方向に延伸、冷却、熱固定、弛緩処理を施したフィルムであり、有機高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタート、ポリエチレン−2、6−ナフタレート、ナイロン6、ナイロン4、ナイロン66、ナイロン12、ポリ塩化ビニール、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニールアルコール、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイドなどがあげられる。また、これらの(有機重合体)有機高分子は、他の有機重合体を少量共重合したり、ブレンドしたりしてもよい。
【0016】
更にこの有機高分子には、公知の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤などが添加されていてもよく、その透明度は特に限定するものではないが、透明性を利用したフィルムの観点より70%以上の光線透過率をもつものが好ましい。
【0017】
本発明に使用するプラスチックフィルムは、薄膜層を積層するに先行して、該フィルムをコロナ放電処理、グロー放電処理、その他の表面粗面化処理を施してもよい。また、公知のアンカーコート処理が施されていてもよい。本発明に使用するプラスチックフィルムは、その厚みが5〜1000μmの範囲が好ましく、更に好ましくは10〜500μmの範囲である。
【0018】
本発明でいう膜厚及び組成を測定する位置の間隔とは、プラスチックフィルムがMDに移動するのにしたがい、少なくとも2台のモニターが測定しているスポット範囲の重心が描く軌跡の直線あるいは曲線の最短距離を言う。例えば、モニターをプラスチックフィルムのTDに一直線上に配置した場合は、スポット範囲の重心位置が距離となるが、TDに直線上に配置させずに直線に対して千鳥状に配置した場合は、図1に示す距離となる。更に、モニターがTD等に走査する場合には、図2に表示されるように、過去に測定した値と現在測定している値とが同一と考えられる範囲でもっとも接近した距離となる。
【0019】
本発明でいうプラスチックフィルムと蒸着源との間隔とは、蒸発している蒸着材料面と蒸発蒸気により金属あるいは無機蒸着層を形成している蒸着源と対面しているプラスチックフィルム部分とのもっとも近い距離を言う。ロールコーター式連続蒸着装置では、プラスチックフィルムに蒸着蒸気が接触する時にプラスチックフィルムが熱によるダメージを受けないように冷却したロール(以下センターロールと言う)に密着して蒸着するが、実質的にはこのロール面と蒸発面間の距離がプラスチックフィルムと蒸着源との距離である。
【0020】
本発明でいう蒸発分布特性とは、蒸発源で均一に蒸発していると考える表面(以下単位蒸着源と言う)より蒸発した蒸気が基板に接触し堆積したときにできる膜厚分布である。蒸発分布特性は、主として蒸着源位置と基板の位置とで決まる関数として記述できる。蒸発分布特性は実際に蒸着し求めてもよいし、公知の基本蒸着分布より計算で求めてもよい。例えば、アルミニウム蒸着において使う抵抗加熱方式の場合、蒸着源である多数のボートをTDに並べて設置する。蒸発分布特性は、1個のボートのみを蒸発させたときのフィルム上の膜厚分布になる。誘導加熱方式の場合、炭素ルツボ1個のみ蒸発させたときの分布となる。電子ビームを使用した蒸着法の場合、電子ビームのスポットの大きさを単位に考えてもよいし、単位と考えられる電子ビーム走査範囲を単位としてもよい。
【0021】
蒸発分布特性は、各単位蒸着源ごとに個別のものを使用してもよいし、共通のものを使用してもよい。また蒸発分布特性は、時間、電力等を変数として含んでいてもよい。例えば、誘導加熱方式でアルミニウムを蒸着する場合、時間とともにアルミニウムが減少して蒸発面が下がる。これに伴い蒸着分布が変化する場合、変数として時間を含めた関数を使用することで精度を向上することができる。
【0022】
蒸発分布特性は、精度向上のために複雑な関数を使用してもよいし、計算速度向上のために簡単な関数、例えばガウス関数、ローレンツ関数、ボイクト関数を利用して近似してもよい。
【0023】
本発明でいう膜厚分布関数とは、該蒸発分布特性の関数に重み係数を掛け重畳することにより得られる関数である。例えば、単位蒸着源が1つの場合、蒸発分布特性に膜厚が一致するように係数をかけた関数が膜厚分布関数となる。この場合組成分布関数は均一である。
【0024】
A,B2種類の異なる材料を別々に蒸発させ、各1個の単位蒸着源より蒸着させた場合は、次の様になる。Aの蒸発分布特性関数をfa(x)、Bの蒸発分布特性関数をfb(x)とする。ここで、xはプラスチックフィルム上のTD方向の位置を表す。MD方向に関しては、プラスチックフィルムが移動しているので均一である。膜厚分布関数t(x)は、下記の式(1)によって求めることができる。式(1)に記載のka、kbは係数である。また、A成分の組成分布関数c(x)は下記の式(2)によって求められ、組成は重量%(w%)で表される。式(2)に記載のρは比重である。
【0025】
t(x)=ka×fa(x)+kb×fb(x)・・・(1)
【0026】
c(x)=ρa×ka×fa(x)/(ρa×ka×fa(x)+ρb×kb ×fb(x))・・・(2)
【0027】
数個の同一単位蒸着源をTDに並べた場合、抵抗加熱蒸着法によるアルミニウム蒸着フィルムの製造に適応できる。例えば、10個のボートが並んだ場合膜厚分布関数t(x)は、下記の式(3)で求めることができる。式(3)で、a1…a10は各ボートの係数である。ここで、各ボートの蒸発分布特性を同じとすると、下記の式(4)で表すことができる。式(4)で、x1…x10はボートのTD位置を示す。組成分布関数は、単一材料であるから均一である。
【0028】
t(x)=a1×f1(x)+…+a10×f10(x)・・・(3)
【0029】
t(x)=a1×f(x1−x)+…+a10×f(x10−x)・・(4)
【0030】
電子ビームによりSiOを加熱し蒸着する場合、電子ビームスポットを単位蒸着源とし、f(xr,yr,x)で蒸発分布特性関数を与える。(xr、yr)は蒸着材料上のビームスポット位置である。膜厚分布関数は、下記の式(5)で示され、加熱している領域をいくつかに区切りそこを単位蒸着源とすれば、先の例と同様に求めることができる。
【0031】
【数1】

【0032】
本発明でいう膜厚、組成分布関数を測定点に一致する方法とは、測定した膜厚、組成に合致するように膜厚、組成分布関数を計算する際に、蒸発分布特性関数にかかる係数を調整する方法である。数学的手法としては、膜厚組成の測定値を膜厚組成分布関数で係数を変数とし、最小二乗近似する方法がある。
【0033】
本発明でいう測定位置間の膜厚組成を推定する方法とは、該手法により求まる膜厚、組成分布関数にプラスチックフィルム上の位置を入力することにより推定値を求める方法である。
【0034】
本発明に使用する膜厚を測定する方法としては、公知の膜厚計が使用できる。本発明に適した膜厚計としては、光学式膜厚計がある。光学式膜厚計は蒸着したプラスチックフィルムの片面より光を投入し、反対側より蒸着フィルムを通過してきた光を受光し、その通過光の減衰率より膜厚換算するものである。光源あるいは受光部あるいはその両方に、光の波長選別機能を付加し形成した金属、あるいは無機酸化物層の特有の吸収光を使うことで感度を上げることができる。光学式膜厚計は、小型化でき安価である特徴を有する。反面、無色透明な物質や2種類以上の物質を含む層の組成を知ることができないという欠点がある。
【0035】
本発明で使用する膜厚計としては、蛍光X線が最も適している。この方法は、原子にX線を照射すると、その原子特有の蛍光X線を放射する現象を利用した方法で、放射される蛍光X線強度を測定することにより原子の存在数を知ることが出来る。この情報より、膜厚を測定する方法である。蛍光X線を使用した膜厚計では、膜厚だけでなく形成した金属、あるいは無機酸化物層の組成も測定することができる。
【0036】
(作用)
本発明の装置を使用することにより、膜厚計により測定する値と膜厚計測定位置間にあり計測できない位置の膜厚組成値を約±20%以内の差にすることができる。つまり、膜厚計により測定する値を膜厚計測定位置間にあり計測できない位置の膜厚組成値として使用しても、膜厚及び組成を測定する位置の間隔がフィルムの幅方向に500mmより離れた場合、膜厚組成の値が急激に測定値と一致しなくなくなる。
【0037】
膜厚及び組成を測定する位置の間隔が、フィルムの幅方向に500mm以下の場合では、その間隔が短いほど精度が向上し好ましい。しかしながら、その間隔を100mm未満より短くしすぎると、必然的に膜厚計数を多くする必要があり、装置のコストが高くなってしまう。また、膜厚計の大きさによる制限もある。好ましくは、膜厚及び組成を測定する位置の間隔は400mm以下で100mm以上である。
【0038】
同様に、プラスチックフィルムと蒸着源との間隔を250mm未満にした場合、膜厚組成の値が急激に測定値と一致しなくなる。ただし余り間隔を広くすると、蒸着材料の利用効率が低下し好ましくない。好ましくは、300mm以上500mm以下である。
【0039】
更に、蒸発分布特性より計算される膜厚及び組成分布関数を測定点に一致するように測定位置間の膜厚組成を推定する方法を使用することで、膜厚計測定位置間にあり計測できない位置の膜厚組成値が、真値の約±10%以内の誤差で推定することができる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例をあげて本発明を説明する。
【0041】
(実施例1)
プラスチックフィルムとして、幅1100mm、フィルム厚さ12μm、長さ12000mのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡(株)製 E5100)を用いた。蒸着装置は、ロールコーター式誘導加熱蒸着装置を用いた。ルツボは、直径約200mmの炭素製ルツボを使用し、1200mm幅に6個設置し、誘導コイル断熱材をルツボ周りに設置するために、TDに一直線でなく2列に千鳥状に設置した。ルツボとポリエチレンテレフタレートフィルムとの間隔は300mmとした。膜厚計は光透過式膜厚計を使用し、ポリエチレンテレフタレートフィルムのTDに150mmの間隔で7台設置した。ポリエチレンテレフタレートフィルムの速度を約200m/minとし、真空度4.2×10−2Pa下でアルミニウム蒸着を行った。ただし、アルミニウムの膜厚を制御するために、ポリエチレンテレフタレートフィルムの速度は調整した。アルミニウムの膜厚は20nmを目標とした。約8000mで1個のルツボへの電力供給を停止し、合計で約10000m蒸着を行った。
【0042】
蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムをMDに1000mごとに切断し、TDに50mm間隔で膜厚の測定を行った。結果を表1に示す。蒸着層の膜厚は、蛍光X線分析装置(理学電機製 システム3270)により測定した。この際、あらかじめICP原子吸光装置で分析した膜厚が既知のフィルムを使い、膜厚とX線強度間の検量線を作成し、得られたサンプルのX線強度から膜厚を求めた。
【0043】
また、5000mと10000mとの光透過式膜厚計による出力値を表2に示す。図3に膜厚計の出力を基準(1.0)とし、オフライン(1000mごとに切断しての測定)で測定した値と比較した。光透過式膜厚計の値がないところは近い膜厚計の値と比較した。図3で示すように、TD位置が−450mmより450mmの範囲に150mm間隔で設置した膜厚計で測定していない膜厚計間の位置の値も、膜厚計で測定している値に対して約±20%以内に入っていた。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
(比較例1)
実施例1において、TD位置が−450mmと150mmとの間に膜厚計を設置していないとすると、図3に示すように膜厚計間の膜厚値は約±20%以上異なっていた。
【0047】
(実施例2)
蛍光X線膜厚計をTDに400mm間隔で設置した電子ビーム加熱蒸着装置を用い蒸着を行った。蒸着材料として3〜5mm程度の大きさの酸化アルミニウム(Al)純度99%以上と酸化シリコン(SiO)純度95%以上を用いた。蒸着材料はTDに酸化アルミニウムと酸化シリコンを幅約100mm毎に交互に合計1200mm幅で設置した。プラスチックフィルムとして幅1100mm、フィルム厚さ15μm、長さ12000mのナイロンフィルム(東洋紡(株)製 N2102)を用いた。ナイロンフィルムと蒸着材料との間隔は350mmとした。ナイロンフィルムの走行速度は200m/minとした。酸化アルミニウムと酸化シリコンとの混合層の目標膜厚は20nm、目標組成は酸化アルミニウム30w%である。電子ビームの投入電力は約100kwである。酸化アルミニウムと酸化シリコンとの混合比率は、酸化アルミニウムと酸化シリコンを電子ビームで走査している時間を調整して行い、酸化アルミニウム7.3msecに対し酸化シリコン2msecとした。約7000m蒸着した時点で、6個の酸化アルミニウム材料のうち、1つの加熱時間を1msecとし投入電力を約90kwとして蒸発を止め、その後3000m蒸着した。
【0048】
蒸着したナイロンフィルムをMDに1000mごとに切断し、TDに50mm間隔で膜厚及び組成の測定を行った。測定は蛍光X線分析装置(理学電機製 システム3270)を使用し、あらかじめICP原子吸光装置で分析した既知のフィルムを使い検量線をきめた。膜比重の測定は浮沈法を使用した。またナイロンフィルムには滑剤としてシリカが入っているため、その影響はフィルムからの影響分を計算することで差引きした。結果を表3、表4に示す。また、5000mと10000mとの膜厚計出力値を表5、表6に示す。実施例1と同様に、蛍光X線膜厚計の膜厚出力を基準として各位置の膜厚を図4に示す。TD位置が−400mmより400mmの範囲に400mm間隔で設置した膜厚計で測定していない膜厚計間の位置の値も、膜厚計で測定している値に対して約±20%以内に入っていた。
【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
【表6】

【0053】
(比較例2)
実施例2において、−400mmと400mmとの間に膜厚計を設置していないとすると、図4に示すように膜厚計間の値は約±20%以上異なっていた。
【0054】
(実施例3)
実施例2で求めた膜厚及び組成分布関数から膜厚組成を推定した。蒸発分布特性は、一般に知られている点蒸着源の蒸発則cosθ則をもとに細い線状蒸着源の式を使い求めた。使用した式は下記の式(6)である。各酸化アルミニウムと酸化シリコンの蒸着分布関数は同じとした。式(6)で、Cは定数、Lは蒸着源の長さ、hは蒸着源とプラスチックフィルム面までの距離、xはプラスチックフィルムのTDの位置を表す。得られた結果を表7、表8に示す。
【0055】
f(x)=C[L{h−x+(L/4)}]/{(h+x+( L/2)(h−x)+(L/16)}+1/h[tan−1 [{(L/2)+x}/h]+tan−1[{(L/2)−x}/h ]]・・・(6)
【0056】
【表7】

【0057】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0058】
透明性、ガスバリア性、耐屈曲性に優れた食品、医薬品、電子部品等の気密性を要求される包装材料、または、ガス遮断材料として優れた特性を持つフィルムに利用することができ、産業界に寄与することが大である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、膜厚計を千鳥状に配した場合の測定位置間隔の例である。
【図2】図2は、膜厚計をTDに移動しながら測定した場合の測定位置間隔の例である。
【図3】図3は、実施例1および比較例1でのフィルム幅方向における膜厚の誤差を示したグラフである。
【図4】図4は、実施例2および比較例2でのフィルム幅方向における膜厚の誤差を示したグラフである。
【符号の説明】
【0060】
1 本発明の測定点間隔
2 測定点の軌跡
3 現在の測定点
4 プラスチックフィルム
5 同一の値と考えることができる過去の測定点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着法により少なくとも片面に金属、あるいは無機酸化物層を積層したプラスチックフィルムを連続的に製造する際に、プラスチックフィルムの幅方向に100mm以上500mm以下であり、かつプラスチックフィルムと蒸着源との間隔が250mm以上の位置に少なくとも2台の蛍光X線を利用したモニターを配置し、形成した金属あるいは無機酸化物層の膜厚及び組成を測定しながら製造することを特徴とするロール状の長尺な透明ガスバリアフィルム。
【請求項2】
請求項1記載のロール状の長尺な透明ガスバリアフィルムであって、前記膜厚モニターにより測定する値と膜厚計測定位置間にあり計測できない位置の膜厚組成値を約±20%以内の差にすることを特徴とするロール状の長尺な透明ガスバリアフィルム。
【請求項3】
請求項1記載のロール状の長尺な透明ガスバリアフィルムであって、蒸発分布特性より計算される膜厚および組成分布関数を測定点に一致するようにして、測定位置間の膜厚組成を推定しながら製造することを特徴とするロール状の長尺な透明ガスバリアフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−291527(P2007−291527A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129073(P2007−129073)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【分割の表示】特願平11−219910の分割
【原出願日】平成11年8月3日(1999.8.3)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】