説明

透明導電性基材

【課題】ITO等の透明導電膜と金属電極及びプラスチックシート又はフィルム基材と透明導電膜との密着力に優れたものであり、透明なプラスチック基材、透明導電膜、金属電極がこの順で形成された透明導電性基材を提供する。
【解決手段】透明なプラスチック基材1の一方又は両方の面に、透明導電膜3が形成され、更にその上に金属電極4が形成された透明導電性基材5であって、該基材と各層の層間剥離力が0.5 Kg/cm以上である透明導電性基材を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性基材に関し、特に透明なプラスチックフィルム又はシート上に、透明導電膜を形成し、さらにその上に金属電極を形成した金属電極付き透明導電性基材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の部材等に各種光学用基材が多く用いられ、CRT、LCD、有機EL、PDP等のディスプレイ用フィルムの需要が伸びている。これらにはフィルム状の電極やフィルム上に形成された回路が必要であり、最近は金属酸化物(ITO、ZnO他)膜が使用されている。例えばタッチパネル用のITO膜は指等で何回も変位が加えられるため、非常に高い密着性がベースフィルムには要求される。更にタッチパネルの使用される環境が自動車の中、屋外等で劣悪であり、耐湿、耐熱、耐光(耐UV)性等も要求される。
【0003】
ポリエステルフィルム基材に透明金属酸化層を形成してなる透明導電性フィルムの基材と透明金属酸化層との接着力は(テープ剥離はOKであるが)200 g/cm以下であり、密着力が弱く、長期安定性が不十分で用途によっては透明導電層が機材から剥離し使用出来なかった。
【0004】
上記問題点を改良するために、透明基材に透明な層(易接着層)を塗布しその上に透明導電膜を形成したものが提案されているが接着力は300 g/cm程度であり、まだ不十分なものであった。
【0005】
また、ITO膜を用いた回路の形成はエッチング方法が多くの場合用いられ、ベースフィルムには耐(酸/アルカリ)エッチング性(エッチング時に基材とITO膜の剥がれが発生する、対策は基材とITO膜の接着力向上が必要である)が要求される。
【0006】
基材フィルムとして多く用いられるポリエステルフィルムは、上記の機能層との密着性に乏しいため、一般的にはポリエステルフィルムの表面にポリエステル樹脂、アクリル樹脂やウレタン樹脂を用いた易接着層を積層することや(特許文献1、2)、アルゴンガスを少なくとも50 %含有する雰囲気中で高周波スパッタエッチング処理を施すこと(特許文献3)が提案されているが、密着力は不十分なものであった。
【0007】
また、上記透明導電膜のリード用電極としては(Ag、Au、Cu、C等の)金属ペーストが用いられており以下の問題点があった。
【0008】
1)金属粉をバインダー樹脂(絶縁物)に分散したペーストのため電気比抵抗が高く、電極としての低抵抗を得るためには厚みを厚くする、電極の幅を広くする等の工夫が必要で、表示(透明)部となる透明導電層部分の面積が電極の面積増大に伴い減少する。また、これらペーストは曲げに弱く、曲げ時、電極にクラック、透明導電層からの電極のはがれ等生じるため曲げ使用に対する用途が限定されていた。またITOとAgペースト間の密着力が弱く長期信頼性に欠ける(密着力は高いほど良いが、一般的には0.5 Kg/cm以上、好ましくは1 Kg/cm以上必要とされる)。
【0009】
2)金属ペースト電極の導電メカニズムは、一般的には数〜数十ミクロン程度の金属粉同士の点接触であり接触面積が小さいことから電気抵抗が高く、また、バインダー樹脂の膨張収縮等から電気抵抗が不安定、信頼性(長期安定性)が悪い等の欠点を有していた。
【0010】
3)一般的に金属電極の形成は透明導電膜上に金属ペーストをスクリーン印刷法でパターン印刷し、その後長時間の加熱(150〜180℃×30分程度)乾燥させていた。当該工程のために基材は単板に切断する必要があり、バッチ処理のため多工数となり生産性も著しく低下させていた。また、上記高温加熱により基材からのモノマー、異物等のブルーミングにより基材の白化、ヘーズアップ等により視認性が著しく低下していた。更に、基材の熱収縮及びHC(ハードコート)層と基材の熱収縮の差により、上記高温加熱により、基材が収縮、変形、カールする等形状(寸法)変化による問題もあった。上記バッチ工程時には手作業が多く印刷物の汚れ、作業時の基材折れ、キズ、異物付着等による製品不良が多く発生し、歩留まりを大きく低下させる工程であった。
【0011】
4)金属ペースト電極は、耐擦傷性及び磨耗に弱く、圧着及び繰り返し擦られる部分は、金属電極を印刷・乾燥後に、金属電極上にCペーストをスクリーン印刷、加熱乾燥して形成する工程が必要で、更なる歩留まり低下、コストアップの要因となっていた。
【0012】
5)金属ペースト電極の体積抵抗率は3〜10×10-5Ω・cmと高く電極として用いた場合、電圧降下のため表示サイズを大きく出来ない欠点が有り、電極面積を大きくする、多数の電極を引き回す等困難な対応が必要であり、表示サイズ拡大にも限界があった。
【0013】
6)従来、タッチパネルと電気回路の端子部の電気的機械的接合にはハンダ、異方導電性コネクター、圧着コネクター(ソケット)等が用いられており、上記密着力不足のため構造を複雑にしていた。また、タッチパネルの多機能化により配線の微細化、多数化の傾向があり、接続部の簡略化も含めて、タッチパネルシート面上に電気回路、電気駆動部品等の搭載まで必要となってきており、電極の導電性アップと信頼性アップ、特に基材とITO膜及びITO膜と電極間の密着力アップが要求されている(特に密着力は現状のAgペーストでは不十分で、0.5 Kg/cm以上好ましくは1 Kg/cm以上必要であるといわれている)。
【0014】
表面抵抗(R<50(Ω/□)の低抵抗透明導電膜は、太陽電池、ヒーター、電波シールド等の電極として使用されている。そして、透明電極層(透明だが高抵抗)の上にCu、Ag、Al、Au等の金属層(低抵抗だが不透明)を形成し、金属層をメッシュ状にエッチング処理してR<10(Ω/□)の低抵抗透明電極体とするという提案もある。これらのポイントは透明電極層と金属層及び基材と透明導電膜との密着力不足であり、上記エッチング時に金属層及び透明導電膜層が剥離する、信頼性が悪い等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2003−49135号公報
【特許文献2】特開2003−251776号公報
【特許文献3】特開平2−66811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、ITO等の透明導電膜と金属電極及びプラスチックシート又はフィルム基材と透明導電膜との密着力に優れたものであり、透明なプラスチック基材、透明導電膜、金属電極がこの順で形成された透明導電性基材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
ITO(金属酸化物)膜と金属(特にCu、Al等)膜の密着力は弱いので、これを向上させるためには金属膜蒸着時、金属を酸化物として蒸着形成する。ITO膜上に金属膜形成後、酸素又は真空中で高温加熱(>180℃高温ほど効果有り)する等の方法が提案されているが、いずれも密着力向上は不十分であり、金属膜の酸化が進行し、電気導電性の低下、電極の酸化・機械強度劣化等が信頼性に悪影響を与え好ましくない。
【0018】
各種検討の結果、特定の条件でのプラズマ処理法によりITO層と金属層との密着力を金属層の導電性を損なうことなく向上できるという知見を得た。
【0019】
また、プラスチックフィルム基材上に引張り強さが64 MPa以上である易接着層を形成すること、且つこの易接着層上にプラズマ処理を行うことによりプラスチックフィルム基材とITO薄膜との密着力を向上できるという知見を得た。一方プラスチック基材が上記引張り強さを有するものは、特に易接着層を形成する必要は無い。
【0020】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の透明導電性基材及び透明導電性基材の製造方法を提供するものである。
【0021】
項1.透明なプラスチック基材の一方又は両方の面に、透明導電膜が形成され、更にその上に金属電極が形成された透明導電性基材であって、
該基材と各層の層間剥離力が0.5 Kg/cm以上である透明導電性基材。
【0022】
項2.透明なプラスチック基材の一方又は両方の面上に、引張り強さが64 MPa以上である易接着層を設けた後、透明導電膜を形成し、更にその上に金属電極が形成された透明導電性基材であって、
該易接着層上及び該透明導電膜上にプラズマ処理が、真空度8×10-4 Torr以下で行われていることを特徴とする、透明導電性基材。
【0023】
項3.引張り強さが64 MPa以上の透明なプラスチック基材の一方又は両方の面上に、透明導電膜を形成し、更にその上に金属電極が形成された透明導電性基材であって、
該プラスチック基材上及び該透明導電膜上にプラズマ処理が、真空度8×10-4 Torr以下で行われていることを特徴とする、透明導電性基材。
【0024】
項4.プラズマ処理が真空度4×10-4 Torr以下の条件で行われていることを特徴とする、項2又は3に記載の透明導電性基材。
【0025】
項5.前記プラスチック基材が樹脂成分としてポリエステルを包含する、項2〜4のいずれか一項に記載の透明導電性基材。
【0026】
項6.前記易接着層が前記プラスチックフィルム基材より引張り強さが大きいことを特徴とする、項2に記載の透明導電性基材。
【0027】
項7.透明なプラスチック基材上の一方の面に、引張り強さが64 MPa以上である易接着層、及び透明導電膜がこの順で形成され、更にその上に金属電極が形成された透明導電性基材の製造方法であって、
該透明導電膜を形成する前の該易接着層上、及び該金属電極を形成する前の該透明導電膜上にプラズマ処理を、真空度8×10-4 Torr以下で行うことを特徴とする、製造方法。
【0028】
項8.引張り強さが64 MPa以上の透明なプラスチック基材の一方又は両方の面上に、透明導電膜を形成し、更にその上に金属電極が形成された透明導電性基材の製造方法であって、
該透明導電膜を形成する前の該プラスチック基材上、及び該金属電極を形成する前の該透明導電膜上にプラズマ処理を、真空度8×10-4 Torr以下で行うことを特徴とする、製造方法。
【0029】
項9.項1〜6のいずれか一項に記載の透明導電性基材を備えたタッチパネル。
【0030】
項10.項1〜6のいずれか一項に記載の透明導電性基材を備えた太陽電池。
【0031】
項11.項1〜6のいずれか一項に記載の透明導電性基材を備えた電子ペーパー。
【0032】
項12.項1〜6のいずれか一項に記載の透明導電性基材を備えた透明ヒーター。
【発明の効果】
【0033】
本発明の透明導電性基材は、透明導電膜と金属電極及びプラスチック基材と透明導電膜との密着力が高く、該プラスチック基材と各層の層間剥離力が0.5 Kg/cm以上という優れた特性を有している。更に、金属電極の表面抵抗は低く、透明導電膜と電極間の接触抵抗の長期安定性、及び180度曲げ性にも優れている。
【0034】
本発明の製造方法によれば、透明導電膜と金属電極及びプラスチックフィルム基材と透明導電膜との密着力に優れた、透明なプラスチックフィルム基材、透明導電膜、金属電極がこの順で形成された透明導電性基材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の透明導電性基材の断面図である。
【図2】本発明の透明導電性基材の断面図である。
【図3】抵抗膜式タッチパネルの一例の断面を示す模式図である。
【図4】抵抗膜式タッチパネルの一例の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の透明導電性基材及び透明導電性基材の製造方法について詳細に説明する。
【0037】
本発明の透明導電性基材は、透明なプラスチック基材の一方又は両方の面に、透明導電膜が形成され、更にその上に金属電極が形成された透明導電性基材であって、該プラスチック基材と各層の層間剥離力が0.5 Kg/cm以上であることを特徴とする。
【0038】
本発明の透明導電性基材の製造方法は、透明なプラスチック基材上の一方の面に、引張り強さが64 MPa以上である易接着層、及び透明導電膜がこの順で形成され、更にその上に金属電極が形成された透明導電性基材の製造方法であって、該透明導電膜を形成する前の該易接着層上、及び該金属電極を形成する前の該透明導電膜上にプラズマ処理を、真空度8×10-4 Torr以下の条件で行うことを特徴とする。また、本発明の透明導電性基材の製造方法は、引張り強さが64 MPa以上の透明なプラスチック基材の一方又は両方の面上に、透明導電膜を形成し、更にその上に金属電極が形成された透明導電性基材の製造方法であって、該透明導電膜を形成する前の該基材上、及び該金属電極を形成する前の該透明導電膜上にプラズマ処理が、真空度8×10-4 Torr以下で行うことを特徴とする。
【0039】
本発明の透明導電性基材の一例を図1及び2に示す。図1はプラスチック基材の引張り強さが64 MPa未満の場合、図2はプラスチック基材の引張り強さが64MPa以上の場合である。
【0040】
プラスチック基材
本発明においてプラスチック基材としては、透明性を有する各種のプラスチック基材を使用でき、例えば樹脂成分としてポリエステル、ポリカーボネート、アクリル、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド等を含むものが挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート、アクリル、ポリエステル等が特に好ましく、ポリエステルの中ではポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0041】
プラスチック基材の厚みは特に限定されず、製品特性に応じて設定できるが、通常6μm〜5 mm、好ましくは20μm〜2 mm程度であり、形体はシート(板)状又はフィルム状いずれでも良い。プラスチック基材としてアクリル、ポリカーボネートなどをシート状にして使用する場合は、引張り強さが64 MPa以上となり、易接着層を使用する必要が無い。
【0042】
易接着層の密着性を向上させるため、プラスチック基材上に易接着層を形成する前に予備処理として、プラスチック基材表面にコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施しても良い。また、透明導電膜を形成する面の反対の面にハードコート層を形成したものであっても良い。易接着層を形成する前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、洗浄化してもよい。
【0043】
易接着層
本発明において易接着層は、引張り強さ(破断力)(JIS K 7133:プラスチックの引張試験法)が64 MPa以上、好ましくは68〜236 MPaであり、特にプラスチック基材の引っ張り強さが64 MPa以下の場合に、基材より引張り強さが大きいことを特徴とする。本発明において易接着層は必須のものではなく、プラスチック基材の引張り強さが64 MPa以上である場合は、易接着層を積層する必要はない。
【0044】
以下にPET(未延伸)(53〜63)より強い引張り強さを有する、各種プラスチック材料と引張り強さ(単位;MPa)値を示す。
【0045】
ウレタン樹脂(68〜88)、アクリル樹脂(76)、PC(ポリカーボネート)(73.6)、エポキシ樹脂(70〜80)、PES(ポリエーテルサルフォン)(77〜140)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)(85〜211)、PAR(ポリアリレート)(60〜70)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)(97〜236)、LCP(液晶ポリマー)(127〜144)、PI(ポリイミド)(92)、PA(ポリアミド)(73.6)、PAI(ポリアミドイミド)(152)、PEI(ポリエーテルイミド)(105)、GFRTP(ガラス繊維強化熱可塑性樹脂)(185)及びCFRTP(カーボン繊維強化複合材)(118〜167)の様に上記プラスチック材料中にガラス繊維又はカーボンを混合して引張り強さを向上した材料、上記材料を適当に混合して引張り強さを向上した材料等。
【0046】
また、透明導電膜との接着力向上を目的に上記易接着層が架橋構造を有する成分を含有しても良い。この架橋構造を有する成分とは架橋剤同士或いは架橋剤と高分子とが結合した成分のことである。この架橋剤としては、例えばエポキシ化合物、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、イソシアネート化合物およびカップリング剤を挙げることができる。
【0047】
易接着層を形成する組成物と化学的に不活性な界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−脂肪酸エステル他一般的な物)を、易接着層を形成する組成物中に1〜10重量%含ませ、併用することが好ましい。
【0048】
易接着層の厚みは特に限定されず、通常0.01〜0.3μm、好ましくは0.03〜0.1μm厚になるように塗布する。この範囲であると、必要な密着力が得られる上に、ブロッキングを起こしたり、ヘーズ値が高くなったり、光干渉効果による着色・像のゆがみの発生等がない。
【0049】
易接着層を形成するために使用する方法としては公知の方法が適用でき、例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法などが挙げられる。
【0050】
このような易接着層が存在すると、基材と透明導電膜の密着力は最終的には、易接着層の破断力の大小で決まる。
【0051】
プラズマ処理(1)
本発明において、透明導電膜を形成する前の易接着層又はプラスチック基材上にプラズマ処理を、真空度8×10-4 Torr以下で行う。
【0052】
プラズマ処理における導入ガスは、本発明の効果が得られものであれば限定されないが、例えばAr、Kr、Xe、Ne、He、O2、Os、H2、N2、N2O、NH3等が挙げられ、好ましくはH2、He、N2、Ne等の不活性ガスである。これらのガスは1種単独又は2種以上を混合して使用しても良く、導入ガスに水蒸気が含まれていても良い。プラズマ処理の処理気圧は好ましくは4×10-4 Torr以下である。このような条件でプラズマ処理を行うことにより、プラスチック基材と透明導電膜との間で優れた密着性が得られる。
【0053】
放電処理量は4〜100 W・秒/cm2、好ましくは10〜60 W・秒/cm2程度が良い。この範囲であれば、期待した密着力が得られ、易接着層又はプラスチック基材が黄色に変色してヘーズ値が向上するということがない。易接着層又はプラスチック基材が本発明の様な絶縁材料の場合、DC(直流)放電よりもRF(高周波)放電プラズマの方が高密着力が得られる。
【0054】
透明導電膜
本発明において、透明導電膜がプラズマ処理された易接着層又はプラスチック基材上に形成される。
【0055】
透明導電膜の材料は、透明性と導電性を有しているものであれば特に限定されないが、例えば、酸化錫を含有する酸化インジウム、アンチモンを含有する酸化錫、酸化亜鉛などが挙げられ、好ましくは透明性及び導電性に優れるITO(Indium Tin Oxide)である。
【0056】
透明導電膜の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの従来公知の技術を使用することができる。
【0057】
透明導電膜の厚さとしては、特に限定されるものではないが、通常0.005〜5μm、好ましくは0.01〜0.5μmである。この範囲であれば導電性及び透明性の両方に優れる。また、基材の膨張収縮、折り曲げ等による、透明導電膜のクラック割れにも強くなる。上記範囲を超えると透明導電膜の応力により透明導電性基材にカールも発生し、好ましくない。
【0058】
プラズマ処理(2)
本発明において金属電極を形成する前の透明導電膜上にプラズマ処理を、真空度8×10-4 Torr以下で行うことを特徴とする。
【0059】
プラズマ処理における導入ガスは、本発明の効果が得られものであれば限定されないが、例えばAr、Kr、Xe、Ne、He、O2、Os、H2、N2、N2O、NH3等が挙げられ、好ましくはH2、He、N2、Ne等の不活性ガスである。これらのガスは1種単独又は2種以上を混合して使用しても良く、導入ガスに水蒸気が含まれていても良い。プラズマ処理の処理気圧は好ましくは4×10-4 Torr以下である。このような条件でプラズマ処理を行うことにより、金属電極と透明導電膜との間で優れた密着性が得られる。
【0060】
放電処理量は8〜200 W・秒/cm2、好ましくは15〜100 W・秒/cm2程度が良い。この範囲であれば、期待した密着力が得られ、透明導電膜が黄色に変色するということがない。尚、DC(直流)放電よりもRF(高周波)放電プラズマの方が高密着力が得られる。
【0061】
金属電極
本発明において、金属電極の材料としては金属ペースト以外のものであれば限定されないが、例えばCu、Ag、Al、Au、Ni、Ni/Cr、Ti等の単体若しくは2種以上からなる合金が挙げられる。中でも、電気導電性が低い、パターンエッチング、電気メッキ等の加工性に優れる、電極と回路等のリード部との電気的機械的接続性(ハンダ、異方導電性コネクター等)が良い、曲げに強い、熱伝導性が高い、安価等という点からCu、Al等が好ましく、特にCuが好ましい。
【0062】
金属電極の厚さとしては、特に限定されるものではないが、通常0.001〜100μm、好ましくは0.01〜25μmである。
【0063】
金属電極の形成には、金属ペーストを使用する方法以外の従来公知の方法を使用でき、本願実施例で示した真空蒸着法、スパッタリング蒸着法で形成しても良い。また、必要に応じてその後電解・無電解湿式金属メッキ等でさらに膜厚を厚くして導電性を上げても良い。
【0064】
また、必要に応じて、上記金属電極の保護(主に酸化防止)を目的に、金属電極の下及び上にNi、Ni/Cr、Cr、Ti、Mo他の高融点金属層及びこれらの酸化物層を設けても良い。
【0065】
尚、透明導電膜及び金属電極は、プラスチック基材の片面又は両面に形成しても良い。
【0066】
本発明の製造方法により作製される透明導電性基材は、透明なプラスチックフィルム基材の一方又は両方の面に、透明導電膜が形成され、更にその上に金属電極が形成された透明導電性基材であり、プラスチック基材と各層の層間剥離力が0.5 Kg/cm以上、好ましくは1.0 Kg/cm以上であるという優れた密着力を有する。
【0067】
ここで、プラスチック基材と各層の層間剥離力とは、金属電極膜の膜厚を20μm(一定)とし、加重測定機(引っ張り試験機)等により、金属電極膜を基板と90°方向になる様にして一定の剥離速度で引っ張り、この時の単位幅(1 cm)あたりの剥離力(90°剥離力)を測定し、この時の剥離力を層間剥離力(密着力F(Kg/cm))とする。尚、この時の剥離速度は5 mm/minである。当該層間剥離力は、実施例に記載の密着力Fの測定方法により測定できる。
【0068】
本発明の透明導電性基材は、タッチパネルや太陽電池、透明ヒーター、電子ペーパーなどの透明電極として好適に用いることができる。具体的には、本発明の透明導電性基材を抵抗膜方式や静電容量方式のタッチパネルの上部電極及び/又は下部電極として用いることができ、このタッチパネルを液晶ディスプレイの前面に配置することでタッチパネル機能を有する表示装置が得られる。
【0069】
図3は、本発明の透明導電性基材を用いた一般的な抵抗膜式低反射タッチパネルの断面を示す模式図である。図中、5は透明導電性基材を、6はスペーサーを、7はITOガラスをそれぞれ示す。駆動時にはユーザーが透明導電性基材上の任意の位置を指やペンで押圧すると、当該押圧位置で透明導電性基材とITOガラスが接触して通電し、各抵抗膜の基準位置から接触位置までの抵抗値の大きさから押圧位置が検出される。これにより,パネル上の前記接触部分の座標を認識し、適切なインターフェース機能が図られるようになっている。尚、ITOガラスの代わりに本発明の透明導電性基材を用いてもよい。
【0070】
また、図4に、本発明の透明導電性基材を用いた一般的な電極マトリクス方式の抵抗膜式タッチパネルの模式図を示す。図中、4は金属電極を、5は透明導電性基材を、8はITOパターンをそれぞれ示す。短冊状に透明導電膜を形成し、その方向を90°変えた2枚の透明導電性基材の透明導電膜を向かい合わせると、面として縦横に分割される部分を独立したタッチパネルとして認識できる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【0072】
<評価方法>
1.密着力
1)碁盤目剥離試験;Cu、Al蒸着膜面及びAgペースト印刷面に1 mm角100個をカッターでクロス切断し、24 mm幅のセロハンテープを貼り付け、180度の剥離角度で剥離試験を行い、剥離しなかった部分の個数を表示した。また剥離した箇所を目視により判断した。
【0073】
2)密着力F:金属(Cu、Al)蒸着膜面にCuの電気メッキにより20μmの厚みになる様Cuメッキを行い、ミネベヤ製加重測定機(LTS−50N−S50)によりCuメッキ膜を基板と90度方向に引っ張り、この時の単位幅(1 cm)あたりの剥離力を測定し、この時の剥離力を密着力F(Kg/cm)とした。尚、この時の剥離速度は5 mm/minとした。この密着力Fが0.5 Kg/cm以上であれば、実用的に十分な密着力が得られる。
【0074】
また、膜間の剥離箇所を観察し、各膜間の剥離力とした。
【0075】
*Agペースト電極の密着力測定方法はPET基材上のITO膜上にAgペーストをスクリーン印刷法で印刷、キュアー(150℃×30分)し、幅10 mm、厚さ10μmのAgペースト電極を形成した。次にAgペースト電極面と2 mm厚のSUS板を両面粘着テープを用いて貼り合わせた。次に上記加重測定機により、PET基材をSUS板及びAgペースト電極層と90度方向に引っ張り、この時の単位幅(1 cm)あたりの剥離力を測定し、この時の剥離力を密着力F(Kg/cm)とした。尚、剥離速度は5 mm/minとした。
【0076】
以下の試験は、各電極の厚みをメッキにより10μmとし行った。
【0077】
2.表面抵抗:R0(Ω/□)、電極間接触抵抗Ra(Ω):
1)透明導電膜(ITO)、及びCu又はAgペースト電極膜の表面抵抗R0は4端子測定機を用いて測定した。
【0078】
2)Cu電極及びAgペースト電極とITO間の接触抵抗RaはITO透明導電層上5 cm角の両端にCu及びAgペースト電極層を約5 mm幅×5 cm長に対向して形成し、この間(5 cm)の電気抵抗R5(5 cm角の表面抵抗)を2端子法で測定し、Ra = R5 − R0(Ω)で表示した。
【0079】
3.長期安定性:
恒温槽を用いた80℃(250時間)での保持、高温恒湿槽を用いた60℃×90%RH(250時間)での保持、及び60℃純水ディップ試験(10時間)を行い、この時の電極の劣化状態の観察および透明導電層と電極間の上記電気抵抗Raを測定した。
【0080】
4.曲げ性:
Cu及びAgペースト電極面を外側にして180度折り曲げた時のCu及びAgペースト電極の曲げる前(R1)と後(R2)の電気抵抗(R1,R2)値を2端子法で測定し、抵抗の増加率を(R2/R1)で表示し、電極の劣化状態を目視評価行った。
【0081】
<実施例及び比較例>
実施例1
片面にハードコート層を設けた125μm厚PETフィルム(全光線透過率約89%)のPET面側にアクリル樹脂を塗布・乾燥(ロールコーター法で塗布して、110℃で乾燥した)して、約0.1μm厚の易接着層(A)を形成した。
【0082】
易接着層(A)上を不活性ガス雰囲気中、真空度4×10-4 Torr、単位面積当りのプラズマ処理量20 W・秒/cm2で処理した。
【0083】
次に、塗膜(A)上に通常のスパッタ法により表面抵抗500(Ω/□)のITO膜を形成した(全光線透過率は88%であった。以後同一)。
【0084】
次に、上記ITO膜上に不活性ガス雰囲気中、真空度4×10-4 Torr、単位面積当りのプラズマ処理量37 W・秒/cm2で処理した。
【0085】
次に上記ITO膜上に通常のスパッタ法によりCuを160 nm厚でスパッタ蒸着法し、Cu電極層付透明導電性基材を作成した(この時のCu膜の表面抵抗はR=0.2(Ω/□)であった)。
【0086】
実施例2
PET面側にウレタン樹脂で約0.05μm厚の易接着層(B)を形成した以外は実施例1と同様な方法を用いて、Cu電極付透明導電性基材を作成した。
【0087】
実施例3
ITO膜上のプラズマ処理気圧を8×10-4 Torrとした以外は実施例1と同様な方法で透明導電性基材を形成した。
【0088】
実施例4、5
東レPET両面アンダーコート層(易接着)品(PET厚125μm)U46(実施例4)とU48(実施例5)(何れの易接着層もウレタン樹脂又はアクリル樹脂又はこれらの混合樹脂)の片面にHC層を形成したものをプラスチックフィルム基材として用いた以外は実施例1と同様な方法でCu電極付透明導電性基材を形成した(HC層の反対側にITO薄膜を形成した)。
【0089】
実施例6
金属電極にCuに代えてAlを使用した以外は、実施例1と同様な方法でAl電極付透明導電性基材を形成した(この時の蒸着Al(厚み約160nm)膜の表面抵抗はR=0.3(Ω/□)であった)。
【0090】
比較例1
片面にハードコート層を設けた125μm厚PETフィルムのPET面側に直接(アクリル樹脂層無し)に実施例1と同様の方法でスパッタ法により表面抵抗500(Ω/□)のITO膜を形成した(プラズマ処理無し)。
【0091】
次に上記ITO膜上に(プラズマ処理無し)通常のスパッタ法によりCuを160 nm厚でスパッタ蒸着し、Cu電極層付透明導電性基材を作成した。
【0092】
比較例2
片面にハードコート層を設けた125μm厚PETフィルムのPET面側に直接、実施例1と同様の方法でスパッタ法により表面抵抗500(Ω/□)のITO膜を形成した(プラズマ処理無し)。
【0093】
次に、上記ITO膜上に不活性ガス雰囲気中、真空度4×10-4 Torr、単位面積当りのプラズマ処理量37 W・秒/cm2で処理した。
【0094】
次に上記ITO膜上に直接、通常のスパッタ法によりCuを160 nm厚でスパッタ蒸着し、Cu電極層付透明導電性基材を作成した。
【0095】
比較例3(易接着層(A)を形成しない以外は実施例1と同じ方法である)
片面にハードコート層を設けた125μm厚PETフィルムのPET面側を不活性ガス雰囲気中、真空度4×10-4 Torr、単位面積当りのプラズマ処理量20 W・秒/cm2で処理した。
【0096】
次に実施例1と同様の方法でスパッタ法により表面抵抗500(Ω/□)のITO膜を形成した。
【0097】
次に、上記ITO膜上に不活性ガス雰囲気中、真空度4×10-4 Torr, 単位面積当りのプラズマ処理量37 W・秒/cm2で処理した。
【0098】
次に上記ITO膜上に通常のスパッタ法によりCuを160 nm厚でスパッタ蒸着法し、Cu電極層付透明導電性基材を作成した。
【0099】
比較例4
易接着層(A)上にプラズマ処理を行なわなかった以外は、実施例1と同様な方法でCu電極層付透明導電性基材を作成した。
【0100】
比較例5
Cu層を設けなかったこと以外は透明導電性フィルムを比較例1と同様な方法で形成し、ITO膜上にAgペーストをスクリーン印刷法で印刷、キュアー(150℃×30分)し、幅10 mm、厚さ10μmのAgペースト電極を形成した。
【0101】
比較例6、7
ITO膜上のプラズマ処理気圧を比較例6、7についてそれぞれ20×10-4、40×10-4 Torrに変更した以外は実施例1と同様な方法で透明導電性基材を形成した。
【0102】
比較例8、9
実施例4、5で用いた基材を用いて、易接着層上のプラズマ処理を行わなかった以外は、実施例4、5と同じ方法でCu電極付透明導電性基材を形成した(U46:比較例8、U48:比較例9)。
【0103】
比較例10
金属電極にCuの代わりにAlを使用した以外は、比較例1と同様な方法でAl電極付透明導電性基材を形成した。
【0104】
【表1】

【0105】
エッチング性評価
実施例4で作成した電極付透明導電性基材のエッチング性を評価した。
【0106】
フォトレジストフィルムを上記電極Cu上に張り合わせパターン露光、現像/剥離しCu層を関東科学製Cu−03(硫酸系Cu用エッチング液:液温20℃)でパターンエッチングした。この時のエッチング速度は約110nm/minであった。次にフォトレジストフィルムをITO層上に張り合わせパターン露光、現像/剥離しITO層を関東科学製ITO−07N(シュウ酸系ITO用エッチング液:液温50℃)でパターンエッチングした。この時のエッチング速度は約35 nm/minであり、ITO膜の剥離なく良好なパターン形成が出来ることを確認出来た。
【0107】
また、従来の電極ペースト高温加熱キュアー法では基材のカール、寸法変化、白化、ヘーズ値アップ等の各問題が発生したが、上記エッチング法による電極形成法では低温処理(50℃以下)のため、従来の様な問題は発生しなかった。
【0108】
従来法である比較例1の電極付透明導電膜のエッチング性は上記と同様な評価において、Cuエッチング時にCu膜が全面剥離して、Cu膜のパターンエッチングは出来なかった。
【0109】
考察
1)実施例1、2
実施例1、2より、ポリエステルフィルム上に引っ張り強さ76(単位MPa)のアクリル樹脂、及び、68〜88のウレタン樹脂層の易接着層を設け層上に不活性ガス圧4×10-4 Torrでプラズマ処理した後ITO膜を形成しITO膜上にも上記条件にてプラズマ処理を行いCu電極を形成することにより、密着力Fが目標である0.5 Kg/cm以上の本発明品が出来た。
【0110】
また、本発明品の構成で密着力(以後Fで表示)の弱い部分は、上記易接着層(易接着層の凝集剥離)であり、易接着層には引っ張り力が強い方が密着力高いことが分かった。
【0111】
またCu電極の表面抵抗は低く、ITOとCu電極間の接触抵抗の長期安定性、および180度曲げ性等に大変優れた透明導電性基材が作成出来ることが判明した。
【0112】
2)実施例3
実施例3の密着力はITO膜上のプラズマ処理気圧を8×10-4 Torrに上げた場合の密着力であり、実施例1と比較すると密着力は下がるものの、0.6 Kg/cmあり、必要な密着力が得られた。この時の剥離箇所はITO膜とCu間になることが分かった。
【0113】
3)実施例4、5
実施例4、5はアンダーコート層(アクリル/ウレタン樹脂混合接着処理層)付市販品を用いた例であるが、本発明の方法によりいずれも密着力は向上(0.5 Kg/cm以上)することが判った。また剥離箇所は実施例1、2と同様のアンダーコート層の凝集破壊であることが判明した。
【0114】
4)実施例6
Cu電極をAl電極に変更したが(そのほかは実施例1と同様)、本発明の方法で密着力は目標値を満足した。剥離箇所もCu電極同様アクリル樹脂層の凝集破壊であった。
【0115】
5)比較例1
ITO層上にプラズマ処理無しでは、テープ剥離試験で剥離するほどITO層とCu層間の界面剥離力が弱かった。よって、密着力を測るためのCuメッキも出来ないことが判明した。先ずITOとCu間の密着力向上が必要である。
【0116】
6)比較例2
ITO膜上に本発明のプラズマ処理を行うと(その他は比較例1と同じ)、テープ剥離試験はOKとなるも、密着力は0.1 Kg/cmと低かった。この時の剥離箇所はPET表面とITO間の層間(界面剥離)であった。PET表面とITO間の密着力向上が必要である。尚、ITO膜とCu層間の密着力は向上した。
【0117】
7)比較例3
PET表面に本発明のプラズマ処理を行った後ITO膜を形成(その他は比較例2と同一)したが、Fは少し向上するも0.3 Kg/cmで目標を満足出来ないことが判明した(更なるFの向上が必要である)。剥離箇所はPET表面の凝集破壊であり、PET表面の凝集力向上が必要なことが判る。
【0118】
8)比較例4
PET上にアクリル樹脂をアンダーコートし易接着処理層を形成し(その他は比較例2と同一)ITO膜を形成したがF=0.2 Kg/cmと低かった。剥離箇所はアクリル樹脂とITO層間の界面剥離である事により、凝集力の強いアンダーコート層を設けただけでは密着力は弱く、さらにアンダーコート層表面の密着力向上(プラズマ処理)が必要なことが判る。
【0119】
9)比較例5
Cu層の無い、比較例1のITO膜上に、従来のAgペースト印刷法で電極を形成した。密着力は0.03 Kg/cmとAg電極とITO間で弱く、またAg電極の表面抵抗がCu電極に比べて高かった。ITO層とAg電極間の接触抵抗の長期信頼性、180度曲げ性等が悪いこと等が分かった。
【0120】
10)比較例6、7
ITO上のプラズマ処理時の処理圧力を20×10-4 Torr、40×10-4 TorrにするとFはそれぞれ0.4 Kg/cm、0.2 Kg/cmと圧力上昇に伴い弱くなり、実施例1と同様な方法でも目標のFが得られないことが分かった。
【0121】
11)比較例8、9
アンダーコート層(アクリル/ウレタン樹脂混合易接着処理層)付市販基材を用いた2例であるが、アンダーコート層上に本発明のプラズマ処理を行わないと、アンダーコート層とITO間で剥離し、Fは0.2 Kg/cm以下で弱いことが分かった。
【0122】
12)比較例10
Cu電極をAlに変えた以外は比較例1と同様な方法で電極付透明導電性基材を作成した。やはり、テープ剥離テストレベルでITO層とAl電極間で剥離した。Al電極もCu電極同様ITO層とFを向上するためには、本発明のプラズマ処理法が必要であることが分かった。
【0123】
(タッチパネル)
実施例1〜6の透明導電性基材を使用することにより、図3に示す構成のタッチパネルを作れる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の透明導電性基材は、透明タッチパネル、電子ペーパー、太陽電池用透明電極、透明静電・電磁波シールド、熱線(赤外線)カットフィルム、透明ヒーター等の透明電極として使用できる。
【符号の説明】
【0125】
1 プラスチックフィルム基材
2 易接着(アンダーコート)層
3 ITO薄膜
4 金属電極
5 透明導電性基材
6 スペーサー
7 ITOガラス
8 ITOパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なプラスチック基材の一方又は両方の面に、透明導電膜が形成され、更にその上に金属電極が形成された透明導電性基材であって、
該基材と各層の層間剥離力が0.5 Kg/cm以上である透明導電性基材。
【請求項2】
透明なプラスチック基材の一方又は両方の面上に、引張り強さが64 MPa以上である易接着層を設けた後、透明導電膜を形成し、更にその上に金属電極が形成された透明導電性基材であって、
該易接着層上及び該透明導電膜上にプラズマ処理が、真空度8×10-4 Torr以下で行われていることを特徴とする、透明導電性基材。
【請求項3】
引張り強さが64 MPa以上の透明なプラスチック基材の一方又は両方の面上に、透明導電膜を形成し、更にその上に金属電極が形成された透明導電性基材であって、
該プラスチック基材上及び該透明導電膜上にプラズマ処理が、真空度8×10-4 Torr以下で行われていることを特徴とする、透明導電性基材。
【請求項4】
プラズマ処理が真空度4×10-4 Torr以下の条件で行われていることを特徴とする、請求項2又は3に記載の透明導電性基材。
【請求項5】
前記プラスチック基材が樹脂成分としてポリエステルを包含する、請求項2〜4のいずれか一項に記載の透明導電性基材。
【請求項6】
前記易接着層が前記プラスチックフィルム基材より引張り強さが大きいことを特徴とする、請求項2に記載の透明導電性基材。
【請求項7】
透明なプラスチック基材上の一方の面に、引張り強さが64 MPa以上である易接着層、及び透明導電膜がこの順で形成され、更にその上に金属電極が形成された透明導電性基材の製造方法であって、
該透明導電膜を形成する前の該易接着層上、及び該金属電極を形成する前の該透明導電膜上にプラズマ処理を、真空度8×10-4 Torr以下で行うことを特徴とする、製造方法。
【請求項8】
引張り強さが64 MPa以上の透明なプラスチック基材の一方又は両方の面上に、透明導電膜を形成し、更にその上に金属電極が形成された透明導電性基材の製造方法であって、
該透明導電膜を形成する前の該プラスチック基材上、及び該金属電極を形成する前の該透明導電膜上にプラズマ処理を、真空度8×10-4 Torr以下で行うことを特徴とする、製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の透明導電性基材を備えたタッチパネル。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の透明導電性基材を備えた太陽電池。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の透明導電性基材を備えた電子ペーパー。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の透明導電性基材を備えた透明ヒーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−248629(P2011−248629A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121213(P2010−121213)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(597051757)名阪真空工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】