透明導電性積層フィルム及びタッチパネル
【課題】透明性及び柔軟性に優れ、抵抗膜方式タッチパネルにおいて、光学特性に優れるとともに、繰り返し打鍵しても、割れや損傷が抑制できる透明導電性積層フィルムを提供する。
【解決手段】透明樹脂で構成された基材フィルムの一方の面に、ウレタン(メタ)アクリレートを含む重合性組成物の硬化物で構成されたクッション層、機能層、透明導電層をこの順序で順次形成することにより、透明導電性積層フィルムを調製する。前記重合性組成物は、加速電圧200kV及び照射線量50kGyの電子線により硬化した厚み100μmの硬化物において、200MPa以下の引張弾性率を有する組成物である。さらに、前記重合性組成物は、さらにポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。クッション層の厚みは10μmを超えており、基材フィルムとクッション層との厚み比が、基材フィルム/クッション層=20/1〜5/1であってもよい。
【解決手段】透明樹脂で構成された基材フィルムの一方の面に、ウレタン(メタ)アクリレートを含む重合性組成物の硬化物で構成されたクッション層、機能層、透明導電層をこの順序で順次形成することにより、透明導電性積層フィルムを調製する。前記重合性組成物は、加速電圧200kV及び照射線量50kGyの電子線により硬化した厚み100μmの硬化物において、200MPa以下の引張弾性率を有する組成物である。さらに、前記重合性組成物は、さらにポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。クッション層の厚みは10μmを超えており、基材フィルムとクッション層との厚み比が、基材フィルム/クッション層=20/1〜5/1であってもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗膜方式タッチパネルの上部電極(視認側の電極)などに利用される透明導電性積層フィルム及びこの積層フィルムを備えたタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マンマシンインターフェースとしての電子ディスプレイの進歩に伴い、対話型の入力システムが普及し、なかでもタッチパネル(座標入力装置)をディスプレイと一体化した装置がATM(現金自動受払機)、商品管理、アウトワーカー(外交、セールス)、案内表示、娯楽機器などで広く使用されている。液晶ディスプレイなどの軽量・薄型ディスプレイでは、キーボードレスにでき、その特長が生きることから、モバイル機器にもタッチパネルが使用されるケースが増えている。タッチパネルは、位置検出の方法により、光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などに分類できる。これらのうち、抵抗膜方式は、構造が単純で価格/性能比も優れるため普及している。
【0003】
抵抗膜方式のタッチパネルは、対向する側に透明電極(透明導電層)を有する2枚の積層フィルム又は板が一定間隔で保持されている電気部品である。その作動方式は、一方の透明電極を固定した上で、視認側からペン又は指で他方の透明電極を押圧し、撓ませて、固定した透明電極と接触、導通することにより、検出回路が位置を検知し、所定の入力がなされる。特に、上部透明電極(視認側の透明電極)は、繰り返し撓ませて使用されるため、透明導電層に割れや損傷が発生し、検出回路に不良が発生し易いため、上部透明電極基板には、繰り返しの使用に対する打鍵耐久性が要求される。特に、タッチパネルの用途がゲーム機などの娯楽機器にまで拡がったことに伴って、表示画面を隈なく押圧する必要が生じているが、画面の端部では中央部よりも上部電極が大きく湾曲するため、高度な打鍵耐久性(端押し耐久性)が要求される。
【0004】
さらに、このようなタッチパネルの作動方式において、ペン又は指で電極を押圧する際、押圧している指やペンなどのポインティング治具の周辺に、干渉による虹模様(いわゆる、「ニュートンリング」と呼ばれる干渉色又は干渉縞)が現れることがあり、画面の視認性を低下させる。詳しくは、2枚の透明電極が接触するか又は接触のために撓み、対向する2枚の透明電極の間隔が可視光の波長程度(約0.5μm)となったときに、2枚の透明電極に挟まれた空間で反射光の干渉を生じ、ニュートンリングが発生する。このようなニュートンリングの発生は、抵抗膜方式のタッチパネルの原理上、不可避の現象である。従って、透明電極を構成するフィルムには、透明電極の表面に凹凸に形成してニュートンリングが生じないようにするアンチニュートンリング性が要求される。
【0005】
透明電極基板の柔軟性を改良した透明導電性積層体として、特許第2667680号公報(特許文献1)には、厚みが2〜120μmの透明なフィルム基材の一方の面に膜厚が50Å以上の透明な導電性薄膜を形成し、他方の面に弾性係数が1×105〜1×107dyn/cm2、厚みが1μm以上である透明な粘着剤層を介して透明基材を貼り合わせてなる透明導電性積層体が開示されている。この文献には、粘着剤層として、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤が使用でき、そのクッション効果によりフィルム基材の一方の面に設けられた導電性薄膜の耐擦傷性及び打点特性を向上させる機能を有することが記載されている。
【0006】
しかし、この透明導電性積層体は、粘着剤を介して貼り合わせにより製造されるため、貼り合わせ工程中に異物や気泡が混入し易く、生産性に問題があるとともに、貼り合せ面に付着した異物や気泡は物理的に除去不可能であり、光学特性や電気特性などの低下を招き易い。また、貼り合わせでは、2枚のフィルムをロールから巻き戻して積層されるため、剥離帯電が生成し易い。さらに、この積層体の構造では、粘着剤層と透明導電層との間に薄い透明基材が存在している。このため、薄い透明基材にアンチニュートンリング層などの肉厚の層を形成するとカールし易くなる。その結果、薄い透明基材に透明導電層を蒸着で形成することが困難となるし、粘着剤層での2枚のフィルムの貼り合せも困難となる。従って、このような構成ではアンチニュートンリング層を設けることができず、アンチニュートンリング性や防眩性などの視認性が要求される表示装置に用いることができない。さらに、カールするため、この構成のフィルムを用いた表示装置を大画面化することができない。
【0007】
一方、貼り合わせを利用したラミネートシートでなく、コーティングを利用した積層シートとして、特開2004−158253号公報(特許文献2)には、高分子フィルムの一方の面にハードコート層が形成され、他方の面に透明導電薄膜が形成されてなる透明導電性フィルムにおいて、前記高分子フィルムと透明導電薄膜との間に、アクリル系樹脂よりなる応力緩和層が設けられている透明導電性フィルムが開示されている。しかし、この応力緩和層では打鍵耐久性が充分ではなかった。
【0008】
また、特許第3972418号公報(特許文献3)には、透明プラスチックフィルム層/クッション層/透明樹脂層/透明導電性薄膜層の順に形成された積層体を含む透明導電性フィルムであって、前記クッション層が共重合ポリエステル樹脂と架橋剤から構成され、ダイナミック硬度が0.005〜2であり、透明樹脂層が、共重合ポリエステル又はポリアミドイミド樹脂からなる透明導電性フィルムが開示されている。しかし、この透明導電性フィルムでは、透明性が十分でないことに加えて、層間の密着性が低く、耐久性も十分でない。
【0009】
さらに、特開2005−104141号公報(特許文献4)には、透明有機高分子基板の少なくとも一方の面上に硬さの異なる硬化樹脂層−1と硬化樹脂層−2が順次積層され、前記硬化樹脂層−2上に透明導電層が積層された透明導電性積層フィルムであって、前記硬化樹脂層−1が、ウレタンアクリレートをモノマーとする硬化樹脂及び合成ゴムからなる群から選択された少なくとも一種を10重量%以上含有する透明導電性積層フィルムが開示されている。この文献には、前記硬化性樹脂層−2と透明導電層との間に、全光線透過率などの光学特性を改良するための硬化樹脂層−3や、屈折率を制御し透明性を高めるための光学干渉層を設けることが記載されている。また、硬化樹脂層−1の厚みは1〜10μmであることが記載されている。
【0010】
しかし、この透明導電性積層フィルムでも、柔軟性及び透明性が十分でない。すなわち、この硬化樹脂層−1では、柔軟性と透明性との両立が困難であるためか、光学特性を改善するために、硬化樹脂層−3や光学干渉層が必要となる。すなわち、硬化樹脂層−1を形成するための硬化樹脂は、樹脂層を形成するための塗布工程において塗布液の粘度が高いため、特に厚めに塗布した場合に塗布液のコート筋が生じる。このコート筋は、通常の塗布液の粘度であれば塗布から硬化の工程の間に自然にレべリング(平準化)して平滑となる。しかしながら、特許文献4に開示されているような硬化樹脂層−1の塗布液では、このレべリング性が低く、塗布厚みを厚く塗布した場合には表面が平滑な塗膜を形成するのが困難である。そして、表面にコート筋による凹凸構造が形成されると、フィルム自体の透明性が低下する。さらに、蒸着面が平滑でない状態では、仮に蒸着できても打鍵耐久性が低下する。また、溶媒を使用して希釈したとしても、塗布溶液の粘度は期待するほどには低下しないため、表面が平滑な厚膜を形成するのは困難である。さらに、溶媒の使用により生産性及び環境性能が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2667680号公報(請求項1、第2頁第4欄22〜32行)
【特許文献2】特開2004−158253号公報(請求項1)
【特許文献3】特許第3972418号公報(請求項1)
【特許文献4】特開2005−104141号公報(特許請求の範囲、段落[0060][0074])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、透明性及び柔軟性に優れ、抵抗膜方式タッチパネルにおいて、光学特性に優れるとともに、打鍵時の感触に優れかつ、繰り返し打鍵しても、割れや損傷を抑制できる透明導電性積層フィルム及びこの積層フィルムを備えた抵抗膜方式タッチパネルを提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、柔軟性及び生産性に優れ、かつ表面が平滑な透明導電性積層フィルム及びこの積層フィルムを備えた抵抗膜方式タッチパネルを提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、生産性が高く、タッチパネルの表示画面の端部における打鍵や摺動に対する耐久性(端押し耐久性及び端摺動耐久性)にも優れる透明導電性積層フィルム及びこの積層フィルムを備えた抵抗膜方式タッチパネルを提供することにある。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、層間の密着性が高く、剥離耐久性に優れる透明導電性積層フィルム及びこの積層フィルムを備えた抵抗膜方式タッチパネルを提供することにある。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、機能層の厚みを大きくできるとともに、カールの発生も抑制できる透明導電性積層フィルム及びこの積層フィルムを備えた抵抗膜方式タッチパネルを提供することにある。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、ニュートンリングの発生を抑制でき、繰り返し使用してもニュートンリング防止効果が低下しない透明導電性積層フィルム及びこの積層フィルムを備えた抵抗膜方式タッチパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、透明基材フィルムの一方の面に、(メタ)アクリル基を含む重合性組成物の硬化物で構成された特定のクッション層、機能層、透明導電層をこの順序で順次形成することにより、透明性及び柔軟性に優れ、抵抗膜方式タッチパネルにおいて、光学特性に優れるとともに、繰り返し打鍵しても、割れや損傷が抑制できる透明導電性積層フィルムが得られる。
【0019】
すなわち、本発明の透明導電性積層フィルムは、透明樹脂で構成された基材フィルムの一方の面に、クッション層、機能層、透明導電層がこの順序で順次形成された透明導電性積層フィルムであって、前記クッション層が、(メタ)アクリル基を含む重合性組成物の硬化物で構成され、かつ前記重合性組成物が、下記の測定方法で測定した場合に200MPa以下の引張弾性率を有する組成物である。
【0020】
(引張弾性率の測定方法)
(メタ)アクリル基を含む重合性組成物を加速電圧200kV及び照射線量50kGyの電子線により硬化した厚み100μmを有する成形品の引張弾性率を測定する。
【0021】
前記重合性組成物はウレタン(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。前記重合性組成物は、さらにポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。前記ポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、オキシC3−4アルキレン単位の平均繰り返し数が5〜9モルであるポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含み、かつウレタン(メタ)アクリレートと前記ポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとの割合(重量比)は、前者/後者=30/70〜10/90程度であってもよい。前記クッション層の厚みは10μmを超えており、かつ基材フィルムとクッション層との厚み比は、基材フィルム/クッション層=20/1〜5/1程度であってもよい。前記重合性組成物は、前記方法で測定した場合に1〜100MPaの引張弾性率を有する組成物であってもよい。さらに、前記重合性組成物は溶媒を実質的に含有しない組成物であってもよい。前記クッション層は、−30℃〜30℃のガラス転移温度、50MPa以下の引張弾性率及び92%以上の全光線透過率を有していてもよい。本発明の透明導電性積層フィルムにおいて、透明導電層を剥離した機能層表面におけるマルテンス硬さは100N/mm2以下であり、最大押し込み深さは3μm以上であってもよい。前記重合性組成物の硬化物は活性エネルギー線による硬化物であってもよい。前記機能層は、ハードコート層又はアンチニュートンリング層であってもよく、特に、1又は複数のポリマーと、1又は複数の硬化した硬化性樹脂前駆体とを含み、かつ表面に凹凸形状を有する相分離構造で構成されているアンチニュートンリング層であってもよい。本発明の透明導電性積層フィルムは、抵抗膜方式タッチパネルの透明電極基板であり、かつこの透明電極基板が、指又は押圧部材と接触する側の上部電極基板であってもよい。
【0022】
本発明の透明導電性フィルムは、透明樹脂で構成された基材フィルムの一方の面に、クッション層、機能層、透明導電層がこの順序で順次形成された透明導電性積層フィルムであって、前記クッション層が、(メタ)アクリル基を含む重合性組成物の硬化物で構成され、かつ10μmよりも大きい厚みを有していてもよい。
【0023】
本発明には、前記透明導電性積層フィルムを上部電極基板として備える抵抗膜方式タッチパネルも含まれる。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、透明基材フィルムの一方の面に、(メタ)アクリル基を含む重合性組成物の硬化物で構成された特定のクッション層、機能層、透明導電層をこの順序で順次形成しているため、透明性及び柔軟性に優れ、抵抗膜方式タッチパネルにおいて、光学特性に優れるとともに、繰り返し打鍵しても、割れや損傷が抑制できる。特に、溶媒を使用せずに簡便な方法で厚塗りにより、表面が平滑で、かつ特定の引張弾性率を有するクッション層を形成でき、柔軟性と透明性とを両立できる。さらに、タッチパネルの表示画面の端部における打鍵や摺動に対する耐久性(端押し及び端摺動耐久性)に優れる透明導電性積層フィルムを容易に生産できる。さらに、層間の密着性が高く、剥離耐久性も向上できる。また、機能層の厚みを大きくできる。また、機能層として、アンチニュートンリング層を形成すると、ニュートンリングの発生を抑制でき、特に、アンチニュートンリング層を特定の相分離構造で形成すると、繰り返し使用してもニュートンリング防止効果が低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、透明導電性積層フィルムの光透過散乱特性(透過散乱光の角度分布)を測定するための装置を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明のタッチパネルの一例を示す概略断面図である。
【図3】図3は、電子線による硬化物1における線膨張率の温度変化を示すグラフである。
【図4】図4は、電子線による硬化物4における線膨張率の温度変化を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例1で得られた透明導電性積層フィルムの打鍵試験における打鍵開始時の波形を示すグラフである。
【図6】図6は、実施例1で得られた透明導電性積層フィルムの打鍵試験における打鍵100万回後の波形を示すグラフである。
【図7】図7は、実施例1で得られた透明導電性積層フィルムの打鍵試験における打鍵480万回後の波形を示すグラフである。
【図8】図8は、実施例2で得られた透明導電性積層フィルムの打鍵試験における打鍵開始時の波形を示すグラフである。
【図9】図9は、実施例2で得られた透明導電性積層フィルムの打鍵試験における打鍵70万回後の波形を示すグラフである。
【図10】図10は、比較例1で得られた透明導電性積層フィルムの打鍵試験における打鍵開始時の波形を示すグラフである。
【図11】図11は、比較例1で得られた透明導電性積層フィルムの打鍵試験における打鍵100万回後の波形を示すグラフである。
【図12】図12は、比較例2で得られた透明導電性積層フィルムの打鍵試験における打鍵開始時の波形を示すグラフである。
【図13】図13は、比較例2で得られた透明導電性積層フィルムの打鍵試験における打鍵50万回後の波形を示すグラフである。
【図14】図14は、比較例2で得られた透明導電性積層フィルムの打鍵試験における打鍵90万回後の波形を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[透明導電性積層フィルム]
本発明の透明導電性積層フィルムは、透明樹脂で構成された基材フィルムの一方の面に、クッション層、機能層、透明導電層がこの順序で順次形成されている。
【0027】
(基材フィルム)
基材フィルムは、透明で柔軟性を有するフィルムであれば特に限定されず、用途に応じて適宜選択できるが、通常、透明樹脂で構成される。透明樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、無色であれば熱硬化性樹脂であってもよい。より好適には熱可塑性樹脂である。具体的には、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、非晶質ポリオレフィンなど)、スチレン系樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体など)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロヘキサンジメタノールをジオール成分として含むPET系共重合体(PET−G)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリアルキレンアリレート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、液晶性ポリエステルなど)、ポリアミド系樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12など)、塩化ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニルなど)、ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロースエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフイド系樹脂、フッ素樹脂などが例示できる。
【0028】
これらの透明樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのプラスチックのうち、ポリエステル系樹脂及びポリカーボネート系樹脂から選択された少なくとも一種のプラスチックが好ましく、PET、PENなどのポリアルキレンアリレート系樹脂がより好ましい。更に、PET、PENなどのポリアルキレンアリレート系樹脂を二軸延伸したフィルムがより好ましい。
【0029】
基材フィルムには、必要に応じて、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、結晶核剤、難燃剤、難燃助剤、充填剤、可塑剤、耐衝撃改良剤、補強剤、分散剤、帯電防止剤、発泡剤、抗菌剤などを添加してもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0030】
基材フィルムは、未延伸フィルムであってもよく、延伸(一軸又は二軸)フィルムであってもよい。また、基材フィルムの表面には、接着性を向上させるため、コロナ放電やグロー放電などの放電処理、酸処理、焔処理などの表面処理を施してもよい。本発明では、表面に易接着層を有するフィルム(樹脂成分を用いて表面が易接着処理されたフィルム)が特に好ましい。易接着層の種類は、基材フィルムの種類に応じて選択できるが、ポリエステルフィルムの場合、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂などが挙げられるが、基材フィルムとの親和性の点から、ポリエステル系樹脂が好ましい。表面に易接着層を有するフィルムとしては、市販の易接着処理フィルムを使用できる。
【0031】
基材フィルムの厚みは、例えば、1〜500μm(例えば10〜500μm)、好ましくは50〜400μm(例えば、60〜250μm)、さらに好ましくは70〜200μm(特に80〜200μm)程度であってもよい。
【0032】
(クッション層)
クッション層は、(メタ)アクリル基を含む重合性組成物の硬化物で構成され、かつ前記重合性組成物の硬化物が特定の引張弾性率を有することを特徴とする。
【0033】
(1)重合性組成物
重合性組成物は、(メタ)アクリル基を含んでいればよいが、好ましくはウレタン(メタ)アクリレートを必須成分として含み、さらに重合性ビニル系成分などを含んでいてもよい。
【0034】
(A)ウレタン(メタ)アクリレート
ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリイソシアネート類[又はポリイソシアネート類とポリオール類との反応により生成し、遊離のイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー]に活性水素原子を有する(メタ)アクリレート[例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなど]を反応させることにより得られたウレタン(メタ)アクリレートで構成されている。
【0035】
ポリイソシアネート類としては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する限り特に制限されず、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、複素環式ポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートの誘導体などが挙げられる。これらのうち、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、ポリイソシアネートの誘導体などを用いる場合が多い。
【0036】
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、ジイソシアネート[例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)などのC2−16アルカンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、リジンジイソシアネート(LDI)など]、分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(例えば、リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネートなどのC6−20アルカントリイソシアネートなど)などが挙げられる。
【0037】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、ジイソシアネート(例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、水添キシリレンジイソシアネート、水添ビス(イソシアナトフェニル)メタン、ノルボルナンジイソシアネートなど)、分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(例えば、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンなどのトリイソシアネートなど)などが挙げられる。
【0038】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、ジイソシアネート(例えば、フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトフェニル)プロパンなど)、分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(例えば、1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼン、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネートなどのトリイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどのテトライソシアネートなど)などが挙げられる。
【0039】
ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、前記ポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、炭酸ガスと上記ポリイソシアネート単量体との重合物である2,4,6−オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネート、カルボジイミド、ウレットジオンなどが挙げられる。
【0040】
これらのポリイソシアネート類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリイソシアネート類のうち、HDIなどの脂肪族ジイソシアネート、IPDI、水添XDIなどの脂環族ジイソシアネート、XDIなどの芳香脂肪族ジイソシアネート、TDI、MDI、NDIなどの芳香族ジイソシアネートなどを用いる場合が多く、高い耐候性が要求される場合には、非芳香族ポリイソシアネート、例えば、HDIなどの脂肪族ジイソシアネート、IPDI、水添XDIなどの脂環族ジイソシアネートなどの無黄変タイプのジイソシアネート又はその誘導体(イソシアヌレート環を有するトリマーなど)を用いてもよい。
【0041】
前記ポリオール類としては、例えば、脂肪族ジオール[アルカンジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレンエーテルグリコール、1,3−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールなどのC2−10アルカンジオール)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなど]、脂環族ジオール(1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのシクロアルカンジオール類、水添ビスフェノールAなどの水添ビスフェノール類、又はこれらのC2−4アルキレンオキサイド付加体など)、芳香族ジオール(キシリレングリコールなどの芳香脂肪族ジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどのビスフェノール類、又はこれらのC2−4アルキレンオキサイド付加体など)などのジオール類、トリオール類(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリエタノールアミンなど)、テトラオール類(ペンタエリスリトール、ソルビタン又はこれらの誘導体など)、ヘキサオール類(ジペンタエリスリトール類など)、ポリマーポリオール類などが挙げられる。
【0042】
前記ポリマーポリオール類には、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリル系ポリマーポリオールなどのポリマーポリオールなどが含まれる。
【0043】
前記ポリエステルポリオールは、例えば、ポリカルボン酸(又はその無水物)とポリオールとの反応生成物、開始剤に対してラクトン類を開環付加重合させた反応生成物であってもよい。
【0044】
ポリカルボン酸としては、ジカルボン酸類[例えば、芳香族ジカルボン酸又はその無水物(テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸など)、脂環族ジカルボン酸又はその無水物(テトラヒドロ無水フタル酸、無水ヘット酸、無水ハイミック酸など)、脂肪族ジカルボン酸又はその無水物(コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのC4−20アルカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸など)など]、多価カルボン酸類(例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸など)、又はこれらのカルボン酸類のアルキルエステルなどが例示できる。これらのポリカルボン酸のうち、脂肪族ジカルボン酸又はその無水物(アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのC6−20アルカンジカルボン酸など)が好ましい。これらのポリカルボン酸は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。ポリオールとしては、前記脂肪族ジオール、前記脂環族ジオール、前記芳香族ジオールなどが挙げられる。これらのポリオールは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0045】
ラクトン類としては、例えば、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、エナントラクトン(7−ヒドロキシヘプタン酸ラクトン)などのC3−10ラクトンなどが挙げられる。これらのラクトン類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのラクトン類のうち、バレロラクトンやカプロラクトンなどのC4−8ラクトンが好ましい。
【0046】
ラクトン類に対する開始剤としては、例えば、水、オキシラン化合物(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランなどのC2−6アルキレンオキシドなど)の単独又は共重合体[例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)など]、低分子量ポリオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサメチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールAなど)、アミノ基を有する化合物(例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミンなどのジアミン化合物、ジエチレントリアミンなどのポリアミン化合物など)などが挙げられる。これらの開始剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0047】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、前記オキシラン化合物の開環重合体(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのポリC2−4アルキレングリコールなど)などが挙げられる。
【0048】
前記ポリエーテルエステルポリオールとしては、例えば、前記ジカルボン酸(芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸など)又はこれらのジアルキルエステルと、前記ポリエーテルポリオールとの重合物であるポリエーテルエステルポリオールなどが挙げられる。
【0049】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、グリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルカンジオール;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの(ポリ)オキシアルキレングリコール;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環族ジオール;ビスフェノールAなどのビスフェノール類、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体などの芳香族ジオールから選択された一種又は二種以上のグリコール)とカーボネート(ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジフェニルカーボネートなど)又はホスゲンなどとの重合体などが挙げられる。
【0050】
前記ポリエステルアミドポリオールとしては、前記ポリエステルポリオールの反応(ジカルボン酸とジオールとの重合など)において、末端カルボキシル基含有ポリエステルとジアミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアミノ基を有する脂肪族ジアミンなど)とを反応成分とするポリエステルアミドポリオールなどが挙げられる。
【0051】
前記アクリルポリオールとしては、ヒドロキシル基を有する重合性単量体(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなど)と、ヒドロキシル基を含まない(メタ)アクリル系単量体(例えば、(メタ)アクリル酸、又はそのエステル)との重合物であるアクリルポリオールなどが挙げられる。
【0052】
これらのポリオール類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリオール類のうち、柔軟性及び汎用性などの点から、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールが好ましい。なかでも、柔軟性などの点から、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが好ましく、吸湿安定性に優れる点から、ポリエステルポリオールが特に好ましい。
【0053】
ポリウレタンプレポリマーとしては、例えば、前記ポリイソシアネート類の多量体、前記ポリイソシアネート類のビュレット変性多量体、前記ポリイソシアネート類と前記ポリオール類とのアダクト体、前記ポリオール類に対して過剰量の前記ポリイソシアネート類を反応させて得られたポリウレタンプレポリマーなどが挙げられる。これらのプレポリマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0054】
好ましいポリウレタンプレポリマーは、例えば、前記ポリイソシアネート類の多量体(三量体、五量体、七量体など)、前記ポリイソシアネート類のビュレット多量体(ビュレット変性体)、前記ポリイソシアネート類とポリオール類(グリセリン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類)とのアダクト体、前記ジイソシアネートとポリエステルポリオールとのポリウレタンプレポリマー、前記ジイソシアネートとポリエーテルポリオールとのポリウレタンプレポリマー、特に、前記ジイソシアネートとポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールとのポリウレタンプレポリマーなどが好ましい。
【0055】
活性水素原子を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2−6アルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルコキシC2−6アルキル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0056】
ウレタン(メタ)アクリレートの1分子中における(メタ)アクリロイル基の数は、1〜10個程度の範囲から選択でき、例えば、2〜8個、好ましくは2〜6個、さらに好ましくは2〜4個(特に2〜3個)程度である。
【0057】
特に、ウレタン(メタ)アクリレートは、光学シートの柔軟性を向上させる点から、2〜3官能のポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。さらに、ウレタン(メタ)アクリレートは、光学シートの柔軟性と機械的強度とを両立させる点から、2〜3官能(特に2官能)のポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレートと4〜8官能(好ましくは5〜8可能、さらに好ましくは6官能)のポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレートとを組み合わせてもよい。例えば、光学シートの柔軟性と機械的強度とのバランスを調整するために、両者の割合(重量比)を、2〜3官能のポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレート/4〜8官能のポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレート=50/50〜90/10程度の範囲から選択してもよい。
【0058】
さらに、光学シートの中でも、携帯電話の導光シートなど、高い柔軟性が要求される用途では、通常、2個の(メタ)アクリロイル基を有する2官能ウレタン(メタ)アクリレートが使用され、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートの割合は、ウレタン(メタ)アクリレート全体に対して、例えば、50モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下程度である。
【0059】
ウレタン(メタ)アクリレート(硬化物)のガラス転移温度(Tg)は、最終物である重合性組成物(硬化物)のガラス転移温度が所定の範囲になればよく、他の重合成分の存在によっても変わるが、例えば、−100℃〜100℃(例えば、−80℃〜100℃)程度の範囲から選択でき、例えば、−60℃〜90℃、好ましくは−40℃〜80℃、さらに好ましくは−20℃〜70℃(特に−20℃〜40℃)程度である。なお、Tgは、実施例で記載された方法で測定できる。さらに、硬化物のガラス転移温度が異なるウレタン(メタ)アクリレートを組み合わせてもよく、例えば、Tg−20〜40℃(特に0〜20℃)のウレタン(メタ)アクリレートと、Tg−100℃以上―20℃未満(特に−80〜−30℃)のウレタン(メタ)アクリレートとを、前者/後者=90/10〜10/90、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは70/30〜30/70程度の割合(重量比)で組み合わせて、重合性組成物の引張弾性率を調整してもよい。
【0060】
本発明のウレタン(メタ)アクリレートは、ポリイソシアネート類と活性水素原子を有する(メタ)アクリレートとを、通常、イソシアネート基と活性水素原子が略当量となる割合(イソシアネート基/活性水素原子=0.8/1〜1.2/1程度)で組み合わせて製造される。なお、これらのウレタン(メタ)アクリレートの製造方法について、特開2008−74891号公報などを参照できる。3官能以上の多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどのポリオール類を利用して得られたウレタン(メタ)アクリレートであってもよい。
【0061】
ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で、500〜10000、好ましくは600〜9000、さらに好ましくは700〜8000程度であってもよい。
【0062】
(B)重合性ビニル系成分
重合性ビニル系成分としては、主として、重合性組成物の軟性(ガラス転移温度)を制御するために配合され、α,β−エチレン性不飽和二重結合を有する化合物(硬化性化合物)である限り、特に限定されない。α,β−エチレン性不飽和二重結合[特に(メタ)アクリロイル基]の数は、1分子中に1以上(例えば、1〜20、好ましくは1〜15、さらに好ましくは1〜10程度)であってもよい。
【0063】
ビニル系成分は、モノマーであっても、オリゴマー(又はプレポリマー)であってもよく、モノマー及びオリゴマーを組み合わせて使用してもよい。
【0064】
ビニル系モノマーには、単官能ビニル系モノマー[単官能(メタ)アクリレート(又はモノ(メタ)アクリレート)類など]、二官能ビニル系モノマー[二官能(メタ)アクリレート(又はジ(メタ)アクリレート)類など]、3官能以上のビニル系モノマー[3官能以上の多官能(メタ)アクリレート(又はポリ(メタ)アクリレート)類など]が含まれる。
【0065】
単官能ビニル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのC1−24アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどの橋架け環式(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレートなどのアリール(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレートなどのアラルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2−10アルキル(メタ)アクリレート又はC2−10アルカンジオールモノ(メタ)アクリレート;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレートなどのフルオロC1−10アルキル(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどのアリールオキシアルキル(メタ)アクリレート;フェニルカルビトール(メタ)アクリレート、ノニルフェニルカルビトール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのアリールオキシ(ポリ)アルコキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;グリセリンモノ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールモノ(メタ)アクリレート;2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基又は置換アミノ基を有する(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0066】
二官能ビニル系モノマーとしては、例えば、アリル(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパンなどのビスフェノール類(ビスフェノールA、Sなど)のC2−4アルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレート;脂肪酸変性ペンタエリスリトールなどの酸変性アルカンポリオールのジ(メタ)アクリレート;トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどの橋架け環式ジ(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0067】
多官能ビニル系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート;前記アルカンポリオールのC2−4アルキレンオキサイド付加体のトリ(メタ)アクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレートなどのトリアジン環を有するトリ(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0068】
これらのモノマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0069】
ビニル系オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート[例えば、多価カルボン酸とポリオールと(メタ)アクリル酸及び/又はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応により生成するポリエステル(メタ)アクリレートなど];アルキド樹脂;エポキシ(メタ)アクリレート[例えば、複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物(多価アルコール型、多価カルボン酸型、ビスフェノールA、F、Sなどのビスフェノール型、ノボラック型などのエポキシ樹脂)に(メタ)アクリル酸が開環付加したエポキシ(メタ)アクリレートなど];ポリアクリル(メタ)アクリレート[例えば、(メタ)アクリル系単量体とグリシジル(メタ)アクリレートとの共重合体に(メタ)アクリル酸をエポキシ基に開環付加したポリアクリル(メタ)アクリレートなど];ポリエーテル(メタ)アクリレート;ポリブタジエン系(メタ)アクリレート;メラミン(メタ)アクリレート;シリコーン(メタ)アクリレート;ポリアセタール(メタ)アクリレートなどが例示できる。これらのオリゴマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0070】
これらのビニル系成分のうち、二官能ビニル系モノマー、例えば、(ポリ)C2−6アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが汎用される。さらに、(ポリ)C2−6アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの中でも、柔軟性などの点から、ポリC2−6アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましく、柔軟性に加えて、密着性にも優れる点から、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。オキシC3−4アルキレン単位の平均繰り返し数は、分子1分子当たり1.2〜30モル程度の範囲から選択でき、例えば、1.5〜20モル、好ましくは2〜15モル、さらに好ましくは3〜10モル(特に5〜9モル)程度であってもよい。
【0071】
ウレタン(メタ)アクリレートと、ビニル系重合成分(例えば、ポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート)との割合(重量比)は、目的の軟性(ガラス転移温度)などに応じて、前者/後者=100/0〜1/99程度の範囲から選択でき、例えば、前者/後者=90/10〜2/98、好ましくは70/30〜3/97、さらに好ましくは50/50〜5/95(特に30/70〜10/90)程度であってもよい。
【0072】
さらに、2〜3官能(特には2官能)のポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレートを用いた場合でも、ウレタン(メタ)アクリレートの分子構造によっては、機械的強度が不足する場合があるが、この場合には、ポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[特に、オキシC3−4アルキレン単位の平均繰り返し数が5〜9モルであるポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート]と組み合わせることにより、柔軟性を保持しながら、機械的強度を改善できる。
【0073】
(C)重合開始剤
重合性組成物には、重合開始剤が含まれていてもよい。EBで硬化させる場合以外においては重合開始剤が必要である。重合開始剤は、熱重合開始剤(ベンゾイルパーオキサイドなどの過酸化物などの熱ラジカル発生剤)であってもよく、光重合開始剤(光ラジカル発生剤)であってもよい。好ましい重合開始剤は、光重合開始剤である。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン類(ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類など)、フェニルケトン類[例えば、アセトフェノン類(例えば、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンなど)、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンなどのアルキルフェニルケトン類;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのシクロアルキルフェニルケトン類など]、アミノアセトフェノン類{2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノアミノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1など}、アントラキノン類(アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンなど)、チオキサントン類(2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなど)、ケタール類(アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなど)、ベンゾフェノン類(ベンゾフェノンなど)、キサントン類、ホスフィンオキサイド類(例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなど)などが例示できる。これらの光重合開始剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0074】
重合開始剤の割合は、重合成分(ウレタン(メタ)アクリレート及び重合性ビニル系成分の合計)100重量部に対して0.1重量部〜20重量部、好ましくは0.5〜15重量部、さらに好ましくは1〜10重量部(特に3〜8重量部)程度であってもよい。
【0075】
なお、光重合開始剤は、光増感剤と組み合わせてもよい。光増感剤としては、慣用の成分、例えば、第3級アミン類[例えば、トリアルキルアミン、トリアルカノールアミン(トリエタノールアミンなど)、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸アミルなどのジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーズケトン)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンなどのビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンなど]、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類、N,N−ジメチルトルイジンなどのトルイジン類、9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセンなどのアントラセン類などが挙げられる。光増感剤は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
【0076】
光増感剤の割合は、前記光重合開始剤100重量部に対して、例えば、0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜80重量部、さらに好ましくは1〜50重量部程度であってもよい。
【0077】
重合開始剤(特に光重合開始剤及び光増感剤)は、電子線を照射して重合性組成物を硬化する場合には、実質的に含有しないのが好ましい。重合開始剤を含有しない場合、耐候性、特に、長期間の使用に対する難黄変性が向上する。
【0078】
重合性組成物は、柔軟性や透明性を損なわない範囲で、重合開始剤以外にも、慣用の添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤などの安定化剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤などを含有していてもよい。
【0079】
さらに、重合性組成物は、有機溶媒、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(ベンゼンなど)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチルなど)、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、セロソルブアセテート類、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)などを含有していてもよい。さらに、本発明では、重合性組成物として、特定の粘弾性を有する樹脂成分を用いるため、溶媒を含んでいなくても、塗布性に優れている。そのため、重合性組成物は、溶媒を実質的に含有していなくてもよい。また、溶媒を実質的に含有しなくても粘度が低く、厚塗りが可能である。
【0080】
重合性組成物は、(メタ)アクリル基を有することを必須成分とし、前記例示のウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好適であり、さらに前記例示の重合性ビニル系成分や重合開始剤などを含んでいてもよく、その組成は限定されないが、加速電圧200kV及び照射線量50kGyの電子線により硬化させた厚み100μmの硬化物(成形品)において、JIS K7113に準拠した方法(25℃)で200MPa以下の引張弾性率を有する組成に調製する必要がある。このような重合性組成物を用いると、タッチパネルなどにおける打鍵耐久性を向上できる。また、塗布液の粘度が低く、簡便な方法で、表面が平滑な厚膜を形成できるため、透明性と柔軟性とを両立できる。すなわち、このような重合性組成物は高い透明性と柔軟性とを両立する特性を有するが、10μmよりも大きい厚み(特に12μm以上の厚み)を有するクッション層を形成しても塗布に起因する厚みムラの発生が抑制され、前記特性を有効に発現できる。
【0081】
前記引張弾性率は、具体的には0.1〜150MPa程度であってもよく、好ましくは1〜100MPa、さらに好ましくは1〜80MPa(特に1〜50MPa)、よりよく好ましくは1〜35MPa程度であってもよい。このような引張弾性率を有する重合性組成物は、例えば、複数種の(例えば、硬化成分のガラス転移温度が異なる)ウレタン(メタ)アクリレートを組み合わせて調製してもよく、ウレタン(メタ)アクリレートと重合性ビニル成分とを組み合わせて調製してもよい。特に、複数種のウレタン(メタ)アクリレートを混合することで、比較的塗布液粘度を低くして、厚塗りが可能なように調整できる。なお、加速電圧200kV及び照射線量50kGyの電子線により硬化させた厚み100μmを有する硬化物の引張弾性率は、本発明に用いる重合性組成物の種類を規定するための特性であり、後述する最終物としてのクッション層の引張弾性率とは直接の関係はない。また、引張弾性率の測定方法は、具体的には、後述の実施例に記載の方法を用いることができる。
【0082】
(2)重合性組成物の硬化物(クッション層)
前記重合性組成物を硬化させて得られるクッション層のガラス転移温度(Tg)は−30℃〜30℃であり、好ましくは−30℃〜20℃(−30℃〜10℃)、さらに好ましくは−20℃〜10℃(特に−10℃〜5℃)程度である。ガラス転移温度が20℃近辺よりも低温側にある場合、すなわち使用する温度よりも低温側にある場合には、使用温度域で柔軟性がより柔らかくなり、かつこの物性が安定する。
【0083】
クッション層は、高い透明性を有しており、JIS K7361−1に準拠して測定した全光線透過率が、例えば、80%以上(例えば、80〜100%)、好ましくは90%以上(例えば、90〜99%)、さらに好ましくは92%以上(例えば、92〜98%)、特に93〜97%程度である。JIS K7361−1に準拠して測定したヘーズは、例えば、5%以下(例えば、0.1〜5%)、好ましくは3%以下(例えば、0.2〜3%)、さらに好ましくは2.5%以下(例えば、0.5〜2.5%)程度である。
【0084】
クッション層は色味も少なく、JIS K7105に準拠した透過モードで測定したb*値は、例えば、1以下(例えば、0.01〜1)、好ましくは0.8以下(例えば、0.03〜0.8)、さらに好ましくは0.5以下(例えば、0.1〜0.5)程度である。さらに、クッション層は耐候性にも優れており、長期間に亘り、過酷な条件で紫外線などに照射されても黄変が抑制される。例えば、ウェザーメーター(スガ試験機(株)製、スーパーキセノンウェザーメーター、「SX2−75」)を用いて、JIS K7350−2に準拠した暴露試験を行った後のb*値は、例えば、3以下(例えば、0.05〜3)、好ましくは2以下(例えば、0.1〜2)、さらに好ましくは1.5以下(例えば、0.3〜1.5)程度である。
【0085】
さらに、クッション層は硬化樹脂で構成されているため、クッション層の存在により、基材フィルムがポリエチレンテレフタレートなどのプラスチックである場合、基材フィルムの内部から熱によりオリゴマーなどの低分子成分が析出することも抑制できる。
【0086】
クッション層の厚みは、例えば、柔軟性の点から、10μmを超える厚み(特に12μm以上の厚み)が好ましく、例えば、11〜50μm、好ましくは12〜40μm、さらに好ましくは15〜30μm(特に15〜25μm)程度である。特に、本発明では、溶媒を用いることなく、表面が平滑であり、かつ12μm以上の塗膜を形成できる。
【0087】
さらに、基材フィルムとクッション層との厚み比は、例えば、基材フィルム/クッション層=20/1〜5/1、好ましくは18/1〜6/1、さらに好ましくは15/1〜7/1(特に12/1〜8/1)程度である。本発明では、クッション層の厚みが、適度に厚く、基材フィルムに対して、このような厚み比を有するとともに、後述するようにコーティングによりクッション層を形成することにより、透明導電層に近接するクッション層が効果的に作用し、透明導電層の割れや損傷を抑制できる。
【0088】
(機能層)
機能層(第1の機能層)としては、慣用の機能層、例えば、ハードコート層、アンチニュートンリング層、光散乱層、反射防止層、低屈折率層などが挙げられる。これらのうち、ハードコート層、アンチニュートンリング層などが汎用される。ハードコート層としては、透明で耐擦傷性の高い材質であれば特に限定されないが、硬化性樹脂が好ましく、例えば、前記クッション層で例示されたウレタン(メタ)アクリレート及び/又は重合性ビニル系成分を含む組成物の硬化物のうち、前記クッション層よりもガラス転移温度の高い硬化物などを利用でき、タッチパネルに要求される透明性、柔軟性(フレキシブル性)、耐擦傷性を兼ね備える点から、ウレタン(メタ)アクリレートを含む重合性組成物が特に好ましい。
【0089】
さらに、本発明では、タッチパネルの視認性を向上できる点から、機能層としてアンチニュートンリング層を形成するのが特に好ましい。アンチニュートンリング層(ニュートンリング防止層)は、透明でアンチニュートンリング性を有している限り、特に限定されないが、表面に凹凸構造を有する層が好ましい。本発明では、アンチニュートンリング層を形成することにより、タッチパネルの表示部におけるニュートンリングの発生を抑制できるため、特に、大画面のタッチパネルにおいて有効となる。表面に凹凸構造を有するアンチニュートンリング層としては、例えば、複数のポリマー成分(又はその前駆体)の相分離により凹凸構造を形成した層(相分離を利用したアンチニュートンリング層)、ポリマー成分(又はその前駆体)中に粒子を配合することにより凹凸構造を形成した層(粒子を配合したアンチニュートンリング層)、鋳型を用いて凹凸構造を形成した層などが挙げられる。これらのうち、簡便に高い防眩性を発現できる点から、相分離を利用した層、粒子を配合した層が好ましい。
【0090】
(1)相分離を利用したアンチニュートンリング層
相分離を利用した層は、1又は複数のポリマーと、1又は複数の硬化した硬化性樹脂前駆体とを含み、かつ表面に凹凸形状(凹凸構造)を有する相分離構造で構成されていてもよい。アンチニュートンリング層の相分離構造は、液相からのスピノーダル分解(湿式スピノーダル分解)により形成されている。すなわち、ポリマーと硬化性樹脂前駆体と溶媒とで構成された樹脂組成物を用い、この樹脂組成物の液相(又は均一溶液やその塗布層)から、溶媒を乾燥などにより除去する過程で、濃縮に伴って、スピノーダル分解による相分離が生じ、相間距離が微細で比較的規則的な相分離構造を形成できる。より具体的には、前記湿式スピノーダル分解は、通常、1又は複数のポリマーと1又は複数の硬化性樹脂前駆体と溶媒とを含む混合液又は樹脂組成物(均一溶液)を基材フィルムにコーティングし、形成された塗布層から溶媒を蒸発させることにより行うことができる。このような相分離構造による凹凸構造は、微粒子による凹凸構造と比較して微細であり、かつ硬質な微粒子を用いなくとも凹凸構造を形成できる。さらに、この凹凸構造は、微細な構造に加えて、規則的で滑らか(又はなだらか)な表面構造を有しているため、ロール状に巻き取って巻き締めても透明導電層が損傷又は劣化されるのを抑制できる。
【0091】
(A)ポリマー成分
ポリマー成分としては、通常、熱可塑性樹脂が使用される。熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、オレフィン系樹脂(脂環式オレフィン系樹脂を含む)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6−キシレノールの重合体など)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ゴム又はエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)などが例示できる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0092】
これらの熱可塑性樹脂のうち、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂、及びゴム又はエラストマーなどが好ましい。さらに、熱可塑性樹脂としては、通常、非結晶性であり、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶な樹脂が使用される。特に、成形性又は製膜性、透明性や耐候性の高い樹脂、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類など)などが好ましい。
【0093】
スチレン系樹脂には、スチレン系単量体の単独又は共重合体(ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体など)、スチレン系単量体と他の重合性単量体[(メタ)アクリル系単量体、無水マレイン酸、マレイミド系単量体、ジエン類など]との共重合体などが含まれる。スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレンと(メタ)アクリル系単量体との共重合体[スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体など]、スチレン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。好ましいスチレン系樹脂には、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル系単量体との共重合体[スチレン−メタクリル酸メチル共重合体などのスチレンとメタクリル酸メチルを主成分とする共重合体]、AS樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体などが含まれる。
【0094】
(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体、(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体との共重合体などが使用できる。(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、前記クッション層における重合性ビニル系成分(2)として例示された単官能ビニル系モノマーなどが例示できる。共重合性単量体には、前記スチレン系単量体、ビニルエステル系単量体、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸などが例示できる。これらの単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0095】
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸イソボルニルなどが挙げられる。好ましい(メタ)アクリル系樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキル、特にメタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%程度)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。さらに、(メタ)アクリル系樹脂は、シリコーン含有(メタ)アクリル系樹脂であってもよい。
【0096】
脂環式オレフィン系樹脂としては、環状オレフィン(ノルボルネン、ジシクロペンタジエンなど)の単独又は共重合体(例えば、立体的に剛直なトリシクロデカンなどの脂環式炭化水素基を有する重合体など)、前記環状オレフィンと共重合性単量体との共重合体(エチレン−ノルボルネン共重合体、プロピレン−ノルボルネン共重合体など)などが例示できる。脂環式オレフィン系樹脂は、例えば、商品名「トパス(TOPAS)」、商品名「アートン(ARTON)」、商品名「ゼオネックス(ZEONEX)」などとして入手できる。
【0097】
ポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリC2−4アルキレンテレフタレートやポリC2−4アルキレンナフタレートなどのホモポリエステルなどであってもよいが、溶媒溶解性の点から、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸を用いた芳香族コポリエステル[C2−4アルキレンアリレート単位(C2−4アルキレンテレフタレート及び/又はC2−4アルキレンナフタレート単位)を主成分(例えば、50重量%以上)として含むコポリエステルなど]などが好ましい。コポリエステルとしては、ポリC2−4アルキレンアリレートの構成単位のうち、C2−4アルキレングリコールの一部を、ポリオキシC2−4アルキレングリコール、C5−10アルキレングリコール、脂環式ジオール(シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなど)、芳香環を有するジオール(9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、ビスフェノールA、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体など)などで置換したコポリエステル、芳香族ジカルボン酸の一部を、フタル酸、イソフタル酸などの非対称芳香族ジカルボン酸、アジピン酸などの脂肪族C6−12ジカルボン酸などで置換したコポリエステルが含まれる。ポリエステル系樹脂には、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸を用いた脂肪族ポリエステル、ε−カプロラクトンなどのラクトンの単独又は共重合体も含まれる。好ましいポリエステル系樹脂は、通常、非結晶性コポリエステル(例えば、C2−4アルキレンアリレート系コポリエステルなど)などのように非結晶性である。
【0098】
セルロース誘導体のうち、セルロースエステル類としては、例えば、脂肪族有機酸エステル(セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート;セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのC1−6有機酸エステルなど)、芳香族有機酸エステル(セルロースフタレート、セルロースベンゾエートなどのC7−12芳香族カルボン酸エステル)、無機酸エステル類(例えば、リン酸セルロース、硫酸セルロースなど)が例示でき、酢酸・硝酸セルロースエステルなどの混合酸エステルであってもよい。セルロース誘導体には、セルロースカーバメート類(例えば、セルロースフェニルカーバメートなど)、セルロースエーテル類(例えば、シアノエチルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキルセルロース;メチルセルロース、エチルセルロースなどのC1−6アルキルセルロース;カルボキシメチルセルロース又はその塩、ベンジルセルロース、アセチルアルキルセルロースなど)も含まれる。
【0099】
ポリマー成分としては、硬化反応に関与する官能基(又は硬化性化合物と反応可能な官能基)を有するポリマーを用いることもできる。前記ポリマーは、官能基を主鎖に有していてもよく、側鎖に有していてもよい。前記官能基は、共重合や共縮合などにより主鎖に導入されてもよいが、通常、側鎖に導入される。このような官能基としては、縮合性基や反応性基(例えば、ヒドロキシル基、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基又はイミノ基、エポキシ基、グリシジル基、イソシアネート基など)、重合性基(例えば、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、アリルなどのC2−6アルケニル基、エチニル、プロピニル、ブチニルなどのC2−6アルキニル基、ビニリデンなどのC2−6アルケニリデン基、又はこれらの重合性基を有する基((メタ)アクリロイル基など)など)などが挙げられる。これらの官能基のうち、重合性基が好ましい。
【0100】
重合性基を側鎖に導入する方法としては、例えば、反応性基や縮合性基などの官能基を有する熱可塑性樹脂と、前記官能基との反応性基を有する重合性化合物とを反応させる方法を用いることができる。
【0101】
官能基を有する熱可塑性樹脂としては、カルボキシル基又はその酸無水物基を有する熱可塑性樹脂、ヒドロキシル基を有する熱可塑性樹脂、アミノ基を有する熱可塑性樹脂、エポキシ基を有する熱可塑性樹脂などが例示できる。また、官能基を有さない熱可塑性樹脂に、前記官能基を共重合やグラフト重合で導入した樹脂であってもよい。
【0102】
重合性化合物としては、カルボキシル基又はその酸無水物基を有する熱可塑性樹脂の場合は、エポキシ基やヒドロキシル基、アミノ基、イソシアネート基などを有する重合性化合物などを用いることができる。ヒドロキシル基を有する熱可塑性樹脂の場合は、カルボキシル基又はその酸無水物基やイソシアネート基などを有する重合性化合物などが挙げられる。アミノ基を有する熱可塑性樹脂の場合は、カルボキシル基又はその酸無水物基やエポキシ基、イソシアネート基などを有する重合性化合物などが挙げられる。エポキシ基を有する熱可塑性樹脂の場合は、カルボキシル基又はその酸無水物基やアミノ基などを有する重合性化合物などが挙げられる。
【0103】
前記重合性化合物のうち、エポキシ基を有する重合性化合物としては、例えば、エポキシシクロヘキセニル(メタ)アクリレートなどのエポキシシクロC5−8アルケニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどが例示できる。ヒドロキシル基を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC1−4アルキル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのC2−6アルキレングリコール(メタ)アクリレートなどが例示できる。アミノ基を有する重合性化合物としては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノC1−4アルキル(メタ)アクリレート、アリルアミンなどのC3−6アルケニルアミン、4−アミノスチレン、ジアミノスチレンなどのアミノスチレン類などが例示できる。イソシアネート基を有する重合性化合物としては、例えば、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレートやビニルイソシアネートなどが例示できる。カルボキシル基又はその酸無水物基を有する重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸や無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸又はその無水物などが例示できる。
【0104】
代表的な例としては、カルボキシル基又はその酸無水物基を有する熱可塑性樹脂とエポキシ基含有化合物、特に(メタ)アクリル系樹脂((メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)とエポキシ基含有(メタ)アクリレート(エポキシシクロアルケニル(メタ)アクリレートやグリシジル(メタ)アクリレートなど)の組み合わせが挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル系樹脂のカルボキシル基の一部に重合性不飽和基を導入したポリマー、例えば、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のカルボキシル基の一部に、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチルアクリレートのエポキシ基を反応させて、側鎖に光重合性不飽和基を導入した(メタ)アクリル系ポリマー(サイクロマーP、ダイセル化学工業(株)製)などが使用できる。
【0105】
熱可塑性樹脂に対する硬化反応に関与する官能基(特に重合性基)の導入量は、熱可塑性樹脂1kgに対して、0.001〜10モル、好ましくは0.01〜5モル、さらに好ましくは0.02〜3モル程度である。
【0106】
これらのポリマーは適宜組み合わせて使用できる。すなわち、ポリマーは複数のポリマーで構成されていてもよい。複数のポリマーは、液相スピノーダル分解により、相分離可能であってもよい。また、複数のポリマーは、互いに非相溶であってもよい。複数のポリマーを組み合わせる場合、第1のポリマーと第2のポリマーとの組み合わせは特に制限されないが、加工温度付近で互いに非相溶な複数のポリマー、例えば、互いに非相溶な2つのポリマーとして適当に組み合わせて使用できる。例えば、第1のポリマーがスチレン系樹脂である場合、第2のポリマーは、セルロース誘導体、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂などであってもよい。また、例えば、第1のポリマーがセルロース誘導体である場合、第2のポリマーは、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂(特に、重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂)、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂などであってもよい。複数の樹脂の組合せにおいて、少なくともセルロースエステル類(例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースC2−4アルキルカルボン酸エステル類)を用いてもよい。
【0107】
なお、スピノーダル分解により生成された相分離構造(隆起した表面の凹凸形状)は、活性エネルギー線(紫外線、電子線など)や熱などにより最終的に硬化し、硬化樹脂を形成する。
【0108】
硬化後の耐久性(耐擦傷性)などの観点から、複数のポリマーのうち、少なくとも一つのポリマー、例えば、互いに非相溶なポリマーのうち一方のポリマー(第1のポリマーと第2のポリマーとを組み合わせる場合、特に両方のポリマー)が硬化性樹脂前駆体と反応可能な官能基を側鎖に有するポリマーであるのが好ましい。
【0109】
第1のポリマーと第2のポリマーとの割合(重量比)は、例えば、前者/後者=1/99〜99/1、好ましくは5/95〜95/5、さらに好ましくは10/90〜90/10程度の範囲から選択でき、通常、20/80〜80/20程度、特に30/70〜70/30程度である。
【0110】
なお、相分離構造を形成するためのポリマーとしては、前記非相溶な2つのポリマー以外にも、前記熱可塑性樹脂や他のポリマーが含まれていてもよい。
【0111】
ポリマーのガラス転移温度は、例えば、−100〜250℃、好ましくは0〜200℃、さらに好ましくは50〜180℃程度(特に100〜170℃程度)であってもよい。ポリマーの重量平均分子量は、例えば、1,000,000以下、好ましくは1,000〜500,000程度の範囲から選択できる。
【0112】
(B)硬化性樹脂前駆体
硬化性樹脂前駆体は、熱や活性エネルギー線(紫外線や電子線など)などにより反応する官能基を有する化合物であり、熱や活性エネルギー線などにより硬化又は架橋して樹脂(特に硬化又は架橋樹脂)を形成可能な種々の硬化性化合物、例えば、熱硬化性化合物又は樹脂[エポキシ基、重合性基、イソシアネート基、アルコキシシリル基、シラノール基などを有する低分子量化合物(例えば、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂など)]、活性エネルギー線(紫外線など)により硬化可能な光硬化性化合物(光硬化性モノマー、オリゴマーなどの紫外線硬化性化合物など)などが例示でき、光硬化性化合物は、EB(電子線)硬化性化合物などであってもよい。なお、光硬化性モノマー、オリゴマーや低分子量であってもよい光硬化性樹脂などの光硬化性化合物を、単に「光硬化性樹脂」という場合がある。
【0113】
光硬化性化合物には、例えば、単量体、オリゴマー(又は樹脂、特に低分子量樹脂)が含まれる。単量体は、例えば、1つの重合性基を有する単官能単量体と、少なくとも2つの重合性基を有する多官能単量体とに分類できる。
【0114】
単官能単量体としては、例えば、前記クッション層における重合性ビニル系成分(2)として例示された単官能ビニル系モノマー、ビニルピロリドンなどのビニル系単量体などが挙げられる。多官能単量体には、2〜8程度の重合性基を有する多官能単量体が含まれ、2官能単量体としては、例えば、前記クッション層における重合性ビニル系成分(2)として例示された二官能ビニル系モノマーなどが挙げられる。3〜8官能単量体としては、例えば、前記クッション層における重合性ビニル系成分(2)として例示された多官能ビニル系モノマーなどが挙げられる。
【0115】
オリゴマー又は樹脂としては、前記クッション層におけるウレタン(メタ)アクリレート、重合性ビニル系成分(2)として例示されたビニル系オリゴマーなどが例示できる。これらの(メタ)アクリレートオリゴマー又は樹脂には、前記ポリマー成分における(メタ)アクリル系樹脂の項で例示された共重合性単量体が含まれていてもよい。これらの光硬化性化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0116】
さらに、硬化性樹脂前駆体は、ヘイズ値を低下できるとともに、層の強度も向上できる点から、透明性や強度を向上する点などから、フッ素原子や無機粒子を含有していてもよい。フッ素原子を含有する前駆体(フッ素含有硬化性化合物)としては、前記単量体及びオリゴマーのフッ化物、例えば、フルオロアルキル(メタ)アクリレート[例えば、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートやトリフルオロエチル(メタ)アクリレートなど]、フルオロ(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[例えば、フルオロエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、フルオロプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]、フッ素含有エポキシ樹脂、フッ素含有ウレタン系樹脂などが挙げられる。無機粒子を含有する前駆体としては、例えば、表面に重合性基を有する無機粒子(例えば、重合性基を有するシランカップリング剤で表面を修飾したシリカ粒子など)などが例示できる。表面に重合性基を有するナノサイズのシリカ粒子としては、例えば、JSR(株)製から、多官能ハイブリッド系UV硬化剤(Z7501)が市販されている。
【0117】
好ましい硬化性樹脂前駆体は、短時間で硬化できる光硬化性化合物、例えば、紫外線硬化性化合物(モノマー、オリゴマーや低分子量であってもよい樹脂など)、EB硬化性化合物である。特に、実用的に有利な樹脂前駆体は、紫外線硬化性樹脂である。さらに、繰り返しの使用(打鍵)に対する耐久性を向上させるため、光硬化性樹脂は、2官能以上(好ましくは2〜10官能、さらに好ましくは3〜8官能程度)の光硬化性化合物、特に、多官能(メタ)アクリレート、例えば、3官能以上(特に4〜8官能)の(メタ)アクリレートを含むのが好ましい。
【0118】
さらに、本発明では、硬化性樹脂前駆体は、5〜7官能(メタ)アクリレートと、3〜4官能(メタ)アクリレートとを組み合わせてもよい。両者の割合(重量比)は、例えば、前者/後者=100/0〜10/90、好ましくは99/1〜30/70、さらに好ましくは90/10〜50/50(特に80/20〜40/60)程度である。
【0119】
また、多官能(メタ)アクリレートと前記フッ素含有硬化性化合物(特に、フッ化アルキル鎖を含む(メタ)アクリレートなどのフッ素原子及び(メタ)アクリロイル基を有する単量体)とを組み合わせる場合、フッ素含有硬化性化合物の割合は、多官能(メタ)アクリレート100重量部に対して、例えば、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜1重量部、さらに好ましくは0.1〜0.5重量部程度である。
【0120】
硬化性樹脂前駆体の分子量としては、ポリマーとの相溶性を考慮して5000以下、好ましくは2000以下、さらに好ましくは1000以下程度である。
【0121】
硬化性樹脂前駆体は、その種類に応じて、硬化剤を含んでいてもよい。例えば、熱硬化性樹脂では、アミン類、多価カルボン酸類などの硬化剤を含んでいてもよく、光硬化性樹脂では光重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤としては、慣用の成分、例えば、アセトフェノン類又はプロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキシド類などが例示できる。光硬化剤などの硬化剤の含有量は、硬化性樹脂前駆体100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜8重量部(特に1〜5重量部)程度であり、3〜8重量部程度であってもよい。
【0122】
さらに、硬化性樹脂前駆体は硬化促進剤を含んでいてもよい。例えば、光硬化性樹脂は、光硬化促進剤、例えば、第三級アミン類(ジアルキルアミノ安息香酸エステルなど)、ホスフィン系光重合促進剤などを含んでいてもよい。
【0123】
少なくとも1つのポリマー及び少なくとも1つの硬化性樹脂前駆体のうち、少なくとも2つの成分が、加工温度付近で互いに相分離する組み合わせで使用される。相分離する組み合わせとしては、特に限定されないが、通常、複数のポリマー同士の組み合わせや、ポリマーと硬化性樹脂前駆体との組み合わせであり、特に、複数のポリマー同士の組み合わせが好ましい。相分離させる両者の相溶性が高い場合、溶媒を蒸発させるための乾燥過程で両者が有効に相分離せず、アンチニュートンリング層としての機能が低下する。
【0124】
なお、ポリマーと硬化性樹脂前駆体(又は硬化樹脂)とは、互いに相溶であってもよく、非相溶であってもよい。ポリマーと硬化性樹脂前駆体とが非相溶で相分離する場合に、ポリマーとして複数のポリマーを用いてもよい。複数のポリマーを用いる場合、少なくとも1つのポリマーが樹脂前駆体(又は硬化樹脂)に対して非相溶であればよく、他のポリマーは前記樹脂前駆体と相溶してもよい。
【0125】
ポリマーを互いに非相溶な複数のポリマーで構成して相分離する場合、硬化性樹脂前駆体は、非相溶な複数のポリマーのうち、少なくとも1つのポリマーと加工温度付近で互いに相溶する組合せで使用される。すなわち、互いに非相溶な複数のポリマーを、例えば、第1のポリマーと第2のポリマーとで構成する場合、硬化性樹脂前駆体は少なくとも第1のポリマー又は第2のポリマーのどちらかと相溶すればよく、好ましくは両方のポリマー成分と相溶してもよい。両方のポリマー成分に相溶する場合、第1のポリマー及び硬化性樹脂前駆体を主成分とした混合物と、第2のポリマー及び硬化性樹脂前駆体を主成分とした混合物との少なくとも二相に相分離する。
【0126】
具体的には、複数のポリマーがセルロース誘導体と重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂の組み合わせであり、かつ硬化性樹脂前駆体が多官能(メタ)アクリレートである場合、ポリマー同士が非相溶で相分離するとともに、重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂と多官能(メタ)アクリレートとの組み合わせも非相溶で相分離し、セルロース誘導体と多官能(メタ)アクリレートとが相溶であってもよい。
【0127】
選択した複数のポリマー及び硬化性樹脂前駆体の相溶性が高い場合、溶媒を蒸発させるための乾燥過程でポリマー同士又はポリマーと前駆体とが有効に相分離せず、アンチニュートンリング層としての機能が低下する。複数のポリマーや前駆体の相分離性は、双方の成分に対する良溶媒を用いて均一溶液を調製し、溶媒を徐々に蒸発させる過程で、残存固形分が白濁するか否かを目視にて確認することにより簡便に判定できる。
【0128】
さらに、ポリマーと硬化又は架橋樹脂との屈折率の差、複数のポリマーの屈折率の差(第1のポリマーと第2のポリマーとの屈折率の差)は、例えば、0.001〜0.2、好ましくは0.05〜0.15程度であってもよい。
【0129】
スピノーダル分解において、相分離の進行に伴って共連続相構造を形成し、さらに相分離が進行すると、連続相が自らの表面張力により非連続化し、液滴相構造(球状、真球状、円盤状や楕円体状などの独立相の海島構造)となる。従って、相分離の程度によって、共連続相構造と液滴相構造との中間的構造(上記共連続相から液滴相に移行する過程の相構造)も形成できる。アンチニュートンリング層の相分離構造は、海島構造(液滴相構造、又は一方の相が独立または孤立した相構造)、共連続相構造(又は網目構造)であってもよく、共連続相構造と液滴相構造とが混在した中間的構造であってもよい。これらの相分離構造により溶媒乾燥後にはアンチニュートンリング層の表面になだらかで微細な凹凸構造を形成できる。
【0130】
このように、相分離によって表面に凹凸形状を形成したアンチニュートンリング層のヘイズは、用途に応じて、0.1〜50%程度の範囲から選択でき、例えば、0.1〜30%、好ましくは0.5〜20%、さらに好ましくは1〜15%(特に2〜8%)程度である。例えば、電子ペーパーの場合、1〜30%、好ましくは5〜20%、さらに好ましくは10〜15%程度であってもよい。
【0131】
さらに、相分離を利用したアンチニュートンリング層は、粒子を配合する方法で形成したアンチニュートンリング層と異なり、層の内部で散乱を引き起こすような微粒子をアンチニュートンリング層内に含まない。このため、層の内部におけるヘイズ(層の内部で散乱を引き起こす内部ヘイズ)は低く、例えば、0〜1%程度であり、好ましくは0〜0.8%(例えば、0.01〜0.8%)、さらに好ましくは0〜0.5%(例えば、0.1〜0.5%)程度である。なお、内部ヘイズは、アンチニュートンリング層の表面凹凸を平坦化するように上から樹脂層をコートするか、透明粘着層を介して平滑な透明フィルムとアンチニュートンリング層の表面凹凸を貼り合わせて、ヘイズを測定することにより測定できる。
【0132】
前記相分離構造において、表面凹凸構造を形成し、かつ表面硬度を高める点からは、少なくとも島状ドメインを有する液滴相構造であるのが有利である。なお、ポリマーと前記前駆体(又は硬化樹脂)とで構成された相分離構造が海島構造である場合、ポリマー成分が海相を形成してもよいが、表面硬度の観点から、ポリマー成分が島状ドメインを形成するのが好ましい。なお、島状ドメインの形成により、乾燥後にはアンチニュートンリング層の表面に微細な凹凸を形成できる。
【0133】
さらに、前記相分離構造のドメイン間の平均距離は、通常、実質的に規則性又は周期性を有している。例えば、ドメインの平均相間距離は、例えば、1〜70μm(例えば、1〜40μm)、好ましくは2〜50μm(例えば、3〜30μm)、さらに好ましくは5〜20μm(例えば、10〜20μm)程度であってもよい。
【0134】
ポリマーと硬化性樹脂前駆体との割合(重量比)は、特に制限されず、例えば、前者/後者=5/95〜95/5程度の範囲から選択でき、表面硬度の観点から、好ましくは5/95〜60/40程度であり、さらに好ましくは10/90〜50/50、特に10/90〜40/60程度である。特に、ポリマーの全部又は一部にセルロース誘導体を用いる場合、ポリマーと硬化性樹脂前駆体との割合(重量比)は、例えば、前者/後者=10/90〜80/20、好ましくは20/80〜70/30、さらに好ましくは30/70〜50/50程度である。
【0135】
(2)粒子を配合したアンチニュートンリング層
粒子を配合したアンチニュートンリング層は、前記相分離を利用したアンチニュートンリング層で例示されたポリマー成分又は硬化性樹脂前駆体中に粒子を配合することにより、粒子由来の凹凸構造が形成されている。前記ポリマー成分又は硬化性樹脂前駆体としては、透明性及び機械的特性などの点から、(メタ)アクリル系重合性組成物が好ましく、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートなどが好ましい。
【0136】
粒子には、有機微粒子及び無機微粒子が含まれる。有機微粒子を構成する樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレンやスチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂など)、架橋熱可塑性樹脂[例えば、架橋オレフィン系樹脂(例えば、架橋ポリエチレン、架橋ポリプロピレンなど)、架橋スチレン系樹脂(例えば、架橋ポリスチレン、架橋ポリジビニルベンゼン、架橋ポリビニルトルエン、架橋スチレン−メタクリル酸メチル共重合体など)、架橋アクリル系樹脂(例えば、架橋ポリメタクリル酸メチルなど)など]、熱硬化性樹脂(メラミン樹脂、尿素樹脂、アミノベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンなど)などが例示できる。これらの有機微粒子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0137】
無機微粒子を構成する無機化合物としては、例えば、金属単体、金属酸化物、金属硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、金属珪酸塩(珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、アルミノ珪酸マグネシウムなど)、金属リン酸塩(リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等)、金属炭酸塩(炭酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムなど)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなど)、ケイ素化合物(ホワイトカーボン、ガラスなど)、天然鉱物(ゼオライト、ケイソウ土、焼成珪成土、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、クレーなど)などが挙げられる。
【0138】
これらの粒子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの粒子のうち、透明性やポリマー成分又は硬化性樹脂前駆体との親和性など点から、(架橋)スチレン系樹脂粒子、(架橋)アクリル系樹脂粒子、ポリカーボネート粒子などが好ましい。
【0139】
粒子の形状は、特に限定されず、球状、楕円体状、多角体形(多角錘状、正方体状、直方体状など)、板状、棒状、不定形などが挙げられるが、表面に均一な凹凸構造を形成する点から、略球状などの等方形状が好ましい。
【0140】
粒子の屈折率は、ポリマー成分又は硬化性樹脂前駆体の種類に応じて選択できるが、例えば、1.40〜1.60、好ましくは1.42〜1.59、さらに好ましくは1.45〜1.58程度であってもよい。
【0141】
粒子の平均粒径は、例えば、0.1〜10μm、好ましくは1〜8μm、さらに好ましくは2〜6μm(特に3〜5μm)程度である。
【0142】
粒子の割合は、ポリマー成分又は硬化性樹脂前駆体中100重量部に対して、例えば、1〜50重量部、好ましくは3〜40重量部、さらに好ましくは5〜30重量部(特に10〜20重量部)程度である。
【0143】
粒子を配合したアンチニュートンリング層は、溶融混練や溶媒を用いて混合する方法などの慣用の方法で製造でき、例えば、特開平6−18706号公報に記載の製造方法で製造してもよい。
【0144】
本発明では、前記アンチニュートンリング層のうち、均一で滑らかな凹凸形状を形成でき、アンチニュートンリング性に優れる点から、相分離を利用したアンチニュートンリング層が特に好ましい。
【0145】
アンチニュートンリング層には、種々の添加剤、例えば、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、界面活性剤、水溶性高分子、充填剤、架橋剤、カップリング剤、難燃剤、滑剤、ワックス、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤などが含まれていてもよい。
【0146】
アンチニュートンリング層の厚み(凹凸形状における凸部の頂点との間の厚み)は、例えば、0.3〜20μm程度、好ましくは1〜18μm(例えば、3〜16μm)程度であってもよく、通常、4〜15μm(特に5〜13μm)程度である。なお、アンチニュートンリング層以外の機能層の厚みも同程度の厚みであってもよい。本発明では、後述するように、コーティングにより積層フィルムを形成でき、密着性にも優れるため、アンチニュートンリング層やハードコート層などの機能層の厚みを大きくできるため、タッチパネルなどの視認性を向上できる。
【0147】
(透明導電層)
透明導電層は、透明電極として利用されている慣用の透明導電層を利用でき、導電性無機化合物で構成された透明導電層、導電性ポリマーで構成された透明導電層のいずれの導電層であってもよい。
【0148】
(1)導電性無機化合物で構成された透明導電層
導電性無機化合物としては、例えば、金属酸化物[例えば、酸化インジウム(InO2、In2O3、In2O3−SnO2複合酸化物(ITO)など)、酸化錫(SnO2、SnO2−Sb2O5複合酸化物、フッ素ドープ酸化錫(FTO)など)、酸化亜鉛(ZnO、ZnO−Al2O3複合酸化物など)]、金属(例えば、金、銀、白金、パラジウム)などが挙げられる。これらの導電性無機化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの導電性無機化合物のうち、ITO膜などの金属酸化物が汎用される。
【0149】
導電性無機化合物で構成された透明導電層は、慣用の方法、例えば、スパッタリング、蒸着、化学的気相成長法など(通常、スパッタリング)により形成できる。このような透明導電層は、例えば、特開2009−76544号公報、特許4165173号公報、特開2004−149884号公報に記載の透明導電層であってもよい。
【0150】
導電性無機化合物で構成された透明導電層の表面抵抗は、例えば、10〜1000Ω、好ましくは15〜500Ω、さらに好ましくは20〜300Ω程度であってもよい。
【0151】
導電性無機化合物で構成された透明導電層の厚みは、特に限定されず、1〜1000nm、好ましくは5〜500nm、さらに好ましくは10〜400nm(特に20〜300nm)程度であってもよい。
【0152】
本発明では、透明導電層が導電性無機化合物で形成されていても、タッチパネルにおける打鍵耐久性や摺動耐久性を向上できる。
【0153】
(2)導電性ポリマーで構成された導電層
導電性ポリマーとしては、透明でかつ導電性を有する共役系高分子物質であれば特に限定されず、慣用の導電性ポリマー、例えば、ポリアセチレン系重合体(例えば、ポリアセチレンなど)、ポリチオフェン系重合体(例えば、ポリチオフェンなど)、ポリフェニレン系重合体(例えば、ポリパラフェニレンなど)、ポリピロール系重合体(例えば、ポリピロールなど)、ポリアニリン系重合体(例えば、ポリアニリンなど)、アクリル系重合体で変性されたポリエステル系重合体(例えば、イソブチルメタクリレートとブチルアクリレートとの共重合体で変性された高重合度のポリエステル系重合体など)などが挙げられる。これらの導電性ポリマー単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。例えば、ポリチオフェン系重合体とアクリル系重合体で変性されたポリエステル系重合体とを組み合わせてもよい。これらの導電性ポリマーのうち、水性溶媒に可溶で取り扱い性に優れる点から、ポリチオフェン系重合体、ポリピロール系重合体、ポリアニリン系重合体が汎用され、導電性、化学的安定性及び透明性に優れる点から、ポリチオフェン系重合体が好ましい。
【0154】
ポリチオフェン系重合体は、通常、ポリ(チオフェン−2,5−ジイル)単位を有している。チオフェンは置換体(通常、3位及び/又は4位の置換体)であってもよい。置換チオフェンとしては、例えば、モノアルキルチオフェン(例えば、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ヘキシルチオフェンなどのC1−10アルキル−チオフェンなど)、3,4−ジヒドロキシチオフェン、ジアルコキシチオフェン(例えば、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェンなどのジC1−6アルコキシ−チオフェンなど)、アルキレンジオキシチオフェン(例えば、3,4−メチレンジオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェンなどのC1−4アルキレンジオキシチオフェンなど)、シクロアルキレンジオキシチオフェン[例えば、3,4−(1,2−シクロヘキシレン)ジオキシチオフェンなどのC5−12シクロアルキレン−ジオキシチオフェンなど]などが挙げられる。なお、アルキレンジオキシチオフェン及びシクロアルキレンジオキシチオフェンは、アルキレン基及びシクロアルキレン基が、さらに、メチル基やエチル基などのC1−12アルキル基やフェニル基などのC5−12アリール基などで置換されていてもよい。これらのチオフェン又は置換チオフェンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのチオフェン及び置換チオフェンのうち、通常、チオフェン、3−ヘキシルチオフェンなどのモノアルキルチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェンなどのアルキレンジオキシチオフェン、3,4−(1,2−シクロヘキシレン)ジオキシチオフェンなどのシクロアルキレンジオキシチオフェンなどが使用され、成形性や導電性などの点から、3,4−エチレンジオキシチオフェンなどの3,4−アルキレンジオキシチオフェンや3,4−ジエトキシチオフェンなどの3,4−ジアルコキシ−チオフェン、特に、3,4−C1−4アルキレンジオキシチオフェンが好ましい。また、ポリチオフェン系重合体は、このようなチオフェン単位とビニレン単位とを有する共重合体であってもよい。
【0155】
ポリチオフェン系重合体としては、具体的には、ポリチオフェン、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)などのポリ(3−C1−8アルキル−チオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ[3,4−(1,2−シクロヘキシレン)ジオキシチオフェン]などのポリ(3,4−(シクロ)アルキレンジオキシチオフェン)、ポリチエニレンビニレンなどが挙げられる。
【0156】
導電性ポリマーで構成された透明導電層には、さらにアニオン性重合体が含まれていてもよい。特に、導電性ポリマーは、重合工程でアニオン性重合体の存在下、重合される。例えば、ポリチオフェン系重合体は、通常、アニオン性重合体の存在下で酸化重合されるため、アニオン性重合体と組み合わせて用いることができる。
【0157】
アニオン性重合体としては、カルボキシル基及びスルホン酸基から選択された少なくとも一種のアニオン性基又はその塩を有する重合体、例えば、カルボキシル基又はその塩を有する重合体[例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸−無水マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体などの(メタ)アクリル酸系重合体又はその塩など]、スルホン酸基又はその塩を有する重合体(例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸など)、カルボキシル基及びスルホン酸基又はそれらの塩を有する重合体[例えば、(メタ)アクリル酸−スチレンスルホン酸共重合体など]などが挙げられる。アニオン性重合体の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミンなどのアルキルアミン、アルカノールアミンなどの有機アミン塩などが挙げられる。これらのアニオン性重合体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのアニオン性重合体のうち、スルホン酸基を有する重合体、例えば、ポリスチレンスルホン酸などが好ましい。
【0158】
アニオン性重合体の数平均分子量は、例えば、1000〜2,000,000、好ましくは2000〜1,000,0000、さらに好ましくは2000〜500,000程度である。
【0159】
アニオン性重合体の割合は、導電性ポリマー100重量部に対して、例えば、10〜2000重量部、好ましくは30〜1000重量部、さらに好ましくは50〜500重量部(特に100〜300重量部)程度である。
【0160】
導電性ポリマーで構成された透明導電層には、前記相分離層と同様の種々の添加剤が含まれていてもよい。特に、界面活性剤やシランカップリング剤などが含まれていてもよい。
【0161】
導電性ポリマーで構成された透明導電層の厚みは、例えば、0.01〜1μm、好ましくは0.01〜0.5μm、さらに好ましくは0.03〜0.3μm(特に0.05〜0.2μm)程度である。
【0162】
(他の機能層)
本発明の導電性積層フィルムは、基材のフィルムの他方の面に、他の機能層(第2の機能層)が形成されていてもよい。他の機能層としては、慣用の機能層、例えば、ハードコート層、光散乱層、防眩層、反射防止層、低屈折率層などが挙げられる。これらの機能層のうち、ハードコート層や防眩層などが汎用される。ハードコート層としては、前記クッション層で例示されたウレタン(メタ)アクリレート及び/又は重合性ビニル系成分を含む組成物の硬化物のうち、前記クッション層よりもガラス転移温度の高い硬化物などを利用でき、タッチパネルに要求される透明性、柔軟性(フレキシブル性)、耐擦傷性を兼ね備える点から、ウレタン(メタ)アクリレートを含む重合性組成物が特に好ましい。特に蒸着の場合に透明基材からオリゴマー成分がフィルム表面にマイグレーション(析出)することを防止するために、両面にハードコート層を設けるのが好ましい。また、防眩層としては、前記アンチニュートンリング層を防眩層として形成してもよい。
【0163】
他の機能層の厚みは、前記第1の機能層と同じ厚みであってもよく、例えば、0.3〜2μm程度、好ましくは1〜18μm(例えば、3〜16μm)程度であってもよく、通常、2〜12μm(特に5〜10μm)程度である。
【0164】
(透明導電性積層フィルムの特性)
本発明の透明導電性積層フィルムは、高い透明性と柔軟性とを両立している。透明導電性積層フィルムの全光線透過率は、例えば、80〜100%、好ましくは85〜95%、さらに好ましくは87〜92%(特に89〜91%)程度である。ヘイズは、0.1〜10%程度の範囲から選択でき、例えば、0.1〜5%、好ましくは0.2〜3%、さらに好ましくは0.5〜2.5%程度である。
【0165】
本発明の透明導電性積層フィルムは、柔軟性に優れ、透明導電層を形成する前の第1の機能層側の表面(視認側の表面又は第1の機能層の表面)におけるマルテンス硬さは100N/mm2以下であり、例えば、5〜80N/mm2、好ましくは10〜50N/mm2、さらに好ましくは15〜40N/mm2(特に20〜30N/mm2)程度である。一方、基材フィルムの他方の面(裏面)側の表面(第2の機能層又は透明基材フィルムの表面)におけるマルテンス硬さは、例えば、100〜300N/mm2、好ましくは120〜250N/mm2、さらに好ましくは150〜220N/mm2(特に160〜200N/mm2)程度であってもよい。
【0166】
透明導電層を形成する前の第1の機能層側の表面における押し込み深さは、例えば、3μm以上であり、例えば、3〜15μm、好ましくは4〜10μm、さらに好ましくは4.5〜8μm(特に5〜7μm)程度である。一方、基材フィルムの他方の面側の表面における押し込み深さは、例えば、0.5〜10μm、好ましくは1〜8μm、さらに好ましくは1.5〜5μm(特に2〜3μm)程度である。
【0167】
さらに、第1の機能層として、相分離構造を有するアンチニュートンリング層を形成した場合、相分離構造において、ドメインの平均相間距離は実質的に規則性又は周期性を有している。そのため、透明導電性積層フィルムに入射して透過する光は、相間平均距離(又は表面凹凸構造の周期性)に対応したブラッグ反射により、直進透過光とは離れた特定角度に散乱光極大を示す。すなわち、アンチニュートンリング層を有する透明導電性積層フィルムは、入射光を等方的に透過して散乱又は拡散するものの、散乱光(透過散乱光)は、散乱中心からシフトした散乱角[例えば、0.1〜10°、好ましくは0.2〜8°、さらに好ましくは0.3〜5°(特に、0.5〜2°)程度]で光強度の極大値を示す。従って、直進透過光のプロファイルに対して表面凹凸による散乱光が悪影響を及ぼすことがなく、従来の微粒子分散型のアンチニュートンリング層とは異なり、ニュートンリングを抑制するとともに、表示装置の画像に対してギラツキも解消できる。
【0168】
透過光散乱強度の極大値の判定としては、散乱光強度の角度分布プロファイルにおいて、ピーク状に分離した場合に加えて、ショルダー状ピークや平坦状ピークである場合も極大値を有するとみなして、その角度をピーク角度とできる。
【0169】
なお、アンチニュートンリング層を有する積層フィルムを透過した光の角度分布は、図1に示すように、He−Neレーザなどのレーザ光源1と、ゴニオメーターに設置した光受光器4を備えた測定装置を用いて測定できる。なお、この例では、レーザ光源1からのレーザ光をNDフィルタ2を介して試料3に照射し、試料からの散乱光を、レーザ光の光路に対して散乱角度θで変角可能であり、かつ光電子増幅管を備えた検出器(光受光器)4により検出し、散乱強度と散乱角度θとの関係を測定している。
【0170】
また、タッチパネルの下部に配設される表示装置の表示部におけるギラツキや文字ボケの評価は、目視による蛍光灯の映りこみによる評価、及びJlS K7105に従ってグロスメーターを用いて評価できる。さらに、ギラツキ及び文字ボケの評価は、解像度200ppi程度の高精細液晶表示装置を用いて評価でき、より簡単には高精細CRTディスプレイ装置や150ppi程度の液晶用カラーフィルターとバックライトとを組み合わせた簡易評価装置を用いて目視にて評価できる。
【0171】
本発明の透明導電性積層フィルムの透過像鮮明度は、0.5mm幅の光学櫛を使用した場合、例えば、50〜l00%、好ましくは60〜99%、さらに好ましくは65〜90%程度である。透過像鮮明度が前記範囲にあると、直進透過光の散乱が少ないため、タッチパネルを高精細表示装置の上に配設した場合であっても、各々の画素からの散乱が少なくなり、その結果ギラツキを防止できる。
【0172】
透過像鮮明度とは、フィルムを透過した光のボケや歪みを定量化する尺度である。透過像鮮明度は、フィルムからの透過光を移動する光学櫛を通して測定し、光学櫛の明暗部の光量により値を算出する。すなわち、フィルムが透過光をぼやかす場合、光学櫛上に結像されるスリットの像は太くなるため、透過部での光量は100%以下となり、一方、不透過部では光が漏れるため0%以上となる。透過像鮮明度の値Cは光学櫛の透明部の透過光最大値Mと不透明部の透過光最小値mから次式により定義される。
【0173】
C(%)=[(M−m)/(M+m)]×100
すなわち、Cの値が100%に近づく程、ニュートンリング防止フィルムによる像のボケが小さい[参考文献;須賀、三田村,塗装技術,1985年7月号]。
【0174】
本発明の透明導電性積層フィルムは、さらに他の光学要素(例えば、偏光板、位相差板、導光板などの光路内に配設される種々の光学要素)と組み合わせてもよい。すなわち、光学要素の少なくとも一方の光路面に前記透明導電性積層フィルムを配設又は積層してもよい。例えば、前記位相差板の少なくとも一方の面に前記積層フィルムを積層してもよく、導光板の出射面に電極基板を配設又は積層してもよい。偏光板や位相差フィルムと組み合わされた透明導電性積層フィルムは、反射防止機能を有するインナー型タッチパネルに好適に利用できる。
【0175】
[透明導電性積層フィルムの製造方法]
本発明の透明導電性積層フィルムは、基材フィルムの上に、各層をコーティングして製造することを特徴としている。従って、本発明では、貼り合わせ(ラミネート)することなく、積層フィルムを製造するため、簡便な方法で、異物や気泡の混入しない積層フィルムを得ることができる。
【0176】
本発明の透明導電性積層フィルムは、慣用の方法を利用して製造でき、積層順序も特に限定されず、積層構造に応じて、基材フィルムに対して各層を形成すればよい。第2の機能層を形成する場合、例えば、基材フィルムに第2の機能層を形成した後にクッション層、第1の機能層、透明導電層を順次形成する方法であってもよく、基材フィルムにクッション層、第1の機能層、透明導電層を順次形成した後に第2の機能層を形成する方法であってもよい。
【0177】
(クッション層)
クッション層は、基材フィルムの上にウレタン(メタ)アクリレートを含む重合性組成物を塗布する塗布工程、塗布された前記重合性組成物に活性エネルギー線を照射して硬化する硬化工程を経て製造される。
【0178】
重合性組成物の塗布方法としては、慣用の方法、例えば、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースコーター、バーコーター、コンマコーター、ディップ・スクイズコーター、ダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、シルクスクリーンコーター法、ディップ法、スプレー法、スピナー法などが挙げられる。これらの方法のうち、バーコーター法やグラビアコーター法などが汎用される。なお、必要であれば、塗布液は複数回に亘り塗布してもよい。
【0179】
重合性組成物が有機溶媒を含有する場合など、塗布後は、必要に応じて乾燥を行ってもよい。乾燥は、例えば、50〜150℃、好ましくは60〜140℃、さらに好ましくは70〜130℃程度の温度で行ってもよい。
【0180】
硬化工程において、重合性組成物は、重合開始剤の種類に応じて加熱して硬化させてもよいが、通常、活性エネルギー線を照射することにより硬化できる。活性エネルギー線として、熱及び/又は光エネルギー線を利用でき、特に光エネルギー線を利用するのが有用である。光エネルギー線としては、放射線(ガンマー線、X線など)、紫外線、可視光線、電子線(EB)などが利用でき、通常、紫外線、電子線である場合が多い。特に、重合開始剤を使用せずに重合ができ、高い耐候性を有するシートを製造する場合には、電子線で照射してもよい。
【0181】
光源としては、例えば、紫外線の場合は、Deep UV ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、レーザー光源(ヘリウム−カドミウムレーザー、エキシマレーザーなどの光源)などを用いることができる。照射光量(照射エネルギー)は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば、50〜10000mJ/cm2、好ましくは70〜7000mJ/cm2、さらに好ましくは100〜5000mJ/cm2程度であってもよい。
【0182】
電子線の場合は、電子線照射装置などの露光源によって、電子線を照射する方法が利用できる。照射量(線量)は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば、1〜200kGy(グレイ)、好ましくは5〜150kGy、さらに好ましくは10〜100kGy(特に20〜80kGy)程度である。加速電圧は、例えば、10〜1000kV、好ましくは50〜500kV、さらに好ましくは100〜300kV程度である。
【0183】
なお、活性エネルギー線(特に電子線)の照射は、必要であれば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなど)雰囲気中で行ってもよい。
【0184】
(第1の機能層)
第1の機能層として、相分離を利用したアンチニュートンリング層を形成する場合、アンチニュートンリング層は、ポリマーと硬化性樹脂前駆体と溶媒とを含む液相(又は液状組成物)から、前記溶媒の蒸発に伴うスピノーダル分解により、相分離構造を形成する相分離工程と、前記硬化性樹脂前駆体を硬化させ、アンチニュートンリング層を形成する硬化工程とを経て製造できる。
【0185】
前記相分離工程は、通常、前記ポリマーと硬化性樹脂前駆体と溶媒とを含む混合液(特に均一溶液などの液状組成物)を前記支持体に塗布又は流延する工程と、塗布層又は流延層から溶媒を蒸発させて規則的又は周期的な平均相間距離を有する相分離構造を形成する工程とで構成されている。好ましい態様では、前記混合液として、前記熱可塑性樹脂と、光硬化性化合物と、光重合開始剤と、前記熱可塑性樹脂及び光硬化性化合物を可溶な溶媒とを含む組成物が使用でき、スピノーダル分解により形成された相分離構造の光硬化成分を光照射により硬化することによりアンチニュートンリング層が形成される。また、他の好ましい態様では、前記混合液として、前記互いに非相溶な複数のポリマーと、光硬化性化合物と、光重合開始剤と、溶媒とを含む組成物が使用でき、スピノーダル分解により形成された相分離構造の光硬化成分を光照射により硬化することによりアンチニュートンリング層が形成される。
【0186】
湿式スピノーダル分解において、溶媒は、前記ポリマー及び硬化性樹脂前駆体の種類及び溶解性に応じて選択でき、少なくとも固形分(複数のポリマー及び硬化性樹脂前駆体、反応開始剤、その他添加剤)を均一に溶解できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1−メトキシ−2−プロパノール)など)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)などが例示できる。また、溶媒は混合溶媒であってもよい。
【0187】
これらの溶媒のうち、常圧で沸点100℃以上の溶媒を用いるのが好ましい。さらに、表面に微細で規則的な凹凸構造を形成する点から、溶媒が少なくとも2種類の沸点の異なる溶媒で構成されているのが好ましい。また、高沸点の溶媒の沸点は100℃以上であり、通常、100〜200℃程度であり、好ましくは105〜150℃、さらに好ましくは110〜130℃程度である。特に、沸点100℃以上の溶媒を少なくとも1種と、沸点100℃未満の溶媒を少なくとも1種とを組み合わせて用いるのが好ましい。このような混合溶媒を用いると、低沸点の溶媒が、蒸発に伴う上層と下層との温度差を発生させ、高沸点の溶媒が塗膜中に残留し、流動性を維持する。
【0188】
常圧で沸点100℃以上の溶媒としては、例えば、アルコール類(ブタノール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコールなどのC4−8アルキルアルコールなど)、アルコキシアルコール類(メトキシプロパノール、ブトキシエタノールなどのC1−6アルコキシC2−6アルキルアルコールなど)、アルキレングリコール類(エチレングリコールやプロピレングリコールなどのC2−4アルキレングリコールなど)、ケトン類(シクロヘキサノンなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ブタノールなどのC4−8アルキルアルコール、メトキシプロパノールやブトキシエタノールなどのC1−6アルコキシC2−6アルキルアルコール、エチレングリコールなどのC2−4アルキレングリコールなどが好ましい。
【0189】
沸点の異なる溶媒の比率としては、特に限定されないが、沸点100℃以上の溶媒と、沸点100℃未満の溶媒を併用した場合(それぞれ、2種以上併用した場合は合計の重量比として)、例えば、前者/後者=10/90〜70/30、好ましくは10/90〜50/50、さらに好ましくは15/85〜40/60(特に20/80〜40/60程度)である。
【0190】
また、混合液又は塗布液を基材フィルムに塗布する場合、基材フィルムの種類に応じて、基材フィルムを溶解や侵食、又は膨潤させない溶媒を選択してもよい。例えば、基材フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルムを用いる場合、混合液又は塗布液の溶媒として、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、イソプロパノール、トルエンなどを用いると、フィルムの性質を損なうことなく、積層フィルムを形成できる。
【0191】
混合液中の溶質(ポリマー及び硬化性樹脂前駆体、反応開始剤、その他添加剤)の濃度は、相分離が生じる範囲及び流延性やコーティング性などを損なわない範囲で選択でき、例えば、1〜80重量%、好ましくは5〜60重量%、さらに好ましくは15〜40重量%(特に15〜35重量%)程度である。
【0192】
塗布方法としては、前述のクッション層の塗布方法と同様の方法を利用できる。前記混合液を流延又は塗布した後、溶媒の沸点よりも低い温度(例えば、溶媒の沸点よりも1〜120℃、好ましくは5〜80℃、さらに好ましくは10〜60℃、特に10〜50℃程度低い温度)で溶媒を蒸発させることにより、スピノーダル分解による相分離を誘起することができる。溶媒の蒸発は、通常、乾燥、例えば、溶媒の沸点に応じて、例えば、30〜200℃(例えば、30〜100℃)、好ましくは40〜120℃、さらに好ましくは50〜80℃程度の温度で乾燥させることによリ行うことができる。
【0193】
表面に微細な凹凸構造を形成するためには、基材フィルム上に塗布して流延又は塗布させた後、直ちにオーブンなどのなどの乾燥機に投入して乾燥させるのではなく、一定時間(例えば、1秒〜1分間、好ましくは3〜30秒間、さらに好ましくは5〜20秒間程度)、常温又は室温(例えば、0〜40℃、好ましくは5〜30℃程度)で放置した後に、乾燥機に投入してもよい。また、乾燥風量は、特に限定されないが、風量が強すぎると、凹凸構造が形成される前に乾燥して固化するため、乾燥風量は50m/分以下(例えば、1〜50m/分)、好ましくは1〜30m/分、さらに好ましくは1〜20m/分程度であってもよい。
【0194】
このような溶媒の蒸発を伴うスピノーダル分解により、相分離構造のドメイン間の平均距離に規則性又は周期性を付与できる。
【0195】
スピノーダル分解により形成された相分離構造は、硬化工程において、前駆体を硬化させることにより直ちに固定化できる。前駆体の硬化は、硬化性樹脂前駆体の種類に応じて、加熱、光照射など、あるいはこれらの方法の組合せにより行うことができる。加熱温度は、前記相分離構造を有する限り、適当な範囲、例えば、50〜150℃程度から選択でき、前記相分離工程と同様の温度範囲から選択してもよい。光照射は、前述のクッション層の照射方法と同様の方法を利用できる。硬化方法も、クッション層と同様に、紫外線、電子線である場合が多い。
【0196】
なお、第1の機能層として、粒子を配合したアンチニュートンリング層、ハードコート層、低屈折率層などを形成する場合、クッション層と同様の方法で形成できる。さらに、第2の機能層を形成する場合、第2の機能層も、第1の機能層と同様の方法で製造できる。
【0197】
(透明導電層)
導電性無機化合物で構成された透明導電層は、金属又は金属化合物を含む薄膜を形成可能な方法であれば、特に限定されず、慣用の成膜方法を利用して形成できる。成膜方法としては、例えば、物理的気相法(PVD)[例えば、真空蒸着法、フラッシュ蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビーム蒸着法、イオンプレーティング法(例えば、HCD法、エレクトロンビームRF法、アーク放電法など)、スパッタリング法(例えば、直流放電法、高周波(RF)放電法、マグネトロン法など)、分子線エピタキシー法、レーザーアブレーション法など]、化学的気相法(CVD)[例えば、熱CVD法、プラズマCVD法、MOCVD法(有機金属気相成長法)、光CVD法など]、イオンビームミキシング法、イオン注入法などが例示できる。これらの成膜方法のうち、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの物理的気相法、化学的気相法などが汎用され、スパッタリング法、プラズマCVD法(特にスパッタリング法)が好ましい。
【0198】
導電性ポリマーで構成された透明導電層は、導電性ポリマーを含有する液状組成物を塗布して乾燥することにより製造できる。透明導電層の形成工程では、第1の機能層の上に、透明導電層の塗布液(導電性ポリマーを含有する液状組成物)を塗布することにより製造できる。透明導電層の塗布液の塗布又は流延には、クッション層と同様の慣用の塗布手段などが利用できる。本発明では、塗布液を第1の機能層の上に塗布した後、通常、塗布層を乾燥することにより透明導電層を形成できる。
【0199】
液状組成物における溶媒は、導電性ポリマーの種類に応じて選択でき、例えば、ポリチオフェン系重合体の場合、水又は水性溶媒であってもよい。水性溶媒(特に水混和性溶媒)としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、ニトリル類(アセトニトリルなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなど)、カルビトール類などと水との混合溶媒であってもよい。親水性溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。本発明では、通常、水単独で、又は水とアルコール類との混合溶媒として使用される。特に、機能層との密着性を向上させるため、少なくともイソプロパノールなどの低級アルコールで構成された溶媒を使用してもよい。
【0200】
液状組成物中における導電性ポリマーの濃度は、例えば、0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、さらに好ましくは0.1〜2重量%(特に0.3〜1重量%)程度である。
【0201】
なお、透明導電層は、タッチパネルの種類に応じて、通常、アナログ方式では面状に形成され、デジタル方式ではストライプ状に形成される。透明導電層を面状又はストライプ状に形成する方法としては、例えば、第1の機能層の全面に透明導電層を形成した後、エッチングにより面状又はストライプ状にパターン化する方法、予めパターン状に形成する方法などが挙げられる。
【0202】
[タッチパネル]
本発明のタッチパネル(特に抵抗膜方式タッチパネル)は、前記透明導電性積層フィルムを上部透明電極基板(視認側の透明電極)として備えている。図2は、本発明のタッチパネルの一例を示す概略断面図である。このタッチパネル10は、上部電極基板11と下部電極基板13とがスペーサー12を介して積層されており、上部電極基板11の透明導電層11aと下部電極基板13の透明導電層13aとが対向し、液晶パネル20の上に配設されている。
【0203】
上部電極基板11は、透明プラスチックフィルムで構成された透明基材フィルム11dの一方の面(パネル表側、視認側又は上部の面)にハードコート層11eが形成され、他方の面(パネル裏側又は下部の面)にクッション層11cが形成されている。クッション層11cの表面(パネル裏側又は下部の面)には、相分離を利用したアンチニュートンリング層11bが形成されている。アンチニュートンリング層11bの表面(パネル裏側又は下部の面)には前記透明導電層11aが形成されており、アンチニュートンリング層11bの表面が均一で規則的な凹凸構造を有するため、透明導電層11aの表面もアンチニュートンリング層11bの凹凸構造に追従した凹凸構造を有している。上部電極基板11は、指やペンなどの押圧部材によって押圧することより、透明導電層11aが撓んで下部電極基板13の透明導電層13aと接触して導通し、位置検出が行われる。本発明では、クッション層11cが高い柔軟性及び密着性を有しているため、上部電極基板11を繰り返し押圧しても、透明導電層11aの劣化を抑制できる。さらに、この透明導電性積層フィルムでは、上部透明電極11の透明導電層11aの表面がアンチニュートンリング層11bに追随して均一な凹凸構造を有しているため、上部透明電極11を押圧しても、上部透明電極11とスペーサー12によって形成された空間(空気層)との界面反射光の干渉によるニュートンリングの発生を抑制できる。なお、アンチニュートンリング層11bの代わりに、ハードコート層などの他の機能を形成してもよい。
【0204】
スペーサー12は、透明樹脂で構成されており、タッチパネルの非押圧時に上部電極基板11と下部電極基板13とを非接触状態に保持するため、透明導電層11a及び13aの表面でパターン化された点状又はドット状に形成されている。このようなスペーサー12は、通常、硬化性樹脂前駆体の項で例示された光硬化性化合物などを用いて光照射に対するマスクを利用したパターニングにより形成される。スペーサーは形成しなくてもよく、形成する場合には、例えば、隣接するスペーサー同士の間隔を、例えば、0.1〜20mm(特に1〜10mm)程度に調整してもよい。スペーサーの形状は、特に限定されず、円柱状、四角柱状、球状などであってもよい。スペーサーの高さは、例えば、1〜100μm程度であり、通常、3〜50μm(特に5〜20μm)程度である。スペーサーの平均径は、例えば、1〜100μm程度であり、通常、10〜80μm(特に20〜50μm)程度である。
【0205】
下部電極基板13は、前記スペーサー12を介在させて、上部電極基板11の下部に配設されており、ガラスで構成された透明基板13dの一方の面(パネル表側又は上部の面)に、透明導電層13aが形成され、他方の面(パネル裏側又は下部の面)にハードコート層13eが形成されている。下部電極基板13の透明導電層13aの表面は平滑であるが、上部電極基板11と同様に、アンチニュートンリング層を形成し、表面に凹凸構造を形成してもよい。上部電極基板11及び下部電極基板13の双方にアンチニュートンリング層を形成することにより、アンチニュートンリング効果を向上させてもよい。一方、上部電極基板11に凹凸構造を形成することなく、下部電極基板13にアンチニュートンリング層を形成してもよい。アンチニュートンリング効果とタッチパネルの下部に配設する表示装置の視認性とを両立できる点からは、一方の電極基板(特に上部電極基板)にアンチニュートンリング層を形成するのが好ましい。透明基板13dは、上部電極基板の透明基板11dとは異なり、可撓性は必要ないため、ガラス基板などの非可撓性材料であってもよいが、透明基板11dと同様の可撓性を有する透明プラスチックフィルムであってもよい。
【0206】
このような上下電極基板を備えたタッチパネル10は、液晶表示(LCD)装置である液晶パネル20の上に配設されている。本発明では、前記クッション11cは柔軟性に優れるとともに、透明性にも優れるため、透明導電層11aの劣化を抑制しつつ、液晶パネル20の視認性をも向上できる。さらに、アンチニュートンリング層11bは、透過光を等方的に透過して散乱させながら、特定の角度範囲での光散乱強度を向上できるため、ニュートンリングの防止だけでなく、液晶パネル20の視認性をも向上できる。具体的には、液晶パネルの表示部におけるギラツキを抑制できるとともに、透過像の鮮明性に優れ、表示面での文字ボケを抑制できる。
【0207】
なお、液晶表示装置は、外部光を利用して、液晶セルを備えた表示ユニットを照明する反射型液晶表示装置であってもよく、表示ユニットを照明するためのバックライトユニットを備えた透過型液晶表示装置であってもよい。前記反射型液晶表示装置では、外部からの入射光を、表示ユニットを介して取り込み、表示ユニットを透過した透過光を反射部材により反射して表示ユニットを照明できる。反射型液晶表示装置では、前記反射部材から前方の光路内に、偏光板と透明導電性積層フィルムとを組み合わせたタッチパネルを配設してもよい。
【0208】
透過型液晶表示装置において、バックライトユニットは、光源(冷陰極管などの管状光源,発光ダイオードなどの点状光源など)からの光を一方の側部から入射させて前面の出射面から出射させるための導光板(例えば、断面楔形状の導光板)を備えていてもよい。また、必要であれば、導光板の前面側にはプリズムシートを配設してもよい。
【0209】
タッチパネルの下部に配設する表示装置は、液晶表示装置に限定されず、プラズマディスプレイ装置、有機又は無機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置などの表示装置であってもよい。
【実施例】
【0210】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例で得られたクッション層及び積層フィルムを以下の項目で評価した。
【0211】
[ヘイズ(HZ)及び全光線透過率(TT)]
透明積層フィルム(透明導電層を形成する前の積層フィルム)についてヘイズメーター(日本電色(株)製、商品名「NDH−5000W」)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。
【0212】
[引張試験]
重合性組成物をPETフィルム上にシリコンコートされている離型フィルム上に塗布厚み100μm見当で塗布し、加速電圧200kV及び照射線量50kGyの電子線を照射して硬化させ、離型フィルムから剥がして得られた硬化物を用いて、JIS K7113に準拠し、7号形ダンベル試験片に打ち抜き、温度25℃、湿度50%RHの試験環境にて、引張圧縮試験機(オリエンテック(株)製、テンシロンUCT−5T)を用い、引張り速度2mm/分の条件で測定した応力−ひずみ曲線を得た。得られた応力−ひずみ曲線から、引張弾性率を求めた。
【0213】
[ガラス転移温度(Tg)]
上記引張試験と同様にして得られた硬化物について、動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製、RSA−III)を用い、昇温速度及び角周波数の条件で、損失弾性率(E′′)を測定した。E′′の極大から、ガラス転移温度を求めた。
【0214】
[色相:b*値]
透明積層フィルム(透明導電層を形成する前の積層フィルム)について分光光度計((株)日立ハイテクフィールディング製、「U−3300」)を用い、JIS K7105に準拠して透過モードにてb*値を測定した。
【0215】
[線膨張率]
上記引張試験と同様にして得られた硬化物から試験片を切り出し、測定試料とした。この測定試料を、熱・応力・歪測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「TMA/SS6100」)を用いて、以下の測定条件で、−90℃から150℃までの線膨張率(変位)を求めた。
【0216】
[クッション性]
得られた透明積層フィルム(透明導電層を形成する前の積層フィルム)に対して、微小硬度計(フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて、測定条件を荷重F=20mN/10秒、最大試験荷重20mNに設定して、マルテンス硬さ(HM)及び最大押し込み深さ(hmax)を測定した。
【0217】
[打鍵耐久性]
得られた透明導電性積層フィルムを上部電極基板とした。さらに、基板としてガラス基板を用い、同様のITO処理を行って透明導電層を設けることにより、下部電極基板を作製した。下部電極基板の透明導電層の上に、光硬化性アクリル樹脂(デュポン(株)製、リストン)を塗布して層を設け、パターニングして紫外線露光することによりドットスペーサーを形成した。このドットスペーサーは、高さ8μm、直径30μmの円柱で、スペーサー間隔は3mmとした。なお、両端部には、銀ペーストと銅テープで形成された電極と、両面テープで形成されたスペーサー(高さ86μm)を配設した。このようにして作製した上部電極基板と下部電極基板とを透明電極層が対向するように配置することにより、タッチパネルを構成した。このタッチパネルについて、打鍵試験機((株)タッチパネル研究所製「201型−300−3」)を用いて打鍵耐久性を評価した。前記打鍵試験機は、タッチペンとしてポリアセタールペン(0.8mmφ)を備え、上部電極基板をタッチペンで打鍵し、下部電極基板と接触させる打鍵を繰り返して、負荷電圧による波形を検出して、打鍵耐久性を評価する試験機であり、以下の条件で測定した。
【0218】
打鍵荷重:400g
打鍵速度:10回/秒(Hz)
打鍵回数:50万回〜480万回
打鍵部分:スペーサー(両面テープ)の端部から1mmの部分を打鍵。
【0219】
[摺動耐久性]
打鍵耐久性試験で作製したタッチパネルについて、摺動試験機を用いて摺動耐久性を評価した。摺動耐久性試験においては、タッチペン((株)任天堂製「DS」の純正ペン)を用いて、上部電極基板表面をペンで擦る摺動を以下の条件で往復して繰り返して、検出位置と電圧との関係を示すリニアリティー(%)を求めて、摺動耐久性を評価した。
【0220】
摺動荷重:500g
摺動速度:1往復/秒
摺動回数:10万回、20万回
打鍵部分:スペーサー(両面テープ)の端部から2mmの部分を摺動。
【0221】
リニアリティー(%)は、透明導電性積層フィルムに5Vの電圧を印加し、測定開始位置Aの出力電圧をEA、測定終了位置Bの出力電圧をEB、Aからの距離Xにおける測定点の出力電圧をEX、理論値をEXXとし、下記式により算出した。
【0222】
EXX=X(EB−EA)/(B−A)+EA
リニアリティー(%)={│EXX−EX│/(EB−EA)}×100
評価はリニアリティー(%)の最大値の比較で行ない、一般的に、リニアリティー(%)が1.5%を超えると電気特性が不良であることを意味する。
【0223】
[配合成分]
高耐候性ウレタンアクリレート:ダイセル・サイテック(株)製「EBECRYL8402」、2官能、ガラス転移温度14℃、25℃粘度12500mPa・s
脂肪族ウレタンアクリレート:ダイセル・サイテック(株)製「EBECRYL230」、2官能、ガラス転移温度−55℃、25℃粘度40000mPa・s
ウレタンアクリレート:東亜合成(株)製「アロニックスM−1200」、2官能、ガラス転移温度35℃、50℃粘度120000〜220000mPa・s
アクリルモノマー:東亜合成(株)製「PPGDA」、ポリプロピレングリコールジアクリレート、プロピレンオキシド付加モル数約7モル、ガラス転移温度−8℃、25℃粘度30〜40mPa・s
光重合開始剤:チバ・ジャパン(株)製「イルガキュア(Irgacure)184」
アクリル系重合性組成物:サンノプコ(株)製「ノプコキュアSHC−017R」
側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂:(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のカルボキシル基の一部に3,4−エポキシシクロヘキセニルメチルアクリレートを付加させた化合物、ダイセル化学工業(株)製「サイクロマーP(ACA)Z321M」、固形分44重量%(溶剤:1−メトキシ−2−プロパノール(MMPG)(沸点119℃))
セルロースアセテートプロピオネート:イーストマン社製商品名「CAP−482−20」、アセチル化度=2.5%、プロピオニル化度=46%、ポリスチレン換算数平均分子量75,000
六官能アクリル系UV硬化モノマー:ダイセルサイテック(株)製「DPHA」
三官能アクリル系UV硬化モノマー:ダイセルサイテック(株)製「PETIA」
フッ素含有UV硬化性化合物(Omnova Solution社製「Polyfox3320」。
【0224】
[電子線による硬化物の製造例1]
高耐候性ウレタンアクリレート(EBECRYL8402)20重量部、アクリルモノマー(PPGDA)80重量部を含む塗布液を、ワイヤーバー#55を用いてPETフィルム上にシリコンコートされている離型フィルム上に流延した後、窒素雰囲気中で加速電圧200kV、線量50kGyの条件で電子線を照射し、厚み100μmの硬化物を得た。得られた硬化物を離型フィルムから剥がして電子線による硬化物1を得た。
【0225】
[電子線による硬化物の製造例2]
高耐候性ウレタンアクリレート(EBECRYL8402)50重量部、脂肪族ウレタンアクリレート(EBECRYL230)50重量部を含む塗布液を、ワイヤーバー#55を用いてPETフィルム上にシリコンコートされている離型フィルム上に流延した後、窒素雰囲気中で加速電圧200kV、線量50kGyの条件で電子線を照射し、厚み100μmの硬化物を得た。得られた硬化物を離型フィルムから剥がして電子線による硬化物2を得た。
【0226】
[電子線による硬化物の製造例3]
ウレタンアクリレート(アロニックスM−1200)100重量部、メチルエチルケトン(MEK)(沸点80℃)30重量部を含む塗布液を、ワイヤーバー#55を用いてPETフィルム上にシリコンコートされている離型フィルム上に流延した。この段階で、塗布液の溶液粘度が高いためか、基材フィルム上の流延物にワイヤーバーによる塗膜厚みムラ(バー筋)が残っていた。この流延物を70℃の乾燥機にて溶剤を乾燥させ、乾燥後の塗膜の状態を確認したが、バー筋は依然として残っていた。その後、窒素雰囲気中で加速電圧200kV、線量50kGyの条件で電子線を照射し、厚み100μmの硬化物を得た。得られた硬化物を離型フィルムから剥がして硬化物3を得た。
【0227】
[電子線による硬化物の製造例4]
高耐候性ウレタンアクリレート(EBECRYL8402)100重量部、メチルエチルケトン30重量部を含む塗布液を、ワイヤーバー#55を用いてPETフィルム上にシリコンコートされている離型フィルム上に流延した。この段階で、塗布液の溶液粘度が高いためか、基材フィルム上の流延物にワイヤーバーによる塗膜厚みムラ(バー筋)が残っていた。この流延物を70℃の乾燥機にて溶剤を乾燥させ、乾燥後の塗膜の状態を確認したが、バー筋は依然として残っていた。その後、窒素雰囲気中で加速電圧200kV、線量50kGyの条件で電子線を照射し、厚み100μmの硬化物を得た。得られた硬化物を離型フィルムから剥がして電子線による硬化物4を得た。しかし、硬化物4には流延物から由来したバー筋が残り、蒸着が容易な塗膜厚みが均一な硬化物は得られなかった。
【0228】
硬化物1〜4の特性を評価した結果を表1に示す。
【0229】
【表1】
【0230】
表1の結果から明らかなように、硬化物1及び2は、引張弾性率が低く、柔軟であり、特に、硬化物1及び2と、硬化物3及び4とは、同程度の粘度のウレタンアクリレートを使用しているにも拘わらず、硬化物1及び2は、塗膜性に優れるとともに、柔軟性も高い。
【0231】
さらに、硬化物1及び硬化物4の線膨張率を測定した結果を図3及び図4に示す。図3及び図4の結果から明らかなように、硬化物1が150℃まで比較的に低い線膨張係数を保持したのに対して、硬化物4は、室温付近で融点を有するような挙動(一旦、収縮し、膨張する挙動)を示した。
【0232】
[実施例1]
易接着層を有するポリエステルフィルム(東レ(株)製「A4300 #188」、188μm)のフィルム上に、前記電子線による硬化物の製造例1の塗布液に光重合開始剤(チバ・ジャパン(株)製、「イルガキュア(Irgacure)184」)6重量部を秤量して遮光瓶に入れて混合した。粘度調整のため、溶液の温度を80℃に調整した塗布液を#14のワイヤーバーを用いて塗布して、前記硬化物の製造例1と同様のクッション層を厚み20μmで形成した後に、紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:600mJ/cm2)を用いて、約9秒間紫外線を照射し、クッション層を形成した。
【0233】
次いで、得られたクッション層を有するフィルムのクッション層の上に、アクリル系重合性組成物(サンノプコ(株)製「ノプコキュアSHC−017R」)100重量部の溶液をMEKで希釈し、ワイヤーバー#10を用いて塗布して70℃の乾燥炉を通過させることにより乾燥して、厚み約6μmのコート層を形成した。得られたコート層に、紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:600mJ/cm2)を用いて、約9秒間紫外線を照射した。このようにクッション層及び第1の機能層であるハードコート層を有するフィルムを作製した。
【0234】
得られた積層フィルムのハードコート層(第1の機能層)が形成された側と反対の面に、同様の方法でハードコート層(第2の機能層)を形成した。
【0235】
この積層フィルムについて、第1の機能層であるハードコート層の表面におけるマルテンス硬さは27.2N/mm2であり、最大押し込み深さは5.52μmであった。一方、第2の機能層であるハードコート層の表面におけるマルテンス硬さは189.1N/mm2であり、最大押し込み深さは2.07μmであった。
【0236】
さらに、ハードコート層(第1の機能層)の上にスパッタリング法によりITO薄膜(厚み30nmの透明導電層)を形成した。
【0237】
得られた透明導電性積層フィルムについて、ドットスペーサー付きの透明導電性ガラス基板上に両面テープのスペーサーを介して貼り合せ、簡易タッチパネルを作成した。この簡易タッチパネルの打鍵耐久性を評価した結果、480万回の打鍵試験後も矩形波の乱れは見られず、透明電極の機能を保持していた。図5〜7に、それぞれ、打鍵試験開始時、打鍵100万回後、打鍵480万回後における波形(時間−電圧)を示す。さらに、摺動耐久性を評価した結果、20万回摺動後のリニアリティー(最大値)は0.69%であり、20万回摺動後も透明電極の機能を保持していた。
【0238】
[実施例2]
第1の機能層であるハードコート層の代わりに、以下に示す方法でアンチニュートンリング層を形成する以外は実施例1と同様にして透明導電性積層フィルムを製造した。
【0239】
側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(サイクロマーP(ACA)Z321M)15.8重量部、セルロースアセテートプロピオネート(CAP−482−20)1.7重量部、六官能アクリル系UV硬化モノマー(DPHA)19.6重量部、三官能アクリル系UV硬化モノマー(PETIA)8.4重量部、フッ素含有UV硬化性化合物(Polyfox3320)0.04重量部、光開始剤(イルガキュア184)0.3重量部を、メチルエチルケトン(MEK)(沸点80℃)39.2重量部、1−ブタノール(BuOH)(沸点113℃)11.4重量部、及び1−メトキシ−2−プロパノール(MMPG)(沸点119℃)3.8重量部の混合溶媒に溶解した。この溶液を、ワイヤーバー♯28を用いて、得られたハードコート層及びクッション層を有するフィルムのクッション層の上に流延した後、50℃のオーブン内で30秒間放置し、溶媒を蒸発させて厚み約12μmのアンチニュートンリング層を形成した。その後、コートフィルムを紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:800mJ/cm2)に通して、紫外線硬化処理を行った。
【0240】
得られた透明導電性積層フィルムについて、実施例1と同様の方法で打鍵耐久性を評価した結果、70万回の打鍵試験後も矩形波の乱れは認められなかった。図8及び図9に、それぞれ、打鍵試験開始時、打鍵70万回後における波形(時間−電圧)を示す。
【0241】
[実施例3]
クッション層として、前記電子線による硬化物の製造例2の塗布液に光重合開始剤(イルガキュア184)6重量部を配合した塗布液を用いる以外は実施例1と同様にして透明導電性積層フィルムを製造した。得られた透明導電性積層フィルムについて、ドットスペーサー付きの透明導電性ガラス基板上に両面テープのスペーサーを介して透明導電性積層フィルムを貼り合せで簡易タッチパネルを作成した。この簡易タッチパネルの打鍵耐久性を評価した結果、480万回の打鍵試験後も矩形波の乱れは見られず、透明電極の機能を保持していた。図5〜7に、それぞれ、打鍵試験開始時、打鍵100万回後、打鍵480万回後における波形(時間−電圧)を示す。さらに、摺動耐久性を評価した結果、20万回摺動後のリニアリティー(最大値)は0.69%であり、20万回摺動後も透明電極の機能を保持していた。
【0242】
[比較例1]
クッション層を形成しないことを除いて、実施例1と同様の方法で、透明導電性積層フィルムを作製した。透明導電層を形成する前の積層フィルムについて、第2の機能層であるハードコート層の表面におけるマルテンス硬さは198.8N/mm2であり、最大押し込み深さは2.03μmであった。透明導電性積層フィルムについて、打鍵耐久性を評価した結果、100万回の打鍵試験後に矩形波に乱れが見られ、透明電極の機能が損なわれていた。図10及び図11に、それぞれ、打鍵試験開始時、打鍵100万回後における波形(時間−電圧)を示す。さらに、摺動耐久性を評価した結果、リニアリティー(最大値)は2.12%であり、10万回摺動後に透明電極の機能が損なわれていた。
【0243】
[比較例2]
クッション層を形成しないことを除いて、実施例2と同様の方法で、透明導電性積層フィルムを作製した。透明導電性積層フィルムについて、打鍵耐久性を評価した結果、50万回の打鍵試験後に矩形波に乱れが見られ、90万回の打鍵試験後には透明電極の機能が損なわれていた。図12〜14に、それぞれ、打鍵試験開始時、打鍵50万回後、打鍵90万回後における波形(時間−電圧)を示す。
【0244】
[比較例3]
クッション層として、電子線による硬化物の製造例3の塗布液に光重合開始剤(イルガキュア184)6重量部を配合した塗布液を用いる以外は実施例1と同様にして透明導電性積層フィルムを製造した。なお、前記電子線による硬化物3のフィルムと同様にクッション層には、塗膜厚みムラ(バー筋)が残り、UV硬化後も均一な塗布膜は得られなかった。この積層フィルムについて、ドットスペーサー付きの透明導電性ガラス基板上に、両面テープのスペーサーを介して透明導電性積層フィルムを貼り合せで簡易タッチパネルを作成した。この簡易タッチパネルの打鍵耐久性を評価した結果、100万回の打鍵試験後も矩形波の乱れは見られず、透明電極の機能を保持していた。次に、摺動耐久性を評価した結果、10万回摺動後のリニアリティー(最大値)は0.99%であり、10万回摺動後も透明電極の機能を保持していた。20万回摺動後は、リニアリティー(最大値)は2.12%であり、透明電極の機能が損なわれていた。
【0245】
[比較例4]
クッション層として、電子線による硬化物の製造例4の塗布液に光重合開始剤(イルガキュア184)6重量部を配合した塗布液を用いる以外は実施例1と同様にして透明導電性積層フィルムを製造した。なお、硬化物の製造例4と同様に、クッション層には、塗膜厚みムラ(バー筋)が残り、UV硬化後も均一な硬化物は得られなかった。
【0246】
【表2】
【0247】
表2の結果から明らかなように、同条件の実施例1又は3と比較例1、3又は4との比較、実施例2と比較例2との比較から、実施例の透明導電性積層フィルムは、比較例の透明導線フィルムよりも打鍵耐久性及び/又は摺動耐久性が優れている。
【産業上の利用可能性】
【0248】
本発明の透明導電性積層フィルムは、パーソナルコンピューター、テレビ、携帯電話、遊技機器、モバイル機器、時計、電卓などの電気・電子又は精密機器の表示部において、表示装置(液晶表示装置、プラズマディスプレイ装置、有機又は無機EL表示装置など)と組み合わせて用いられるタッチパネル(特に抵抗膜方式タッチパネル)に利用できる。さらに、本発明の透明導電性積層フィルムは、機能層として、厚みの大きいアンチニュートンリング層も形成できるため、大画面のタッチパネルにも有効である。
【符号の説明】
【0249】
1…白色平行光光源
2…NDフィルター
3…試料
4…検出器
10…タッチパネル
11…上部電極基板
12…スペーサー
13…下部電極基板
11a,13a…透明導電層
11b…アンチニュートンリング層
11c…クッション層
11d,13d…透明基材フィルム
11e,13e…ハードコート層
20…液晶パネル
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗膜方式タッチパネルの上部電極(視認側の電極)などに利用される透明導電性積層フィルム及びこの積層フィルムを備えたタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マンマシンインターフェースとしての電子ディスプレイの進歩に伴い、対話型の入力システムが普及し、なかでもタッチパネル(座標入力装置)をディスプレイと一体化した装置がATM(現金自動受払機)、商品管理、アウトワーカー(外交、セールス)、案内表示、娯楽機器などで広く使用されている。液晶ディスプレイなどの軽量・薄型ディスプレイでは、キーボードレスにでき、その特長が生きることから、モバイル機器にもタッチパネルが使用されるケースが増えている。タッチパネルは、位置検出の方法により、光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などに分類できる。これらのうち、抵抗膜方式は、構造が単純で価格/性能比も優れるため普及している。
【0003】
抵抗膜方式のタッチパネルは、対向する側に透明電極(透明導電層)を有する2枚の積層フィルム又は板が一定間隔で保持されている電気部品である。その作動方式は、一方の透明電極を固定した上で、視認側からペン又は指で他方の透明電極を押圧し、撓ませて、固定した透明電極と接触、導通することにより、検出回路が位置を検知し、所定の入力がなされる。特に、上部透明電極(視認側の透明電極)は、繰り返し撓ませて使用されるため、透明導電層に割れや損傷が発生し、検出回路に不良が発生し易いため、上部透明電極基板には、繰り返しの使用に対する打鍵耐久性が要求される。特に、タッチパネルの用途がゲーム機などの娯楽機器にまで拡がったことに伴って、表示画面を隈なく押圧する必要が生じているが、画面の端部では中央部よりも上部電極が大きく湾曲するため、高度な打鍵耐久性(端押し耐久性)が要求される。
【0004】
さらに、このようなタッチパネルの作動方式において、ペン又は指で電極を押圧する際、押圧している指やペンなどのポインティング治具の周辺に、干渉による虹模様(いわゆる、「ニュートンリング」と呼ばれる干渉色又は干渉縞)が現れることがあり、画面の視認性を低下させる。詳しくは、2枚の透明電極が接触するか又は接触のために撓み、対向する2枚の透明電極の間隔が可視光の波長程度(約0.5μm)となったときに、2枚の透明電極に挟まれた空間で反射光の干渉を生じ、ニュートンリングが発生する。このようなニュートンリングの発生は、抵抗膜方式のタッチパネルの原理上、不可避の現象である。従って、透明電極を構成するフィルムには、透明電極の表面に凹凸に形成してニュートンリングが生じないようにするアンチニュートンリング性が要求される。
【0005】
透明電極基板の柔軟性を改良した透明導電性積層体として、特許第2667680号公報(特許文献1)には、厚みが2〜120μmの透明なフィルム基材の一方の面に膜厚が50Å以上の透明な導電性薄膜を形成し、他方の面に弾性係数が1×105〜1×107dyn/cm2、厚みが1μm以上である透明な粘着剤層を介して透明基材を貼り合わせてなる透明導電性積層体が開示されている。この文献には、粘着剤層として、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤が使用でき、そのクッション効果によりフィルム基材の一方の面に設けられた導電性薄膜の耐擦傷性及び打点特性を向上させる機能を有することが記載されている。
【0006】
しかし、この透明導電性積層体は、粘着剤を介して貼り合わせにより製造されるため、貼り合わせ工程中に異物や気泡が混入し易く、生産性に問題があるとともに、貼り合せ面に付着した異物や気泡は物理的に除去不可能であり、光学特性や電気特性などの低下を招き易い。また、貼り合わせでは、2枚のフィルムをロールから巻き戻して積層されるため、剥離帯電が生成し易い。さらに、この積層体の構造では、粘着剤層と透明導電層との間に薄い透明基材が存在している。このため、薄い透明基材にアンチニュートンリング層などの肉厚の層を形成するとカールし易くなる。その結果、薄い透明基材に透明導電層を蒸着で形成することが困難となるし、粘着剤層での2枚のフィルムの貼り合せも困難となる。従って、このような構成ではアンチニュートンリング層を設けることができず、アンチニュートンリング性や防眩性などの視認性が要求される表示装置に用いることができない。さらに、カールするため、この構成のフィルムを用いた表示装置を大画面化することができない。
【0007】
一方、貼り合わせを利用したラミネートシートでなく、コーティングを利用した積層シートとして、特開2004−158253号公報(特許文献2)には、高分子フィルムの一方の面にハードコート層が形成され、他方の面に透明導電薄膜が形成されてなる透明導電性フィルムにおいて、前記高分子フィルムと透明導電薄膜との間に、アクリル系樹脂よりなる応力緩和層が設けられている透明導電性フィルムが開示されている。しかし、この応力緩和層では打鍵耐久性が充分ではなかった。
【0008】
また、特許第3972418号公報(特許文献3)には、透明プラスチックフィルム層/クッション層/透明樹脂層/透明導電性薄膜層の順に形成された積層体を含む透明導電性フィルムであって、前記クッション層が共重合ポリエステル樹脂と架橋剤から構成され、ダイナミック硬度が0.005〜2であり、透明樹脂層が、共重合ポリエステル又はポリアミドイミド樹脂からなる透明導電性フィルムが開示されている。しかし、この透明導電性フィルムでは、透明性が十分でないことに加えて、層間の密着性が低く、耐久性も十分でない。
【0009】
さらに、特開2005−104141号公報(特許文献4)には、透明有機高分子基板の少なくとも一方の面上に硬さの異なる硬化樹脂層−1と硬化樹脂層−2が順次積層され、前記硬化樹脂層−2上に透明導電層が積層された透明導電性積層フィルムであって、前記硬化樹脂層−1が、ウレタンアクリレートをモノマーとする硬化樹脂及び合成ゴムからなる群から選択された少なくとも一種を10重量%以上含有する透明導電性積層フィルムが開示されている。この文献には、前記硬化性樹脂層−2と透明導電層との間に、全光線透過率などの光学特性を改良するための硬化樹脂層−3や、屈折率を制御し透明性を高めるための光学干渉層を設けることが記載されている。また、硬化樹脂層−1の厚みは1〜10μmであることが記載されている。
【0010】
しかし、この透明導電性積層フィルムでも、柔軟性及び透明性が十分でない。すなわち、この硬化樹脂層−1では、柔軟性と透明性との両立が困難であるためか、光学特性を改善するために、硬化樹脂層−3や光学干渉層が必要となる。すなわち、硬化樹脂層−1を形成するための硬化樹脂は、樹脂層を形成するための塗布工程において塗布液の粘度が高いため、特に厚めに塗布した場合に塗布液のコート筋が生じる。このコート筋は、通常の塗布液の粘度であれば塗布から硬化の工程の間に自然にレべリング(平準化)して平滑となる。しかしながら、特許文献4に開示されているような硬化樹脂層−1の塗布液では、このレべリング性が低く、塗布厚みを厚く塗布した場合には表面が平滑な塗膜を形成するのが困難である。そして、表面にコート筋による凹凸構造が形成されると、フィルム自体の透明性が低下する。さらに、蒸着面が平滑でない状態では、仮に蒸着できても打鍵耐久性が低下する。また、溶媒を使用して希釈したとしても、塗布溶液の粘度は期待するほどには低下しないため、表面が平滑な厚膜を形成するのは困難である。さらに、溶媒の使用により生産性及び環境性能が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2667680号公報(請求項1、第2頁第4欄22〜32行)
【特許文献2】特開2004−158253号公報(請求項1)
【特許文献3】特許第3972418号公報(請求項1)
【特許文献4】特開2005−104141号公報(特許請求の範囲、段落[0060][0074])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、透明性及び柔軟性に優れ、抵抗膜方式タッチパネルにおいて、光学特性に優れるとともに、打鍵時の感触に優れかつ、繰り返し打鍵しても、割れや損傷を抑制できる透明導電性積層フィルム及びこの積層フィルムを備えた抵抗膜方式タッチパネルを提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、柔軟性及び生産性に優れ、かつ表面が平滑な透明導電性積層フィルム及びこの積層フィルムを備えた抵抗膜方式タッチパネルを提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、生産性が高く、タッチパネルの表示画面の端部における打鍵や摺動に対する耐久性(端押し耐久性及び端摺動耐久性)にも優れる透明導電性積層フィルム及びこの積層フィルムを備えた抵抗膜方式タッチパネルを提供することにある。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、層間の密着性が高く、剥離耐久性に優れる透明導電性積層フィルム及びこの積層フィルムを備えた抵抗膜方式タッチパネルを提供することにある。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、機能層の厚みを大きくできるとともに、カールの発生も抑制できる透明導電性積層フィルム及びこの積層フィルムを備えた抵抗膜方式タッチパネルを提供することにある。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、ニュートンリングの発生を抑制でき、繰り返し使用してもニュートンリング防止効果が低下しない透明導電性積層フィルム及びこの積層フィルムを備えた抵抗膜方式タッチパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、透明基材フィルムの一方の面に、(メタ)アクリル基を含む重合性組成物の硬化物で構成された特定のクッション層、機能層、透明導電層をこの順序で順次形成することにより、透明性及び柔軟性に優れ、抵抗膜方式タッチパネルにおいて、光学特性に優れるとともに、繰り返し打鍵しても、割れや損傷が抑制できる透明導電性積層フィルムが得られる。
【0019】
すなわち、本発明の透明導電性積層フィルムは、透明樹脂で構成された基材フィルムの一方の面に、クッション層、機能層、透明導電層がこの順序で順次形成された透明導電性積層フィルムであって、前記クッション層が、(メタ)アクリル基を含む重合性組成物の硬化物で構成され、かつ前記重合性組成物が、下記の測定方法で測定した場合に200MPa以下の引張弾性率を有する組成物である。
【0020】
(引張弾性率の測定方法)
(メタ)アクリル基を含む重合性組成物を加速電圧200kV及び照射線量50kGyの電子線により硬化した厚み100μmを有する成形品の引張弾性率を測定する。
【0021】
前記重合性組成物はウレタン(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。前記重合性組成物は、さらにポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。前記ポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、オキシC3−4アルキレン単位の平均繰り返し数が5〜9モルであるポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含み、かつウレタン(メタ)アクリレートと前記ポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとの割合(重量比)は、前者/後者=30/70〜10/90程度であってもよい。前記クッション層の厚みは10μmを超えており、かつ基材フィルムとクッション層との厚み比は、基材フィルム/クッション層=20/1〜5/1程度であってもよい。前記重合性組成物は、前記方法で測定した場合に1〜100MPaの引張弾性率を有する組成物であってもよい。さらに、前記重合性組成物は溶媒を実質的に含有しない組成物であってもよい。前記クッション層は、−30℃〜30℃のガラス転移温度、50MPa以下の引張弾性率及び92%以上の全光線透過率を有していてもよい。本発明の透明導電性積層フィルムにおいて、透明導電層を剥離した機能層表面におけるマルテンス硬さは100N/mm2以下であり、最大押し込み深さは3μm以上であってもよい。前記重合性組成物の硬化物は活性エネルギー線による硬化物であってもよい。前記機能層は、ハードコート層又はアンチニュートンリング層であってもよく、特に、1又は複数のポリマーと、1又は複数の硬化した硬化性樹脂前駆体とを含み、かつ表面に凹凸形状を有する相分離構造で構成されているアンチニュートンリング層であってもよい。本発明の透明導電性積層フィルムは、抵抗膜方式タッチパネルの透明電極基板であり、かつこの透明電極基板が、指又は押圧部材と接触する側の上部電極基板であってもよい。
【0022】
本発明の透明導電性フィルムは、透明樹脂で構成された基材フィルムの一方の面に、クッション層、機能層、透明導電層がこの順序で順次形成された透明導電性積層フィルムであって、前記クッション層が、(メタ)アクリル基を含む重合性組成物の硬化物で構成され、かつ10μmよりも大きい厚みを有していてもよい。
【0023】
本発明には、前記透明導電性積層フィルムを上部電極基板として備える抵抗膜方式タッチパネルも含まれる。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、透明基材フィルムの一方の面に、(メタ)アクリル基を含む重合性組成物の硬化物で構成された特定のクッション層、機能層、透明導電層をこの順序で順次形成しているため、透明性及び柔軟性に優れ、抵抗膜方式タッチパネルにおいて、光学特性に優れるとともに、繰り返し打鍵しても、割れや損傷が抑制できる。特に、溶媒を使用せずに簡便な方法で厚塗りにより、表面が平滑で、かつ特定の引張弾性率を有するクッション層を形成でき、柔軟性と透明性とを両立できる。さらに、タッチパネルの表示画面の端部における打鍵や摺動に対する耐久性(端押し及び端摺動耐久性)に優れる透明導電性積層フィルムを容易に生産できる。さらに、層間の密着性が高く、剥離耐久性も向上できる。また、機能層の厚みを大きくできる。また、機能層として、アンチニュートンリング層を形成すると、ニュートンリングの発生を抑制でき、特に、アンチニュートンリング層を特定の相分離構造で形成すると、繰り返し使用してもニュートンリング防止効果が低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、透明導電性積層フィルムの光透過散乱特性(透過散乱光の角度分布)を測定するための装置を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明のタッチパネルの一例を示す概略断面図である。
【図3】図3は、電子線による硬化物1における線膨張率の温度変化を示すグラフである。
【図4】図4は、電子線による硬化物4における線膨張率の温度変化を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例1で得られた透明導電性積層フィルムの打鍵試験における打鍵開始時の波形を示すグラフである。
【図6】図6は、実施例1で得られた透明導電性積層フィルムの打鍵試験における打鍵100万回後の波形を示すグラフである。
【図7】図7は、実施例1で得られた透明導電性積層フィルムの打鍵試験における打鍵480万回後の波形を示すグラフである。
【図8】図8は、実施例2で得られた透明導電性積層フィルムの打鍵試験における打鍵開始時の波形を示すグラフである。
【図9】図9は、実施例2で得られた透明導電性積層フィルムの打鍵試験における打鍵70万回後の波形を示すグラフである。
【図10】図10は、比較例1で得られた透明導電性積層フィルムの打鍵試験における打鍵開始時の波形を示すグラフである。
【図11】図11は、比較例1で得られた透明導電性積層フィルムの打鍵試験における打鍵100万回後の波形を示すグラフである。
【図12】図12は、比較例2で得られた透明導電性積層フィルムの打鍵試験における打鍵開始時の波形を示すグラフである。
【図13】図13は、比較例2で得られた透明導電性積層フィルムの打鍵試験における打鍵50万回後の波形を示すグラフである。
【図14】図14は、比較例2で得られた透明導電性積層フィルムの打鍵試験における打鍵90万回後の波形を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[透明導電性積層フィルム]
本発明の透明導電性積層フィルムは、透明樹脂で構成された基材フィルムの一方の面に、クッション層、機能層、透明導電層がこの順序で順次形成されている。
【0027】
(基材フィルム)
基材フィルムは、透明で柔軟性を有するフィルムであれば特に限定されず、用途に応じて適宜選択できるが、通常、透明樹脂で構成される。透明樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、無色であれば熱硬化性樹脂であってもよい。より好適には熱可塑性樹脂である。具体的には、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、非晶質ポリオレフィンなど)、スチレン系樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体など)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロヘキサンジメタノールをジオール成分として含むPET系共重合体(PET−G)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリアルキレンアリレート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、液晶性ポリエステルなど)、ポリアミド系樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12など)、塩化ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニルなど)、ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロースエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフイド系樹脂、フッ素樹脂などが例示できる。
【0028】
これらの透明樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのプラスチックのうち、ポリエステル系樹脂及びポリカーボネート系樹脂から選択された少なくとも一種のプラスチックが好ましく、PET、PENなどのポリアルキレンアリレート系樹脂がより好ましい。更に、PET、PENなどのポリアルキレンアリレート系樹脂を二軸延伸したフィルムがより好ましい。
【0029】
基材フィルムには、必要に応じて、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、結晶核剤、難燃剤、難燃助剤、充填剤、可塑剤、耐衝撃改良剤、補強剤、分散剤、帯電防止剤、発泡剤、抗菌剤などを添加してもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0030】
基材フィルムは、未延伸フィルムであってもよく、延伸(一軸又は二軸)フィルムであってもよい。また、基材フィルムの表面には、接着性を向上させるため、コロナ放電やグロー放電などの放電処理、酸処理、焔処理などの表面処理を施してもよい。本発明では、表面に易接着層を有するフィルム(樹脂成分を用いて表面が易接着処理されたフィルム)が特に好ましい。易接着層の種類は、基材フィルムの種類に応じて選択できるが、ポリエステルフィルムの場合、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂などが挙げられるが、基材フィルムとの親和性の点から、ポリエステル系樹脂が好ましい。表面に易接着層を有するフィルムとしては、市販の易接着処理フィルムを使用できる。
【0031】
基材フィルムの厚みは、例えば、1〜500μm(例えば10〜500μm)、好ましくは50〜400μm(例えば、60〜250μm)、さらに好ましくは70〜200μm(特に80〜200μm)程度であってもよい。
【0032】
(クッション層)
クッション層は、(メタ)アクリル基を含む重合性組成物の硬化物で構成され、かつ前記重合性組成物の硬化物が特定の引張弾性率を有することを特徴とする。
【0033】
(1)重合性組成物
重合性組成物は、(メタ)アクリル基を含んでいればよいが、好ましくはウレタン(メタ)アクリレートを必須成分として含み、さらに重合性ビニル系成分などを含んでいてもよい。
【0034】
(A)ウレタン(メタ)アクリレート
ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリイソシアネート類[又はポリイソシアネート類とポリオール類との反応により生成し、遊離のイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー]に活性水素原子を有する(メタ)アクリレート[例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなど]を反応させることにより得られたウレタン(メタ)アクリレートで構成されている。
【0035】
ポリイソシアネート類としては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する限り特に制限されず、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、複素環式ポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートの誘導体などが挙げられる。これらのうち、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、ポリイソシアネートの誘導体などを用いる場合が多い。
【0036】
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、ジイソシアネート[例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)などのC2−16アルカンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、リジンジイソシアネート(LDI)など]、分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(例えば、リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネートなどのC6−20アルカントリイソシアネートなど)などが挙げられる。
【0037】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、ジイソシアネート(例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、水添キシリレンジイソシアネート、水添ビス(イソシアナトフェニル)メタン、ノルボルナンジイソシアネートなど)、分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(例えば、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンなどのトリイソシアネートなど)などが挙げられる。
【0038】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、ジイソシアネート(例えば、フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトフェニル)プロパンなど)、分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(例えば、1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼン、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネートなどのトリイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどのテトライソシアネートなど)などが挙げられる。
【0039】
ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、前記ポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、炭酸ガスと上記ポリイソシアネート単量体との重合物である2,4,6−オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネート、カルボジイミド、ウレットジオンなどが挙げられる。
【0040】
これらのポリイソシアネート類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリイソシアネート類のうち、HDIなどの脂肪族ジイソシアネート、IPDI、水添XDIなどの脂環族ジイソシアネート、XDIなどの芳香脂肪族ジイソシアネート、TDI、MDI、NDIなどの芳香族ジイソシアネートなどを用いる場合が多く、高い耐候性が要求される場合には、非芳香族ポリイソシアネート、例えば、HDIなどの脂肪族ジイソシアネート、IPDI、水添XDIなどの脂環族ジイソシアネートなどの無黄変タイプのジイソシアネート又はその誘導体(イソシアヌレート環を有するトリマーなど)を用いてもよい。
【0041】
前記ポリオール類としては、例えば、脂肪族ジオール[アルカンジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレンエーテルグリコール、1,3−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールなどのC2−10アルカンジオール)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなど]、脂環族ジオール(1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのシクロアルカンジオール類、水添ビスフェノールAなどの水添ビスフェノール類、又はこれらのC2−4アルキレンオキサイド付加体など)、芳香族ジオール(キシリレングリコールなどの芳香脂肪族ジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどのビスフェノール類、又はこれらのC2−4アルキレンオキサイド付加体など)などのジオール類、トリオール類(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリエタノールアミンなど)、テトラオール類(ペンタエリスリトール、ソルビタン又はこれらの誘導体など)、ヘキサオール類(ジペンタエリスリトール類など)、ポリマーポリオール類などが挙げられる。
【0042】
前記ポリマーポリオール類には、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリル系ポリマーポリオールなどのポリマーポリオールなどが含まれる。
【0043】
前記ポリエステルポリオールは、例えば、ポリカルボン酸(又はその無水物)とポリオールとの反応生成物、開始剤に対してラクトン類を開環付加重合させた反応生成物であってもよい。
【0044】
ポリカルボン酸としては、ジカルボン酸類[例えば、芳香族ジカルボン酸又はその無水物(テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸など)、脂環族ジカルボン酸又はその無水物(テトラヒドロ無水フタル酸、無水ヘット酸、無水ハイミック酸など)、脂肪族ジカルボン酸又はその無水物(コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのC4−20アルカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸など)など]、多価カルボン酸類(例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸など)、又はこれらのカルボン酸類のアルキルエステルなどが例示できる。これらのポリカルボン酸のうち、脂肪族ジカルボン酸又はその無水物(アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのC6−20アルカンジカルボン酸など)が好ましい。これらのポリカルボン酸は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。ポリオールとしては、前記脂肪族ジオール、前記脂環族ジオール、前記芳香族ジオールなどが挙げられる。これらのポリオールは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0045】
ラクトン類としては、例えば、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、エナントラクトン(7−ヒドロキシヘプタン酸ラクトン)などのC3−10ラクトンなどが挙げられる。これらのラクトン類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのラクトン類のうち、バレロラクトンやカプロラクトンなどのC4−8ラクトンが好ましい。
【0046】
ラクトン類に対する開始剤としては、例えば、水、オキシラン化合物(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランなどのC2−6アルキレンオキシドなど)の単独又は共重合体[例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)など]、低分子量ポリオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサメチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールAなど)、アミノ基を有する化合物(例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミンなどのジアミン化合物、ジエチレントリアミンなどのポリアミン化合物など)などが挙げられる。これらの開始剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0047】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、前記オキシラン化合物の開環重合体(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのポリC2−4アルキレングリコールなど)などが挙げられる。
【0048】
前記ポリエーテルエステルポリオールとしては、例えば、前記ジカルボン酸(芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸など)又はこれらのジアルキルエステルと、前記ポリエーテルポリオールとの重合物であるポリエーテルエステルポリオールなどが挙げられる。
【0049】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、グリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルカンジオール;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの(ポリ)オキシアルキレングリコール;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環族ジオール;ビスフェノールAなどのビスフェノール類、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体などの芳香族ジオールから選択された一種又は二種以上のグリコール)とカーボネート(ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジフェニルカーボネートなど)又はホスゲンなどとの重合体などが挙げられる。
【0050】
前記ポリエステルアミドポリオールとしては、前記ポリエステルポリオールの反応(ジカルボン酸とジオールとの重合など)において、末端カルボキシル基含有ポリエステルとジアミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアミノ基を有する脂肪族ジアミンなど)とを反応成分とするポリエステルアミドポリオールなどが挙げられる。
【0051】
前記アクリルポリオールとしては、ヒドロキシル基を有する重合性単量体(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなど)と、ヒドロキシル基を含まない(メタ)アクリル系単量体(例えば、(メタ)アクリル酸、又はそのエステル)との重合物であるアクリルポリオールなどが挙げられる。
【0052】
これらのポリオール類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリオール類のうち、柔軟性及び汎用性などの点から、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールが好ましい。なかでも、柔軟性などの点から、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが好ましく、吸湿安定性に優れる点から、ポリエステルポリオールが特に好ましい。
【0053】
ポリウレタンプレポリマーとしては、例えば、前記ポリイソシアネート類の多量体、前記ポリイソシアネート類のビュレット変性多量体、前記ポリイソシアネート類と前記ポリオール類とのアダクト体、前記ポリオール類に対して過剰量の前記ポリイソシアネート類を反応させて得られたポリウレタンプレポリマーなどが挙げられる。これらのプレポリマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0054】
好ましいポリウレタンプレポリマーは、例えば、前記ポリイソシアネート類の多量体(三量体、五量体、七量体など)、前記ポリイソシアネート類のビュレット多量体(ビュレット変性体)、前記ポリイソシアネート類とポリオール類(グリセリン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類)とのアダクト体、前記ジイソシアネートとポリエステルポリオールとのポリウレタンプレポリマー、前記ジイソシアネートとポリエーテルポリオールとのポリウレタンプレポリマー、特に、前記ジイソシアネートとポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールとのポリウレタンプレポリマーなどが好ましい。
【0055】
活性水素原子を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2−6アルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルコキシC2−6アルキル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0056】
ウレタン(メタ)アクリレートの1分子中における(メタ)アクリロイル基の数は、1〜10個程度の範囲から選択でき、例えば、2〜8個、好ましくは2〜6個、さらに好ましくは2〜4個(特に2〜3個)程度である。
【0057】
特に、ウレタン(メタ)アクリレートは、光学シートの柔軟性を向上させる点から、2〜3官能のポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。さらに、ウレタン(メタ)アクリレートは、光学シートの柔軟性と機械的強度とを両立させる点から、2〜3官能(特に2官能)のポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレートと4〜8官能(好ましくは5〜8可能、さらに好ましくは6官能)のポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレートとを組み合わせてもよい。例えば、光学シートの柔軟性と機械的強度とのバランスを調整するために、両者の割合(重量比)を、2〜3官能のポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレート/4〜8官能のポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレート=50/50〜90/10程度の範囲から選択してもよい。
【0058】
さらに、光学シートの中でも、携帯電話の導光シートなど、高い柔軟性が要求される用途では、通常、2個の(メタ)アクリロイル基を有する2官能ウレタン(メタ)アクリレートが使用され、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートの割合は、ウレタン(メタ)アクリレート全体に対して、例えば、50モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下程度である。
【0059】
ウレタン(メタ)アクリレート(硬化物)のガラス転移温度(Tg)は、最終物である重合性組成物(硬化物)のガラス転移温度が所定の範囲になればよく、他の重合成分の存在によっても変わるが、例えば、−100℃〜100℃(例えば、−80℃〜100℃)程度の範囲から選択でき、例えば、−60℃〜90℃、好ましくは−40℃〜80℃、さらに好ましくは−20℃〜70℃(特に−20℃〜40℃)程度である。なお、Tgは、実施例で記載された方法で測定できる。さらに、硬化物のガラス転移温度が異なるウレタン(メタ)アクリレートを組み合わせてもよく、例えば、Tg−20〜40℃(特に0〜20℃)のウレタン(メタ)アクリレートと、Tg−100℃以上―20℃未満(特に−80〜−30℃)のウレタン(メタ)アクリレートとを、前者/後者=90/10〜10/90、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは70/30〜30/70程度の割合(重量比)で組み合わせて、重合性組成物の引張弾性率を調整してもよい。
【0060】
本発明のウレタン(メタ)アクリレートは、ポリイソシアネート類と活性水素原子を有する(メタ)アクリレートとを、通常、イソシアネート基と活性水素原子が略当量となる割合(イソシアネート基/活性水素原子=0.8/1〜1.2/1程度)で組み合わせて製造される。なお、これらのウレタン(メタ)アクリレートの製造方法について、特開2008−74891号公報などを参照できる。3官能以上の多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどのポリオール類を利用して得られたウレタン(メタ)アクリレートであってもよい。
【0061】
ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で、500〜10000、好ましくは600〜9000、さらに好ましくは700〜8000程度であってもよい。
【0062】
(B)重合性ビニル系成分
重合性ビニル系成分としては、主として、重合性組成物の軟性(ガラス転移温度)を制御するために配合され、α,β−エチレン性不飽和二重結合を有する化合物(硬化性化合物)である限り、特に限定されない。α,β−エチレン性不飽和二重結合[特に(メタ)アクリロイル基]の数は、1分子中に1以上(例えば、1〜20、好ましくは1〜15、さらに好ましくは1〜10程度)であってもよい。
【0063】
ビニル系成分は、モノマーであっても、オリゴマー(又はプレポリマー)であってもよく、モノマー及びオリゴマーを組み合わせて使用してもよい。
【0064】
ビニル系モノマーには、単官能ビニル系モノマー[単官能(メタ)アクリレート(又はモノ(メタ)アクリレート)類など]、二官能ビニル系モノマー[二官能(メタ)アクリレート(又はジ(メタ)アクリレート)類など]、3官能以上のビニル系モノマー[3官能以上の多官能(メタ)アクリレート(又はポリ(メタ)アクリレート)類など]が含まれる。
【0065】
単官能ビニル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのC1−24アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどの橋架け環式(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレートなどのアリール(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレートなどのアラルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2−10アルキル(メタ)アクリレート又はC2−10アルカンジオールモノ(メタ)アクリレート;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレートなどのフルオロC1−10アルキル(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどのアリールオキシアルキル(メタ)アクリレート;フェニルカルビトール(メタ)アクリレート、ノニルフェニルカルビトール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのアリールオキシ(ポリ)アルコキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;グリセリンモノ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールモノ(メタ)アクリレート;2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基又は置換アミノ基を有する(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0066】
二官能ビニル系モノマーとしては、例えば、アリル(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパンなどのビスフェノール類(ビスフェノールA、Sなど)のC2−4アルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレート;脂肪酸変性ペンタエリスリトールなどの酸変性アルカンポリオールのジ(メタ)アクリレート;トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどの橋架け環式ジ(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0067】
多官能ビニル系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート;前記アルカンポリオールのC2−4アルキレンオキサイド付加体のトリ(メタ)アクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレートなどのトリアジン環を有するトリ(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0068】
これらのモノマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0069】
ビニル系オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート[例えば、多価カルボン酸とポリオールと(メタ)アクリル酸及び/又はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応により生成するポリエステル(メタ)アクリレートなど];アルキド樹脂;エポキシ(メタ)アクリレート[例えば、複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物(多価アルコール型、多価カルボン酸型、ビスフェノールA、F、Sなどのビスフェノール型、ノボラック型などのエポキシ樹脂)に(メタ)アクリル酸が開環付加したエポキシ(メタ)アクリレートなど];ポリアクリル(メタ)アクリレート[例えば、(メタ)アクリル系単量体とグリシジル(メタ)アクリレートとの共重合体に(メタ)アクリル酸をエポキシ基に開環付加したポリアクリル(メタ)アクリレートなど];ポリエーテル(メタ)アクリレート;ポリブタジエン系(メタ)アクリレート;メラミン(メタ)アクリレート;シリコーン(メタ)アクリレート;ポリアセタール(メタ)アクリレートなどが例示できる。これらのオリゴマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0070】
これらのビニル系成分のうち、二官能ビニル系モノマー、例えば、(ポリ)C2−6アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが汎用される。さらに、(ポリ)C2−6アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの中でも、柔軟性などの点から、ポリC2−6アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましく、柔軟性に加えて、密着性にも優れる点から、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。オキシC3−4アルキレン単位の平均繰り返し数は、分子1分子当たり1.2〜30モル程度の範囲から選択でき、例えば、1.5〜20モル、好ましくは2〜15モル、さらに好ましくは3〜10モル(特に5〜9モル)程度であってもよい。
【0071】
ウレタン(メタ)アクリレートと、ビニル系重合成分(例えば、ポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート)との割合(重量比)は、目的の軟性(ガラス転移温度)などに応じて、前者/後者=100/0〜1/99程度の範囲から選択でき、例えば、前者/後者=90/10〜2/98、好ましくは70/30〜3/97、さらに好ましくは50/50〜5/95(特に30/70〜10/90)程度であってもよい。
【0072】
さらに、2〜3官能(特には2官能)のポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレートを用いた場合でも、ウレタン(メタ)アクリレートの分子構造によっては、機械的強度が不足する場合があるが、この場合には、ポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[特に、オキシC3−4アルキレン単位の平均繰り返し数が5〜9モルであるポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート]と組み合わせることにより、柔軟性を保持しながら、機械的強度を改善できる。
【0073】
(C)重合開始剤
重合性組成物には、重合開始剤が含まれていてもよい。EBで硬化させる場合以外においては重合開始剤が必要である。重合開始剤は、熱重合開始剤(ベンゾイルパーオキサイドなどの過酸化物などの熱ラジカル発生剤)であってもよく、光重合開始剤(光ラジカル発生剤)であってもよい。好ましい重合開始剤は、光重合開始剤である。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン類(ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類など)、フェニルケトン類[例えば、アセトフェノン類(例えば、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンなど)、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンなどのアルキルフェニルケトン類;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのシクロアルキルフェニルケトン類など]、アミノアセトフェノン類{2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノアミノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1など}、アントラキノン類(アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンなど)、チオキサントン類(2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなど)、ケタール類(アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなど)、ベンゾフェノン類(ベンゾフェノンなど)、キサントン類、ホスフィンオキサイド類(例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなど)などが例示できる。これらの光重合開始剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0074】
重合開始剤の割合は、重合成分(ウレタン(メタ)アクリレート及び重合性ビニル系成分の合計)100重量部に対して0.1重量部〜20重量部、好ましくは0.5〜15重量部、さらに好ましくは1〜10重量部(特に3〜8重量部)程度であってもよい。
【0075】
なお、光重合開始剤は、光増感剤と組み合わせてもよい。光増感剤としては、慣用の成分、例えば、第3級アミン類[例えば、トリアルキルアミン、トリアルカノールアミン(トリエタノールアミンなど)、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸アミルなどのジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーズケトン)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンなどのビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンなど]、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類、N,N−ジメチルトルイジンなどのトルイジン類、9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセンなどのアントラセン類などが挙げられる。光増感剤は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
【0076】
光増感剤の割合は、前記光重合開始剤100重量部に対して、例えば、0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜80重量部、さらに好ましくは1〜50重量部程度であってもよい。
【0077】
重合開始剤(特に光重合開始剤及び光増感剤)は、電子線を照射して重合性組成物を硬化する場合には、実質的に含有しないのが好ましい。重合開始剤を含有しない場合、耐候性、特に、長期間の使用に対する難黄変性が向上する。
【0078】
重合性組成物は、柔軟性や透明性を損なわない範囲で、重合開始剤以外にも、慣用の添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤などの安定化剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤などを含有していてもよい。
【0079】
さらに、重合性組成物は、有機溶媒、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(ベンゼンなど)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチルなど)、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、セロソルブアセテート類、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)などを含有していてもよい。さらに、本発明では、重合性組成物として、特定の粘弾性を有する樹脂成分を用いるため、溶媒を含んでいなくても、塗布性に優れている。そのため、重合性組成物は、溶媒を実質的に含有していなくてもよい。また、溶媒を実質的に含有しなくても粘度が低く、厚塗りが可能である。
【0080】
重合性組成物は、(メタ)アクリル基を有することを必須成分とし、前記例示のウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好適であり、さらに前記例示の重合性ビニル系成分や重合開始剤などを含んでいてもよく、その組成は限定されないが、加速電圧200kV及び照射線量50kGyの電子線により硬化させた厚み100μmの硬化物(成形品)において、JIS K7113に準拠した方法(25℃)で200MPa以下の引張弾性率を有する組成に調製する必要がある。このような重合性組成物を用いると、タッチパネルなどにおける打鍵耐久性を向上できる。また、塗布液の粘度が低く、簡便な方法で、表面が平滑な厚膜を形成できるため、透明性と柔軟性とを両立できる。すなわち、このような重合性組成物は高い透明性と柔軟性とを両立する特性を有するが、10μmよりも大きい厚み(特に12μm以上の厚み)を有するクッション層を形成しても塗布に起因する厚みムラの発生が抑制され、前記特性を有効に発現できる。
【0081】
前記引張弾性率は、具体的には0.1〜150MPa程度であってもよく、好ましくは1〜100MPa、さらに好ましくは1〜80MPa(特に1〜50MPa)、よりよく好ましくは1〜35MPa程度であってもよい。このような引張弾性率を有する重合性組成物は、例えば、複数種の(例えば、硬化成分のガラス転移温度が異なる)ウレタン(メタ)アクリレートを組み合わせて調製してもよく、ウレタン(メタ)アクリレートと重合性ビニル成分とを組み合わせて調製してもよい。特に、複数種のウレタン(メタ)アクリレートを混合することで、比較的塗布液粘度を低くして、厚塗りが可能なように調整できる。なお、加速電圧200kV及び照射線量50kGyの電子線により硬化させた厚み100μmを有する硬化物の引張弾性率は、本発明に用いる重合性組成物の種類を規定するための特性であり、後述する最終物としてのクッション層の引張弾性率とは直接の関係はない。また、引張弾性率の測定方法は、具体的には、後述の実施例に記載の方法を用いることができる。
【0082】
(2)重合性組成物の硬化物(クッション層)
前記重合性組成物を硬化させて得られるクッション層のガラス転移温度(Tg)は−30℃〜30℃であり、好ましくは−30℃〜20℃(−30℃〜10℃)、さらに好ましくは−20℃〜10℃(特に−10℃〜5℃)程度である。ガラス転移温度が20℃近辺よりも低温側にある場合、すなわち使用する温度よりも低温側にある場合には、使用温度域で柔軟性がより柔らかくなり、かつこの物性が安定する。
【0083】
クッション層は、高い透明性を有しており、JIS K7361−1に準拠して測定した全光線透過率が、例えば、80%以上(例えば、80〜100%)、好ましくは90%以上(例えば、90〜99%)、さらに好ましくは92%以上(例えば、92〜98%)、特に93〜97%程度である。JIS K7361−1に準拠して測定したヘーズは、例えば、5%以下(例えば、0.1〜5%)、好ましくは3%以下(例えば、0.2〜3%)、さらに好ましくは2.5%以下(例えば、0.5〜2.5%)程度である。
【0084】
クッション層は色味も少なく、JIS K7105に準拠した透過モードで測定したb*値は、例えば、1以下(例えば、0.01〜1)、好ましくは0.8以下(例えば、0.03〜0.8)、さらに好ましくは0.5以下(例えば、0.1〜0.5)程度である。さらに、クッション層は耐候性にも優れており、長期間に亘り、過酷な条件で紫外線などに照射されても黄変が抑制される。例えば、ウェザーメーター(スガ試験機(株)製、スーパーキセノンウェザーメーター、「SX2−75」)を用いて、JIS K7350−2に準拠した暴露試験を行った後のb*値は、例えば、3以下(例えば、0.05〜3)、好ましくは2以下(例えば、0.1〜2)、さらに好ましくは1.5以下(例えば、0.3〜1.5)程度である。
【0085】
さらに、クッション層は硬化樹脂で構成されているため、クッション層の存在により、基材フィルムがポリエチレンテレフタレートなどのプラスチックである場合、基材フィルムの内部から熱によりオリゴマーなどの低分子成分が析出することも抑制できる。
【0086】
クッション層の厚みは、例えば、柔軟性の点から、10μmを超える厚み(特に12μm以上の厚み)が好ましく、例えば、11〜50μm、好ましくは12〜40μm、さらに好ましくは15〜30μm(特に15〜25μm)程度である。特に、本発明では、溶媒を用いることなく、表面が平滑であり、かつ12μm以上の塗膜を形成できる。
【0087】
さらに、基材フィルムとクッション層との厚み比は、例えば、基材フィルム/クッション層=20/1〜5/1、好ましくは18/1〜6/1、さらに好ましくは15/1〜7/1(特に12/1〜8/1)程度である。本発明では、クッション層の厚みが、適度に厚く、基材フィルムに対して、このような厚み比を有するとともに、後述するようにコーティングによりクッション層を形成することにより、透明導電層に近接するクッション層が効果的に作用し、透明導電層の割れや損傷を抑制できる。
【0088】
(機能層)
機能層(第1の機能層)としては、慣用の機能層、例えば、ハードコート層、アンチニュートンリング層、光散乱層、反射防止層、低屈折率層などが挙げられる。これらのうち、ハードコート層、アンチニュートンリング層などが汎用される。ハードコート層としては、透明で耐擦傷性の高い材質であれば特に限定されないが、硬化性樹脂が好ましく、例えば、前記クッション層で例示されたウレタン(メタ)アクリレート及び/又は重合性ビニル系成分を含む組成物の硬化物のうち、前記クッション層よりもガラス転移温度の高い硬化物などを利用でき、タッチパネルに要求される透明性、柔軟性(フレキシブル性)、耐擦傷性を兼ね備える点から、ウレタン(メタ)アクリレートを含む重合性組成物が特に好ましい。
【0089】
さらに、本発明では、タッチパネルの視認性を向上できる点から、機能層としてアンチニュートンリング層を形成するのが特に好ましい。アンチニュートンリング層(ニュートンリング防止層)は、透明でアンチニュートンリング性を有している限り、特に限定されないが、表面に凹凸構造を有する層が好ましい。本発明では、アンチニュートンリング層を形成することにより、タッチパネルの表示部におけるニュートンリングの発生を抑制できるため、特に、大画面のタッチパネルにおいて有効となる。表面に凹凸構造を有するアンチニュートンリング層としては、例えば、複数のポリマー成分(又はその前駆体)の相分離により凹凸構造を形成した層(相分離を利用したアンチニュートンリング層)、ポリマー成分(又はその前駆体)中に粒子を配合することにより凹凸構造を形成した層(粒子を配合したアンチニュートンリング層)、鋳型を用いて凹凸構造を形成した層などが挙げられる。これらのうち、簡便に高い防眩性を発現できる点から、相分離を利用した層、粒子を配合した層が好ましい。
【0090】
(1)相分離を利用したアンチニュートンリング層
相分離を利用した層は、1又は複数のポリマーと、1又は複数の硬化した硬化性樹脂前駆体とを含み、かつ表面に凹凸形状(凹凸構造)を有する相分離構造で構成されていてもよい。アンチニュートンリング層の相分離構造は、液相からのスピノーダル分解(湿式スピノーダル分解)により形成されている。すなわち、ポリマーと硬化性樹脂前駆体と溶媒とで構成された樹脂組成物を用い、この樹脂組成物の液相(又は均一溶液やその塗布層)から、溶媒を乾燥などにより除去する過程で、濃縮に伴って、スピノーダル分解による相分離が生じ、相間距離が微細で比較的規則的な相分離構造を形成できる。より具体的には、前記湿式スピノーダル分解は、通常、1又は複数のポリマーと1又は複数の硬化性樹脂前駆体と溶媒とを含む混合液又は樹脂組成物(均一溶液)を基材フィルムにコーティングし、形成された塗布層から溶媒を蒸発させることにより行うことができる。このような相分離構造による凹凸構造は、微粒子による凹凸構造と比較して微細であり、かつ硬質な微粒子を用いなくとも凹凸構造を形成できる。さらに、この凹凸構造は、微細な構造に加えて、規則的で滑らか(又はなだらか)な表面構造を有しているため、ロール状に巻き取って巻き締めても透明導電層が損傷又は劣化されるのを抑制できる。
【0091】
(A)ポリマー成分
ポリマー成分としては、通常、熱可塑性樹脂が使用される。熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、オレフィン系樹脂(脂環式オレフィン系樹脂を含む)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6−キシレノールの重合体など)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ゴム又はエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)などが例示できる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0092】
これらの熱可塑性樹脂のうち、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂、及びゴム又はエラストマーなどが好ましい。さらに、熱可塑性樹脂としては、通常、非結晶性であり、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶な樹脂が使用される。特に、成形性又は製膜性、透明性や耐候性の高い樹脂、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類など)などが好ましい。
【0093】
スチレン系樹脂には、スチレン系単量体の単独又は共重合体(ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体など)、スチレン系単量体と他の重合性単量体[(メタ)アクリル系単量体、無水マレイン酸、マレイミド系単量体、ジエン類など]との共重合体などが含まれる。スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレンと(メタ)アクリル系単量体との共重合体[スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体など]、スチレン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。好ましいスチレン系樹脂には、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル系単量体との共重合体[スチレン−メタクリル酸メチル共重合体などのスチレンとメタクリル酸メチルを主成分とする共重合体]、AS樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体などが含まれる。
【0094】
(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体、(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体との共重合体などが使用できる。(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、前記クッション層における重合性ビニル系成分(2)として例示された単官能ビニル系モノマーなどが例示できる。共重合性単量体には、前記スチレン系単量体、ビニルエステル系単量体、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸などが例示できる。これらの単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0095】
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸イソボルニルなどが挙げられる。好ましい(メタ)アクリル系樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキル、特にメタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%程度)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。さらに、(メタ)アクリル系樹脂は、シリコーン含有(メタ)アクリル系樹脂であってもよい。
【0096】
脂環式オレフィン系樹脂としては、環状オレフィン(ノルボルネン、ジシクロペンタジエンなど)の単独又は共重合体(例えば、立体的に剛直なトリシクロデカンなどの脂環式炭化水素基を有する重合体など)、前記環状オレフィンと共重合性単量体との共重合体(エチレン−ノルボルネン共重合体、プロピレン−ノルボルネン共重合体など)などが例示できる。脂環式オレフィン系樹脂は、例えば、商品名「トパス(TOPAS)」、商品名「アートン(ARTON)」、商品名「ゼオネックス(ZEONEX)」などとして入手できる。
【0097】
ポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリC2−4アルキレンテレフタレートやポリC2−4アルキレンナフタレートなどのホモポリエステルなどであってもよいが、溶媒溶解性の点から、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸を用いた芳香族コポリエステル[C2−4アルキレンアリレート単位(C2−4アルキレンテレフタレート及び/又はC2−4アルキレンナフタレート単位)を主成分(例えば、50重量%以上)として含むコポリエステルなど]などが好ましい。コポリエステルとしては、ポリC2−4アルキレンアリレートの構成単位のうち、C2−4アルキレングリコールの一部を、ポリオキシC2−4アルキレングリコール、C5−10アルキレングリコール、脂環式ジオール(シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなど)、芳香環を有するジオール(9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、ビスフェノールA、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体など)などで置換したコポリエステル、芳香族ジカルボン酸の一部を、フタル酸、イソフタル酸などの非対称芳香族ジカルボン酸、アジピン酸などの脂肪族C6−12ジカルボン酸などで置換したコポリエステルが含まれる。ポリエステル系樹脂には、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸を用いた脂肪族ポリエステル、ε−カプロラクトンなどのラクトンの単独又は共重合体も含まれる。好ましいポリエステル系樹脂は、通常、非結晶性コポリエステル(例えば、C2−4アルキレンアリレート系コポリエステルなど)などのように非結晶性である。
【0098】
セルロース誘導体のうち、セルロースエステル類としては、例えば、脂肪族有機酸エステル(セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート;セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのC1−6有機酸エステルなど)、芳香族有機酸エステル(セルロースフタレート、セルロースベンゾエートなどのC7−12芳香族カルボン酸エステル)、無機酸エステル類(例えば、リン酸セルロース、硫酸セルロースなど)が例示でき、酢酸・硝酸セルロースエステルなどの混合酸エステルであってもよい。セルロース誘導体には、セルロースカーバメート類(例えば、セルロースフェニルカーバメートなど)、セルロースエーテル類(例えば、シアノエチルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキルセルロース;メチルセルロース、エチルセルロースなどのC1−6アルキルセルロース;カルボキシメチルセルロース又はその塩、ベンジルセルロース、アセチルアルキルセルロースなど)も含まれる。
【0099】
ポリマー成分としては、硬化反応に関与する官能基(又は硬化性化合物と反応可能な官能基)を有するポリマーを用いることもできる。前記ポリマーは、官能基を主鎖に有していてもよく、側鎖に有していてもよい。前記官能基は、共重合や共縮合などにより主鎖に導入されてもよいが、通常、側鎖に導入される。このような官能基としては、縮合性基や反応性基(例えば、ヒドロキシル基、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基又はイミノ基、エポキシ基、グリシジル基、イソシアネート基など)、重合性基(例えば、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、アリルなどのC2−6アルケニル基、エチニル、プロピニル、ブチニルなどのC2−6アルキニル基、ビニリデンなどのC2−6アルケニリデン基、又はこれらの重合性基を有する基((メタ)アクリロイル基など)など)などが挙げられる。これらの官能基のうち、重合性基が好ましい。
【0100】
重合性基を側鎖に導入する方法としては、例えば、反応性基や縮合性基などの官能基を有する熱可塑性樹脂と、前記官能基との反応性基を有する重合性化合物とを反応させる方法を用いることができる。
【0101】
官能基を有する熱可塑性樹脂としては、カルボキシル基又はその酸無水物基を有する熱可塑性樹脂、ヒドロキシル基を有する熱可塑性樹脂、アミノ基を有する熱可塑性樹脂、エポキシ基を有する熱可塑性樹脂などが例示できる。また、官能基を有さない熱可塑性樹脂に、前記官能基を共重合やグラフト重合で導入した樹脂であってもよい。
【0102】
重合性化合物としては、カルボキシル基又はその酸無水物基を有する熱可塑性樹脂の場合は、エポキシ基やヒドロキシル基、アミノ基、イソシアネート基などを有する重合性化合物などを用いることができる。ヒドロキシル基を有する熱可塑性樹脂の場合は、カルボキシル基又はその酸無水物基やイソシアネート基などを有する重合性化合物などが挙げられる。アミノ基を有する熱可塑性樹脂の場合は、カルボキシル基又はその酸無水物基やエポキシ基、イソシアネート基などを有する重合性化合物などが挙げられる。エポキシ基を有する熱可塑性樹脂の場合は、カルボキシル基又はその酸無水物基やアミノ基などを有する重合性化合物などが挙げられる。
【0103】
前記重合性化合物のうち、エポキシ基を有する重合性化合物としては、例えば、エポキシシクロヘキセニル(メタ)アクリレートなどのエポキシシクロC5−8アルケニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどが例示できる。ヒドロキシル基を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC1−4アルキル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのC2−6アルキレングリコール(メタ)アクリレートなどが例示できる。アミノ基を有する重合性化合物としては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノC1−4アルキル(メタ)アクリレート、アリルアミンなどのC3−6アルケニルアミン、4−アミノスチレン、ジアミノスチレンなどのアミノスチレン類などが例示できる。イソシアネート基を有する重合性化合物としては、例えば、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレートやビニルイソシアネートなどが例示できる。カルボキシル基又はその酸無水物基を有する重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸や無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸又はその無水物などが例示できる。
【0104】
代表的な例としては、カルボキシル基又はその酸無水物基を有する熱可塑性樹脂とエポキシ基含有化合物、特に(メタ)アクリル系樹脂((メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)とエポキシ基含有(メタ)アクリレート(エポキシシクロアルケニル(メタ)アクリレートやグリシジル(メタ)アクリレートなど)の組み合わせが挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル系樹脂のカルボキシル基の一部に重合性不飽和基を導入したポリマー、例えば、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のカルボキシル基の一部に、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチルアクリレートのエポキシ基を反応させて、側鎖に光重合性不飽和基を導入した(メタ)アクリル系ポリマー(サイクロマーP、ダイセル化学工業(株)製)などが使用できる。
【0105】
熱可塑性樹脂に対する硬化反応に関与する官能基(特に重合性基)の導入量は、熱可塑性樹脂1kgに対して、0.001〜10モル、好ましくは0.01〜5モル、さらに好ましくは0.02〜3モル程度である。
【0106】
これらのポリマーは適宜組み合わせて使用できる。すなわち、ポリマーは複数のポリマーで構成されていてもよい。複数のポリマーは、液相スピノーダル分解により、相分離可能であってもよい。また、複数のポリマーは、互いに非相溶であってもよい。複数のポリマーを組み合わせる場合、第1のポリマーと第2のポリマーとの組み合わせは特に制限されないが、加工温度付近で互いに非相溶な複数のポリマー、例えば、互いに非相溶な2つのポリマーとして適当に組み合わせて使用できる。例えば、第1のポリマーがスチレン系樹脂である場合、第2のポリマーは、セルロース誘導体、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂などであってもよい。また、例えば、第1のポリマーがセルロース誘導体である場合、第2のポリマーは、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂(特に、重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂)、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂などであってもよい。複数の樹脂の組合せにおいて、少なくともセルロースエステル類(例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースC2−4アルキルカルボン酸エステル類)を用いてもよい。
【0107】
なお、スピノーダル分解により生成された相分離構造(隆起した表面の凹凸形状)は、活性エネルギー線(紫外線、電子線など)や熱などにより最終的に硬化し、硬化樹脂を形成する。
【0108】
硬化後の耐久性(耐擦傷性)などの観点から、複数のポリマーのうち、少なくとも一つのポリマー、例えば、互いに非相溶なポリマーのうち一方のポリマー(第1のポリマーと第2のポリマーとを組み合わせる場合、特に両方のポリマー)が硬化性樹脂前駆体と反応可能な官能基を側鎖に有するポリマーであるのが好ましい。
【0109】
第1のポリマーと第2のポリマーとの割合(重量比)は、例えば、前者/後者=1/99〜99/1、好ましくは5/95〜95/5、さらに好ましくは10/90〜90/10程度の範囲から選択でき、通常、20/80〜80/20程度、特に30/70〜70/30程度である。
【0110】
なお、相分離構造を形成するためのポリマーとしては、前記非相溶な2つのポリマー以外にも、前記熱可塑性樹脂や他のポリマーが含まれていてもよい。
【0111】
ポリマーのガラス転移温度は、例えば、−100〜250℃、好ましくは0〜200℃、さらに好ましくは50〜180℃程度(特に100〜170℃程度)であってもよい。ポリマーの重量平均分子量は、例えば、1,000,000以下、好ましくは1,000〜500,000程度の範囲から選択できる。
【0112】
(B)硬化性樹脂前駆体
硬化性樹脂前駆体は、熱や活性エネルギー線(紫外線や電子線など)などにより反応する官能基を有する化合物であり、熱や活性エネルギー線などにより硬化又は架橋して樹脂(特に硬化又は架橋樹脂)を形成可能な種々の硬化性化合物、例えば、熱硬化性化合物又は樹脂[エポキシ基、重合性基、イソシアネート基、アルコキシシリル基、シラノール基などを有する低分子量化合物(例えば、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂など)]、活性エネルギー線(紫外線など)により硬化可能な光硬化性化合物(光硬化性モノマー、オリゴマーなどの紫外線硬化性化合物など)などが例示でき、光硬化性化合物は、EB(電子線)硬化性化合物などであってもよい。なお、光硬化性モノマー、オリゴマーや低分子量であってもよい光硬化性樹脂などの光硬化性化合物を、単に「光硬化性樹脂」という場合がある。
【0113】
光硬化性化合物には、例えば、単量体、オリゴマー(又は樹脂、特に低分子量樹脂)が含まれる。単量体は、例えば、1つの重合性基を有する単官能単量体と、少なくとも2つの重合性基を有する多官能単量体とに分類できる。
【0114】
単官能単量体としては、例えば、前記クッション層における重合性ビニル系成分(2)として例示された単官能ビニル系モノマー、ビニルピロリドンなどのビニル系単量体などが挙げられる。多官能単量体には、2〜8程度の重合性基を有する多官能単量体が含まれ、2官能単量体としては、例えば、前記クッション層における重合性ビニル系成分(2)として例示された二官能ビニル系モノマーなどが挙げられる。3〜8官能単量体としては、例えば、前記クッション層における重合性ビニル系成分(2)として例示された多官能ビニル系モノマーなどが挙げられる。
【0115】
オリゴマー又は樹脂としては、前記クッション層におけるウレタン(メタ)アクリレート、重合性ビニル系成分(2)として例示されたビニル系オリゴマーなどが例示できる。これらの(メタ)アクリレートオリゴマー又は樹脂には、前記ポリマー成分における(メタ)アクリル系樹脂の項で例示された共重合性単量体が含まれていてもよい。これらの光硬化性化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0116】
さらに、硬化性樹脂前駆体は、ヘイズ値を低下できるとともに、層の強度も向上できる点から、透明性や強度を向上する点などから、フッ素原子や無機粒子を含有していてもよい。フッ素原子を含有する前駆体(フッ素含有硬化性化合物)としては、前記単量体及びオリゴマーのフッ化物、例えば、フルオロアルキル(メタ)アクリレート[例えば、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートやトリフルオロエチル(メタ)アクリレートなど]、フルオロ(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[例えば、フルオロエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、フルオロプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]、フッ素含有エポキシ樹脂、フッ素含有ウレタン系樹脂などが挙げられる。無機粒子を含有する前駆体としては、例えば、表面に重合性基を有する無機粒子(例えば、重合性基を有するシランカップリング剤で表面を修飾したシリカ粒子など)などが例示できる。表面に重合性基を有するナノサイズのシリカ粒子としては、例えば、JSR(株)製から、多官能ハイブリッド系UV硬化剤(Z7501)が市販されている。
【0117】
好ましい硬化性樹脂前駆体は、短時間で硬化できる光硬化性化合物、例えば、紫外線硬化性化合物(モノマー、オリゴマーや低分子量であってもよい樹脂など)、EB硬化性化合物である。特に、実用的に有利な樹脂前駆体は、紫外線硬化性樹脂である。さらに、繰り返しの使用(打鍵)に対する耐久性を向上させるため、光硬化性樹脂は、2官能以上(好ましくは2〜10官能、さらに好ましくは3〜8官能程度)の光硬化性化合物、特に、多官能(メタ)アクリレート、例えば、3官能以上(特に4〜8官能)の(メタ)アクリレートを含むのが好ましい。
【0118】
さらに、本発明では、硬化性樹脂前駆体は、5〜7官能(メタ)アクリレートと、3〜4官能(メタ)アクリレートとを組み合わせてもよい。両者の割合(重量比)は、例えば、前者/後者=100/0〜10/90、好ましくは99/1〜30/70、さらに好ましくは90/10〜50/50(特に80/20〜40/60)程度である。
【0119】
また、多官能(メタ)アクリレートと前記フッ素含有硬化性化合物(特に、フッ化アルキル鎖を含む(メタ)アクリレートなどのフッ素原子及び(メタ)アクリロイル基を有する単量体)とを組み合わせる場合、フッ素含有硬化性化合物の割合は、多官能(メタ)アクリレート100重量部に対して、例えば、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜1重量部、さらに好ましくは0.1〜0.5重量部程度である。
【0120】
硬化性樹脂前駆体の分子量としては、ポリマーとの相溶性を考慮して5000以下、好ましくは2000以下、さらに好ましくは1000以下程度である。
【0121】
硬化性樹脂前駆体は、その種類に応じて、硬化剤を含んでいてもよい。例えば、熱硬化性樹脂では、アミン類、多価カルボン酸類などの硬化剤を含んでいてもよく、光硬化性樹脂では光重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤としては、慣用の成分、例えば、アセトフェノン類又はプロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキシド類などが例示できる。光硬化剤などの硬化剤の含有量は、硬化性樹脂前駆体100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜8重量部(特に1〜5重量部)程度であり、3〜8重量部程度であってもよい。
【0122】
さらに、硬化性樹脂前駆体は硬化促進剤を含んでいてもよい。例えば、光硬化性樹脂は、光硬化促進剤、例えば、第三級アミン類(ジアルキルアミノ安息香酸エステルなど)、ホスフィン系光重合促進剤などを含んでいてもよい。
【0123】
少なくとも1つのポリマー及び少なくとも1つの硬化性樹脂前駆体のうち、少なくとも2つの成分が、加工温度付近で互いに相分離する組み合わせで使用される。相分離する組み合わせとしては、特に限定されないが、通常、複数のポリマー同士の組み合わせや、ポリマーと硬化性樹脂前駆体との組み合わせであり、特に、複数のポリマー同士の組み合わせが好ましい。相分離させる両者の相溶性が高い場合、溶媒を蒸発させるための乾燥過程で両者が有効に相分離せず、アンチニュートンリング層としての機能が低下する。
【0124】
なお、ポリマーと硬化性樹脂前駆体(又は硬化樹脂)とは、互いに相溶であってもよく、非相溶であってもよい。ポリマーと硬化性樹脂前駆体とが非相溶で相分離する場合に、ポリマーとして複数のポリマーを用いてもよい。複数のポリマーを用いる場合、少なくとも1つのポリマーが樹脂前駆体(又は硬化樹脂)に対して非相溶であればよく、他のポリマーは前記樹脂前駆体と相溶してもよい。
【0125】
ポリマーを互いに非相溶な複数のポリマーで構成して相分離する場合、硬化性樹脂前駆体は、非相溶な複数のポリマーのうち、少なくとも1つのポリマーと加工温度付近で互いに相溶する組合せで使用される。すなわち、互いに非相溶な複数のポリマーを、例えば、第1のポリマーと第2のポリマーとで構成する場合、硬化性樹脂前駆体は少なくとも第1のポリマー又は第2のポリマーのどちらかと相溶すればよく、好ましくは両方のポリマー成分と相溶してもよい。両方のポリマー成分に相溶する場合、第1のポリマー及び硬化性樹脂前駆体を主成分とした混合物と、第2のポリマー及び硬化性樹脂前駆体を主成分とした混合物との少なくとも二相に相分離する。
【0126】
具体的には、複数のポリマーがセルロース誘導体と重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂の組み合わせであり、かつ硬化性樹脂前駆体が多官能(メタ)アクリレートである場合、ポリマー同士が非相溶で相分離するとともに、重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂と多官能(メタ)アクリレートとの組み合わせも非相溶で相分離し、セルロース誘導体と多官能(メタ)アクリレートとが相溶であってもよい。
【0127】
選択した複数のポリマー及び硬化性樹脂前駆体の相溶性が高い場合、溶媒を蒸発させるための乾燥過程でポリマー同士又はポリマーと前駆体とが有効に相分離せず、アンチニュートンリング層としての機能が低下する。複数のポリマーや前駆体の相分離性は、双方の成分に対する良溶媒を用いて均一溶液を調製し、溶媒を徐々に蒸発させる過程で、残存固形分が白濁するか否かを目視にて確認することにより簡便に判定できる。
【0128】
さらに、ポリマーと硬化又は架橋樹脂との屈折率の差、複数のポリマーの屈折率の差(第1のポリマーと第2のポリマーとの屈折率の差)は、例えば、0.001〜0.2、好ましくは0.05〜0.15程度であってもよい。
【0129】
スピノーダル分解において、相分離の進行に伴って共連続相構造を形成し、さらに相分離が進行すると、連続相が自らの表面張力により非連続化し、液滴相構造(球状、真球状、円盤状や楕円体状などの独立相の海島構造)となる。従って、相分離の程度によって、共連続相構造と液滴相構造との中間的構造(上記共連続相から液滴相に移行する過程の相構造)も形成できる。アンチニュートンリング層の相分離構造は、海島構造(液滴相構造、又は一方の相が独立または孤立した相構造)、共連続相構造(又は網目構造)であってもよく、共連続相構造と液滴相構造とが混在した中間的構造であってもよい。これらの相分離構造により溶媒乾燥後にはアンチニュートンリング層の表面になだらかで微細な凹凸構造を形成できる。
【0130】
このように、相分離によって表面に凹凸形状を形成したアンチニュートンリング層のヘイズは、用途に応じて、0.1〜50%程度の範囲から選択でき、例えば、0.1〜30%、好ましくは0.5〜20%、さらに好ましくは1〜15%(特に2〜8%)程度である。例えば、電子ペーパーの場合、1〜30%、好ましくは5〜20%、さらに好ましくは10〜15%程度であってもよい。
【0131】
さらに、相分離を利用したアンチニュートンリング層は、粒子を配合する方法で形成したアンチニュートンリング層と異なり、層の内部で散乱を引き起こすような微粒子をアンチニュートンリング層内に含まない。このため、層の内部におけるヘイズ(層の内部で散乱を引き起こす内部ヘイズ)は低く、例えば、0〜1%程度であり、好ましくは0〜0.8%(例えば、0.01〜0.8%)、さらに好ましくは0〜0.5%(例えば、0.1〜0.5%)程度である。なお、内部ヘイズは、アンチニュートンリング層の表面凹凸を平坦化するように上から樹脂層をコートするか、透明粘着層を介して平滑な透明フィルムとアンチニュートンリング層の表面凹凸を貼り合わせて、ヘイズを測定することにより測定できる。
【0132】
前記相分離構造において、表面凹凸構造を形成し、かつ表面硬度を高める点からは、少なくとも島状ドメインを有する液滴相構造であるのが有利である。なお、ポリマーと前記前駆体(又は硬化樹脂)とで構成された相分離構造が海島構造である場合、ポリマー成分が海相を形成してもよいが、表面硬度の観点から、ポリマー成分が島状ドメインを形成するのが好ましい。なお、島状ドメインの形成により、乾燥後にはアンチニュートンリング層の表面に微細な凹凸を形成できる。
【0133】
さらに、前記相分離構造のドメイン間の平均距離は、通常、実質的に規則性又は周期性を有している。例えば、ドメインの平均相間距離は、例えば、1〜70μm(例えば、1〜40μm)、好ましくは2〜50μm(例えば、3〜30μm)、さらに好ましくは5〜20μm(例えば、10〜20μm)程度であってもよい。
【0134】
ポリマーと硬化性樹脂前駆体との割合(重量比)は、特に制限されず、例えば、前者/後者=5/95〜95/5程度の範囲から選択でき、表面硬度の観点から、好ましくは5/95〜60/40程度であり、さらに好ましくは10/90〜50/50、特に10/90〜40/60程度である。特に、ポリマーの全部又は一部にセルロース誘導体を用いる場合、ポリマーと硬化性樹脂前駆体との割合(重量比)は、例えば、前者/後者=10/90〜80/20、好ましくは20/80〜70/30、さらに好ましくは30/70〜50/50程度である。
【0135】
(2)粒子を配合したアンチニュートンリング層
粒子を配合したアンチニュートンリング層は、前記相分離を利用したアンチニュートンリング層で例示されたポリマー成分又は硬化性樹脂前駆体中に粒子を配合することにより、粒子由来の凹凸構造が形成されている。前記ポリマー成分又は硬化性樹脂前駆体としては、透明性及び機械的特性などの点から、(メタ)アクリル系重合性組成物が好ましく、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートなどが好ましい。
【0136】
粒子には、有機微粒子及び無機微粒子が含まれる。有機微粒子を構成する樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレンやスチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂など)、架橋熱可塑性樹脂[例えば、架橋オレフィン系樹脂(例えば、架橋ポリエチレン、架橋ポリプロピレンなど)、架橋スチレン系樹脂(例えば、架橋ポリスチレン、架橋ポリジビニルベンゼン、架橋ポリビニルトルエン、架橋スチレン−メタクリル酸メチル共重合体など)、架橋アクリル系樹脂(例えば、架橋ポリメタクリル酸メチルなど)など]、熱硬化性樹脂(メラミン樹脂、尿素樹脂、アミノベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンなど)などが例示できる。これらの有機微粒子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0137】
無機微粒子を構成する無機化合物としては、例えば、金属単体、金属酸化物、金属硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、金属珪酸塩(珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、アルミノ珪酸マグネシウムなど)、金属リン酸塩(リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等)、金属炭酸塩(炭酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムなど)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなど)、ケイ素化合物(ホワイトカーボン、ガラスなど)、天然鉱物(ゼオライト、ケイソウ土、焼成珪成土、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、クレーなど)などが挙げられる。
【0138】
これらの粒子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの粒子のうち、透明性やポリマー成分又は硬化性樹脂前駆体との親和性など点から、(架橋)スチレン系樹脂粒子、(架橋)アクリル系樹脂粒子、ポリカーボネート粒子などが好ましい。
【0139】
粒子の形状は、特に限定されず、球状、楕円体状、多角体形(多角錘状、正方体状、直方体状など)、板状、棒状、不定形などが挙げられるが、表面に均一な凹凸構造を形成する点から、略球状などの等方形状が好ましい。
【0140】
粒子の屈折率は、ポリマー成分又は硬化性樹脂前駆体の種類に応じて選択できるが、例えば、1.40〜1.60、好ましくは1.42〜1.59、さらに好ましくは1.45〜1.58程度であってもよい。
【0141】
粒子の平均粒径は、例えば、0.1〜10μm、好ましくは1〜8μm、さらに好ましくは2〜6μm(特に3〜5μm)程度である。
【0142】
粒子の割合は、ポリマー成分又は硬化性樹脂前駆体中100重量部に対して、例えば、1〜50重量部、好ましくは3〜40重量部、さらに好ましくは5〜30重量部(特に10〜20重量部)程度である。
【0143】
粒子を配合したアンチニュートンリング層は、溶融混練や溶媒を用いて混合する方法などの慣用の方法で製造でき、例えば、特開平6−18706号公報に記載の製造方法で製造してもよい。
【0144】
本発明では、前記アンチニュートンリング層のうち、均一で滑らかな凹凸形状を形成でき、アンチニュートンリング性に優れる点から、相分離を利用したアンチニュートンリング層が特に好ましい。
【0145】
アンチニュートンリング層には、種々の添加剤、例えば、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、界面活性剤、水溶性高分子、充填剤、架橋剤、カップリング剤、難燃剤、滑剤、ワックス、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤などが含まれていてもよい。
【0146】
アンチニュートンリング層の厚み(凹凸形状における凸部の頂点との間の厚み)は、例えば、0.3〜20μm程度、好ましくは1〜18μm(例えば、3〜16μm)程度であってもよく、通常、4〜15μm(特に5〜13μm)程度である。なお、アンチニュートンリング層以外の機能層の厚みも同程度の厚みであってもよい。本発明では、後述するように、コーティングにより積層フィルムを形成でき、密着性にも優れるため、アンチニュートンリング層やハードコート層などの機能層の厚みを大きくできるため、タッチパネルなどの視認性を向上できる。
【0147】
(透明導電層)
透明導電層は、透明電極として利用されている慣用の透明導電層を利用でき、導電性無機化合物で構成された透明導電層、導電性ポリマーで構成された透明導電層のいずれの導電層であってもよい。
【0148】
(1)導電性無機化合物で構成された透明導電層
導電性無機化合物としては、例えば、金属酸化物[例えば、酸化インジウム(InO2、In2O3、In2O3−SnO2複合酸化物(ITO)など)、酸化錫(SnO2、SnO2−Sb2O5複合酸化物、フッ素ドープ酸化錫(FTO)など)、酸化亜鉛(ZnO、ZnO−Al2O3複合酸化物など)]、金属(例えば、金、銀、白金、パラジウム)などが挙げられる。これらの導電性無機化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの導電性無機化合物のうち、ITO膜などの金属酸化物が汎用される。
【0149】
導電性無機化合物で構成された透明導電層は、慣用の方法、例えば、スパッタリング、蒸着、化学的気相成長法など(通常、スパッタリング)により形成できる。このような透明導電層は、例えば、特開2009−76544号公報、特許4165173号公報、特開2004−149884号公報に記載の透明導電層であってもよい。
【0150】
導電性無機化合物で構成された透明導電層の表面抵抗は、例えば、10〜1000Ω、好ましくは15〜500Ω、さらに好ましくは20〜300Ω程度であってもよい。
【0151】
導電性無機化合物で構成された透明導電層の厚みは、特に限定されず、1〜1000nm、好ましくは5〜500nm、さらに好ましくは10〜400nm(特に20〜300nm)程度であってもよい。
【0152】
本発明では、透明導電層が導電性無機化合物で形成されていても、タッチパネルにおける打鍵耐久性や摺動耐久性を向上できる。
【0153】
(2)導電性ポリマーで構成された導電層
導電性ポリマーとしては、透明でかつ導電性を有する共役系高分子物質であれば特に限定されず、慣用の導電性ポリマー、例えば、ポリアセチレン系重合体(例えば、ポリアセチレンなど)、ポリチオフェン系重合体(例えば、ポリチオフェンなど)、ポリフェニレン系重合体(例えば、ポリパラフェニレンなど)、ポリピロール系重合体(例えば、ポリピロールなど)、ポリアニリン系重合体(例えば、ポリアニリンなど)、アクリル系重合体で変性されたポリエステル系重合体(例えば、イソブチルメタクリレートとブチルアクリレートとの共重合体で変性された高重合度のポリエステル系重合体など)などが挙げられる。これらの導電性ポリマー単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。例えば、ポリチオフェン系重合体とアクリル系重合体で変性されたポリエステル系重合体とを組み合わせてもよい。これらの導電性ポリマーのうち、水性溶媒に可溶で取り扱い性に優れる点から、ポリチオフェン系重合体、ポリピロール系重合体、ポリアニリン系重合体が汎用され、導電性、化学的安定性及び透明性に優れる点から、ポリチオフェン系重合体が好ましい。
【0154】
ポリチオフェン系重合体は、通常、ポリ(チオフェン−2,5−ジイル)単位を有している。チオフェンは置換体(通常、3位及び/又は4位の置換体)であってもよい。置換チオフェンとしては、例えば、モノアルキルチオフェン(例えば、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ヘキシルチオフェンなどのC1−10アルキル−チオフェンなど)、3,4−ジヒドロキシチオフェン、ジアルコキシチオフェン(例えば、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェンなどのジC1−6アルコキシ−チオフェンなど)、アルキレンジオキシチオフェン(例えば、3,4−メチレンジオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェンなどのC1−4アルキレンジオキシチオフェンなど)、シクロアルキレンジオキシチオフェン[例えば、3,4−(1,2−シクロヘキシレン)ジオキシチオフェンなどのC5−12シクロアルキレン−ジオキシチオフェンなど]などが挙げられる。なお、アルキレンジオキシチオフェン及びシクロアルキレンジオキシチオフェンは、アルキレン基及びシクロアルキレン基が、さらに、メチル基やエチル基などのC1−12アルキル基やフェニル基などのC5−12アリール基などで置換されていてもよい。これらのチオフェン又は置換チオフェンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのチオフェン及び置換チオフェンのうち、通常、チオフェン、3−ヘキシルチオフェンなどのモノアルキルチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェンなどのアルキレンジオキシチオフェン、3,4−(1,2−シクロヘキシレン)ジオキシチオフェンなどのシクロアルキレンジオキシチオフェンなどが使用され、成形性や導電性などの点から、3,4−エチレンジオキシチオフェンなどの3,4−アルキレンジオキシチオフェンや3,4−ジエトキシチオフェンなどの3,4−ジアルコキシ−チオフェン、特に、3,4−C1−4アルキレンジオキシチオフェンが好ましい。また、ポリチオフェン系重合体は、このようなチオフェン単位とビニレン単位とを有する共重合体であってもよい。
【0155】
ポリチオフェン系重合体としては、具体的には、ポリチオフェン、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)などのポリ(3−C1−8アルキル−チオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ[3,4−(1,2−シクロヘキシレン)ジオキシチオフェン]などのポリ(3,4−(シクロ)アルキレンジオキシチオフェン)、ポリチエニレンビニレンなどが挙げられる。
【0156】
導電性ポリマーで構成された透明導電層には、さらにアニオン性重合体が含まれていてもよい。特に、導電性ポリマーは、重合工程でアニオン性重合体の存在下、重合される。例えば、ポリチオフェン系重合体は、通常、アニオン性重合体の存在下で酸化重合されるため、アニオン性重合体と組み合わせて用いることができる。
【0157】
アニオン性重合体としては、カルボキシル基及びスルホン酸基から選択された少なくとも一種のアニオン性基又はその塩を有する重合体、例えば、カルボキシル基又はその塩を有する重合体[例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸−無水マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体などの(メタ)アクリル酸系重合体又はその塩など]、スルホン酸基又はその塩を有する重合体(例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸など)、カルボキシル基及びスルホン酸基又はそれらの塩を有する重合体[例えば、(メタ)アクリル酸−スチレンスルホン酸共重合体など]などが挙げられる。アニオン性重合体の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミンなどのアルキルアミン、アルカノールアミンなどの有機アミン塩などが挙げられる。これらのアニオン性重合体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのアニオン性重合体のうち、スルホン酸基を有する重合体、例えば、ポリスチレンスルホン酸などが好ましい。
【0158】
アニオン性重合体の数平均分子量は、例えば、1000〜2,000,000、好ましくは2000〜1,000,0000、さらに好ましくは2000〜500,000程度である。
【0159】
アニオン性重合体の割合は、導電性ポリマー100重量部に対して、例えば、10〜2000重量部、好ましくは30〜1000重量部、さらに好ましくは50〜500重量部(特に100〜300重量部)程度である。
【0160】
導電性ポリマーで構成された透明導電層には、前記相分離層と同様の種々の添加剤が含まれていてもよい。特に、界面活性剤やシランカップリング剤などが含まれていてもよい。
【0161】
導電性ポリマーで構成された透明導電層の厚みは、例えば、0.01〜1μm、好ましくは0.01〜0.5μm、さらに好ましくは0.03〜0.3μm(特に0.05〜0.2μm)程度である。
【0162】
(他の機能層)
本発明の導電性積層フィルムは、基材のフィルムの他方の面に、他の機能層(第2の機能層)が形成されていてもよい。他の機能層としては、慣用の機能層、例えば、ハードコート層、光散乱層、防眩層、反射防止層、低屈折率層などが挙げられる。これらの機能層のうち、ハードコート層や防眩層などが汎用される。ハードコート層としては、前記クッション層で例示されたウレタン(メタ)アクリレート及び/又は重合性ビニル系成分を含む組成物の硬化物のうち、前記クッション層よりもガラス転移温度の高い硬化物などを利用でき、タッチパネルに要求される透明性、柔軟性(フレキシブル性)、耐擦傷性を兼ね備える点から、ウレタン(メタ)アクリレートを含む重合性組成物が特に好ましい。特に蒸着の場合に透明基材からオリゴマー成分がフィルム表面にマイグレーション(析出)することを防止するために、両面にハードコート層を設けるのが好ましい。また、防眩層としては、前記アンチニュートンリング層を防眩層として形成してもよい。
【0163】
他の機能層の厚みは、前記第1の機能層と同じ厚みであってもよく、例えば、0.3〜2μm程度、好ましくは1〜18μm(例えば、3〜16μm)程度であってもよく、通常、2〜12μm(特に5〜10μm)程度である。
【0164】
(透明導電性積層フィルムの特性)
本発明の透明導電性積層フィルムは、高い透明性と柔軟性とを両立している。透明導電性積層フィルムの全光線透過率は、例えば、80〜100%、好ましくは85〜95%、さらに好ましくは87〜92%(特に89〜91%)程度である。ヘイズは、0.1〜10%程度の範囲から選択でき、例えば、0.1〜5%、好ましくは0.2〜3%、さらに好ましくは0.5〜2.5%程度である。
【0165】
本発明の透明導電性積層フィルムは、柔軟性に優れ、透明導電層を形成する前の第1の機能層側の表面(視認側の表面又は第1の機能層の表面)におけるマルテンス硬さは100N/mm2以下であり、例えば、5〜80N/mm2、好ましくは10〜50N/mm2、さらに好ましくは15〜40N/mm2(特に20〜30N/mm2)程度である。一方、基材フィルムの他方の面(裏面)側の表面(第2の機能層又は透明基材フィルムの表面)におけるマルテンス硬さは、例えば、100〜300N/mm2、好ましくは120〜250N/mm2、さらに好ましくは150〜220N/mm2(特に160〜200N/mm2)程度であってもよい。
【0166】
透明導電層を形成する前の第1の機能層側の表面における押し込み深さは、例えば、3μm以上であり、例えば、3〜15μm、好ましくは4〜10μm、さらに好ましくは4.5〜8μm(特に5〜7μm)程度である。一方、基材フィルムの他方の面側の表面における押し込み深さは、例えば、0.5〜10μm、好ましくは1〜8μm、さらに好ましくは1.5〜5μm(特に2〜3μm)程度である。
【0167】
さらに、第1の機能層として、相分離構造を有するアンチニュートンリング層を形成した場合、相分離構造において、ドメインの平均相間距離は実質的に規則性又は周期性を有している。そのため、透明導電性積層フィルムに入射して透過する光は、相間平均距離(又は表面凹凸構造の周期性)に対応したブラッグ反射により、直進透過光とは離れた特定角度に散乱光極大を示す。すなわち、アンチニュートンリング層を有する透明導電性積層フィルムは、入射光を等方的に透過して散乱又は拡散するものの、散乱光(透過散乱光)は、散乱中心からシフトした散乱角[例えば、0.1〜10°、好ましくは0.2〜8°、さらに好ましくは0.3〜5°(特に、0.5〜2°)程度]で光強度の極大値を示す。従って、直進透過光のプロファイルに対して表面凹凸による散乱光が悪影響を及ぼすことがなく、従来の微粒子分散型のアンチニュートンリング層とは異なり、ニュートンリングを抑制するとともに、表示装置の画像に対してギラツキも解消できる。
【0168】
透過光散乱強度の極大値の判定としては、散乱光強度の角度分布プロファイルにおいて、ピーク状に分離した場合に加えて、ショルダー状ピークや平坦状ピークである場合も極大値を有するとみなして、その角度をピーク角度とできる。
【0169】
なお、アンチニュートンリング層を有する積層フィルムを透過した光の角度分布は、図1に示すように、He−Neレーザなどのレーザ光源1と、ゴニオメーターに設置した光受光器4を備えた測定装置を用いて測定できる。なお、この例では、レーザ光源1からのレーザ光をNDフィルタ2を介して試料3に照射し、試料からの散乱光を、レーザ光の光路に対して散乱角度θで変角可能であり、かつ光電子増幅管を備えた検出器(光受光器)4により検出し、散乱強度と散乱角度θとの関係を測定している。
【0170】
また、タッチパネルの下部に配設される表示装置の表示部におけるギラツキや文字ボケの評価は、目視による蛍光灯の映りこみによる評価、及びJlS K7105に従ってグロスメーターを用いて評価できる。さらに、ギラツキ及び文字ボケの評価は、解像度200ppi程度の高精細液晶表示装置を用いて評価でき、より簡単には高精細CRTディスプレイ装置や150ppi程度の液晶用カラーフィルターとバックライトとを組み合わせた簡易評価装置を用いて目視にて評価できる。
【0171】
本発明の透明導電性積層フィルムの透過像鮮明度は、0.5mm幅の光学櫛を使用した場合、例えば、50〜l00%、好ましくは60〜99%、さらに好ましくは65〜90%程度である。透過像鮮明度が前記範囲にあると、直進透過光の散乱が少ないため、タッチパネルを高精細表示装置の上に配設した場合であっても、各々の画素からの散乱が少なくなり、その結果ギラツキを防止できる。
【0172】
透過像鮮明度とは、フィルムを透過した光のボケや歪みを定量化する尺度である。透過像鮮明度は、フィルムからの透過光を移動する光学櫛を通して測定し、光学櫛の明暗部の光量により値を算出する。すなわち、フィルムが透過光をぼやかす場合、光学櫛上に結像されるスリットの像は太くなるため、透過部での光量は100%以下となり、一方、不透過部では光が漏れるため0%以上となる。透過像鮮明度の値Cは光学櫛の透明部の透過光最大値Mと不透明部の透過光最小値mから次式により定義される。
【0173】
C(%)=[(M−m)/(M+m)]×100
すなわち、Cの値が100%に近づく程、ニュートンリング防止フィルムによる像のボケが小さい[参考文献;須賀、三田村,塗装技術,1985年7月号]。
【0174】
本発明の透明導電性積層フィルムは、さらに他の光学要素(例えば、偏光板、位相差板、導光板などの光路内に配設される種々の光学要素)と組み合わせてもよい。すなわち、光学要素の少なくとも一方の光路面に前記透明導電性積層フィルムを配設又は積層してもよい。例えば、前記位相差板の少なくとも一方の面に前記積層フィルムを積層してもよく、導光板の出射面に電極基板を配設又は積層してもよい。偏光板や位相差フィルムと組み合わされた透明導電性積層フィルムは、反射防止機能を有するインナー型タッチパネルに好適に利用できる。
【0175】
[透明導電性積層フィルムの製造方法]
本発明の透明導電性積層フィルムは、基材フィルムの上に、各層をコーティングして製造することを特徴としている。従って、本発明では、貼り合わせ(ラミネート)することなく、積層フィルムを製造するため、簡便な方法で、異物や気泡の混入しない積層フィルムを得ることができる。
【0176】
本発明の透明導電性積層フィルムは、慣用の方法を利用して製造でき、積層順序も特に限定されず、積層構造に応じて、基材フィルムに対して各層を形成すればよい。第2の機能層を形成する場合、例えば、基材フィルムに第2の機能層を形成した後にクッション層、第1の機能層、透明導電層を順次形成する方法であってもよく、基材フィルムにクッション層、第1の機能層、透明導電層を順次形成した後に第2の機能層を形成する方法であってもよい。
【0177】
(クッション層)
クッション層は、基材フィルムの上にウレタン(メタ)アクリレートを含む重合性組成物を塗布する塗布工程、塗布された前記重合性組成物に活性エネルギー線を照射して硬化する硬化工程を経て製造される。
【0178】
重合性組成物の塗布方法としては、慣用の方法、例えば、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースコーター、バーコーター、コンマコーター、ディップ・スクイズコーター、ダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、シルクスクリーンコーター法、ディップ法、スプレー法、スピナー法などが挙げられる。これらの方法のうち、バーコーター法やグラビアコーター法などが汎用される。なお、必要であれば、塗布液は複数回に亘り塗布してもよい。
【0179】
重合性組成物が有機溶媒を含有する場合など、塗布後は、必要に応じて乾燥を行ってもよい。乾燥は、例えば、50〜150℃、好ましくは60〜140℃、さらに好ましくは70〜130℃程度の温度で行ってもよい。
【0180】
硬化工程において、重合性組成物は、重合開始剤の種類に応じて加熱して硬化させてもよいが、通常、活性エネルギー線を照射することにより硬化できる。活性エネルギー線として、熱及び/又は光エネルギー線を利用でき、特に光エネルギー線を利用するのが有用である。光エネルギー線としては、放射線(ガンマー線、X線など)、紫外線、可視光線、電子線(EB)などが利用でき、通常、紫外線、電子線である場合が多い。特に、重合開始剤を使用せずに重合ができ、高い耐候性を有するシートを製造する場合には、電子線で照射してもよい。
【0181】
光源としては、例えば、紫外線の場合は、Deep UV ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、レーザー光源(ヘリウム−カドミウムレーザー、エキシマレーザーなどの光源)などを用いることができる。照射光量(照射エネルギー)は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば、50〜10000mJ/cm2、好ましくは70〜7000mJ/cm2、さらに好ましくは100〜5000mJ/cm2程度であってもよい。
【0182】
電子線の場合は、電子線照射装置などの露光源によって、電子線を照射する方法が利用できる。照射量(線量)は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば、1〜200kGy(グレイ)、好ましくは5〜150kGy、さらに好ましくは10〜100kGy(特に20〜80kGy)程度である。加速電圧は、例えば、10〜1000kV、好ましくは50〜500kV、さらに好ましくは100〜300kV程度である。
【0183】
なお、活性エネルギー線(特に電子線)の照射は、必要であれば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなど)雰囲気中で行ってもよい。
【0184】
(第1の機能層)
第1の機能層として、相分離を利用したアンチニュートンリング層を形成する場合、アンチニュートンリング層は、ポリマーと硬化性樹脂前駆体と溶媒とを含む液相(又は液状組成物)から、前記溶媒の蒸発に伴うスピノーダル分解により、相分離構造を形成する相分離工程と、前記硬化性樹脂前駆体を硬化させ、アンチニュートンリング層を形成する硬化工程とを経て製造できる。
【0185】
前記相分離工程は、通常、前記ポリマーと硬化性樹脂前駆体と溶媒とを含む混合液(特に均一溶液などの液状組成物)を前記支持体に塗布又は流延する工程と、塗布層又は流延層から溶媒を蒸発させて規則的又は周期的な平均相間距離を有する相分離構造を形成する工程とで構成されている。好ましい態様では、前記混合液として、前記熱可塑性樹脂と、光硬化性化合物と、光重合開始剤と、前記熱可塑性樹脂及び光硬化性化合物を可溶な溶媒とを含む組成物が使用でき、スピノーダル分解により形成された相分離構造の光硬化成分を光照射により硬化することによりアンチニュートンリング層が形成される。また、他の好ましい態様では、前記混合液として、前記互いに非相溶な複数のポリマーと、光硬化性化合物と、光重合開始剤と、溶媒とを含む組成物が使用でき、スピノーダル分解により形成された相分離構造の光硬化成分を光照射により硬化することによりアンチニュートンリング層が形成される。
【0186】
湿式スピノーダル分解において、溶媒は、前記ポリマー及び硬化性樹脂前駆体の種類及び溶解性に応じて選択でき、少なくとも固形分(複数のポリマー及び硬化性樹脂前駆体、反応開始剤、その他添加剤)を均一に溶解できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1−メトキシ−2−プロパノール)など)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)などが例示できる。また、溶媒は混合溶媒であってもよい。
【0187】
これらの溶媒のうち、常圧で沸点100℃以上の溶媒を用いるのが好ましい。さらに、表面に微細で規則的な凹凸構造を形成する点から、溶媒が少なくとも2種類の沸点の異なる溶媒で構成されているのが好ましい。また、高沸点の溶媒の沸点は100℃以上であり、通常、100〜200℃程度であり、好ましくは105〜150℃、さらに好ましくは110〜130℃程度である。特に、沸点100℃以上の溶媒を少なくとも1種と、沸点100℃未満の溶媒を少なくとも1種とを組み合わせて用いるのが好ましい。このような混合溶媒を用いると、低沸点の溶媒が、蒸発に伴う上層と下層との温度差を発生させ、高沸点の溶媒が塗膜中に残留し、流動性を維持する。
【0188】
常圧で沸点100℃以上の溶媒としては、例えば、アルコール類(ブタノール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコールなどのC4−8アルキルアルコールなど)、アルコキシアルコール類(メトキシプロパノール、ブトキシエタノールなどのC1−6アルコキシC2−6アルキルアルコールなど)、アルキレングリコール類(エチレングリコールやプロピレングリコールなどのC2−4アルキレングリコールなど)、ケトン類(シクロヘキサノンなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ブタノールなどのC4−8アルキルアルコール、メトキシプロパノールやブトキシエタノールなどのC1−6アルコキシC2−6アルキルアルコール、エチレングリコールなどのC2−4アルキレングリコールなどが好ましい。
【0189】
沸点の異なる溶媒の比率としては、特に限定されないが、沸点100℃以上の溶媒と、沸点100℃未満の溶媒を併用した場合(それぞれ、2種以上併用した場合は合計の重量比として)、例えば、前者/後者=10/90〜70/30、好ましくは10/90〜50/50、さらに好ましくは15/85〜40/60(特に20/80〜40/60程度)である。
【0190】
また、混合液又は塗布液を基材フィルムに塗布する場合、基材フィルムの種類に応じて、基材フィルムを溶解や侵食、又は膨潤させない溶媒を選択してもよい。例えば、基材フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルムを用いる場合、混合液又は塗布液の溶媒として、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、イソプロパノール、トルエンなどを用いると、フィルムの性質を損なうことなく、積層フィルムを形成できる。
【0191】
混合液中の溶質(ポリマー及び硬化性樹脂前駆体、反応開始剤、その他添加剤)の濃度は、相分離が生じる範囲及び流延性やコーティング性などを損なわない範囲で選択でき、例えば、1〜80重量%、好ましくは5〜60重量%、さらに好ましくは15〜40重量%(特に15〜35重量%)程度である。
【0192】
塗布方法としては、前述のクッション層の塗布方法と同様の方法を利用できる。前記混合液を流延又は塗布した後、溶媒の沸点よりも低い温度(例えば、溶媒の沸点よりも1〜120℃、好ましくは5〜80℃、さらに好ましくは10〜60℃、特に10〜50℃程度低い温度)で溶媒を蒸発させることにより、スピノーダル分解による相分離を誘起することができる。溶媒の蒸発は、通常、乾燥、例えば、溶媒の沸点に応じて、例えば、30〜200℃(例えば、30〜100℃)、好ましくは40〜120℃、さらに好ましくは50〜80℃程度の温度で乾燥させることによリ行うことができる。
【0193】
表面に微細な凹凸構造を形成するためには、基材フィルム上に塗布して流延又は塗布させた後、直ちにオーブンなどのなどの乾燥機に投入して乾燥させるのではなく、一定時間(例えば、1秒〜1分間、好ましくは3〜30秒間、さらに好ましくは5〜20秒間程度)、常温又は室温(例えば、0〜40℃、好ましくは5〜30℃程度)で放置した後に、乾燥機に投入してもよい。また、乾燥風量は、特に限定されないが、風量が強すぎると、凹凸構造が形成される前に乾燥して固化するため、乾燥風量は50m/分以下(例えば、1〜50m/分)、好ましくは1〜30m/分、さらに好ましくは1〜20m/分程度であってもよい。
【0194】
このような溶媒の蒸発を伴うスピノーダル分解により、相分離構造のドメイン間の平均距離に規則性又は周期性を付与できる。
【0195】
スピノーダル分解により形成された相分離構造は、硬化工程において、前駆体を硬化させることにより直ちに固定化できる。前駆体の硬化は、硬化性樹脂前駆体の種類に応じて、加熱、光照射など、あるいはこれらの方法の組合せにより行うことができる。加熱温度は、前記相分離構造を有する限り、適当な範囲、例えば、50〜150℃程度から選択でき、前記相分離工程と同様の温度範囲から選択してもよい。光照射は、前述のクッション層の照射方法と同様の方法を利用できる。硬化方法も、クッション層と同様に、紫外線、電子線である場合が多い。
【0196】
なお、第1の機能層として、粒子を配合したアンチニュートンリング層、ハードコート層、低屈折率層などを形成する場合、クッション層と同様の方法で形成できる。さらに、第2の機能層を形成する場合、第2の機能層も、第1の機能層と同様の方法で製造できる。
【0197】
(透明導電層)
導電性無機化合物で構成された透明導電層は、金属又は金属化合物を含む薄膜を形成可能な方法であれば、特に限定されず、慣用の成膜方法を利用して形成できる。成膜方法としては、例えば、物理的気相法(PVD)[例えば、真空蒸着法、フラッシュ蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビーム蒸着法、イオンプレーティング法(例えば、HCD法、エレクトロンビームRF法、アーク放電法など)、スパッタリング法(例えば、直流放電法、高周波(RF)放電法、マグネトロン法など)、分子線エピタキシー法、レーザーアブレーション法など]、化学的気相法(CVD)[例えば、熱CVD法、プラズマCVD法、MOCVD法(有機金属気相成長法)、光CVD法など]、イオンビームミキシング法、イオン注入法などが例示できる。これらの成膜方法のうち、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの物理的気相法、化学的気相法などが汎用され、スパッタリング法、プラズマCVD法(特にスパッタリング法)が好ましい。
【0198】
導電性ポリマーで構成された透明導電層は、導電性ポリマーを含有する液状組成物を塗布して乾燥することにより製造できる。透明導電層の形成工程では、第1の機能層の上に、透明導電層の塗布液(導電性ポリマーを含有する液状組成物)を塗布することにより製造できる。透明導電層の塗布液の塗布又は流延には、クッション層と同様の慣用の塗布手段などが利用できる。本発明では、塗布液を第1の機能層の上に塗布した後、通常、塗布層を乾燥することにより透明導電層を形成できる。
【0199】
液状組成物における溶媒は、導電性ポリマーの種類に応じて選択でき、例えば、ポリチオフェン系重合体の場合、水又は水性溶媒であってもよい。水性溶媒(特に水混和性溶媒)としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、ニトリル類(アセトニトリルなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなど)、カルビトール類などと水との混合溶媒であってもよい。親水性溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。本発明では、通常、水単独で、又は水とアルコール類との混合溶媒として使用される。特に、機能層との密着性を向上させるため、少なくともイソプロパノールなどの低級アルコールで構成された溶媒を使用してもよい。
【0200】
液状組成物中における導電性ポリマーの濃度は、例えば、0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、さらに好ましくは0.1〜2重量%(特に0.3〜1重量%)程度である。
【0201】
なお、透明導電層は、タッチパネルの種類に応じて、通常、アナログ方式では面状に形成され、デジタル方式ではストライプ状に形成される。透明導電層を面状又はストライプ状に形成する方法としては、例えば、第1の機能層の全面に透明導電層を形成した後、エッチングにより面状又はストライプ状にパターン化する方法、予めパターン状に形成する方法などが挙げられる。
【0202】
[タッチパネル]
本発明のタッチパネル(特に抵抗膜方式タッチパネル)は、前記透明導電性積層フィルムを上部透明電極基板(視認側の透明電極)として備えている。図2は、本発明のタッチパネルの一例を示す概略断面図である。このタッチパネル10は、上部電極基板11と下部電極基板13とがスペーサー12を介して積層されており、上部電極基板11の透明導電層11aと下部電極基板13の透明導電層13aとが対向し、液晶パネル20の上に配設されている。
【0203】
上部電極基板11は、透明プラスチックフィルムで構成された透明基材フィルム11dの一方の面(パネル表側、視認側又は上部の面)にハードコート層11eが形成され、他方の面(パネル裏側又は下部の面)にクッション層11cが形成されている。クッション層11cの表面(パネル裏側又は下部の面)には、相分離を利用したアンチニュートンリング層11bが形成されている。アンチニュートンリング層11bの表面(パネル裏側又は下部の面)には前記透明導電層11aが形成されており、アンチニュートンリング層11bの表面が均一で規則的な凹凸構造を有するため、透明導電層11aの表面もアンチニュートンリング層11bの凹凸構造に追従した凹凸構造を有している。上部電極基板11は、指やペンなどの押圧部材によって押圧することより、透明導電層11aが撓んで下部電極基板13の透明導電層13aと接触して導通し、位置検出が行われる。本発明では、クッション層11cが高い柔軟性及び密着性を有しているため、上部電極基板11を繰り返し押圧しても、透明導電層11aの劣化を抑制できる。さらに、この透明導電性積層フィルムでは、上部透明電極11の透明導電層11aの表面がアンチニュートンリング層11bに追随して均一な凹凸構造を有しているため、上部透明電極11を押圧しても、上部透明電極11とスペーサー12によって形成された空間(空気層)との界面反射光の干渉によるニュートンリングの発生を抑制できる。なお、アンチニュートンリング層11bの代わりに、ハードコート層などの他の機能を形成してもよい。
【0204】
スペーサー12は、透明樹脂で構成されており、タッチパネルの非押圧時に上部電極基板11と下部電極基板13とを非接触状態に保持するため、透明導電層11a及び13aの表面でパターン化された点状又はドット状に形成されている。このようなスペーサー12は、通常、硬化性樹脂前駆体の項で例示された光硬化性化合物などを用いて光照射に対するマスクを利用したパターニングにより形成される。スペーサーは形成しなくてもよく、形成する場合には、例えば、隣接するスペーサー同士の間隔を、例えば、0.1〜20mm(特に1〜10mm)程度に調整してもよい。スペーサーの形状は、特に限定されず、円柱状、四角柱状、球状などであってもよい。スペーサーの高さは、例えば、1〜100μm程度であり、通常、3〜50μm(特に5〜20μm)程度である。スペーサーの平均径は、例えば、1〜100μm程度であり、通常、10〜80μm(特に20〜50μm)程度である。
【0205】
下部電極基板13は、前記スペーサー12を介在させて、上部電極基板11の下部に配設されており、ガラスで構成された透明基板13dの一方の面(パネル表側又は上部の面)に、透明導電層13aが形成され、他方の面(パネル裏側又は下部の面)にハードコート層13eが形成されている。下部電極基板13の透明導電層13aの表面は平滑であるが、上部電極基板11と同様に、アンチニュートンリング層を形成し、表面に凹凸構造を形成してもよい。上部電極基板11及び下部電極基板13の双方にアンチニュートンリング層を形成することにより、アンチニュートンリング効果を向上させてもよい。一方、上部電極基板11に凹凸構造を形成することなく、下部電極基板13にアンチニュートンリング層を形成してもよい。アンチニュートンリング効果とタッチパネルの下部に配設する表示装置の視認性とを両立できる点からは、一方の電極基板(特に上部電極基板)にアンチニュートンリング層を形成するのが好ましい。透明基板13dは、上部電極基板の透明基板11dとは異なり、可撓性は必要ないため、ガラス基板などの非可撓性材料であってもよいが、透明基板11dと同様の可撓性を有する透明プラスチックフィルムであってもよい。
【0206】
このような上下電極基板を備えたタッチパネル10は、液晶表示(LCD)装置である液晶パネル20の上に配設されている。本発明では、前記クッション11cは柔軟性に優れるとともに、透明性にも優れるため、透明導電層11aの劣化を抑制しつつ、液晶パネル20の視認性をも向上できる。さらに、アンチニュートンリング層11bは、透過光を等方的に透過して散乱させながら、特定の角度範囲での光散乱強度を向上できるため、ニュートンリングの防止だけでなく、液晶パネル20の視認性をも向上できる。具体的には、液晶パネルの表示部におけるギラツキを抑制できるとともに、透過像の鮮明性に優れ、表示面での文字ボケを抑制できる。
【0207】
なお、液晶表示装置は、外部光を利用して、液晶セルを備えた表示ユニットを照明する反射型液晶表示装置であってもよく、表示ユニットを照明するためのバックライトユニットを備えた透過型液晶表示装置であってもよい。前記反射型液晶表示装置では、外部からの入射光を、表示ユニットを介して取り込み、表示ユニットを透過した透過光を反射部材により反射して表示ユニットを照明できる。反射型液晶表示装置では、前記反射部材から前方の光路内に、偏光板と透明導電性積層フィルムとを組み合わせたタッチパネルを配設してもよい。
【0208】
透過型液晶表示装置において、バックライトユニットは、光源(冷陰極管などの管状光源,発光ダイオードなどの点状光源など)からの光を一方の側部から入射させて前面の出射面から出射させるための導光板(例えば、断面楔形状の導光板)を備えていてもよい。また、必要であれば、導光板の前面側にはプリズムシートを配設してもよい。
【0209】
タッチパネルの下部に配設する表示装置は、液晶表示装置に限定されず、プラズマディスプレイ装置、有機又は無機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置などの表示装置であってもよい。
【実施例】
【0210】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例で得られたクッション層及び積層フィルムを以下の項目で評価した。
【0211】
[ヘイズ(HZ)及び全光線透過率(TT)]
透明積層フィルム(透明導電層を形成する前の積層フィルム)についてヘイズメーター(日本電色(株)製、商品名「NDH−5000W」)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。
【0212】
[引張試験]
重合性組成物をPETフィルム上にシリコンコートされている離型フィルム上に塗布厚み100μm見当で塗布し、加速電圧200kV及び照射線量50kGyの電子線を照射して硬化させ、離型フィルムから剥がして得られた硬化物を用いて、JIS K7113に準拠し、7号形ダンベル試験片に打ち抜き、温度25℃、湿度50%RHの試験環境にて、引張圧縮試験機(オリエンテック(株)製、テンシロンUCT−5T)を用い、引張り速度2mm/分の条件で測定した応力−ひずみ曲線を得た。得られた応力−ひずみ曲線から、引張弾性率を求めた。
【0213】
[ガラス転移温度(Tg)]
上記引張試験と同様にして得られた硬化物について、動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製、RSA−III)を用い、昇温速度及び角周波数の条件で、損失弾性率(E′′)を測定した。E′′の極大から、ガラス転移温度を求めた。
【0214】
[色相:b*値]
透明積層フィルム(透明導電層を形成する前の積層フィルム)について分光光度計((株)日立ハイテクフィールディング製、「U−3300」)を用い、JIS K7105に準拠して透過モードにてb*値を測定した。
【0215】
[線膨張率]
上記引張試験と同様にして得られた硬化物から試験片を切り出し、測定試料とした。この測定試料を、熱・応力・歪測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「TMA/SS6100」)を用いて、以下の測定条件で、−90℃から150℃までの線膨張率(変位)を求めた。
【0216】
[クッション性]
得られた透明積層フィルム(透明導電層を形成する前の積層フィルム)に対して、微小硬度計(フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて、測定条件を荷重F=20mN/10秒、最大試験荷重20mNに設定して、マルテンス硬さ(HM)及び最大押し込み深さ(hmax)を測定した。
【0217】
[打鍵耐久性]
得られた透明導電性積層フィルムを上部電極基板とした。さらに、基板としてガラス基板を用い、同様のITO処理を行って透明導電層を設けることにより、下部電極基板を作製した。下部電極基板の透明導電層の上に、光硬化性アクリル樹脂(デュポン(株)製、リストン)を塗布して層を設け、パターニングして紫外線露光することによりドットスペーサーを形成した。このドットスペーサーは、高さ8μm、直径30μmの円柱で、スペーサー間隔は3mmとした。なお、両端部には、銀ペーストと銅テープで形成された電極と、両面テープで形成されたスペーサー(高さ86μm)を配設した。このようにして作製した上部電極基板と下部電極基板とを透明電極層が対向するように配置することにより、タッチパネルを構成した。このタッチパネルについて、打鍵試験機((株)タッチパネル研究所製「201型−300−3」)を用いて打鍵耐久性を評価した。前記打鍵試験機は、タッチペンとしてポリアセタールペン(0.8mmφ)を備え、上部電極基板をタッチペンで打鍵し、下部電極基板と接触させる打鍵を繰り返して、負荷電圧による波形を検出して、打鍵耐久性を評価する試験機であり、以下の条件で測定した。
【0218】
打鍵荷重:400g
打鍵速度:10回/秒(Hz)
打鍵回数:50万回〜480万回
打鍵部分:スペーサー(両面テープ)の端部から1mmの部分を打鍵。
【0219】
[摺動耐久性]
打鍵耐久性試験で作製したタッチパネルについて、摺動試験機を用いて摺動耐久性を評価した。摺動耐久性試験においては、タッチペン((株)任天堂製「DS」の純正ペン)を用いて、上部電極基板表面をペンで擦る摺動を以下の条件で往復して繰り返して、検出位置と電圧との関係を示すリニアリティー(%)を求めて、摺動耐久性を評価した。
【0220】
摺動荷重:500g
摺動速度:1往復/秒
摺動回数:10万回、20万回
打鍵部分:スペーサー(両面テープ)の端部から2mmの部分を摺動。
【0221】
リニアリティー(%)は、透明導電性積層フィルムに5Vの電圧を印加し、測定開始位置Aの出力電圧をEA、測定終了位置Bの出力電圧をEB、Aからの距離Xにおける測定点の出力電圧をEX、理論値をEXXとし、下記式により算出した。
【0222】
EXX=X(EB−EA)/(B−A)+EA
リニアリティー(%)={│EXX−EX│/(EB−EA)}×100
評価はリニアリティー(%)の最大値の比較で行ない、一般的に、リニアリティー(%)が1.5%を超えると電気特性が不良であることを意味する。
【0223】
[配合成分]
高耐候性ウレタンアクリレート:ダイセル・サイテック(株)製「EBECRYL8402」、2官能、ガラス転移温度14℃、25℃粘度12500mPa・s
脂肪族ウレタンアクリレート:ダイセル・サイテック(株)製「EBECRYL230」、2官能、ガラス転移温度−55℃、25℃粘度40000mPa・s
ウレタンアクリレート:東亜合成(株)製「アロニックスM−1200」、2官能、ガラス転移温度35℃、50℃粘度120000〜220000mPa・s
アクリルモノマー:東亜合成(株)製「PPGDA」、ポリプロピレングリコールジアクリレート、プロピレンオキシド付加モル数約7モル、ガラス転移温度−8℃、25℃粘度30〜40mPa・s
光重合開始剤:チバ・ジャパン(株)製「イルガキュア(Irgacure)184」
アクリル系重合性組成物:サンノプコ(株)製「ノプコキュアSHC−017R」
側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂:(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のカルボキシル基の一部に3,4−エポキシシクロヘキセニルメチルアクリレートを付加させた化合物、ダイセル化学工業(株)製「サイクロマーP(ACA)Z321M」、固形分44重量%(溶剤:1−メトキシ−2−プロパノール(MMPG)(沸点119℃))
セルロースアセテートプロピオネート:イーストマン社製商品名「CAP−482−20」、アセチル化度=2.5%、プロピオニル化度=46%、ポリスチレン換算数平均分子量75,000
六官能アクリル系UV硬化モノマー:ダイセルサイテック(株)製「DPHA」
三官能アクリル系UV硬化モノマー:ダイセルサイテック(株)製「PETIA」
フッ素含有UV硬化性化合物(Omnova Solution社製「Polyfox3320」。
【0224】
[電子線による硬化物の製造例1]
高耐候性ウレタンアクリレート(EBECRYL8402)20重量部、アクリルモノマー(PPGDA)80重量部を含む塗布液を、ワイヤーバー#55を用いてPETフィルム上にシリコンコートされている離型フィルム上に流延した後、窒素雰囲気中で加速電圧200kV、線量50kGyの条件で電子線を照射し、厚み100μmの硬化物を得た。得られた硬化物を離型フィルムから剥がして電子線による硬化物1を得た。
【0225】
[電子線による硬化物の製造例2]
高耐候性ウレタンアクリレート(EBECRYL8402)50重量部、脂肪族ウレタンアクリレート(EBECRYL230)50重量部を含む塗布液を、ワイヤーバー#55を用いてPETフィルム上にシリコンコートされている離型フィルム上に流延した後、窒素雰囲気中で加速電圧200kV、線量50kGyの条件で電子線を照射し、厚み100μmの硬化物を得た。得られた硬化物を離型フィルムから剥がして電子線による硬化物2を得た。
【0226】
[電子線による硬化物の製造例3]
ウレタンアクリレート(アロニックスM−1200)100重量部、メチルエチルケトン(MEK)(沸点80℃)30重量部を含む塗布液を、ワイヤーバー#55を用いてPETフィルム上にシリコンコートされている離型フィルム上に流延した。この段階で、塗布液の溶液粘度が高いためか、基材フィルム上の流延物にワイヤーバーによる塗膜厚みムラ(バー筋)が残っていた。この流延物を70℃の乾燥機にて溶剤を乾燥させ、乾燥後の塗膜の状態を確認したが、バー筋は依然として残っていた。その後、窒素雰囲気中で加速電圧200kV、線量50kGyの条件で電子線を照射し、厚み100μmの硬化物を得た。得られた硬化物を離型フィルムから剥がして硬化物3を得た。
【0227】
[電子線による硬化物の製造例4]
高耐候性ウレタンアクリレート(EBECRYL8402)100重量部、メチルエチルケトン30重量部を含む塗布液を、ワイヤーバー#55を用いてPETフィルム上にシリコンコートされている離型フィルム上に流延した。この段階で、塗布液の溶液粘度が高いためか、基材フィルム上の流延物にワイヤーバーによる塗膜厚みムラ(バー筋)が残っていた。この流延物を70℃の乾燥機にて溶剤を乾燥させ、乾燥後の塗膜の状態を確認したが、バー筋は依然として残っていた。その後、窒素雰囲気中で加速電圧200kV、線量50kGyの条件で電子線を照射し、厚み100μmの硬化物を得た。得られた硬化物を離型フィルムから剥がして電子線による硬化物4を得た。しかし、硬化物4には流延物から由来したバー筋が残り、蒸着が容易な塗膜厚みが均一な硬化物は得られなかった。
【0228】
硬化物1〜4の特性を評価した結果を表1に示す。
【0229】
【表1】
【0230】
表1の結果から明らかなように、硬化物1及び2は、引張弾性率が低く、柔軟であり、特に、硬化物1及び2と、硬化物3及び4とは、同程度の粘度のウレタンアクリレートを使用しているにも拘わらず、硬化物1及び2は、塗膜性に優れるとともに、柔軟性も高い。
【0231】
さらに、硬化物1及び硬化物4の線膨張率を測定した結果を図3及び図4に示す。図3及び図4の結果から明らかなように、硬化物1が150℃まで比較的に低い線膨張係数を保持したのに対して、硬化物4は、室温付近で融点を有するような挙動(一旦、収縮し、膨張する挙動)を示した。
【0232】
[実施例1]
易接着層を有するポリエステルフィルム(東レ(株)製「A4300 #188」、188μm)のフィルム上に、前記電子線による硬化物の製造例1の塗布液に光重合開始剤(チバ・ジャパン(株)製、「イルガキュア(Irgacure)184」)6重量部を秤量して遮光瓶に入れて混合した。粘度調整のため、溶液の温度を80℃に調整した塗布液を#14のワイヤーバーを用いて塗布して、前記硬化物の製造例1と同様のクッション層を厚み20μmで形成した後に、紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:600mJ/cm2)を用いて、約9秒間紫外線を照射し、クッション層を形成した。
【0233】
次いで、得られたクッション層を有するフィルムのクッション層の上に、アクリル系重合性組成物(サンノプコ(株)製「ノプコキュアSHC−017R」)100重量部の溶液をMEKで希釈し、ワイヤーバー#10を用いて塗布して70℃の乾燥炉を通過させることにより乾燥して、厚み約6μmのコート層を形成した。得られたコート層に、紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:600mJ/cm2)を用いて、約9秒間紫外線を照射した。このようにクッション層及び第1の機能層であるハードコート層を有するフィルムを作製した。
【0234】
得られた積層フィルムのハードコート層(第1の機能層)が形成された側と反対の面に、同様の方法でハードコート層(第2の機能層)を形成した。
【0235】
この積層フィルムについて、第1の機能層であるハードコート層の表面におけるマルテンス硬さは27.2N/mm2であり、最大押し込み深さは5.52μmであった。一方、第2の機能層であるハードコート層の表面におけるマルテンス硬さは189.1N/mm2であり、最大押し込み深さは2.07μmであった。
【0236】
さらに、ハードコート層(第1の機能層)の上にスパッタリング法によりITO薄膜(厚み30nmの透明導電層)を形成した。
【0237】
得られた透明導電性積層フィルムについて、ドットスペーサー付きの透明導電性ガラス基板上に両面テープのスペーサーを介して貼り合せ、簡易タッチパネルを作成した。この簡易タッチパネルの打鍵耐久性を評価した結果、480万回の打鍵試験後も矩形波の乱れは見られず、透明電極の機能を保持していた。図5〜7に、それぞれ、打鍵試験開始時、打鍵100万回後、打鍵480万回後における波形(時間−電圧)を示す。さらに、摺動耐久性を評価した結果、20万回摺動後のリニアリティー(最大値)は0.69%であり、20万回摺動後も透明電極の機能を保持していた。
【0238】
[実施例2]
第1の機能層であるハードコート層の代わりに、以下に示す方法でアンチニュートンリング層を形成する以外は実施例1と同様にして透明導電性積層フィルムを製造した。
【0239】
側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(サイクロマーP(ACA)Z321M)15.8重量部、セルロースアセテートプロピオネート(CAP−482−20)1.7重量部、六官能アクリル系UV硬化モノマー(DPHA)19.6重量部、三官能アクリル系UV硬化モノマー(PETIA)8.4重量部、フッ素含有UV硬化性化合物(Polyfox3320)0.04重量部、光開始剤(イルガキュア184)0.3重量部を、メチルエチルケトン(MEK)(沸点80℃)39.2重量部、1−ブタノール(BuOH)(沸点113℃)11.4重量部、及び1−メトキシ−2−プロパノール(MMPG)(沸点119℃)3.8重量部の混合溶媒に溶解した。この溶液を、ワイヤーバー♯28を用いて、得られたハードコート層及びクッション層を有するフィルムのクッション層の上に流延した後、50℃のオーブン内で30秒間放置し、溶媒を蒸発させて厚み約12μmのアンチニュートンリング層を形成した。その後、コートフィルムを紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:800mJ/cm2)に通して、紫外線硬化処理を行った。
【0240】
得られた透明導電性積層フィルムについて、実施例1と同様の方法で打鍵耐久性を評価した結果、70万回の打鍵試験後も矩形波の乱れは認められなかった。図8及び図9に、それぞれ、打鍵試験開始時、打鍵70万回後における波形(時間−電圧)を示す。
【0241】
[実施例3]
クッション層として、前記電子線による硬化物の製造例2の塗布液に光重合開始剤(イルガキュア184)6重量部を配合した塗布液を用いる以外は実施例1と同様にして透明導電性積層フィルムを製造した。得られた透明導電性積層フィルムについて、ドットスペーサー付きの透明導電性ガラス基板上に両面テープのスペーサーを介して透明導電性積層フィルムを貼り合せで簡易タッチパネルを作成した。この簡易タッチパネルの打鍵耐久性を評価した結果、480万回の打鍵試験後も矩形波の乱れは見られず、透明電極の機能を保持していた。図5〜7に、それぞれ、打鍵試験開始時、打鍵100万回後、打鍵480万回後における波形(時間−電圧)を示す。さらに、摺動耐久性を評価した結果、20万回摺動後のリニアリティー(最大値)は0.69%であり、20万回摺動後も透明電極の機能を保持していた。
【0242】
[比較例1]
クッション層を形成しないことを除いて、実施例1と同様の方法で、透明導電性積層フィルムを作製した。透明導電層を形成する前の積層フィルムについて、第2の機能層であるハードコート層の表面におけるマルテンス硬さは198.8N/mm2であり、最大押し込み深さは2.03μmであった。透明導電性積層フィルムについて、打鍵耐久性を評価した結果、100万回の打鍵試験後に矩形波に乱れが見られ、透明電極の機能が損なわれていた。図10及び図11に、それぞれ、打鍵試験開始時、打鍵100万回後における波形(時間−電圧)を示す。さらに、摺動耐久性を評価した結果、リニアリティー(最大値)は2.12%であり、10万回摺動後に透明電極の機能が損なわれていた。
【0243】
[比較例2]
クッション層を形成しないことを除いて、実施例2と同様の方法で、透明導電性積層フィルムを作製した。透明導電性積層フィルムについて、打鍵耐久性を評価した結果、50万回の打鍵試験後に矩形波に乱れが見られ、90万回の打鍵試験後には透明電極の機能が損なわれていた。図12〜14に、それぞれ、打鍵試験開始時、打鍵50万回後、打鍵90万回後における波形(時間−電圧)を示す。
【0244】
[比較例3]
クッション層として、電子線による硬化物の製造例3の塗布液に光重合開始剤(イルガキュア184)6重量部を配合した塗布液を用いる以外は実施例1と同様にして透明導電性積層フィルムを製造した。なお、前記電子線による硬化物3のフィルムと同様にクッション層には、塗膜厚みムラ(バー筋)が残り、UV硬化後も均一な塗布膜は得られなかった。この積層フィルムについて、ドットスペーサー付きの透明導電性ガラス基板上に、両面テープのスペーサーを介して透明導電性積層フィルムを貼り合せで簡易タッチパネルを作成した。この簡易タッチパネルの打鍵耐久性を評価した結果、100万回の打鍵試験後も矩形波の乱れは見られず、透明電極の機能を保持していた。次に、摺動耐久性を評価した結果、10万回摺動後のリニアリティー(最大値)は0.99%であり、10万回摺動後も透明電極の機能を保持していた。20万回摺動後は、リニアリティー(最大値)は2.12%であり、透明電極の機能が損なわれていた。
【0245】
[比較例4]
クッション層として、電子線による硬化物の製造例4の塗布液に光重合開始剤(イルガキュア184)6重量部を配合した塗布液を用いる以外は実施例1と同様にして透明導電性積層フィルムを製造した。なお、硬化物の製造例4と同様に、クッション層には、塗膜厚みムラ(バー筋)が残り、UV硬化後も均一な硬化物は得られなかった。
【0246】
【表2】
【0247】
表2の結果から明らかなように、同条件の実施例1又は3と比較例1、3又は4との比較、実施例2と比較例2との比較から、実施例の透明導電性積層フィルムは、比較例の透明導線フィルムよりも打鍵耐久性及び/又は摺動耐久性が優れている。
【産業上の利用可能性】
【0248】
本発明の透明導電性積層フィルムは、パーソナルコンピューター、テレビ、携帯電話、遊技機器、モバイル機器、時計、電卓などの電気・電子又は精密機器の表示部において、表示装置(液晶表示装置、プラズマディスプレイ装置、有機又は無機EL表示装置など)と組み合わせて用いられるタッチパネル(特に抵抗膜方式タッチパネル)に利用できる。さらに、本発明の透明導電性積層フィルムは、機能層として、厚みの大きいアンチニュートンリング層も形成できるため、大画面のタッチパネルにも有効である。
【符号の説明】
【0249】
1…白色平行光光源
2…NDフィルター
3…試料
4…検出器
10…タッチパネル
11…上部電極基板
12…スペーサー
13…下部電極基板
11a,13a…透明導電層
11b…アンチニュートンリング層
11c…クッション層
11d,13d…透明基材フィルム
11e,13e…ハードコート層
20…液晶パネル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂で構成された基材フィルムの一方の面に、クッション層、機能層、透明導電層がこの順序で順次形成された透明導電性積層フィルムであって、前記クッション層が、(メタ)アクリル基を含む重合性組成物の硬化物で構成され、かつ前記重合性組成物が、下記の測定方法で測定した場合に200MPa以下の引張弾性率を有する組成物である透明導電性積層フィルム。
(引張弾性率の測定方法)
(メタ)アクリル基を含む重合性組成物を加速電圧200kV及び照射線量50kGyの電子線により硬化した厚み100μmを有する成形品の引張弾性率を測定する。
【請求項2】
重合性組成物がウレタン(メタ)アクリレートを含む請求項1記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項3】
重合性組成物が、さらにポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含む請求項2記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項4】
ポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが、オキシC3−4アルキレン単位の平均繰り返し数が5〜9モルであるポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含み、かつウレタン(メタ)アクリレートと前記ポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとの割合(重量比)が、前者/後者=30/70〜10/90である請求項3記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項5】
クッション層の厚みが10μmを超えており、基材フィルムとクッション層との厚み比が、基材フィルム/クッション層=20/1〜5/1である請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項6】
重合性組成物が、請求項1に記載の方法で測定した場合に1〜100MPaの引張弾性率を有する組成物である請求項1〜5のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項7】
重合性組成物が溶媒を実質的に含有しない請求項1〜6のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項8】
クッション層が、−30℃〜30℃のガラス転移温度、50MPa以下の引張弾性率及び92%以上の全光線透過率を有する請求項1〜7のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項9】
透明導電層を剥離した機能層表面におけるマルテンス硬さが100N/mm2以下であり、最大押し込み深さが3μm以上である請求項1〜8のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項10】
重合性組成物の硬化物が活性エネルギー線による硬化物である請求項1〜9のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項11】
機能層が、ハードコート層又はアンチニュートンリング層である請求項1〜10のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項12】
機能層が、1又は複数のポリマーと、1又は複数の硬化した硬化性樹脂前駆体とを含み、かつ表面に凹凸形状を有する相分離構造で構成されているアンチニュートンリング層である請求項1〜11のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項13】
抵抗膜方式タッチパネルの透明電極基板であり、かつこの透明電極基板が、指又は押圧部材と接触する側の上部電極基板である請求項1〜12のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項14】
透明樹脂で構成された基材フィルムの一方の面に、クッション層、機能層、透明導電層がこの順序で順次形成された透明導電性積層フィルムであって、前記クッション層が、(メタ)アクリル基を含む重合性組成物の硬化物で構成され、かつ10μmよりも大きい厚みを有する透明導電性積層フィルム。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の透明導電性積層フィルムを上部電極基板として備える抵抗膜方式タッチパネル。
【請求項1】
透明樹脂で構成された基材フィルムの一方の面に、クッション層、機能層、透明導電層がこの順序で順次形成された透明導電性積層フィルムであって、前記クッション層が、(メタ)アクリル基を含む重合性組成物の硬化物で構成され、かつ前記重合性組成物が、下記の測定方法で測定した場合に200MPa以下の引張弾性率を有する組成物である透明導電性積層フィルム。
(引張弾性率の測定方法)
(メタ)アクリル基を含む重合性組成物を加速電圧200kV及び照射線量50kGyの電子線により硬化した厚み100μmを有する成形品の引張弾性率を測定する。
【請求項2】
重合性組成物がウレタン(メタ)アクリレートを含む請求項1記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項3】
重合性組成物が、さらにポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含む請求項2記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項4】
ポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが、オキシC3−4アルキレン単位の平均繰り返し数が5〜9モルであるポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含み、かつウレタン(メタ)アクリレートと前記ポリC3−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとの割合(重量比)が、前者/後者=30/70〜10/90である請求項3記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項5】
クッション層の厚みが10μmを超えており、基材フィルムとクッション層との厚み比が、基材フィルム/クッション層=20/1〜5/1である請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項6】
重合性組成物が、請求項1に記載の方法で測定した場合に1〜100MPaの引張弾性率を有する組成物である請求項1〜5のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項7】
重合性組成物が溶媒を実質的に含有しない請求項1〜6のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項8】
クッション層が、−30℃〜30℃のガラス転移温度、50MPa以下の引張弾性率及び92%以上の全光線透過率を有する請求項1〜7のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項9】
透明導電層を剥離した機能層表面におけるマルテンス硬さが100N/mm2以下であり、最大押し込み深さが3μm以上である請求項1〜8のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項10】
重合性組成物の硬化物が活性エネルギー線による硬化物である請求項1〜9のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項11】
機能層が、ハードコート層又はアンチニュートンリング層である請求項1〜10のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項12】
機能層が、1又は複数のポリマーと、1又は複数の硬化した硬化性樹脂前駆体とを含み、かつ表面に凹凸形状を有する相分離構造で構成されているアンチニュートンリング層である請求項1〜11のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項13】
抵抗膜方式タッチパネルの透明電極基板であり、かつこの透明電極基板が、指又は押圧部材と接触する側の上部電極基板である請求項1〜12のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項14】
透明樹脂で構成された基材フィルムの一方の面に、クッション層、機能層、透明導電層がこの順序で順次形成された透明導電性積層フィルムであって、前記クッション層が、(メタ)アクリル基を含む重合性組成物の硬化物で構成され、かつ10μmよりも大きい厚みを有する透明導電性積層フィルム。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の透明導電性積層フィルムを上部電極基板として備える抵抗膜方式タッチパネル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−91406(P2012−91406A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240855(P2010−240855)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】
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