説明

透明導電積層体

【課題】透明導電性が高く、透過光の色調がニュートラルであり、かつ耐屈曲性に優れたCNTを導電膜とする透明導電積層体を提供する。
【解決手段】透明導電積層体103は、厚み20〜188μmの透明基材101の少なくとも片面上にカーボンナノチューブ導電膜102と透明保護膜とが透明基材側からこの順に設けられた透明導電積層体であって、前記透明保護膜の厚みが10〜120nmの範囲にあり、前記透明保護膜側の反射率曲線の極小値が280〜700nmの波長範囲にあり、かつ波長380〜780nmにおける透明保護膜側の平均反射率が2.5%以下のものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ(以下、CNTと略すこともある)を導電膜とし、その上に透明保護膜を有する透明導電積層体に関する。さらに、詳しくは、耐屈曲性に優れた透明導電積層体で、液晶ディスプレイ(以下、LCDと略すこともある)、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、OLEDと略すこともある)、などディスプレイ関連、タッチパネル、調光ガラスおよび電子ペーパーなどに使用される透明導電積層体、特に電子ペーパーに使用される透明導電積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電積層体の導電膜を形成する材料として、インジウム−スズ酸化物(以下ITO)がある。ITOは導電性が高く、耐環境性にも優れていることから、電子ペーパー用透明導電積層体における導電層材料として広く用いられている(例えば特許文献1)。
【0003】
しかしながら、ITOが導電層材料である透明導電積層体を、電子ペーパーに用いた場合、要求される耐屈曲性が未だ不足しており、さらなる改善が望まれている。
【0004】
一方、CNTを導電膜として用いた透明導電積層体の開発も進んでいる。CNTは室温、大気圧下で導電膜の塗布が可能であり、簡易なプロセスで導電膜を形成することができる。また、屈曲性に富むため、柔軟な基材上に導電膜を形成する場合であっても、基材の屈曲性に追従することができる。さらに、基材にフィルムを用いた場合には導電膜を連続形成できることから、さらなるプロセスコストの低減が可能である。これらの導電膜は、CNTの分散性を高め、かつ膜厚を薄くすることによって、透明導電性を向上させることができる。CNTを導電膜とする透明導電積層体は、従来、薄い導電膜の耐久性、耐擦傷性の低下を改善させるために、透明な樹脂をCNT導電膜上に塗布形成させることが提案されている(例えば特許文献2、特許文献3参照)。しかしながら、CNTを導電膜とする透明導電積層体は透明導電性が不十分であり、各種用途においてITO透明導電積層体を置き換えるには至っていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−123559(特許請求の範囲)
【特許文献2】特許第3665969号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】国際公開第2005−104141号パンフレット(実施例1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電子ペーパー用途に好適な、透明導電性が高く、かつ耐屈曲性に優れた透明導電積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用する。すなわち、厚み20〜188μmの透明基材の少なくとも片面上にCNT導電膜と透明保護膜とが透明基材側からこの順に設けられた透明導電積層体であって、前記透明保護膜の厚みが10〜120nmの範囲にあり、前記透明保護膜側の反射率曲線の極小値が280〜700nmの波長範囲にあり、かつ波長380〜780nmにおける透明保護膜側の平均反射率が2.5%以下の透明導電積層体である。
【0008】
かかる本発明の透明導電積層体の好ましい態様は
(1)前記透明保護層の厚みが50〜120nmの範囲にあること、
(2)前記透明保護膜側の反射率曲線の極小値が350〜550nmの波長範囲にあること、
(3)透明保護膜の屈折率とCNT導電膜の屈折率との差が0.3以上で、かつCNT導電膜の屈折率が透明護膜の屈折率より高く、かつCNT導電膜の屈折率が1.6〜1.9の範囲にあること、
(4)透明導電積層体のJIS Z8729に基づいたL、a、b表示色系における透過光色調aが−2.0以上2.0以下、かつbが−2.0以上2.0以下であること、
(5)透明保護膜側の表面抵抗値が1×100Ω/□以上1×10Ω/□以下であること、である。
また、本発明の透明導電積層体は電子ペーパーに好ましく用いられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、透明基材上に設けたCNT導電膜上に、屈折率と膜厚とを調整して特定の反射特性を有する透明保護膜が形成されているため、CNT導電膜の表面抵抗値に影響を与えることなく、CNT導電膜側の可視光反射率を低減させることができ、優れた透明導電性および耐屈曲性を持つ透明導電積層体を生産性良く提供することができる。また、本発明の透明導電積層体は、透明導電性、耐屈曲性に優れているので、特に、電子ペーパーの透明電極に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の透明導電積層体を電子ペーパーに適用した一例を示す模式図
【図2】耐屈曲性試験の概略図である。
【図3】流動床縦型反応装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、導電膜としてCNTからなる導電膜を用い、透明性や導電性が高く、色調がニュートラル、かつ耐屈曲性の高い透明積層体について鋭意検討を重ね、透明な支持基材上に、CNT導電膜および透明保護膜をこの順で積層し、透明保護膜の屈折率と厚みを調整して、透明保護膜の反射特性を特定の範囲としたところ、前記課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0012】
本発明に用いられる透明基材とは、透明な支持基材をいう。本発明において透明とは、可視光の透過率が高いことをいい、具体的には波長380〜780nmにおける全光線透過率が80%以上のもの、より好ましくは90%以上のものである。かかる透明基材の具体例としては、透明な樹脂を挙げることができる。
【0013】
また、本発明に用いられる透明基材は、その厚みが20〜188μmである。かかる厚みであることにより曲げ伸ばしの繰り返しに対する抵抗値の変化を低減することが可能となる。電子ペーパー未使用時に曲げ伸ばし、巻き取りを行うことができれば、収納スペースを小さくすることができるという利点が得られる。また、電子ペーパーは紙の代替媒体として、曲面形状に貼り付けるなど紙と同様に曲げたり伸ばしたりすることができ、そのことにより導電性が変化しないことが望まれている。これらの観点から電子ペーパーおよび、その部材である透明導電基材には耐屈曲性が求められている。また、巻き取り可能なフィルムとすることで、Roll to Roll方式を採用することができ、生産コスト低減も図ることができる。また、生産時の取扱容易性の観点からは、透明基材は、その厚みが20μm以上であることが好ましい。より好ましくは100μm以上である。また、電子パーパーに要求される実用的な曲げ伸ばしを実現するためには、188μm以下とすることが好ましい。
【0014】
本発明に用いられる透明基材を構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、アラミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、脂環式アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、トリアセチルセルロースなどを挙げることができる。
【0015】
さらに、透明基材は、必要に応じ、表面処理を施してあっても良い。表面処理は、グロー放電、コロナ放電、プラズマ処理、火炎処理等の物理的処理、あるいは樹脂層を設けてあっても良い。フィルムの場合、易接着層のあるものでも良い。支持基材の種類は上述に限定されることはなく、用途に応じて透明性や耐久性や可撓性やコスト等から最適なものを選ぶことができる。
【0016】
次に、CNT導電膜について説明する。本発明におけるCNT導電膜はCNTを含んでいればよい。本発明において、CNT導電膜に用いられるCNTは、単層CNT、二層CNT、三層以上の多層CNTのいずれでもよい。直径が0.3〜100nm、長さ0.1〜20μm程度のものが好ましく用いられる。CNT導電膜の透明性を高め、表面抵抗を低減するためには、直径10nm以下、長さ1〜10μmの単層CNT、二層CNTがより好ましい。
【0017】
また、CNTの集合体にはアモルファスカーボンや触媒金属などの不純物は極力含まれないことが好ましい。これら不純物が含まれる場合は、酸処理や加熱処理などによって適宜精製することができる。このCNTは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、触媒化学気相法(化学気相法の中で担体に遷移金属を担持した触媒を用いる方法)などによって合成、製造されるが、なかでも生産性よくアモルファスカーボン等の不純物の生成を少なくできる触媒化学気相法が好ましい。さらに、必要に応じて他のナノサイズの導電性材料を添加しても良い。
【0018】
本発明において、CNT導電膜は、CNT分散液を塗布して形成することができる。CNT分散液を得るには、CNTを溶媒とともに、混合分散機や超音波照射装置によって分散処理を行うことが一般的であり、さらに分散剤を添加することが望ましい。
【0019】
分散剤としては、CNTが分散できれば特に限定はないが、CNT分散液を透明基材上に塗布、乾燥させたCNT導電膜の基材との密着性、膜の硬度、耐擦過性の点で、合成高分子、天然高分子のポリマーを選択することが好ましい。さらに、分散性を損わない範囲で架橋剤を添加してもよい。
【0020】
合成高分子は、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、アセタール基変性ポリビニルアルコール、ブチラール基変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合樹脂、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ系樹脂、フェノキシ樹脂、変性フェノキシ系樹脂、フェノキシエーテル樹脂、フェノキシエステル樹脂、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンである。天然高分子は、例えば、多糖類であるデンプン、プルラン、デキストラン、デキストリン、グアーガム、キサンタンガム、アミロース、アミロペクチン、アルギン酸、アラビアガム、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、カードラン、キチン、キトサン、セルロースおよびその誘導体から選択できる。誘導体とはエステルやエーテルなどの従来公知の化合物を意味する。これらは、1種または2種以上を混合して用いることができる。中でも、カーボンナノチューブ分散性に優れることから、多糖類ならびにその誘導体が好ましい。さらにセルロースならびにその誘導体が、膜形成能が高く好ましい。中でもエステルやエーテル誘導体が好ましく、具体的には、カルボキシメチルセルロースやその塩などが好適である。
【0021】
CNT導電膜の屈折率は1.6〜1.9の範囲が好ましい。CNT導電膜の屈折率が1.6以上であると、CNT導電膜との屈折率差が0.3以上になるため、安価でかつ生産性良好な透明保護膜材料を用いることができるので好ましい。屈折率が1.9以下であると、透明保護膜の膜厚みを薄くすることができ、表面抵抗値の上昇を抑えられるので好ましい。CNT導電膜の屈折率は、CNT導電膜中のCNTと分散剤との配合比を調整することで制御できる。
【0022】
CNTと分散剤の配合比は、CNT導電膜の屈折率が1.6〜1.9の範囲となり、かつ基材との密着性、硬度、耐擦過性に問題のない配合比が好ましい。具体的には、CNTが導電膜全体に対し10質量%〜90質量%の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、30質量%〜70質量%の範囲である。CNTが10質量%以上であると、タッチパネルや調光ガラスに必要な透明導電性が得られ易く、ウエットコーティングでの透明導電性の均一性が良くなり好ましい。90質量%以下であると、CNTの溶媒中での分散性が良化、凝集し難くなり、良好なCNT塗布膜が得られ易くなり、生産性が良いので好ましい。さらに塗布膜も強固で、生産工程中に擦擦傷が発生し難くなり、表面抵抗値の均一性を維持できるので好ましい。
【0023】
CNT導電膜は、CNT自身の物性により光を反射や吸収する。そのため、透明な支持基材上に設けたCNT導電膜を含む透明導電積層体の透過率を上げるには、CNT導電膜上に透明な材料で透明保護膜を設け、この透明保護膜側の波長380〜780nmでの平均反射率を2.5%以下とすることが効果的である。平均反射率が2.5%以下であると、電子ペーパー用途に用いる場合の全光線透過率80%以上の性能を生産性良く得ることができるので好ましい。
【0024】
本発明の透明導電積層体では、CNT導電膜上に設ける透明保護膜は、上記の光学的な役割に加え、CNT導電膜の耐擦過性の向上、CNTの脱落の防止の役割も兼ねている。
【0025】
透明保護膜は平均反射率を下げるために、その屈折率がCNT導電膜の屈折率より低く、かつCNT導電膜の屈折率との差が0.3以上のものが好ましい。なお、透明保護膜の屈折率とカーボンナノチューブ導電膜の屈折率との差は、大きければ大きいほど反射率が下がるため好ましいが、現在適用できる素材上の限界を考慮すると現実的には0.4以下となる。透明保護膜の屈折率がCNT導電膜の屈折率よりも高くなると、CNT導電膜単独の時よりもかえって平均反射率が高くなる。また、屈折率差が0.3以上であると、ニュートラルな透過光でかつ平均反射率が2.5%以下とするための制御範囲が広くなり、生産でのプロセスマージンが拡大するので好ましい。
【0026】
透明保護膜は、前記範囲に入る物質であれば、特に限定しないが、無機化合物、有機化合物、および無機・有機の複合物で構成されたもので内部に空洞を有する構成のあるものが良い。単一物質としては、珪素酸化物、フッ化マグネシウム、フッ化セリウム、フッ化ランタン、フッ化カルシウムなどの無機化合物、珪素元素、フッ素元素を含有するポリマー、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などの有機化合物、複合体としては、内部に空洞を有するシリカ、アクリルなどの微粒子と単官能もしくは多官能(メタ)アクリル酸エステル、または/およびシロキサン化合物、または/およびパーフルオロアルキル基を有する有機化合物の単量体成分を重合して得られる重合体との混合物、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂など有機化合物の混合物などがある。
【0027】
珪素酸化物は、具体例に例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシランなどのテトラアルコシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のトリアルコキシシラン類、メチルトリアセチルオキシシラン、メチルトリフェノキシシランなどのオルガノアルコシシランのアルコール、水、酸などから、加水分解・重合反応によって形成させるゾル−ゲルコーティング膜、珪素酸化物のスパッタ蒸着膜などが使用できる。
【0028】
透明保護膜の膜厚は、波長380〜780nmにおける透明保護膜側の平均反射率が2.5%以下の膜厚であれば、特に限定されないが、好ましくは10nm〜120nm、より好ましくは50〜120nmである。透明保護膜の膜厚が10nm以上であると、膜強度が増加し、耐久性、耐擦傷性などのCNT導電膜を保護する機能が向上する。一方、120nm以下であると、光の干渉による干渉縞が視認されず、かつ透過色調がニュートラル色となり、かつ透明導電積層体を折り曲げた際のCNT導電膜の表面抵抗値の上昇を抑えることができる。ここでいう膜厚とは、光の干渉現象より求められる光学膜厚であり、一般に以下の式で表される。
【0029】
d=λ/4n (1)
(d:光学膜厚(nm)、λ:極小反射率を示す波長(nm)、n:透明保護膜の屈折率)
透明保護膜には必要に応じ、粒子、導電剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、滑り賦活剤、その他の成分を含有しても良い。
【0030】
透明保護膜をCNT導電膜上に形成する方法としては、形成する物質により最適な方法を選択すれば良く、真空蒸着、EB蒸着、スパッタ蒸着などのドライ法、キャスト、スピンコート、ディップコート、バーコート、スプレー、ブレードコート、スリットダイコート、グラビアコート、リバースコート、スクリーン印刷、鋳型塗布、印刷転写、インクジェットなどのウエットコート法等、一般的な方法を挙げることができる。なかでも、透明保護膜の膜厚を10nm〜120nmの範囲で均一にかつ生産性良く形成できるマイクログラビアなどを使用したウエットコート法が好ましい。
【0031】
本発明の透明導電積層体のJIS Z8729(2004年)に基づいたL、a、b表示色系における透過光色調a、b値は、a値とb値とも好ましくは−2.0以上2.0以下、より好ましくは、ともに−1.0以上1.0以下である。CNT導電膜は450nm以下の領域で吸収率が増してくるので、CNT導電膜上に透明保護膜を形成し、透明導電保護膜側の反射率曲線の極小値を好ましくは280〜700nmの波長範囲に、より好ましくは、350〜550nmの波長範囲に、さらに好ましくは350〜450nmの波長範囲に存在せしめることで、可視光領域における吸収と反射のバランスを取ることでき、a値とb値を抑えられ、ニュートラル色調の透過光が得られるようになる。式(1)で示すように、反射率曲線の極小値は透明保護膜の屈折率nと膜厚で制御が可能であるため、適宜調整することで、極小値を上記の波長範囲に調整できる。
【0032】
本発明の透明導電積層体の透明保護膜側の表面抵抗値は、好ましくは1×10Ω/□以上、1×108Ω/□以下、より好ましくは1×10Ω/□以上、1.5×103以下である。この範囲にあることで、電子ペーパー用の透明導電積層体として好ましく用いることができる。すなわち、1×10Ω/□以上であれば、透過率を高くすることができ、1×108Ω/□以下であれば、消費電力を少なくすることができる。
【0033】
本発明の透明導電積層体の透明性は、波長380〜780nmにおける全光線透過率が80%以上であることが好ましい。より好ましくは透過率85%以上である。透過率が80%以上であれば、電子ペーパーの視認性を良くすることができる。透過率を上げるための方法としては、前述した透明保護膜側の波長380〜780nmでの平均反射率を2.5%以下とする方法以外に、一般的に透明な支持基材の厚みを薄くする方法、あるいは透過率の大きな材質を選定する方法が挙げられる。また、CNTの分散性を向上させることによって、より薄い膜厚のCNT導電膜で所望の表面抵抗値を得ることができ、透過率を上げることができる。
【0034】
次に、本発明の電子ペーパーについて説明する。図1は本発明の透明導電積層体を電子ペーパーに適用した一例を示す模式断面図である。電子ペーパーは、透明なマイクロカプセル107が、上部に配置された本発明の透明導電積層体103と下部に配置された下部電極複合体110との間に隙間なく並べられた構造となっている。上部に配置された透明導電積層体103は透明基材101とCNT導電膜102とから構成され、下部電極複合体110は下部電極108と支持基材109とから構成される。マクロカプセル107中には正に帯電した白色顔料粒子104と負に帯電した黒色顔料粒子106が透明分散媒105と共に収められている。
【0035】
図1に示す電子ペーパーでは、外部の制御回路からの電圧印加によって2枚の電極間に電界が生じ、正に帯電した白色顔料粒子104と負に帯電した黒色顔料粒子106が透明分散媒105中を泳動して、いずれか電圧によって選ばれた色の顔料粒子がカプセルの表示面側に集まることで、白黒の表示を行い、微小な電極によって作られる各画素ごとに白黒の表示が選ばれる。電圧を切っても顔料粒子は簡単に動かないため、印刷物のように読みとることができる。
【0036】
厚み20〜188μmの透明基材を用いることで、曲げ伸ばし可能な透明導電積層体を提供することができ、形状の自由度が大きいため電子ペーパーとして好適に使用できる。また、透明基材の少なくとも片面上にカーボンナノチューブ導電膜と透明保護膜とを透明基材側からこの順に設け、前記透明保護膜の厚みを10〜120nmの範囲とすることで、折り曲げても抵抗値変化のないあるいは小さい透明導電積層体を提供することができ、電子ペーパーとして耐久性が良く好適にできる。また、透明保護膜側の反射率曲線の極小値を280〜700nmの波長範囲、より好ましくは、350〜550nmの波長範囲、さらに好ましくは350〜450nmの波長範囲とすることで、ニュートラル色の透明導電積層体が得られ、高品位な表示が可能となる。さらに、無色波長380〜780nmにおける透明保護膜側の平均反射率を2.5%以下とすることで電子ペーパー用途に用いる場合の全光線透過率80%以上の性能を生産性良く得ることができるので好ましい。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例に基づき、具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。まず、各実施例および比較例における評価方法を説明する。
(1)屈折率
シリコンウエハー上に形成された塗膜について、高速分光メーターM−2000(J.A.Woolam社製)を用い、塗膜の反射光の偏光状態の変化を入射角度60度、65度、70度で測定、解析ソフトWVASEにて、波長550nmの屈折率を計算で求めた。
(2)波長380nm〜780nmにおける平均反射率、波長200nm〜1200nmにおける反射率曲線の極小値、透明保護膜の光学膜厚
透明測定面(透明保護膜を設けた側の面)の反対側表面を60℃光沢度(JIS Z 8741(1997年))が10以下になるように320〜400番の耐水サンドペーパーで均一に粗面化した後、可視光線透過率が5%以下となるように黒色塗料を塗布して着色した。測定面を島津製作所製の分光光度計(UV−3150)にて、測定面から5度の入射角で、波長領域200nm〜1200nmにおける絶対反射スペクトルを1nm間隔で測定し、波長380nm〜780nmにおける平均反射率および200nm〜1200nmの領域での反射率の極小値を示す波長を求めた。
【0038】
d=λ/4n
(d:光学膜厚(nm)、λ:極小反射率を示す波長(nm)、n:透明保護膜の屈折率)
(3)a、b
透明導電積層体の透過率を、JIS Z8729(2004年)に基づき、分光光度計(島津製作所製、UV−3150)を用いて、D65光源2゜の380〜780nmにおける透過率スペクトルを1nm間隔で測定、XYZ(CIE1976)表色系の透過色度計算結果にて測定した。
(4)全光線透過率
JIS−K7361(1997年)に基づき、濁度計NDH2000(日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
(5)表面抵抗値
透明保護膜側の表面抵抗は、低抵抗計(ダイアインスツルメンツ製、ロレスタEPMCP−T360)を用い4探針法で100mm×50mmのサンプルの中央部分を測定した。
(6)耐屈曲性
図2参照。透明導電積層体を50mm×140mmにサンプリングし、このサンプルの両短辺に沿って幅10mm長さ50mmの範囲で銀ペースト電極(太陽インキ製造(株)製 ECM−100 AF4820)を塗布、90℃、30min乾燥させ端子電極201とした。このサンプルの透明導電積層体203の側、中央部に直径5mmの金属円柱202を固定し、この円柱に沿って、円柱の抱き角0°(サンプルが平面の状態)から、円柱への抱き角が180°(円柱で折り返した状態)となる範囲で、20回折り曲げ動作を行った。この折り曲げ前の端子電極間抵抗値をR、折り曲げ後抵抗値をRとしたときに、R/Rで表される抵抗値変化率を耐屈曲性の指標とした。端子電極間抵抗はデジタルマルチメーター(カイセ(株)製 KT−2011)で測定した。測定N数は1で行った。
次に、本発明に用いたCNT塗液について説明する。
【0039】
(触媒調整)
クエン酸アンモニウム鉄(緑色)(和光純薬工業社製)2.459gをメタノール(関東化学社製)500mLに溶解した。この溶液に、軽質マグネシア(岩谷社製)を100g加え、室温で60分間攪拌し、40℃から60℃で攪拌しながら減圧乾燥してメタノールを除去し、軽質マグネシア粉末に金属塩が担持された触媒を得た。
【0040】
(CNT組成物製造)
図3に概略図を示す流動床縦型反応装置でCNTを合成した。反応器301は内径32mm、長さは1200mmの円筒形石英管である。中央部に石英焼結板302を具備し、石英管下方部には、不活性ガスおよび原料ガス供給ライン305、上部には排ガスライン306および、触媒投入ライン304を具備する。さらに、反応器を任意温度に保持できるように、反応器の円周を取り囲む加熱器307を具備する。加熱器307には装置内の流動状態が確認できるよう点検口308が設けられている。
【0041】
上記触媒12gを取り、密閉型触媒供給器303から触媒投入ライン304を通して、石英焼結板302上に前記「触媒調整」部分で示した触媒309をセットした。次いで、原料ガス供給ライン305からアルゴンガスを1000mL/分で供給開始した。反応器内をアルゴンガス雰囲気下とした後、温度を850℃に加熱した。
【0042】
850℃に到達した後、温度を保持し、原料ガス供給ライン305のアルゴン流量を2000mL/分に上げ、石英焼結板上の固体触媒の流動化を開始させた。加熱炉点検口308から流動化を確認した後、さらにメタンを95mL/分で反応器に供給開始した。該混合ガスを90分供給した後、アルゴンガスのみの流通に切り替え、合成を終了させた。
【0043】
加熱を停止させ室温まで放置し、室温になってから反応器から触媒とCNTを含有するCNT組成物(以降この組成物を、触媒付きCNT組成物と記す)を取り出した。
【0044】
上記で示した触媒付きCNT組成物23.4gを磁性皿に取り、予め446℃まで加熱しておいたマッフル炉(ヤマト科学社製、FP41)にて大気下、446℃で2時間加熱した後、マッフル炉から取り出した。次に、触媒を除去するため、前記の熱処理をした触媒付きCNT組成物を6Nの塩酸水溶液に添加し、室温で1時間攪拌した。濾過して得られた回収物を、さらに6Nの塩酸水溶液に添加し、室温で1時間攪拌した。これを濾過し、数回水洗した後、濾過物を120℃のオーブンで一晩乾燥することでマグネシアおよび金属が除去されたCNT組成物を57.1mg得ることができ、上記操作を繰り返すことによりマグネシアおよび金属が除去されたCNT組成物(以降この組成物を、触媒除去CNT組成物と記す)を500mg用意した。
【0045】
次に、触媒除去CNT組成物80mgを濃硝酸(和光純薬工業社製 1級 Assay60〜61%)27mLに添加し、130℃のオイルバスで5時間攪拌しながら加熱した。加熱攪拌終了後、CNTを含む硝酸溶液をろ過し、蒸留水で水洗後、水を含んだウエット状態のままCNT組成物を1266.4mg得た。
【0046】
(CNT塗液)
50mLの容器に上記CNT組成物を10mg(乾燥時換算)、分散剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム(シグマ社製90kDa,50−200cps)10mgを量りとり、蒸留水を加え10gにし、超音波ホモジナイザー出力20W、20分間で氷冷下分散処理しCNT塗液を調製した。得られた液を高速遠心分離機にて10000G、15分遠心し、上清9mLを得た。この操作を複数回繰り返し得た上清145mLに純水を加え濃度調整を行い、コーターで塗布可能なCNT濃度約0.04質量%のCNT塗液A(CNTと分散剤の配合比1対1)を得た。
(CNT塗液の塗布膜の屈折率)
石英ガラスに塗布、乾燥したCNT導電膜の屈折率は1.82であった。
【0047】
次に、透明保護膜の材料について説明する。
(透明保護膜材料1)
100mLポリ容器中に、エタノール20gを入れ、n-ブチルシリケート40gを添加し30分間撹拌した。その後、0.1N塩酸水溶液を10g添加した後2時間撹拌を行い(加水分解反応)、4℃で保管した。翌日、この溶液をイソプロピルアルコール、トルエンとn−ブタノール混合液(混合質量比2対1対1)で固形分濃度が、1.0質量%となるように希釈した。この液をシリコンウエハーに塗布、乾燥した膜の屈折率を(1)の方法で測定した。屈折率は、1.44であった。
(透明保護膜材料2)
中国塗料(株)製のフォルシード420C(固形分濃度50質量%、アクリル樹脂)をトルエンで、固形分濃度1.0質量%まで希釈した。この液をシリコンウエハーに塗布、60℃で1分間乾燥後、紫外線を1.0J/cm2照射、硬化させた膜の屈折率を(1)の方法で測定した。屈折率は、1.50であった。
(透明保護膜材料3)
フラスコに0.83gのポリ[メラミン−co−ホルムアルデヒド]溶液(アルドリッチ製、固形分濃度84質量%、1−ブタノール溶液)、0.3gの固形エポキシ樹脂157S70(ジャパンエポキシレジン社製)、および、98.9gの2−ブタノンを入れ、室温で30分撹拌し、均一な樹脂溶液を調製した。これとは別に0.1gの熱重合開始剤キュアゾール2MZ(四国化成社製)を9.9gの1−プロパノールに溶解させ、熱開始剤溶液を調製した。前述の樹脂溶液100mlと熱開始剤溶液1mlを混合して、熱硬化性樹脂組成物の溶液(固形分濃度約1質量%、メラミン樹脂:固形エポキシ樹脂=70質量部:30質量部)を得た。この液をシリコンウエハーに塗布、乾燥した珪素酸化物の膜の屈折率を(1)の方法で測定した。屈折率は、1.60であった。
【0048】
(実施例1)
厚み100μmのポリエチレンレテフタレートフィルム、ルミラー(登録商標)U46(東レ(株)製)を基材として、片面に中国塗料(株)製のフォルシード420C(固形分濃度50質量%)をトルエンで、固形分濃度30質量%まで希釈したハードコート剤をマイクログラビアコーター(グラビア線番200UR、グラビア回転比100%)で塗布、60℃で1分間乾燥後、紫外線を1.0J/cm2照射、硬化させ、厚み3μmのハードコート層を設けた。
【0049】
次に、ハードコート層を設けた反対面に、CNT塗液をマイクログラビアコーター(グラビア線番100UR、グラビア回転比80%)で塗布、80℃で1分間乾燥する操作を2回繰り返し、表面抵抗値260Ω/□のCNT導電膜を設けた。このCNT導電膜付き透明導電フィルムの全線透過率は82.8%であった。
【0050】
次に、CNT導電膜上に固形分濃度1.0質量%の透明保護膜材料1の塗液をマイクログラビアコート(グラビア線番110UR、グラビア回転比170%)で塗布、125℃で1分間乾燥し、透明導電積層体を得、(2)〜(6)の評価を実施した。
【0051】
(実施例2)
厚み188μmのポリエチレンレテフタレートフィルム、ルミラーU46を基材として、
実施例1と同様のハードコート剤をグラビア線番100UR、グラビア回転比100%で塗布、乾燥、紫外線で硬化させ、厚み5μmのハードコート層を設けた。
【0052】
ハードコート層を設けた反対面にCNT塗液を実施例1と同様の塗工方法で塗布し、
表面抵抗値225Ω/□のCNT導電膜を設けた。このCNT導電膜付き透明導電フィルムの全線透過率は82.1%であった。次に、CNT導電膜上に固形分濃度1.0質量%の透明保護膜材料1の塗液をマイクログラビアコート(グラビア線番110UR、グラビア回転比100%)で塗布、125℃で1分間乾燥し、透明導電積層体を得、(2)〜(6)の評価を実施した。
【0053】
(実施例3)
実施例2と同様にしてハードコート層、及び、ハードコート層を設けた反対面にCNT導電膜を設けた。このCNT導電膜の表面抵抗値は、231Ω/□であり、このCNT導電膜付き透明導電フィルムの全線透過率は82.6%であった。
【0054】
次に、CNT導電膜上に固形分濃度1.0質量%の透明保護膜材料1の塗液をマイクログラビアコート(グラビア線番100UR、グラビア回転比100%)で塗布、125℃で1分間乾燥し、透明導電積層体を得、(2)〜(6)の評価を実施した。
(実施例4)
実施例2と同様にしてハードコート層、及び、ハードコート層を設けた反対面にCNT導電膜を設けた。このCNT導電膜の表面抵抗値は、240Ω/□であり、このCNT導電膜付き透明導電フィルムの全線透過率は82.5%であった。
【0055】
次に、CNT導電膜上に固形分濃度1.0質量%の透明保護膜材料1の塗液をマイクログラビアコート(グラビア線番80UR、グラビア回転比100%)で塗布、125℃で1分間乾燥し、透明導電積層体を得、(2)〜(6)の評価を実施した。
【0056】
(実施例5)
実施例2と同様にしてハードコート層、及び、ハードコート層を設けた反対面にCNT導電膜を設けた。このCNT導電膜の表面抵抗値は、260Ω/□であり、このCNT導電膜付き透明導電フィルムの全線透過率は83.1%であった。
【0057】
次に、CNT導電膜上に固形分濃度1.0質量%の透明保護膜材料1の塗液をマイクログラビアコート(グラビア線番55UR、グラビア回転比80%)で塗布、125℃で1分間乾燥し、透明導電積層体を得、(2)〜(6)の評価を実施した。
(実施例6)
実施例2と同様にしてハードコート層、及び、ハードコート層を設けた反対面にCNT導電膜を設けた。このCNT導電膜の表面抵抗値は、243Ω/□であり、このCNT導電膜付き透明導電フィルムの全線透過率は82.5%であった。
【0058】
次に、CNT導電膜上に固形分濃度1.0質量%の透明保護膜材料2の塗液をマイクログラビアコート(グラビア線番110UR、グラビア回転比120%)で塗布、60℃で1分間乾燥後、紫外線を1.0J/cm2照射、硬化させ、透明導電積層体を得、(2)〜(6)の評価を実施した。
(実施例7)
実施例2と同様にしてハードコート層、及び、ハードコート層を設けた反対面にCNT導電膜を設けた。このCNT導電膜の表面抵抗値は、260Ω/□であり、このCNT導電膜付き透明導電フィルムの全線透過率は83.5%であった。
【0059】
次に、CNT導電膜上に固形分濃度1.0質量%の透明保護膜材料1の塗液をマイクログラビアコート(グラビア線番150UR、グラビア回転比100%)で塗布、125℃で1分間乾燥し、透明導電積層体を得、(2)〜(6)の評価を実施した。
(比較例1)市販されている基材厚み175μm、ITOフィルム ハイビーム(登録商標)(東レフィルム加工(株)製)を用い、(2)〜(6)の評価を実施した。
(比較例2)ハードコート層は実施例2と同様の手法で設けた。その逆面にCNT塗液をバーコーター#10で塗布、80℃で1分間乾燥させ、表面抵抗値260Ω/□のCNT導電膜を設けた。このCNT導電膜付き透明導電フィルムの全光線透過率は82.1%であった。次に、CNT導電膜上に固形分濃度1.0質量%の透明保護膜材料1の塗液をバーコーター#14で塗布、125℃で1分間乾燥し、透明導電積層体を得、(2)〜(6)の評価を実施した。
(比較例3)透明保護膜材料1の塗液をバーコーター#20で塗布した以外は比較例2と同様にして透明導電積層体を得、(2)〜(6)の評価を実施した。
(比較例4)透明保護膜材料3の塗液をバーコーター#8で塗布した以外は比較例2と同様にして透明導電積層体を得、(2)〜(6)の評価を実施した。
【0060】
【表1】

【0061】
実施例1〜7の透明導電積層体のフィルムは、透明導電保護膜側の光学厚みが10〜120nmの範囲にあり、全線透過率が85%以上、透過光色調a値とb値とも−2.0以上2.0以下、耐屈曲性が1.1、と透過率が高く、ニュートラル色が得られ、かつ折れ曲がりに強く、電子ペーパー用途に適した透明導電フィルムが得られた。
【0062】
一方、比較例1は、耐屈曲性が極端に悪い。また、透過光が黄色に認識された。また、比較例2、3、4は透過率の点で劣る。比較例2においては、さらに、透過光が黄色に認識された。また、比較例2、3は、耐屈曲性が1.2以上と一般に抵抗値変動の閾値とされる10%以内の変化を越えている。実際の使用条件においては、本実施例で述べた対屈曲試験よりも過酷な状況が想定され、その場合、本試験で得られた結果よりも、実施例と比較例の抵抗値変化率の差は大きくなる。
【符号の説明】
【0063】
101 透明基材
102 CNT導電膜
103 透明導電積層体
104 正に帯電した白色顔料粒子
105 透明分散媒
106 負に帯電した黒色顔料粒子
107 マイクロカプセル
108 下部電極
109 支持基材
110 下部電極複合体
201 端子電極
202 金属円柱
203 透明導電積層体
301 反応器
302 石英焼結板
303 密閉型触媒供給機
304 触媒投入ライン
305 原料ガス供給ライン
306 排ガスライン
307 加熱器
308 点検口
309 触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み20〜188μmの透明基材の少なくとも片面上にカーボンナノチューブ導電膜と透明保護膜とが透明基材側からこの順に設けられた透明導電積層体であって、前記透明保護膜の厚みが10〜120nmの範囲にあり、前記透明保護膜側の反射率曲線の極小値が280〜700nmの波長範囲にあり、かつ波長380〜780nmにおける透明保護膜側の平均反射率が2.5%以下である透明導電積層体。
【請求項2】
前記透明保護層の厚みが50〜120nmの範囲にある請求項1に記載の透明導電積層体。
【請求項3】
前記透明保護膜側の反射率曲線の極小値が350〜550nmの波長範囲にある請求項1または2に記載の透明導電積層体。
【請求項4】
前記透明保護膜の屈折率と前記カーボンナノチューブ導電膜の屈折率との差が0.3以上で、かつカーボンナノチューブ導電膜の屈折率が透明保護膜の屈折率より高く、かつカーボンナノチューブ導電膜の屈折率が1.6〜1.9の範囲にある請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電積層体。
【請求項5】
透明導電積層体のJIS Z8729に基づいたL、a、b表示色系における透過光色調aが−2.0以上2.0以下、かつbが−2.0以上2.0以下である請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電積層体。
【請求項6】
前記透明保護膜側の表面抵抗値が1×100Ω/□以上1×10Ω/□以下である請求項1〜5のいずれかに記載の透明導電積層体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の透明導電積層体を用いた電子ペーパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−66580(P2012−66580A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178276(P2011−178276)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】