説明

透明電極パターンの形成方法

【課題】表面荒れが少なく、光の透過率の高い透明電極パターンを容易に形成できる技術を提供する。
【解決手段】本発明の透明電極パターンの形成方法によれば、基材の一面に透明電極層を形成する透明電極層形成工程と、前記透明電極層の一部を覆い、前記透明電極層の他部を露出するようにパターニングされたマスクを形成するマスク形成工程と、前記マスクおよび前記透明電極層の表面に金属膜を成膜する金属膜成膜工程と、エッチングにより前記金属膜の一部を残し金属配線を形成し、前記マスクの一部と前記透明電極層の前記他部の一部を露出させる第1エッチング工程と、前記第1エッチング工程で露出した前記透明電極層を前記マスクの一部をマスクとしてエッチングすることにより透明電極のパターンを形成する第2エッチング工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明電極パターンの形成方法に関するものであり、静電容量センサに好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来の基板上に形成された透明導電膜パターン上に金属電極膜を形成する方法として、図4(a)ないし(f)に示すような形成方法が知られている。
【0003】
これらの図を用いて、透明導電膜パターン上に金属電極膜を形成する方法を説明する。
【0004】
まず、図4(a)に示すように、基板106上に透明導電膜104を蒸着する。次に、ポジ型レジスト107を透明導電膜104上に塗布し、フォトマスク108を介してレジスト107を露光する。次に、図4(b)に示すように、露光後に現像を行ってレジストパターン107を形成する。次に、図4(c)に示すように、レジスト107をマスクとして透明導電膜104をエッチングしパターン形成を行い、レジスト107を剥離する。次に、図4(d),(e)に示すように、新たにポジ型レジスト207をパターン形成された透明導電膜104上に塗布し、フォトマスク208を介してレジスト207を露光、現像を行ってレジストパターン207を形成する。その後、露光後に現像を行ってレジストパターン207形成面上に金属を真空蒸着し、金属電極膜109を形成する。最後に、図4(f)に示すように、レジスト207上の金属電極膜109とレジストパターン207を剥離することで、透明導電膜パターン上に金属電極膜109を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭60−19608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
透明導電膜104と金属電極膜109のパターン形成のために、それぞれレジストを形成する必要があり、工程が煩雑となったり、またレジスト107,207の剥離を行う際、透明導電膜104の表面が、剥離液に曝され、表面荒れが発生し、透明導電膜104の光の透過率が悪くなる問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による透明電極パターンの形成方法は、基材の一面に透明電極層を形成する透明電極層形成工程と、前記透明電極層の一部を覆い、前記透明電極層の他部を露出するようにパターニングされたマスクを形成するマスク形成工程と、前記マスクおよび前記透明電極層の表面に金属膜を成膜する金属膜成膜工程と、エッチングにより前記金属膜の一部を残し金属配線を形成し、前記マスクの一部と前記透明電極層の前記他部の一部を露出させる第1エッチング工程と、前記第1エッチング工程で露出した前記透明電極層を前記マスクの一部をマスクとしてエッチングすることにより透明電極のパターンを形成する第2エッチング工程と、 を有することにより、容易に透明電極パターンを形成でき、透明電極のパターンは剥離液に曝されることがなく、表面荒れも防止でき、光の透過率が高くなる。
【0008】
また、本発明による透明電極パターンの形成方法は、前記第1のエッチング工程と前記第2のエッチング工程を同じエッチング剤で連続的に行うことにより、より容易に透明電極パターンが形成できる。
【0009】
また、本発明による透明電極パターンの形成方法は、前記マスク形成工程において、前記マスクのパターンが、前記透明電極層上に直接描画されることにより、さらに容易に透明電極パターンが形成できるとともに、マスク形成工程において透明電極層の上に膜を形成する処理を行わずに金属膜を形成できるため、透明電極層と金属膜との間の接触抵抗を低減できる。
【0010】
また、本発明による透明電極パターンの形成方法は、前記マスク形成工程において、前記マスクが、ガラスコート剤またはシリカコート剤を印刷で形成されることにより、さらに容易に透明電極パターンが形成できる。ガラスコート剤やシリカコート剤は通常エッチングに用いる溶液に対して十分な耐性を有しており、また十分な透明性を有するため剥離せずにそのまま透明電極パターンとして用いることが出来るためである。
【0011】
また、本発明による透明電極パターンの形成方法は、当該第1エッチング工程の前に、前記第1エッチングに用いるためのレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程を有していることにより、より確実な透明電極パターンが形成できる。
【0012】
また、本発明による透明電極パターンの形成方法において、前記透明電極層が、金属酸化物系の材料からなり、前記金属膜が、銅であり、前記エッチング剤は、塩化第二鉄溶液を含むことにより、透明電極層と金属膜とを同時に良好な制御性でエッチング可能となり、より確実な透明電極パターンが形成できる。
【0013】
また、本発明による透明電極パターンの形成方法において、前記マスクの屈折率は、前記透明電極層の屈折率よりも低いことにより、光の透過率の高い透明電極パターンが形成できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、表面荒れが少なく、光の透過率の高い透明電極パターンを容易に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す透明電極パターンの平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示す工程フローを示す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を示す工程フローを示す断面図である。
【図4】従来の透明電極パターン形成の工程フローを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について図を参照しながら詳細に説明をする。
【0017】
[第1実施形態]
図1は、本発明の実施形態を説明するための平面図である。図2は、本発明の工程フローを説明するための断面図であり、図2A(図2の左側)は図1のA−A線断面図、図2B(図2の右側)は図1のB−B線断面図である。
【0018】
図1は、本実施形態を示す透明電極パターン14の平面図を示している。図1に示すようにマスク1のライン幅は、50μmで形成されており、透明電極パターン14の一部と重なっている。また、隣り合うマスク1間のスペース幅は、約90μmで形成されており、透明電極パターン14の一部と重なっている(このスペース幅は、50μm〜90μmでも良い)。次に、図2に基づきそれぞれの工程を説明する。
【0019】
図2A(a)及び図2B(a)は、基材6の一面に透明電極層4を形成する透明電極層形成工程を示している。基材6はガラスコート材が一面に塗布されたPET基材もしくはガラス基板であっても良い。基材6の一面に、透明電極層4としてITO膜をスパッタ法において、膜厚50nmを形成する。尚、透明電極層4としては、ZnO膜やSb膜のような金属酸化物系の屈折率1.7〜2.1程度の材料であっても良い。
【0020】
図2A(b)及び図2B(b)は、透明電極層4の一部を覆い、透明電極層4の他部を露出するようにパターニングされたマスク1を形成するマスク形成工程を示している。マスク1は、ガラスコート材をスクリーン印刷により、透明電極層4上にパターニングされ、膜厚0.5μm、ライン幅50μmで直接描画される。このマスク1のライン幅で透明電極パターン14のライン幅が規定されることになる(後述のエッチング工程で、マスク1を用いて透明電極層4をエッチングし、透明電極パターン14が形成される)。ここで、直接描画について補足説明する。マスクパターン形成のために、レジスト形成を行い、所定のマスクで露光・現像を行う方法に対して、本実施形態において、マスク1のパターンは、スクリーン印刷により直接描画される。すなわち、レジスト形成、露光、現像を行うことなくマスクパターンは直接描画されている。
【0021】
なお、マスク1は、ガラスコート材について示したが、シリカやシリコ−ン系樹脂、アクリル系樹脂のような屈折率が1.4〜1.6程度の材質のものを使用してもかまわない。尚、マスク1のパターニングは、メタルマスクを使用したSiO膜のスパッタ法等の成膜で形成しても良い。
【0022】
図2A(c)及び図2B(c)は、金属膜形成工程を示している。基材6上のマスク1および透明電極層4の表面に、スパッタ法により銅を膜厚1μm成膜し、金属膜9を形成する。これにより、透明電極層4と金属膜9との電気的な接続が行われる。金属膜9は、抵抗率の低い金や銀であってもかまわないが、その後の工程でのエッチングの容易性やコストを鑑みると、銅であることが望ましい。金属膜9として低抵抗な銅を用いた場合、いわゆる額縁配線に有用であり、センサ素子の小型化に効果がある。
【0023】
図2A(d)及び図2B(d)は、レジストパターン形成工程を示している。金属膜9の表面上にロールコート法等により、レジスト膜を膜厚5μm程度塗布される。レジスト膜は露光・現像により、パターニングされ、幅300μmのレジストパターン17が形成される。
【0024】
図2A(e)及び図2B(e)は、第1エッチング工程を示している。エッチング剤は、塩化第二銅溶液を用いる。前記金属膜9が、塩化第二銅溶液に浸漬されることにより、レジストパターン17によって隠されていない部分の前記金属膜9がエッチングされる。これにより、除去された金属膜9の下にあったマスク1および透明電極層4の一部が露出する(上述のマスク形成工程で、マスク1で覆われていない透明導電層4の他部の一部が、第1エッチング工程で露出される)。このエッチングにより、金属配線19が形成される。なお、前述のレジストパターン形成工程は任意の工程であり、第1エッチング工程は、レジストパターン17を形成しないで、所定のパターンが形成されたエッチング用マスクを用いて行っても良い。
【0025】
図2A(f)及び図2B(f)は、第2エッチング工程を示している。前記第1エッチング工程により露出したマスク1および透明電極層4の一部が、塩化第二鉄溶液と塩酸の混合溶液に浸漬されることにより、マスク1によって隠されていない部分の透明電極層4がエッチングされ、透明電極パターン14が形成される。
【0026】
以上の工程を経ることにより、容易に透明電極パターン14を形成でき、透明電極パターン14は剥離液等溶液に曝されることがなく、表面荒れも防止でき、光の透過率が高くなる。また、透明電極パターン14の表面荒れを防止できることにより、透明電極パターン14と金属配線19とが低抵抗に接続される。
[第2実施形態]
次に、本発明の他の実施形態を図3に示す。図3は、本発明の工程フローを説明するための断面図であり、図3A(図3の左側)は図1のA−A線断面図、図3B(図3の右側)は図1のB−B線断面図である。
【0027】
図3A(a)及び図3B(a)は、基材6の一面に透明電極層4を形成する透明電極層形成工程を示している。基材6はガラスコート材が一面に塗布されたPET基材であり、基材6の一面に、透明電極層4としてITO膜をスパッタ法において、膜厚50nmを形成する。
【0028】
図3A(b)及び図3B(b)は、マスク膜の形成工程を示している。マスク膜11は、基材6上の透明電極層4の表面に形成される。マスク膜の材質は、SiO膜であり、スパッタ法において、膜厚0.5μmを形成する。
【0029】
図3A(c)及び図3B(c)は、マスク膜用レジストのパターン形成工程を示している。マスク膜11の表面上にロールコート法等により、レジスト膜を膜厚5μm程度塗布される。レジスト膜は露光・現像により、パターニングされ、マスク膜用レジストパターン21が形成される。
【0030】
図3A(d)及び図3B(d)は、マスク形成工程を示している。マスク膜11は、バッファードフッ酸溶液に浸漬されることにより、マスク用レジストパターン21によって隠されていない部分のマスク膜11がエッチングされ、透明電極層4の一部が露出すると共に、ライン幅50μmのマスク1が形成される。マスク1形成後には、マスク用レジストパターン21は、アセトン溶液等により、速やかに除去される。これにより、透明電極層4の一部を覆い、透明電極層4の他部を露出するようにパターニングされたマスク1が形成される。また、マスク1のライン幅で透明電極パターン14のライン幅が規定されることになる(後述のエッチング工程で、マスク1を用いて透明電極層4をエッチングし、透明電極パターン14が形成される)。
【0031】
図3A(e)及び図3B(e)は、金属膜形成工程を示している。マスク1および透明電極層4の表面に、スパッタ法により銅を膜厚1μm成膜し、金属膜9を形成する。
【0032】
図3A(f)及び図3B(f)は、レジストパターン形成工程を示している。金属膜9の表面上にロールコート法等により、レジスト膜を膜厚5μm程度塗布される。レジスト膜は露光・現像により、パターニングされ、幅300μmのレジストパターン17が形成される。
【0033】
図3A(g)及び図3B(g)は、第1・第2の連続エッチング工程を示している。エッチング剤は、塩化第二鉄溶液と塩酸の混合溶液を用いる。前記金属膜9が、塩化第二鉄溶液と塩酸の混合溶液に浸漬されることにより、レジストパターン17によって隠されていない部分の前記金属膜9がエッチングされる。これにより除去された金属膜9の下にあったマスク1および透明電極層4の一部が露出し、第1のエッチングが完了する(上述のマスク形成工程で、マスク1で覆われていない透明導電層4の他部の一部が、第1エッチング工程で露出される)。このエッチングにより、金属配線19が形成される。引き続き第2のエッチング工程では、第1のエッチングで使用した塩化第二鉄溶液と塩酸の混合溶液に引き続き連続で浸漬されることにより、マスク1によって隠されていない部分の透明電極層4がエッチングされ、透明電極パターン14が形成される。なお、前述のレジストパターン形成工程は任意の工程であり、第1エッチング工程は、レジストパターン17を形成しないで、所定のパターンが形成されたエッチング用マスクを用いて行っても良い。
【0034】
以上の工程を経ることにより、容易に透明電極パターン14を形成でき、透明電極パターン14は剥離液等溶液に曝されることがなく、表面荒れも防止でき、光の透過率が高くなる。また、透明電極パターン14の表面荒れを防止できることにより、透明電極パターン14と金属配線19とが低抵抗に接続される。
【符号の説明】
【0035】
1 マスク
4 透明電極層
6 基材
9 金属膜
14 透明電極パターン
17 レジストパターン
19 金属配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一面に透明電極層を形成する透明電極層形成工程と、
前記透明電極層の一部を覆い、前記透明電極層の他部を露出するようにパターニングされたマスクを形成するマスク形成工程と、
前記マスクおよび前記透明電極層の表面に金属膜を成膜する金属膜成膜工程と、
エッチングにより前記金属膜の一部を残し金属配線を形成し、前記マスクの一部と前記透明電極層の前記他部の一部を露出させる第1エッチング工程と、
前記第1エッチング工程で露出した前記透明電極層を前記マスクの一部をマスクとしてエッチングすることにより透明電極のパターンを形成する第2エッチング工程と、
を有することを特徴とする透明電極パターン形成方法。
【請求項2】
前記第1のエッチング工程と前記第2のエッチング工程を同じエッチング剤で連続的に行うことを特徴とする請求項1に記載の透明電極パターン形成方法。
【請求項3】
前記マスク形成工程において、前記マスクのパターンが、前記透明電極層上に直接描画されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の透明電極パターン形成方法。
【請求項4】
前記マスク形成工程において、前記マスクが、ガラスコート剤またはシリカコート剤を印刷で形成されることを特徴とする請求項3に記載の透明電極パターン形成方法。
【請求項5】
前記第1エッチング工程の前に、当該1エッチングに用いるためのレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程を有していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の透明電極パターン形成方法。
【請求項6】
前記透明電極層は、金属酸化物系の材料からなり、前記金属膜は、銅であり、前記エッチング剤は、塩化第二鉄溶液を含むことを特徴とする請求項2に記載の透明電極パターン形成方法。
【請求項7】
前記マスクの屈折率は、前記透明電極層の屈折率よりも低いことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の透明電極パターン形成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−114194(P2011−114194A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269803(P2009−269803)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】