説明

透湿防水シートおよび透湿防水複合シート

【課題】耐熱性、難燃性を有し、軽量で柔軟性があり、透湿性、防水性に優れた透湿防水シートおよび透湿防水複合シートを提供する。
【解決手段】繊維軸と直交する断面直径が10〜500nmの芳香族ポリアミドナノファイバーからなる耐水圧が400mm(水柱)以上、透湿度が8000g/m・24h以上である透湿防水シートとする。また、繊維軸と直交する断面直径が10〜500nmの芳香族ポリアミドナノファイバーからなる1層以上ナノファイバー層と、繊維軸と直交する断面直径が0.5〜50μm繊維からなる1層以上の繊維構造体層とを積層してなり、耐水圧が400mm(水柱)以上、透湿度が8000g/m・24h以上である透湿防水複合シートとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透湿防水シートおよび透湿防水複合シートに関し、さらに難燃性および耐熱性が必要とされる防護衣料、アウトドア衣料、建築材などに好適な透湿防水シートおよび透湿防水複合シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物では、外気の進入を防ぐために密閉性を高め、断熱性を高めるために、内装材と外壁との間に保温材を充填することが一般的である。しかし、気密性の向上により、冬期には温暖な屋内にて発生した水蒸気が、内装材と外壁との間で結露しやすく、この水滴が保温材や建築材を傷める問題があった。これらの問題を改善するため、室内で発生した水蒸気を屋外へ逃がす透湿性を有し、外気の進入を防ぐため適度な防風性、屋内外からの水滴の侵入を防ぐ防水性が必要とされる。
【0003】
そのため、近年、メルトブロー極細繊維不織布を使用した透湿防水シート(特許文献1)が開発されている。しかし、メルトブロー不織布は一般的にポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により製造されているため、耐熱性に劣るポリオレフィン樹脂の特性に加え、極細繊維の高比表面積により、該不織布は熱劣化による風化紛体化する怖れがあり、耐久性に問題があった。
【0004】
また、消防服等の防護衣料、防寒衣料等のアウトドア衣料においても、外気を遮断し、人体を保護する必要があるが、外気を遮断可能な低通気性布帛においては、発汗により衣服内が蒸れやすく、不快感を与える問題があった。そのため、衣服内に溜まった汗を衣服外に排出する透湿性も同時に必要とされる。この問題を解決するために、ポリテトラフルオロエチレン膜を積層した透湿防水シート(特許文献2)も開示されているが、風合いが硬いため、防護衣料、アウトドア衣料に適した素材ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2505648号公報
【特許文献2】特開平4−41778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、耐熱性、難燃性を有し、軽量で柔軟性があり、透湿性、防水性に優れた透湿防水シートおよび透湿防水複合シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が鋭意検討したところ、上記課題は、以下に記載するシート構成とすることにより、解決可能であることを見出した。
すなわち本発明は、繊維軸と直交する断面直径が10〜500nmの芳香族ポリアミドナノファイバーからなる耐水圧が400mm(水柱)以上、透湿度が8000g/m・24h以上である透湿防水シートである。
【0008】
また、他の本発明は、繊維軸と直交する断面直径が10〜500nmの芳香族ポリアミドナノファイバーからなる1層以上ナノファイバー層と、繊維軸と直交する断面直径が0.5〜50μm繊維からなる1層以上の繊維構造体層とを積層してなり、耐水圧が400mm(水柱)以上、透湿度が8000g/m・24h以上である透湿防水複合シートである。
【0009】
上記透湿防水シートおよび透湿防水複合シートにおいては、芳香族ポリアミドナノファイバーを構成する芳香族ポリアミドが、下記の式(1)で示される反復構造単位を含む芳香族ポリアミド骨格中に、反復構造の主たる構造単位とは異なる芳香族ジアミン成分、または芳香族ジカルボン酸ハライド成分を、第3成分として芳香族ポリアミドの反復構造単位の全量に対し1〜10mol%となるように共重合させた芳香族ポリアミドであることが好ましい。
−(NH−Ar1−NH−CO−Ar1−CO)− ・・・式(1)
ここで、Ar1はメタ配位又は平行軸方向以外に結合基を有する2価の芳香族基である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ナノファイバーの小孔径の優位性を充分に発現できるため、透湿性、防水性に優れた高性能の透湿防水シートおよび透湿防水複合シートが得られる。さらには難燃性、耐熱性に優れる全芳香族アラミドポリマーからなるナノファイバーを使用していることにより、極細繊維の適用が困難であった高温雰囲気下および火気近接雰囲気下においても使用可能な透湿防水シートおよび透湿防水複合シートが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における透湿防水シートは繊維軸と直交する断面直径が10〜500nmの芳香族ポリアミドナノファイバーからなる耐水圧が400mm(水柱)以上、透湿度が8000g/m・24h以上であることを特徴とする。
【0012】
透湿防水シートを構成するナノファイバーの断面直径は、10〜500nmである必要があるが、好ましくは50〜300nmである。断面直径が10nm未満であると得られる強力が著しく低下するために破損しやすくなり、一方、ナノファイバーの断面直径が500nmを越えると、ナノメートルオーダー特有とされる種々特徴、例えば、高い透湿防水性能が発現されにくくなる。
【0013】
上記ナノファイバーの目付は透湿防水性能の観点より、1〜20g/mが好ましく、2〜10g/mがより好ましい。これにより上記の耐水圧および透湿度を容易に達成することができる。
【0014】
また、上記透湿防水シートはナノファイバー単独でもよく、取扱性を向上させるため、芳香族ポリアミドナノファイバー以外の繊維が含まれてもよい。該繊維の繊維軸と直交する断面直径が0.5〜100μmであることが好ましい。
【0015】
また、本発明の透湿防水複合シートは、上記の断面直径が10〜500nmの芳香族ポリアミドナノファイバーからなる1層以上ナノファイバー層と、繊維軸と直交する断面直径が0.5〜50μm繊維からなる1層以上の繊維構造体層とを積層してなり、耐水圧が400mm(水柱)以上、透湿度が8000g/m・24h以上である透湿防水複合シートであることを特徴とする。上記繊維構造体は、織物、編物、不織布あるいはこれらいずれかの組合せであってもよい。
【0016】
上記透湿防水シートに含有する繊維の含有量(目付換算)、および、上記透湿防水複合シートに使用する繊維構造体の目付は、40〜2000g/mが好ましく、40〜1000g/mがより好ましい。一方、上記繊維の含有量(目付換算)、および、繊維構造体の目付が、40g/m未満であると取扱性があまり向上せず、一方、2000g/mを超えると軽量化ができず柔軟性も低下し、高コストにもなる。また、かかる繊維構造体の目付けの範囲とすることで、前述した目付けのナノファイバーをこれに積層しても上記の耐水圧および透湿度を容易に達成することができる。
【0017】
また、前述したように透湿防水シートに含有する繊維、および、透湿防水複合シートに使用する繊維構造体を構成する繊維の、繊維軸と直交する断面直径は0.5〜100μmであり、好ましくは0.5〜50μmである。該断面直径が、0.5μm未満であると取扱性があまり向上せず、一方、100μmを超えると柔軟性が低下する。
【0018】
上記の透湿防水シートに含有する繊維、および、透湿防水複合シートに含有する繊維には、特に限定されるものではないが、セルロース繊維、タンパク質繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、ナイロン6、ナイロン66などのナイロン系、芳香族ポリアミドなどの有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維、スチール繊維などの金属繊維を使用することができる。
上記の透湿防水シートおよび透湿防水複合シートは、カレンダー加工、エンボス加工等により、熱処理、加圧処理、熱圧処理を施されていてもしてもよい。
【0019】
また、本発明の透湿防水シートおよび透湿防水シートは、耐水圧が500mm(水柱)以上であり、実用上十分な防水性が確保することができる。また、透湿度は8000g/m・24hであり十分に水蒸気を透過させ、例えば衣服として着用し、活動する場合の快適性を向上させることができる。また、これを建材に用いても、優れた防風性、防水性を発揮し、一方で水蒸気は屋外に逃がすため結露が発生しにくい。
【0020】
本発明の透湿防水シートは、例えば以下の方法により製造することができる。一つの方法としては、芳香族ポリアミド溶液を、高電圧を印加して後でナノファイバー層を剥離し易い、織物、フィルム、紙等の上に、スプレーしてナノファイバーを形成する方法を好ましく例示することができる。また、得られるナノファイバーの断面直径は印加電圧、溶液濃度、スプレーの飛散距離等に依存し、これらの条件を調整することで任意の断面直径とすることができる。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを用いることができる。
【0021】
上記電解紡糸と条件しては、濃度は1〜16%、電圧は5.0〜70kV、紡糸距離は5.0〜50cm、単位距離あたりの電圧に換算すると、0.5〜7.0kv/cmであるのが好ましい。
【0022】
具体的には、芳香族ポリアミドポリマーと溶媒とを1:99〜16:84の重量比で溶解させたポリマー溶液を調製し、5〜70kVの電圧下で行うことにより前述した断面直径を有するアラミドナノファイバーを作製することができる。
【0023】
紡糸溶液の供給は、ノズルや口金から押し出す方法や、紡糸溶液中に浸した円盤やドラムに、必要量となるように紡糸溶液を付着させ、連続回転させることにより供給する方法が挙げられる。ノズルや口金から供給する場合、吐出部の内径はナノファイバーの断面直径と相関がないため、限定はない。
【0024】
ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ナイロン6、ポリウレタンなどナノファイバーを容易に成形可能な材料もあるが、難燃性および耐熱性に劣り、高温雰囲気下において長時間使用しにくく、好ましくない。
【0025】
透湿防水シートを構成する芳香族ポリアミドナノファイバーにおいて、該芳香族ポリアミドは、下記の式(1)で示される反復構造単位を含む芳香族ポリアミド骨格中に、反復構造の主たる構造単位とは異なる芳香族ジアミン成分、または芳香族ジカルボン酸ハライド成分を、第3成分として芳香族ポリアミドの反復構造単位の全量に対し1〜10mol%となるように、共重合させた芳香族ポリアミドであることが好ましい。
−(NH−Ar1−NH−CO−Ar1−CO)− ・・・式(1)
ここで、Ar1はメタ配位又は平行軸方向以外に結合基を有する2価の芳香族基である。
【0026】
さらに好ましくは、第3成分となる芳香族ジアミンが、式(2)または(3)、芳香族ジカルボン酸ハライドが、式(4)または(5)であることが好ましい。
N−Ar2−NH ・・・式(2)
N−Ar2−Y−Ar2−NH ・・・式(3)
XOC−Ar3−COX ・・・式(4)
XOC−Ar3−Y−Ar3−COX ・・・式(5)
ここで、Ar2はAr1とは異なる2価の芳香族基、Ar3はAr1と異なる2価の芳香族基、Yは酸素原子、硫黄原子、アルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の原子又は官能基であり、Xはハロゲン原子を表す。
【0027】
上記の第3成分を共重合することにより、分子鎖構造が乱れて結晶性が低下し、紡糸溶液の安定性が向上するため、該紡糸溶液から成形されたナノファイバーはビーズとよばれる節糸状のポリマー塊の発生が抑制されるため、透湿防水シートとして使用する際に、孔径が減少し、水の浸透を抑制できるため、透湿防水性が向上する。また、紡糸溶液の安定化を向上させる方法として上記方法以外に、アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩などを添加する方法もあるが、ナノファイバー中に塩が残留し、該残留塩の漏出により、これに近接する部材の腐食を引き起こす可能性があり、好ましくない。
【0028】
第3成分の含有率が1mol%未満であると、紡糸溶液にゲル化が生じるため好ましくなく、また、10mol%を超えると、紡糸溶液の粘度が上昇し、目的の断面直径を有するナノファイバーを得にくく、好ましくない。
【0029】
前述した芳香族ポリアミドナノファイバー以外の他の繊維を含む透湿防水シートは、電界紡糸によりナノファイバーを形成する際に、同時にスパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法などにより該他の繊維を紡糸し、風等にて電界紡糸空間に該他の繊維を浮遊させるなどして、ナノファイバー中に混在させることによって製造することができる。
【0030】
また、ナノファイバー層と繊維構造体層とを積層した透湿防水複合シートの製造方法としては、電界紡糸によりナノファイバーを紡糸する際に、直接、繊維構造体上にナノファイバーを積層する方法が好ましい。また、前述したようにナノファイバー層を別途作成しておき、後で繊維構造体に積層してもよい。
【0031】
さらに、本発明においては、ナノファイバー層と繊維構造体層とを積層させた後、熱処理、加圧加熱処理などを施すことにより、これらを強固に接着させることができる。また、ナノファイバー層と繊維構造体とを積層させる際、ナノファイバー層を積層させる繊維構造体の一方の面に接着剤を塗布しておき、これらをより強固に接着させてもよい。かかる接着加工を施すことにより、ナノファイバー層と繊維構造体の密着性が向上し、より加工性、取扱性に優れた透湿防水複合シートを得ることができる。
【0032】
上記接着剤は、特に限定されるものではないが、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂エマルジョン接着剤、酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤、シリコーン系接着剤などの有機系接着剤でもよく、シリカ系接着剤などの無機系接着剤が挙げられる。
【0033】
上記熱処理方法は、特に限定されるものではないが、スルーエアー加工などの熱処理、カレンダー加工、エンボス加工などの加圧加熱処理などが挙げられる。該加圧加熱処理では、加工条件として、温度30〜350℃、線圧30〜300kg/cmを好ましく採用することができる。
【0034】
本発明においては、ナノファイバー層、繊維構造体層は、ナノファイバー構造体、繊維構造体をそれぞれ複数層積層したものであってもよい。さらに、本発明の透湿防水複合シートにおいては、繊維構造体層上に積層したナノファイバー層の上にさらに、繊維構造体層を設け、ナノファイバー層を繊維構造体層では挟んだ構造としてもよい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。しかし、以下の例によって、本発明が限定されることはない。なお、実施例中の各特性値は下記の方法で測定した。
(1)断面直径
任意にサンプリングした100本のナノファイバーについて、走査型電子顕微鏡JSM6330F(JEOL社製)にて測定し、断面直径の平均値を求めた。なお測定は、上層および下層は3,000倍、中層は30,000倍の倍率で行った。
(2)目付
ナノファイバー層および繊維構造体を15cm角にサンプリング、質量を測定し、1m当たりの質量に換算し目付とした。また、ナノファイバーを直接、繊維構造体上に積層した場合は、同様に15cm角にサンプリング、繊維構造体およびナノファイバー積層後の複合繊維構造体の質量を測定し、両者の差を計算し、1m当たりの質量に換算し、目付とした。
(3)耐水圧
JIS−L1092A法に準じて測定した。
(4)透湿度
JIS−L1099(A−1法)に準じて測定した。
【0036】
[実施例1]
特公昭47−10863号公報記載の方法に準じた界面重合法により本発明の芳香族ポリアミドポリマーを下記のように製造した。
イソフタル酸ジクロライド25.25g(100mol%)を水分含有率2mg/100mlのテトラヒドロフラン125mlに溶解し、−25℃に冷却した。これを撹拌しながらメタフェニレンジアミン13.52g(100mol%)を、上記テトラヒドロフラン125mlに溶解した溶液を細流として約15分間にわたって添加し、白色の乳濁液(A)を作製した。これとは別に無水炭酸ナトリウム13.25gを水250mlに室温で溶かし、これを撹拌しながら5℃まで冷却して炭酸ナトリウム水和物結晶を析出させ分散液(B)を作製した。上記乳濁液(A)と分散液(B)とを激しく混合した。更に2分間混合を続けた後、200mlの水を加えて希釈し、生成重合体を白色粉末として沈殿させた。重合終了系からろ過、水洗、乾燥して目的とするポリマーを得た。
エレクトロスピニングは特開2006−336173号公報記載の方法に準じ、ナノファイバーを製造した。得られたポリマーをN,N−ジメチルアセトアミドに、10重量%となるように溶解させ、1kV/cmとなるように電界を作用させてエレクトロスピニングを実施し、導電性ポリオレフィンフィルムにナノファイバーを積層させ、さらに、これを導電性ポリオレフィンフィルムより剥離させ、ナノファイバー層のみからなる透湿防水シートを得た。透湿防水シートの目付は2.0g/mであった。結果を表1に示す。
【0037】
さらに、表地層には、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人テクノプロダクツ(株)製、商標名:コーネックス)とコポリパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人テクノプロダクツ(株)製、商標名:テクノーラ)とを混合比率が90:10となる割合で混合した耐熱繊維からなる紡績糸(20/2)を用いて2/1の綾織に織成した織物(目付:280g/m)、中間層には、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人テクノプロダクツ(株)製、商標名:コーネックス)とコポリパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人テクノプロダクツ(株)製、商標名:テクノーラ)とを混合比率が90:10となる割合で混合した耐熱繊維からなる紡績糸(番手:40/−)を織成した織布(目付:75g/m)、遮熱層には、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人テクノプロダクツ(株)製、商標名:コーネックス)とコポリパラフェニレン・3、4‘オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人テクノプロダクツ(株)製、商標名:テクノーラ)とを混合比率が90:10となる割合で混合した耐熱繊維からなる織布(目付:210g/m)を用い、これらの表地層、中間層、遮熱層の3層を重ねて用い、耐熱性防護服を得た。この際、中間層の織物に、上記で得られた透湿防水シートを、モメンティブジャパン製シリコーン接着剤でラミネートした。得られた耐熱性防護服について、着用試験をしたが、従来のポリテトラフルオロエチレン膜を使用した防護服より柔軟で、むれ感がなく快適であった。さらに、得られた耐熱防護服を、雰囲気温度200℃に1時間さらしたが、透湿防水シートの劣化は認められなかた。
【0038】
[実施例2]
イソフタル酸ジクロライド25.25g(100mol%)に代えて、イソフタル酸ジクロライド25.13g(99mol%)とテレフタル酸ジクロライド0.25g(1mol%)を使用した以外は、実施例1と同様にしてナノファイバー層のみからなる透湿防水シートを得た。結果を表1に示す。
また、得られた透湿防水シートを用いて実施例1と同様にして耐熱性防護服を作成し着用試験をしたが、従来のポリテトラフルオロエチレン膜を使用した防護服より柔軟で、むれ感がなく快適であった。さらに、雰囲気温度200℃に1時間さらしても透湿防水シートの劣化は認められなかった。
【0039】
[実施例3]
導電性ポリオレフィンフィルムに代えて、目付50g/m、断面直径16μmのポリエチレンテレフタレートからなるスパンボンド不織布(旭化成製エルタス)を用いた以外は実施例1と同様にして該不織布上にナノファイバーを積層させ積層体を得た。この際、ナノファイバー層の目付を0.5g/mに変更した。その後、得られた積層体に、温度150℃、50kg/cm、スペーサー1cm、ロール速度1m/minにてカレンダー加工を施し、ナノファイバー層と繊維構造体層からなる透湿防水複合シートを得た。結果を表1に示す。
また、得られた透湿防水複合シートを用いて実施例1と同様にして耐熱性防護服を作成し着用試験をしたが、従来のポリテトラフルオロエチレン膜を使用した防護服より柔軟で、むれ感がなく快適であった。さらに、雰囲気温度200℃に1時間さらしても透湿防水複合シートの劣化は認められなかった。
【0040】
[実施例4]
導電性ポリオレフィンフィルムに代えて、目付50g/m、断面直径16μmのポリエチレンテレフタレートからなるスパンボンド不織布(旭化成製エルタス)を用いた以外は実施例2と同様にして該不織布上をナノファイバーに積層させ積層体を得た。この際、ナノファイバー層の目付を0.5g/mに変更した。その後、得られた積層体に、温度150℃、50kg/cm、スペーサー1cm、ロール速度1m/minにてカレンダー加工を施し、ナノファイバー層と繊維構造体層からなる透湿防水複合シートを得た。結果を表1に示す。
また、得られた透湿防水複合シートを用いて実施例1と同様にして耐熱性防護服を作成し着用試験をしたが、従来のポリテトラフルオロエチレン膜を使用した防護服より柔軟で、むれ感がなく快適であった。さらに、雰囲気温度200℃に1時間さらしても透湿防水複合シートの劣化は認められなかった。
【0041】
[実施例5]
ナノファイバー目付を3.0g/mに変更する以外は、実施例4と同様にして、ナノファイバー層と繊維構造体層からなる透湿防水複合シートを得た。結果を表1に示す。
また、得られた透湿防水複合シートを用いて実施例1と同様にして耐熱性防護服を作成し着用試験をしたが、従来のポリテトラフルオロエチレン膜を使用した防護服より柔軟で、むれ感がなく快適であった。さらに、雰囲気温度200℃に1時間さらしても透湿防水複合シートの劣化は認められなかった。
さらに、得られた透湿防水複合シートを内装材と外壁との間に建材として1ヶ月設置したが結露は認められなかった。
【0042】
[実施例6]
芳香族ポリアミドポリマーをN,N−ジメチルアセトアミドに、16%となるように溶解させる以外は、実施例5と同様にして、ナノファイバー層と繊維構造体層からなる透湿防水複合シートを得た。結果を表1に示す。
また、得られた透湿防水複合シートを用いて実施例1と同様にして耐熱性防護服を作成し着用試験をしたが、従来のポリテトラフルオロエチレン膜を使用した防護服より柔軟で、むれ感がなく快適であった。さらに、雰囲気温度200℃に1時間さらしても透湿防水複合シートの劣化は認められなかった。
さらに、得られた透湿防水複合シートを内装材と外壁との間に建材として1ヶ月間の設置したが結露は認められなかった。
【0043】
[比較例1]
ナノファイバー層の目付けを0.1g/mに変更した以外は、実施例2と同様にして、透湿防水複合シートを得た。結果を表1に示す。
また、得られた透湿防水複合シートを用いて実施例1と同様にして耐熱性防護服を作成し着用試験をしたが、柔軟でむれ感がなく快適であったが、強度面で十分でなかった。
【0044】
[比較例2]
ナノファイバー層の目付けを30g/mに変更した以外は、実施例2と同様にして、透湿防水複合シートを得た。結果を表1に示す。
また、得られた透湿防水複合シートを用いて実施例1と同様にして耐熱性防護服を作成し着用試験をしたが、むれ感があり不快であった。
【0045】
[比較例3]
(株)クラレ製ポリビニルアルコール、を7:93の重量比で水に溶解させたポリマー溶液を調製して芳香族ポリアミドポリマー溶液の代わりに用いた以外は、実施例3と同様にして、透湿防水複合シートを得た。加熱加圧処理の後、操作型電子顕微鏡にて観察したところ、ナノファイバーが確認できなかったため、評価は実施しなかった。
【0046】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の透湿防水シートおよび透湿防水複合シートは、耐熱性、難燃性を有し、軽量で柔軟性があり、透湿性、防水性に優れているため、建築材、防護衣料、アウトドア衣料など、特に難燃性等が要求される用途や、高温雰囲気下および火気近接雰囲気下で使用する用途にも幅広く用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維軸と直交する断面直径が10〜500nmの芳香族ポリアミドナノファイバーからなる耐水圧が400mm(水柱)以上、透湿度が8000g/m・24h以上である透湿防水シート。
【請求項2】
芳香族ポリアミドナノファイバーを構成する芳香族ポリアミドが、下記の式(1)で示される反復構造単位を含む芳香族ポリアミド骨格中に、反復構造の主たる構造単位とは異なる芳香族ジアミン成分、または芳香族ジカルボン酸ハライド成分を、第3成分として芳香族ポリアミドの反復構造単位の全量に対し1〜10mol%となるように共重合させた芳香族ポリアミドである請求項1記載の透湿防水シート。
−(NH−Ar1−NH−CO−Ar1−CO)− ・・・式(1)
ここで、Ar1はメタ配位又は平行軸方向以外に結合基を有する2価の芳香族基である。
【請求項3】
第3成分となる芳香族ジアミンが下記式(2)又は(3)、芳香族ジカルボン酸ハライドが下記式(4)又は(5)である請求項2記載の透湿防水シート。
N−Ar2−NH ・・・式(2)
N−Ar2−Y−Ar2−NH ・・・式(3)
XOC−Ar3−COX ・・・式(4)
XOC−Ar3−Y−Ar3−COX ・・・式(5)
ここで、Ar2はAr1とは異なる2価の芳香族基、Ar3はAr1と異なる2価の芳香族基、Yは酸素原子、硫黄原子、アルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の原子又は官能基であり、Xはハロゲン原子を表す。
【請求項4】
芳香族ポリアミドの反復構造単位がメタフェニレンイソフタルアミドである請求項1〜3のいずれか1項記載の透湿防水シート。
【請求項5】
繊維軸と直交する断面直径が0.5〜50μm繊維を含む請求項1〜4のいずれか1項記載の透湿防水シート。
【請求項6】
繊維軸と直交する断面直径が10〜500nmの芳香族ポリアミドナノファイバーからなる1層以上ナノファイバー層と、繊維軸と直交する断面直径が0.5〜50μm繊維からなる1層以上の繊維構造体層とを積層してなり、耐水圧が400mm(水柱)以上、透湿度が8000g/m・24h以上である透湿防水複合シート。
【請求項7】
繊維構造体層が、布帛織物、編物、不織布のいずれか、あるいはこれらの組合せからなる請求項6項記載の透湿防水複合シート。
【請求項8】
請求項1の透湿防水シートまたは請求項6記載の透湿防水複合シートを用いてなる防護衣料。
【請求項9】
請求項1の透湿防水シートまたは請求項6記載の透湿防水複合シートを用いてなる建材。

【公開番号】特開2010−248667(P2010−248667A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101083(P2009−101083)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】