通信方法および中継装置
【課題】移動局が同一内容のデータを複数の無線基地局に並列に送信可能な無線通信システムにおいて、データの転送を停止させる無線基地局を適切に選択できるようにする。
【解決手段】無線基地局2,3,4と接続された中継装置5は、監視部5aと制御部5bとを有する。監視部5aは、無線基地局2,3,4それぞれから取得するデータに付与されているシーケンス番号を監視して、シーケンス番号の欠落を検出する。制御部5bは、シーケンス番号の欠落状況に基づいて、無線基地局2,3,4のうちデータの送信を継続させる無線基地局を選択し、選択しなかった無線基地局に対して送信停止を通知する。
【解決手段】無線基地局2,3,4と接続された中継装置5は、監視部5aと制御部5bとを有する。監視部5aは、無線基地局2,3,4それぞれから取得するデータに付与されているシーケンス番号を監視して、シーケンス番号の欠落を検出する。制御部5bは、シーケンス番号の欠落状況に基づいて、無線基地局2,3,4のうちデータの送信を継続させる無線基地局を選択し、選択しなかった無線基地局に対して送信停止を通知する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は通信方法および中継装置に関し、特に移動局が同一内容のデータを複数の無線基地局に並列に送信可能な無線通信システムにおける通信方法および中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、移動通信システムの分野では、多元接続方式としてCDMA(Code Division Multiple Access)を採用した通信システムが運用されている。そして、より高速・大容量の無線通信を実現すべく、3GPP(3rd Generation Partnership Project)などの標準化会議では、現行の移動通信システムの改良や次世代移動通信システムについて盛んに議論が行われている。
【0003】
このような移動通信システムには、移動局が複数の無線基地局と同時に通信可能なものがある。特に、上り方向(移動局から無線基地局へ向かう方向)の通信品質を向上させるために、移動局が同一内容のデータを複数の無線基地局に並列に送信可能なものもある。この場合、複数の無線基地局を統括する中継装置(無線ネットワーク制御装置や基地局制御装置と呼ばれる装置)には、移動局と中継装置との間の伝送経路(ブランチ)が互いに異なる同一内容の複数のデータが流入することになる。中継装置は、各ブランチの通信品質に応じて流入したデータの選択・合成を行い、上位ネットワーク(コアネットワーク)側にデータを転送する(例えば、非特許文献1,2参照)。
【0004】
ここで、中継装置に流入したデータのうち選択されなかったデータは、中継装置で破棄されることになる。すなわち、複数あるブランチのうち一部のブランチのみで十分な通信品質を確保できる場合は、他のブランチから流入するデータは中継装置で全て破棄されることになる。これは、通信効率を大きく低下させる原因となる。例えば、それぞれ5.8Mbpsで通信可能な3つのブランチを使用している場合、合計で17.4Mbps分の通信帯域を使用することになるが、このうち1つのブランチの通信品質が十分に良好なときは、結果として11.6Mbps分の通信帯域が無駄となる。また、中継装置の処理負荷も増大し、伝送遅延やパケットロスの原因ともなる。
【0005】
これに対し、各無線基地局が移動局との間の無線通信品質を測定し、無線通信品質が良好でない無線基地局は移動局から受信したデータを中継装置に転送しないように制御する方法がある(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、中継装置に流入するデータを削減することができる。
【特許文献1】特表2007−502559号公報
【非特許文献1】3rd Generation Partnership Project, "FDD Enhanced Uplink; Overall description; Stage2", 3GPP TS25.309, 2006-03, V6.6.0.
【非特許文献2】3rd Generation Partnership Project, "UTRAN Iub/Iur interface user plane protocol for DCH data streams", 3GPP TS25.427, 2007-09, V7.5.0.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、各ブランチから中継装置に流入するデータの品質は、無線区間の通信品質のみで判断できるものではない。例えば、無線基地局と中継装置との間で輻輳が発生すると、無線通信品質は良好であっても中継装置に流入するデータの品質は低下する。従って、上記特許文献1に記載の方法では、受信データの転送を停止すべき無線基地局を適切に選択することができないという問題がある。
【0007】
本通信方法および中継装置はこのような点に鑑みてなされたものであり、移動局から受信したデータの転送を停止すべき無線基地局を適切に選択することができる通信方法および中継装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、移動局から無線でデータを受信する複数の無線基地局と複数の無線基地局から移動局が送信したデータをネットワーク経由で取得する中継装置とを備える無線通信システムにおける通信方法が提供される。この通信方法では、移動局が同一内容のデータを複数の無線基地局に並列に送信しているとき、中継装置が、複数の無線基地局それぞれについてその無線基地局から取得するデータに付与されているシーケンス番号を監視してシーケンス番号の欠落を検出する。そして、中継装置が、シーケンス番号の欠落状況に基づいて、複数の無線基地局のうちデータの送信を継続させる少なくとも一部の無線基地局を選択し、選択しなかった無線基地局に対してデータの送信停止を通知する。
【0009】
このような通信方法によれば、中継装置により、無線基地局から取得するデータに付与されているシーケンス番号が監視され、シーケンス番号の欠落が検出される。そして、シーケンス番号の欠落状況に基づいて、データの送信を継続させる無線基地局が選択され、選択されなかった無線基地局に対してデータの送信停止が通知される。
【0010】
また、上記課題を解決するために、移動局から無線でデータを受信する複数の無線基地局を備える無線通信システムで用いられる、複数の無線基地局から移動局が送信したデータをネットワーク経由で取得する中継装置が提供される。この中継装置は、監視部と制御部とを有する。監視部は、移動局が同一内容のデータを複数の無線基地局に並列に送信しているとき、複数の無線基地局それぞれについてその無線基地局から取得するデータに付与されているシーケンス番号を監視してシーケンス番号の欠落を検出する。制御部は、監視部で検出されたシーケンス番号の欠落の状況に基づいて、複数の無線基地局のうちデータの送信を継続させる少なくとも一部の無線基地局を選択し、選択しなかった無線基地局に対してデータの送信停止を通知する。
【0011】
このような中継装置によれば、監視部により、無線基地局から取得するデータに付与されているシーケンス番号が監視され、シーケンス番号の欠落が検出される。そして、制御部により、シーケンス番号の欠落状況に基づいて、データの送信を継続させる無線基地局が選択され、選択されなかった無線基地局に対してデータの送信停止が通知される。
【発明の効果】
【0012】
上記通信方法および中継装置によれば、移動局から受信したデータの転送を停止すべき無線基地局を適切に選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。まず、本実施の形態の概要について説明し、その後、本実施の形態の具体的な内容を説明する。
図1は、本実施の形態の概要を示す図である。図1に示す無線通信システムは、移動局が無線基地局経由で他の移動局と通信を行うことができるシステムである。この無線通信システムは、移動局1、無線基地局2,3,4および中継装置5を有する。無線基地局2,3,4と中継装置5とは、有線または無線のネットワークで接続されている。
【0014】
移動局1は、無線基地局2,3,4と無線通信が可能な無線端末装置である。移動局1は、例えば、携帯電話機である。移動局1は、複数の無線基地局2,3,4と同時に無線通信が可能であり、データ送信時には、同一内容のデータを無線基地局2,3,4に並列に送信することもできる。
【0015】
無線基地局2,3,4は、移動局1と無線通信を行う通信装置である。無線基地局2は、制御信号処理部2aおよび送信部2bを有する。同様に、無線基地局3は制御信号処理部3aおよび送信部3bを有する。無線基地局4は、制御信号処理部4aおよび送信部4bを有する。
【0016】
制御信号処理部2a,3a,4aは、中継装置5から制御信号を受信すると制御信号に応じた処理を行う。具体的には、制御信号処理部2a,3a,4aは、制御信号がデータの送信停止の指示であった場合、送信処理を停止するよう送信部2b,3b,4bを制御する。また、制御信号がデータの送信再開の指示であった場合、送信処理を再開するよう送信部2b,3b,4bを制御する。
【0017】
送信部2b,3b,4bは、移動局1が無線送信したデータを受信すると、制御信号処理部2a,3a,4aの制御に応じた処理を行う。具体的には、送信部2b,3b,4bは、移動局1が通信を開始した初期状態では、移動局1からの受信データを中継装置5に送信する。制御信号処理部2a,3a,4aにより送信停止の指示があると、以降、送信再開の指示があるまで、移動局1からの受信データを中継装置5に送信せずに破棄する。
【0018】
中継装置5は、無線基地局2,3,4と上位ネットワークとの間でデータを中継する通信装置である。中継装置5は、無線基地局2,3,4から受信するデータを集約し、上位ネットワークに送信する。このとき、異なるブランチ経由で到着した同一内容のデータについて選択・合成を行う。中継装置5は、監視部5aおよび制御部5bを有する。
【0019】
監視部5aは、移動局1が同一内容のデータを無線基地局2,3,4に送信しているとき、各ブランチについて受信データに付与されているシーケンス番号を監視する。シーケンス番号としては、移動局1がデータ送信時に付与する番号や、無線基地局2,3,4がデータ転送時に付与する番号を用いることができる。そして、監視部5aは、シーケンス番号の欠落の有無を調べる。シーケンス番号の欠落は、パケットロスやデータ誤りなどのデータの欠損が伝送経路上で発生したことを意味する。なお、監視部5aは、伝送遅延のためデータが送信順に到着しない場合を考慮して、データ受信から所定時間待って欠落の有無を判断することが好ましい。
【0020】
制御部5bは、監視部5aで検出されたシーケンス番号の欠落の状況に基づいて、無線基地局2,3,4のうちデータの送信を継続させる少なくとも一部の無線基地局を選択する。例えば、最もシーケンス番号の欠落が少ない無線基地局を選択する。そして、制御部5bは、選択しなかった無線基地局に対して制御信号によってデータの送信停止を指示する。また、制御部5bは、送信継続中の無線基地局についてシーケンス番号の欠落状況が悪化すると、送信停止を指示した無線基地局に対して送信再開を指示する。
【0021】
このような無線通信システムによれば、中継装置5の監視部5aにより、無線基地局2,3,4から受信するデータに付与されているシーケンス番号が監視され、シーケンス番号の欠落が検出される。そして、中継装置5の制御部5bにより、シーケンス番号の欠落状況に基づいて、データの送信を継続させる無線基地局が選択され、選択されなかった無線基地局に対してデータの送信停止が指示される。また、その後、送信停止が指示された無線基地局に対して必要に応じてデータの送信再開が指示される。
【0022】
これにより、中継装置5に流入するデータを抑制することができ、無線基地局2,3,4から中継装置5への通信量が削減されると共に、中継装置5の処理負荷が軽減される。特に、データに付与されているシーケンス番号に基づいて無線基地局の選択を行うため、少なくとも無線基地局2,3,4と中継装置5との間の伝送品質を考慮した適切な選択がなされる。また、移動局1で付与されるシーケンス番号を用いた場合は、無線区間も含む移動局1と中継装置5との間の経路全体の伝送品質が考慮される。
【0023】
[第1の実施の形態]
以下、第1の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図2は、第1の実施の形態の無線通信システムの構成を示す図である。図2に示す無線通信システムは、移動局が無線基地局経由で他の移動局と通信を行うことができるシステムである。第1の実施の形態に係る無線通信システムは、コアネットワーク10、移動局100、無線基地局200,200a,200bおよび無線ネットワーク制御装置300を有する。無線基地局200,200a,200bと無線ネットワーク制御装置300とは有線で接続されている。無線ネットワーク制御装置300はコアネットワーク10に接続されている。
【0024】
移動局100は、無線基地局200,200a,200bと無線通信が可能な無線端末装置である。移動局100は、複数の無線基地局と無線通信が可能である。第1の実施の形態では、移動局100が3つの無線基地局200,200a,200bを同時に利用する場合、すなわち、移動局100と無線ネットワーク制御装置300との間に3つのブランチが形成される場合を考える。移動局100は、上りリンクを用いてデータを送信する場合、同一内容のデータを無線基地局200,200a,200bに並列に送信する。このとき、移動局100は、TSN(Transmission Sequence Number)と呼ばれるシーケンス番号をデータに付与する。TSNは、各送信データを識別する連番であり、受信側でデータの並べ替えやデータの欠落検査の際に参照される。
【0025】
無線基地局200,200a,200bは、移動局100と無線通信を行う通信装置である。無線基地局200,200a,200bは、移動局100から無線でデータを受信すると、データをEDCH−FP(Enhanced Dedicated CHannel - Frame Protocol)フレームと呼ばれる形式に纏めて、無線ネットワーク制御装置300に送信する。このとき、無線基地局200,200a,200bは、FSN(Frame Sequence Number)と呼ばれるシーケンス番号をEDCH−FPフレームに付与する。FSNは、各フレームを識別する連番であり、受信側でデータの並べ替えやデータの欠落検査の際に参照される。なお、無線基地局200,200a,200bは、無線ネットワーク制御装置300から送信停止の指示を受けたときは、EDCH−FPフレームの送信は行わない。
【0026】
無線ネットワーク制御装置300は、配下にある無線基地局200,200a,200bを統括し、無線基地局200,200a,200bとコアネットワーク10との間でデータを転送する中継装置である。無線ネットワーク制御装置300は、RNC(Radio Network Controller)やBSC(Base Station Controller)と呼ばれるものに相当する。無線ネットワーク制御装置300は、複数のブランチから同一内容のデータを受信したときは、受信データの選択・合成を行ってコアネットワーク10に送信する。また、無線ネットワーク制御装置300は、各ブランチの伝送品質を監視し、必要に応じて一部の無線基地局に対してデータの送信停止を指示する。
【0027】
なお、このような無線通信システムは、3GPPで標準化されたHSUPA(High Speed Uplink Packet Access)機能を備えるCDMA通信システムとして実現することができる。以下では、無線ネットワーク制御装置300をRNC300と表記する。また、移動局100がデータ送受信に利用する無線基地局200,200a,200bとRNC300との間の回線をIub回線、RNC300とコアネットワーク10との間の回線をIu回線と呼ぶこととする。
【0028】
次に、無線基地局200およびRNC300のモジュール構成について説明する。なお、無線基地局200a,200bも、無線基地局200と同様のモジュール構成によって実現できる。
【0029】
図3は、第1の実施の形態の無線基地局とRNCの機能を示すブロック図である。無線基地局200は、無線通信部210およびIub通信部220を有する。また、RNC300は、品質監視部310、選択合成部320および回線制御部330を有する。なお、ここでは移動局100からRNC300への方向(上り方向)に流れるデータを処理する機能に着目し、その他の機能については詳細な説明を省略している。
【0030】
無線通信部210は、移動局100との間の無線通信を制御する。無線通信部210は、受信部211を有する。
受信部211は、移動局100から無線信号を受信し、復調・復号を行ってデータを抽出する。そして、受信部211は、抽出したデータをIub通信部220に出力する。また、受信部211は、無線区間の通信状況を示す各種制御情報もIub通信部220に出力する。なお、このデータにはTSNが付与されている。
【0031】
Iub通信部220は、RNC300との間の通信を制御する。Iub通信部220は、送信部221および制御信号処理部222を有する。
送信部221は、送信非規制状態と送信規制状態の何れか一方の状態をとる。移動局100がデータ送信を開始したときの初期状態は、送信非規制状態である。送信部221は、送信非規制状態では、無線通信部210から取得したデータと制御情報に基づいてEDCH−FPフレームを構成し、RNC300に送信する。一方、送信規制状態では、データと制御情報は破棄し、EDCH−FPフレームを送信しない。なお、このフレームにはFSNが付与されている。
【0032】
制御信号処理部222は、RNC300から制御信号を受信し、制御信号の内容に応じて送信部221を制御する。具体的には、制御信号が送信停止の指示であった場合、送信部221の状態を送信規制状態にする。一方、制御信号が送信再開の指示であった場合、送信部221の状態に送信非規制状態にする。
【0033】
品質監視部310は、無線基地局200,200a,200bの少なくとも一部からEDCH−FPフレームを受信し、各ブランチの伝送品質を継続的に監視する。移動局100がデータ送信を開始したときの初期状態では、品質監視部310は無線基地局200,200a,200b全てからEDCH−FPフレームを受信する。品質監視部310は、FSN監視部311およびTSN監視部312を有する。
【0034】
FSN監視部311は、ブランチ毎にそのブランチ経由で受信したEDCH−FPフレームに付与されているFSNの連続性を監視し、FSNの欠落を検出する。このとき、送信順序通りにフレームが到着しない場合を想定し、フレーム到着後所定時間(例えば、許容する最大遅延時間)だけ待ってからFSNの欠落があるか判断する。そして、FSN監視部311は、FSNの欠落状況を回線制御部330に報告する。また、FSN監視部311は、EDCH−FPフレームをTSN監視部312に出力する。
【0035】
TSN監視部312は、FSN監視部311から取得したEDCH−FPフレームを移動局100の送信単位に分解する。そして、TSN監視部312は、ブランチ毎にデータに付与されているTSNの連続性を監視し、TSNの欠落を検出する。その後、TSN監視部312は、TSNの欠落状況を回線制御部330に報告する。また、TSN監視部312は、得られたデータを選択合成部320に出力する。
【0036】
なお、FSNの欠落は、Iub回線内でパケットロスや訂正不可能なビット誤りが発生することで起こりうる。また、TSNの欠落は、無線区間またはIub回線内でパケットロスや訂正不可能なビット誤りが発生することで起こりうる。従って、観察されるFSNおよびTSNの欠落状況は、各ブランチの伝送品質が反映されている。
【0037】
選択合成部320は、品質監視部310からデータを取得すると、同一内容の複数のデータ(初期状態では、3つのブランチそれぞれから受信する3つの同一内容のデータ)について、データの受信品質に応じて選択・合成処理を行い、1つのデータに絞り込む。そして、選択合成部320は得られたデータをコアネットワーク10に出力する。
【0038】
回線制御部330は、品質監視部310から取得するFSNおよびTSNの報告に基づいて、各ブランチの伝送品質を示す指標値を計算する。そして、この指標値が所定の品質条件を具備しているか否かに応じて、無線基地局200,200a,200bに対して送信停止または送信再開を示す制御信号を送信する。
【0039】
図4は、移動局が無線基地局に送信するフレームの例を示す図である。図4に示すMAC−ePDU(Medium Access Control - e Protocol Data Unit)は、移動局100で生成され無線基地局200,200a,200bで終端されるMAC−e層の単位データである。生成されたMAC−ePDUは、物理層で無線信号に対応付けられて伝送される。
【0040】
MAC−ePDUは、MAC−eヘッダと複数のMAC−esPDU(Medium Access Control - es Protocol Data Unit)とを含む。MAC−eヘッダは、MAC−e層で付加されるヘッダである。MAC−esPDUは、移動局100で生成されRNC300で終端される、MAC−e層の上位層であるMAC−es層の単位データである。
【0041】
MAC−esPDUは、TSNと複数のMAC−dPDU(Medium Access Control - d Protocol Data Unit)とを含む。TSNは、MAC−esPDUを識別する連番である。RNC300では、TSNを参照してMAC−esPDUの並べ替えと選択・合成処理とが行われる。MAC−dPDUは、移動局100で生成されRNC300で終端される、MAC−es層の上位層であるMAC−d層の単位データである。
【0042】
図5は、無線基地局がRNCに送信するフレームの例を示す図である。図5に示すEDCH−FPフレームは、無線基地局200,200a,200bで生成されRNC300で終端される、MAC−es層の下位層であるEDCH−FP層の単位データである。EDCH−FPフレームは、フレームヘッダと複数のMAC−eペイロードとを含む。
【0043】
フレームヘッダは、EDCH−FP層で付与されるヘッダである。フレームヘッダには、FT(Frame Type)、Header CRC(Cyclic Redundancy Check)、FSN、Number of SubframesおよびN of HARQ Retransmのフィールドが設けられている。
【0044】
FTは、フレームの種類を示すビットであり、データフレームの場合は0、制御フレームの場合は1が設定される。Header CRCは、フレームヘッダのビット誤りを検出する誤り訂正符号である。FSNは、無線基地局200,200a,200bで付与されるシーケンス番号である。Number of Subframesは、フレームヘッダに続くMAC−eペイロードの個数である。N of HARQ Retransmは、MAC−ePDUの受信が成功するまでに移動局100がそのMAC−ePDUを再送した回数であり、MAC−eペイロード毎に設定される。
【0045】
MAC−eペイロードは、移動局100から受信したMAC−ePDUのペイロード部分である。MAC−eペイロードは、図4に示した通り、複数のMAC−esPDUを含む。各MAC−esPDUには、そのMAC−esPDUを識別するTSNが含まれる。
【0046】
図6は、RNCが無線基地局に送信する制御フレームの第1の例を示す図である。図6に示す制御フレームは、送信停止または送信再開を指示する際にRNC300が送信するものである。この制御フレームには、FT、Header CRC、Control Frame TypeおよびIub Transmのフィールドが設けられている。その他の領域は空き領域である。なお、図6では1行が1バイト(8ビット)のビット列に相当し、右側(“0”と表記した側)が最下位ビット、左側(“7”と表記した側)が最上位ビットである。
【0047】
FTは、フレームの種類を示すビットであり、ここでは制御フレームであるため1が設定される。Header CRCは、フレームヘッダのビット誤りを検出する誤り訂正符号である。Control Frame Typeは、制御フレームの種類を示すビット列であり、送信停止または送信再開を指示する制御フレームであることを意味する所定のビット列が設定される。Iub Transmは、指示内容を示すビット列(2ビット)である。例えば、00が無線基地局に既定の通常動作、10がデータの送信停止、11がデータの送信再開を意味する。この場合、01は割り当てなしとする。
【0048】
なお、図6に示した制御フレームは、3GPPの標準仕様には存在しない新たな種類の制御フレームとして定義したものである。一方、3GPPの標準仕様で定義されている既存の制御フレームを拡張するという方法も考えられる。
【0049】
図7は、RNCが無線基地局に送信する制御フレームの第2の例を示す図である。図7に示す制御フレームは、TNL Congestion Indicatorという既存の制御フレームを拡張したものである。TNL Congestion Indicatorは、RNC300が無線基地局200,200a,200bにIub回線の混雑度が高い(輻輳が発生している)ことを通知するものである。この制御フレームには、FT、Header CRC、Control Frame Type、Congestion StatusおよびIub Transmのフィールドが設けられている。その他の領域は空き領域である。なお、図7では1行が1バイト(8ビット)のビット列に相当し、右側(“0”と表記した側)が最下位ビット、左側(“7”と表記した側)が最上位ビットである。
【0050】
FT、Header CRC、Control Frame TypeおよびIub Transmの意味は、図6に示したものと同様である。Congestion Statusは、Iub回線の混雑度を示すビット列である。ここで、Iub Transmのフィールドは、既存のTNL Congestion Indicator内の空き領域に定義されている。このように、RNC300は、既存の制御フレームを拡張することでデータの送信停止および送信再開を無線基地局200,200a,200bに指示することもできる。
【0051】
次に、以上のような構成およびデータ構造を備える無線通信システムにおいて実行される処理の詳細を説明する。まず、各ブランチの伝送品質を示す指標値の計算方法について説明し、その後、この指標値を用いて一部の無線基地局の送信処理を停止させる制御について説明する。
【0052】
図8は、通信品質を示す指標値の計算方法を示す模式図である。RNC300の回線制御部330は、各ブランチについて、TSNの欠落状況に基づく指標値QtとFSNの欠落状況に基づく指標値Qfとを計算する。これにより、各ブランチの伝送品質が定量化される。指標値Qtと指標値Qfとは同様の方法で計算できるため、ここでは指標値Qtについて説明する。
【0053】
回線制御部330は、ブランチが確立されたときの初期値として、指標値Qtに所定の最大値を設定する。その後、TSN監視部312からの報告でTSNの欠落を知ると、ペナルティとしてQtから所定量Δqだけ減点する。図8は、時刻t1と時刻t2でTSNが欠落したことを意味している。一方、TSNの欠落が生じていないときは、TSNのカウントが1つ進む毎にQtに所定量を加点する。ただし、Qtが最大値に達するとそれ以上の加点は行わない。
【0054】
このようにして計算された指標値Qtは、レベル1、レベル2、レベル3の何れかに分類される。レベル1は、指標値Qtが所定の第1の閾値以上の場合である。レベル1は、TSNの欠落が少なくブランチの伝送品質が良好であることを意味する。レベル2は、指標値Qtが所定の第1の閾値未満で所定の第2の閾値以上の場合である。レベル2は、TSNの欠落がある程度発生しておりブランチの伝送品質が中程度であることを意味する。レベル3は、指標値Qtが所定の第2の閾値未満の場合である。レベル3は、TSNの欠落が多くブランチの伝送品質が悪いことを意味する。
【0055】
図9は、第1の実施の形態の回線制御処理の手順を示すフローチャートである。図9に示す処理は、移動局100が通信を行っている間、RNC300によって繰り返し実行される。以下、図9に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0056】
[ステップS11]回線制御部330は、移動局100とRNC300との間に複数のブランチが構成されているか、すなわち、移動局100が複数の無線基地局と通信を行っているか判断する。複数のブランチが構成されている場合には、処理がステップS12に進められる。複数のブランチが構成されていない場合には、回線制御処理が終了する。
【0057】
[ステップS12]回線制御部330は、ブランチが経由する無線基地局のうち送信停止中の無線基地局があるか判断する。送信停止中の無線基地局がある場合には、処理がステップS18に進められる。送信停止中の無線基地局がない場合には、処理がステップS13に進められる。
【0058】
[ステップS13]回線制御部330は、移動局100とRNC300との間に構成されたブランチのうち指標値Qtがレベル1のブランチがあるか、すなわち、伝送品質が良好なブランチがあるか判断する。指標値Qtがレベル1のブランチが少なくとも1つある場合には、処理がステップS14に進められる。指標値Qtがレベル1のブランチがない場合には、回線制御処理が終了する。
【0059】
[ステップS14]回線制御部330は、移動局100とRNC300との間に構成されたブランチから、指標値Qtがレベル1のブランチを抽出する。
[ステップS15]回線制御部330は、ステップS14で抽出されたブランチが複数ある場合、抽出されたブランチから指標値Qfが最も大きいブランチを更に抽出する。
【0060】
[ステップS16]回線制御部330は、ステップS15で抽出されたブランチが複数ある場合、抽出されたブランチから直前の所定時間内にTSNおよびFSNの欠落が最も少なかったブランチを更に抽出する。この時点で、ブランチは1つに絞り込まれている。
【0061】
[ステップS17]回線制御部330は、ステップS14〜S16の絞り込みにより残った1つのブランチを、RNC300にデータを流入させるブランチとして選択する。そして、回線制御部330は、移動局100とRNC300との間に構成されたブランチのうち選択しなかったブランチに対応する無線基地局それぞれに対して、送信停止を指示する制御フレームを送信する。これにより、選択しなかったブランチからRNC300にデータが流入しなくなる。
【0062】
[ステップS18]回線制御部330は、Iub区間でデータ伝送中のブランチの現在の指標値Qtがレベル3であるか、すなわち、データを受信しているブランチの伝送品質が悪化したか判断する。指標値Qtがレベル3である場合には、処理がステップS19に進められる。指標値Qtがレベル1または2である場合には、回線制御処理が終了する。
【0063】
[ステップS19]回線制御部330は、以前に送信停止を指示した全ての無線基地局に対して、送信再開を指示する制御フレームを送信する。これにより、全てのブランチからRNC300にデータが流入するようになる。
【0064】
このようにして、RNC300は、指標値Qtがレベル1のブランチがあれば、そのブランチのみで十分な通信品質を確保できるため、他のブランチからデータが流入しないようにする。このとき、指標値Qtがレベル1のブランチが複数ある場合、指標値Qfや直近のTSNおよびFSNの欠落状況も参照して絞り込む。そして、データ受信中のブランチの指標値Qtがレベル1または2の間は、その状態を維持する。一方、データ受信中のブランチの指標値Qtがレベル3にまで悪化した場合、RNC300は、再び全てのブランチからデータを受信するようにする。
【0065】
図10は、第1の実施の形態のフレーム送信状況の変化を示す模式図である。ここでは、移動局100が3つの無線基地局200,200a,200bにデータを送信している場合を考える。図10に示すように、初期状態では、RNC300は無線基地局200,200a,200bからデータを受信する。
【0066】
ここで、無線基地局200aを経由するブランチの指標値Qtがレベル1であり、他のブランチの指標値Qtがレベル2または3であるとすると、RNC300は無線基地局200,200bに送信停止を指示する。これにより、無線基地局200,200bはRNC300にデータを送信しなくなり、無線基地局200aのみがRNC300にデータを送信する。
【0067】
そして、無線基地局200aを経由するブランチの指標値Qtがレベル3に変化すると、RNC300は無線基地局200,200bに送信再開を指示する。これにより、3つの無線基地局200,200a,200bはそれぞれRNC300にデータを送信する。その後、RNC300は、各ブランチの指標値Qtの変化に応じて、無線基地局200,200a,200bの送信停止または送信再開を制御する。
【0068】
このような無線通信システムを用いることで、移動局100とRNC300との間に構成された複数のブランチのうち1つのブランチで十分な通信品質を確保可能と判断されるときは、無線基地局200,200a,200bでデータの送信が抑制される。従って、Iub回線の通信量が削減されると共に、RNC300の処理負荷が軽減される。また、選択した1つのブランチの伝送品質が低下したときは、通信品質が維持されるように、再び全てのブランチからRNC300にデータが流入するよう制御される。特に、各ブランチの伝送品質はRNC300におけるTSNおよびFSNの欠落状況に基づいて判断するため、Iub回線の状態が考慮されて、ブランチの選択が適切に行われる。
【0069】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。前述の第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については説明を省略する。第2の実施の形態に係る無線通信システムは、データ受信中のブランチの伝送品質が低下した際、送信停止中の全ての無線基地局を一斉に再開させるのではなく、一部の無線基地局を選択して再開させるようにしたものである。
【0070】
第2の実施の形態に係る無線通信システムは、図2に示した第1の実施の形態に係る無線通信システムと同様のシステム構成によって実現できる。ただし、無線基地局と無線ネットワーク制御装置(RNC)の一部機能が、第1の実施の形態と異なる。第2の実施の形態では、第1の実施の形態の無線基地局200,200a,200bおよびRNC300に代えて、以下に述べる無線基地局400,400a,400bおよびRNC500を用いる。
【0071】
図11は、第2の実施の形態の無線基地局とRNCの機能を示すブロック図である。無線基地局400は、無線通信部410およびIub通信部420を有する。また、RNC500は、品質監視部510、選択合成部520および回線制御部530を有する。なお、ここでは移動局100からRNC500への方向(上り方向)に流れるデータを処理する機能に着目し、その他の機能については詳細な説明を省略している。
【0072】
無線通信部410は、移動局100との間の無線通信を制御する。無線通信部410は、受信部411を有する。受信部411の機能は、第1の実施の形態の受信部211と同様である。
【0073】
Iub通信部420は、RNC500との間の通信を制御する。Iub通信部420は、送信部421および制御信号処理部422を有する。制御信号処理部422の機能は、第1の実施の形態の制御信号処理部222と同様である。
【0074】
送信部421は、送信非規制状態と送信規制状態の何れか一方の状態をとる。送信部421は、送信非規制状態では、無線通信部410から取得したデータと制御情報に基づいてEDCH−FPフレームを構成し、RNC500に送信する。一方、送信規制状態では、ペイロード部がないヘッダ部だけのEDCH−FPフレームを構成し、RNC500に送信する。このとき、フレームヘッダ内のNumber of Subframesフィールドが0に設定される。
【0075】
品質監視部510は、無線基地局400,400a,400bの少なくとも一部からEDCH−FPフレームを受信し、各ブランチの伝送品質を継続的に監視する。品質監視部510は、HARQ監視部511、FSN監視部512およびTSN監視部513を有する。FSN監視部512およびTSN監視部513の機能は、第1の実施の形態のFSN監視部311およびTSN監視部312と同様である。
【0076】
HARQ監視部511は、EDCH−FPフレームを受信すると、フレームヘッダ内のNumber of Subframesフィールドを参照して、ペイロード部が存在するか確認する。ペイロード部が存在しない場合、HARQ監視部511は、フレームヘッダ内のN of HARQ Retransmフィールドの値(無線区間での再送回数)を読み取って回線制御部530に報告すると共に、そのEDCH−FPフレームを破棄する。一方、ペイロード部が存在する場合、HARQ監視部511は、EDCH−FPフレームをFSN監視部512に出力する。
【0077】
選択合成部520は、品質監視部510からデータを取得すると、同一内容の複数のデータについて、データの受信品質に応じて選択・合成処理を行い、1つのデータに絞り込む。そして、選択合成部520は、得られたデータをコアネットワーク10に出力する。
【0078】
回線制御部530は、品質監視部510から取得するFSNおよびTSNの報告に基づいて、Iub区間がデータ伝送中のブランチの伝送品質を示す指標値を計算する。また、回線制御部530は、品質監視部510から取得する再送回数の報告に基づいて、Iub区間が停止中のブランチの無線通信品質を示す指標値を計算する。例えば、直近10フレーム分の再送回数の情報を保持しておき、それらの平均値・最良値・最悪値を計算して指標値とすることが考えられる。そして、これら指標値が所定の品質条件を具備しているか否かに応じて、無線基地局400,400a,400bに対して送信停止または送信再開を示す制御信号を送信する。
【0079】
図12は、第2の実施の形態の回線制御処理の手順を示すフローチャートである。図12に示す処理は、移動局100が通信を行っている間、RNC500によって繰り返し実行される。以下、図12に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0080】
[ステップS21]回線制御部530は、移動局100とRNC500との間に複数のブランチが構成されているか判断する。複数のブランチが構成されている場合には、処理がステップS22に進められる。複数のブランチが構成されていない場合には、回線制御処理が終了する。
【0081】
[ステップS22]回線制御部530は、データ送信中の無線基地局が複数あるか判断する。データ送信中の無線基地局が複数ある場合には、処理がステップS23に進められる。データ送信中の無線基地局が1つの場合には、処理がステップS29に進められる。
【0082】
[ステップS23]回線制御部530は、Iub区間でデータ伝送中のブランチのうち指標値Qtがレベル1のブランチがあるか判断する。指標値Qtがレベル1のブランチが少なくとも1つある場合には、処理がステップS24に進められる。指標値Qtがレベル1のブランチがない場合には、処理がステップS28に進められる。
【0083】
[ステップS24]回線制御部530は、Iub区間でデータ伝送中のブランチから、指標値Qtがレベル1のブランチを抽出する。
[ステップS25]回線制御部530は、ステップS24で抽出されたブランチが複数ある場合、抽出されたブランチから指標値Qfが最も大きいブランチを更に抽出する。
【0084】
[ステップS26]回線制御部530は、ステップS25で抽出されたブランチが複数ある場合、抽出されたブランチから直前の所定時間内にTSNおよびFSNの欠落が最も少なかったブランチを更に抽出する。この時点で、ブランチは1つに絞り込まれている。
【0085】
[ステップS27]回線制御部530は、ステップS24〜S26の絞り込みにより残った1つのブランチを、RNC500にデータを流入させるブランチとして選択する。そして、回線制御部530は、Iub区間でデータ伝送中のブランチのうち選択しなかったブランチに対応する無線基地局それぞれに対して、送信停止を指示する制御フレームを送信する。
【0086】
[ステップS28]回線制御部530は、ブランチが経由する無線基地局のうち送信停止中の無線基地局があるか判断する。送信停止中の無線基地局がある場合には、処理がステップS29に進められる。送信停止中の無線基地局がない場合には、回線制御処理が終了する。
【0087】
[ステップS29]回線制御部530は、Iub区間でデータ伝送中の全てのブランチの現在の指標値Qtがレベル3であるか判断する。全てのブランチの指標値Qtがレベル3である場合には、処理がステップS30に進められる。指標値Qtがレベル1または2のブランチが少なくとも1つある場合には、回線制御処理が終了する。
【0088】
[ステップS30]回線制御部530は、Iub区間で伝送停止中のブランチのうち無線通信品質が最も良好な1つのブランチを選択する。無線通信品質は、無線区間でのデータ再送回数に基づいて判断することができる。
【0089】
[ステップS31]回線制御部530は、ステップS30で選択したブランチに対応する無線基地局に対して、送信再開を指示する制御フレームを送信する。
このようにして、RNC500は、指標値Qtがレベル1のブランチがあれば、そのブランチのみで十分な通信品質を確保できるため、他のブランチからデータが流入しないようにする。このとき、指標値Qtがレベル1のブランチが複数ある場合、指標値Qfや直近のTSNおよびFSNの欠落状況も参照して絞り込む。そして、データ受信中のブランチの指標値Qtがレベル1または2の間は、その状態を維持する。一方、データ受信中のブランチの指標値Qtがレベル3にまで悪化した場合、RNC500は、無線区間の再送回数が最も少ないブランチの送信停止を解除する。
【0090】
図13は、第2の実施の形態のフレーム送信状況の変化を示す模式図である。ここでは、移動局100が3つの無線基地局400,400a,400bにデータを送信している場合を考える。図13に示すように、初期状態では、RNC500は無線基地局400,400a,400bからデータを受信する。
【0091】
ここで、無線基地局400aを経由するブランチの指標値Qtがレベル1であり、他のブランチの指標値Qtがレベル2または3であるとすると、RNC500は無線基地局400,400bに送信停止を指示する。これにより、無線基地局400aはRNC500にペイロード部を有するフレームを送信し、無線基地局400,400bはRNC500にヘッダ部のみのフレームを送信する。
【0092】
そして、無線基地局400aを経由するブランチの指標値Qtがレベル3に変化すると、RNC500は無線基地局400,400bのうち無線区間の再送回数が少ない方(ここでは、無線基地局400)に送信再開を指示する。これにより、無線基地局400,400aはRNC500にペイロード部を有するフレームを送信し、無線基地局400bはRNC500にヘッダ部のみのフレームを送信する。
【0093】
このような無線通信システムを用いることで、第1の実施の形態と同様の効果を得られる。更に、第2の実施の形態に係る無線通信システムを用いることで、データ伝送中のブランチの伝送品質が悪化したときに、伝送停止中のブランチのうち最も伝送品質が高いと推測されるものを優先的に再開させることができる。従って、Iub回線の通信量が一層削減されると共に、RNC500の処理負荷が一層軽減される。
【0094】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。前述の第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については説明を省略する。
【0095】
図14は、第3の実施の形態の無線通信システムの構成を示す図である。図14に示す無線通信システムは、複数の無線ネットワーク制御装置(RNC)を備えるものである。第3の実施の形態に係る無線通信システムは、コアネットワーク10、移動局100、無線基地局200,200a,200bおよびRNC600,600aを有する。無線基地局200,200aとRNC600、無線基地局200bとRNC600a、RNC600とRNC600aとは、それぞれ有線で接続されている。RNC600はコアネットワーク10に接続されている。なお、移動局100がデータ送受信に利用するRNC600とRNC600aとの間の回線をIur回線と呼ぶこととする。
【0096】
移動局100が無線通信を開始すると、何れか1つのRNCが移動局100の送信データを集約するRNC(サービングRNC)として機能し、他のRNCがサービングRNCにデータを転送するRNC(ドリフトRNC)として機能する。ここでは、RNC600がサービングRNCであり、RNC600aがドリフトRNCである。
【0097】
移動局100が3つの無線基地局200,200a,200bにデータを送信すると、初期状態では、無線基地局200,200aは、移動局100からの受信データをIub回線を用いてRNC600に送信する。また、無線基地局200bは、移動局100からの受信データをIub回線を用いてRNC600aに送信し、RNC600aは、無線基地局200bからの受信データをIur回線を用いてRNC600に転送する。このようにして、移動局100が送信した同一内容の複数のデータは、RNC600に集約されて選択・合成処理がなされ、コアネットワーク10に出力される。
【0098】
ここで、上記第1および第2の実施の形態で述べたような回線制御を行う場合、RNC600は、無線基地局200,200aに対しては、Iub回線で制御フレームを送信する。一方、無線基地局200bに対しては、Iur回線でRNC600aに制御フレームを送信し、RNC600aに制御フレームを転送してもらう。
【0099】
このように、サービングRNCがドリフトRNCの配下にある無線基地局の送信処理を制御するときは、ドリフトRNC経由で制御フレームを送信することで、上記第1および第2の実施の形態で述べたような回線制御を実現することができる。なお、図14では、RNC600とRNC600aとはコアネットワーク10を経由せずに直接接続されているものとしたが、コアネットワーク10を介して接続されているようにしてもよい。
【0100】
なお、上記第1、第2および第3の実施の形態では、TSNの欠落状況とFSNの欠落状況のうちTSNの欠落状況を優先適用してブランチ選択を行ったが、FSNの欠落状況を優先適用するようにしてもよい。また、無線通信品質の指標として無線区間の再送回数を用いたが、他の品質指標を用いるようにしてもよい。また、RNCと無線基地局との間に他の中継装置を挿入してもよい。また、上記第1、第2および第3の実施の形態の回線制御方法は、CDMA方式の無線通信システムに限定されるものではなく、移動局が複数の無線基地局と通信可能な他の方式の無線通信システムにも適用できる。
【0101】
以上、本件の通信方法および中継装置を図示の実施の形態に基づいて説明したが、本実施の形態はこれに限定されるものではなく、各部の構成は同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本件の通信方法および中継装置は、本実施の形態に他の任意の構成物や工程が付加されていてもよい。また、本件の通信方法および中継装置は、前述した実施の形態のうちの任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0102】
以上説明した実施の形態の主な技術的特徴は、以下の付記の通りである。
(付記1) 移動局から無線でデータを受信する複数の無線基地局と前記複数の無線基地局から前記移動局が送信したデータをネットワーク経由で取得する中継装置とを備える無線通信システムにおける通信方法において、
前記移動局が同一内容のデータを前記複数の無線基地局に並列に送信しているとき、前記中継装置が、前記複数の無線基地局それぞれについて当該無線基地局から取得するデータに付与されているシーケンス番号を監視して前記シーケンス番号の欠落を検出し、
前記中継装置が、前記シーケンス番号の欠落状況に基づいて、前記複数の無線基地局のうちデータの送信を継続させる少なくとも一部の無線基地局を選択し、選択しなかった無線基地局に対してデータの送信停止を通知する、
ことを特徴とする通信方法。
【0103】
(付記2) 前記中継装置は、前記移動局がデータの送信時に付与するシーケンス番号の欠落状況に基づいて、データの送信を継続させる無線基地局を選択することを特徴とする付記1記載の通信方法。
【0104】
(付記3) 前記中継装置は、前記複数の無線基地局それぞれが前記移動局から受信したデータを前記中継装置に送信する際に付与するシーケンス番号の欠落状況に基づいて、データの送信を継続させる無線基地局を選択することを特徴とする付記1記載の通信方法。
【0105】
(付記4) 前記中継装置は、前記移動局がデータの送信時に付与するシーケンス番号の欠落状況と前記複数の無線基地局それぞれがデータを前記中継装置に送信する際に付与するシーケンス番号の欠落状況とに基づいて、データの送信を継続させる無線基地局を選択することを特徴とする付記1記載の通信方法。
【0106】
(付記5) 前記シーケンス番号の欠落が最も少ない無線基地局の欠落状況が所定の品質条件を満たす場合、前記中継装置は、当該無線基地局のみをデータの送信を継続させる無線基地局とし、他の全ての無線基地局に対してデータの送信停止を通知することを特徴とする付記1記載の通信方法。
【0107】
(付記6) 前記データの送信停止の通知後、データの送信を継続させた無線基地局の前記シーケンス番号の欠落状況が所定の品質条件を満たさなくなった場合、前記中継装置は、前記データの送信停止を通知した全ての無線基地局に対してデータの送信再開を通知することを特徴とする付記1記載の通信方法。
【0108】
(付記7) 前記中継装置から送信停止の通知を受けた無線基地局は、前記移動局からデータを受信すると、受信したデータに対応するヘッダ情報を生成して前記中継装置に送信することを特徴とする付記1記載の通信方法。
【0109】
(付記8) 前記中継装置から送信停止の通知を受けた無線基地局は、前記移動局からデータを受信すると、前記移動局が当該データを再送した回数を示す情報を含む当該データに対応するヘッダ情報を生成して前記中継装置に送信することを特徴とする付記1記載の通信方法。
【0110】
(付記9) 前記中継装置から送信停止の通知を受けた無線基地局は、前記移動局からデータを受信すると、受信したデータに対応するヘッダ情報を生成して前記中継装置に送信し、
前記データの送信停止の通知後、データの送信を継続させた無線基地局の前記シーケンス番号の欠落状況が所定の品質条件を満たさなくなった場合、前記中継装置は、前記ヘッダ情報に基づいて前記データの送信停止を通知した無線基地局のうちデータの送信を再開させる少なくとも一部の無線基地局を選択し、選択した無線基地局に対してデータの送信再開を通知する、
ことを特徴とする付記1記載の通信方法。
【0111】
(付記10) 前記選択しなかった無線基地局が他の中継装置の配下にある場合は、前記中継装置は、前記他の中継装置経由で前記データの送信停止を通知することを特徴とする付記1記載の通信方法。
【0112】
(付記11) 移動局から無線でデータを受信する複数の無線基地局を備える無線通信システムで用いられる、前記複数の無線基地局から前記移動局が送信したデータをネットワーク経由で取得する中継装置において、
前記移動局が同一内容のデータを前記複数の無線基地局に並列に送信しているとき、前記複数の無線基地局それぞれについて当該無線基地局から取得するデータに付与されているシーケンス番号を監視して前記シーケンス番号の欠落を検出する監視部と、
前記監視部で検出された前記シーケンス番号の欠落の状況に基づいて、前記複数の無線基地局のうちデータの送信を継続させる少なくとも一部の無線基地局を選択し、選択しなかった無線基地局に対してデータの送信停止を通知する制御部と、
を有することを特徴とする中継装置。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本実施の形態の概要を示す図である。
【図2】第1の実施の形態の無線通信システムの構成を示す図である。
【図3】第1の実施の形態の無線基地局とRNCの機能を示すブロック図である。
【図4】移動局が無線基地局に送信するフレームの例を示す図である。
【図5】無線基地局がRNCに送信するフレームの例を示す図である。
【図6】RNCが無線基地局に送信する制御フレームの第1の例を示す図である。
【図7】RNCが無線基地局に送信する制御フレームの第2の例を示す図である。
【図8】通信品質を示す指標値の計算方法を示す模式図である。
【図9】第1の実施の形態の回線制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】第1の実施の形態のフレーム送信状況の変化を示す模式図である。
【図11】第2の実施の形態の無線基地局とRNCの機能を示すブロック図である。
【図12】第2の実施の形態の回線制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】第2の実施の形態のフレーム送信状況の変化を示す模式図である。
【図14】第3の実施の形態の無線通信システムの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0114】
1 移動局
2,3,4 無線基地局
2a,3a,4a 制御信号処理部
2b,3b,4b 送信部
5 中継装置
5a 監視部
5b 制御部
【技術分野】
【0001】
本件は通信方法および中継装置に関し、特に移動局が同一内容のデータを複数の無線基地局に並列に送信可能な無線通信システムにおける通信方法および中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、移動通信システムの分野では、多元接続方式としてCDMA(Code Division Multiple Access)を採用した通信システムが運用されている。そして、より高速・大容量の無線通信を実現すべく、3GPP(3rd Generation Partnership Project)などの標準化会議では、現行の移動通信システムの改良や次世代移動通信システムについて盛んに議論が行われている。
【0003】
このような移動通信システムには、移動局が複数の無線基地局と同時に通信可能なものがある。特に、上り方向(移動局から無線基地局へ向かう方向)の通信品質を向上させるために、移動局が同一内容のデータを複数の無線基地局に並列に送信可能なものもある。この場合、複数の無線基地局を統括する中継装置(無線ネットワーク制御装置や基地局制御装置と呼ばれる装置)には、移動局と中継装置との間の伝送経路(ブランチ)が互いに異なる同一内容の複数のデータが流入することになる。中継装置は、各ブランチの通信品質に応じて流入したデータの選択・合成を行い、上位ネットワーク(コアネットワーク)側にデータを転送する(例えば、非特許文献1,2参照)。
【0004】
ここで、中継装置に流入したデータのうち選択されなかったデータは、中継装置で破棄されることになる。すなわち、複数あるブランチのうち一部のブランチのみで十分な通信品質を確保できる場合は、他のブランチから流入するデータは中継装置で全て破棄されることになる。これは、通信効率を大きく低下させる原因となる。例えば、それぞれ5.8Mbpsで通信可能な3つのブランチを使用している場合、合計で17.4Mbps分の通信帯域を使用することになるが、このうち1つのブランチの通信品質が十分に良好なときは、結果として11.6Mbps分の通信帯域が無駄となる。また、中継装置の処理負荷も増大し、伝送遅延やパケットロスの原因ともなる。
【0005】
これに対し、各無線基地局が移動局との間の無線通信品質を測定し、無線通信品質が良好でない無線基地局は移動局から受信したデータを中継装置に転送しないように制御する方法がある(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、中継装置に流入するデータを削減することができる。
【特許文献1】特表2007−502559号公報
【非特許文献1】3rd Generation Partnership Project, "FDD Enhanced Uplink; Overall description; Stage2", 3GPP TS25.309, 2006-03, V6.6.0.
【非特許文献2】3rd Generation Partnership Project, "UTRAN Iub/Iur interface user plane protocol for DCH data streams", 3GPP TS25.427, 2007-09, V7.5.0.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、各ブランチから中継装置に流入するデータの品質は、無線区間の通信品質のみで判断できるものではない。例えば、無線基地局と中継装置との間で輻輳が発生すると、無線通信品質は良好であっても中継装置に流入するデータの品質は低下する。従って、上記特許文献1に記載の方法では、受信データの転送を停止すべき無線基地局を適切に選択することができないという問題がある。
【0007】
本通信方法および中継装置はこのような点に鑑みてなされたものであり、移動局から受信したデータの転送を停止すべき無線基地局を適切に選択することができる通信方法および中継装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、移動局から無線でデータを受信する複数の無線基地局と複数の無線基地局から移動局が送信したデータをネットワーク経由で取得する中継装置とを備える無線通信システムにおける通信方法が提供される。この通信方法では、移動局が同一内容のデータを複数の無線基地局に並列に送信しているとき、中継装置が、複数の無線基地局それぞれについてその無線基地局から取得するデータに付与されているシーケンス番号を監視してシーケンス番号の欠落を検出する。そして、中継装置が、シーケンス番号の欠落状況に基づいて、複数の無線基地局のうちデータの送信を継続させる少なくとも一部の無線基地局を選択し、選択しなかった無線基地局に対してデータの送信停止を通知する。
【0009】
このような通信方法によれば、中継装置により、無線基地局から取得するデータに付与されているシーケンス番号が監視され、シーケンス番号の欠落が検出される。そして、シーケンス番号の欠落状況に基づいて、データの送信を継続させる無線基地局が選択され、選択されなかった無線基地局に対してデータの送信停止が通知される。
【0010】
また、上記課題を解決するために、移動局から無線でデータを受信する複数の無線基地局を備える無線通信システムで用いられる、複数の無線基地局から移動局が送信したデータをネットワーク経由で取得する中継装置が提供される。この中継装置は、監視部と制御部とを有する。監視部は、移動局が同一内容のデータを複数の無線基地局に並列に送信しているとき、複数の無線基地局それぞれについてその無線基地局から取得するデータに付与されているシーケンス番号を監視してシーケンス番号の欠落を検出する。制御部は、監視部で検出されたシーケンス番号の欠落の状況に基づいて、複数の無線基地局のうちデータの送信を継続させる少なくとも一部の無線基地局を選択し、選択しなかった無線基地局に対してデータの送信停止を通知する。
【0011】
このような中継装置によれば、監視部により、無線基地局から取得するデータに付与されているシーケンス番号が監視され、シーケンス番号の欠落が検出される。そして、制御部により、シーケンス番号の欠落状況に基づいて、データの送信を継続させる無線基地局が選択され、選択されなかった無線基地局に対してデータの送信停止が通知される。
【発明の効果】
【0012】
上記通信方法および中継装置によれば、移動局から受信したデータの転送を停止すべき無線基地局を適切に選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。まず、本実施の形態の概要について説明し、その後、本実施の形態の具体的な内容を説明する。
図1は、本実施の形態の概要を示す図である。図1に示す無線通信システムは、移動局が無線基地局経由で他の移動局と通信を行うことができるシステムである。この無線通信システムは、移動局1、無線基地局2,3,4および中継装置5を有する。無線基地局2,3,4と中継装置5とは、有線または無線のネットワークで接続されている。
【0014】
移動局1は、無線基地局2,3,4と無線通信が可能な無線端末装置である。移動局1は、例えば、携帯電話機である。移動局1は、複数の無線基地局2,3,4と同時に無線通信が可能であり、データ送信時には、同一内容のデータを無線基地局2,3,4に並列に送信することもできる。
【0015】
無線基地局2,3,4は、移動局1と無線通信を行う通信装置である。無線基地局2は、制御信号処理部2aおよび送信部2bを有する。同様に、無線基地局3は制御信号処理部3aおよび送信部3bを有する。無線基地局4は、制御信号処理部4aおよび送信部4bを有する。
【0016】
制御信号処理部2a,3a,4aは、中継装置5から制御信号を受信すると制御信号に応じた処理を行う。具体的には、制御信号処理部2a,3a,4aは、制御信号がデータの送信停止の指示であった場合、送信処理を停止するよう送信部2b,3b,4bを制御する。また、制御信号がデータの送信再開の指示であった場合、送信処理を再開するよう送信部2b,3b,4bを制御する。
【0017】
送信部2b,3b,4bは、移動局1が無線送信したデータを受信すると、制御信号処理部2a,3a,4aの制御に応じた処理を行う。具体的には、送信部2b,3b,4bは、移動局1が通信を開始した初期状態では、移動局1からの受信データを中継装置5に送信する。制御信号処理部2a,3a,4aにより送信停止の指示があると、以降、送信再開の指示があるまで、移動局1からの受信データを中継装置5に送信せずに破棄する。
【0018】
中継装置5は、無線基地局2,3,4と上位ネットワークとの間でデータを中継する通信装置である。中継装置5は、無線基地局2,3,4から受信するデータを集約し、上位ネットワークに送信する。このとき、異なるブランチ経由で到着した同一内容のデータについて選択・合成を行う。中継装置5は、監視部5aおよび制御部5bを有する。
【0019】
監視部5aは、移動局1が同一内容のデータを無線基地局2,3,4に送信しているとき、各ブランチについて受信データに付与されているシーケンス番号を監視する。シーケンス番号としては、移動局1がデータ送信時に付与する番号や、無線基地局2,3,4がデータ転送時に付与する番号を用いることができる。そして、監視部5aは、シーケンス番号の欠落の有無を調べる。シーケンス番号の欠落は、パケットロスやデータ誤りなどのデータの欠損が伝送経路上で発生したことを意味する。なお、監視部5aは、伝送遅延のためデータが送信順に到着しない場合を考慮して、データ受信から所定時間待って欠落の有無を判断することが好ましい。
【0020】
制御部5bは、監視部5aで検出されたシーケンス番号の欠落の状況に基づいて、無線基地局2,3,4のうちデータの送信を継続させる少なくとも一部の無線基地局を選択する。例えば、最もシーケンス番号の欠落が少ない無線基地局を選択する。そして、制御部5bは、選択しなかった無線基地局に対して制御信号によってデータの送信停止を指示する。また、制御部5bは、送信継続中の無線基地局についてシーケンス番号の欠落状況が悪化すると、送信停止を指示した無線基地局に対して送信再開を指示する。
【0021】
このような無線通信システムによれば、中継装置5の監視部5aにより、無線基地局2,3,4から受信するデータに付与されているシーケンス番号が監視され、シーケンス番号の欠落が検出される。そして、中継装置5の制御部5bにより、シーケンス番号の欠落状況に基づいて、データの送信を継続させる無線基地局が選択され、選択されなかった無線基地局に対してデータの送信停止が指示される。また、その後、送信停止が指示された無線基地局に対して必要に応じてデータの送信再開が指示される。
【0022】
これにより、中継装置5に流入するデータを抑制することができ、無線基地局2,3,4から中継装置5への通信量が削減されると共に、中継装置5の処理負荷が軽減される。特に、データに付与されているシーケンス番号に基づいて無線基地局の選択を行うため、少なくとも無線基地局2,3,4と中継装置5との間の伝送品質を考慮した適切な選択がなされる。また、移動局1で付与されるシーケンス番号を用いた場合は、無線区間も含む移動局1と中継装置5との間の経路全体の伝送品質が考慮される。
【0023】
[第1の実施の形態]
以下、第1の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図2は、第1の実施の形態の無線通信システムの構成を示す図である。図2に示す無線通信システムは、移動局が無線基地局経由で他の移動局と通信を行うことができるシステムである。第1の実施の形態に係る無線通信システムは、コアネットワーク10、移動局100、無線基地局200,200a,200bおよび無線ネットワーク制御装置300を有する。無線基地局200,200a,200bと無線ネットワーク制御装置300とは有線で接続されている。無線ネットワーク制御装置300はコアネットワーク10に接続されている。
【0024】
移動局100は、無線基地局200,200a,200bと無線通信が可能な無線端末装置である。移動局100は、複数の無線基地局と無線通信が可能である。第1の実施の形態では、移動局100が3つの無線基地局200,200a,200bを同時に利用する場合、すなわち、移動局100と無線ネットワーク制御装置300との間に3つのブランチが形成される場合を考える。移動局100は、上りリンクを用いてデータを送信する場合、同一内容のデータを無線基地局200,200a,200bに並列に送信する。このとき、移動局100は、TSN(Transmission Sequence Number)と呼ばれるシーケンス番号をデータに付与する。TSNは、各送信データを識別する連番であり、受信側でデータの並べ替えやデータの欠落検査の際に参照される。
【0025】
無線基地局200,200a,200bは、移動局100と無線通信を行う通信装置である。無線基地局200,200a,200bは、移動局100から無線でデータを受信すると、データをEDCH−FP(Enhanced Dedicated CHannel - Frame Protocol)フレームと呼ばれる形式に纏めて、無線ネットワーク制御装置300に送信する。このとき、無線基地局200,200a,200bは、FSN(Frame Sequence Number)と呼ばれるシーケンス番号をEDCH−FPフレームに付与する。FSNは、各フレームを識別する連番であり、受信側でデータの並べ替えやデータの欠落検査の際に参照される。なお、無線基地局200,200a,200bは、無線ネットワーク制御装置300から送信停止の指示を受けたときは、EDCH−FPフレームの送信は行わない。
【0026】
無線ネットワーク制御装置300は、配下にある無線基地局200,200a,200bを統括し、無線基地局200,200a,200bとコアネットワーク10との間でデータを転送する中継装置である。無線ネットワーク制御装置300は、RNC(Radio Network Controller)やBSC(Base Station Controller)と呼ばれるものに相当する。無線ネットワーク制御装置300は、複数のブランチから同一内容のデータを受信したときは、受信データの選択・合成を行ってコアネットワーク10に送信する。また、無線ネットワーク制御装置300は、各ブランチの伝送品質を監視し、必要に応じて一部の無線基地局に対してデータの送信停止を指示する。
【0027】
なお、このような無線通信システムは、3GPPで標準化されたHSUPA(High Speed Uplink Packet Access)機能を備えるCDMA通信システムとして実現することができる。以下では、無線ネットワーク制御装置300をRNC300と表記する。また、移動局100がデータ送受信に利用する無線基地局200,200a,200bとRNC300との間の回線をIub回線、RNC300とコアネットワーク10との間の回線をIu回線と呼ぶこととする。
【0028】
次に、無線基地局200およびRNC300のモジュール構成について説明する。なお、無線基地局200a,200bも、無線基地局200と同様のモジュール構成によって実現できる。
【0029】
図3は、第1の実施の形態の無線基地局とRNCの機能を示すブロック図である。無線基地局200は、無線通信部210およびIub通信部220を有する。また、RNC300は、品質監視部310、選択合成部320および回線制御部330を有する。なお、ここでは移動局100からRNC300への方向(上り方向)に流れるデータを処理する機能に着目し、その他の機能については詳細な説明を省略している。
【0030】
無線通信部210は、移動局100との間の無線通信を制御する。無線通信部210は、受信部211を有する。
受信部211は、移動局100から無線信号を受信し、復調・復号を行ってデータを抽出する。そして、受信部211は、抽出したデータをIub通信部220に出力する。また、受信部211は、無線区間の通信状況を示す各種制御情報もIub通信部220に出力する。なお、このデータにはTSNが付与されている。
【0031】
Iub通信部220は、RNC300との間の通信を制御する。Iub通信部220は、送信部221および制御信号処理部222を有する。
送信部221は、送信非規制状態と送信規制状態の何れか一方の状態をとる。移動局100がデータ送信を開始したときの初期状態は、送信非規制状態である。送信部221は、送信非規制状態では、無線通信部210から取得したデータと制御情報に基づいてEDCH−FPフレームを構成し、RNC300に送信する。一方、送信規制状態では、データと制御情報は破棄し、EDCH−FPフレームを送信しない。なお、このフレームにはFSNが付与されている。
【0032】
制御信号処理部222は、RNC300から制御信号を受信し、制御信号の内容に応じて送信部221を制御する。具体的には、制御信号が送信停止の指示であった場合、送信部221の状態を送信規制状態にする。一方、制御信号が送信再開の指示であった場合、送信部221の状態に送信非規制状態にする。
【0033】
品質監視部310は、無線基地局200,200a,200bの少なくとも一部からEDCH−FPフレームを受信し、各ブランチの伝送品質を継続的に監視する。移動局100がデータ送信を開始したときの初期状態では、品質監視部310は無線基地局200,200a,200b全てからEDCH−FPフレームを受信する。品質監視部310は、FSN監視部311およびTSN監視部312を有する。
【0034】
FSN監視部311は、ブランチ毎にそのブランチ経由で受信したEDCH−FPフレームに付与されているFSNの連続性を監視し、FSNの欠落を検出する。このとき、送信順序通りにフレームが到着しない場合を想定し、フレーム到着後所定時間(例えば、許容する最大遅延時間)だけ待ってからFSNの欠落があるか判断する。そして、FSN監視部311は、FSNの欠落状況を回線制御部330に報告する。また、FSN監視部311は、EDCH−FPフレームをTSN監視部312に出力する。
【0035】
TSN監視部312は、FSN監視部311から取得したEDCH−FPフレームを移動局100の送信単位に分解する。そして、TSN監視部312は、ブランチ毎にデータに付与されているTSNの連続性を監視し、TSNの欠落を検出する。その後、TSN監視部312は、TSNの欠落状況を回線制御部330に報告する。また、TSN監視部312は、得られたデータを選択合成部320に出力する。
【0036】
なお、FSNの欠落は、Iub回線内でパケットロスや訂正不可能なビット誤りが発生することで起こりうる。また、TSNの欠落は、無線区間またはIub回線内でパケットロスや訂正不可能なビット誤りが発生することで起こりうる。従って、観察されるFSNおよびTSNの欠落状況は、各ブランチの伝送品質が反映されている。
【0037】
選択合成部320は、品質監視部310からデータを取得すると、同一内容の複数のデータ(初期状態では、3つのブランチそれぞれから受信する3つの同一内容のデータ)について、データの受信品質に応じて選択・合成処理を行い、1つのデータに絞り込む。そして、選択合成部320は得られたデータをコアネットワーク10に出力する。
【0038】
回線制御部330は、品質監視部310から取得するFSNおよびTSNの報告に基づいて、各ブランチの伝送品質を示す指標値を計算する。そして、この指標値が所定の品質条件を具備しているか否かに応じて、無線基地局200,200a,200bに対して送信停止または送信再開を示す制御信号を送信する。
【0039】
図4は、移動局が無線基地局に送信するフレームの例を示す図である。図4に示すMAC−ePDU(Medium Access Control - e Protocol Data Unit)は、移動局100で生成され無線基地局200,200a,200bで終端されるMAC−e層の単位データである。生成されたMAC−ePDUは、物理層で無線信号に対応付けられて伝送される。
【0040】
MAC−ePDUは、MAC−eヘッダと複数のMAC−esPDU(Medium Access Control - es Protocol Data Unit)とを含む。MAC−eヘッダは、MAC−e層で付加されるヘッダである。MAC−esPDUは、移動局100で生成されRNC300で終端される、MAC−e層の上位層であるMAC−es層の単位データである。
【0041】
MAC−esPDUは、TSNと複数のMAC−dPDU(Medium Access Control - d Protocol Data Unit)とを含む。TSNは、MAC−esPDUを識別する連番である。RNC300では、TSNを参照してMAC−esPDUの並べ替えと選択・合成処理とが行われる。MAC−dPDUは、移動局100で生成されRNC300で終端される、MAC−es層の上位層であるMAC−d層の単位データである。
【0042】
図5は、無線基地局がRNCに送信するフレームの例を示す図である。図5に示すEDCH−FPフレームは、無線基地局200,200a,200bで生成されRNC300で終端される、MAC−es層の下位層であるEDCH−FP層の単位データである。EDCH−FPフレームは、フレームヘッダと複数のMAC−eペイロードとを含む。
【0043】
フレームヘッダは、EDCH−FP層で付与されるヘッダである。フレームヘッダには、FT(Frame Type)、Header CRC(Cyclic Redundancy Check)、FSN、Number of SubframesおよびN of HARQ Retransmのフィールドが設けられている。
【0044】
FTは、フレームの種類を示すビットであり、データフレームの場合は0、制御フレームの場合は1が設定される。Header CRCは、フレームヘッダのビット誤りを検出する誤り訂正符号である。FSNは、無線基地局200,200a,200bで付与されるシーケンス番号である。Number of Subframesは、フレームヘッダに続くMAC−eペイロードの個数である。N of HARQ Retransmは、MAC−ePDUの受信が成功するまでに移動局100がそのMAC−ePDUを再送した回数であり、MAC−eペイロード毎に設定される。
【0045】
MAC−eペイロードは、移動局100から受信したMAC−ePDUのペイロード部分である。MAC−eペイロードは、図4に示した通り、複数のMAC−esPDUを含む。各MAC−esPDUには、そのMAC−esPDUを識別するTSNが含まれる。
【0046】
図6は、RNCが無線基地局に送信する制御フレームの第1の例を示す図である。図6に示す制御フレームは、送信停止または送信再開を指示する際にRNC300が送信するものである。この制御フレームには、FT、Header CRC、Control Frame TypeおよびIub Transmのフィールドが設けられている。その他の領域は空き領域である。なお、図6では1行が1バイト(8ビット)のビット列に相当し、右側(“0”と表記した側)が最下位ビット、左側(“7”と表記した側)が最上位ビットである。
【0047】
FTは、フレームの種類を示すビットであり、ここでは制御フレームであるため1が設定される。Header CRCは、フレームヘッダのビット誤りを検出する誤り訂正符号である。Control Frame Typeは、制御フレームの種類を示すビット列であり、送信停止または送信再開を指示する制御フレームであることを意味する所定のビット列が設定される。Iub Transmは、指示内容を示すビット列(2ビット)である。例えば、00が無線基地局に既定の通常動作、10がデータの送信停止、11がデータの送信再開を意味する。この場合、01は割り当てなしとする。
【0048】
なお、図6に示した制御フレームは、3GPPの標準仕様には存在しない新たな種類の制御フレームとして定義したものである。一方、3GPPの標準仕様で定義されている既存の制御フレームを拡張するという方法も考えられる。
【0049】
図7は、RNCが無線基地局に送信する制御フレームの第2の例を示す図である。図7に示す制御フレームは、TNL Congestion Indicatorという既存の制御フレームを拡張したものである。TNL Congestion Indicatorは、RNC300が無線基地局200,200a,200bにIub回線の混雑度が高い(輻輳が発生している)ことを通知するものである。この制御フレームには、FT、Header CRC、Control Frame Type、Congestion StatusおよびIub Transmのフィールドが設けられている。その他の領域は空き領域である。なお、図7では1行が1バイト(8ビット)のビット列に相当し、右側(“0”と表記した側)が最下位ビット、左側(“7”と表記した側)が最上位ビットである。
【0050】
FT、Header CRC、Control Frame TypeおよびIub Transmの意味は、図6に示したものと同様である。Congestion Statusは、Iub回線の混雑度を示すビット列である。ここで、Iub Transmのフィールドは、既存のTNL Congestion Indicator内の空き領域に定義されている。このように、RNC300は、既存の制御フレームを拡張することでデータの送信停止および送信再開を無線基地局200,200a,200bに指示することもできる。
【0051】
次に、以上のような構成およびデータ構造を備える無線通信システムにおいて実行される処理の詳細を説明する。まず、各ブランチの伝送品質を示す指標値の計算方法について説明し、その後、この指標値を用いて一部の無線基地局の送信処理を停止させる制御について説明する。
【0052】
図8は、通信品質を示す指標値の計算方法を示す模式図である。RNC300の回線制御部330は、各ブランチについて、TSNの欠落状況に基づく指標値QtとFSNの欠落状況に基づく指標値Qfとを計算する。これにより、各ブランチの伝送品質が定量化される。指標値Qtと指標値Qfとは同様の方法で計算できるため、ここでは指標値Qtについて説明する。
【0053】
回線制御部330は、ブランチが確立されたときの初期値として、指標値Qtに所定の最大値を設定する。その後、TSN監視部312からの報告でTSNの欠落を知ると、ペナルティとしてQtから所定量Δqだけ減点する。図8は、時刻t1と時刻t2でTSNが欠落したことを意味している。一方、TSNの欠落が生じていないときは、TSNのカウントが1つ進む毎にQtに所定量を加点する。ただし、Qtが最大値に達するとそれ以上の加点は行わない。
【0054】
このようにして計算された指標値Qtは、レベル1、レベル2、レベル3の何れかに分類される。レベル1は、指標値Qtが所定の第1の閾値以上の場合である。レベル1は、TSNの欠落が少なくブランチの伝送品質が良好であることを意味する。レベル2は、指標値Qtが所定の第1の閾値未満で所定の第2の閾値以上の場合である。レベル2は、TSNの欠落がある程度発生しておりブランチの伝送品質が中程度であることを意味する。レベル3は、指標値Qtが所定の第2の閾値未満の場合である。レベル3は、TSNの欠落が多くブランチの伝送品質が悪いことを意味する。
【0055】
図9は、第1の実施の形態の回線制御処理の手順を示すフローチャートである。図9に示す処理は、移動局100が通信を行っている間、RNC300によって繰り返し実行される。以下、図9に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0056】
[ステップS11]回線制御部330は、移動局100とRNC300との間に複数のブランチが構成されているか、すなわち、移動局100が複数の無線基地局と通信を行っているか判断する。複数のブランチが構成されている場合には、処理がステップS12に進められる。複数のブランチが構成されていない場合には、回線制御処理が終了する。
【0057】
[ステップS12]回線制御部330は、ブランチが経由する無線基地局のうち送信停止中の無線基地局があるか判断する。送信停止中の無線基地局がある場合には、処理がステップS18に進められる。送信停止中の無線基地局がない場合には、処理がステップS13に進められる。
【0058】
[ステップS13]回線制御部330は、移動局100とRNC300との間に構成されたブランチのうち指標値Qtがレベル1のブランチがあるか、すなわち、伝送品質が良好なブランチがあるか判断する。指標値Qtがレベル1のブランチが少なくとも1つある場合には、処理がステップS14に進められる。指標値Qtがレベル1のブランチがない場合には、回線制御処理が終了する。
【0059】
[ステップS14]回線制御部330は、移動局100とRNC300との間に構成されたブランチから、指標値Qtがレベル1のブランチを抽出する。
[ステップS15]回線制御部330は、ステップS14で抽出されたブランチが複数ある場合、抽出されたブランチから指標値Qfが最も大きいブランチを更に抽出する。
【0060】
[ステップS16]回線制御部330は、ステップS15で抽出されたブランチが複数ある場合、抽出されたブランチから直前の所定時間内にTSNおよびFSNの欠落が最も少なかったブランチを更に抽出する。この時点で、ブランチは1つに絞り込まれている。
【0061】
[ステップS17]回線制御部330は、ステップS14〜S16の絞り込みにより残った1つのブランチを、RNC300にデータを流入させるブランチとして選択する。そして、回線制御部330は、移動局100とRNC300との間に構成されたブランチのうち選択しなかったブランチに対応する無線基地局それぞれに対して、送信停止を指示する制御フレームを送信する。これにより、選択しなかったブランチからRNC300にデータが流入しなくなる。
【0062】
[ステップS18]回線制御部330は、Iub区間でデータ伝送中のブランチの現在の指標値Qtがレベル3であるか、すなわち、データを受信しているブランチの伝送品質が悪化したか判断する。指標値Qtがレベル3である場合には、処理がステップS19に進められる。指標値Qtがレベル1または2である場合には、回線制御処理が終了する。
【0063】
[ステップS19]回線制御部330は、以前に送信停止を指示した全ての無線基地局に対して、送信再開を指示する制御フレームを送信する。これにより、全てのブランチからRNC300にデータが流入するようになる。
【0064】
このようにして、RNC300は、指標値Qtがレベル1のブランチがあれば、そのブランチのみで十分な通信品質を確保できるため、他のブランチからデータが流入しないようにする。このとき、指標値Qtがレベル1のブランチが複数ある場合、指標値Qfや直近のTSNおよびFSNの欠落状況も参照して絞り込む。そして、データ受信中のブランチの指標値Qtがレベル1または2の間は、その状態を維持する。一方、データ受信中のブランチの指標値Qtがレベル3にまで悪化した場合、RNC300は、再び全てのブランチからデータを受信するようにする。
【0065】
図10は、第1の実施の形態のフレーム送信状況の変化を示す模式図である。ここでは、移動局100が3つの無線基地局200,200a,200bにデータを送信している場合を考える。図10に示すように、初期状態では、RNC300は無線基地局200,200a,200bからデータを受信する。
【0066】
ここで、無線基地局200aを経由するブランチの指標値Qtがレベル1であり、他のブランチの指標値Qtがレベル2または3であるとすると、RNC300は無線基地局200,200bに送信停止を指示する。これにより、無線基地局200,200bはRNC300にデータを送信しなくなり、無線基地局200aのみがRNC300にデータを送信する。
【0067】
そして、無線基地局200aを経由するブランチの指標値Qtがレベル3に変化すると、RNC300は無線基地局200,200bに送信再開を指示する。これにより、3つの無線基地局200,200a,200bはそれぞれRNC300にデータを送信する。その後、RNC300は、各ブランチの指標値Qtの変化に応じて、無線基地局200,200a,200bの送信停止または送信再開を制御する。
【0068】
このような無線通信システムを用いることで、移動局100とRNC300との間に構成された複数のブランチのうち1つのブランチで十分な通信品質を確保可能と判断されるときは、無線基地局200,200a,200bでデータの送信が抑制される。従って、Iub回線の通信量が削減されると共に、RNC300の処理負荷が軽減される。また、選択した1つのブランチの伝送品質が低下したときは、通信品質が維持されるように、再び全てのブランチからRNC300にデータが流入するよう制御される。特に、各ブランチの伝送品質はRNC300におけるTSNおよびFSNの欠落状況に基づいて判断するため、Iub回線の状態が考慮されて、ブランチの選択が適切に行われる。
【0069】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。前述の第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については説明を省略する。第2の実施の形態に係る無線通信システムは、データ受信中のブランチの伝送品質が低下した際、送信停止中の全ての無線基地局を一斉に再開させるのではなく、一部の無線基地局を選択して再開させるようにしたものである。
【0070】
第2の実施の形態に係る無線通信システムは、図2に示した第1の実施の形態に係る無線通信システムと同様のシステム構成によって実現できる。ただし、無線基地局と無線ネットワーク制御装置(RNC)の一部機能が、第1の実施の形態と異なる。第2の実施の形態では、第1の実施の形態の無線基地局200,200a,200bおよびRNC300に代えて、以下に述べる無線基地局400,400a,400bおよびRNC500を用いる。
【0071】
図11は、第2の実施の形態の無線基地局とRNCの機能を示すブロック図である。無線基地局400は、無線通信部410およびIub通信部420を有する。また、RNC500は、品質監視部510、選択合成部520および回線制御部530を有する。なお、ここでは移動局100からRNC500への方向(上り方向)に流れるデータを処理する機能に着目し、その他の機能については詳細な説明を省略している。
【0072】
無線通信部410は、移動局100との間の無線通信を制御する。無線通信部410は、受信部411を有する。受信部411の機能は、第1の実施の形態の受信部211と同様である。
【0073】
Iub通信部420は、RNC500との間の通信を制御する。Iub通信部420は、送信部421および制御信号処理部422を有する。制御信号処理部422の機能は、第1の実施の形態の制御信号処理部222と同様である。
【0074】
送信部421は、送信非規制状態と送信規制状態の何れか一方の状態をとる。送信部421は、送信非規制状態では、無線通信部410から取得したデータと制御情報に基づいてEDCH−FPフレームを構成し、RNC500に送信する。一方、送信規制状態では、ペイロード部がないヘッダ部だけのEDCH−FPフレームを構成し、RNC500に送信する。このとき、フレームヘッダ内のNumber of Subframesフィールドが0に設定される。
【0075】
品質監視部510は、無線基地局400,400a,400bの少なくとも一部からEDCH−FPフレームを受信し、各ブランチの伝送品質を継続的に監視する。品質監視部510は、HARQ監視部511、FSN監視部512およびTSN監視部513を有する。FSN監視部512およびTSN監視部513の機能は、第1の実施の形態のFSN監視部311およびTSN監視部312と同様である。
【0076】
HARQ監視部511は、EDCH−FPフレームを受信すると、フレームヘッダ内のNumber of Subframesフィールドを参照して、ペイロード部が存在するか確認する。ペイロード部が存在しない場合、HARQ監視部511は、フレームヘッダ内のN of HARQ Retransmフィールドの値(無線区間での再送回数)を読み取って回線制御部530に報告すると共に、そのEDCH−FPフレームを破棄する。一方、ペイロード部が存在する場合、HARQ監視部511は、EDCH−FPフレームをFSN監視部512に出力する。
【0077】
選択合成部520は、品質監視部510からデータを取得すると、同一内容の複数のデータについて、データの受信品質に応じて選択・合成処理を行い、1つのデータに絞り込む。そして、選択合成部520は、得られたデータをコアネットワーク10に出力する。
【0078】
回線制御部530は、品質監視部510から取得するFSNおよびTSNの報告に基づいて、Iub区間がデータ伝送中のブランチの伝送品質を示す指標値を計算する。また、回線制御部530は、品質監視部510から取得する再送回数の報告に基づいて、Iub区間が停止中のブランチの無線通信品質を示す指標値を計算する。例えば、直近10フレーム分の再送回数の情報を保持しておき、それらの平均値・最良値・最悪値を計算して指標値とすることが考えられる。そして、これら指標値が所定の品質条件を具備しているか否かに応じて、無線基地局400,400a,400bに対して送信停止または送信再開を示す制御信号を送信する。
【0079】
図12は、第2の実施の形態の回線制御処理の手順を示すフローチャートである。図12に示す処理は、移動局100が通信を行っている間、RNC500によって繰り返し実行される。以下、図12に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0080】
[ステップS21]回線制御部530は、移動局100とRNC500との間に複数のブランチが構成されているか判断する。複数のブランチが構成されている場合には、処理がステップS22に進められる。複数のブランチが構成されていない場合には、回線制御処理が終了する。
【0081】
[ステップS22]回線制御部530は、データ送信中の無線基地局が複数あるか判断する。データ送信中の無線基地局が複数ある場合には、処理がステップS23に進められる。データ送信中の無線基地局が1つの場合には、処理がステップS29に進められる。
【0082】
[ステップS23]回線制御部530は、Iub区間でデータ伝送中のブランチのうち指標値Qtがレベル1のブランチがあるか判断する。指標値Qtがレベル1のブランチが少なくとも1つある場合には、処理がステップS24に進められる。指標値Qtがレベル1のブランチがない場合には、処理がステップS28に進められる。
【0083】
[ステップS24]回線制御部530は、Iub区間でデータ伝送中のブランチから、指標値Qtがレベル1のブランチを抽出する。
[ステップS25]回線制御部530は、ステップS24で抽出されたブランチが複数ある場合、抽出されたブランチから指標値Qfが最も大きいブランチを更に抽出する。
【0084】
[ステップS26]回線制御部530は、ステップS25で抽出されたブランチが複数ある場合、抽出されたブランチから直前の所定時間内にTSNおよびFSNの欠落が最も少なかったブランチを更に抽出する。この時点で、ブランチは1つに絞り込まれている。
【0085】
[ステップS27]回線制御部530は、ステップS24〜S26の絞り込みにより残った1つのブランチを、RNC500にデータを流入させるブランチとして選択する。そして、回線制御部530は、Iub区間でデータ伝送中のブランチのうち選択しなかったブランチに対応する無線基地局それぞれに対して、送信停止を指示する制御フレームを送信する。
【0086】
[ステップS28]回線制御部530は、ブランチが経由する無線基地局のうち送信停止中の無線基地局があるか判断する。送信停止中の無線基地局がある場合には、処理がステップS29に進められる。送信停止中の無線基地局がない場合には、回線制御処理が終了する。
【0087】
[ステップS29]回線制御部530は、Iub区間でデータ伝送中の全てのブランチの現在の指標値Qtがレベル3であるか判断する。全てのブランチの指標値Qtがレベル3である場合には、処理がステップS30に進められる。指標値Qtがレベル1または2のブランチが少なくとも1つある場合には、回線制御処理が終了する。
【0088】
[ステップS30]回線制御部530は、Iub区間で伝送停止中のブランチのうち無線通信品質が最も良好な1つのブランチを選択する。無線通信品質は、無線区間でのデータ再送回数に基づいて判断することができる。
【0089】
[ステップS31]回線制御部530は、ステップS30で選択したブランチに対応する無線基地局に対して、送信再開を指示する制御フレームを送信する。
このようにして、RNC500は、指標値Qtがレベル1のブランチがあれば、そのブランチのみで十分な通信品質を確保できるため、他のブランチからデータが流入しないようにする。このとき、指標値Qtがレベル1のブランチが複数ある場合、指標値Qfや直近のTSNおよびFSNの欠落状況も参照して絞り込む。そして、データ受信中のブランチの指標値Qtがレベル1または2の間は、その状態を維持する。一方、データ受信中のブランチの指標値Qtがレベル3にまで悪化した場合、RNC500は、無線区間の再送回数が最も少ないブランチの送信停止を解除する。
【0090】
図13は、第2の実施の形態のフレーム送信状況の変化を示す模式図である。ここでは、移動局100が3つの無線基地局400,400a,400bにデータを送信している場合を考える。図13に示すように、初期状態では、RNC500は無線基地局400,400a,400bからデータを受信する。
【0091】
ここで、無線基地局400aを経由するブランチの指標値Qtがレベル1であり、他のブランチの指標値Qtがレベル2または3であるとすると、RNC500は無線基地局400,400bに送信停止を指示する。これにより、無線基地局400aはRNC500にペイロード部を有するフレームを送信し、無線基地局400,400bはRNC500にヘッダ部のみのフレームを送信する。
【0092】
そして、無線基地局400aを経由するブランチの指標値Qtがレベル3に変化すると、RNC500は無線基地局400,400bのうち無線区間の再送回数が少ない方(ここでは、無線基地局400)に送信再開を指示する。これにより、無線基地局400,400aはRNC500にペイロード部を有するフレームを送信し、無線基地局400bはRNC500にヘッダ部のみのフレームを送信する。
【0093】
このような無線通信システムを用いることで、第1の実施の形態と同様の効果を得られる。更に、第2の実施の形態に係る無線通信システムを用いることで、データ伝送中のブランチの伝送品質が悪化したときに、伝送停止中のブランチのうち最も伝送品質が高いと推測されるものを優先的に再開させることができる。従って、Iub回線の通信量が一層削減されると共に、RNC500の処理負荷が一層軽減される。
【0094】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。前述の第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については説明を省略する。
【0095】
図14は、第3の実施の形態の無線通信システムの構成を示す図である。図14に示す無線通信システムは、複数の無線ネットワーク制御装置(RNC)を備えるものである。第3の実施の形態に係る無線通信システムは、コアネットワーク10、移動局100、無線基地局200,200a,200bおよびRNC600,600aを有する。無線基地局200,200aとRNC600、無線基地局200bとRNC600a、RNC600とRNC600aとは、それぞれ有線で接続されている。RNC600はコアネットワーク10に接続されている。なお、移動局100がデータ送受信に利用するRNC600とRNC600aとの間の回線をIur回線と呼ぶこととする。
【0096】
移動局100が無線通信を開始すると、何れか1つのRNCが移動局100の送信データを集約するRNC(サービングRNC)として機能し、他のRNCがサービングRNCにデータを転送するRNC(ドリフトRNC)として機能する。ここでは、RNC600がサービングRNCであり、RNC600aがドリフトRNCである。
【0097】
移動局100が3つの無線基地局200,200a,200bにデータを送信すると、初期状態では、無線基地局200,200aは、移動局100からの受信データをIub回線を用いてRNC600に送信する。また、無線基地局200bは、移動局100からの受信データをIub回線を用いてRNC600aに送信し、RNC600aは、無線基地局200bからの受信データをIur回線を用いてRNC600に転送する。このようにして、移動局100が送信した同一内容の複数のデータは、RNC600に集約されて選択・合成処理がなされ、コアネットワーク10に出力される。
【0098】
ここで、上記第1および第2の実施の形態で述べたような回線制御を行う場合、RNC600は、無線基地局200,200aに対しては、Iub回線で制御フレームを送信する。一方、無線基地局200bに対しては、Iur回線でRNC600aに制御フレームを送信し、RNC600aに制御フレームを転送してもらう。
【0099】
このように、サービングRNCがドリフトRNCの配下にある無線基地局の送信処理を制御するときは、ドリフトRNC経由で制御フレームを送信することで、上記第1および第2の実施の形態で述べたような回線制御を実現することができる。なお、図14では、RNC600とRNC600aとはコアネットワーク10を経由せずに直接接続されているものとしたが、コアネットワーク10を介して接続されているようにしてもよい。
【0100】
なお、上記第1、第2および第3の実施の形態では、TSNの欠落状況とFSNの欠落状況のうちTSNの欠落状況を優先適用してブランチ選択を行ったが、FSNの欠落状況を優先適用するようにしてもよい。また、無線通信品質の指標として無線区間の再送回数を用いたが、他の品質指標を用いるようにしてもよい。また、RNCと無線基地局との間に他の中継装置を挿入してもよい。また、上記第1、第2および第3の実施の形態の回線制御方法は、CDMA方式の無線通信システムに限定されるものではなく、移動局が複数の無線基地局と通信可能な他の方式の無線通信システムにも適用できる。
【0101】
以上、本件の通信方法および中継装置を図示の実施の形態に基づいて説明したが、本実施の形態はこれに限定されるものではなく、各部の構成は同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本件の通信方法および中継装置は、本実施の形態に他の任意の構成物や工程が付加されていてもよい。また、本件の通信方法および中継装置は、前述した実施の形態のうちの任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0102】
以上説明した実施の形態の主な技術的特徴は、以下の付記の通りである。
(付記1) 移動局から無線でデータを受信する複数の無線基地局と前記複数の無線基地局から前記移動局が送信したデータをネットワーク経由で取得する中継装置とを備える無線通信システムにおける通信方法において、
前記移動局が同一内容のデータを前記複数の無線基地局に並列に送信しているとき、前記中継装置が、前記複数の無線基地局それぞれについて当該無線基地局から取得するデータに付与されているシーケンス番号を監視して前記シーケンス番号の欠落を検出し、
前記中継装置が、前記シーケンス番号の欠落状況に基づいて、前記複数の無線基地局のうちデータの送信を継続させる少なくとも一部の無線基地局を選択し、選択しなかった無線基地局に対してデータの送信停止を通知する、
ことを特徴とする通信方法。
【0103】
(付記2) 前記中継装置は、前記移動局がデータの送信時に付与するシーケンス番号の欠落状況に基づいて、データの送信を継続させる無線基地局を選択することを特徴とする付記1記載の通信方法。
【0104】
(付記3) 前記中継装置は、前記複数の無線基地局それぞれが前記移動局から受信したデータを前記中継装置に送信する際に付与するシーケンス番号の欠落状況に基づいて、データの送信を継続させる無線基地局を選択することを特徴とする付記1記載の通信方法。
【0105】
(付記4) 前記中継装置は、前記移動局がデータの送信時に付与するシーケンス番号の欠落状況と前記複数の無線基地局それぞれがデータを前記中継装置に送信する際に付与するシーケンス番号の欠落状況とに基づいて、データの送信を継続させる無線基地局を選択することを特徴とする付記1記載の通信方法。
【0106】
(付記5) 前記シーケンス番号の欠落が最も少ない無線基地局の欠落状況が所定の品質条件を満たす場合、前記中継装置は、当該無線基地局のみをデータの送信を継続させる無線基地局とし、他の全ての無線基地局に対してデータの送信停止を通知することを特徴とする付記1記載の通信方法。
【0107】
(付記6) 前記データの送信停止の通知後、データの送信を継続させた無線基地局の前記シーケンス番号の欠落状況が所定の品質条件を満たさなくなった場合、前記中継装置は、前記データの送信停止を通知した全ての無線基地局に対してデータの送信再開を通知することを特徴とする付記1記載の通信方法。
【0108】
(付記7) 前記中継装置から送信停止の通知を受けた無線基地局は、前記移動局からデータを受信すると、受信したデータに対応するヘッダ情報を生成して前記中継装置に送信することを特徴とする付記1記載の通信方法。
【0109】
(付記8) 前記中継装置から送信停止の通知を受けた無線基地局は、前記移動局からデータを受信すると、前記移動局が当該データを再送した回数を示す情報を含む当該データに対応するヘッダ情報を生成して前記中継装置に送信することを特徴とする付記1記載の通信方法。
【0110】
(付記9) 前記中継装置から送信停止の通知を受けた無線基地局は、前記移動局からデータを受信すると、受信したデータに対応するヘッダ情報を生成して前記中継装置に送信し、
前記データの送信停止の通知後、データの送信を継続させた無線基地局の前記シーケンス番号の欠落状況が所定の品質条件を満たさなくなった場合、前記中継装置は、前記ヘッダ情報に基づいて前記データの送信停止を通知した無線基地局のうちデータの送信を再開させる少なくとも一部の無線基地局を選択し、選択した無線基地局に対してデータの送信再開を通知する、
ことを特徴とする付記1記載の通信方法。
【0111】
(付記10) 前記選択しなかった無線基地局が他の中継装置の配下にある場合は、前記中継装置は、前記他の中継装置経由で前記データの送信停止を通知することを特徴とする付記1記載の通信方法。
【0112】
(付記11) 移動局から無線でデータを受信する複数の無線基地局を備える無線通信システムで用いられる、前記複数の無線基地局から前記移動局が送信したデータをネットワーク経由で取得する中継装置において、
前記移動局が同一内容のデータを前記複数の無線基地局に並列に送信しているとき、前記複数の無線基地局それぞれについて当該無線基地局から取得するデータに付与されているシーケンス番号を監視して前記シーケンス番号の欠落を検出する監視部と、
前記監視部で検出された前記シーケンス番号の欠落の状況に基づいて、前記複数の無線基地局のうちデータの送信を継続させる少なくとも一部の無線基地局を選択し、選択しなかった無線基地局に対してデータの送信停止を通知する制御部と、
を有することを特徴とする中継装置。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本実施の形態の概要を示す図である。
【図2】第1の実施の形態の無線通信システムの構成を示す図である。
【図3】第1の実施の形態の無線基地局とRNCの機能を示すブロック図である。
【図4】移動局が無線基地局に送信するフレームの例を示す図である。
【図5】無線基地局がRNCに送信するフレームの例を示す図である。
【図6】RNCが無線基地局に送信する制御フレームの第1の例を示す図である。
【図7】RNCが無線基地局に送信する制御フレームの第2の例を示す図である。
【図8】通信品質を示す指標値の計算方法を示す模式図である。
【図9】第1の実施の形態の回線制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】第1の実施の形態のフレーム送信状況の変化を示す模式図である。
【図11】第2の実施の形態の無線基地局とRNCの機能を示すブロック図である。
【図12】第2の実施の形態の回線制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】第2の実施の形態のフレーム送信状況の変化を示す模式図である。
【図14】第3の実施の形態の無線通信システムの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0114】
1 移動局
2,3,4 無線基地局
2a,3a,4a 制御信号処理部
2b,3b,4b 送信部
5 中継装置
5a 監視部
5b 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局から無線でデータを受信する複数の無線基地局と前記複数の無線基地局から前記移動局が送信したデータをネットワーク経由で取得する中継装置とを備える無線通信システムにおける通信方法において、
前記移動局が同一内容のデータを前記複数の無線基地局に並列に送信しているとき、前記中継装置が、前記複数の無線基地局それぞれについて当該無線基地局から取得するデータに付与されているシーケンス番号を監視して前記シーケンス番号の欠落を検出し、
前記中継装置が、前記シーケンス番号の欠落状況に基づいて、前記複数の無線基地局のうちデータの送信を継続させる少なくとも一部の無線基地局を選択し、選択しなかった無線基地局に対してデータの送信停止を通知する、
ことを特徴とする通信方法。
【請求項2】
前記中継装置から送信停止の通知を受けた無線基地局は、前記移動局からデータを受信すると、受信したデータに対応するヘッダ情報を生成して前記中継装置に送信し、
前記データの送信停止の通知後、データの送信を継続させた無線基地局の前記シーケンス番号の欠落状況が所定の品質条件を満たさなくなった場合、前記中継装置は、前記ヘッダ情報に基づいて前記データの送信停止を通知した無線基地局のうちデータの送信を再開させる少なくとも一部の無線基地局を選択し、選択した無線基地局に対してデータの送信再開を通知する、
ことを特徴とする請求項1記載の通信方法。
【請求項3】
前記データの送信停止の通知後、データの送信を継続させた無線基地局の前記シーケンス番号の欠落状況が所定の品質条件を満たさなくなった場合、前記中継装置は、前記データの送信停止を通知した全ての無線基地局に対してデータの送信再開を通知することを特徴とする請求項1記載の通信方法。
【請求項4】
前記中継装置は、前記移動局がデータの送信時に付与するシーケンス番号の欠落状況に基づいて、データの送信を継続させる無線基地局を選択することを特徴とする請求項1記載の通信方法。
【請求項5】
前記中継装置は、前記複数の無線基地局それぞれが前記移動局から受信したデータを前記中継装置に送信する際に付与するシーケンス番号の欠落状況に基づいて、データの送信を継続させる無線基地局を選択することを特徴とする請求項1記載の通信方法。
【請求項6】
移動局から無線でデータを受信する複数の無線基地局を備える無線通信システムで用いられる、前記複数の無線基地局から前記移動局が送信したデータをネットワーク経由で取得する中継装置において、
前記移動局が同一内容のデータを前記複数の無線基地局に並列に送信しているとき、前記複数の無線基地局それぞれについて当該無線基地局から取得するデータに付与されているシーケンス番号を監視して前記シーケンス番号の欠落を検出する監視部と、
前記監視部で検出された前記シーケンス番号の欠落の状況に基づいて、前記複数の無線基地局のうちデータの送信を継続させる少なくとも一部の無線基地局を選択し、選択しなかった無線基地局に対してデータの送信停止を通知する制御部と、
を有することを特徴とする中継装置。
【請求項1】
移動局から無線でデータを受信する複数の無線基地局と前記複数の無線基地局から前記移動局が送信したデータをネットワーク経由で取得する中継装置とを備える無線通信システムにおける通信方法において、
前記移動局が同一内容のデータを前記複数の無線基地局に並列に送信しているとき、前記中継装置が、前記複数の無線基地局それぞれについて当該無線基地局から取得するデータに付与されているシーケンス番号を監視して前記シーケンス番号の欠落を検出し、
前記中継装置が、前記シーケンス番号の欠落状況に基づいて、前記複数の無線基地局のうちデータの送信を継続させる少なくとも一部の無線基地局を選択し、選択しなかった無線基地局に対してデータの送信停止を通知する、
ことを特徴とする通信方法。
【請求項2】
前記中継装置から送信停止の通知を受けた無線基地局は、前記移動局からデータを受信すると、受信したデータに対応するヘッダ情報を生成して前記中継装置に送信し、
前記データの送信停止の通知後、データの送信を継続させた無線基地局の前記シーケンス番号の欠落状況が所定の品質条件を満たさなくなった場合、前記中継装置は、前記ヘッダ情報に基づいて前記データの送信停止を通知した無線基地局のうちデータの送信を再開させる少なくとも一部の無線基地局を選択し、選択した無線基地局に対してデータの送信再開を通知する、
ことを特徴とする請求項1記載の通信方法。
【請求項3】
前記データの送信停止の通知後、データの送信を継続させた無線基地局の前記シーケンス番号の欠落状況が所定の品質条件を満たさなくなった場合、前記中継装置は、前記データの送信停止を通知した全ての無線基地局に対してデータの送信再開を通知することを特徴とする請求項1記載の通信方法。
【請求項4】
前記中継装置は、前記移動局がデータの送信時に付与するシーケンス番号の欠落状況に基づいて、データの送信を継続させる無線基地局を選択することを特徴とする請求項1記載の通信方法。
【請求項5】
前記中継装置は、前記複数の無線基地局それぞれが前記移動局から受信したデータを前記中継装置に送信する際に付与するシーケンス番号の欠落状況に基づいて、データの送信を継続させる無線基地局を選択することを特徴とする請求項1記載の通信方法。
【請求項6】
移動局から無線でデータを受信する複数の無線基地局を備える無線通信システムで用いられる、前記複数の無線基地局から前記移動局が送信したデータをネットワーク経由で取得する中継装置において、
前記移動局が同一内容のデータを前記複数の無線基地局に並列に送信しているとき、前記複数の無線基地局それぞれについて当該無線基地局から取得するデータに付与されているシーケンス番号を監視して前記シーケンス番号の欠落を検出する監視部と、
前記監視部で検出された前記シーケンス番号の欠落の状況に基づいて、前記複数の無線基地局のうちデータの送信を継続させる少なくとも一部の無線基地局を選択し、選択しなかった無線基地局に対してデータの送信停止を通知する制御部と、
を有することを特徴とする中継装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−194792(P2009−194792A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35537(P2008−35537)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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