通信装置および電力量計
【課題】無線通信および電力線通信のいずれかまたは双方が可能な通信装置であって、通信の信頼性を確保するとともに、消費電力を低減し、装置コストや装置サイズの増大を抑制可能にする。
【解決手段】通信装置10は、電力量計測部4の計測値(検針値)を取得し、電力線通信部200および無線通信部300のいずれかまたは双方を用いて、その計測値を基地局20を介してセンタ装置30に送信する。ベースバンド処理部100は、電力量計測部4から取得した計測値を、電力線通信部200および無線通信部300に共通のベースバンド信号として生成する。また、電力線通信および無線通信のいずれを用いるかまたは双方を用いるのかについての選択を、第1SW11および第2SW12のON/OFFを操作して実行する。
【解決手段】通信装置10は、電力量計測部4の計測値(検針値)を取得し、電力線通信部200および無線通信部300のいずれかまたは双方を用いて、その計測値を基地局20を介してセンタ装置30に送信する。ベースバンド処理部100は、電力量計測部4から取得した計測値を、電力線通信部200および無線通信部300に共通のベースバンド信号として生成する。また、電力線通信および無線通信のいずれを用いるかまたは双方を用いるのかについての選択を、第1SW11および第2SW12のON/OFFを操作して実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力量の検針値を電力線通信および無線通信のいずれかまたは双方によって伝達可能にし、その検針値のベースバンド信号の生成処理を共通化した通信装置および電力量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気、ガス、水道等の使用対象期間の使用料金は、検針員が定期的に家屋に設置された電気、ガス、水道等のメータを目視で確認し、メータの数値を記録した上で、前回の検針値との差に基づいて算出されてきた。しかし、検針員の人的コストが大きいこと、および家屋の住人(管理者等)が不在のときの対応が困難な場合があることが課題となっており、電気、ガス、水道等の使用量の検針業務を自動化するシステムが開発されてきている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の従来技術では、自動検針システムに無線通信を用いる方法が開示されている。この自動検針システムでは、検針機能を備えた無線装置を、その無線装置間の通信路がツリー状になるように配置して、検針値を無線で伝達し、ツリーの頂点に位置する集約装置が検針値を収集する。そして、集約装置は、各無線装置から、定期的な検針値が到達しない場合に、再送を要求するための信号を、該当する無線装置に送信して、その無線装置から検針値を収集する。
【0004】
また、特許文献2に記載の従来技術では、電力線通信を用いた自動検針システムが開示されている。電力線通信では、変圧器を通過するときの電力線通信信号の減衰が大きいため、変圧器間に変圧器間信号結合器を設けて変圧器をバイパスし、電力線通信信号の減衰を抑制し、通信の信頼性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−140184号公報
【特許文献2】特開2006−180021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の無線通信を用いる従来技術では、建物によって無線装置間の見通しが遮られて無線信号が届かないケースが想定される。また、建物の反射を利用した無線通信が可能であっても、通信経路の距離が直線距離より長くなるため、余計に電力を消費してしまうケースも想定される。また、無線装置に電波干渉を引き起こす電波が到達していて、無線通信が使えないケースも想定される。そして、これらの前記したケースが、いつの間にか発生したり、消滅したりと変動することも想定される。
【0007】
また、特許文献2に記載の電力線通信を用いる従来技術では、変圧器をバイパスする変圧器間信号結合器を設けて、通信信号の大幅な減衰を回避することができる。しかし、変圧器の低圧側の電灯線には、その電灯線に接続される電気機器から出されるノイズによって、通信信号対雑音比(S/N比)が低下し、電力線通信が困難なケースが想定される。そして、多種多様な電気機器が頻繁に電灯線に接続されたり外されたりして、このようなケースが現れたり消えたりすることも想定される。
【0008】
そこで、本発明では、無線通信および電力線通信のいずれかまたは双方を可能とする通信装置であって、通信の信頼性を確保するとともに、消費電力を低減し、装置コストや装置サイズの増大を抑制可能にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明における通信装置は、無線通信および電力線通信の双方に用いるベースバンド信号の生成処理を共通にした構成を備える。そして、ベースバンド信号を無線通信用の信号に変調し、無線通信用の信号をベースバンド信号に復調する無線通信機能、または、ベースバンド信号を電力線通信用の信号に変調し、電力線通信用の信号をベースバンド信号に復調する電力線通信機能を、備える。このように、無線通信機能および電力線通信機能の双方を備えているために、通信の信頼性を確保することができる。また、ベースバンド信号の生成処理を、無線通信および電力線通信に共通に構成することによって、消費電力を低減し、装置コストや装置サイズの増大を抑制可能にしている。また、無線通信機能および電力線通信機能のいずれかを停止することで、消費電力の低減を図ることもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、無線通信および電力線通信のいずれかまたは双方を可能とする通信装置であって、通信の信頼性を確保するとともに、消費電力を低減し、装置コストや装置サイズの増大を抑制可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】自動検針システムの構成の一例を示す図である。
【図2】電力線通信を無線通信に切り換える方法の一例を示す図である。
【図3】ベースバンド処理部の構成例を示す図である。
【図4】電力線通信の周波数帯域と無線通信の周波数帯域の関係を示す図である。
【図5】電力線通信部の構成例を示す図である。
【図6】電力線通信用フレームの一例を示す図である。
【図7】無線通信部の構成例を示す図である。
【図8】無線通信用フレームの一例を示す図である。
【図9】電力線通信および無線通信を用いる通信モードを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態(以降、「本実施形態」と称す)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
(自動検針システム)
図1を用いて、本実施形態における自動検針システム1の構成について説明する。図1に示すように、電力配線(太い実線)は、高圧配電線の商用交流の高電圧が電柱等に設置される変圧器6によって低電圧に変換され、その低電圧の電力が低圧配電線によって各家屋に供給される。そして、低電圧の電力は、電力量を計測するために各家屋に設置されるユニット式電力量計2を経由して、家屋内の分電盤3に配電される。一般的に、変圧器6の低圧側では、複数のユニット式電力量計2が低圧配電線に接続される。なお、図1では、ユニット式電力量計2を3台しか記載していないが、3台以外であっても構わない。
【0014】
ユニット式電力量計2は、電力量計測部4、開閉器5、および通信装置10を備える。電力量計測部4は、電力を時間的に積算した量(電力量)を計測し、その計測値(検針値)を通信装置10に出力する。開閉器5は、開閉器5を切断状態(OFF)にした場合、家屋内への電力供給を一度に遮断する。通信装置10は、電力量計測部4から受信した計測値を、無線通信(例えば、950MHz帯)および電力線通信のいずれかまたは双方によって、基地局20に送信する。そして、基地局20は、受信した計測値を、光ファイバ等の有線によって、計測値を収集するセンタに設置されたセンタ装置30に送信する。
【0015】
なお、各ユニット式電力量計2は、低圧配電線上で隣り合ったユニット式電力量計2との間で、ステップバイステップ(順送り)で計測値を伝達する。例えば、無線通信の場合、図1の実線矢印で示すように、ユニット式電力量計2cから送信された計測値は、アンテナを用いて、隣のユニット式電力量計2bに伝達される。ユニット式電力量計2bは、受信した計測値を、アンテナを用いて、さらに隣のユニット式電力量計2aに伝達する。ユニット式電力量計2aは、受信した計測値を、アンテナを用いて、基地局20に伝達する。そして、基地局20は、受信した計測値を、センタ装置30に送信する。
【0016】
また、電力線通信の場合、図1の破線矢印で示すように、ユニット式電力量計2cから送信された計測値は、低圧配電線を用いて、隣のユニット式電力量計2bに伝達される。ユニット式電力量計2bは、受信した計測値を、低圧配電線を用いて、さらに隣のユニット式電力量計2aに伝達する。ユニット式電力量計2aは、受信した計測値を、低圧配電線を用いて、基地局20に伝達する。そして、基地局20は、受信した計測値を、センタ装置30に送信する。
【0017】
また、センタ装置30から各ユニット式電力量計2に対して指示(例えば、計測値の再送要求等)の情報を送信する場合、基地局20を経由して伝達された情報は、ステップバイステップで、ユニット式電力量計2a→2b→2cの順で、宛先のユニット式電力量計2まで伝達されていく。
【0018】
計測値を含む情報の伝達のために、無線通信を用いるか、電力線通信を用いるか、または双方を用いるかの選択は、隣り合ったユニット式電力量計2同士の間で、その選択のための選択情報を交換して決められる。したがって、例えば、あるユニット式電力量計2a,2b同士の間は、無線通信(実線矢印)が用いられ、別のユニット式電力量計2b、2c同士の間は、電力線通信(破線矢印)が用いられても構わない。なお、すべてのユニット式電力量計2の間で、無線通信および電力線通信のいずれかまたは双方に統一されていても構わない。
【0019】
(通信装置)
通信装置10は、図1に示すように、ベースバンド処理部100、電力線通信部200、無線通信部300、第1SW(スイッチ)11、第2SW(スイッチ)12、および電源部13を備える。ベースバンド処理部100は、電力量計測部4から計測値(検針値)を受信して、ベースバンド信号を生成する。また、ベースバンド処理部100は、電源部13から電力供給を受けて動作する。電力線通信部200は、ベースバンド処理部100によって生成されたベースバンド信号を、低圧配電線を用いる電力線通信用信号に変換する。また、電力線通信部200は、電源部13からの電力を第1SW11を経由して受けて動作する。無線通信部300は、ベースバンド処理部100によって生成されたベースバンド信号を、無線を用いる無線通信用信号に変換する。また、無線通信部300は、電源部13からの電力を第2SW12を経由して受けて動作する。電源部13は、低圧配電線を介して電力の供給を受け、ベースバンド処理部100、電力線通信部200、および無線通信部300に配電する。
【0020】
第1SW11および第2SW12は、ベースバンド処理部100からの指示に基づいて、通信に用いる方のスイッチを接続状態(ON)にし、通信に用いない方のスイッチを切断状態(OFF)にする。なお、ベースバンド処理部100は、電力線通信部200または無線通信部300によって受信された信号の品質に係る値(例えば、符号誤り率、符号誤り検出率等)を予め設定しておいた閾値と比較することによって、スイッチのONまたはOFFを決定する。
【0021】
無線通信と電力線通信とを併用に使用した方が通信の信頼性を高めることができる。しかし、併用に使用する場合は、どちらか一方の通信を用いた場合に比較して、消費電力が増加する。通信装置10の一台当りの消費電力の増加は僅かであっても、ユニット式電力量計2の台数が数千万台の規模になるため、スイッチによって、使用しない方の通信機能を停止して、通信装置10の一台当りの消費電力を低減することは重要である。
【0022】
ここで、例えば、ユニット式電力量計2bとユニット式電力量計2aとの間で、現在、電力線通信が用いられていて、無線通信に切り換える場合を図2を用いて説明する。まず、ユニット式電力量計2bが、電力線通信から無線通信に切り換えるために、無線通信を用いる旨の選択情報をユニット式電力量計2aに電力線通信を用いて送信する(ステップS21)。ユニット式電力量計2aは、その選択情報を受信した場合、第2SW12を接続状態(ON)にして(ステップS22)、無線通信部300を作動させる。そして、ユニット式電力量計2aは、その受信した選択情報に対応する応答情報を、電力線通信を用いてユニット式電力量計2bに返信する(ステップS23)。ユニット式電力量計2bは、その応答情報を受信した場合、第2SW12を接続状態(ON)にして(ステップS24)、無線通信部300を作動させる。そして、ユニット式電力量計2bは、電力線通信および無線通信の双方を用いて、テスト信号をユニット式電力量計2aに送信する(ステップS25)。次に、ユニット式電力量計2aは、テスト信号を無線通信によって受信した場合、そのテスト信号に対応する応答情報を、電力線通信および無線通信の双方を用いて、ユニット式電力量計2bに返信する(ステップS26)。そして、ユニット式電力量計2bは、無線通信によってテスト信号に対応する応答情報を受信した場合、第1SW11を切断状態(OFF)にする(ステップS27)。そして、ユニット式電力量計2bは、無線通信を用いて、情報を送信する(ステップS28)。また、ユニット式電力量計2aは、ユニット式電力量計2bから無線通信によって当該情報を受信した場合、第1SW11を切断状態(OFF)にする(ステップS29)。そして、ステップS29の処理以降、ユニット式電力量計2aとユニット式電力量計2bとは、無線通信を用いて、通信を行う。
【0023】
なお、ユニット式電力量計2bは、選択情報(ステップS21参照)に対応する応答情報(ステップS23参照)を受信できなかった場合、当該応答情報を受信するまで、その選択情報を再送する。また、ユニット式電力量計2bは、テスト信号(ステップS25参照)に対応する応答情報(ステップS26参照)を受信できなかった場合、当該応答情報を受信するまで、そのテスト信号を再送する。ちなみに、ステップS25において、ユニット式電力量計2bがテスト信号を電力線通信および無線通信の双方によって送信する理由は、ユニット式電力量計2aに対して、ユニット式電力量計2bの無線通信部300が作動状態にあることを確実に伝達するためである。また、ユニット式電力量計2aがテスト信号に対応する応答情報を電力線通信および無線通信の双方によって送信する理由は、ユニット式電力量計2bに対して、そのテスト信号に対応する応答情報を送信していることを確実に伝達するためである。なお、電力線通信から無線通信に切り換える場合について説明したが、無線通信から電力線通信に切り換える場合には、前記説明において、第2SW12および無線通信部300と、第1SW11および電力線通信部200とを入れ替えて処理を実行すればよい。
【0024】
(ベースバンド処理部)
次に、ベースバンド処理部100の構成について、図3を用いて説明する。ベースバンド処理部100は、メモリ101、フレーム変換部102、通信制御部103、変調部104、送信フィルタ105、切換部106、受信フィルタ107、復調部108、および電源制御部110で構成される。
【0025】
メモリ101は、電力量計測部4の計測値(検針値)を記憶しておく。この計測値は、周期的に取得されたものであっても、センタ装置30(図1参照)からの指示に基づいて随時取得されたものであっても構わない。
フレーム変換部102は、通信データフレームを生成し、メモリ101に記憶された計測値を取得して、その通信データフレームに格納する。通信データフレームの構成については後記する(図6参照)。また、フレーム変換部102は、通信制御部103の再送要求の指示に基づいて、メモリ101に記憶された計測値を取得して、通信データフレームに格納する。
【0026】
通信制御部103は、受信した信号の品質のチェック処理、および電力線通信と無線通信との切り換えの処理を実行する。また、通信制御部103は、受信した信号の品質に基づいて、第1SW11、第2SW12、および切換部106を制御して、無線通信および電力線通信を選択する。また、通信制御部103は、ユニット式電力量計2(図1参照)の各部全体の動作制御を必要に応じて実行する。
変調部104は、通信制御部103から出力される、フレーム変換部102の生成した通信データフレームを変調し、ベースバンド信号を生成する。
送信フィルタ105は、ベースバンド信号の帯域外成分を除去する。
【0027】
切換部106は、送信フィルタ105の出力のベースバンド信号を電力線通信部200および無線通信部300のいずれかまたは双方に出力するように切り換える。この切り替えは、通信制御部103によって制御される。また切換部106は、電力線通信部200および無線通信部300のいずれかからベースバンド信号を受信する場合には、予め通信制御部103によって決定された方を選択することとするが、電力線通信部200および無線通信部300の双方からベースバンド信号を受信する場合には、信号の衝突を避けるために、先に入力されたいずれか一方を自動的に選択することとする。
受信フィルタ107は、電力線通信部200または無線通信部300から出力されるベースバンド信号の帯域外成分を除去する。
復調部108は、ベースバンド信号を復調し、通信データフレームを出力する。
電源制御部110は、ベースバンド処理部100の各部101〜108に電力を供給する。
【0028】
図4は、電力線通信および無線通信で共通に用いられるベースバンド信号を、それぞれの通信周波数帯域に配置した例を示している。ベースバンド処理部100によって生成されたベースバンド信号が共通に用いられるようにするために、ベースバンド信号の周波数帯域幅Δfを同一にする必要がある。そのため、周波数帯域幅Δfは、狭い方の通信周波数帯域によって、決定されることになる。ちなみに、電力線通信および無線通信の通信周波数帯域は、電波法によって決められていて、電力線通信ではkHz帯を用いる場合には10kHz〜450kHz、また、無線通信では950MHz帯を用いる場合には951MHz〜956MHzとなっている。なお、これらの帯域以外の周波数帯域であっても電力線通信と無線通信の周波数帯域幅Δfを同一にすることが可能な要件を満足する周波数帯域であれば構わない。
【0029】
また、電力線通信および無線通信で使用する通信方式には、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を用いると良い。例えば、通信信号の周波数帯域幅Δfを200kHzとすると、通信信号のキャリア周波数f0を300kHzとすることで、電力線通信の通信周波数帯域は、200kHz〜400kHzとなり、電波法によって許可されている通信周波数帯域での通信が可能となる。なお、ベースバンド信号の周波数帯域幅Δfを100kHzとすると、通信信号のキャリア周波数を250kHz,350kHzとすることで、電力線通信の通信周波数帯域は、200kHz〜400kHzとなる。このように、ベースバンド信号の周波数帯域幅Δfを小さくすることで、通信信号のキャリア周波数の数を増加させ、それぞれのキャリア周波数の通信信号に同一のデータを用いることによって、いずれかのキャリア周波数の通信信号が受信できない状況になっても、他のキャリア周波数の通信信号によって情報を伝達することが可能となる。つまり、通信の信頼性を向上することができる。無線通信においても、同様に、図4に示すように、多数のキャリア周波数f1〜f5の通信信号を用いて通信を行う。
【0030】
(電力線通信部)
次に、電力線通信部200の構成について、図5を用いて説明する。電力線通信部200は、プリアンブル部201、増幅部202、送信フィルタ203、結合部204、受信フィルタ205、AGC(Automatic Gain Control)部206、同期処理部207、および電源制御部210で構成される。
【0031】
プリアンブル部201は、通信信号の同期処理を実行するための電力線通信用プリアンブル信号を生成し、その電力線通信用プリアンブル信号をベースバンド処理部100から出力されるベースバンド信号に付加して、通信信号を生成する。
増幅部202は、通信信号のゲインを調整する。
送信フィルタ203は、通信信号の帯域外成分を除去する。
結合部204は、通信信号の送信時には低圧配電線を流れる商用交流電圧に通信信号を重畳する。また、結合部204は、通信信号の受信時には低圧配電線を伝搬してきた通信信号を分離して取り出す。
【0032】
受信フィルタ205は、通信信号の帯域外成分を除去する。
AGC部206は、通信信号のゲインを調整する。
同期処理部207は、電力線通信用プリアンブルを用いて、同期処理を実行し、ベースバンド信号を取り出す。
電源制御部210は、電力線通信部200の各部201〜207に電力を供給する。なお、電源制御部210は、第1SW11を介して電源部13と接続されていて、ベースバンド処理部100によって第1SW11が切断状態(OFF)に設定されたときには、電力線通信部200の各部201〜207に電力が供給されなくなる。すなわち、電力線通信部200の各部201〜207は、動作を停止する。
【0033】
図6は、電力線通信部200から出力される通信信号の電力線通信用フレーム600の構成を示す。通信データフレーム(符号602〜606)は、それを変調したものがベースバンド信号に相当し、送信先アドレス602、送信元アドレス603、レングス604、ペイロード605、CRC(Cyclic Redundancy Check)606によって構成されている。この通信データフレーム信号の先頭に、電力線通信用プリアンブル601を付加することによって、電力線通信用フレーム600が形成される。なお、送信先アドレス602は送信先のアドレス、送信元アドレス603は送信元のアドレス、レングス604はペイロードに格納されるデータのサイズ、ペイロード605はデータの格納場所、CRC606は誤り検出のための情報を示す。
【0034】
(無線通信部)
次に、無線通信部300の構成について、図7を用いて説明する。無線通信部300は、プリアンブル部301、増幅部302、ミキサ303、送信フィルタ304、送受信切換部305、受信フィルタ306、ミキサ307、AGC部308、同期処理部309、搬送波周波数生成部320、および電源制御部310で構成される。
【0035】
プリアンブル部301は、通信信号の同期処理を実行するための無線通信用プリアンブル信号を生成し、その無線通信用プリアンブル信号をベースバンド処理部100から出力されるベースバンド信号に付加して、通信信号を生成する。
増幅部302は、通信信号のゲインを調整する。
ミキサ303は、通信信号を低周波から高周波の通信信号に変換する。
送信フィルタ304は、高周波に変換された通信信号の帯域外成分を除去する。
送受信切換部305は、通信信号の送信時にはアンテナに通信信号を送出し、通信信号の受信時にはアンテナから通信信号を受信する。
【0036】
受信フィルタ306は、アンテナから受信した通信信号の帯域外成分を除去する。
ミキサ307は、通信信号を高周波から低周波の通信信号に変換する。
AGC部308は、低周波に変換された通信信号のゲインを調整する。
同期処理部309は、無線通信用プリアンブルを用いて、同期処理を実行し、ベースバンド信号を抽出する。
搬送波周波数生成部320は、キャリア(搬送波)周波数を発生し、ミキサ303,307に出力する。
【0037】
電源制御部310は、電力線通信部300の各部301〜309,320に電力を供給する。なお、電源制御部310は、第2SW12を介して電源部13と接続されていて、ベースバンド処理部100によって第2SW12が切断状態(OFF)に設定されたときには、電力線通信部300の各部301〜309,320に電力が供給されなくなる。すなわち、電力線通信部300の各部301〜309,320は、動作を停止する。
【0038】
図8は、無線通信部300から出力される通信信号の無線通信用フレーム800の構成を示す。通信データフレーム(符号602〜606)は、図6に示したものと同じ構成であるので、同じ符号を付し、説明を省略する。この通信データフレームの先頭に、無線通信用プリアンブル801を付加することによって、無線通信用フレーム800が形成される。無線通信で用いる無線通信用プリアンブル801は、電力線通信で用いる電力線通信用プリアンブル601とは異なり、高周波に適用されるため高精度であることが要求される。また、無線通信用プリアンブル801の例として、国際的に標準化された規格IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.15.4に規定されているプリアンブル信号を用いると、他の無線機器の信号との干渉を低減できるという利点がある。
【0039】
次に、通信装置10の通信モードについて、図9を用いて説明する。通信モードAは、無線通信および電力線通信の双方とも「あり」、すなわち、双方とも使用するケースである。この通信モードAは、例えば、通信装置10の生死を、ブロードキャストによって他の通信装置10に知らせるための信号を送信する場合に用いることができる。通信モードBは、無線通信「あり」、電力線通信「なし」のケースである。また、通信モードCは、無線通信「なし」、電力線通信「あり」のケースである。通信モードB,Cは、それぞれ、無線通信および電力線通信のいずれかの機能しか作動していないため、双方とも作動させた場合に比べて消費電力を低減することができる。通信モードDは、無線通信および電力線通信の双方とも「なし」であり、通信機能を停止しているケースである。この通信モードDから、通信機能を作動させるためには、ベースバンド処理部100は、常に電源部13から電源供給を受けているので、通信制御部103が時間を計測するタイマを備えていて、予め設定されている時間になったときに、第1SW11および第2SW12のいずれかまたは双方を接続状態(ON)にすることによって、通信機能を立ち上げることが可能である。
【0040】
以上、本実施形態では、電力線通信および無線通信の双方の機能を備えているので、通信の信頼性を確保することができる。また、電力線通信および無線通信のために、送信するベースバンド信号を生成するベースバンド処理部100を共用する構成を備えているので、消費電力を低減し、装置コスト、装置サイズの増大を抑制することができる。また、ベースバンド処理部100を共用するために、電力線通信および無線通信のベースバンド信号の周波数帯域を同一にしている。また、無線通信機能および電力線通信機能のいずれかを停止することで、消費電力の低減を図ることができる。
【0041】
なお、本実施形態では、ユニット式電力量計2が、電力量計測部4と通信装置10を構成要素とするものとして説明したが、電力量計測部4を独立の装置として通信装置10を外付けする構成としても構わない。また、電力量計測部4が通信装置10を内蔵する構成としても構わない。
【符号の説明】
【0042】
1 自動検針システム
2 ユニット式電力量計(電力量計)
4 電力量計測部
5 開閉器
6 変圧器
10 通信装置
11 第1SW(第1のスイッチ)
12 第2SW(第2のスイッチ)
13 電源部
20 基地局
30 センタ装置
100 ベースバンド処理部
200 電力線通信部
300 無線通信部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力量の検針値を電力線通信および無線通信のいずれかまたは双方によって伝達可能にし、その検針値のベースバンド信号の生成処理を共通化した通信装置および電力量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気、ガス、水道等の使用対象期間の使用料金は、検針員が定期的に家屋に設置された電気、ガス、水道等のメータを目視で確認し、メータの数値を記録した上で、前回の検針値との差に基づいて算出されてきた。しかし、検針員の人的コストが大きいこと、および家屋の住人(管理者等)が不在のときの対応が困難な場合があることが課題となっており、電気、ガス、水道等の使用量の検針業務を自動化するシステムが開発されてきている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の従来技術では、自動検針システムに無線通信を用いる方法が開示されている。この自動検針システムでは、検針機能を備えた無線装置を、その無線装置間の通信路がツリー状になるように配置して、検針値を無線で伝達し、ツリーの頂点に位置する集約装置が検針値を収集する。そして、集約装置は、各無線装置から、定期的な検針値が到達しない場合に、再送を要求するための信号を、該当する無線装置に送信して、その無線装置から検針値を収集する。
【0004】
また、特許文献2に記載の従来技術では、電力線通信を用いた自動検針システムが開示されている。電力線通信では、変圧器を通過するときの電力線通信信号の減衰が大きいため、変圧器間に変圧器間信号結合器を設けて変圧器をバイパスし、電力線通信信号の減衰を抑制し、通信の信頼性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−140184号公報
【特許文献2】特開2006−180021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の無線通信を用いる従来技術では、建物によって無線装置間の見通しが遮られて無線信号が届かないケースが想定される。また、建物の反射を利用した無線通信が可能であっても、通信経路の距離が直線距離より長くなるため、余計に電力を消費してしまうケースも想定される。また、無線装置に電波干渉を引き起こす電波が到達していて、無線通信が使えないケースも想定される。そして、これらの前記したケースが、いつの間にか発生したり、消滅したりと変動することも想定される。
【0007】
また、特許文献2に記載の電力線通信を用いる従来技術では、変圧器をバイパスする変圧器間信号結合器を設けて、通信信号の大幅な減衰を回避することができる。しかし、変圧器の低圧側の電灯線には、その電灯線に接続される電気機器から出されるノイズによって、通信信号対雑音比(S/N比)が低下し、電力線通信が困難なケースが想定される。そして、多種多様な電気機器が頻繁に電灯線に接続されたり外されたりして、このようなケースが現れたり消えたりすることも想定される。
【0008】
そこで、本発明では、無線通信および電力線通信のいずれかまたは双方を可能とする通信装置であって、通信の信頼性を確保するとともに、消費電力を低減し、装置コストや装置サイズの増大を抑制可能にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明における通信装置は、無線通信および電力線通信の双方に用いるベースバンド信号の生成処理を共通にした構成を備える。そして、ベースバンド信号を無線通信用の信号に変調し、無線通信用の信号をベースバンド信号に復調する無線通信機能、または、ベースバンド信号を電力線通信用の信号に変調し、電力線通信用の信号をベースバンド信号に復調する電力線通信機能を、備える。このように、無線通信機能および電力線通信機能の双方を備えているために、通信の信頼性を確保することができる。また、ベースバンド信号の生成処理を、無線通信および電力線通信に共通に構成することによって、消費電力を低減し、装置コストや装置サイズの増大を抑制可能にしている。また、無線通信機能および電力線通信機能のいずれかを停止することで、消費電力の低減を図ることもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、無線通信および電力線通信のいずれかまたは双方を可能とする通信装置であって、通信の信頼性を確保するとともに、消費電力を低減し、装置コストや装置サイズの増大を抑制可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】自動検針システムの構成の一例を示す図である。
【図2】電力線通信を無線通信に切り換える方法の一例を示す図である。
【図3】ベースバンド処理部の構成例を示す図である。
【図4】電力線通信の周波数帯域と無線通信の周波数帯域の関係を示す図である。
【図5】電力線通信部の構成例を示す図である。
【図6】電力線通信用フレームの一例を示す図である。
【図7】無線通信部の構成例を示す図である。
【図8】無線通信用フレームの一例を示す図である。
【図9】電力線通信および無線通信を用いる通信モードを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態(以降、「本実施形態」と称す)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
(自動検針システム)
図1を用いて、本実施形態における自動検針システム1の構成について説明する。図1に示すように、電力配線(太い実線)は、高圧配電線の商用交流の高電圧が電柱等に設置される変圧器6によって低電圧に変換され、その低電圧の電力が低圧配電線によって各家屋に供給される。そして、低電圧の電力は、電力量を計測するために各家屋に設置されるユニット式電力量計2を経由して、家屋内の分電盤3に配電される。一般的に、変圧器6の低圧側では、複数のユニット式電力量計2が低圧配電線に接続される。なお、図1では、ユニット式電力量計2を3台しか記載していないが、3台以外であっても構わない。
【0014】
ユニット式電力量計2は、電力量計測部4、開閉器5、および通信装置10を備える。電力量計測部4は、電力を時間的に積算した量(電力量)を計測し、その計測値(検針値)を通信装置10に出力する。開閉器5は、開閉器5を切断状態(OFF)にした場合、家屋内への電力供給を一度に遮断する。通信装置10は、電力量計測部4から受信した計測値を、無線通信(例えば、950MHz帯)および電力線通信のいずれかまたは双方によって、基地局20に送信する。そして、基地局20は、受信した計測値を、光ファイバ等の有線によって、計測値を収集するセンタに設置されたセンタ装置30に送信する。
【0015】
なお、各ユニット式電力量計2は、低圧配電線上で隣り合ったユニット式電力量計2との間で、ステップバイステップ(順送り)で計測値を伝達する。例えば、無線通信の場合、図1の実線矢印で示すように、ユニット式電力量計2cから送信された計測値は、アンテナを用いて、隣のユニット式電力量計2bに伝達される。ユニット式電力量計2bは、受信した計測値を、アンテナを用いて、さらに隣のユニット式電力量計2aに伝達する。ユニット式電力量計2aは、受信した計測値を、アンテナを用いて、基地局20に伝達する。そして、基地局20は、受信した計測値を、センタ装置30に送信する。
【0016】
また、電力線通信の場合、図1の破線矢印で示すように、ユニット式電力量計2cから送信された計測値は、低圧配電線を用いて、隣のユニット式電力量計2bに伝達される。ユニット式電力量計2bは、受信した計測値を、低圧配電線を用いて、さらに隣のユニット式電力量計2aに伝達する。ユニット式電力量計2aは、受信した計測値を、低圧配電線を用いて、基地局20に伝達する。そして、基地局20は、受信した計測値を、センタ装置30に送信する。
【0017】
また、センタ装置30から各ユニット式電力量計2に対して指示(例えば、計測値の再送要求等)の情報を送信する場合、基地局20を経由して伝達された情報は、ステップバイステップで、ユニット式電力量計2a→2b→2cの順で、宛先のユニット式電力量計2まで伝達されていく。
【0018】
計測値を含む情報の伝達のために、無線通信を用いるか、電力線通信を用いるか、または双方を用いるかの選択は、隣り合ったユニット式電力量計2同士の間で、その選択のための選択情報を交換して決められる。したがって、例えば、あるユニット式電力量計2a,2b同士の間は、無線通信(実線矢印)が用いられ、別のユニット式電力量計2b、2c同士の間は、電力線通信(破線矢印)が用いられても構わない。なお、すべてのユニット式電力量計2の間で、無線通信および電力線通信のいずれかまたは双方に統一されていても構わない。
【0019】
(通信装置)
通信装置10は、図1に示すように、ベースバンド処理部100、電力線通信部200、無線通信部300、第1SW(スイッチ)11、第2SW(スイッチ)12、および電源部13を備える。ベースバンド処理部100は、電力量計測部4から計測値(検針値)を受信して、ベースバンド信号を生成する。また、ベースバンド処理部100は、電源部13から電力供給を受けて動作する。電力線通信部200は、ベースバンド処理部100によって生成されたベースバンド信号を、低圧配電線を用いる電力線通信用信号に変換する。また、電力線通信部200は、電源部13からの電力を第1SW11を経由して受けて動作する。無線通信部300は、ベースバンド処理部100によって生成されたベースバンド信号を、無線を用いる無線通信用信号に変換する。また、無線通信部300は、電源部13からの電力を第2SW12を経由して受けて動作する。電源部13は、低圧配電線を介して電力の供給を受け、ベースバンド処理部100、電力線通信部200、および無線通信部300に配電する。
【0020】
第1SW11および第2SW12は、ベースバンド処理部100からの指示に基づいて、通信に用いる方のスイッチを接続状態(ON)にし、通信に用いない方のスイッチを切断状態(OFF)にする。なお、ベースバンド処理部100は、電力線通信部200または無線通信部300によって受信された信号の品質に係る値(例えば、符号誤り率、符号誤り検出率等)を予め設定しておいた閾値と比較することによって、スイッチのONまたはOFFを決定する。
【0021】
無線通信と電力線通信とを併用に使用した方が通信の信頼性を高めることができる。しかし、併用に使用する場合は、どちらか一方の通信を用いた場合に比較して、消費電力が増加する。通信装置10の一台当りの消費電力の増加は僅かであっても、ユニット式電力量計2の台数が数千万台の規模になるため、スイッチによって、使用しない方の通信機能を停止して、通信装置10の一台当りの消費電力を低減することは重要である。
【0022】
ここで、例えば、ユニット式電力量計2bとユニット式電力量計2aとの間で、現在、電力線通信が用いられていて、無線通信に切り換える場合を図2を用いて説明する。まず、ユニット式電力量計2bが、電力線通信から無線通信に切り換えるために、無線通信を用いる旨の選択情報をユニット式電力量計2aに電力線通信を用いて送信する(ステップS21)。ユニット式電力量計2aは、その選択情報を受信した場合、第2SW12を接続状態(ON)にして(ステップS22)、無線通信部300を作動させる。そして、ユニット式電力量計2aは、その受信した選択情報に対応する応答情報を、電力線通信を用いてユニット式電力量計2bに返信する(ステップS23)。ユニット式電力量計2bは、その応答情報を受信した場合、第2SW12を接続状態(ON)にして(ステップS24)、無線通信部300を作動させる。そして、ユニット式電力量計2bは、電力線通信および無線通信の双方を用いて、テスト信号をユニット式電力量計2aに送信する(ステップS25)。次に、ユニット式電力量計2aは、テスト信号を無線通信によって受信した場合、そのテスト信号に対応する応答情報を、電力線通信および無線通信の双方を用いて、ユニット式電力量計2bに返信する(ステップS26)。そして、ユニット式電力量計2bは、無線通信によってテスト信号に対応する応答情報を受信した場合、第1SW11を切断状態(OFF)にする(ステップS27)。そして、ユニット式電力量計2bは、無線通信を用いて、情報を送信する(ステップS28)。また、ユニット式電力量計2aは、ユニット式電力量計2bから無線通信によって当該情報を受信した場合、第1SW11を切断状態(OFF)にする(ステップS29)。そして、ステップS29の処理以降、ユニット式電力量計2aとユニット式電力量計2bとは、無線通信を用いて、通信を行う。
【0023】
なお、ユニット式電力量計2bは、選択情報(ステップS21参照)に対応する応答情報(ステップS23参照)を受信できなかった場合、当該応答情報を受信するまで、その選択情報を再送する。また、ユニット式電力量計2bは、テスト信号(ステップS25参照)に対応する応答情報(ステップS26参照)を受信できなかった場合、当該応答情報を受信するまで、そのテスト信号を再送する。ちなみに、ステップS25において、ユニット式電力量計2bがテスト信号を電力線通信および無線通信の双方によって送信する理由は、ユニット式電力量計2aに対して、ユニット式電力量計2bの無線通信部300が作動状態にあることを確実に伝達するためである。また、ユニット式電力量計2aがテスト信号に対応する応答情報を電力線通信および無線通信の双方によって送信する理由は、ユニット式電力量計2bに対して、そのテスト信号に対応する応答情報を送信していることを確実に伝達するためである。なお、電力線通信から無線通信に切り換える場合について説明したが、無線通信から電力線通信に切り換える場合には、前記説明において、第2SW12および無線通信部300と、第1SW11および電力線通信部200とを入れ替えて処理を実行すればよい。
【0024】
(ベースバンド処理部)
次に、ベースバンド処理部100の構成について、図3を用いて説明する。ベースバンド処理部100は、メモリ101、フレーム変換部102、通信制御部103、変調部104、送信フィルタ105、切換部106、受信フィルタ107、復調部108、および電源制御部110で構成される。
【0025】
メモリ101は、電力量計測部4の計測値(検針値)を記憶しておく。この計測値は、周期的に取得されたものであっても、センタ装置30(図1参照)からの指示に基づいて随時取得されたものであっても構わない。
フレーム変換部102は、通信データフレームを生成し、メモリ101に記憶された計測値を取得して、その通信データフレームに格納する。通信データフレームの構成については後記する(図6参照)。また、フレーム変換部102は、通信制御部103の再送要求の指示に基づいて、メモリ101に記憶された計測値を取得して、通信データフレームに格納する。
【0026】
通信制御部103は、受信した信号の品質のチェック処理、および電力線通信と無線通信との切り換えの処理を実行する。また、通信制御部103は、受信した信号の品質に基づいて、第1SW11、第2SW12、および切換部106を制御して、無線通信および電力線通信を選択する。また、通信制御部103は、ユニット式電力量計2(図1参照)の各部全体の動作制御を必要に応じて実行する。
変調部104は、通信制御部103から出力される、フレーム変換部102の生成した通信データフレームを変調し、ベースバンド信号を生成する。
送信フィルタ105は、ベースバンド信号の帯域外成分を除去する。
【0027】
切換部106は、送信フィルタ105の出力のベースバンド信号を電力線通信部200および無線通信部300のいずれかまたは双方に出力するように切り換える。この切り替えは、通信制御部103によって制御される。また切換部106は、電力線通信部200および無線通信部300のいずれかからベースバンド信号を受信する場合には、予め通信制御部103によって決定された方を選択することとするが、電力線通信部200および無線通信部300の双方からベースバンド信号を受信する場合には、信号の衝突を避けるために、先に入力されたいずれか一方を自動的に選択することとする。
受信フィルタ107は、電力線通信部200または無線通信部300から出力されるベースバンド信号の帯域外成分を除去する。
復調部108は、ベースバンド信号を復調し、通信データフレームを出力する。
電源制御部110は、ベースバンド処理部100の各部101〜108に電力を供給する。
【0028】
図4は、電力線通信および無線通信で共通に用いられるベースバンド信号を、それぞれの通信周波数帯域に配置した例を示している。ベースバンド処理部100によって生成されたベースバンド信号が共通に用いられるようにするために、ベースバンド信号の周波数帯域幅Δfを同一にする必要がある。そのため、周波数帯域幅Δfは、狭い方の通信周波数帯域によって、決定されることになる。ちなみに、電力線通信および無線通信の通信周波数帯域は、電波法によって決められていて、電力線通信ではkHz帯を用いる場合には10kHz〜450kHz、また、無線通信では950MHz帯を用いる場合には951MHz〜956MHzとなっている。なお、これらの帯域以外の周波数帯域であっても電力線通信と無線通信の周波数帯域幅Δfを同一にすることが可能な要件を満足する周波数帯域であれば構わない。
【0029】
また、電力線通信および無線通信で使用する通信方式には、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を用いると良い。例えば、通信信号の周波数帯域幅Δfを200kHzとすると、通信信号のキャリア周波数f0を300kHzとすることで、電力線通信の通信周波数帯域は、200kHz〜400kHzとなり、電波法によって許可されている通信周波数帯域での通信が可能となる。なお、ベースバンド信号の周波数帯域幅Δfを100kHzとすると、通信信号のキャリア周波数を250kHz,350kHzとすることで、電力線通信の通信周波数帯域は、200kHz〜400kHzとなる。このように、ベースバンド信号の周波数帯域幅Δfを小さくすることで、通信信号のキャリア周波数の数を増加させ、それぞれのキャリア周波数の通信信号に同一のデータを用いることによって、いずれかのキャリア周波数の通信信号が受信できない状況になっても、他のキャリア周波数の通信信号によって情報を伝達することが可能となる。つまり、通信の信頼性を向上することができる。無線通信においても、同様に、図4に示すように、多数のキャリア周波数f1〜f5の通信信号を用いて通信を行う。
【0030】
(電力線通信部)
次に、電力線通信部200の構成について、図5を用いて説明する。電力線通信部200は、プリアンブル部201、増幅部202、送信フィルタ203、結合部204、受信フィルタ205、AGC(Automatic Gain Control)部206、同期処理部207、および電源制御部210で構成される。
【0031】
プリアンブル部201は、通信信号の同期処理を実行するための電力線通信用プリアンブル信号を生成し、その電力線通信用プリアンブル信号をベースバンド処理部100から出力されるベースバンド信号に付加して、通信信号を生成する。
増幅部202は、通信信号のゲインを調整する。
送信フィルタ203は、通信信号の帯域外成分を除去する。
結合部204は、通信信号の送信時には低圧配電線を流れる商用交流電圧に通信信号を重畳する。また、結合部204は、通信信号の受信時には低圧配電線を伝搬してきた通信信号を分離して取り出す。
【0032】
受信フィルタ205は、通信信号の帯域外成分を除去する。
AGC部206は、通信信号のゲインを調整する。
同期処理部207は、電力線通信用プリアンブルを用いて、同期処理を実行し、ベースバンド信号を取り出す。
電源制御部210は、電力線通信部200の各部201〜207に電力を供給する。なお、電源制御部210は、第1SW11を介して電源部13と接続されていて、ベースバンド処理部100によって第1SW11が切断状態(OFF)に設定されたときには、電力線通信部200の各部201〜207に電力が供給されなくなる。すなわち、電力線通信部200の各部201〜207は、動作を停止する。
【0033】
図6は、電力線通信部200から出力される通信信号の電力線通信用フレーム600の構成を示す。通信データフレーム(符号602〜606)は、それを変調したものがベースバンド信号に相当し、送信先アドレス602、送信元アドレス603、レングス604、ペイロード605、CRC(Cyclic Redundancy Check)606によって構成されている。この通信データフレーム信号の先頭に、電力線通信用プリアンブル601を付加することによって、電力線通信用フレーム600が形成される。なお、送信先アドレス602は送信先のアドレス、送信元アドレス603は送信元のアドレス、レングス604はペイロードに格納されるデータのサイズ、ペイロード605はデータの格納場所、CRC606は誤り検出のための情報を示す。
【0034】
(無線通信部)
次に、無線通信部300の構成について、図7を用いて説明する。無線通信部300は、プリアンブル部301、増幅部302、ミキサ303、送信フィルタ304、送受信切換部305、受信フィルタ306、ミキサ307、AGC部308、同期処理部309、搬送波周波数生成部320、および電源制御部310で構成される。
【0035】
プリアンブル部301は、通信信号の同期処理を実行するための無線通信用プリアンブル信号を生成し、その無線通信用プリアンブル信号をベースバンド処理部100から出力されるベースバンド信号に付加して、通信信号を生成する。
増幅部302は、通信信号のゲインを調整する。
ミキサ303は、通信信号を低周波から高周波の通信信号に変換する。
送信フィルタ304は、高周波に変換された通信信号の帯域外成分を除去する。
送受信切換部305は、通信信号の送信時にはアンテナに通信信号を送出し、通信信号の受信時にはアンテナから通信信号を受信する。
【0036】
受信フィルタ306は、アンテナから受信した通信信号の帯域外成分を除去する。
ミキサ307は、通信信号を高周波から低周波の通信信号に変換する。
AGC部308は、低周波に変換された通信信号のゲインを調整する。
同期処理部309は、無線通信用プリアンブルを用いて、同期処理を実行し、ベースバンド信号を抽出する。
搬送波周波数生成部320は、キャリア(搬送波)周波数を発生し、ミキサ303,307に出力する。
【0037】
電源制御部310は、電力線通信部300の各部301〜309,320に電力を供給する。なお、電源制御部310は、第2SW12を介して電源部13と接続されていて、ベースバンド処理部100によって第2SW12が切断状態(OFF)に設定されたときには、電力線通信部300の各部301〜309,320に電力が供給されなくなる。すなわち、電力線通信部300の各部301〜309,320は、動作を停止する。
【0038】
図8は、無線通信部300から出力される通信信号の無線通信用フレーム800の構成を示す。通信データフレーム(符号602〜606)は、図6に示したものと同じ構成であるので、同じ符号を付し、説明を省略する。この通信データフレームの先頭に、無線通信用プリアンブル801を付加することによって、無線通信用フレーム800が形成される。無線通信で用いる無線通信用プリアンブル801は、電力線通信で用いる電力線通信用プリアンブル601とは異なり、高周波に適用されるため高精度であることが要求される。また、無線通信用プリアンブル801の例として、国際的に標準化された規格IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.15.4に規定されているプリアンブル信号を用いると、他の無線機器の信号との干渉を低減できるという利点がある。
【0039】
次に、通信装置10の通信モードについて、図9を用いて説明する。通信モードAは、無線通信および電力線通信の双方とも「あり」、すなわち、双方とも使用するケースである。この通信モードAは、例えば、通信装置10の生死を、ブロードキャストによって他の通信装置10に知らせるための信号を送信する場合に用いることができる。通信モードBは、無線通信「あり」、電力線通信「なし」のケースである。また、通信モードCは、無線通信「なし」、電力線通信「あり」のケースである。通信モードB,Cは、それぞれ、無線通信および電力線通信のいずれかの機能しか作動していないため、双方とも作動させた場合に比べて消費電力を低減することができる。通信モードDは、無線通信および電力線通信の双方とも「なし」であり、通信機能を停止しているケースである。この通信モードDから、通信機能を作動させるためには、ベースバンド処理部100は、常に電源部13から電源供給を受けているので、通信制御部103が時間を計測するタイマを備えていて、予め設定されている時間になったときに、第1SW11および第2SW12のいずれかまたは双方を接続状態(ON)にすることによって、通信機能を立ち上げることが可能である。
【0040】
以上、本実施形態では、電力線通信および無線通信の双方の機能を備えているので、通信の信頼性を確保することができる。また、電力線通信および無線通信のために、送信するベースバンド信号を生成するベースバンド処理部100を共用する構成を備えているので、消費電力を低減し、装置コスト、装置サイズの増大を抑制することができる。また、ベースバンド処理部100を共用するために、電力線通信および無線通信のベースバンド信号の周波数帯域を同一にしている。また、無線通信機能および電力線通信機能のいずれかを停止することで、消費電力の低減を図ることができる。
【0041】
なお、本実施形態では、ユニット式電力量計2が、電力量計測部4と通信装置10を構成要素とするものとして説明したが、電力量計測部4を独立の装置として通信装置10を外付けする構成としても構わない。また、電力量計測部4が通信装置10を内蔵する構成としても構わない。
【符号の説明】
【0042】
1 自動検針システム
2 ユニット式電力量計(電力量計)
4 電力量計測部
5 開閉器
6 変圧器
10 通信装置
11 第1SW(第1のスイッチ)
12 第2SW(第2のスイッチ)
13 電源部
20 基地局
30 センタ装置
100 ベースバンド処理部
200 電力線通信部
300 無線通信部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器の低圧側の低圧配電線に接続される通信装置であって、
前記低圧配電線を用いる電力線通信のための通信処理を実行する電力線通信部と、
無線用のアンテナを備え、無線通信のための通信処理を実行する無線通信部と、
前記電力線通信の通信周波数帯域幅を満足する周波数帯域幅を有するベースバンド信号を生成するベースバンド処理部と、を備え、
前記電力線通信部が、前記ベースバンド処理部が生成したベースバンド信号を取得して、電力線通信用の通信信号を生成し、その電力線通信用の通信信号を送受信し、
前記無線通信部が、前記ベースバンド処理部が生成したベースバンド信号を取得して、無線通信用の通信信号を生成し、その無線通信用の通信信号を送受信する
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記電力線通信部は第1のスイッチを介して電源部から電力供給を受けて動作し、
前記無線通信部は第2のスイッチを介して電源部から電力供給を受けて動作し、
前記ベースバンド処理部が前記電力線通信部または前記無線通信部から受信した信号の品質に基づいて、前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチの接続または切断を切り換えること
を特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記電力線通信部は、前記ベースバンド信号に電力線通信用プリアンブルを付加した通信信号を生成し、前記低圧配電線に当該通信信号を送出し、
前記無線通信部は、前記ベースバンド信号に無線通信用プリアンブルを付加した信号を生成し、当該生成した信号を無線通信の通信周波数帯の周波数に変換して通信信号を生成し、その通信信号をアンテナを介して送出する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記電源部は、前記低圧配電線に接続されて電力を受電し、所定の電力を前記電力線通信部および前記無線通信部に供給すること
を特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記通信装置のベースバンド処理部が、前記低圧配電線に接続されて電力量を計測する電力量計測部から計測値を取得し、その計測値を格納した前記ベースバンド信号を生成する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力量計測部および通信装置を備えることを特徴とする電力量計。
【請求項1】
変圧器の低圧側の低圧配電線に接続される通信装置であって、
前記低圧配電線を用いる電力線通信のための通信処理を実行する電力線通信部と、
無線用のアンテナを備え、無線通信のための通信処理を実行する無線通信部と、
前記電力線通信の通信周波数帯域幅を満足する周波数帯域幅を有するベースバンド信号を生成するベースバンド処理部と、を備え、
前記電力線通信部が、前記ベースバンド処理部が生成したベースバンド信号を取得して、電力線通信用の通信信号を生成し、その電力線通信用の通信信号を送受信し、
前記無線通信部が、前記ベースバンド処理部が生成したベースバンド信号を取得して、無線通信用の通信信号を生成し、その無線通信用の通信信号を送受信する
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記電力線通信部は第1のスイッチを介して電源部から電力供給を受けて動作し、
前記無線通信部は第2のスイッチを介して電源部から電力供給を受けて動作し、
前記ベースバンド処理部が前記電力線通信部または前記無線通信部から受信した信号の品質に基づいて、前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチの接続または切断を切り換えること
を特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記電力線通信部は、前記ベースバンド信号に電力線通信用プリアンブルを付加した通信信号を生成し、前記低圧配電線に当該通信信号を送出し、
前記無線通信部は、前記ベースバンド信号に無線通信用プリアンブルを付加した信号を生成し、当該生成した信号を無線通信の通信周波数帯の周波数に変換して通信信号を生成し、その通信信号をアンテナを介して送出する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記電源部は、前記低圧配電線に接続されて電力を受電し、所定の電力を前記電力線通信部および前記無線通信部に供給すること
を特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記通信装置のベースバンド処理部が、前記低圧配電線に接続されて電力量を計測する電力量計測部から計測値を取得し、その計測値を格納した前記ベースバンド信号を生成する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力量計測部および通信装置を備えることを特徴とする電力量計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−114443(P2011−114443A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267195(P2009−267195)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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