説明

通帳処理方法、その実施装置及びプログラム

【課題】預金者の認証画像を不可視画像として預金通帳に記録し、特殊な鑑定装置を用いて観察した場合にのみ当該認証画像を視認することができ、汎用的な光学機器では預金通帳に記録された認証画像の複写を取ることが困難となる仕組みを提供。
【解決手段】預金者を確認する認証画像を付与した預金通帳の発行方法において、預金者の認証画像を入力装置により入力するステップと、認証画像を網点で表現された網点画像に変換するステップと、可視光以外の光に対して所定の物理的性質を有する第1のインクを前記認証画像の網点画像部分に割り当て、前記第1のインクとは可視光以外の光に対する物理的性質の異った第2のインクを前記認証画像以外の網点画像部分または前記認証画像を含む網点画像部分に割り当てることにより潜像画像データを作成して記憶装置に格納するステップと、前記作成した潜像画像データによって前記認証画像を含む網点画像を預金通帳へ印刷。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は預金者を確認する為の認証画像を付与した預金通帳を発行し、預金通帳に付与された認証画像を検出して預金者を検証する通帳処理技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、偽造、変造が困難で通帳の携帯者と通帳自体との真偽性の判断を行う技術として、無線ICモジュールを用いるものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
前記従来技術では、預金通帳内には、偽造が困難な無線ICモジュールが配置してあり、この無線ICモジュールには携帯者の顔画像データを記録させる。これにより、預金通帳の偽造が困難になるとともに、預金通帳を身分証明書として使うことができ、携帯者及び通帳自体の真偽性の判断を行なうことが可能になるとしている。
また、通帳に付された顔画像と、通帳に配置された無線モジュール内の確認情報を比較することで、預金通帳が真の通帳であるか否かを判断することができるとしている。
更に、預金通帳の携帯者を撮影した撮影像と、預金通帳に配置された無線モジュール内の確認情報とを比較することで、預金通帳の携帯者が真の携帯者であるか否かを判断することができるとしている。
【0004】
【特許文献1】特開平10-203051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来の方法においては、次の様な問題点がある。
一般的な無線ICモジュールの容量は数十byteから百数十byte程度であり、高精細な画像データを記録することは困難である。また、数Kbyteの大量データを記録可能な無線ICモジュールも存在するが、高価であるため預金通帳本体内に配置するのは難しいと考えられる。
【0006】
また、文献に記載された発明では、預金者の顔画像を預金通帳に付するとしているが、預金通帳に記録された資産状態と人物を簡単に特定できる顔画像を、誰にでも見える方法で結びつけるのには抵抗感がある人も多いと考えられる。更に、口座振替先の情報を含んだ家計簿的な通帳の場合、個人の嗜好と人物が結びつくため抵抗感が強いと考えられる。
【0007】
また、キャッシュカードのICカード化に伴なって、ATM(Automatic Teller Machine)に静脈パターン等を用いた生体認証を導入する動きがあるが、窓口で本人確認をする為の生体情報を預金通帳に記録するとき、生体情報を誰でも見ることができる方法で記録するのは望ましくないし、容易に生体情報を複写できる方法で記録するのも望ましくない。
【0008】
本発明の目的は上記問題を解決し、預金者の認証画像を肉眼では認知不可能な画像(不可視画像)として預金通帳に記録し、特殊な鑑定装置を用いて観察した場合にのみ当該認証画像を視認することができ、汎用的な光学機器では預金通帳に記録された認証画像の複写を取ることが困難となる仕組みを提供することが可能な技術を提供することにある。
本発明の他の目的は潜像画像の偽造を検出できる仕組みを提供することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、預金者を確認する為の認証画像を付与した預金通帳を発行し、預金通帳に付与された認証画像を検出して預金者を検証する通帳処理システムにおいて、可視光以外の光に対する物理的性質の異なった2種類のインクにより預金者の認証画像を潜像画像として預金通帳に印刷し、預金通帳の潜像画像と預金者の認証画像とを比較して預金者を検証するものである。
【0010】
本発明の通帳発行装置では、まず預金者を確認する為の認証画像(預金者の顔写真等の生体情報)をカメラやスキャナ等の入力装置により入力した後、その入力した認証画像を、網点で表現された網点画像に変換する。
【0011】
次に、可視光以外の光に対して所定の物理的性質を有する第1のインクを前記認証画像の網点画像部分に割り当てると共に、均一網点画像と前記認証画像の網点画像とを比較して認証画像以外の網点画像部分を求めて、前記第1のインクとは可視光以外の光に対する物理的性質の異った第2のインクを前記認証画像以外の網点画像部分に割り当てて潜像画像データを作成し、磁気ディスク装置等の記憶装置に格納する。そして、その作成した潜像画像データによって前記認証画像の潜像画像を印刷装置により預金通帳へ印刷する。
【0012】
その際、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の基本4色インキの内、ブラック(Bk)はカーボンブラックを主体とした黒色顔料で紫外線領域から赤外線領域まで全域にわたり吸収を示すが、他のシアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)を重ね合わせたものは赤外線を吸収しないことを利用し、前記認証画像を構成する網点をブラック(Bk)のインキで塗り分け、前記認証画像以外の画像を構成する網点を、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、の混合色で塗り分ける。
【0013】
また、印刷対象の預金通帳を識別する為の通帳番号等の情報を前記潜像画像データ中に記録しておき、その情報を潜像画像として預金通帳に印刷する様にしても良い。
【0014】
すなわち、預金通帳の発行者から印刷対象の預金通帳を識別する為の通帳番号等の情報を入力し、金融機関の秘密鍵で通帳番号を暗号化した後、その暗号化した通帳番号の文字列を印刷イメージの画像に変換し、前記認証画像と暗号化した通帳番号の画像をOR演算して、暗号化した通帳番号を含む認証画像を作成し、潜像画像とする様にしても良い。
【0015】
次に、本発明の預金者検証装置では、まず可視光以外の光に対して所定の物理的性質を有する第1のインクと前記第1のインクとは可視光以外の光に対する物理的性質の異った第2のインクにより形成された画像から潜像画像を入力装置により預金通帳から読み取る。
【0016】
例えば、前記の様に赤外線に対する物理的性質の異ったインクを用いて潜像画像を預金通帳に印刷している場合には、赤外線を発する光源下で赤外線カメラにより当該預金通帳を観察し、その潜像画像を読み取る。
【0017】
そして、預金者を確認する為の認証画像をカメラやスキャナ等の入力装置により入力した後、前記預金通帳から読み取った潜像画像と前記入力した預金者の認証画像とを比較して、当該潜像画像が預金者の認証画像と一致するかどうかを調べて預金者を確認し、その結果を出力装置により出力する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、預金者の認証画像を不可視画像として預金通帳に記録し、特殊な鑑定装置を用いて観察した場合にのみ当該認証画像を視認することができ、汎用的な光学機器では預金通帳に記録された認証画像の複写を取ることが困難となる仕組みを提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に預金者を確認する為の認証画像を付与した預金通帳を発行し、預金通帳に付与された認証画像を検出して預金者を確認する一実施形態の通帳処理システムについて説明する。
【0020】
図1は本実施形態の通帳発行装置により作成された預金通帳の構成を示す図である。図1に示す様に預金通帳100の表紙裏面には、預金者の氏名や口座番号140が記載されている。この頁には、通帳を発行した金融機関の支店名等も記載されているが、本実施形態では、この頁に預金者の生体情報を記録する領域110を設ける。
【0021】
但し、預金者の生体情報を記録する領域110は、肉眼で観察可能な第1の画像120(画像1)と、赤外線ビューアで観察可能な第2の画像130(画像2)の2層構造になっており、生体情報は画像2として記録されている。なお、画像2は肉眼では観察できないという性質を持つ為、肉眼と同じ環境(可視光の下)で対象画像のスキャニングをする複写機では前記対象画像の複製印刷物を作ることはできない。
【0022】
ところで、前記預金者の生体情報を記録する領域110は預金通帳100と分離不可能な状態にする必要がある。例えば、生体情報を記録した用紙がシールである場合、正規の手続きで入手したシールを盗難通帳に貼り付けるという偽造が成り立ってしまう。
【0023】
そこで、預金通帳100を識別する為の口座番号140やID等の情報を画像2にも記録する。画像2に記録された口座番号140やIDの情報と、預金通帳100に記載された口座番号140や預金通帳100の磁気情報に記録されたIDとが異なる場合、シールが貼りかえられたと考えることができる。
【0024】
上記の例では、口座番号やIDを画像2に記録しているが、別の方法として、画像2の特徴量(例えば、ハッシュ値)を算出し、この値を預金通帳100に記録する様にしても良い。
【0025】
図2は本実施形態の通帳発行装置のシステム構成を示す図である。図2に示す様に本実施形態の通帳発行装置は画像処理演算部200を有している。画像処理演算部200は、預金者を確認する為の認証画像を画像入力部210により入力してその入力した認証画像を網点で表現された網点画像に変換し、可視光以外の光に対して所定の物理的性質を有する第1のインクを前記認証画像の網点画像部分に割り当て、前記第1のインクとは可視光以外の光に対する物理的性質の異った第2のインクを前記認証画像以外の網点画像部分または前記認証画像を含む網点画像部分に割り当てることにより潜像画像データを作成してデータ保存部220に格納し、前記作成した潜像画像データによって前記認証画像を含む網点画像を印刷部230により預金通帳へ印刷する処理部である。
【0026】
通帳発行装置を画像処理演算部200として機能させる為のプログラムは、CD−ROM等の記録媒体に記録され磁気ディスク等に格納された後、メモリにロードされて実行されるものとする。なお前記プログラムを記録する記録媒体はCD−ROM以外の他の記録媒体でも良い。また前記プログラムを当該記録媒体から情報処理装置にインストールして使用しても良いし、ネットワークを通じて当該記録媒体にアクセスして前記プログラムを使用するものとしても良い。
【0027】
図2において、通帳発行装置は、画像1と画像2から印刷用の画像3を作成する画像処理演算部200と、画像1及び画像2を入力する為のデジタルカメラやスキャナ等の画像入力部210と、入力された画像データを一時的に保管する為のデータ保存部220と、口座の種類を選択する為のマウスや口座番号等の情報を入力するキーボードといった入力部250と、入力データや画像処理演算部200で作成されたデータを画面で確認する為の画像表示部240と、印刷用の画像3をプリントアウトする為の印刷部230とで構成されている。また、画像処理演算部200は、画像1の画像処理を行なう画像処理機能201と、画像2の画像処理を行なう画像処理機能202と、画像1と画像2から合成画像3を作成する画像合成処理機能203と、1枚だけの印刷を行なう為の印刷制御機能204とを持っている。
【0028】
図3は本実施形態の通帳発行処理の処理手順を示すフローチャートである。まず、図3のフローチャートを用いて印刷用の画像3を作成する処理を説明する。
【0029】
通帳発行装置の画像処理演算部200は、ステップ300において画像入力部210からの入力を受け付け、画像1のデータを入手する。この画像1のデータは、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の3原色の濃淡で表現されたカラー画像データである。
【0030】
画像処理演算部200はステップ305において、画像1データの3成分であるR、G、Bを、印刷時に用いるC(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)、Bk(ブラック)の4色のインク量に変換する分版処理を行なう。
【0031】
Rの補色はC、Gの補色はM、Bの補色はYであるが、前記の下色除去処理等に該当しない混合比率でC、M、Yの3色を配合するため、下記の数1によってC、M、Y、Bkに変換した後でBk成分を零にすることで、Bk成分抜き画像データを作成する。
【0032】
〔数1〕
Bk = min(1-R, 1-G, 1-B)
C = (1-R-Bk)/(1-Bk)
M = (1-G-Bk)/(1-Bk)
Y = (1-B-Bk)/(1-Bk)
但し、min(a, b, c)は、a、bもしくはcの最小値を取るものとする。
【0033】
ステップ310において、画像1の画像処理機能201は、ステップ305で作成したBk成分抜き画像データを、データ保存部220に一時的に記録する。
【0034】
なお、Bk成分抜き画像データをディスプレイ等に表示する場合には、下記の数2を用いることによって、R、G、Bの3原色成分に変換することが出来る。但し、得られる画像は分版処理においてBk成分を零にしたデータをRGB変換したものなので、画像1よりもコントラストが薄い画像となる。
【0035】
〔数2〕
R = 1-C
G = 1-M
B = 1-Y
次に、通帳発行装置の画像処理演算部200は、ステップ315において、画像入力部210からの入力を受け付け、画像2のデータを入手する。この画像2のデータは、R、G、Bの3原色の濃淡で表現されたカラー画像データである。ステップ320において、この画像2を画像表示部240に表示し、画像2にぼやけ等の不具合が無いことを示す確認結果を受け付ける。画像2に不具合があることを示す入力を受け付けた場合には、ステップ315の処理に戻って、再度、画像入力部210からの入力を受け付ける。
【0036】
画像2が適切な場合にはステップ330に進み、入力部250からの入力を受け付け、画像2を貼り付ける預金通帳を識別する為の情報として口座番号(預金通帳を識別するIDでも良い)を入手する。
【0037】
次に、画像2の画像処理機能202は、ステップ335において、画像2から二値画像データを作成する。画像2がカラー画像の場合、第1段階としてカラー画像を白黒濃淡画像に変換し、更に第2段階として白黒濃淡画像を網点画像に変換する。
また、画像2の画像処理機能202は、ステップ340において、前記二値画像データを肉眼で見え難い様にする為の潜画像データを作成する。
【0038】
図4は本実施形態の画像3を作成する過程において生成される中間的な画像データの一例を示す図である。図4では、ステップ335及びステップ340の処理によって作成される画像データを表しており、可視光以外の光に対して所定の物理的性質を有する第1のインク(赤外線を吸収するBkインク)により印刷される網点画像部分(印影の網点画像415及び口座番号の網点画像417)と、前記第1のインクとは可視光以外の光に対する物理的性質の異った第2のインク(赤外線を吸収しないC、M、Yを重ね合わせたインク)により印刷される網点画像部分(印影の網点画像415及び口座番号の網点画像417以外の部分)とを示している。
【0039】
ステップ315で入力された画像2を画像データ400とするとき、画像データ400は預金者の認証画像405(例えば副印鑑)と口座番号407で構成されている。ここで、金融機関の秘密鍵で口座番号を暗号化した後、その暗号化した口座番号の文字列を印刷イメージの画像に変換し、前記認証画像と暗号化した口座番号の画像をOR演算して、認証画像405と暗号化した口座番号407で構成する様にしても良い。
【0040】
ステップ335では、この画像データ400に対して網点画像410に変換する処理を行う。白黒濃淡画像を網点画像に変換する場合には、諧調近似を考慮する必要があるが、二値画像データを網点画像に変換する場合には、対象領域をn×nの小領域に分割し、各小領域についてサンプリング点を取り、サンプリング点が白成分であるか黒成分であるかによって網点の有無を決める。これは非常に単純な方法であるが、600dpiのプリンタを使うとすれば、網点と呼ぶドットとドットの間隔は約42μmとなるので、認証画像405の副印鑑の特徴は印影の網点画像415にも充分に継承される。また、口座番号407の文字列についても、口座番号の網点画像417を口座番号の文字列として認識することができる。
【0041】
ステップ340では、網点画像410を肉眼で観察できない様にする為、塗潰し領域である認証画像405の領域及び口座番号407の領域の網点部分をBkインクで塗り、その他の領域の網点部分をC、M、Yを重ね合わせたインクで塗り分ける。この様にして作成した潜像画像420は、可視光の下では網点425が均一に配置された画像データであり、肉眼では副印鑑の特徴を観察することはできない。
【0042】
Bkインクはカーボンブラックを主体とした黒色顔料で紫外線領域から赤外線領域まで全域にわたり吸収を示すが、C、M、Yを重ね合わせたものは赤外線を吸収しないので、Bkインクの濃度及びC、M、Yインクの濃度を調整することによって、見た目は同じ色であるが物理的性質の異なる2種類のインクを作ることができる。
【0043】
図3に戻り、画像合成処理機能203はステップ345において、ステップ305で作成したBk成分抜き画像データに、ステップ340で作成した潜像画像420を上書きし、印刷用の画像3のデータとする。
【0044】
次に、印刷制御機能204はステップ350において、いつ印刷したかを示す履歴を記録し、ステップ355において印刷部230に印刷用の画像3のデータを送る。更に、ステップ360において、印刷物に汚れやかすれがないか、或いは、印影の網点画像415が肉眼で観察できることはないか、或いは、赤外線ビューアで印影の網点画像415を観察することが可能かどうかを検査した検査結果の入力を入力部250により受け付ける。印刷が適切でない場合、印刷制御機能204はステップ350に戻り、再度印刷履歴の記録を行なう。
【0045】
適切な印刷物が作成された場合、ステップ370において、ステップ300からステップ345で作成された画像データを破棄する。これによって、銀行員であっても通帳発行装置を不正に使うことは困難になるので、認証画像の漏洩リスクを少なくすることができる。
【0046】
本実施形態では、画像処理演算部200を持つ通帳発行装置として、いわゆるパーソナルコンピュータやワークステーション等が用いられ、この様なコンピュータ上で動作するプログラムにより上述した各機能が実現されるものとする。
【0047】
図5及び図6は、第2の画像として埋め込む画像を、網点表現した際の構造を示す説明図である。
【0048】
図5は本実施形態の不可視画像として埋め込む副印鑑の印影を網点表現した際の構造を示す図である。図5の網点画像410は、副印鑑の印影を網点表現した例を示しており、30mm平方の印影を記録する領域を600dpiで印刷する場合、一辺が708ドットで表現される。拡大図510は、印影の網点画像415の一部領域500を拡大表示したものであり、網点のドット520は42μmの間隔で描かれているので、印影の微細な特徴を記録することができる。
【0049】
図6は本実施形態の不可視画像として埋め込む預金者の写真画像を網点表現した際の構造を示す図である。図6は、預金者の認証画像として人物の写真画像を用いる際、網点の密度や面積により写真画像を網点表現した例を示したものである。
【0050】
写真画像600が濃淡画像であり、例えば、顔表面610は白っぽい色であり、目や髪は黒っぽい色であるとする。このとき、目を含む小領域620の拡大図は、拡大図630若しくは拡大図660の様になる。すなわち、拡大図630では、ドットの大きさは一定であるけれども、ドットの密度を増減することによって顔表面と目の濃淡画像を表現している。一方、拡大図660では、大きな面積のドット670と小さな面積のドット680を組み合わせることによって顔表面と目の濃淡画像を表現している。
【0051】
図5及び図6の様に、ドットの密度や面積により認証画像の濃淡を表現した場合、ステップ340では、認証画像のドット部分をBkインクで印刷し、認証画像中の密度や面積の小さいドット部分と認証画像以外の部分にC、M、Yを重ね合わせたインクで当該認証画像中の最も大きい密度や面積のドットを印刷する。この様にして作成した潜像画像は、可視光の下ではドットの密度や面積が均一な画像データであり、肉眼では認証画像の特徴を観察できない様にすることが可能である。
【0052】
図7は本実施形態の預金通帳の簡易検証装置の概略を示す図である。図7において、赤外線カメラ710は、観察台740にアーム750で固定されており、赤外線カメラ710のビデオ信号をモニタ装置700に送ることによって、赤外線カメラ710の撮影画像をモニタ装置700で観察することができる。また、赤外線カメラ710のレンズ部前面には赤外線フィルタ720(可視光をカットするフィルタであるが、一般に赤外線フィルタと呼ばれている。)が付けられており、観察対象である預金通帳100には赤外線を含んだ光源730が照射される。赤外線フィルタ720を付けることによって、可視光領域で見える成分はカットされ、Bkインクで描かれた第2の画像のみを抽出することができる。
【0053】
図8は本実施形態のコンピュータによって真贋判定が可能な検証装置のシステム構成を示す図である。図8において、赤外線フィルタ720及び光源730を記載していないが、図8の画像入力部810は、図7の赤外線カメラ710及び赤外線フィルタ720及び光源730を含んでいるものとする。検証端末800は、前記の画像入力部810と、ビデオ信号をデジタル変換するA/D変換部815と、潜像画像の処理やIDの読み取り等の画像処理を行う処理部であり、可視光以外の光に対して所定の物理的性質を有する第1のインクと前記第1のインクとは可視光以外の光に対する物理的性質の異った第2のインクにより預金通帳上に形成された画像から潜像画像を画像入力部810により読み取り、預金者を確認する為の認証画像を入力部835により入力し、前記預金通帳から読み取った潜像画像と前記入力した預金者の認証画像とを比較して、当該潜像画像が預金者の認証画像と一致するかどうかを調べ、その結果を表示部830により出力する演算部820と、検証結果を表示する為の表示部830と、通帳番号を入力する為の入力部835と、通信部840で構成されている。
【0054】
検証端末800を演算部820として機能させる為のプログラムは、CD−ROM等の記録媒体に記録され磁気ディスク等に格納された後、メモリにロードされて実行されるものとする。なお前記プログラムを記録する記録媒体はCD−ROM以外の他の記録媒体でも良い。また前記プログラムを当該記録媒体から情報処理装置にインストールして使用しても良いし、ネットワークを通じて当該記録媒体にアクセスして前記プログラムを使用するものとしても良い。
【0055】
また、認証情報を記録しているサーバ850は、データベース870と、画像照合を行なう為の演算部860と、通信部845で構成されている。データベース870には、口座番号を記録する領域872と、読み取ったIDを記録する領域874と、認証情報を記録する領域876がある。
【0056】
預金通帳100に付与された認証画像を検出して預金者を検証する検証端末800は、まず、C、M、Yを重ね合わせたインクとBkインクにより預金通帳100上に形成された画像からBkインクにより形成された潜像画像を画像入力部810により読み取ってA/D変換部815によりデジタルデータに変換した後、メモリ等の記憶装置内に格納する。
【0057】
次に、預金者を確認する為の認証画像(預金者の顔写真等の生体情報や預金者の持参した印鑑の印影)及び預金通帳100の口座番号やIDを入力部835により入力してメモリ等に格納する。
【0058】
そして、預金通帳100から読み取った潜像画像のデータと前記入力した預金者の認証画像のデータとを比較して、当該潜像画像が預金者の認証画像と一致するかどうかを調べ、その結果を出力装置により出力する。その際、潜像画像中の口座番号やIDを読み取って、入力部835により入力した口座番号やIDと一致するかも調べる様にしても良い。
【0059】
更に、読み取った潜像画像、口座番号及びIDと、サーバ850のデータベース870に記録された情報とを比較して検証を行う様にしても良い。
【0060】
すなわち、検証端末800は、潜像画像、口座番号及びIDの検証を行った後、それらの情報を通信部840によりネットワーク805を介してサーバ850へ送信し、サーバ850は、検証端末800への入力値(赤外線観察画像、口座番号、ID)を通信部845により受信すると、それらの情報とデータベース870に記録された情報とを演算部860において照合し、その検証結果を検証端末800に返送する。
【0061】
なお、検証端末800の通信部840とサーバ850の通信部845とは、セキュアなネットワーク805で接続されており、第三者に盗聴されること無く相互にデータを交換することが可能であるものとする。
【0062】
前記の様に本実施形態によれば、赤外線カメラ等の特殊な鑑定装置を用いて預金通帳を観察した場合のみ不可視画像を視認することができる仕組みを、比較的安価な市販のプリンタを用いて提供することができ、不可視画像を預金者の顔写真等の生体情報にすることで、盗難通帳による預金の不正な引出しを防止することが可能となる。
【0063】
また、汎用的な光学機器では、預金通帳に記録された生体情報等の認証情報の複写を取ることが困難になるので、生体情報を預金通帳に記録することに対する精神的な負担を軽減することができる。また、金融機関の秘密鍵で暗号化した通帳番号と生体情報を同じ方法で印刷することによって、生体情報を含んだ認証情報の模造をより困難にすることが可能となる。
【0064】
なお本実施形態では、預金通帳に生体情報等の認証情報を印刷する場合を例にあげて説明したが、本発明は預金通帳に限定されるものではなく、他の印刷物に適用しても良い。例えば、身分証、キャッシュカードやチケットの発行時に発行相手の生体情報を潜像画像として印刷しておき、それらの潜像画像中の生体情報により持ち主を確認する際に本発明を適用しても良い。
【0065】
以上説明した様に本実施形態の通帳処理システムによれば、可視光以外の光に対する物理的性質の異なった2種類のインクにより預金者の認証画像を潜像画像として預金通帳に印刷するので、預金者の認証画像を肉眼では認知不可能な不可視画像として預金通帳に記録し、特殊な鑑定装置を用いて観察した場合にのみ当該認証画像を視認することができ、汎用的な光学機器では預金通帳に記録された認証画像の複写を取ることが困難となる仕組みを提供することが可能である。
【0066】
また本実施形態の通帳処理システムによれば、印刷対象の預金通帳を識別する為の情報を潜像画像中に記録するので、潜像画像の偽造を検出できる仕組みを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本実施形態の通帳発行装置により作成された預金通帳の構成を示す図である。
【図2】本実施形態の通帳発行装置のシステム構成を示す図である。
【図3】本実施形態の通帳発行処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態の画像3を作成する過程において生成される中間的な画像データの一例を示す図である。
【図5】本実施形態の不可視画像として埋め込む副印鑑の印影を網点表現した際の構造を示す図である。
【図6】本実施形態の不可視画像として埋め込む預金者の写真画像を網点表現した際の構造を示す図である。
【図7】本実施形態の預金通帳の簡易検証装置の概略を示す図である。
【図8】本実施形態のコンピュータによって真贋判定が可能な検証装置のシステム構成を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
100…預金通帳、110…預金者の生体情報を記録する領域、120…第1の画像、130…第2の画像、140…口座番号、201…画像処理機能、202…画像処理機能、203…画像合成処理機能、204…印刷制御機能、210…画像入力部、220…データ保存部、230…印刷部、240…画像表示部、250…入力部、260…バス、200…画像処理演算部、400…画像データ、405…認証画像、407…口座番号、410…網点画像、415…印影の網点画像、417…口座番号の網点画像、420…潜像画像、425…網点、500…一部領域、510…拡大図、520…ドット、600…写真画像、610…顔表面、620…小領域、630…拡大図、640…高い密度のドット、650…低い密度のドット、660…拡大図、670…大きな面積のドット、680…小さな面積のドット、700…モニタ装置、710…赤外線カメラ、720…赤外線フィルタ、730…光源、740…観察台、750…アーム、800…検証端末、805…ネットワーク、810…画像入力部、815…A/D変換部、830…表示部、835…入力部、840…通信部、845…通信部、850…サーバ、860…演算部、870…データベース、872…領域、874…領域、876…領域、820…演算部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
預金者を確認する為の認証画像を付与した預金通帳を発行する通帳発行方法において、
預金者を確認する為の認証画像を入力装置により入力するステップと、
前記入力した認証画像を網点で表現された網点画像に変換するステップと、
可視光以外の光に対して所定の物理的性質を有する第1のインクを前記認証画像の網点画像部分に割り当て、前記第1のインクとは可視光以外の光に対する物理的性質の異った第2のインクを前記認証画像以外の網点画像部分または前記認証画像を含む網点画像部分に割り当てることにより潜像画像データを作成して記憶装置に格納するステップと、
前記作成した潜像画像データによって前記認証画像を含む網点画像を印刷装置により預金通帳へ印刷するステップとを有することを特徴とする通帳発行方法。
【請求項2】
印刷対象の預金通帳を識別する為の情報を前記潜像画像データ中に記録することを特徴とする請求項1に記載された通帳発行方法。
【請求項3】
前記預金者を確認する為の認証画像として印鑑の印影画像を入力することを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれか1項に記載された通帳発行方法。
【請求項4】
前記預金者を確認する為の認証画像として預金者の生体情報を入力することを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれか1項に記載された通帳発行方法。
【請求項5】
預金通帳に付与された認証画像を検出して預金者を検証する預金者検証方法において、
可視光以外の光に対して所定の物理的性質を有する第1のインクと前記第1のインクとは可視光以外の光に対する物理的性質の異った第2のインクにより預金通帳上に形成された画像から潜像画像を入力装置により読み取るステップと、
預金者を確認する為の認証画像を入力装置により入力するステップと、
前記預金通帳から読み取った潜像画像と前記入力した預金者の認証画像とを比較して、当該潜像画像が預金者の認証画像と一致するかどうかを調べ、その結果を出力装置により出力するステップとを有することを特徴とする預金者検証方法。
【請求項6】
預金者を確認する為の認証画像を付与した預金通帳を発行する通帳発行装置において、
預金者を確認する為の認証画像を入力装置により入力してその入力した認証画像を網点で表現された網点画像に変換し、可視光以外の光に対して所定の物理的性質を有する第1のインクを前記認証画像の網点画像部分に割り当て、前記第1のインクとは可視光以外の光に対する物理的性質の異った第2のインクを前記認証画像以外の網点画像部分または前記認証画像を含む網点画像部分に割り当てることにより潜像画像データを作成して記憶装置に格納し、前記作成した潜像画像データによって前記認証画像を含む網点画像を印刷装置により預金通帳へ印刷する画像処理演算部と、
預金者を確認する為の認証画像を入力する入力装置と、潜像画像データによって認証画像を預金通帳へ印刷する印刷装置とを備えることを特徴とする通帳発行装置。
【請求項7】
預金通帳に付与された認証画像を検出して預金者を検証する預金者検証装置において、
可視光以外の光に対して所定の物理的性質を有する第1のインクと前記第1のインクとは可視光以外の光に対する物理的性質の異った第2のインクにより預金通帳上に形成された画像から潜像画像を入力装置により読み取り、預金者を確認する為の認証画像を入力装置により入力し、前記預金通帳から読み取った潜像画像と前記入力した預金者の認証画像とを比較して、当該潜像画像が預金者の認証画像と一致するかどうかを調べ、その結果を出力装置により出力する演算部と、
物理的性質の異った2種類のインクにより形成された潜像画像を預金通帳から読み取る第1の入力装置と、預金者を確認する為の認証画像を入力する第2の入力装置と、預金通帳から読み取った潜像画像と預金者の認証画像との比較結果を出力する出力装置とを備えることを特徴とする預金者検証装置。
【請求項8】
預金者を確認する為の認証画像を付与した預金通帳を発行する通帳発行方法をコンピュータに実行させる為のプログラムにおいて、
預金者を確認する為の認証画像を入力装置により入力するステップと、
前記入力した認証画像を網点で表現された網点画像に変換するステップと、
可視光以外の光に対して所定の物理的性質を有する第1のインクを前記認証画像の網点画像部分に割り当て、前記第1のインクとは可視光以外の光に対する物理的性質の異った第2のインクを前記認証画像以外の網点画像部分または前記認証画像を含む網点画像部分に割り当てることにより潜像画像データを作成して記憶装置に格納するステップと、
前記作成した潜像画像データによって前記認証画像を含む網点画像を印刷装置により預金通帳へ印刷するステップとをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
預金通帳に付与された認証画像を検出して預金者を検証する預金者検証方法をコンピュータに実行させる為のプログラムにおいて、
可視光以外の光に対して所定の物理的性質を有する第1のインクと前記第1のインクとは可視光以外の光に対する物理的性質の異った第2のインクにより預金通帳上に形成された画像から潜像画像を入力装置により読み取るステップと、
預金者を確認する為の認証画像を入力装置により入力するステップと、
前記預金通帳から読み取った潜像画像と前記入力した預金者の認証画像とを比較して、当該潜像画像が預金者の認証画像と一致するかどうかを調べ、その結果を出力装置により出力するステップとをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
預金者を確認する為の認証画像を付与した預金通帳において、
可視光以外の光に対して所定の物理的性質を有する第1のインクにより印刷された前記認証画像の網点画像部分と、前記第1のインクとは可視光以外の光に対する物理的性質の異った第2のインクにより印刷された前記認証画像以外の網点画像部分または前記認証画像を含む網点画像部分とを備えることを特徴とする預金通帳。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−289776(P2006−289776A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−113484(P2005−113484)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】