説明

通気フィルタ付き筐体部品の製造方法および通気フィルタ付き筐体の製造方法

【課題】通気フィルタ付き筐体部品を簡単かつ確実に製造できるようになる方法を提供する。
【解決手段】通気フィルタ25を支持体27に固定してなる通気フィルタ部品19を、固定型44の凹部44cに配置する。固定型44に可動型40を接近させて型締めする。型締め状態で生ずるキャビティCVに樹脂を射出することにより、射出した樹脂と通気フィルタ部品19と一体化させ、通気フィルタ部品19および射出した樹脂からなる筐体上部13(筐体部品)を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気フィルタ付き筐体の一部となる筐体部品の製造方法に関する。また、その方法で製造した筐体部品を用いる、通気フィルタ付き筐体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のECU(electronic control unit)の筐体には、内圧が過昇することを防止するために、内圧調整用の通気口を設けている。通常、こうした通気口には、筐体内に塵や水滴等の異物が侵入することを防止するための措置が講じられる。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、補強材付きの通気フィルタを通気口に直接取り付けた筐体が開示されている。下記特許文献2には、通気フィルタを支持体に固定してなる通気フィルタ部品を通気口に嵌め込んだ筐体が開示されている。
【特許文献1】特開2001−168543号公報
【特許文献2】特許第3219700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前者の場合、熱溶着や接着剤によって筐体の通気口に通気フィルタを取り付けるが、取り付け時に破損したり取り付け不十分だったりするので、取り付け後に信頼性(主に耐水性)を確認する検査を実施する。ところが、大きい筐体ごと検査を行う必要があるので、検査装置が大掛かりになるというデメリットがある。しかも、検査をパスしない不良品が発生した場合には、筐体ごと破棄する必要があり、無駄が多い。
【0005】
後者の場合、通気フィルタを樹脂製の支持体に固定した通気フィルタ部品の段階で検査を行えるので、検査自体は簡単である。しかしながら、通気フィルタ部品を筐体に嵌め込む方式を採用する場合は、シール性を高める工夫や筐体から通気フィルタ部品が脱落することを防止する工夫が必須となる。熱溶着や超音波溶着により、通気フィルタ部品を筐体に一体化するという方法もあるが、熱溶着や超音波溶着の実施時に通気フィルタにダメージが及ぶ可能性がある。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、通気フィルタ付き筐体部品を簡単かつ確実に製造できるようになる方法を提供することを課題とする。また、その方法で製造した通気フィルタ付き筐体部品を用いる、通気フィルタ付き筐体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、通気フィルタを支持体に固定してなる通気フィルタ部品を成形型の所定位置に配置し、成形型を型締めしたのち、成形型の内部に形成されるキャビティに樹脂を射出して樹脂を通気フィルタ部品と一体化させ、通気フィルタ部品および射出した樹脂からなる筐体部品を成形する、通気フィルタ付き筐体部品の製造方法を提供する。
【0008】
上記本発明の好適な態様において、通気フィルタが膜の形態を有し、支持体が通気フィルタの周縁部を固定する枠状の形態を有する通気フィルタ部品を、上記筐体部品を成形する工程における通気フィルタ部品とすることができる。筐体部品を成形する工程においては、成形型が支持体の上下面に密着して、通気フィルタの通気領域への樹脂の流れ込みが阻止されるように成形型を型締めする。
【0009】
また、本発明は、上記方法で製造した通気フィルタ付き筐体部品と、他の筐体部品とを組み合わせて通気フィルタ付き筐体を得る、通気フィルタ付き筐体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
上記本発明の製造方法は、通気フィルタ部品を成形型にインサートして樹脂成形を行う、いわゆるインサート射出成形法に基づいている。このような方法によれば、射出した樹脂が通気フィルタ部品の周囲を隙間なく埋めるので、従来の嵌め込み方式に比して、高いシール性を容易かつ簡単に確保できるようになる。また、嵌め込み方式を採用する場合には、筐体から通気フィルタ部品が脱落することを防止する工夫が必要になるが、本発明の方法によれば、そうした工夫が本質的に不要である。また、熱溶着治具や超音波ホーンといった道具を使用しないので、通気フィルタにダメージが及びにくい。このように、本発明の製造方法によれば、通気フィルタ付き筐体部品を簡単かつ確実に製造できるようになる。また、実質的に、筐体を成形する工程と、筐体に通気フィルタ部品を固定する工程とを同時進行することになるので、工程数減に基づく生産性の向上、ひいては製品の低コスト化を見込める。
【0011】
また、本発明においては、筐体部品を成形する工程に先立って通気フィルタ部品を作製しておく。そのため、通気フィルタ部品を作製した段階で耐水検査等の製品検査を実施し、良品/不良品の選別をすることができる。そして、良品と判断したもののみ、筐体部品を成形する工程における通気フィルタ部品とすることができる。このようにすれば、筐体部品の製造後に検査を実施せずに済み、通気フィルタに損傷が生じている等の問題があった場合の材料および労力の無駄を極力省くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1に示すのは、本発明の方法で製造した通気フィルタ付き筐体を備えた自動車のECUである。ECU11は、電子部品および配線基板を含むECU本体部23と、通気フィルタ付き筐体17とを備えている。ECU本体部23と外部との電気信号の授受を行うためのコネクタ21が、通気フィルタ付き筐体17の側面部に露出している。
【0013】
通気フィルタ付き筐体17は、通気フィルタ部品19を含む筐体上部13(通気フィルタ付き筐体部品)と、その筐体上部13に組み合わされた筐体下部15(他の筐体部分)との2つの部分(複数部分)から構成されている。筐体上部13と筐体下部15とは、シーリング材や接着剤を用いて隙間無く接合されている。コネクタ21と通気フィルタ付き筐体17との間もシールされている。通気フィルタ付き筐体17内の空間11hは、通気フィルタ部品19を通じて外部との換気が行われる。本実施形態では、筐体上部13と筐体下部15の両方を樹脂製としているが、通気フィルタ部品19を含まない筐体下部15は金属製であってもよい。
【0014】
図2は、図1の部分拡大断面図であり、図3は、図2に示す通気フィルタ部品の平面図である。図2に示すように、通気フィルタ部品19は、通気フィルタ25と、その通気フィルタ25の周縁部25kを上下から挟んで固定する支持体27とを備えている。図3の平面図に示すように、通気フィルタ25は円形状である。支持体27は、内径が通気フィルタ25の直径よりも小さく、且つ外径が通気フィルタ25の直径よりも大きいリング状の形態を有する。支持体27の開口27h内に通気フィルタ25の一部が露出し、支持体27の内部に通気フィルタ25の周縁部25kが埋没している。なお、通気フィルタ25や支持体27の形状については、上記に限定されるわけではなく、例えば、方形状の通気フィルタと、その通気フィルタの周縁部を固定する枠状の支持体とからなる通気フィルタ部品を採用することが可能である。
【0015】
図2に示すごとく、通気フィルタ部品19は、筐体上部13における通気フィルタ部品19以外の部分である壁部131に一体化されている。具体的には、支持体27が、その側面27rのみで壁部131に一体化されている。支持体27の下面27qと壁部131の内側面13qとが略面一となっており、支持体27の上面27pと壁部131の外側面13pとの境界には段差が生じている。このような固定形態とすることにより、筐体上部13の薄肉化を図ることが可能である。なお、支持体27は、側面27rの全体で壁部131に一体化されていてもよい。その場合には支持体27の上面27pと、壁部131の外側面13pとを略面一にすることにより、通気フィルタ部品19の外方向への突出量を小さくすることができる。
【0016】
通気フィルタ25は、気体の通過を許容し、液体の通過を阻止する膜の形態を有するものである。具体的には、例えば、フッ素樹脂やポリオレフィン樹脂の多孔膜を単独で、もしくはその多孔膜と補強材とを組み合わせた複合体を、通気フィルタ25として使用することができる。本実施形態では、多孔膜を単独で通気フィルタ25としている。
【0017】
通気フィルタ25に好適な多孔膜は、撥液性に優れることから、フッ素樹脂の多孔膜であることが好ましく、特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の多孔膜が好ましい。フッ素樹脂の多孔膜は、化学的な耐性にも優れている。PTFEの多孔膜は、PTFE粒子を含むペーストを成形、圧延した後に、延伸することなどにより形成できる。
【0018】
上記多孔膜は、撥液処理(撥水処理および/または撥油処理)が施されていてもよい。撥液処理は、表面張力の小さい物質を多孔膜に塗布し、乾燥させた後にキュアすることにより行うことができる。撥液処理に用いる撥液剤には、例えば、パーフルオロアルキル基を有する高分子材料を含む溶液を用いることができる。多孔膜への撥液剤の塗布は、撥液処理として一般的な手法である含浸法やスプレー法で行うとよい。
【0019】
多孔膜の厚さは特に限定されないが、通常、50μm〜10mmの範囲である。多孔膜の空孔率および平均孔径も特に限定されないが、液体が実質的に透過しない通気フィルタ25を構成するためには、平均孔径にして、例えば、0.01μm〜10μmの範囲であればよく、0.5μm〜5μmの範囲が好ましい。空孔率にして、例えば、10%〜90%の範囲であればよく、30%〜80%の範囲が好ましい。
【0020】
多孔膜を補強する補強材には、多孔膜の通気性を妨げないもの、例えば、樹脂や金属などからなる、織布、不織布、メッシュ、ネット、スポンジ、フォーム、発泡体、多孔体などを用いることができる。こうした補強材は、接着剤を用いる方法や、熱溶着または超音波溶着といった方法により、多孔膜と接合することができる。
【0021】
一方、支持体27は、樹脂製または金属製とすることができるが、樹脂からなる壁部131との一体化のし易さを考慮すると、樹脂製であることが望ましい。支持体27に使用する樹脂は、高温下での使用に耐えうるように、耐熱性を有するエンジニアリングプラスチック、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PS(ポリスチレン)、PC(ポリカーボネート)、PVC(ポリ塩化ビニル)などが好適である。このような樹脂を、例えば射出成形法によって成形して支持体27を得ることができる。
【0022】
なお、図4に示す筐体上部13Bのように、支持体27の開口27hに蓋29を取り付けてもよい。このような蓋29を有する通気フィルタ部品191によれば、通気フィルタ25を塵芥や水滴等の異物から確実に保護できる。蓋29には、通気孔29pが形成してあるので、通気フィルタ25の通気性を妨げることもない。蓋29は、通気フィルタ25および支持体27を壁部131と一体化した後で、支持体27に取り付けるようにしてもよいし、蓋29を支持体27に取り付けた状態の通気フィルタ部品191を成形型にインサートして、壁部131に一体化するようにしてもよい。また、支持体27の上面27pへの蓋29の接合方法としては、接着剤を用いる方法、熱溶着による方法、または超音波溶着による方法を例示することができる。
【0023】
次に、図1に示した通気フィルタ付き筐体17の製造方法について説明する。
本実施形態で説明する製造方法によれば、通気フィルタ19を含む筐体上部13と、筐体下部15とを別々に製造し、ECU本体部23等の機器を筐体上部13または筐体下部15の所定位置に固定した後、筐体上部13と筐体下部15とを接合して通気フィルタ付き筐体17を完成させる。
【0024】
筐体上部13を製造する前に、まず、通気フィルタ部品19を作製する。図1〜図3に示す通気フィルタ部品19は、樹脂製の支持体27を成形する成形型に通気フィルタ25をインサートする、いわゆるインサート成形法によって作製することができる。また、支持体27となるべき上下2つのリング状成形品を先に作製しておき、いずれか一方に通気フィルタ25を固定したのち、2つのリング状成形品の内周部分で通気フィルタ25の周縁部25kを上下から挟み込むような形で、それらリング状成型品同士を接着剤等で接合するという方法によっても、同様の通気フィルタ部品19を作製することができる。
【0025】
次に、予め作製した複数の通気フィルタ部品の検査を実施して良品/不良品を選別し、良品のみを筐体上部13を成形する工程に供する通気フィルタ部品19とする。このようにすれば、筐体上部13の製造後に検査を実施せずに済み、通気フィルタに損傷が生じている等の問題があった場合の無駄を極力省くことができる。
【0026】
通気フィルタ部品19に実施する検査は、例えば、JIS L 1092(1998)に規定されている繊維製品の防水性試験方法のB法(高水圧法)に準拠した耐水検査である。具体的には、クランプ等に固定した通気フィルタ部品19に対し、表側から、例えば約30kPaの水圧を加える。そして、通気フィルタ25の裏面側に水が漏れていないものを、耐水圧30kPa以上の防水シール特性を有する良品と判断する。なお、JIS L 1092(1998)のB法は破壊試験であるが、本実施形態での耐水検査は、通気フィルタ部品19の破壊強度より十分に低い圧力で行う非破壊試験とする。上記では、水圧を約30kPaとしているが、この値は製品のグレードによって異なる。
【0027】
また、通気フィルタ部品19には、通気検査を実施することもある。通気検査は、例えば、JIS P 8117に規定されている通気度試験(ガーレー)、あるいはJIS L 1096に規定されている通気度試験(フラジール)に準拠した方法で実施することができる。通気検査では、予め定めた閾値以上の通気度を示すものを良品と判断する。なお、このような通気検査は、上記の耐水検査に代えて、あるいは耐水検査とともに行うことができる。
【0028】
次に、通気フィルタ部品19を成形型内に配置して樹脂成形を行うインサート射出成形法により、通気フィルタ部品19を含む筐体上部13を製造する。図5は筐体上部13を製造する工程の説明図である。使用する成形型50は、可動型40と固定型44とを備えるものである。可動型40は、突出しピン42を有する。固定型44には、通気フィルタ部品19を嵌め込んで位置決めする凹部44cと、ゲート46が形成されている(図5(a))。
【0029】
まず、固定型44の凹部44cに通気フィルタ部品19を配置する(図5(b))。続いて、可動型40を固定型44に接近させて型締めする(図5(c))。成形型50は、型締めした状態において、通気フィルタ25の上下に空隙SH,SHが形成される設計になっている。尚且つ、その空隙SH,SHへの樹脂の流れ込みが阻止されるように、換言すれば、通気フィルタ25の通気領域(支持体27の開口27hに露出している領域)への樹脂の流れ込みが阻止されるように、支持体27の上下面27p,27qが成形型50に密着している。このような方法によれば、通気フィルタ部品19を保護フィルム等で別途保護しなくても、通気フィルタ25の通気領域に射出した樹脂が接触することがなく、通気フィルタ25の通気性が損なわれるおそれがない。
【0030】
次に、成形型50の内部に形成されたキャビティCVにゲート46を通じて樹脂13aを射出する(図5(d))。キャビティCVに射出された樹脂13aは、通気フィルタ部品19の支持体27の側面27rを隙間無く取り囲み、支持体27と一体化する。筐体上部13の成形に使用する樹脂13a(壁部131を構成する樹脂)としては、通気フィルタ付き筐体17の使用環境が比較的高温になることを考慮し、耐熱性に優れるエンジニアリングプラスチック、例えば、PBT、ABS、PS、PC、PVCなどが好適である。より好ましくは、通気フィルタ部品19の支持体27に使用する樹脂の種類(組成)と、筐体上部13の成形に使用する樹脂13aの種類(組成)とを同一とすることである。同一の樹脂同士であれば相溶性に優れるので、通気フィルタ部品19を筐体上部13に強固に固定することが可能となる。
【0031】
また、支持体27の樹脂の種類と、壁部131の樹脂の種類とを異ならせる場合であっても、PBTなどの耐熱性に優れる樹脂で支持体27を形成しておけば、筐体上部13の成形に比較的高融点の耐熱性に優れる樹脂を使用することが可能となる。また、通気フィルタ25についても、耐熱性に優れるフッ素樹脂(例えばPTFE)等で形成しておけば、成形温度を比較的高く設定しても通気フィルタ25にダメージが及ぶおそれがない。
【0032】
キャビティCVに樹脂を射出し終えたら、適切な冷却時間を経て、可動型40を固定型44から離間させて型開きする(図5(e))。そして、突出しピン42を駆動し、通気フィルタ部品19を含む筐体上部13を成形型50から抜き取る(図5(f))。このようにして、通気フィルタ付き筐体17の一部である筐体上部13を得ることができる。なお、図5では、筐体上部13を離型する突出ピン42が通気フィルタ部品19だけに当接する形態を示しているが、実際には、通気フィルタ部品19以外の部分も同時に突出しピンで押し出すようにした方がよい。また、突出しピンが通気フィルタ部品19に接していなければならないというわけでもなく、通気フィルタ部品19以外の部分にのみ突出しピンが接していてもよい。
【0033】
上記のようにして製造した筐体上部13に組み合わせるべき筐体下部15を、公知の射出成型法によって製造する。そして、ECU本体部23等の機器を筐体下部15の所定位置に固定した後、筐体上部13と筐体下部15とをシーリング材等を用いて接合し、内部が密閉された通気フィルタ付き筐体17、ならびにその筐体17を備えたECU11を完成させる。
【0034】
なお、図1〜図3に示す通気フィルタ部品19は、通気フィルタ25の厚さ方向を上下方向としたとき、略上下対称であることが望ましい。このようにすれば、通気フィルタ部品19を上下いずれの向きからでも成形型50の凹部44cに嵌め込むことができるようになるので、作業性が向上する、自動化が容易になる等の利点が生ずる。
【0035】
また、図13に示すように、通気フィルタ部品19を含む有底筒状の通気フィルタ付き筐体部品171を製造し、その通気フィルタ付き筐体部品171の開口部を蓋体172で塞ぐことにより、通気フィルタ付き筐体を得るようにしてもよい。もちろん、通気フィルタ部品19が蓋体172の方に一体化されていてもよい。
【0036】
(第二実施形態)
図5で説明した製造方法は、図6に示すような通気フィルタ部品192を用いて実施することも可能である。図6に示す通気フィルタ部品192は、通気フィルタ25と、その通気フィルタ25の厚さと略等しい深さの座ぐり37tを有する支持体37とを備えたものである。樹脂製の支持体37を先に作製しておき、その支持体37の座ぐり37tに通気フィルタ25を後から固定している。このような通気フィルタ部品192は、図1〜図3の通気フィルタ部品19に比べて簡単に作製できるという利点がある。
【0037】
また、図5で説明した製造方法は、図7に示すような通気フィルタ部品193を用いて実施することが可能である。図7に示す通気フィルタ部品193は、図6で説明した通気フィルタ部品192の変形例である。具体的には、図7に示すように、通気フィルタ部品193は、通気フィルタ25の厚さ方向に平行な断面において、通気フィルタ25の厚さ方向から所定角度傾くように支持体47の側面47rにテーパを付けている。このような通気フィルタ部品193が壁部131に一体化された筐体上部を得るには、図8に示すように、成形型45の凹部45cにも併せて角度θのテーパを付与する。このようにすれば、支持体47と筐体上部との接合面積を増加させることができるので、通気フィルタ部品193と壁部131との接合強度を高めることができる。なお、支持体47の側面47rに付与するテーパの角度θは、例えば、通常の射出成形の抜きテーパ(例えば1度未満)よりも大きく、45度を超えない範囲で適宜調整すればよい。また、支持体の側面にテーパを付与することは、他の実施形態に適用してもよい。
【0038】
また、図6,7に示す通気フィルタ部品192,193が壁部131に一体化された筐体上部をインサート成形によって作製するには、支持体37,47に形成する座ぐり37t,47tの深さを、通気フィルタ25の厚さと略一致するか、やや深く調整しておくとよい。そのようにすれば、通気フィルタ部品192,193を成形型に配置して型締めしたとき、それら通気フィルタ部品192,193の支持体37,47の上面37p,47pと成形型との間に隙間が生じなくなって、通気フィルタ25の通気領域に樹脂が流れ込むおそれが小さくなる。
【0039】
(第三実施形態)
図5に説明した製造方法は、図9に示す通気フィルタ部品194を用いて実施することも可能である。図9の上段は平面図であり、下段は断面図を表している。通気フィルタ部品194は、通気フィルタ26の厚さ方向に垂直な面内方向において、通気フィルタ26の周縁部26kの一部が支持体30の外周縁よりも外側に食み出した形態を有するものである。ただし、平面図から理解できるように、通気フィルタ26の周縁部の残りは、支持体30に埋まっている。したがって、通気フィルタ26を支持体30に固定していることには変わりない。
【0040】
上記のような通気フィルタ部品194が壁部131に一体化された筐体上部をインサート成形法によって製造するには、図10に示すように、成形型50の型締め状態において、支持体30から食み出した通気フィルタ26の周縁部26kをキャビティCV内に露出させる。そして、キャビティCVに樹脂を射出したときには、射出した樹脂で食み出した周縁部26kを包み込むようにして通気フィルタ部品194(具体的には支持体30)をキャビティCV内に射出した樹脂に一体化させる。このようにすれば、図11に示すように、支持体30と壁部131との両者にまたがる形で、通気フィルタ25をしっかりと固定することが可能となる。
【0041】
なお、図12の平面図に示すように、通気フィルタ56に貫通孔56pを形成しておき、その貫通孔56pに支持体50の一部を貫入することによって、通気フィルタ56を支持体50に固定した通気フィルタ部品195を採用することも可能である。このような通気フィルタ部品195によれば、通気フィルタ56の周縁部56kが周方向の全域にわたって、支持体50の外周縁よりも外側に食み出ることになる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
ランプ類、モータ、センサ、スイッチ、ECU等の自動車の機器、あるいは移動体通信機器、カメラ、電気剃刀、電動歯ブラシ等の電気機器に用いる通気フィルタ付き筐体を、本発明の方法によって好適に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】通気フィルタ付き筐体を用いたECUの断面図。
【図2】図1の通気フィルタ付き筐体の部分拡大断面図。
【図3】通気フィルタ部品の平面図。
【図4】通気フィルタ部品の変形例を示す断面図。
【図5】通気フィルタ付き筐体部品(筐体上部)の製造工程説明図。
【図6】本発明の製造方法に好適な通気フィルタ部品の他の実施形態を示す断面図。
【図7】同じく通気フィルタ部品の他の実施形態を示す断面図。
【図8】成形型の所定位置に図7の通気フィルタ部品を配置した状態を示す断面図。
【図9】本発明の製造方法に好適な通気フィルタ部品の他の実施形態を示す平面図および断面図。
【図10】成形型の所定位置に図9の通気フィルタ部品を配置して型締めした状態を示す断面図。
【図11】図9の通気フィルタ部品を取り付けた筐体上部の断面図。
【図12】図9の通気フィルタ部品の変形例を示す平面図および断面図。
【図13】通気フィルタ付き筐体の他の実施形態を示す断面図。
【符号の説明】
【0044】
13 筐体上部
15 筐体下部
17,171 通気フィルタ付き筐体
19,191,192,193,194,195 通気フィルタ部品
25,26,56 通気フィルタ
25k,26k,56k 周縁部
27,30,37,47,50 支持体
40 可動型
44,45 固定型
50 成形型
131 壁部
SH 空隙
CV キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気フィルタを支持体に固定してなる通気フィルタ部品を成形型の所定位置に配置し、前記成形型を型締めしたのち、前記成形型の内部に形成されるキャビティに樹脂を射出して前記樹脂を前記通気フィルタ部品と一体化させ、前記通気フィルタ部品および前記樹脂からなる筐体部品を成形する、通気フィルタ付き筐体部品の製造方法。
【請求項2】
前記通気フィルタが膜の形態を有し、前記支持体が前記通気フィルタの周縁部を固定する枠状の形態を有するものであり、
前記成形型が前記支持体の上下面に密着して、前記通気フィルタの通気領域への樹脂の流れ込みが阻止されるように前記成形型を型締めする、請求項1記載の通気フィルタ付き筐体部品の製造方法。
【請求項3】
前記支持体が前記通気フィルタの周縁部を上下から挟んで固定する枠状の形態を有するものであり、
前記成形型が前記支持体の上下面に密着して、前記通気フィルタの上下に形成される空隙への前記樹脂の流れ込みが阻止されるように前記成形型を型締めする、請求項2記載の通気フィルタ付き筐体部品の製造方法。
【請求項4】
前記支持体が樹脂製であり、その支持体に使用する樹脂の種類と、前記筐体部品に使用する樹脂の種類とを同一とする、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の通気フィルタ付き筐体部品の製造方法。
【請求項5】
予め作製した複数の通気フィルタ部品の検査を実施して良品/不良品を選別し、良品のみを前記筐体部品を成形する工程における前記通気フィルタ部品とする、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の通気フィルタ付き筐体部品の製造方法。
【請求項6】
前記検査が耐水検査である、請求項5記載の通気フィルタ付き筐体部品の製造方法。
【請求項7】
前記検査が通気検査である、請求項5記載の通気フィルタ付き筐体部品の製造方法。
【請求項8】
前記通気フィルタが、ポリテトラフルオロエチレンからなる多孔膜を含む、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の通気フィルタ付き筐体部品の製造方法。
【請求項9】
前記通気フィルタ部品は、前記通気フィルタの厚さ方向に垂直な面内方向において、前記通気フィルタの周縁部の少なくとも一部が前記支持体の外周縁よりも外側に食み出した形態を有し、前記成形型を型締めした状態において、その食み出し部分を前記キャビティ内に露出させるとともに、前記キャビティに射出した樹脂で前記食み出し部分を包み込むようにして前記樹脂を前記通気フィルタ部品と一体化させる、請求項2または請求項3に記載の通気フィルタ付き筐体部品の製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の方法で製造した通気フィルタ付き筐体部品と、他の筐体部品とを組み合わせて通気フィルタ付き筐体を得る、通気フィルタ付き筐体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−152891(P2007−152891A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354954(P2005−354954)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】