説明

遅延装置付き開閉弁

【課題】開閉弁に安価の遅延装置を取り付け、開閉弁の主弁が一時的に開閉した場合、リミットスイッチが過敏に反応せず、開閉弁の開閉状況を正確に捉える遅延装置付き開閉弁を得る。
【解決手段】開閉弁10に安価の遅延装置20を付け、開閉弁10の主弁12が一時的開閉した場合リミットスイッチ24が過敏に反応させず、そして制御盤90が開閉弁10の開閉状況を正確に捉える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラ等の消火設備の開閉弁に関するもので、特に、予作動式スプリンクラ消火設備に使われている流水検知装置としての開閉弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の予作動式スプリンクラ消火設備は、消火用水を供給する配管に予作動弁とも言われる開閉弁を設置し、上記開閉弁における一次側には高圧の消火用水を充水し、二次側には加圧空気(乾式)または加圧水(湿式)を封入して二次側の末端部分に閉鎖型スプリンクラヘッドを設け、該閉鎖型スプリンクラヘッドの近傍には火災感知器を設置する。
【0003】
火災が発生すると、火災感知器の作動により開閉弁が開放され一次側の高圧の消火用水がスプリンクラヘッドまで充填され、更に火災の熱によってスプリンクラヘッドが開放し消火用水を放出する。
【0004】
上記の予作動式スプリンクラ消火設備では、二次側の配管には加圧空気または低圧の水が封入されているので、スプリンクラヘッドが外的衝撃等によって誤作動した場合には消火用水の大量流出が無く水損被害を抑制できる。また開閉弁の流水検知機構に付いている減圧信号用圧力スイッチが、ヘッド破損時の二次側圧力の低下を検知して減圧信号を発することができる。従って予作動式スプリンクラ消火設備は、美術館、半導体工場、クリーンルーム等のような火災時以外の誤作動による水損を極度に嫌う場所に設置されている。
【0005】
開閉弁の開閉状況を制御装置に知らせるために、通常は開閉弁の主弁にシャフトを取付ける。このシャフトは主弁の開閉につれて移動し、所定の位置でリミットスイッチと直接に接離し、リミットスイッチのオンオフによって開閉弁の開閉信号を制御装置に送信する(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−10355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、シャフトがリミットスイッチと直接に接離して開閉弁の開閉状況を制御装置に知らせる従来の方法は、以下の問題点が挙げられる。
【0007】
(1)主弁の開度が充分でない場合、例えば配管の漏れにより主弁の作動流量未満の流水が発生するときに、シャフトがリミットスイッチに接触してしまい、開閉弁の開放した信号を誤って制御装置に送信してしまう。
【0008】
(2)瞬間的に主弁が大きく開いた後に、閉止するいわゆる「ジャンピング現象」が発生するとき、シャフトがリミットスイッチに接触してしまい、開閉弁の開放した信号を誤って制御装置に送信してしまう。
【0009】
(3)流水中断続的に主弁が開閉するいわゆる動揺現象が発生するときに、シャフトがリミットスイッチに接離してしまい、開閉弁の開放したまたは閉止した信号を誤って制御装置に送信してしまう。
【0010】
この発明は、上記事情に鑑み、開閉弁に安価の遅延装置を取り付け、開閉弁の主弁が一時的に開閉した場合、遅延時間が設けられたためリミットスイッチが過敏に反応せず、開閉弁の開閉状況を正確に捉える遅延装置付き開閉弁を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上記課題を解決するためになされたもので、遅延装置付き開閉弁であって、長手方向の所定位置に回転軸を設けて回転する当接レバーAおよび減速レバーBと、上記当接レバーAの回転軸を挿着しながら当接レバーAを引掛ける蓄積スプリングと、上記当接レバーAの回転軸を挿着し、当接レバーAおよび減速レバーBを引掛ける遅延スプリングと、上記減速レバーBと同一回転軸のロータリーダンパと、リミットスイッチと、からなり、上記当接レバーAの回転により上記減速レバーBが回転し、その速度はロータリーダンパの回転速度に従い所定の位置でリミットスイッチを接離してオンオフせしめる遅延装置を有し、また、一次側流路と二次側流路とを仕切る弁座に対して接離可能に配設された主弁を有し、該主弁に設置され、主弁の開閉につれ移動して上記遅延装置の当接レバーAを回転せしめるシャフトを備える開閉弁を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、長手方向の所定位置に回転軸を設けて回転する当接レバーAおよび減速レバーBと、上記当接レバーAの回転軸を挿着しながら当接レバーAを引掛ける蓄積スプリングと、上記当接レバーAの回転軸を挿着し、当接レバーAおよび減速レバーBを引掛ける遅延スプリングと、上記減速レバーBと同一回転軸のロータリーダンパと、リミットスイッチと、からなり、上記当接レバーAの回転により上記減速レバーBが回転し、その速度はロータリーダンパの回転速度に従い所定の位置で上記リミットスイッチを接離してオンオフせしめる遅延装置を有するため、当接レバーAの回転開始からリミットスイッチのオンオフまでの遅延時間を設定することは可能となり、また、遅延スプリングと蓄積スプリングが互いに干渉しないので、減速レバーBの作動時間は遅延スプリング、復旧時間は蓄積スプリングを変更するのみで調整可能となる。そして、該遅延装置を開閉弁に取り付ければ、開閉弁の主弁が一時的に開閉した場合、遅延時間が設けられたためリミットスイッチは過敏に反応せず、そして制御装置は開閉弁の開閉状況を正確的に捉えることができる。
【0013】
また、該遅延装置を利用する当接レバーAと減速レバーB、蓄積スプリングと遅延スプリング等部品は安価のもので、低コストの遅延装置付き開閉弁を得られることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1はこの発明の実施形態1に係わる遅延装置付き開閉弁が閉止され、スプリンクラ消火設備の監視状態を示している。図2は遅延装置付き開閉弁が開放し、スプリンクラ消火設備は消火用水を放出している状態を示している。
【0015】
図3は遅延装置の構造を示し、図4〜図9は遅延装置の動作過程を示している。
【0016】
遅延装置付き開閉弁を有するスプリンクラ消火設備100は、主に予作動弁と呼ばれる開閉弁10と、開閉弁10に設置されている遅延装置20と、開閉弁10の開閉を起動する遠隔起動弁30と、手動起動弁40と、排水弁50と、圧力スイッチ60と、スプリンクラヘッド70と、火災感知器80と、消火設備を制御する制御盤90と、で構成されている。
【0017】
開閉弁10は、一次側流路K1と二次側流路K2とを仕切る弁座11と、その弁座11に対して接離可能に配設された主弁12と、主弁12に取り付けられ、主弁の開閉に追随して移動するシャフト13と、スプリング14と、ピストン室15と、で構成されている。
【0018】
図3は遅延装置20の構成を示している。遅延装置20は、当接レバーAと、当接レバーAの回転軸A1と、減速レバーBと、減速レバーBの回転軸B1と、金属線で螺旋状で形成されている蓄積スプリング21および遅延スプリング22と、回転軸を有し、該回転軸と連結する可動部を穏やかに減速させ、かつ停止させるロータリーダンパ23と、外部からの接離によりスイッチ部がオンオフすることができるリミットスイッチ24と、で構成されている。
【0019】
図3および図4のように、当接レバーAおよび減速レバーBはそれぞれ長手方向の所定位置に回転軸A1および回転軸B1を設け、蓄積スプリング21は回転軸A1に挿着しながら一端部が当接レバーAを引掛け、他端部が後述のストッパーS1を引掛けている。これによって蓄積スプリング21が当接レバーAに逆時計廻りの方向に回転するように力を掛けている。一方、遅延スプリング22は回転軸A1に挿着しながら一端部が当接レバーAを引掛けるとともに、他端部が減速レバーBを引掛けている。この場合遅延スプリング22が伸縮せず、静止の状態となっている。
【0020】
また、減速レバーBの回転軸B1はロータリーダンパ23の回転軸でもあり、すなわち減速レバーBはロータリーダンパ23の回転速度と合わせて回転する。
【0021】
この遅延装置20は、遅延スプリング22と蓄積スプリング21とは別々に形成され互いに干渉しないので、減速レバーBの作動時間は遅延スプリング22、復旧時間は蓄積スプリング21を変更するのみで調整可能となっている。
【0022】
次に、この遅延装置20の動作手順を図4〜図9に参考しながら説明する。
【0023】
図4は遅延装置20が作動されてない状態(監視状態)となり、当接レバーAおよび減速レバーBは停止している。
【0024】
図5は主弁12が開放直後の状態で、シャフト13(点線の部分)が突出して当接レバーAを時計廻りの方向に押上げ、蓄積スプリング21が強く捻られている。
【0025】
図6は、当接レバーAが押上げられることによって遅延スプリング22も捻られ、そして減速レバーBが時計廻りの方向に回転している状態を示している。そのとき、ロータリーダンパ23の減速効果で減速レバーBはゆっくり回転している。
【0026】
図7は所定の遅延時間を経過後、減速レバーBがリミットスイッチ24に接触し、リミットスイッチ24がオンの状態を示している。そうすると、主弁12の開放信号がリミットスイッチ24によって制御盤90に送信され、警報を発することとなる。減速レバーBは減速レバーBストッパーS2に当たるまで回転が続く。
【0027】
図8は、主弁12が閉止直後の状態で、シャフト13(点線の部分)が引き込んでいることで、蓄積スプリング21に押された当接レバーAが引き下げられるようとされている。これによって減速レバーBもリミットスイッチ24から離れるように回転する。そのときロータリーダンパ23の減速効果で減速レバーBはゆっくり回転している。
【0028】
図9は減速レバーBがリミットスイッチ24から離れ、リミットスイッチ24はオフの状態となっている。そうすると、主弁12の閉止信号は制御盤90に送信される。減速レバーBはその後も継続的に回転し、当接レバーAが当接レバーAストッパーS1に当たる時点で回転は停止し、遅延装置20は完全に復旧となる。
【0029】
次に、この遅延装置20を使用する開閉弁10の動作を図1、図2に参照しながら説明する。この場合は湿式予作動スプリンクラ消火設備を想定する。
【0030】
常時に、スプリンクラ消火設備100はその開閉弁の一次側K1、二次側K2およびピストン室15に設備監視圧力が加圧されている。遠隔起動弁30は閉止されてあり、ピストン室15内の圧力は保持されて、開閉弁10は閉止している。このとき、二次側K2に少量の流水があった場合、逆止弁V2を経由して一次側K1の圧力水が二次側K2に供給される。
【0031】
火災が発生すると、まず火災感知器80が作動し、その信号により遠隔起動弁30が開放する。さらに火災が進展すると、その熱によりスプリンクラヘッド70が開放し、二次側K2に繋がる消火用水が放出される。遠隔起動弁30とスプリンクラヘッド70の開放によりピストン室15内の加圧水が放出され、開閉弁10が開放する(減圧開放)。その際、一次側K1の加圧水が逆止弁V1を経由して供給されるが、主弁12の開放に伴い、弁座11を通して、二次側K2へ放出される。この開閉弁10の開放により、主弁12が弁座11から離れると同時に、シャフト13は突出して、遅延装置20の当接レバーAに当たる。遅延装置20の起動によりリミットスイッチ24は所定の遅延時間を経過してからオンになって、主弁10の開放信号を制御盤90に送信する。制御盤90は主弁12開放の信号を受信したら、警報を発するとともに、図示しない消火用ポンプを起動して、そして消火用水は開閉弁10を介してスプリンクラヘッド70から放出し、消火活動を行う。
【0032】
この実施例によれば、主弁12が開放(または閉止)する直後から制御盤90がこの開放(または閉止)信号を受信までに、遅延装置20によって一定の遅延時間を持たせることで、次の問題点を解決できる。(1)主弁12の開度が充分でない場合、例えば配管の漏れにより作動流量未満の流水が発生するときに、シャフト13が突出してもすぐリミットスイッチ24に接触しないで、制御盤90に弁開放の信号を送信せず、誤報を防止することができる。(2)瞬間的に主弁12が大きく開いた後に、閉止するいわゆる「ジャンピング現象」があっても、遅延時間があるので制御盤90は主弁12の開放を認識しないで、誤報を防止することができる。(3)流水中断続的に主弁12が開閉するいわば「動揺現象」が起こしても、遅延時間があるので、リミットスイッチ24はその都度一々オンオフせずに、制御盤90に誤報を送ることはない。
【0033】
なお、非火災時に、火災感知器80のみ作動すると、スプリンクラヘッド70は開放しないので、開閉弁10は閉止状態を保っている。
【0034】
また、スプリンクラヘッド70のみ開放すると、火災感知器80が作動しない限り、開閉弁10の二次側K2の残水(湿式の場合)が放出するが、開閉弁10が閉止しているため、それ以降継続してスプリンクラヘッド70からの放水はない。
【0035】
なお、本発明に係わる遅延装置100は、その使用する部品、例えば蓄積スプリング21や遅延スプリング22などは殆ど安価なもので、且つ複雑の構造は不要で、遅延装置付き予作動開閉弁として設備のコストは低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施形態1に係わる遅延装置付き開閉弁を有するスプリンクラ消火設備100(監視状態)
【図2】実施形態1に係わる遅延装置付き開閉弁を有するスプリンクラ消火設備100(放水状態)
【図3】遅延装置20
【図4】遅延装置20は監視状態
【図5】遅延装置20の当接レバーAはシャフト13に押上げられている状態
【図6】遅延装置20は遅延中状態
【図7】遅延装置20のリミットスイッチ24はオンされている状態
【図8】シャフト13が引き込まれて、遅延装置20の当接レバーAは復帰回転中状態
【図9】遅延装置20の減速レバーBが復帰回転中の状態
【符号の説明】
【0037】
10 開閉弁
20 遅延装置
30 遠隔起動装置
40 手動起動装置
50 排水弁
60 圧力スイッチ
70 スプリンクラヘッド
80 火災感知器
90 制御盤
100 遅延装置付き開閉弁を有するスプリンクラ消火設備




【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の所定位置に回転軸を設けて回転する当接レバーAおよび減速レバーBと、上記当接レバーAの回転軸を挿着しながら該当接レバーAを引掛ける蓄積スプリングと、上記当接レバーAの回転軸を挿着し、当接レバーAおよび減速レバーBを引掛ける遅延スプリングと、上記減速レバーBと同一回転軸のロータリーダンパと、リミットスイッチと、からなり、上記当接レバーAの回転により上記減速レバーBが回転し、その速度はロータリーダンパの回転速度に従い所定の位置で上記リミットスイッチを接離してオンオフせしめる遅延装置を有し、
一次側流路と二次側流路とを仕切る弁座に対して接離可能に配設された主弁を有し、該主弁に設置され、主弁の開閉につれて移動し、上記遅延装置の当接レバーAを回転せしめるシャフトを備える開閉弁を有することを特徴とする遅延装置付き開閉弁。
















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−220421(P2008−220421A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58969(P2007−58969)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】