説明

遊技機管理装置

【課題】大当たり状態における不正な遊技価値の付与を監視可能な遊技機管理装置を提供する。
【解決手段】遊技機管理装置は、通常処理において、遅延タイマ時間の終了時に(B4:YES)、累計セーフを算出し(B5)、連荘状態が発生している場合は(B6:YES)、各大当たり状態のアウト玉数(TO)に対応するように累計セーフを振り分けることで差玉数(TY)を設定し(B10)、最後に発生した大当たり状態におけるTYとTOとの関係に基づいて異常判定を行う。これにより、各大当たり状態の払出数を特定し難い連荘状態が発生した場合に、最後の大当たり状態のTYに誤差(標準値との差)を集約させて良好に異常判定を行うことができ、不正な払出を良好に監視することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大当たり状態が発生可能な遊技機についての稼動データを遊技機別に集計管理する遊技機管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パチンコ遊技機等の遊技機においては、入賞口への遊技価値としての玉の入賞を検知したことに基づいて、遊技価値の付与としての玉の払出が付与手段としての払出装置によって実行される。さらに、遊技者に有利な大当たり状態においては、大入賞口に玉が入賞し易く、多量の玉が遊技者に払い出される。
【0003】
入賞口に玉が入賞することで玉の払出が実行されるため、電波を発生させることで入賞口に玉が入賞していないにも関わらず入賞口に玉が入賞したものとパチンコ遊技機に誤検知させる不正行為や、磁石を用いて入賞するよう玉を入賞口に誘導する不正行為が後を絶たない。特に、大当たり状態においては多量の玉の払出が実行されるため、大当たり状態中は、不正に玉の払出を実行させる不正行為の対象となり易い。このため、大当たり状態中の玉の払出数を監視する技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−191942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、パチンコ遊技機によっては、払い出す玉の数が異なる複数種類の大当たり状態が設定されている。このようなパチンコ遊技機において、複数種の大当たり状態のうち、払い出す玉の数が少ない大当たり状態において不正行為が行われ多量の玉を払い出したとしても、遊技ホール側では、払い出す玉の数が多い大当たり状態が発生したのか、又は、不正行為が行われたのかを区別できない問題がある。さらに、大当たり状態が連続して発生し、先に発生した大当たり状態に基づく玉の払出が終了する前に、次の大当たり状態が発生した場合、各大当たり状態における出玉を特定することはできず、不正行為が行われたのか否かの判定が一層困難となる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、大当たり状態における不正な遊技価値の付与を監視可能な遊技機管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、遊技価値を付与する付与手段と、予め定められた条件が成立した場合に、遊技者に有利な大当たり状態として、第1大当たり状態と、遊技者により使用される遊技価値の使用数が前記第1大当たり状態よりも多くなり、又は開始から終了までの時間に対応した消化時間が前記第1大当たり状態よりも長くなり、前記付与手段により付与された遊技価値の付与数から前記使用数を差し引いた差価値数が前記第1大当たり状態よりも多くなる第2大当たり状態と、のいずれかを発生させる大当たり発生手段とを備え、前記大当たり状態の発生に基づく遊技価値の付与が終了することなく当該大当たり状態が終了した場合、当該大当たり状態が終了した後にその遊技価値の付与が実行されるパチンコ遊技機についての稼動データをパチンコ遊技機別に集計管理する遊技機管理装置において、前記大当たり状態における前記使用数又は前記消化時間を、大当たり消化データとして特定する消化データ特定手段と、前記大当たり状態の発生に基づく前記付与数又は前記大当たり状態の発生に基づく前記差価値数を、大当たり価値数として特定する価値数特定手段と、先の前記大当たり状態が終了した後、当該先の大当たり状態における遊技価値の付与が終了する前に次の前記大当たり状態が発生する連続発生状態となっていることを特定する連続状態特定手段と、前記大当たり状態が終了した場合に、当該大当たり状態における前記大当たり価値数が正常範囲に含まれているか否か、又は、前記大当たり価値数とその大当たり状態における前記大当たり消化データとの関係が正常範囲に含まれているか否かを判定する異常判定処理を実行する異常判定手段と、を備え、前記価値数特定手段は、前記連続発生状態となっている場合、当該連続発生状態において発生した複数の大当たり状態における前記付与数の合計を特定するとともに、その連続発生状態が終了した場合に、合計した前記付与数をその複数の大当たり状態の種類に応じて振り分けた後に各大当たり状態における前記大当たり価値数を特定する振分処理を実行するものである(請求項1)。
【0007】
請求項1に記載の遊技機管理装置において、各大当たり状態の前記大当たり価値数の標準値として、大当たり状態ごとに設定された標準価値数を記憶する標準価値数記憶手段を備え、前記価値数特定手段は、前記連続発生状態が終了した場合に、当該連続発生状態において発生した複数の前記大当たり状態のうち、最後に発生した前記大当たり状態とは異なる前記大当たり状態に対する前記大当たり価値数を前記標準価値数に設定する一方、最後に発生した前記大当たり状態に対する前記大当たり価値数を、その連続発生状態における前記付与数の合計数から設定した前記標準価値数に基づく前記付与数の合計数を差し引いた値に基づいて設定するようにしてもよい(請求項2)。
【0008】
請求項1又は2に記載の遊技機管理装置において、前記異常判定手段は、前記連続発生状態が終了し前記振分処理が実行された場合、当該振分処分の対象となった複数の前記大当たり状態のうち、最後に発生した前記大当たり状態について前記異常判定処理を実行するとともに、当該異常判定処理の結果が正常であると判定した場合、その連続発生状態における前記最後に発生した前記大当たり状態とは異なる前記大当たり状態について、前記振分処理が実行された後に前記異常判定処理を実行しない、又は前記振分処理が実行された後に前記異常判定処理を実行することなく正常な大当たり状態であったと判定するようにしてもよい(請求項3)。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、複数の大当たり状態における各付与数を特定し難い連続発生状態(連荘状態)が発生した場合に、複数の大当たり状態の付与数の合計(累計セーフ)を算出し、この累計セーフを各大当たり状態の種類に応じて振り分けることで、各大当たり状態における大当たり価値数を特定し、異常判定処理を良好に行うことができる。これにより、不正行為による遊技価値の不正な付与を良好に監視することができる。例えば、大当たり価値数が第2大当たり状態に対応しているにも関わらず、大当たり消化データが第1大当たり状態に対応している場合は、異常であると判定されるので、遊技者が不正行為によって第1大当たり状態を第2大当たり状態と見せかけて、不正に多量の遊技価値を得ることを監視することができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、最後に発生した大当たり状態以外の大当たり状態に対しては、大当たり価値数を標準価値数に設定し、最後に発生した大当たり状態に対しては、累計セーフから各標準価値数に基づく付与数の合計数を差し引いた残りの付与数に基づいて大当たり価値数を設定したので、連荘状態における付与数の誤差(標準値との差)を最後に発生した大当たり状態の大当たり価値数に集約させることができ、異常判定を一層良好に行うことができる。これにより、少ない量の不正な付与が続けて行われた場合でも、異常を検知して不正行為を発見することができる。
【0011】
請求項3の発明によれば、連荘状態において、最後に発生した大当たり状態の異常判定処理の結果が正常である場合、他の大当たり状態の異常判定処理を実行しなくてもよく、付与数の誤差が表われ易い最後の大当たり状態のみの異常判定を行えばよいので、判定処理を容易且つ一層良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態におけるシステムの全体構成を概略的に示す図
【図2】パチンコ遊技機の正面図
【図3】パチンコ遊技機の電気的構成を示すブロック図
【図4】遊技状態を示す状態遷移図
【図5】大当たり種別の出現割合と差玉の期待数との対応関係を示す図
【図6】(a)TY及びTOの基準値を示す図、(b)正常と判定するためのTYとTOの関係を示す図
【図7】(a)連荘中の大当たり履歴の一例を示す図、(b)正常に連荘を終了した時の大当たり履歴の一例を示す図、(c)連荘終了時に異常が有る場合の大当たり履歴の一例を示す図
【図8】遊技機管理装置による大当たり対応処理を示すフローチャート
【図9】遊技機管理装置による通常処理を示すフローチャート
【図10】遊技機管理装置による通常時異常判定処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明による遊技機管理装置を適用した遊技場用システム1の全体構成を示している。遊技場用システム1は、複数のパチンコ遊技機2、各パチンコ遊技機2に対応して設けられている貸出装置3及び呼出ランプ4、図示しない管理室などに設けられている遊技機管理装置5(消化データ特定手段、価値数特定手段、連続状態特定手段、異常判定手段、標準価値数記憶手段に相当)などから構成されている。
【0014】
貸出装置3は、硬貨投入口3aに硬貨が投入された状態、または、固有のIDが記録されたプリペイドカードがカード挿入口3bに挿入されて払出釦3cが押下げられた状態で、特定された有価価値に基づいて遊技価値としてのパチンコ玉(貸玉)を払出口3dからパチンコ遊技機2に払い出す(付与する)。また、貸出装置3は、パチンコ玉の払い出しに伴って、売上信号を呼出ランプ4に送信する。貸出装置3の情報表示部3eでは、貸出情報や対応するパチンコ遊技機2に関する各種の遊技情報なども表示可能である。呼出ランプ4は、パチンコ遊技機2及び貸出装置3と遊技機管理装置5との間のデータを中継すると共に、各種の情報を表示装置6に表示する。
【0015】
遊技機管理装置5は、モニタ7及びキーボード8を有していると共に、LAN9を介して呼出ランプ4に接続されている。遊技機管理装置5は、図示しないマイクロコンピュータを含む制御装置を備えており、各パチンコ遊技機2から出力される各種の遊技信号に基づいて、各パチンコ遊技機2についての大当たり確率や売上げなどの稼動データを遊技機別に集計及び記憶して管理するものである。
【0016】
図2は、パチンコ遊技機2の正面図である。パチンコ遊技機2は、遊技者によるハンドル装置10の操作に応じて発射装置11からパチンコ玉を遊技領域である盤面12に発射する。盤面12に発射されたパチンコ玉が複数設けられている入賞口に入賞すると、入賞した入賞口に対応する数のパチンコ玉が払い出される(遊技者へ付与される)。盤面12の中央には、液晶表示装置13が設けられており、発射されたパチンコ玉が液晶表示装置13の下方に設けられている始動口14に入賞すると、後述する抽選が行われ、液晶表示装置13に表示されている図柄(特図)が変動する。
【0017】
液晶表示装置13において所定時間の変動後に停止した図柄が大当たり図柄の場合には、遊技者に有利な特別遊技状態に相当する大当たり状態が発生し、大入賞口15が所定の終了条件が成立するまで開閉する。なお、本実施形態では、液晶表示装置13には1〜9の数字が3列に表示され、基本的には、その3列に同じ数字が停止表示されたときに大当たり状態が発生する。なお、大入賞口15の左方には常に入賞可能な入賞口である一般入賞口16が配置されている。
【0018】
パチンコ遊技機2の場合、上記した抽選の起因となるいわゆる保留玉の上限は4個であり、図柄変動中に再度始動口14にパチンコ玉が入賞した場合は上限まで保留し、図柄変動終了後に順次保留した図柄変動を実行する。このとき、液晶表示装置13下部の特図保留表示部17に保留玉数を表示する。また、盤面12の図示右方には、例えば7セグメントLEDなどで構成され、始動口14への入賞に応じて実行される抽選の結果を示す特図表示部18が設けられている。
【0019】
盤面12の図示左方には、ゲート19、例えば、LEDで構成された普図表示部20及び普図保留表示部20aが設けられている。盤面12に発射されたパチンコ玉がゲート19を通過すると、始動口14に対応して設けられている電チュー21を開放するか否かの普図抽選が実行され、その抽選結果が普図表示部20に表示される。この電チュー21は、開放状態では始動口14へのパチンコ玉の流入を促す一方、閉鎖状態では始動口14へのパチンコ玉の流入を阻害する。
【0020】
また、パチンコ遊技機2は、上記した普図抽選に対する保留玉の上限は2個であり、普図抽選中に再度ゲート19をパチンコ玉が通過した場合は上限まで保留し、普図抽選の終了後に順次保留した普図抽選を実行する。このとき、普図保留表示部20aに普図保留玉数を表示する。また、パチンコ遊技機2には、各種の演出を実行するための装飾ランプ22及びスピーカ23、及び、演出ボタン24が設けられている。
【0021】
図3は、パチンコ遊技機2の電気的構成を示すブロック図である。パチンコ遊技機2は主制御回路30(大当たり発生手段に相当)を備えている。この主制御回路30は、CPU、ROM、RAM、信号を送受信するためのインターフェースからなるI/Oなどを備えたマイクロコンピュータにより構成され、電源回路31から電源が供給されている。主制御回路30は、ゲート通過検出器32、始動入賞検出器33、大入賞検出器34などから入力される信号に基づいて、パチンコ遊技機2全体を制御している。遊技者がハンドル装置10を操作すると、その操作情報が入力された発射制御回路35によって発射装置11が駆動され、盤面12にパチンコ玉が発射される。
【0022】
盤面12に発射されたパチンコ玉は、盤面12を流下した後、例えばゲート19を通過する。このとき、ゲート通過検出器32は、ゲート19を通過するパチンコ玉を検出し、パチンコ玉がゲート19を通過する毎に信号を主制御回路30に出力する。主制御回路30は、ゲート通過検出器32から信号を受信すると、乱数発生部36で発生した乱数の1つを乱数抽出部37で抽出することにより普図抽選を実行する。この普図抽選において普図当選になると、電チューソレノイド38が駆動され、電チュー21が開放する。また、パチンコ玉のゲート19の通過に応じて、普図表示部20や普図保留表示部20aのLEDを点灯あるいは消灯させる。
【0023】
普図抽選では、パチンコ遊技機2の遊技状態によって当選確率などが変化する。具体的には、パチンコ遊技機2には後述する通常状態や時短状態などの複数の遊技状態が設けられている。通常状態においては、普図当選となる確率である普図当選確率は1/30に設定されている。また、時短状態においては、普図当選確率は1/1に設定されている。また、特図当選となる確率である特図当選確率は、通常状態及び時短状態においては、1/150に設定され、確変状態においては、1/5に設定されている。
【0024】
普図抽選に要する時間即ち普図表示部20において変動表示が行われる普図変動時間は、通常状態では30秒、時短状態では1秒に設定されている。そして、普図抽選において普図当選となった場合には、電チュー21は、通常状態では0.2秒、時短状態では1.5秒×3回の間開放される。つまり、時短状態では、電チュー21の開放時間が長く、その回数も増えるため、始動口14への入賞が通常状態よりも促されることになる。なお、確変状態においては、普図変動時間、普図抽選に当選する確率、及び、電チュー21の開放態様が時短状態と同様になっている。
【0025】
また、盤面12に発射されたパチンコ玉は、盤面12を流下した後、例えば始動口14に入賞する。始動入賞検出器33は、始動口14に入賞したパチンコ玉を検出し、パチンコ玉が入賞する毎に信号を主制御回路30に出力する。主制御回路30は、始動入賞検出器33から信号を受信すると、乱数発生部36で発生した乱数の1つを乱数抽出部37で抽出することにより特図抽選を実行する。なお、本実施形態では特図抽選と上記した普図抽選とで同じ乱数発生部36及び乱数抽出部37を共用しているが、それぞれ別の乱数発生部36及び乱数抽出部37を設ける構成としてもよい。
【0026】
主制御回路30は、特図抽選を実行した後、液晶表示装置13に表示されている図柄の変動を開始する。この特図抽選には特別遊技状態である5R大当たり状態(第1大当たり状態に相当)及び15R大当たり状態(第2大当たり状態に相当)、またはハズレの何れかの抽選結果が設定されている。主制御回路30により5R大当たり状態と15R大当たり状態とのいずれかが発生すると、大入賞ソレノイド39が駆動され、大入賞口15の開放状態と閉鎖状態との切替制御が実行される。すなわち、主制御回路30は、大入賞ソレノイド39を駆動することにより、大入賞口15を、盤面12を流下するパチンコ玉が入賞可能な開放状態と開放状態よりもパチンコ玉が入賞し難い閉鎖状態とに切り替える切替制御を実行している。
【0027】
大入賞口15は、5R大当たり状態では5ラウンド(5R)、15R大当たり状態では15ラウンド(15R)の間、開放状態と閉鎖状態とが切り替えられる(1ラウンドにつき1回、開放状態と閉鎖状態が切り替えられる)。15R大当たり状態では、5R大当たり状態よりもラウンド数が多く、大当たり状態が開始してから終了するまでの大入賞口15が開放されている期間の合計が5R大当たり状態よりも長く、大当たり状態が開始してから終了するまでに大入賞口15にパチンコ玉が多く入賞し易い。主制御回路30は、特図抽選の結果に応じて、特図表示部18のLEDを点灯あるいは消灯させることにより、特図抽選の結果を表示する。
【0028】
また、主制御回路30は、上記したようにパチンコ玉がいずれかの入賞口に入賞すると、副制御回路40や表示制御回路41を制御することにより液晶表示装置13に各種の演出を表示すると共に、払出制御回路42に対し払出装置43(付与手段に相当)からのパチンコ玉の払出(付与)を指示する。これにより、遊技者にパチンコ玉が払い出される。
払出装置43は、予め定められた払出条件が成立した場合にパチンコ玉を払い出すものであり、具体的には、パチンコ玉が始動口14に入賞した場合には3個のパチンコ玉を払い出し、大入賞口15に入賞した場合には10個のパチンコ玉を払い出し、一般入賞口16に入賞した場合には10個のパチンコ玉を払い出す。
【0029】
なお、パチンコ遊技機2の払出装置43から払い出されたパチンコ玉は上皿45(図2参照)に流れるが、上皿45のパチンコ玉が一杯になると、主制御回路30は、上皿45が一杯になって玉詰まりが発生したことを検知し、払出処理を中断する。従業員が適切な処置をすることなどにより上皿45の玉詰まりが解消されると、主制御回路30は、払出処理を再開する。すなわち、払出条件の成立に基づいて行われる大当たり状態におけるパチンコ玉の払出が、大当たり状態の終了後に実行されることがある。
【0030】
ここで、パチンコ遊技機2に設けられている遊技状態について説明する。パチンコ遊技機2には、図4に示すように、通常状態、大当たり状態、確変状態、時短状態の4つの遊技状態が設けられている。これらの遊技状態は、予め定められた条件に従って遷移する。具体的には、パチンコ遊技機2は、例えば、通常状態において大当たり当選した場合には、大当たり状態に遷移する。この大当たり状態には、5R大当たり状態と15R大当たり状態とがある。
【0031】
15R大当たり状態は、遊技者により使用されるパチンコ玉の使用数(アウト玉数)が5R大当たり状態よりも多くなるものであり、また、大当たり状態の開始から終了までの時間に対応した消化時間が5R大当たり状態よりも長くなるものである(図6(a)参照)。また、15R大当たり状態は、払出装置43から払い出されたパチンコ玉の払出数(セーフ玉数)から前記使用数を差し引いた差玉数(差価値数に相当)が5R大当たり状態よりも多くなるものである。
【0032】
通常状態において大当たり当選した場合には、大当たり状態(5R大当たり状態または15R大当たり状態)になる。5R大当たり状態では、5Rが消化されると、確変状態に遷移する一方、再び大当たり当選となった場合には大当たり状態に遷移する。また、15R大当たり状態では、15Rが消化されると、確変状態に遷移する一方、再び大当たり当選となった場合には大当たり状態に遷移する。確変状態において、5回の図柄変動が終了すると、時短状態に遷移する。時短状態で、45回の図柄変動が終了すると、通常状態に遷移する。なお、確変状態において、大当たり当選となる1回の図柄変動の時間は、平均8秒である。
【0033】
図5は、パチンコ遊技機2に設定されている大当たりの種類を示している。パチンコ遊技機2には、5R大当たり(第1大当たり)と15R大当たり(第2大当たり)の2種類が設定されている。5R大当たり状態においては、ラウンド数が5Rで、出現割合は90%である。また、大当たり状態中のセーフ玉数とアウト玉数との差である差玉数(TY)の期待数が400個である。これに対して、15R大当たり状態においては、ラウンド数が15Rで、出現割合は10%であり、差玉数(TY)の期待数が1200個である。すなわち、大当たりに当選すると、90%の割合で5R大当たり状態が発生し、残り10%の割合で15R大当たり状態が発生する。
【0034】
図6(a)は、各大当たり状態におけるTY及びTOの値の基準値を示すものである。5R大当たり状態では、TYの基準値(標準価値数に相当)が400、TOの基準値が120、セーフ玉数の基準値(標準価値数に相当)が520に設定されている。また、15R大当たり状態では、TYの基準値が1400、TOの基準値が360、セーフ玉数の基準値が1760に設定されている。また、平均的な消化時間である平均消化時間は、5R大当たり状態では80秒、15R大当たり状態では232秒と設定されている。なお、どちらの大当たり状態においても、オープニング(OP)及びエンディング(EN)の演出に合わせて8秒間使用される。
【0035】
本実施形態では、払出装置43による大当たり状態におけるパチンコ玉の払出速度は、1分間に300個と設定されている。したがって、上記平均消化時間から計算すると、5R大当たり状態では、大当たり状態中に、300÷60×80=400個の払出が行われ、大当たり状態の終了後に残りの120個の払出が24秒間続く。同様に、15R大当たり状態では、大当たり状態中に、300÷60×232=1160個の払出が行われ、大当たり状態の終了後に残りの600個の払出が120秒間続く。
【0036】
図6(b)は、大当たり状態において、パチンコ玉の払出(付与)が正常であると判定するためのTY及びTOの値の関係を示すものである。TYの値が370〜430の範囲内にある(5R大当たり状態に対応している)場合は、TOの値が90〜150の範囲内にあれば正常とみなす。TYの値が1350〜1450の範囲内にある(15R大当たり状態に対応している)場合は、TOの値が300〜400の範囲内にあれば正常とみなす。
【0037】
次に、大当たり履歴データの各項目について図7(a)〜図7(c)を参照して説明する。
「台No.」は、番号で区別された複数のパチンコ遊技機2の中の1台を示しており、ここでは、例として123番台のパチンコ遊技機2を示す。「大当たりNo.」は、各パチンコ遊技機2における大当たり番号を示している。ここでは、開店から最初に発生した大当たりを「1」とし、次に発生した大当たりを順に、「2」、「3」、・・・と示す。「発生時刻」は、大当たり状態が発生した時刻を示す。「スタート回数」は、前回の大当たり状態の終了後(1回目の大当たり状態に関しては開店)から今回の大当たり状態の開始までのスタート回数を示す。
【0038】
「BO」は、前回の大当たり状態の終了後(1回目の大当たり状態に関しては開店)から今回の大当たり状態の開始まで(通常時)のパチンコ玉の使用数であるアウト玉数を示す。「Bサ」は、前回の大当たり状態の終了後(1回目の大当たり状態に関しては開店)から今回の大当たり状態の開始までのアウト玉数とパチンコ玉の付与数であるセーフ玉数との差であるの通常差玉数を示す。「TY」は、大当たり状態中のセーフ玉数とアウト玉数との差である差玉数(差価値数に相当)を示す。「TO」は、大当たり状態中のアウト玉数を示す。
また、「異常」の項目には、後述する処理によりTY異常と判定された場合に、図7(c)に示すように、「*」を表示する。遊技機管理装置5は、上記した大当たり履歴データを各パチンコ遊技機2について区別して集計管理する。
【0039】
主制御回路30は、遊技者による遊技の進行に応じて、盤面12に発射されたパチンコ玉数であるアウト玉数を特定可能なアウト信号、遊技者に付与したパチンコ玉数であるセーフ玉数を特定可能なセーフ信号、始動口14への入賞に伴って発生する図柄の変動表示の開始(スタート)を特定可能なスタート信号、大当たり状態を特定可能な大当たり信号、確変状態を特定可能な確変信号、ラウンド中であることを特定可能なラウンド信号などの遊技信号を信号出力部44に出力する。呼出ランプ4は、信号出力部44から出力される遊技信号や遊技機管理装置5等から取得するデータに基づいて各種の遊技データの表示を行っている。
【0040】
遊技機管理装置5は、図8に示す大当たり対応処理、図9に示す通常処理、図10に示す通常時異常判定処理を実行している。
遊技機管理装置5は、図8に示す大当たり対応処理において、大当たり信号がONであることの検知の開始(A1)、及び大当たり信号がONであることの検知の終了(A8)のタイミングを判定しており、これらのタイミング以外のときは(A1:NO、A8:NO)、リターンする。遊技者により遊技が行われて特図抽選において大当たり(5R大当たりまたは15R大当たり)当選になると、遊技機管理装置5は、信号出力部44からの大当たり信号がONであることの検知を開始し(A1:YES)、図7(a)に示す大当たり履歴データに新規レコードを追加し(A2)、前回の大当たり状態の払出が継続中か、すなわち、先の大当たり状態が終了した後、当該先の大当たり状態におけるパチンコ玉の払出(先の大当たり状態中の払出条件の成立に基づく玉の払出)が終了する前に次の大当たり状態が発生する連続発生状態(連荘状態)となっているかを判定する(A3)。
【0041】
遊技機管理装置5は、前回の大当たり状態の払出が終了している場合は(A3:NO)、大当たり履歴データに「発生時間」、「スタート回数」、「BO」、「Bサ」を記録し(A4)、TO(大当たり消化データに相当)及びセーフ(大当たり価値数に相当)の算出処理を開始する(A5)。また、前回の大当たり状態の払出が継続中である場合は(A3:YES)、「発生時間」、「BO」、「Bサ」に対応した「標準Bサ」を大当たり履歴データに記録し(A6)、TO及び累計セーフ(前回までの大当たり状態のセーフ玉数の合計に今回の大当たり状態のセーフ玉数をたし合わせた玉数)の算出(特定)を開始する(A7)。なお、アウト信号やセーフ信号は10個単位で出力されるため、大当たり履歴のうち玉数を示すものについては、例えば「110」と表示されている場合、110〜119個の間の値を示している。
【0042】
ここで、「標準Bサ」について説明する。大当たり状態が連続しているとき(連荘中)には、大当たり状態の消化時間に比べて、大当たり状態による払出にかかる時間の方が長くなり、払出が遅れるようになるので、上記した「Bサ」の値を正確に特定することが難しくなる。そこで、大当たり状態が連続している場合の標準的なBサとして「標準Bサ」を設定した。具体的には、ベースを20%として標準Bサを算出する。ここで、ベースとは、通常時の出玉率、すなわち、アウト玉数とセーフ玉数との割合であり、セーフ玉数÷アウト玉数×100により求められる。例えば、BOが100個のときは、Bセーフ(通常時のセーフ玉数)が20個となるので、標準Bサは80個となる。なお、標準Bサの算出方法は適宜変更してよく、例えばベースが30%であるとして計算してもよい。
【0043】
続いて、遊技機管理装置5は、大当たり信号がONであることの検知を終了したときは(A8:YES)、遅延タイマを起動させ(A9)、大当たり状態の開始から終了までのアウト玉数であるTOの算出処理を終了し(A10)、大当たり履歴データに「TO」を記録する(A11)。
このように、本実施形態では、遊技機管理装置5は、前回の大当たり状態の払出が継続中(連荘状態)の場合は、標準Bサを記録するとともに、各大当たり状態におけるTOの値を記録する。
【0044】
上述のようにして大当たり対応処理を実行した遊技機管理装置5は、大当たり状態が終了すると、通常処理を実行する。この通常処理は、大当たり状態でない通常状態(大当たり状態が終了してから次の大当たり状態が発生するまでの間)において行われる処理である。
遊技機管理装置5は、図9に示す通常処理において、遅延タイマ時間中かを判定している(B1)。遊技機管理装置5は、遅延タイマ時間中でない場合は(B1:NO)、後述する通常時異常判定処理を行い(B12)、遅延タイマ時間中である場合は(B1:YES)、大当たり状態に対応した余分なセーフを算出し(B2)、余分なセーフを前回の大当たり状態におけるセーフに加算する(B3)。本実施形態では、時短状態では500個以上、通常状態では100個以上を余分なセーフであるとする。
【0045】
遅延タイマ時間が終了すると(B4:YES)、累計セーフまたはセーフの算出(特定)を終了し(B5)、対応する大当たり状態が複数あるかを判定する(B6)。対応する大当たり状態が複数ではない場合、すなわち、大当たり状態が連続していない場合は(B6:NO)、大当たり履歴データに「TY」を記録し(B7)、ステップA11において記録したTOとステップB7において記録したTYとの関係が正常(正常範囲に含まれている)かを判定する、すなわち、異常判定処理を実行する(B8)。ここで、TY(差玉数)は、大当たり状態の開始から遅延タイマ時間の終了までのセーフ玉数から、大当たり状態の開始から終了までのアウト玉数を差し引いた玉数である。
【0046】
遊技機管理装置5は、TOの値とTYの値との関係が正常でない場合(正常範囲に含まれていない場合)は(B8:NO)、異常であると判定してTY異常を報知し(B9)、TOの値とTYの値との関係が正常である場合は(B8:YES)、当該大当たり状態が正常であると判定して、リターンする。
具体的には、図6(a),(b)に示すように、遊技機管理装置5は、大当たり状態におけるTY(差玉数)の値が5R大当たり状態の範囲内(370〜430個)に該当しているとき、TO(アウト玉数)の値も5R大当たり状態の範囲内(90〜150個)にあれば正常であり、TOの値が5R大当たり状態の範囲内になければ異常であると判定する。また、遊技機管理装置5は、TYの値が15R大当たり状態の範囲(1350〜1450個)内に該当しているとき、TOの値も15R大当たり状態の範囲(300〜400個)内にあれば正常であり、TOの値が15R大当たり状態の範囲内になければ異常である判定する。また、TYの値が5R大当たり状態にも15R大当たり状態にも該当しないとき(正常範囲に含まれていない場合)も、異常であると判定する。
【0047】
対応する大当たり状態が複数ある場合、すなわち、連荘状態となっている場合(複数の大当たり状態が連続して発生している場合)は(B6:YES)、最後に発生した大当たり状態以外の大当たり状態について、それぞれのTOの値に応じて、すなわち、各大当たり状態の種類に応じて、後述する振分処理を行い、TYの値を設定(特定)し(B10)、大当たり履歴データに「TY」を表示して記憶する。
【0048】
ここで、振分処理について説明する。遊技機管理装置5は、連荘状態が発生した場合には、連荘状態の終了後に、ステップB5において算出された連荘中に発生した複数の大当たり状態のセーフ玉数を合計した累計セーフを、複数の大当たり状態の種類に応じて振り分ける。具体的には、最後に発生した大当たり状態とは異なる大当たり状態に対しては、セーフ玉数を上記した基準値に設定し、この基準値に基づいてTYの値を設定する。そして、最後に発生した大当たり状態に対しては、累計セーフから設定したセーフ玉数の合計数を差し引いた値に基づいて、TYの値を設定する。
【0049】
例えば、3回の大当たり状態が続いて累計セーフが3000個であった場合、まず、各TOの値を図6(a),(b)と対応させ、それぞれの大当たり状態の種類を決める。各大当たり状態の種類が、5R大当たり、15R大当たり、5R大当たりであったと判定されたとすると、各大当たり状態のセーフ玉数を、520個、1760個、720個のように振り分ける。すなわち、1回目に発生した5R大当たりと、2回目に発生した15R大当たりは、図6(a)に示すセーフ玉数の基準値に基づいてセーフ玉数を特定し、最後である3回目に発生した5R大当たりのセーフ玉数は、累計セーフから1,2回目のセーフ玉数の合計数を差し引いた残りのセーフ玉数を割り当てる。したがって、最後に発生した大当たり状態のセーフ玉数に、それ以外の大当たり状態のセーフ玉数の誤差分が集約されることになる。
【0050】
続いて、遊技機管理装置5は、最後の大当たり状態におけるTYとTOとの関係が正常であるか判定する(B11)。すなわち、遊技機管理装置5は、上記したステップB8と同様にして、振分処理後の最後の大当たり状態のTYの値と、最後の大当たり状態の開始から終了までのTOの値との関係が、図6(a),(b)に示す正常範囲に含まれているか否かを判定することで、異常判定処理を実行する。TYとTOとの関係が正常でない場合は(B11:NO)、異常であるとしてTY異常を報知する(B9)。TYとTOの関係が正常でれば(B11:YES)、最後に発生した大当たり状態以外の大当たり状態については、異常判定を行うことなく正常な大当たり状態であったと判定してリターンする。
【0051】
以下に、大当たり履歴データを参照して、連荘状態であった場合の異常判定処理の具体例を示す。
図7(b)は、正常に連荘が終了した場合の大当たり履歴の例を示す。「TY」及び「TO」の値に基づいて、大当たりNo.1〜No.5のセーフ玉数を計算すると、順に520個、1760個、520個、520個、500個となる。すなわち、累計セーフが3820個であり、No.1〜No.4は、順に5R大当たり、15R大当たり、5R大当たり、5R大当たりに該当し、それぞれに対応するセーフの基準値が振り分けられる。そして、最後の大当たりであるNo.5の大当たりに残りのセーフ玉数である500個が振り分けられる。このNo.5の大当たり状態におけるTYとTOは、共に図6(b)に示す正常な範囲内にあるので、正常と判定される。
【0052】
これに対して、図7(c)は、連荘終了時に異常があった場合の大当たり履歴の例を示す。「TY」及び「TO」の値に基づいて、大当たりNo.1〜No.5のセーフ玉数を計算すると、順に520個、1760個、520個、520個、2130個となる。すなわち、累計セーフが5450個であり、No.1〜No.4は、順に5R大当たり、15R大当たり、5R大当たり、5R大当たりに該当し、それぞれに対応するセーフの基準値が振り分けられる。そして、最後の大当たりであるNo.5の大当たりに残りのセーフである2130個が振り分けられる。このNo.5の大当たり状態におけるTYとTOは、TOの値が130で5R大当たりに対応しているのに対して、TYの値が2000で5R大当たりと15R大当たりのどちらにも対応していない大きな値となっている。よって、大当たりNo.1〜No.5の間において、不正行為による不正なパチンコ玉の払出が行われたものと判定して、「異常」の欄に「*」を表示して異常報知を実行する。
【0053】
遊技機管理装置5は、異常報知として、上記のようにモニタ7に異常である旨を表示してどのパチンコ遊技機2においてTYが異常な値となったかを知らせると共に、従業員が携帯するインカムなどを通じて音声報知をする。なお、異常報知が実行されているときは、キーボード8の操作により異常表示の解除ができると共に、従業員のリモコン操作によって音声による異常報知を終了することができるようになっている。これら異常報知を実行する方法及び異常報知の解除方法は、適宜変更してもよい。
【0054】
このように、遊技機管理装置5は、連荘状態であった場合において、累計セーフと各大当たり状態におけるTOの値を算出して振分処理を行った後、最後の大当たり状態におけるTYとTOの値に基づいて異常判定を行うことにより、不正行為を監視する。
なお、不正行為には以下のようなものがある。電磁波を発生させることで始動口14や一般入賞口16にパチンコ玉が入賞していないにも関わらず始動口14や一般入賞口16にパチンコ玉が入賞したものとパチンコ遊技機2に誤検知させる不正行為や、磁石を用いて入賞するようパチンコ玉を始動口14や一般入賞口16に誘導する不正行為がある。また、通常のパチンコ玉よりも大きなサイズのパチンコ玉を磁石などで始動口14や一般入賞口16に入れてセンサ部(図示せず)を詰まらせ、その状態で、センサ部に電磁波を発射すると、センサが誤作動を起こしてパチンコ玉が払い出される。このようにして多量のパチンコ玉を払い出す不正行為がある。
【0055】
上述の通常処理において、遊技機管理装置5は、遅延タイマ時間後に(B1:NO)、図10に示す通常時異常判定処理を行っている(B12)。この通常時異常判定処理は、大当たり状態でない通常状態(大当たり状態が終了してから次の大当たり状態が発生するまでの間)において、所定数のアウトが発生するごとに行われる処理である。
遊技機管理装置5は、図10に示す通常時異常判定処理において、設定アウト数(例えば500個)が発生したかを判定している(C1)。遊技機管理装置5は、設定アウト数が発生し(C1:YES)、ベースの値(所定のパチンコ玉の使用数に対する払出数の割合)が正常かを判定し(C2)、正常でないと判定すると(C2:NO)、大当たり履歴データに新規レコードを追加する(C3)。なお、設定アウト数が発生していないとき(C1:NO)、あるいは、ベースの値が正常である場合は(C2:YES)、リターンする。
【0056】
このようにして、遊技機管理装置5は、設定アウト数ごとにベース異常を監視している。本実施形態では、ベースの値が正常であるためのセーフは、確変状態及び時短状態においては600個以下であり、通常状態においては200個以下であるとする。すなわち、正常なベースの値の範囲は、確変状態及び時短状態においては120%以下、通常状態においては40%以下となっている。
【0057】
続いて、遊技機管理装置5は、大当たり状態に対応した余分なセーフを算出し(C4)、余分なセーフを記録し(C5)、余分なセーフの合計を前回の大当たり状態におけるTYに加算する(C6)。このとき、前回の大当たり状態として連荘状態が発生していた場合には、最後に発生した大当たり状態のTYに余分なセーフの合計を加える。本実施形態では、時短状態では500個以上、通常状態では100個以上を余分なセーフであるとする。なお、複数回のベース異常が発生している場合は、それぞれの余分なセーフを前回の大当たり状態におけるTYに加算する。
【0058】
ステップC6における加算結果のTYの値が5R大当たり状態に対応している場合(C7:YES)、ステップA11において記録したTO(前回の大当たり状態におけるTO)が5R大当たり状態に対応していれば(C8:YES)、正常であると判定してリターンし、記録したTOが5R大当たり状態に対応していないときは(C8:NO)、異常であると判定して、TY異常を報知し(C9)、上記と同様の異常報知を実行する。
【0059】
TYの値が5R大当たり状態に対応していない場合(C7:NO)、TYの値が15R大当たり状態に対応し(C10:YES)、且つ記録したTOの値が15R大当たり状態に対応していないとき(C11:NO)、あるいは、TYの値が15R大当たり状態にも対応していないときは(C10:NO)、異常であると判定して、TY異常を報知し(C12)、上記と同様の異常報知を行う。記録したTOの値が15R大当たり状態に対応していれば(C11:YES)、正常であると判定してリターンする。
【0060】
以上の通常時異常判定処理により、遊技機管理装置5は、大当たり状態でない通常状態において、設定アウト数ごとにベースの異常判定を行い、ベースの値が異常である場合、ステップC4〜C6の処理により、大当たり状態が終了した後に発生した余分なセーフを大当たり状態に基づくセーフであったとして、前回の大当たり状態(連荘状態が発生していた場合には最後に発生した大当たり状態)のセーフに加算する。そして、余分なセーフを加算したTYを算出し、大当たり状態(連荘状態)においてTYの異常があったか否かを大当たり状態(連荘状態)の終了後に判定している。このようにして、遊技機管理装置5は、パチンコ玉の不正な払出を監視している。
【0061】
以上において遊技機管理装置5は、大当たり状態でない通常状態における所定の使用数に対する付与数の割合の値を所定期間ごとに監視し、その監視した値が予め設定された所定範囲から外れている場合に通常状態異常と判定する通常状態判定手段としての機能を有するとともに、通常状態異常と判定した監視期間における付与数のうち所定付与数(余分なセーフ)を、終了した大当たり状態における付与数に加算する遊技価値数加算手段としての機能を有する。
なお、本実施形態では、通常時異常判定処理は、所定数のアウトが発生するごとに行われるものとしたが、所定数のセーフが発生するごとに行ってもよい。また、所定の時間が経過するごとに行ってもよい。
【0062】
このような本実施形態の遊技機管理装置5によれば、次のような効果を奏することができる。
遊技機管理装置5は、複数の大当たり状態における各セーフ玉数(付与数)を特定し難い連荘状態(連続発生状態)が発生した場合に、複数の大当たり状態の累計セーフ(付与数の合計)を算出し、この累計セーフを各大当たり状態の種類に応じて振り分けることで、各大当たり状態におけるTY(大当たり価値数)の値を特定し、TYの異常判定を良好に行うことができる。これにより、不正行為によるパチンコ玉(遊技価値)の不正な払出(付与)を良好に監視することができる。
【0063】
例えば、TYの値が15R大当たり状態(第2大当たり状態)に対応しているにも関わらず、TO(大当たり消化データ)の値が5R大当たり状態(第1大当たり状態)に対応している場合は、異常と判定して異常報知を実行する。これにより、5R大当たり状態において遊技者が不正行為によって、5R大当たり状態をパチンコ玉の払出数が多い15R大当たり状態と見せかけて、不正に多量のパチンコ玉の払出を行おうとする不正行為を監視することができる。
【0064】
また、遊技機管理装置5は、連荘状態が発生した場合に、複数の大当たり状態のうち、最後に発生した大当たり状態以外の大当たり状態に対しては、セーフ玉数を基準値に設定するとともに、最後に発生した大当たり状態に対しては、累計セーフから各セーフ玉数の基準値の合計数を差し引いた残りのセーフ玉数を割り当ててTYの値を設定し、連荘状態におけるセーフ玉数の誤差(標準値との差)が最後に発生した大当たり状態に集約するようにしたので、不正行為によるパチンコ玉の払出に基づく誤差の影響が表れ易くなり、異常判定を一層良好に行うことができる。これにより、少ない量の不正な払出が続けて行われた場合でも、異常を検知して不正行為を発見することができる。
【0065】
さらに、遊技機管理装置5は、連荘状態において、最後に発生した大当たり状態の異常判定処理の結果が正常であれば、他の大当たり状態の異常判定処理を実行しなくてもよく、誤差の影響が表れ易い最後の大当たり状態のみの異常判定を行えばよいので、各大当たり状態のTYを監視する場合よりも、判定処理を容易且つ一層良好に行うことができる。
【0066】
また、遊技機管理装置5は、パチンコ玉の払出の異常を検知した場合は、モニタ7にどのパチンコ遊技機2において異常が検知されたかを表示すると共に、従業員に音声報知するようにしたので、不正行為に対して従業員が適切且つ速やかに対処することができる。
また、大当たり状態でない通常状態において、ベースの異常を監視すると共に、大当たり状態におけるTYの異常判定を行うようにしたので、通常状態においても不正行為によるパチンコ玉の払出を監視することができる。例えば、大当たり状態において遊技者が玉詰まりを発生させて、大当たり状態が終了してから不正に多量のパチンコ玉を払い出させようとしても、異常を検知して不正行為を発見することができる。
【0067】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、次のように変形または拡張できる。
大当たり状態のラウンド数を任意に変更してもよい。例えば、4R大当たり状態と8R大当たり状態とが設定されているようにしてもよい。また、設定されている大当たり状態を3種類以上としてもよい。さらには、複数の大当たり状態として、ラウンド数は同じであるが、各ラウンドに大入賞口15が開放する時間が異なる大当たり状態であってもよい。
【0068】
本実施形態では、連荘状態が発生した場合は、連荘状態の終了後に振分処理を行ってTYを特定したが、大当たり状態が1回終了するごとに、各大当たり状態のTYを更新しながら特定するようにしてもよい。また、連荘状態の終了後、複数の大当たり状態のTYに対して、それぞれ異常判定を実行するようにしてもよい。
また、連荘状態の終了後におけるセーフの振分方法は適宜変更してもよい。例えば、ラウンド数が同じ大当たり状態が複数ある場合、これらの大当たり状態に対して、最後に発生した大当たり状態であるか否かに関わらず、均等に累計セーフを振り分けるようにしてもよい。
【0069】
さらに、最後に発生した大当たり状態が正常であると判定するためのTYの値の範囲は、適宜変更してもよい。例えば、連荘状態が発生した場合の正常範囲を、連荘状態が発生しなかった場合の正常範囲よりも広くしてもよい。すなわち、連荘状態が発生した場合は、複数の大当たり状態のTYの誤差をまとめるため誤差が発生し易いので、これを考慮して正常範囲を設定するようにしてもよい。
【0070】
本実施形態では、大当たり消化データをTOであるとしたが、大当たり消化データを大当たり状態の消化に要した消化時間であるとして異常判定を行ってもよい。この場合、各大当たり状態に対応した消化時間を予め設定しておけばよい。例えば、70〜90秒と、210〜250秒を正常な消化時間の長さとして設定してもよい。
また、TYの値を用いて異常判定を行うのでなく、大当たり状態中のセーフの値を用いて異常判定を行ってもよい。また、モニタ7に表示される大当たり履歴に、「TY」ではなく「セーフ」を表示するようにしてもよい。
本実施形態では、時短状態において500個以上、通常状態において100個以上を余分なセーフであるとしたが、これに限らず、例えば、時短状態において600個以上、通常状態において200個以上を余分なセーフであるとしてもよい。
【0071】
遊技機管理装置5は、通常時異常判定処理においてベースの異常を監視するようにしたが、セーフの異常を監視し、セーフ異常が発生した場合は、余分なセーフを前回の大当たり状態のTY(大当たり状態中のセーフ)に加算するようにしてもよい。ここで、セーフ異常とは、アウトがない状態で、所定時間が経過するまでに所定数以上のセーフが発生する場合をいう。
また、遊技機管理装置5は、通常時異常判定処理において500個のアウトごとにベースの異常を判定するようにしたが、ベースの異常を判定するタイミングは適宜変更してよく、例えば、200個のアウトごとにベースの異常を判定するようにしてもよい。
本実施形態では、遊技機管理装置5によりTY及びTOの管理を行うものとしたが、呼出ランプ4や中継装置によってTY及びTOの管理を行ってもよい。
【0072】
本発明は、大当たり状態が終了した後、100%確変状態が設定されるパチンコ遊技機とは異なるものに適用してもよい。例えば、大当たり状態が終了した後、所定の確率で確変状態が設定されるパチンコ遊技機や、いわゆる2種のパチンコ遊技機に適用してもよい。
また、大当たり状態の消化よりも、払出条件の成立に基づいて払出装置43がパチンコ玉を払い出す払出速度の方が早くなるパチンコ遊技機にも適用できる。この場合、大当たり状態が終了した後にパチンコ玉の払出が継続しているときは、何らかの異常(不正な払出)があったものと判定して、不正行為を監視することができる。
【0073】
また、本発明は、パチンコ遊技機を備えた遊技場用システムに適用したが、スロットマシンを備えた遊技場用システムに適用してもよく、本発明を適用すれば、いわゆるARTなどが発生するスロットマシンにおいて、ARTにより不正にメダルを払い出させる不正行為を監視することが可能となる。スロットマシンにおいては、例えば所定の図柄の組合せが停止することで、特別遊技状態としてのボーナスゲームへの移行やメダルの払出が発生することとなる。
【0074】
さらに、上記した実施形態では、玉を払い出すことで直接遊技者に遊技価値を付与するものとしたが、クレジットや得点を遊技者に付与し、そのクレジットや得点を使用することで、玉を発射するなどの遊技が進行する遊技機に本発明を適用してもよい。つまり、遊技価値の付与には、遊技価値を直接遊技者に払い出すものが含まれるだけでなく、クレジットなどのようにデータとして間接的に遊技者に付与するものが含まれる。具体例として、封入式のパチンコ遊技機や、完全クレジット式のスロットマシンに本願発明を適用することが可能である。
上記した実施形態における数値は一例であり、適宜の数値を採用すればよい。
【符号の説明】
【0075】
図面中、2はパチンコ遊技機、5は遊技機管理装置(消化データ特定手段、価値数特定手段、連続状態特定手段、異常判定手段、標準価値数記憶手段)、30は主制御回路(大当たり発生手段)、43は払出装置(付与手段)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技価値を付与する付与手段と、
予め定められた条件が成立した場合に、遊技者に有利な大当たり状態として、第1大当たり状態と、遊技者により使用される遊技価値の使用数が前記第1大当たり状態よりも多くなり、又は開始から終了までの時間に対応した消化時間が前記第1大当たり状態よりも長くなり、前記付与手段により付与された遊技価値の付与数から前記使用数を差し引いた差価値数が前記第1大当たり状態よりも多くなる第2大当たり状態と、のいずれかを発生させる大当たり発生手段とを備え、前記大当たり状態の発生に基づく遊技価値の付与が終了することなく当該大当たり状態が終了した場合、当該大当たり状態が終了した後にその遊技価値の付与が実行されるパチンコ遊技機についての稼動データをパチンコ遊技機別に集計管理する遊技機管理装置において、
前記大当たり状態における前記使用数又は前記消化時間を、大当たり消化データとして特定する消化データ特定手段と、
前記大当たり状態の発生に基づく前記付与数又は前記大当たり状態の発生に基づく前記差価値数を、大当たり価値数として特定する価値数特定手段と、
先の前記大当たり状態が終了した後、当該先の大当たり状態における遊技価値の付与が終了する前に次の前記大当たり状態が発生する連続発生状態となっていることを特定する連続状態特定手段と、
前記大当たり状態が終了した場合に、当該大当たり状態における前記大当たり価値数が正常範囲に含まれているか否か、又は、前記大当たり価値数とその大当たり状態における前記大当たり消化データとの関係が正常範囲に含まれているか否かを判定する異常判定処理を実行する異常判定手段と、を備え、
前記価値数特定手段は、前記連続発生状態となっている場合、当該連続発生状態において発生した複数の大当たり状態における前記付与数の合計を特定するとともに、その連続発生状態が終了した場合に、合計した前記付与数をその複数の大当たり状態の種類に応じて振り分けた後に各大当たり状態における前記大当たり価値数を特定する振分処理を実行することを特徴とする遊技機管理装置。
【請求項2】
各大当たり状態の前記大当たり価値数の標準値として、大当たり状態ごとに設定された標準価値数を記憶する標準価値数記憶手段を備え、
前記価値数特定手段は、前記連続発生状態が終了した場合に、当該連続発生状態において発生した複数の前記大当たり状態のうち、最後に発生した前記大当たり状態とは異なる前記大当たり状態に対する前記大当たり価値数を前記標準価値数に設定する一方、最後に発生した前記大当たり状態に対する前記大当たり価値数を、その連続発生状態における前記付与数の合計数から設定した前記標準価値数に基づく前記付与数の合計数を差し引いた値に基づいて設定することを特徴とする請求項1に記載の遊技機管理装置。
【請求項3】
前記異常判定手段は、前記連続発生状態が終了し前記振分処理が実行された場合、当該振分処分の対象となった複数の前記大当たり状態のうち、最後に発生した前記大当たり状態について前記異常判定処理を実行するとともに、当該異常判定処理の結果が正常であると判定した場合、その連続発生状態における前記最後に発生した前記大当たり状態とは異なる前記大当たり状態について、前記振分処理が実行された後に前記異常判定処理を実行しない、又は前記振分処理が実行された後に前記異常判定処理を実行することなく正常な大当たり状態であったと判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の遊技機管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−161356(P2012−161356A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21675(P2011−21675)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000108937)ダイコク電機株式会社 (893)
【Fターム(参考)】