説明

過給システム及び過給システムの制御回路

【課題】過給システムにおいて、構成を複雑化することなく、また、ランニングコストを増加させることなく、車両の加速性能を向上させ、さらに、バッテリ上がりなどのトラブルを防止する。
【解決手段】エンジンに供給される吸気を圧縮するコンプレッサ1に回転力を与えるモータ3と、このモータ3の動作を制御するモータドライバ4と、モータドライバ4に電力を供給する電源部5に並列に接続された電力バッファ8とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に車両用エンジンに用いられる過給システム及び過給システムを制御する過給システムの制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用エンジン等の車両用エンジンにおいて、排気ガスに含まれたエネルギを利用して過給を行うターボ形過給機が用いられている。この過給機は、排気マニホルド及び吸気マニホルドの上にそれぞれ配置され、軸によって互いに固定的に接続された二つのブレード羽根車(タービンインペラ及びコンプレッサインペラ)と、これらブレード羽根車を囲んで配置された二つの渦巻き(volute)(スクロール流路)とを有して構成されている。
【0003】
第一の羽根車(タービンインペラ)は、排気ガスから回転力を得て、この回転力を第二の羽根車(コンプレッサインペラ)に伝える。第二の羽根車(コンプレッサインペラ)は、吸気マニホルド中の空気を圧縮する。
【0004】
このような過給機においては、タービンインペラの回転力をモータ(電動機)によりアシストするようにした電動アシスト過給機(EAT:Electrically Assisted Turbocharger)が提案されている。
【0005】
特許文献1には、電動アシスト過給機の制御回路が記載されている。この制御回路においては、車内電源系統において、オルタネータ(発電機)及び負荷(ライトやパワーウィンドウ、エアコン、オーディオ等)と、電力貯蔵デバイス(an electric energy storage device、バッテリなど)及び電動アシスト過給機との間に、スイッチを設置して構成されている。この制御回路においては、電動アシスト過給機のモータの動作開始時の一定期間(例えば、1秒間)、スイッチにより、車内電源系統と電力貯蔵デバイス及び電動アシスト過給機とを分離するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許2009/0000298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述した電動アシスト過給機の制御回路においては、電源系統にスイッチを設ける必要があるため、部品点数の増大及びコストアップが招来される。また、スイッチは、電動アシスト過給機のモータが動作するたびに、オン、オフを繰り返すことから、信頼性、耐久性の問題が生じ、一定期間ごとの交換が必要となる。そのため、ランニングコストが増加するという問題がある。
【0008】
一方、電動アシスト過給機を備えた車両の加速性能を向上させるため、オルタネータの発電量を抑制して、エンジンの負荷を減らすことが提案されている。しかしながら、前述した制御回路において、スイッチにより車内電源系統と電力貯蔵デバイス及び電動アシスト過給機とが切り離された状態では、オルタネータ側にバッテリなどの電力を補完するデバイスが存在しない。そのため、負荷が高い場合等には、オルタネータの発電量の抑制を行うことができなくなり、結果として、車両の加速性能を向上させることができなくなる。
【0009】
また、電動アシスト過給機の動作は、必ずしも数秒間の動作と停止を繰り返すといった間欠的なものではない。例えば、トーイング(キャンピングカー等の牽引)をしながら、長い上り坂を登るといった場合においては、連続して動作することになる。しかしながら、このような連続使用の場合においては、電動アシスト過給機を含めた負荷(エアコン、ライト等)の電力消費量が、オルタネータの容量を超えてしまい、結果として、バッテリ上がりなどのトラブルを発生する虞がある。
【0010】
そこで、本発明は、前述した実情に鑑みて提案されるものであって、構成を複雑化することなく、また、ランニングコストを増加させることなく、車両の加速性能を向上させることができ、さらに、バッテリ上がりなどのトラブルが防止された過給システム及び過給システムの制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明は、以下の構成を有するものである。
【0012】
〔構成1〕
本発明に係る過給システムは、エンジンに供給される吸気を圧縮するコンプレッサと、コンプレッサに回転力を与えるモータと、モータの動作を制御するモータドライバと、モータドライバに電力を供給する電源部に並列に接続された電力バッファとを備えたことを特徴とするものである。
【0013】
〔構成2〕
構成1を有する過給システムにおいて、電力バッファは、コンデンサであることを特徴とするものである。
【0014】
本発明において、電力バッファとしては、急速充放電が可能なデバイスであることが望ましく、コンデンサ(キャパシタ)の他、Liイオン電池などを用いることができる。この電力バッファは、モータドライバの直近に配置することが望ましい。
【0015】
〔構成3〕
本発明に係る過給システムの制御回路は、構成1、または、構成2を有する過給システムを制御するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る過給システム及び過給システムの制御回路においては、モータドライバに電力を供給する電源部に並列に接続された電力バッファとを備えているので、車両の加速時に電源部の発電量を抑制してエンジンの負荷を減らした場合においても、加速の初期には、電力バッファ及び電源部から電力が供給されるため、エンジンの負荷を抑えることが可能となり、車両の加速性能を向上させることができる。
【0017】
また、電力バッファとしては、コンデンサ(キャパシタ)を用いることができ、コンデンサは、数100kサイクルの寿命を持ち、メンテナンスフリーであるため、ランニングコストの増加を抑えることができる。なお、鉛蓄電池の寿命は、2kサイクル程度である。
【0018】
すなわち、本発明は、過給システム及び過給システムの制御回路において、構成を複雑化することなく、また、ランニングコストを増加させることなく、車両の加速性能を向上させることができ、さらに、バッテリ上がりなどのトラブルが防止された過給システム及び過給システムの制御回路を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る過給システムの制御回路を備えた本発明に係る過給システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る過給システムの制御回路の構成を示すブロック図である。
【図3】力行時に用いるマップテーブルを示すグラフである。
【図4】本発明に係る過給システムの制御回路の動作を説明するフローチャートである。
【図5】本発明に係る過給システムの制御回路における消費電力量の制御を説明するグラフである。
【図6】本発明が適用される過給システムの構成の他の例を示すブロック図である。
【図7】本発明が適用される過給システムのさらに他の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る過給システムの制御回路を備えた本発明に係る過給システムの構成を示すブロック図である。
【0022】
本発明に係る過給システム(電動アシスト過給システム)は、主に自動車用エンジン等の車両用エンジンにおいて、排気ガスに含まれたエネルギを利用して過給を行う過給システムである。図1に示す過給システムは、電動アシスト過給機を備えている。電動アシスト過給機は、図1に示すように、吸気マニホルド及び排気マニホルドの上にそれぞれ配置され、軸によって互いに固定的に接続された二つのブレード羽根車(コンプレッサインペラ、タービンインペラ)と、これらブレード羽根車を囲んで配置された二つの渦巻き(volute)流路(スクロール流路)とを有して構成されている。
【0023】
コンプレッサ1は、コンプレッサインペラ、コンプレッサスクロール流路、コンプレッサハウジングを備えている。タービン2は、タービンインペラ、タービンスクロール流路、タービンハウジングを備えている。コンプレッサ1とタービン2との間には、軸受ハウジングが備えられている。軸受ハウジング内には、回転軸(シャフト)、軸受が設けられている。コンプレッサインペラとタービンインペラとは、回転軸(シャフト)によって互いに同軸上に連結されている。すなわち、コンプレッサインペラ、タービンインペラ、回転軸(シャフト)は、ハウジング(コンプレッサハウジング、タービンハウジング、軸受ハウジング)に対して一体的に回転可能な回転体(ロータ)を構成している。タービン2は、排気ガスから回転力を得て、この回転力をコンプレッサ1に伝える。コンプレッサ1は、吸気マニホルド中の空気を圧縮する。
【0024】
そして、この電動アシスト過給機においては、回転体(コンプレッサインペラとタービンインペラ、回転軸)の回転力をモータ(電動機)3によりアシストする。この電動アシスト過給機においては、モータ3は、過給システムの制御回路を構成するモータドライバ4により、電源供給を制御されて、動作を制御される。モータ3は、軸受ハウジング内に設けられている。
【0025】
なお、モータ3には、温度センサが設置されており、この温度センサにより測定されたモータステータ温度を示す信号は、モータドライバ4に送られる。また、モータドライバ4は、エンジンECU等の上位コントローラ11により、動作を制御される。
【0026】
モータドライバ4には、電源部5より、電源が供給される。この電源部5は、オルタネータ(発電機)6及び鉛蓄電池7から構成されている。オルタネータは、この電動アシスト過給機を備えたエンジンにより回転されて、発電する。鉛蓄電池7は、オルタネータ6に並列に接続されており、電力消費量がオルタネータ6の発電電力より小さい場合には、オルタネータ6が発電する電力を蓄電し、電力消費量がオルタネータ6の発電電力より大きい場合には、放電して電力供給源となる。
【0027】
また、電源部5には、負荷9が並列に接続されている。この負荷9は、エアコンやライト等である。
【0028】
そして、電源部5には、過給システム(電動アシスト過給機)の制御回路を構成する電力バッファ8が並列に接続されている。この電力バッファ8としては、急速充放電が可能なデバイスであることが望ましく、コンデンサ(キャパシタ)や、Liイオン電池などを用いることができる。この電力バッファは、モータドライバ4の直近に配置することが望ましい。
【0029】
なお、電力バッファと、電源部5及び負荷9との間には、リレー10を設置しておくとよい。このリレー10は、運転中には閉成(オン)としておき、エンジン停止時に開放(オフ)とする。すなわち、メンテナンスや、短絡故障時において、回路を遮断するために用いる。
【0030】
図2は、本発明に係る過給システムの制御回路の構成を示すブロック図である。
【0031】
この過給システムの制御回路において、モータドライバ4は、図2に示すように、セレクタ回路12を有している。この過給システム(電動アシスト過給機)の力行時において、セレクタ回路12には、上位コントローラ11より、トルク指令値が入力される。また、セレクタ回路12には、ターボ回転数を示す値(内部演算値)が、マップテーブル1を介して、入力される。マップテーブルについては後述する。
【0032】
さらに、上位コントローラ11は、許容消費電力を算出し、モータドライバ4にリミッタ値(過給システム(電動アシスト過給機)が消費しても良い電力(許容電力消費量;allowable power consumption))として指令する。すなわち、セレクタ回路12には、上位コントローラ11よりの消費電力のリミット値からドライバ入力電力値(計算値)を引いた差信号が入力される。
【0033】
さらに、上位コンローラからの指令値としては、許容電力消費量に加え、モータトルク、または、モータ電流、若しくは、ターボ回転数を与えるようにしてもよい。モータドライバ4は、許容電力消費量の範囲内で、モータトルク、または、モータ電流、若しくは、ターボ回転数を制御して、過給システムの消費電力を抑える。また、モータドライバ4は、車内電源系統の電圧に従い、過給システムの消費電力を抑える動作を行う。
【0034】
また、セレクタ回路12には、温度センサより、モータステータの温度を示す値が、マップテーブル3を介して、入力される。また、温度センサより、モータドライバ主回路の温度を示す値が、マップテーブル5を介して、入力される。さらに、温度センサより、モータドライバ制御回路の温度を示す値が、マップテーブル6を介して、入力される。また、電圧センサより、電源電圧を示す値が、マップテーブル9を介して、入力される。
【0035】
セレクタ回路12は、入力された各値より、最も小さい値を選択して、力行時にモータに供給する電流指令値として、出力する。この電流指令値は、制御上の指令値である。
【0036】
図3は、力行時に用いるマップテーブルを示すグラフである。
【0037】
マップテーブルは、各温度センサ及び電圧センサ毎に設定されている。このマップテーブルは、図3に示すように、測定された電源電圧に対応する出力制限値を示すものであって、所定の出力制限開始電圧以下においては、モータ電流を絞るようになっている。
【0038】
このようなマップテーブルは、温度をセンサ及び電圧センサ毎に設定しておき、測定された温度及び電源電圧によりそれぞれ出力上限を計算し、このうちで最も小さい出力上限をセレクタ回路12によって選択して、モータの制御に用いる。
【0039】
このようにして、モータドライバ4が許容電力消費量を超えない範囲で、モータ3を制御し、消費電力に制限を加えたうえで過給システム(電動アシスト過給機)を動作させることにより、負荷9(ライト、エアコン等)及びモータ3の消費電力量が、車内電源系統の供給能力(オルタネータ6、鉛蓄電池7及び電力バッファ8)を上回ることがなくなり、電源系統の不安定化を回避できる。
【0040】
また、上位コントローラ11の演算ミスなどにより許容電力消費量が多めに見積もられ、その結果、負荷9及びモータ3の消費電力が、車内電源系統の供給電力を上回ってしまった場合には、車内電源系統の電圧低下が発生するが、モータドライバ4が車内電源系統の電圧をモニタし、電圧が低下した場合には、モータドライバ4がその電圧に応じて消費電力を抑えるようにモータ3を制御することにより、過給システムの動作を抑制しつつも、消費電力を抑えることによって電圧低下を食い止める。この動作により、過給システムの効果を生みつつ、車内電源系統の不安定化を防ぐことができる。
【0041】
図4は、本発明に係る過給システムの制御回路の動作を説明するフローチャートである。
【0042】
すなわち、この過給システムの制御回路は、図4に示すように、ステップst1で動作を開始すると、ステップst2に進み、オルタネータ6による発電を抑制して調整電圧を低レベル(“Low”)とする。ステップst3では、ETAの許容電力消費量の指令を受信する。そして、ステップst4で過給システム(電動アシスト過給機)の電動アシストを開始し、ステップst5に進む。
【0043】
ステップst5では、過給システム(電動アシスト過給機)の消費電力が許容電力消費量を超えているか否かを判別する。過給システム(電動アシスト過給機)の消費電力が許容電力消費量を超えていれば、ステップst6に進み、超えていなければ、ステップst7に進む。
【0044】
ステップst6では、消費電力の制限を行って、ステップst7に進む。
【0045】
ステップst7では、電源電圧が許容電力消費量を超えているか否かを判別する。電源電圧が許容電力消費量を超えていれば、ステップst1に戻り、超えていなければ、ステップst8に進む。ステップst8では、消費電力の制限を行って、ステップst1に戻る。
【0046】
図5は、本発明に係る過給システムの制御回路における消費電力量の制御を説明するグラフである。
【0047】
このような過給システムの制御回路を備えた電動アシスト過給機においては、図5に示すように、エンジンが停止した状態においては、ETA以外の負荷9の消費電力が、鉛蓄電池7から供給されている。そして、エンジンが起動し、オルタネータ6が動作した後、発進加速や追い抜き加速のように、短い時間に亘って過給システムの電動アシストが必要な場合には、鉛蓄電池7及びオルタネータ6による電力供給に加えて、電力バッファ8からの電力供給により、過給システムが作動する。
【0048】
さらに加速の効果を高めるために、オルタネータ6による発電を抑制した場合、すなわち、電源電圧制限を行った場合にも、電力バッファ8から過給システムやその他の負荷9に電力供給が行われ、車内電源系統の不安定化を招くことなく、最大の加速効果を得ることができる。
【0049】
また、トーイング(高負荷な状態での一定速度走行)のように、長時間に亘ってアシスト動作が必要な場合には、時間経過とともに、電力バッファ8及びオルタネータ6による電力供給から、鉛蓄電池7及びオルタネータ6による電力供給に移行し、さらに、過給システムの消費電力を抑制した動作へと移行することにより、過給システムが急に停止することで生ずる段付き感を抑えて、自然なフィーリングのエンジントルク変化を実現することができる。
【0050】
なお、電動アシスト過給機は、回生時には、排気タービン発電機(排気APU(Auxiliary Power Unit;補助電源装置))として用いることができる。すなわち、回生時には、モータ3は、発電機として使用することができる。この電動アシスト過給機の回生容量は、例えば、500W程度とすることができる。この排気タービン発電機の回生時の発電電圧は、オルタネータ6の発電電圧よりも高くしておくことが望ましい。例えば、オルタネータ6の発電電圧がDC14.5Vである場合には、排気タービン発電機の回生時の発電電圧は、DC15V程度となっている。
【0051】
そして、オルタネータ6の駆動プーリには、クラッチを装備する。このエンジンにおいて、オルタネータ6による発電が不要な場合には、モータドライバ4は、クラッチを切り離す制御を行う。
【0052】
このエンジンにおいて、回生が行われる状態(車両が巡航する状態や、減速する状態)において、排気タービン発電機の発電量が負荷9の消費電力よりも大きい場合には、オルタネータ6による発電を行わないようにし、排気タービン発電機のみにより電源供給を行う。
【0053】
このとき、オルタネータ6のクラッチを切り離すことにより、オルタネータロータの回転に使われるエネルギー分のエンジン軸出力の目減りもなくし、燃費の改善を図ることができる。
【0054】
負荷9の消費電力が増大し、排気タービン発電機による発電量だけでは賄えなくなった場合には、排気タービン発電機の出力電圧が低下する。そして、排気タービン発電機の出力電圧がオルタネータ6の発電電圧まで低下すたならば、オルタネータ6のクラッチを繋ぎ、オルタネータ6による発電を開始する。このとき、オルタネータ6は、排気タービン発電機だけでは賄えなかった電力分を発電する。この場合でも、オルタネータ6のみにより発電する場合よりも、燃費の改善が図られる。この場合においては、オルタネータ6と排気タービン発電機のいずれを使用するかは、「燃費悪化の大小」を比較して、悪化の小さい方を使うように制御することができる。
【0055】
車が加速するなど、電動アシスト過給機がモータとして作動する場合には、初期の短時間には、前述したように、電力バッファ8から電力が供給され、長時間の場合には、オルタネータ6及び鉛蓄電池7から電力が供給される。加速時には燃費は悪化するが、加速、巡航、減速というサイクルを通してみると、トータルでの燃費は改善される。
【0056】
図6は、本発明が適用される過給システムの構成の他の例を示すブロック図である。
【0057】
なお、本発明は、図1に示した構成の電動アシスト過給機(EAT)に限定されず、例えば、図6に示すように、電動ブースター(電動コンプレッサ)を用いて構成された過給システムにも適用可能である。図6に示す過給システムは、吸気流路14に配置されたコンプレッサ1の上流側に、吸気量調整手段として電動ブースター13を配置したものである。この過給システムにおいては、図1に示したモータ3により過給機をアシストすることなく、通常の過給機を用いている。なお、過給機としては、電動アシスト過給機、すなわち、冗長的にモータによりアシストされるものを用いてもよい。電動ブースター13は、吸気流路14に配置されたコンプレッサ13cと、コンプレッサ13cに接続されたモータ3とから構成される。コンプレッサ13cは、コンプレッサ1と同様に、コンプレッサインペラ、コンプレッサスクロールを備えている。モータ3は、エンジンECU等の上位コントローラ11に接続されており、駆動、停止及び回転数の制御をなされる。
【0058】
この過給システムにおいては、電動ブースター13により、排気流路15に配置されたタービン2を流れる排気ガスの流量に依存することなく、圧縮空気の流量を増大させることができる。また、電動ブースター13を駆動させると、吸気される圧縮空気により、過給機のコンプレッサ1を強制的に駆動させることができ、連動してタービン2も強制的に駆動させることができる。
【0059】
この過給システムにおいては、前述した電動アシスト過給機(EAT)におけると同様に、モータ3の駆動、制御を行うことにより、過給機の動作を抑制しつつも、消費電力を抑えることによって電圧低下を食い止め、過給システムの効果を生みつつ、車内電源系統の不安定化を防ぐことができる。
【0060】
図7は、本発明が適用される過給システムのさらに他の例を示すブロック図である。
【0061】
また、本発明は、図7に示すように、吸気流路14に配置されたコンプレッサ1と、排気流路15に配置されたタービン2とを分離し、コンプレッサ1にモータ3を接続し、タービン2に発電機16を接続して構成された過給システムにも適用可能である。図7に示す過給システムにおいて、発電機16及びモータ3は、蓄電池17に接続されている。発電機16で発生した電気は、蓄電池17により貯蓄される。蓄電池17に貯蓄された電気は、モータ3に供給される。この過給機においては、タービン2を流れる排気ガスの流量に依存することなく、モータ3によりコンプレッサ1を駆動して、圧縮空気の流量を増大させることができる。モータ3は、エンジンECU等の上位コントローラ11に接続されており、駆動、停止及び回転数の制御をなされる。この過給システムは、コンプレッサ1とタービン2とを分離したことにより、機器レイアウト上の制約が少なく、汎用性に優れている。
【0062】
この過給システムにおいては、前述した電動アシスト過給機(EAT)におけると同様に、モータ3の駆動、制御を行うことにより、過給システムの動作を抑制しつつも、消費電力を抑えることによって電圧低下を食い止め、過給システムの効果を生みつつ、車内電源系統の不安定化を防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、主に車両用エンジンに用いられる過給システム及び過給システムを制御する過給システムの制御回路に適用される。
【符号の説明】
【0064】
1 コンプレッサ
2 タービン
3 モータ
4 モータドライバ
5 電源部
6 オルタネータ
7 鉛蓄電池
8 電力バッファ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに供給される吸気を圧縮するコンプレッサと、
前記コンプレッサに回転力を与えるモータと、
前記モータの動作を制御するモータドライバと、
前記モータドライバに電力を供給する電源部に並列に接続された電力バッファと
を備えたことを特徴とする過給システム。
【請求項2】
前記電力バッファは、コンデンサである
ことを特徴とする請求項1記載の過給システム。
【請求項3】
請求項1、または、請求項2記載の過給システムを制御する過給システムの制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−167634(P2012−167634A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30686(P2011−30686)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】