説明

過給式内燃機関

【課題】内燃機関の出力増大と、始動領域での改善された加速特性と、過渡調和運転スペクトルと共に、段階的に投入可能な排気駆動式過給機のそれぞれにおける過給空気の逆流による排気駆動式過給機の領域からの圧縮空気の損失を、より少ない費用でかつ持続的に回避する。
【解決手段】各弁装置が、排気駆動式過給機の圧縮機の過給空気出口と過給空気マニホルドとの間に挿入された1つの主空気弁と、圧縮機の過給空気出口と主空気弁との間に接続されかつ補助コンプレッサの空気入口に通じている1つの補助空気弁とを有し、補助コンプレッサの出口側が過給空気マニホルドに接続されている。特に多数の排気駆動式過給機により内燃機関の運転スペクトルを細分する場合に、排気駆動式過給機の小形の構造形態のほかに、同時に特に小形の補助コンプレッサが実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全ての燃焼室に対する排気マニホルドおよび過給空気マニホルドと、内燃機関の出力に依存して段階的に排気ガスタービンを排気マニホルドにそれぞれ1つの排気ガス弁を介して投入および遮断することができる複数の排気駆動式過給機と、別個の原動機によって駆動される補助コンプレッサと、その補助コンプレッサのバイパス空気と段階運転時に追加されるそれぞれの都度の排気駆動式過給機の圧縮機空気とを当該排気駆動式過給機の回転数および過給空気の作動圧力に依存して切り替えるための複数の弁装置と、排気ガス弁、弁装置および補助コンプレッサの原動機を開閉するための要求パターンを記憶したコンピュータとを有する過給式内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
過給を利用することによって、小形の内燃機関において、ずっと大形の内燃機関でなければ得られない出力を実現すことができる。定格出力が予め与えられる場合には、過給によって、内燃機関を著しく小形化することができる。排気駆動式過給機を用いて内燃機関に過給を行なう場合、一方では過給によって定格出力の増大が可能であるが、他方ではそのために幾何学的な機械的圧縮比を所望の定格出力増大に比例して減少させなければならないという矛盾が生じる。しかし、その幾何学的な機械的圧縮比の減少によって、過給式内燃機関の出力もしくはトルクが低回転数域で過剰比例的に低下する。これは排気駆動式過給機の固有の運転回転数線図における非常に尖った出力曲線に起因している。流体機械は非常に狭い回転数域でしか最適な流れ、従って高い出力をもたらし得ない。これは、陸上車両用の内燃機関において牽引力双曲線特性を達成しようと努めることと矛盾する。しかし、複数の排気駆動式過給機の使用によって、内燃機関の運転回転数範囲および排気駆動式過給機の作動比容積を分割することができる。ただし、そのために時間的にずれた排気駆動式過給機の追加投入は、例えば非常に低い圧力を有する第2圧縮機から先ず放出弁を介して外に流れる空気を既に第1圧縮機の全圧下にある内燃機関の過給空気マニホルドに到達させようとする際に、即ち、比較的大きな流速と小さな圧力発生能力を有する流体機械から比較的小さな流速と比較的大きな圧力発生能力を有するピストン機械に到達させようとする際に、過給系統をすぐにポンプ領域に導いて、追加投入された圧縮機の過給空気流を崩壊する。
【0003】
内燃機関自体で又は別個の原動機によって駆動される機械容積形過給機は、内燃機関の無負荷運転に必要な空気を容易に供給するが、内燃機関の高負荷・高回転数領域では、排気駆動式過給機に太刀打ちできない。従って、排気駆動式過給機と容積形過給機の各利点を両過給機の直列又は並列接続によって組み合わせるのが通例である。これは、特に内燃機関の始動時に唯一の又は最初の排気駆動式過給機が、緩かに立ち上がる排気ガス発生のために徐々にしか加速しない場合に生じる所謂ターボラグ(Turboloch)を克服するために適用される。
【0004】
冒頭で述べた形式の過給式内燃機関は既に特許文献1によって公知である。この公知の過給式内燃機関は、出力増大と、始動領域での改善された加速特性と、部分負荷および全負荷時の非常に低い回転数から部分負荷および全負荷時の高い回転数までの過渡調和運転スペクトルと関連して、上述のポンプ効果を生じることなく複数の排気駆動式過給機の段階的な投入および遮断を可能にする。全ての排気駆動式過給機がそれぞれの圧縮機の入口側に、共通な補助コンプレッサの出口への配管接続部を有し、それによって、より小容量のこの補助コンプレッサが通常の方法でそれぞれの排気駆動式過給機に直列に前置されている。しかし、それは、その補助コンプレッサを備える機械的過給機の小形化を制限する。何故ならば、その機械的過給機が一時的に後続の流体機械に対抗して運転されなければならないからである。各排気駆動式過給機の過給空気側の弁装置は圧縮機の入口側にあって、大気弁と補助コンプレッサに通じている給気弁とからなる。これらの両弁の相互反転切替のために高価な調整弁が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許第10235701号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、冒頭に述べた種類の過給式内燃機関において、補助コンプレッサおよび過給空気側の複数の弁装置のための構造寸法を低減し、それらの弁装置の開閉動作を単純化し、内燃機関の過給空気圧力をより強く安定化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本発明によれば、各弁装置が、排気駆動式過給機の圧縮機の過給空気出口と過給空気マニホルドとの間に挿入された1つの主空気弁と、排気駆動式過給機の圧縮機の過給空気出口と主空気弁との間に接続されかつ補助コンプレッサの空気入口に通じている1つの補助空気弁とを有し、補助コンプレッサの出口側が過給空気マニホルドに接続されていることによって解決される。
【0008】
複数の排気駆動式過給機の圧縮機と過給空気マニホルドとの間に補助コンプレッサを配置することによって、過渡的に大気がそれぞれの圧縮機を通して吸い込まれるので、補助コンプレッサは直列の配置にもかかわらず、作用的には、運転中の各排気駆動式過給機と並列回路となる。それぞれの圧縮機の吸い出しが非常に小さい流動抵抗に遭遇し、付属の排気ガス弁の開放時にこの圧縮機の始動を容易にする。補助コンプレッサは問題なく他の過給空気源からのどの逆圧にも打ち勝ち、それに対して排気駆動式過給機は狭い回転数帯域においてのみ最適に動作する。それぞれ1つの主空気弁および1つの補助空気弁からなる複数の弁装置に関しては複雑な調整弁の代わりに、簡単なオンオフ弁を使用できるという利点が生じる。コンピュータは、電動機によって駆動される補助コンプレッサならびにオンオフ弁の急激な投入又は遮断のための信号を出力できるように構成されており、目的対象において異なる開閉信号をグループごとに統合することができる。
【0009】
従って、この補助コンプレッサは、内燃機関の始動時の所謂ターボラグを克服し、かつ容積形過給機と流体駆動式過給機との利点を組み合わせるために使用するだけでなく、時間的にずらして追加投入される各排気駆動式過給機の前進流を確保するために使用される。特に多数の排気駆動式過給機を用いて内燃機関の運転スペクトルを細分化する場合には、排気駆動式過給機を小形化し、しかも同時に格別に小形の補助コンプレッサで済ませることができる。補助コンプレッサの別個の原動機として、駆動エネルギを車載バッテリから受け取る電動機を使用することができる。かかる原動機は、別個の内燃機関や過給されるべき主エンジンへの伝動継手よりも迅速に応答して始動する。更に加えて、複数の排気駆動式過給機を用いた内燃機関の運転スペクトルの分割によって、自動車駆動の際に幾つかの変速段を省略することができ、複数の排気駆動式過給機の段階的な運転開始順序を、一様な磨耗とすることを考慮して、簡単に変更することができ、複数の排気駆動式過給機の1つにおける故障をその過給機の予めプログラムされた除外により克服することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明による過給式内燃機関の実施例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に従属請求項に記載の実施態様に基づく本発明の有利な実施例をブロック図で示し、以下において詳細に説明する。
【0012】
図1は、本過給装置においては過給空気を供給すべきシリンダ11の数についてコンセプト的に制約がないことを表すために、内燃機関10として5気筒エンジンを示す。象徴的に描かれた3つの排気駆動式過給機14,15,16のほかにさらに多数の他の段階的に投入および遮断可能な排気駆動式過給機を内燃機関10の運転スペクトルの分割のために設け得ることが、内燃機関10の排気マニホルド12ならびに内燃機関10の過給空気マニホルド13から出ている点線で示す配管によって示唆されている。実際には通常6〜10台の同一構造の排気駆動式過給機に制限される。これは、内燃機関10の運転スペクトルの分割の自由度と、内燃機関10の過給装置のための構造寸法との間の妥協を意味する。
【0013】
内燃機関10のシリンダ11には、白抜きの矢印によって過給空気流が示され、黒く塗り潰した矢印で排気ガス流が示されている。内燃機関10の排気マニホルド12と各排気駆動式過給機14,15,16・・・の排気ガスタービン17との間にはそれぞれ1つの排気ガス弁18が挿入されており、これらの排気ガス弁18は、要求パターンを記憶したコンピュータ19により個々に制御可能である。図には、該当する制御配線20,21,22が破線で描かれている。コンピュータ19のこの種の他の制御配線23,24,25が、排気駆動式過給機14,15,16の圧縮機28の空気出口側における主空気弁26と補助空気弁27とを含む複数の弁装置に導かれている。もう1つの他の制御配線29がコンピュータ19を補助コンプレッサ32の電動機31に接続する。比較的小形である電動機31は、駆動電力を車載バッテリ30から受け取る。補助コンプレッサ32は、入口側を全ての補助空気弁27に接続され、出口側を過給空気マニホルド13に接続されている。要求パターンを記憶したコンピュータ19は、信号配線33を介して過給空気マニホルド13の圧力信号を得ると共に、信号配線34,35,36を介して排気駆動式過給機14,15,16の回転数信号を得る。排気駆動式過給機14,15,16の過給空気側には共通な空気フィルタ37が前置されている。
【0014】
全ての主空気弁26、補助空気弁27および排気ガス弁18が強制的な閉位置から導通制御可能に構成されていることによって、過給式内燃機関10の過給空気供給がさらに簡単化される。構造寸法を低減するために、主空気弁26および補助空気弁27は、オンオフ弁として構成されており、すなわち、調節弁として構成されていない。内燃機関10の過給空気需要の変化時における応答速度を高めると共に、コンピュータ19の負担を軽くするために、排気駆動式過給機14,15,16・・・の追加投入をコンピュータ19によって制御する際に、補助コンプレッサ32の投入信号は、該当する排気駆動式過給機の排気ガス弁18の開信号と統合され、補助コンプレッサ32の遮断信号はこの排気駆動式過給機の補助空気弁27の閉信号および主空気弁26の開信号と統合されている。同様に、排気駆動式過給機14,15,16・・・の遮断をコンピュータ19によって制御する際に、補助コンプレッサ32の投入信号は、該当する排気駆動式過給機の補助空気弁27の開信号および主空気弁26の閉信号と統合されており、補助コンプレッサ32の遮断信号は、この排気駆動式過給機の補助空気弁27の閉信号および排気ガス弁18の閉信号と統合されている。
【0015】
制御配線29を介してコンピュータ19によって投入および遮断可能な電動機31は、過給空気の逆流がその都度追加投入される排気駆動式過給機により排除されるまで、常に短期間のみ作動させられる。内燃機関10の運転中における補助コンプレッサ32の運転休止中には、内燃機関10に接続されている発電機によって簡単に車載バッテリ30の補充電を行なうことができる。さらに、最近では、非常に大出力の車載バッテリ30が入手可能であるので、かなり大形の内燃機関10の場合ですら、追加投入すべき排気駆動式過給機14,15又は16の始動の弱点を、補助コンプレッサ32によって非常に迅速に補償することができる。
【0016】
内燃機関10の加速運転時におけるコンピュータ19を介する補助コンプレッサ32の運転は、段階的に投入される全排気駆動式過給機14,15,16・・・の順序においてその都度該当する1つの排気駆動式過給機の始動範囲に限定されることが好ましい。これは補助コンプレッサ32を保護し、車載バッテリ30の負担を軽くする。さらに、過給空気マニホルド13において達成しようと努められる定圧を急激な遮断経過を避けることによって安定化すべく、内燃機関10の減速運転時にはコンピュータ19を介する補助コンプレッサ32の運転が、段階的に投入される全排気駆動式過給機14,15,16・・・の開閉順序においてその都度該当する1つの排気駆動式過給機の始動範囲に対応する範囲に限定される。
【0017】
上述の過給装置の利点は、内燃機関10が約8:1に著しく縮小された圧縮を有するディーゼルエンジンとして構成されている場合に特に顕著である。元々の内燃機関10は、出力が同じならば非常に小形化できる。多数の排気駆動式過給機14,15,16・・・により積載重量を大幅に低減することができる。拡張された機能において過給空気支援手段として使用される補助コンプレッサ32も同様に著しく小形化することができる。補助コンプレッサ32の小形化は、多数の排気駆動式過給機および補助コンプレッサ32の短時間運転に基づくだけでなく、補助コンプレッサ32がそれの空気を1つの流体機械から吸い出し、この流体機械に対抗する必要がないという事情にも基づく。
【符号の説明】
【0018】
10 内燃機関
11 シリンダ
12 排気マニホルド
13 過給空気マニホルド
14〜16 排気駆動式過給機
17 排気ガスタービン
18 排気ガス弁
19 コンピュータ
20〜25 制御配線
26 主空気弁
27 補助空気弁
28 圧縮機
29 制御配線
30 車載バッテリ
31 電動機
32 補助コンプレッサ
33〜36 信号配線
37 空気フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全ての燃焼室に対する1つの排気マニホルドおよび1つの過給空気マニホルドと、内燃機関の出力に依存して段階的に排気ガスタービンを排気マニホルドにそれぞれ1つの排気ガス弁を介して投入および遮断することができる複数の排気駆動式過給機と、別個の原動機によって駆動される補助コンプレッサと、その補助コンプレッサのバイパス空気と段階運転時に追加されるその都度の排気駆動式過給機の圧縮機空気とを当該排気駆動式過給機の回転数および過給空気の作動圧力に依存して切り替えるための複数の弁装置と、複数の排気ガス弁、複数の弁装置および補助コンプレッサの原動機を開閉するための要求パターンを記憶したコンピュータとを有する過給式内燃機関において、各弁装置が、排気駆動式過給機(14,15,16)の圧縮機(28)の過給空気出口と過給空気マニホルド(13)との間に挿入された1つの主空気弁(26)と、圧縮機(28)の過給空気出口と主空気弁(26)との間に接続されかつ補助コンプレッサ(32)の空気入口に通じている1つの補助空気弁(27)とを有し、補助コンプレッサ(32)の出口側が過給空気マニホルド(13)に接続されていることを特徴とする過給式内燃機関。
【請求項2】
全ての主空気弁(26)、補助空気弁(27)および排気ガス弁(18)が強制的な閉位置から導通制御可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載の内燃機関。
【請求項3】
主空気弁(26)および主空気弁(26)がオンオフ弁として構成されており、すなわち、調整弁として構成されていないことを特徴とする請求項1又は2記載の内燃機関。
【請求項4】
1つの排気駆動式過給機(14,15,16)をコンピュータ(19)の制御によって追加投入する際に、補助コンプレッサ(32)の投入信号が該当する排気駆動式過給機の補助空気弁(27)の開信号および排気ガス弁(18)の開信号と統合されており、補助コンプレッサ(32)の遮断信号がこの排気駆動式過給機の補助空気弁(27)の閉信号および主空気弁(26)の開信号と統合されていることを特徴とする請求項1乃至3の1つに記載の内燃機関。
【請求項5】
1つの排気駆動式過給機(14,15,16)をコンピュータ(19)の制御によって遮断する際に、補助コンプレッサ(32)の投入信号が該当する排気駆動式過給機の補助空気弁(27)の開信号および主空気弁(26)の閉信号と統合されており、補助コンプレッサ(32)の遮断信号がこの排気駆動式過給機の補助空気弁(27)の閉信号および排気ガス弁(18)の閉信号と統合されていることを特徴とする請求項4記載の内燃機関。

【図1】
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【公開番号】特開2012−246929(P2012−246929A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−119783(P2012−119783)
【出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【出願人】(599068913)ウド マイレンダー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】