説明

過給機

【課題】急加速時における空気量又は過給圧の急変に過給機を適切に対応させる。
【解決手段】過給機(100)は、エンジン(10)を備える車両(1)に搭載され、ディフューザ(116)、及びディフューザに出し入れ可能に設けられたベーン(115)を有するコンプレッサ(110)と、タービン(120)とを備える。過給機は、ベーンをディフューザに突出させること及び、ベーンをディフューザから引き込ませることが可能なベーン駆動手段(152)と、当該過給機の回転を補助可能な回転補助手段(141)と、車両の加速時に、当該過給機の回転を補助するように回転補助手段を制御しつつ、ベーンをディフューザから引き込ませるようにベーン駆動手段を制御する制御手段(151)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変ディフューザ付コンプレッサを備える過給機の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の過給機として、例えば、コンプレッサロータの周縁に配置され、傾動可能なベーンの列により構成された環状のディフューザ列の出口領域よりその上流側へ通じる還流通路の開閉がベーンの傾動に応じて制御されるコンプレッサを備えた過給機が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
或いは、コンプレッサのディフューザ部に突出・引き込み可能な案内羽根を設け、該案内羽根がエンジンの作動状態に応じて作動される過給機が提案されている(特許文献2参照)。或いは、コンプレッサの出口側に配置された可変ディフューザ体が、タービンの入口側に配置された可変ノズル体と連結されている過給機が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−163691号公報
【特許文献2】特開平8−254127号公報
【特許文献3】特開2006−169985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の背景技術を、過給をアシストする機構を備える過給機に適用した場合、例えば過給機を搭載する車両の急加速時等に、空気流量又は過給圧が急変することに起因して、過給機の翼の破損や過給圧の低下が生じる可能性があるという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、空気量又は過給圧の急変に適切に対応可能な過給機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の過給機は、上記課題を解決するために、エンジンを備える車両に搭載され、ディフューザ、及び前記ディフューザに出し入れ可能に設けられたベーンを有するコンプレッサと、タービンとを備えた過給機であって、前記ベーンを前記ディフューザに突出させること及び、前記ベーンを前記ディフューザから引き込ませることが可能なベーン駆動手段と、当該過給機の回転を補助可能な回転補助手段と、前記車両の加速時に、当該過給機の回転を補助するように前記回転補助手段を制御しつつ、前記ベーンを前記ディフューザから引き込ませるように前記ベーン駆動手段を制御する制御手段とを備える。
【0008】
本発明の第1の過給機によれば、当該過給機は、ディフューザ、及び該ディフューザに出し入れ可能に設けられたベーンを有するコンプレッサと、タービンとを備えている。即ち、当該過給機は、所謂、可変ディフューザ付コンプレッサを備えている。
【0009】
ベーン駆動手段は、ベーンをディフューザに突出させること及び、ベーンをディフューザから引き込ませることが可能である。即ち、ベーン駆動手段は、ベーンを出し入れすることにより、ベーンド状態とベーンレス状態とを切り替えることが可能である。例えばアキュムレータ、モータ等である回転補助手段は、当該過給機の回転を補助可能である。
【0010】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる制御手段は、車両の加速時に、当該過給機の回転を補助するように回転補助手段を制御しつつ、ベーンをディフューザから引き込ませるようにベーン駆動手段を制御する。
【0011】
本願発明者の研究によれば、車両の加速時に、回転補助手段により過給機が回転されることに起因して、コンプレッサの圧力比及び空気流量が増加すると、エンジンの作動領域が、ディフューザの形態がベーンド状態ではコンプレッサの効率が低下する作動領域になる可能性がある。加えて、過給機の回転数が急上昇することに起因してベーンが破損する可能性があることが判明している。
【0012】
しかるに本発明では、制御手段により、車両の加速時に、当該過給機の回転を補助するように回転補助手段が制御されつつ、ベーンをディフューザから引き込ませるようにベーン駆動手段が制御される。このため、ディフューザの形態が、比較的高圧力比、高空気流量である場合にコンプレッサの効率の良い、ベーンレス状態となるので、車両の加速時に、コンプレッサの効率が低下したり、ベーンが破損したりすることを防止することができる。
【0013】
本発明の第1の過給機の一態様では、前記制御手段は、前記エンジンの作動状態を検出する状態検出手段を含み、前記車両の加速時に、当該過給機の回転を補助するように前記回転補助手段を制御しつつ、前記検出された作動状態において、前記ベーンが前記ディフューザから引き込んでいる場合の前記コンプレッサの効率が、前記ベーンが前記ディフューザに突出している場合の前記コンプレッサの効率より高いことを条件に、前記ベーンを前記ディフューザから引き込ませるように前記ベーン駆動手段を制御する。
【0014】
この態様によれば、例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる状態検出手段は、エンジンの作動状態を検出する。尚、エンジンの作動状態は、例えばコンプレッサの圧力比と、空気流量とを検出し、該検出された圧力比及び空気流量に基づいて求めればよい。
【0015】
制御手段は、車両の加速時に、当該過給機の回転を補助するように回転補助手段を制御しつつ、検出された作動状態において、ベーンがディフューザから引き込んでいる場合(即ち、ベーンレス状態)のコンプレッサの効率が、ベーンがディフューザに突出している場合(即ち、ベーンド状態)のコンプレッサの効率より高いことを条件に、ベーンをディフューザから引き込ませるようにベーン駆動手段を制御する。
【0016】
このため、ベーン駆動手段の制御精度を向上させることができ、実用上非常に有利である。
【0017】
本発明の第1の過給機の他の態様では、前記タービンは、前記回転補助手段として、前記タービンに流入する気体の流入量を調節可能な可変ノズルを有し、前記制御手段は、前記車両の加速時に、前記可変ノズルの開度が閉じ側になるように前記可変ノズルを制御しつつ、前記ベーンを前記ディフューザから引き込ませるように前記ベーン駆動手段を制御する。
【0018】
この態様によれば、当該過給機のタービンは、回転補助手段として、該タービンに流入する気体(典型的には、エンジンより排出される排出ガス)の流入量を調節可能な可変ノズルを有している。即ち、この態様に係る「タービン」は、可変ノズル付タービン(Variable Nozzle Turbine:VNT)である。
【0019】
制御手段は、車両の加速時に、可変ノズルの開度が閉じ側になるように可変ノズルを制御しつつ、ベーンをディフューザから引き込ませるようにベーン駆動手段を制御する。ここで、「可変ノズルの開度が閉じ側」とは、例えばエンジンの回転数に応じて決定されている可変ノズルの開度を、エンジンの一の回転数に対応する開度よりも小さくすることを意味する。
【0020】
このため、過給圧の立ち上がりを良くすることができ、実用上非常に有利である。
【0021】
本発明の第2の過給機は、上記課題を解決するために、エンジンを備える車両に搭載され、ディフューザ、及び前記ディフューザに開度可変に設けられたベーンを有するコンプレッサと、タービンとを備えた過給機であって、前記ベーンの開度を変更可能なベーン駆動手段と、当該過給機の回転を補助可能な回転補助手段と、前記車両の加速時に、当該過給機の回転を補助するように前記回転補助手段を制御しつつ、前記ベーンの開度を開き側になるように前記ベーン駆動手段を制御する制御手段とを備える。
【0022】
本発明の第2の過給機によれば、当該過給機は、ディフューザ、及び該ディフューザに開度可変に設けられたベーンを有するコンプレッサと、タービンとを備えている。ベーン駆動手段は、ベーンの開度を変更可能である。回転補助手段は、当該過給機の回転を補助可能である。
【0023】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる制御手段は、車両の加速時に、当該過給機の回転を補助するように回転補助手段を制御しつつ、ベーンの開度が開き側になるようにベーン駆動手段を制御する。ここで、「ベーンの開度が開き側」とは、ベーンのスロート面積が大なり小なり増加する側を意味する。
【0024】
このため、比較的高圧力比、高空気流量である場合にコンプレッサの効率の良い、ベーンのスロート面積が比較的大きくなるので、車両の加速時に、コンプレッサの効率が低下したり、ベーンが破損したりすることを防止することができる。
【0025】
尚、本発明の第2の過給機においても、上述した本発明の第1の過給機と同様の各種態様を採ることが可能である。
【0026】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係る過給機が搭載される車両の構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る過給機のコンプレッサの構成を模式的に示す模式図である。
【図3】第1実施形態に係る過給機のコンプレッサの特性を概念的に示す概念図である。
【図4】第1実施形態に係る過給機の制御部が実行する制御処理を示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態の第1変形例に係る過給機が搭載される車両の構成を示すブロック図である。
【図6】第1実施形態の第2変形例に係る過給機が搭載される車両の構成を示すブロック図である。
【図7】第1実施形態の第3変形例に係る過給機が搭載される車両の構成を示すブロック図である。
【図8】第1実施形態の第3変形例に係る過給機の制御部が実行する制御処理を示すフローチャートである。
【図9】第2実施形態に係る過給機のコンプレッサのベースプレートの正面図である。
【図10】第2実施形態に係る過給機のコンプレッサのベースプレートの背面図である。
【図11】第2実施形態に係る過給機のコンプレッサの特性を概念的に示す概念図である。
【図12】第2実施形態に係る過給機の制御部が実行する制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る過給機の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0029】
<第1実施形態>
本発明に係る過給機の第1実施形態について、図1乃至図4を参照して説明する。
【0030】
先ず、本実施形態に係る過給機が搭載される車両について、図1を参照して説明する。ここに、図1は、本実施形態に係る過給機が搭載される車両の構成を示すブロック図である。
【0031】
図1において、車両1は、エンジン10と、該エンジン10に夫々接続されている吸気通路11及び排気通路12と、過給機100とを備えて構成されている。
【0032】
過給機100は、吸気通路11に配置されたコンプレッサ110と、排気通路12に配置されたタービン120と、圧縮エアを貯留するアキュムレータ141と、制御部151とを備えて構成されている。過給機100において、コンプレッサ110のコンプレッサインペラ111と、タービン120のタービンインペラ121とは、シャフト130を介して相互に接続されている。
【0033】
車外から吸入された空気(即ち、吸気)は、吸気通路11a、過給機100のコンプレッサ110、及び吸気通路11bを介してエンジン10に流入する。他方、エンジン10から排出された排出ガスは、排気通路12a、過給機100のタービン120、及び排気通路12bを介して車外に排出される。
【0034】
次に、コンプレッサ110の詳細な構成について、図2を参照して説明する。ここに、図2は、本実施形態に係る過給機のコンプレッサの構成を模式的に示す模式図である。
【0035】
図2において、コンプレッサ110は、コンプレッサインペラ111、アクチュエータロッド112、筒状構造113、円環構造114、ベーン115、ディフューザ116、コンプレッサハウジング117及びエアアシスト噴射孔118を備えて構成されている。
【0036】
アクチュエータロッド112は、アクチュエータ(ACT)152に接続されている。アクチュエータ152によりアクチュエータロッド112が駆動されることによって、筒状構造113がコンプレッサインペラ111の軸回りに回転し、該筒状構造113の回転と連動して円環構造114が前後に(図2の左右方向に)移動する。
【0037】
この結果、円環構造114に取り付けられているベーン115が、ディフューザ116に突出させられたり、ディフューザ116から引き込まれたりする。即ち、ディフューザ116の形態が、ベーンド状態にされたり、ベーンレス状態にされたりする。
【0038】
アキュムレータ141から導管142を介して供給される圧縮エアは、エアアシスト噴射孔118から噴射され、コンプレッサインペラ111に回転力を与える。即ち、本実施形態に係る過給機100は、エアアシスト機構を備える過給機である。
【0039】
尚、本実施形態に係る「アクチュエータロッド112」、「筒上構造113」、「円環構造114」及び「アクチュエータ152」は、本発明に係る「ベーン駆動手段」の一例であり、本実施形態に係る「アキュムレータ141」及び「制御部151」は、夫々、本発明に係る「回転補助手段」及び「制御手段」の一例である。
【0040】
次に、コンプレッサ110の特性について、図3を参照して説明する。ここに、図3は、本実施形態に係る過給機のコンプレッサの特性を概念的に示す概念図である。尚、図3における「一点鎖線」、「点線aで囲まれた範囲」及び「点線bで囲まれた範囲」は、夫々、「エンジン作動線」、「ベーンド効率の高い領域」及び「ベーンレス効率の高い領域」を示している。また、実線直線は、ベーンドディフューザのサージラインを示し、破線直線は、ベーンレスディフューザのサージラインを示している。また、実線円弧は、ベーンドディフューザの効率等高線を示し、破線円弧は、ベーンレスディフューザの効率等高線を示している。
【0041】
図3に示すように、コンプレッサ圧力比及び空気流量が増加するにつれて、エンジン作動線が、ベーンド効率(即ち、ベーン115がディフューザ116に突出している場合のコンプレッサ110の効率)の高い領域から、ベーンレス効率(即ち、ベーン115がディフューザ116から引き込んでいる場合のコンプレッサ110の効率)の高い領域へ移行していることがわかる。
【0042】
本願発明者の研究によれば、例えば車両1の急加速時等では、空気流量等が急激に増加することに起因して、例えば図3における矢印Aのようにエンジン10の作動状態が変化する。この場合、過給機100に対して何らの制御も実施しなければ、コンプレッサ110の効率が低下してしまう(即ち、エンジン10の作動状態が、ベーンド効率の高い領域の外へ移行してしまう)ことが判明している。
【0043】
そこで、本実施形態では、車両1の急加速時に、制御部151が、ベーン115をディフューザ116から引き込むようにアクチュエータ152を制御するように構成されている。このため、ディフューザ116の形態がベーンレス状態となり、例えば図3における矢印Aのようにエンジン10の作動状態が変化しても、コンプレッサ110の効率が低下することを防止することができる。
【0044】
次に、以上のように構成された過給機100を搭載する車両1の走行時に、制御部151が実行する過給機100の制御処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0045】
図4において、先ず、制御部151は、急加速時であるか否かを判定する(ステップS101)。具体的には例えば、制御部151は、車両1の加速度が所定加速度より大きいか否かを判定する。ここで、「所定加速度」は、経験的若しくは実験的に、又はシミュレーションによって、例えば、加速度と、空気流量及びコンプレッサ圧力各々の変化量との関係を求め、該求められた関係に基づいて、ベーンレス効率がベーンド効率より良くなる加速度として設定すればよい。
【0046】
ステップS101の処理において、急加速時であると判定された場合(ステップS101:Yes)、制御部151は、エアアシストが要求されているか否か(即ち、圧縮エアを噴射するか否か)を判定する(ステップS102)。具体的には、制御部151は、例えばエンジン回転数、車速、スロットル開度、アクセルペダル角度、ミッションギア等の変化値を検出し、該検出された変化値に基づいてエアアシストが要求されているか否かを判定する。
【0047】
ステップS102の処理において、エアアシストが要求されていると判定された場合(ステップS102:Yes)、制御部151は、ベーン115がディフューザ116に突出しているか否かを判定する(ステップS103)。加えて、制御部151は、圧縮エアを噴射するようにアキュムレータ141を制御する。
【0048】
ステップS103の処理において、ベーン115がディフューザ116に突出していると判定された場合(ステップS103:Yes)、制御部151は、サージ回避判定を実行する(ステップS104)。ここで、「サージ回避判定」とは、エンジン10の作動状態が、例えば図3に示したようなベーンレスディフューザのサージラインよりも、例えば10%以上下回っている(即ち、図3におけるサージラインの下の領域に作動状態がある)か否かを判定することを意味する。
【0049】
尚、エンジン10の作動状態は、例えばコンプレッサ110の上流側及び下流側にセンサを設け、該センサにより検出された吸気通路12a及び12b各々の内部の温度及び圧力等に基づいて求めればよい。
【0050】
ステップS104の処理において、サージ回避可能(即ち、エンジン10の作動状態が、ベーンレスディフューザのサージラインよりも下回っている)と判定された場合(ステップS104:Yes)、制御部151は、ディフューザ形態切替判定を実行する(ステップS105)。ここで、「ディフューザ形態切替判定」とは、エンジン10の作動状態が、例えば図3に示したようなベーンレス効率の高い領域に移行したか否かを判定することを意味する。
【0051】
ステップS105の処理において、ディフューザ形態を切り替える(即ち、エンジン10の作動状態が、ベーンレス効率の高い領域に移行した)と判定された場合(ステップS105:Yes)、制御部151は、ベーン115をディフューザ116から引き込むようにアクチュエータ152を制御して(ステップS106)、処理を一旦終了する。
【0052】
他方、ステップS101の処理において、急加速時でないと判定された場合(ステップS101:No)、ステップS102の処理において、エアアシストが要求されていないと判定された場合(ステップS102:No)、ステップS103の処理において、ベーン115がディフューザ116から引き込まれていると判定された場合(ステップS103:No)、ステップS104の処理において、サージ回避不可と判定された場合(ステップS104:No)、及びステップS105の処理において、ディフューザ形態を切り替えないと判定された場合(ステップS105:No)、制御部151は、処理を一旦終了する。
【0053】
尚、本実施形態に係る「制御部151」は、本発明に係る「状態検出手段」の一例である。
【0054】
<第1変形例>
次に、本実施形態に係る過給機の第1変形例について、図5を参照して説明する。ここに、図5は、図1と同趣旨の、本実施形態の第1変形例に係る過給機が搭載される車両の構成を示すブロック図である。
【0055】
図5において、本変形例に係る過給機101は、本発明に係る「回転補助手段」の他の例としての、モータ143がシャフト130に設けられている。即ち、本変形例に係る過給機101は、電動機付過給機(Motor Assist Turbocharge:MAT)である。
【0056】
<第2変形例>
次に、本実施形態に係る過給機の第2変形例について、図6を参照して説明する。ここに、図6は、図1と同趣旨の、本実施形態の第2変形例に係る過給機が搭載される車両の構成を示すブロック図である。
【0057】
図6において、本変形例に係る過給機102は、シャフト130に羽根144が設けられており、該羽根144に、オイル噴射パイプ145を介して、オイルが噴射されることによって、過給機102の回転を補助することが可能である。即ち、本変形例に係る過給機102は、オイルアシスト機構を備える過給機である。尚、本変形例に係る「羽根144」及び「オイル噴射パイプ145」は、本発明に係る「回転補助手段」の他の例である。
【0058】
<第3変形例>
次に、本実施形態に係る過給機の第3変形例について、図7及び図8を参照して説明する。ここに、図7は、図1と同趣旨の、本実施形態の第3変形例に係る過給機が搭載される車両の構成を示すブロック図である。
【0059】
図7において、本変形例に係る過給機103のタービン120は、該タービン120に流入する排出ガスの流入量を調節可能な可変ノズル146を有している。即ち、本変形例に係る過給機103は、可変ノズル付タービン(VNT)を備えて構成されている。
【0060】
次に、以上のように構成された過給機103を搭載する車両1の走行時に、制御部151が実行する過給機103の制御処理について、図8を参照して説明する。
【0061】
図8において、先ず、制御部151は、急加速時であるか否かを判定する(ステップS201)。急加速であると判定された場合(ステップS201:Yes)、制御部151は、タービン120の可変ノズル146の開度判定を実行する(ステップS202)。加えて、制御部151は、可変ノズル146の開度が変わるように可変ノズル146を制御する。
【0062】
ここで、「可変ノズル146の開度判定」とは、可変ノズル146の開度が閉じ側であるか否かを判定することを意味する。より具体的には、可変ノズル146の開度を、最大から最小まで5段階とした場合、可変ノズル146の開度が最小から1段目(即ち、可変ノズル146の開度が2番目に小さい開度)であるか否かを判定する。
【0063】
ステップS202の処理において、可変ノズル146の開度が閉じ側であると判定された場合(ステップS202:Yes)、制御部151は、ベーン115がディフューザ116に突出しているか否かを判定する(ステップS203)。ベーン115がディフューザ116に突出していると判定された場合(ステップS203:Yes)、制御部151は、サージ回避判定を実行する(ステップS204)。
【0064】
ステップS204の処理において、サージ回避可能と判定された場合(ステップS204:Yes)、制御部151は、ディフューザ形態切替判定を実行する(ステップS205)。ステップS205の処理において、ディフューザ形態を切り替えると判定された場合(ステップS205:Yes)、制御部151は、ベーン115をディフューザ116から引き込むようにアクチュエータ152を制御して(ステップS206)、処理を一旦終了する。
【0065】
他方、ステップS201の処理において、急加速時でないと判定された場合(ステップS201:No)、ステップS202の処理において、可変ノズル146の開度が閉じ側でないと判定された場合(ステップS202:No)、ステップS203の処理において、ベーン115がディフューザ116から引き込まれていると判定された場合(ステップS203:No)、ステップS204の処理において、サージ回避不可と判定された場合(ステップS204:No)、及びステップS205の処理において、ディフューザ形態を切り替えないと判定された場合(ステップS205:No)、制御部151は、処理を一旦終了する。
【0066】
<第2実施形態>
本発明の過給機に係る第2実施形態を、図9乃至図12を参照して説明する。第2実施形態では、コンプレッサの構成が一部異なる以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第2実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上の共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図9乃至図12を参照して説明する。ここに、図9は、本実施形態に係る過給機のコンプレッサのベースプレートの正面図であり、図10は、本実施形態に係る過給機のコンプレッサのベースプレートの背面図である。
【0067】
図9及び図10において、ベースプレート116aには、該ベースプレート116aを貫通して回動自在な複数の回動軸116bが、ベースプレート116aと同心状に等角度間隔で配置されている。ベースプレート116aの正面側に突出する各回動軸116bの一端には、ベーン115が固定されている。
【0068】
図9に示すように、ベーン115は、実線で示した開度βと点線で示した開度βとの二つの開度を採ることが可能である。以降適宜、「開度β」を「閉じ側」又は「スロート小」と称し、「開度β」を「開き側」又は「スロート大」と称する。
【0069】
図10において、ベースプレート116aの背面側に突出する各回動軸116bの他端には、各ベーン115の翼角(即ち、開度)を変更操作するための従動アーム116cが夫々固定されている。そして、該従動アーム116cの周囲には、各従動アーム116cを一斉に回動操作して各ベーン115の翼角を一斉に同角度づつ変更操作するためのユニゾンリング116dが配置されている。該ユニゾンリング116dは、アクチュエータロッド112に接続されている。
【0070】
次に、コンプレッサ110の特性について、図11を参照して説明する。ここに、図11は、図3と同趣旨の、本実施形態に係る過給機のコンプレッサの特性を概念的に示す概念図である。尚、図11における「一点鎖線」、「点線aで囲まれた範囲」及び「点線bで囲まれた範囲」は、夫々、「エンジン作動線」、「スロート小の効率の高い領域」及び「スロート大の効率の高い領域」を示している。また、実線直線は、スロート小のサージラインを示し、破線直線は、スロート大のディフューザのサージラインを示している。
【0071】
図11に示すように、コンプレッサ圧力比及び空気流量が増加するにつれて、エンジン作動線が、スロート小の効率の高い領域から、スロート大の効率の高い領域へ移行していることがわかる。
【0072】
そこで、本実施形態では、車両1の急加速時に、制御部151が、ベーン115の開度が開き側になるようにアクチュエータ152を制御するように構成されている。このため、スロート大となり、例えば図11における矢印Aのようにエンジン10の作動状態が変化しても、コンプレッサ110の効率が低下することを防止することができる。
【0073】
次に、以上のように構成された過給機100を搭載する車両1の走行時に、制御部151が実行する過給機100の制御処理について、図12のフローチャートを参照して説明する。
【0074】
図12において、先ず、制御部151は、急加速時であるか否かを判定する(ステップS301)。ステップS301の処理において、急加速時であると判定された場合(ステップS301:Yes)、制御部151は、エアアシストが要求されているか否かを判定する(ステップS302)。
【0075】
ステップS302の処理において、エアアシストが要求されていると判定された場合(ステップS302:Yes)、制御部151は、スロート小であるか否かを判定する(ステップS303)。加えて、制御部151は、圧縮エアを噴射するようにアキュムレータ141を制御する。ステップS303の処理において、スロート小であると判定された場合(ステップS303:Yes)、制御部151は、サージ回避判定を実行する(ステップS304)。
【0076】
ステップS304の処理において、サージ回避可能と判定された場合(ステップS304:Yes)、制御部151は、スロート切替判定を実行する(ステップS305)。ここで、「スロート切替判定」とは、エンジン10の作動状態が、例えば図11に示したようなスロート大の効率の高い領域に移行したか否かを判定することを意味する。
【0077】
ステップS305の処理において、スロートを切り替える(即ち、エンジン10の作動状態が、スロート大の効率の高い領域に移行した)と判定された場合(ステップS305:Yes)、制御部151は、ベーン115の開度を開き側にするようにアクチュエータ152を制御して(ステップS306)、処理を一旦終了する。
【0078】
他方、ステップS301の処理において、急加速時でないと判定された場合(ステップS301:No)、ステップS302の処理において、エアアシストが要求されていないと判定された場合(ステップS302:No)、ステップS303の処理において、スロート大であると判定された場合(ステップS303:No)、ステップS304の処理において、サージ回避不可と判定された場合(ステップS304:No)、及びステップS305の処理において、スロートを切り替えないと判定された場合(ステップS305:No)、制御部151は、処理を一旦終了する。
【0079】
尚、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う過給機もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0080】
1…車両、10…エンジン、100、101、102、103…過給機、110…コンプレッサ、111…コンプレッサインペラ、112…アクチュエータロッド、113…筒状構造、114…円環構造、115…ベーン、116…ディフューザ、118…エアアシスト噴射孔、120…タービン、121…タービンインペラ、141…アキュムレータ、143…モータ、144…羽根、145…オイル噴射パイプ、146…可変ノズル、151…制御部、152…アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを備える車両に搭載され、ディフューザ、及び前記ディフューザに出し入れ可能に設けられたベーンを有するコンプレッサと、タービンとを備えた過給機であって、
前記ベーンを前記ディフューザに突出させること及び、前記ベーンを前記ディフューザから引き込ませることが可能なベーン駆動手段と、
当該過給機の回転を補助可能な回転補助手段と、
前記車両の加速時に、当該過給機の回転を補助するように前記回転補助手段を制御しつつ、前記ベーンを前記ディフューザから引き込ませるように前記ベーン駆動手段を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする過給機。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記エンジンの作動状態を検出する状態検出手段を含み、
前記車両の加速時に、当該過給機の回転を補助するように前記回転補助手段を制御しつつ、前記検出された作動状態において、前記ベーンが前記ディフューザから引き込んでいる場合の前記コンプレッサの効率が、前記ベーンが前記ディフューザに突出している場合の前記コンプレッサの効率より高いことを条件に、前記ベーンを前記ディフューザから引き込ませるように前記ベーン駆動手段を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の過給機。
【請求項3】
前記タービンは、前記回転補助手段として、前記タービンに流入する気体の流入量を調節可能な可変ノズルを有し、
前記制御手段は、前記車両の加速時に、前記可変ノズルの開度が閉じ側になるように前記可変ノズルを制御しつつ、前記ベーンを前記ディフューザから引き込ませるように前記ベーン駆動手段を制御する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の過給機。
【請求項4】
エンジンを備える車両に搭載され、ディフューザ、及び前記ディフューザに開度可変に設けられたベーンを有するコンプレッサと、タービンとを備えた過給機であって、
前記ベーンの開度を変更可能なベーン駆動手段と、
当該過給機の回転を補助可能な回転補助手段と、
前記車両の加速時に、当該過給機の回転を補助するように前記回転補助手段を制御しつつ、前記ベーンの開度が開き側になるように前記ベーン駆動手段を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−190162(P2010−190162A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37366(P2009−37366)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】