説明

道路情報提供システム

【課題】道路の走行しにくさの情報、特に実際に走行してみなければ分からない道路の情報を車両から入手し、他の車両に情報提供可能な道路情報提供システムを提供する。
【解決手段】道路情報提供システム1は、車両2とデータセンタ3とより構成され、車両2は、自車両の位置を計測する位置計測装置22と、走行しにくい道路状態を数値として検出する検出装置23と、検出手段23により検出された数値のうち予め設定された閾値以上の数値と車両の位置とをデータセンタに送信する通信装置39と、道路情報を表示する表示装置21とを備え、データセンタ3は、閾値以上の数値を送信した車両2の位置と閾値以上の数値とを対応付けて記憶するデータベース35と、閾値以上の数値に基づいて走行しにくさのレベル分けを行う分析装置33と、位置とレベルとを道路情報として車両に送信する通信装置34とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路情報提供システムに係り、特に、車両から道路情報を収集し、それを他の車両に情報提供する道路情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両を運転する者にとっては、渋滞がなく、平坦で、歩行者等が飛び出してくる心配のない走り易い道を走行したいと思うのが常である。
【0003】
そのような運転者のニーズに応えるため、例えば、多数の業務用車両に移動監視装置を搭載させ、それらの車両から送信された撮像情報をセンタで受信して解析し、渋滞や交通規制、天候等の道路の状況を把握してユーザに配信する道路情報管理システムが開発されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、道路に車幅制限や車高制限などがあって運送車両等が通行できない場合があることを踏まえて、積荷の有無により変化する車両の高さや長さ、幅、重量等を入力してセンタに送信し、通行可能な経路をセンタで選定して運送車両等に送り返すナビゲーション装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
さらには、道路の危険箇所や運転者がブレーキをよく踏む箇所を記憶しておき、運転者がその領域に差し掛かってもブレーキを踏まない場合に警告を発する警報装置も提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平11−31295号公報
【特許文献2】特開2001−195690号公報
【特許文献3】特開2002−140775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の道路情報管理システムはあれば有用であるかもしれないが、現在、ラジオ等で渋滞情報や道路規制情報等を放送するなど種々のサービスが普及しており、運転者がそのような情報を入手することは比較的容易である。また、特許文献2に記載の装置も、道路の車幅制限や車高制限等は予め知られた情報であって、その情報を入手することは容易である。
【0007】
特許文献3に記載の警報装置は、運転者の個人差に対応して警報を発することが目的とされているため、車載された装置が想定されており、センタを介して他の運転者に対して情報提供することができない。
【0008】
運転者にとっての走りにくさとは、前記のような渋滞が発生していたり、道路規制があったり、或いは車幅制限や車高制限等があるということだけではなく、実際に走行してみなければ分からない路上駐車の多さや道路を横断する歩行者の多さ、路面の凹凸、路面の滑り易さ等の事情も含まれる。特に、前記事情については運転者が情報を入手することは容易ではなく、そのような情報を入手できる装置やシステムが望まれている。
【0009】
そこで、本発明の目的は、道路の走行しにくさの情報、特に実際に走行してみなければ分からない道路の走行しにくさの情報を車両から入手し、他の車両に情報提供可能な道路情報提供システムを提供することである。また、本発明は、その走行しにくさの情報を取り込んだナビゲーションシステムを提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の問題を解決するために、請求項1に記載の道路情報提供システムは、
車両とデータセンタとより構成され、
前記車両は、
自車両の位置を計測する位置計測装置と、
走行しにくい道路状態を数値として検出する検出装置と、
前記検出手段により検出された前記数値のうち予め設定された閾値以上の数値と前記車両の位置とを前記データセンタに送信する通信装置と、
道路情報を表示する表示装置と
を備え、
前記データセンタは、
前記閾値以上の数値を送信した車両の前記位置と前記閾値以上の数値とを対応付けて記憶するデータベースと、
前記閾値以上の数値に基づいて走行しにくさのレベル分けを行う分析装置と、
前記位置と前記レベルとを前記道路情報として車両に送信する通信装置と
を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、車両に搭載された検出装置により走行しにくい道路状態が数値として検出され、その数値が閾値を越えている場合には走行しにくい道路状態であると判断されて車両の位置とその数値がデータセンタに送信される。また、データセンタは、送信されてきた車両の位置と閾値以上の数値とを対応付けてデータベースに記憶してデータを蓄積し、さらにその数値により表される道路の走行しにくさをレベル分けして道路情報の提供を求める他の車両に送信する。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の道路情報提供システムにおいて、前記表示装置は、前記レベルに応じて前記道路情報の表示方法を変えることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、表示装置は、道路状態の走行しにくさのレベルに応じて、例えば、道路情報に「注意」、「注意大」、「危険」等の文字を付記したり、レベルに応じて色分けをしたりして道路情報を表示する際の表示方法を変える。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の道路情報提供システムにおいて、
前記検出装置には、
前記車両の前方風景を撮像して得た画像を解析して障害物の位置、数および障害物と前記車両との間隔を検出可能な画像処理装置、
人が発する赤外線を感知して自車両の前方を横断する歩行者を検出可能な赤外線検出装置、
前記車両の車輪に作用する上下力、前後力および横力を測定可能な車輪作用力測定装置、
前記車両の減速による加速度を測定可能な減速加速度測定装置
のうちの少なくとも1つが含まれることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、検出装置として、画像処理装置を用いれば、道路わきに駐車中の車両の数や道路上の障害物の数、さらに障害物を避けて通る際の障害物と自車両との間隔等が検出され、赤外線検出装置を用いれば、自車両の前方を横断する歩行者を感知してその数が検出される。また、検出装置として、車輪作用力測定装置を用いれば、車輪に作用する上下力、前後力および横力から路面の凹凸や滑り易さが検出され、減速加速度測定装置を用いれば、運転者が何らかの原因で急ブレーキを踏んだことおよび車両に加わった減速加速度が検出される。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の道路情報提供システムにおいて、前記表示装置は、表示パネルに地図を表示するように構成されており、かつ、前記データセンタから道路情報として送信されてきた前記位置と前記レベルとを前記地図に重畳して表示するように構成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、表示装置の表示パネルに表示された地図上に、走行しにくさの道路情報が重畳されて表示される。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の道路情報提供システムにおいて、
前記車両は、目的地を入力し、かつ、走行しにくい道路状態の経路を回避することの選択を行うことが可能な入力装置を備え、
前記データベースには、地図情報が格納されており、
前記データセンタは、前記目的地および前記選択に基づいて、前記位置の情報と前記地図情報とを整合させて前記目的地に誘導するための経路を選定し、前記選択がなされている場合には前記走行しにくい道路状態の経路を回避した経路を選定し、
前記表示装置は、前記経路を前記地図に重畳して表示するように構成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、目的地を設定して行うナビゲーションにおいて、走行しにくい道路状態の経路を回避することの選択が可能で、この選択が行われた場合には、走行しにくい道路状態の道路を回避して経路が選定される。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、車両に搭載された検出装置により走行しにくい道路状態が数値として検出され、その数値が閾値を越えている場合には走行しにくい道路状態であると判断されて車両の位置とその数値がデータセンタに送信される。また、データセンタは、送信されてきた車両の位置と閾値以上の数値とを対応付けてデータベースに記憶してデータを蓄積し、さらにその数値により表される道路の走行しにくさをレベル分けして道路情報の提供を求める他の車両に送信する。
【0021】
つまり、実際にその道路を走行してみなければ分からない道路の走行のしにくさ、例えば、路上駐車が多い、障害物がある、道路に凹凸がある、道路が滑り易い等の道路状態の情報を、実際に走行した車両から収集し、その道路をこれから走行しようとする他の車両の運転者に情報提供することができる。そのため、他の車両の運転者は、それらの情報に基づいて走行しにくい道路を走行する際には注意を払い、或いは走行しにくい道路を避けて走行するなど的確な対応をとることができ、事故の発生を低減させるとともに、運転者のニーズにあった情報を提供することが可能となる。
【0022】
また、走行しにくさの判断を、運転者が行うのではなく、車載の検出装置が自動的に行うため、運転経験や運転の力量等に基づく運転者の主観に左右されないデータとして検出することができ、それを利用する他の車両の運転者に客観的な汎用性の高い情報を提供することが可能となる。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、表示装置は、道路状態の走行しにくさのレベルに応じて、例えば、道路情報に「注意」、「注意大」、「危険」等の文字を付記したり、レベルに応じて色分けをしたりして道路情報を表示する際の表示方法を変えるようにすることで、前記請求項1に記載の発明の効果に加え、運転者に走行しにくさの度合や危険性を明確に認識させることが可能となる。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、画像処理装置で道路わきに駐車中の車両の数や道路上の障害物の数、障害物を避けて通る際の障害物と自車両との間隔等が検出され、赤外線検出装置で自車両の前方を横断する歩行者を感知してその数が検出され、車輪作用力測定装置で車輪に作用する上下力、前後力および横力から路面の凹凸や滑り易さが検出され、減速加速度測定装置で運転者が何らかの原因で急ブレーキを踏んだことおよび車両に加わった減速加速度が検出される。
【0025】
そのため、前記各請求項に記載の発明の効果に加え、これらの装置を用いることで、渋滞情報や交通規制情報では知ることができず、前記路上駐車車両の多さ等の実際にその道路を走行してみなければ分からない道路情報を自動的にかつ比較的容易に入手することが可能となる。
【0026】
請求項4に記載の発明によれば、表示装置の表示パネルに表示された地図上に、走行しにくさの道路情報が重畳されて表示されるため、前記各請求項に記載の発明の効果に加え、自車両の走行先の道路がどのような状態であるかを明確に認識することが可能となる。
【0027】
請求項5に記載の発明によれば、目的地を設定して行うナビゲーションにおいて、走行しにくい道路状態の経路を回避することの選択が可能で、この選択が行われた場合には、走行しにくい道路状態の道路を回避して経路が選定される。そのため、前記各請求項に記載の発明の効果に加え、運転者の判断により、走行しにくい道路条件を避けた経路を選定させることができ、走行しにくさの情報を取り込んで運転者のニーズにあった経路選定を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係る道路情報提供システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0029】
図1は、本実施形態に係る道路情報提供システムの全体構成を説明する図である。本実施形態の道路情報提供システム1は、複数の車両2および車両2と移動体通信網等を介して通信可能なデータセンタ3により構成されており、車両2の条件設定に基づいてデータセンタ3がナビゲーション情報を送信するナビゲーションシステムをも兼ねている。
【0030】
車両2には、表示入力装置21と、図中ではGPSを表示されている位置計測装置22と、車輪作用力測定装置24等からなる検出装置23と、走行制御装置28とが備えられており、各装置21〜28は車内LANで接続されている。また、各装置21〜28は、通信装置29および移動体通信網を介してデータセンタ3と通信可能とされている。
【0031】
表示入力装置21は、表示装置としての表示パネル41と入力装置としての操作ボタン42とを備えている。表示入力装置21の表示パネル41には、表示入力装置21に内蔵された図示しないハードディスクや図示しないDVD等の記憶媒体に記憶された地図情報に基づいて地図が表示されるようになっている。
【0032】
また、表示入力装置21は、データセンタ3から送信されてくる道路の走行しにくさのレベル分けをされた情報とその位置情報とよりなる道路情報に基づいて、表示パネル41に前記地図にそれらの情報を重畳させて表示させるように構成されている。本実施形態では、表示入力装置21は、道路情報のレベルに応じて道路情報を異なる色で表示するようになっている。なお、データセンタ3から送信されてくる道路情報を、例えば、表示パネル41に「○○m先路上駐車多し」等のように文字で表示したり、或いは音声で伝達するように構成することも可能である。
【0033】
さらに、表示入力装置21は、通常のいわゆるカーナビと同様のナビゲーション機能を有しており、操作ボタン42を操作することにより目的地を設定したり、走行しにくい道路状態の経路を回避することを選択したりすることができるようになっている。表示パネル41には、データセンタ3で選定された経路が線状に表示されるように構成されている。
【0034】
表示入力装置21には、GPS受信機やジャイロセンサ等を用いて構成された位置計測装置22が接続されている。位置計測装置22は、GPS受信機やジャイロセンサ等からの情報に基づいてGPS航法や自律航法の手法を用いて自車両の位置を計測するように構成されている。また、位置計測装置22は、車両2から種々の測定値等がデータセンタ3に送信される際にそれらの測定値等とともに車両2の現在位置の緯度および経度の情報をデータセンタ3に送信するようになっている。
【0035】
本実施形態の車両2には、走行しにくい道路状態を数値である測定値や演算値として検出する検出装置23として、車輪作用力測定装置24、減速加速度測定装置25、赤外線検出装置26および画像処理装置27が搭載されている。
【0036】
本実施形態では、車輪作用力測定装置24には、応力センサが接続されている。応力センサは、道路の路面状態に応じて車輪に作用する前後力、上下力および横力を測定するためのセンサであり、車両2の図示しない車輪の車軸にそれぞれ取り付けられている。車輪作用力測定装置24は、それらの測定値から路面の凹凸および路面の滑り易さを判断し、程度が大きい場合と判断される場合にはその測定値等を通信装置29を介してデータセンタ3に送信するように構成されている。
【0037】
具体的には、車輪作用力測定装置24は、路面の凹凸に関しては、車軸に加わる上下力の閾値と時間と回数とが予め設定されるようになっており、車輪作用力測定装置24は、応力センサから送信されてくる各車輪に加わる上下力の測定値を常時監視し、設定された閾値よりも大きな上下力が設定時間内に設定回数以上生じた場合にその上下力の測定値と回数とをデータセンタ3に送信するように構成されている。
【0038】
また、路面の滑り易さに関しては、車輪作用力測定装置24は、前後力÷上下力から前後方向の滑り易さμ1を演算し、また、横力÷上下力から横方向の滑り易さμ2を演算し、μ1またはμ2が予め設定された閾値より小さい場合に、そのμ1またはμ2の演算値をデータセンタ3に送信するように構成されている。本実施形態では、μ1またはμ2の演算値が0.7を下回るとその値が送信されるようになっている。
【0039】
なお、本実施形態では、4本の車輪の車軸すべてに応力センサを取り付けるようになっているが、例えば、そのうちの1本の車軸のみに取り付けるように構成してもよい。また、特に前記方向の滑り易さμ1の演算においては、前後力÷上下力を演算するかわりに、例えば、ブレーキトルクを測定してブレーキトルク÷上下力から算出するようにすることも可能である。また、車輪作用力測定装置の具体的な構成については、例えば、特開平4−331336号公報、および特開平10−318862号公報に開示されているので、必要ならば参照されたい。
【0040】
減速加速度測定装置25は、急ブレーキにより車両に加わった減速加速度を測定する図示しないセンサを備えている。本実施形態では、減速加速度測定装置25は、センサが測定した減速加速度が0.3G(Gは重力加速度)を越えた場合にその測定値をデータセンタ3に送信するように構成されている。
【0041】
赤外線検出装置26は、車両の前方を横断する歩行者の体温を感知する図示しない赤外線センサを備えている。本実施形態では、赤外線検出装置26は、赤外線センサが測定した単位距離あたりの横断歩行者数が予め設定した閾値を越えた場合にその測定数をデータセンタ3に送信するように構成されている。ただし、赤外線検出装置26は、前述した表示入力装置21における地図情報で自車両が横断歩道から、例えば、10m以内の距離にある場合には、赤外線センサが感知した横断歩行者数が閾値を越えても送信しないようになっている。
【0042】
画像処理装置27は、自車両の前方風景を撮像して得られた画像を解析して、障害物の位置や数、障害物と自車両との間隔を検出するための装置であり、画像処理装置27については本出願人により先に提出された特開平10−283461号公報、特開平10−283477号公報、特開平5−265547号公報、特開平6−266828号公報等に詳述されている。以下、画像処理装置27の構成についてその概略を簡単に説明する。
【0043】
図2は、画像処理装置の回路ブロック図である。画像処理装置27は、主に、距離計測部5と画像処理部6とから構成されている。距離計測部5は、自車両の前方風景を撮像する一対のCCDカメラ51a、51b、イメージプロセッサ52およびメモリ53等から構成されている。
【0044】
イメージプロセッサ52は、CCDカメラ51a、51bで撮像された一対の画像に基づいていわゆるステレオ法により同一の立体物に対する視差から三角測量の原理によりその立体物までの距離を算出する基となる対応する位置のずれ量を求めるようになっている。すなわち、イメージプロセッサ52は、一対の画像に対して、例えば、一方の画像における4×4画素を1ブロックとした小領域に対して他方の画像の同様の小領域を1画素ずつずらしながらいわゆるマッチング処理を行い、対応する位置のずれ量dpを画像中の全画素について求めるようになっている。画素毎のずれ量dpは、メモリ53に保存されるようになっている。
【0045】
画像処理部6は、バスで接続された道路形状検出部61、立体物検出部62、演算部63およびメモリ64等から構成されており、インターフェース回路65を介して距離計測部5のメモリ53に接続されている。また、画像処理部6には、I/Oインターフェース回路66を介して車速センサ67および舵角センサ68が接続されており、処理に必要な自車両の速度やヨーレートのデータが送信されるようになっている。
【0046】
道路形状検出部61は、前記距離計測部5のメモリ53に記憶されている画像の画素毎のずれ量dpから実空間上の点に座標変換し、その中から実際の道路上の白線等を分離して抽出して道路形状を認識するように構成されている。このようにして、道路形状検出部61によって以降の処理の基準となる道路形状が認識されるとともに、その道路が片側何車線の道路であるか等の情報も得られる。
【0047】
立体物検出部62は、道路形状検出部61で検出された道路形状に基づいて、道路表面より上側にあるデータを立体物データとして抽出するように構成されている。具体的には、立体物検出部62は、前記画素毎のずれ量dpに基づいて、図3に示すように実空間上で立体物の距離データを演算により算出し、さらに、それらの距離データをグループ分けして、図4および図5に示すように、自車両前方の立体物を “物体”および“側壁”として検出するようになっている。また、立体物検出部62は、このようにして検出した立体物の速度を演算により求めることができるようになっている。
【0048】
演算部63は、道路形状検出部62で得られた道路形状の情報および立体物検出部62で得られた立体物の情報に基づいて、道路わきに検出された車両で道路に対する速度が0の車両を駐車中の車両と判断し、その駐車中の車両の単位距離あたりの数を算出して、その数が予め設定した閾値を越えた場合にその数をデータセンタ3に送信するように構成されている。
【0049】
また、演算部63は、駐車中の車両や電信柱、ガードレール、歩行者等を除いて道路に対してほぼ静止している立体物を障害物と判断してデータセンタ3に送信し、さらに、その障害物を避けて走行する際の自車両とその障害物との間隔を検出して、その検出値をデータセンタ3に送信するように構成されている。
【0050】
走行制御装置28(図1参照)は、車両2の走行全般を制御するための装置である。なお、走行制御装置28は、車内LANを介して送信されてくる前記表示入力装置21等からの道路情報や移動体通信網を介するデータセンタ3からの指示に応じて、例えば、自動的にシフトダウンさせる等の車両2の自動走行制御を行うように構成されることも可能である。
【0051】
次に、図1に示したように、データセンタ3には、データベースサーバ31と、ナビゲーションサーバ32と、分析サーバ33と、通信サーバ34とが備えられており、それぞれがLANで接続されている。
【0052】
データベースサーバ31は、データベースサーバ31に接続されたデータベース35を管理し、地図情報等の情報が格納されているデータベース35へのデータの保存や読み出し、削除等を行うためのコンピュータである。データベース35の地図情報はナビゲーションにも用いられる。
【0053】
データベースサーバ31は、車両2から送信されてきた数値、すなわち、路面の凹凸に関する車輪に作用する上下力の測定値と回数、路面の滑り易さに関する前後方向のμ1および横方向のμ2の演算値、減速加速度の測定値、単位距離あたりの横断歩行者数、単位距離あたりの駐車車両の数、障害物の情報および自車両とその障害物との間隔の検出値を、同時に送信されてきた車両2の位置の情報と対応付けてデータベース35に記憶させるようになっている。
【0054】
また、データベースサーバ31は、車両2から前記各数値が送信されてきた時刻をもあわせて記憶させるようになっている。さらに、データベースサーバ31は、データベース35に記憶させた前記各数値のデータを図6に示す所定の更新周期が経過した後にそれぞれ削除するように構成されている。
【0055】
ナビゲーションサーバ32は、車両2に対するナビゲーションを行うためのコンピュータであり、車両2に搭載された表示入力装置21から送信されてきた目的地や車両2の現在位置の情報等に基づきデータベース35に記憶された地図情報を参照して経路を探索し、探索の結果選定された経路の情報を車両2に送信するようになっている。
【0056】
また、ナビゲーションサーバ32は、車両2の表示入力装置21で走行しにくい道路を避ける旨の選択があった場合には、選択された走行しにくさの種類、すなわち、路面に凹凸がある道路は避けるとか路上駐車が多い道路は避ける等の選択に応じてそのような道路を通らない経路を選定するように構成されている。
【0057】
分析サーバ33は、本発明の道路情報提供システムの分析装置に相当し、車両2から送信されてきた路面の凹凸等に関する数値に基づいてそれらの数値を走行しにくさに応じてレベル分けするように構成されている。本実施形態では、分析サーバ33は、図6に示したように、自車両とその障害物との間隔(図では実用路幅と表記されている。)、減速加速度および路面の滑り易さμについて、対応する数値範囲に応じてそれぞれ「注意」、「注意大」、「危険」のレベル分けを行うようになっている。
【0058】
また、分析サーバ33は、前記レベル分けを行うと、その結果を車両2の位置や送信されてきた時刻に対応付けられている前記各数値に対応付けてデータベースサーバ31を介してデータベース35に記憶させるように構成されている。なお、図6中の「障害物情報」には、前記駐車車両の数と障害物の情報とが含まれる。
【0059】
通信サーバ34は、車両2との通信を管理するための通信装置であり、ルータ等36を介してデータセンタ3に送信されてきた前記各数値を各サーバ31〜33に配信し、また、各サーバ31〜33から出力された結果をルータ等36を介して車両2に送信するように構成されている。
【0060】
また、通信サーバ34は、車両2から要求があった場合やナビゲーションの指示があった場合に、データベース35から前記各数値に対応付けられた走行しにくさのレベルおよびその位置情報とを道路情報として読み出して、車両2に送信するようになっている。この機能はデータベースサーバ31が担うように構成されていてもよい。
【0061】
次に、本実施形態の道路情報提供システムの作用について説明する。
【0062】
車両2からデータセンタ3への道路情報の送信およびデータセンタ3におけるデータの蓄積は、図7に示すフローチャートに従って行われる。まず、車両2の検出装置23である車輪作用力測定装置24、減速加速度測定装置25、赤外線検出装置26および画像処理装置27において常時それぞれの対象についてのセンシングが行われ(ステップS1)、各装置でその測定値や演算値が設定された閾値を越えたか否かが判定される(ステップS2)。
【0063】
そして、測定値等が閾値を越えたと判定されると、それらの測定値等と位置計測装置22によって計測された車両2の現在位置の緯度および経度の情報とをデータセンタ3に送信する(ステップS3)。
【0064】
データセンタ3のデータベースサーバ31は、図6に示したデータの更新周期に従って更新周期が経過して古くなったデータをデータベース35から削除する(ステップS4)。
【0065】
また、車両2からデータセンタ3に送信があると(ステップS5)、データベースサーバ31は、その測定値等と車両2の位置と送信されてきた時刻とをデータベース35に記憶させる(ステップS6)。また、同時に、分析サーバ33がその測定値や演算値等に基づいて走行しにくさのレベルを判定してレベル分けを行い(ステップS7)、判定されたレベルをその測定値等に対応付けてデータベース35に保存する(ステップS8)。この段階で、データセンタ3から各車両2に新たに追加された道路情報を自動送信するようにしてもよい。
【0066】
次に、このようにしてデータセンタ3に蓄積された走行しにくさの情報が、本実施形態では車両2にどのように情報提供され、どのように表示されるかについて、図8のフローチャートに基づいて説明する。以下の説明では、情報提供と同時に、車両2の現在位置と地図情報とを整合させて目的地に誘導するための経路選択、すなわちナビゲーションを行う場合について述べる。
【0067】
車両2の運転者は、データセンタ3にナビゲーションを行わせるために、まず、表示入力装置21の操作ボタン42等で目的地を設定し(ステップS9)、必要があれば、路面に凹凸がある道路は避ける、路上駐車が多い道路は避ける等の条件設定を行う(ステップS10)。また、出発地を設定したり目的地に向かう途中の経由地を設定する必要がある場合にはこの段階で設定が行われる。そして、これらの設定内容は、位置計測装置22による車両2の現在位置の情報とともに、表示入力装置21から通信装置29および移動体通信網を介してデータセンタ3に送信される(ステップS11)。
【0068】
データセンタ3では、車両2からのナビゲーションの要求があると(ステップS12)、ナビゲーションサーバ32は、目的地と車両2の現在位置、および経由地設定がなされていれば経由地の情報に基づいて、データベース35から地図情報の必要な部分を読み出してノード間距離等を参照して車両2の現在位置と目的地とが最短距離になる経路を探索し、その経路付近の走行しにくさの情報を抽出する(ステップS13)。
【0069】
ナビゲーションサーバ32は、前記条件設定がなければ、前記経路を運転者に推奨すべき経路として選定し(ステップS14)、経路に含まれるノードの緯度および経度とノード間距離等の情報とその経路上およびその付近の走行しにくさの情報のレベルおよび位置を道路情報として車両2に送信する(ステップS15)。
【0070】
また、前記条件設定がなされている場合には、ナビゲーションサーバ32は、前記探索された経路の前記条件に適さない箇所の迂回ルートを地図情報から探索して運転者に推奨すべき経路として選定し(ステップS14)、迂回ルートを含む経路に含まれるノードの緯度および経度とノード間距離等の情報とその付近の走行しにくさの情報のレベルおよび位置を道路情報として車両2に送信する(ステップS15)。
【0071】
車両2の表示入力装置21は、データセンタ3からの送信があると(ステップS16)、表示パネル41に表示された地図に道路情報を重畳させて表示し、あわせて前記ノードの位置に従って前記経路を線状に重畳表示する(ステップS17)。
【0072】
図9および図10は、このようにして表示パネル41に表示される経路および道路情報の表示例を示す図であり、図9は前記条件設定を行わなかった場合、図10は前記条件設定において路面に凹凸がある道路を避ける選択を行った場合を示す。図9および図10に示すように、本実施形態の表示入力装置21では、路面に凹凸がある道路の部分は、データセンタ3から送信されてきた路面の凹凸についての道路情報に含まれる位置情報に基づいてその位置が含まれるセグメント部分、すなわち、ハードディスクやDVD等の記憶媒体に記憶された地図情報におけるノード間をさらに細かく分割した一部分が黒く塗り潰されるようにして表現される。
【0073】
また、図9および図10において、丸で囲まれたGの表示により、以前その地点で他の車両2の運転者が何らかの原因で「注意」レベルのブレーキ、すなわち、普段より強めのブレーキを踏んだことが示され、四角で囲まれたGの表示により「危険」レベルのブレーキ、すなわち、非常に強いブレーキが踏まれたことが示されている。なお、実際には、「注意」レベルは丸で囲まれたGが黄色く表示され、「注意大」レベルでは橙色で、また、「危険」レベルでは赤く色分けされて表示されるようになっている。
【0074】
さらに、図の中央左側には、経路付近の道路情報として、「障害物あり、危険」の表示がなされている。これは、道路上に障害物があり、障害物を避けて通る場合にはその障害物と車両2との間隔が20cm未満の間隔でしかとれず危険な状態であることを示している。なお、図示されていないが、路面が滑り易い道路はその区間に「路面滑り」等の表示がなされ、「注意」、「注意大」、「危険」のそれぞれのレベルで色分けされて表示される。また、単位距離あたりの横断歩行者数が多い場合は「横断多し」、駐車車両が多い場合には「路上駐車多し」等の表示がなされる。
【0075】
なお、これらの表示は、前記のようなナビゲーションにあわせて行う場合のみならず、車両側からデータセンタ3に情報提供の要求を行い、必要な道路情報等を送信させることによっても行うことができる。また、図9および図10に示した表示においては、表示の対象となった事象が発生する時間帯が表示されていないが、データセンタ3から図6に示したデータの時間帯毎の管理における通勤時(混雑時)、昼間、夜間および深夜の情報もあわせて車両2に送信して表示させるようにすることも可能である。
【0076】
以上のように、本実施形態の道路情報提供システムによれば、路面の凹凸や滑り易さ、横断歩行者や路上駐車の多さ、障害物の有無やその障害物を避けて通るときの障害物と自車両との間隔など、実際に走行してみなければ分からない走行しにくい道路状態の情報を車両2からデータセンタ3に送信してデータセンタ3に蓄積し、それらの情報を他の車両2に送信する。また、走行しにくさの度合をレベル分けして運転者に伝達する。
【0077】
そのため、車両2の運転者は、それらの情報に基づいて走行しにくい道路を走行する際には十分に注意を払い、或いは走行しにくい道路を避けて走行するなど的確な対応をとることができ、事故の発生を低減させるとともに、運転者のニーズにあった情報を提供することが可能となる。
【0078】
また、他の検出装置23で原因を検出できず理由は不明だが何らかの原因で運転者が急ブレーキを踏んで強い減速加速度が生じた場合も、運転に危険な道路状態であると判断して運転者に注意を喚起することが可能となる。
【0079】
さらに、本実施形態の道路情報提供システムでは、路上駐車車両の多さ等の判断を車載の検出装置23が自動的に行うので、運転経験や運転の力量等に基づく運転者の主観に左右されないデータとして検出することができ、それを利用する他の車両2の運転者に客観的な汎用性の高い情報を提供することが可能となる。
【0080】
一方、本システムを利用してナビゲーションを行う場合は、運転者の判断により、走行しにくい道路条件を避けた経路を選定させることができるため、走行しにくさの情報を取り込んで運転者のニーズにあった経路選定を行うことが可能となる。
【0081】
なお、本実施形態の車両2に搭載された画像処理装置27は、前述したように、道路形状を認識し、その道路の車線数をも検出することができるから、例えば、画像処理装置27でその道路が片側2車線以上であると検出された場合には、路上駐車の車両数が多くても走行しにくいとは判断しないように構成することもできる。また、データセンタ3のデータベース35の地図情報に各道路の車線数を記憶させておき、前記判断をデータセンタ3で行わせるようにすることも可能である。
【0082】
また、画像処理装置27は、対向車両をも認識することができるから、例えば、片側1車線の道路やカーブが多い山道等で検出される対向車両の数が単位距離または単位時間あたりの閾値を越えた場合にその検出数をデータセンタ3に送信し、対向車両が多い道路についての情報を蓄積させ、他の車両2に情報提供させるように構成することも可能である。
【0083】
さらに、例えば、危険と思われる道路形状のモデルを予め画像処理装置27のメモリ64等に記憶させておき、画像処理装置27がその形状と類似性の高い道路形状を認識した場合に走行しにくいと判断してデータセンタ3にその情報を送信し、情報提供するように構成することも可能である。
【0084】
また、本実施形態においては、複数の車両2による構成を示したが、複数の車両に限定されず、自車両のみからの構成としても良い。さらに、検出装置23として、車輪作用力測定装置24、減速加速度測定装置25、赤外線検出装置26および画像処理装置27が、これらを1つのみ搭載する構成とすることも可能であり、更には、検出装置23はこれらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本実施形態に係る道路情報提供システムの全体構成を説明する図である。
【図2】画像処理装置の回路ブロック図である。
【図3】画素毎のずれ量から算出された実空間上の距離データを示す図である。
【図4】図3の距離データを“物体”と“側壁”とにグループ分けした図である。
【図5】CCDカメラで撮像した画像に“物体”と“側壁”と示す枠線を重ね合わせて表示した状態を表す図である。
【図6】データの更新周期やレベル分けの判断基準等を示す表である。
【図7】車両から送信された測定値等の蓄積手順を示すフローチャートである。
【図8】車両からのナビゲーション要求において道路情報の情報提供を行う手順を示すフローチャートである。
【図9】条件設定を行わない場合に表示パネルに表示される表示例を示す図である。
【図10】条件設定を行った場合に表示パネルに表示される表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
1 道路情報提供システム
2 車両
21 表示入力装置
22 位置計測装置
23 検出装置
24 車輪作用力測定装置
25 減速加速度測定装置
26 赤外線検出装置
27 画像処理装置
29 通信装置
3 データセンタ
33 分析サーバ
34 通信サーバ
35 データベース
41 表示パネル
42 操作ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両とデータセンタとより構成され、
前記車両は、
自車両の位置を計測する位置計測装置と、
走行しにくい道路状態を数値として検出する検出装置と、
前記検出手段により検出された前記数値のうち予め設定された閾値以上の数値と前記車両の位置とを前記データセンタに送信する通信装置と、
道路情報を表示する表示装置と
を備え、
前記データセンタは、
前記閾値以上の数値を送信した車両の前記位置と前記閾値以上の数値とを対応付けて記憶するデータベースと、
前記閾値以上の数値に基づいて走行しにくさのレベル分けを行う分析装置と、
前記位置と前記レベルとを前記道路情報として車両に送信する通信装置と
を備えることを特徴とする道路情報提供システム。
【請求項2】
前記表示装置は、前記レベルに応じて前記道路情報の表示方法を変えることを特徴とする請求項1に記載の道路情報提供システム。
【請求項3】
前記検出装置には、
前記車両の前方風景を撮像して得た画像を解析して障害物の位置、数および障害物と前記車両との間隔を検出可能な画像処理装置、
人が発する赤外線を感知して自車両の前方を横断する歩行者を検出可能な赤外線検出装置、
前記車両の車輪に作用する上下力、前後力および横力を測定可能な車輪作用力測定装置、
前記車両の減速による加速度を測定可能な減速加速度測定装置
のうちの少なくとも1つが含まれることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の道路情報提供システム。
【請求項4】
前記表示装置は、表示パネルに地図を表示するように構成されており、かつ、前記データセンタから道路情報として送信されてきた前記位置と前記レベルとを前記地図に重畳して表示するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の道路情報提供システム。
【請求項5】
前記車両は、目的地を入力し、かつ、走行しにくい道路状態の経路を回避することの選択を行うことが可能な入力装置を備え、
前記データベースには、地図情報が格納されており、
前記データセンタは、前記目的地および前記選択に基づいて、前記位置の情報と前記地図情報とを整合させて前記目的地に誘導するための経路を選定し、前記選択がなされている場合には前記走行しにくい道路状態の経路を回避した経路を選定し、
前記表示装置は、前記経路を前記地図に重畳して表示するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の道路情報提供システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−113836(P2006−113836A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300978(P2004−300978)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】