説明

遮蔽体およびレピータ局

【課題】 近接して配置されたアンテナ間において十分な結合損失量を得る。
【解決手段】 移動局用アンテナ10は、水平面内において広ビームとされると共に垂直面内において狭ビームとされ、基地局用アンテナ12は、水平面内および垂直面内において狭ビームとされている。移動局用アンテナ10と基地局用アンテナ12との間であって、基地局用アンテナ12の直上を覆うように遮蔽体13が支柱14に取り付けられている。遮蔽体13は、網状とされた平面状の導電体からなるひさし部と、該ひさし部が固着されるアーム部、および、該アーム部を支柱14に固着する挟持金具とからなる支持具20とを備えている。遮蔽体13により、移動局用アンテナ10と基地局用アンテナ12との間の結合損失量を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接して取り付けられたアンテナ間の結合を防止できる遮蔽体およびレピータ局に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話網においては多数の基地局を含んで構成されているが、トラフィックが少ないビル内,地下街,山間部などの地域においては通信することができない不感地帯が存在している。これらの不感地帯をカバーするために、レピータ局を設置することが考えられる。レピータ局は、基地局と移動局間の無線信号を受信し増幅して再放射する局であり、有線の伝送路が不要とされるため低コストでサービスエリアを構築することができる。レピータ局の構成の一例を図17に示す。図17に示すレピータ局100において、移動局用アンテナ101は携帯電話機である移動局との間の無線信号の送受信を行うアンテナであり、基地局用アンテナ102は基地局との間の無線信号の送受信を行うアンテナである。ブースタ装置103は、移動局用アンテナ101で受信した移動局からの信号を増幅して、基地局用アンテナ102から所定の送信電力で基地局へ向け再放射させると共に、基地局用アンテナ102で受信した基地局からの信号を増幅して、所定の送信電力で移動局用アンテナ101から移動局へ向け再放射している。
【非特許文献1】NTT DoCoMoテクニカル・ジャーナル Vol.15 No.1 P.30-33 平成19年4月1日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、レピータ局100は不感地対策のために設置されることから、住居が密集する狭所地域や、山岳の渓谷地点といった、設置スペースを確保しにくい場所に設置することが多くされている。そして、レピータ局100は、例えば数十mの地上高の支柱104を備え、この支柱104に移動局用アンテナ101、基地局用アンテナ102およびブースタ装置103が取り付けられて構成されている。この場合、レピータ局100のカバーするエリアを広くするために、移動局用アンテナ101および基地局用アンテナ102は支柱104の上部に取り付けられると共に、高利得で高出力のレピータ局100が望まれている。このようにレピータ局100においては、同じ周波数帯域で動作する基地局用アンテナ102と移動局用アンテナ101が近接して配置されるため、回り込みによる発振が生じる場合があった。
【0004】
このため、移動局用アンテナ101および基地局用アンテナ102において、フロントバック比およびフロントサイド比が高い放射パターンを持つ特性とすることにより、極力回り込みが生じないようにしている。しかしながら、例えばレピータ局100の最大利得が80dBとされる場合に回り込みによる発振を防止するためには、移動局用アンテナ101と基地局用アンテナ102との間の結合損失量を「80dB+マージンM」以上とする必要がある。ここで、マージンMを10dBとすると、移動局用アンテナ101と基地局用アンテナ102との設置間隔Lを、結合損失量として約90dB以上が得られる約6m以上とすることが必要とされる。すると、支柱104は15〜20m程度の高さとされることから移動局用アンテナ101あるいは基地局用アンテナ102の一方の地上高が約10m以下となり、十分なカバー範囲が得られなくなるおそれがあるという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、近接して配置されたアンテナ間において十分な結合損失量を得ることができる遮蔽体およびレピータ局を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の遮蔽体およびレピータ局は、水平面内において広ビームとされると共に垂直面内において狭ビームとされた第1のアンテナと、水平面内および垂直面内において狭ビームとされた第2のアンテナとの間に設置され、網状とされた平面状の導電体からなるひさし部と、該ひさし部が固着されるアーム部、および、該アーム部を前記支柱に固着する挟持金具とからなる支持具とを備え、第1のアンテナより支柱の下方へ取り付けられている第2アンテナの直上を覆うように支柱に取り付けられていることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水平面内において広ビームとされると共に垂直面内において狭ビームとされた第1のアンテナと、水平面内および垂直面内において狭ビームとされた第2のアンテナとの間に結合損失量を向上することのできる遮蔽体が設置されることから、第1のアンテナと第2のアンテナとを近接して設置しても必要とする結合損失量を得ることができる。また、結合損失量が大きくなることから出力利得を向上することができ、レピータ局のカバー範囲を拡張することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施例の遮蔽体を適用した本発明の実施例のレピータ局の構成を示す前方から見た斜視図を図1に、レピータ局の構成を示す後方からみた斜視図を図2に、図1の上部の構成を拡大して示す図を図3に、図2の上部の構成を拡大して示す図を図4に示す。
一般的なレピータ局は、基地局と移動局間の無線信号を受信し増幅して再放射する局であり、有線の伝送路が不要とされるため低コストでサービスエリアを構築することができる。図1ないし図4に示す本発明にかかるこのようなレピータ局1は、高さ15mないし20mのコンクリート柱16を備え、このコンクリート柱16にアンテナが取り付けられる支柱14が一対の取付金具15により取り付けられている。支柱14には、上部に移動局用アンテナ10が取り付けられており、下部に基地局用アンテナ12が取り付けられている。そして、本発明にかかる遮蔽体13が基地局用アンテナ12を覆うように直上に取り付けられている。また、コンクリート柱16の下部にはブースタ装置17と、蓄電箱18と、電源供給盤19が取り付けられている。
【0009】
移動局用アンテナ10は、縦に細長い直方体状のレドームに収納されており、上下に一対設けられた取付具10aにより支柱14に取り付けられている。移動局用アンテナ10とブースタ装置17は、図示しない同軸ケーブルにより接続されている。また、基地局用アンテナ12は、直方体状のレドームに収納されており、一対の取付具12aにより支柱14に取り付けられている。基地局用アンテナ12とブースタ装置17も、図示しない同軸ケーブルにより接続されている。基地局用アンテナ12は、特定の基地局との間の無線信号の送受信を行うアンテナとされ、移動局用アンテナ10は、携帯電話機等の移動局との間の無線信号の送受信を行う不感地帯をカバーするアンテナとされている。基地局用アンテナ12で受信された特定の基地局からのダウンリンク・パスの無線信号は、同軸ケーブルを介してブースタ装置17に供給され、内蔵されている第1系統の増幅手段により電力増幅される。電力増幅された信号は、同軸ケーブルを介して移動局用アンテナ10に供給され、所定の無線電力で不感地帯の移動局に向けて放射される。また、不感地帯の移動局からの無線信号は移動局用アンテナ10により受信され、受信信号は同軸ケーブルを介してブースタ装置17に供給され、内蔵されている第2系統の増幅手段により電力増幅される。電力増幅された信号は、同軸ケーブルを介して基地局用アンテナ12に供給され、所定の無線電力でアップリンク・パスの信号として基地局へ向けて放射される。このように、レピータ局1により不感地帯をカバーすることができる。なお、ダウンリンク・パスとアップリンク・パスとは異なる周波数帯域が割り当てられており、例えば、ダウンリンク・パスの周波数帯域は2150〜2170MHz、アップリンク・パスの周波数帯域は1960〜1980MHzとされている。
【0010】
ここで、レピータ局1における移動局用アンテナ10において周波数fが2110MHzとされた際の垂直面内の指向特性を図5に示し、移動局用アンテナ10の水平面内の指向特性を図6に示す。図5に示すように、移動局用アンテナ10は、垂直方向の放射角度(チルト角ともいう。)が水平方向から約2°地表面方向に向いている。これは、移動局用アンテナ10を垂直位置に設置した場合であっても、地表面方向を、電波の放射(入射)方向とするためである。また、垂直面内の指向特性において、その半値幅は約6〜7°とされている。さらに、図6に示すように移動局用アンテナ10の水平面内の指向特性において、半値幅は約60°とされており、ある程度広範な水平面内の指向特性とされていることにより、携帯電話機等の移動局の通信エリアを確保している。移動局用アンテナ10は、このような垂直面内および水平面内の指向特性とされることにより、レピータ局1の直下方向、及び上空方向の放射を抑止し、周囲に悪影響を与えないようにするとともに、遠距離地域のカバレッジ確保を達成している。なお、チルト角は、レピータ局1の設置環境に応じて、電気的あるいは機械的に角度を適宜調整することができる。
【0011】
さらにまた、基地局用アンテナ12の垂直面内の指向特性を図7に示す。図7に示すように、基地局用アンテナ12については対向対象が無線基地局であることから、鋭敏な指向特性とされており、垂直面内の指向特性における半値幅は約20°程度とされている。なお、基地局用アンテナ12の水平面内の指向特性は図示されていないが、垂直面内の指向特性とほぼ同様の鋭敏な指向特性とされており、その半値幅も約20°とされている。基地局用アンテナ12は、このような垂直面内および水平面内において鋭敏な指向特性とされることにより、無線基地局との電波伝播距離を長距離にわたり確保できるようになると共に、横方向の放射(入射)を防止し、移動局用アンテナ10との結合することを極力抑制している。
ところで、移動局用アンテナ10と基地局用アンテナ12との水平面内における放射方向は約90°とされている。このように、移動局用アンテナ10と基地局用アンテナ12との水平面内の放射方向を約90°として電波が回り込みやすい角度としても、本発明にかかる遮蔽体13が基地局用アンテナ12を覆うように直上に取り付けられていることから、移動局用アンテナ10と基地局用アンテナ12間の結合損失量を大きくすることができる。これにより、ブースタ装置17の適正な電力利得を維持しつつ、所望の方向地域をカバレッジすることができるようになる。
【0012】
ブースタ装置17は、図示しない同軸ケーブルで移動局用アンテナ10及び基地局用アンテナ12と接続され、異なる周波数帯域で伝送されるダウンリンク・パス及びアップリンク・パスの無線電力を、内蔵するそれぞれの系統の増幅手段によりそれぞれ所定の増幅度で電力増幅する。ブースタ装置17は、アップリンク・パスとダウンリンク・パス相互の回り込みによる電波を検出して、DSP(Digital Signal Processor)による信号処理を行うことにより、回り込みによる相互の入射信号の逆位相成分を合成することで、約25dBのキャンセリング機能を実現している。また、最大100dBの増幅利得を備えており、その際必要なアンテナ間の結合損失量としては約90dB以上が必要となる。ブースタ装置17が備える図示しない2系統の増幅手段である高周波増幅回路部では、それぞれアップリンク・パスあるいはダウンリンク・パスの電力増幅が行われる。この高周波増幅回路部の各々は、入力側のバンドバスフィルタと、低雑音増幅器と、利得制御(ゲインコントロール)器と、高電力増幅器及び出力側のバンドパスフィルタとで構成されており、利得制御器は、入力レベルに基づく制御情報に基づいて、所定の出力レベルが得られるように利得制御を行っている。このような構成のブースタ装置17では、低雑音特性を備えるとともに、高出力かつ高利得のブースタ性能を得ることができる。
【0013】
なお、ブースタ装置17は、所定の帯域に渡って電力増幅が可能とされ、入出力に備えられているバンドパスフィルタにより、アップリンク・パスあるいはダウンリンク・パスの周波数帯域に帯域制限される。この結果、アップリンク・パスとダウンリンク・パス間の結合損失量が向上され、レピータ局1における発振等を防止することができる。
ここで、ブースタ装置17と各アンテナ10,12との接続は、それぞれ一本の同軸ケーブルを敷設して接続してもよいし、アップリンク・パスとダウンリンク・パスそれぞれ用の二本の同軸ケーブルを敷設するようにしてもよい。ただし、移動局用アンテナ10、基地局用アンテナ12やブースタ装置17には、アップリンク用とダウンリンク用の同軸接栓が設けられていることから、一本の同軸ケーブルを敷設する場合には、分波器でアップリンク・パスとダウンリンク・パスの信号を分波してそれぞれの同軸接栓に供給するようにする。
【0014】
蓄電箱18には、図示しない蓄電池と、UPS(無停電電源装置)が格納されている。これにより、蓄電箱18からブースタ装置17へ直流又は交流の動作電源を供給することができると共に、停電となった場合においてもブースタ装置17への電力供給を所定時間ではあるが可能とすることができる。また、蓄電箱18内に監視端末機器を格納するようにしてもよい。この監視端末機器を備えることにより、中央指令局からレピータ局1における各機器を遠隔監視することができる。さらに、電源供給盤19には、電力会社の電力線から供給される二相又は三相交流電力の供給接点と、電力使用料精算に用いる積算メータと、分電盤と、ブレーカ等で構成され、非常事態の緊急回避に用いられる外部電源接栓とが備えられている。このため、停電時には発電機が搭載されている移動電源車から外部電源接栓に電源を供給することで、ブースタ装置17への電力供給を行うことができる。
なお、レピータ局1は、図1に示すようにコンクリート柱16の下部に各種機器が屋外に露出する形態で取り付けられていることから、レピータ局1の周囲をフェンス等で囲うことにより各種機器へのアクセスを防止するようにしている。
【0015】
次に、図3に示すように本発明にかかる遮蔽体13は支持具20により移動局用アンテナ10と基地局用アンテナ12との間の支柱14に取り付けられているが、基地局用アンテナ12のレドーム上面と遮蔽体13を取り付けている支持具20との間隔L2は約1mとされている。遮蔽体13の取付位置とされる間隔L2は調整することができ、支柱14をコンクリート柱16に取り付けている一対の取付金具15間の取付間隔L3の範囲内において調整することができる。なお、取付間隔L3は約1mとされている。また、基地局用アンテナ12のレドーム上面と移動局用アンテナ10のレドーム底面との間隔L1は約2mと近接した間隔とすることができる。このように、間隔L1を2mと近接した間隔としても遮蔽体13が基地局用アンテナ12を覆うように直上に間隔L2で配置されていることにより、移動局用アンテナ10と基地局用アンテナ12との結合損失量を遮蔽体13を設置しない場合に比較して約10dB〜約15dB程度改善することができる。すなわち、本発明にかかる遮蔽体13を設置することにより、移動局用アンテナ10と基地局用アンテナ12の結合損失量を機構的に改善することができる。
【0016】
また、基地局用アンテナ12におけるレドーム上面の取り付け位置を支柱14の下端から約4m程度の位置とすることができる。これにより、基地局用アンテナ12の設置位置をコンクリート柱16の上端より上方に設置することができ、基地局用アンテナ12を約11〜16mの地上高で配置することができるようになる。
したがって、本発明の遮蔽体13を用いることにより、基地局用アンテナ12の設置を移動局用アンテナ10に近接した位置に設置することが可能となり、基地局用アンテナ12をより高い位置に設置することが可能となる。このため、対向する無線基地局との無線伝送路の確保が容易となり、柔軟なレピータ局1の置局設計を行なうことができる。
【0017】
次に、本発明の実施例にかかる遮蔽体13の構成を図8ないし図12に示す。図8は、遮蔽体13の構成を示す側面図であり、図9は遮蔽体13の構成を示す正面図であり、図10は遮蔽体13の構成を示す平面図であり、図11は遮蔽体13を組み立てる態様を示す斜視図であり、図12は遮蔽体13を組み立てた状態を示す斜視図である。
これらの図に示す遮蔽体13は、ほぼ中央部に保持部13bが設けられているメッシュ板からなるひさし部13aと、ひさし部13aが取り付けられている支持具20とから構成されている。ひさし部13aは、図9に示すように中央部が折曲されてくの字状に形成されており、そのほぼ中央部を挟持するように細長い平面状の保持部13bが設けられている。保持部13bには長孔13cが長軸方向に沿って2カ所に形成されている。一方、支持具20は断面が矩形状のアーム部20aと、アーム部20aの後部に固着されている三角形状の補強部20bと、アーム部20aの後部に延伸するよう取り付けられている一対の金具からなる挟持金具22から構成されている。
【0018】
ひさし部13aはメッシュ板から構成されているが、メッシュ板とするのは重量を軽減すると共に、風圧の影響を軽減するためであり、雪害の影響も抑えることができる。また、ひさし部13aをくの字状とすることにより積雪が落下しやすくなると共に、鳥がとまれないようになって鳥害を防止することができるようになる。ひさし部13aを構成するメッシュ板のメッシュ幅は約□1cm〜約□2cm程度とされている。一般に、携帯電話網の使用周波数である2GHz帯においては波長が約150mmとされ、1/4波長では約37mmとなることから、使用周波数の波長に対してメッシュ幅は十分小さくされている。これにより、遮蔽体13はメッシュ構造とされていても必要とする電波が透過することなく電波漏洩機能を奏することから、移動局用アンテナ10と基地局用アンテナ12とが結合することを充分に抑制することができる。なお、メッシュ幅は上記の範囲に限定されるものではなく、使用周波数の電波が漏洩しないメッシュ幅であれば任意のメッシュ幅とすることができる。なお、ひさし部13aの形状をくの字状にすることなく平面状の形状としてもよい。また、くの字状のひさし部13aの先端の幅は、少なくとも基地局用アンテナ12のレドーム幅とされる。この場合、ひさし部13aの先端の幅を基地局用アンテナ12のレドーム幅以上の幅としても結合損失量の向上にはさほど影響を与えないが、レドーム幅より狭くすると結合損失量が劣化するようになる。
【0019】
このような構成のひさし部13aは、図11に示すように保持部13bに形成されている長孔13cのそれぞれにボルト21を挿通して、ボルト21を支持具20のアーム部20aに形成されている2つのネジ穴にそれぞれ螺着することにより、図12に示すようにアーム部20aに固着されている。この場合、ボルト21を緩めてひさし部13aを長孔13cに沿って移動させることにより、取付位置をアーム部20aの長手方向に沿って調整することができる。なお、遮蔽体13のひさし部13aを長孔13cに沿ってアーム部20aに対して前後に動かすことにより、移動局用アンテナ10と基地局用アンテナ12との結合損失量を調整することができる。また、半円形の折曲部を有する一対の金具からなる挟持金具22は、一端部が三角形状の補強部2bと共にアーム部20aの後部に2本のボルトとナットにより図示するように固着されている。そして、挟持金具22の一方の金具の先端部に形成されている挿通孔に挿通された締着ボルト23は、挟持金具22の他方の金具の先端部に形成されているネジ孔に螺合される。挟持金具22は支柱14を挟持する金具であり、締着ボルト23を緩めることにより遮蔽体13の取付位置および方向を調整することができ、締着ボルト23を締着することにより支柱14を挟持金具22が挟持するようになって、支柱14に遮蔽体13を固着することができるようになる。
【0020】
この場合、1本の締着ボルト13を緩めたり締め付けたりすることにより、遮蔽体13を支柱14から取り外したり取り付けたりすることができることから、遮蔽体13を容易に支柱14から脱着することができるようになる。従って、レピータ局1の設置後であっても、追加的に遮蔽体13を取り付けることができるとともに、支柱14に対する遮蔽体13の設置位置を容易に変更することができる。これにより、所望の結合損失量を容易に得ることができると共に、得るための調整を容易に行うことができるようになる。
また、このひさし部13aは、図11に示すように二対のボルト・ナットのセットでアーム部20aに組みつけられている。したがって、レピータ局1の保全時において、遮蔽体13が不要となった場合には容易に取り外すことができる。
【0021】
ここで、本発明にかかる遮蔽体13を設置した本発明にかかるレピータ局1と、遮蔽帯13を設置しないレピータ局において、移動局用アンテナ10と基地局用アンテナ12との角度を所定の角度とした場合の結合損失量の試験結果を図13の図表に示す。図13の図表において、「Output Power」は移動局用アンテナ10の送信電力であり、「Isolation」は移動局用アンテナ10と基地局用アンテナ12間の結合損失量である。
図13を参照すると、遮蔽体13がない場合に比べて遮蔽体13を設置した本発明では結合損失量を典型的には約10dB〜約15dB程度改善することができる。この場合、リピータ局Aないしリピータ局Uにおいて移動局用アンテナ10と基地局用アンテナ12との間のアンテナ間角度はそれぞれ異なっており、アンテナ間角度は約40°ないし約170°とされている。このアンテナ間角度が大きいほど、遮蔽体13を設置することにより結合損失量の改善度や出力利得の改善度が大きくなる傾向にあるが、アンテナ間角度が小さい場合においてもそれなりに結合損失量や出力利得を改善することができる。そして、移動局用アンテナ10の送信電力を出力利得の改善度分だけ向上させることができる。なお、本発明のレピータ局では、「結合損失量+10dB」まで利得を設定することが可能とされている。
【0022】
ところで、レピータ局1を置局した際に対向する無線基地局からの入射電力が思いの他、低い場合がある。これとともに、対向する無線基地局に隣接する無線基地局からのマルチパス信号を基地局用アンテナ12が受信してしまう場合がある。このようなときに、携帯電話機等の移動局においては、移動局用アンテナ10からマルチパス信号も再放射されてしまうことから、到来する受信信号の選択性が悪化するようになり、適正な通信性能を得ることができなくなる。あるいは、複数の無線パスを常時保持することになり無線リソースの枯渇を招く恐れがある。
【0023】
この場合、隣接する無線基地局から到来するマルチパス信号の到来方向はわからないが、対向する無線基地局の方向はわかっている。そこで、レピータ局1を隣接する無線基地局におけるレピータ局とするように、基地局用アンテナ12の方向をずらせて対向する無線基地局からの受信信号のレベルを低下させる。これにより、基地局用アンテナ12では主に隣接する基地局からの信号を受信することになることから、上記した問題は生じないようになる。しかし、基地局用アンテナ12の方向を変えるには取付具12aを緩めて、所定の方向に向けてから再度締め付けるという作業が必要となる。この作業は、コンクリート柱16に登り重量のある基地局用アンテナ12を支えながら行う必要があることから負担のかかる作業となる。また、この作業はレピータ局毎に異なる内容の作業となることから施工の標準化を行うことができないことになる。
【0024】
そこで、遮蔽体13のひさし部13aを長孔13cに沿ってアーム部20aに対して前後に動かすことにより、ひさし部13aの取付位置を調整して対向する無線基地局からの直接波を遮蔽することにより、その受信信号のレベルを低下させる。これにより、移動局において受信信号の選択性を向上することができる。この場合、対向する無線基地局に対する基地局用アンテナ12の向きを変えることなく対向する直線方向に統一することができる。従って、施工の標準化を行うことができる。また、近隣環境の地形の変化(ビルの建築等)により、近隣基地局からのマルチ・パス信号が微弱になった場合は、ひさし部13aの取付位置を調整して対向する無線基地局からの受信信号のレベルを向上させることにより、対向する基地局のレピータ局とすることができる。このように、簡易な作業を行うことで受信信号の調整をすることができると共に、置局施工を容易に行え保守・管理をも容易に行えるようになる。なお、遮蔽体13のひさし部13aを長孔13cに沿ってアーム部20aに対して前後に動かすことにより、移動局用アンテナ10と基地局用アンテナ12との結合損失量も調整できることは前述したとおりである。
【0025】
以上説明した本発明にかかるレピータ局1においては、移動局用アンテナ10と基地局用アンテナ12との水平面内における放射方向のなす角度が約90°とされているが、この角度に限られるものではなく、基地局用アンテナ12が対向する基地局の位置やカバーする不感帯地域の位置に応じて異なるようになる。そこで、移動局用アンテナ10と基地局用アンテナ12との水平面内における放射方向のなす角度を約180°としたレピータ局1の例を図14および図15に示す。この例におけるレピータ局1の構成を示す前方から見た斜視図が図14に、この例におけるレピータ局1の構成を示す後方からみた斜視図が図15に示されている。
これらの図に示すように、移動局用アンテナ10と基地局用アンテナ12との水平面内における放射方向は約180°とされている。このように、移動局用アンテナ10と基地局用アンテナ12との水平面内の放射方向を約180°とすると、回り込みが少なくなって移動局用アンテナ10と基地局用アンテナ12間の結合損失量をより大きくすることができる。これにより、ブースタ装置17の適正な電力利得を維持しつつ、所望の方向地域をカバレッジすることができる。
【0026】
次に、本発明にかかるレピータ局1における移動局用アンテナ10と基地局用アンテナ12が放射する電波の偏波面について図16を参照して説明する。ただし、図16においては遮蔽体13は省略して示している。
移動局の代表的な例とされる携帯電話機は、通話する際において携帯電話機を把持しながら耳にかざす使用態様とされる。すると、携帯電話機の本体が垂直方向よりやや斜め方向に傾斜していることになり、携帯電話機から放射される電波の偏波面も傾斜することになる。そこで、移動局用アンテナ10から放射される電波の偏波方向を傾ければ、携帯電話機等の移動局との間で最良の通信を行えるようになる。この原理に基づいて、移動局用アンテナ10から放射される電波の偏波方向が約45°傾斜するようにされている。この場合、図16に示すように移動局用アンテナ10における偏波方向の傾斜角度は約−45°とされている。この偏波方向に直交するように、基地局用アンテナ12に対向する基地局アンテナ50から放射される電波の偏波方向は約+45°とされている。そして、基地局アンテナ50の偏波方向と基地局用アンテナ12の偏波方向は揃えられているが、基地局用アンテナ12の前面は基地局アンテナ50の前面に白抜きの矢印で示すように向かい合っていることから、基地局用アンテナ12の偏波方向は約−45°となる。また、基地局用アンテナ12に対して移動局用アンテナ10の向きは約180°とされて、基地局用アンテナ12と移動局用アンテナ10の後面同士が向かい合っているようになっている。このように、基地局アンテナ50および基地局用アンテナ12が扱う電波の偏波方向に対して移動局用アンテナ10が扱う電波の偏波方向はほぼ直交するようになる。従って、直交する偏波方向とされる移動局用アンテナ10と基地局用アンテナ12との間の結合損失量は、より向上されるようになる。
【0027】
また、無線基地局の基地局アンテナ50の偏波面と、移動局用アンテナ10の偏波面を異なる方向とすることができるので、移動局がレイク受信機能を備え無線基地局からの直接波を受信できる場合には、これを第2受信信号として活用することができ、移動局においてより好適な受信環境を得ることができる。
なお、レピータ局1に使用する移動局用アンテナ10として、マクロセル基地局に用いる偏波ダイバーシティアンテナを用いることができる。これにより、基地局用アンテナ12との相互結合が比較的問題とならないレピータ局においては、ブースタ装置17と同軸ケーブルで接続する接栓部分において、入出力を物理的に入れ替えて対向無線基地局と同じ偏波面による再放射を可能とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上説明したように、本発明のレピータ局においては、移動局用アンテナと基地局用アンテナとの間に本発明にかかる遮蔽体を設けることで、電波の回り込みを極力防止して相互に結合することを抑止することができる。
以上の説明では、移動局用アンテナが単数の場合における単一セル構成の場合についてのレピータ局について説明したが、移動局用アンテナを2本以上備え、移動局の対向方向を分波して中継するレピータ局においても、本発明にかかる遮蔽体を用いることにより本発明にかかるレピータ局と同等の作用効果を得ることができる。
また、予め支柱に移動局用アンテナ、遮蔽体および基地局用アンテナを取り付けてユニット化しておき、コンクリート柱の先端に備えた滑車機構を利用して、ユニット化した支柱を吊り上げて施行するようにしてもよい。これによれば、施行工程を簡略化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例のレピータ局の構成を示す前方から見た斜視図である。
【図2】本発明の実施例のレピータ局の構成を示す後方から見た斜視図である。
【図3】本発明の実施例のレピータ局の上部の構成を拡大して示す前方から見た斜視図である。
【図4】本発明の実施例のレピータ局の上部の構成を拡大して示す後方から見た斜視図である。
【図5】本発明の実施例のレピータ局における移動局用アンテナの垂直面内の指向特性を示す図である。
【図6】本発明の実施例のレピータ局における移動局用アンテナの水平面内の指向特性を示す図である。
【図7】本発明の実施例のレピータ局における基地局用アンテナの垂直面内の指向特性を示す図である。
【図8】本発明の実施例にかかる遮蔽体の構成を示す側面図である。
【図9】本発明の実施例にかかる遮蔽体の構成を示す正面図である。
【図10】本発明の実施例にかかる遮蔽体の構成を示す平面図である。
【図11】本発明の実施例にかかる遮蔽体を組み立てる態様を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施例にかかる遮蔽体を組み立てた状態を示す斜視図である。
【図13】本発明にかかる遮蔽体を設置した場合と、設置しなかった場合の移動局用アンテナと基地局用アンテナ間の結合損失量の試験結果を示す図表である。
【図14】本発明にかかるレピータ局において、移動局用アンテナと基地局用アンテナとのなす角度を約180°とした構成を示す前方から見た斜視図である。
【図15】本発明にかかるレピータ局において、移動局用アンテナと基地局用アンテナとのなす角度を約180°とした構成を示す後方から見た斜視図である。
【図16】本発明にかかるレピータ局における移動局用アンテナと基地局用アンテナが放射する電波の偏波面を説明するための図である。
【図17】従来のレピータ局の構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 レピータ局、2b 補強部、10 移動局用アンテナ、10a 取付具、12 基地局用アンテナ、12a 取付具、13 締着ボルト、13 遮蔽体、13a ひさし部、13b 保持部、13c 長孔、14 支柱、15 取付金具、16 コンクリート柱、17 ブースタ装置、18 蓄電箱、19 電源供給盤、20 支持具、20a アーム部、20b 補強部、21 ボルト、22 挟持金具、23 締着ボルト、50 基地局アンテナ、100 レピータ局、101 移動局用アンテナ、102 基地局用アンテナ、103 ブースタ装置、104 支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面内において広ビームとされると共に垂直面内において狭ビームとされた第1のアンテナと、水平面内および垂直面内において狭ビームとされた第2のアンテナとが支柱に沿って上下に配列されており、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとの間に設置される遮蔽体であって、
両側が下方へ傾斜した屋根状の形状とされている網状とされた平面状の導電体からなるひさし部と、
該ひさし部が固着されるアーム部と、該アーム部を前記支柱に固着する挟持金具とからなり、前記ひさし部の前記アームに対する取付位置を前後に調整可能な支持具とを備え、
前記第1のアンテナより前記支柱の下方へ取り付けられている前記第2アンテナの直上を覆うように前記支柱に取り付けられていることを特徴とする遮蔽体。
【請求項2】
前記ひさし部は、網状とされた平面状の導電体と、該導電体のほぼ中央部に設けられている板状の保持部とから構成されており、該保持部に複数の長孔が形成されており、該長孔に挿通されたボルトが前記アーム部に螺合されることにより、前記ひさし部の前記アームに対する取付位置を前後に調整可能とされていることを特徴とする請求項1記載の遮蔽体。
【請求項3】
不感地帯をカバーするためのレピータ局であって、
水平面内において広ビームとされると共に垂直面内において狭ビームとされ、不感地帯へ向けられた移動局用アンテナと、
水平面内および垂直面内において狭ビームとされ、基地局へ向けられた基地局用アンテナと、
前記移動局用アンテナと前記基地局用アンテナとが上下に配列されて取り付けられている支柱と、
前記移動局用アンテナと前記基地局用アンテナとの間であって、下方へ取り付けられている前記基地局用アンテナの直上を覆うように前記支柱に設置される遮蔽体と、
前記基地局用アンテナにより受信された信号を増幅して前記移動局用アンテナから放射すると共に、前記移動局用アンテナにより受信した信号を前記基地局用アンテナから放射するブースタ装置とを備え、
前記遮蔽体は、両側が下方へ傾斜した屋根状の形状とされ網状とされた平面状の導電体からなるひさし部と、該ひさし部が前後に調整可能に固着されるアーム部、および、該アーム部を前記支柱に固着する挟持金具とからなる支持具とを有していることを特徴とするレピータ局。
【請求項4】
前記移動局用アンテナの偏波面と前記基地局用アンテナの偏波面とがほぼ直交していることを特徴とする請求項3記載のレピータ局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−4338(P2010−4338A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161636(P2008−161636)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(501440684)ソフトバンクモバイル株式会社 (654)
【出願人】(000219820)株式会社トーエネック (51)
【Fターム(参考)】