説明

遷移金属化合物、オレフィン重合用触媒およびポリオレフィンの製造方法

【課題】優れたオレフィンの重合活性および共重合性を有し、コモノマー含量の高いポリマーを製造することができるオレフィン重合用触媒の活性成分となる新規遷移金属化合物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(I)で表される遷移金属化合物(A)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な遷移金属化合物、該化合物を含むオレフィン重合用触媒および該オレフィン重合用触媒を用いたポリオレフィンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来エチレン重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体などのオレフィン重合体を製造するための触媒として、チタン化合物と有機アルミニウム化合物とからなるチタン系触媒、およびバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒が知られている。
【0003】
また、高い重合活性でオレフィン重合体を製造することのできる触媒としてジルコノセンなどのメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)とからなるチーグラー型触媒が知られている。
【0004】
さらに最近新しいオレフィン重合用触媒として、本出願人は特開平11−315109号公報の一般式(I)で表されるサリチルアルドイミン配位子を有する遷移金属化合物を提案している。この錯体は高いオレフィン重合活性を示すことが明らかとなっているが、その重合活性に関してはさらなる改善が求められている。さらに前記遷移金属化合物の、2種類以上のオレフィンを共重合する際の重合活性および共重合性は、十分に満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−315109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、優れたオレフィンの重合活性および共重合性を有し、コモノマー含量の高いポリマーを製造することができるオレフィン重合用触媒の活性成分となる新規遷移金属化合物、ならびに該化合物を含むオレフィン重合用触媒を提供することである。前記コモノマーとは、共重合させるモノマーの中で、重合性の最も高いモノマー以外のモノマーのことである。さらに本発明の課題は、そのようなオレフィン重合用触媒を用いたポリオレフィンの製造方法を提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討をした結果、サリチルアルドイミン配位子にメタロセン骨格を導入した構造を有する遷移金属化合物をオレフィン重合用触媒として用いることにより、優れたオレフィンの重合活性および共重合性で、コモノマー含量の高いポリマーを製造することができることを見出して本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明にかかる遷移金属化合物(A)は、下記一般式(I)で表される。
【0009】
【化1】

上記一般式(I)において、M1は周期律表第4〜6族の遷移金属原子を示し、
2は周期律表第6〜10族の遷移金属原子を示し、
1〜R14は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、
1〜R5のうちの2個以上が互いに連結して環を形成してもよく、
6〜R9のうちの2個以上が互いに連結して、それらの結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒に芳香族環またはヘテロ環あるいは脂肪族環を形成してもよく、形成される環は単数でも複数でもよく、
10〜R14のうちの2個以上が互いに連結して、それらの結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒に芳香族環またはヘテロ環あるいは脂肪族環を形成してもよく、形成される環は単数でも複数でもよく、
mは1〜4の整数を示し、mが2以上の場合には、一つの配位子に属するR1〜R14のいずれかと別の配位子に属するR1〜R14のいずれかとが、直接、あるいは炭素数1以上の炭化水素基で連結されていてもよく、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、
nはM1の価数を満たす数であり、nが2以上の場合は、複数存在するXで示される基は互いに同一でも異なっていてもよく、また複数存在するXで示される基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0010】
前記一般式(I)で表わされる遷移金属化合物(A)において、M2はクロム原子、鉄原子、ルテニウム原子、コバルト原子またはニッケル原子であることが好ましい。
前記一般式(I)で表わされる遷移金属化合物(A)において、M1は周期律表第4族の金属原子であることが好ましい。
本発明のオレフィン重合用触媒は、このような遷移金属化合物(A)を含むことを特徴としている。
【0011】
また、本発明のオレフィン重合用触媒は、
[A]前記一般式(I)で表わされる遷移金属化合物(A)と、
[B](B−1)有機金属化合物、
(B−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B−3)遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物
からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と
を含むことが好ましい。
【0012】
本発明のポリオレフィンの製造方法は、上記オレフィン重合用触媒の存在下に、オレフィンを重合または共重合させることを特徴としている。
なお、本明細書において「重合」という語は、単独重合だけでなく、共重合をも包含した意味で用いられることがあり、「重合体」という語は、単独重合体だけでなく、共重合体をも包含した意味で用いられることがある。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る、サリチルアルドイミン配位子にメタロセン骨格を導入した遷移金属化合物(A)を含むオレフィン重合用触媒は、良好なオレフィン重合活性を示し、また2種類以上のオレフィンを前記オレフィン重合用触媒の存在下に共重合したときに、良好なオレフィン重合活性でコモノマー含量の高いオレフィン共重合体を得ることができる。
【0014】
当該効果は、上記一般式(I)で表わされる遷移金属化合物(A)における、(i)メタロセン部の三次元的かさ高さによる活性向上、(ii)メタロセン部のシクロペンタジエニル環の平面性による高コモノマー取り込み性、および(iii)メタロセン部の特異な電子的性質による高極性コモノマー取り込み性、に起因すると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<オレフィン重合用触媒>
以下、本発明におけるオレフィン重合用触媒について具体的に説明する。
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、前記一般式(I)で表される新規な遷移金属化合物(A)を含み、さらに、[B]有機金属化合物(B−1)、有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)および遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B−3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。前記遷移金属化合物(A)も、本発明により提供されるものである。なお、本明細書においてオレフィンとは、重合性二重結合を有するあらゆる化合物を指す。以下、遷移金属化合物(A)、化合物[B]の順に詳細に説明する。
【0016】
〔(A)遷移金属化合物〕
本発明のオレフィン重合用触媒を構成する遷移金属化合物(A)は、下記一般式(I)で表される化合物である。
【0017】
【化2】

上記式(I)において、N…M1は一般的にはNがM1に配位していることを示すが、本発明においては配位していてもしていなくてもよい。
【0018】
一般式(I)中、M1は周期律表第4〜6族の遷移金属原子を示し、具体的にはチタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、バナジウム原子、ニオブ原子、タンタル原子、クロム原子、モリブデン原子またはタングステン原子である。好ましくはM1は、周期律表第4族の金属原子であり、具体的にはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、特に好ましくはチタン原子である。
【0019】
2は周期律表第6〜10族の遷移金属原子を示し、具体的にはクロム原子、モリブデン原子、タングステン原子、マンガン原子、テクネチウム原子、レニウム原子、鉄原子、ルテニウム原子、オスミウム原子、コバルト原子、ロジウム原子、イリジウム原子、ニッケル原子、パラジウム原子または白金原子である。好ましくはM2は、クロム原子、鉄原子、ルテニウム原子、コバルト原子またはニッケル原子であり、特に好ましくは鉄原子である。
【0020】
1〜R14は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、R1〜R5のうちの2個以上、R6〜R9のうちの2個以上、またはR10〜R14のうちの2個以上は、互いに連結して環を形成してもよい。
【0021】
前記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
前記炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基などの炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;
ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルケニル基;
エチニル基、プロパルギル基など炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルキニル基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基;
シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素数5〜30の環状不飽和炭化水素基;
フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;
トリル基、iso−プロピルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジ−t−ブチルフェニル基などのアルキル置換アリール基;などが挙げられる。
【0022】
上記炭化水素基は、水素原子がハロゲンで置換されていてもよく、そのような水素原子がハロゲンで置換された炭化水素基として、たとえば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、クロロフェニル基などの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
【0023】
また、上記炭化水素基は、他の炭化水素基で置換されていてもよく、そのような炭化水素基で置換された炭化水素基として、たとえば、ベンジル基、クミル基などのアリール基置換アルキル基などが挙げられる。
【0024】
さらにまた、上記炭化水素基は、ヘテロ環式化合物残基;
アルコシキ基、アリーロキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基などの酸素含有基;
アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、アミノ基がアンモニウム塩となったものなどの窒素含有基;
ボランジイル基、ボラントリイル基、ジボラニル基などのホウ素含有基;
メルカプト基、チオエステル基、ジチオエステル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオアシル基、チオエーテル基、チオシアン酸エステル基、イソチアン酸エステル基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフェニル基などのイオウ含有基;
ホスフィド基、ホスホリル基、チオホスホリル基、ホスファト基などのリン含有基;
ケイ素含有基;ゲルマニウム含有基;またはスズ含有基を有していてもよい。
【0025】
前記ヘテロ環式化合物残基としては、ピロール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、トリアジンなどの含窒素化合物、フラン、ピランなどの含酸素化合物、チオフェンなどの含硫黄化合物などの残基、およびこれらのヘテロ環式化合物残基に炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基、アルコキシ基などの置換基がさらに置換した基などが挙げられる。
【0026】
前記ケイ素含有基としては、シリル基、シロキシ基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基などが挙げられ、より具体的には、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチル−t−ブチルシリル基、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリル基などが挙げられる。これらの中では、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基などが好ましく、特にトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基が好ましい。前記炭化水素置換シロキシ基として具体的には、トリメチルシロキシ基などが挙げられる。
【0027】
前記ゲルマニウム含有基または前記スズ含有基としては、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムまたはスズに置換した基が挙げられる。
上記炭化水素基が有していてもよい基として挙げた基のうち、
アルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などが挙げられ、
アリーロキシ基として具体的には、フェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、2,4,6−トリメチルフェノキシ基などが挙げられ、
エステル基として具体的には、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、メトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、p−クロロフェノキシカルボニル基などが挙げられ、
アシル基として具体的には、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、p−クロロベンゾイル基、p−メトキシベンゾイル基などが挙げられ、
アミノ基として具体的には、ジメチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられ、
イミノ基として具体的には、メチルイミノ基、エチルイミノ基、プロピルイミノ基、ブチルイミノ基、フェニルイミノ基などが挙げられ、
アミド基として具体的には、アセトアミド基、N−メチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基などが挙げられ、
イミド基として具体的には、アセトイミド基、ベンズイミド基などが挙げられ、
チオエステル基として具体的には、アセチルチオ基、ベンゾイルチオ基、メチルチオカルボニル基、フェニルチオカルボニル基などが挙げられ、
アルキルチオ基として具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられ、
アリールチオ基として具体的には、フェニルチオ基、メチルフェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられ、
スルホンエステル基として具体的には、スルホン酸メチル基、スルホン酸エチル基、スルホン酸フェニル基などが挙げられ、
スルホンアミド基として具体的には、フェニルスルホンアミド基、N−メチルスルホンアミド基、N−メチル−p−トルエンスルホンアミド基などが挙げられる。
【0028】
上記炭化水素基としては、特に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基などの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;
フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;
これらのアリール基にハロゲン原子、炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基もしくはアリーロキシ基などの置換基が1〜5個置換した置換アリール基が好ましい。
【0029】
1〜R14は、前述のようにヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基になり得るが、これらの例としては、上記炭化水素基の説明にて例示したものと同様のものが挙げられる。
【0030】
前述のように、上記一般式(I)のR1〜R5のうちの2個以上の基は、たがいに連結して環を形成してもよい。より具体的には、R1〜R5のうちの2個以上の基、好ましくは隣接する基は、互いに連結して脂肪族環、芳香環または、窒素原子などのヘテロ原子を含む炭化水素環などの環を形成してもよく、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。
【0031】
前述のように、上記一般式(I)のR6〜R9のうちの2個以上は、たがいに連結して環を形成してもよい。より具体的には、R6〜R9で示される基は、それらのうちの2個以上が互いに連結して、それらの結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒に芳香族環またはヘテロ環あるいは脂肪族環を形成してもよい。シクロペンタジエニル環に隣接して形成される環の数は単数でも複数でもよい。また前記ヘテロ環とは、窒素原子などのヘテロ原子を含む炭化水素環である。
【0032】
また前述のように、上記一般式(I)のR10〜R14のうちの2個以上は、互いに連結して環を形成してもよい。より具体的には、R10〜R14で示される基は、それらのうちの2個以上が互いに連結して、それらの結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒に芳香族環またはヘテロ環あるいは脂肪族環を形成してもよい。シクロペンタジエニル環に隣接して形成される環の数は単数でも複数でもよい。なお、前記ヘテロ環とは、窒素原子などのヘテロ原子を含む炭化水素環である。
【0033】
上記一般式(I)において、mは1〜4の整数を示し、好ましくは1または2であり、特に好ましくは2である。
また、mが2以上の場合には、一つの配位子に属するR1〜R14のいずれかと、別の配位子に属するR1〜R14のいずれかとが、直接、あるいは炭素数1以上の炭化水素基で連結されていてもよい。すなわちその場合には、二つの配位子が連結(架橋)されることになる。なお、前記配位子とは上記一般式(I)においてM1n以外の部分であり、構造式で示せば以下の通りである。
【0034】
【化3】

前記炭素数1以上の炭化水素基としては、上記R1〜R14の説明で例示したものと同様のものが挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、アイコシル基などのアルキル基;
シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの炭素原子数が3〜30のシクロアルキル基;
ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基などのアルケニル基;
ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などのアリールアルキル基;
フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などのアリール基などが挙げられる。
【0035】
さらに、mが2以上の場合には複数存在するR1同士、R2同士、R3同士、R4同士、R5同士、R6同士、R7同士、R8同士、R9同士、R10同士、R11同士、R12同士、R13同士、R14同士は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0036】
上記一般式(I)においてXは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示す。
【0037】
前記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
前記炭化水素基としては、上記R1〜R14の説明で例示したものと同様のものが挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、アイコシル基などのアルキル基;
シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの炭素原子数が3〜30のシクロアルキル基;
ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基などのアルケニル基;
ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などのアリールアルキル基;
フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などのアリール基などが挙げられる。
【0038】
ただし、前記炭化水素基はこれらに限定されるものではない。また、これらの炭化水素基には、ハロゲン化炭化水素基、具体的には炭素原子数1〜20の炭化水素基の少なくとも一つの水素がハロゲンに置換した基も含まれる。具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、クロロフェニル基などが挙げられる。ただし、前記ハロゲン化炭化水素基はこれらに限定されるものではない。
【0039】
前記酸素含有基としては、上記R1〜R14の説明で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、ヒドロキシ基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコシキ基;
フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、ナフトキシ基などのアリーロキシ基;
フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基などのアリールアルコキシ基;
アセトキシ基;
カルボニル基などが挙げられる。ただし、前記酸素含有基はこれらに限定されるものではない。
【0040】
前記イオウ含有基としては、上記R1〜R14の説明で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、メチルスルフォネート基、トリフルオロメタンスルフォネート基、フェニルスルフォネート基、ベンジルスルフォネート基、p−トルエンスルフォネート基、トリメチルベンゼンスルフォネート基、トリイソブチルベンゼンスルフォネート基、p−クロルベンゼンスルフォネート基、ペンタフルオロベンゼンスルフォネート基などのスルフォネート基;
メチルスルフィネート基、フェニルスルフィネート基、ベンジルスルフィネート基、p−トルエンスルフィネート基、トリメチルベンゼンスルフィネート基、ペンタフルオロベンゼンスルフィネート基などのスルフィネート基;
アルキルチオ基;
アリールチオ基などが挙げられる。ただし、前記イオウ含有基はこれらに限定されるものではない。
【0041】
前記窒素含有基として具体的には、上記R1〜R14の説明で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、アミノ基;
メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基などのアルキルアミノ基;
フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジナフチルアミノ基、メチルフェニルアミノ基などのアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基などが挙げられる。ただし、前記窒素含有基はこれらに限定されるものではない。
【0042】
前記ホウ素含有基として具体的には、BR4(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基またはハロゲン原子等を示す)が挙げられる。
前記アルミニウム含有基として具体的には、AlR4(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基またはハロゲン原子等を示す)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
前記リン含有基として具体的には、トリメチルホスフィン基、トリブチルホスフィン基、トリシクロヘキシルホスフィン基などのトリアルキルホスフィン基;
トリフェニルホスフィン基、トリトリルホスフィン基などのトリアリールホスフィン基;
メチルホスファイト基、エチルホスファイト基、フェニルホスファイト基などのホスファイト基(ホスフィド基);
ホスホン酸基;
ホスフィン酸基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
前記ハロゲン含有基として具体的には、PF6、BF4などのフッ素含有基、ClO4、SbCl6などの塩素含有基、IO4などのヨウ素含有基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
前記ヘテロ環式化合物残基としては、上記R1〜R14の説明で例示したものと同様のものが挙げられる。
前記ケイ素含有基としては、上記R1〜R14の説明で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、フェニルシリル基、ジフェニルシリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリトリルシリル基、トリナフチルシリル基などの炭化水素置換シリル基;
トリメチルシリルエーテル基などの炭化水素置換シリルエーテル基;
トリメチルシリルメチル基などのケイ素置換アルキル基;
トリメチルシリルフェニル基などのケイ素置換アリール基などが挙げられる。
【0046】
前記ゲルマニウム含有基としては、上記R1〜R14の説明で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムに置換した基が挙げられる。
【0047】
前記スズ含有基として具体的には、上記R1〜R14の説明で例示したものと同様のものが挙げられ、より具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をスズに置換した基が挙げられる。
【0048】
次に、上記一般式(I)においてnは、M1の価数を満たす数であり、通常は0〜5、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3の整数である。nが2以上の場合には、複数存在するXは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。また複数存在するXで示される基は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0049】
以下に、上記一般式(I)で表される遷移金属化合物(A)の具体的な例を示すが、遷移金属化合物(A)はこれらに限定されるものではない。
【0050】
【化4】

【0051】
【化5】

【0052】
【化6】

【0053】
【化7】

【0054】
【化8】

【0055】
【化9】

【0056】
【化10】

【0057】
【化11】

【0058】
【化12】

【0059】
【化13】

【0060】
【化14】

【0061】
【化15】

【0062】
【化16】

なお、上記例示中、Meはメチル基を、Phはフェニル基を示す。また上記例示において、チタンをジルコニウムまたはハフニウムに置き換えた遷移金属化合物も、遷移金属化合物(A)の例として挙げることができる。
【0063】
このような遷移金属化合物(A)の製造方法は、特に限定されることなく、たとえば以下のようにして製造することができる。
まず、遷移金属化合物(A)を構成する配位子は、サリチルアルデヒド類化合物を、式R1−NH2で表わされる第1級アミン類化合物(R1は上記一般式(I)におけるR1と同義である。)と反応させることにより得られる。
【0064】
前記サリチルアルデヒド類化合物は、たとえばメタロセンと結合したフェノール類化合物を、エチルマグネシウムブロミドと反応させた後、パラホルムアルデヒドと反応させることにより得られる。メタロセンと結合したフェノール類化合物は、たとえば2−ハロゲン化フェノール類を、メタロセンのホウ素化合物と反応させることにより得られる。以下、これらの反応について詳細に説明する。
【0065】
まず、2−ハロゲン化フェノール類を、メタロセンのホウ素化合物と反応させてメタロセンと結合したフェノール類化合物を得る方法であるが、具体的には、2−ハロゲン化フェノール類、メタロセンのホウ素化合物、塩基性化合物、触媒としてのパラジウム化合物、パラジウム触媒の配位子となる化合物の混合物に溶媒を加える。これらは溶媒に溶解していてもよいし、していなくてもよい。
【0066】
前記2−ハロゲン化フェノール類として具体的には、2−ブロモフェノール、2−ブロモ−m−クレゾール、2−ブロモ−p−クレゾール、2−ブロモ−3,4−ジメチルフェノール、2−ブロモ−4,5−ジメチルフェノール、2−ブロモ−5−イソプロピルフェノール、2−ブロモ−4−フェニルフェノール、2−ブロモ−5−フェニルフェノール、2−ブロモ−4−tert−ブチルフェノール、2−ブロモ−4−メトキシフェノール、2−ブロモ−4−フルオロフェノール、2−ブロモ−4−(ペンタフルオロフェニル)フェノールなどが挙げられるが、この限りではない。
【0067】
前記メタロセンのホウ素化合物として具体的には、フェロセンボロン酸、およびそのメチルエステル類、ジイソプロピルエステル類、ジブチルエステル類、ピナコールエステル類、カテコールエステル類、1,3−プロパンジオールエステル類、ネオペンチルグリコールエステル類、三フッ化ホウ素塩などが挙げられるが、この限りではない。
【0068】
前記塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リチウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド、リン酸三カリウムなどが挙げられるが、この限りではない。
【0069】
前記触媒として用いるパラジウム化合物として具体的には、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)(クロロホルム)ジパラジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム、塩化アリルパラジウムダイマーなどが挙げられるが、この限りではない。
【0070】
前記パラジウム触媒の配位子となる化合物として具体的には、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、ジ−tert−ブチル(メチル)ホスフィン、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(ジメチルアミノ)ビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニルなどのホスフィン化合物、および、テトラフルオロホウ酸ジ−tert−ブチル(メチル)ホスホニウム塩などの、それらホスフィン化合物の塩が挙げられるが、この限りではない。
【0071】
また、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムなどの、上記ホスフィン化合物とパラジウムとの錯体化合物や、{1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリデン}(3−クロロピリジル)パラジウム二塩化物のような、カルベン型化合物とパラジウムとの錯体化合物を触媒として用いてもよい。
【0072】
前記溶媒としては、このような反応に一般的なものを使用できるが、なかでもテトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、エタノール、プロパノール等の極性溶媒、またはトルエン、キシレン等の炭化水素溶媒が好ましい。また、上記溶媒に水を加えたものを溶媒として用いてもよく、混合比としては、水/溶媒比が0〜25%程度が好ましい。
【0073】
次いで、室温から還流条件で、約1〜48時間攪拌すると、対応するメタロセンと結合したフェノール類化合物が良好な収率で得られる。
また、上記のような製造方法の他に、2−ハロゲン化アニソール類を出発物質として用い、「Organometallics 1986, 5, 1635.」、「Organometallics 2004, 23, 3832.」、「J. Am. Chem. Soc. 2005, 124, 1635.」に記載される手法によって、出発物質にシクロペンタジエニル誘導体部分を導入し、「J. Org. Chem. 1996, 61, 7230.」、「J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 7479.」に記載される手法によって、メタロセン部分を合成し、既知の手法によってメトキシ基を水酸基へ官能基変換することによっても、メタロセンと結合したフェノール類化合物を合成することができると考えられる。
【0074】
次に、こうして得られたメタロセンと結合したフェノール類化合物を溶媒に溶解し、エチルマグネシウムブロミドのエーテル溶液と反応させる。溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒が好ましい。
【0075】
室温にて1〜5時間撹拌した後、パラホルムアルデヒドとトリエチルアミンを加え、還流条件で、約1〜12時間攪拌すると、対応するサリチルアルデヒド類化合物が良好な収率で得られる。
【0076】
サリチルアルデヒド類化合物を合成する際、エチルマグネシウムブロミドの替わりに、塩化マグネシウム、四塩化スズ等を用いてもよく、トリエチルアミンの替わりに、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ピコリン、ルチジン等を用いてもよい。
【0077】
次に、こうして得られたサリチルアルデヒド類化合物を前述のように第1級アミンと反応させるが、具体的には、サリチルアルデヒド類化合物および第1級アミン類化合物を溶媒に溶解する。溶媒としては、このような反応に一般的なものを使用できるが、なかでもメタノール、エタノール等のアルコール溶媒、またはトルエン等の炭化水素溶媒が好ましい。
【0078】
次いで、室温から還流条件で、約1〜48時間攪拌すると、対応する配位子が良好な収率で得られる。
配位子化合物を合成する際、触媒として、蟻酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸等の酸触媒を用いてもよい。
【0079】
また、脱水剤として、モレキュラーシーブス、無水硫酸マグネシウムまたは無水硫酸ナトリウムを用いたり、ディーンスタークにより脱水しながら行うと、反応が効果的に進行する。
【0080】
次に、こうして得られた配位子を、遷移金属M1を有する化合物(M1は上記一般式(I)におけるM1と同義である。)と反応させることで、対応する遷移金属化合物(A)を合成することができる。
【0081】
具体的には、合成した配位子を溶媒に溶解し、必要に応じて塩基と接触させてフェノキサイド塩を調製した後、金属ハロゲン化物、金属アルキル化物等の金属化合物(遷移金属M1を有している)と低温で混合し、−78℃から室温、もしくは還流条件下で、約1〜48時間攪拌する。
【0082】
前記溶媒としては、このような反応に一般的なものを使用できるが、なかでもエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等の極性溶媒、トルエン等の炭化水素溶媒などが好ましく使用される。また、前記フェノキサイド塩を調製する際に使用する塩基としては、n−ブチルリチウム等のリチウム塩、水素化ナトリウム等のナトリウム塩等の金属塩や、トリエチルアミン、ピリジン等を例示することができるが、この限りではない。
【0083】
前記配位子の性質によっては、フェノキサイド塩調製を経由せず、配位子と金属化合物とを直接反応させることで、対応する遷移金属化合物(A)(上記一般式(I)で表わされる化合物)を合成することもできる。さらに、合成した遷移金属化合物(A)中の金属M1を、常法により別の遷移金属と交換することも可能である。また、例えば一般式(I)におけるR2〜R5に対応する部分の一つ以上が水素である場合には、合成の任意の段階において、これらの部位に水素以外の置換基を導入することができる。
また、遷移金属化合物(A)を単離せず、配位子と金属化合物との反応溶液を本発明のオレフィン重合用触媒として、そのままオレフィンの重合に用いることもできる。
【0084】
〔化合物[B]〕
本発明のオレフィン重合用触媒は、上記遷移金属化合物(A)に加えて、[B]有機金属化合物(B−1)、有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)、および遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B−3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに含むことが、重合活性の点から好ましい。以下、化合物(B−1)、(B−2),(B−3)について説明する。
【0085】
((B−1)有機金属化合物)
本発明で用いられる有機金属化合物(B−1)として、具体的には下記の一般式(B−1a)〜(B−1c)で表される周期律表第1、2族および第12、13族の有機金属を有する化合物が挙げられる:
【0086】
【化17】

(一般式(B−1a)中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3、qは0≦q<3、rは0≦r<3、sは0≦s<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)で表される有機アルミニウム化合物;
【0087】
【化18】

(一般式(B−1b)中、M3はLi、NaまたはKを示し、Rcは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。)で表される周期律表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物;
【0088】
【化19】

(一般式(B−1c)中、RdおよびReは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、M4はMg、ZnまたはCdである。)で表される周期律表第2族または第12族金属のジアルキル化合物。
【0089】
前記一般式(B−1a)に属する有機アルミニウム化合物としては、次のような化合物を例示できる。
【0090】
【化20】

(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、pは好ましくは1.5≦p≦3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物、
【0091】
【化21】

(式中、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは好ましくは0<p<3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物、
【0092】
【化22】

(式中、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、pは好ましくは2≦p<3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物、
【0093】
【化23】

(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3、qは0≦q<3、sは0≦s<3の数であり、かつp+q+s=3である。)で表される有機アルミニウム化合物。
【0094】
一般式(B−1a)に属する有機アルミニウム化合物としてより具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリn−アルキルアルミニウム;
トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec−ブチルアルミニウム、トリtert−ブチルアルミニウム、トリ2−メチルブチルアルミニウム、トリ3−メチルブチルアルミニウム、トリ2−メチルペンチルアルミニウム、トリ3−メチルペンチルアルミニウム、トリ4−メチルペンチルアルミニウム、トリ2−メチルヘキシルアルミニウム、トリ3−メチルヘキシルアルミニウム、トリ2−エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;
トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;
トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;
ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;
(i−C49xAly(C510z(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。)などで表されるトリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム;
イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド、イソブチルアルミニウムイソプロポキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
a2.5Al(ORb0.5で表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す);
ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、エチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、ジイソブチルアルミニウム(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、イソブチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)などのジアルキルアルミニウムアリーロキシド;
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;
エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0095】
また(B−1a)に類似する化合物も本発明に使用することができ、そのような化合物としてたとえば、窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C252AlN(C25)Al(C252などを挙げることができる。
【0096】
前記一般式(B−1b)に属する化合物としては、LiAl(C254、LiAl(C7154などを挙げることができる。
前記一般式(B−1c)に属する化合物としては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛、ジ−n−プロピル亜鉛、ジイソプロピル亜鉛、ジ−n−ブチル亜鉛、ジイソブチル亜鉛、ビス(ペンタフルオロフェニル)亜鉛、ジメチルカドミウム、ジエチルカドミウムなどを挙げることができる。
【0097】
またその他にも、有機金属化合物(B−1)としては、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、プロピルマグネシウムブロミド、プロピルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリドなどを使用することもできる。
【0098】
また重合系内で上記有機アルミニウム化合物が形成されるような化合物、たとえばハロゲン化アルミニウムとアルキルリチウムとの組合せ、またはハロゲン化アルミニウムとアルキルマグネシウムとの組合せなどを、前記有機金属化合物(B−1)として使用することもできる。
【0099】
有機金属化合物(B−1)のなかでは、触媒活性の点から有機アルミニウム化合物が好ましい。
上記のような有機金属化合物(B−1)は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0100】
((B−2)有機アルミニウムオキシ化合物)
本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
従来公知のアルミノキサンは、たとえば下記のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
【0101】
(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、たとえば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0102】
なお前記アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、得られたアルミノキサンを溶媒に再溶解またはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
【0103】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記一般式(B−1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0104】
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
上記のような有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0105】
アルミノキサンの調製に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分または上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物とりわけ、塩素化物、臭素化物などの炭化水素溶媒が挙げられる。さらにエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素が好ましい。
【0106】
また本発明で用いられるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であるもの、すなわち、ベンゼンに対して不溶性または難溶性であることが好ましい。
【0107】
本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)としては、下記一般式(IV)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることもできる。
【0108】
【化24】

(一般式(IV)中、R15は炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示し、4つのR16は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。)
【0109】
前記一般式(IV)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物は、下記一般式(V)で表されるアルキルボロン酸と、有機アルミニウム化合物とを、不活性ガス雰囲気下に不活性溶媒中で、−80℃〜室温の温度で1分〜24時間反応させることにより製造できる。
【0110】
【化25】

(一般式(V)中、R16は前記一般式(IV)におけるR16と同じ基を示す。)
前記一般式(V)で表されるアルキルボロン酸の具体的な例としては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、n−プロピルボロン酸、n−ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、n−ヘキシルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、3,5−ジフルオロボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸などが挙げられる。これらの中では、メチルボロン酸、n−ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、3,5−ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸が好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0111】
このようなアルキルボロン酸と反応させる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記一般式(B−1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0112】
前記有機アルミニウム化合物としては、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、特にトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
上記のような有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0113】
((B−3)遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物)
本発明で用いられる、遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B−3)(以下、「イオン化イオン性化合物」という。)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、USP−5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
【0114】
具体的には、前記ルイス酸としては、BR3(Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である。)で示される化合物が挙げられ、たとえばトリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロンなどである。
【0115】
前記イオン性化合物としては、たとえば下記一般式(VI)で表される化合物が挙げられる。
【0116】
【化26】

(一般式(VI)中、R17はH+、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオンまたは遷移金属を有するフェロセニウムカチオンであり、R18〜R21は、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基または置換アリール基である。)。
【0117】
前記カルボニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンなどが挙げられる。
【0118】
前記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0119】
前記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0120】
17としては、カルボニウムカチオンおよびアンモニウムカチオンが好ましく、特にトリフェニルカルボニウムカチオン、N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0121】
またイオン性化合物として、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることもできる。
【0122】
前記トリアルキル置換アンモニウム塩として具体的には、たとえばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(m,m−ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素などが挙げられる。
【0123】
前記N,N−ジアルキルアニリニウム塩として具体的には、たとえばN,N−ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N−ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0124】
前記ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、たとえばジ(1−プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0125】
さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N−ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、下記式(VII)または(VIII)で表されるホウ素化合物などを挙げることもできる。
【0126】
【化27】

(式(VII)中、Etはエチル基を示す。)
【0127】
【化28】

(式(VIII)中、Etはエチル基を示す。)
イオン化イオン性化合物(化合物(B−3))の例であるボラン化合物として具体的には、例えば、デカボラン;
ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕デカクロロデカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0128】
イオン化イオン性化合物の例であるカルボラン化合物として具体的には、たとえば4−カルバノナボラン、1,3−ジカルバノナボラン、6,9−ジカルバデカボラン、ドデカハイドライド−1−フェニル−1,3−ジカルバノナボラン、ドデカハイドライド−1−メチル−1,3−ジカルバノナボラン、ウンデカハイドライド−1,3−ジメチル−1,3−ジカルバノナボラン、7,8−ジカルバウンデカボラン、2,7−ジカルバウンデカボラン、ウンデカハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボラン、ドデカハイドライド−11−メチル−2,7−ジカルバウンデカボラン、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバドデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−トリメチルシリル−1−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムブロモ−1−カルバドデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム6−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム6−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム7−カルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム7,8−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム2,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムドデカハイドライド−8−メチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−エチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−ブチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−アリル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−9−トリメチルシリル−7,8−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−4,6−ジブロモ−7−カルバウンデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−1,3−ジカルバノナボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)銅酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)金酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)マンガン酸塩(IV)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0129】
イオン化イオン性化合物の例であるヘテロポリ化合物は、ケイ素、リン、チタン、ゲルマニウム、ヒ素および錫から選ばれる原子と、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種または2種以上の原子とを含む化合物である。具体的には、リンバナジン酸、ゲルマノバナジン酸、ヒ素バナジン酸、リンニオブ酸、ゲルマノニオブ酸、シリコノモリブデン酸、リンモリブデン酸、チタンモリブデン酸、ゲルマノモリブデン酸、ヒ素モリブデン酸、錫モリブデン酸、リンタングステン酸、ゲルマノタングステン酸、錫タングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ゲルマノタングストバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、ゲルマノモリブドタングストバナジン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドニオブ酸、およびこれらの酸の塩が挙げられるが、この限りではない。また、前記塩としては、前記酸の、例えば周期律表第1族または2族の金属、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、トリフェニルエチル塩等の有機塩が挙げられる。
【0130】
イオン化イオン性化合物の例であるイソポリ化合物は、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種の原子の金属イオンから構成される化合物であり、金属酸化物の分子状イオン種であるとみなすことができる。具体的には、バナジン酸、ニオブ酸、モリブデン酸、タングステン酸、およびこれらの酸の塩が挙げられるが、この限りではない。また、前記塩としては、前記酸の、例えば周期律表第1族または2族の金属、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、トリフェニルエチル塩等の有機塩が挙げられる。
【0131】
上記のようなイオン化イオン性化合物(遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B−3))は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
遷移金属化合物(A)に加えて、助触媒成分としてのメチルアルミノキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)を併用すると、オレフィン化合物に対して非常に高い重合活性を示す。
【0132】
また、本発明に係るオレフィン重合用触媒は、上記遷移金属化合物(A)と、有機金属化合物(B−1)、有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)、およびイオン化イオン性化合物(B−3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物[B]とともに、必要に応じて下記の担体(C)を含んでもよい。
【0133】
〔(C)担体〕
本発明で用いられる担体(C)は、無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体である。担体(C)に上記遷移金属化合物(A)および化合物(B)を担持させることで、良好なモルフォロジーのポリマーが得られる。
【0134】
前記無機化合物としては、多孔質酸化物、無機ハロゲン化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。
前記多孔質酸化物として、具体的にはSiO2、Al23、MgO、ZrO、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaO、ThO2など、またはこれらを含む複合物または混合物を使用することができ、さらに、例えば天然または合成ゼオライト、SiO2−MgO、SiO2−Al23、SiO2−TiO2、SiO2−V25、SiO2−Cr23、SiO2−TiO2−MgOなどを使用することができる。これらのうち多孔質酸化物としては、SiO2および/またはAl23を主成分とするものが好ましい。
【0135】
なお、上記多孔質酸化物は、少量のNa2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3、Na2SO4、Al2(SO43、BaSO4、KNO3、Mg(NO32、Al(NO33、Na2O、K2O、Li2Oなどの炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物成分を含有していても差し支えない。
【0136】
このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明に好ましく用いられる多孔質酸化物は、粒径が10〜300μm、好ましくは20〜200μmであって、比表面積が50〜1000m2/g、好ましくは100〜700m2/gの範囲にあり、細孔容積が0.3〜3.0cm3/gの範囲にあることが望ましい。このような多孔質酸化物は、必要に応じて100〜1000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して使用される。
【0137】
上記無機ハロゲン化物としては、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2等が用いられる。無機ハロゲン化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコールなどの溶媒に無機ハロゲン化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
【0138】
上記粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、上記イオン交換性層状化合物は、イオン結合などによって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有するイオンが交換可能なものである。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。
【0139】
また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型などの層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物などを例示することができる。
【0140】
さらに、粘土、粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトなどが挙げられ、
イオン交換性層状化合物としては、α−Zr(HAsO42・H2O、α−Zr(HPO42、α−Zr(KPO42・3H2O、α−Ti(HPO42、α−Ti(HAsO42・H2O、α−Sn(HPO42・H2O、γ−Zr(HPO42、γ−Ti(HPO42、γ−Ti(NH4PO42・H2Oなどの多価金属の結晶性酸性塩などが挙げられる。
【0141】
このような粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物は、水銀圧入法で測定した半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/g以上であることが好ましく、0.3〜5cc/gであることが特に好ましい。ここで、細孔容積は、水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入法により、細孔半径20〜30000Åの範囲について測定される。
半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/gより小さいものを担体として用いた場合には、高い重合活性が得られにくい傾向がある。
【0142】
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理など、何れも使用できる。化学処理として具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造中のAl、Fe、Mgなどの陽イオンを溶出させることによって表面積を増大させる。アルカリ処理では粘土の結晶構造が破壊され、粘土の構造の変化をもたらす。また、塩類処理、有機物処理では、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体などを形成し、表面積や層間距離を変えることができる。
【0143】
本発明で用いられるイオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することをインターカレーションという。インターカレーションするゲスト化合物としては、TiCl4、ZrCl4などの陽イオン性無機化合物、Ti(OR)4、Zr(OR)4、PO(OR)3、B(OR)3などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)、[Al134(OH)247+、[Zr4(OH)142+、[Fe3O(OCOCH36+などの金属水酸化物イオンなどが挙げられる。これらの化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)4、Al(OR)3、Ge(OR)4などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基などを示す)などを加水分解して得た重合物、SiO2などのコロイド状無機化合物などを共存させることもできる。また、ピラーとしては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物なども挙げられる。
【0144】
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物は、そのまま用いてもよく、またボールミル、ふるい分けなどの処理を行った後に用いてもよい。また、新たに水を添加吸着させ、あるいは加熱脱水処理した後に用いてもよい。さらに、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0145】
これらのうち、好ましいものは粘土または粘土鉱物であり、特に好ましいものはモンモリロナイト、バーミキュライト、ペクトライト、テニオライトおよび合成雲母である。
前述のように担体(C)は無機または有機の化合物であるが、有機化合物としては、粒径が10〜300μmの範囲にある顆粒状ないしは微粒子状固体を挙げることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素原子数が2〜14のα−オレフィンを主成分として生成される(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体、およびそれらの変成体を例示することができる。
【0146】
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、上記遷移金属化合物(A)、上記化合物(B)、必要に応じて担体(C)と共に、必要に応じてさらに下記の特定の有機化合物成分(D)を含むこともできる。
【0147】
〔(D)有機化合物成分〕
本発明において有機化合物成分(D)は、必要に応じて、本発明のオレフィン重合用触媒の重合性能および生成ポリマーの物性(たとえば生成ポリマーの分子量)を向上(分子量であれば、高分子量化)させる目的で使用される。このような有機化合物としては、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物およびスルホン酸塩等が挙げられるが、この限りではない。
【0148】
前記アルコール類および前記フェノール性化合物としては、通常、R22−OHで表されるものが使用され、ここで、R22は炭素原子数1〜50の炭化水素基(フェノール類の場合は炭素原子数は6〜50)または炭素原子数1〜50(フェノール類の場合は炭素原子数は6〜50)のハロゲン化炭化水素基を示す。
【0149】
アルコール類としては、R22がハロゲン化炭化水素基のものが好ましい。また、フェノール性化合物としては、水酸基のα,α’−位が炭素数1〜20の炭化水素で置換されたものが好ましい。
【0150】
上記カルボン酸としては、通常、R23−COOHで表されるものが使用される。R23は炭素原子数1〜50の炭化水素基または炭素原子数1〜50のハロゲン化炭化水素基を示し、特に、炭素原子数1〜50のハロゲン化炭化水素基が好ましい。
【0151】
上記リン化合物としては、P−O−H結合を有するリン酸類、P−OR、P=O結合を有するホスフェート、ホスフィンオキシド化合物が好ましく使用される。
上記スルホン酸塩としては、下記一般式(IX)で表されるものが挙げられる。
【0152】
【化29】

(一般式(IX)中、M5は周期律表第1〜14族の元素であり、R24は水素、炭素原子数1〜20の炭化水素基または炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基であり、Zは水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜20の炭化水素基または炭素原子数が1〜20のハロゲン化炭化水素基であり、tは1〜7の整数であり、uは1〜7の整数であり、また、t−u≧1である。)
【0153】
<ポリオレフィンの製造方法>
本発明に係るポリオレフィンの製造方法では、上記のようなオレフィン重合用触媒の存在下に、オレフィンを重合または共重合することによりポリオレフィンを得る。なお、前述のように、本明細書においてオレフィンとは、重合性二重結合を有するあらゆる化合物を指す。
【0154】
重合における、本発明の触媒を構成する各成分の使用法、重合器への添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法が例示される。
(1)遷移金属化合物(A)を単独で重合器に添加する方法。
(2)遷移金属化合物(A)をおよび化合物[B]を任意の順序で重合器に添加する方法。
(3)遷移金属化合物(A)を担体(C)に担持した触媒成分、化合物[B]を任意の順序で重合器に添加する方法。
(4)化合物[B]を担体(C)に担持した触媒成分、遷移金属化合物(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(5)遷移金属化合物(A)と化合物[B]とを担体(C)に担持した触媒成分を重合器に添加する方法。
(6)遷移金属化合物(A)と化合物[B]とを担体(C)に担持した触媒成分、および化合物[B]を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、担体(C)に担持された化合物[B]と単独で添加される化合物[B]とは、同一でも異なっていてもよい。
(7)化合物[B]を担体(C)に担持した触媒成分、および遷移金属化合物(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(8)化合物[B]を担体(C)に担持した触媒成分、遷移金属化合物(A)、および化合物[B]を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、担体(C)に担持された化合物[B]と単独で添加される化合物[B]とは、同一でも異なっていてもよい。
(9)遷移金属化合物(A)を担体(C)に担持した成分、および化合物[B]を担体(C)に担持した成分を任意の順序で重合器に添加する方法。
(10)遷移金属化合物(A)を担体(C)に担持した成分、化合物[B]を担体(C)に担持した成分、および化合物[B]を任意の順序重合器に添加する方法。この場合、担体(C)に担持された化合物[B]と単独で添加される化合物[B]とは、同一でも異なっていてもよい。
【0155】
(11)遷移金属化合物(A)、化合物[B]、および有機化合物成分(D)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(12)化合物[B]と有機化合物成分(D)をあらかじめ接触させた成分、および遷移金属化合物(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(13)化合物[B]と有機化合物成分(D)を担体(C)に担持した成分、および遷移金属化合物(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(14)遷移金属化合物(A)と化合物[B]を予め接触させた触媒成分、および有機化合物成分(D)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(15)遷移金属化合物(A)と化合物[B]を予め接触させた触媒成分、および化合物[B]、有機化合物成分(D)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(16)遷移金属化合物(A)と化合物[B]を予め接触させた触媒成分、および化合物[B]と有機化合物成分(D)をあらかじめ接触させた成分を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、遷移金属化合物(A)と接触させられる化合物[B]と、有機化合物成分(D)と接触させられる化合物[B]とは、同一でも異なっていてもよい。
(17)遷移金属化合物(A)を担体(C)に担持した成分、化合物[B]、および有機化合物成分(D)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(18)遷移金属化合物(A)を担体(C)に担持した成分、および化合物[B]と有機化合物成分(D)をあらかじめ接触させた成分を任意の順序で重合器に添加する方法。
(19)遷移金属化合物(A)と化合物[B]と有機化合物成分(D)を予め任意の順序で接触させた触媒成分を重合器に添加する方法。
(20)遷移金属化合物(A)と化合物[B]と有機化合物成分(D)を予め接触させた触媒成分、および化合物[B]を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、遷移金属化合物(A)および有機化合物成分(D)と接触させられる化合物[B]と、単独で添加される化合物[B]とは、同一でも異なっていてもよい。
(21)遷移金属化合物(A)と化合物[B]と有機化合物成分(D)を担体(C)に担持した触媒を重合器に添加方法。
(22)遷移金属化合物(A)と化合物[B]と有機化合物成分(D)を担体(C)に担持した触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、担体(C)に担持された化合物[B]と単独で添加される化合物[B]とはは、同一でも異なっていてもよい。
【0156】
上記の担体(C)に遷移金属化合物(A)が担持された固体触媒成分、担体(C)に遷移金属化合物(A)および化合物[B]が担持された固体触媒成分には、オレフィンが予備重合されていてもよく、予備重合された固体触媒成分上に、さらに、触媒成分が担持されていてもよい。
【0157】
本発明では、(共)重合は溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できる。液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを挙げることができ、また(共)重合に供するオレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0158】
上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて、オレフィンの重合を行うに際して、遷移金属化合物(A)は、反応容積1リットル当り、通常10-12〜10-2モル、好ましくは10-10〜10-3モルになるような量で用いられる。
【0159】
有機金属化合物(B−1)は、有機金属化合物(B−1)と、遷移金属化合物(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(B−1)/M〕が通常0.01〜100000、好ましくは0.05〜50000となるような量で用いられる。有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)は、有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)中のアルミニウム原子と、遷移金属化合物(A)中の全遷移金属(M)とのモル比〔(B−2)/M〕が、通常10〜500000、好ましくは20〜100000となるような量で用いられる。遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(イオン化イオン性化合物)(B−3)は、イオン化イオン性化合物(B−3)と、遷移金属化合物(A)中の遷移金属原子(M1)とのモル比〔(B−3)/M1〕が、通常1〜10、好ましくは1〜5となるような量で用いられる。
【0160】
有機化合物成分(D)は、有機金属化合物(B−1)とのモル比〔(D)/(B−1)〕が、通常0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で用いられる。有機化合物成分(D)は、有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)とのモル比〔(D)/(B−2)〕が、通常0.01〜2、好ましくは0.005〜1となるような量で用いられる。有機化合物成分(D)は、イオン化イオン性化合物(B−3)とのモル比〔(D)/(B−3)〕が、通常0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で用いられる。
【0161】
また、このようなオレフィン重合用触媒を用いたオレフィンの重合温度は、通常−50〜+200℃、好ましくは0〜170℃の範囲である。重合圧力は、通常常圧〜100kg/cm2−G、好ましくは常圧〜50kg/cm2−Gの条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0162】
得られるポリオレフィンの分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに、使用する化合物[B]の量により調節することもできる。
【0163】
このような本発明のオレフィン重合用触媒により重合することができるオレフィンとしては、重合性二重結合を有すれば特に限定されないが、炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のα−オレフィン、たとえばエチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン;
炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状オレフィン、たとえばシクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレンなどが挙げられる。
【0164】
本発明のオレフィン重合用触媒は、極性基(たとえば、カルボニル基、水酸基、エーテル結合基など)を有する鎖状の不飽和炭化水素も(共)重合させることができ、該不飽和炭化水素として具体的には、例えばアクリル酸、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸、10−ウンデセン酸、11−ドデセン酸、12−トリデセン酸、13−テトラデセン酸、14−ペンタデセン酸、15−ヘキサデセン酸、16−ヘプタデセン酸、17−オクタデセン酸、18−ノナデセン酸、19−エイコセン酸、20−ヘニコセン酸、21−ドコセン酸、22−トリコセン酸、メタクリル酸、2−メチルペンテン酸、2,2−ジメチル−3−ブテン酸、2,2−ジメチル−4−ペンテン酸、3−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸、2,6−ヘプタジエン酸、2−(4−イソプロピルベンジリデン)−4−ペンテン酸、アリルマロン酸、2−(10−ウンデセニル)マロン酸、フマル酸、イタコン酸、ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2−カルボン酸、ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸類、およびこれらのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの金属塩類、およびこれら不飽和カルボン酸類のメチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、(5−ノルボルネン−2−イル)エステルなどの不飽和カルボン酸エステル類(該不飽和カルボン酸がジカルボン酸である場合にはモノエステルであってもジエステルであってもよい)、およびこれら不飽和カルボン酸類のアミド、N,N−ジメチルアミド等の不飽和カルボン酸アミド類(該不飽和カルボン酸がジカルボン酸である場合にはモノアミドであってもジアミドであってもよい);
無水マレイン酸、無水イタコン酸、アリルコハク酸無水物、イソブテニルコハク酸無水物、(2,7−オクタジエン−1−イル)コハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物などの不飽和カルボン酸無水物類;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニルなどのビニルエステル類;
酢酸アリル、プロピオン酸アリル、カプロン酸アリル、カプリン酸アリル、ラウリン酸アリル、ステアリン酸アリルなどのアリルエステル類;
塩化ビニル、フッ化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、臭化アリル、塩化アリル、フッ化アリル、臭化アリルなどのハロゲン化オレフィン類;
o−クロロスチレン、p−クロロスチレンなどのハロゲン化スチレン類;
アリルトリメチルシラン、ジアリルジメチルシラン、3−ブテニルトリメチルシラン、アリルトリイソプロピルシラン、アリルトリフェニルシラン等のシリル化オレフィン類;
アクリロニトリル、2−シアノビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン、2,3−ジシアノビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン等の不飽和ニトリル類;
アリルアルコール、3−ブテノール、4−ペンテノール、5−ヘキセノール、6−へブテノール、7−オクテノール、8−ノネノール、9−デセノール、10−ウンデセノール、11−ドデセノール、12−トリデセノール等の不飽和アルコール化合物、およびこれらの酢酸エステル、安息香酸エステル、プロピオン酸エステル、カプロン酸エステル、カプリン酸エステル、ラウリン酸エステル、ステアリン酸エステル等の不飽和エステル類;
ビニルフェノール、アリルフェノール等の置換フェノール類、およびこれらの酢酸エステル、安息香酸エステル、プロピオン酸エステル、カプロン酸エステル、カプリン酸エステル、ラウリン酸エステル、ステアリン酸エステル等の不飽和エステル類;
ビニルベンジルアルコール、アリルベンジルアルコール等の置換ベンジルアルコール類、およびこれらの酢酸エステル、安息香酸エステル、プロピオン酸エステル、カプロン酸エステル、カプリン酸エステル、ラウリン酸エステル、ステアリン酸エステル等の不飽和エステル類;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、アリルメチルエーテル、アリルプロピルエーテル、アリルブチルエーテル、アリルメタリルエーテル、メトキシスチレン、エトキシスチレン、アリルアニソール等の不飽和エーテル類;
ブタジエンモノオキシド、1,2−エポキシ−7−オクテン、3−ビニル7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン等の不飽和エポキシド類;
アクロレイン、ウンデセナール等の不飽和アルデヒド類、およびこれらのジメチルアセタール、ジエチルアセタールなどの不飽和アセタール類;
メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、アリルメチルケトン、アリルエチルケトン、アリルプロピルケトン、アリルブチルケトン、アリルベンジルケトン等の不飽和ケトン類、およびこれらのジメチルアセタール、ジエチルアセタールなどの不飽和アセタール類;
アリルメチルスルフィド、アリルフェニルスルフィド、アリルイソプロピルスルフィド、アリルn−プロピルスルフィド、4−ペンテニルフェニルスルフィド等の不飽和チオエーテル類;
アリルフェニルスルホキシド等の不飽和スルホキシド類;
アリルフェニルスルホン等の不飽和スルホン類;
アリルジフェニルホスフィン等の不飽和ホスフィン類;
アリルジフェニルホスフィンオキシドのような不飽和ホスフィンオキシド類などが挙げられる。
【0165】
さらに、以上に挙げた極性基を2個以上併せて有する不飽和炭化水素、例えばトリフルオロ酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸アリル、4−(3−ブテニロキシ)安息香酸メチル、アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、(2H−ペルフルオロプロピル)−2−プロペニルエーテル、リナロールオキシド、3−アリロキシ−1,2−プロパンジオール、2−(アリロキシ)エタノール、N−アリルモルホリン、アリルグリシン、N−ビニルピロリドン、アリルトリクロロシラン、アクリルトリメチルシラン、アリルジメチル(ジイソプロピルアミノ)シラン、7−オクテニルトリメトキシシラン、アリロキシトリメチルシラン、アリロキシトリフェニルシランなども、本発明のオレフィン重合用触媒によって(共)重合させることができる。
【0166】
また本発明のオレフィン重合用触媒は、ビニルシクロヘキサン、ジエンまたはポリエンなどを(共)重合させることもできる。
前記ジエンまたは前記ポリエンとしては、炭素原子数が4〜30、好ましくは4〜20であり二個以上の二重結合を有する環状又は鎖状の化合物が挙げられる。具体的には、ブタジエン、イソプレン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン;
7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエン;
さらに芳香族ビニル化合物、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレンなどのモノもしくはポリアルキルスチレン;
メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、ジビニルベンゼンなどの官能基含有スチレン誘導体;
および3−フェニルプロピレン、4−フェニルプロピレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0167】
本発明の遷移金属化合物(A)は、上記に説明したようにサリチルアルドイミン配位子にメタロセン骨格を導入した新規な構造を有し、該化合物(A)を含む本発明のオレフィン重合用触媒は、従来のサリチルアルドイミン配位子を有する遷移金属化合物よりも重合活性が高く、しかもコモノマー含量の高いポリマーを製造することができる。
【実施例】
【0168】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、合成例で得られた化合物の構造は、270MHz 1H NMR(日本電子 GSH−270)、FD−質量分析(日本電子 SX−102A)等を用いて決定した。
【0169】
なお、本実施例において、極限粘度([η])は、135℃、デカリン中で測定した。
また実施例で得られた共重合体のコモノマーの含量は、400MHz 13C NMR(日本電子 ECX400P)、または、IR(日本分光 FT/IR−4200)によって測定した。IRは、実施例で得られた共重合体生成ポリマーを、135℃に加熱したホットプレスにて溶解延伸後、室温下加圧冷却することで得られたフィルムを測定サンプルとして用い、光源波長5000cm-1〜400cm-1間で測定した。プロピレン含量は、プロピレンに基づくC−CH3骨格振動(1150cm-1)をキーバンドとし、キーバンドの吸光度(D1150)と内部標準バンド(4320cm-1:C−H伸縮振動とメチレン、メチル変角振動の結合音)の吸光度(D4320)との比[D1150/D4320]により求めた。
【0170】
<(1)配位子の合成>
〔合成例1〕
充分に乾燥、窒素置換した300mLの反応器に、2−ブロモ−p−クレゾール10.1g(54.0mmol)、リン酸三カリウム(K3PO4)25.2g(119mmol)、フェロセンボロン酸13.6g(59.0mmol)、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)0.62g(2.74mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル(X−Phos)1.94g(4.07mmol)、テトラヒドロフラン80mL、蒸留水20mLを仕込み、オイルバス中で5時間加熱還流した。
【0171】
反応液を室温まで冷却した後、水を加えて反応をクエンチした。生成物をろ過した後、酢酸エチルで可溶分を抽出した。得られた分画を有機相飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。
【0172】
硫酸マグネシウムをろ過した後、ろ液を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製すると、下記式(a)で示した目的物(以下化合物(a)という)が11.4g(収率72%)得られた。
1H NMR(270MHz,CDCl3)d7.07−6.97(2H,m,Ar−H),6.87(1H,d,J=8.7Hz,Ar−H),4.51(2H,t,J=1.9Hz,Cp−H),4.40(2H,t,J=1.9Hz,Cp−H),4.24(5H,s,Cp−H),4.16(1H,s,−OH),2.27(3H,s,−CH3)ppm
FD−質量分析(M+):292
【0173】
【化30】

〔合成例2〕
充分に乾燥、窒素置換した300mLの反応器に、合成例1で得られた化合物(a)11.4g(39.0mmol)、テトラヒドロフラン80mLを仕込み、氷冷下で攪拌した。エチルマグネシウムブロミド14.5mL(ジエチルエーテル溶液、3M、43.5mmol)を30分かけて滴下した。室温で2時間攪拌した後、パラホルムアルデヒド3.16g(105mmol)、トリエチルアミン8.20mL(58.8mmol)を加え、80℃で2時間加熱還流した。
【0174】
反応液を室温まで冷却した後、反応液を18%塩酸150mLで中和した。有機相を分液し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。
硫酸マグネシウムをろ過した後、ろ液を留去して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製すると、下記式(b)で示した目的物(以下化合物(b)という)が9.18g(収率74%)得られた。
1H NMR(270MHz,CDCl3)d11.47(1H,s,−OH),9.86(1H,s,−CHO),7.55(1H,d,J=2.3Hz,Ar−H),7.21(1H,dd,J=2.2and0.8Hz,Ar−H),4.86(2H,t,J=1.9Hz,Cp−H),4.33(2H,t,J=1.9Hz,Cp−H),4.08(5H,s,Cp−H),2.36(3H,s,−CH3)ppm
FD−質量分析(M+):320
【0175】
【化31】

〔合成例3〕
充分に乾燥、窒素置換した100mLの反応器に、合成例2で得られた化合物(b)1.80g(5.62mmol)、アニリン0.81g(8.68mmol)、少量のp−トルエンスルホン酸、トルエン20mLを仕込み、加熱還流下、9時間攪拌した。
【0176】
溶媒を留去して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製すると、下記式(c)で示した目的物(以下化合物(c)という)が2.03g(収率91%)得られた。
1H NMR(270MHz,CDCl3)d13.6(1H,s,−OH),8.61(1H,s,−C=NH−),7.47−7.41(3H,m,Ar−H),7.33−7.28(3H,m,Ar−H),7.07(1H,d,J=1.7Hz,Ar−H),4.92(2H,t,J=2.0Hz,Cp−H),4.32(2H,t,J=2.0Hz,Cp−H),4.11(5H,s,Cp−H),2.36(3H,s,−CH3)ppm
FD−質量分析(M+):395
【0177】
【化32】

<(2)遷移金属化合物の合成>
〔合成例4〕
充分に乾燥、アルゴン置換した100mLの反応器に、水素化ナトリウム(油性)0.11g(60%wt2.68mmol)を仕込んだ。そこに合成例3で得られた化合物(c)0.77g(2.02mmol)を含むジエチルエーテル溶液20mLを滴下し、その後室温で4時間攪拌してナトリウム塩を調製した。
【0178】
この溶液を、−78℃に冷却した四塩化チタン1.00mLトルエン溶液(1.00M、1.00mmol)を含むジエチルエーテル溶液10mLに滴下した。滴下終了後、ゆっくりと室温まで戻しながら15時間攪拌を続けた。
【0179】
反応液の溶媒を留去した後、得られた固体を塩化メチレン50mLに溶解し、不溶物をガラスフィルターで除去した。ろ液を減圧濃縮し、析出した固体をジエチルエーテル20mL、n−ヘキサン20mLで再沈し、減圧乾燥することにより下記式(A)で示される黒赤褐色粉末の化合物(以下チタン化合物(A)という)を0.21g(収率23%)得た。
1H NMR(270MHz,CDCl3)d7.99(2H,s,−C=NH−,Ar−H),7.30(2H,d,J=2.0Hz,Ar−H),7.07−7.04(4H,m,Ar−H),6.88−6.80(8H,m,Ar−H),4.47(4H,br−s,Cp−H),4.30(4H,br−s,Cp−H),4.20(10H,s,Cp−H),2.27(6H,s,−CH3)ppm
FD−質量分析(M+):906
【0180】
【化33】

[実施例1]
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、トルエン250mLを装入し、エチレン100リットル/hrで液相及び気相を飽和させた。その後、メチルアルミノキサン(MAO)をアルミニウム原子換算で1.25mmol、引き続き、合成例4で得られたチタン化合物(A)を0.003mmol加え重合を開始した。
【0181】
エチレンを100リットル/hrで連続的に供給し、常圧下、25℃で5分間重合を行った後、少量のイソブタノールを添加することにより重合を停止した。
重合終了後、反応物を少量の塩酸を含む1リットルのメタノール中に加えてポリマーを析出させた。メタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、ポリエチレンが0.63g得られた。重合活性は3,000g/mmol−Ti・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は4.20dL/gであった。
【0182】
[実施例2]
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、トルエン250mLを装入し、エチレン50リットル/hr、プロピレン150リットル/hrの混合ガスで液相および気相を飽和させた。その後、メチルアルミノキサン(MAO)をアルミニウム原子換算で1.25mmol、引き続き、合成例4で得られたチタン化合物(A)を0.005mmol加え、共重合を開始した。
【0183】
50℃で10分間共重合を行った後、少量のイソブタノールを添加することにより重合を停止した。
得られたポリマー懸濁液に、少量の塩酸を含む100mLの水を加えて激しく振とうし、静置した後水層を取り除いた。この操作を合計3回繰り返した後、溶媒を減圧下で留去し、さらに130℃にて10時間減圧乾燥した。
【0184】
得られたエチレン・プロピレン共重合体(EPR)は、0.85gであった。重合活性は1,000g/mmol−Ti・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は1.65dL/gであった。IRにより測定したプロピレン含量は32.7mol%であった。
【0185】
[実施例3]
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器にシクロヘキサン245mLを装入し、液相および気相を50リットル/hrの流量のエチレンで飽和させた。その後、この反応器に1.0mmol(1.0Mトルエン溶液、1.0mL)の酢酸5−ヘキセニル、メチルアルミノキサン(MAO)をアルミニウム原子換算で5.0mmol、引き続き、合成例4で得られたチタン化合物(A)を0.02mmol加え重合を開始した。
【0186】
エチレンガス雰囲気下50℃、常圧で10分間共重合を行った後、少量のメタノールを添加することにより重合を停止した。
重合終了後、反応物を少量の濃塩酸を含むメタノール1,200mLに投入してポリマーを析出後、減圧濾過によりポリマーをろ取、さらにメタノールにより洗浄した。ポリマーを130℃、10時間で減圧乾燥した後、エチレン・酢酸5−ヘキセニル共重合体が1.09g得られ、重合活性は0.327g/mmol−Ti・hrであった。また1H−NMR分析により測定した酢酸5−ヘキセニル含量は0.70mol%であった。
【0187】
[比較例1]
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、トルエン250mLを装入し、エチレン50リットル/hr、プロピレン150リットル/hrの混合ガスで液相および気相を飽和させた。その後、メチルアルミノキサン(MAO)をアルミニウム原子換算で1.25mmol、引き続き、下記式で表されるチタン化合物(B)を0.005mmol加え、共重合を開始した。
【0188】
50℃で10分間共重合を行った後、少量のイソブタノールを添加することにより重合を停止した。
得られたポリマー懸濁液に、少量の塩酸を含む100mLの水を加えて激しく振とうし、静置した後水層を取り除いた。この操作を合計3回繰り返した後、溶媒を減圧下で留去し、さらに130℃にて10時間減圧乾燥した。
【0189】
得られたエチレン・プロピレン共重合体(EPR)は、0.47gであった。重合活性は600g/mmol−Ti・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は1.64dL/gであった。IRにより測定したプロピレン含量は7.3mol%であった。
【0190】
【化34】

[比較例2]
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器にシクロヘキサン245mLを装入し、液相および気相を50リットル/hrの流量のエチレンで飽和させた。その後、この反応器に1.0mmol(1.0Mトルエン溶液、1.0mL)の酢酸5−ヘキセニル、メチルアルミノキサン(MAO)をアルミニウム原子換算で5.0mmol、引き続き、比較例1で用いたのと同様のチタン化合物(B)を0.02mmol加え重合を開始した。
【0191】
エチレンガス雰囲気下50℃、常圧で10分間共重合を行った後、少量のメタノールを添加することにより重合を停止した。
重合終了後、反応物を少量の濃塩酸を含むメタノール1,200mLに投入してポリマーを析出後、減圧濾過によりポリマーをろ取、さらにメタノールにより洗浄した。ポリマーを130℃、10時間で減圧乾燥した後、エチレン・酢酸5−ヘキセニル共重合体が0.08g得られ、重合活性は0.023g/mmol−Ti・hrであった。また1H−NMR分析により測定した酢酸5−ヘキセニル含量は0.13mol%であった。
【産業上の利用可能性】
【0192】
本発明に係る新規な遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒を使用すれば、高コモノマー含量のポリオレフィンを高活性で得ることができ、そのようなポリオレフィンは耐衝撃性、柔軟性、高弾性、軽量性、透明性、耐熱性、耐候性、耐薬品性等に優れているため、本発明には工業的に極めて高い価値があるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される遷移金属化合物(A);
【化1】

(一般式(I)中、M1は周期律表第4〜6族の遷移金属原子を示し、
2は周期律表第6〜10族の遷移金属原子を示し、
1〜R14は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、
1〜R5のうちの2個以上が互いに連結して環を形成してもよく、
6〜R9のうちの2個以上が互いに連結して、それらの結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒に芳香族環またはヘテロ環あるいは脂肪族環を形成してもよく、形成される環は単数でも複数でもよく、
10〜R14のうちの2個以上が互いに連結して、それらの結合するシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒に芳香族環またはヘテロ環あるいは脂肪族環を形成してもよく、形成される環は単数でも複数でもよく、
mは1〜4の整数を示し、mが2以上の場合には、一つの配位子に属するR1〜R14のいずれかと別の配位子に属するR1〜R14のいずれかとが、直接、あるいは炭素数1以上の炭化水素基で連結されていてもよく、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、
nはM1の価数を満たす数であり、nが2以上の場合は、複数存在するXで示される基は互いに同一でも異なっていてもよく、また複数存在するXで示される基は互いに結合して環を形成してもよい。)。
【請求項2】
前記一般式(I)で表される遷移金属化合物(A)において、M2がクロム原子、鉄原子、ルテニウム原子、コバルト原子またはニッケル原子であることを特徴とする、請求項1に記載の遷移金属化合物(A)。
【請求項3】
前記一般式(I)で表される遷移金属化合物(A)において、M1が周期律表第4族の金属原子であることを特徴とする、請求項1または2に記載の遷移金属化合物(A)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の遷移金属化合物(A)を含むことを特徴とするオレフィン重合用触媒。
【請求項5】
[A]請求項1〜3のいずれか1項に記載の遷移金属化合物(A)と、
[B](B−1)有機金属化合物、
(B−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B−3)遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物
からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と
を含むことを特徴とするオレフィン重合用触媒。
【請求項6】
請求項4または5に記載のオレフィン重合用触媒の存在下において、オレフィンを重合または共重合させることを特徴とするポリオレフィンの製造方法。

【公開番号】特開2010−215560(P2010−215560A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64169(P2009−64169)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】