説明

選択還元型触媒の再生方法

【課題】比較的低温であってもNOxの大気放出を有効に防止し、またパティキュレートフィルタを再生するとともに、選択還元型触媒も同時に再生させる
【解決手段】ディーゼルエンジン11の排気管16に設けられ粒子状固形物の硝酸アンモニウムが堆積した選択還元型触媒24を再生させる。先ず選択還元型触媒24より排ガス上流側の排気管16に設けられたディーゼルパティキュレートフィルタ51の温度を上昇させてディーゼルパティキュレートフィルタ51に堆積させたパティキュレートを燃焼させる。次にパティキュレートの燃焼によりディーゼルパティキュレートフィルタ51を通過する排ガスの温度を上昇させる。更に温度が上昇した排ガスの熱により選択還元型触媒24に堆積した粒子状固形物の硝酸アンモニウムを分解させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる窒素酸化物を尿素系液体と反応させて分解する選択還元型触媒を再生する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる窒素酸化物(以下、「NOx」という。)を低減させる排ガス浄化装置として、ディーゼルエンジンの排気通路の途中に選択還元型触媒を設け、その選択還元型触媒より排ガス上流側の排気管に、その選択還元型触媒に向けて尿素系液体を噴射可能な液体噴射ノズルを設けたディーゼルエンジンの排ガス浄化装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。従来の選択還元型触媒は、貫通孔が互いに平行に複数形成された担体と、触媒作用を有しその隔壁に担持された活性成分とを備える。そしてこの選択還元型触媒を備える従来のディーゼルエンジンの排ガス浄化装置では、液体噴射ノズルから噴射された尿素系液体が排ガスの熱により加熱されて加水分解し、アンモニアが生じる。そしてこのアンモニアは排ガス中のNOxを選択還元型触媒によって浄化する還元剤として機能し、大気に排出されるNOxの量を低減できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−239109号公報(段落番号[0012]〜[0015]、図2〜図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、選択還元型触媒における温度が80〜200℃程度の比較的低温である場合には、その選択還元型触媒におけるNOxの分解が有効に行われず、選択還元型触媒を設けていても低温時には分解されないNOxがそのまま大気に排出されてしまう未だ解決すべき課題が残存していた。
本発明の目的は、比較的低温であってもNOxの大気放出を有効に防止することができ、またパティキュレートフィルタを再生するとともに、選択還元型触媒も同時に再生させることができる、選択還元型触媒の再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、ディーゼルエンジン11の排気管16に設けられ粒子状固形物の硝酸アンモニウムが堆積した選択還元型触媒24を再生させる方法である。
その特徴ある点は、選択還元型触媒24が、多孔質の隔壁26aで仕切られた貫通孔26bが互いに平行に複数形成された担体26と、触媒作用を有し隔壁26aに担持された活性成分とを備え、エンジン11の排ガス中の窒素酸化物を尿素系液体と反応させて分解するように構成され、隔壁26aで仕切られた複数の貫通孔26bの相隣接する入口部26cと出口部26dが交互に封止され、隔壁26aが通気性を有し一の貫通孔26bの入口部26cから流入した排ガスが隔壁26aを通過して一の貫通孔26bに隣接する他の貫通孔26bの出口部26dから排出されるように構成され、活性成分が担持された隔壁26aは粒子状固形物の硝酸アンモニウムを通過不能に構成され、選択還元型触媒24より排ガス上流側の排気管16に設けられたディーゼルパティキュレートフィルタ51の温度を上昇させてディーゼルパティキュレートフィルタ51に堆積させたパティキュレートを燃焼させ、パティキュレートの燃焼によりディーゼルパティキュレートフィルタ51を通過する排ガスの温度を上昇させ、温度が上昇した排ガスの熱により選択還元型触媒24に堆積した粒子状固形物の硝酸アンモニウムを分解させるところにある。
【0006】
排ガスの温度が比較的低温である場合には、その排ガス中のNOxはアンモニアと反応して硝酸アンモニウムが生成されることが分かっており、この硝酸アンモニウムは、融点である210℃より低温では粒子状固形物となる。このため、この請求項1に記載された選択還元型触媒では、排ガスの温度が比較的低温時に生成される硝酸アンモニウムを担体26の隔壁26aに堆積させることにより捕集して、排ガスが比較的低温の時にNOxがその状態で大気にそのまま排出されることを有効に防止することができる。
また選択還元型触媒24に粒子状固形物の硝酸アンモニウムが堆積するとその隔壁26aにおける細孔を詰まらせたり、その隔壁26aの表面を覆ってしまうことにより、NOx浄化反応を阻害するおそれがある。また、ディーゼルパティキュレートフィルタ51に捕集されたパティキュレートの量が増大すると、パティキュレートフィルタ51を通る排気の流路抵抗が増大する。このため、選択還元型触媒24やディーゼルパティキュレートフィルタ51は定期的に再生させる必要がある。この請求項1に記載された選択還元型触媒の再生方法では、パティキュレートフィルタ51の温度を上昇させてパティキュレート燃焼させることによりパティキュレートフィルタ51を再生するとともに、選択還元型触媒24も同時に再生させることができ、選択還元型触媒24を独自に再生させる再生装置等が不要となり、その構造を比較的単純にすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の選択還元型触媒では、隔壁で仕切られた複数の貫通孔の相隣接する入口部と出口部を交互に封止し、一の貫通孔の入口部から流入した排ガスが隔壁を通過して一の貫通孔に隣接する他の貫通孔の出口部から排出されるように構成し、かつ活性成分が担持された隔壁は粒子状固形物の硝酸アンモニウムを通過不能に構成したので、排ガスの温度が比較的低温時に、排ガス中のNOxを固形物である硝酸アンモニウムに変化させて担体の隔壁に堆積させることにより捕集して、排ガスが比較的低温の時にNOxがその状態で大気にそのまま排出されることを有効に防止する。
【0008】
粒子状固形物の硝酸アンモニウムが堆積した選択還元型触媒は定期的に再生させる必要があるけれども、本発明の選択還元型触媒の再生方法では、選択還元型触媒より排ガス上流側の排気管に設けられたディーゼルパティキュレートフィルタの温度を上昇させてディーゼルパティキュレートフィルタに堆積させたパティキュレートを燃焼させ、パティキュレートの燃焼によりディーゼルパティキュレートフィルタを通過する排ガスの温度を上昇させ、温度が上昇した排ガスの熱により選択還元型触媒に堆積した粒子状固形物の硝酸アンモニウムを分解させるので、パティキュレートフィルタを再生するとともに、選択還元型触媒も同時に再生させることができ、選択還元型触媒を独自に再生させる再生装置等が不要となり、その構造を比較的単純にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態の選択還元型触媒の再生方法を用いた排ガス浄化装置を示す構成図である。
【図2】その選択還元型触媒の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、ディーゼルエンジン11の吸気ポートには吸気マニホルド12を介して吸気管13が接続され、排気ポートには排気マニホルド14を介して排気管16が接続される。吸気管13には、ターボ過給機17のコンプレッサ17aと、ターボ過給機17により圧縮された吸気を冷却するインタクーラ18とがそれぞれ設けられ、排気管16にはターボ過給機17のタービン17bが設けられる。図示しないがコンプレッサ17aの回転翼とタービン17bの回転翼とはシャフトにより連結される。エンジン11から排出される排ガスのエネルギによりタービン17b及びシャフトを介してコンプレッサ17aが回転し、このコンプレッサ17aの回転により吸気管13内の吸入空気が圧縮されるように構成される。
【0011】
図示しないが、エンジン11には燃料噴射装置が設けられる。この実施の形態における燃料噴射装置は先端部がシリンダに臨みシリンダに燃料である軽油を噴射可能な筒内インジェクタと、内部に軽油を蓄圧し上記インジェクタに軽油を圧送するコモンレールと、このコモンレールに軽油を供給するフィードポンプとを有する。筒内インジェクタはこのインジェクタに内蔵された電磁弁により軽油の噴射量及び噴射時期が調整可能に構成される。この燃料噴射装置は、ピストンの上死点の後に燃料である軽油をシリンダに噴射するポスト噴射が可能に構成され、このポスト噴射の有無により、エンジン11から排気管16に供給される炭化水素を増減可能に構成される。排気管16の途中には選択還元型触媒24が設けられる。選択還元型触媒24は排気管16の直径を拡大した筒状のコンバータ27に収容される。
【0012】
図2に詳しく示すように、選択還元型触媒24は、担体26とこの担体26に担持された触媒作用を有する図示しない活性成分からなる。担体26は例えばコージェライト、炭化ケイ素のようなセラミックからなる多孔質体からなり、多孔質の隔壁26aで仕切られた貫通孔26bが互いに平行に複数形成される。この担体26は、隔壁26aで仕切られた複数の貫通孔26bの相隣接する入口部26cと出口部26dが交互に封止され、その多孔質体の隔壁26aにゼオライト、アルミナのような活性成分がコーティングされることによりその隔壁26aに担持される。即ち、この選択還元型触媒24は、上記担体26を金属ゼオライト、金属アルミナなどをスラリー化した液体中に浸漬した後、脱液し、乾燥焼成することにより活性成分を担体26に担持させることにより作られる。そして、隔壁26aは活性成分が担持された状態で通気性を有するように構成され、一の貫通孔26bの入口部26cから流入した排ガスが図の実線矢印で示すようにその隔壁26aを通過して一の貫通孔26bに隣接する他の貫通孔26bに流入し、その他の貫通孔26bの出口部26dから排出されるように構成される。そしてその隔壁26aに担持された活性成分はエンジン11の排ガス中のNOxを尿素系液体と反応させて分解するように構成され、この例における活性成分は排気管16に流入する排ガス中のNOxを比較的低温で、例えば200〜300℃で還元するようなゼオライト、アルミナのようなものが用いられる。
【0013】
図1に戻って、この選択還元型触媒24の排ガス上流側の排気管16、即ち選択還元型触媒24の入口には、液体噴射ノズル29が選択還元型触媒24に向けて設けられる。この液体噴射ノズル29には液体供給管31の一端が接続され、この液体供給管31の他端は尿素系液体32が貯留された液体タンク33に接続される。また液体供給管31には液体噴射ノズル29への液体32の供給量を調整する液体調整弁34が設けられ、液体調整弁34と液体タンク33との間の液体供給管31には液体タンク33内の液体32を液体噴射ノズル29に供給可能なポンプ36が設けられる。液体調整弁34は第1〜第3ポート34a〜34cを有する三方弁であり、第1ポート34aはポンプ36の吐出口に接続され、第2ポート34bは液体噴射ノズル29に接続され、更に第3ポート34cは戻り管37を介して液体タンク33に接続される。そして、液体調整弁34がオンすると第1及び第2ポート34a,34bが連通し、オフすると第1及び第3ポート34a,34cが連通するように構成される。
【0014】
一方、排気管16にはその排気管16内の排ガス温度を検出する第1及び第2温度センサ43a,43bが設けられる。即ち、液体噴射ノズル29及び選択還元型触媒24間である選択還元型触媒24の入口には、その入口における排気管16内の排ガス温度を検出する第1温度センサ43aが設けられる。一方、選択還元型触媒24の出口には、その出口における排気管16内の排ガス温度を検出する第2温度センサ43bが設けられる。これらの第1及び第2温度センサ43a,43bの検出出力はマイクロコンピュータからなるコントローラ44の制御入力にそれぞれ接続される。その他コントローラ44の制御入力には、エンジン11の回転速度を検出する回転センサ46と、エンジン11の負荷を検出する負荷センサ47などの各検出出力が接続される。上記負荷センサ47はこの実施の形態では燃料噴射ポンプ(図示せず)のロードレバーの変位量を検出する。コントローラ44の制御出力は液体調整弁34及びポンプ36にそれぞれ接続される。コントローラ44はメモリ44aを備える。メモリ44aには、選択還元型触媒24の入口及び出口の排ガス温度、エンジン回転、エンジン負荷等に応じた液体調整弁34のオン又はオフ並びにオン時における開度、更にポンプ36の作動の有無が予め記憶される。
【0015】
また、選択還元型触媒24より排ガス上流側の排気管16には多孔質セラミックから成るディーゼルパティキュレートフィルタ51が設けられ、このフィルタ51の上流側には酸化触媒53が更に設けられる。このディーゼルパティキュレートフィルタ51及び酸化触媒53は、選択還元型触媒24より上流側の排気管16の直径を拡大した筒状のコンバータ52に並べられて収容される。図示しないが、パティキュレートフィルタ51は、上流側に栓が施された第1通路と下流側に栓が施された第2通路とが交互に配置されたハニカム状をなし、排ガスは第2通路から多孔質セラミックの流路壁面を通過して第1通路に流入して下流側に流れるように構成される。そして、排ガス中のパティキュレートは多孔質セラミックによって捕集され、パティキュレートの大気への放出を防止するように構成される。一方、酸化触媒53は、排ガスの流れる方向に格子状(ハニカム状)の通路が形成された図示しないモノリス担体(材質:コージェライト)を有し、このモノリス担体上に白金−ゼオライト触媒又は白金−アルミナ触媒がコーティングされる。このコーティングにより、酸化触媒53に煤や炭化水素(HCなど)の酸化力が付与される。
【0016】
そして、このディーゼルパティキュレートフィルタ51の温度を所定値に上昇可能に構成されたフィルタ温度上昇手段が設けられる。この実施の形態におけるフィルタ温度上昇手段は、前述した酸化触媒53と図示しない燃料噴射装置からなる。即ち、燃料噴射装置により軽油をシリンダ内にポスト噴射することにより、炭化水素を排ガス中に増加させてエンジン11から排ガスとともに排気管16に供給させる。排ガス中に炭化水素が増加すると、その増加した炭化水素は酸化触媒53において酸化反応して排ガス自体の温度が上昇し、その下流側に存在するディーゼルパティキュレートフィルタ51の温度を所定値に上昇させる。
【0017】
このように構成されたエンジンの排ガスを浄化する装置の動作を説明する。
エンジン11を始動すると、その排ガスは排気マニホルド14から排気管16に至り、その排気管16を介してディーゼルパティキュレートフィルタ51に至る。ディーゼルエンジン11の排ガス中におけるパティキュレートはこのディーゼルパティキュレートフィルタ51により捕集される。そして、パティキュレートが捕集されてそれが除去された排ガスはそのパティキュレートフィルタ51を通過し、その下流側に存在する選択還元型触媒24に至る。そして、排ガス中のNOxはこの選択還元型触媒24において浄化される。
【0018】
即ち、排ガスの温度が比較的高温であることを第1及び第2温度センサ43a,43bの検出出力から判断したコントローラ44は液体調整弁34をオンして液体調整弁34における第1及び第2ポート34a,34bを連通させ、液体噴射ノズル29から尿素系液体32を噴射する。これは、排ガス中のNOxを選択還元型触媒24によって浄化するのに還元剤が必要だからであり、尿素系液体32は予め所定の濃度に調整されたものが液体タンク33に貯留される。コントローラ44は回転センサ46及び負荷センサ47の各検出出力に基づいて求められるディーゼルエンジン11の運転状態から排ガス中のNOx濃度を推定し、このNOxを浄化するのに必要な還元剤としての尿素量を求める。そして、コントローラ44は、求められた還元剤として必要な尿素量から具体的な尿素系液体32の噴射量を決定し、液体調整弁34をオンして噴射ノズル29から最適な量の尿素系液体32を噴射する。噴射された尿素系液体は、排ガスによって加熱されて加水分解しアンモニアを生じる。このアンモニアが選択還元型触媒24に流入すると、排ガス中のNO、NO2は還元されてN2 やH2Oに変化し、NOxが大気にそのまま排出される量を低減する。
【0019】
ここで、排ガスの温度が比較的低温である場合には、NOxは還元剤として供給されるアンモニアとの反応により、硝酸アンモニウムを生成することが分かっている。この硝酸アンモニウムは、融点である210℃より低温では固形物となり、選択還元型触媒24における担体26の隔壁26aを通過することができずに、その隔壁26aに堆積する。選択還元型触媒24はNOxがアンモニアと反応して生成された硝酸アンモニウムをその隔壁に堆積させることにより捕集して、排ガスが比較的低温の時にNOxがその状態で大気にそのまま排出されることを有効に防止する。このため排ガスが比較的低温であることを第1及び第2温度センサ43a,43bの検出出力から判断したコントローラ44は、必要に応じて液体調整弁34をオンして液体調整弁34における第1及び第2ポート34a,34bを連通させ、液体噴射ノズル29から尿素系液体32を噴射する。コントローラ44は、第1及び第2温度センサ43a,43b、回転センサ46及び負荷センサ47の各検出出力に基づいて求められるディーゼルエンジン11の運転状態から排ガス中のNOxを硝酸アンモニウムに変化させるのに必要な尿素量を求める。そして、コントローラ44は必要な尿素量から液体調整弁34をオンして噴射ノズル29から最適な量の尿素系液体32を噴射し、NOxを硝酸アンモニウムに変化させて触媒24における隔壁26aに堆積させることにより捕集して、排ガスが比較的低温時におけるNOxの排出量を低減させる。
【0020】
一方、選択還元型触媒24に粒子状固形物である硝酸アンモニウムが過度に堆積すると、その触媒24の隔壁26aにおける細孔を詰まらせたり、その隔壁26aの表面を覆ってしまうことにより、NOx浄化反応を阻害するおそれがある。また、選択還元型触媒24の上流側に設けられたディーゼルパティキュレートフィルタ51にあっても、このディーゼルパティキュレートフィルタ51に捕集されたパティキュレートの量が増大すると、パティキュレートフィルタ51を通る排気の流路抵抗が増大する。このため、選択還元型触媒24や、そのの上流側に設けられたディーゼルパティキュレートフィルタ51は定期的に再生させる必要がある。この再生方法を以下に説明する。
【0021】
選択還元型触媒24の再生はパティキュレートフィルタ51の再生とともに行われる。そして、パティキュレートフィルタ51の再生は、フィルタ温度上昇手段である図示しない燃料噴射装置により燃料である軽油をシリンダ内にポスト噴射させることにより行われる。このポスト噴射により、炭化水素を排ガス中に増加させてエンジン11から排ガスとともに排気管16に供給させる。排ガス中に炭化水素が増加すると、その増加した炭化水素は酸化触媒53において酸化反応して排ガス自体の温度が上昇し、その下流側に存在するディーゼルパティキュレートフィルタ51の温度を上昇させる。パティキュレートフィルタ51の温度が上昇してパティキュレートが燃焼可能な温度、例えば600℃を越えると、パティキュレートフィルタ51に捕集されたパティキュレートはその熱により燃焼し、これによりパティキュレートフィルタ51は再生する。
【0022】
パティキュレートフィルタ51の温度が上昇してパティキュレートが燃焼すると、そのパティキュレートフィルタ51を通過した排ガスの温度は著しく上昇し、温度が上昇した排ガスはその下流側に設けられた選択還元型触媒24に達する。一方、硝酸アンモニウムは210℃以上で分解するので、温度が上昇した排ガスの熱により選択還元型触媒24に堆積した粒子状固形物である硝酸アンモニウムは分解し、これにより選択還元型触媒24を再生することができる。
なお、上述した実施の形態では、エンジンとしてターボ過給機付ディーゼルエンジンを挙げたが、自然吸気型ディーゼルエンジンに本発明の排ガスを浄化する装置を用いてもよい。
【0023】
また、上述した実施の形態では、フィルタ温度上昇手段としてポスト噴射可能な燃料噴射装置を用いて説明したが、フィルタ温度上昇手段は、排ガスの温度を上昇させる等してフィルタの温度を上昇させることができるものであれば、例えば、EGR制御弁、吸気スロットル弁又は排気ブレーキ弁を閉じる、VG(Variable Geometry)ターボのノズルベーン開度を大きくする等してエンジン負荷を大きくしたりしても良く、フィルタの直前に炭化水素を直接そのフィルタに向かって噴射可能なノズルを設けても良い。
【符号の説明】
【0024】
11 ディーゼルエンジン
16 排気管
24 選択還元型触媒
26 担体
26a 隔壁
26b 貫通孔
26c 入口部
26d 出口部
29 液体噴射ノズル
32 尿素系液体
51 ディーゼルパティキュレートフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジン(11)の排気管(16)に設けられ粒子状固形物の硝酸アンモニウムが堆積した選択還元型触媒(24)を再生させる方法であって、
前記選択還元型触媒(24)が、多孔質の隔壁(26a)で仕切られた貫通孔(26b)が互いに平行に複数形成された担体(26)と、触媒作用を有し前記隔壁(26a)に担持された活性成分とを備え、
前記エンジン(11)の排ガス中の窒素酸化物を前記尿素系液体と反応させて分解するように構成され、
前記隔壁(26a)で仕切られた複数の前記貫通孔(26b)の相隣接する入口部(26c)と出口部(26d)が交互に封止され、
前記隔壁(26a)が通気性を有し一の貫通孔(26b)の入口部(26c)から流入した前記排ガスが前記隔壁(26a)を通過して前記一の貫通孔(26b)に隣接する他の貫通孔(26b)の出口部(26d)から排出されるように構成され、
前記活性成分が担持された前記隔壁(26a)は粒子状固形物の硝酸アンモニウムを通過不能に構成され、
前記選択還元型触媒(24)より排ガス上流側の前記排気管(16)に設けられたディーゼルパティキュレートフィルタ(51)の温度を上昇させて前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(51)に堆積させたパティキュレートを燃焼させ、
前記パティキュレートの燃焼により前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(51)を通過する排ガスの温度を上昇させ、
温度が上昇した排ガスの熱により前記選択還元型触媒(24)に堆積した前記粒子状固形物の硝酸アンモニウムを分解させる
ことを特徴とする選択還元型触媒の再生方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−50954(P2011−50954A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231653(P2010−231653)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【分割の表示】特願2005−147492(P2005−147492)の分割
【原出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】