説明

部分加熱加工装置及びそれを備えた順送型加工システム

【課題】部分加熱増肉加工により加工時間を短縮して生産性に優れた部分加熱加工装置及び順送型加工システムの提供。
【解決手段】基台10aとその上方に対向配置された上ホルダー17とを備え、上ホルダーは、その下方に、上ホルダーの上下方向の動きを水平方向の動きに変換してパンチ部材13,14を水平駆動させる縦押圧手段と、加熱手段を備えた上面支持部と、を連結し、上ホルダーを下降させることにより、連結された縦押圧手段及び上面支持部を下降させ、上面支持部と基台上に設けられた下面支持部とでワークを挟圧保持し、挟圧保持したワークの加熱予定部を、上面支持部及び/又は下面支持部に設けられた加熱手段によって加熱するとともに、縦押圧手段のカムスライド面によって動きを変換され水平駆動する横押圧手段の先端に設けられたパンチ部材をワーク方向に移動させ、ワークの左右外方から内方に押圧して、ワークの加熱予定部を加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象となるワークを基台に載置して、加工装置に設けた部分加熱装置でワークを部分的に加熱するとともにその加熱部分を部分加工する部分加熱加工装置、及びその部分加熱加工装置を備えた順送型加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、加工対象となるワークに対して曲げ、絞り等が混在した複雑加工が提案されている。
例えば、自動車のエンジンにおけるロッカーアームなどは軽量化が望まれているが、鍛造や鋳造によるものでは、薄肉湾曲形状とするなどの最適設計が困難であり、成形後の後加工等も煩雑で製造コストが高いという問題があった。
そこで、プレス成形法を用いて素材から成形することが一般に行われている。このような加工対象としてのワークの素材には軟鋼やアルミニウム合金等の材料が用いられ、曲げ加工や押圧加工によって厚肉部を形成した部分を、さらに、据えこみやコイニングなどの加工法により複雑な形状に加工していた。
特許文献1には、一対の両側壁と、その両側壁における長手方向の一端部間を連結するバルブステム当接壁とを具備する中間製品を得る第1工程と、中間製品のバルブステム当接壁を、押圧加工により幅寄せ方向に圧縮成形して、バルブステム当接壁の肉厚を増大させる(増肉)第2工程と、増肉されたバルブステム当接壁の下面側に、溝部を形成する第3工程とを含み、溝部を、バルブステム案内溝として構成するロッカーアームの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−14978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のようなワークの加工方法では、冷間加工の過程で素材に割れが生じ易くなるために、加工ワークの信頼性に欠けることがあり、製品の寸法不良や工程停止などの不具合を生じて生産性低下の要因となるといった問題があった。
本発明は前記従来の課題を解決するためになされたもので、加工システムを用いて増肉加工を行うことにより、ワークの加工時間を短縮してコスト性と生産性に優れた部分加熱加工装置及び順送型加工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の部分加熱加工装置は、基台と、前記基台の上方に対向して配置された上ホルダーと、を備え、前記上ホルダーは、その下方に、前記上ホルダーの上下方向の動きを水平方向の動きに変換してパンチ部材を水平駆動させる縦押圧手段と、加熱手段を備えた上面支持部と、を連結し、前記上ホルダーを下降させることにより、連結された前記縦押圧手段及び前記上面支持部を下降させ、前記上面支持部と前記基台上に設けられた下面支持部とでワークを挟圧保持し、挟圧保持した前記ワークの加熱予定部を、前記上面支持部及び/又は下面支持部に設けられた加熱手段によって加熱するとともに、前記縦押圧手段のカムスライド面によって動きを変換され水平駆動する横押圧手段の先端に設けられたパンチ部材を前記ワーク方向に移動させ、前記ワークの左右外方から内方に押圧して、前記ワークの加熱予定部を加工するようにしたことを特徴とする。
【0006】
(2)また本発明の部分加熱加工装置は、上記(1)に記載の部分加熱加工装置において、前記加熱手段が接触式の電極であり、前記上面支持部に設けられた上電極と前記下面支持部に設けられた下電極とを、前記ワークの加熱予定部に当接した後、前記上電極と前記下電極との間に通電して前記ワークの加熱予定部を加熱することを特徴とする。
【0007】
(3)また本発明の部分加熱加工装置は、上記(2)に記載の部分加熱加工装置において、前記パンチ部材が先細のくさび形状であり、前記上電極と前記下電極との間に通電して前記ワークの加熱予定部を加熱した後、挟圧保持状態の前記ワークの左右外方から上下面支持部間に前記パンチ部材のくさび形状を挿入して上下面支持部を離間させ上下電極間の通電を遮断するとともに、さらに前記パンチ部材を前記ワークの方向に移動させ、加熱された前記ワークの部分を左右外方から内方に押圧して前記加熱予定部を加工することを特徴とする。
(4)また本発明の部分加熱加工装置は、上記(1)〜(3)のいずれかの部分加熱加工装置において、前記ワークの加熱予定部の加工が、ワークの厚みを部分的に増す増肉加工であることを特徴とする。
(5)また本発明の部分加熱加工装置は、上記(1)〜(4)のいずれかの部分加熱加工装置において、前記下面支持部の上部に、前記上面支持部と前記下面支持部とで挟圧保持された前記ワークの載置状態を検出する位置センサを設けることを特徴とする。
(6)また本発明の部分加熱加工装置は、上記(1)〜(5)のいずれかの部分加熱加工装置は、順送型加工システムに組み込まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ワークを挟圧保持して、パンチ部材によりワークの左右外方から増肉するようにしたので、ワークの加工時間を短縮してコスト性と生産性に優れた部分加熱加工装置及び順送型加工システムを提供することができる。
すなわち、上記構成により、ワークの上面及び下面を上下電極により挟圧保持して、そのワークを部分加熱するとともに、ワークの左右外方に設けたパンチ部材をワークの部分加熱部を押圧するように移動させることによって、部分的に厚みを増した増肉部をそのワークに形成させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例の部分加熱加工装置の概略構成を示す正面図である。
【図2】実施例の部分加熱加工装置においてワークの加工工程の部分説明図であり、(a)はパンチ挿入前の概略説明図であり、(b)はパンチ挿入後の概略説明図である。
【図3】実施例の部分加熱加工装置においてワークの部分加熱加工工程を段階的に説明した模式図であり、(a)は部分加熱加工前のワークWを示す断面図及び平面図であり、(b)は、部分加熱加工装置の下電極及び上電極を加熱予定部に当接させた状態を示す断面図及び平面図であり、(c)は加工後の断面図及び平面図である。
【図4】実施例の部分加熱加工装置に適用される通電加熱構成の概略構成図である。
【図5】実施例の部分加熱加工装置を、その一連の加工工程に組み込んだ順送型加工システムの概略説明図であり、(a)はロッカーアームの製造工程例を示す概略断面図であり、(b)は素材の形状変化の状態を示す平面図である。
【図6】実施例の順送型加工システムを用いてロッカーアームの製造工程を示す説明図であり、(a)は全体工程を示し、(b)は順送型加工システムにおける工程を中心に拡大した説明図である。
【図7】本実施例の順送型加工システムにおいて製造されるロッカーアームを示す概略斜視面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態に係る部分加熱加工装置は、基台と、前記基台の上方に対向して配置された上ホルダーと、を備え、前記上ホルダーは、その下方に、前記上ホルダーの上下方向の動きを水平方向の動きに変換してパンチ部材を水平駆動させる縦押圧手段と、加熱手段を備えた上面支持部と、を連結し、前記上ホルダーを下降させることにより、連結された前記縦押圧手段及び前記上面支持部を下降させ、前記上面支持部と前記基台上に設けられた下面支持部とでワークを挟圧保持し、挟圧保持した前記ワークの加熱予定部(以下、「部分加熱部」という場合もある)を、前記上面支持部及び/又は下面支持部に設けられた加熱手段によって加熱するとともに、前記縦押圧手段のカムスライド面によって動きを変換され水平駆動する横押圧手段の先端に設けられたパンチ部材を前記ワーク方向に移動させ、前記ワークの左右外方から内方に押圧して、前記ワークの加熱予定部を加工するようにした。
上記構成により、ワークの上面及び下面を上下電極により挟圧保持して、そのワークを部分加熱するとともに、ワークの左右外方に設けたパンチ部材をワークの部分加熱部を押圧するように移動させることによって、部分的に厚みを増した増肉部をそのワークに形成させることができる。
【0011】
基台は、上ホルダーと対向して配置されるとともに、後述するガイドおよび下面支持部(及び下電極)が載置される。基台の材質は特に限定はないが、工具鋼などの金属やセラミックスが適用できる。
上ホルダーは、その下方に縦押圧手段(縦カム)及び横押圧手段(横カム)を有し、上ホルダーの上下方向の動きを縦押圧手段を介して横押圧手段が水平方向の動きに変換してパンチ部材を水平駆動させる。
より具体的には、上ホルダーが下降した際に、縦カムが上ホルダーに追随して下降する。また、上ホルダーには、その下方にストリッパが連結されており、その下方には、上電極を有する上面支持部が設けられ、上ホルダーを下降させることにより連結されたストリッパ及び上面支持部を下降させることができる。
【0012】
一方、基台上には、下電極を有する下面支持部が設けられており、下面支持部は、ワーク下面に当接して、ワークを保持するための部材である。下面支持部には下電極が設けられている。
前記上面支持部と、前記下面支持部とでワークの加熱予定部が接触挟圧保持された後、上面支持部に備えられた上電極と下面支持部に備えられた下電極との間で通電が開始されてワークの加熱予定部が加熱される。
【0013】
前記縦カムおよび横カムのそれぞれの端面は斜面となっており(カムスライド面)、縦カムの下降によって縦カムと横カムのカムスライド面で力の方向が、垂直から水平方向に変換されるようになっている。
横カムのカムスライド面とは反対側の端面にはパンチ部材が設けられており、パンチ部材はワークの加熱予定部を左右(図1のY方向)外方から内方にワークを押圧するようになっている。
また、パンチ部材の先端(ワークと当接する部位)は先細のくさび形状(テーパー状)となっている。
【0014】
上面支持部は、下面支持部の上方に上下動可能に配置され、下面支持部との間でワークを挟圧保持するようになっている。
この上面支持部には、必要に応じて、その押圧力や上下位置を検知するためのセンサ類を配置することができ、これらのセンサ信号に基づいて、部分加熱加工装置の各動作を制御することも可能としている。
【0015】
本実施形態の部分加熱加工装置は、下面支持部の左右側端側又は上部にそれぞれ対に設けられワークの左右側端の当接状態を検知する着座センサ(位置センサ)を設けることができる。
これによって、ワークを下面支持部と上面支持部との間で確実に挟圧保持して、部分加熱加工工程における作動不良を未然に防止することができるとともに、これらのセンサ信号に基づいて、部分加熱、パンチ部材の制御動作を効率的に行うことも可能としている。
【0016】
着座センサ(位置センサ)としては、例えば、機械的接触により作動するリミットスイッチタイプのものや、コイルにより発生する高周波磁界の変化を利用して非接触状態で作動させることのできる渦電流式変位センサなどを適用することができる。渦電流式変位センサは、センサヘッド内部のコイルにより高周波磁界を発生させ、測定対象物表面に磁束の通過と垂直方向の渦電流が流れることによるセンサコイルのインピーダンスの変化を検知して測定対象物とセンサヘッド間の距離を測定するものであり、例えば株式会社キーエンス製の商品名:キーエンス EX−Vシリーズなどを適用することができる。
【0017】
以上説明した具体的な各部材の一連の動きは次のとおりである。
まず上ホルダーが下方に移動して縦カムと横カムのスライド面同士がまず当接する。続いて、上電極を連結するストリッパを、下降手段(例えば、上面支持部との間に配設されたエアシリンダ)を用いて下降させ、上電極と下電極とでワークを挟圧保持する。その後、上電極と下電極との間に通電することによって、ワークの加熱予定部を加熱する。
ワークの加熱予定部を所定の時間だけ加熱した後、上ホルダーをさらに下降させることにより縦カムを下方向に移動させ、カムスライド面を介して横カムを水平方向に移動させる。
これにより、横カムの先端に接続されたパンチ部材を水平方向に移動させ、挟圧保持状態の前記ワークの左右外方から上面支持部と下面支持部間にパンチ部材のくさび形状を挿入することにより、上面支持部と下面支持部とがくさび形状の外形に沿って離間させられ上電極と下電極との間の通電が遮断される。
【0018】
さらに、パンチ部材水平方向に移動することにより、パンチ部材が前記ワークの左右外方から内方にワークを押圧して、ワークの加熱予定部(加熱手段により加熱された部分)を加工する。なお、パンチ部材が行う加工は、ワークの加熱手段により加熱された部分の厚みを部分的に増す増肉加工である。
【0019】
(実施例)
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、本発明が適用可能なワークWとして、本実施例ではロッカーアームを一例として説明している。
図1は、本発明の実施例の部分加熱加工装置の概略構成を示す正面図である。
図2は、実施例の部分加熱加工装置においてワークの加工工程の部分説明図であり、(a)はパンチ挿入前の概略説明図であり、(b)はパンチ挿入後の概略説明図である。
図3は、実施例の部分加熱加工装置においてワークの部分加熱加工工程を段階的に説明した模式図であり、(a)は部分加熱加工前のワークWを示す断面図及び平面図であり、(b)は、部分加熱加工装置の下電極及び上電極を加熱予定部に当接させた状態を示す断面図及び平面図であり、(c)は加工後の断面図及び平面図である。
【0020】
図1〜3に示すように、部分加熱加工装置10は、ワークWを下面支持部11と上面支持部12とで挟圧保持した状態で、ワークWの加熱予定部Sを部分加熱及び加工するための装置である。
また、部分加熱加工装置10は、基台10aと、基台10aの上方に対向して配置された上ホルダー17と、を備えている。
上ホルダー17は、その下方に、上ホルダー17の上下方向の動きを水平方向の動きに変換してパンチ部材13,14を水平駆動させる縦押圧手段(縦カム)20aと、加熱手段を備えた上面支持部(上電極)12と、を連結している。
そして、上ホルダー17を下降させると、連結された縦押圧手段(縦カム)20a及び上面支持部12が下降し、上面支持部12と、基台10a上に設けられた下面支持部(下電極)11とで、ワークWを挟圧保持する。
次に、挟圧保持したワークWの加熱予定部Sを、上面支持部12及び/又は下面支持部11に設けられた加熱手段によって加熱するとともに、縦押圧手段(縦カム)20aのカムスライド面Kによって動きを変換され水平駆動する横押圧手段(横カム)20bの先端に設けられたパンチ部材13、14をワークW方向に移動させ、ワークWの左右外方から内方に押圧して、ワークWの加熱予定部Sを加工するようにしている。
【0021】
下面支持部11は、ボルト等の固定手段を介して基台10aに固定されており、下面支持部11内には、ワークWの加熱手段である下電極11aが備えられている。この下電極11aは、ワークWの加熱予定部Sの下側に当接して部分加熱を行うようになっている。
上面支持部12は、電極加圧制御装置16を介してストリッパ22と連結されており、上面支持部12内には、ワークWの加熱予定部Sの上側に当接して部分加熱する上電極12aが備えられている。
【0022】
図1に示すように、電極加圧制御装置16は、上ホルダー17に固定され、図示略の制御手段と電気的に接続されており、該制御手段の制御の下で上面支持部12及び上電極12aを下降させワークWの上側に当接させて押圧する機能を備えている。
また、下面支持部11と上面支持部12との間で挟圧保持されるワークWの加工前の正常な載置状態を確保するため、着座センサとしての渦電流式変位センサ12bが、上面支持部12の下端に単数もしくは複数設けられており、上面支持部12がワークWの上部に正常に嵌合されたか否かを検知することができるようになっている。
【0023】
図示するように、左右のパンチ部材13、14は、基台10aの下面支持部11上に載置された状態のワークWの左右側面Hに対向してそれぞれ配置されており、それぞれの先端押圧部13b、14bが、縦押圧手段(縦カム)20a、カムスライド面K、横押圧手段(横カム)20bを順に介して、ワークWの左右外方からその左右側面Hに向かって、内方に押圧するようになっている。
なお、縦カム20aおよび横カム20bのそれぞれの端面には斜面(カムスライド面K)が形成され、縦カム20aの上下方向の動きを横カム20bの横方向の動きに変換するようになっている。
そして、横カム20bのカムスライド面Kとは反対側の端面には、それぞれ一対のパンチ部材13、14が設けられており、それぞれの先端押圧部13b、14bを介してワークWを水平方向から左右方向に押圧することができるように構成されている。
【0024】
一対のパンチ部材13、14は、耐熱工具鋼などからなる所定形状の加工用パンチであって、組合わされた状態の上面支持部12及び下面支持部11内へ進退自在に設けられている。
なお、本実施例では、ワークWの部分加熱部(加熱予定部Sを含む)を増肉加工するに際して、汎用プレス機械などを用いて上ホルダーの上下運動をパンチ部材の水平運動に変換して駆動するように構成している。
すなわち、図2(a)に示すように、パンチ部材13、14は、ストリッパ22の垂直往復運動を、順に縦カム20a、横カム20bを介して水平運動に変換されて水平方向にスライド駆動されるようになっている。
そして、一対のパンチ部材13、14のそれぞれ先端押圧部13b、14bは、先細のくさび形状のテーパ部を有しており、図2(b)に示すように、先端押圧部13b、14bを互いに近づかせるように、ワークW方向である内方にそれぞれ水平移動されワークWの左右側面Hを保持すると共に、上下電極11a、12aのそれぞれをパンチ部材13、14のくさび形状のテーパ部の側面部のスライド挿入によって、上下電極を離間させそれらの間の通電を解除する。
【0025】
次に、本発明の部分加熱加工装置を用いて行うワークWの部分加熱加工について説明する。
図3は、部分加熱加工工程を段階を模式的に説明したワークWの断面図及び平面図である。
図3(a)は部分加熱加工前のワークWを示し、均一の厚さを有し平面形状は略長方形であり(一部に左右側面Hを有する)、幅方向に2カ所の加熱予定部Sを有している。
図3(b)は、部分加熱加工装置の下面支持部11内の下電極11a及び上面支持部12内の上電極12aを加熱予定部Sに当接させた状態を示す断面図及び平面図であり、図3(c)は加工後のワークWを示す断面図及び平面図である。
図4は、実施例の部分加熱加工装置に適用される通電加熱構成の概略構成図である。
【0026】
まず、下面支持部11の上部に設けられた下電極11aをワークWの加熱予定部Sにその底面側から当接させるとともに、上面支持部12によってワークWの上部側から挟圧保持することにより、上下一対の下電極11a、上電極12aによってワークWの加熱予定部Sをその上下両側から挟圧保持して加熱する。
一対の下電極11a、上電極12aによって挟圧保持されたワークWの加熱予定部Sは、この一対の下電極11a、上電極12a間に通電することで部分的に加熱される。
なお、通電加熱構成は図4に示すような概略構成としており、高速で通電加熱することが可能であるため、数秒加熱することにより加熱予定部Sの加熱が完了する。
【0027】
次に、図3(b)に示すように、ワークWを挟圧保持している下面支持部11及び上面支持部12間に、その左右側方に設けられた一対のパンチ部材13、14を挿入させる。すなわち、ワークWの幅方向中心部分(内方)に向かって左右両側から加熱予定部Sをパンチ部材13、14で押圧加工する。
加熱予定部Sは、パンチ部材13、14によって押圧されることにより、加工後の図3(c)断面図に示されるように上下方向に厚みが増す(増肉部Z)。
一方で、加熱加工前の図3(a)平面図と加熱加工後の図3(c)平面図との対比により分かるように、加熱予定部Sの幅方向の左右側面Hは増肉部Zに押込まれて消滅する。
上記のような流れにより、ワークWに部分的な増肉部Zが形成される。
【0028】
また、この部分加熱加工装置10においては、ワークWの着座状態をセンシングする渦電流式変位センサ12bなどにより、上面支持部12の位置を検知して、ワークWの載置状態の良否が判定される構造とすることもできる。
すなわち、ワークWが正常に載置されている場合には次工程に移行されるが、異常状態においては、ロボットアームなどを介してワークWを下面支持部11から一旦取り外して再セットしたり、異常品として次のものに交換したりするなどの不良品対応処理がなされることとすることも可能である。
【0029】
次に、本発明の部分加熱加工装置10を、その一連の加工工程に組み込んだ順送型加工システムについて説明する。本実施例において、順送型加工システムは、エンジン部品であるロッカーアームの製造例を図5を用いて説明する。
図5(a)は順送型加工システムにおいて、ロッカーアームの製造工程例を示す概略断面図であり、図5(b)はこの順送型加工システムを用いたロッカーアーム製造工程における素材の形状変化の状態を示す平面図である。
本実施例の順送型加工システムにおいて、部分加熱加工装置10は、ロッカーアームを連続的に製造するための順送型加工システムの一部分に組み込まれており、図5(b)に示されるように、素材をトリム、部分加熱加工(通電加熱増肉成形)、スエ込み、コイニング、形状トリム、側壁成形、製品カットオフなどの加工を、順送で連続的に加工するようになっている。
【0030】
図6は、実施例の順送型加工システムを用いてロッカーアームの製造工程を示す説明図であり、(a)は全体工程を示し、(b)は順送型加工システムにおける工程を中心に拡大した説明図である。
図7は、本実施例の順送型加工システムにおいて製造されるロッカーアームを示す概略斜視面である。
図6、図7に示すように、本実施例の順送型加工システムを用いれば、素材である平板を使用して、部分的に加熱加工して複雑な形状を有する部品を連続的に製造することが可能であり、大幅な低コスト化をはかることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上説明したように、本発明の部分加熱加工装置は、下面支持部及び上面支持部によりワークを挟圧保持して、ワークの一部分を部分的に加熱して、部分的に加熱された加熱部をパンチ部材によって押圧して増肉部を形成させることを要旨としたものであって、これによって、ワークの一部に増肉部を確実かつ効果的に形成することができる。
また、本発明によって製造されるワークは、部分的に形成された増肉部を、引き続きスエ込みやコイニング加工等に付して一連の加工システムの中で連続的に製造できるため、高い生産性を得ることができる。
【符号の説明】
【0032】
10 部分加熱加工装置
10a 基台
11 下面支持部
11a 下電極
12 上面支持部
12a 上電極
12b 渦電流式変位センサ(着座センサ)
13、14 パンチ部材
13a、14a 部分加熱加工開口部
13b、14b 先端押圧部
13c、14c 側壁支持部駆動用ラム
15a パンチ駆動用ラム
15b 上ホルダー
16 電極加圧制御装置
17 上ホルダー
18、19 側壁支持部
20a 縦押圧手段(縦カム)
20b 横押圧手段(横カム)
22 ストリッパ
K カムスライド面
H 左右側面
S 加熱予定部
Z 増肉部
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、前記基台の上方に対向して配置された上ホルダーと、を備え、
前記上ホルダーは、
その下方に、前記上ホルダーの上下方向の動きを水平方向の動きに変換してパンチ部材を水平駆動させる縦押圧手段と、
加熱手段を備えた上面支持部と、を連結し、
前記上ホルダーを下降させることにより、
連結された前記縦押圧手段及び前記上面支持部を下降させ、
前記上面支持部と、前記基台上に設けられた下面支持部と、でワークを挟圧保持し、
挟圧保持した前記ワークの加熱予定部を、前記上面支持部及び/又は下面支持部に設けられた加熱手段によって加熱するとともに、
前記縦押圧手段のカムスライド面によって動きを変換され水平駆動する横押圧手段の先端に設けられたパンチ部材を前記ワーク方向に移動させ、
前記ワークの左右外方から内方に押圧して、
前記ワークの加熱予定部を加工するようにしたことを特徴とする部分加熱加工装置。
【請求項2】
前記加熱手段が接触式の電極であり、
前記上面支持部に設けられた上電極と前記下面支持部に設けられた下電極とを、
前記ワークの加熱予定部に当接した後、
前記上電極と前記下電極との間に通電して前記ワークの加熱予定部を加熱することを特徴とする請求項1に記載の部分加熱加工装置。
【請求項3】
前記パンチ部材が先細のくさび形状であり、
前記上電極と前記下電極との間に通電して前記ワークの加熱予定部を加熱した後、
挟圧保持状態の前記ワークの左右外方から上下面支持部間に前記パンチ部材のくさび形状を挿入して上下面支持部を離間させ上下電極間の通電を遮断するとともに、
さらに前記パンチ部材を前記ワークの方向に移動させ、加熱された前記ワークの部分を左右外方から内方に押圧して前記加熱予定部を加工するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の部分加熱加工装置。
【請求項4】
前記ワークの加熱予定部の加工が、ワークの厚みを部分的に増す増肉加工であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の部分加熱加工装置。
【請求項5】
前記下面支持部の上部に、前記上面支持部と前記下面支持部とで挟圧保持された前記ワークの載置状態を検出する位置センサを設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の部分加熱加工装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の部分加熱加工装置を備えた順送型加工システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−121034(P2012−121034A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271930(P2010−271930)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(309031570)株式会社南部製作所 (4)
【Fターム(参考)】