説明

部分的に活性化されたドープ半導体領域のドーピングプロファイル決定方法

【課題】部分的に活性化されたドープ半導体領域の活性化の程度および活性ドーピングプロファイルを非破壊的手法で決定するための方法及び/又は手順を提供する。
【解決手段】ほぼ同じ既知の注入されたままの濃度および、既知の変化する接合深さを有する少なくとも2つの半導体領域のセットを用意する工程10、これらの領域のうち少なくとも1つについて、注入されたままの濃度の決定工程20、前記セットのうち少なくとも2つの半導体領域をPMOR技術により部分的に活性化させる工程30、反射プローブ信号の符号付き振幅を接合深さの関数として、少なくとも2つのレーザ間隔値について測定および/またはDCプローブ反射率を接合深さの関数として測定する工程40、これらの測定値から活性ドーピング濃度を抽出する工程80、全体の注入されたままの濃度および活性ドーピング濃度を用いて、不活性ドーピング濃度を計算する工程90を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドープされた半導体領域のドーピングプロファイルを非破壊的手法で決定するための方法及び/又は手順に関する。こうした領域は、高抵抗の基板上に形成されたドープ半導体層でもよい。
【0002】
本開示は、半導体領域の物理的特性を非破壊的手法で決定するための方法及び/又は手順に関する。
【背景技術】
【0003】
ITRSロードマップは、極浅接合(USJ)の正確な特性付けを、サブ32nmSi−CMOS技術の上位挑戦の1つとして強調している。半導体技術サイズは、通常使用される物理的および電気的解析技術(二次イオン質量分析法(SIMS)、拡がり抵抗測定(SRP)、四点プローブ法(FPP))の限界に到達しており、一方、代替の候補(例えば、走査型拡がり抵抗顕微鏡法(SSRM))は破壊的であり、例えば、サンプルを準備する必要があるためかなり低速であり、インライン測定の妨げになる。
【0004】
光変調光学反射法(PMOR)は、広く使用される非接触技術であり、変調パワーポンプレーザが半導体サンプルに向けられて、その屈折率プロファイルを変更する。この屈折率プロファイルは、サンプル中での過剰キャリア生成(ドルーデ効果(Drude effect)として知られる)、及び/又は調査サンプルの温度の影響によって変更可能である。プローブレーザも半導体サンプルに向けられ、それは屈折率プロファイルに依存して反射される。反射プローブレーザ信号とロックインアンプとを組み合わせることによって、変調ポンプレーザによって誘起された、半導体サンプルの反射率変動だけが測定される。
【0005】
こうしたPMOR技術の一例は、サーマプローブ(TP:Therma Probe(登録商標))技術であり、これはPMOR技術の高い変調周波数の実施例である。国際特許出願第WO2007028605号(発明の名称:極浅半導体構造での活性キャリアプロファイルを定量化する方法および装置)は、TP法を記載している。
【0006】
使用する測定ツールは、2つのレーザ、ポンプレーザとプローブレーザを備え、両方とも半導体構造の表面に垂直に入射する。ポンプレーザは、波長λpump=790nm、ポンプパワーPpump=13.5mW、レーザ半径Rpump=0.5μmで動作するともに、1MHzの変調周波数で変調している。プローブレーザは、λprobe=670nmで動作するともに、パワーPprobeは一定値=2.5mWに維持され、レーザ半径Rprobe=0.5μmである。
【0007】
基板に入射すると、ポンプレーザは、ドープ半導体構造および基板において異なる過剰キャリア濃度を生成する。過剰キャリア濃度の相違は、この半導体領域と下地基板との間の再結合寿命の相違および、この半導体領域とこの基板との間の冶金的接合での電界に起因する。ポンプレーザのパワーを変調周波数ω=1MHzで変調することによって、変調された過剰キャリアプロファイルが、ドープ半導体領域の表面およびこの冶金的接合において2つの急峻な変化を伴って作成される。
【0008】
この変調された過剰キャリアプロファイルは、類似した急峻な変化を伴う変調された屈折率プロファイルを生じさせる。両プロファイル間の関係、即ち、屈折率およびフリーキャリアの関係は、知られたドルーデモデルを用いて導出できる。表面と冶金的接合との間の界面に起因して、入射プローブレーザの反射成分、プローブレーザの変調反射率は、半導体ドーピングプロファイルを表している。
【0009】
ポンプパワー信号を基準とした変調反射率の位相シフトは、半導体ドーパントプロファイルに依存することが証明されており、2つの独立した信号は反射プローブレーザ信号から得られる。これは、2つの未知のパラメータN(活性ドーピング濃度)およびXj(冶金的接合深さ)を持つ箱型の活性ドーピングプロファイルを再構成するのに充分な情報である。
【0010】
より複雑なプロファイルへのこの測定手順の一般化は、変化する最大ポンプパワー(ポンプカーブ)、または2つのレーザ間の変化する距離(オフセットカーブ)を使用して、より独立した信号を生成する。半導体領域での温度プロファイルは、屈折率プロファイルとの実験上の関係を介して関連付けられる。
【0011】
光変調光学反射法(PMOR)、TP技術は、箱型ドーピングプロファイルについて極めて有望な電気的特徴付け能力を示した。TPは、ただ1つの高速な非破壊測定で、こうした箱型のドーピングプロファイルの特徴付けが可能であることを実際に証明した。しかしながら、PMOR信号と、測定したドーピングプロファイルとを関連付ける関係は単純明快でないため、電気的特徴付けのためのTPの更なる使用は、重要なモデリングステップを必要とする。しかし、今のところ、箱型ドーピングプロファイルについてPMOR信号を定量的にモデル化する試みは、厳しい問題に遭遇している。特に、測定した半導体構造の全体積分(integrated)濃度が増加した場合、即ち、接合深さまたは全体ドープ量が増加した場合、これらのモデルは失敗する。
【0012】
PMOR法、特に、TP法は、活性ドーピングプロファイルの特徴付け、即ち、フリーキャリアを提供したこれらのドーパント原子の空間分布の情報だけを提供することを可能にするだけである。全てのドーパント原子が活性化していない場合、半導体構造のドーピングプロファイルの活性成分だけが特徴付け可能である。高い全体積分ドープ量では、この活性ドーピングプロファイルは、そPMOR法を用いて正確に測定できない。
【0013】
さらに、PMOR法は、物理的特性、特に、ドープ半導体構造の複素屈折率および寿命に対するドーピングプロファイルの不活性部分の影響を考慮していない。これらの物理的特性は、調査対象の半導体サンプルの活性化の程度によって影響されるため、測定した反射プローブ信号と活性ドーパントプロファイルの間の関係は、活性化の程度にも依存することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本開示は、PMOR技術に関連した、特に、高ドープ半導体領域のドーパントプロファイル及び/又は物理パラメータを測定する場合の問題を解決することを目的とする。高ドープとは、半導体領域が約1×1020cm−3又はこれ以上の積分濃度を有することを意味する。
【0015】
従って、本開示は、部分的に活性化されたドープ半導体領域の活性化の程度および活性ドーピングプロファイルを非破壊的手法で決定するための方法及び/又は手順を提供することを目的とする。こうした領域は、高抵抗の基板上に形成されたドープ半導体層でもよい。
【0016】
従って、本開示は、不活性ドーパントを含む半導体領域の物理的特性を非破壊的手法で決定するための方法及び/又は手順を提供することを目的とする。こうした物理的特性は、複素屈折率、熱拡散率、SRH(Shockley-Reed-Hall)再結合寿命でもよい。
【0017】
従って、本開示は、例えば、複素屈折率、ドープ半導体領域の寿命、熱拡散率、キャリア寿命などの物理的特性、及び/又はドープ半導体領域の活性化に対するアニール工程の効果及び/又は効率を決定するための方法及び/又は手順を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
PMOR法を用いて半導体領域の不活性ドーピング濃度を決定するための方法が開示される。該方法は、ほぼ同じ既知の、注入されたまま(as-implanted)の濃度および、既知の変化する接合深さを有する少なくとも2つの半導体領域のセットを用意すること、
これらの半導体領域のうち少なくとも1つについて、注入されたままの濃度を決定すること、
半導体セットのうち少なくとも2つの半導体領域を部分的に活性化させること、
光変調光学反射(PMOR)技術によって、部分的に活性化した半導体領域について、反射プローブ信号の符号付き振幅を接合深さの関数として、少なくとも2つのレーザ間隔値について測定すること、
光変調光学反射(PMOR)技術によって、部分的に活性化した半導体領域について、DCプローブ反射率を接合深さの関数として測定すること、
これらの測定値から活性ドーピング濃度を抽出し、これにより結晶移動度を推定すること、
決定した、全体の注入されたままの濃度および活性ドーピング濃度を用いて、不活性ドーピング濃度を計算することを含む。
【0019】
該方法は、これらの測定から、熱拡散率、屈折率、吸収係数、及び/又はSRH(Shockley-Reed-Hall)寿命を抽出するステップをさらに含んでもよい。
【0020】
PMOR技術は、変調信号と同位相の信号、およびプローブレーザビームに対して90°位相差を持つ信号を提供する、高い変調周波数のPMOR技術でもよい。
【0021】
高い変調周波数のPMOR技術でのポンプレーザビームの変調周波数は、MHz範囲内でもよい。
【0022】
ドープ半導体領域の積分濃度は、好ましくは、約1×1020cm−3又はこれ以上である。
【0023】
ドープ半導体領域の物理的特性に対するアニール工程の効果及び/又は効率を決定するための方法が開示される。該方法は、(a)ドープ半導体領域の少なくとも1つのサンプルを用意すること、(b)少なくとも1つのサンプルのドーピングプロファイルを決定すること、(c)アニール工程を少なくとも1つのサンプルに適用すること、(d)アニールを施した少なくとも1つのサンプルに対する前述の段落での測定方法の何れかを用いて、選択した物理的特性を抽出すること、を含む。
【0024】
この方法は、他のサンプルについてステップ(a)〜(d)を繰り返して、これにより他のアニール工程が適用され、そして、物理的特性の変動とアニールプロセスの変動とを相関させることをさらに含んでもよい。
【0025】
抽出される物理的特性は、熱拡散率、複素屈折率、吸収係数、及び/又はSRH(Shockley-Reed-Hall)寿命からなるグループから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】サンプルに適用される従来のサーマプローブ(TP)技術の説明図である。
【図2】先行技術のモデリングを用いた場合、符号付き振幅(TP)の実験的に得られた値(シンボル)−シミュレーションで得られた値(ライン)を、変化するドーピング濃度(実験データについての全体SIMSドーピングおよびシミュレーションについての活性ドーピング)とともに、SIMS接合深さの関数として示す。
【図3a】実施形態に従って、符号付き振幅(TP)の実験的に得られた値(シンボル)−シミュレーションで得られた値(ライン)を、表1(CVD3;2a、CVD4;2b)で与えられた2つのサンプルに関して、レーザビームとプローブビームの間の変化する間隔dとともに、SIMS接合深さの関数として示す。
【図3b】実施形態に従って、符号付き振幅(TP)の実験的に得られた値(シンボル)−シミュレーションで得られた値(ライン)を、表1(CVD3;2a、CVD4;2b)で与えられた2つのサンプルに関して、レーザビームとプローブビームの間の変化する間隔dとともに、SIMS接合深さの関数として示す。
【図4】実施形態に従って、DCプローブ反射率(TP)の実験的に得られた値(シンボル)−フィットした値(ライン)を、SIMS接合深さの関数として示す(CVD3:+、CVD4:X)。
【図5a】サンプルCVD3(1×1020cm−2全体SIMSドーピング)に関して、符号付き振幅(TP)の実験的に得られた値(シンボル)−シミュレーションで得られた値(ライン)を示す。図5aは、シミュレーションした符号付き振幅に対する異なるシミュレーションパラメータの影響を示し、プローブレーザおよびポンプレーザは分離していない(d=0)。
【図5b】サンプルCVD3(1×1020cm−2全体SIMSドーピング)に関して、符号付き振幅(TP)の実験的に得られた値(シンボル)−シミュレーションで得られた値(ライン)を示す。図5bは、実施形態に従って、シミュレーションした符号付き振幅に対するプローブレーザとポンプレーザの間の間隔の影響を示す。
【図6】本開示の実施形態に係る抽出手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
このセクションでは、TP測定の設定の概要を説明する。教示の目的のため、TP法は半導体領域を測定するために用いているが、本開示はもこの特定のPMOR法に限定されない。調査サンプルの物理パラメータを決定するのに必要な実験データを提供するために、符号付き振幅を提供する任意のPMOR法が適用可能である。
【0028】
PMORプローブレーザの波長は、好ましくは、λprobe〜2πn .15nmに選択される。λprobeは、プローブレーザの波長、nは、調査対象の半導体領域の屈折率である。TPでは、ポンプレーザの変調周波数は、典型的にはMHz範囲であり、典型的には約1MHzであり、過剰キャリアの寿命は全体キャリアレベルに反比例するため、全体キャリアレベルに依存する動的な過剰キャリアプロファイルを生じさせる。
【0029】
図1は、半導体基板(1)を備えたサンプル(7)を示す。半導体基板(1)は、典型的には、アンドープまたは低ドープ領域(1b)の上に形成されたドープ層(1a)を備える。基板(1)は、層(1b)の上部に、その場(in-situ)ドープ層(1a)を堆積し、領域(1a)に渡って均一なドーピングプロファイル(箱型プロファイルとしても知られる)を生成することによって形成可能であり、あるいは、ドーパントを基板(1)に注入し、ドープ領域(1a)およびアンドープ領域(1b)を生成することによって形成可能である。
【0030】
例えば、ドーパントを基板(1)に注入するためのイオン注入を用いることによって、使用する注入核種(species)、エネルギー、注入量の選択に応じて任意の種類のドーピングプロファイルが得られる。層1aは、下地層1bをドープするために用いたドーパントと同じ導電型または反対の導電型のドーパントを用いてドープすることが可能である。
【0031】
図1において、基板(1)への深さzの関数としての過剰キャリアプロファイルΔN(z)もグラフ5によって示している。ポンプレーザビーム(6)およびプローブレーザビーム(3)が、周囲(2)から半導体基板(1)の上に衝突する。入射プローブレーザビーム(3)および反射プローブレーザ信号(4)は、矢印(3)(4)でそれぞれ示している。プローブレーザビーム(矢印3)は反射して、半導体基板(1)上の種々の位置で反射プローブレーザ信号(矢印4)を発生する。
【0032】
例えば、プローブレーザビーム(3)は、表面で反射してもよく、反射プローブレーザ信号(4)において表面成分を生成する。それは、表面で生じ得る過剰キャリアプロファイルの変化によって反射して、表面近傍成分を生成することもあり、あるいは、N(z)の傾斜上にあるドープ部分(1a)とアンドープ部分(1b)の間の界面では、バルク(または界面)成分を生成することもある。プローブレーザビームは、ドーピングプロファイルの任意の過渡期で反射してもよい。
【0033】
両方のレーザ、ポンプレーザ(6)およびプローブレーザ(3)からのレーザビームは、互いに重なっており、半導体基板(1)と同じエリアまたは異なるエリアで接触してもよい。典型的には、両方のレーザは、固定した測定設定にあり、両方の入射レーザビームは、ウエハ表面または基板表面に対して垂直な方向を有し、ウエハ表面の法線に対してゼロの角度で入射することを意味する。
【0034】
ポンプレーザ(6)とプローブレーザ(3)の間の間隔(d)は、図1に示すように変化可能である。プローブ信号(3)のパワーおよび個々の測定が行われる間の時間は、典型的には一定に維持される。大きいオフセットdは、殆どゼロの過剰キャリアに対応し、従って、信号は小さいかゼロになる。小さいまたはゼロのオフセット、即ち、両方のレーザビーム(3,6)が半導体基板(1)上でほぼ同じスポットに衝突すると、最大数の過剰キャリアに対応し、大きな信号になる。固定したポンプレーザパワーが充分高い場合、ビームオフセットdを増やすことによって、内部の過剰キャリアレベルおよび界面成分の原点を変化させることができる。
【0035】
(箱型ドーピングプロファイルへのPMORモデリング)
このセクションでは、100%活性の箱型ドーピングプロファイルについて先行技術のモデルの概要を示し、そのシミュレーション結果を、ホウ素(B)ドープの化学気相成長(CVD)層で得られた実験データと比較している。この比較から、高い全体積分ドープ量が調査対象の半導体領域に存在する場合、特に、ドーパントプロファイルの抽出に関して、先行技術のPMOR抽出技術は失敗すると結論できる。
【0036】
過去において、3つのステップからなる基本モデルを用いて、BドープCVD層(1a)でのPMOR信号をモデル化する試みが行われた。こうしたモデルは、文献(Bogdanowicz et al in Journal of Vacuum Science &Technology B, 2008, no 26, p310-316)と文献(Dortu et al in Journal of Vacuum Science&Technology B, 2006, no 24, p 1131-1138)に開示されており、両方とも参照によりここに全体として組み込まれる。
【0037】
要約すると、第1の最も挑戦的なステップ(輸送(transport)モデル)では、過剰キャリア(ΔN)および過剰温度(ΔT)が、レーザ特性(パワー、半径、時間的挙動)およびサンプル特性(ドーピングプロファイルN(z))から計算される。これは、ドーピングおよび過剰キャリア濃度とともに、移動度、SRH(Shockley-Reed-Hall)およびオージェ(Auger)再結合のレート、そして狭バンドギャップ化(BGN)での変動を考慮するための追加モデルと関連付けて、ドリフト拡散方程式を個別に解くことによって行われ、過剰キャリア分布が得られ、そして、熱拡散方程式を解くことによって過剰温度分布が得られる。
【0038】
第2ステップでは、こうして得られた過剰キャリア分布および過剰温度分布に基づいて、過剰屈折率分布Δnが計算される。このステップの詳細事項の1つは、複素屈折率の虚数部である減衰係数kでの無視できる変動と、屈折率nの実部の変化だけを予想することである。
【0039】
最後に、正規化した変調反射率ΔR/Rは、過剰屈折率分布が変化する全ての深さでの反射率の干渉の結果である。即ち、接合深さXを持つ箱型プロファイルの場合、それは下記のように表わされる。
【0040】
【数1】

・・・・・・(1)
【0041】
ここで、nは、シリコン格子屈折率、即ち、フリーキャリア無しである。
【0042】
プローブレーザの有限半径を仮定すると、この式は、実際にはプローブパワーの横方向分布について積分すべきであるが、可読性のために、これを省略した。
【0043】
箱型ドーピングプロファイルでは、プローブレーザの波長λprobeのスケールでほぼ平坦な温度分布を仮定すると、信号は、過剰キャリアおよび温度の両方に起因した表面成分(即ち、Δn(z=0)と、過剰キャリアに起因した界面成分(即ち、Δn(z=X)との干渉に起因するだけである。
【0044】
信号ΔR/Rは、ポンプレーザに対して同位相および直角位相の寄与分にそれぞれ分割可能であり、これらは、正規化因子および一定の位相因子に応じて、それぞれI,Qと称される2つの独立した信号を生じさせる。しかしながら、本開示では、いわゆる符号付き振幅だけ、即ち、Iと反対の符号で定義される信号振幅について検討する。
【0045】
均質な基板および箱型CVD層でシミュレーションした符号付き振幅が実験データと許容できない不一致を示した、上述の文献(Bogdanowicz et al in Journal of Vacuum Science &Technology B, 2008, no 26, p310-316)と比較して、輸送モデルでのBGN誘起の擬電界を考慮することによって、図2に示すように、基板(不図示)および箱型CVD層の両方について大きな改善が達成されることが判った。
【0046】
測定サンプルのより多くの情報が、上記文献Bogdanowiczの(表1)に示されている。シミュレーションの時間独立性にも関わらず、時間独立性は殆ど予想していないが、測定したSIMSドーピングが1020cm−3未満である場合、シミュレーションで得られる符号付き振幅は、ここでは実験データとの良い定性的な一致がある。定量的な一致に到達するには、(表1)に示すように、1019cm−3超(未満と書き換え)のSIMS活性ドーピング濃度に関して、低下(増強と書き換え)した活性化はFPP測定に匹敵するものと推定する必要がある。
【0047】
4つの重要な観測が行われた場合、シミュレーションした挙動は、実際には理解がかなり簡単である。第1に、シミュレーションした過剰温度は、全体として層の特性から独立している。従って、それは、(表1)中の符号付き振幅での負の垂直シフトのように見える。
【0048】
第2に、基板(1b)過剰キャリア濃度も、層の特性から独立している。これらの2つの注目点は、X〜0の場合、シミュレーションしたコサイン全てが同じ値に達する理由を説明しており、この値は実際には低ドープ基板で得られる信号値である。
【0049】
第3に、層過剰キャリア濃度ΔNは、接合深さXから独立しており、下記に示すように、層ドーピング濃度Nおよび基板注入レベルΔNsubとともに変化する。
【0050】
【数2】

・・・・・・(2)
【0051】
ここで、N(Nsubと書き換え)およびN(Nsubと書き換え)は、それぞれ層(1)(基板(1b)と書き換え)での伝導帯および価電子帯の有効状態密度であり、E(Esubと書き換え)は、層(1a)(基板(1b)と書き換え)でのバンドギャップエネルギーであり、kTは、熱エネルギー(〜0.025eV、T=300K)である。従って、図2中の層ドーピング濃度とともに増加するコサイン振幅は、層(1a)中の減少する過剰キャリア濃度によって説明される。式(2)は、平坦な擬フェルミ準位を仮定して導かれていることに留意する。この仮定は、それほど多くのキャリア再結合及び/又は生成が層(1a)で生じなければ、即ち、層ドーピングがそれほど高くなければ(我々のシミュレーションでは、N<1020cm−3)、定量的に許容可能である。
【0052】
第4および最後の観測では、44nm(=λprobe/(4nSi))でのコサインの最小値は、界面反射と表面反射との破壊的な干渉の結果である。
【0053】
1020cm−3より低いSIMSドーピング濃度では、挙動は容易に理解される。しかしながら、より高いドーピング濃度では、シミュレーションは、実験データを定量的にでさえ予測することできない。理論的には、シミュレーションは、常に符号付き振幅についてコサイン挙動を予測するが、ドーピング濃度が高くなると(主として、図2のシンボル×,+)、実験データはこの挙動からますます外れる。
【0054】
さらに、X〜0の場合、減少する接合深さに伴う信号挙動は、その予想される基板値に向けて収束しないように見える。次のセクションで開示するように、高ドープサンプルについてのこの挙動は、不活性ドーパントの影響を考慮しなければ、説明することができる。
【0055】
(不活性ドーパントの影響)
このセクションでは、前のセクションで示したように、高ドープCVD層での実験データとシミュレーションしたデータの間の定性的な不一致は、不活性ドーパントの影響を考慮すれば、説明できることを示す。
【0056】
図1での最小のコサイン挙動を有する2セットのサンプルをここで検討する。これらはそれぞれNSIMS〜1020cm−3(CVD3,表1の×)およびNSIMS〜3 1021cm−3(CVD4,表1の+)である。
【0057】
これらのCVD層の部分不活性化を強調するSIMS結果とFPP結果の比較を最初に示す。サンプル(7)のセットは、ほぼ同じ注入ドープ量Ntotで、異なる接合深さXを有する半導体領域を含む。そして、100%活性層(セクション:箱型ドーピングプロファイルへのPMORモデリングで示したように)とアモルファス層の間の混合モデルに基づいて、箱型プロファイルでのPMOR信号についての増強モデルを提案する。最後に、DCプローブ反射率測定に基づいて、ドープ層の光学定数への不活性ドーパントの影響を確認する。
【0058】
CVD3,CVD4のサンプルでのFPPシート抵抗およびSIMS測定の比較は、ほぼ係数2と係数100だけ、層導電率の個々の劣化を示しており、半導体領域での結晶移動度を想定した場合、これらの層でのドーパント原子の50%と1%の活性化にそれぞれ対応する。
【0059】
2.7 1021cm−3に達するドーパント原子(CVD4サンプル)が、半導体領域の格子内の置換サイトにおらず(例えば、格子間原子、クラスタ、…)、これらは格子周期性を攪乱していることが推測できる。その結果、層の光学定数(n,k)の変更、よって吸収係数α(=4πk/λprobe)、関連する層内の輸送パラメータ(SRH(Shockley-Reed-Hall)寿命τSRH、キャリア移動度μ、熱拡散率Dth)の変更が存在するはずである。
【0060】
この状況は、緩慢ではあるが、これらのパラメータが変更されているアモルファス層のものと比較することができる。しかも、アモルファス層では、温度で支配されるPMOR信号は、接合深さと線形的に変化することを証明している。開示の実施形態によれば、100%活性ドーピング層についてのPMOR挙動は、式(1)で表されるようにコサイン関数であることをさらに考慮すると、2つの挙動、即ち、結晶およびアモルファスは、混合しており、部分的活性層での信号を説明している。即ち、
【0061】
【数3】

・・・・・・(3)
【0062】
ここで、AとAは、半導体領域での純粋な活性ドーピングプロファイル、即ち、ドーパントの100%活性化で測定した典型的な信号である。Aは、アモルファス層で測定した温度信号に匹敵する信号である。ΔXは、上記文献(Bogdanowicz et al in Journal of Vacuum Science &Technology B, 2008, no 26, p310-316)で検討されているように、レーザが離れたた場合に、探査する接合深さでの変動を説明するための追加のパラメータである。
【0063】
そして、CVD3,CVD4のでの実験データは、図3aと図3bに示すように、プローブレーザとポンプレーザの少なくとも2つの異なる横方向間隔dについて、式(3)とフィットさせることができる。このフィッティングは、実験データとシミュレーションデータとの良好な一致を示す高品質のものであり、この混合モデルを確証するものである。
【0064】
その他に、これらのフィッティングから定量的な物理的情報が推測できる。信号寄与分Aは、純粋に熱的なものと推定され、その横方向減衰は、層内の熱拡散距離、即ち、熱拡散率Dthの程度である。(表1)に記載したように、このフィッティングで得られたDth値は許容できるものであり、即ち、文献(Vitkin I. et al in Journal of Applied Physics, 1990, 67, 2822-30)で示されるように、結晶シリコン値より低く、アモルファスシリコン値より高い。
【0065】
さらに、光学定数(n,k)への層の部分不活性化の影響は、プローブ(さらにポンプ)DC反射率の測定に基づいて観測できる。CVD3(+)とCVD4(×)のデータを、半導体サンプル表面での入射プローブレーザの反射、そして半導体サンプル内で伝送プローブレーザの内部反射を考慮した多重反射公式と別々にフィットさせた場合、図4に示すように、個々の層の光学定数を推測することが可能である。
【0066】
1×1020cm−3のSIMS全体ドーピングを有するサンプルCVD3では、多重反射フィッティングにより、実数部の屈折率n=3.8と、虚数部の減衰係数k=0.017が得られた。3×1021cm−3のSIMS全体ドーピングを有するサンプルCVD4では、多重反射フィッティングにより、実数部の屈折率n=3.8と、虚数部の減衰係数k=0.054が得られた。
【0067】
吸収係数αと減衰係数kとの関係は、α=(4π/λ)kで与えられ、λは吸収される光の波長である。得られた値は、実際、フリーキャリア濃度との屈折率変化を説明する、知られたドルーデ(Drude)モデルは、減衰係数が変化しないため、観測された挙動を説明できないことを示している。即ち、注目すべきことは、減衰係数の変化は予想されないが、500%に達する変更が観測される点である(サンプルCVD4を参照)。
【0068】
これを活性ドーピングによって説明できなければ、これは不活性ドーパントのみに起因すると考えられる。(表1)に記載した得られた値は許容範囲内であり、即ち、結晶SiおよびアモルファスSiの値の中間である。プローブレーザについての吸収係数αprobeは、典型的には、結晶Siでは約2001cm−1であり、アモルファスSiでは約14000cm−1である。熱拡散率Dthは、典型的には、結晶Siでは0.45cm−1であり、アモルファスSiでは約0.03cm−1である。
【0069】
(数値シミュレーション)
前のセクションでは、不活性ドーパントの影響が、測定したCVD層について観測されたPMOR挙動を定性的に説明できることを、実験データに基づいて定性的に示した。その他に、検討したサンプルの吸収係数および熱拡散率についての実際の値を導出した。このセクションでは、これらの値を数値シミュレーションの入力として使用し、CVD3,CVD4サンプルでの信号挙動が定量的にも理解できることを示す。
【0070】
しかしながら、2つの未知数、即ち、層において変更された移動度μおよびSRH寿命τSRHが残っている。式(2)に示すように、層移動度に対するPMOR信号の不感受性を仮定すると、結晶Si移動度は、高ドープサンプルについて推定され、一方、τSRHは、フィッティングパラメータとして用いられることになる。CVD3の場合、層の活性ドーピング濃度が1019cm−3で、τSRHが10−10sである場合(図5a)、実験の符号付き振幅はうまく再現される。これは、同じSIMSドーピング濃度を持つ完全活性化層と比較して、10%の活性化(FPPによる50%)と、約100のτSRH劣化係数を意味する。
【0071】
吸収係数の増加は最も深い接合についての影響を有する傾向があっても、τSRHの変化は、信号を支配するもののように思われる(図5b)。最も深いサンプルでの一致の欠如は、そのより良好な活性化を明確に説明できることに留意する。さらに、横方向の挙動(レーザ分離の影響)は、減衰長が過大評価されたとしても、許容誤差を用いてシミュレーションされる(図5b)。この研究およびシミュレーションの結果は、(表1)に要約される。
【0072】
最後に、CVD4について提示された実験データは、0.5 1019〜1019cm−3の範囲内(0.2〜0.6%活性化−FPPによる1%)の活性ドーピングおよび10−10s〜10−11sの範囲内(劣化係数〜10)のτSRHを考慮して再現できる。しかしながら、これらの活性ドーピングおよびSRH寿命の範囲での信号感度は、これらのパラメータの唯一つの値を、全ての層(不図示)についてのデータを同時に説明するために見つけられないものである。
【0073】
最後の注目点として、活性ドーパントおよび不活性ドーパントは、信号への温度およびプラズマの両方の寄与分に対してかなり異なる影響を有することに留意する。まず、活性ドーパントは、温度寄与分に影響を及ぼさないが、ある不活性ドーパントが存在する場合、後者は常に、Xと線形的に増加する。第2に、シミュレーションによれば、接合ポテンシャル(V−Vsub)は、不活性ドーパント濃度からほとんど独立している。しかもキャリア注入の比ΔNsub/ΔNは、下記式(4)を介して接合ポテンシャルと直接関係している(平坦なフェルミ準位を想定した場合)。
【0074】
【数4】

・・・・・・(4)
【0075】
ここで、qは電子電荷であり、ΔEsubg,cとΔEg,cは、それぞれ基板(1b)と層(1a)での伝導帯エネルギーでの減少分である。従って、この比は、ほとんど活性化から独立している(ボルツマン統計を想定し、BGNは無視した場合)。信号方程式(1)のプラズマ成分の要因を除去することによって、下記式(5)が得られる。
【0076】
【数5】

・・・・・・(5)
【0077】
層ドーピングの活性部および不活性部は、同様にしてプラズマ信号に影響を与えないことが推測できる。活性ドーピング濃度は、接合ポテンシャルよって注入比を決定し、これは信号挙動の大部分を決定する(式(5)の活性化から独立した部分)。不活性ドーピングは、基板注入を減少させ、層注入は、これらの比を一定に維持するために、プラズマ信号での変動を最小化するように本質的に機能する。全体として、不活性ドーピングは、温度信号を増強し、プラズマ信号を低下させる。
【0078】
(抽出手順)
前のセクションでは、アニール後、調査サンプルの100%活性化を推定し、そして光学特性への不活性ドーパントの影響およびPMOR法の信号を検討した先行技術のPMOR法の不備を開示した。
【0079】
このセクションでは、前のセクションを用いて、高ドープ半導体領域のドーパントプロファイル及び/又は物理パラメータを決定するための手順を確立する。高ドープとは、半導体領域が約1×1020cm−3又はこれ以上の積分濃度を有することを意味する。
【0080】
この手順は、部分的に活性化されたドープ半導体領域の活性化の程度および活性ドーピングプロファイルを非破壊的手法で測定するのを可能にする。こうした領域は、高抵抗の基板上に形成されたドープ半導体層でもよい。
【0081】
この手順は、不活性ドーパントを含む半導体領域の物理的特性を非破壊的手法で測定するのを可能にする。こうした物理的特性は、ドープ半導体領域の複素屈折率、寿命でもよい。低い濃度レベルでは、部分活性化が、これらのドーパントを活性化するために用いられる熱履歴(thermal budget)に依存して得られる。ドープ半導体層またはドープ半導体領域の部分活性化を示すものは、PMOR信号の予想しない挙動である。
【0082】
この予想しない挙動は、接合深さの関数としての信号振幅の非コサイン挙動によって着目される。これは、図2で見ることができ、3×1021cm−3の実験SIMS濃度を持つサンプル(CVD4)では、シンボル+は、他のサンプルと同じコサイン挙動に追従していない。TP信号の場合、典型的には、過剰キャリアに起因して、小さな負符号の振幅値が予想される。しかしながら、強度の負符号の振幅値が得られた場合、これは、不活性ドーパントがサンプル中に存在して、その物理的特性を変更していることを示す。
【0083】
前のセクションで検討したように、調査対象であるドープ半導体領域(7)の未知のパラメータは、活性ドーパントNactのドーピングプロファイルおよび不活性ドーパントNinactのドーピングプロファイルである。
【0084】
不活性ドーパントプロファイルNinactを決定するとともに、変更されたSRH寿命τSRH、変更された吸収係数α、変更された熱拡散率Dth、および変更された移動度μを決定する。反射係数の実数部および虚数部(n,k)も決定できる。
【0085】
これらのパラメータを決定するために、半導体サンプル(7)のセットを必要とする。これらの半導体領域は、ほぼ同じ全体注入ドーパント濃度Ntotを有するとともに、接合深さXは、既知であるが、サンプル間で変化していてもよい。これらのサンプルは、アニールしていない。これらの半導体領域(1a)は、例えば、基板(1)の異なる領域(1a)に異なるイオン注入を実施することによって、同じ基板(1)に形成可能である。これらの半導体領域(1a)は、別の基板(1)に形成可能である。
【0086】
第1ステップでは、サンプルの少なくとも1つについてPMOR測定、例えば、TP測定を行うことによって、この全体注入ドーパント濃度Ntotが決定される。A. Salnick et alは、文献("Quantitative photothermal characterization of ion-implanted layer in Si", in Journal of Applied Physics, vol 91, no 5 p 2874 to 2882)において、ドープ半導体領域の全体ドーパント濃度を決定するためのTP法の応用を開示している。半導体領域は不活性であると、生成される過剰キャリアは無視できる量であるため、PMOR信号は本質的に温度波(thermal-wave)成分で構成されることになる。この文献は参照によりここに組み込まれる。
【0087】
この測定から、注入濃度(1/cm)が決定でき、そして、接合深さが、測定したサンプルについては既知であるため、注入ドープ量(1/cm)が計算できる。
【0088】
不活性サンプルの全体濃度Ntotを決定した後、これらのサンプルは、例えば、熱アニールによって部分的に活性化される。アニールの際、ドーパントは、このアニール工程の際に提供される熱履歴に応じて少なくとも部分的に活性化される。この工程の目的は、ドープ半導体領域の部分活性化を得ることである。
【0089】
上述したように、層移動度へのPMOR信号の感受性がほとんど無いと仮定して(式(2))、この式で移動度の不存在によって表されるように、変更された移動度μは、高ドープサンプルについては結晶Si移動度とほぼ等しいと推定される。
【0090】
測定データから、例えば、図3aに示すように、PMOR信号の符号付き振幅が、異なる接合深さを持つ少なくとも2つの異なるサンプルについて得られ、式(3)を用いて、変更された上記熱拡散率Dthを決定できる。図3aに示すサンプルでは、変更された熱拡散率Dthは0.025cm−1であることが判った。
【0091】
変更された移動度μが既知、あるいは物理的に有意な値を想定して、変更された熱拡散率Dthを決定した後、例えば、図4に示すような実験データを用いて、変更された吸収係数αおよび屈折率(n,k)を決定できる。図4に示すサンプルの吸収係数は、約4500cm−1であることが判った。
【0092】
変更された移動度μが既知、あるいは物理的に有意な値を想定して、変更された熱拡散率Dthおよび変更された吸収係数αを決定した後、例えば、図5aに示すような実験データを用いて、変更されたSRH寿命τSRHおよび活性ドーピング濃度Nactを決定できる。
【0093】
全体不活性ドーピング濃度Ntotは第1ステップで決定されているため、不活性ドーピング濃度Ninactおよび活性化の程度は、NtotおよびNactから決定できる。
【0094】
図6に示すフローチャートは、抽出手順ステップを示す。
【0095】
最初に、サンプルのセット(2)を用意する(10)。サンプル(7)は、全体不活性注入ドーピング濃度Ntotiおよび接合深さXjiを備えた半導体領域(1a)を含み、iは、セット中のサンプル番号に対応した整数である。各サンプルは、ほぼ同じ注入濃度Ntoti=Ntoti+1=Ntotを有するが、接合深さは互いに相違しておりXj1<>Xji+1、但し、これらの接合深さはそれぞれ既知である。
【0096】
このサンプルセットのサンプルの1つについてPMOR測定を行って、共通の全体不活性注入濃度Ntotを決定する。注入サンプルは、本質的には活性化されていないため、PMOR信号には過剰キャリアからの寄与は存在していない(20)。
【0097】
そして、サンプルセットを、例えば、アニールによって部分的に活性化する。
【0098】
該サンプルセットについてPMOR測定を行って、符号付き振幅(SA)およびDCプローブ反射率を、接合深さXの関数として(40)及び/又はレーザ間隔dの関数として取得する。別々の測定を実施して、符号付き振幅およびDCプローブ反射率を取得したり、あるいはこれらの値を同じ測定の時に取得することができる。
【0099】
接合深さの関数としての符号付き振幅から、式(3)を用いて、少なくとも2つの異なるレーザ間隔dについて熱拡散率Dthを決定でき、変更された移動度μは、高ドープサンプルについて結晶Si移動度とほぼ等しいと推定される(50)。
【0100】
DCプローブ反射率を接合深さの関数としてフィッティングを行うことによって、屈折率(n,k)および変更された吸収係数を決定できる(60)。吸収係数の決定は、熱拡散率の決定(50)と併行して、またはそれ以降に可能である。
【0101】
結晶シリコンの移動度、熱拡散率(50)、吸収係数(60)など、物理的に有意な値を仮定することによって移動度が既知であれば、符号付き振幅を接合深さXの関数としてフィッティングを行うことによって(70)、寿命τSRHおよび活性ドーピング濃度Nactを決定できる。
【0102】
最後に、不活性ドーピング濃度Ninactを決定でき(80)、NactおよびNtotがここで既知であるため、活性化の程度Nact/Ntotが決定できる。
【0103】
箱型ドーピングプロファイルの場合、活性ドーパントおよび不活性ドーパントのプロファイルは、ドープ半導体領域(1a)の厚さに渡って一定であると推定できる。こうして提案した方法は、接合深さが既知であるため、活性ドーピング濃度および不活性ドーピング濃度を提供する。
【0104】
表1は、本開示の実施形態に従って5つの異なるサンプルを解析したときの結果の概要を示す。
【0105】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
PMOR法を用いて半導体領域の不活性ドーピング濃度を決定するための方法であって、
ほぼ同じ既知の、注入されたままの濃度および、既知の変化する接合深さを有する少なくとも2つの半導体領域のセットを用意すること、
これらの半導体領域のうち少なくとも1つについて、注入されたままの濃度を決定すること、
半導体セットのうち少なくとも2つの半導体領域を部分的に活性化させること、
光変調光学反射(PMOR)技術によって、部分的に活性化した半導体領域について、反射プローブ信号の符号付き振幅を接合深さの関数として、少なくとも2つのレーザ間隔値について測定すること、
光変調光学反射(PMOR)技術によって、部分的に活性化した半導体領域について、DCプローブ反射率を接合深さの関数として測定すること、
これらの測定値から活性ドーピング濃度を抽出し、これにより結晶移動度を推定すること、
決定した、全体の注入されたままの濃度および活性ドーピング濃度を用いて、不活性ドーピング濃度を計算することを含む方法。
【請求項2】
これらの測定から、熱拡散率、屈折率、吸収係数、及び/又はSRH(Shockley-Reed-Hall)寿命を抽出するステップをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
PMOR技術は、変調信号と同位相の信号、およびプローブレーザビームに対して90°位相差を持つ信号を提供する、高い変調周波数のPMOR技術である請求項1〜2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
ポンプレーザビームの変調周波数は、MHz範囲内である請求項3記載の方法。
【請求項5】
ドープ半導体領域は、約1×1020cm−3又はこれ以上の積分濃度を有する請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ドープ半導体領域の物理的特性に対するアニール工程の効果及び/又は効率を決定するための方法であって、
(a)ドープ半導体領域の少なくとも1つのサンプルを用意すること、
(b)少なくとも1つのサンプルのドーピングプロファイルを決定すること、
(c)アニール工程を少なくとも1つのサンプルに適用すること、
(d)アニールしたサンプルから、請求項1〜5のいずれかに記載の方法を用いて、選択した物理的特性を抽出すること、を含む方法。
【請求項7】
他のサンプルについてステップ(a)〜(d)を繰り返して、これにより他のアニール工程を適用すること、そして、
物理的特性の変動とアニール工程の変動とを相関させること、をさらに含む請求項6記載の方法。
【請求項8】
物理的特性は、熱拡散率、複素屈折率、吸収係数、及び/又はSRH(Shockley-Reed-Hall)寿命からなるグループから選択される請求項6記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−34544(P2010−34544A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−153478(P2009−153478)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【出願人】(599098493)カー・イュー・ルーベン・リサーチ・アンド・ディベロップメント (83)
【氏名又は名称原語表記】K.U.LEUVEN RESEARCH & DEVELOPMENT
【Fターム(参考)】