説明

部品取付具

【課題】サイドメンバの潰れを阻害することなく、インバータが取り付けられる取付具を提供する。
【解決手段】サイドメンバ18にインバータ14を取り付けるためのインバータ取付具20は、インバータ14が載置される載置部と、当該載置部を支持する支持部と、に大別される。載置部は、一対のF字状パイプ部材22f,22rから構成される。前側F字状パイプ部材22fの連結部28fは、後側F字状パイプ部材22rの連結部28rに挿入されており、両F字状パイプ部材22f,22rは、互いに潰れ方向にスライド可能となっている。このスライド移動を阻害するべく、両F字状パイプ部材22f,22rに貫通されたストレートピン30は、正突発生時には、衝撃力により破壊され、スライド移動を許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の潰れ方向の衝撃が付加された際に当該潰れ方向に潰れることで衝撃を吸収する衝撃吸収体として機能する車両骨格部材に、電子部品、例えば、インバータ等を取り付ける部品取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、車両には、インバータやバッテリなど、様々な電子部品が搭載されている。車両の中には、かかる電子部品を、車両の骨格を形成する車両骨格部材に取り付けるものがある(例えば下記特許文献1〜3など)。電子部品を車両骨格部材に取り付ける場合、通常、専用のブラケット(取付具)が利用される。
【0003】
図7は、ハイブリッド車両において、車両の側方に配置された車両骨格部材であるサイドメンバ102の前端近傍に、インバータ100を取り付ける状態を示す図である。この場合、インバータ100は、専用のブラケット104を介してサイドメンバ102に取り付けられる。このブラケット104は、インバータ100が載置される平板状のトレイ106や、当該トレイ106を支持するステー110、ステー110とサイドメンバ102とを連結するL字状金具108などから構成される。このブラケット104を構成する各部材は、いずれも、平板を折り曲げて形成される板金部材で、車両前後方向(すなわちサイドメンバの長尺方向)に十分な長さを有している。
【0004】
【特許文献1】特開平9−272459号公報
【特許文献2】特開2006−121825号公報
【特許文献3】特開2005−262894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかるブラケット104を用いてインバータ100をサイドメンバ102に取り付けた場合、衝突吸収能力が低下するという問題がある。すなわち、サイドメンバ102は、前後方向に潰れることで、衝突(正突)時に車両が受ける衝撃を吸収する衝撃吸収部材としても機能する。かかるサイドメンバ102に、図7に図示したような前後方向(潰れ方向)に十分な長さを有したブラケット104、換言すれば、前後方向の剛性が高いブラケット104を取り付けると、当該ブラケット104の剛性により衝突時におけるサイドメンバ102の潰れ量が小さくなる。その結果、衝撃を十分吸収することができず、車両の室内空間を確保しにくいという問題が生じる。
【0006】
そこで、本発明では、車両骨格部材の衝撃吸収能力を低下させることなく、電子部品を当該車両骨格部材に取り付ける部品取付具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の部品取付具は、所定の潰れ方向の衝撃が付加された際に当該潰れ方向に潰れることで衝撃を吸収する衝撃吸収体として機能する車両骨格部材に、電子部品を取り付ける部品取付具であって、前記車両骨格部材から水平方向に延びて前記電子部品が載置される載置面を形成する載置部と、車両骨格部材と前記載置部の底面とを連結することで、前記載置部を支持する支持部と、を備え、前記載置部は、前記潰れ方向に伸縮自在な伸縮部材と、前記伸縮部材の伸縮を阻害する阻害部材であって、一定以上の潰れ方向への力付加で前記阻害を解除する阻害部材と、を備える。
【0008】
好適な態様では、前記伸縮部材は、潰れ方向にスライド移動可能な一対のスライド部材を備えており、当該一対のスライド部材のスライド移動により潰れ方向に伸縮し、前記阻害部材は、前記一対のスライド部材に貫通されることで当該一対のスライド部材のスライド移動を阻害するピン部材であって、一定以上の潰れ方向への力付加で破壊されるピン部材である。この場合、前記一対のスライド部材は、第一パイプ部材と、当該第一パイプ部材より小径で一部が第一パイプ部材に挿入された第二パイプ部材と、から構成されることが望ましい。
【0009】
他の好適な態様では、前記伸縮部材は、連結部材により互いに回動自在に連結された一対のアーム部材を備えており、当該一対のアーム部材の回動により潰れ方向に伸縮し、前記阻害部材は、前記連結部材として前記一対のアーム部材に螺合される雄ねじ部材である。
【0010】
他の本発明である部品取付具は、所定の潰れ方向の衝撃が付加された際に当該潰れ方向に潰れることで衝撃を吸収する衝撃吸収体として機能する車両骨格部材に、電子部品を取り付ける部品取付具であって、前記車両骨格部材の上面から水平方向に延びて前記電子部品が載置される載置面を形成する載置部と、車両骨格部材の側面と前記載置部の底面とを連結することで、前記載置部を支持する支持部と、を備え、前記載置部は、前記車両骨格部材から片持ち梁状に張り出した一対の張出部材であって、前記潰れ方向に間隔を開けて配された一対の張出部材と、前記一対の張出部材を連結するべく潰れ方向に延びる連結部材であって、その表面に複数の凹凸が形成されたビート形状の連結部材と、を備えることを特徴とする。
【0011】
上記二つの発明における部品取付具においては、いずれも、前記支持部は、前記載置面の前端近傍に連結される前側支持部材と、前記前側支持部材に対して前記潰れ方向に間隔を開けて配され、前記載置部の後端近傍に連結される後側支持部材と、を備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、載置部が伸縮自在な伸縮部材またはビート形状の連結部材を有しているため、車両骨格部材の潰れに連動して縮小変形できる。その結果、車両骨格部材の衝撃吸収能力を低下させることなく、電子部品を当該車両骨格部材に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1には、本発明に係る車両10の好適な実施形態が示されており、図1はその全体概略図である。
【0014】
車両10は、動力源としてモータ12を利用するものである。例えば、モータで駆動される電気自動車や、モータとエンジン(図示せず)を併用するハイブリッド自動車が、その代表例である。かかるモータ12を利用する車両10には、当該モータ12に駆動信号を供給するインバータ14が設けられている。このインバータ14は、通常、車両の前方、より具体的には、サイドメンバ(図1では図示せず)の前端近傍に固定設置される。サイドメンバは、車両の前後方向に延びて車両の骨格を形成する車両骨格部材である。インバータ14は、このサイドメンバの前端近傍に、専用の取付具を介して固定設置される。
【0015】
ここで、サイドメンバは、車両の骨格を形成するだけでなく、車両前方からの衝突(以下「正突」という)時に受ける衝撃を吸収する衝撃吸収体としても機能する。すなわち、車両前方からの衝撃を受けた際、サイドメンバは、車両前後方向に潰れることで、当該衝撃を吸収し、乗員の乗車空間へ伝達される衝撃力を低減する役割を果たす。換言すれば、乗車空間に伝達される衝撃力を低減するためには、サイドメンバが車両前後方向に十分に潰れることが必要となる。
【0016】
本実施形態では、このサイドメンバの前後方向への潰れ、ひいては、サイドメンバによる衝撃吸収を阻害することなく、インバータ14をサイドメンバに取り付けるために、インバータ取付具の構成を独特なものとしている。以下、これについて図2を用いて説明する。
【0017】
図2は、本実施形態におけるインバータ取付具20の斜視図である。このインバータ取付具20は、高剛性のパイプ材、例えば、鋼からなるパイプ材を複数組み合わせて構成される骨組構造体で、インバータ14が載置される載置部と、当該載置部を支持する支持部と、に大別される。インバータ14は、載置部の上に載置され、接続ピン(図示せず)により固定される。
【0018】
載置部は、二つのF字状パイプ部材、すなわち、前側F字状パイプ部材22fおよび後側F字状パイプ部材22r(以下、前側と後側を区別しない場合は符号中のアルファベットを省略する。他部材においても同様)を組み合わせることで構成される。各F字状パイプ部材22は、いずれも、上面視略F字状形状で、略L字状に屈曲させたパイプ材に、他のパイプ材を溶接等の接続手段で接続することにより形成される。別の見方をすれば、各F字状パイプ部材22は、サイドメンバ18の上面から片持ち梁状に張り出す張出部26と、当該張出部26からサイドメンバ18の長尺方向(サイドメンバ18の潰れ方向、図2における矢印X方向)に延びる二本の連結部28と、から構成される。張出部26の基端は、サイドメンバ18の上面に螺合接続されている。この螺合接続のために、張出部26の基端は、平坦状に潰されるとともにボルト挿通用の貫通孔が形成される。また、各連結部28の先端(張出部26から離れる方向側端部)には、後述するストレートピン30が挿通されるピン孔が形成されている。さらに、このF字状パイプ部材22には、インバータ14を固着するための接続ピン(図示せず)が挿通される接続孔34も複数形成されている。
【0019】
ここで、前側に配置される前側F字状パイプ部材22fは、後側に配置される後側F字状パイプ部材22rより小径のパイプ材で構成される。この小径のパイプ材からなる前側F字状パイプ部材22fの連結部28f(以下「前側連結部28f」という)の先端は、後側F字状パイプ部材22rの連結部28r(以下「後側連結部28r」という)に挿入される。これにより、載置部全体としては、略矩形のラーメン構造体のような形態をとる。
【0020】
後側連結部28rに挿入された前側連結部28fは、当該後側連結部28rに沿って、換言すれば、サイドメンバ18の潰れ方向にスライド移動できる。このスライド移動により、載置部は、潰れ方向に伸縮することになる。つまり、二つのF字状パイプ部材22f,28rは、潰れ方向に伸縮自在な伸縮部材として機能する。
【0021】
ただし、当然ながら、載置部の潰れ方向幅が随時変更されてしまうと、当該載置部においてインバータ14を安定して保持することができない。そのため、本実施形態では、F字状パイプ部材22の張出部26の基端をサイドメンバ18の上面に螺合により固着し、二つのF字状パイプ部材22f,28rの間隔変更を阻害している。また、前側連結部28fを後側連結部28rに挿通することにより生じる前側連結部28fと後側連結部28rとの重複部分にストレートピン30を挿通している。
【0022】
ストレートピン30は、連結部28の先端に形成されたピン孔に挿通され、前側連結部28fおよび後側連結部28rの両方に径方向に貫通されるピンである。このストレートピン30が設けられることで、両連結部28f,28fの潰れ方向への移動、ひいては、載置部の潰れ方向への伸縮が阻害される。ただし、このストレートピン30は、一定以上の潰れ方向の力が付加された場合には破損し、両連結部28f,28fの潰れ方向への移動を許容するように構成されている。ここで、一定以上の力とは、車両正突時にサイドメンバ18が潰れ方向に潰れることで生じると予想される力である。
【0023】
すなわち、車両の正突により、張出部26の基端が固着されているサイドメンバ18が潰れ方向に潰れると、当然ながら、二つのF字状パイプ部材22f,28bは、互いに近づく方向(潰れ方向)に移動しようとする。このF字状パイプ部材22の移動により、ストレートピン30は、前側連結部28fから潰れ方向後向きの力を、後側連結部28rから潰れ方向前向きの力を、同時に受けることになる。ストレートピン30は、この両連結部28から同時に受ける潰れ方向逆向きの力で破壊される程度の剛性となっている。ストレートピン30をかかる構成とすることで、車両の正突時には、載置部の潰れ方向への伸縮が許容されることになる。
【0024】
以上の説明から明らかなとおり、載置部は、通常時には十分な剛性を有しているものの、正突時には、当該正突により生じる衝撃力でストレートピン30が破損し、潰れ方向への伸縮が許容される。換言すれば、載置部は、正突時には、潰れ方向の剛性が一気に低下する構成となっている。そして、載置部の潰れ方向の剛性が低下することにより、当該載置部に連結されたサイドメンバ18が、容易に潰れることができ、衝撃力を十分に吸収できる。
【0025】
この載置部を支持する支持部も、サイドメンバ18の潰れ動作を阻害しない構成となっている。支持部は、載置部の前端近傍に連結される前側支持部材24fと、載置部の後端近傍に連結される後側支持部材24rと、に大別される。前側支持部材24fおよび後側支持部材24rは、ほぼ同一構成であり、互いに潰れ方向に間隔を開けて配される。各支持部材24は、サイドメンバ18の側面に螺合接続されるL字状金具36と、当該L字状金具36と載置部とを連結する支持パイプ38と、から構成される。L字状金具36は、略平板状金属板を、L字状に屈曲させることで形成されるもので、サイドメンバ18の側面に螺合接続されている。そして、このL字状金具36の上面には、支持パイプ38が螺合接続されている。支持パイプ38の一端は、L字状金具36に螺合接続されており、この螺合接続のために平坦状に潰されている。支持パイプ38の他端は、F字状パイプ部材22の張出部26に溶接接続されており、当該F字状パイプ部材22を下側から支持している。そして、この支持パイプ38による支持により、重量のあるインバータ14を、当該インバータ取付具20で確実に保持することができる。
【0026】
ここで、既述したとおり、前側支持部材24fおよび後側支持部材24rは、互いに潰れ方向に間隔を開けて配されており、潰れ方向に長尺な部材は存在しない。そのため、前側支持部材24fおよび後側支持部材24rを設けても、サイドメンバ18の潰れ方向への潰れ動作が阻害されない。その結果、正突時には、サイドメンバ18は、潰れ方向に潰れることで衝撃力を十分、吸収できる。
【0027】
次に、このインバータ取付具20の作用について簡単に説明する。インバータ14は、二つのF字状パイプ部材22f,28rで構成される載置部に載置され、接続ピンで載置部に固定される。なお、本実施形態では、接続ピンでインバータ14を載置部に固定しているが、当然ながら、他の固定手段、例えば、螺合等でインバータ14を固定してもよい。ただし、後に詳説するように正突時には、インバータ14とインバータ取付具20とが容易に分離することが望ましく、当該分離を実現するためには、インバータ14は接続ピン、特に、連結部28に挿通されるストレートピン30と同等の剛性を備えた接続ピンで載置部に固定されることが望ましい。
【0028】
載置部にインバータ14を載置固定することにより、載置部にはインバータ14の重量により、鉛直方向の負荷がかかることになる。しかし、載置部は高剛性のパイプ材から構成されており、また、支持パイプ38およびL字状金具36により下側から確実に支持されているため、鉛直方向については高い剛性を有している。したがって、インバータ14が載置されたとしても、載置部は撓むことなく、確実に当該インバータ14を保持できる。
【0029】
一方、車両が正突し、サイドメンバ18に潰れ方向の衝撃が加わった場合には、当該衝撃力により載置部を構成する二つのF字状パイプ部材22f,28rは、互いに近づく方向に移動しようとする。このF字状パイプ部材22f,28rの移動に伴い、両F字状パイプ部材22f,28rを連結するストレートピン30には過大荷重が付加され、破壊される。そして、ストレートピン30が破壊されることにより、両F字状パイプ部材22f,28rの潰れ方向へのスライド移動が許容される。その結果、サイドメンバ18は、インバータ取付具20による抵抗を受けることなく、容易に潰れることができ、衝撃力を吸収できる。
【0030】
なお、このとき、載置部の上に載置されたインバータ14は伸縮しない。したがって、当該インバータ14と載置部が強固に連結されていれば、当該インバータ14の剛性により載置部の伸縮、ひいては、サイドメンバ18の潰れも阻害されることになる。そこで、正突時には、インバータ14とインバータ取付具20とが容易に分離されるように、インバータ14を載置部に固定する接続ピンは、連結部28に挿通されるストレートピン30と同等の剛性を備えることが望ましい。接続ピンをかかる構成とすれば、正突時には、当該接続ピンは破壊されることになり、インバータ14と載置部との分離が図られる。そして、これにより、載置部の伸縮、ひいては、サイドメンバ18の十分な潰れが実現できる。
【0031】
以上の説明から明らかなとおり、本実施形態では、インバータ取付具20の構成部材のうち、潰れ方向に長尺にならざるを得ない部材、具体的には、載置部(より正確には載置部を構成する連結部28)を、潰れ方向に伸縮自在とするとともに、正突時にうける衝撃力で破壊されるストレートピン30でその伸縮を阻害している。そのため、正突時には、ストレートピン30が破壊されて連結部28の潰れ方向への縮小が許容され、サイドメンバ18の潰れが阻害されない。そして、これにより、衝撃力を十分に吸収することができ、乗員の乗車空間への衝撃力伝達を低減できる。
【0032】
なお、以上で説明したインバータ取付具20の構成は一例であり、インバータ14が載置される載置部に、潰れ方向に伸縮自在な伸縮部材と、当該伸縮を阻害する阻害部材と、が設けられているのであれば、他の構成であってもよい。
【0033】
例えば、図3に図示するように、載置部を、相手側に向かってスライド移動可能な二枚の平板部材42f,42r、当該平板部材42f,42rを支持する一対の張出部材40f,40r、および、平板部材42のスライド移動を阻害するストレートピン30で構成してもよい。この場合、一対の平板部材42f,42rは、その先端部分が上下に重なるように配置する。そして、この重なり部分においてストレートピン30を貫通させることで、当該一対の平板部材42f,42rのスライド移動を阻害する。そして、このストレートピン30を、一定以上の潰れ方向の力付加で破壊される程度の剛性としておけば、正突時には当該ストレートピン30は破壊され、一対の平板部材42f,42rの潰れ方向へのスライドが許容される。その結果、上述の実施形態と同様に、正突時にサイドメンバ18は容易に潰れることができ、衝撃を十分に吸収できる。
【0034】
なお、この場合、平板部材42に形成されるピン孔は、ストレートピン30に集中荷重がかかりやすい形状とすることが望ましい。具体的には、図4(a)に図示するようにピン孔に段差を設けたり、図4(b)に図示するようにピン孔にテーパを設けたりして、ピン孔側面とストレートピン30との接触面積を小さくすることが望ましい。
【0035】
また、上記した二種類のインバータ取付具20は、いずれも、潰れ方向に並べて配置された一対の部材(F字状パイプ部材22または平板部材42)を潰れ方向にスライド移動させることで、載置部の伸縮を実現している。しかし、潰れ方向の幅が可変できるのであれば、スライド移動以外の動き、例えば、回動などで載置部の伸縮を実現してもよい。
【0036】
具体的には、図5に図示するように、サイドメンバ18の上面から張り出した一対の張出部材40f,40rを、姿勢(角度)変更可能な一対のアーム部材44f,44rで連結するようにしてもよい。この場合、各アーム部材44は、一端が張出部材40に、他端がボルト46により相手側アーム部材44に螺合接続される。言うなれば、一対のアーム部材44f,44rは、姿勢変更可能なリンク体を構成している。ここで、このアーム部材44は、通常、先端に螺合されたボルト46との間に生じる摩擦力により、その回動が阻害されている。しかし、潰れ方向に一定以上の力が付加されると、当該摩擦力に抗してボルト46を中心に回動可能となる。そして、このアーム部材44の回動に伴い両アーム部材44f,44rの成す角度が変更されることで、載置部全体の幅が伸縮される。つまり、この場合、ボルト46で接続された一対のアーム部材44f,44rが潰れ方向に伸縮自在な伸縮部材として機能し、一対のアーム部材44f,44rを連結するボルト46が当該伸縮を阻害する阻害部材として機能する。そして、かかる構成とすることで、上述した実施形態と同様に、正突時にサイドメンバ18は容易に潰れることができ、衝撃を十分に吸収できる。
【0037】
さらに、上記したインバータ取付具20は、いずれも、載置部を構成する部材の一部を潰れ方向に伸縮自在とすることで正突時におけるサイドメンバ18の潰れを許容しているが、潰れ方向の剛性が低い部材を用いて正突時におけるサイドメンバ18の潰れを許容してもよい。
【0038】
具体的には、図6に図示するように、サイドメンバ18の上面から張り出した一対の張出部材50f,50rを、潰れ方向の剛性が低いビート状部材52で連結するようにしてもよい。ビート状部材52は、その外側面に多数の凹凸が均等に形成されたビート形状のパイプ部材である。多数の凹凸が形成されたビート状部材52は、その凹凸の配設方向、すなわち潰れ方向に対する剛性が低く、潰れ方向に比較的小さい力が付加されるだけで圧縮変形する。そのため、正突時には、載置部は、当該正突で生じる潰れ方向の力で圧縮変形することになる。そして、載置部が潰れ方向に圧縮変形することにより、サイドメンバ18は十分に潰れることができる。その結果、上述の実施形態と同様に、正突時に受ける衝撃をサイドメンバ18で十分吸収することができる。
【0039】
以上の説明から明らかなとおり、潰れ方向に伸縮自在の伸縮部材または潰れ方向の剛性が低い部材を用いて載置部を構成することにより、サイドメンバ18の衝撃吸収能力を阻害することなく、インバータ14をサイドメンバ18に取り付けることができる。なお、上記説明は、インバータ14をサイドメンバ18に取り付ける場合を例に説明しているが、衝撃吸収部材として機能する車両骨格部材であればサイドメンバ18に限らず、また、電子部品であるならばインバータ14に限らず他の部品であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態である車両の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態におけるインバータ取付具の斜視図である。
【図3】他のインバータ取付具の斜視図である。
【図4】図4におけるA−A断面図である。
【図5】他のインバータ取付具の斜視図である。
【図6】他のインバータ取付具の斜視図である。
【図7】従来のインバータ取付具の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
10 車両、12 モータ、14 インバータ、18 サイドメンバ、20 インバータ取付具、22 F字状パイプ部材、24 支持部材、26 張出部、28 連結部、30 ストレートピン、34 接続孔、36 L字状金具、38 支持パイプ、40 張出部材、42 平板部材、44 アーム部材、52 ビート状部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の潰れ方向の衝撃が付加された際に当該潰れ方向に潰れることで衝撃を吸収する衝撃吸収体として機能する車両骨格部材に、電子部品を取り付ける部品取付具であって、
前記車両骨格部材から水平方向に延びて前記電子部品が載置される載置面を形成する載置部と、
車両骨格部材と前記載置部の底面とを連結することで、前記載置部を支持する支持部と、
を備え、
前記載置部は、
前記潰れ方向に伸縮自在な伸縮部材と、
前記伸縮部材の伸縮を阻害する阻害部材であって、一定以上の潰れ方向への力付加で前記阻害を解除する阻害部材と、
を備えることを特徴とする部品取付具。
【請求項2】
請求項1に記載の部品取付具であって、
前記伸縮部材は、潰れ方向にスライド移動可能な一対のスライド部材を備えており、当該一対のスライド部材のスライド移動により潰れ方向に伸縮し、
前記阻害部材は、前記一対のスライド部材に貫通されることで当該一対のスライド部材のスライド移動を阻害するピン部材であって、一定以上の潰れ方向への力付加で破壊されるピン部材であること
を特徴とする部品取付具。
【請求項3】
請求項2に記載の部品取付具であって、
前記一対のスライド部材は、第一パイプ部材と、当該第一パイプ部材より小径で一部が第一パイプ部材に挿入された第二パイプ部材と、から構成されることを特徴とする部品取付具。
【請求項4】
請求項1に記載の部品取付具であって、
前記伸縮部材は、連結部材により互いに回動自在に連結された一対のアーム部材を備えており、当該一対のアーム部材の回動により潰れ方向に伸縮し、
前記阻害部材は、前記連結部材として前記一対のアーム部材に螺合される雄ねじ部材であることを特徴とする部品取付具。
【請求項5】
所定の潰れ方向の衝撃が付加された際に当該潰れ方向に潰れることで衝撃を吸収する衝撃吸収体として機能する車両骨格部材に、電子部品を取り付ける部品取付具であって、
前記車両骨格部材の上面から水平方向に延びて前記電子部品が載置される載置面を形成する載置部と、
車両骨格部材の側面と前記載置部の底面とを連結することで、前記載置部を支持する支持部と、
を備え、
前記載置部は、
前記車両骨格部材から片持ち梁状に張り出した一対の張出部材であって、前記潰れ方向に間隔を開けて配された一対の張出部材と、
前記一対の張出部材を連結するべく潰れ方向に延びる連結部材であって、その表面に複数の凹凸が形成されたビート形状の連結部材と、
を備えることを特徴とする部品取付具。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の部品取付具であって、
前記支持部は、
前記載置面の前端近傍に連結される前側支持部材と、
前記前側支持部材に対して前記潰れ方向に間隔を開けて配され、前記載置部の後端近傍に連結される後側支持部材と、
を備えることを特徴とする部品取付具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−35181(P2009−35181A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202268(P2007−202268)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】