説明

部品接合方法ならびに部品接合構造

【課題】低電気抵抗の導通性が確保された部品接合を高信頼性で実現することができる部品接合方法および部品接合構造を提供することを目的とする。
【解決手段】半田粒子5を熱硬化性樹脂3aに含有させた半田ペーストを用いて、リジッド基板1およびフレキシブル基板7を熱硬化性樹脂3aによって接着するとともに、第1の端子2と第2の端子8とを半田粒子5によって電気的に接続する構成において、半田ペースト中における熱硬化性樹脂3aの活性剤の配合比率を適正に設定して、第1の端子2、第2の端子8、半田粒子5の酸化膜2a、8a、5aに、部分的に酸化膜除去部2b、8b、5bを形成する。これにより、酸化膜除去部2b、8bを介して半田粒子5と第1の端子2と第2の端子8と半田接合により導通させるとともに、熱硬化性樹脂3a中での半田粒子5相互の融着を防止して、低電気抵抗の部品接続を高信頼性で実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が自然酸化膜で覆われた端子を有する部品を半田ペーストを用いて相互に接合する部品接合方法および部品接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器製造分野において、部品相互を接合する方法として金や表面を金で覆われたボールより成る導電粒子を樹脂接着剤中に含有させた異方性導電剤が従来より用いられている。この方法によれば、接続部位に異方性導電剤を供給して導電粒子を接続対象の端子の間に介在させた状態で熱圧着することにより、端子間の電気的導通と部品相互の接着とを同時に行うことができるという利点がある。このように異方性導電剤による部品接合は上述のような利点はあるものの、材料価格が高いというコスト面での難点に加えて、端子間の導通が導電粒子の接触によって行われていることに起因して導通安定性に難点があり、低電気抵抗で高い信頼性を必要とされる用途には適していないという課題がある。このような課題を解決することを目的として、従来用いられていた導電粒子に替えて、半田粒子を樹脂接着剤中に含有させたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−4064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の特許文献例においては接合対象の電極やバンプの状態によっては、安定した半田接合が確保されがたいという問題がある。すなわち、電極やバンプの表面は必ずしも清浄な状態であるとは限らず、また半田粒子の表面も一般に酸化膜で覆われている場合が多い。したがって、このような半田粒子を電極とバンプの間に介在させた状態で熱圧着を行っても、半田粒子は一旦溶融するものの電極とバンプとを低電気抵抗で導通させる半田接合部を安定して形成することができない。
【0004】
このような接合不良を改善するために、接合部位の酸化膜を除去する目的でフラックス成分を樹脂接着剤中に配合すると、電極とバンプとの半田接合性は改善されるものの、次に述べるような不具合を生じる可能性が増大する。すなわちフラックス成分は接着剤中の全ての半田粒子に作用するため、残余の半田粒子が溶融する際にこれらの溶融半田が相互に融着して流動し、電極間のブリッジが生じ易くなる。この傾向は、電極間のピッチが狭小なファインピッチ部品を対象とする場合に特に顕著となる。このように、従来は低電気抵抗の導通性が確保された部品接合を高信頼性で実現することが困難であるという課題があった。
【0005】
そこで本発明は、低電気抵抗の導通性が確保された部品接合を高信頼性で実現することができる部品接合方法および部品接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の部品接合方法は、第1の部品および第2の部品にそれぞれ設けられ、少なくともどちらか一方の表面が自然酸化膜で覆われた第1の端子および第2の端子を相互に電気的に接続するとともに、前記第1の部品と第2の部品とを相互に接着する部品接合方法であって、錫(Sn)を主成分とする半田を粒状にした半田粒子を熱硬化性樹脂に30〜75wt%の比率で含有させた半田ペーストを前記第1の部品と前記第2の部品との間に介在させる工程と、前記第1の部品およびまたは第2の部品を加熱しながら前記第1の端子と第2の端子とを相互に押圧することにより、前記第2の端子と第2の端子とを前記半田粒子によって電気的に接続するとともに前記熱硬化性樹脂を硬化させて前記第1の部品と
第2の部品とを相互に接着する工程とを含み、前記半田ペーストは、前記熱硬化性樹脂を硬化させる硬化剤としての酸無水物を含み、さらに前記自然酸化膜および前記半田粒子の酸化膜を除去する活性剤を、前記半田粒子を除いた残部に対して1wt%以下の比率で含む。
【0007】
また本発明の部品接合方法は、第1の部品および第2の部品にそれぞれ設けられ、少なくともどちらか一方の表面が自然酸化膜で覆われた第1の端子および第2の端子を相互に電気的に接続するとともに、前記第1の部品と第2の部品とを相互に接着する部品接合方法であって、錫(Sn)を主成分とする半田を粒状にした半田粒子を熱硬化性樹脂に30〜75wt%の比率で含有させた半田ペーストを前記第1の部品と前記第2の部品との間に介在させる工程と、前記第1の部品およびまたは第2の部品を加熱しながら前記第1の端子と第2の端子とを相互に押圧することにより、前記第2の端子と第2の端子とを前記半田粒子によって電気的に接続するとともに前記熱硬化性樹脂を硬化させて前記第1の部品と第2の部品とを相互に接着する工程とを含み、前記半田ペーストは、前記熱硬化性樹脂を硬化させる潜在性硬化剤を含み、さらに、前記自然酸化膜および前記半田粒子の酸化膜を除去する活性剤を、前記半田粒子を除いた残部に対して1〜5wt%の比率で含む。
【0008】
本発明の部品接合構造は、錫(Sn)を主成分とする半田を粒状にした半田粒子を熱硬化性樹脂に30〜75wt%の比率で含有させた半田ペーストを前記第1の部品と前記第2の部品との間に介在させ、前記第1の部品およびまたは第2の部品を加熱するとともに、第1の部品および第2の部品にそれぞれ設けられ少なくとも一方の表面が自然酸化膜で覆われた第1の端子および第2の端子を相互に押圧して形成された部品接合構造であって、前記半田粒子が溶融して前記第1の端子および第2の端子のいずれにも半田接合されることにより形成され、前記第1の端子および第2の端子を相互に電気的に接続する半田部と、前記熱硬化性樹脂が硬化することにより形成され、前記第1の部品および第2の部品とを相互に接着し、前記半田部の形成に寄与しない前記半田粒子を相互に融着していない状態で内包する樹脂部とを備えた。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半田粒子を熱硬化性樹脂に含有させた半田ペーストを用いて、第1の部品および第2の部品にそれぞれ設けられた第1の端子と第2の端子とを半田によって電気的に接続するとともに、熱硬化性樹脂を硬化させて第1の部品と第2の部品とを相互に接着する構成において、半田ペースト中における熱硬化性樹脂の硬化剤と活性剤の配合比率を適正に設定することにより、端子相互を安定して半田接合によって導通させるとともに、熱硬化性樹脂中での半田粒子相互の融着を防止して、低電気抵抗の導通性が確保された部品接合を高信頼性で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1、図2、図3は本発明の一実施の形態の部品接合方法の工程説明図、図4は本発明の一実施の形態の部品接合構造の断面図である。
【0011】
まず、図1,図2を参照して、部品接合方法について説明する。この部品接合方法は、第1の部品であるリジッド基板に第2の部品であるフレキシブル基板を接合するものであり、それぞれ設けられた第1の端子および第2の端子を相互に電気的に接続するとともに、リジッド基板とフレキシブル基板とを相互に接着するものである。
【0012】
図1(a)に示すように、リジッド基板1には第1の端子2が形成されている。第1の端子2は銅(Cu)または銅系の合金より成り、第1の端子2の表面は大気暴露により生成した酸化膜2a(自然酸化膜)によって覆われている。部品接合に際しては、リジッド
基板1において第1の端子2が形成された接続面側には、図1(b)に示すように、半田ペースト3をディスペンサ4によって第1の端子2を覆って塗布する。
【0013】
図1(c)に示すように半田ペースト3は、熱硬化性樹脂3aに半田粒子5を所定の含有比率(ここでは30〜75wt%)で含有させた構成となっており、熱硬化性樹脂3aを熱硬化させるための硬化剤として、酸無水物または潜在性硬化剤を含んでいる。ここで使用可能な酸無水物の種類としては、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、更には無水ナジック酸、メチルヘキサハイドロ無水フタル酸、メチルテトラハイドロ無水フタル酸などの液状酸無水物、無水フタル酸、テトラハイドロフタル酸などの固形酸無水物が挙げられる。また使用可能な潜在性硬化剤の種類としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、アミンイミド、ポリアミンの塩、アミンアダクト、ジシアンジアミド等が上げられる。
【0014】
また熱硬化性樹脂の種類としてはエポキシ樹脂が最適であるが、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂なども使用できる。本発明に用いられるエポキシ樹脂としては、特に限定されることなく公知のものが使用可能である。例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、グリンジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂等、1分子中にエポキシ基を2個以上有するものが好ましく、これらのうち少なくとも1種類を選択して用いる。
【0015】
半田粒子5は錫(Sn)を主成分とする半田を所定粒径の粒状にしたものであり、ここでは端子間ピッチが0.1mm以上の一般的な接合対象を想定して、Sn−Ag−Cu系の半田を10〜30μmの粒径の粒状にしたものが用いられる。なお、端子間ピッチが0.1mmを下回るような挟ピッチの部品を接合対象とする場合には、電気的短絡を防止することを目的として、1〜15μmの粒径のものを用いる場合がある。
【0016】
半田の種類としては、Sn−Ag−Cu系以外にも、Sn、Sn−Ag系、Sn−Pb系、Sn−Pb−Ag系、Sn−Bi系、Sn−Bi−Ag系、Sn−Bi−In系、Sn−Cu系、Sn−Ag−Cu−Sb系、Sn−Ag−In−Bi系、Sn−Zn系、Sn−Zn−Bi系、Sn−inなどを用いることが可能である。なお、硬化剤としては、半田粒子5に用いられる半田の融点温度(220℃)よりも高い硬化温度(例えば230℃)で熱硬化性樹脂3aを熱硬化させるものが望ましい。
【0017】
半田粒子5の表面は製造後の大気暴露によって生じた酸化膜5aで覆われており、このような状態の半田粒子5を酸化膜2aによって覆われた第1の端子2と半田接合するため、半田ペースト3には、酸化膜2aおよび酸化膜5aを除去する作用を有する活性剤6が配合されている。本実施の形態では、活性剤6として、N(2−ヒドロキシエチル)イミノ2酢酸,m−ヒドロキシ安息香酸、メサコン酸、更にはo−ヒドロキシケイ皮酸、ウスニン酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、馬尿酸、コハク酸、o−メトキシケイ皮酸、p−アニス酸、リトコール酸、リンゴ酸などの有機酸を用い、半田粒子5を除いた残部に対して1wt%以下の比率で配合している。
【0018】
なお半田ペースト3に、線膨張係数の低減を目的として無機充填剤を含有させるようにしてもよい。この場合には、次のような材質を粒状にしたものを半田粒子5を除いた残部に対して20〜60wt%の比率で配合する。無機充填剤の材質としては、結晶性シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、ガラス繊維、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、クレー、アスベスト等が使用可能であり、特に結晶性シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウムが好ましい。
【0019】
この後、図2(a)に示すように、半田ペースト3が塗布された状態のリジッド基板1に対して、フレキシブル基板7が搭載される。フレキシブル基板7の下面には第1の端子2と同様の材質の第2の端子8が形成されており、第2の端子8は第1の端子2と同様に酸化膜8a(自然酸化膜)によって覆われている。フレキシブル基板7の搭載に際しては、圧着ツール10に保持されたフレキシブル基板7の第1の端子2に対して、基板支持ステージ11上に載置されたリジッド基板1の第2の端子8を位置合わせし、図2(b)に示すように、圧着ツール10を下降させて第2の端子8と第1の端子2とを相互に押圧する。
【0020】
このとき、リジッド基板1の上面とフレキシブル基板7の下面との間には、半田ペースト3が介在しており、第2の端子8と第1の端子2との間には、半田ペースト3中に含有される半田粒子5が挟まれた形で存在している。ここで、図中では半田粒子5は2個しか図示していないが、実際には前述の粒径のものが数十〜百のオーダーで存在している。
【0021】
次いで、フレキシブル基板7をリジッド基板1に接合するための熱圧着が実行される。すなわち、図2(c)に示すように、圧着ツール10によりフレキシブル基板7を所定の押圧荷重Fでリジッド基板1に対して押圧しながら圧着ツール10の温度を上昇させ、フレキシブル基板7を熱硬化性樹脂3aの硬化温度よりも高い温度で加熱する。この加熱において、半田の融点温度まで昇温した時点でまず半田ペースト3中の半田粒子5が溶融し、第1の端子2と第2の端子8とを相互に電気的に接続する。
【0022】
そして半田粒子5が溶融した後にさらに昇温することにより、熱硬化性樹脂3aが熱硬化し、リジッド基板1とフレキシブル基板7とを相互に接着する。なお熱圧着に際しては、図2(b)に示す部品搭載と図2(c)に示す熱圧着とを一連の作業工程として行ってもよいし、部品搭載と熱圧着とを個別の作業工程として行ってもよい。また熱圧着においては、フレキシブル基板7のみを加熱してもよく、またリジッド基板1とフレキシブル基板7の双方を加熱するようにしてもよい。
【0023】
すなわち本実施の形態の部品接合方法は、上述構成の半田ペースト3をリジッド基板1上に第1の端子2を覆って塗布することにより、リジッド基板1とフレキシブル基板7との間に介在させる工程と、リジッド基板1およびまたはフレキシブル基板7を加熱しながら第1の端子2と第2の端子8とを相互に押圧することにより、第1の端子2と第2の端子8とを半田粒子5よって電気的に接続するとともに、熱硬化性樹脂3aを硬化させてリジッド基板1とフレキシブル基板7とを相互に接着する工程とを含む形態となっている。そして熱硬化性樹脂3aは、半田粒子5の融点温度よりも高い温度で熱硬化するように硬化温度が設定されており、熱圧着のための加熱において、熱硬化性樹脂3aの硬化温度よりも高い温度で加熱するようにしている。
【0024】
上述の部品搭載・熱圧着の過程における第1の端子2、第2の端子8、および半田粒子5の表面状態の変化および半田接合の過程について、図3、図4を参照して説明する。図3(a)は、フレキシブル基板7をリジッド基板1に対して下降させて、第2の端子8が半田ペースト3に接触した状態を示している。この状態では、半田ペースト3中の活性剤6が酸化膜2a、8a、5aにそれぞれ作用し、酸化膜2a、8a、5aが部分的に除去される。
【0025】
このとき、半田ペースト3における活性剤6の配合比率は、半田粒子5を除いた残部に対して1wt%以下と、従来例と比較して低い配合比率となっていることから、活性剤6による酸化膜除去作用は第1の端子2、第2の端子8、半田粒子5における半田ペースト3との接触面全面に作用するには至らず、部分的な酸化膜除去にとどまる。これにより、図3(b)に示すように、第1の端子2、第2の端子8、半田粒子5の表面には、酸化膜
2a、8a、5aが部分的に活性剤6の作用によって除去された酸化膜除去部2b、8b、5bが、活性剤6の配合比率に応じた割合で形成される。
【0026】
このような酸化膜除去部は、半田粒子5の酸化膜除去部5bについては半田粒子5を熱硬化性樹脂3a中に活性剤6とともに配合して、半田ペースト3が調整された段階で形成される。そして第1の端子2の酸化膜除去部2bについては、半田ペースト3をリジッド基板1に塗布した段階で、さらに第2の端子8の酸化膜除去部8bについては、フレキシブル基板7を下降させて第2の端子8が半田ペースト3に接触した段階でそれぞれ形成される。
【0027】
半田ペースト3と同様の用途に用いられ、同様に半田粒子を含む従来の半田ペーストにおいては、半田粒子の表面の酸化膜は半田接合過程において完全にまたはほぼ完全に除去しなければならないという技術的思想の下に、酸化膜除去のための活性剤の配合比率が定められており、配合される活性剤は最低でも7wt%を必要としていたものである。これに対し、本実施の形態に示す半田ペースト3においては、活性剤の配合比率は1wt%と従来と比べて低く設定されており、これにより酸化膜除去を部分的にとどめて後述するような優れた効果を得る。
【0028】
図4(a)は、このような状態の第1の端子2および第2の端子8の間に半田粒子5が挟まれて押圧された状態を示している。前述のように、第1の端子2、第2の端子8、半田粒子5の表面は、その大部分が酸化膜2a、8a、5aによって覆われているため、半田粒子5と第1の端子2、第2の端子8とは、それぞれの新性面が相互に全面的に接触した状態にはない。
【0029】
しかしながら、前述のように第2の端子8と第1の端子2との間には、半田粒子5が数十〜百のオーダーで多数存在しているため、確率的に少なくともいくつかの半田粒子5の酸化膜除去部5bが、酸化膜除去部2b、酸化膜除去部8bの位置に一致するか、あるいは近接する。そして半田粒子5が第1の端子2と第2の端子8に挟まれて押圧されることにより、接触部分の酸化膜5aは部分的に破壊され、半田粒子5の新性面と第1の端子2、第2の端子8の新性面とは、極めて高い確率で部分的に接触状態となる。
【0030】
そして加熱により半田粒子5が溶融する半田接合過程においては、溶融した半田は第1の端子2、第2の端子8の表面において酸化膜除去部2b、酸化膜除去部8bが存在する範囲で濡れ拡がる。このとき、半田粒子5の溶融した半田は部分的ではあっても第1の端子2、第2の端子8の新性面と半田接合され、これにより、第1の端子2および第2の端子8を相互に電気的に接続する半田部5*が形成される。このとき、熱硬化性樹脂3aの熱硬化温度が半田粒子5の融点温度より高くなるように硬化剤を選定することにより、半田粒子5の溶融時の流動性を熱硬化性樹脂3aが阻害することがなく、半田粒子5の濡れ拡がりを確保して、より良好な半田部5*を得ることができる。
【0031】
また、リジッド基板1とフレキシブル基板7とで挟まれた隙間のうち、第1の端子2と第2の端子8とが対向した部分以外においては、半田部5*の形成に寄与しなかった半田粒子5が、熱硬化性樹脂3aが熱硬化した樹脂部3*中に内包された形で存在する。これらの半田粒子5は、前述のように活性剤6の作用が全面的には及んでいないため、半田粒子5は活性剤6によって除去されずに残った酸化膜5aによって大部分の表面が覆われた状態を保つ。
【0032】
したがって、熱硬化性樹脂3a中において相接近した状態にある半田粒子5が溶融してお互いを濡らすことにより合体して融着する確率は低く、熱硬化性樹脂3a中で多数の半田粒子5が融着して、第1の端子2や第2の端子8相互を溶融半田で繋ぐ半田ブリッジの
形成が有効に防止される。このことは、熱硬化性樹脂3a中に導電性粒子としての半田粒子5を含有させた異方性導電剤において、通常の配合よりも導電性粒子の配合比率を多くしても絶縁性が損なわれないことを意味している。したがって、導通性を向上させることを目的として導電性粒子の密度を高めると絶縁性が損なわれるという二律背反の関係にある課題を解決することが可能となっている。
【0033】
すなわち本実施の形態に示す部品接合方法によって実現される部品接合構造は、図4(b)に示すように、半田粒子5が溶融して第1の端子2および第2の端子8のいずれにも半田接合されることにより形成され、第1の端子2および第2の端子8を相互に電気的に接続する半田部5*と、熱硬化性樹脂3aが硬化することにより形成され、リジッド基板1およびフレキシブル基板7とを相互に接着し、半田部5*の形成に寄与しない半田粒子5を相互に融着していない状態で内包する樹脂部3*とを備えた形態となっている。そして半田部5*の形成に寄与しなかった半田粒子5の表面は、活性剤6によって除去されずに残った酸化膜5aによって覆われている。
【0034】
上記説明したように、本実施の形態の部品接合方法においては、半田ペースト3中の活性剤6の配合比率を半田粒子5の含有比率との組み合わせにおいて適切に設定することにより、半田粒子5の表面状態、すなわち酸化膜5aの除去程度を、第1の端子2、第2の端子8を半田接合によって安定して導通させ、かつ樹脂部3*中において多数の半田粒子5が融着して半田ブリッジを形成しないような除去程度とするものである。このような条件を満たすための活性剤6の配合比率および半田粒子5の含有比率の組み合わせは、以下に説明する部品接合性能の評価のための試験によって実証的に見いだされる。
【0035】
このような目的で行われる半田ペーストによる部品接合性能の評価結果を、(表1)を参照して説明する。
【0036】
【表1】

【0037】
この評価結果は、表1の半田ペースト基本諸元に示す構成の半田ペースト3を用いて実際に部品接合を実行し、得られた部品接合構造を対象として評価を行った結果を整理したものである。ここでは前述のように、半田組成としてSn−Ag−Cu系の半田を用い、10〜30μmの粒径の粒状にした半田粒子5を、エポキシ樹脂を主剤として、硬化剤としての酸無水物、および活性剤としての有機酸を含む熱硬化性樹脂3a中に含有させた構成の半田ペースト3を用いている。
【0038】
ここでは試験条件として活性剤配合比率を0%、1%および3%の3通りで変化させ、さらにこれらの活性剤配合比率のそれぞれについて、半田含有比率を7通り(5%、15%、30%、45%、60%、75%、90%)に変化させて、実際に部品接合を実行し
ている。そして得られた部品接合構造のそれぞれについて、「短絡」、「導通」、「粒子融着」の3つの項目について評価を行った。
【0039】
「短絡」は、第1の端子2相互間、第2の端子8相互間における電気的短絡が発生していないかどうかを電気的に検査した結果を示しており、〇マークは短絡の発生無し、×マークは短絡発生有りをそれぞれ示している。「導通」は、第1の端子2と第2の端子8との間の電気抵抗値が、要求される導通レベルをクリヤーしているか否かを示すものであり、〇マークは測定された抵抗値が規定抵抗値よりも低いことを、×マークは規定抵抗値よりも高いことをそれぞれ示している。
【0040】
また「粒子融着」は、樹脂部3*において多数の半田粒子5が融着合体した半田が存在するか否かを示すものであり、実際の部品接合部を切断して断面を観察することにより評価が行われる。すなわち〇マークは粒子融着の発生無し、×マークは粒子融着の発生有りをそれぞれ示している。この「粒子融着」の評価は、「短絡」の発生傾向を、実際の半田粒子5の状態を観察することによって確認する意味合いを有するものである。そして「総合」は、これら3つの項目を総合して部品接合性能を評価するものであり、3つ全ての項目について〇マークが付されたものが、総合的に部品接合性能が合格であると判断されて〇マークの対象となる。
【0041】
(表1)の評価結果から判るように、活性剤配合比率が0%、1%であって、いずれも半田含有比率が、30wt%〜75%wtの間である場合に、総合評価が〇マークとなっている。ここで活性剤配合比率が0%の場合にも良好な結果が得られているのは、硬化剤として配合されている酸無水物も酸化膜除去能力をわずかながら有しており、この酸無水物の存在によって第1の端子2、第2の端子8、半田粒子5の酸化膜が部分的に除去されることによる。
【0042】
すなわち、半田ペースト3として錫(Sn)を主成分とする半田粒子5を熱硬化性樹脂に30〜75wt%の比率で含有させた半田ペースト3であって、熱硬化性樹脂3aを硬化させる硬化剤としての酸無水物を含み、さらに自然酸化膜および半田粒子5の酸化膜5aを除去する活性剤6を半田粒子5を除いた残部に対して1wt%以下(0%、1%)の比率で含む半田ペースト3を用いることにより、樹脂部3*中で半田粒子5相互が粒子融着を起こして端子間の短絡を生じることなく、且つ第1の端子2と第2の端子8との間の導通性に優れた部品接合構造が実現される。
【0043】
なおこのような部品接合性能を実現することができる半田ペースト3の組成は上述例に限定されず、半田ペースト3において熱硬化性樹脂3aを硬化させる硬化剤として、潜在性硬化剤を用いてもよい。この場合には、上述と同様の効果を得るための活性剤の最適な配合比率は(表1)とは異なり、(表2)に示すような結果が得られている。以下、(表2)の評価結果について説明する。ここに示す半田ペースト基本諸元は、硬化剤の種類を除き、(表1)に示す例と同様である。
【0044】
【表2】

【0045】
そしてここでは試験条件として活性剤配合比率を0%、1%、5%および7%の4通りで変化させ、さらにこれらの活性剤配合比率のそれぞれについて、半田含有比率を7通り
(5%、15%、30%、45%、60%、75%、90%)に変化させて、(表1)の例と同様に部品接合を実行している。そして得られた部品接合構造のそれぞれについて、(表1)と同様の方法・基準に従って、「短絡」、「導通」、「粒子融着」の3つの項目について評価を行っている。
【0046】
(表2)の評価結果から判るように、活性剤配合比率が1%、5%であって、いずれも半田含有比率が、30wt%〜75%wtの間である場合に、総合評価が〇マークとなっている。すなわち、半田ペースト3として錫(Sn)を主成分とする半田粒子を熱硬化性樹脂に30〜75wt%の比率で含有させた半田ペーストであって、熱硬化性樹脂を硬化させる潜在性硬化剤を含み、さらに自然酸化膜および半田粒子5の酸化膜5aを除去する活性剤6を、半田粒子5を除いた残部に対して1wt%〜5wt%の比率で含む半田ペースト3を用いることにより、上述例と同様に、樹脂部3*中で半田粒子5相互が粒子融着を起こして端子間の短絡を生じることなく、且つ第1の端子2と第2の端子8との間の導通性に優れた部品接合構造が実現される。
【0047】
このように、半田粒子5を熱硬化性樹脂3aに含有させた半田ペースト3を用いて、第1の端子2と第2の端子8とを半田によって電気的に接続するとともに、熱硬化性樹脂3aを硬化させてリジッド基板1とフレキシブル基板7とを相互に接着する構成において、半田ペースト3中における熱硬化性樹脂3aの活性剤の配合比率を半田粒子5の含有比率との組み合わせにおいて適正に設定することにより、端子相互を安定して半田接合によって導通させるとともに、熱硬化性樹脂中での半田粒子相互の融着に起因する短絡を有効に防止することが可能となっている。これにより、低コストの銅や銅系の合金などで形成され、大気暴露によって自然酸化膜で覆われた状態にある端子や電極を導通対象として部品接合を行う場合において、低電気抵抗の良好な導通性が確保された部品接合を高信頼性で実現することができる。
【0048】
なお、本実施の形態においては、第1の端子である第1の端子2および第2の端子である第2の端子8がいずれも銅系の合金で形成されて自然酸化膜で覆われた状態のものを相互に接合する例を示したが、本発明はこのような対象には限定されない。例えばいずれか一方が金バンプや金メッキ表面を有する電極など貴金属表面を有するものであってもよい。すなわち、第1の端子および第2の端子の少なくともどちらか一方の表面が自然酸化膜で覆われた状態のものであれば、本発明の対象となる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の部品接合方法および部品接合構造は、低電気抵抗の導通性が確保された部品接合を高信頼性で実現することができるという効果を有し、電子部品を基板に半田接合により実装する用途に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施の形態の部品接合方法の工程説明図
【図2】本発明の一実施の形態の部品接合方法の工程説明図
【図3】本発明の一実施の形態の部品接合方法の工程説明図
【図4】本発明の一実施の形態の部品接合構造の断面図
【符号の説明】
【0051】
1 リジッド基板(第1の部品)
2 第1の端子
2a 酸化膜
3 半田ペースト
3a 熱硬化性樹脂
5 半田粒子
6 活性剤
7 フレキシブル基板(第2の部品)
8 第2の端子
8a 酸化膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部品および第2の部品にそれぞれ設けられ、少なくともどちらか一方の表面が自然酸化膜で覆われた第1の端子および第2の端子を相互に電気的に接続するとともに、前記第1の部品と第2の部品とを相互に接着する部品接合方法であって、
錫(Sn)を主成分とする半田を粒状にした半田粒子を熱硬化性樹脂に30〜75wt%の比率で含有させた半田ペーストを前記第1の部品と前記第2の部品との間に介在させる工程と、
前記第1の部品およびまたは第2の部品を加熱しながら前記第1の端子と第2の端子とを相互に押圧することにより、前記第2の端子と第2の端子とを前記半田粒子によって電気的に接続するとともに前記熱硬化性樹脂を硬化させて前記第1の部品と第2の部品とを相互に接着する工程とを含み、
前記半田ペーストは、前記熱硬化性樹脂を硬化させる硬化剤としての酸無水物を含み、さらに前記自然酸化膜および前記半田粒子の酸化膜を除去する活性剤を、前記半田粒子を除いた残部に対して1wt%以下の比率で含むことを特徴とする部品接合方法。
【請求項2】
第1の部品および第2の部品にそれぞれ設けられ、少なくともどちらか一方の表面が自然酸化膜で覆われた第1の端子および第2の端子を相互に電気的に接続するとともに、前記第1の部品と第2の部品とを相互に接着する部品接合方法であって、
錫(Sn)を主成分とする半田を粒状にした半田粒子を熱硬化性樹脂に30〜75wt%の比率で含有させた半田ペーストを前記第1の部品と前記第2の部品との間に介在させる工程と、
前記第1の部品およびまたは第2の部品を加熱しながら前記第1の端子と第2の端子とを相互に押圧することにより、前記第2の端子と第2の端子とを前記半田粒子によって電気的に接続するとともに前記熱硬化性樹脂を硬化させて前記第1の部品と第2の部品とを相互に接着する工程とを含み、
前記半田ペーストは、前記熱硬化性樹脂を硬化させる潜在性硬化剤を含み、さらに、前記自然酸化膜および前記半田粒子の酸化膜を除去する活性剤を、前記半田粒子を除いた残部に対して1〜5wt%の比率で含むことを特徴とする部品接合方法。
【請求項3】
前記第1の端子および第2の端子は、銅(Cu)または銅系の合金より成ることを特徴とする請求項1または2記載の部品接合方法。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂は、前記半田の融点温度よりも高い温度で熱硬化することを特徴とする請求項1または2記載の部品接合方法。
【請求項5】
前記加熱において、前記熱硬化性樹脂の硬化温度よりも高い温度で加熱することを特徴とする請求項1乃至4記載の部品接合方法。
【請求項6】
錫(Sn)を主成分とする半田を粒状にした半田粒子を熱硬化性樹脂に30〜75wt%の比率で含有させた半田ペーストを前記第1の部品と前記第2の部品との間に介在させ、前記第1の部品およびまたは第2の部品を加熱するとともに、第1の部品および第2の部品にそれぞれ設けられ少なくとも一方の表面が自然酸化膜で覆われた第1の端子および第2の端子を相互に押圧して形成された部品接合構造であって、
前記半田粒子が溶融して前記第1の端子および第2の端子のいずれにも半田接合されることにより形成され、前記第1の端子および第2の端子を相互に電気的に接続する半田部と、
前記熱硬化性樹脂が硬化することにより形成され、前記第1の部品および第2の部品とを相互に接着し、前記半田部の形成に寄与しない前記半田粒子を相互に融着していない状態で内包する樹脂部とを備えたことを特徴とする部品接合構造。
【請求項7】
前記半田部の形成に寄与しなかった半田粒子の表面は、前記活性剤によって除去されずに残った酸化膜によって覆われていることを特徴とする請求項6記載の部品接合構造。
【請求項8】
前記第1の端子および第2の端子は、銅(Cu)または銅系の合金より成ることを特徴とする請求項6または7記載の部品接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−280999(P2007−280999A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101778(P2006−101778)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】