説明

部材処理装置

【課題】加熱処理などを処理対象部材に均一に実行できる部材処理装置を提供する。
【解決手段】対象支持フォーク120で処理対象部材GBを対象待機位置WPから対象処理位置BPまで前進させ、対象支持フォーク120を複数の前後張架線材101より下方まで相対移動させることで、左右方向に並列な配置で前後方向に各々張架されている複数の前後張架線材101で処理対象部材GBを対象処理位置BPに支持させる。この状態で、フォーク移動機構122により複数の前後張架線材101より下方に位置させた対象支持フォーク120を対象処理位置BPから対象待機位置WPまで後退させる。このような状態で、複数の前後張架線材101で対象処理位置BPに支持された処理対象部材GBにパネルヒータ111で加熱処理が実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状の処理対象部材を対象処理位置に後方の対象待機位置から搬入して所定処理を実行する部材処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部材処理装置である加熱処理装置でガラス基板などの処理対象部材を加熱処理するとき、処理対象部材をリフトピン機構の不動ピンと可動ピンとで支持している。このリフトピン機構では、可動ピンが上下方向と水平方向とに移動する。
【0003】
そこで、上昇した可動ピンで処理対象部材を支持して水平方向に移動させ、可動ピンを下降させて不動ピンで支持させる。この動作を繰り返すことにより、可動ピンと不動ピンとが処理対象部材に接触する位置を常時変化させ、ピン接触に起因した処理対象部材の温度ムラを抑制する(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開平10−76211号公報
【特許文献2】特開2006−61755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の部材処理装置では、リフトピン機構の可動ピンと不動ピンとで交互に処理対象部材を支持するため、その構造が複雑である。しかも、可動ピンと不動ピンにより平板状の処理対象部材を水平に複数箇所で点状に支持する。
【0005】
このため、可動ピンと不動ピンによる処理対象部材の支持位置に応力および伝熱が点状に集中することになり、加熱処理や減圧乾燥などの所定処理を処理対象部材に均一に実行することが困難である。
【0006】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、加熱処理や減圧乾燥などの所定処理を処理対象部材に均一に実行することができる部材処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の部材処理装置は、平板状の処理対象部材を対象処理位置に後方の対象待機位置から搬入して所定処理を実行する部材処理装置であって、左右方向に並列な配置で前後方向に各々張架されていて処理対象部材を対象処理位置に支持する複数の前後張架線材と、複数の前後張架線材で対象処理位置に支持された処理対象部材に所定処理を実行する部材処理機構と、張架されている複数の前後張架線材の間隙を通過する形状の少なくとも一対の対象支持クローで処理対象部材を略水平に支持する対象支持フォークと、対象支持フォークを対象待機位置と対象処理位置とに前後移動させる前後移動機構と、対象支持フォークを少なくとも対象処理位置で複数の前後張架線材より上方と下方とに相対移動させる上下移動機構と、を有する。
【0008】
従って、本発明の部材処理装置では、張架されている複数の前後張架線材の間隙を通過する形状の対象支持フォークの少なくとも一対の対象支持クローで処理対象部材を略水平に対象待機位置に支持する。この対象支持フォークを上下移動機構により前後張架線材より上方に位置させた状態で、前後移動機構により対象待機位置から対象処理位置まで前進させる。この状態で、上下移動機構により対象支持フォークを複数の前後張架線材より下方まで相対移動させることで、左右方向に並列な配置で前後方向に各々張架されている複数の前後張架線材で処理対象部材を対象処理位置に支持させる。この状態で、例えば、上下移動機構により複数の前後張架線材より下方に位置させた対象支持フォークを、前後移動機構により対象処理位置から対象待機位置まで後退させる。このような状態で、複数の前後張架線材で対象処理位置に支持された処理対象部材に部材処理機構で所定処理が実行される。
【0009】
また、上述のような部材処理装置において、対象処理位置で少なくとも対象支持フォークが移動自在な間隙を介して複数の前後張架線材の下方に前後方向に並列な配置で左右方向に各々張架されている複数の左右張架線材を、さらに有してもよい。
【0010】
また、上述のような部材処理装置において、少なくとも対象処理位置より前方で複数の前後張架線材を巻回している前方巻回機構と、少なくとも対象処理位置より後方で複数の前後張架線材を巻回している後方巻回機構と、前方巻回機構と後方巻回機構との少なくとも一方を回転駆動して前後張架線材を前後遷移させる前後駆動機構と、少なくとも対象処理位置より左方で複数の左右張架線材を巻回している左方巻回機構と、少なくとも対象処理位置より右方で複数の左右張架線材を巻回している右方巻回機構と、左方巻回機構と右方巻回機構との少なくとも一方を回転駆動して左右張架線材を左右遷移させる左右駆動機構と、を有してもよい。
【0011】
また、上述のような部材処理装置において、後方巻回機構は、複数の前後張架線材を個々に巻回している複数の大径の線材巻回プーリと、複数の線材巻回プーリが軸心方向に配列されている回転自在な小径のプーリ回転軸と、を有し、プーリ回転軸と線材巻回プーリとの外周面の段差が対象支持フォークの対象支持クローの上下厚より大きい。
【0012】
また、上述のような部材処理装置において、部材処理機構は、複数の前後張架線材で対象処理位置に支持された処理対象部材を加熱処理してもよい。
【0013】
また、上述のような部材処理装置において、部材処理機構は、複数の前後張架線材で対象処理位置に支持された処理対象部材を減圧乾燥してもよい。
【0014】
なお、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の部材処理装置では、複数の前後張架線材で対象処理位置に支持された処理対象部材に部材処理機構で所定処理を実行することができるので、加熱処理や減圧乾燥などの所定処理を処理対象部材に均一に実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の第一の形態を図面を参照して以下に説明する。なお、本実施の形態では図示するように上下方向以外に前後左右の方向も規定して説明する。しかし、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものである。従って、本発明を実施する製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
【0017】
本実施の形態の部材処理装置100は、いわゆるプリベーク装置であり、液晶パネルに使用するガラス基板などの平板状の処理対象部材GBを、対象処理位置BPに後方の対象待機位置WPから搬入して所定処理である加熱処理を実行する。
【0018】
このため、図1に示すように、部材処理装置100は、左右方向に並列な配置で前後方向に各々張架されていて処理対象部材GBを対象処理位置BPに支持する複数の前後張架線材101と、複数の前後張架線材101で対象処理位置BPに支持された処理対象部材GBに加熱処理を実行する部材処理機構であるパネルヒータ111と、張架されている複数の前後張架線材101の間隙を通過する形状の少なくとも一対の対象支持クロー121で処理対象部材GBを略水平に支持する対象支持フォーク120と、対象支持フォーク120を対象待機位置WPと対象処理位置BPとに前後移動させる前後移動機構と、対象支持フォーク120を少なくとも対象処理位置BPで複数の前後張架線材101より上方と下方とに相対移動させる上下移動機構と、を有する。
【0019】
より具体的には、本実施の形態の部材処理装置100では、上述の前後移動機構および上下移動機構は、対象支持フォーク120を前後方向および上下方向に移動させるフォーク移動機構122として形成されている。
【0020】
また、部材処理装置100は、対象処理位置BPで少なくとも対象支持フォーク120が移動自在な間隙を介して複数の前後張架線材101の下方に前後方向に並列な配置で左右方向に各々張架されている複数の左右張架線材102を、さらに有する。
【0021】
そして、少なくとも対象処理位置BPより前方で複数の前後張架線材101を巻回している前方巻回機構130と、少なくとも対象処理位置BPより後方で複数の前後張架線材101を巻回している後方巻回機構140と、少なくとも対象処理位置BPより左方で複数の左右張架線材102を巻回している左方巻回機構150と、少なくとも対象処理位置BPより右方で複数の左右張架線材102を巻回している右方巻回機構160と、を有する。
【0022】
後方巻回機構140は、複数の前後張架線材101を個々に巻回している複数の大径の線材巻回プーリ141と、複数の線材巻回プーリ141が軸心方向に配列されている回転自在な小径のプーリ回転軸142と、を有する。
【0023】
このプーリ回転軸142は、前後駆動機構であるサーボモータ143に連結されているので、このサーボモータ143により後方巻回機構140が回転駆動される。なお、プーリ回転軸142と線材巻回プーリ141との外周面の段差が対象支持フォーク120の対象支持クロー121の上下厚より大きい。
【0024】
同様に、前方巻回機構130も、複数の前後張架線材101を個々に巻回している複数の大径の線材巻回プーリ131と、複数の線材巻回プーリ131が軸心方向に配列されている回転自在な小径のプーリ回転軸132と、を有し、このプーリ回転軸132が前後駆動機構であるサーボモータ133に連結されている。
【0025】
さらに同様に、左方巻回機構150と右方巻回機構160も、複数の線材巻回プーリ151,161、プーリ回転軸152,162、左右駆動機構であるサーボモータ153,163、を有し、左右張架線材102を左右遷移させる。
【0026】
前方巻回機構130およびサーボモータ133は、前部ベース部材134に搭載されており、後方巻回機構140およびサーボモータ143は、後部ベース部材144に搭載されている。
【0027】
この前部ベース部材134と後部ベース部材144とは、第一昇降機構171によりパネルヒータ111の下方で一体に連結されており、上下方向に移動自在に支持されている。
【0028】
同様に、左方巻回機構150およびサーボモータ153は、左部ベース部材154に搭載されており、右方巻回機構160およびサーボモータ163は、右部ベース部材164に搭載されている。
【0029】
この左部ベース部材154と右部ベース部材164も、第二昇降機構172によりパネルヒータ111の下方で一体に連結されており、上下方向に移動自在に支持されている。
【0030】
また、各ベース部材134,144,154,164にはボックス状の防汚カバー135,145,155,165が個々に装着されており、この防汚カバー135,145,155,165に各巻回機構130,140,150,160およびサーボモータ133,143,153,163が収容されている。当然ながら、防汚カバー135,145,155,165には複数の前後張架線材101および複数の左右張架線材102を個々に通過させる小孔が形成されている。
【0031】
さらに、対象支持フォーク120が、処理対象部材GBを処理対象位置に置いて後退したり、所定の処理が終了した処理対象部材GBを取り出すために前進することから、防汚カバー145には、例えば、図3に示すように、対象支持クロー121の寸法および配置に合わせた、逃げ溝146が形成されている。
【0032】
また、図4に示すように、防汚カバー135,145,155,165には吸引ポンプ112が配管されている。なお、本実施の形態の部材処理装置100では、上述のように上下方向に移動自在な前後張架線材101および左右張架線材102に対し、パネルヒータ111は処理装置本体(図示せず)に不動に固定されている。
【0033】
このパネルヒータ111は、複数の前後張架線材101および複数の左右張架線材102で対象処理位置BPに支持された処理対象部材GBを、例えば、80〜150℃に下方から加熱処理する。
【0034】
前後張架線材101および左右張架線材102は、例えば、200℃以上の耐熱性がある、メタ系アラミド繊維やポリイミド繊維などの人工繊維からなる。このため、前後張架線材101と左右張架線材102とは、長手方向と直交する断面の面積が充分に小さい線材からなり、物性的にも処理対象部材GBより充分に熱容量が小さい。
【0035】
上述のような構成において、本実施の形態の部材処理装置100は、前述のように平板状の処理対象部材GBを対象処理位置BPに後方の対象待機位置WPから搬入して加熱処理を実行する。
【0036】
より詳細には、本実施の形態の部材処理装置100は、図2(a)に示すように、初期状態では前後張架線材101が第一昇降機構171により最上位に位置しており、パネルヒータ111から離反している。
【0037】
また、左右張架線材102は、第二昇降機構172により後方巻回機構140のプーリ回転軸142の上面より下方かつパネルヒータ111の上面より上方の位置に配置されている。
【0038】
そして、処理対象部材GBは、フォーク移動機構122により前後張架線材101より上方で対象待機位置WPに位置された対象支持フォーク120により、略水平に支持される。
【0039】
つぎに、図2(b)に示すように、この対象支持フォーク120がフォーク移動機構122により前後張架線材101より上方に位置されたまま、対象待機位置WPから対象処理位置BPまで前進される。
【0040】
つぎに、図2(c)に示すように、フォーク移動機構122により対象支持フォーク120が複数の前後張架線材101より下方まで移動されることで、左右方向に並列な配置で前後方向に各々張架されている複数の前後張架線材101で処理対象部材GBが対象処理位置BPに支持される。
【0041】
前述のように、対象支持フォーク120の対象支持クロー121の上下厚は、プーリ回転軸142と線材巻回プーリ141との外周面の段差より小さい。このため、対象支持フォーク120はプーリ回転軸142に衝突することなく、線材巻回プーリ141に張架されている前後張架線材101に処理対象部材GBを支持させることができる。
【0042】
このような状態で、図2(d)に示すように、対象支持フォーク120がフォーク移動機構122により複数の前後張架線材101より下方に位置されたまま、対象処理位置BPから対象待機位置WPまで後退される。
【0043】
つぎに、図2(e)に示すように、第一昇降機構171により前後張架線材101が左右張架線材102の位置まで下降されることで、前後張架線材101と左右張架線材102とで処理対象部材GBが支持される。
【0044】
つぎに、図2(f)に示すように、第一昇降機構171および第二昇降機構172が所定位置まで下降することで、処理対象部材GBが前後張架線材101および左右張架線材102で前後左右に支持された状態でパネルヒータ111の上面近傍に配置される。
【0045】
このような状態で、パネルヒータ111により処理対象部材GBが加熱処理される。このとき、処理対象部材GBは複数の前後張架線材101および複数の左右張架線材102で前後左右に支持されている。
【0046】
前後張架線材101と左右張架線材102とは、前述のように断面積と熱容量とが充分に小さいので、熱伝導も低減されている。このため、パネルヒータ111により加熱処理される処理対象部材GBの温度分布の偏差を抑制することができ、処理対象部材GBを均一に加熱処理することができる。
【0047】
さらに、処理対象部材GBは複数の前後張架線材101および複数の左右張架線材102で前後左右に支持されているので、この支持の応力が局所的に集中することもない。このため、処理対象部材GBは応力集中による変形などが発生することなく加熱処理される。
【0048】
上述のような処理対象部材GBの加熱処理が完了すると、前述の図2(a)〜(f)の動作を反対に実行することにより、加熱処理された処理対象部材GBが対象待機位置WPに搬出される。
【0049】
このとき、本実施の形態の部材処理装置100では、サーボモータ133,143,153,163により各巻回機構130,140,150,160が回転駆動され、対象処理位置BPに位置する前後張架線材101および左右張架線材102が刷新される。
【0050】
このため、前回の加熱修理により汚損された前後張架線材101および左右張架線材102で処理対象部材GBが支持されないので、処理対象部材GBの不要な加熱ムラや汚損などを防止することができる。
【0051】
しかも、本実施の形態の部材処理装置100では、サーボモータ133,143,153,163により各巻回機構130,140,150,160が回転駆動されるとき、吸引ポンプ112により防汚カバー135,145,155,165の内部の空気が吸引される。
【0052】
このため、各巻回機構130,140,150,160の作動に起因して塵芥が発生しても、これは対象処理位置BPに侵入することなく部材処理装置100の外部に排出される。従って、処理対象部材GBの汚損を確実に防止することができる。
【0053】
なお、本実施の形態の部材処理装置100では、上述のように各巻回機構130,140,150,160の全部にサーボモータ133,143,153,163が装備されている。このため、前後張架線材101および左右張架線材102を確実に遷移させることができ、その張力も最適に維持することができる。
【0054】
なお、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。例えば、上記形態では処理対象部材GBの加熱処理を実行するごとに各巻回機構130,140,150,160を一定方向に回転駆動して前後張架線材101および左右張架線材102を刷新することを例示した。
【0055】
しかし、処理対象部材GBの加熱処理を実行するごとに各巻回機構130,140,150,160を反対方向に回転駆動して前後張架線材101および左右張架線材102を往復移動させてもよい。
【0056】
この場合も、加熱されていない処理対象部材GBが加熱された前後張架線材101および左右張架線材102で支持されることを防止できる。さらに、所定長さの前後張架線材101および左右張架線材102を繰り返し使用することかできるので、部材処理装置100のランニングコストを低減することができる。
【0057】
なお、上述のように前後張架線材101および左右張架線材102を往復移動させる場合、例えば、移動する前後張架線材101および左右張架線材102を除塵する機構を防汚カバー135,145,155,165などに搭載することが好適である(図示せず)。
【0058】
また、上記形態では前後左右の巻回機構130,140,150,160の全部をサーボモータ133,143,153,163で回転駆動することを例示した。しかし、前後張架線材101および左右張架線材102を一定方向のみ遷移させるのであれば、前方巻回機構130および後方巻回機構140の一方と、左方巻回機構150および右方巻回機構160の一方と、にサーボモータなどの回転駆動機構があればよい。
【0059】
その場合、回転駆動機構がない他方には、図5に示すように、前後張架線材101および左右張架線材102の張力を一定とするワンウェイクラッチなどのトルククラッチ175などを搭載することが好適である。
【0060】
なお、このようなトルククラッチ175を回転駆動される巻回機構にも搭載すれば、巻回される前後張架線材101や左右張架線材102の張力を一定以下として破断を防止することもできる。
【0061】
さらに、上記形態では加熱されていない処理対象部材GBが加熱されている前後張架線材101および左右張架線材102で支持されることを防止するため、前後張架線材101および左右張架線材102を前後左右の巻回機構130,140,150,160で巻回して遷移させることを例示した。
【0062】
しかし、前後張架線材101および左右張架線材102の熱容量が充分に小さい場合や放熱性が充分な場合、また、前後張架線材101および左右張架線材102を冷却する機構を搭載することなどにより、前後張架線材101および左右張架線材102を遷移させない部材処理装置も不可能ではない(図示せず)。
【0063】
また、上記形態では部材処理装置100が前後張架線材101とともに左右張架線材102も有することを例示したが、前後張架線材101のみで処理対象部材GBを支持する部材処理装置(図示せず)も不可能ではない。
【0064】
さらに、上記形態では左右張架線材102が前後張架線材101と直交する左右方向に張架されていることを例示した。しかし、左右張架線材102が前後張架線材101と所定角度で交差する方向に張架されていることも不可能ではなく、前後張架線材101に複数方向で交差するように複数セットの線材が張架されていることも不可能ではない(図示せず)。
【0065】
また、上記形態では対象支持フォーク120と前後左右の巻回機構130,140,150,160の全部が上下移動することを例示した。しかし、左右張架線材102の熱容量が充分に小さく放熱性が充分に良好で、左右の巻回機構150,160による刷新などで対象処理位置BPの左右張架線材102が確実に冷却されるならば、例えば、図6に例示する部材処理装置200のように、左右の巻回機構150,160と対象支持フォーク120とを上下移動させなくとも必要な機能を実現することができる。
【0066】
より詳細には、この部材処理装置200では、パネルヒータ111の上方の所定位置に左右張架線材102が配置されるように左右の巻回機構150,160が固定されており、さらに上方に対象支持フォーク120が前後方向のみ移動するように支持されている。
【0067】
図6(a)に示すように、初期状態では上下方向に移動自在な第一昇降機構171により、前後張架線材101が左右張架線材102より上方で対象支持フォーク120より下方の位置に配置されている。
【0068】
このような状態で、図6(b)に示すように、この対象支持フォーク120が対象待機位置WPから対象処理位置BPまで前進される。つぎに、図6(c)に示すように、前後張架線材101が第一昇降機構171により対象支持フォーク120より上方まで移動されることで処理対象部材GBが支持される。
【0069】
このような状態で、図6(d)に示すように、対象支持フォーク120が対象処理位置BPから対象待機位置WPまで後退される。つぎに、図6(e)に示すように、第一昇降機構171により前後張架線材101が左右張架線材102の位置まで下降されることで、前後張架線材101と左右張架線材102とで処理対象部材GBが支持される。
【0070】
この状態で処理対象部材GBは前後張架線材101および左右張架線材102で前後左右に支持されてパネルヒータ111の上面近傍に配置されるので、このパネルヒータ111により処理対象部材GBが加熱処理される。この部材処理装置200では、対象支持フォーク120と左右の巻回機構150,160は上下移動する必要がないので、その構造および制御を簡単とすることができる。
【0071】
なお、この部材処理装置200では、左右張架線材102がパネルヒータ111の上方の所定位置に配置されているが、処理対象部材GBの加熱処理が完了するごとに左右の巻回機構150,160により巻回されて刷新される。
【0072】
このため、これから加熱処理する処理対象部材GBが高温の左右張架線材102に支持されることを簡単かつ確実に防止できる。ただし、それでも左右張架線材102の余熱などが問題となる場合には、前述の部材処理装置100と同様に左右張架線材102も上下移動させればよい。
【0073】
さらに、上記形態では前後張架線材101を前後移動させる前方巻回機構130および後方巻回機構140と上下移動させる第一昇降機構171とが別個に形成されていることを例示した。
【0074】
しかし、図7に例示する部材処理装置210のように、前後張架線材101を前後移動させる前方巻回機構211および後方巻回機構212により、前後張架線材101の上下移動を実現することも可能である。
【0075】
より詳細には、この部材処理装置210でも、パネルヒータ111の上方の所定位置に左右張架線材102が固定されており、さらに上方に対象支持フォーク120が前後方向のみ移動するように支持されている。
【0076】
前方巻回機構211および後方巻回機構212は、プーリ回転軸132,142に大径の線材巻回プーリ213,214が偏心して支持されている。図7(a)に示すように、初期状態では前方巻回機構211および後方巻回機構212の線材巻回プーリ213,214が下方に位置することで、前後張架線材101が左右張架線材102より上方で対象支持フォーク120より下方の位置に配置されている。
【0077】
このような状態で、図7(b)に示すように、この対象支持フォーク120が対象待機位置WPから対象処理位置BPまで前進される。つぎに、図7(c)(d)に示すように、前方巻回機構211および後方巻回機構212が回転駆動されることで、偏心している線材巻回プーリ213,214とともに前後張架線材101が上方に変位して処理対象部材GBが支持される。
【0078】
このような状態で、図7(d)に示すように、対象支持フォーク120が対象処理位置BPから対象待機位置WPまで後退される。つぎに、図7(e)(f)に示すように、さらに前方巻回機構211および後方巻回機構212が回転駆動されることで、偏心している線材巻回プーリ213,214とともに前後張架線材101が下方に変位して左右張架線材102とともに処理対象部材GBが支持される。
【0079】
この状態で処理対象部材GBは前後張架線材101および左右張架線材102で前後左右に支持されてパネルヒータ111の上面近傍に配置されるので、このパネルヒータ111により処理対象部材GBが加熱処理される。
【0080】
この部材処理装置210では、前方巻回機構211および後方巻回機構212で前後張架線材101を前後方向に遷移させることで、上下方向にも変位させることができるので、さらに構造および制御を簡単とすることができる。
【0081】
当然ながら、この部材処理装置210でも、左右張架線材102は処理対象部材GBの加熱処理が完了するごとに左右の巻回機構150,160により巻回されて刷新されるので、これから加熱処理する処理対象部材GBが高温の左右張架線材102に支持されることを簡単かつ確実に防止できる。
【0082】
なお、上記形態では前後張架線材101と左右張架線材102との断面積と熱容量とが充分に小さいことで熱伝導を低減し、パネルヒータ111により加熱処理される処理対象部材GBの温度分布の偏差を抑制することを例示した。
【0083】
当然ながら、前後張架線材101と左右張架線材102との断面積や熱容量は、許容される処理対象部材GBの温度分布の偏差、処理対象部材GBを支持するための強度や耐久性、等を条件として適正に決定される。
【0084】
また、上記形態では部材処理装置100がパネルヒータ111により処理対象部材GBを下方から加熱処理することを例示した。しかし、パネルヒータ111により処理対象部材GBを下方から加熱処理する部材処理装置や、一対のパネルヒータ111により処理対象部材GBを上方と下方との両方から加熱処理する部材処理装置なども可能である(ともに図示せず)。
【0085】
さらに、上記形態ではパネルヒータ111により処理対象部材GBを加熱処理するプリベーク装置を部材処理装置100として例示した。しかし、処理対象部材GBを減圧乾燥する減圧乾燥装置を部材処理装置とすることもできる(図示せず)。
【0086】
なお、当然ながら、上述した実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施の形態の部材処理装置の内部構造を示す模式的な斜視図である。
【図2】部材処理装置の内部機構の作動工程を示す模式的な側面図である。
【図3】部材処理装置の要部の構造を示す模式的な斜視図である。
【図4】部材処理装置の要部の配管構造を示す模式図である。
【図5】一の変形例の要部の内部構造を示す縦断側面図である。
【図6】他の変形例の部材処理装置の内部機構の作動工程を示す模式的な側面図である。
【図7】さらに他の変形例の部材処理装置の内部機構の作動工程を示す模式的な側面図である。
【符号の説明】
【0088】
100 部材処理装置
101 前後張架線材
102 左右張架線材
111 パネルヒータ
112 吸引ポンプ
120 対象支持フォーク
121 対象支持クロー
122 フォーク移動機構
130 前方巻回機構
131 線材巻回プーリ
132 プーリ回転軸
133 サーボモータ
134 前部ベース部材
135,145,155,165 防汚カバー
140 後方巻回機構
141 線材巻回プーリ
142 プーリ回転軸
143 サーボモータ
144 後部ベース部材
146 逃げ溝
150 左方巻回機構
151,161 線材巻回プーリ
152,162 プーリ回転軸
153 サーボモータ
154 左部ベース部材
160 右方巻回機構
163 サーボモータ
164 右部ベース部材
171 第一昇降機構
172 第二昇降機構
175 トルククラッチ
200 部材処理装置
210 部材処理装置
211 前方巻回機構
212 後方巻回機構
213,214 線材巻回プーリ
BP 対象処理位置
GB 処理対象部材
WP 対象待機位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の処理対象部材を対象処理位置に後方の対象待機位置から搬入して所定処理を実行する部材処理装置であって、
左右方向に並列な配置で前後方向に各々張架されていて前記処理対象部材を前記対象処理位置に支持する複数の前後張架線材と、
複数の前記前後張架線材で前記対象処理位置に支持された前記処理対象部材に前記所定処理を実行する部材処理機構と、
張架されている複数の前記前後張架線材の間隙を通過する形状の少なくとも一対の対象支持クローで前記処理対象部材を略水平に支持する対象支持フォークと、
前記対象支持フォークを前記対象待機位置と前記対象処理位置とに前後移動させる前後移動機構と、
前記対象支持フォークを少なくとも前記対象処理位置で複数の前記前後張架線材より上方と下方とに相対移動させる上下移動機構と、
を有する部材処理装置。
【請求項2】
前記対象処理位置で少なくとも前記対象支持フォークが移動自在な間隙を介して複数の前記前後張架線材の下方に前後方向に並列な配置で左右方向に各々張架されている複数の左右張架線材を、さらに有する請求項1に記載の部材処理装置。
【請求項3】
少なくとも前記対象処理位置より前方で複数の前記前後張架線材を巻回している前方巻回機構と、
少なくとも前記対象処理位置より後方で複数の前記前後張架線材を巻回している後方巻回機構と、
前記前方巻回機構と前記後方巻回機構との少なくとも一方を回転駆動して前記前後張架線材を前後遷移させる前後駆動機構と、
少なくとも前記対象処理位置より左方で複数の前記左右張架線材を巻回している左方巻回機構と、
少なくとも前記対象処理位置より右方で複数の前記左右張架線材を巻回している右方巻回機構と、
前記左方巻回機構と前記右方巻回機構との少なくとも一方を回転駆動して前記左右張架線材を左右遷移させる左右駆動機構と、
を有する請求項2に記載の部材処理装置。
【請求項4】
前記後方巻回機構は、複数の前記前後張架線材を個々に巻回している複数の大径の線材巻回プーリと、複数の前記線材巻回プーリが軸心方向に配列されている回転自在な小径のプーリ回転軸と、を有し、
前記プーリ回転軸と前記線材巻回プーリとの外周面の段差が前記対象支持フォークの前記対象支持クローの上下厚より大きい請求項2または3に記載の部材処理装置。
【請求項5】
前記部材処理機構は、複数の前記前後張架線材で前記対象処理位置に支持された前記処理対象部材を加熱処理する請求項1ないし4の何れか一項に記載の部材処理装置。
【請求項6】
前記部材処理機構は、複数の前記前後張架線材で前記対象処理位置に支持された前記処理対象部材を減圧乾燥する請求項1ないし4の何れか一項に記載の部材処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−149953(P2010−149953A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327313(P2008−327313)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000165974)古河機械金属株式会社 (211)
【Fターム(参考)】